研究費不正の基礎知識と事例紹介等

研究費不正の基礎知識と事例紹介等
1.研究費の不正使用の定義
・故意若しくは重大な過失による競争的資金等の他の用途への使用
・競争的資金等の交付決定の内容やこれに付した条件に違反した使用
2.不正発生のメカニズム
不 正 は 「 動 機 」「 機 会 」「 正 当 化 」 の 三 要 素 が 全 て そ ろ っ た と き に 発 生 す る と 説
明されています。
3.不正の事例紹介
(1) 架 空 発 注 と 預 け 金 に よ る 不 正
架空発注により、業者に預け金を行う行為は不正使用に該当します。
不正発生の要因
◆使用用途、使用年度に関らず、研究費を自由に使用したかった(動機)
◆発注から納品までを研究者自らが行うシステム(機会)
◆規則に対する遵守意識および公的資金であるという認識の欠如(正当化)
等
措置
◆公的研究費の返還命令
◆競争的資金への申請及び参加資格制限
◆関係業者に対して一定期間の取引停止
◆人事処分
等
(2) 架 空 人 件 費 ( カ ラ 謝 金 ) に よ る 不 正
研 究 協 力 者 に 支 払 う 給 与 に つ い て 、実 際 よ り 多 い 作 業 時 間 を 出 勤 簿 等 に 記 入 し
て請求することは不正使用に該当します。
不正発生の要因
◆使用用途に関らず、研究費を自由に使用したかった(動機)
◆勤怠管理が研究室任せで、事務部門が勤怠実態を把握していない(機会)
◆規則に対する遵守意識および公的資金であるという認識の欠如(正当化)
等
措置
◆補助金の返還命令
◆競争的資金への申請及び参加資格制限
◆人事処分
等
(3) 架 空 旅 費 交 通 費 に よ る 不 正
実際に要した金額以上の経費を申請することは水増し請求であり不正使用に
該当します。
不正発生の要因
◆研究費を私的目的で使用したかった(動機)
◆出張が申請どおりに行われたかどうかのチェック体制の不備(機会)
◆規則に対する遵守意識および公的資金であるという認識の欠如(正当化)
等
措置
◆補助金の返還命令
◆競争的資金への申請及び参加資格制限
◆人事処分
等
(4) 実 際 に あ っ た 過 去 の 不 正 使 用 ・ 不 正 受 給 の 事 例 一 覧
発覚
対象
年度
年度
不正の概要
文部科学省の対応
架空発注により消耗品等を購入したように装い、大
平
平成
成
11
20
~
年
17
度
年度
学から補助金を支出させ、業者に預け金として管理
させて上で、必要に応じ大学に保管された納品伝票
とは異なる研究用物品等の購入に充てていたり、請
求書の品名の書き換えを業者に指示し、実際には異
なる物品を納品させていたり、研究代表者が研究分
担者に名義を貸して補助金の交付を受け、使用して
○補助金の返還命令
平成 21 年 2 月 17 日(学振)
1,530 万円
○応募資格の停止
5 年:2 人、4 年:10 人
いるものがあった。
平成
平
成
19
年
度
○補助金の返還命令
9・
旅費、謝金を架空請求し、また、業者から無償で貸
平成 20 年 2 月 1 日(文科省)
10・
借した計測装置についてレンタル料を請求し、大学
428 万円
12・
から、補助金を支出させ、自らの銀行口座で管理し、 平成 20 年 1 月 28 日(学振)
13・
研究費(遠隔地でも測定会実施に際しての必要経費) 336 万円
15・
として使用したほか、一部については家族旅行の費
(返還命令総額 764 万円)
~18
用に使用していた。
○応募資格の停止
年度
5 年:1 人、1 年:4 人
○補助金の返還命令
平成 20 年 2 月 1 日(文科省)
平
平成
成
15
研究補助員に虚偽の謝金受領書を作成させ、研究代
20
~
表者が立替払をしたとして不正に補助金を受領し、
年
17
保管していた。
度
年度
428 万円
平成 20 年 1 月 28 日(学振)
336 万円
(返還命令総額 764 万円)
○応募資格の停止
5 年:1 人、1 年:4 人
○補助金の返還命令
平
平成
同じ出張の旅費や郵送費を、科学研究費補助金と他
平成 19 年 3 月 23 日(文科省)
成
14
の経費とで重複して請求したり、資料・書籍などの
76 万円
19
~
領収証の金額を改ざんし、補助金を不正に受領し、
平成 19 年 3 月 28 日(学振)
年
17
留学中の家族への小包送付料への支出に当ててい
13 万円
度
年度
た。
○応募資格の停止
5 年:1 人、1 年:25 人
平
平
成
成
22
19
年
年
度
度
研究協力者である学生に虚偽の出勤簿を作成させ、
大学に謝金の架空請求を行わせ、当該架空請求に係
わる謝金を回収し、これを当該学生の学会参加に係
わる旅費に充てていた。
○補助金返還命令
平成 22 年 9 月 29 日(学振)
4 万円
○応募資格の停止
4 年:1 人
平
平
成
成
15
20
・
年
16
度
年
業者に架空の取引を指示し、実際に購入、納品させ
た物品等とは異なる品名が記載された虚偽の納品
書、請求書等を作成させて、これにより実際には異
なる物品を納品させていた。
○補助金の返還命令
平成 21 年 3 月 31 日(学振)
70 万円
○応募資格の停止
4 年:1 人
度
平
平
成
成
20
17
年
年
度
度
5 年:1 人
平
平
○補助金の返還命令
成
成
実態を伴わない印刷物の発注を行い、架空請求によ
平成 19 年 3 月 28 日(学振)
18
17
り大学から業者に支払われた補助金を預け金として
24 万円
年
年
業者に管理させていた。
○応募資格の停止
度
度
○補助金の返還命令
海外渡航に係る旅費について、研究出張とはみなせ
ない用務が含まれていた。
平成 20 年 12 月 11 日(文科
省)39 万円
○応募資格の停止
4 年:1 人、1 年:1 人
学内規定により原則として支払えないこととされて
いたビジネスクラス航空運賃を捻出するため、エコ
平
平
ノミークラス航空運賃との差額分等について、消耗
○補助金の返還命令
成
成
品を購入したように架空の請求書を作成するよう業
平成 18 年 9 月 21 日(文科省)
19
15
者に命じ、これを大学に請求して不正に受領してい
47 万円
年
年
た。
○応募資格の停止
度
度
また、私用目的で購入した書籍代(中学生参考書)
5 年:2 人
や研究に直接関係ない物品(シェーバー)の購入代
金を立替払金として大学に請求していた。
平
平成
成
17
19
・
年
18
度
年度
平
平
成
成
19
16
年
年
度
度
研究室に所属する研究生の名義貸しを依頼し、自ら
が管理する銀行口座を開設し、架空の謝金請求を行
い、研究期間終了後に使用する研究費として保管し
ていた。
海外渡航に係る旅費に、妻子を同伴するための費用
を含んで精算したほか、研究課題の目的から外れた
共同研究の打ち合わせをするために、旅行予定外の
目的地に滞在した。
○補助金の返還命令
平成 20 年 1 月 28 日(文科省)
78 万円
○応募資格の停止
4 年:1 人
○補助金の返還命令
平成 19 年 4 月 20 日(文科省)
57 万円
○応募資格の停止
5 年:1 人
4.不正使用及び不正受給を行った者に対する応募制限
不正使用及び不正受給に係る
不正使用の程度
応募制限の対象者
応募制限期間
Ⅰ.不正使用を行った研究者及 1.個人の利益を得るための私的
びそれに共謀した研究者
10 年
流用
①社会への影響が
大きく、行為の悪質
5年
性も高い場合
Ⅱ.不正使用を行った研究者及 2.「私的 ② ①及び③以外の
びそれに共謀した研究者
2~4 年
流用」以外 もの
③ 社会への影響が
小さく、行為の悪質
1年
性も低い場合
Ⅲ.偽りその他不正な手段によ
り競争的資金を受給した研究
-
5年
者及びそれに共謀した研究者
Ⅳ.不正使用に直接関与してい
ないが善管注意義務に違反し
不正使用を行った研究者の
-
て使用を行った研究者
応募制限期間の半分(上限 2
年、下限 1 年、端数切り捨て)
※以下の場合は、「厳重注意」を通知。
・上記Ⅱのうち、社会への影響が小さく、行為の悪質性も低いと判断され、かつ不正使用額が小額
な場合
・上記Ⅳのうち、社会への影響が小さく、行為の悪質性も低いと判断された研究者に対して、善管
注意義務を怠った場合
5.不正事案の公表
平 成 26 年 度 以 降 の 文 部 科 学 省 関 連 の 競 争 的 資 金 制 度 に お い て 、 研 究 費 の 不 正
使 用 等 を 行 っ た 研 究 者 や 、善 管 注 意 義 務 に 違 反 し た 研 究 者 の う ち 、応 募 資 格 が
制 限 さ れ た 研 究 者 に つ い て は 、原 則 、研 究 者 氏 名 を 含 む 当 該 不 正 の 概 要 を 文 部
科学省のホームページに公表されます。
出典
「 研 究 機 関 に お け る 公 的 研 究 費 の 管 理 ・ 監 査 の ガ イ ド ラ イ ン に つ い て ( 研 究 者 向 け )」 文 部 科 学 省
「 競 争 的 資 金 の 適 正 な 執 行 に 関 す る 指 針 ( 平 成 2 4 年 1 0 月 1 7 日 改 正 )」 競 争 的 資 金 に 関 す る 関 係 府 省 連 絡 会 申 し 合 わ せ
「 公 的 研 究 費 の 適 正 使 用 向 け て の 取 組 と 学 内 ガ バ ナ ン ス 改 革 ( 平 成 2 4 年 1 0 月 1 6 日 )」 新 日 本 有 限 責 任 監 査 法 人