TIP療法(パクリタキセル、イホスファミド、シスプラチン)

「TIP(パクリタキセル+イホスファミド+シスプラチン)療法」
説明および同意文書
四国がんセンター 泌尿器科
患者氏名
(
)さん
「御本人のみへの説明でよろしいですか?」
(同席者の氏名をすべて記載)
(
(
<病名>
<治療>
□
はい
)
)
精巣がん再発
再発部位(
)
TIP 療法(T: パクリタキセル、I: イホスファミド、P:シスプラチン)
<治療開始予定日>
年
月
日
<治療期間>
3 週間を 1 コースとして繰り返し行います。治療回数は再発の程度や治療効果によって
異なります。
<治療の前に>
精巣がんの約 30%の症例は転移を有する進行性精巣腫瘍として認められますが,シ
スプラチンの導入以降はたとえ転移を認めても抗がん剤による化学療法が著効し,転移の
ある症例の約 80%を治癒に導くことができるようになりました。特に 1997 年に
IGCC分類が発表されて以来,転移を有する精巣がんの治療指針がある程度整えられ,治療
成績の向上にも寄与してきました。
しかしながら,導入化学療法である BEP 療法(ブレオマイシン,エトポシド,シスプ
ラチン)が適切に行われなかった場合や導入化学療法に抵抗性を示す場合など,非常に治
療に難渋する症例があるのも事実です。この場合は救済化学療法(再発時の化学療法)が
必要になりますが,以前から行われていた VIP 療法(エトポシド、イホスファミド、シス
プラチン)や VeIP 療法(ビンブラスチン、イホスファミド、シスプラチン)では満足のいく
成績が得られず,超大量化学療法(末梢血幹細胞を使用し、通常より多くの抗がん剤を使用
する)が試みられましたが明らかな優位性は証明されませんでした。そのため、パクリタキ
セルやゲムシタビン,イリノテカンといった新しい抗がん剤を使用した治療が試みられ,
その有効性が明らかになりつつあります。このような点から当院では救済化学療法として
1
TIP療法(パクリタキセル、イホスファミド、シスプラチン)とGEMOX療法(ゲムシタビ
ン、オキサリプラチン)を行うようにしています。
現在の状況は、精巣癌に対する標準導入化学療法である BEP 療法よる治療を行った後
に再発をきたした状況です。BEP 療法後の再発時の標準治療は、現在のところ TIP が多く
の施設で行われています。他の治療法を行っている報告もありますが有用性で上回る報告は
ありません。今回の TIP 療法で期待される有効率としては部分奏功(腫瘍が縮小するもの)
が 60-70%で、成績の良い報告では腫瘍の消失も 60%以上であったとの報告があります。
しかしこれらの報告は少数例で、大規模な比較試験がなされた報告はこれまでにありません。
腫瘍が小さくなった場合は手術も考慮されます。予後は治療効果により決まってくるため,
現時点で不明です。ただし、根治できる可能性がまだ残っており、この化学療法をすすめま
す。
<無増悪生存期間>
<生存期間>
<治療内容>
抗がん剤は 1 日目にパクリタキセルを点滴します。24 時間持続点滴になります。2 日目
から 5 日目まではイホマイドとシスプラチンを投与します(約 10 時間)。6 日目は抗がん
剤はなく、点滴のみ行います(約 6 時間)。また 1 日目から 5 日目までは抗がん剤以外の点
滴もあります。7 日目以降は点滴はありません。3 週間で 1 コースとし,2 コース目以降
はこの投与方法の繰り返しとなります。また,副作用が軽微な場合は 7 日目以降は退院で
きますので、次の治療が始まるまで自宅療養し次コース開始時に入院、ということも可能で
す。治療効果や副作用をみて次のコースを開始します。通常最大で 6 コースまで行います。
しかし,
①
合併症により治療継続が困難となった場合
②
治療にかかわらず病状が悪化してきた場合
に治療は中止となります。合併症の確認のために入院中は頻回に採血をさせていただきます。
時に連日になる場合もあります。
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<合併症>
① 骨髄抑制:白血球減少(好中球減少)はほぼ必発で、約 50%に発熱性好中球減少が見ら
れます。また、貧血や血小板減少(35%)も起こります。
白血球減少が確認されると必要に応じて白血球を増やす皮下注射を使用しますが,この時期
の感染症は時に致命的で注意が必要です。発熱性好中球減少は、感染症がないのに発熱をき
たす状態ですが、この状況は危険ですので感染症のチェックを十分に行い、抗生剤の点滴を
します。また,貧血や血小板減少が重度の場合には輸血が必要になります。
② 末梢神経障害
この治療により軽度の末梢神経障害が引き起こされます。末梢の知覚異常(指,つま先など
のしびれや,口の周りやのどのあたりなどがピリピリする,しびれなどの症状)が現れます。
時として痛みを伴うこともあります。徐々に軽減することが多いのですが、点滴の回数を重
ねると症状が悪化していくことがあります(約 7%)。ひどくなると指先などがしびれて日
常生活に支障をきたす場合(立ちにくい,歩きにくい,ボタンが留めにくいなど)も考えら
れます。
③ 不整脈(徐脈)や血圧の変動
この治療により不整脈(徐脈)や血圧の変動が起こることがあります。そのため、点滴
中は心電図モニターを付け異常の発見に努めます。
④ 嘔気,嘔吐,下痢など消化器症状
内服や注射による症状緩和につとめていますので頻度は高くありません。食欲低下時に
は食事の内容変更もできます。
⑤ 腎障害や肝障害(頻度は低いですが重症例の報告があります)
⑥ 発熱、関節痛や筋肉痛、脱毛(頻度不明)
⑦ 聴力低下・難聴(1.4%):シスプラチンの投与量が多くなると出現しやすくなります。
⑧ その他
間質性肺炎や心不全,アレルギー、アナフィラキシーショック、血栓症など重篤な合併症
の報告があります。頻度は低い(不明)ですが注意が必要です。
⑨ 治療関連死:治療に関連した副作用で亡くなることをいいます。副作用対策が確立してき
ましたのでほとんど起こらなくなりましたが、0%にはなっていません。
<健康被害が生じた場合>
この治療によって健康被害が生じた場合の特別な保証制度はありませんが、病院で誠意を持
って治療に当たらせていただきます。治療費は保険を使用した場合の一般診療で行われます。
<他の治療法との比較>
現在の病状から,今回予定している化学療法が現在最も期待できる治療法と考えています。
その他の化学療法も色々報告されていますが、有効性で上回るものはまだありません。抗が
ん剤以外の治療として手術と放射線がありますが、手術は現時点で適応はありません(今後
3
可能になる場合はあります)。放射線治療は、脳転移に関しては積極的に行いますが、他部
位(たとえば骨など)に対する放射線治療は痛みなどの症状緩和のために行うことがほとん
どです。
もしこの治療を受けなかったら、数ヶ月後には転移部位の進行により何らかの症状が出てく
ると予測されます。その場合は緩和治療を行うことができます。緩和治療とは、抗がん剤な
どの癌に対する積極的な治療は行わず、癌によって起こる症状をなるべく和らげるための治
療です。
<治療の前に>のところでも説明しましたが、まだ根治の可能性が残されています。そのため
この化学療法を受けてほしいのですが、やはり治療による副作用などから QOL(生活の質)
の低下をはじめ不利益なことは起こりえます。また、100%良い結果につながるともいえま
せん。そのため、治療を受けるかどうかはよく考えてから決めてください。そのために必要
な情報は何度でも説明しますので遠慮無くお申し出ください。
4
同意書
独立行政法人国立病院機構四国がんセンター
院長殿
治療名:
「 TIP 療法
」
<説明および同意内容>
□<病名>
□<治療>
□<治療開始予定日>
□<治療期間>
□<治療の前に>
□<治療内容>
□<合併症>
□<健康被害が生じた場合>
□<他の治療法との比較>
私は、治療の内容についてそれぞれ説明を受けた上、治療を受けることに同意いたしま
す。
同意日
平成
年
月
日
患者氏名
同席者氏名
私は、治療について上記の項目を説明し、同意が得られたことを確認します。
確認日
平成
医師氏名
同席者氏名
5
年
月
日