信州ブレイブウォリアーズの経済波及効果について

平成 24 年 9 月
千曲市 企画課
Bj リーグ 2011‐2012 シーズン初参入
信州ブレイブウォリアーズの経済波及効果は 3 億 3 千万円
調査概要
・平成 23(2011)年 10 月に長野県千曲市をホームタウンとするプロバスケットボール
チーム「信州ブレイブウォリアーズ」が bj リーグ(日本プロバスケットボール)に
初参入した。
・2011-2012 シーズンは平成 23(2011)年 10 月から平成 24(2012)年 4 月まで開催され、
全 52 試合の内、長野県内ではホームタウンである千曲市戸倉体育館の 8 試合をは
じめ県内各地で 26 試合が開催された。迫力とスピード感あふれる試合と、チーム
とファン(ブースター)が一体となる臨場感が多くの人を魅了し、県内試合での入場
数は 33,083 人(1 試合平均 1,272 人)を記録した。初参入ながら、信州ブレイブウォ
リアーズを熱く応援するブースターに対して bj リーグから「ベストブースター賞」
が贈られた。
・千曲市企画課ではチームが地域へもたらす経済波及効果を推計するため、千曲市で
の最終戦(平成 24 年 4 月 21 日(土)、22 日(日))において来場者に対してアンケート
調査を実施した。また、信州ブレイブウォリアーズを運営する株式会社信州スポー
ツスピリットからチーム運営に係る経費等についてのデータ提供を得た。さらに、
シーズン中に長野県の会場で対戦した県外チームからも県内での消費額等につい
て回答を得た。
・上記の基礎資料を基に、平成 17(2005)年長野県産業連関表(平成 22(2010)年 1 月公
表)を用いて、チームが 2011-2012 シーズンから bj リーグに新規参入したことによ
る地域への経済波及効果を推計した。その結果、経済波及効果の合計は 3 億 3 千万
円と推計された。
(単位:百万円)
経済波及効果(①+②+③
①直接効果
②一次生産誘発額
③二次生産誘発額
330
合計)
信州ブレイブウォリアーズ誕生により発生した消費支出に
伴う県内需要増加から生じる生産額
直接効果によって県内の各産業に波及する生産誘発額
直接効果及び第一次生産誘発額によって生じた雇用者所得
の増加分が、新たに消費に回ることで県内の各産業に波及す
る生産誘発額
-1-
206
68
56
1.基礎資料となる支出額の推計
今回の経済波及効果の推計にあたり、以下の支出項目を推計の対象とした。
(1)県内で行われた試合の入場客および公開練習見学客の消費支出額
(2)信州ブレイブウォリアーズの試合興業やチーム運営に関連する支出額
(3)対戦相手として長野県に訪れた県外チームの消費支出額
(4)信州ブレイブウォリアーズとともに誕生したチアリーダーチームの消費支出額
(5)その他の支出額(後援会やブースタークラブ等の支出額)
(注)本調査にあたり(株)信州スポーツスピリットから提供された数値は、会計処理等がなされて発表される決算報告
書上の数値とは必ずしも一致しない。
(1)県内で行われた試合の入場客および公開練習見学客の消費支出額
①県内の試合の入場者数の把握((株)信州スポーツスピリット集計)(参考資料 1)
県内の総試合数 26 入場者数合計 33,083 人 一試合平均 1,272 人
参考資料 1 県内で開催された試合の入場者状況
試合日
試合会場
H23.10.24
H23.10.25
H23.11.5
H23.11.6
H23.11.18
H23.11.19
H23.12.3
H23.12.4
H23.12.24
H23.12.25
H24.1.7
H24.1.8
H24.2.4
H24.2.5
H24.2.18
H24.2.19
H24.2.25
H24.2.26
H24.3.31
H24.4.1
H24.4.7
H24.4.8
H24.4.21
H24.4.22
H24.4.28
H24.4.29
千曲市戸倉体育館
〃
松本市総合体育館
〃
伊那勤労者福祉センター体育館
〃
千曲市戸倉体育館
〃
岡谷市民体育館
〃
長野総合運動公園体育館
〃
佐久市総合体育館
〃
伊那勤労者福祉センター体育館
〃
千曲市戸倉体育館
〃
長野総合運動公園
〃
松本市総合体育館
〃
千曲市戸倉体育館
〃
松本市総合体育館
〃
対戦相手
埼玉ブロンコス
〃
仙台 89ERS
〃
宮崎シャイニングサンズ
〃
新潟アルビレックス BB
〃
横浜ビー・コルセアーズ
〃
岩手ビッグブルズ
〃
秋田ノーザンハピネッツ
〃
京都ハンナリーズ
〃
富山グラウジーズ
〃
高松ファイブアローズ
〃
大分ヒートデビルス
〃
ライジング福岡
〃
浜松・東三河フェニックス
〃
入場者数
1,422
1,283
1,511
1,245
716
925
1,303
1,439
1,013
1,375
1,546
1,793
839
996
819
889
1,332
1,733
1,185
1,550
1,007
1,132
1,280
1,487
1,441
1,822
33,083
合計
-2-
②平均支出額の推計(参考資料 2)
信州ブレイブウォリアーズのホームタウンである千曲市での最終戦において、来場
者に対してアンケート調査(平成 24 年 4 月 21 日(土)-22 日(日)の 2 日間、有効回収
数 476 件)を実施した。このアンケート調査から、日帰り客と宿泊客の割合を推計し、
日帰り客と宿泊客ごとに、1 人あたりの平均支出額を推計した。なお、グッズ購入費
とチケット購入費については、(株)信州スポーツスピリットからのデータにより、売
上総額から 1 人あたりの平均支出額を推計した。また、宿泊客の宿泊費と飲食費につ
いては県外チームからのヒアリングにより平均支出額を推計した。
参考資料 2 日帰り・宿泊客の割合と平均支出額の推計
日帰り客数(人)
宿泊客数(人)
入場者合計(人)
(全体の 97.5%)
(全体の 2.5%)
33,083
32,240
832
区分
日帰り客単価(円)
宿泊客単価(円)
宿泊費
0
7,132
交通費
511
4,588
飲食費
1,042
3,384
土産購入費
35
2,042
グッズ購入費
290
288
チケット購入費
1,152
1,144
合計
3,030
18,578
※宿泊客の交通費はアンケートで得た値の半額を県内消費として推計した(参考資料 3 も同様)
③2011-2012 シーズンの県内入場客の消費支出の推計(参考資料 3)
上記の①と②をもとに、県内における入場客の消費支出合計額 113,124 千円を推計
対象とする。
区分
参考資料 3 県内の試合会場に訪れた観戦客の支出
日帰り客支出
宿泊客支出
合計(
合計(千円)
(千円)
(千円)
宿泊費
0
5,934
5,934
交通費
16,475
3,817
20,292
飲食費
33,594
2,815
36,410
土産購入費
1,128
16,989
15,896
グッズ購入費
9,341
240
9,581
チケット購入費
37,129
952
38,081
合計
97,667
15,457
113,124
④公開練習に訪れた見学客の消費支出
信州ブレイブウォリアーズでは年間に 150 回ほど公開練習日を設け、無料で見学を
受け入れている。毎回 30 名ほどの熱心なファンが訪れている。この見学客の交通費
と飲食費を前述の日帰り客単価から算出し、合計 6,989 千円を推計対象とする。
・交通費
511 円
×
30 人
×
150 日 = 2,300 千円
・飲食費 1,042 円
×
30 人
×
150 日 = 4,689 千円
-3-
(2)信州ブレイブウォリアーズの試合興業やチーム運営に関連する支出額(参考資料 4)
①チーム運営に伴う支出(人件費は除く)
信州ブレイブウォリアーズの運営会社である(株)信州スポーツスピリットから提
供されたチーム運営に係る経費のうち、人件費や租税公課などを除いた、試合運営費
や広告宣伝費、事務所維持費などの合計の 56,742 千円を推計対象とする。
②チーム関係者(選手・社員含む)の日常生活での支出
(株)信州スポーツスピリットから提供されたチーム関係者への人件費から、選手を
はじめとするチーム関係者が県内で消費した日常的な支出について推計した。推計に
あたり、
「家計調査」(総務省)から、消費支出を可処分所得で割った「平均消費性向」
を算出し、人件費のうち、貯蓄に充てる分などを除いた日常生活の消費支出を推計し
た。「平均消費性向」は家計調査の平成 18 年~22 年の 5 ヵ年分(長野市)の平均を用
いた。その結果から、チーム関係者の支出 42,477 千円を推計対象とする。
参考資料 4 信州ブレイブウォリアーズ運営会社の支出
合計(
合計(千円)
区分
内訳等
試合運営費
施設使用料、演出代、警備費等
11,688
遠征費
選手移動バス代、飛行機代など
8,369
広告宣伝費
4,685
グッズ制作費
3,612
事務所管理費
賃借料、水道光熱費など
その他経費
地代家賃、会議費等上記以外のもの
1,544
26,844
56,742
56,742
合計
区分
人件費
合計(
合計(千円)
内訳等
選手、コーチ、トレーナー、社員など
56,186
チーム関係者 20 名分
↓
「家計調査」(総務省)の平成 18~22 年の長野市の調査結果から、消費支出を可
処分所得で割った「平均消費性向」の 5 ヵ年分平均「0.756」を算出。
人件費にこれを乗じ、チーム関係者 20 名分の日常的支出を推計した。
・人件費(56,186 千円)×長野市の平均消費性向(0.756)=42,477 千円
42,477
42,477 千円
チーム関係者の日常的な支出
(3)対戦相手として長野県に訪れた県外チームの消費支出額(参考資料 5)
Bj リーグ 2011-2012 シーズンの試合は県内会場(ホーム戦)と県外会場(アウェイ戦)
が同数(26 試合ずつ)行われた。長野県内各地で行われたホーム戦に、対戦相手として
訪れた 13 チームに対して、長野県内での消費支出額について種類と額を尋ねたところ、
10 チームから以下のとおり回答を得た。
-4-
区分
合計(千円)
参考資料 5 対戦チームの長野県における支出
回答チーム平均 平均×
平均×13 チーム
(千円)
(千円)
備考
宿泊費
2,045
205
2,659 10 チームが計上
飲食費
飲食費
978
98
1,271 10 チームが計上
交通費
441
441
147
その他
8
8
3,472
458
合計
- 3 チームが計上
- 2 チームが計上(洗濯代など)
3,930 (推計対象額 4,37
4,379
379 千円)
10 チームに共通していた宿泊費と飲食費については、回答した 10 チームの平均値に
対戦総チーム数 13 を乗じて得た額(3,930 千円)を経済波及効果の推計対象とする。そ
れ以外の費用については回答を得た実数(449 千円)を推計対象とする。
(4)信州ブレイブウォリアーズとともに誕生したチアリーダーの消費支出額(参考資料 6)
信州ブレイブウォリアーズを応援し、地域を盛り上げるためにチアリーダーチーム
「ジャスパーズ」が誕生した。このチアリーダーチームの支出について、(株)信州スポ
ーツスピリットから得たデータをもとに以下のとおり整理した。3,032 千円を推計対象
とする。
参考資料 6 チアリーダーチーム「ジャスパーズ」の支出
区分
支出(千円)
宿泊費
160
交通・運輸費
166
飲食費
258
衣装代費
703
備品等購入費
155
保険費
58
施設等使用費
56
印刷・通信費
4
レッスン費
1,129
その他管理費(報酬など)
343
3,032
合計
(5)その他の支出額(後援会やブースタークラブ等の支出額)(参考資料 7)
信州ブレイブウォリアーズの誕生により、チームを支援するため複数の企業がスポン
サーとなったほか、企業や個人がチームを応援するために後援会やブースタークラブが発
足した。また、チームが主催するバスケットボール大会「ウォリアーズカップ」の開催、
県内の各種イベントや施設等に選手やトレーナーを派遣する受託業務が発生した。
これらを通じて、チームに対して支出された額の合計 51,842 千円を推計対象とする。
-5-
参考資料 7 その他(チーム支援のための支出等)
合計(
合計(千円)
区分/内訳等
スポンサー企業、後援会員、ブースタークラブメンバー
等からのチームへの協賛金、会費等の支出
チーム主催イベントへの参加費、県内各種イベントへ
の選手派遣など受託業務収入、その他の収入
29,589
22,253
51,8
51,842
合計
2.経済波及効果の推計(参考資料 8)
前述の(1)~(5)までに算出した支出額を基に、平成 17(2005)年長野県産業連関表(大分
類、平成 22 年長野県企画部情報統計課)(※)を使用し、経済波及効果を推計した。
参考資料 8 信州ブレイブウォリアーズ経済波及効果 内訳
項目
金額(千円)
入場客の消費支出額
113,124
宿泊費
5,934
交通費
20,292
飲食費
36,410
土産購入費
2,827
グッズ購入費
9,581
チケット購入費
公開練習見学客の消費支出額
交通費
飲食費
チーム運営に伴う支出額
(人件費は除く)
チーム関係者の日常生活での支出額
県外チームの消費支出額
チアリーダーチームの消費支出額
その他(スポンサー支出額など)支出額
総支出額
①※ 直接効果
間接効果
②※ 一次生産誘発額
③※ 二次生産誘発額
経済波及効果合計(①+②+③)
38,081
6,989
2,300
4,689
56,
56,742
42,476
4,379
3,032
3,032
51,842
1,842
278,585
206,
206,079
124
124,112
67,
67,897
56,215
330,
30,191
(注)四捨五入により合計は一致しない
【用語解説】
※産業連関表
一定期間(通常一年間)、一定地域内の財・サービスの産業間取引を一つの行列(マトリク
ス)にまとめた統計表
-6-
①直接効果(直接生産誘発額)
総支出額のうち、長野県内での生産によりまかなわれる財・サービスに対する支出額
②一次生産誘発額
直接効果により需要が増加した産業部門で、必要とする原材料等を他の産業部門から購入
することで新たに誘発された金額
③二次生産誘発額
直接効果と一次生産誘発額までの過程で増加した雇用者所得のうち、支出に回された分か
ら誘発された需要と生産への波及効果
3.まとめ
本調査では数値として把握可能な最低限度の基礎資料に基づき経済波及効果を推計した。マ
スメディアによるシティセールス効果、取材メディアによる消費効果等は除いている。また、
信州ブレイブウォリアーズは公式戦以外にも市民祭りへの協力や保育園・幼稚園訪問などの地
域貢献活動、県内の各種イベントへの参加、バスケットボールクリニックの開催など地域活性
化のために様々な活動を展開しており、本調査では包括しきれていない波及効果も存在する。
参考として、bj リーグの他チームの経済波及効果と比較したい(参考資料 9)。経済波及効果
を推計する際に最も大きな要素は入場客の消費支出額であり、試合を観戦した入場客の消費額
が大きいほど、経済波及効果も大きな数字となる。本調査で推計した入場客の平均単価は日帰
り客 3,030 円、宿泊客 18,578 円であるが、他チームの調査ではこの額を上回る数字が設定さ
れている。また、琉球のように入場者数のみならず、消費額の大きい宿泊客が多数存在するこ
とから、大きな経済波及効果を推計している事例もある。地域への経済波及効果を高めていく
ためには、地域外から訪れる入場客の増加と、その消費活動を促す取り組みが求められる。
入場者数についてはシーズン初参入の時期でもあり、下表の他チームには及ばなかったが、
当市が実施したアンケート結果からは 94.1%以上の人が「また試合を観戦したい」としてお
り、試合を観戦した人にはその魅力が十分に伝わっていると言える。また、信州ブレイブウォ
リアーズは千曲市の観光大使として、県外においても試合会場に特設ブースを設けるなど、積
極的に「信州」「千曲市」のプロモーション活動を行っていることから、今後の誘客にも一定
の効果が期待できる。地域貢献活動も積極的に行うチームへの親近感は長野県民および千曲市
民の中に確実に育ちつつある。地域が一体となり、さらにチームを盛り上げることで、チーム
の持つポテンシャルを引き出し、地域活性化の有効な資源として活用することが望まれる。
チーム名
対象時期(シーズン)
直接効果(万円)
一次生産誘発額(万円)
(第一次波及効果)
二次生産誘発額(万円)
(第二次波及効果)
参考資料 9 bj リーグの他のチームとの経済波及効果の比較
滋賀レイクスタ 琉球ゴールデン
bj 秋田
仙台 89ers
ーズ
キングス
(参入前試算)
信州ブレイブ
ウォリアーズ
2011-2012
2008-2009
2009-2010
2009-2010
2011-2012
50,100
97,600
33,000
25,000
20,608
10,800
36,400
21,000
17,500
6,790
9,200
28,600
経済波及効果(
経済波及効果(万円)
万円)
70,100
162,500
54,000
42,500
33,019
入場者数
入場者数(人)
49,800
67,100
74,294
48,400
33,083
1,976
6,000
891
-
832
しがぎん経済文
化センター
りゅうぎん総合
研究所
うち宿泊客(人)
算出者
5,621
宮城県
国際教養大学
加藤准教授
千曲市
※算出方法はチームにより異なる
-7-
4.参考(千曲市への経済波及効果の推計)
本調査に使用した産業連関表は長野県のものであり、千曲市にもたらされた経済波及効
果を推計するには市内で誘発された生産額や、産業部門ごとの千曲市分のシェアについて
の数値を用いる方法がある。しかしながら、今回は時間的・技術的制約から困難であるた
め、信州ブレイブウォリアーズが行ったホーム試合のうち千曲市戸倉体育館に訪れた来場
者数および千曲市内の体育館で実施された公開練習に訪れた来場者数を参考に、以下の手
順により推計した。
・長野県にもたらされた経済波及効果 330,190 千円…①
・本調査における入場客数及び見学者(推計)の合計 37,583 人…②
・千曲市に訪れた来場者(練習見学者含む) 15,779 人…③
②および③から千曲市に訪れた来場者数は全体の 41.98%と推計する。①にこれを乗じ
て得た額 138,614 千円を千曲市にもたらされた経済波及効果と推計する。
-8-