REPORT from 2010ACR(TUE968) 日本人関節リウマチ患者 3,970 例

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REPORT from
2010ACR(TUE968)
日本人関節リウマチ患者 3,970 例における骨折リスクの
評価と骨粗鬆症治療における格差
Fracture risk assessment and osteoporosis treatment disparities in 3,970
Japanese patients with rheumatoid arthritis
古谷武文 東京女子医科大学 膠原病リウマチ痛風センター
■背景
主な骨粗鬆症性骨折の 10 年以内の発生リスクが 20%以上
®
本試験では、骨折リスク評価ツール(FRAX )を用いて主な
の患者 723 例(41.8%)のうち、骨粗鬆症治療薬またはビス
骨粗鬆症性骨折(major osteoporotic fracture)および大腿骨
ホスホネート製剤を服用していると報告したのはそれぞれ
頸部骨折の発生リスクが高い日本人コホート集団における
453 例(62.7%)、320 例(44.3%)のみであり、骨折リスクに対
関節リウマチ(RA)患者の割合を同定するとともに、骨折高リ
する治療にギャップが存在することが示された(図 1)。骨折
スク患者に対する治療にギャップが存在するか否かを検討
リスクの増加は、男性 RA 症例、女性 RA 症例とも、経口グル
した。
ココルチコステロイド使用、プレドニゾロン 1 日用量、疾患活
■方法
性スコア(DAS)28、J-HAQ 高スコア、および赤沈高値に有
当施設(IORRA)において 2008 年に前向き観察コホート試
®
意(P<0.001)に関連した。BMD 測定を行った 276 例において、
験に組み入れたRA患者 3,970 例に対しFRAX を実施した。
BMD の T スコアを使った主な骨粗鬆症性骨折の 10 年以内
そのうち 276 例では、同時に骨密度(BMD)測定を実施した。
の発生リスクは、BMD 測定をしてない患者(BMI の T スコア
■結果
を使用)に比べ有意に(P<0.001)高いことが示された(図 2)
®
FRAX による主な骨粗鬆症性骨折の 10 年以内の発生リス
■結論
®
クが高い患者は、高齢のRA女性患者で多く、40~64 歳では
FRAX は大腿骨頸部および主な骨粗鬆症性骨折リスクが
低リスク(<10%)患者が多いのに対し、75 歳以上ではほぼ
高く、NOFガイドラインにより治療が推奨される、日本人高齢
®
100%の患者が高リスク(>20%)であった。また、FRAX によ
RA患者を高い割合で識別することができた。また、日本人
る大腿骨頸部骨折の 10 年以内の発生リスクも男性より女性
RA患者における骨折リスクとそれに対する骨粗鬆症治療の
で高く、40~64 歳の女性では低リスク(<3%)患者の割合が
間には大きなギャップがあることが示唆された。FRAX は骨
多いのに対し、75 歳以上ではほとんどが高リスク(>10%)患
折リスクの評価ならびに精査を要する高リスク患者の同定
者であった。
に有用と考えられた。
®
図2.女性RA患者のFRAX®による 10 年以内の骨折発生リスク
図1.骨折リスクと骨粗鬆症治療)
80%
20%
低リスク(<10%)
中リスク(10~20%)
高リスク(>20%)
60%
P<0.0001
BMD評価なし
BMD評価あり
15%
NS
10%
40%
NS
NS
5%
20%
0%
0%
全骨粗鬆症
治療薬
ビスホス
ホネート
製剤
男性(n = 641)
活性型
ビスホス
全骨粗鬆症
ビタミン
ホネート
治療薬
D3製剤
製剤
活性型
ビタミン
D3製剤
主な骨粗鬆症性 大腿骨頸部 主な骨粗鬆症性 大腿骨頸部
骨折リスク
骨折リスク
骨折リスク
骨折リスク
女性(n = 3329)
※図表掲載については、著者の許諾を得ています。