FP-rad療法の手引き(PDF)

F P - rad 療 法 の手 引 き
2013 年 11 月改訂版
国立がん研究センター中央病院
消化管内科グループ・薬剤部・看護部
はじめに
FP-rad 療法は、“フルオロウラシル”(商品名:5-FU® 注 )と
“シスプラチン”(商品名:シスプラチン® 注「マルコ」)を併用する
化学療法に放射線療法を組み合わせる治療法で、欧米では
20 年ほど前からこの組み合わせが用いられ手術に匹敵する
成績が期待できるのではないかと報告されています。日本でも
当院を中心としたグループにおいてこの組み合わせでの治療
法を検討し、手術も含め選択枝のひとつとなりうると考えられ
ています。
この治療法は、抗がん剤を用いた化学療法と放射線療法を
併用するためいろいろな副作用が起きる可能性があります。こ
のパンフレットでは FP-rad 療法で起こり得る副作用とその対策
についてまとめました。
これから治 療 を受 けられる皆 様 に少 しでもお役 に立 て
れば幸いです。
国立がん研究センター中央病院
消化管内科グループ
薬 剤 部
看 護 部
-1-
《点滴・放射線のスケジュール》
約4週間ごとに点滴を行います。
週
1週
2週
3週
4週
5週
5-FU
1 日目
1-4 日 目
シスプラチン
1 日目
1 日目
水分の点滴
1-4 日 目
1-4 日 目
6週
放射線 *
*
放射線: 1 日 1 回(
)Gy (
-2-
)回照射 計(
)Gy
《点 滴 のス ケジ ュー ル 》
1 回の点滴は約 4 日間かかります。
1 日目
2~4 日目
① 5-FU
②
③
1 時間 15 分
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
2 時間
45 分
2 時間
約 18 時間
15 分
約 24 時間
ボトルの内容
点滴時間
【1 日目】
① 5-FU
(抗がん剤)
翌日まで
② プロイメンド
(吐き気止め)
約1時間
③ グラニセトロン+デキサメタゾン (吐き気止め)
約 15 分間
④ 生理食塩液+硫酸 Mg+KCl
(水分の点滴)
約 2 時間
⑤ マンニットール
(利尿剤)
約 45 分間
⑥ シスプラチン
(抗がん剤)
約 2 時間
⑦ 生理食塩液
(水分の点滴)
翌日まで
⑧ デキサメタゾン
(吐き気止め)
約 15 分間
⑨ ソルデム 3A+生理食塩液
(水分の点滴)
翌日まで
【2~4 日目】
-3-
《点滴後の内服薬》
ノバミン ® 錠 5mg
吐き気止め
吐き気 がするときに 1錠 服用
4時間毎に追加可能
ビオフェルミン R ® 錠
整腸剤
下痢 が始 まったら、朝昼夕食後に1錠ずつ服用
ロペラミド ® 錠 1mg
止痢剤
水様下痢 が続 くとき 1 回 1~2錠 服用
シプロフロキサシン ® 錠 200mg
抗菌薬
38℃以 上 の発 熱 時 に、朝 昼 夕 食 後 1錠 ずつ服 用 し、熱 が下 が
っても 7 日間飲みきる
(熱が出たときの対応については、担当医にお尋ねください)
カロナール ® 錠 200mg
解熱剤
38℃以上 の発熱時 に、1 回2錠 服用 6~8時間毎に追加可能
-4-
アルサルミン ® 液
放射線照射による食道炎の痛みを和らげるために使います
朝昼夕食前 に 1包ずつ 服用
ポンタール ® シロップ
痛み止め
放射線照射による食道炎の痛みを和らげるために使います
朝昼夕食前 に 10mLずつ 服用
オプソ ® 内服液
痛み止め
放射線照射による食道炎の痛みを和らげるために使います
痛みがひどいときに 1包ずつ 服用
※ジェネリック医薬品など、上記の医薬品名や写真と異なる場合があります。
-5-
《抗がん剤について》
注 射 名 : 5-FU ® 注 (フルオロウラシル )
5-FU ® 注は、がん細胞の増殖に必要な DNA 合成を阻害し、
RNA の機能を障害することで、がん細胞の成長を抑えたり、腫
瘍を縮小する作用を持つくすりです。
5-FU® 注
は、4日間か
けてゆっくり
点滴します。
-6-
注 射 名 : シスプラチン ® 注 「マルコ」 (シスプラチン)
シスプラチン® 注はプラチナ(白金)系の抗がん剤です。細胞のDNA
と結合することでDNAのゆがみを作り出し、がん細胞の増殖を抑え、
腫瘍を小さくする作用を持つくすりです。
腎臓に負担をかけやすいくすりで
す。そのため、シスプラチンを点
滴する前後にたくさんの水分
の点滴を行います。
-7-
《副 作 用 とその対 策 》
副 作 用 の起 こり方 や程 度 には個 人 差 があります。
以 下 に主 な副 作 用 とその対 策 についてご紹 介 いたし
ますので参 考 にしてください。
骨髄抑制(白血球減少、血小板減少)
白 血 球 は、病 原 菌 から身 体 を守 る(感 染 を防 ぐ)働 きを持 った 血 液
成 分 の1つです。 また血 小 板 は出 血 時 に血 液 を固 める作 用 を持 った
血 液 成 分 で す 。 一 般 的 に注 射 を し て か ら 7 ~ 10日 目 に白 血 球 の数
が少 なくなり、通 常 次 の治 療 が始 まるまでに回 復 するといわれていま
す。白 血 球 が減 少 すると細 菌 に対 する防 御 能 が低 下 し、発 熱 や感 染
を起 こす可 能 性 があります。このような場 合 には白 血 球 の数 を増 やす
薬 を使 ったり、治 療 をお休 みしたりします。またこういった時 期 には 予
防 策 が大 切 です。
対 策
:
あ な た 自 身 はもち ろ ん 、周 囲 の方 ( 家 族 な ど) 皆 さん で
手 洗 いやうがいをしましょう。
まれに発 熱 する方 がいらっしゃいます。もし、38℃以 上
の熱 がでた場 合 は、処 方 された抗 菌 薬 (シプロフロキサシ
ン ® )を服 用 しましょう。熱 が出 た場 合 の対 応 については担
当 医 にお尋 ねください。
-8-
吐き気・嘔吐
///////////////:////
8割 程 度 の患 者 さんで“ムカムカ”したり食 欲 がなくなったりします。
//syokuyokuhusinn
予防
的 に吐 き気 止 めのくすり(プロイメンド注 、グラニセトロン注 、デキ
サメタゾン注 )を一 緒 に点 滴 します。
吐 き気 には、治 療 当 日 ( 24時 間 以 内 ) に 現 れる急 性 のものと、 治
療 後 2~7日 目 に現 れる遅 延 性 のものとがあります。
もし、この症 状 が現 れた場 合 は以 下 の対 策 を参 考 にしてください。
対 策
:
吐 き気 止 めの内 服 薬 が処 方 されますので、指 示
どおりに服 用 してください。吐 き気 のコントロールがう
まくいかない場 合 、次 回 診 察 時 に工 夫 をします。吐
き気 の程 度 ・吐 いた回 数 ・食 事 の摂 取 量 ・排 便 の状
況 を記 録 し、担 当 医 に伝 えてください。
食 事 が取 れないときは、なるべく水 分 をとるよう心
掛 け ましょ う 。消 化 の良 い食 事 を少 量 ずつ何 回 に も
分 けて摂 られるのも良 いでしょう。
-9-
下 痢
2割 程 度 の患 者 さんで、下 痢 が みられ ます 。点 適 後 、 1週 間 く らい
に起 こることが多 いとされています 。あなたの普 段 の便 通 の状 態 を把
握 しておくことが大 切 です。
対 策
:
下 痢 が始 まったら、整 腸 剤 (ビオフェルミン ® R錠 )を朝 ・昼 ・夕 食 後
に1錠 ずつ服 用 してください。水 様 性 の下 痢 が続 くときには、下 痢 止
め(ロペラミド ® カプセル)を1回 に1~2カプセル服 用 してください。
また、下 痢 がおきてしまった場 合 、もっとも気 を付 けなくてはいけな
いのは脱 水 症 状 です。こまめに水 分 (スポーツドリンクなど)を摂 取 す
るようこころがけてください。
- 10 -
口内炎
3割 程 度 の患 者 さんで口 の中 の粘 膜 や舌 が荒 れて痛 みが出 ること
があります。痛 みがひどい場 合 は痛 み止 めを使 います。
対 策
:
予 防 のた め、口 の中 を清 潔 にし、うるおいを保 っ てお
くことが重 要 です。歯 ブラシはやわらかいものを使 い、し
っかりと歯 と歯 ぐきをブラッシングしましょう。
うがいも重 要 です。こまめにうがいをしましょう。
刺 激 の強 い食 べ物 や熱 すぎる食 べ物 は避 けてくださ
い。また口 の中 に痛 みがある場 合 には、そこに触 れない
ようにストローなどを使 って水 分 を摂 るのも良 いでしょ
う。
痛 みが続 き、食 事 や水 分 が摂 れない場 合 には、担 当
医 に相 談 してください。
- 11 -
腎障害
抗 がん剤 のシスプラチンが腎 臓 を通 り、体 から出 て行 くときに腎 臓
に負 担 をかけ、治 療 のあとに腎 臓 の機 能 が悪 化 する可 能 性 がありま
す。腎 臓 を保 護 するために、水 分 の点 滴 を行 い、利 尿 剤 (尿 を出 やす
くするくすり)を使 ってシスプラチンを体 外 へ追 い出 していきます。利 尿
剤 は尿 の出 具 合 や体 重 の変 化 を見 て使 用 します。
一 時 的 に血 液 検 査 でわかる程 度 の腎 臓 機 能 の
変 化 が2割 くらいの方 に見 られますが、このような工
夫 を し な が ら治 療 を行 い ま す ので 、 ほ と ん ど の 場 合
元 に戻 ります。
放射線による副作用
放 射 線 治 療 に関 しては、放 射 線 科 の医 師 、看 護 師 から詳 しい説
明 があります。放 射 線 照 射 による副 作 用 には以 下 のようなものがあり
ます。
・食 道 炎
・皮 膚 炎
しんのうえん
はいぞうえん
・心 嚢 炎
・肺 臓 炎
食 道 炎 には痛 み止 めのくすりを使 います。
- 12 -
《代表的な副作用発現時期》
骨髄抑制
吐き気
下痢
口内炎
食道炎
7 日目
14 日目
21 日目
点滴
28 日目
35 日目
点滴
その他気になる症状
がありましたら、医療
スタッフにご相談くだ
さい。
- 13 -
42 日目
監修
国 立 がん研 究 センター中 央 病 院
消 化 管 内 科 グループ
初
版 : 2006 年 12 月
第 2 版 : 2011 年 3 月
第 3 版 : 2013 年 11 月
病 歴 委 員 会 : 2007 年 1 月
編集
薬剤部
編集協力 消化管内科
看護部
撮影
フォトセンター
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