メチルフエニルテトラヒドロピリジンによるパーキソン病の発症機構

ドー パ ミ ン神 経毒
メチルフエニルテトラヒドロピ
パー
リジンによる
キンン病の発
機構
平田洋子・永津俊治
1-メ チ ルー4-フェ ニル ー1,2, 3, 6-テ トラ ヒ ドロ ピ リジ ン (MPTP)
ス, そ の 他 の 動 物 で パ ーキ ン ソ ン病 症 状 を起 こす こ とが1983年
は, ヒ ト, サ ル, マ ウ
に 発 見 され て以 来, きわ
め て 注 目 され て い る黒 質 線 条 体 ドーパ ミン神 経 細 胞 の 選 択 的 細 胞 毒 で あ る。MPTP
はモ
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ノア ミン酸 化 酵 素 の基 質 とな り, 1-メ チ ル-4-フ ェ ニル ピ リジ ニ ウ ム イ オ ン (MPP^<+>) に代
謝 され, MPP^<+> は ドー パ ミ ン取 込 み 機 構 に よっ て 能 動 的 に ドーパ ミ ンニ ュ ー ロ ン に取 り込
ま れ,
ドーパ ミンの 減 少 と ニ ュー ロ ンの 変 性 を 起 こす 。MPTP
ライ スの チ ロ シ ン水 酸 化酵 素 系 を 特 異 的 に 阻 害 す る。MPTP
シ ン水 酸 化酵 素 系 の 阻 害 を起 こす 機 構 は,
や MPP^<+> は線 条 体 組 織 ス
が, 最 終 的 に細 胞 変 性 や チ ロ
現 段 階 で は不 明 で あ るが,
MPTP
の発 見 に よ
って 種 々 の動 物 でパ ーキ ン ソ ン病 モデ ル を 作 製 す る こ とが 可 能 とな り, パ ーキ ン ソ ン病 の
分 子 レベ ル で の 原 因 解 明 お よび 治 療 に つ い て, 今後 の 研 究 が 期 待 され る。
は じめ に
師
James
パ ー キ ン ソ ン病 は,
Parkinson
1817年
ロ ン ドンの 医
が 初 め て 記 載 した 疾 患 で,
固 く な り, 動 作 が 緩 慢 と な っ て,
筋 肉が
接 の 発 症 機 構 の解 明 が 急 速 に 進 行 して い る。
MPTP
しか も静 止 時 に 震 え が
認 め ら れ る 特 異 な 運 動 障 害 を 起 こす 。 高 齢 者 に 多 発 し,
は 1947 年 に合 成 され た が, 1983 年 まで そ の
毒 性 や パ ー キ ン ソ ン病 を 発 症 させ る作 用 の あ る こ と は ま
の 頻 度 で発 症 す る。 パ ー キ ン ソ
った く気 が つ か れ な か った 。MPTP
に よ るパ ーキ ン ソ ン
脳 黒 質 線 条 体 ドー パ ミ ン ニ ュ ー ロ ン の 変 性 に よ
病 の発 症 例 の 最 初 の報 告 は1977年
で あ った。米 国 の23
日 本 で は1000人
ン病 は,
状 を 起 こす こ とが 報 告 され て^<6∼11)>,
パ ーキ ン ソ ン病 の直
に1人
り, 神 経 伝 達 物 質 ドー パ ミ ン が 減 少 す る こ と が 症 状 の 直
接 原 因 で,
ド ー パ ミ ン生 合 成 酵 素 の チ ロ シ ン水 酸 化 酵 素
歳 の 化学 の 学 生 が 自分 で, 人 工 ヘ ロイ ンで あ る メペ リジ
ン (1-methyl-4-phenyl-4-propionoxy-piperidine,
図1
と テ トラ ヒ ド ロ ビ オ プ テ リ ン補 酵 素 の 減 少 が ドー パ ミ ン
参 照) を 合成 し使用 した結 果, パ ーキ ン ソ ン病 様 の 症 状 を
減 少 を ひ き 起 こ す こ と が わ か っ た 。 しか し, 神 経 変 性 と
起 こ して 米 国 国 立予 防衛 生研 究所 (NIH)
の病 院 に 入 院
チ ロシ ン水 酸 化 酵 素 減 少 の 生 化 学 的 原 因 と どち らが先 行
した 。 そ の 症 状 は 自然発 症 の パ ー キ ン ソ ン病 と区 別 不 可
す る の か は 不 明 で あ る^<1∼5)>。
能 で, L-ド ー パ お よび ブ ロモ ク リプチ ンの投 与 が 著 効 を
1983年
以 来,
1-メ チ ル-4-フ
ェ ニ ル-1, 2, 3, 6-テ
ヒ ドロ ピ リ ジ ン (1-methyl-4-pheny1-1,
- dropyridine;
MPTP
と 略 記,
図1参
トラ
2, 3, 6-tetrahy
照)
が ヒ トとサ ル
奏 した 。患 者 が 合成 ヘ ロイ ンを 自分 で使 用 して か らパ ー
キ ン ソ ン病 を 発 症 した た め, この 合 成 ヘ ロ イ ン中 に 合 成
操 作 の誤 りで 生 成 した 混 在 す る MPTP
がパーキ ンソン
で 黒 質 線 条 体 ドー パ ミ ン ニ ュ ー ロ ン を 選 択 的 に 変 性 さ
病 を起 こ した ので は な い か と 推 定 され た 。NIH
せ,
モ ッ ト, ラ ッ ト, ハ ム ス タ ーに 投 与 して パ ーキ ン ソ ン病
ドー パ ミ ン 含 量 を 減 少 さ せ て パ ー キ ン ソ ン病 様 の 症
Yoko
Hirata,
Biochemistry,
Toshiharu
Nagatsu,
Nagoya
University
名 古 屋 大 学 医 学 部 生 化 学 第 一 講 座
School
of
Medicine,
Nagoya
466,
(〒466
Japan]
ion of Parkinsonism by 1-Methyl-4-phenyl-1,
【MPTP】
【2,ドー
3, 6-tetrahydropyridine
パ ミ ン 】 【チ ロ シ (MPTP),
ン 水 酸 A化DopaminergicKey
酵 素 】 【パ ーword
キ ン ソ ン病 】
398
名 古 屋 市 昭 和 区 鶴 舞 町
65)
[Department
でモル
of
I
13
ドー パ ミソ 神 経 毒 メ チ ル フ ェニ ル テ トラ ヒ ドロ ピ リジ ソに よ るパ ー キン ソン病 の 発 症 機 構
(1)
MPTP
は脳 の 黒 質 線 条 体 系 ドー パ ミン神 経 を
特 異 的 に変 性 させ る。
(2)
ヒ トの 自然 発 症 の パ ー キ ン ソ ン病 に み られ る主
要 症 状 を 発 症 させ る こ とが で き る。
(3)
自然 発 症 のパ ー キ ン ソ ン病 に 有 効 な 薬 剤 は 同 様
に 著 効 を示 す 。
meperidine:
MPTP:
1-methyl-4-phenyl-4-
1-methyl-4-phenyl-
propionoxy-piperidine
1,2,3, 6-tetrahydropyridine
人 工 合
ドー パ ミン 神 経 細 胞 選 択 毒
成 ヘ ロ イ ン
図1.
(4)
人 工 ヘ ロイン の メペ リジン と MPTP
ラ ッ ト, モ ル モ ッ ト, ハ ム ス タ ー な
の 神 経 毒 性 に 対 す る感 受 性 が
低い。
に抵 抗 性 が 高 く, パ ー キ
また 相 違 点 と して は, 自然発 症 のパ ー キ ン ソ ン病 が ド
ー パ ミン神 経 だ け で な く, ノル ア ド レナ リ ン神 経 の働 き
ン ソ ン病 を発 症 しに くか った か らで あ る。1978年 に, こ
の 低下 な ど広 範 な障 害 を伴 うのに 比 べ て, MPTP
の患 者 は 死 亡 して NIH
り発 症 した パ ー キ ン ソニ ズ ム で は, そ の 障 害 が 黒 質 線
で剖 検 が 行 なわ れ, 自然発 症 パ
ー キ ン ソ ン病 と 類 似 して 黒質 神経 細 胞 に Lewy
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は ヒ トとサ ル で パ ーキ ン ソニ ズ ム を 起
ど の小 動 物 は MPTP
の構造
を起 こす試 み が な さ れ た が 失敗 に終 った 。後 述 す る よ う
に, こ れ らの動 物 種 は MPTP
MPTP
こ しや す いが,
小体を
伴 う変 性 の あ る こ とが 立 証 され た 。こ の症 例 は“Psychi
atryResearch”
に報 告 され た^<12)>
が, 当 時 は 特殊 な 症 例 と
条 体 系 ドー パ ミン神経 に 限 局 して い る こ とが あ げ ら れ
る^<13)>。
当 初, ラッ ト, モ ル モ ッ トな ど の小 動 物 に MPTP
を
大 量 に投 与 して も 黒質 線 条 体 系 ドー パ ミンニ ュー ロ ンの
み な され て, そ れ ほ ど注 目 され な か った 。
と ころ が, 1983年
によ
に北 カ リフ ォル ニ アで 合 成 ヘ ロ イ
変 性 はみ られ ず, パ ー キ ン ソ ン病 モ デ ル を作 る試 み は失
ン と して 密 売 され た メペ リジ ンを 静 脈 注 射 した 麻 薬 常 習
敗 に終 った が^<14∼17)>,
そ の後, マ ウ スが MPTP
者 (男 性3人,
害 を受 け や す い こ とが 明 ら か に な った^<18∼23)>。Heikkila
女 性1人)
に 急 性 発 症 の パ ーキ ン ソ ン病
に よる 障
様 症 状 が 発 現 した 。 患 者 ら の使 用 した 合 成 ヘ ロ イ ンを 分
ら^<19)>
は MPTP
析 した 結 果,
条 体 の ドー パ ミン, ジ ヒ ドロ キ シ フ ェニ ル酢 酸 お よび ホ
メペ リジ ンに 混 入 して い る MPTP
定 され, “Psychiatry Research”
MPTP
が 同
の報 告 と 比 較 し て,
が パ ーキ ン ソ ン病 の 原 因 で あ る こ とが 示 唆 され
た 。 こ の結 果 は, Langston
され, 現 在, MPTP
ら^<6)>
に よ って Science
に報 告
に よ るパ ー キ ン ソ ン病 の分 子 レベ
を マ ウス に 投 与 す る と, サ ル と同様 に 線
モバ ニ リ ン酸 の 減 少,
[^<3>H]
ドー パ ミン の シナ プ トソー
ムへ の取 込 み の減 少, さ らに 黒 質 神 経 細 胞 が消 失 す る こ
とを報 告 した 。 これ ら の結 果 は, マ ウス で MPTP
の投
与 に よっ て 黒 質条 体 ドーパ ミ ンニ ュー ロ ンが変 性 した こ
ル で の原 因解 明, お よび そ れ に基 づ く新 しい治 療 につ い
とを示 唆 して い る。 マ ウ ス は MPTP
て活 発 な研 究 が 行 なわ れ て い る。
サ ル に 比べ て 低 い も の の, 生 化 学 的 お よび組 織 学 的変 化
に対 す る感 受 性 は
は サ ル お よび ヒ トの パ ー キ ン ソ ン病 と 類 似 し て お り,
.
MPTP
MPTP
に よ るパ ー キ ン ソ ン病 モ デ ル
の作 用 を研 究 す るた め の有 用 な 動 物 モ デ ル で あ
る。
Burns
ら^<13)>
は,
key)に5∼8日
MPTP
を ア カ ゲザ ル
(rhesus
間 に わ た り静 脈 注 射 し た 結 果,
mon
パーキ
ま た Barbeau
ら^<24)>は,
カエ ル, サ ン シ ョウ ウオ を用 い
た ユ ニー クな 動 物 モ デ ル を報 告 して い る。 特 に, カエ ル
ン ソ ン病 様 の 症 状 を 発 生 さ せ る こ と に 成 功 し た 。MPTP
は サ ル と同 程 度 の少 量 の MPTP
を 投 与 さ れ た サ ル は,
跳 ね る こ とが で き な くな り, 脳 の カテ コ ール ア ミン も著
rigidity),
closure),
振戦
無動
(postural
tremor),
よ だ れ (drolling)
に み られ る 症 状 を 呈 し,
復 した 。 ま た,
(akinesia),
固 縮 (筋 強 剛:
眼瞼閉鎖
(eyelid
な ど ヒ トの パ ー キ ン ソ ン病
こ れ ら はL-ド
ー パ の投 与 で 回
黒 質 緻 密 層 神 経 細 胞 は10%以
下 に消 失
し, 線 条 体 の ドー パ ミ ン お よ び そ の 主 代 謝 物 の ホ モ バ ニ
リ ン酸 も 減 少 し て い た 。MPTP
に よっ て サ ル お よび ヒ
トに 発 症 した パ ー キ ン ソ ニ ズ ム は,
次 の 点 で 自然 発症 の
パ ー キ ン ソ ン病 と き わ め て 類 似 し て い た 。
を投 与 す る と, 上 手 に
し く減 少 す る。 また, 皮 膚 の 色 が 暗 く変 色 す るた め 目で
変 化 を 見 る こ とが で き る。MPTP
が メ ラ ニ ン含 有 細 胞
の 色 素 沈着 の 調 節 に 影 響 を与 え る こ と は, 皮 膚 の メ ラ ニ
ン と黒 質 の ニ ュ ー ロメ ラニ ンの 生 成 過 程 に 多 くの類 似 点
が あ る こ とか ら も興 味 深 い現 象 で あ る。
in vitro
で MPTP
の作 用 を研 究 す るた め の モデ ル と
して は, ラ ッ ト胎 児 の 中脳 の組 織 培 養 の系 が 報 告 され て
い る^<25)>。MPTP を加 え て培 養 す る と ドーパ ミ ン細 胞 体
399
14
蛋 白 質
の 消 失,
核 酸
酵 素
Vol. 31
No. 5
(1986)
[^<3>H]ドーパ ミン の 取 込 み の 減 少 な どが 観 察 さ
れ, in vitro
で も MPTP
が ドーパ ミン ニ ュ ー ロ ンを 選
択 的 に 破 壊 す る こ とが 示 され て い る。
この よ うに MPTP
の発 見 に よっ て サ ル, マ ウス, カ
エ ル な ど さ ま ざ ま な動 物 を 用 い て パ ーキ ン ソン病 モデ ル
動 物 の 作 製 が 可 能 に な った 。 で は, MPTP
は どの よ う
な機 構 で ドー パ ミン ニ ュー ロ ンを 選択 的 に 変 性 させ る の
で あ ろ うか 。
図2.
II.
MPTP
の 代
謝
Chiba
ら^<26)>は,MPTP
2, 3, 6-tetrahydropyridine,
MPDP^<+>:
1-methyl-4-phenyl-2,
3-dihydropyridinium
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ion;
こ の 変 換 が, B型
MPP^<+>
と 略 記)
に代
III.
い だ し た 。 次 い で Markey
ら^<27)>
は, マ ウ ス お よ び サ ル の
よ り MPP^<+>
パ ー ジ リ ン が in vivo
が 生 成 され る こ
で MPTP
に よ る ドー パ ミ ンニ コー ロ ン
さ らに
脳 で 静 脈 注 射 した
MPTP
MPTP
の生 化 学 的 変 化
モ ノ ア ミ ン酸 化 酵 素 阻 害 剤 の
が モ ノ ア ミ ン酸 化 酵 素 活 性 を 阻 害 す る こ と を 見
と を 証 明 し,
のMPP^<+>
へ の 酸 化 を 抑 制 す る こ と を 示 し た 。MPP^<+> の 生 体 内 で の
MPTP
の 黒 質 線 条 体 ドー パ ミ ン ニ ュ ー ロ ン に 対 す る
生 化 学 的 効 果 と し て,
(1)
次 の よ う な 知 見 が あ る。
メ ラ ニ ン に 親 和 性 を も つ^<37)>。
(2)
ジ ヒ ド旨 プ テ リ ジ ン還 元 酵 素 を 阻 害 す る^<38,39)>。
(3)
MPTP
結 合 部 位 が 線 条 体 に あ り, MPTP
半 減 期 は マ ウ ス に 比 べ て サ ル の ほ うが 長 く^<22)>,
こ の差 は
異 的 に 結 合 す る^<40,
41)>。後 に な り,
サ ル と マ ウ ス の MPTP
ノ ア ミ ン酸 化 酵 素^<42∼46)>。
とわ か った 。
い る 。MPTP
に 対 す る 感 受 性 の 差 と 並 行 して
投 与 に よ っ て 起 こ る 異 質 の 細 胞 変 性 や,
ドー パ ミ ンお よ び3,
4-ジヒド
少 な ど の 慢 性 毒 性 も,
B型
(4)
ロキ シ フ ェニ ル 酢 酸 の 減
MPP^<+>
り込 ま れ る^<47∼51)>。
の 代 謝 は そ の毒 性 発 現 に 必 須 で あ る と考 え られ る に至 っ
パ ミ ン ニュー
た 。 そ の 後,
る。
詳 細 な 研 究 が 行 わ れ, 中 間 体 と し て1-メ
ェ ニ ル-2, 3-ジ
methyl-4-phenyl-2,
と 略 記)
う に,
3-dihydropyridinium
Chiba
MPTP
MPTP→MPDP^<+>
ion;
の 代 謝 は 図2で
MPDP^<+>
示 した よ
の ス テ ップ が モ ノ ア ミン酸 化 酵
素 に よ っ て 触 媒 さ れ,
い ず れ も MPTP
MPDP^<+>
は 生 理 的 pH
で非 酵 素 的
へ と 変 換 さ れ る こ と が 明 らか と な っ た^<30∼32)>。
ら は ^<32)>
MPDP^<+>
し や す い こ と を 示 し て,
が不均化
MPTP
(disproportionation)
が モ ノ ア ミン酸 化 酵 素
1.
メ ラニ ンに 対 す る親 和 性
こ と は よ く知 られ て い る。 マ ンガ ンは メ ラ ニ ンに高 い親
和 性 を も って い る こ とか ら, MPTP
した メ ラ ニ ンお よび 合 成 した ドーパ ミ ンメ ラ ニ ンに結 合
し, お の お の2つ 以 上 の結 合 部 位 を も っ て い る こ とが 明
らか にな った 。Lyden
シル 基 に, MPTP
る と と も に,
MPDP^<+>
が 生 成 す る こ と を 推 定 した 。
が モ ノ ア ミン酸 化 酵 素 を阻 害 す
ら^<37)>
メラ
は ニ ンの遊 離 の カ ル ボキ
の プ ラ ス に荷 電 した 窒 素 原 子 が 結 合
す る と推 定 して い る。
自殺 基質 とな っ て モ ノ ア ミン酸 化 酵 素 を 不
活 性 化 す る こ とが 報 告 さ れ て い る^<33∼36)>。
2.
Blair
ジ ヒ ドロプ テ リ ジ ン 還 元 酵 素 の 阻 害
ら^<38)>
に よ る と,
MPTP
ジ ヒ ド ロプ テ リ ジ ン 還 元 酵 素
400
の メ ラ ニ ンに対 す
る親 和 性 が 調 べ られ た^<37)>。MPTP は ウ シ の 目か ら 単 離
起 こ し得 る中 間 体
MPTP
し て い
マ ン ガ ン中 毒 に よ っ てパ ー キ ン ソ ン病 様 症 状 が 起 こ る
に よ っ て 代 謝 さ れ る こ と に よ り, 酸 化 還 元 反 応 を 容 易 に
さ ら に 最 近,
の黒 質 線 条 体 ドー
ロ ンへ の 選 択 的 毒 性 の 機 構 と関 連
ヒ ド ロ ピ リ ジ ニ ウ ム イ オ ン (1-
が 同 定 さ れ,
にMPP^<+>
チ
こ の結 合 部 位 は モ
が 選 択 的 に ドー パ ミ ン ニ ュ ー ロ ンへ 取
こ れ ら の 成 績 は,
MPTP
が特
ドー パ ミ ン の 再 取 込 み を 阻 害 す る^<47∼51)>。
(5)
モ ノ ア ミン酸 化 酵 素 阻 害 剤 の
前 処 置 で 防 止 で き る^<28,29)>。
こ れ ら の こ と か ら,
ル-4-フ
ion,
ion
ェ ニ ル ピ リ ジ ウ ム イ オ ン (1-
デ プ レ ニ ル お よ び パ ー ジ リ ン で 阻 止 さ れ る こ と,
MPTP
1-methyl-4-phenyl-pyridinium
が ラ ッ トの ミ ト コ ン ド リ ア 画
チ ル-4-フ
methyl-4-phenylpyridinium
謝 さ れ,
の モ ノ ア ミン 酸 化 酵 素 に よ る 代 謝
1-methyl-4-phenyl-1,
MPP^<+>:
分 に よ っ て1-メ
MPTP
MPTP:
は ラ ッ ト肝 よ り精 製 した
(dihydropteridine
redutase;
ドー パ ミン神 経 毒 メチ ル フ ェ ニ ル テ トラ ヒ ドロ ピ リジン に よる パ ー キン ソン 病 の 発 症 機 構
DPR
と略記) を 低濃 度 (K_i 値 が 数 μM) で 阻害
す る と して い る。これ に対 し, Abell ら^<39)>
は MPTP
る DPR
の50%阻
害 濃 度 は比 較 的 高 く, 数 mM
によ
らの成 績 か ら MPP^<+> が ドーパ ミ ンの再 取 込 み機 構 に よ
っ て ドーパ ミン ニ ュー ロ ン に選 択 的 に取 り込 ま れ, 蓄 積
ト線 条 体 可 溶 性 画分 を酵 素標 品 と して, チ トク ロ ムc法
で も DPR
込 み は, Na^<+>依 存 性 で ウ アバ イ ン で阻 害 され た^<54)>。
これ
であ る
と報 告 して い る。筆 者 らは低 分 子 分 画 を カ ッ トした ラ ッ
で 測 定 した が, MPTP
お よび MPP^<+> は そ れ ぞ れ100μM
を阻 害 しな か った 。
す る こ とが 明 らか にな った 。
さ ら に MPTP
に よ る ドーパ ミンニ ュー ロ ンの 障 害 に
ドーパ ミンの再 取 込 み 機 構 が 関 与 し て い る こ と が in
vivoで も証 明 さ れ た。 す な わ ち, マ ウス に 種 々の ドーパ
ミン取 込 み 阻 害 剤 を前 投 与 す る と, MPTP
3.
MPTP
ら^<40)>
お よ び Wieczorek
bladと
ら ^<41)は,[^<3>H]MPTP
Carlsson^<56)>
は MPTP
投 与 に よ る ドーパ ミ ンお
が ヒ トお よび ラ ッ ト脳 膜 画 分 に 特 異 的 に 結 合 す る こ と を
よび そ の代 謝 物 (3-メ トキ シ チ ラ ミン, ジ ヒ ドロキ シ フ
見 い だ し, MPTP
ェニ ル酢 酸, ホ モ バ ニ リン酸) の 減 少 が ドーパ ミ ン取 込
MPTP
の 受 容 体 の 存 在 を 推 定 した 。[^<3>H]
の オ ー ト ラ ジ オ グ ラ フ ィ ー を 行 な う と,
で は [^<3>H]MPTP
分 布 し,
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に よ る ドー
パ ミン ニ ュ ー ロ ンの障 害 を 阻止 で き る^<55∼60)>。
特 に pile
結合部位
Javitch
15
は 尾 状 核,
ヒ ト脳
黒 質 お よび 青 斑 核 に多 く
ラ ッ ト脳 で は 視 床 下 部 に 多 く, 線 条 体 お よ び 黒
質 に は 中 程 度 の分 布 が 見
vitchら
ら れ た に す ぎ な か っ た 。Ja
は こ の 成 績 が ヒ ト と ラ ッ トの MPTP
に対 す る
感 受 性 の 差 を 説 明 し て い る と し た 。 し か し,
究 に よ り [^<3>H]
MPTP
の 結 合 部 位 は,
そ の後 の研
実 は モ ノ ア ミン
み 阻 害 剤 (マ ジ ン ドー ル, ノ ミフ ェ ン シ ン, GBR
込 み 阻 害剤 maprotiline
MPTP
は効 果 が な い こ とを 示 した 。
ま た は MPP^<+> の ドーパ ミ ンニ ューロ ンへ の取
込 み が 細胞 変 性 に 必 須 で あ る とす る と, (1) MPTP
はグ
リア細 胞 で MPP^<+> に 代謝 され た あ と に取 り込 ま れ るの
か^<53)>,
また は (2)MPTP
と して 取 り込 まれ て ドー パ ミン
ニ ュ ー ロ ン内 で MPP^<+> に酸 化 さ れ るの か^<61)>,
とい う こ
酸 化 酵 素 で あ る こ と が 明 ら か に な っ た^<42∼46)>。
とが 問 題 とな る。 図3は,
4.
13098)
で完 全 に 回復 す る こ と, ノル ア ド レナ リ ンに選 択 的 な取
MPTP
が グ リア 細 胞 の モ ノ
ア ミン酸 化 酵 素 で MPP^<+> に 酸 化 され, MPP^<+> が ドーパ
ドー パ ミ ン 再 取 込 み の 阻 害
や ラ ッ トお
ミ ンニ ューロ ンへ 取 り込 まれ て 細 胞 を 障 害 す る (1)の仮
よ び マ ウ ス 線 条 体 の シ ナ プ ト ソ ー ム^<48∼50)>
へ の [^<3>H]ド ー
説 を, 模 式 化 した も の で あ る。 図3の 仮 説 を 支 持 す る知
パ ミ ン の 取 込 み を 阻 害 す る 。 ま た,
ドー
見 と して, グ リア の モ ノ ア ミ ン酸 化酵 素 はB型
よ り
と, MPP^<+> が 能 動 的 に ド ー パ ミンニ ュー ロ ンに 取 り込
MPTP
は ラ ッ ト褐 色 細 胞 腫 細 胞PC12^<47>
パ ミ ン の 取 込 み を 阻 害 し,
も 強 力 で あ る^<49,50)>。
ま た,
MPP^<+>も[^<3>H]
その阻害作用は
MPTP
MPTP
の 誘 導 体4-フ
ェ ニル ー
1-エ チ ル-4-フ
ェ ニル ー
1, 2, 3, 6-テ
ト ラ ヒ ド ロ ピ リ ジ ン,
1, 2, 3, 6-テ
トラ ヒ ド ロ ピ リ ジ ン お よ び1-プ
フ ェ ニ ル-1, 2, 3, 6-テ
ロ ピ ル-4-
ト ラ ヒ ド ロ ピ リ ジ ン も [^<3>H]ドー パ
ミン の 取 込 み を 阻 害 す る^<47)>。
であ る こ
まれ る こ と, MPP^<+> を直 接 投 与 して も ドーパ ミン ニ ュ ー
ロ ンが 障 害 され る こ と (MPP^<+> の 作 用 に つ い て は次 節 で
述 べ る), な どが あ げ られ る。
MPP^<+> の 細胞 毒 性 の 機 序 は 明 らか で は な い が, ドー パ
ミン神 経 細 胞 内 の酸 化還 元物 質 (た と えば ドー パ ミン)
よ り, MPP^<+> を介 して 電 子 が 酸 素 に移 動 し, O_2^<->
が 生成
5.
MPP^<+>
の ドー パ ミ ン ニ ュ ー ロ ン へ の 取 込 み
(蓄
MPTP
MPP^<+>に
与 後72時
され て細 胞 を 障 害す る との 仮 説 が あ る (図3)。 他 方, 図
3の 仮説 と異 な って,
積)
を サ ル に投 与す
代 謝 さ れ る が,
る と,
黒質の
MPTP
MPP^<+>
は 速 や か に
は MPTP
の投
間 に わ た っ て 増 加 す る^<51)>。MPP^<+>が ドー パ ミ
ン ニ ュ ー ロ ン に 蓄 積 す る こ と は,
ー ム を 用 い て in vitro
脳 各 部 位 の シ ナ プ トソ
で も観 察 さ れ た^<52)>
。[^<3>H] MPP^<+>
の ラ ッ ト線 条 体 シ ナ プ ト ソ ー ム へ の 取 込 み は,
ン の 再 取 込 み 阻 害 剤 で 阻 害 さ れ,
ドー パ ミ
種 々 の 取 込 み 阻 害 剤が
[^<3>H]MPP^<+> 取 込 み に 及 ぼ す 阻 害 効 果 と, [^<3>H] ドー パ
ミ ン取 込 み に 及 ぼ す 阻 害 効 果 が 非 常 に よ く 相 関 し て い
た^<52,53)>。[^<3>H]
MPP^<+>
の マ ウ ス脳 シ ナ プ トソー ムへ の取
MPTP
が 直 接 ドー パ ミン ニ ュー
ロ ンへ と取 り込 ま れ て モ ノ ア ミ ン酸 化 酵 素 (A型)
り酸 化 さ れ,
ま ず 中 間 体 MPDP
によ
が 生 成 して, さ ら に
MPDP^<+> が MPP^<+> に酸 化 さ れ る と と も に, 不 均 化 反 応
で MPTP
に戻 る こ とか ら, 強 力 な oxidation center が
生 じて 細 胞 を 障 害 す る とい う(2)の仮 説 も あ る。 こ れ を支
持 す る成 績 と して, Chiba
や す い こ とを示 し, MPTP
ら^<32)>
は MPDP^<+>
が不 均 化 し
が モ ノア ミン酸 化 酵 素 に よ
っ て代 謝 さ れ る こ とに よ り, 酸 化還 元 反 応 を 容 易 に起 こ
し得 る中間 体
(MPDP^<+>)
が 生 成 す る こ とを 指 摘 して い
る。
401
16
現 時 点 で は最 終 的 に神 経 変 性 を起 こす 物 質 は未 定 で あ
るが, MPDP^<+>, MPP^<+> あ る い は未 知 の MPTP
代謝物
パ ミン ニ ュー ロ ンの 障 害 に 拮 抗 し な い^<58)>
Mytilineou
ら^<63)>
は,
ラッ ト胎 児 の脳 の組 織 培 養 の モ デ ル を 用 い て
な どが 想 定 され て, MPDP^<+> や MPP^<+> が ドー パ ミン と
MPP^<+> が MPTP
反 応 す るか 否 か な どの研 究 も行 なわ れ て い る。
障 害 す る こ とを 示 した 。
MPTP
IV.
MPP^<+>
の 神 経 毒 性^<62,66)>
よ り低 濃 度 で ドー パ ミン ニ ュ ー ロ ンを
の毒 性 は MPP^<+> へ の代 謝 を モ ノ ア ミン酸 化酵
素 阻 害剤 で 阻 害す る こ とに よ り防 止 で き るの に 対 して,
MPP^<+> の毒 性 は モ ノア ミン酸 化 酵 素 阻 害剤 に よ り む し
MPP^<+> は血 液 脳 関 門 を通 りに くい た め腹 腔 内, 皮 下 お
ろ増 強 さ れ るこ とが報 告 され て い る^<64)>。
デ プ レ ニル を処
よび 静 脈 内投 与 で は黒 質 線 条 体 ドー パ ミ ンニ ュー ロ ンは
置 した マ ウス に MPP^<+>を 脳 室 内投 与 す る と, 線 条体 だ
障 害 され な いが^<62,65)>,
Cavalla ら^<62)>
はMPP^<+> を マ ウ ス に
け で な く辺 縁 系 の ノ ル ア ドレナ リ ン, ドー パ ミンお よび
脳 室 内 投 与 す る と, 線 条 体 の ドーパ ミ ンが 減 少 す る こ と
そ の 代謝 物, セ ロ トニ ンお よ び5-ヒ
を 示 し, MPTP
へ 酸 化 され る 過 程 よ り も
MPP^<+> そ の もの が 神 経 毒 性 の 原 因 で あ る と報 告 し た 。
よ うに な る。 こ の結 果 は モ ノ ア ミ ン酸 化 酵 素 阻害 剤 の パ
彼 らは MPTP
ーキ ン ソ ン病 治 療 薬 と して の可 能 性 と危 険 性 の双 方 を示
がMPP^<+>
お よび MPP^<+> が 線 条 体 の ア セ チ ル コ リ
ンを増 加 させ る こ とを見 いだ し, MPTP
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ドロキ シイ ン ドー
ル酢 酸 な どが 減 少 し, 障 害 が 広 範 囲 にわ た って み られ る
の 神経毒性 に
す も の で あ ろ う。 図3に 示 す よ うに, MPP^<+> が ドー パ ミ
ア セ チ ル コ リン ニ ュー ロ ン の関 与 を 示 唆 して い る。 しか
ン神 経 細 胞 の 中 で未 知 の酸 化 還 元 物 質 (た とえば ドー パ
し, ア トロ ピ ン な どの抗 コ リ ン剤 は MPTP
ミ ン) よ り電 子 を受 け て, O_2よ りO_2^<->
を生 成 し細 胞 障
に よ る ドー
害 を起 こす との仮 説 が あ るが, こ の仮 説 に よれ ば, モ ノ
ア ミ ン酸 化 酵 素 の阻 害 剤 は神 経 細 胞 内 ドー パ ミンの濃 度
を上 昇 させ て MPP^<+> の細 胞 毒 性 を高 くす る と推 定 され
る。
MPP^<+> 自体 に 神 経 毒 性 が あ る のか, MPP^<+> の代 謝 物
な い し, O_2^<->
の よ うな MPP^<+> に よ る反 応 生 成 物 が 神 経
毒 で あ る のか は今 後 の研 究 に残 され て い る。
V.
MPTP
に よ る ラ ッ ト脳 ス ラ イス チ ロ シ ン
水 酸 化酵 素 系 の阻 害
チ ロ シ ン水 酸 化 酵 素^<67)>
は,
周 知 の よ うに チ ロシ ンの ド
ー パ へ の 酸 化 反 応 を 触 媒 す る が,
補 酵 素 の テ トラ ヒ ド ロ
ビ オ プ テ リ ン も 同 時 に キ ノ ノ イ ド ジ ヒ ドロ ビ オ プ テ リ ン
に 酸 化 さ れ る。 こ の 酸 化 型 ビ オ プ テ リ ン は ジ ヒ ド ロ ブ テ
リ ジ ン 還 元 酵 素 に よ っ て,
ン に 再 還 元 さ れ る (図4)。
再 び テ トラ ヒ ドロ ビ オ プ テ リ
ラ ッ ト脳 条 体
ドーパ ミン ニ
ュ ー ロ ン の ジ ヒ ド ロプ テ リ ジ ン還 元 酵 素 は NADH
性 で あ る か ら^<68)>,
NADH
に 関 与 し て い る 。 ま た,
テ トラ ヒ ドロ ビオ プテ リンは ド
ー パ ミ ン ニ ュ ー ロ ン 内 で も, Masada
う に,
グ ア ノ シ ン三 リ ン酸
推 定 さ れ る 。 図4の
GTP
(GTP)
ィ ス プ ロプ テ リ ン
図3. MPTP のドーパミン神経毒の作用機序の一仮説
402
蛋白質 核酸 酵素 Vol. 31 No. 5 (1986)
(dyspropterin)
は inaccessible
ら^<69)>
の提唱す るよ
よ り生 合 成 さ れ る と
よ りテ ト ラ ヒ ド ロ ビ オ プ テ リ
ン に 至 る 生 合 成 経 路 の 中 間 体 は,
(dyspro
依存
再 生 系 もチ ロ シ ン水 酸 化 反 応
Masada
ら^<69)>
に よ りデ
の名 称 が提 唱 され た
の 意 味 で あ る)。 筆 者 ら は,
これ
ら の チ ロ シ ン 水 酸 化 酵 素 系 の す べ て の 因 子 を 含 む in
17
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ドーパ ミン神 経 毒 メ チ ル フ ェニ ル テ トラ ヒ ドロ ピ リジン に よ るパ ー キン ソン 病 の 発症 機 構
図4.
カテ コー ル ア ミン細 胞 で の カテ コー ル ア ミン とチ ロ シン 水 酸 化 酵 素 の 補 酵 素
テ トラ ヒ ドロ ビオ プ テ リン の生 合成
403
18
蛋 白 質
核 酸
酵
素
Vol. 31
No. 5
(1986)
図6.
MPTP
に よ るチ ロシン 水 酸 化 酵 素 系 の 阻 害 に 及 ぼ
す モ ノ ア ミン酸 化 酵 素 阻害 剤 パ ー ジ リン の影 響
パ ー ジ リン は50μM,
MPTP
は10μM,
パ ー ジ リン+
MPTP
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表1.
図5.
は50μM+10μMを
使用。
MPTP
に よる ラ ッ ト脳 ス ラ イ ス チ ロシン 水 酸 化 酵
素 系 の阻 害 の脳 部 位 に よ る比 較 (^<**>p<0.01>
MPTP
お よび MPP^<+> に よ る ラ ッ ト線 条 体 ス ライ ス
チ ロ シン 水 酸 化 酵 素
situ の 系 と して, 線 条体 な どの脳 各 部 位 の組 織 ス ラ イス
系 を用 い る方 法 を確 立 した^<70)>。
この 脳 ス ライ ス系 で は 基
質 チ ロシ ンを は じめ, チ ロ シ ン水 酸 化酵 素, テ トラ ヒ ド
MPP^<+> に 代 謝 され る。MPTP「
ロビ オ プ テ リ ン, ジ ヒ ドロプ テ リジ ン還 元酵 素, テ トラ
チ ロ シ ン水 酸 化 酵 素 系 の阻 害 も, モ ノ ア ミン酸 化酵 素 阻
ヒ ドロ ビオ プ テ リン生 合 成酵 素 系, NADH
害 剤 パ ー ジ リンに よ っ て回 復 した (図6)。
ュー ロ ン 自己 受 容 体 (autoreceptor)
再 生系,
ニ
な どの チロ シ ン水
に よ る線 条 体 ス ラ イ スの
この 結果 は,
マ ウ スや サ ル に パ ー ジ リンや デ プ レニル (モ ノ ア ミン酸
酸 化 酵 素 系 のす べ て の 因 子 を 生理 的 状 態 に 近 い濃 度 で 含
化酵 素 阻 害 剤) を 処 置 す る と MPTP
ん で お り, 生 理 条 件下 の pH7.2
る とい う成 績 と一 致 してい る。MPP^<+> は 10^<-6>Mの低 濃`
で, 芳 香 族L-ア
ミノ酸
の 慢 性毒 性 を 防 げ
脱 炭 酸 酵 素 の 阻 害 剤 の 存 在下 で チ ロ シ ンか ら生 成 す る ド
度 で も ドーパ の生 成 を50%近
ー パ を高 速 液 体 ク ロマ トグ ラ フ ィ ー/電 気 化 学 検 出 法 で
さ らに 強 力 な 阻 害 作 用 を 示 し た
測 定 で きる。 本 法 を 用 い て ドーパ ミン神 経 毒 MPTP
MPP^<+> の作 用 はパ ー ジ リ ンで は 回復 しなか った (図7)。
の
チ ロシ ン水酸 化 酵 素 系 に 及 ぼ す 影 響 を調 べ た^<71,72)>。
MPTP
は線 条体 ス ライ ス系 の ドーパ 生 成 を 用量 依 存
性 に 阻 害 し, 10^<-4>Mで は 70∼80%
の阻 害 を示 した (図
した が って,
MPTP
く阻 害 し, MPTP
(図5)。
よ りも
ま た,
この
は 線 条 体 ス ラ イス の モ ノ ア ミン酸
化酵 素 で MPP^<+> に 代謝 され, MPP^<+> が ドーパ 生 成 を 阻
害 して い る と考 え られ る。 しか し, MPP^<+> が どの よ うな
5)。 とれ に対 し線 条 体 ホモ ジネ ー トを 酵 素 材 料 と して,
機 構 で チ ロ シ ン水 酸 化 反 応 系 を 阻 害 して い るか は, まだ
基 質 チ ロ シ ン, 人 工 補 酵 素6-メ
チ ル テ トラ ヒ ドロ プテ
明 らか では な い 。MPP^<+> は ウ シ副 腎 か ら均 一 に精 製 した
で 測 定 した V_<max> に は
チ ロ シ ン水 酸 化酵 素 お よび ラ ッ ト線 条 体 の ホモ ジネ ー ト
は10^<-4>M の 高 濃 度 で も ま った く影 響 し な か っ
を 酵 素 材 料 と して, 基 質 チ ロ シ ン, 人 工 補 酵 素6-メ チ ル
リンを飽 和 させ て 最 適 pH6.0
MPTP
た。 こ の MPTP
に よ る組 織 ス ラ イ ス チ ロ シ ン水 酸 化酵
テ トラ ヒ ドロプ テ リン を飽 和 さ せ て測 定 した V_<max> に
素系 の 阻 害 は, 線 条 体 で最 も著 明 で あ り, ドーパ ミン ニ
は10^<-4>M の高 濃 度 で も影 響 しなか った 。 した が っ て,
ュー ロ ンが比 較 的 多 い 側 坐 核 で はや や 阻 害 が 低 く, ノル
MPP^<+> が 酵 素 を直接 に阻 害 して い る可 能 性 は除 外 で き
ア ドレナ リ ンニ ュ ー ロ ンの豊 富 な 視 床下 部 で は 阻 害 は軽
る。また, この脳 ス ライ ス 実験 系 でMPP^<+> の よ うに低 濃
度 で あ った (表1)。
度 で ドーパ 生 成 を阻 害 す る薬 物 と して,
こ の成 績 は, サ ル に MPTP
を投 与
ドーパ ミ ンア ゴ
した場 合 に, 障 害 が ドーパ ミン ニ ュ ー ロ ンこ とに 黒 質 線
ニ ス トが あげ られ る。 こ の ドーパ ミ ンア ゴ ニ ス トに よ る
条体 系 で最 も著 明 で あ る との成 績 とよ く一 致 してい る。
阻 害 作 用 は,
前 述 の よ うに,
404
MPTP
は モ ノ ア ミ ン酸 化 酵 素 に よ り
ドーパ ミ ンア ンタ ゴ ニ ス トに よ っ て完 全 に
回 復 す るが, MPP^<+> の作 用 は ドーパ ミ ンア ンタ ゴ ニ ス ト
ドー パ ミシ神 経 毒 メチ ル フ ェ ニル テ トテ ヒ ドロ ピ リジン に よ るパ ー キン ソン 病 の 発 症 機 構
19
の ス ル ピ リ ドで 回 復 しなか った (図8)。
した が って, MPP^<+> が ドー パ ミン 自 己 受
容 体 を 介 して神 経 外 よ りチ ロ シ ン水 酸 化 酵
素 系 を阻 害 す る可 能 性 も否 定 され た 。 と こ
ろが MPTP
に よ るチ ロ シ ン水 酸 化 酵 素 系
の阻 害 は ドーパ ミ ン取 込 み 阻 害 剤 の ノ ミフ
ェ ンシ ンで 回 復 す る (図9)。
ピ リジ ニゥ
ム イ オ ン誘 導 体 に よ る ドーパ 生 成 の阻 害 も
ノ ミフ ェ ンシ ンで回 復 す る こ とを 合 わ せ て
考 え る と, MPTP
れ た の ち,
は主 に MPP^<+> に 代 謝 さ
ドーパ ミン ニ ュ ー ロ ンに取 り込
まれ て チ ロシ ン水 酸 化 酵 素 系 を阻 害 す る も
図9.
MPTP
の チ ロ シン 水 酸 化 酵 素 系 の阻 害 に及 ぼ す ドー パ ミン取 込
み 阻 害 剤 ノ ミフ ェン シン の 影 響
ノ ミフ ェン シン は10μM,
は 10μM+10μM
の と考 え られ る。
MPTP
は10μM,
ノ ミフ ェン シン+MPTP
を使 用 。
とい う目的 で, 種 々 の ピ リジ ニ ウ ム イ オ ン (図10)
およ
び そ の還 元 体 を 合 成 し 〔
杉 村 ・武 井 (東工 大) と共 同 〕,
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VI.
MPP^<+> お よび MPTP
の誘 導 体 に よ る
ラ ッ ト線 条体 チ ロ シ ン水 酸 化 酵 素 の阻 害
ラ ッ ト線 状 体 チ ロ シ ン水 酸 化 酵 素 系 へ の 影 響 を 調 べ
た^<73,74)>。MPP^<+>
の4位 の フ ェ ニ ル基 を水 素 (A).
基 (B),
筆 者 らは, (1)MPP^<+> よ り強 い 阻 害物 質 を 見つ け る, (2)
ドー パ生 成 の 阻 害作 用 と構 造 活 性 相 関 を 明 らか にす る,
あ る い は メ トキ シ カ ル ボ ニ ル基 (C)
メチ ル
で置換 し
た ピ リジ ニ ウ ム イ オ ンは10^<-5>M で阻 害 活 性 を 示 さな か
っ た 。 した が って, 4位 の フ ェ ニ ル基 は非 常 に重 要 で あ
る と考 え られ る。 また, MPP^<+> と構 造 の非 常 に よ く似 て
い るパ ラ コー ト (D)
も10^<-7>M∼10^<-3>M
で ま っ た く ドー
パ生 成 を 阻 害 しな か った 。 カナ ダ の Barbeau
ら^<75)>
は農薬
の使 用 量 とパ ー キ ン ソ ン病 の発 生 率 に相 関 が あ る とい う
デ ー タ を発 表 して議 論 を 呼 ん で い るが^<76)>,
筆 者 らの成 績
で は, パ ラ コー トはMPP^<+>
の よ うな ドー パ ミン ニ ュー
ロ ンに特 異 的 な チ ロ シ ン水 酸 化 反 応 の 阻害 作 用 を示 さな
か った。
図7.
MPP^<+> に よる チ ロシン 水 酸 化 酵 素 系 の阻 害 に及 ぼす
パ ー ジ リンの 影 響
パ ー ジ リンは50μM,
MPP^<+> は10μM,
パ ー ジ リン+
MPP^<+>は50μM+10μM
を使 用 。
MPP^<+> の1位 の メチ ル基 を エ チ ル 基 (E)
で置 換 した
場 合 は MPP^<+> と同程 度 の 阻 害 作 用 を もち,
プ ロ ピル 基
(F)
また は イ ソ プ ロ ピル基
(G)
で置 換 し た 場 合 は
MPP^<+> に比 べ て 阻 害 作用 は 弱 くな った 。
MPP^<+> の フ ェ ニル 基 のp位
シ基 (I)
に メチ ル 基 (H)
や メ トキ
を 導 入 した場 合 も MPP^<+> と同程 度 の 阻 害 作
用 を示 した 。
4位 の フ ェ ニル 基 を2位
(J)
あ る い は3位
(K)
に
動 か した場 合 で も, 濃 度 依 存 性 の阻 害 作 用 を示 した。 フ
ェニ ル基 の位 置 は4位>3位>2位
の順 で 阻害 作 用 が 強
か っ た。
フ ェニ ル基 の位 置 が 必 ず しも4位 で あ る必 要 が な い こ
とか らN-メ
チ ル イ ソキ ノ リニ ウ ム イ オ ン (L)
チ ル キ ノ リニ ウ ム イ オ ン (M)
図8.
MPP^<+> に よ るチ ロシン 水 酸 化 酵 素 系 に 及 ぼす ドー
パ ミン 自 己受 容 体 アン タ ゴ ニ ス ト, スル ピ リ ドの 影 響
ス ル ピ リ ドは10μM,
MPP^<+> は 10μM+10μM
MPP^<+> は10μM,
を使用。
ス ル ピ リ ド+
10^<-5>
M∼10^3M
(M)
とN-メ
の効 果 を 調 べ た 。(L)
は
で ドー パ 生 成 を 濃 度 依 存 性 に阻 害 した が,
は10^<-5>M で 阻 害 作 用 を 示 さ なか った 。
以 上 の結 果 か ら種 々の ピ リジ ニ ウ ム イ オ ンが ドー パ 生
405
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20 蛋白質 核酸 酵素 Vol. 31 No. 5 (1986)
図10.
筆 者 ら,^<73,74)>
の合 成 検 索 した MPP^<+> の誘 導 体 の 構 造
ェニ ル-1, 2, 3, 6-テ
ン
(EPTP)
お よ び1-プ
ェ ニ ル-1, 2, 3, 6-テ
ン (PPTP)
トラ ヒ ド ロ ピ リ ジ
ロ ピ ル-4-フ
トラ ヒ ド ロ ピ リ ジ
は10^<-4>M
でも 有 意な阻
害 作 用 を 示 さ な か っ た 。(J),
(K)
の
還 元 体 も 同 様 で あ っ た 。 こ の 結 果 は,
こ れ ら の 還 元 体 が モ ノ ア ミ ン酸 化 酵 素
の 基 質 に な りに く い た め と 考 え ら れ
る 。Heikkila
お よ び PPTP
図11.
1-methyl-2-phenylpyridinium
iodide
に よ る チ ロ シン 水 酸 化 酵 素 系
に 及 ぼ す ドー パ ミン 取 込 み 阻 害 剤 ノ ミ フ ェン シン の 効 果
ノ ミ フ ェン シン は5μM,
1-methyl-2-phenylpyridinium
フ ェン シン+1-methyl-2-phenylpyridinium
iodide
成 を 阻 害 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。1-メ
ニ ル ピ リ ジ ニ ウ ム イ オ ン (J)
iodide
は
5μM+5μM
チ ル-2-フ
ェ
に よ る 阻 害 は ドー パ ミ ン
は5μM,
ノ ミ
を 使 用 。
ら^<77)>
は マ ウ ス で EPTP
な どが MPTP
の よ うな
慢 性 毒 性 を 示 さ な い こ と を 報 告 して お
り, 筆 者 ら の 線 条 体 ス ラ イ ス のチ ロ シ
ン水 酸 化 酵 素 系 の 成 績 と 一 致 して い
る。
MPP^<+> に よ る 線 条 体 ス ラ イ ス の チ ロ シ ン水 酸 化 反 応
再 取 込 み 阻 害 剤 の ノ ミフ ェ ン シ ン で完 全 に阻 止 さ れ た
の阻 害 は, いわ ば MPP^<+> の急 性効 果 で あ るが, 神 経 変
(図11)。
は ドーパ ミン の取 込 み 機 構 に よ
性 の原 因 と共 通 の分 子 機 構 に よる可 能 性 も考 え られ る。
っ て ドー パ ミ ン 神 経 に 選 択 的 に 取 り込 ま れ 蓄 積 す る こ と
こ の こ とは, 従 来 疑 問 で あ った パ ー キ ン ソ ン病 の脳 で チ
ま た,
MPP^<+>
が 報 告 さ れ て い る^<52,53)>。
し た が っ て,
こ こ で 示 した ドー
ロシ ン水 酸 化 酵 素 の 低 下^<1∼5)>
に よ る ドー パ ミンの 減 少
パ生 成 の 阻 害 作 用 を もつ 種 々 の ピ リジ ニ ウ ム イ オ ンも 同
が,
様 の 機 構 で,
のか とい う点 の解 明 に手 が か り とな る で あ ろ う。
ド ー パ ミ ン ニ ュ ー ロ ン に 取 り込 ま れ る 可 能
性 が 推 定 さ れ る 。 す な わ ち,
ドーパ ミ ンニ ュー ロ ンの ド
ー パ ミ ン 取 込 み 機 構 は , か な り広 範 囲 な 基 質 特 異 性 を も
406
(E),
(F)
の 還 元 体 で あ る1-エ
図10
の筆 者 ら の チ ロシ ン水 酸 化 酵 素 系 の阻 害 作 用 で
検 索 した MPP^<+> の 関 連物 質 の うち, N-メ チ ル イ ソキ ノ
リニ ウ ム イ オ ン (L) が 効 果 が あ った こ とは注 目され る。
っ て い る と い うこ とが で き る。
と こ ろ が,
ドーパ ミン細 胞 の変 性 の結 果 で あ る のか, 先 行 す る
チ ル-4-フ
N-メ チ ル イ ソキ ノ リ ン は ドー パ ミン よ り 生 体 内 で 生合
ドー パ ミン神 経 毒 メチ ル フ ェ ニル テ トラ ヒ ドロ ピ リ ジン に よ るパ ー キン ソン 病 の 発 症 機 構
21
うに農 薬 と して 汎 用 され て い る パ ラ コー トも考 え られ て
い る。Barbeau ら^<79)>は
パ ラ コー トの 慢 性 効果 を, カエ ル
の モ デ ル を用 い て調 べ, (1)行動 の変 化 (flip-lower test)
は MPP^<+> と よ く似 てお り, 動 きが緩 慢 に な り硬 着 が み
られ る, (2)こ れ ら の現 象 は パ ー ジ リンに よ って 悪 化 す
る, (3)脳の ドーパ ミ ンも減 少す る, こ とを 報 告 した 。 こ
れ らの こ とか ら も, Barbeau
らは 環境 中 の パ ラ コ ー トが
外 因 性 に パ ーキ ン ソ ン病 を起 こ す 可 能 性 を 指 摘 して い
る。 ま た, パ ラ コー トの作 用 が パ ー ジ リ ンで増 強 され る
こ とは注 目す べ きで, す で に述 べ た が, MPP^<+>の 作 用 も
図12.
(1) MPTP,
, (3) N-
内 因性 の可 能 性 の あ る MPTP
様物 質
(2) 2-[N]- メチル テ トラ ヒ ドロ -β-カル ボ リン
メチ ル テ トラ ヒ ドロイ ソキ ノ リン
同様 に パ ー ジ リ ンで 増 強 され る こ とか ら も, パ ー キ ン ソ
ン病 の治 療 薬 と し て モ ノ ア ミン酸 化 酵 素 阻 害 剤 を投 与
す る場 合 は慎 重 に使 うべ きで あ ろ う。 しか し, 前 述 の よ
成 され る可 能 性 が 推 定 さ れ て い るか らで あ る。
うに 筆 者 ら の脳 線 条 体 ス ライ ス の チ ロ シ ン水 酸 化 酵 素 系
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で は, パ ラ コ ー トは10-^<4>M で 阻 害 を示 さず, MPTP
VII.
外 因性 お よび 内 因性 の MPTP
様物質
MPTP
の発 見 に よ り, 自然 発 症 の 原 因 不 明 のパ ー キ
ン ソ ン病 の 原 因 物 質 であ る 内 因 性 あ るい は 外 因 性 の
MPTP
様 神 経 毒 が あ るか 否 か,
とい う問題 が ク ロ ー ズ
ア ップ され て い る。 内 因 性 の MPTP
て, Collins と Neafsey
2-[N]-
様 物 質 の候 補 と し
ら^<78)>は
β-カル ボ リ ンの 類 似 体
メチ ル テ トラ ヒ ドロ -βカ ル ボ リ ン (2M-THBC
と略 記) を 提 唱 して い る。 彼 ら は MPTP
た 内因 性 物 質 を 検 索 し, 2M-THBC
様 物 質 と推定 した (図12)。2M-THBC
る と, (1)急性 の 行 動 変 化 が MPTP
と構 造 の似
を 内 因 性 の MPTP
をサ ル に投 与 す
を 投 与 した 場 合 に似
や
MPP^<+> よ りは る か に 作 用 が 弱 い と考 え られ る。
お わ りに
MPTP
の発 見 に よ り, MPTP
が いか な る
機 構 で細 胞 障 害 を起 こす か とい う問 題 と と も に,
(1)
MPTP
様 の 選 択 的 神 経 毒 が パ ーキ ン ソ ン病 患
者 で 内 因 性 に 生 成 す るか?
(2)
MPTP
様 物 質 は 食 物, 環 境 化 学物 質 と して 外
来 性 に取 り込 ま れ るか?
(3)
も し MPTP
様 の 物 質 が モ ノ ア ミン酸 化酵 素 で
代 謝 され て神 経 細胞 を 障 害 す る な らば, モ ノア ミン酸 化
酵 素 阻 害 剤 で パ ー キ ン ソ ン病 を 予 防 で き るか?
てい る こ と, (2)パー キ ン ソ ン ニ ズ ムや 黒質 の 細 胞 変 性 は
の3点 につ い て研 究 が 進 め られ て い る。 米 国 とオ ー ス
起 こ らな い が, 尾 状 核 で ドー パ ミンの 代謝 物 の ジ ヒ ドロ
トラ リアで は す で に モ ノ ア ミン酸 化 酵 素 阻 害 剤 デ プ レニ
キ シ フ ェニ ル酢 酸 の減 少 が 認 め られ る こ とを 示 し, N-
ル の長 期 投 与 で パ ーキ ン ソ ン病 の進 行 を 阻 止 す る臨 床 研
メチ ル化 され た β-カル ボ リ ンが ス トレスや 老 化 に伴 っ
究 の試 み が な され て い る。MPTP
て蓄 積 した 結 果, ヒ トで もパ ー キ ン ソ ン病 を起 こす 可 能
た,
性 が あ る と してい る。 しか し, 彼 ら の 投 与 した2M
パ ミン神 経 細 胞 の選 択 的 神 経 毒 で あ り
, パ ー キ ン ソ ン病
THBCの
モ デ ル動 物 の作 製 が可 能 とな り, パ ーキ ン ソ ン病 の発 症
量 は MPTP
の10倍
以 上 で あ る に もか か わ ら
は, 初 め て発 見 され
ヒ トで パ ー キ ン ソ ン病 を 発 症 させ る黒 質 線 条 系 ドー
ず, 黒 質 の ドー パ ミン, ジ ヒ ドロキ シ フ ェ ニル 酢 酸 お よ
の分 子 機 構 の解 明 お よび 治療 に つ い て 有 力 な 手 段 とな る
び ホ モ バ ニ リン酸 は 変化 して お らず, 黒 質 線 条 体 ドーパ
で あろ う。
ミンニ ュー ロ ンが特 異 的 に変 性 す るか否 か は 今後 の課 題
で あ ろ う。
の よ うな還 元 フ ェ ニ ル ピ リジ ン類 は, in vivo
で 末 梢 か ら血 液脳 関 門 を 通 過 して, 容 易 に脳 内 黒質 線 状
筆 者 ら は,
12(3),
MPTP
N-メ チ ル テ トラ ヒ ドロ イン キ ノ リン 〔
図
図11(L)
の還 元 体 〕 を マ ウ ス に慢 性 投 与 す る
体 系 ドー パ ミンニ ュー ロ ンへ 到 達 してパ ー キ ン ソ ン病 を
起 こ し, 実 験 的 に パ ー キ ン ソ ン病 モ デ ル動 物 を作 る の に
と, 線 条 体 の チ ロ シ ン水 酸 化 酵 素 と ジ ヒ ドロキ シ フ ェ ニ
きわ め て有 用 な薬 物 で あ る。 しか し, 静 脈 内 注 射 の他
ル 酢 酸 を 有 意 に 減 少 させ る こ とを 見 い だ して お り, 内 因
に, 皮 膚 や 鼻 粘 膜 か ら も体 内 へ 入 って パ ーキ ン ソ ン病 を
性 MPTP
起 こす 可 能 性 が 示 され て お り, 実 験 上,
様 物 質 のひ とつ と推 定 して い る^<74)>。
外 因性 の MPTP
様 物 質 の候 補 と して は前 に述べ た よ
MPTP
の取扱
い に は き わ め て 慎 重 で絶 対 に体 内へ 入 らな い厳 重 な 注 意
407
22
蛋 白 質
核 酸
酵 素
献
永 津 俊 治 ・永 津 郁 子:
東 京
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