第7章 生産性の測定 (Measuring Productivity)

第 7 章 生産性の測定
1
3. 生産性の成長は各国間でどれだけ違うのか.
4. 各国間の成長率の格差はどれだけ生産性の成長率の格
差で説明され,また要素蓄積の違いでどれだけ説明さ
第 7 章 生産性の測定
れるのか.
発展会計と成長会計
⋆ 講義ノートは
http://www2.asia-u.ac.jp/˜ shin/lecture/growth.html にある.
⋆ 第 2 版のスライドは
http://wps.aw.com/aw weil econgrowth 2/ → Classrom ReR Slides にある.
sources → PowerPoint⃝
⋆ 第 3 版のスライドは
• 発展会計 (development accounting): 生産性の格差を
分析
• 成長会計 (growth accounting): 生産性の増加率を分析
http://wps.aw.com/aw weil econgrowth 3/ → Classrom ReR Slides にある.
sources → PowerPoint⃝



物的資本



生産要素の蓄積



人的資本

所得格差 →

技術 (第 8,9 章)



生産性



効率性 (第 10,X1 章)
• 生産性 (productivity) とは生産要素が産出物に変換す
るときの効率性である.
7.1
生産関数における生産性
生産関数
• 生産関数 (production function) 生産要素の量と産出
量間の関係
労働者 1 人当たり生産水準格差の発生源
Figure 1
労働者 1 人当たり生産水準格差の発生源 3 つ
生産要素の差
要素蓄積 → 国家間 1 人当たり所得格差
1. 物的資本に対する投資率 (第 3 章)
2. 人口増加率 (第 4 章) → 資本希釈
3. 人的資本の水準 (第 6 章) → スクーリング
投資率が [(1) 高い, (2) 低い] 国,人口成長率が [(A) 高い,
• 横軸: 労働者 1 人当たり生産要素
• 縦軸: 労働者 1 人当たり産出量
• y1 : 国 1 の労働者 1 人当たり生産量
(B) 低い] 国, 教育水準が [(ア) 高い, (イ) 低い] 国が所得
• y2 : 国 2 の労働者 1 人当たり生産量
水準がより高い傾向がある.
• 国 1 の労働者 1 人当たり生産量 > 国 2 の労働者 1 人
当たり生産量
所得格差
1 人当たり所得格差を説明するために,
1. 要素蓄積
2. 生産性
• (a) 要素蓄積による
– 生産関数は同様
– 国 1 の労働者 1 人当たり生産要素 > 国 2 の労働
者 1 人当たり生産要素
– 国 1 の生産要素が国 2 の生産要素より右に位置
する.
生産性の差と生産性成長率の差
• (b) 生産性による
第 7 章では生産性の差と生産性成長率の差について考える.
– 労働者 1 人当たり生産要素は同様
1. 各国間の生産性はどれほど違うのか.
– 国 1 の生産性 > 国 2 の生産性
2. 各国間の 1 人当たり所得格差はどれだけ生産性の違い
– 国 1 の生産関数が国 2 の生産関数より上に位置
する.
で説明されるのか.
第 7 章 生産性の測定
2
• (c) 生産性と要素蓄積の 2 者による
– 国 1 の労働者 1 人当たり産出量 > 国 2 の労働者
1 人当たり産出量
– 国 1 の生産性 > 国 2 の生産性
– 国 1 の労働者 1 人当たり生産要素 > 国 2 の労働
– 国 1 の労働者 1 人当たり生産要素 > 国 2 の労働
者 1 人当たり生産要素
者 1 人当たり生産要素
– この場合には,追加情報なしではどちらの国の
生産性が高いかを断言できない.
– 国 1 の生産関数: 上
– 国 1 の生産要素: 右
– 国 1 の生産性 ? 国 2 の生産性
– 不幸にも現実世界で目にするデータの多くのが
このような状態である.
生産量と要素蓄積データによる生産性の予測
• 生産関数は直接観察できない.
• データ: 産出量と要素蓄積
• データから生産性に関する情報を推論
Figure 2
生産量と要素蓄積データによる生産性の予測
国別生産性水準の格差
7.2
産出量と要素蓄積量に関するデータだけでは国家間の生
産性の比較は難しい.
生産関数に関する情報を用いてこの問題を解く.
2 つの改善
• 横軸: 労働者 1 人当たり生産要素
• 縦軸: 労働者 1 人当たり産出量
• (a) 2 国とも要素蓄積は同じ,ただし国 1 の生産量は
大きい.
– 労働者 1 人当たり生産要素の蓄積水準は同様
1. 横軸に生産要素を目盛る一般的ケースを越えて,物的
資本と人的資本の実際のデータを用いる.
2. どちらの国の生産性が高いかという問題を超えて,ど
れだけ (how much) 生産性が違うかを検討する.言い
換えると,各国間の生産性ギャップを数量的 (quanti-
tative) に求めることができる.
– 国 1 の労働者 1 人当たり産出量 > 国 2 の労働者
1 人当たり産出量
– 国 1 の生産性 > 国 2 の生産性
7.2.1
– なぜなら,生産性の定義は生産要素を投入して
生産物に変換しうる効率性を指しているからで
生産関数
国別生産格差の測定
ある.
• (b) 2 国とも生産量は同じ,ただし国 1 の要素蓄積は
大きい.
– 労働者 1 人当たり生産量は同様
– 国 1 の労働者 1 人当たり生産要素の蓄積量 > 国
2 のの労働者 1 人当たり生産要素の蓄積量
– 国 1 の生産性 < 国 2 の生産性
– なぜならもし国 2 が国 1 と同量の生産要素を利
用するなら,国 2 は労働者 1 人当たりの生産量
がより大きいのだから,生産要素さえ多ければ
もっと生産物は多いに違いないといえる.
• (c) 国 1 は生産量・要素蓄積ともに大きい.
Y = AK α (hL生 )1−α
• Y : 産出量
• A: 生産性
• K: 物的資本量
• h: 労働者 1 人当たり人的資本
• L生 : 労働者数
• α: 0 と 1 間のある数
(7.1)
第 7 章 生産性の測定
3
1 人当たり生産関数
例
• 2 国間の産出量の比率が 6,つまり,豊かな国の産出
量は貧しい国の産出量の 6 倍
式 (7.1) の両辺を L で割ると,労働者 1 人当たり生産関
数が求められる.
Y = AK α (hL生 )1−α = AK α h1−α L1−α
生
( K )α
Y
α 1−α −α
1−α
= AK h
L生 = A
h
L生
L生
• 生産要素蓄積量の比率が 2 とすると
(7.2)
• 生産性の比率は 3 ←∵
6
2
=3
α 1−α
y = Ak h
y = Ak α h1−α
生産性格差
(7.3)
• 2 国間の生産性格差の決定には生産水準と要素蓄積水
準を見ればよい.
• y: 労働者 1 人当たり産出量
• k: 労働者 1 人当たり物的資本
• 2 国間の生産比率が大きければ大きいほど,生産性の
ギャップが大きいといえる.逆に要素蓄積のギャップ
が大きくて,生産性ギャップが小さいこともある.
生産要素
• 言い換えると要素蓄積の格差で説明できる 2 国間の生
産量の格差が大きいほど,2 国間の所得格差は生産性
物的資本と人的資本は生産要素である.生産要素を 1 つ
にまとめる.
物的資本
人的資本
格差が原因であるとはいえなくなる.
}
−→ 生産要素
発展会計
生産要素 = k α h1−α
(7.4)
式 (7.9) を変形して 2 国間の生産性比率がどのように生産
量比率と物的資本と人的資本の数量比率に依存する.
α 1−α
y = |{z}
A k
{z }
| h
|{z}
産出量
(7.5)
( )
y1
y2
A1
= ( α 1−α )
k1 h1
A2
生産性 生産要素
生産関数は次のように考えられる.
(7.12)
k2α h21−α
産出量 = 生産性 × 生産要素
(7.6)
• 発展会計: 所得水準の差を分解するための手法.生産
性の変動と要素蓄積の変動の部分に分解する.
2 国間の生産性の比較
国1
例
A1 k1α h1−α
1
(7.7)
y2 = A2 k2α h1−α
2
(7.8)
y1 =
国2
Table 1
国 1 と国 2 の生産性分析に使ったデータ
両国の比率,式 (7.7) を式 (7.8) で割る.
( A )( k α h1−α )
y1
1
1 1
=
y2
A2 k2α h1−α
2
(7.9)
産出量の比率 = 生産性の比率 × 生産要素蓄積量の比率
(7.10)
式 (7.10) から生産性の比率は
となる.
産出量の比率
生産要素蓄積量の比率
• 国 1 の労働者 1 人当たり産出量は国 2 の労働者 1 人当
たり産出量の 24 倍
式 (7.9) は次のように解釈できる.
生産性の比率 =
(7.11)
• 国 1 の労働者 1 人当たり物的資本の量は国 2 労働者 1
人当たり物的資本の量の 27 倍
• 国 1 の労働者 1 人当たり人的資本の量は国 2 の労働者
1 人当たり人的資本の量の 8 倍
• α=
1
3
第 7 章 生産性の測定
4
(
24
1
)
A1
24
= ( 1 2 ) = 3×4 = 2
A2
27 3 ×8 3
1
1
13
– 労働者 1 人当たり産出量: カメルーン > ザンビア
(7.13)
2
×1 3
国 1 の生産性は国 2 の生産生の 2 倍
■ 資本計測に関わる問題 - および生産性計測にそれ
がもつ意義
データ
Table 2
発展会計
7.2.2
各国間の所得格差に生産性はどれだけの
役割ともつか
生産要素蓄積
(1) 生産性の格差
• 各国間には驚くほど大きな生産性 A の格差がある.
Figure 3
労働者 1 人当たり生産量の決定における生産要素の役
割,2005
韓国の A の数値はアメリカの数値の 63% しかない.も
し,アメリカと韓国が同じ労働者 1 人当たり物的資本と人
的資本を保有しているのであれば,アメリカは (韓国の) 1.5
倍の労働者 1 人当たり生産量を生産できるといえる.
人的資本ならびに物的資本を所与とするとアメリカはイ
ンドの約 3 倍,ザンビアの 7 倍の量を生産するだろう.
• 横軸: 所得グループ
• 縦軸: アメリカの労働者 1 人当たり生産要素に対する
比率
(2) 相対的利点と弱点
• 各国に相対的利点と弱点の分布を示している.
• 日本とアメリカ
(アメリカを含む) 最も豊かな国グループの要素蓄積の平
均水準はアメリカの 94%に等しく,最も貧しい国グループ
では要素蓄積の水準はアメリカのわずか 16%である.
– 生産要素蓄積: 日本 ≃ アメリカ
– 生産性: 日本 < アメリカ
生産性
– 労働者 1 人当たり産出量: 日本 < アメリカ
• ノルウェーとアメリカ
– 生産要素蓄積: ノルウェー > アメリカ
Figure 4
労働者 1 人当たり生産量の決定における生産性の役割,
2005
– 生産性: ノルウェー < アメリカ
– 労働者 1 人当たり産出量: ノルウェー < アメリカ
• カナダとイギリス
– 労働者 1 人当たり産出量: カナダ ≃ イギリス
– 生産要素蓄積: カナダ > イギリス
– 生産性: カナダ < イギリス
• 横軸: 所得グループ
• 縦軸: アメリカの生産生に対する比率
• カメルーンとザンビア
最も豊かな国グループの平均生産性はアメリカの 86%で
– 生産要素蓄積: カメルーン ≃ ザンビア
ある.最も貧しい国グループはアメリカ水準の 24%の平均
– 生産性: カメルーン > ザンビア
生産性である.
第 7 章 生産性の測定
5
生産量の差
で説明できる.
産出量 = 生産性 × 生産要素の蓄積
(7.14)
例えば,中流所得グループの典型的な国を考えよう.
• このような国の要素蓄積はアメリカの 44%に等しい.
• もし,その国がアメリカの生産性と等しかったとして
も,その所得はアメリカの所得の 44%しかならないこ
1 人当たり所得の格差
要素蓄積量の差 > 生産性の差
7.2.3
数学的な拡張
生産性と生産要素の蓄積の相対的重要性
定義
とを意味する.
• この中流所得グループに入る国の生産性はアメリカの
• Riy =アメリカの労働者 1 人当たり生産量に対する第 i
国の労働者 1 人当たり生産量の比
47%であった.
• 要素蓄積効果と生産性の合成効果はこのグループの
国々では労働者 1 人当たりの生産量がアメリカ水準の
21% (= 44% × 47%) にすぎないことを示している.
• Rip =アメリカの生産性に対する第 i 国の生産性の比
Rip =
上位 5 分の 1 の豊かな国
上位 5 分の 1 の豊かな国では,アメリカと比べた所得の
格差を決める最重要要因は生産性である.
すなわち,平均してこれらの国々の要素蓄積水準はアメ
リカの 94%であるが,生産性はアメリカの 86%であった.
yi
yアメリカ
Riy =
Ai
Aアメリカ
• Rif =アメリカの要素蓄積に対する第 i 国の要素蓄積
の比
k α h1−α
Rif = α i i 1−α
kアメリカ hアメリカ
これら 3 変数の関係は,次のとおりである.
Riy = Rip × Rif
最も貧しい国
(7.15)
これとは対照的に,最も貧しい国では生産性よりも要素
kiα h1−α
i
α
yアメリカ
Aアメリカ
kアメリカ
h1−α
アメリカ
( k
)α ( h
)1−α
Ai
yi
(7.16)
i
i
=
×
yアメリカ
Aアメリカ
kアメリカ
hアメリカ
| {z } | {z } |
{z
}
yi
蓄積水準が重要である,
すなわち,最貧国グループでは,生産性は平均してアメ
リカの 24%であるが,生産要素の蓄積水準はアメリカ水準
のわずか 16%でしかなかったからである.
Riy
=
Ai
×
Rip
Rif
式 (7.15) の対数をとると次の式を得る.
所得グループ別比較
所得グループ
要素蓄積量
比較
生産性
上位 20%
94%
>
86%
中間 20%
44%
<
47%
下位 20%
16%
<
24%
生産性と要素蓄積の相対的重要性
貧しい国から豊かな国まで展望すると要素蓄積と生産性
の水準はほぼ同率で上昇しているようにみえる.しかし,よ
り詳しく見ると,最も豊かな国と最も貧しい国との生産要
素の格差は生産性の格差よりも大きいのである.
各国間の労働者 1 人当たり所得の格差の
• 56% は要素蓄積量の差
• 44% は生産性の差
ln(Riy ) = ln(Rip ) + ln(Rif ).
(7.17)
国々からなる大きな標本をみるとき,式 (7.17) を使って
ln(Riy ) の分散を分解することができる.
Var ln(Riy ) = Var ln(Rip ) + Var ln(Rif )
(
)
+ 2 × Cov ln(Rip ), ln(Rif ) .
(7.18)
Figure 3 と Figure 4 で分析した国々については,式 (7.18)
の各項の値は次のようになる.
• Var ln(Riy ) = 1.26,
• Var ln(Rip ) = 0.27,
• Var ln(Rif ) = 0.43,
(
)
• Cov ln(Rip ), ln(Rif ) = 0.28.
第 7 章 生産性の測定
6
要素蓄積と生産性という 2 つの要因に所得の変動を分析
式 (7.24) を時間に対して微分すると
する際に,共分散の項を平均に配分するという通常の方法
ẏ
Ȧ
k̇
ḣ
= + α + (1 − α)
y
A
k
h
に従うと,1
• 生産性による所得の変動の寄与
(
)
Var ln(Rip ) + Cov ln(Rip ), ln(Rif )
Var ln(Riy )
0.27 + 0.28
=
= 0.437
1.26
• 蓄積要素による所得の変動の寄与
(
)
Var ln(Rif ) + Cov ln(Rip ), ln(Rif )
Var ln(Riy )
0.43 + 0.28
=
= 0.563
1.26
ŷ = Â + αk̂ + (1 − α)ĥ
式 (7.23) は次のように書くことができる.
(7.19)
生産性の増加率 = 産出量の増加率 − 生産要素の増加率
|
{z
} |
{z
} |
{z
}
(7.20)
成長会計
 = ŷ − αk̂ − (1 − α)ĥ
あることがわかった.
7.3.1
与えられたなら,生産性の成長率を測定できることを示す.
• 成長会計: ある経済の生産性の成長率を測るために使
われる全生産量の成長から生産要素による成長を分解
する方法.
}
−→ 所得増加
例

生産性の増加
生産関数
α 1−α
y = |{z}
A k
| h
{z }
|{z}
(7.21)
生産性 生産要素
産出量 = 生産性 × 生産要素
(7.22)
増加率
増加率を ˆ で表わすことにする.つまり x の増加率
ẋ
x
= x̂.
式 (7.22) から
産出量の増加率 = 生産性の増加率 + 生産要素の増加率
|
{z
} |
{z
} |
{z
}
ŷ
Â
産出量の年平均増加率 (ŷ)
1
( 2005 年の産出量 ) 35
=
−1
1970 年の産出量
1
( 4 ) 35
=
− 1 = 0.04 = 4%
1
(7.28)
物的資本の年平均増加率 (k̂)
1
( 2005 年の物的資本 ) 35
−1
=
1970 年の物的資本
1
( 40 ) 35
=
− 1 = 0.02 = 2%
20
(7.29)
人的資本の年平均増加率 (ĥ)
1
( 2005 年の人的資本 ) 35
−1
=
1970 年の人的資本
1
( 10 ) 35
=
− 1 = 0.02 = 2%
5
(7.30)
αk̂+(1−α)ĥ
(7.23)
となる.
式 (7.23) を確認しよう.式 (7.21) の両辺に対数をとると
ln y = ln A + α ln k + (1 − α) ln h
1式
Table 3
エレウォン (Erewhon) 国の生産性成長計算のデータ
要素蓄積の増加
各国の生産性の伸びを測定する
生産量
(7.27)
この式は,1 国の生産量,物的資本,人的資本でデータが
生産性の伸び率の国別格差
所得増加 −→
αk̂+(1−α)ĥ
(7.26)
当たり所得の 44%の変動,要素蓄積は 56%の変動の寄与が
要素蓄積量の増加
生産性の増加
ŷ
Â
である.これにデータから値を代入すると,生産性は 1 人
7.3
(7.25)
(7.24)
(
)
(7.18) の 2 × Cov ln(Rip ), ln(Rif ) を式 (7.19) と式 (7.20) に 1 つずつ配分する.
第 7 章 生産性の測定
7
• 最も成長率が高いグループ: 2.18%
式 (7.28),式 (7.29),式 (7.30) の結果を式 (7.27) に代入
すると,
• 最も成長率が低いグループ: 0.74%
 = 0.04 −
• その差: 1.44%
1
2
× 0.02 − × 0.02 = 0.02
3
3
(7.31)
生産性は 35 年間毎年 2% ずつ増加した.
Figure 6
成長を決める生産性の役割, 1970-2005
データ
アメリカの場合
• 期間: 1970-2005
• 横軸: 成長率によるグループ
• 労働者 1 人当たり産出量の年平均成長率: 1.57%
• 縦軸: 生産生の増加率
生産性の増加率
• 労働者 1 人当たり物的資本の年平均成長率: 2.15%
• 最も成長率が高いグループ: 1.22%
• 労働者 1 人当たり人的資本の年平均成長率: 0.28%
• α=
• 最も成長率が低いグループ: -1.31%
1
3
• その差: 2.53%
 = 0.0157 −
1
2
× 0.0215 − × 0.0028 = 0.0066 (7.32)
3
3
生産性と要素蓄積の相対的重要性
• 生産性はこの期間毎年 0.66% ずつ増加.
各国間の成長率の格差の
• 65% は生産性の増加率の差
• この期間アメリカの労働者 1 人当たり生産量の成長率
が年 1.57% であったとすると,生産量の成長率は 42%
(=
0.66
1.57 )
• 35% は生産要素の増加率の差
を説明できることになる.
• 生産量の成長率の残りの 58% は生産要素の蓄積で説
明される.
で説明できる.
1.57%
{z
}
100%
|
0.66%
{z
}
|
42%
生産性の増加率の差 > 生産要素の増加率の差
}
• Var ŷ p = 1.22,
(7.33)
• Var ŷ f = 0.60,
0.91%
{z
• Var ŷ = 2.16,
産出量の増加率 = 生産性の増加率 + 生産要素の増加率
|
{z
} |
{z
} |
{z
}
|
58%
• Cov(ŷ p , ŷ f ) = 0.17.
7.3.2
各国の成長格差に与えた生産性の貢献
Figure 5
ここで,ŷ は生産量の成長率,ŷ p は生産性の成長率,ŷ f は
生産要素の成長率である.
• 生産性による所得の変動の寄与
成長を決める生産要素の役割, 1970-2005
• 横軸: 成長率によるグループ
• 縦軸: 生産要素の増加率
生産要素の増加率
Var ŷ p + Cov(ŷ p , ŷ f )
Var ŷ
1.22 + 0.17
=
= 0.644
2.16
(7.34)
• 蓄積要素による所得の変動の寄与
Var ŷ f + Cov(ŷ p , ŷ f )
Var ŷ
0.60 + 0.17
= 0.356
=
2.16
(7.35)
第 7 章 生産性の測定
7.4
8
結論
A を直接に観測できなかった.むしろ生産の投入と生産
⋆ memo
を観察し,それから残差として A の値を推測した.この理
由により,この展開の結果はしばしば “我々の無知の尺度”
と呼ばれている.
1. その差はとても大きい.
2. 生産性と要素蓄積はともに各国間の所得水準格差を
説明するのに重要である.2 つのうち要素蓄積の方が
重要である.各国間の 1 人当たり所得のバラツキの
56%は生産要素のバラツキ,44%は生産性のバラツキ
によって説明できる.
7.5
■ 二都物語
• 香港とシンガポール
基本用語
• productivity (生産性)
• development accounting (発展会計)
• growth accounting (成長会計)
3. 再び,答えは非常に大きい.
• total factor productivity (全要素生産性)
4. 所得水準のバラツキとは対照的に,各国間の成長率の
• Solow’s residual (ソロー残差)
格差の説明には生産性の格差が最も重要な決定要因で
あった.各国間の所得成長率の変動の 65%は生産性の
• measure of our ignorance (無知の尺度)
成長率のバラツキ,残り 35%が要素蓄積の成長率のバ
ラツキによって説明される.低い生産性の上昇は最も
低い成長をしている
1
5
の国々の低いパフォーマンスを
説明するときに特に重要である.
7.6
問題
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7