標準画像調子見本の見方・使い方 企画:株式会社アスカネット 2011 年 10 月 写真・画像処理・解説:インフォーツ株式会社 笠井享 グレーチャート 本印刷見本の中で、紙地の白以外では、この部位が最も明るくなっています。 モニタの輝度が過剰に明るい場合は、このやや黄色がかったコサージュの微妙 (RGB 値は約 243~252 に調整してあります。) な濃淡変化が見えなくなってしまいます。 このグレーステップは、主にモニタガンマの正当性を確認するものです。標準 画像調子見本の印刷物は十分に注意して印刷していますが、それでも印刷物の グレーステップ部分では、それぞれのステップで許容範囲であるにも関わらず、 特定のステップにて、わずかに赤みが強く感じる、あるいはやや黄色っぽい、 ■ポートレート この部分は、肌色の中で最も暗い部分です。 ●暗い肌色は液晶モニタの場合は、液晶パネルが持っているオリジナルのブ ラック表現の特性に影響を受けやすくなります。例えば、オリジナルブラッ クが肌色の補色である緑がかっている場合には、非常に濁った見え方になり ます。また、オリジナルブラックが肌色と同系色の赤みがかっている場合は、 例えればお酒を飲んで赤くなったような彩度が過剰な見え方になります。 ●希に CMS ツールが作り出すモニタガンマ特性が R・G・B チャンネルで大き く異なるような場合にも同じような見え方の違いが発生します。 ●コンピュータ OS やコンピュータのグラフィックボードのモニタ設定のわず かな設定ミスでも、同様の見え方を経験します。 ●この部分のモニタ表示が異常な場合、モニタの各種設定、ならびにコンピュー タ側のモニタ設定をすべて初期状態にリセットして、キャリブレーション ツールを使ってもう一度慎重にやり直すことをおすすめします。 などという偏色(色かぶり)が生じています。 これは、C・M・Y・K という 4 色の印刷インキを刷り重ねてグレー(無彩色) を表現する場合の宿命であり避けられません。よって、各グレーステップごと に印刷物とモニタ表示を個別に比較して評価することは、あまり意味のあるこ とではありません。むしろ、濃度の異なる隣のグレーステップとの明るさの差 =明るさ変位の傾向が、印刷物とモニタ表示とでどの程度そろっているか?と いう点に着目して視覚的に評価します。 ●グレーステップの評価方法 このグレーステップの評価を行うときだけは、特殊な比較方法をお薦めします。 空と海と緑 この部分は、広い面積に渡って明るい肌色から暗めの肌色へと肌色の明度が変 化している場所です。このような場所では、モニタのグラフィックボードの特 性やモニタ自身の階調表現力に不正があると、濃度変化のなめらかさが失われ トーンジャンプが視認されます。印刷においても、わずかにトーンジャンプが 発生せざるを得ない場所ですが、印刷物以上のトーンジャンプがモニタ上で視 認される場合は、モニタやボードなどのハードウエアを更新するか、モニタキャ リブレーションを慎重にやり直す必要があります。 る方法です。下の写真を参照して下さい。モニタ表示の画像は、印刷物と同じ 大きさになるように表示拡大率を調整します。 (Adobe® Photoshop® の場合、 「ナ ビゲータ」パネルの「表示倍率数値」に直接数値入力して表示拡大率を細かく 調整できます。)印刷物には、色評価用蛍光灯による照明を当てます。 この際、モニタの液晶パネルにも色評価用蛍光灯の光が照射されることになり ますので、真っ黒の部分は正確に評価できなくなります。そこでグレーステッ プのうち黒に近い# 9 と #8 については、評価対象外とします。 この状態で比較しながら、蛍光灯照明の距離を印刷物に近づけたり、離したり すると、印刷物のグレーステップの明るさだけが変化し、モニタ表示画像のグ レーステップの明るさは変化しません。そこでホワイトポイント(=グレース テップ# 0)に注目して、両者の明るさが一致するような位置を捜します。こ カラーボール ポートレート この部分は、肌色の中で最も明るいトーンを持っている部分です。また、比較 的広い面積に渡って明るい肌色が広がっており、その一部に若干の濃淡変化が ある、という見え方になっています。 このような場所は、モニタの白色点の色温度調整が最適ではない場合には、あ る一定の照明条件の基での印刷物の見え方と大きく異なってしまいます。特に、 モニタの白色点色温度が 6500K などと高く設定されていると、大きな見えの差 が生じます。 それは、印刷物をモニタ前面に軽く当てがうようにして「つき合わせ比較」す の状態で、印刷物とモニタ表示のステップ #0~#7 までを見比べて、その見え 方がほぼ同じであることを確認します。 もし、異なっている場合は、CMS ツールによるモニタガンマ調整をやり直しま す。目視による相対比較は、そもそも非常に厳格で、わずかな差を視覚的に強 調してしまいますから、若干の差異は気にしなようにしてください。大雑把に この白いドレスのうち、矢印で示した部位は、最も明るいハイライトから、やや 暗いハイライトへと、濃度が徐々に変化しています。このような部分は、遠目に 観察して印刷物の濃度変化と、モニタ表示の濃度変化がほぼ同じように見えてい ることを確認します。もし、大幅に違いがある場合は、モニタの輝度とガンマの 両方の調整、またはガンマの調整がうまくできていない可能性があります。 情報欄 ■空と海と緑/カラーボール 白い線で示した部位は、モニタ表示と印刷物の見え方に比較的大きな違いが生 ずる色の部分です。このような色を印刷した場合に、どのような色に変化する のかを、よく見比べて覚えておくとよいでしょう。 ●赤系統の場合、印刷結果では光が透過しているような明るく、なおかつ鮮や かな印象が薄れます。また、近隣のより濃い赤との濃淡変化が無くなり、フ ラットな立体感が無い感じになります。 ●緑色の草木の部分では、印刷結果ではその草原の濃淡変化が少なくなりフ ラットな感じで、かつやや黄色っぽい色合いになります。 ●エメラルド色の明るい海や同様のガラス玉では、印刷結果では若干黄色成分 が増えた見え方になり透明感が大幅に低下します。 ●暗いブルーのガラス玉では、見え方が、より暗く黒に近づく部分と、逆にや や明るくくすんだ青に変化する部分に二分されてしまうことがあります。ご くわずかなブルーの濃さの違いでどちらかに変化しますから、特に黒ずんで しまうと好ましくありませんから、このような色合いの被写体がある場合、 あらかじめオリジナル画像データの明度を明るめに調整しておく必要があり 比較して、だいたい同じであれば OK としましょう。 パステルチャート パステルチャートのチェックポイントについては別紙「標準画 像調子見本とモニタ調整について」の 11 ページをご覧下さい。 人物の顔には、眼・眉・鼻・唇などの「特異」な濃淡変化がある部位が多く、このような部位を使って印 刷物とモニタ表示の色再現性を見極めることはとても難しいものです。このような部位では、色の判定を 行うのではなく、「立体感(鼻の出っ張りや、眼の引っ込みなど)の感覚の近似性を見極めます。 もし、このような視覚判定で違いが大きい場合は、モニタのコントラストが不正である可能性があります。 また、希にモニタの機種によっては、シャープネスを強調する機能が内蔵されており、それが不正という こともあります。 一般論ですが、印刷物上での肌色は、オリジナル画像のモニタ表示と比べると、より暗い肌色ほどその彩 にご 度がモニタ表示より低下し、濁った肌色に見えます。よって、肌色の暗い部分は画像データとしてはやや 高めの彩度に補正しておくと、望ましい印刷結果となります。 ■つき合わせ目視比較法 印刷物への照明距離を調節して、ステップ #0 の明るさをモニタ表示のステッ プ #0 と合わせます。各ステップを比較しますが、#8 と #9 は比較対象外とし ます。
© Copyright 2024 Paperzz