離島(大島)での訪問リハビリステーションの活動 報告

O1-1
O1-2
○森山 隆(理学療法士)1),阿部 勉2)
○片山 悠(理学療法士),関本菊臣,中谷舞子,古河拓也
離島(大島)での訪問リハビリステーションの活動
報告 −資源が少ない地域での訪問リハビリステー
ションの有用性について−
退院後1ヶ月間の試験的在宅生活から施設入所に
至った事例〜家族・ケアマネジャーと訪問リハビリ
の連携による関わり〜
1)一般財団法人 訪問リハビリテーション振興財団 気仙沼訪問リハビリステーション
2)NPO法人 全国在宅リハビリテーションを考える会
医療法人和同会 宇部西クリニック
訪問看護ステーション ハローナース宇部西
【はじめに】利用者のデマンドを尊重することは、重要なことであ
る。同時にニードを見つけていくことも我々の役割である。今回、
在宅復帰を要望しているが回復期リハビリテーション(以下リハ)
病棟退院時点では独居生活が困難であった利用者に対し家族、ケ
アマネジャー (以下CM)と協力し1ヶ月間の試験的在宅生活を行う
ことで、施設入所へと移行することが出来たのでここに報告する。
【利用者紹介】66歳女性。右視床出血後遺症。全動作に一部介助
を要する。発症前は独居。長女は海外在住。
【経過】長女が1ヶ月
間滞在することで試験的在宅生活が可能となった。その間に独居
生活が可能か判断するためCMより訪問リハへ依頼があるが、限
度額の関係上合計で3日行うこととなる。初回時、長女より生活
状況の聴取を行い、想定を超える介助量があることが分かる。動
作確認、環境調整を行いCMに状況を報告する。2日目、動作能力
が向上し介助量軽減しているが自立レベルには至っていない。本
人、長女に施設も検討することを提案しCMに報告する。最終時、
独居困難であると判断する。本人、長女ともに納得される。また、
前回の情報提供によりCMが施設入所の準備を進めていたため長
女の滞在期間中に入所することが出来た。
【まとめ】今回、結果と
して独居生活は困難であった。しかし家族、CMと協力し試験的
在宅生活期間を持てたことで本人が実際の生活を経験し納得のい
く施設入所につなげることが出来た。
【はじめに】東日本大震災復興特区法により開設された当事業所
は、気仙沼市街地だけではなく離島(大島:人口2810人、高齢化
率39.9%)や山間部等の医療・介護サービスが極端に不足してい
る地域にも積極的に訪問リハビリテーション(以下、訪問リハビ
リ)サービスを提供している。
【事業紹介】気仙沼市には回復期病
棟の運営機関が存在せず、在宅の医療・介護サービスも供給不
足であった。その状況を少しでも解決するために当事業所は平
成26年10月に開設、現在は作業療法士兼管理者1人、理学療法士
3人の職員体制で運営している。開設当初より離島へはフェリー
で通っており、現在14人(平均年齢79歳、要支援2から要介護4)
に訪問リハビリを行っている。利用者の病期は、回復期が6人、生
活期が8人である。したがって、身体及び生活機能の改善、福祉用
具の調整のみならず日常での活動や地域社会への参加を促してい
る。【考察】離島は交通の利便性が悪く医療・介護サービスが十
分でないために、病状や身体機能が悪化しているのに見過ごされ
ている場合が少なくない。このような地域において、医療・介護
サービスと連携し、現状の課題と解決策・予後予測を提案できる
訪問リハビリは重要である。また、職員体制の整った訪問リハビ
リステーションは、地域の実情に合わせながら安定して継続的に
サービスを提供することが可能であり、サービス提供量の格差是
正に有効であると考えられる。
O1-3
O1-4
訪問リハビリにおけるホームエクササイズの実施率
と介護度・認知機能の関係について
地域における訪問リハビリの役割〜他職種の見地か
らの概念構築〜
○武田真也(理学療法士)1),松本 拓2),岩下崇博1),
武者ありさ1),村瀬寛紀1),羽田哲也3)
○濱崎圭祐(理学療法士)
,岩崎 航,松本倫明,古城哲也,
斎藤 仁
1)医療法人社団永研会 永研会クリニック リハビリテーション科
2)医療法人社団永研会 地域連携室
3)医療法人社団永研会 永研会クリニック
医療法人社団紺整会 介護老人保健施設 フェルマータ船橋
【はじめに】当施設の訪問リハビリではADLの獲得や改善を目的
に、利用者自身が行うホームエクササイズ(以下HE)の指導に力を
入れて取り組んでいる。HEによる運動効果は機能維持や改善に
有効であると報告がある。一方、非監視下で行うと実施率が低く
なりやすいとの報告もあり、運動継続を促すための戦略が課題で
あるといわれている。当施設では、HEの定着を目標にした取り
組みを行っている。本研究の目的は、
HEの実施率について調査し、
介護度と認知機能面の関係を調査することである。
【対象】当施
設の訪問リハビリの利用者29名(女性17名、男性12名)を対象と
した。平均介護度は2.7、要支援2は3名であった。疾患の内訳は
整形疾患14名、中枢疾患12名、内部疾患2名、呼吸器疾患1名であっ
た。【方法】実施率をチェックリストから調査した。HE週3回以
上継続できたものをHE定着群、週3回以下をHE非定着群と定義
した。認知機能は長谷川式簡易認知機能スケール(以下HDS-R)を
対象者全員に実施した。実施率、認知機能、介護度の関係性を調
査した。
【結果】HE定着群は59%、HE非定着群は41%であった。
HE非定着群は介護度4以上、HDS-R20点以下で多い傾向にあっ
た。
【考察】護度や認知機能の低下はHEの実施率に影響する可能
性が在ることが示唆された。効果的なHEを実施していくために
は、介護度や認知機能を検討した上で、必要に応じて、家族や施
設職員の協力のもと監視下でHEを行っていく必要がある。
【目的】リハビリテーション(以下リハ)職以外の方が思う多職種
連携における訪問リハの役割と、求めている事を確認し、いかに
共同してサービスの提供をすべきかを検証する。
【方法】居宅事業に従事する医師、歯科医師、看護師、歯科衛生士、
医科事務、歯科事務、訪問リハ事務、ケアマネジャー各職種から1
名に対し、訪問リハの役割について半構造化面接を実施。インタ
ビュー内容は録音して逐語録におこし、修正版グラウンデッド・
セオリー・アプローチを用いて分析をおこなった。
【結果】他職種における訪問リハの役割に関しては「心身機能」
「活
動」
「環境調整」など利用者に対する「直接的なリハ」というカテゴ
リーの概念と「障害者の生活の見通しの情報源」や「障害者の生活
を組み立てる知識・技術」
、
「ADL低下時の相談相手」など「間接
的なリハ」というカテゴリーの概念の他、
「不明」という概念も生
成された。結果のイメージとしては「出入り口のないデザイナー
ズ住宅」が生成された。
【考察】訪問リハの役割に関しては、リハ職にとっての既知の役割
が再確認された一方、全体的には「不明」という概念に覆われてい
た。これは「リハ」という言葉は知っていても、実態がどうである
かわからないということを示していた。地域での多職種連携にお
いて、訪問リハの役割を明確にするためには、まず訪問リハの実
態を知って感じていただくことが重要と考えられた。
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O1-6
○中村 翔(理学療法士)1),岩田 学1),佐藤優子1),
今田直樹1),沖 修一2),荒木 攻2)
○中筋祐輔(理学療法士)1,2),栗田洋平2),伊藤晃洋1)
1)医療法人光臨会 荒木脳神経外科病院 リハビリテーション部
2)医療法人光臨会 荒木脳神経外科病院 診療部
1)在宅総合ケアセンター元浅草 たいとう診療所
2)初台リハビリテーション病院
ロック好きな片麻痺者のライブ参加に向けた訪問リ
ハビリテーションの取り組み
在宅高齢者への訪問リハビリテーションの効果の解
明
【諸言】平成27年度の介護報酬改定にて活動と参加に焦点を当て
たリハビリテーションの推進が強化された。しかし、実態調査で
も参加に向けた取り組みが少ないのが現状である。この度「ライ
ブに行きたい」という症例を担当したため、参加ニーズに焦点を
当てた訪問リハビリテーションの取り組みについて報告する。
【症
例紹介】脳出血により重度の右片麻痺を呈した56歳男性。車いす
生活でサービス付き高齢者向け住宅に入居中。失語症により他者
交流は少なく閉じこもりの生活。趣味は音楽鑑賞(ロック)やカー
プ観戦。
【経過】訪問時、好きな音楽を身近で聴けるように環境調
整を行い「ライブに行きたい」との主体性を引き出す。ライブ参
加に向けて、1.療法士による会場の下見、2.会場内での動作確認、
3.症例や他職種、会場スタッフも含めて情報共有を図る。ライブ
参加後は行動範囲の拡大とともに、認知項目(表出、社会的交流、
問題解決)
のFIM点数が増加した。
【考察】
生活機能の向上に繋がっ
た要因として、ライブに参加できたことで活動意欲の向上や主
体的参加の促進に繋がり、社会的交流の場が増えたことが影響し
ていると考える。【まとめ】活動と参加に焦点を当てたリハビリ
テーションを行うためには、フォーマルサービスだけでなくイン
フォーマルサービスの活用も重要となる。そして、地域との協働
を図り、社会参加を支援することで「自分らしくいきいきとした
生活」に繋がることを期待する。
【目的】障害を有する高齢者数は増加の一途であり、在宅サービス
を必要とする高齢者も増加している。訪問リハビリテーション
(訪問リハ)は生活再構築として期待される一方で、介護保険の受
給をみるとサービス利用があまり進んでいない。そこで、訪問リ
ハが利用者の身体機能、生活機能、精神機能にどのような影響を
及ぼすのか検証することを目的とする。
【方法】訪問リハ利用開始直後の対象者9名において、身体機能の
握力と虚弱高齢者用10秒間椅子立ち上がりテスト(Fair CS-10)、
日常生活機能の機能的自立度(FIM)と生活空間の広がり(LSA)、
精神機能の状態-特性不安(STAI)を開始直後と3ヶ月間後に測定
して、比較検討した。
【結果】LSAの総得点とカテゴリー2(敷地内での活動)にて有意
な改善が認められた。身体機能のFair CS-10は有意な改善を認め
たが、握力は変化がなかった。FIM、STAIは半数例で改善傾向で
あったが、有意な変化を確認するには至らなかった。
【考察】Fair CS-10とLSAでは有意な改善が得られ、訪問リハの効
果を確認できたが、主疾患等を揃えるなどの課題も明らかになっ
た。今後は評価項目を再検討し、症例数増加と調査期間延長によ
り身体機能や精神機能に対する効果を継時的に追跡していく必要
がある。また個々の症例の目標、その達成度等も調査検討してい
くことが重要と考える。
O2-1
O2-2
○花岡真史(理学療法士)1),大井 亮2)
○齋藤真実子(言語聴覚士)
1)JA佐久浅間 生活部 介護福祉課(JA長野厚生連佐久総合病院より出向)
2)JA佐久浅間 生活部 介護福祉課(JA長野厚生連小諸厚生総合病院より出向)
医療法人 青木内科小児科医院
介護老人保健施設 あいの里リハビリ苑
通所介護における機能訓練加算者のADL変化と訓練
効果についての考察
通所リハビリの利用をきっかけにコミュニケーショ
ン意欲に改善がみられた一例
【はじめに】入院中の訓練に拒否傾向を示していたが、通所リハ
ビリへの参加をきっかけに意欲が向上し、他者とのコミュニケー
ションに改善がみられた事例の経過を報告するとともに、通所リ
ハビリにおける多職種からのアプローチの効果について考察す
る。【事例】A氏、男性、78歳、要介護3。主病名は小脳梗塞、腹部
大動脈瘤破裂、気管支喘息。ST評価として嚥下障害、音声障害、
呼吸機能低下を認めた。
【経過】腹部大動脈瘤破裂にて入院後、病
院での訓練時には声を荒げて拒否するなどの言動がみられてい
た。自宅への退院後、通所リハビリへの参加にも拒否的であった
が、ケアマネジャーの働きかけもあり、利用を開始。主訴は「パ
ンが食べたい、はっきりしゃべりたい」であり、STの介入を中心
としたプログラムを提供することとなった。初回訓練前は拒否的
な言動がみられたが、食事面での希望が叶えられたことや、発話
面での機能向上を実感できたことなどから、徐々に積極的に訓練
に取り組むようになった。それに伴い、ST以外のスタッフや他利
用者、家族とも自発的にコミュニケーションを取る場面が増え、
拒否的言動もなくなり笑顔がみられるようになった。
【考察】入
院中の課題として“意欲低下による般化の困難さ”が挙げられてい
た。今回の事例では、訓練場面以外にもスタッフが日常的に発話
を促す声かけを行ったことで、
「発話で応えたい」という本人の
意欲を引出すことができたと考える。
JA佐久浅間の介護福祉事業は、2005年より近隣のJA長野厚生連
病院へ業務出向を依頼、2病院より出向した理学療法士2名が通所
介護施設の機能訓練指導員(看護師)に対し、機能訓練業務の指導・
助言を行っている。施設数に対し理学療法士配置が少ない点や近
隣地域の通所介護需要の点を検討し、介護度の軽・重度に関わら
ず対応できる機能訓練メニュー『ADL体操』を考案、現場職員が
主導でサービス提供できるよう指導してきたが、その効果判定は
成されてこなかったのが現状である。今回、JA佐久浅間通所介護
5施設において、個別機能訓練加算Iもしくは運動器機能向上加算
を継続利用した通所介護利用者のADL評価を実施。1年後の結果
と比較することで、当通所介護施設で行っている機能訓練のADL
維持効果について検討した。対象は平成26年4月現在、JA佐久浅
間通所介護5施設で個別機能訓練加算Iもしくは運動器機能向上加
算を算定している通所介護利用者365名(男性91名、女性274名)。
平均年齢は86.30±6.63歳、介護度の内訳は要支援者69名、軽度介
護者184名、重度介護者112名。ADL評価は通所介護施設内での
評価であることを考慮し『デイサービスでしているADL』を対象
にFIMの運動項目を中心に実施。1年後の比較は、平成26年4月か
ら平成27年4月までに利用を中止した者、長期にわたる入院・入
所により通所介護が継続的に利用されていない者を除外し、1年
後のADL状況を比較し、結果を考察したので報告する。
45
O2-3
O2-4
○坂本善美(作業療法士)
,長野 剛
○東ヶ崎裕(作業療法士)1),浅野有子1),池田八郎2),横山奈穂子1)
医療法人社団久英会 高良台リハビリテーション病院
1)介護老人保健施設 涼風苑
2)池田病院
デイケア利用者に対する園芸活動の有効性について 〜シングルケースでの検討〜
【はじめに】先行研究より、園芸活動は日常生活の中でできること
や喜びが少なくなっている高齢者の有用感を高め、精神面や行動
面の改善をもたらすことが示唆されている。今回、不安が強い症
例に対する園芸活動の有効性を検討した。【症例紹介】90歳代女
性。要介護1。通所リハビリ週3回利用。ADLは自立しているが、
悲観的な発言も多かった。State‐Trait Anxiety Inventory‐form
JYZ(以下、STAI)を実施したところ、特性不安項目の点数は高不
安群にあたる48点であった。
【方法】シングルケーススタディー
のABABデザインを用い、ベースライン期(A期)は通常の個別療
法、介入期(B期)は園芸活動を取り入れた個別療法を実施。期間は
各期1ヶ月の計4ヶ月とし、個別療法の前後でSTAIの状態不安項
目の評価を実施した。
【結果】個別療法前後のSTAIの状態不安の
差(緩和度)の平均は、ベースライン期は6.92点、介入期は17.08点
であった。
【考察】結果から、特性不安が高く、不安を感じやすい
症例にとって、園芸活動を取り入れた個別療法の方が、不安状態
が緩和されていることが分かった。精神面だけでなく行動面の変
化として、これまで自宅での会話が少なかった症例が、苗の植え
方を家族に教わり、スタッフに伝達してくれるようになるなど、
家族との会話の機会が増えた。園芸活動を取り入れた個別療法は、
不安を感じやすい性格傾向であっても、精神面や行動面の改善を
図る為の有効な手段になると考える。
生活行為向上マネジメント
〜その人らしい目標のあり方〜
【はじめに】日本作業療法士協会では、平成20年より生活行為向上
マネジメントを推進し自己実現に向け積極的・活動的に営むこと
が出来るよう支援の取り組みを行っている。当苑でも在宅生活を
支える上で「その人が本当に望む暮し」を考え悩みながら支援し
ている。今回、目標のあり方に焦点をあて支援を行ったため、以
下に報告する。【症例紹介】60歳代、男性。元消防士。生活歴:病
前は近所の高齢者宅を定期的に訪問するなど地域活動に積極的。
現病歴:脳出血・もやもや病。障害名:右片麻痺、失語症、前頭
葉機能障害。車椅子自操で室内移動を行い起居・移乗・排泄動作
をなんとか自力で行う。固執・保続的な訴え多く妻に対して怒鳴
る場面あり。本人希望:何でもできる。妻の心境・希望:夫が変わっ
てしまい悲しい。夫婦で楽しみのある老後を過ごしたかった。今
はゆっくり過ごしたい。
【生活行為向上マネジメント】目標:夫
婦がより良い時間を過ごせる。介入:生活行為に必要な基礎・基
本練習、集中し落ち着ける活動支援、活動・参加を本人と共に振
り返る社会適応練習【考察】認知・高次脳機能の低下で現実的な
目標を表出できない方は多い。過去・現在・未来と連続する生活
時間軸の中でICFにおける各要素が相互に作用し、その人らしい
生活行為を生み出している。OTが専門化として目標を定め、本人・
家族が自然に到達できるよう支援をしていくことが重要。今後も、
事例を経験し学んでいきたい。
O2-5
O2-6
○浅野信一(理学療法士)
,木内 迪,田中裕之,松崎良範,
木村美咲,毛利元樹
○牧野愛子(介護福祉士・ヘルパー),金野由加里,福原理佳,
吉川准史,大住由希
社会医療法人若竹会 つくばセントラル病院
総合リハビリテーションセンター
医療法人真正会 中央クリニック デイリハビリテーションセンター
短時間通所リハ利用者の半年間の臨床評価指標から
みた一考察
企画から片付けまで利用者主体で行う活動を通し
て、主体性の発揮と役割作りを目指した取組み
【目的】当院通所リハビリテーション(以下リハ)は1時間以上2時
間未満の短時間通所リハ、短時間型介護予防通所リハに特化した
運営をしている。今回7ヶ月に及ぶ臨床評価指標測定から得られ
た知見について報告する。
【方法】対象は2014年1月〜2015年3
月の間在籍し計3回以上の各種臨床評価指標(BI、TUGT、10m歩
行時間とステップ数、握力、膝伸展筋力)の測定が連続して可能
であった利用者41名(男性19名女性22名、80.2±9.4歳)
。直近7
か月間の3ヶ月間隔3回の測定値の比較と指標間の関係を調べた。
【結果】平均介護度は1.3。3回の測定間で有意な変化があったの
は握力のみであった( 1回目−2回目間で低値化)
。3回の平均値
は、BIは91.1±8.9点、TUGTは20.1±14.8秒、10m歩行は17.2±12.2
秒(ステップ数26.6±9.8歩)
、握力は20.1±7.0kgf、膝伸展筋力は
17.4±7.9kgf。TUGTと10m歩行・ステップ数に強い相関、BIと
10m歩行時間・ステップ数、握力と膝伸展筋力に相関、要介護度
とBIに弱い負の相関がみられた(p<0.05)
。【考察】今回有意な変
化が生じなかったものの、大半を占める後期高齢者が大きな変動
なく機能を維持していることが示唆されたと考える。また筋力と
移動能力は必ずしも結びつかないことも示唆された。障がいを持
つ高齢者の生活機能の維持・向上のためには、セラピストによる
継続した状態把握と適切な個別アプローチは重要であり、今後も
通所リハの有用性を示していきたい。
【はじめに】当事業所は全ての活動をリハビリテーションと捉え、
興味・関心に合わせた様々なプログラムを提供している。しかし、
自分から活動に入っていけない方や趣味活動を持っていない方も
いた。行っている活動もスタッフが運営し、受身で参加する利用
者が多かった。そこで今回、利用者主体でのお茶菓子づくりの活
動を通して主体性の発揮と役割作りを目指した取組みを行ったの
で報告する。
【対象と方法】対象は、当事業所の特定の曜日の利用
者の内、活動内容に同意が得られた24名。方法は、女性利用者中
心の企画会議、失語症の男性を中心とした買い物、調理、片付け、
反省会等を実施。活動前後の通所及び家庭での状況や意識、役割
の変化について聴き取り調査を行った。【結果】活動前には自主的
に自宅で準備をする方もいた。活動中は各行程で利用者が話し合
い、役割分担しながら自主的に活動ができ、お互いに労い合うな
どサポートする様子もみられた。活動後、新たな趣味活動を始め
たり、家事等役割を見つけられ、生活に変化が現れた。また、家
族も本人ができることを理解できた等の声が聞かれた。【考察】こ
の活動を通し、役割を果たしたことで達成感と周囲からの承認が
得られたことで自信に繋がり、新たな活動にチャレンジするきっ
かけになったと思われる。参加者自身の潜在的な可能性を見つけ
る活動の場を、共に創り上げていくことで主体性を引き出すこと
ができると考えられる。
46
O3-1
O3-2
○山本美江子(医師)1),森山雅志3),井上 崇2),宮岡秀子1),
梅津祐一1,3),浜村明徳1,2,3)
○松井陽佑(理学療法士)1),奥山拓朗1),佐藤 隼1),市川 勝2)
地域包括ケアシステム推進に向けての当法人のプロ
ボノ活動による新たな取り組み
神奈川県相模原市における地域リハビリテーション
事業の現状と課題〜リハビリテーション病院と行政
の協働による取組みから〜
1)医療法人共和会 小倉リハビリテーション病院
2)介護老人保健施設 伸寿苑
3)共和会地域リハビリテーションセンター
1)さがみリハビリテーション病院 リハビリテーション科 地域包括ケア推進室
2)さがみリハビリテーション病院 リハビリテーション科
2014年4月より、当法人では、地域包括ケアシステム推進に向け
て、医療法人共和会地域包括ケア推進本部を設置し、職員をプロ
ボノ(専門職のボランティア)として登録し、地域活動の推進を行
なっている。共和会地域包括ケア推進本部は、(1)自助互助活動推
進部会:地域の自助互助活動を推進、(2)地域リハ・ケア活動推進
部会:介護予防や地域ケア会議などの市町の地域支援事業の推
進、(3)連携・ネットワーク推進部会:地域の連携ネットワークづ
くりを推進、の3部門から成り立ち、実際の活動を行なうプロボノ
として、職員257名が登録を希望した。2014年は、認知症カフェ
の実施、高齢者サロン等への支援、市町での地域支援モデル事業
の開始、自治会との連携と地域交流(諸行事への参加)
、社会福祉
協議会等とのネットワーク構築活動、認知症サポーター研修など
を行なった。活動当初は地域活動の場を模索する状態であり、北
九州地区の市町や、市役所、区役所、社会福祉協議会、地域包括ケ
アセンター、市民センター、地域の高齢者サロン、民生委員、老い
を支える北九州家族の会(認知症家族会)などの市民団体等、全て
足を運び、当法人の新たな地域活動の取り組みの説明と相談を行
なった。想定以上の反響があり、現在は地域からの活動要請もあ
るようになり、専門職がプロボノとして活動することが必要とさ
れている地域の現状が明らかになった。2025年に向けて当法人
は活動を継続していく予定である。
【はじめに】当市は現在人口72万人超、高齢化率23.1%の政令指定
都市であるが、2025年には後期高齢者数が1.87倍に、要介護・要
支援者数が1.79倍に増加すると推計されている。我々は、2013
年4月より市の高齢者支援課との協働で地域支援事業に取り組ん
できたので、その経緯と今後の課題について考察する。
【経過お
よび現状】2012年当時、当市は地域リハビリテーション(リハ)資
源に乏しかったため、我々は一次予防および「本人・家族の選択
と心構え」を強化することを目的に、市民協働事業提案制度を活
用した「介護予防と家族支援を主体とした地域リハ事業」を提案
し、採択された。市の担当者と協議のうえ、脳卒中予防をテーマ
に参加・体験型の企画を構成した。2013年4月からの2年間で全
11回の講座を実施、平均参加者は11.1名で、約46%が70歳代で
あった。また、広報活動として『介護予防啓発パンフレット』を作
成、市内の地域包括支援センターおよび行政の関係窓口に配架し
た。【考察・まとめ】参加者からは「自分でできることは自分でや
ろうと思う」など、自助および互助の観点から有意義と考えられ
る感想が多く聞かれ、一定の効果は得られたものと推察される。
一方、公募よりも自治会などの既存の集まりに我々が出向くこと
が参加者数増につながる可能性が示唆され、回復期リハ病棟を有
する医療機関を中心に、地域のリハ専門職が連携しながら積極的
に取り組む必要性があると考えられた。
O3-3
O3-4
○佐藤 隼(作業療法士)1),市川 勝1,2),井戸和宏2),藤本 司3)
○内間利奈(作業療法士)1,2),伊藤顕二郎1,2),安室真紀1,2),
宇田 薫2,3)
1)医療法人哺育会 さがみリハビリテーション病院 リハビリテーション科
2)特定非営利活動法人 Link・マネジメント
3)医療法人哺育会 さがみリハビリテーション病院 脳神経外科
1)医療法人おもと会 大浜第二病院
2)おもと会地域リハビリテーション支援センター
3)クリニック安里
相模原市における認知症ケアネットワーク構築に向
けた取り組み −リハビリテーション専門職の立場
から−
久米島離島支援の経過と今後の展望 〜第2報〜
【はじめに】相模原市の高齢化率は2025年には27.4%、認知症高
齢者数は4万人に達すると推計されており、認知症になっても住
み慣れた地域で生活し続けられる街づくりは喫緊の課題である。
本報告では、地域におけるリハビリテーション(以下、リハ)資源
の供給拠点の立場から、認知症の人の地域生活支援に向けた取り
組みを紹介するとともに、街づくりにおけるリハ専門職の役割に
ついて考察を加える。
【取り組み】当院の持つリハ資源を活かし
た取り組みとして、1)もの忘れ外来でのリハ専門職による相談支
援、2)行政機関から受託した認知症予防事業を実施。また、地域
の特定非営利活動法人との協働による、3)認知症サポーターネッ
トワークさがみはらの設立、4)市内各地での認知症カフェの展開
に取り組んだ。結果として、もの忘れ外来相談51件、認知症予防
事業受託(市内2区)とともに、市内認知症カフェ4か所への開設・
運営支援、若年性認知症当事者会への出席、地域資源のネットワー
ク化および認知症サポーター養成1,000名以上(いずれも2014年
度)等の成果を出している。【考察・まとめ】地域生活支援におい
ては自助・互助の視点から住民を巻き込んだ街づくりが重要であ
る。取り組みの結果から、リハ専門職が有する生活機能を捉える
視点や「参加」を見据えた支援介入などの専門性が街づくりの一
助になることが示唆され、継続的に地域へアウトリーチする必要
があるものと考えられた。
【はじめに】久米島町の離島支援として保健師の同行訪問を行っ
てきた。2011年の本大会にて、今後の課題として、町の在宅サー
ビスに関わる従事者の技術向上の機会が少ない事を報告した。今
回は、その後の、課題の取り組みの経過と今後の展望を報告する。
【経過】2013年度は年10回介入。限られた介入回数でできる支援
として、中心となるデイサービスを数か所募り、事業所毎に目標
を決めて「モデル事業所」として介入。2014度は介入回数が4回
と減少したため、モデル事業所へは昨年のフォローとステップ
アップした目標で介入。同時に、他の事業所も含めたリハビリネッ
トワーク作りを目標とした。また、セラピスト不在時でも職員が
対応できるように資料を用いての勉強会や、事業所同士が見学で
きるシステムを導入。
【結果】利用者個人に合ったリハビリ提供を行う等、地域主体での
積極的なリハビリ提供が行えている。職員もリハビリに対する意
識変容が見られ、勉強会ではモデル事業所以外も参加し、ディス
カッションや情報交換が行えた。2015年度は介入回数が12回へ
増加予定。
【今後の展望】地域包括ケアシステムの構築に向け、離島住民も含
め、いきいきと暮らせるように、専門職として地域の持っている
力の向上に努めたいと考える。今後もリハ専門職へのニーズを聞
き出しながら、物理的な問題を抱えている離島であっても可能な
連携方法を構築していきたい。
47
O3-5
O3-6
○吉田理紗(言語聴覚士)
○土井貴詔(理学療法士)1),今田直樹1),佐藤優子1),岩田 学1),
沖 修一2),荒木 攻2)
札幌西円山病院 デイケア室
1)医療法人光臨会 荒木脳神経外科病院 リハビリテーション部
2)医療法人光臨会 荒木脳神経外科病院 診療部
地域包括ケアシステムに基づいた認知症カフェの実
施
区民祭りに参加して得られた経験
【はじめに】新オレンジプランでは認知症カフェの普及が謳われ
ている。当院で実践した取り組みについて報告する。
【目的】本人および家族のエンパワメント、認知症に関する啓蒙と
リハビリテーションを提供する。また、認知症サポーターを活用
し、ボランティアを受け入れる。
【方法】2014年12月から2015年3月までの月1回、札幌市認知症支
援事業推進委員会と共催。地域包括ケアシステムの理念に基づ
き、当院デイケア室を利用、リハビリを中心とした多職種が対応
を行った。認知症の方やその家族、地域住民やボランティアを対
象とし、広報誌等で周知した。内容はプログラムを決めミニ講座、
リハ体験、相談会とした。
【結果】参加者数1回目18名、2回目23名、3回目19名、4回目21名。
計4回の内、
認知症当事者の参加は6名。認知症家族や介護経験者、
ボランティア参加者は繰り返し参加している方が多かった。参加
者からは、様々な問題の相談ができ、楽しい雰囲気で安心できた
という意見が聞かれた。
【考察】参加者からは、認知機能の低下に限らない問題にどう対処
するべきか助言を求めていることが多く、即座に対応できる各領
域の専門性は重要であった。また、介護保険以外のインフォーマ
ルなサービスとして、気兼ねなく参加できる敷居の低さが大切で
あると考える。今回の結果から認知症当事者や新規の参加者に結
びついておらず、今後の課題として考えていく必要がある。
【はじめに】平成25年度現在、我が国の健康寿命は男性70.42%、
女性73.62%。広島市の健康寿命は男性69.96%、女性72.19%と
平均を下回っている現状となっている。
【活動・現状】当院は広島県地域リハビリテーション広域支援セ
ンターとして活動しており、今回「広島市西区民祭り」で得た体力
測定結果を考察し、現状と課題について報告する。
【検証・結果】測定項目は、問診、立ち上がりテスト、2ステップテ
スト、
Time Up Goテスト(以下TUG)、
Functional Reachテスト(以
下FR)を実施。参加者は男性13名、女性36名の計49名を測定。そ
のうち65歳以上の参加者28名(男性6名、女性22名)の測定結果を
世代別平均値と比較・検討した。結果4項目全て平均値を下回っ
た。
【課題・考察】今回の体力測定は多数の参加があり、問診情報から
も地域高齢者の健康意識が高いことが伺えた。しかしながら運動
の実施までには至っていない参加者が4割おり、運動習慣が定着
していないことが平均値を下回った要因であると考える。現在当
センターでの活動としてリハビリ専門職、行政保健師、民生委員、
地域包括支援センターとの交流は広がってきており、地域住民が
主体となって行う集いの場づくりへの支援も増えてきている。今
後は地域行事で得られたデータ分析に加え、地域サロン等への支
援を積極的に行い、健康意識向上に向けた普及・啓発活動を行っ
ていきたい。
O4-1
O4-2
○小原千夏(社会福祉士)
,宮岸潤子,舟見由佳
○小川香織(社会福祉士)
金沢脳神経外科病院 地域医療福祉部 医療福祉相談課
札幌西円山病院 地域連携推進室
医療依存度が高い状態で自宅に退院する患者への
退院支援について
精神障害者の地域生活実現へ向けた連携の課題に
ついて
1.はじめに近年、医療依存度が高い状態での退院支援をするケー
スが増えてきている。医療依存度の高い方の退院支援は家族に
とって大きな不安をもたらす。この事例では、私がMSWになっ
て間もない頃に、家族が自宅退院直前まで不安を抱えていたケー
スについて、考察し報告する。2.事例紹介A氏、80歳、男性。妻
(78歳)と2人暮らし。病名は右脳皮質下出血。病前はADLほぼ自
立。平成25年12月9日に発症し当院に入院。左片麻痺あり。ADL
は全介助。1月15日に回復期病棟に転棟。発熱で経口困難となり、
5月から経鼻栄養となった。妻からは在宅での経鼻栄養の管理や
介護についての不安が多く聞かれ、退院先について在宅か施設か
で迷いが生じたが、介護指導や在宅サービス担当者との連携で自
宅退院の運びとなった。3.考察このケースでは、多くの在宅サー
ビスが必要になった為、ケアマネジャーや在宅サービス担当者と
密な連携を行い、準備を進めた。しかし、医療依存度が高いとい
うことから当初より妻が漠然とした不安を抱えており、最後まで
退院先について迷いが生じていた。そのことから、MSWは早期
から多職種と連携した上で、問題点を明確にし具体的な対策を立
て、家族が自己決定できるように支援を行っていく事が必要であ
ると考えられる。
【はじめに】2025年問題が到来することもあり、高齢者への支援
はシステマティックに整備されつつあるが、対象とする年齢層が
広い障害者施策ではサービス利用までに要する時間が長く、障害
者の地域生活を阻害する側面があると感じられた事例について報
告する。
【事例】47歳 女性 独居 ウェルニッケ脳症の診断。H23年よ
りアルコール依存症の診断で通院治療するも自己中断。H26年8
月より飲酒量増加し、10月に自宅で倒れている本人を家族が発見
し救急搬送。記憶障害、歩行障害が残存し回復期リハ病棟へ転院
となる。
【経過】本人は住み慣れた地域での自立した生活を送りたいと希
望され、支援を受けられる共同住宅への入居を検討。社会参加や
自立を促進していく目的でサービス調整を図るも、申請から認定
が下りるまでに時間を要し本人のモチベーションの低下がみられ
た。
【考察】精神障害があっても地域で生活していくことは本人にとっ
ての権利であり、その一助になるはずの制度が地域生活の実現を
遅らせる要因となっているという矛盾が生じている。しかし、制
度の仕組みの問題だけではなく、専門職の相互理解ができていな
いことも要因の一つではないかと考えられた。当院ではこうした
事例が少ないこともあり対応に苦慮したが、今後は支援の標準化
をしていくことを課題としていきたい。
48
O4-3
O4-4
○木村瑛美(社会福祉士)
,田村智香子,守屋明日香,阪口寛子,
小鹿優香,西本ひかる
○桑原和也(社会福祉士)
医療法人社団甲友会 西宮協立リハビリテーション病院
医療法人渓仁会 札幌西円山病院 地域連携推進室
就労していた患者への退院支援と課題
在宅復帰を目指す医療ニーズの高い患者様に対する
連携を考える
【はじめに】入院患者の平均年齢が70歳を超え、退院支援の多く
が介護保険を利用した生活の支援になっている。しかし、それだ
けでなく就労支援を充実させる必要があると感じている。今回
は、発症前に就労していた患者へ焦点をあて、退院支援の現状や
傾向から支援の課題を考察する。
【対象者および研究方法】対象
者:H26.10〜 H27.3に退院した患者231名のうち発症前に就労し
ていた55名(23.8% ) 研究方法:対象患者の入院記録を分析 調査
項目:1)雇用形態2)転帰3)年齢4)FIM 5)家族状況6)経済状況【結果】
1)自営業12名 被雇用者38名 会社役員5名 2)自営復職3名 被雇用
復職9名 リハビリ継続16名 退職28名 3)平均年齢62.7歳 4)退院
時FIM平均 運動項目66.5 認知項目25.4 5)独居9名 家族同居46
名(内扶養家族がいる患者26名) 6)傷病手当対象者14名 障害年金
対象者9名 老齢年金受給者26名 生活保護3名【考察・課題】現在
は、経済的問題が顕在化している場合のみMSWが介入している
が、今後は経済的困窮を予測し介入していく必要がある。適切な
制度案内を行えるよう、アセスメントの内容を検討・改善してい
く。また、退院時に就労相談窓口の利用につながっているケース
が少なく、専門機関との連携強化と退院後のフォローの必要性を
感じた。今後は専門機関の情報収集を積極的に行うとともに、現
在実施している退院後アンケートの内容を再検討しフォローの体
制を充実させていく。
【はじめに】平成27年度の介護報酬改定より、一層の在宅サービス
の充実と在宅・居宅系施設への退院が求められる。介護の重度化
だけではなく、医療ニーズのある方が在宅復帰するために受け皿
となる機関にはどのような事を求め、その機関との連携に焦点を
あて、本研究を発表する。
【目的】人員基準の定められていない、住宅型有料老人ホーム、ま
た配置基準はあるも看護師数は少ない介護付有料老人ホームにお
いて、医療ニーズの高い方が入居可能か。また困難な場合、どの
ような代償手段を用いて、その問題を解決するのかを明確にして
いく。
【対象】居宅系施設へ退院した医療ニーズのある患者様【方法】退
院までの経過と退院後の聞き取り調査による事例検討【結果】A
症例は退院後1か月で肺炎により、搬送先の医療機関にて永眠さ
れた。B症例は入院中に肺炎を罹患し、入院継続中(6/8現在)。
【まとめ】看護師を配置する居宅系施設も多くなってきているが、
夜間帯や緊急時の対応を考えると十分と言い切れない。その中で
の対応方法は医療機関と居宅系施設が情報共有を繰り返していく
と同時に限られた資源の中で代償手段を考えていく必要がある。
また、緊急時に対応可能な医療機関も必要となる。今後医療ニー
ズの高い方が増えていく中で、どこまで地域で対応していけるの
かが課題である。そのためには、一層の地域の実情把握と連携強
化が求められる。
O4-5
O5-1
患者・家族の自己決定におけるMSW支援
患者の予後を変えた経口摂取への取り組み〜チーム
アプローチが及ぼした患者とその家族の心境の変化
〜
○渡邊和紀(社会福祉士) ,加来克幸 ,甲斐麻夜 ,榎嶋理香 ,
林田敬子1),田川恵理2),木村浩美3),前田美智子4)
1)
1)
1)
1)
○鈴木正人(看護師),田邊有三,佐藤寿恵,阿部喜恵,勝又貴夫,
吉田 隆,庄司剛仁,小野寺恭一,大川 晶
1)医療法人社団寿量会 熊本機能病院
2)介護老人保健施設 清雅苑
3)訪問看護ステーション 清雅苑
4)熊本機能病院 在宅サービスセンター
医療法人社団健育会 石巻健育会病院
【はじめに】廃用症候群で食欲、嚥下機能の低下をきたした高齢患
者に対し、多職種で介入を行った結果、3食経口摂取可能となり、
退院に至った経過を報告する。
【症例紹介】E氏94歳男性。娘夫婦と孫の4人暮らし。尿路感染症、
敗血症にてI病院に入院中(19日間)、嚥下機能低下。家族はリハ
ビリや延命治療を希望せず。入院時FIM27点(運動13点、認知14
点)
【経過】入院時は絶食、補液管理。口腔内汚染著明で、定期的な口
腔ケア、吸引を実施した。言語聴覚士による嚥下訓練が開始され
るが、患者の不穏や拒否が強かった為、患者のペースに合わせて
訓練を行った。食事形態や環境を調整し、入院2週目にゼリー食
が1食、6週目に全粥食1食、10週目には介助にて3食経口摂取可能
となった。トイレへ手引き歩行で行けるようになり、入院時みら
れた夜間の不穏が少なくなった。家族はE氏の回復に戸惑いを感
じていたが、MSW病棟スタッフは傾聴し、E氏の様子を伝えるこ
とで、退院を受け入れ、4件施設見学後、納得する施設を選択し、
入院16週目特別養護老人ホームへ退院となった。
【考察】食べるという最も根源的な欲求が満たされたことで、患者
のADLおよびQOL改善に繋がった。認知力低下のある高齢患者
の意思決定は家族により代弁されることが多い。家族の想いや介
護負担を考慮し、患者の最善とされる方向性の選択を多職種で援
助する必要があると再認識した。
【はじめに】本事例は、初めて担当したがん患者であり、クライエ
ントが治療方針や退院後の療養先を悩んだケースだった。今回、
自己決定の過程やMSWの動きを振り返り、ソーシャルワーク支
援を検討したい。
【事例概要】A氏(91歳・女性)病名:食道癌(本
人告知済)、要介護2、ADL:食事(胃瘻)
・入浴のみ全介助、その
他一部介助。長女と2人暮らし。
【経過】左大腿骨骨折後の老健入
所中に嘔吐、X年8月8日当院再入院。食道癌の診断を受け、積極
的治療はしない方針となる。しかし当院退院後の療養先でA氏・
長女共に自宅と転院の間で悩み、時間が経過。MSWは同時進行
で退院調整を始め最終的にX+1年2月18日自宅退院し、在宅生活
継続中である。
【考察】A氏の発言が自宅退院から長期療養に変
わり、MSWや長女はA氏の真意が分からなくなった。長女はA氏
の希望に沿いたいと方向性を決めきれず、一方で、MSWも余命等
の問題に対して支援に必要な判断や行動が分からずにいた。振り
返ると、本人の真意を理解するために、MSWは生活史や関係性を
考慮し、思いを表出できる雰囲気づくりや効果的な声掛けを行う
必要があったと思う。また、クライエントが納得して自己決定が
できるよう、MSWは関係職種と連携し、具体的な案の検討や提示
を行う必要があると考える。以上を踏まえ、今後はクライエント
に寄り添う一方で、常に立ち位置を意識し、SW理論を実践に結び
つけながら、根拠のある支援を展開していきたい。
49
O5-2
O5-3
○池上智之(言語聴覚士)
,堀口里美,佐藤公則
○藤丸浩介(言語聴覚士),黒川優子
社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院
リハ技術部 言語療法科
高松協同病院
多職種連携にて嚥下回数を増やし、嚥下機能向上を
目指した取組みについて
摂食・嚥下障害患者へのチームアプローチ
−食事場面への関わり−
【はじめに】嚥下機能の廃用は、嚥下に関わる器官を使用する頻度
が低下することで生じ、訓練により予防され得ると考えられる。
嚥下頻度を増加させる事により嚥下機能の向上を図る事が重要と
考えるが、他職種との連携により摂食回数の増加を図ることで、
廃用症候群を予防し嚥下機能の向上を目指す取組みを実施し、良
好な結果が得られたので報告する。
【方法】これまで訓練食を摂
取する患者様は主に言語聴覚士のみで摂食訓練を実施し、摂食に
関する病棟への申し送りや他職種との連携は個々の判断や方法で
実施していた。他職種と連携して摂食回数を増加させるために、
以下の2点を実施した。1.病棟へ移行する基準を設けた。2.言語
聴覚士から病棟へ訓練食摂取に関する情報共有の場を設定し、統
一した申し送り方法を作成。
【結果】言語聴覚士以外の職種が関
わり摂食回数が一日1回から2回以上増加し、訓練食を摂取してい
た患者様が、藤島Gr‐4からGr−8へと改善し3食経口摂取できるま
でになった症例がみられた。また、訓練食を病棟へ移行する申し
送りが以前よりもスムーズになり、摂食回数を増加させる事や訓
練食を病棟へ移行する事、病棟を含めたチームとして摂食に対し
て取り組む意識付けとなった。
【考察】他職種と連携して嚥下頻
度を増加させる取組みは、嚥下機能を向上させる事ができると考
えられ、そのためには他職種との連携を図るチーム医療を進める
重要性があると考える。
【はじめに】摂食・嚥下障害への対応は嚥下面のみならず、姿勢・
動作面も重要である。今回小脳出血により摂食・嚥下障害を認
め、入院中に誤嚥性肺炎を発症した症例に対して多職種で連携し、
安全に経口摂取することが可能となり施設退院できたため報告す
る。
【症例情報】80歳代男性。小脳出血。四肢の失調。高次脳機
能障害。ADL全介助。摂食・嚥下能力グレード:Gr.6(藤島)。
【経
過】入院時の食事はベッド上全介助で行った。食事自立度向上の
為、チームで食事環境へ介入していたが入院中に誤嚥性肺炎を発
症。医師をはじめ多職種と連携し全身状態の管理を行った。肺炎
治癒し理学療法士・作業療法士と協力し体力向上を図るとともに
環境調整を行った。また安全に経口摂取を進める為に、多職種で
言語聴覚士と共に食事場面へ介入する事で病棟内の介助方法を統
一した。退院時には安定した食事姿勢を保ち全介助での経口摂取
が可能となり、食事設定を施設へ申し送り退院となった。【考察】
摂食・嚥下障害の症例に対し誤嚥性肺炎の予防として、多職種で
連携し包括的なアプローチを行った。加えてチームで食事場面へ
の介入を行ったことにより、病棟で食事設定・介助を統一し食事
中の疲労の軽減や安定した嚥下姿勢を確保することができたと考
察された。以上より、摂食・嚥下リハビリテーションではチーム
で関わることの重要性を他職種に伝え,協力を求めていく必要が
あると考えられた。
O5-4
O5-5
○田口 恵(理学療法士)
,田村昌樹,山里麻由美,黒岩恵美子,
小森浩史,高松良次,森下奈由子,笠谷洋子,野島由香,
入江隆三郎
○石田 礼(言語聴覚士)1),河村有美1),森田智絵2),平澤京子1),
中村晴江1),三瀬和彦1),杉田正夫1),佐々木秀夫1)
チームアプローチによりADL面での改善がみられた
重度片麻痺と高次機能障害を呈した一症例
失語症・高次脳機能障害を呈した症例に対する復職
への取り組み
〜専門性を活かしたチームアプローチの実践〜
1)医療法人慈光会 甲府城南病院
2)医療法人恵佑会 デイケアさつき
医療法人松藤会 入江病院
【はじめに】脳梗塞により重度片麻痺と高次機能障害を呈した症例
に対し、早期に目標を立て、多職種でアプローチすることでFIM
の改善を得られたため報告する。
【症例】70歳代女性、診断名は右
脳梗塞であり、心房細動と糖尿病を合併していた。急性期治療に
て全身状態安定後52病日目に回復期病棟へ入棟となった。
【評価・
経過】入棟時の意識レベルはJCS1-2、左重度運動麻痺、重度感覚
障害、半側空間無視、注意障害、失行、失認を呈していた。基本動
作は全介助で臥位でもプッシャー現象があった。入棟時FIMは25
点であった。入棟後早期より介護老人保健施設(以下老健)入所
のために軽介助でのトイレ動作獲得、3食車椅子座位での経口摂
取を目標とした。理学療法では姿勢の安定を目標としプッシャー
現象改善の訓練を行い、作業療法では半側空間無視改善のために
正中位を意識させる訓練を行った。看護師やケアワーカーは重度
介助の段階から積極的にADL介入し、リハビリの進行状況に合わ
せた介助方法の変更に対応した。日常生活で反復し行うことで動
作学習に繋がり、169病日目老健へ退院となった。最終評価では
重度麻痺、重度感覚障害残存、半側空間無視軽減、失行や失認は
改善した。基本動作は軽介助となり、ADLでFIM63点と改善が見
られた。【まとめ】早期に具体的な目標をたてることにより多職
種の専門性を活かしたアプローチと、職種間の連携により段階的
にADL動作を獲得することが可能となった。
【はじめに】失語症・高次脳機能障害を呈した症例に復職を目標
にチームで介入した。入院中に脳梗塞を再発し、症状の増悪や心
理的な不安が増したが、チームと家族が連携を図り復職を果たし
た症例について報告する。
【症例】62歳、女性。脳腫瘍摘出術後、
失語症・高次脳機能障害・右同名半盲が出現。術後21日当院転院。
自宅退院を目前に、術後116日脳梗塞を再発。失語症・失読失書
の増悪に加え失行・保続・高次視知覚障害・記銘力障害を主症状
とする高次脳機能障害が出現。
【介入方法】妹が経営する販売店
への復職をチーム共通の目標に、まず、IADLの自立に向け献立の
立案を含めた調理訓練や服薬管理箱の導入など失読・記銘力障害
に対する代償手段の獲得を図った。また、復職に向け失語症、特
に失読失書に対する機能訓練に加え模擬的訓練や実務体験(お試
し出勤)を行い、職務内容や配置について具体的な調整(接客・会
計→調理補助)を実施した。さらに、再発や対人関係、復職など退
院後の生活全般に対する不安を症例・家族と共有しながら解決し
ていった。術後278日に退院、復職を果たした。【まとめ】高次脳
機能障害者の復職には、周囲の障害への理解や援助が必要である。
今回、身体機能・失語症・高次脳機能障害のみならず心理面を含
めて早期から予想される問題点をチームで検討し、具体性を持っ
た機能訓練や環境調整を実施したことで心理的不安要素も軽減さ
れ、復職を可能にしたと考える。
50
O5-6
O6-1
脳出血により高次脳機能障害を呈した小児の長期
回復経過
人工股関節全置換術を受けた患者が安心して退院
するために
○原田真知子(言語聴覚士)1),藤森貴久1),吉澤久美1),
古木ひとみ2),勝野健太2),橋本隆男3),清澤愛子1)
○瀬 大和(理学療法士),本城 誠,赤田直軌,三品亜美,
山田理沙
1)社会医療法人財団慈泉会 相澤病院 回復期リハセンター
2)社会医療法人財団慈泉会 相澤病院 脳卒中・脳神経リハセンター
3)社会医療法人財団慈泉会 相澤病院 神経内科
滋賀県立成人病センター リハビリテーション科 医療部
【はじめに】当院では人工股関節全置換術(以下THA)において、
2013年に手術方法の変更と5週間の入院期間であったクリティカ
ルパス(以下パス)は3週間へ改訂された。当院の2013年度のTHA
患者数は約160人であり、パスの変更に対し術後の患者指導は大
枠で組まれたため指導時期や内容にスタッフ間で誤差を認めた。
THA患者が安心して入院から自宅生活を過ごせることを目的に、
2014年度に実施した当院での取り組みを紹介する。
【取り組み】1.パンフレット作成:看護師・リハスタッフ・医師・
その他スタッフでパンフレットを作成。術前から退院後までの診
療計画や日常生活での留意事項などを記載。2.カンファレンス・
回診の開催:隔週で医師・看護師・リハスタッフ合同でカンファ
レンスを開催。回診に代表看護師・リハスタッフも参加し、患者
を交え進行具合や歩行能力の確認を実施。3.病棟との連携:日常
生活訓練を病棟で実施し、看護師と確認することで病棟内の日常
生活の自立を図る取組を実施。
【結果・考察】関連スタッフにてパンフレットを作成することで、
関係スタッフならびに患者自身が診療計画を理解し、術後の進捗
状況を把握し、時期に応じた動作の獲得から日常生活の自立と自
主練習を積極的に取り組むことができた。また、回診やカンファ
レンスに加え、病棟と日常的に連携することで早期の日常生活の
自立を図れた。そのため入院期間が短縮されても安心して退院後
の生活を送ることができた。
【はじめに】脳動静脈奇形破裂により高次脳機能障害を呈したが、
長期的介入で障害を受容し、社会復帰した一例を報告する。
【症例】10代右利き女児。現病歴:頭痛と意識障害にて発症。CT
にて右側頭葉皮質下出血と脳ヘルニアを認め、同日脳動静脈奇形
摘出術、開頭血腫除去術施行。既往歴:特記事項なし。神経学
的所見:麻痺なし。神経心理学的所見:WISC 急性期VIQ80,
PIQ73,FIQ74,VS80,PO72,FD88,PS80,発症3年後 VIQ72,
PIQ92,FIQ79.VS73,PO87,FD88,PS100。
【経過】術後3日目からSTを開始し、発症から約1ヵ月で自宅退院。
退院から約2週間後に段階的な復学開始。外来は月1回から6ヵ月
に1回と徐々に間隔をあけ、本人及び母親から生活状況、友人との
コミュニケーション状況、学習やクラブ活動の状況等の情報収集
や指導、定期的な高次脳機能評価を実施した。急性期は退行や脱
抑制を、退院時にはコミュニケーション障害および注意・記憶障
害を、中学では易疲労性、精神面の不安定さ、および学業成績の
不振を認めたが、高校に進学し新たな人生への再起に至った。
【考察】小児では発達や環境変化に伴い症状が変化することが特徴
とされ、劣等感や失敗から生じる二次的な障害予防が欠かせない。
発達途上の脳損傷の影響を考慮しながら長期的にフォローできた
ことが高次脳機能障害の改善や二次的な障害予防に有効であった
と考えられた。
O6-2
O6-3
○菊池瑞恵(作業療法士)1),村川美幸1),石川雅樹1),高木理彰1,2)
○網代祐介(社会福祉士)
他職種と情報を共有しALS患者のQOL向上を目指し
た一症例〜安全な歩行動作の獲得のために〜
回復期病棟入院中に発症したALS患者の退院支援に
関する一症例 〜患者の意思決定に即した多職種に
よる退院支援〜
1)山形大学医学部附属病院 リハビリテーション部
2)山形大学医学部 整形外科
亀田リハビリテーション病院
【はじめに】当院は亀田メディカルセンターの一枝として、56床を
有する単科の回復期リハビリテーション病院である。専門診療に
関しては母体である亀田総合病院及び亀田クリニックに全面的に
委ねている。今回は、当院入院中に亀田クリニック神経内科への
コンサルテーションによって筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)の診
断を受け、
「最期は家で」という本人の意思に添い、多職種で退院
支援を行った症例について報告する。
【症例】80歳男性。後縦靭帯骨化症の手術後のリハビリ目的で当
院に転入院。2週後、嚥下機能低下が見られ、精査の結果ALSの確
定診断がされ、翌々日に告知。本人と家族の意思により在宅看取
り方針となった。その後急速に進行。入院から1ヶ月、告知から
は10日で自宅退院した。退院後、12日間の在宅生活を経て看取り
となった。
【支援】診断告知後の本人・家族の意思に添い、翌日から多職種に
よる退院準備を開始。看護師による吸引・ストマ指導、PT・OT
による介助指導・家屋評価、本人の望みを叶える為の刺身嚥下食
の作り方・焼酎のとろみ付け指導等、MSWによる在宅サービス
導入準備を併行し、訪問看護やケアマネらとケア会議も施行した。
【まとめ】本人・家族の意思決定と予後を考慮し、院内外部各職種
とのスピーディーな協働により、希望する最期への支援を行うこ
とが出来た。後日、ご家族より満足のいく看取りが出来たとお手
紙を頂いた。
【はじめに】筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)により、ベッド上臥床
状態となっていた症例に対し、他職種と情報を共有し、QOL向上
のため歩行動作の獲得を目指し介入したので以下に報告する。
【症
例】60歳代男性。発症より約2年経過し、呼吸苦出現し当院へ救
急搬送され、入院2週後よりリハビリ開始。筋力はMMTにて上肢
0〜1、下肢5、頸部・体幹3レベル。立位、座位は自立、寝返り、起
き上がりは軽介助。呼吸機能低下のためNPPV管理となっていた。
【経過】身体機能維持のリハビリを実施していたが、座位、立位保
持練習を追加すると、本人より「歩きたい」との希望があり、同時
期にリハビリの進行具合、ADLの改善状況を見ながら自宅退院の
方針となった。主治医、看護師、理学療法士、ソーシャルワーカー
と情報交換を行い、NPPV装着下での安全な歩行動作について協
議した。歩行練習を開始するにあたり、介助者が呼吸器の移動と
蛇腹の支持をしなければならないため転倒リスクが高くなり、自
宅退院後も実用的ではないと考えた。そのため蛇腹を病衣に固定
できるようベルクロにて作製し、介助者が蛇腹を持つ必要をなく
すことで安全な歩行が可能となった。
【考察】他職種と情報を共有
した上、呼吸器の蛇腹を固定したことで安全な歩行が可能となり、
継続的に運用していくことができると考える。本人の残存能力を
活かし、
「歩きたい」という希望に沿ったリハビリを展開した結果、
QOL向上へつながった。
51
O6-4
O6-5
○渡 哲郎(理学療法士)1),伊藤和夫2),児島 諒1),本谷郁雄1),
櫻井宏明3),金田嘉清3)
○山岡豊美(看護師)
1)医療法人社団カワムラヤスオメディカルソサエティ 河村病院 リハビリテーション科
2)河村病院 神経内科
3)藤田保健衛生大学 医療科学部 リハビリテーション学科
医療法人社団江頭会 さくら病院
Lance-adams症候群の一症例 適切な投薬とリハ
ビリテーションにおけるチームアプローチの重要性
夜間不眠を訴える患者の眠前薬減量・中止を行った
試みと結果
【はじめに】加齢とともに睡眠効果が不良となり、夜間不眠となる
ためほとんどの高齢者は睡眠薬に依存的傾向にある。又、その不
眠が持続することで、身体、精神面に及ぼす影響は大きい。夜間
不眠を訴える患者の睡眠薬の減量を行った患者が、QOLの向上と
ADLの拡大と失禁軽減した症例を報告する。
【症例】80代男性。左急性脳血栓を発症し入院。MMSE22点。下
肢のしびれ、呂律不調あり、ほぼ、全面介助でオムツ着用、尿意訴
え時のみ介助で車椅子でトイレ誘導を行なっていたが、失禁多く
寝衣汚染著明にみられていた。
【経過】日中傾眠傾向で食事とリハビリ以外は臥床多く、傾眠傾向
であった。夜間は睡眠薬投与後にも関わらず、再三不眠を訴えら
れ追加睡眠薬を投与していた。24時間失禁多く、家族からの不満
もあった。医師、家族と相談し、睡眠薬はプサセボを使用し、入
眠困難時のみ追加睡眠薬を投与を行った。その後、夜間の睡眠薬
の追加はほとんどなく良眠出来た。日中覚醒は良くリハビリも励
行出来、歩行器でのトイレ排泄可能となった。表情もはっきりと
し、発語も清明で、夜間自力での尿器での排尿も出来、失禁も改
善され在宅へと退院となった。
【考察】患者の不眠へのストレスをプラセボ内服に変更したことに
より、日中傾眠傾向が改善され、ADL拡大へと繋がった。患者の
夜間不眠による孤独感、不安感を軽減することができ精神面、身
体面の苦痛も軽減した。
【はじめに】Lance-adams症候群(以下LAS)とは、低酸素脳症後
の昏睡状態から回復し、意図的動作などをおこなう際にミオク
ローヌスを呈する症候群である。LASの治療として投薬とリハビ
リテーション(以下リハビリ)の効果が報告されている。今回、医
師とリハビリスタッフとの話し合いにて薬剤を変更したことによ
りリハビリの進行度に顕著な違いを認めた症例を経験したため報
告する。【症例】47歳、男性。交通事故により心肺停止となるが、
救命措置により蘇生された。頭部MRIでは異常所見認められない
が、低酸素脳症の疑いがあった。受傷1ヶ月後にリハビリ目的に
当院入院された。入院時所見では明らかな運動麻痺は認めず、日
常生活動作(以下ADL:activities of daily livings)は自立してい
た。しかし、入院から1ヶ月後、意図的動作を行う際に四肢末梢
にミオクローヌスの出現を認め病棟での転倒を繰り返し、ADLの
自立が困難となった。また、リハビリの運動療法でもミオクロー
ヌスが増悪するため進行の障害となった。症状の出現からリハビ
リと同時にカルパマゼピン投与が開始されたが、ミオクローヌス
の軽減と増悪を繰り返し症状は安定しなかった。その後、クロナ
ゼパム投与に変更したところミオクローヌスの軽減を認め、リハ
ビリにおいて運動療法も可能となりADL自立に至った。
【結論】
LASの治療は適切な薬剤処方と症状に合わせたリハビリを併用し
ていくチームアプローチが重要である。
O6-6
O7-1
○竹田翔一(理学療法士)
,荒瀬輝美,小柳真里奈,禿 陽一
○加茂綾野(看護師),坂本佳珠早,吉野洋平,入沢 健,
長屋有香
気管切開後の多系統萎縮症患者に対する在宅復帰に
向けた取り組み
〜自己吸引手技獲得を目指して〜
多職種の専門性を相互理解して作成した目標シート
を用いて取り組んだ事例〜統合失調症を既往に持つ
脳梗塞患者への介入を通して〜
医療法人財団聖十字会 聖ヶ塔病院
イムス板橋リハビリテーション病院
【はじめに】今回、気管切開後の多系統萎縮症患者を担当する機会
を得た。吸引や夜間の人工呼吸器等の医学的管理の必要性がある
中で在宅復帰を目標としてきた。患者に適した自己吸引手技を検
討し指導を行ってきたため経過から得たことを以下に報告する。
【症例紹介】60歳代女性 夫と二人暮らし ADL自立 診断名:
#1多系統萎縮症:Shy Drager型 (平成23年),#2右大腿骨頸部骨
折術後 (平成26年9月) 当院の倫理委員会の承認および患者の同
意は得られている。【経過】大腿骨頸部骨折術後に人工呼吸器管
理が必要となり寝たきり状態であった。リハビリ介入にて身体能
力・ADL面に改善みられ外出まで可能となった。外泊を行う上で
夜間の人工呼吸器管理、吸引に問題があった。吸引は家族の協力
が得られなかったため、自己吸引の手技獲得に向けて、病棟と協
力して行ってきた。取り組みとして、1.手指の巧緻性低下があり
代用品を用いたカテーテル操作の練習を実施、2.衛生管理は清潔
に保つためにチェック項目の作成、3.病棟での統一した自己吸引
練習、4.吸引手順のパンフレットを患者に配布、5.自己喀痰の指
導、6.家族指導を行ってきた。
【考察】症例は気管切開により吸引
が必要であったが、家族の協力は得られなかった。症例は在宅復
帰を強く望み、自己吸引を行う意志があったため、積極的な取り
組みができたと考える。今後は外出だけでなく、外泊も視野に入
れ、継続した指導が必要である。
今回、統合失調症を既往に持つ脳梗塞発症後50歳代男性A氏を担
当した。担当時、同居して家事全般を担っていた母は認知症発症
のため施設入居してしまい、独居での自宅退院の可能性が挙がっ
ていたが入院時からADL向上みられず2か月半経過していた。そ
こで担当スタッフと話し合いの場を設けて、A氏の生活背景、既
往歴を含む疾患リスクや予後を確認しながら、自宅退院に向けた
課題を明確化し、各職種の専門性をふまえて目標設定した。それ
をA氏が理解できるように一緒に目標シートとして作成し、目標
達成度を分かりやすくするために図式化した。目標達成時には
「よくできましたシール」を貼付してA氏および担当スタッフが
共有できるようにした。目標シート作成から1か月半で、ADLは
車椅子全介助から移動移乗自立、トイレ介助・夜間オムツ対応か
ら日中トイレ自立・夜間尿器自立、内服管理全介助からお薬カレ
ンダー管理まで向上した。目標シート作成以前、担当スタッフそ
れぞれでA氏の退院に向けて介入していたが、チームでの具体的
な目標設定・介入内容の把握はしていなかった。しかしA氏の全
体像を共有し、退院に向けた課題を挙げることで、担当スタッフ
それぞれの専門性を持って介入すべき目標を相互理解できた。そ
れにより、A氏の意見も取り入れた目標シートを作成でき、計画
的に自宅退院に向けた連携を図れたと考える。この事例をここに
報告する。
52
O7-2
O7-3
○泉 幸(介護福祉士・ヘルパー)
○久澤康徳(その他),田所康之,宇野恵理,小山内隆,又平由香,
勝野友基子
船橋リハビリテーション病院
医療法人社団健育会 熱川温泉病院
24時間生活変化シートを用いた行動パターンの把
握−統一した関わりで入院生活が安定に向かった一
症例−
障がい受容が難しい家族への援助
〜チームアプローチによる取り組み〜
【はじめに】様々なスタッフが関わることで、統一した対応ができ
ず、
患者の興奮状態を誘発していると感じた。スタッフがセンター
方式の一つである24時間生活変化シート(以下シート)を活用し
患者情報を共有、共通の視点を持ちながら関わることで入院生活
が安定するか評価したいと考えた。
【対象】入院期間X年8月25日〜翌年2月21日。患者情報:男性
60歳代。入院時FIM25点。ADLはフリーハンド見守り〜軽介助。
認知機能の低下が著しくコミュニケーション困難、失認、無気力、
錯語、放尿。特に疲労時や空腹時に興奮状態となり2人介助で対
応する場合もあった。
【関わり】直接関わったスタッフが患者の言動を4日間記録。行動
パターンや24時間の生活場面の変化を分析し、本人が安定した生
活を送るための対応や環境設定を行った。
【結果】シートを活用することで、全スタッフが情報を共有し、関
わり方の統一、環境設定や臥床プランを設けることで、興奮状態
やリハビリへの拒否が減少。トイレ誘導が可能となり、日中は全
てトイレで排尿が可能となった。
【今後の展望・課題】全スタッフが共通の視点を持ち、統一した関
りを持つための手段として提案する。また、導入時期の検討、ス
タッフに対してセンター方式の理解を深めることが今後の課題と
なる。
【はじめに】障がい受容が難しい家族に対し、チームアプローチに
よる取組みを行ったケースを報告する。【症例】40代男性、妻と子
供2人の4人暮らし、左被殻出血、意思疎通困難、ADL全介助、家
族の希望は日常生活動作自立、リハビリテーション(以下リハ)目
的にて当院回復期病棟入院。
【経過】入院3ヶ月、方向性について
確認。家族から回復期期限後のリハは13単位以上を希望される。
入院6ヶ月には意思疎通可能となるが、介護・リハ拒否などの自
己主張が強くなった。医師よりADLに変化なく、期限後13単位
以内になる話をするが、面会時には反応が良いため家族は更なる
リハを希望。カンファレンスにて家族の障がい受容ができず、障
がい受容できる環境を作る必要があるとした。3ヶ月間のリハ継
続を実施し、家族に協力を呼びかけ1.セラピストはリハの進み具
合を伝え2.病棟スタッフは家族と一緒に介助・普段の様子を伝達
3.MSWは家族の思いを尊重し自宅近くの病院を探すとし、障が
い受容ができる環境を整えた。入院9ヶ月の病状説明時に、医師
よりADLに変化なく再度、13単位以内のリハ提供になることを伝
えた。家族は、維持目的でリハができる自宅近くの病院を希望さ
れ、入院13ヶ月、自宅近くの療養病院へ転院された。
【考察】家族
の障がい受容が難しいケースは、チーム全体が家族に寄り添い、
家族が抱える不安を解消することで、障がい受容ができる環境を
作ることが重要であると考えられた。
O7-4
O7-5
○清水佑哉(作業療法士)
,小林 穣
○松島敦子(看護師)
愛友会 上尾甦生病院 リハビリテーション科
JA静岡厚生連 遠州病院
在宅復帰という幸せ〜本人・ご家族と向き合った
5ヵ月間〜
回復期リハビリテーション病棟におけるキーパーソ
ン不在の退院支援を考える
【はじめに】在宅復帰し、家族・本人の幸せに繋げるにはどうした
らいいか。本人・家族との関わりについて報告する。
【症例紹介】
70代女性。左内頸動脈狭窄症・右内頸動脈閉塞症にてバイパス
術施行。左前頭葉に脳梗塞発症。状態悪化し気管切開・経鼻経管。
201X年、当院入院。ADL動作・基本動作は全介助。
【経過】夫は
『ADLの全自立』、娘は『無理のないリハビリ』を希望。介入時、疼
痛軽減・耐久性向上を目標とし、徐々にリスク管理下でADL・基
本動作向上を目指した。介入時から離床期において本人は意欲に
反して不安が強く、夫は機能回復への思いを全て1人で抱え込ん
でいた。回復に伴いADL介助量軽減・介助指導を行ったが、本人
に動作時の混乱がみられた。介助方法の統一を図ると、歩行への
強い思いが生まれ、在宅復帰への目標が明確になった。スタッフ
が共働し、介助方法の提案・伝達・実践を行い、家屋評価時、介
助方法を実践。家族間でゆとりが生まれ、在宅復帰後はデイサー
ビスを利用し、新たな生活を始めた。
【まとめ】在宅復帰への強い
思いは、本人と家族間で差が生じていた。しかし、退院時、家族
からは『満足』した発言、本人には動作毎に喜びや笑顔がみられ
た。スタッフと家族の関係性を密にし、在宅生活の明確化・具体
性を見出したことで、思いを抱え込まず、在宅生活を送れるよう
になった。在宅生活に繋げられることで、家族の雰囲気や存在を
感じることは全員の幸せに繋がった。
【背景】独居で自立の患者が突然、化膿性脊椎炎を発症し脊椎損傷
となった。四肢麻痺となり整形病棟へ入院し、その後回復期リハ
ビリテーション病棟へ転入してきた。家族不和が入院中に露呈し、
自宅退院が困難となった。家族の役割拒否やコメディカルと看護
師の見解の相違から方向性が定まらず、退院支援が困難になった
事例の検討を行った。
【目的】退院支援を行う上で多職種連携は必須である。今回、キー
パーソンの役割を果たせない家族を持つ患者に対する多職種連携
のスムースな退院調整と何かを考える。
【対象】本研究に対して倫理的配慮を行い、同意を得た。2014年
10月から2015年2月までに回復期リハビリテーション病棟に入
院していた患者1名。
【方法】事例検討〈結果〉転入時より患者は四肢麻痺が改善し、自
立歩行が可能となり自宅退院する事を強く期待していた。しかし、
上肢については自分で整容や食事が摂取できるまでに回復した
が、下肢は車椅子上での生活となった。24時間の介護の必要があ
る事やキーパーソン不在のため、在宅生活は困難と判断した。
【結論】少子高齢化や家族関係の希薄化から、キーパーソン不在の
ケースは更に増加すると予測される。入院当初から患者の意思に
寄り添いつつ、チームとして多職種間で情報共有を行っていく。
カンファレンスを通じて意思の統一を図りながら、スムースな退
院支援を行っていく必要があると考える。
53
O7-6
O8-1
○小柳ななみ(理学療法士)
○金子明義(医師)
医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院
花川病院
多職種による対応の統一でBPSDが改善した症例 〜認知症チームの取り組み〜
【はじめに】不適切な環境やケアは、認知症患者の行動・心理症
状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:以
下BPSD)を誘発するといわれている。看護師、介護福祉士、セラ
ピストで、対応に難渋している認知症患者の対応方法を検討する
チーム(以下認知症チーム)を発足した。週1回のミーティングで
検討した対応方法を病棟全体で統一する取り組みを行なった結
果、BPSDが軽減した症例を経験したため以下に報告する。
【症例提示】アルツハイマー型認知症を呈した80歳代の女性、主症
状として見当識と短期記憶の低下があった。自身の記憶障害に対
して悲観的で情緒の不安定さが著明であり、Dementia Behavior
Disturbance Scale
(以下DBD)
は32点であった。中核症状に加え、
職員間で異なる介助方法が与える不快感がBPSDの起因であると
考えた。安心感を与える対応と環境整備による記憶障害への支
援、介助方法を病棟全体に周知し統一した。1ヵ月半の取り組み
を行った結果、DBDは18点と改善しBPSDの軽減を認めた。
【考察】BPSDの要因は多種多様であるが、BPSDに関する知識が
深まったことで職員が1つ1つの言動に着目し、要因を探るように
なった。その結果、症例は自分が受け入れられたと感じ、良い人
間関係を築くことができ、BPSDの軽減に繋がったと考える。
回復期リハ病棟における糖尿病患者の血糖コント
ロールとチーム医療の役割
【目的】糖尿病は細小血管および心血管病変の大きなリスクであ
り、これらの合併症は患者のQOLを著しく低下させる。今後、回
復期リハ病棟に入院する糖尿病患者は増加することが予想され、
入院中の血糖コントロールは重要である。そこで、当院回復期リ
ハ病棟入院時にインスリン治療が行われていた糖尿病患者の血糖
コントロールについて検討した。さらに、回復期リハ病棟におけ
る糖尿病チーム医療の役割を考えた。
【方法】対象は2012年から
2014年に当院回復期リハ病棟に入院したインスリン治療中の糖
尿病患者22名(平均年齢76.9±10.5歳、男性11名、女性11名)で
ある。疾患名は脳梗塞6名、腰椎圧迫骨折5名、脳出血4名、大腿骨
近位部骨折4名、糖尿病性足壊疽2名、肺炎後廃用症候群1名であ
る。これら対象患者の入退院時の空腹時血糖、HbA1cおよび糖尿
病治療薬について比較検討した。【結果】入退院時の空腹時血糖は
147.2±40.7mg/dlから114.5±14.7m/dlと有意に低下した。(P<
0.01)また、HbA1cは7.25±1.21%から6.39±0.91%と有意に低下
した。(P<0.05)さらに、22名中12名はインスリンから内服薬に
変更し、残り10名はインスリン量を減らすことができた。
【考察】
回復期リハ入院中において、インスリン治療中の糖尿病患者の空
腹時血糖およびHbA1cを改善することができた。回復期リハ病
棟における糖尿病チーム医療により、効率的でかつ有効な糖尿病
治療ができると考える。
O8-2
O8-3
○中村初美(看護師)
,木村亜貴江,松橋由香,伊藤亮子,上田 優
○細谷菜緒(理学療法士),浜崎梨絵,松尾菜津美,藤田祥子,
宮本恵美,中本キヌエ,大森久美子,掘田理沙,梅田真由美,
西畑設子,西村裕子,天野純子
回復期リハビリテーション病棟転入時にスタッフが
持つ視点 〜患者・家族にとって有意義な生活リハ
ビリを行うために〜
日常生活にリハビリを取り入れよう
〜疾患別院内パス【病棟リハ・ADL表】を多職種で
作成した取り組み〜
市立長浜病院 看護局
医療法人ハートフル アマノリハビリテーション病院
リハビリテーション部
【はじめに】回復期リハビリテーション(以下、回リハ)病棟転入
時、スタッフが生活リハビリを進める中で、回リハ病棟での生活
をイメージ出来ず転入される患者もいる。そのため、両者の思い
に差を感じることがある。今回、患者・家族にとって有意義な生
活リハビリを行うため、回リハ病棟転入時におけるスタッフの持
つ視点を明らかにしたので報告する。
【対象・方法】対象は当院
回リハ病棟スタッフ25名とし、グループインタビューを行った。
分析はKJ法を参考に内容の分析を行った。また、倫理的配慮と
して院内倫理審査委員会にて承認を得た。
【結果】インタビュー
より《転入前の患者・家族への説明不足》
《患者・家族の様々な思
い》
《患者・家族に合わせた関わりの大切さ》
《回復期リハビリテー
ション病棟の視点で情報収集》
《説明方法の工夫》
《家族との連携》
の6カテゴリーに分類された。
【考察】
《転入前の患者・家族への
説明不足》はあるが、スタッフは転入前の患者の思いに対する視
点をもって《患者・家族の様々な思い》
の把握に努めていた。また、
《患者・家族に合わせた関わりの大切さ》を感じ、
《回復期リハビ
リテーション病棟の視点で情報収集》を行い、患者の今後の生活
を見据えた視点をもって《説明方法の工夫》や《家族との連携》を
行っていた。これらの視点は、転入前の患者・家族の思いや目標
の把握、また退院に向けた個別性のある関わりにつながると考え
られる。
【はじめに】当院の疾患内訳は運動器が72%、その他28%であり、
多様な疾患に対するリハ、ケアが必要である。退院後の在宅生活
を見据えたリハ病棟の役割として、リハ室での個別リハ時間以外
の活動をいかに高めるか、どう個別リハから病棟リハへ移行する
かが、チームアプローチの課題である。当院では具体的な介助方
法のツールはなく、ADL各動作時の介助方法が統一されていな
い。そのため、過介助となったり、病棟リハ提供が不十分など、
病棟活動度が円滑に高められない状況であった。そこで疾患別院
内パス「病棟リハ・ADL表」を多職種の意見が反映されるよう協
同で作成した。その取り組みについて報告する。
【取り組み方法】
まずは運動器患者中約40%を占める大腿骨骨折の表を作成した。
リハスタッフにより横に荷重量・縦に排泄・食事などの項目を配
置、その後介助方法や注意点については看護・介護スタッフによ
り記載した。荷重量や症状は、わかりやすい説明を付け加え、荷
重量の時期に応じた目標は何なのか、会議を重ねていく中で、多
職種で意見を出し合い、どの職種がみてもわかるよう工夫した。
【まとめ】今回「病棟リハ・ADL表」を作成することで、適切な看護・
ケアが行え、また新人教育、リスク管理になっていると意見があ
がった。今後活用していく中で、FIM効率や在宅復帰率向上、転
倒予防の一助となっている印象を受けたため、効果検証をしてい
きたい。
54
O8-4
O8-5
○三井美絵(作業療法士)
,久保田裕一,中澤博幸,山崎裕右,
有賀夕葵,萱津 碧,石月翔子,北澤和也
○寺元正紀(作業療法士),永井洋充,高橋昂平,竹田陽介,
藤原博也,早見 篤
JA長野厚生連 鹿教湯三才山リハビリテーションセンター
鹿教湯病院
医療法人社団和風会 所沢リハビリテーション病院
回復期リハ病棟での多職種による集団レクリエー
ション検討チームの取り組み
回復期病棟における家族指導書を用いた取り組み
【はじめに】当院回復期病棟では介護スタッフによる集団活動が
提供されている。しかし、その目的・内容は入院患者の特性に対
して十分配慮されたものではなく、効果的に活用する視点では実
施されていなかった。そこで集団での活動・レクリエーション(以
下レク)のより効果的な活用を目的とした多職種チームを立ち上
げ、回復期での集団レクを再検討した。
【現在までの活動】チーム
で問題を共有しながら基本的なレクの流れや内容の再構築を図
り、進行方法のマニュアルを作成した。合わせて病棟スタッフの
理解を深めるための勉強会を開催した。レクは40分、参加患者10
〜20人、介護士と看護師又はリハスタッフが主に実施している。
再検討後、参加者の中には覚醒が良好となり、麻痺側上下肢の不
使用が改善する例などもみられた。またレク時間に合わせた誘導
等のスタッフの協力が得られるようになり、活動的な場となった。
スタッフからは「個別リハのみでは得られない変化が見られる」
「レク参加を契機に心身が安定し、病棟生活に好影響がある」など
の感想も得られた。現在は患者個々に焦点を当てた適切な刺激入
力や役割の提供を模索し、また重病者の離床へも活用し始めてい
る。【今後の課題】患者の変化をレクの効果として客観的に示す
ための指標やより疾患像に富んだ内容の見直し等、検討課題は多
い。今後も多職種の協力を得てより意義のある取り組みを展開し
ていきたい。
【諸言】平成24、25年度の在宅復帰率の差がみられ要因の検証
を行なう為、入院時Functional Independence Measure(以下:
FIM)各項目、日常生活機能評価をT‐TESTにて比較した。結果、有
意な差(p>0.05)は認められなかった。他要因を探る為、平成25
年度よりご家族に実施していた不安調査アンケート結果を元に、
家族指導書の運用と見直しを行ったので以下に報告する。【対象
と方法】平成25年4月〜10月、入院より1ヶ月経過した患者の主介
護者58名に不安調査アンケート(10項目)を実施。【結果】各項目に
て約6割以上で不安を感じるという回答が得られた。特に、移動、
起居動作、入浴、トイレに不安という結果が得られた。
【考察】当院、
在宅復帰率は平成24、25年度の入院時FIM各項目、重症度に有意
差はなく、復帰率への影響は考えにくいことがわかった。しかし
アンケート結果より主介護者は退院後の生活に不安を抱いている
ことが分かった。不安を抱く原因として、障害を負った状態での
退院後の生活にイメージがつきにくいのではないかと考えた。そ
こで、家族へ生活場面を理解して頂き、不安を解消し在宅生活に
結び付ける目的で、以前使用していた家族指導書の内容、運用方
法の検討を行った。その結果施設入所を検討していた重症患者が
在宅復帰することが出来たケースを経験した。
【結語】早期に家
族指導書を共有ツールとし、チームアプローチを行なう事が重要
である事を再認識する事ができた。
O8-6
O9-1
○上田乃輔(作業療法士)
,中西慎平,森田 彩,前田 由,
菅澤真弓,出口拓海,田中仁士,菅美奈子,戎 智史
○北野 誠(理学療法士),宮腰弘之,木村知行
医療法人社団菫会 名谷病院
医療法人寿人会 木村病院 リハビリテーション部門
回復期リハ病棟におけるチームアプローチ充実に
向けての取り組みと今後の課題
当院地域包括ケア病床における現状と専従理学療法
士の役割
【はじめに】当院回復期リハ病棟では、平成25年5月より、担当者
の中でケースリーダーを決め、毎月担当者カンファレンス(以下、
カンファ )を開催し、目標や方向性の共有を図ってきた。そこで、
カンファ導入前後のデータを収集し、比較、検討した結果を報告
する。
【対象・方法】カンファ導入前の平成25年5月〜平成26年4月まで
に退院した患者254名を前群、導入後の平成26年5月〜平成27年4
月までに退院した289名を後群とし、比較を行った。調査項目は、
1)在院日数、2)在宅復帰率、3)ケアリハカンファ件数(月毎)、4)家
庭訪問件数(月毎)とした。統計処理は対応のないt検定を用い、
有意水準は5%未満とした。
【結果】在院日数は、前群71.0日、後群65.0日、在宅復帰率は前群
75.9%、後群80.6%、ケアリハカンファ件数は前群11.6回、後群
14.0回、家庭訪問件数は前群7.4回、後群11.3回となり、比較を
行った結果、家庭訪問件数において有意差を認めた。
【考察】ケースリーダーを決め、カンファを導入したことにより、
以前と比べ他職種との情報共有が活発となった。これにより、家
庭訪問を積極的に取り組むようになり、在院日数の短縮へ繋がっ
たと示唆される。今後の課題として、担当者カンファの内容を病
棟チームと共有できるようにしていくことと、担当者カンファの
質の向上を図っていく必要がある。
【目的】当院は2014年10月から地域包括ケア病床の運営を開始し、
専従は理学療法士1名が配属となった。今回、当院地域包括ケア
病床の現状と症例を通じて専従理学療法士の役割について報告す
る。【方法】対象は2014年10月から2015年3月までに当院地域包
括ケア病床を退院した患者60名中、リハビリテーション(以下リ
ハ)を実施した31名(脳血管疾患6名、運動器疾患23名、呼吸器疾
患2名)。調査項目は年齢、リハ単位数、入・退院時のFunctional
Independence Measure(以下FIM)等である。また、症例は左大
腿骨転子部不全骨折の95歳女性とした。
【結果】平均年齢は81.4
±10.5歳。平均リハ単位数は在院中1日当たり、脳血管疾患4.0単
位、運動器疾患3.5単位、呼吸器疾患2.8単位。平均FIMは入院時
64.4±31.4点、退院時71.6±34.2点。今回提示した症例は入院時
FIM31点で、当院平均値に比べかなり低く、在宅生活が困難と予
測した。しかし、多職種との情報交換や家族への介助指導等の退
院支援を重視し、39日後にはFIM37点、トイレでの排泄と手引き
歩行が可能となり、自宅退院に至った。
【考察】前島らはADL向上
が、必ずしも患者の在宅復帰に繋がるものではなく、家族構成や
家屋構造、社会的背景等の因子も転帰先決定には影響すると述べ
ている。従って、当院専従理学療法士の役割は、入院時の予後予
測や介護支援専門員等を含む多職種間での目標設定、家族参加に
よるADL指導等の実践が重要と考える。
55
O9-2
O9-3
○矢野哲平(理学療法士)
,永徳研二,中野将行,篠原美穂,
山口あゆみ,大石由香,小野隆司
○安楽秀樹(理学療法士),木原寿紀
杵築市立山香病院
医療法人秋津会 徳田脳神経外科病院 リハビリテーション室
当院地域包括ケア病棟の現状と今後の課題
〜在宅復帰に関連する要因から〜
ケアミックス型医療機関の現状と課題
〜平成26年度診療報酬改定の影響から〜
【はじめに】平成26年度診療報酬改訂において「地域包括ケア病
棟」が新設され、
当院では平成26年10月より30床開設した。今回、
地域包括ケア病棟入院患者において、在宅復帰に関係する要因を
検討したので報告する。
【対象】対象は平成26年10月1日から平成27年3月31日の期間に退
院した患者101名(平均年齢83.8±9.1歳、男性28名、女性73名)。
【方法】入院、退院時のFIM得点及び家族背景をカルテ記録より調
査し、FIM各項目得点を在宅復帰群と非在宅復帰群で比較検討し
た。分析はWilcoxonの符号付順位検定を用い、危険率5%未満を
有意水準とした。
【結果】FIM得点は入院時79.5±30.2点から退院時89.8±29.8点と
有意な改善を認めた。在宅復帰率は77.2%であり、非在宅復帰群
と比較し在宅復帰群は移乗3項目と移動2項目において有意な改
善を認めた。家族背景は単独世帯・夫婦のみの割合が在宅復帰群
52.1%に対し非在宅復帰群で61.3%と高い傾向にあった。
【考察】地域包括ケア病棟から在宅復帰する患者において移乗・
移動能力の向上が重要であることが示唆された。また、家族背景
では単独世帯・夫婦のみの割合が非在宅復帰群で高かったことか
ら、今後、更なる家族機能の低下が予測される当地域においては、
入院早期から退院後のサービス調整や家族指導などを積極的に実
施していくことが肝要である。
【目的】平成26年度の改定より、7対1一般病棟入院基本料を算定
する病棟でも在宅復帰率が導入された。当院は一般病棟(以下、急
性期)と回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期)各1病棟か
らなるケアミックス型医療機関であるが、現在、回復期では在宅
復帰率の調整に難渋している状況が続いている。今回、改定前後
のデータを基に患者動向、院内外連携の傾向などを把握し改定の
影響を考察する。【方法】期間は平成25年10月〜平成26年3月(以
下、改定前)と平成26年10月〜平成27年3月(以下、改定後)の各6ヶ
月間。項目は 1)急性期在宅復帰率 2)回復期在宅復帰率、急性期
から回復期に転院・転棟した患者の 3)転院率 4)転棟率 5)転出重
症者率 6)入院から転院依頼の日数 7)転院待機日数と 8)回復期重
症入棟率 9)回復期からの急変・死亡転出率 10)経営的観点から回
復期の持ち出しとし調査、比較。なお倫理的配慮として、本研究
は当院倫理委員会の承諾を得た。【結果】1)上昇、2)低下、3)低下、
4)上昇、5)上昇、6)短縮、7)延長、8)上昇、9)上昇、10)増加となっ
た。
【考察】結果より、院内回復期へより重症度の高い患者が入棟
し、その影響で在宅復帰率の調整に難渋しているものと考えられ
る。6)7)からは、急性期の平均在院日数の調整目的での転棟の必
要性も明確になった。今後両病棟の在宅復帰率を維持するには重
症者の管理が重要である。今後は院内院外連携をより強化し、病
棟運営を安定させたい。
O9-4
O9-5
○稲葉典子(看護師)
,藤井るみ
○小林丈人(理学療法士),佐藤美智子,花田孝,波田野千恵,
柳沢ひろ子,小河原あゆみ,仲亀直希,北側惠史
医療法人社団甲友会 西宮協立訪問看護センター
JA長野厚生連 小諸厚生総合病院 リハビリテーション科
訪問看護・リハビリテーションのニーズに対応した
機能強化型訪問看護ステーション運営の一考察
当院における亜急性期病床から地域包括ケア病棟へ
の変遷
【はじめに】平成26年度診療報酬改定で新設された「機能強化型訪
問看護管理療養費」について、当センターでは平成26年7月より
算定を開始した。今回、地域における訪問看護・リハビリテーショ
ンのニーズを知ることで機能強化型訪問看護ステーションとして
の在り方を検討したので報告する。
【方法・結果】当センターの所
属する兵庫県西宮市南部において、今後3年間の市内人口推移の
予測から高齢者増加地区を把握し、西宮市介護保険計画策定にお
ける参考資料や統計情報から、当センターの3年間利用者増を予
測した。また、西宮地域における医療福祉資源情報と合わせて当
センター周辺の地域診断を行った。その結果、介護保険利用者は
150名から45名増が予測され、当センターの看護職員とセラピス
トの常勤換算割合が10.6:10であることから、看護師2名、OT1名、
さらにSTは地域資源としても不足傾向であることから1名増員を
計画した。
【考察】機能強化型訪問看護管理療養費の算定要件は、
24時間対応や看取り数、常勤看護職員数の報告などがあり、看護
職が医療依存度の高い在宅療養者に対応するための算定というイ
メージがある。しかしながら、当センターのように、看護職とセ
ラピストがバランスよく在籍していることにより、褥瘡対策や地
域貢献、人材確保のための研修等を受け入れることができるため、
看護職とセラピストの協働は機能強化型訪問看護ステーションの
基盤作りに欠かせないと考える。
【はじめに】2014年度診療報酬改定では、亜急性期病棟が廃止と
なり、
「地域包括ケア病棟」が新設された。今回、当院における亜
急性期病床から地域包括ケア病棟の取り組みについて報告する。
【対象と方法】2013年9月〜2014年3月までの亜急性期病床入院患
者と2014年9月〜2015年3月までの地域包括ケア病棟入院患者に
ついて動向を調査し検討した。
【結果】亜急性期病床入院患者の
リハ提供患者単位数は平均1.3単位であった。また在宅復帰率は
74.9%であった。収支に関しては、月平均単価が27437円であっ
た。地域包括ケア病棟入院患者のリハ提供患者単位数は平均2.2
単位であった。また在宅復帰率は93.1%であった。収支に関し
ては、月平均単価が30255円であった。リハ診療日数は2013年度
で24.3日、2014年度は25.7日であった。【考察】地域包括ケア病
棟基準では、リハ提供患者には1日2単位以上の施行が必要となっ
た。2013年の取得単位では基準を満たすことが困難であったが、
スタッフの増員、祝日等を診療日としたことで、現在平均2単位以
上を維持することが可能となった。専従の療法士配置は、他部門
との連携が密となることで、患者にあったサービス提供が可能と
なり在宅復帰率の向上にもつながった。包括性の考え方が導入さ
れたことで、積極的にリハが必要な患者がいた場合でも報酬面は
全てが持ち出しとなる。平均2単位の根拠やリハ医療の位置づけ
も曖昧であり今後の法整備に期待したい。
56
O9-6
O10-1
○杉本 彩(理学療法士)
○太田 元(理学療法士)1),西村幸秀1),並河 茂2),
吉田史佐男1),中西文彦1),岸本紀和1),米田菜々子1)
社会医療法人生長会 ベルピアノ病院 リハビリテーション室
1)一般財団法人 京都地域医療学際研究所
2)介護老人保健施設がくさい
医療療養型病棟から地域包括ケア病棟へ
新規回復期病棟立ち上げ、現状と課題
【はじめに】当院は2014年4月、医療療養病棟48床2棟の在宅復帰
機能強化加算を取得、同年7月医療療養病棟48床1病棟を地域包
括ケア病棟(以下包括病棟)に転換した。いわゆる寝たきり患者や
在宅復帰困難な長期入院患者も入院する医療療養病棟から包括病
棟施設基準取得の経験を報告する。
【現状把握】2014年4月時点
で、リハビリ提供単位数1日平均1.36単位(3ヶ月実績)、在宅復帰
率60.8% (6ヶ月実績)と基準に満たない状態であった。
【経過】4
月より長期入院患者の医療療養病棟への転床、包括病棟対象患者
の入院を開始。PT、OTの配置人数も増員した。リハビリ対象平
均患者数は、4月40.9名、5月33.3名、6月39.3名。リハビリ提供
単位数の1日平均は、4月1.57単位、5月2.90単位、6月2.84単位で
3ヶ月実績は2.44単位。在宅復帰率は6ヶ月実績にて、平均77.4%
となり6月には基準を満たす結果となった。開設後2015年4月現
在まで毎月、リハビリ提供単位数2単位以上および、在宅復帰率
70%を上回っている。しかし、60日以内で退院できない症例も
あった。開設後、在宅からリハビリ目的で入院になった4名の患
者にアンケート調査を実施。いずれも入院前は在宅サービスを利
用していたが、包括病棟入院によりリハビリを集中的に実施でき
たことに満足していた。
【今後の課題】包括病棟開設にあたり、60
日での在宅復帰を目標に早期の情報収集が重要と感じた。病棟ス
タッフと情報共有し、より良い包括病棟を目指したい。
【はじめに】当院は京都府医師会により京都府および京都市の援
助を得て設立され、スポーツ整形外科中心のリハを展開してい
た。2013年4月より旧所在位置で回復期リハ病棟の運営を開始し、
2013年11月に旧所在地とは行政区が異なる現所在位置に移転し
本格的に開始した。今回、2014年度患者データーより新規開設し
た当院の現状と課題を報告する。【対象と方法】2014年4月1日以
降に入院し、2015年3月31日までに退院した患者162名のうち急
性増悪、または本人・家族の自己理由により退院された13名を除
く149名を対象とし、患者情報をカルテより収集した。
【結果と考
察】対象者は、1.平均年齢76.7±12.2歳2.男性20.1%、女性79.9%
3.疾患別では運動器77.2%、脳血管22.1%、廃用0.7% 4.発症又
は手術日から当院退院まで94.4±36.9病日5.入院時平均FIM92.9
±23.9点、退 院 時 平 均FIM105.5±21.2点、FIM利 得 平 均12.6±
10.2点6.在宅復帰率83.9% 7.重症者比率5.3±6.0%以上から更に
重症者の受け入れと在宅復帰率維持が課題の一つと考える。ご紹
介元病院では現所在地に移転し新たに連携ができた病院で、距離
が最も近い病院からが最多で44.7%であった。この事からも新規
連携は出来ているが、脳血管疾患の紹介比率の増加も今後の課題
となる。一方、当院の歴史から考えると脳卒中への対応力の問題
点が示唆され、リハスタッフをはじめ、病院各職員が対応力を向
上する組織作りのための教育も必要と考える。
O10-2
O10-3
○横山みさき(理学療法士)
,杉本 彩,七野はる菜
○住田幹男(医師)
社会医療法人生長会 ベルピアノ病院 リハビリテーション室
社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院
当院地域包括ケア病棟におけるリハビリテーション
介入効果
組織的、継続的な医療の質改善活動の実践〜病院機
能評価を活用して〜病院マネジメントの立場から
【はじめに】当院は2014年7月に医療療養病棟を地域包括ケア病棟
に転換した。そこで60日間のリハビリテーション(以下、リハ)介
入による入院時と退院時のFIMの変化について、疾患別で調査し
比較した。
【対象と方法】2014年7月1日〜2015年3月31日に入退
院した患者195名の内、転院・死亡退院を除くリハ介入患者143
名(男性56名、女性87名、平均年齢79.3±7.7)に対して入院時と退
院時にFIMを用いてADL評価を行った。
【結果】入院時FIMは平均
73.9±24.3点、退院時FIMは平均85.4±24.4点、変化量は平均10.1
±9.3点で有意な改善を認めた(p<0.01)。また、疾患別の変化量
は廃用症候群67名で平均8.8±12.9(運動8.8±12.9、認知1.8±4.0)
点、脳血管疾患21名で平均8.4±10.4(運動8.4±10.4、認知2.7±4.6)
点、運動器疾患55名で平均10.0±13.7(運動12.4±13.7、認知0.2±
3.3)点で全ての群で有意な改善を認めた(p<0.01)。疾患間でFIM
の変化量に差はみられなかった。
【考察】疾患間でFIMの改善に差
はみられなかったが、運動面では運動器疾患が最も改善していた。
当院の運動器疾患患者は急性期からの転院で手術後や受傷後が多
く、罹患歴の長い廃用症候群や脳血管疾患に比べ経過が短いこと
がADLの改善に影響したと考えられる。認知面では脳血管疾患で
より改善する傾向がみられ、言語聴覚士の介入効果と考えられる。
【結語】地域包括ケア病棟における60日間のリハ介入はFIM特に
運動の改善に効果的であった。
はじめに:昭和58年4月高槻第2病院( 94床)として発足。平成4
年「総合リハビリテーション施設」施設基準取得。平成5年療養型
病床群74床導入188床 全館療養型病床186床に変更。平成11年
4月愛仁会リハビリテーション病院に名称変更。平成12年3月7日
日本医療機能評価機構「病院機能評価」認定。7月「大阪府地域リ
ハビリテーション三島圏域地域支援センター」に指定される。平
成14年回復期リハビリテーション病棟47床取得。平成16年7月
日本リハビリテーション医学会研修施設認定。平成18年2月病院
機能評価付加機能「リハビリ機能」認定(全国で8番目)
。平成21
年1月社会医療法人認定。平成22年3月5日病院機能評価更新認定
(Ver.6.0).平成23年7月1日新病院移転、開院。回復期168床( 4
病棟)
、障がい者病棟57床。平成26年9月10日病院機能評価及び
付加機能(リハビリテーションVer3.0)認定。現在に至る。我々
の受審の位置づけ:法人としては、5年ごとの中長期計画を踏ま
えた単年度方針管理というトップダウンの活動と、一方でトヨタ
方式にみられるTQM(当法人ではQC活動)によるボトムアップの
医療・介護・経営管理活動をうまく交差させつつ、診療報酬改定
の追っかけ活動にならないように、第三者評価の視点を重要視し
て位置付けてきた。受審のキックオフから実際の受審の中身、そ
してその後の活用について報告する。
57
O10-4
O10-5
○甲斐久子(看護師)
,真野峰子,篠原法子,山岡真琴
○手塚康貴(理学療法士)1,2)
看護スタッフの疲労蓄積度の実態調査とリラクゼー
ション体操の効果の検討
大阪府泉州圏域回復期リハ病床群における10年間
の患者動向
〜統一データベースからの24,169例より〜
社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院
1)府中病院 理学療法室
2)阪南市民病院 リハビリテーション室
1.はじめに厚生労働省の「労働者の疲労蓄積度自己診断チェック
リスト」を用いて看護スタッフの疲労蓄積度の実態を把握し、リ
ラクゼーション体操(以後体操)の実施により疲労蓄積度に一定
の改善がみられたため報告する。2.目的看護スタッフの疲労蓄積
度を調査し、体操による疲労蓄積度の効果を検討する。3.方法対
象者:看護スタッフ30名(体操実施群、未実施群各15名)方法:
全員に疲労蓄積度現状調査を4回/月実施。その後体操実施群と未
実施群に分け4回/月再調査を行った。4.結果1)総合判定実施群で
は疲労蓄積度が「やや高い」以上が8名から3名と減少したが未実
施群も5名から4名と減少した。しかし実施群の方がt検定で有
意差があった。2)体操実施群では自覚症状・勤務状況ともt検
定で有意差があったが、未実施群では有意差はなかった。3)実施
後アンケート調査では15名中13名が「体操の効果があった、今後
も続けたい」と回答した。5.考察実施群は総合判定に有意差があ
り体操の効果はあったと考えられるが、
「勤務状況」の項目も下
がっていることから勤務状況にも影響されたと思われる。また疲
労蓄積度が高い対象ほど体操により改善する傾向にある。6.結論・
疲労蓄積度は体操をすることで改善すると思われる・疲労蓄積度
の改善がみられると勤務に対する負担感も軽減すると思われる。
【目的】回復期リハビリ病床の充足率が146%とされる大阪府泉州
二次医療圏では、回復期リハビリ病床を有する14病院で統一デー
タベースによるデータ管理を行っている。今回、平成17年度から
10年間の圏域患者動向について報告する。
【方法】平成17年度から26年度までの回復期リハ病床群退院者を
統一データベースから振り返った。データ項目は、疾患、発症日、
性、年、入棟日などの基本情報、紹介元、退院先などに加え、平成
19年度以降、FIM、日常生活機能評価を加えた。
【結果・考察】有効症例数24,169例(平均年齢74.4歳)。疾患割合で
は、脳血管疾患はわずかに低下傾向、廃用症候群は一時増加も近
年は低下傾向、人工関節を中心に整形疾患が増加傾向にあった。
他院紹介患者は4割程度で推移し、入院までの期間は平均24.4日
であったが、短縮傾向にはなかった。転帰については、自宅復
帰率67.1%、広義の在宅率70.9%と全国平均(協会調査)より低
かったが、いずれも近年上昇傾向にあった。 FIMは、入院時平均
71.2、退院時平均85.4であり、入棟時はわずかに重症化の傾向が
みられたもののリハ効果は全国平均より低かった。日常生活機能
評価は全国平均との差は感じられないが、近年、FIMとは逆に若
干の軽症化傾向を示した。病棟数や病床数の増加、連携パスの導
入による著明な変化は認められず、今後の病棟運営の工夫が期待
される。
O10-6
O11-1
○黒飛陽平(作業療法士)
,入澤 寛,片山直紀,鴨藤祐輔,
山下浩史,佐藤 慎
○前田慶明(理学療法士)1),吉尾雅春1),増田知子1),佐川 明2)
JA静岡厚生連 遠州病院
1)医療法人社団和風会 千里リハビリテーション病院
2)川村義肢株式会社
休日リハビリテーション提供体制前後での精神
機能・身体機能の比較
くも膜下出血後に重度関節拘縮を呈した患者に
対する装具療法の経験
【はじめに】当院の回復期リハビリテーション病棟(以下、リハ病
棟)では、2014年8月より週6日から週7日のリハビリを提供する
休日リハビリテーション(以下、休日リハ)を開始した。近年では
休日リハを提供する施設は増加しているものの、その効果は一様
ではないことが報告されている。今回、休日リハ開始前後での患
者ストレス、身体機能、認知機能、QOL、などについて検討した
ので報告する。【対象】2014年4月〜6月までにリハ病棟に入院し
た9名(休日リハ開始前)と、2014年9月〜12月までに入院した17
名(休日リハ開始後)
。尚、休日リハ移行期間に重なった対象者は
除外した。
【方法】リハ病棟入院時と入院後30日経過時にストレ
スを反映する指標としてコルチゾールとWHO/QOL26に加えて、
SPPB、四肢骨格筋量、MMSE、MNA-SF、FIM、実施単位数につい
て比較した。本研究は、当院倫理委員会での承認と、対象者の文
書による同意を得て行った。【結果】休日リハ開始前後では、どの
項目においても有意差を認めなかった。
【考察】一般的に休日の
存在はストレスの軽減に効果があると言われている。しかし、本
研究においてはリハ病棟入院患者にとって休日の有無はストレス
とは関連していなかった。その他の項目においても有意差がみら
れなかったことから、休日リハにおける効果を示すことができな
かったといえる。今後の課題としては休日リハにおける効果判定
を行っていくことが必要と考える。
【はじめに】長期臥床により重度関節拘縮をきたした患者に装具
療法を行い、拘縮の改善と車椅子での食事自力摂取まで改善を図
れたので報告する。【症例】40歳代男性、前大脳動脈解離によるく
も膜下出血と両側の前大脳動脈の梗塞により発症、水頭症と重度
の運動障害を認め意識障害は遷延した。既往歴に全身性エリトマ
トーデスと脳梗塞あるも病前の生活は自立。56病日にVPシャン
ト術施行も腹腔内感染を起こし抜去、髄膜炎も併発。194病日に
再度VPシャント術施行し、218病日当院へ入院。入院時JCS10、
経管栄養、FIM運動13点、認知5点、移乗は2人介助、上肢中等度
で体幹下肢は重度の麻痺、全身性に重度の拘縮有り両膝関節伸展
‐90°、表出と理解は一部可能であった。
【介入と結果】229病日に
ターンバックルとダイヤルロック膝継手の長下肢装具を両側に作
製し理学療法実施。245病日には装具装着下で膝関節伸展‐45°と
なり立位練習、291病日には‐15度となり歩行練習を開始。しかし、
歩行による装具への応力は高く装具の破損が起きたため、義肢装
具士と相談し強度の改善を図った。退院時にはFIM運動18点、認
知9点、膝関節伸展‐30°、移乗は全職種1人介助。表出は向上し、
食事は自力摂取可能となった。退院先には装具療法の伝達を行っ
た。【考察】拘縮により棺に入れない患者が存在する。どの医療
機能区分でも装具作製は可能である。装具療法は人の尊厳を守り
QOLを向上させる可能性を持つ、今後の社会的認知の向上が必要
と考える。
58
O11-2
O11-3
○池田憲太郎(理学療法士)1),橋本光平1),下土井渉1),
中村友美1),加藤徳明2)
○榮 加織(理学療法士)
1)特定医療法人 北九州病院 北九州安部山公園病院 リハビリテーション科
2)産業医科大学 リハビリテーション医学講座
特定医療法人敬愛会 リハビリテーション天草病院
リハビリテーション部
当院回復期リハビリテーション病棟における簡易着
脱式長下肢装具作成への取り組み
〜奏功した2症例を通して〜
脳卒中後遺症者の短下肢装具着用時の疼痛に対する
リハビリテーション
【はじめに】短下肢装具は、脳卒中後遺症者をはじめ中枢性・神経
筋疾患などに多く適応される。歩行能力や日常生活の拡大に寄与
されている反面、適切に使用されなければ、活動レベルの低下を
招きかねない。今回、短下肢装具着用により疼痛が生じてしまっ
た一症例を通して、理学療法の介入により疼痛が改善されたので
以下に報告をする。
【症例紹介】70歳代女性、脳梗塞による右片麻痺、失語症を呈して
いる。介入時能力として歩行はT字杖と短下肢装具を使用して監
視〜軽介助レベル。歩行時における麻痺側下肢トゥクリアランス
の確保と、back knee改善の為プラスチック製AFOを作製された。
理学療法介入に際してVerbal Rating Scale
( 以下VRS)を用いて
疼痛の主観的変化を評価した。
【経過と結果】装具を着用してもback kneeが残存しており、立脚
中期以降側方に動揺することから麻痺側外果後面に疼痛を生じて
いた。理学療法介入として、立位バランス練習の中で姿勢と、運
動様式の改善を図ることで疼痛が軽減した。
(VRS少し痛い→痛
みなし)
【考察】装具を着用しても問題が残存したり、新たな弊害が生じて
しまうケースも少なくなく、適合に対しては装具作製後も継続的
な理学療法の介入が必要であると考える。
【はじめに】近年、急性期を中心とした長下肢装具(以下KAFO)の
有用性の報告が多い。一方で、着脱の煩雑さからトイレ動作など
実際の日常生活動作(以下ADL)ではKAFOが使用しにくい側面が
あるのも事実である。当院では、簡易的に大腿部と下腿部を着脱
できる着脱式KAFOを作成しており、ADL場面での積極的活用に
取り組んでいる。なお、本症例報告について本人、家族に書面に
て十分な説明を行い、
同意を得ている。
【簡易着脱式KAFOの概要】
支柱部は上下のはめこみピンと中央部の蝶ネジで構成されてお
り、着脱は約30秒で可能で接続用工具が不要である。
【症例紹介】
症例1:70歳代女性。右被殻出血後、左片麻痺(下肢Br.stageIII)
を呈していた。歩行にはKAFOを要したが、トイレ動作や車椅子
自操はAFOを着用し自立に至った。着脱式KAFOを作成し、歩行
と車椅子自操を併用し、自宅退院となった。症例2:40歳代男性。
脳梗塞後、右片麻痺(下肢Br.stage II)と失語症を呈していた。訓
練に拒否的でリハビリテーションに難渋していた。歩行訓練に
対しては受け入れ可能であり、着脱式KAFOを使用した歩行訓練
を早期から実施した。ADLでもAFOとして着用を進め、最終的に
AFO歩行自立にて自宅退院となった。
【考察】KAFOの支柱部を
簡易着脱式にすることで、装具着用時間が延長し、ADL介助量軽
減につながった。KAFOを使用したリハビリテーションを進める
上で、簡易着脱の視点は重要な要素であると考える。
O11-4
O11-5
○岩澤尚人(理学療法士)
,小島宙丸
○亀井結衣(理学療法士)
医療法人平成博愛会 世田谷記念病院 リハビリテーション科
医療法人清和会 平成とうや病院 リハビリテーション科
回復期脳卒中片麻痺患者における装具療法の現状と
予測因子の検討
〜長下肢装具作製者を対象にした検討〜
長下肢装具使用方法の工夫
〜重度高次脳機能障害を呈した症例を通して〜
【目的】我々は当院回復期病棟での長下肢装具(以下、KAFO)作
製者における治療効果とKAFOから短下肢装具(以下、AFO)へ
移行の関連について検討した。
【対象】回復期病棟に2012年4月
〜2015年1月までに入院していた脳卒中患者で入院中にKAFOを
作製した53名を対象とした。
【方法】1.入院中にAFOに移行した
群(以下、A群)19名と移行が困難であった群(以下、B群)34名に
おいて発症から装具作製の期間、年齢、入院時JCS、BRS、SIAS、
BBS、M-FIM、コース立方体組み合わせテスト(以下、コース立方
体)を抽出し、t検定、U検定を用いて比較した。2.発症から装具
作製までの日数とM-FIM利得の相関。3. 1において優位差を認め
た項目からロジスティック回帰分析を用いてAFOへの移行要因
の算出をした。
【結果】1.有意差(P<0.05)を認めたものは作製ま
での期間A群61.0±26日、B群79.6±59日、年齢はA群67±11歳、B
群73.4±16歳、その他入院時JCS、BBS、M‐FIM、コース立方体で
あった。2.作製期間とM-FIM利得において弱い相関(r=-0.389)
を認めた。3.年齢(オッズ比0.844、95% CI:0.75-0.948)、意識
(オッズ比0.185、95% CI0.064-0.53)の因子であった。
【考察】
装具作製までの期間とM-FIMにおいて相関を認め、早期に装具を
作製し、立位・歩行訓練を実施することがADL向上へ寄与してい
る事が示唆された。また、AFOへの移行因子については年齢など
を考慮し、選定などが必要である事が再確認できた。
【はじめに】今回、重度高次脳機能障害を呈した症例に対して両
側支柱付き長下肢装具(以下:KAFO)を作製、大腿カフ部分を半分
カットし(以下:semiKAFO)修正を加えた事で生活場面でも実用的
に装具を使用する事が出来た為報告する。【症例紹介】80歳代女
性、視床・被殻出血、麻痺Br。stage左上下肢・手指1〜2、重度の
左半側空間無視、左右失認、身体失認、pusher症状【経過報告】発
症より79病日後に本人用KAFO完成。しかし高次脳機能障害の
残存により歩行の実用性は乏しく、施設退院へ向けトイレ動作獲
得を主目標に動作練習開始。装着下でも下衣の着脱が出来るよう
semiKAFOへ修正。離床中は装着下にて過ごし病棟へ装着・移乗・
トイレ動作指導を行った。
【結果】移乗動作、下衣操作時の立位保
持、排泄・清拭時の座位保持が可能となり、軽介助でのトイレ動
作を獲得し施設退院となった。
【考察】重症症例に対し装具を使
用した訓練を行う事で、高次脳機能障害の軽減、ADL能力の向上
を認めた先行研究もある。本症例は高次脳機能障害が残存したが
基本動作の介助量軽減を図ることが出来た、これはsemiKAFOへ
修正後も座位・起立により体幹・下肢への収縮、左足底へ荷重を
KAFO同様に促せた為だと考える。更に、病棟へ動作指導を行い
semiKAFOにすることで装具装着下での下衣操作が可能となり、
軽介助にてトイレ誘導が行えるようになった。今後他症例でも、
使用方法や修正に工夫を加える事で生活場面でのsemiKAFO使用
が有用と考えられる。
59
O11-6
O12-1
○百田雅治(理学療法士)
,竹山佳澄,首藤 貴,得居和義
○安藤将孝(理学療法士),宮川真二朗,保田晋一,佐藤浩二,
亀井誠治
西条市民病院 回復期リハビリテーション病棟
社会医療法人敬和会 大分岡病院
活動的な長下肢装具歩行練習への工夫
〜片麻痺症例を通しての経験〜
人工膝関節全置換術後にHAL自立支援用単関節タイ
プを使用した一症例
【はじめに】脳卒中片麻痺患者の歩行の改善に向けた歩行練習で
は、ストレスの少ない歩行を求められ、足部と床上のクリアラン
スの確保が必要である。また円滑な歩行ほど活動的な歩行につな
がると考えている。そこで、活発な歩行練習に向け様々な工夫を
したので報告する。
【対象】1.90+α才の女性で左片麻痺と2.70
+α才の男性で右片麻痺でともに脳梗塞。開始時は自力立位が不
能であった。【方法】段階的な歩行練習を実施。1.免荷式歩行器+
振出介助のセラバンド使用2.免荷式歩行器3.平行棒内歩行4.サイ
ドケイン歩行。いずれも長下肢装具を使用し、足関節の制御はつ
り上げ式で無段階の調整が可能である。
【結果】症例1.は免荷式歩
行器にて屋内自力歩行が10m16.8秒の歩行が可能となった。症
例2.は四点杖を使用して病棟内移動を監視下で可能となった。
【考
察】早期在宅復帰を達成するためには片麻痺患者は早期に歩行練
習を開始することが重要である。歩行練習の際には患者がいかに
ストレスなく歩行できるか工夫することが必要である。今回、工
夫のポイントとして1.長下肢装具の足関節背屈角度の無段階調整
2.免荷式歩行器の使用による安全性と自重負荷の調整3.歩行練習
プログラムの分割である。リハビリテーション前置主義に基づい
て、回復期リハビリテーション病棟でできる限り効果的な機能回
復を達成することが退院後の生活期リハビリテーションへの移行
が円滑に出来ると確信している。
【はじめに】臨床において人工膝関節全置換術(以下、TKA)を施
行後の理学療法において膝関節伸展筋力増強に難渋するケースは
少なくない。TKA後の一症例に対して、膝関節伸展筋力増強を目
的としてHAL自立支援用単関節タイプ(以下、単関節HAL)を使
用した経過を報告する。
【症例紹介】右変形性膝関節症に対して平成27年4月6日に右TKA
を施行。
【手術前理学療法評価】等尺性右膝関節伸展筋力:5.4(kgf)、右膝
関節extension lag:0(°)、右膝関節自動伸展時の疼痛強度VAS:
0(mm)。
【介入方法】術後7日目より主治医の許可及び症例への説明と同意
を得て単関節HALを使用した訓練を開始した。単関節HALを使
用した訓練は隔日で実施し、術後13日目まで計4回実施した。
【結果】術後7日目(単関節HAL介入初回)では、等尺性右膝関節伸
展筋力:2.1(kgf)、右膝関節extension lag:60(°)、VAS:82(mm)
であった。術後13日目(単関節HAL介入4回後)では、等尺性右膝
関節伸展筋力:3.4(kgf)、右膝関節extension lag:25(°)、VAS:
57(mm)であった。
【まとめ】単関節HALを使用することにより疼痛が軽減した状態
で膝関節伸展運動が実施でき、早期の筋力増強に繋がったと考え
る。今後は適応疾患、単関節HALの設定や運動方法について検討
が必要である。
O12-2
O12-3
○長谷川和久(理学療法士)
○佐野敬太(理学療法士),中橋亮平,池田隼也,佐藤雅紀,
伊藤友一,比和野友美,小山亜依里,米田千賀子
医療法人愛生館 小林記念病院 医療技術部
医療法人珪山会 鵜飼リハビリテーション病院
歩行障害者に対する通常の歩行練習とロボットスー
ツHALを活用した歩行練習の併用効果
〜 FIMを用いての検討〜
バランス練習アシストロボットの有用性と当院セラ
ピストへの意識調査
【目的】歩行障害者に対する通常の歩行練習とロボットスーツ
HAL
(Hybrid Assistive Limb:以下、HAL)を活用した歩行練習
の併用効果についてFunctional Independence Measure
( 以下、
FIM)を用いて検討した。
【方法】対象は当院回復期リハビリテーション病棟に入院した脳
血管疾患患者13名とした。対象属性は年齢70.0±9.5歳、性別(男
性11名、女 性2名 )
、発 症 後 期 間21.5±6.8日、下 肢Brunnstrom
Recovery Stage
( 以下、BRS)II〜 VI
(中央値III)
。HALの使用回
数は8.7±8.2回であり、通常の歩行練習を併用して実施した。検
討項目はFIM移動項目得点(階段除く)及び移動手段とし、入院時
と退院時で検討した。統計処理は対応のあるt検定とχ2乗検定を
行い、有意水準は5%未満とした。
【結果】FIM移動項目得点は入院時2.4±1.8点、退院時5.2±1.8点
で有意差を認めた。入院時の移動手段(歩行2名、車椅子11名)に
対し、退院時の移動手段(歩行10名、車椅子3名)で改善傾向を示
した。
【考察】HALの効果として、重心の位置や生体電位をリアルタイ
ムで確認することでの運動学習効果やBRSが低い方でもアシスト
による自動的な歩行練習を行うことで歩行能力が改善すると報告
されている。歩行障害者に対し、HALの特徴を活かした歩行練習
と通常の歩行練習を併用して行うことで日常生活における移動能
力の改善に影響を与えたと示唆された。
【はじめに】近年、リハビリ用ロボットの医療機関への導入が進ん
でおり、多くの医療機関で臨床研究が行われている。当院におい
ても、今年2月からトヨタ自動車(株)のバランス練習アシストロ
ボット(以下、BEAR)を導入した。今回、BEARを実施した症例の
経過報告と、当院セラピストに対して実施したBEAR試乗体験後
のアンケートについて報告する。
【方法・結果】症例は、脳卒中患
者3名(年齢平均72.7歳、練習開始日までの発症後期間平均33.7日)
とし、16回の練習前後の評価結果を比較した。練習は1日40分(テ
ニス、スキー、ロデオゲーム)とし、評価項目は、歩行速度、5m継
ぎ足歩行、TUG、BBS、転倒恐怖感などとした。なお、練習期間
中はBEAR以外のバランス練習は実施しないようにした。また、
全ての練習終了後に従来のバランス練習と比較してBEARが楽し
かったか尋ねるアンケートを実施した。その結果、全ての評価項
目において維持もしくは改善傾向を示し、アンケート結果はすべ
ての症例で楽しかったと回答を得た。当院セラピストに対する試
乗体験後アンケートは42名のセラピストから回答を得た。結果、
「BEARで改善すると思われる機能及び能力は何か」に対しては、
現在取り入れている評価項目以外に、体幹機能、麻痺側荷重率な
どが挙げられた。
【まとめ】今後は、症例数を増やし、従来のバラ
ンス練習を実施する対照群との比較においてBEARの効果検証を
実施する。
60
O12-4
O12-5
○川井康平(理学療法士)1),渡邊亜紀1),森 淳一1),
佐藤浩二2),森 照明2)
○田邉史啓(理学療法士),小山純平,神戸亮介,藤原愛作
1)社会医療法人敬和会 大分東部病院
2)社会医療法人敬和会 大分岡病院
特定医療法人明徳会 佐藤第一病院
HONDA歩行アシストを活用した大腿骨転子部骨折
術後のトレンデレンブルグ徴候改善効果
ロボットスーツHAL®の使用時の適応条件について
の一考察
【目的】今回、HAL®を疾患や発症後の期間の異なる患者に使用し、
使用後の効果が疾患や発症後の期間によって変化するかを検証
する。【対象】回復期リハビリ病棟(以下回リハ)入院中の胸椎黄
色靱帯骨化症1名、脳梗塞2名と外来通院中のHLTV-I関連脊髄症
1名、脳出血後遺症1名の計5名(男性3名、女性2名)とした。年齢
は70±7.31歳であり、当院のHAL®適応基準を満たしている患者
とした。【方法】入院患者3名は週2回、外来通院患者2名は週1回
の頻度にてHAL®を装着し、約30分の歩行練習を各個人に計5回
実施した。歩行時は安全面を考慮し、免荷式歩行補助具を併用し
た。なお、HAL®実施前に毎回10m歩行テストを実施し、歩行速
度、歩数を計測した。効果判定としてHAL®実施前後に得られた
評価結果をStatView-J5.0を用いて統計解析を行った。統計手法
はWilcoxonの符号順位検定を使用し、危険率5%未満とした。【結
果】対象とした5名全てに、歩行速度、歩数に有意な改善を認めた
(P<0.05)。【考察】中島によるとHAL®には、随意運動を改善する
神経・筋の可塑性を促進する効果が期待できるとされている。今
回、HAL®を回リハ・外来の患者に使用し、正常パターンに近い反
復した歩行練習を行うことで、神経の伝達回路の再構築により歩
行時の筋活動が賦活され、歩行が改善したと考えられる。よって、
今回の結果からHAL®の使用が疾患や発症後の期間が異なる患者
に同様の効果が得られることが示唆された。
【はじめに】大腿骨転子部骨折患者(以下、骨折患者)は、疼痛や筋
力低下によりトレンデレンブルグ徴候(以下、T徴候)を認め易い。
T徴候は機能面改善により軽減するが、改善後も不適切な歩容学
習からT徴候が残存する患者も経験する。これは高齢のため口頭
指示や徒手誘導による荷重移動要領の学習の困難さが原因と考え
る。HONDA歩行アシスト(以下、アシスト)は歩行中の股関節伸
展の補助作用があり、T徴候が残存する骨折患者に有効と考えた。
今回、その効果を報告する。
【対象】当院入院中のT徴候を認める骨折患者5名。平均年齢は
74.2±16.7歳、FIM総得点は113.8±11.4点、手術からアシスト開
始までの日数は47.5±21.9日であった。
【方法】徒手練習20分/日に加え、アシスト使用した歩行練習30分
/日、2週間実施した。効果判定は初回と最終回に前額面からのビ
デオ撮影を行いT徴候の有無を比較した。また股関節筋力測定、
速度、歩幅を比較した。
【結果】全例股関節筋力の変化はなかったが、歩容ではT徴候消失
4名、軽減1名と全例改善を認めた。速度においては平均15.8%、
歩幅は平均13.9%向上した。
【考察】アシスト使用した練習は、歩行中に自然な状態で荷重移動
要領を反復することで、良好な歩容の学習を促され、T徴候軽減
に繋がったと考える。すなわちアシストは、骨折患者のT徴候改
善に有益な器具であることが示唆される。
O12-6
O13-1
○遠藤祐紀(理学療法士)
,竹中宏幸,高野大樹,平田雅文
○中村裕樹(理学療法士)1),俵積田和美1),松田奈穂1),
窪田正大2)
医療法人社団豊生会 東苗穂病院 リハビリテーション部
1)医療法人慈圭会 八反丸リハビリテーション病院
2)鹿児島大学 医学部 保健学科
外来でロボットスーツHALを使用し、歩行に改善が
見られた維持期脳血管疾患患者の報告
運動器疾患患者のADL獲得時期についての調査
当院では、外来にてロボットスーツHALを使用したリハビリテー
ションを行なっている。今回は、発症から経過した脳血管疾患患
者の介入からの経過と外来リハで介入するに当たっての課題につ
いて報告する。症例:70代男性 10年前の発症の脳梗塞で右片
麻痺。自宅では四点杖で10m程度の歩行は可能だが軽介助必要な
レベル。屋外歩行は車椅子を主で使用していた。デイサービス週
2回利用している。機能改善の意欲が高い。結果:歩行手段が四
点杖からT字杖に移行された。10m歩行が10秒以上向上した。日
常生活場面での介助量の軽減が図れた。考察:今回は週1回2〜3ヶ
月の使用によって歩行手段が四点杖からT字杖にかわり、歩行ス
ピードも向上した。数回の使用で歩行に改善が見られた理由には、
麻痺側下肢に荷重をかけることが意識できたこと、その状況で在
宅生活を過ごすことができたことが要因ではないかと考える。ま
た、デイサービスでの運動や自宅での自主トレーニングなどで運
動機会が確保できていたことがHALの効果を維持できた要因で
あると考える。まとめ:HALについては、即時効果が見られ歩容
の改善が認められるが、課題は使用効果を持続することである。
今回のケースのように、HAL使用以外で活動機会を維持すること
が出来たことで効果を維持できたと考えられる。自主トレーニン
グメニューなどの運動内容を検討し生活場面で効果を持続できる
ような関わり方を検討していく。
【はじめに】第49回日本理学療法学会において、大腿骨近位部骨折
と椎体骨折の入院時ADL難易度をRasch分析手法で検出し、各疾
患の動作再獲得過程を理解することができた。その際、難易度の
順序は分かったものの実際の動作獲得に要する日数については算
出するには至らなかった。今回、入院期間中の介助の変化時期を
調べ難易度との関連を分析したので報告する。
【対象・方法】2014年8月から2015年3月までに入院した大腿骨
近位部骨折( 43名、平均年齢80.7歳)と椎体骨折( 46名、平均年齢
82.6歳)の患者を対象とした。入院時ADLのRasch分析結果より
調査する動作項目を設定した。獲得時期は、自立・監視・介助(最
小・中等度・全)とし、入院日からそれぞれの獲得日までの延べ
日数を算出した。また、介助の妨げになっている項目についても
調査した。なお調査に際しヘルシンキ宣言に基づいて対象者が特
定されないように配慮した。
【結果・考察】大腿近位部骨折の高難易である清拭は、今回も自
立よりも最小介助のレベルまでに留まることが多く、疼痛がその
妨げになっていた。認知機能は、全ての動作に影響を与えた。ト
イレ関連ではオムツ使用がその動作獲得の妨げとなっており、排
泄に関しては多職種でオムツ除去する検討が必要である。一方、
椎体骨折では疼痛が全ての動作に影響を与えた。また、動作の改
善には2週間を要する可能性があり、この期間での生活リハアプ
ローチが肝要である。
61
O13-2
O13-3
○俵積田和美(作業療法士)1),中村裕樹1),八反丸健二1),
窪田正大2),岩井信彦3)
○清水達也(作業療法士),秋田ひとみ,佐藤 功
1)医療法人慈圭会 八反丸リハビリテーション病院
2)鹿児島大学 医学部 保健学科
3)神戸学院大学 理学療法専攻
平成醫塾 苫小牧東病院
回復期脳血管障害患者におけるRasch分析を用いた
ADL項目の難易度に関する研究
回復期リハ病棟におけるモーニングリハビリの効果
について〜介入前後のFIMの比較〜
【目的】リハビリテーションは、患者の日常生活動作(ADL)を向
上させ、再び元の生活に戻すことが目的の一つである。また、
ADLの改善の良し悪しはその後の生活の場に影響を与えるので、
ADLアプローチの優先度を知ることは大切である。宮原(2013)
は、回復期脳血管障害患者の重症者に対するADL改善項目に着目
し報告している。そこで今回、FIMを用いたRasch分析を行い、
ADL項目の難易度を予測し、リハアプローチの一助とする。
【対象】対象は、2010年8月〜2012年8月に当院の回復期病棟に入
院した脳血管患者169名(男性86名、女性83名)であった。
【方法】入院時と退院時のFIM得点をRasch分析し、各項目の難易
度を調べた。なお、本研究は当院倫理委員会の承認を得て行った。
【結果・考察】
難易度の低いADL項目は、食事、整容、排尿コン
トロール、排便コントロール、ベッド移乗であった。一方、難易
度の高い項目は、階段、歩行/車椅子、清拭、浴槽移乗、下半身更衣
であった。また、
下半身更衣、
トイレ動作、
トイレ移乗、
ベッド移乗、
排尿コントロール、整容の6項目は中等度介助( 0〜 -0.5logits)を
示し、難易度が接近していた。さらに6項目の中では、整容動作の
難易度が最も低かった。整容動作の特徴は、座位または立位での
上肢と体幹の協調した運動からなることである。よって整容動作
が、その他の動作改善へのキーポイントとなると推測された。
【はじめに】当院回復期リハビリ病棟(1病棟52床:2病棟)では、更
衣・整容・トイレ動作(以下3項目)の自立または介助量軽減を目
的にモーニングリハを実施してきた。今回、目的が達成されてい
るか介入前後のFIMで比較を行った。以下に当院のモーニングリ
ハの特徴と結果について報告する。
【モーニングリハの介入方法】対象患者は、3項目の自立または向
上が望めそうな方をOTが2名選出(病棟からの選出も有り)。対応
時間は7:00〜8:00までとし、各々1単位ずつ算定している。8:00
からは対象を絞らず食事のセッテイング援助やトイレ・移動・移
乗などケアを中心に関わっている。
【比較方法】平成26年度1年間に実施した1病棟36名を対象に、介
入開始日および終了日から1カ月以内のFIM評価で比較を行った。
【結果】対象者の内訳は平均年齢73.1±13.8歳、疾患別は脳血管障
害29名、運動器疾患5名、廃用症候群2名であった。FIMの向上点
は、介入前合計点平均70±17.1点から83点±16.5、整容は4.9から
5.4、更衣上は平均3.6から4.7、更衣下は3.1から4.2、トイレ動作
は3.5から4.5へ向上した。
【考察】介入後のFIM向上は3項目とも認めており、向上点は整容
以外で1点以上認めた。介入項目を絞り、改善が望める時期に関
わることで、モーニングリハビリの目的が達成できている事が分
かった。
O13-4
O13-5
○尾花智子(作業療法士)1),佐藤里衣2),甲斐千尋2),
小倉由紀2),阪野栄美2)
○金阪有紀(作業療法士),飯山幸治,小猿純一,宮本定冶,
梅本安則
1)千葉県千葉リハビリテーションセンター リハビリテーション療法部 成人療法室 作業療法科
2)千葉県千葉リハビリテーションセンター
関西電力病院
頸髄損傷不全麻痺患者に対する上肢集中訓練の効果
−1症例での検討−
難易度を調整したセルフケア動作により低機能補助
手となった重度脳卒中片麻痺患者の一例
【はじめに】重度脳卒中片麻痺では廃用手となる可能性が高く、二
次的合併症が残存しやすい。そのため廃用手の予防は回復期病棟
において重要な課題の一つでもある。今回、セルフケア動作に着
目し難易度を調整した活動を促すことで二次的合併症が軽減し低
機能補助手に至った症例を報告する。
【対象と方法】50歳代女性、右利き。X年右被殻出血し2か月後当
院回復期病棟入棟。作業療法評価として ブルンストロームステー
ジ(以下、Br.Stage)テスト、感覚テスト麻痺側上肢参加度評価表
(PPM)を実施した。二次的合併症として肩の亜脱臼・手部の浮腫・
疼痛・肩の関節可動域の評価を実施した。作業活動は難易度の低
い患手管理動作を選択し病棟生活にて1日3回60日間実施し、日常
生活への汎化目的に独自に参加表を作成し指導を行った。
【結果】Br.Stageテストは入棟時stage2から3へ、感覚は手指以外
左右差なくPPMは0から5点となった。二次的合併症で亜脱臼と
手部の浮腫は消失し、肩の痛みはNRSが9から3に肩関節他動可動
域は屈曲120°から155°となった。
【考察】今回セルフケア動作に着目し難易度を調整・設定した事で、
成功体験が得られ動作定着に繋がった。また参加表を導入し各動
作の聞き取り・振り返りが現状に即した動作の確認と修正を可能
にした。これらを組み合わせた事で二次的合併症を最小限に抑え、
病棟生活への汎化へ繋げる事ができた。
【はじめに】頸髄損傷不全例は上肢の麻痺によりADL獲得に難渋
することが多い。今回、受傷半年の頸髄損傷不全麻痺患者に対し、
ADL介助量の軽減、運動機能回復を目的に上肢集中訓練を実施し
たので、その結果について報告する。
【対象】70代男性。頸髄損傷
(C5)
。ASIA:D。左上肢優位の四肢麻痺あり。握力右10.2kg/左
0kg。STEF右38点/左8点。ADL一部要介助(FIM76点)。
【方法】1
日4時間、週5日を2週間、左手の補助手獲得を目標に上肢集中訓
練を実施。集中訓練以外には個別訓練(PT・OT)で動作確認、課
題の再検討を実施。介入前後で運動機能評価を実施。
【経過】課
題は適宜調整し、OTは左手の使用を意識するためのフィードバッ
クを行い日常生活の中で挑戦できる課題を提案した。また、モチ
ベーション維持・向上を目的に興味のある作業も提供し実用的な
物品操作も実施。【結果】運動機能評価全般において改善を認め
た(握力右12.9kg/左5.5kg。STEF右51点/左32点)
。ADL面では
上衣更衣や靴下等の介助量が軽減し、見守り〜自立レベルとなっ
た(FIM98点)
。また、モチベーションの向上も見られ、病棟ADL
以外に書字やスマートフォン操作等、両手での作業を積極的に行
うようになった。
【考察】頸髄損傷不全例においても、集中的に麻
痺側上肢を使用することで機能向上が得られる可能性が示唆され
た。その中で日常生活への汎化やモチベーションの維持・向上に
OTの関わりが有効であったことも推察された。
62
O13-6
O14-1
○中山かおり(介護福祉士・ヘルパー)
,前田真宏
○河手 武(作業療法士)1),児玉浩志2),宮田智沙1),平野秀実1)
光風園病院 看護部
1)社会医療法人財団池友会 新小文字病院
2)身体障がい者支援施設 清流の郷
リハビリテーション処方患者と非処方患者の比較
−地域包括ケア病棟でのケアの重要性−
Pusher現象を呈しながら1人介助でトイレ可能と
なった急性期弛緩性片麻痺者
【はじめに】当病棟は平成26年9月に医療療養病棟から地域包括ケ
ア病棟に転換した60床の病棟である。地域包括ケア病棟(1)には、
在宅復帰率70%以上が求められており、それを達成するためにほ
とんどの患者にリハビリテーション(以下リハ)が処方されてい
る。しかし、
少数ではあるがリハを処方されないこともある。今回、
そのリハが処方されていない患者に焦点を当て処方されている患
者と比較し考察したため報告する。
【病棟の状況】平成27年1月から3月31日の入院総数は104名でリ
ハ処方患者は78名、リハ非処方患者は26名であった。また、入院
時のバーサルインデックス(以下BI)は全体平均41.7点でリハ処
方患者は43.3点、リハ非処方患者36.9点であった。
【結果】退院時BIは全体平均で57.8点でありリハ処方患者60.1点、
リハ非処方患者51.0点と全体ではリハ処方患者の方が上昇傾向に
あった。項目別では、特にリハ処方患者の歩行と整容が大きく上
昇した。しかし、移乗・排尿の項目はリハ処方患者と比べわずか
ではあるものの上昇点についてリハ非処方患者の方が高い結果と
なった。
【考察】この結果は、地域包括ケア病棟に転換する以前より寝たき
りの患者でも座る能力があれば積極的に離床し、排泄はオムツや
ポータブルトイレを使用せず病棟トイレへ誘導していた。そのた
め、この3項目についてはリハで行う訓練より病棟で反復して行
う機会の方が多いためではないかと考えられた。
【序論】急性期弛緩性片麻痺者に作業療法を行い,Pusher現象が
残存するもののトイレを看護師1人介助で可能になった。【症例】
60歳、右脳梗塞、病前ADL自立、発症2日目に開始、MMSE24点。
「トイレでしたいが多く(同時に2人以上)の看護師さんの助けを借
りるのは申し訳ない」とCOPMで高い重要度であった。
【経過】網
本のPusher評価チャートでは初期時6点(座位2点、立位2点、歩
行2点)、看護師1人介助開始日5点(座位2点、立位1点、歩行2点)。
KarnathのSCPでは初期時6点(座位3点、立位3点)、看護師1人介
助開始日1.25点(座位0.75点、立位0.5点)。下記3点が看護師1人
介助(終始見守り)の条件であることを予め共有し、実際のトイレ
内に鏡を設置して7日間実施後に可能になり、COPMの遂行度と
満足度が改善した。
1.座位は前方手摺を使用し、上肢が押し始めたら肩甲胸郭関節
の挙上下制を自動介助運動と鏡の視覚的代償で修正を促した。
2.移乗は背もたれを起こす前に目印を目標にして足の位置を正中
時,そしてL字手摺は縦部分の高い位置を把持し、足部外縁より大
腿骨大転子が外側に位置することを自動介助運動で修正を促した。
3.立位はL字柵の高い位置を把持し腰を壁に着けて30秒保持す
ること、腰が壁から離れ始めたら自動介助運動と鏡の視覚的代償
で修正を促した。
【考察】弛緩性片麻痺とPusher現象を呈しなが
らも実際のトイレ環境での適応と、条件を共有したことが獲得の
一因になったと考える。
O14-2
O14-3
○工藤愛弓(作業療法士)
,河村沙耶花,佐藤浩二,亀井誠治
○古賀清治(介護福祉士・ヘルパー)1),榊美奈子1),渋谷千羽子1),
藤吉理恵1),中川あさみ1),山口義雄2),北村啓宣2),眞鍋友実2),
簑原 萌2)
急性期病院における大腿骨骨折患者の早期排泄動作
自立に向けた作業療法士介入
回復期リハビリテーション病棟におけるトイレ介助
方法〜統一したトイレ介助を提供できる〜
社会医療法人敬和会 大分岡病院
1)福岡リハビリテーション病院 看護部
2)福岡リハビリテーション病院 リハビリ部
【はじめに】高齢者の大腿骨骨折の患者数は増加傾向にあり、治療
中は一定期間免荷期間を余儀なくされることから、急性期病院で
はADL向上が遅滞したまま退院するケースも多い。特に排泄動作
自立が遅滞することは患者に多大な苦痛を与える。大腿骨骨折患
者の排泄動作に関する現状を調査すると共に早期排泄動作の獲得
に向けた作業療法士介入の在り方を再検討した。
【対象・方法】平成26年4月〜平成27年1月までに大腿骨骨折と診
断された60名のうち免荷指示を受けた患者10名(男性2名、女性
8名、平均年齢81.9歳)とした。方法はOT介入期間と介入前後の
Barthel Index
(以下、BI)の排泄動作得点を比較分析した。
【結果】10名の診断名は大腿骨転子下骨折、大腿骨顆上骨折、大腿
骨頸部骨折、大腿骨骨幹部骨折で、全例OT介入があった。介入期
間は平均31日であった。この内、退院時に排泄動作が自立した患
者は3名(30%)で多くは介助レベルのまま転院していた。
【考察】これまでの免荷期間を呈した大腿骨骨折患者へのOT介入
は、身体機能の向上が主となり訓練場所も訓練室が多かった。そ
こでOTの介入方法を検討し術直後から病棟内での実践的なADL
訓練を重視した関わりとして業務化した。発表ではOT介入方法
について事例をふまえ報告する。
【はじめに】当院、回復期リハビリテーション病棟(以下当病棟)
において、トイレ介助を要する患者の身体状況や介助方法は著し
く変化していく。その変化を知るツールがカルテや伝言しかなく
情報が得られにくかった。そこで、トイレカードというツールを
作成し介助方法の把握・統一を図ったところ、トイレ介助・誘導
を行いやすくなったと成果がでたため報告する。
【対象】当病棟スタッフ全員(NS24名、CW13名、PT15名、OT17
名、ST7名)
【方法】アンケート結果に基づき患者の状態(麻痺・性急性・膝折
れ・介助方法・終了時のコール)を把握できるツールを作成。仮
運用を3ヶ月間実施後、修正を行い運用開始とした。
【結果】アンケート結果より、リハビリスタッフ(OT・PT・ST)
97%病棟スタッフ(NS・CW)90%からトイレ誘導を行いやすく
なったとの回答をえた。
【考察】全職種にアンケートを実施した為、介助方法に必要な情報
をさまざまな角度より抽出できた。また、カードに記載した事に
より一目で介助のポイントを把握する事が出来た。これらにより、
身体状況が変化する患者にも統一したトイレ介助が行いやすく
なったとの結果に繋がったと考えられる。今後も患者の安全と統
一したトイレ介助を行う為に、カード運用と改善をスタッフが協
働して行い、活動の定着を図っていけるよう努めていく。
63
O14-4
O14-5
○葛馬美子(看護師)
,小澤直子,春田祐子,伊藤雅子
○大西健太(理学療法士)1),杉田 遼1),今村寛子2),杉山雄太1),
丸茂高明1),磯野 賢1),浅賀嘉之3)
社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院
1)甲州リハビリテーション病院 リハビリテーション部
2)甲州リハビリテーション病院 看護部
3)甲州リハビリテーション病院 診療部
脊髄損傷患者の便失禁回数減少に向けた排便コント
ロール方法
若年頚髄損傷者の排泄動作獲得に向けて
【はじめに】脊髄損傷患者の社会生活においては便失禁が大きな
【はじめに】頚髄損傷者のADL獲得には、一般的に数年を要する。
問題となる。今回、便失禁回数の減少に向けた排便コントロール
その為、回復期病棟で獲得できるADLは限られている。今回我々
方法について検証し、考察したため報告する。
は、回復期病棟にて訓練意欲が高く、回復が著しい若年頚髄損傷
【目的】脊髄損傷患者の便失禁回数減少に向けた排便コントロー
者を担当した。早期から環境整備をし、自立に近い状態までのア
ル方法の効果を明らかにする。
プローチを行ったので報告する。
【症例】21歳男性。頚髄損傷(C5-6
【方法】1)2014年4月から7月に入院した脊髄損傷患者3名に2ヶ月
脱臼骨折)。平成26年8月受傷、同年10月に当院入院。入院時は、
間、ブリストルスケールを用いて便の硬さと便失禁に関するデー
Frankel分類B、Zancolli分類両側C6A。基本的動作、ADLは全介
タを収集し、便失禁を防ぐ方法の検討。2)9月に入院した患者に1)
助。
【経過】入院時から3ヶ月経過で、前方移乗台を使用し移乗動
の方法を取り入れて方法の有効性を検討した。
作が見守りで可能となった。そこで更なるADL獲得の為に排泄動
【倫理的配慮】所属施設の倫理委員会で承認を得た。
作を視野に入れ、将来的なADLに近い環境を想定し、病棟に簡易
【結果】排便処置をした時の便の硬さは、ブリストルスケール3〜
型高床式トイレを作製し導入した。導入後は下衣更衣訓練や清拭
4。便失禁時は4〜5であった。また、摘便処置の当日や翌日に便
訓練が一連の実動作として行えるようになった。また患者にとっ
失禁がみられる事もあった。この結果を元に考察した方法を、別
ては環境面での動作課題が明確になり、より応用的な動作訓練が
の患者の排便コントロールに取り入れ、便の硬さを硬くし経過を
実施できた。2ヶ月後には訓練時の排泄動作が見守りで可能とな
みたところ、1カ月の便失禁回数は19回から4回まで減少した。
り、病棟生活への導入に至った。
【結果と考察】若年頚髄損傷者の
【考察】便失禁には、便の硬さと、腸内の便の残留が影響している
回復に対応し簡易型高床式トイレを作製した。導入から3ヶ月で
事が考えられた。そのため、便失禁を防ぐ方法として以下の2点
の排泄動作がほぼ可能となった。森野らによれば、排泄動作自立
が重要であると考える。1.便の硬さをブリストルスケールの1
までの訓練期間はZancolli分類C6B2の患者で19.1±13.0ヶ月で
〜2に近づける 2.摘便だけでなく、下剤を使用し腸内に便を残
あり、本症例は短期間で排泄動作の獲得が可能となった。早期改
留させない。
善例に対し、訓練効果を最大限にするために回復期より対応して
【結論】脊髄損傷患者の便失禁減少に向けた排便コントロールに
いく必要がある。
は、考察1、2の方法が有効であった。 O14-6
O15-1
○奧川達也(作業療法士)
,伊藤進一
○赤羽智樹(理学療法士)1),青木啓成1),西村直樹2),小平博之3)
一般社団法人巨樹の会 八千代リハビリテーション病院
1)社会医療法人財団慈泉会 相澤病院 運動器疾患リハセンター
2)回復期リハセンター
3)運動器疾患センター外傷・関節センター
脳血管障害患者におけるトイレ関連動作のFIM得点
とPHQ-9得点の関係
人 工 膝 関 節 全 置 換 術(TKA)後 の 膝 屈 曲 可 動 域 に
影響を与える要因
【はじめに】脳卒中治療ガイドライン2009では、脳卒中後うつ(以
下PSD)に罹患すると認知機能がより障害されADLの回復が遅延
すると示されている。患者ニーズが高いトイレ関連動作の改善
はPSDの回復に影響するのではないかと仮説を立て、トイレ関連
動作とうつの関係性について調べた。
【対象と方法】対象は平成
26年7月から平成27年4月までに回復期病棟を退院し、うつ評価
スケールPHQ-9を施行できた脳血管障害患者78名。方法は退院
時FIMのトイレ動作、トイレ移乗得点と退院時PHQ-9得点を診療
録から抽出した。1.トイレ動作得点とPHQ-9得点2.トイレ移乗
得点とPHQ-9得点との相関の有無をSpearmanの順位相関係数
を用いて調査した。有意差は5%未満とした。
【結果】1. トイレ動
作得点とPHQ-9得点の間に負の低い相関があったr=-0.34(P<
0.01)トイレ動作平均得点は6.2(SD1.4)点、PHQ-9平均得点は
3.4(SD3.6)点2. トイレ移乗得点とPHQ-9得点の間に負の低い相
関があったr=-0.25(P<0.05)トイレ移乗平均得点は6.3(SD1.2)
点、PHQ-9平均得点は3.4(SD3.6)点【考察】結果はトイレ関連動
作とうつとの相関があると示唆された。その為、トイレ動作の獲
得はPSD改善要因の一つと考えられるのではないか。
【結語】トイ
レ関連動作とうつには相関関係がある事が示唆された。回復期病
棟の作業療法士としてトイレ関連動作の改善はPSDの回復に影響
する一つの要因であると考えるに至った。
【目的】TKA術後3週の膝屈曲角に影響を与える要因を分析する
事を目的とした。
【方法】2011年1月から2013年12月までにTKAを施行した38例、
76関節(平均年齢77歳、男性2例、女性36例)を対象とした。TKA
術後3週の膝屈曲角を従属変数、その他の項目を独立変数(術前要
因にBMI、FTA、術中要因に手術時間、開創前麻酔下の膝屈曲角、
閉創後麻酔下の膝屈曲角、術後要因に理学療法介入量、歩行自立
獲得までの日数)としてステップワイズ法による重回帰分析を
行った。
【説明と同意】本研究は医学的、倫理的にも人権が守られている事
が承認された研究である。
【結果】重回帰分析の結果、閉創後麻酔下の膝屈曲角(β=0.332、
P<0.05)、BMI
(β=-0.327、P<0.05)が選択された。BMIが選
択された理由を探るためBMIを従属変数として追加分析を行った
ところFTA(β=0.394、P<0.05)が選択された。
【考察】術後3週の膝屈曲角に影響を及ぼす要因に閉創後麻酔下の
膝屈曲角とBMIが選択された。閉創後麻酔下の膝屈曲角がTKA
術後3週の膝屈曲角の指標となり得るものと考えられる。また、
BMIが選択された理由は追加分析よりFTAとの関連が示された事
から、TKA術後の膝屈曲角とFTAが関連するとの先行研究を支持
するものであると考えた。
64
O15-2
O15-3
○山中ひかる(理学療法士)
,楠本雅也
○石橋賢吾(理学療法士),大石 賢,横田悠介,高柳公司,
小島 進
医療法人倚山会 田岡病院
医療法人社団東洋会 池田病院 リハビリテーション部
急性期病棟におけるタイムスケジュール把握と自主
トレーニングが活動量に与える影響
当院回復期リハビリテーション病棟患者の等尺性膝
伸展筋力と歩行自立度の関係について
【目的】当院では脊椎疾患に対して専門的に手術・リハビリテー
ションが行われている。しかし術後は臥床傾向にある方が多い。
今回タイムスケジュール表(以下TS)を使用し、運動指導を行う事
で、リハビリ提供時間以外の活動量向上を目的とした取り組み
を実施したので報告する。
【対象と方法】平成27年4月20日〜5月
25日に当院脊椎内視鏡センターに入院された患者8名(LDH3例、
LSS3例、CSM1例、LS1例、54±25歳)を対象とし、運動時間を含め
た1日の予定を記載するTSを作成し呈示。両群に自主トレーニン
グ指導を実施し自己管理して頂いた。実施状況に関してはチェッ
ク表で管理し、比較指標として実施状況/FIM/6MD/疼痛を評価し
た。実施状況とTSの関連をMann-Whitney検定を用いて統計処
理を行い、5%未満を有意水準として採択した。
【結果】TS使用群
は、自主運動の回数と時間についてTS非使用群と比較して有意差
を認めた。(回数:P=0.0048、時間:P=0.0006)。また今回の研究
において、疼痛評価スケールNRSと歩行距離の不の相関関係が確
認された。(r=0.62、P<0.001)
【考察】臥床により身体機能が低
下すると多く報告されている。また疼痛が軽減すると活動量が向
上するといった報告もあるが、当院の現状は自主的な運動量が少
ない状況であった。この現状を踏まえ両群に運動指導を行った結
果、有意差が認められた。TSで時間管理を行うことで自主運動を
取り入れやすくなり、リハビリ時間以外の活動量の向上に繋がっ
たと考える。
【はじめに】院内歩行自立の評価として等尺性膝伸展筋力(以下膝
伸展筋力)の有用性が報告されている。今回、当院回復期リハ病
棟患者の膝伸展筋力と歩行自立度の関係を調査したので報告す
る。
【対象方法】2014年4月〜2015年5月に当院回復期リハ病棟
を退院した144名の内、退院時膝伸展筋力を測定できた53名(男性
24名、女性29名、平均年齢71.8歳)。年齢、性別、体重、基礎疾患、
MMSE、健側、患側退院時膝伸展筋力、筋力比、退院時歩行自立度、
退院時歩行形態を調査。歩行自立度を基準に監視介助群、自立群
に分類し、各項目を比較検討。尚、膝伸展筋力は記録値を体重で
除した割合(%)とし、筋力比は健側に対する患側の記録値の割合
(%)とした。歩行自立度は補助具の使用を問わず院内歩行自立
している者を自立とした。
【結果・考察】整形疾患34名、中枢疾患
19名。歩行自立度は監視介助群11名、自立群42名。患側膝伸展
筋力は監視介助群37%、自立群47%。健側膝伸展筋力は監視介助
群43%、自立群52%。筋力比は監視介助群86%、自立群88%で
あり、2群間に差はなかった。先行報告では、下肢に障害がない独
歩自立者の膝伸展筋力下限値28%に対し、当院独歩自立者の下限
値も患側26%、健側26%と近似していた。杖歩行の下限値は患
側26%、健側32%、歩行車歩行の下限値は患側16%、健側19%で
あった。本調査では、独歩自立の下限値として約3割、歩行補助具
を使用した自立で約2割の膝伸展筋力が必要であることが示唆さ
れた。
O15-4
O15-5
○田上美沙(理学療法士)
,田上美紀,冨岡由子,緒方美湖,
河崎靖範,槌田義美,山鹿眞紀夫,古閑博明
○小倉正基(理学療法士),今枝裕二,西澤 賢,石亀智洋,
関本有華,福田卓民
熊本リハビリテーション病院 リハビリテーション部 理学療法科
医療法人慶成会 青梅慶友病院 リハビリテーション室
高齢大腿骨頚部骨折患者の年代別リハ効果
障害高齢者の関節可動域に対する振動刺激法の効果
【はじめに】高齢者は年齢の増加と共に生理的機能低下、低栄養、
免疫機能低下、臓器障害などの要因がADL改善を阻害するため、
長期のリハ介入が必要と推測される。大腿骨頚部骨折においても
リハ訓練量が多いほどFIM運動項目の改善は高くなるとの報告も
あるが、年齢別に調査したものは見当たらない。今回、年代別の
リハ効果について検討した。
【方法】H23年4月〜 H25年3月に当院を退院した大腿骨頚部骨折
患者139名を対象に70歳代(70群)
、80歳代(80群)
、90歳以上(90
以上群)の3群に分け、入・退院時FIM得点、FIM利得・効率、在
院日数、実用歩行再獲得率、受傷前居所復帰率を調査した。尚3群
には同量のリハを提供した。
【結果】入院時FIM得点( 70群83点、80群70点、90以上群55点)、
退院時FIM得点( 70群111点、80群98点、90以上群76点)
、FIM効
率( 70群0.40点 / 日、80群0.32点 / 日、90以 上 群0.26点 / 日 )、
在院日数( 70群75日、80群88日、90以上群82日)は有意差を認め
たが、FIM利得、実用歩行再獲得率、受傷前居所復帰率は有意差
を認めなかった。
【まとめ】年代が上がる程、入・退院時ADLやリハの効率は低かっ
たが、FIM利得、歩行再獲得率や受傷前居所復帰率に年代の影響
はなかった。適切なリハ量と日数を提供する事で、年代別のリハ
効果に大きな差はなく、ADLや歩行を改善して受傷前居所へ復帰
できることがわかった。
【目的】関節拘縮の予防には骨格筋の緊張を抑制し、関節可動域を
保つことが重要といわれ、その方法の一つである振動刺激法を有
効とする報告がある。そこで今回は、障害高齢者を対象に振動刺
激法による骨格筋緊張の抑制を試み、関節可動域の変化について
検証した。【方法】対象は肩関節外転、肘関節伸展、膝関節伸展の
いずれかに可動域制限を有する31名(平均年齢87.2±7.2歳)とし
た。振動刺激法開始時のModified Ashworth Scale(以下、MAS)
の結果から、1+である16名( 53関節)をA群、MAS2〜4の15名
( 40関節)をB群とし、各群とも対象とする関節運動の拮抗筋に週
5回( 1〜2分/回)
、12週間実施した。それぞれのMASと関節可動
域の測定は週1回行い、分析にはFriedman検定を用いた。【結果】
A群 に お け るMASの 結 果 は 改 善10関 節( 18.8 %)、悪 化10関 節
( 18.8%)だったのに対し、B群では改善16関節( 40.0%)、悪化1
関節( 2.5%)であった(p<0.01)
。12週後の関節可動域はA群で
は1.0°、B群では6.6°改善した(p<0.01)。【考察】A群と比べ、B
群ではMASの改善割合が高く、関節可動域が拡大したことは、骨
格筋の緊張が高いほど振動刺激法が有効である可能性を示唆する
ものと思われる。このことから、振動刺激法は関節拘縮を予防す
るための一手段になり得ると考えられ、関節運動や関節自体への
荷重などと合わせて実施し、それを続けることで関節拘縮の予防
効果を検証したい。
65
O15-6
O16-1
○江川ひかる(理学療法士)
,田中将人,阿部 光,中村利江子,
宿野真嗣,福田卓民
○亀尾光子(理学療法士)1),福山直樹1),武部晃平1),陶山直樹1),
馬庭春樹1),須山竜二1),片山秀幸2)
青梅慶友病院 リハビリテーション室
1)松江赤十字病院 リハビリテーション課
2)松江赤十字病院 心臓血管外科
筋収縮の状態と関節拘縮の進行について
心破裂による緊急手術後、ICU-AWを呈したが積極
的に離床に取り組み身体機能改善した一症例
【目的】関節拘縮の直接的原因は関節の不動であり、要因の一つと
して過剰な筋収縮があげられる。しかし、関節拘縮を予防する対
応は確立されておらず、筋収縮の影響による介入効果の違いにつ
いての報告も少ない。そこで今回は異なる筋収縮の状態に対す
る関節拘縮予防対応の効果を検証した。
【方法】2012年2月から
2013年12月の間、当院に入院した「障害高齢者の日常生活自立
度」がランクBまたはCの者に対し、下肢他動運動と荷重を意図的
に含めた運動プログラムを実施し、さらには日中の活動性が高ま
るよう様々な余暇活動を提供した。効果検証は膝関節屈筋群の
Modified Ashworth Scale
(以下、
MAS)
と膝関節伸展可動域を2ヵ
月毎に測定し、それを1年間継続した97名について、期間を通し
てMASが1以下だった者をA群、一度でもMAS1+以上だった者
をB群とし、入院時と1年後の膝関節伸展可動域を後方視的に比較
した。統計処理にはWilcoxonの符号順位検定を用いた。
【結果】
入院時と1年後の膝伸展可動域は、A群では‐9.3±10.0°から‐9.8±
10.8°に(p=0.35)
、B群 で は‐16.3±16.9°か ら‐24.8±22.2°に そ れ
ぞれ減少した(p<0.01)
。
【考察】A群とB群における結果の違い
は筋収縮の影響により関節の不動状態を回避できたか否かを反映
したものと考えられる。今回の結果から、関節拘縮を予防するた
めには筋と関節の評価を並行して行い、筋収縮の状態に合わせて
対応を変える必要性が示唆された。
【はじめに】今回、急性心筋梗塞(AMI)による心破裂で緊急手術
を 施 行 後、ICU-acquired weakness(ICU-AW)を 呈 し た 症 例 を
担当した。経過を報告する。【症例紹介】70歳代・男性、発症前
ADL自立。胸痛で前医に救急搬送、AMIによる心破裂発症、当
院に緊急搬送、左室自由壁破裂修復術施行。術後、人工呼吸器・
大動脈バルーンパンピング・経皮的心肺補助管理となった。翌
日よりPT開始指示あり。
【理学療法経過】2〜9病日は循環動態不
安定で介入できず。10病日ベッド上リハからPT開始。medical
research council score(MRC score)2/60点、CT上脳病変なく
ICU-AWと診断。抜管するも肺炎により呼吸状態悪化、再挿管を
経て19病日に気管切開術施行。その間もDr・Nsと協議しながら
PT継続した。22病日端座位・35病日チルト・リクライニング車
いすにて離床開始。46病日人工呼吸器離脱・立位練習開始、55
病日歩行練習開始した。最終的に起居〜移乗軽介助、スライド
ウ ォ ー カ ー 歩 行20m指 尖 介 助、MRC score 34/60点、Barthel
Index 25/100点と改善、61病日リハビリ継続のため前医に転院
した。【考察】ICU-AWにおいては、ABCDEバンドルが推奨され
ており、中でもearly mobilizationが重要であると言われている。
人工呼吸器かつ日々全身状態が変化する中でもDr・Nsと協議、
モニタリングしながら、離床・運動療法を積極的に実施したこと
が身体機能・基本動作能力改善に繋がった。
O16-2
O16-3
○福山直樹(理学療法士)1),佐々木順一1),亀尾光子1),陶山直樹1),
目黒育子1),福田弘毅2),山田真悠子2),福田勇司3)
○平田篤志(作業療法士)1),伊藤理恵1),平松良啓1),勝谷将史1),
竹林 崇2)
1)松江赤十字病院 リハビリテーション科,2)松江赤十字病院 神経内科
3)松江赤十字病院 臨床工学課
1)西宮協立リハビリテーション病院 リハビリテーション部
2)兵庫医科大学病院 リハビリテーション部
人工呼吸器管理となった高齢のALS患者における
Lung insufflation capacity
(LIC)を 用 い た 呼 吸 理
学療法(LIC Training)の経験
脳卒中回復期におけるmodified-CI療法実践の一事
例
【はじめに】人工呼吸器管理となった高齢の筋萎縮性側索硬化症
(以下、ALS)患者にLIC Trainingを実施する機会を得たので報告
する。
【症例】80代男性、X年手指の筋力低下で発症、X+1年精査
目的で入院しALSと診断された。肺活量1420mL、入院中肺炎に
よる急激な呼吸不全を生じ気管切開、人工呼吸器管理となった。
排痰管理としてカフアシストを導入した。ALSFRS-R 16点でリ
ハでは短距離歩行可能だが日中ベッド上臥床。
【方法】呼吸機器回
路を複数組み合わせてLIC機器を作成。用手的に最大吸気位まで
加圧(最大圧40cmH2O以下、患者の耐えうる最大圧まで)し、約2
秒間の空気の溜め込み後に排気する方法で実施。1日5回行い12
日間実施。
【結果】LICは1970mLから2210mLまで増加。
【考察】
初期は最大吸気位までの加圧に緊張を認め、本人が慣れるまでに
時間を要した。徐々に慣れるにつれリラックスした状態での送気
が可能となった。本人から「肺が拡がる感じがした、
気持ち良かっ
た」と満足感が得られた。間欠的な人工呼吸器使用で離脱の時間
が増加し、ポータブルトイレ使用から介助歩行でのトイレ移動へ
とADLの変化を認めた。カフアシストでも同様の訓練ができる
ように設定を変更し、退院後も在宅で継続できるよう訪問看護ス
タッフと連携した。LIC Trainingは高齢の人工呼吸器管理のALS
患者においても直接的に肺・胸郭の柔軟性を維持する手技として
有用であると考える。
【はじめに】近年、回復期リハにおいて、CI療法の課題指向型訓練
やTransfer Package(以下TP)を用いた行動変容手法が注目され
ている。今回、当回復期病院で脳卒中事例にmodified-CI療法を
実践した結果とTPの実際を報告する。尚、本報告に際し、本人
の同意を得た。
【事例紹介】A氏80代男性。脳梗塞(右片麻痺)発
症18日後に当院入院。入院時よりADL自立。発症54日後にCI療
法開始。目標は独居再開であり、IADLの自立を挙げた。
【方法】
Morrisら(2006)のCI療法方法論を参考に、週5日、1日に作業療
法士(以下OT)との課題指向型訓練を1時間、自主的に1.5時間、を
3ヶ月間で合計100時間以上実施。加えて、Takebayashiら(2013)
がMorrisら(2006)の方法論を修正したTPをOTと実施。評価項
目はFugl-Meyer Assessment(FMA)、簡易上肢機能検査(STEF)、
Motor Activity Log(MAL)を用いた。【TPの実際】ADLは書面に
て麻痺手の使用状況を聴取し、確認。また、適時OTが病棟へ行
き直接介入を実施。IADLは訓練室で実施可能な家事動作を課題
指向型訓練として頻回に行い、ビデオ映像によるフィードバッ
クを実施。
【結果】上肢機能評価(介入前→介入後)FMA(51→63)、
STEF右(1→56)、MAL:AOU/QOM(0.4/0.4→2.6/2.2)【考察】本事
例はWolf(2008)が示した回復期のCI療法短期効果と同様の結果
を認めた。一方、TPは、病院の限られた環境の中で行うため、事
例の日常生活に反映するための方法について検討が必要と考えら
れた。
66
O16-4
O16-5
○堀川光司(理学療法士)
○西尾大祐(理学療法士)1),高橋秀寿2),平野恵健1,3),大江康子4),
林 健5),木川浩志1)
小脳出血により遷延性意識障害を呈した症例におい
て、視覚刺激の遮断が頸部の関節可動域に及ぼす影
響
小脳性運動失調症患者に対するノルディックウォー
キングの試み
1)飯能靖和病院 リハビリテーション科
2)埼玉医科大学国際医療センター リハビリテーション科
3)首都大学東京大学院 人間健康科学研究科
4)東京都リハビリテーション病院 リハビリテーション科
5)埼玉医科大学国際医療センター 神経内科
会田記念リハビリテーション病院 リハビリテーション部
【緒言】頭部・体幹の動きに先行して眼球が動き、続いて頭部、体
幹の順に回転運動が起こると言われている(福井、2011)。選択的
視覚注意は小脳が関与するが、小脳に機能障害が生じると選択的
注意が向けられなくなり(Allen、1997)、眼球運動が障害される。
小脳に機能障害が生じた場合、眼球運動が障害され、関節可動域
(range of motion:以下、ROM)を制限する可能性がある。しかし、
その関係性を調べた報告は見当たらない。よって今回、小脳出血
により遷延性意識障害を呈した症例に対して、視覚情報がある場
合と視覚情報遮断時の、頸部のROMを計測し比較した。なお、姿
勢による影響を考慮し、30°ギャッジアップ時、および車いす座
位時のそれぞれで比較した。
【対象】小脳出血により遷延性意識
障害となった50代男性。開眼時右側を注視し、頸部は常に右回旋
している。尚、研究について本症例の家族に説明し同意を得た。
【方法】30°ギャッジアップ位および車いす座位において、開眼時
(視覚情報あり)と閉眼時(視覚情報遮断時)の頸部のROMを測定し
比較した。
【結果】ROM(開眼/閉眼):ベッド30°ギャッジアップ 頸部屈曲(5°/35°)、右回旋(55°/45°)、左回旋(-25°/15°) 車いす座
位 頸部屈曲 (25°/45°)、右回旋(55°/40°)、左回旋(20°/25°)【考察】
頸椎の回旋には胸椎のアライメントや肩甲骨の位置が影響してい
るため(上田、2012)、姿勢により頸部の可動域が変化したと考え
る。
【はじめに】小脳性運動失調症患者(失調症患者)は歩行が拙劣で
あるため、ノルディックウォーキングを習得し、機能訓練として
継続するには一定の条件を満たす必要があると考える。今回我々
は、失調症患者2例に対してノルディックウォーキングを試みた
ので報告する。
【症例1】26歳 女性。疾患:小脳の髄芽腫 第11胸髄レベルの放
射線性脊髄炎。機能障害:四肢・体幹の運動失調 右下肢麻痺。
歩行能力:キャスター付き固定型歩行器と右プラスチック型短下
肢装具を使用して屋内歩行自立。結果:ポールの振り出しが拙劣
で、ポールが支持の際に動揺するため、姿勢保持が困難であった。
【症例2】68歳 女性。疾患:脊髄小脳変性症。機能障害:四肢・
体幹の運動失調。歩行能力:T字杖を使用して屋内歩行自立。結果:
歩行では歩幅が小さく歩行率が大きいことから、下肢の振り出し
と同調してポールを振り出すことが困難であった。また、T字杖
歩行に比べて歩調をとりにくいとの感想を得た。
【考察】失調症患者がノルディックウォーキングを習得するには、
T字杖歩行が可能なほどの歩行能力が必要であり、患者の歩容に
応じて歩行パターンを検討する必要があると思われた。また、機
能訓練として継続するには、歩調について日常的な歩行と比較す
る必要があると思われた。
O16-6
O17-1
○谷口真基(理学療法士)
,湊谷勇人,雨宮麻由子,増井新悟,
板野郁也,堀江弘恵,永島信浩,手塚康貴
○高原智子(言語聴覚士),波多野文恵,時津大地,堀川早苗,
村上あゆみ,夏目重厚
阪南市民病院 リハビリテーション室
医療法人榮昌会 吉田病院 附属脳血管研究所
最重症COPD,間質性肺炎患者に対するNPPV使用
下の運動療法効果
メモノートを活用した重度運動性失語の一例
〜心理面の変化と言語機能の改善について〜
【はじめに】当院では重症呼吸障害患者に対し積極的な運動療法
を実施する為に、NPPVを使用している。今回、最重症COPD、間
質性肺炎(以下IP)症例に対するNPPV使用下の運動療法効果につ
いて報告する。
【 対 象 】A氏:76歳 男 性、COPD。 肺 機 能 検 査 はVC: 1.36L、 %
VC: 36.1%、% FEV1: 28.1%、COPD重症度4(最重症)
。
B氏:82歳男性、IP、肺機能検査はVC: 1.89L、% VC: 60.5%、重
症度4(最重症)
。
【介入】A氏:NPPV使用下( IPAP: 10・EPAP: 6・FIO2: 35%)
での歩行訓練。
B氏:NPPV使用下(IPAP: 8・EPAP: 4・FIO2: 60%)でStrength
ergoを施行。
【結果】酸素投与下とNPPV使用下を比較したところ、A氏は歩行
が1分半から10分以上に延長し、B氏は1分半から2分半に運動時
間が延長した。治療効果として、シャトルウォーキングテストは
A氏 10→16シャトル、B氏 7→6シャトル、長崎大学呼吸器日常生
活活動評価法はA氏 24→24点、B氏 19→18点となった。
【考察】重症COPD症例ではNPPV使用により運動持続時間の向
上、運動耐容能の改善に繋がったが、IP症例では改善が得られな
かった。現状ではIPに対するNPPV使用下の運動療法に関する報
告は少ない為、今後さらに検討を重ねていきたい。
【はじめに】病前より書字習慣をもつ重度運動性失語症を呈した
患者に対し、メモの習慣を活用しながら言語訓練を行った。能力
獲得に伴う心理面の変化、言語機能の改善について報告する。【症
例】50代、女性、右利き【現病歴】X年Y月左被殻出血を発症し、当
院に救急搬送。同日、開頭血腫除去術施行。発症翌日より言語療
法開始。
【神経心理学的所見】重度運動性失語、口部顔面失行【ST
初期評価】発症7病日目のSLTAでは単語の理解10/10、短文の理
解7/10、呼称0/20、漢字単語の書字0/5と理解は比較的保たれて
いたが、表出はアナルトリー・喚語困難を認め、発声あるも発語
に至らず、書字は文字想起困難であった。また麻痺や発話面への
苛立ちから落ち込みを強く認め、心理的に不安定な状態であった。
【経過】発症19病日、訓練予定時刻などをメモするようになった。
自発書字は困難で写字レベルの表出に留まる。36病日、単語レベ
ルの自発書字が可能となった。メモが発話の補助的手段となり発
語量の増大を認めた。115病日、短文レベルの表出が可能となり、
毎日の出来事や時間を書きとめることが習慣化した。それに伴い
口頭表出の増加を認め、コミュニケーションの質が向上し、心理
面にも安定がみられた。
【おわりに】現在は軽度のアナルトリー・
喚語困難・音韻性錯書が残存するも、文レベルでの表出が可能と
なっている。更なるコミュニケーション手段の拡大を目指し、外
来にてメール操作練習を継続している。
67
O17-2
O17-3
○澁谷香澄(言語聴覚士)1),田宮高道1),柴田珠里1),山口裕之2),
斎須雄一郎1)
○玉井由美子(言語聴覚士)1),太田利夫2),大村武久3)
携帯電話でメール作成が可能になった重度運動性失
語症者への関わり
〜訓練時のモダリティ選択の工夫〜
重度ブローカ失語症例の慢性期における発話の改善
とその機序について
1)西宮協立リハビリテーション病院 リハビリテーション部
2)西宮協立リハビリテーション病院 リハビリテーション科
3)西宮協立リハビリテーション病院 脳神経外科
1)医療法人社団医修会 大川原脳神経外科病院 リハビリテーション部
2)医療法人社団医修会 大川原脳神経外科病院 脳神経外科
【はじめに】重度の運動性失語を呈した症例に対して、保たれてい
ると判断したモダリティを活用した訓練を実施した。
「携帯電話
のメール作成」という目標を達成する経過を報告する。
【症例】40歳代男性。左被殻脳出血42cc。重度運動性失語症、右
片麻痺。聴理解は単語レベルより低下、発話は喚語困難と発語失
行による制限があり、書字に関して名前以外の自己情報は不良で
あったが読解は保たれていた。
【経過】喚語困難時、
残存能力である文字をヒント呈示に用い、徐々
に語頭音ヒントなどの聴覚的な呈示のみでも呼称可能なレベルへ
向上した。本人より携帯電話でメール作成の希望あり、書字訓練
を増加、簡単な短文レベルの表出が可能になった。
【結果】喚語能力、
書字能力は向上。聴理解力は単語レベル向上も、
文章レベルは停滞。
【考察】訓練効果として、重度〜中等度の患者の場合、心理的負担
や意欲低下などを考慮し、保たれたモダリティを利用することの
有用性が示されている。本症例において一定の改善は認めたが、
聴理解力は伸び悩んだ。保たれたモダリティ活用は有効であるが、
その効果は用いた様式である文字に類似した範囲内に留まったも
のであると思われた。
【症例】60才男性。54才でクモ膜下出血発症、左中大脳動脈瘤ク
リッピング術・脳室ドレナージ術・外減圧術施行。右手指軽度麻痺、
歩行自立、重度失語症、認知機能に問題なし。当院での6ヶ月間
の回復期リハを経て外来ST継続。
【発症から2年間の症状】
( 1)理
解:初期より簡単な指示理解可能で、聴理解<文字理解。( 2)発
話:アナルトリー重度で当初有意味語は全く無かったが、発話意
欲は非常に強かった。1音の構音練習から始め、発症1年10ヶ月後
に仮名清音1文字の音読が7割、1音節復唱が6割可能になったが、
呼称は音韻の想起障害強く困難。(3)書字:先ず漢字書字が改善。
仮名は困難だったが発症2年後頃から漢字に振り仮名が打てるよ
うになってきた(例「目め」)。【その後の訓練】発症2年半後より
呼称場面で漢字書字→仮名振り→音読という経路の活用を促した
が、当初は書称>呼称。その後音読の改善に伴って漢字書字から
呼称に至るようになり、現在SLTA-ST高頻度語呼称33/55(同一課
題の書称36/55)。日常の発語も単語レベルながら増加し、元々意
欲的だったコミュニケーション活動への参加も更に増えた。【考
察】慢性期に於ける失語症改善の報告はあるが、機能改善の機序
に関する報告は少ない。本例の慢性期の発話の改善には、本人の
強い発話・訓練意欲と良好なコミュニケーション環境の下で、数
年に亘る書字→音読→呼称という迂回路の利用(機能再編成)が
関与したと考える。
O17-4
O17-5
○越川ひろみ(言語聴覚士)
,山下哲谷,辻本徳栄,熊谷祥英
○石山寿子(言語聴覚士)1,2),多良淳二1)
医療法人沖縄徳洲会 千葉徳洲会病院 リハビリテーション科
1)医療法人社団永生会 介護老人保健施設 イマジン
2)医療法人社団永生会 南多摩病院
ピアカウンセリングによりコミュニケーションが
円滑になった失語症例の考察
コミュニケーション訓練にCOPM(カナダ作業遂行
測定)を活用した生活期失語症者の1症例
【はじめに】失語症の改善は緩徐である場合が多い。反面、包括医
療制度により在院日数は短縮傾向にある。十分な言語聴覚療法の
提供やその家族への指導が難しくなるなか、生活期におけるピア
カウンセリングに効果を示唆する症例とその家族に関わる機会を
得たので若干の考察を加える。
【症例】70歳代 男性。脳梗塞と診断され入院加療される。右手
指の巧緻性低下、失語症等の高次脳機能障害の改善を目的として
リハビリテーション科へ転科、約90病日退院。入院当初、聴理解
は単語であれば可能、発話は単語レベルで主症状として喚語困難・
保続を認めた。回復期病棟を経て聴理解は短文まで、発話も喚語
困難が残存したが短文まで可能となった。
【経過】外来にて60分/1〜2週 個別言語療法実施。約100病日ピ
アカウンセリングが行われている失語症友の会を紹介、参加。家
族との会話が自然になり、感情の起伏が減少した。
【考察】同障者の会にて他者と会話する場面が増え、コミュニケー
ション能力が向上したと考えた。家族も同障者の家族同士という
空間で不安や悩みを話し、コミュニケーションパートナーとして
の役割と自信を得られたと推測する。失語症患者にとって長期に
わたり継続可能であるピアカウンセリングは、今後在院日数が短
縮傾向にある失語症へのアプローチの一つとして大いに期待でき
るものと考えた。
【目的】生活期の失語症者へのコミュニケーション訓練にカナダ
作業遂行測定(以下COPM)を使用した。活用効果と課題について
考察し報告する。
【症例】60歳代男性、10年前に脳出血発症。右片麻痺と失語症あ
り。失語症は非流暢タイプ重度で、理解面は日常生活上の身近な
内容であれば可能レベル、発話は喚語困難のため単語レベルで時
に発話出来る程度であるが、比較的確実に意思を表出できるよう
になっていた。デイケアを週2回利用しているものの、他利用者
やスタッフとの交流も少なく、本人の生活上の希望やニーズが共
有出来ない状態であった。
【結果】COPMを使用し情報収集したところ、5つの問題が挙がっ
た。問題点は重要度の高い順に、散歩( 8/10点)
、入浴時の麻痺側
下肢( 6/10)、遊び( 5/10)、手( 4/10)、足の先( 4/10)であった。
本人は発症以前からの趣味であったハイキングや買い物などの自
由な外出を望んでおり、そのために運動機能の自主トレに熱心な
ことがわかった。3ヶ月後の再度評価では、遂行度5.8から5.2で
変化は−0.6、満足度は6.2から5.0で変化は−1.2であった。
【考察】遂行度と満足度が低下していた点については、問題点を意
識したことで厳密に向き合った結果と思われた。遂行、満足度の
細かな抽出方法には今後の検討を要するが、生活期の失語症者に
対する介入の手段としてCOPMは本人のニーズを引き出しやすい
方法であることがわかった。
68
O17-6
O18-1
○沖本加奈子(その他)1),大西里沙1),田中みどり1,2),田中誠也1,2),
石橋悦次1),石橋寛之1),石橋杏里1),大久保直美1),花井紀子1)
○永徳研二(理学療法士),中野将行,幸慎太郎,篠原美穂,
小野隆司
1)医療法人社団石橋内科 広畑センチュリー病院
2)姫路獨協大学 医療保健学部
杵築市立山香病院
重度失語症を呈する利用者への音楽療法〜ライフイ
ベントの援助と音楽を用いた失語症訓練〜
当院一般病床におけるリハ対象患者の入院時栄養状
態
【目的】本研究の目的は当院におけるリハ栄養の充実を目指し、そ
の基礎的資料とするため実態調査を行った。
【対象と方法】対象は平成26年10月1日から平成27年4月30日まで
の期間に当院一般病棟に入院し、リハ処方のあった232名(平均年
齢:83.6±9.3歳)。方法は調査項目をAlb値、MNA®-SF、FIM得点、
栄養管理状態とし、入院時のデータをカルテ記録より後方視的に
調査した。また、Alb値とFIM得点の関係について比較検討した。
分析はPearsonの相関係数の検定を用いた。更に、Alb値3.0g/dl
以下の疾患別分布と栄養管理状態について検討した。
【結果】Alb値平均は3.2±0.7g/dl、MNA®-SF平均は6.9±3.5であ
り、Alb値とFIM得点の間にはr=0.48の有意な正の相関関係を
認めた(P<0.001)。Alb値3.0g/dl以下のものは疾患別では呼吸
器疾患で最も多く57.9%を占めた。また、栄養管理状態では経静
脈で最も多く73.7%を占めた。
【考察】当院一般病棟において、多くの患者が低栄養であることが
明らかとなった。Alb値とFIM得点の間には有意な正の相関関係
を認めたことからも低栄養を是正することが重要である。更には、
呼吸器疾患、経静脈においては特に低栄養を多く認めたことから、
このような患者に対しては栄養に対する支援体制を強化していく
ことが急務と考える。
【症例】60歳代、男性。平成25年1月仕事中に倒れ意識消失し、A
病院に救急搬送された。脳出血と診断され開頭血腫除去術、外
減圧術を実施された。意識障害(JCS3桁)で右片麻痺が認められ
た。同年2月肺炎を発症しリハビリ中断となり、寝たきり状態が
続いていた。同年3月、回復期リハビリテーション病棟へ転院し
た。退院時、
発声はほとんどみられない状態で頷き、
ジェスチャー、
表情で意思疎通を図った。同年6月末、自宅退院し通所リハビリ
を週4回利用し集団音楽療法を開始した。介入時、ADL全般に介
助が必要で、全般的な高次脳機能障害が観察された。集団音楽療
法ではリズムを取る反応が観察されたが、歌唱することはなかっ
た。介入1ヶ月後、歌唱に成功した。3カ月後には個別訓練を開始
し、残存する右半球機能を利用して歌唱という形で発話を促進さ
せた。また、注意力の向上のために楽器を用いた訓練を行い、感
嘆語を発声することが増えた。6ヶ月後、重度な失語症患者には
難しいと考えられているがイベントに向けてメロディックイント
ネーションセラピーを開始した。右脳を介して左脳の言語野に働
きかけるため、言葉にメロディーをつけて歌唱という形で発話練
習を行い、次第に話し言葉に近づけた。平成26年6月、イベント
で単語を表出することに成功した。今回、音楽を用いた訓練を行
い名前や単語を表出することを可能とした症例を経験したので報
告する。
O18-2
O18-3
○木下 亮(理学療法士)
,加藤直行,北田利弘,小原久美子,
海野太一
○石橋麻希(理学療法士),江藤江利香,佐藤周平,大隈和喜,
大隈まり
健育会 竹川病院
独立行政法人 地域医療機能推進機構 湯布院病院
リハビリテーション科
COPD患者への栄養指導の取り組み−良好なアドヒ
アランスを築くための行動変容の歩み−
大腿骨頸部骨折術後の高齢者に対する栄養管理が
身体機能改善に有効であった1症例
【はじめに】近年、COPD患者の生命予後には栄養状態が大きく
関わっているとされているが、我が国のCOPDに対する認知率は
低く、症状が自覚されにくい点からアドヒアランスが低い傾向と
なっている。今回、管理栄養士とともに栄養指導を行い、症例の
行動変容に繋がったため報告する。
【症例】80歳代男性、肺炎後
廃用症候群にて当院回復期病棟入院、既往歴にCOPDを有する。
BMI17.8,Hb12.7,Alb3.3,20bpm。屋内O2吸入下にてサークル歩
行見守りレベル。また、ヘルシンキ宣言に基づき同意を得ている。
【経過と考察】食事は1日3食に加え、運動後に補助飲料としてへパ
ス(BCAA配合)を摂取、計2000kcal/日。1週間ごとに体重と脚伸
展筋力(Strength Ergo240)を同日測定。始めは体重管理や栄養
摂取に対する意欲は低く、自己管理が不十分で受動的だったが、
次第に下肢筋力と歩行量が増大し、評価結果を栄養と交えて指導
した事で「食事と運動の両立は大事だな」
との発言が聞かれた。栄
養への内発的動機付けへと繋がり、能動的に体重測定やへパスを
飲む様子がみられた。
【結果】BMI1.4,Hb13.9,Alb3.9,15bpm。
歩行は屋内独歩自立、屋外はO2吸入下にて杖歩行自立。体重測定
や補助飲料摂取の自己管理定着し、栄養の必要性を理解・実施し
て頂き退院に至った。
【まとめ】
栄養指導を単体で行うのではなく、
身体機能や活動の評価を栄養と交えて指導する事で、受動的から
能動的な本人の行動変容を導き、良好なアドヒアランスに繋がっ
たと考える。
【 1.はじめに】今回、大腿骨頸部骨折を受傷後に低栄養となり身体
機能の改善やADL向上に苦渋した症例を経験した。栄養状態の
評価や妥当な運動負荷を再検討し栄養管理とリハビリテーション
(以下;リハ)を行った結果、ADLの向上に繋がったため報告する。
【 2.対象・方法】89歳女性、施設入所中に転倒し左大腿骨頸部骨
折、第7、10胸 椎 圧 迫 骨 折 を 受 傷。BMI22.4kg/m2、HDS-R:20
点、FIM42点、術 後3週 間 目 よ り 回 復 期 リ ハ 病 棟 に 転 棟。 術 後
10週経過したが食欲不振が続き、検査により胃潰瘍の診断あ
り。またADLや身体機能の改善も図れていなかった。そこで栄
養状態の評価として血液生化学データ、簡易栄養評価表(Mini
Nutritional Assessment;MNA)、身体活動は代謝当量(Metabolic
equivalents;METs)を用いて運動負荷量の再設定を行いアプロー
チを実施した。
【 3.結果】胃潰瘍や抑うつに対する内科的治療と併用し栄養アプ
ローチとして経口摂取・点滴に加えて経鼻栄養を開始し運動負荷
量も見直した。結果、術後12週目では目標摂取カロリーを経口の
みで摂取可能となり経鼻栄養は中止。FIM46点となり目標達成し
た。
【4.考察】消耗性疾患を持つ患者に対する術後のリハでは体重や体
組成、栄養指標を十分に観察し、適切なエネルギー摂取量の設定、
運動負荷量の検討を繰り返し行い実行することが重要である。
69
O18-4
O18-5
○榊 利光(理学療法士)1),石橋悦次2),石橋杏里1),石橋寛之1),
野間瑞穂1),岩本夏奈1),英保直孝1),荒瀬春菜1),山本 香2),
小岩真理1)
○城戸孝介(言語聴覚士),高柳公司,嬉野準一郎,清田由希,
本多弘幸,中尾佳奈,小島 進
体位接触圧測定を行い体圧分散に伴うマットの検討
当院の栄養サポートチームの現状と課題
1)医療法人社団石橋内科 広畑センチュリー病院
2)医療法人社団石橋内科
医療法人社団東洋会 池田病院
【はじめに】近年、リハビリテーション(以下リハビリ)における
栄養管理の重要性は高く、QOLを向上させる為にも栄養ケアは欠
かせない。当院では栄養サポートチーム(以下NST)
を開始し3
年経過した。今回、NSTの3年間の経過を調査したので報告する。
【対象・方法】平成24年4月〜平成26年3月までにNST対象となっ
た558名(男性:259名、女性:299名)平均年齢81.09歳。年齢、性別、
疾患、リハビリ実施の有無、依頼理由、終了理由を調査した。終
了理由は、改善と脱落、その他(転院・死亡等)に分類した。
【結果】疾患の内訳は、内科的疾患312名、脳血管疾患90名、整
形疾患87名、その他69名であった。リハビリ実施の有無は、有
り430名、無し128名。依頼理由は、低栄養( 48%)や体重減少
( 46%)
、食事療法の検討( 39%)
、摂取不良( 33%)で多くみられ
た。終了理由は、改善302名、脱落159名、その他97名であった。
【考察】対象者の半数以上は改善している結果となった。また、
NST対象者にリハビリ実施者が多い状態であった。現状としてリ
ハビリではSTが回診やカンファレンスに参加し、摂食・嚥下状態
を報告している。しかし、リハビリ栄養を考えるには運動量など
の身体機能を専門的に把握する事が不十分な状況。今後は栄養ケ
アを含むアプローチが出来るようリハビリ全体へ伝達・発信して
いく必要があると考える。
【目的】当院では、セラピストが主観的観点からマットを選択して
いた。効果的なマットの選択が行えているか体位接触圧測定器を
使用し検証する。
【方法】対象者は、血清alb3.5g/dl以下、自己体動困難、BMI:18
以下のいずれかに該当する3ヶ月入院加療した患者様27名(平
均:81.6±6.2歳)。主観で選んだマットでの圧を、体位接触圧測定
器を用いて検証し、褥瘡の追跡調査を行った。
【結果】体位接触圧測定を行った結果、27名中8名(30%)に問題が
あった。うち7名(26%)はマットに問題があり、
1名(4%)は服やシー
ツのしわによって過度に圧が集中していた。マットの変更・服や
シーツのしわをなくす事で、褥瘡深達度において、2名が改善、6
名が維持できた。今回問題がなかった19名は少なくとも状態維
持出来ていた。
【考察】主観での選択は30%の症例で圧に問題があるため注意を
要する。今回、視覚や体交実施者の主観的な確認だけでは各患者
様の体重による圧の変化までは考慮できておらず、褥瘡を発生さ
せる可能性がある事が示唆された。
O18-6
O19-1
○銅子憲仁(言語聴覚士)
○篠原美穂(作業療法士)1),永徳研二1),中野将行1),小野隆司2),
江藤 修3)
医療法人健康会 嶋田病院 リハビリテーション部 言語聴覚科
1)杵築市立山香病院 リハビリテーション科,2)杵築市立山香病院
3)大分県杵築市役所福祉推進課
当院における在宅NSTに向けた取り組み
介護予防・日常生活総合支援事業におけるリハ専門
職の役割と課題
【はじめに】当院では、入院中の栄養不良の患者様に対して栄養サ
ポートチーム(以下NST)が介入し、栄養状態の改善等、各種問題
に対し取り組んでいる。退院後、在宅医や家人からの相談を受け
ることもあり、栄養状態について相談する場として、在宅NST勉
強会を結成した。
【在宅NSTメンバー】医師4名、歯科医師1名、看護師1名、薬剤師1
名、管理栄養士2名、言語聴覚士3名、ケアマネ2名、事務担当者1名。
【活動目標】在宅NSTの啓蒙、栄養状態の評価と適切な栄養法の選
択、嚥下機能評価と現場での食事指導、病院NSTとの連携の4つを
テーマに活動を行っている。
【目標に対しての取組】在宅NSTの啓蒙:定期的な勉強会を実施し、
活動を広く知ってもらう。定期開催として勉強会は3ヵ月に1度
実施している。栄養状態の評価と適切な栄養法の選択:現状での
食事摂取の状況、摂取内容が分かる様に栄養管理経過記録表を作
成し、チームで検討する。嚥下機能評価と現場での食事指導: 嚥
下機能評価を行うとともに、専門職が食事形態や食事の介助方法
を在宅に赴いて直接アドバイスする。病院NSTとの連携:当院か
らの情報提供を退院前に行い、在宅での治療につなげる。
【今後に向けて】地域の患者様に対し、栄養相談の場として機能し
ていくよう、チームとして取り組んでいきたい。
【はじめに】当院が所在する杵築市は平成17年に高齢化率30%を
超え増加の一途をたどっている。このような中、平成24年2月よ
り地域ケア会議を開催し、要介護認定率は平成23年21.6%から平
成26年にかけて19.5%に減じ、第6期介護計画では介護保険料基
準月額を据え置いた。そのためには地域ケア会議で抽出した課題
の解決が不可欠であり、リハ専門職の関わりが求められている。
平成26年度の当院の介護予防事業を振り返り、地域リハ支援活動
におけるリハ専門職の役割と課題を考察した。
【平成26年度の取
り組み】平成26年度は隣市も含み地域ケア会議、自治会や学校で
の出前講座、総合支援事業での技術指導を行った。平成27年度の
事業開始に向けて、介護予防運動継続・認知症予防教室、総合支
援事業、サロンでの相談対応、ロコモ健診、認知症予防健診、介護
予防ボランティアの受け入れや地域ケア会議での教育体制を整備
した。
【経過と考察】地域課題について保険者(市)、地域包括支援
センターと院内のコアメンバーで協議を重ね、介護予防教室や総
合支援事業の運営、認知症の早期発見事業などアウトリーチ型の
介入を事業化した。協議の中で地域資源が把握できた。人員配置
にあたっては業務改善を図り対応した。この経験から、職域を超
え医療・介護の双方に精通すること、多様な運営主体とのコミュ
ニケーション技術や自組織の経営をふまえた事業計画ができるこ
とが必要と理解された。
70
O19-2
O19-3
○阿部裕美(理学療法士)1),栗城身和子1),小澤太郎1),神林 薫1),
居村茂幸2),川原田晴通1)
○佐藤周平(理学療法士),日高隆之,梅木大輔,米倉正博,
大隈和喜
1)医療法人愛正会 やすらぎの丘温泉病院 リハビリテーション科
2)植草学園大学
地域医療機能推進機構 湯布院病院 リハビリテーション科
中山間地域における介護予防事業の取り組み
〜地域Map作りの試み〜
リハ専門職による通所介護事業所での介護予防支援
活動の要点
【はじめに】要支援者の自立支援に向けた効果的な介護予防ケア
マネジメントが必要とされている。今回、リハ専門職を介護通所
事業所へ派遣し、利用者と事業所職員へ運動の実践指導を行った。
その支援のポイントについて事例を通して報告する。【方法】リハ
職の支援は、1.基本情報に基づいた生活機能の課題分析、2.初期
体力測定の結果から個別の目標と運動負荷量の設定、3.事業所職
員への体力測定方法や運動時のリスク管理の指導とし、3ヶ月間
(計4回)介入した。
【事例提示】85歳女性、要支援2。既往に心筋
梗塞、脊柱管狭窄症があり、全人工膝関節置換術後より生活機能
の低下を認め、自宅では伝い歩きとなった。初回に事業所職員と
ケアマネジャーより生活機能に関する情報を収集し、目標を、近
隣のグランドを歩けること、老人会の旅行に参加すること、とし
た。初回の体力測定では職員にも手段を伝達し、測定結果から転
倒リスクの共有を図った。運動時に疲労度や疼痛の有無を聴取し、
心肺機能を考慮して運動負荷量とメニューを設定した。2回目以
降は、自宅での運動の実施状況、体調の変化を聴取し、メニュー
を適宜変更した。最終時、体力測定結果と生活機能で改善が得ら
れた。
【考察】生活機能の課題を利用者と職員で共有し、メニュー
を提示したことで運動が継続できた。また、リスク管理と適切な
運動負荷量の設定により体力は向上し、生活機能の改善に繋がっ
たと考える。
【はじめに】当院では平成24年度より市街地から地理的に離れ、高
齢化が急速に進んでいる山間地域において介護予防教室を開催し
てきた。近年、心身機能の改善だけでなく、地域の実情に応じた
効果的・効率的な介護予防の取組が注目されていることをふま
え、より地域への理解を深めることを目的とし、新たな試みとし
て「地域Map」の作成を行ったので考察を加え報告する。
【方法】
住宅地図を拡大し作成した地域Mapに、介護予防教室参加者の自
宅や周辺の環境、地域の集会場所・商店、地域の現状等を書き込
んでいく。【結果】転入者はなく地域に代々住んでいる方々で地
域が形成されている。住民間の繋がりは強く、地域の行事やお茶
会が頻繁に行われ、一人ひとりが地域の現状をよく把握していた。
参加者は、地域の現状が地域Mapに表れることで、自分たちが持
つ情報やつながりが住み慣れた地域で暮らしていくために重要な
役割となることが理解でき、自主的に地域の出来事について報告・
相談が行われるようになった。それにより主催者側は参加に至ら
ない方々の現状や理由、住民のニーズ、地域の健康課題が明確と
なった。
【考察】今回の試みは、地域の現状分析に必要な情報共有
と、住民に対し互助の重要性とその担い手としての役割を促すこ
とができ、地域づくりによる介護予防推進の一助となった。今後
は地域包括支援センターと共に総合的な支援を行い、住民主体の
活動へと移行させていきたい。
O19-4
O19-5
障害者の健康づくりプログラムの構築と普及のため
の地域連携型モデル事業 メタボリックシンドロー
ム予防、改善のための栄養教室
自立高齢者における在宅での運動療法効果
○藤田 淳(理学療法士)1),高橋佑典1),村上和志1),塩澤伸一郎2),
田中悠浪3),宮本 学4)
○瀧澤素子(管理栄養士・栄養士)1),宮嶋利成2),鶴岡弘将3),
染屋政幸4)
1)医療法人社団健育会 石川島記念病院
2)日本リハビリテーション振興会 専門学校社会医学技術学院
3)アライブメディケア
4)リハビリの風 訪問看護ステーションみなと
1)千葉県千葉リハビリテーションセンター 栄養部
2)成人理学療法科,3)更生園,4)診療部
【はじめに】平成25年度より国立障害者リハビリテーションセン
ターより、モデル事業の協力要請を受け、当センター障害者支援
施設「更生園」にて、障害者の健康増進に関する取り組みを行って
きた。今回は2年目に取り組んだ事柄について報告する。
【方法】
期間は平成26年11月〜平成27年3月までの5か月間。対象者は更
生園利用者13名。管理栄養士は集団による栄養教室や日常的な
声かけ、理学療法士は個人に合った運動プログラムを実施した。
栄養教室の介入方法は、月1回50分、合計5回集団指導を行い、対
象者個人ごとの健康管理カレンダーファイルを作成し記録しても
らった。評価方法としてメタボリックシンドローム診断項目を中
心に血液検査と身体測定を行い、測定結果をフィードバックする
為に面接を実施した。
【結果】全体として、体重・腹囲・体脂肪率・
中性脂肪・空腹時血糖は減少し、HDL−コレステロールは増加し
た。また、これらの正常値からはずれていた対象者が正常範囲ま
でには達しなかったものの改善傾向であった。介入後のアンケー
ト結果では、約80%の対象者が健康面で気を付けるようになった
と回答した。
【考察】対象者のモチベーションアップには、測定結
果などのフィードバックや評価、日常的な声かけは有効と考えら
れる。また、対象者がファイルを管理したことで、プログラム参
加への意識付けが出来た。健康管理には運動と栄養とが連携する
ことで効果的な結果に繋がった。
【はじめに】介護予防を目的とした自宅で実施可能な低負荷高頻
度の運動プログラムを指導し、生活体力およびQOLについて検
証したので報告する。【対象・方法】対象者は定期的な運動習慣
がなく医師に運動を止められていない75才以上の自立高齢者9
名。2014.11.22〜2015.1.17の8週間、自宅で毎日運動を行う事
とした。各測定および運動指導は初回、4週間後、8週間後の3回
実施。測定項目は問診、血圧、脈拍、測定開始前の痛み(VAS)、包
括的QOL(SF36)、生活体力(起居、手腕作業、10mジグザグ歩行、
輪くぐり)、下肢筋力(大腿四頭筋)、関節可動域(膝関節の屈伸)、運
動終了後の主観的運動強度(Borgスケール)。自宅での運動実施状
況の記録も行った。統計処理は、VAS、SF36の8つの項目、4つの
生活体力、筋力、関節可動域の項目ごとに、繰り返しのある分散
分析を用いた。
【結果】自宅での運動実施状況は51.4±5.1(平均±
標準偏差)日。歩行、輪くぐり、手腕作業、右下肢筋力、痛みは初
回評価と比べて有意な改善を認めた(F( 2.16)>4.30、P<0.05)。
SF36はすべての下位項目において初回と8週間後を比べると有意
差はみられなかった。
【考察】今回の運動プログラムが、起居以外
の生活体力3項目に対して向上がみられたことは地域の方々の介
護予防の一助になると考えられる。しかし、起居動作およびQOL
の改善には至らなかったことに対しては今後の課題として取り組
んでいきたい。
71
O19-6
O20-1
○小野寺遊(理学療法士)
,白井純一朗,島田志帆,野里赳士
○小山哲男(医師)
介護老人保健施設 はくじゅ
西宮協立脳神経外科病院 リハビリテーション科
自立高齢者における転倒と地域生活度の実態調査
リハビリテーション領域における疼痛性疾患診療の
特徴〜テキストマイニングを用いた解析の試み〜
【はじめに】在宅リハビリにおいて介護者が自立高齢者であるに
も関わらず、腰痛や膝痛などを持病に持ち、転倒を繰り返してい
るケースを目の当たりにすることがある。リハビリ職として地域
における自立高齢者の現状はどうなっているのかという疑問を抱
いた。本研究はまず、地域在住の自立高齢者の転倒と地域生活度
を調査し現状の問題点把握を目的とした。
【対象と方法】対象は当施設在宅介護支援センターの担当してい
る2地区にて研究参加の同意が得られた1次・2次予防事業対象者
19名とした。方法は2種類の質問紙による聞き取り法にて実施。
1つ目は地域生活度を評価するための指標として、E-SAS
(Timed
up & go test を除く5項目)を実施。2つ目は「神経疾患患者さん
と介護者の為の転倒防止マニュアル」を参考に作成した転倒につ
いてのオリジナルのアンケートを使用する。
【結果および考察】転倒者は19名中1名という結果であったが、問
診の中で37%がつまづき・ふらつきを経験し転倒恐怖感を有して
いることが分かった。E-SASでは「生活空間の広がり」と「人との
つながり」の平均値が基準値を下回っていたこと、また、自立高
齢者でも21%が敷地外からの外出に他者の助けを要していたとい
うことから、援助者が少なく生活範囲が狭小している傾向が示唆
された。本研究より転倒恐怖感・生活空間・周囲の援助者との関
連について、今後調査・分析の必要性があると考える。
【背景】疼痛性疾患の治療において、リハビリテーションが実施さ
れることが少なくない。しかしリハビリテーションにおいて疼痛
性疾患の診療の実態は明らかでない。本研究は、テキストマイニ
ングの手法を用いて、リハビリテーション診療においての疼痛性
疾患診療の特徴を調査するものである。
【対象と方法】2012-2014年の日本リハビリテーション医学会学
術集会の一般演題抄録集より、邦文で文中に「痛」を含む抄録を抽
出した。これらをフリーウェアソフトK-H Coderを用いてテキス
トマイニング解析(頻出語解析)を行った。
【結果】全2181題の抄録中、
「痛」を含む363題の抄録が抽出され
た。頻出語解析にて、抽出語の上位150語のリスト中、出現回数
が上位50位以内にみられたものには、関節、術後、骨、手術、膝、肩、
骨折、股関節、腰痛等、主に整形外科領域に関連した語が多かった。
これらは190題の演目に見られた。上位51−100位のうち、腫瘍
は122回の出現回数であった。これらは38題の演目に見られた。
上位101−150位の範囲に、脊髄と脳卒中があった。脊髄は出現回
数88回で36題の演目に、また脳卒中は出現回数82回で30題の演
目に見られた。
【まとめ】学会抄録で渉猟される範囲では、リハビリテーション領
域に於いて関心の高い疼痛性疾患は、整形外科に関連するもの、
腫瘍、脊髄、脳卒中に関連するものであることが示唆された。
O20-2
O20-3
○高原涼子(理学療法士)1),藤田祥子1),丸田千絵1),池田恵美1),
佐々木美沙1),葛原 匡1),樋野 幸1),山之内雅彦1),三上幸夫2),
天野純子1)
○平松良啓(作業療法士),平田篤志,伊藤理恵
疼痛のある下肢骨折術後患者に対する反重力トレッ
ドミルを使用した運動療法の効果
脳卒中後遺症に伴う慢性的な痺れに対するペインリ
ハビリテーションに基づく作業療法の実践
−サックスの再開に向けて−
1)医療法人ハートフル アマノリハビリテーション病院 リハビリテーション部
2)広島大学病院 リハビリテーション科
西宮協立リハビリテーション病院 リハビリテーション部
【緒言】脳卒中後遺症に伴う慢性痛や痺れにより活動・参加が阻
害されているケースは少なくない。松原ら(2011)は慢性痛の治療
には痛みの恐怖−回避モデルにおける悪循環からの脱却が必要で
あると述べている。今回、脳卒中後の慢性的な痺れを訴える事例
に対し、ペインリハビリテーションに基づく作業療法の実践が痺
れの軽減と大切な作業の獲得に繋がったため以下に報告する。
【事
例紹介】60代、女性。脳出血(右視床)を発症してから3年が経過。
左半身の強い持続的な痺れ(NRS:5〜9/10)から抑うつ的となり、
大好きなサックスの再開に至れないでいた。また、運動に伴い痺
れが増幅すると訴えた。
【経過】前頭葉の賦活による抑うつの緩
和および痺れの抑制を目的にお手玉を使用して歌に合わせたリズ
ム運動を実施。また、毎日の行動日誌により痺れの日内変動や行
動と痺れの関係性を明確にした。そしてサックスの再開に向けた
上肢機能練習や実動作練習を段階付けて実施した。
【結果】安静
時の痺れが軽減(NRS:4/10)。事例は運動中の注意の対象により
痺れが増減することに気付いた。特に自身が楽しめる活動に従事
している時は痺れを感じなかった(NRS:0/10)。痺れの軽減が積
極的な上肢機能練習に取り組むことを可能にし、サックスに取り
組むことが可能となるまでに至った。
【考察】脳卒中後遺症に伴
う慢性痛や痺れに対する積極的な介入が活動・参加を促進する可
能性が示唆された。
【はじめに】下肢骨折術後患者でレントゲン上経過良好でも、荷重
時痛が残存し長距離歩行困難な症例を経験する。今回、下肢骨折
術後患者に対する反重力トレッドミル(AlterG社製AlterG®)を使
用した運動による疼痛、歩行距離への影響を調査したので報告す
る。
【対象と方法】対象は下肢骨折術後で荷重時痛が残存し、独歩
が可能な3症例(大腿骨遠位端骨折プレート固定術後、大腿骨頚部
骨折人工骨頭置換術後、大腿骨頚部骨折3本螺子固定術後)とし
た。共通のプロトコルを作成し、反重力トレッドミル実施前平地
上、反重力トレッドミル上、反重力トレッドミル実施後平地上の、
VAS、最大歩行距離・時間、Borg Scaleを測定した。反重力トレッ
ドミル免荷量は疼痛消失を目安とし、速度は転倒の危険性がない
範囲で可能な限り速く設定した。
【結果】反重力トレッドミルの免
荷量は10〜30%、時速は1.6〜2.6kmだった。3症例とも反重力ト
レッドミル上での疼痛は軽減し、最大歩行距離・時間は延長した。
また、反重力トレッドミル実施前と比べ実施後の平地最大歩行距
離・時間は延長し、Borg Scaleは同等または低下した。
【考察】反
重力トレッドミルにより、疼痛を軽減した状態で安全に運動療法
が行えた。このことより、骨折後の虚弱高齢者に対する廃用予防、
持久力向上が期待できる。また、反重力トレッドミルを定期的に
使用できる場所に導入することで、長期に渡って運動耐容能低下
を防ぐことも期待できる。
72
O20-4
O20-5
○山田真由美(理学療法士)
○渡部理菜(理学療法士)
両側変形性膝関節症を有する患者が業務中の立位姿
勢で右膝関節内側痛が軽減した症例
脊柱管狭窄症より椎体間固定術後,腰痛の残存によ
り活動性が低下した一症例
〜腰痛除去により再び余暇活動を楽しめるように〜
医療法人社団哺育会 桜ヶ丘中央病院 リハビリテーション科
桜ヶ丘中央病院 リハビリテーション科
【はじめに】立位、歩行時に右膝関節疼痛が出現。業務に支障
をきたした症例に対して立位時疼痛軽減に焦点を当て介入
し、疼痛軽減した為報告する。
【症例紹介】50歳代、女性。職
業 は 看 護 師。 数 年 前 よ り 両 側 変 形 性 膝 関 節 症 で 受 診。 平 成
27年2月 よ り 右 膝 関 節 疼 痛 出 現。 右 膝 関 節 穿 刺。 疼 痛 は 立
位 時 に 右 内 側 広 筋 遠 位 か ら 鵞 足、膝 窩 部(NRS8)。 画 像 は 腰
野 分 類 の2。 大 腿 四 頭 筋、ハ ム ス ト リ ン グ ス、縫 工 筋、膝 窩
筋 の 過 緊 張 を 認 め た。ROMは 右 膝 関 節 屈 曲115°、伸 展-10°。
MMTは大腿四頭筋3/3。立位姿勢は、体幹左側屈、腰椎前弯、骨
盤前傾、両股関節屈曲、内旋、両膝関節屈曲(右20°)、両下腿外旋、
両足部回外位。
【方法】過緊張部位のリラクゼーション、大腿四頭
筋筋力強化を疼痛の状態に合わせ負荷を変更し実施。
【結果】同
部位立位時疼痛はNRS4-5に軽減した。また、大腿直筋、内側ハム
ストリングスの過緊張が軽減。ROM右膝関節屈曲125°、MMT大
腿四頭筋4/4と向上を認めた。立位姿勢では膝関節伸展-10°まで
改善した。
【考察】立位時疼痛の原因として、立位姿勢で膝関節屈
曲位であり、大腿直筋、縫工筋、内側ハムストリングスの過緊張
を認め、二関節筋優位の姿勢である。鵞足に付着している筋の過
剰収縮による収縮時痛、内側裂隙の狭小化、股関節内旋位による
荷重線の延長で疼痛が出現しているのではないのかと考える。そ
こで、上記アプローチを実施、膝関節伸展角度が改善し、立位の
膝関節内側痛が緩和したのではないのかと考える。
【はじめに】脊柱管狭窄症にて椎体間固定術施行、退院後も外来リ
ハビリを継続しており、腰痛残存により楽しみにしていた遠出が
出来なくなった症例が、再び余暇活動を楽しめるよう理学療法介
入した経過について考察をふまえ報告する。
【症例紹介】70代女性。第3-4-5腰椎体間固定術施行され、術後1日
目よりリハビリ開始。術後4週目に退院し外来リハビリ開始。[疼
痛部位]体幹回旋時、歩行時に術創部に伸張痛・鈍痛(NRS8)。[関
節可動域]体幹回旋10°/15°、股関節伸展5°/0°[歩容] 歩行周期中、
上部体幹と下部体幹との分離性低下。両側立脚後期での股関節伸
展低下、骨盤後方回旋低下による推進性不足を認めた。
【理学療法経過】当初は股関節伸展角度改善により腰椎への負荷
軽減を図ったが、腰痛は残存。再評価にて腰椎過可動性、胸椎の
著しい可動性低下を認め、胸椎を主な治療対象とした。結果、疼
痛はNRS1に低下、歩行距離も延長し30分連続歩行可、遠出も出
来るようになった。
【考察】疼痛部位より、手術時侵襲された皮膚・筋膜・筋の柔軟性
低下による伸張痛が発生。また胸椎可動性低下により歩行時を含
む体幹回旋時に本来回旋要素の少ない腰椎周囲筋へのメカニカル
ストレスが集中した事で筋性の鈍痛が発生したと考えた。胸椎を
治療することで腰痛軽減したため、腰椎の問題点を解消するうえ
で胸椎アライメント・可動性改善が重要であると確認できた。
O21-1
O21-2
○中村洋子(理学療法士)
○松下利恵(歯科衛生士),山本恵仙,平田好文
社会医療法人財団白十字会 佐世保中央病院
経営戦略本部 在宅連携推進室
熊本託麻台リハビリテーション病院
在宅復帰支援体制の強化による連携に関する加算算
定増加
当院における医科歯科連携の構築
〜退院後の口腔管理を見据えて〜
【はじめに】国は超高齢化社会に持続的に対応するために、診療・
介護報酬の改定毎に急性期から生活期までの一連の在宅復帰に関
する加算点数の新設や強化を推進している。そこで、平成24年11
月より在宅連携推進会議を開催し、法人内関連施設が集まり、連
携に関する体制構築や加算目標に対する成果を報告している。そ
の結果、在宅復帰支援体制の強化・加算算定増加に繋がったので
急性期A病院を中心に報告する。
【取り組み内容】在宅連携推進会
議の開催:年2回 参加者(理事長・事務長・看護長・MSW・リ
ハビリ部・地域連携室等45名程度)ヒアリング訪問:会議開催前
に病院施設を訪問し、目標に対する効果判定と修正 連携に関す
る加算の要因分析:毎月、病院・施設の担当者より実績を収集し
分析・可視化。【結果】急性期A病院 目標の達成状況H26年度:
1.総合評価加算を算定するための体制構築 達成 2.在宅復帰
率(75%)の維持 達成 連携に関する加算件数の増加:退院調整
加算 H24 427件→H25 912件→H26 1,148件・介護支援連携
指導料 H24 190件→H25 448件→H26 654件【考察】 在宅
連携推進会議やヒアリングにより目標を多職種で共有し、加算経
過を可視化することにより意識を高めることができたと考えてい
る。また、看護部の退院支援として1〜3次スクリーニングの導入
や、看護部・MSWの加算取得に向けたチェック体制導入などの
効果と考えている
【はじめに】当院は平成26年4月熊本県歯科医師会と「回復期医科
歯科病診連携」を構築し、同年6月より登録歯科医による訪問診療
を開始した。目的は完結型の治療ではなく、退院後を見据えた医
療チームとしての連携である。今回、本システムの紹介と経過に
ついて報告する。
【対象と方法】平成26年6月より平成27年3月までに、当院入院中
に歯科訪問診療を依頼した患者87名(平均年齢76.4±11.8歳、男
性39名、女性48名)について、歯科治療計画書をもとに1)訪問歯
科医数2)患者1人あたりの訪問診療回数3)診療内容を調査した。
【結果】1)実際に当院で訪問歯科診療を実施したのは、登録歯科医
41名中20名であり、2)は1〜3回がもっとも多く44名( 50%)、4
〜6回27名( 31%)、7〜9回11名( 13%)、10回以上5名( 6%)、全
体の平均は4.1回であった。3)では義歯関連が59%を占め、10回
以上の訪問回数を要した患者のすべてが義歯作成者であった。
【まとめ】医科歯科連携を開始し、口腔機能の改善はもとより、早
期の歯科介入、緊急時の対応、かかりつけ歯科医を持たない患者
に対して退院後も同じ歯科医による継続した口腔管理が可能と
なった。しかし、その一方で、登録歯科医による治療内容・治療
期間の相違があり、今後の医科歯科連携の重要な課題として検討
していく必要があると考えている。
73
O21-3
O21-4
○柴田八衣子(作業療法士)1),陳 隆明1,2),本田雄一郎2),
溝部二十四3),浜本雄次2)
○三ノ宮美紀(歯科衛生士)1),大谷佳子1),木村暢夫1),繁田聖子1),
大隈和喜1),川上昌也2),吉村順子2),野上浩志2),酒井珠材2)
兵庫県立リハビリテーションセンターにおける小児
筋電義手の取り組み〜幼稚園・保育園との連携を含
めた地域支援〜
入院中の“医科歯科連携”に対するケアマネジャー
の意識調査
−退院後の患者追跡システム構築に向けて−
1)兵庫県社会福祉事業団 兵庫県立リハビリテーション中央病院,2)兵庫県立社
会福祉事業団 福祉のまちづくり研究所,3)兵庫県立社会福祉事業団 万寿の家
1)独立行政法人 地域医療機能推進機構 湯布院病院 リハビリテーション科
2)一般社団法人 大鶴歯科医師会
【はじめに】欧米では、事故で上肢を失った子供や先天性欠損児に
対し、将来、子供自身が義手を使用した生活が選択できるよう、
早期より筋電義手を積極的に訓練する有効性が報告されている。
当センターでは、成人の上肢切断者に対し、医師・義肢装具士・
エンジニア・作業療法士のチームでアプローチを行っている。そ
して、小児分野でもハード面の整備とスタッフが研鑽し、平成14
年より乳幼児期からの筋電義手装着を実施した。
【対象】平成14
〜26年に中央病院を受診し、筋電義手装着を開始した上肢欠損児
(切断)児46名。【筋電義手アプローチのながれ】訓練はすべて外
来、
1セッション約60分。初診時のオリエンテーションでアプロー
チ方法や訓練のすすめ方などをご両親に理解して頂き開始する。
乳幼児は装飾用義手、1歳児は1電極コントロール、3歳児以降は
2電極コントロールの筋電義手から導入。筋電義手はOtto Bock
社製を使用、顆上支持ソケットで作製する。ハンドの開閉の把持
練習や両手遊びを中心に、年齢に応じた遊び方を指導する。家庭
や保育園や幼稚園などの社会生活での使用の働きかけも積極的に
行っており、また、小児筋電バンクを創設し、運用を実施している。
【考察】より早期から義手を活用した生活は、両手を使って遊ぶ楽
しみを、ひとつでも多く経験できる機会となる。義手という選択
肢が広がることは、本人にとって、生活の質の向上に繋がる。
【緒言】入院時の医科歯科連携では介入患者に対する退院後フォ
ローアップ体制の構築が課題である。今回、情報提供の方法や内
容を検討する目的でアンケート調査を行ったので報告する。【対
象・方法】平成26年4月1日から平成27年3月31日までに入院時訪
問歯科診療で義歯の作製または調整を終えて自宅退院した患者
19名(男性12名、女性7名、平均年齢78.6±11歳)。各患者の担当
ケアマネジャーに対して歯科介入に関する計10項目からなるア
ンケート調査を行った。
【結果】アンケート回収率は100%。結果
は、1.当院医科歯科連携システムの既知.5/19 (26.3% ) 2.入院
中の歯科受診の既知.7/19 (36.8% ) 3.既知の情報源は、当院ソー
シャルワーカー:5名、本人.家族:3名、看護師.歯科衛生士:1名 4.口腔内状態の把握:16/19 (88.9% ) 5.口腔.歯についての被
相談経験あり:6/19(33.3% ) 6.5の内容は義歯関係が最多 7.5
の対応は歯科医院の紹介.相談 8.対応で困ったことは、交通手段
や受診先、受診の妥当性 9.情報提供を受ける際の希望形式は、
情報提供:18/19 (94.7% ) 10.自由記載には、入院中からの歯
科受診の連絡がほしい.口腔ケア方法の動画がほしい等の希望が
あった。
【考察】ケアマネジャーは担当患者の口腔内状況に対す
る関心は高いものの、入院中施行した口腔リハや歯科受診情報の
伝達は十分でなかった。退院時の情報提供だけでなく、入院中か
らの情報共有システムの構築が必要と考えた。
O21-5
O21-6
○三政辰徳(理学療法士)1,4),大畠 誠1,4),大川 舞1,4),
佐久間美香1,4),成田元気2,4),松坂昇吾3,4)
○蒔田桂子(社会福祉士),平田 学,一木愛子,村井政夫
「病院・施設と在宅系サービス事業所におけるリハ
専門職間の連携に関するアンケート調査」から見え
る室蘭・登別地区の現状
神奈川県リハビリテーション支援センター活動報告 地域リハ推進モデル事業における「巡回リハ専門相
談」の報告と考察
1)製鉄記念室蘭病院 訪問リハビリテーションセンター,2)独立行政法人 地域医療機能推進
機構 登別病院,3)医療法人社団 上田病院,4)室蘭・登別 訪問リハビリテーション連絡会
神奈川県総合リハビリテーションセンター 地域支援センター
【はじめに】神奈川県リハ支援センターでは、地域リハ推進事業と
してリハビリテーションをコーディネートできる人材の育成と医
療・介護・福祉での地域連携の構築をめざしている。平成25年
度から2年間、県西部人口11万人程の足柄上郡1市5町を地域リハ
推進モデル地区として事業展開した。その取り組みの中で実施し
た「巡回リハ専門相談」におけるリハ専門職の派遣、訪問活動につ
いて報告し考察を行なう。
【実施内容】足柄上地域の各市町に1箇
所づつ設置されている地域包括支援センターを窓口に、月1回「巡
回リハ専門相談」を実施した。事前に相談を受けた対象者の自宅
や施設などに、相談者と同行訪問し、課題について助言や支援の
活動を行うものである。相談内容によってPT、OT、SW、Dr、視
覚障害者支援員などの専門職が訪問を行った。2年間で19回、述
べ61件の訪問を実施、依頼機関は地域包括支援センター39件、居
宅介護支援事業所15件、高齢者施設3件、本人・家族2件、また対
象者は要介護24名、要支援24名、非該当・未申請9名、認定待ち
3名であった。
【考察】リハサービスを受けていない高齢者にもリ
ハニーズがあり、リハ専門職による身近な相談機関が必要である
ことがわかった。また介護保険未申請者や障害者制度利用者につ
いてはリハニーズの吸い上げやリハコーディネートの役割が不足
している。今後は県域において地域に即したリハ連携推進の在り
方を検討していきたい。
【目的】室蘭・登別地区(以下、当地区)で平成24年に連携状況につ
いてアンケートを行った結果、在宅系サービス事業所(以下、在宅
系)への情報伝達が少なく、情報伝達内容も含め再調査の必要が
あった。その2点を踏まえ平成26年9月に改めて調査した。
【対象者】当地区のリハ専門職。
【結果】242名分を回収した(回収率96% )。退院前カンファレンス
について、94名が必ずないしだいたい参加していた。情報伝達方
法は217名が封書を用いていた。情報伝達時に感じた問題は、時
間的な制約よりも送り先についてわからないと回答していた。自
身が受ける情報は、132名が必ずないしだいたい伝達されていた。
情報伝達内容は156名が標準的と回答した。119名が返信してい
なかった。対象者全てに知られている在宅系はなかった。在宅系
に必要な情報について、施設側206名は初期評価、訓練経過、最終
評価の選択が多く、在宅側36名は他に病前情報、目標到達状況を
選択していた。詳細内容では、施設側は認知症、在宅側は禁忌や
ADL検査、性格・気質、意欲の選択が多かった。
【考察】在宅系に必要な情報の認識には個々に違いがあり、封書だ
けでは網羅できない印象を受ける。個人因子等は書面では表しに
くい事項もあり、担当者間の会話等で補足できるのが望ましい。
情報伝達が更に有益になるよう調査結果を報告し、当地区在宅系
の周知に加え連携強化の一助としたい。
74
O22-1
O22-2
○大仲功一(医師)
,川崎仁史,久下沼元晶,國井崇洋,大津匡史,
石崎直之,大貫 綾,雲藤梨沙,鈴木邦彦
○長野 愛(作業療法士)
志村大宮病院 茨城北西総合リハビリテーションセンター
医療法人清和会 平成とうや病院 リハビリテーション科
回復期リハビリテーション病棟退院1年後のFIMの
変化
生活行為評価表の作成に至るまで
〜わかりやすい評価・周知を目指して〜
【目的】回復期リハビリテーション(以下、リハ)病棟を退院した
患者の1年後のADLの変化を追跡することにより、回復期リハや
生活期リハの意義について検討する。
【方法】当院回復期リハ病棟( 50床)を平成24年4月から平成25年
12月に退院した全患者(延べ438人)のうち、退院時FIMが登録さ
れ、退院後に当院または関連施設におけるリハサービスを利用し、
かつ退院から約1年(365±90日)におけるFIMを評価した22人(う
ち脳血管障害17人、退院時平均年齢71.1歳、男15人女7人)を対
象として、退院時と1年後のFIMを比較した。
【結果】FIMが上昇していたのは16人、低下していたのは6人だっ
た。平均は80.6から88.7へと有意に上昇していた(対応のあるt
検定、p<0.05)。FIM運動項目の平均も有意に上昇していたが、
FIM認知項目には有意な変化を認めなかった。
【考察】本研究の対象者は、外来リハ、通所リハ、訪問リハ、老健入
所のいずれかの利用者であり、退院後にこれらのサービスを選択
するという過程を経ることによって対象に偏りが生じている。ま
た、条件設定などによって実際の退院者から人数が大幅に少なく
なっている。これらの点に注意する必要があるが、本研究の結果
は回復期リハ病棟退院後にリハ専門職によるサービスを利用する
ことにより、その後も一定のADL向上が得られる可能性を示唆し
ており、生活期リハの有用性を支持するものだと考えられる。
【はじめに】患者が主体的に入院生活を送るには、全スタッフが患
者の院内での生活行為全てを評価する視点や意識の統一が望まし
い。今回生活行為評価表の作成を病棟スタッフと共に行った為こ
こに報告する。
【目的】当院回復期病棟では平成26年度より新たな取り組みを開
始したが、スタッフ間での生活行為に対する評価視点のズレや、
連携不足による能力に応じた動作手段選択の遅延が生じた。その
為、全職員での評価や視点の統一が重要であると考え、病棟と協
働し院内での生活行為を評価する評価表を作成することとした。
【方法】看護師、介護士、作業療法士で患者が院内で行う生活行為
(入浴、配膳、下膳、服薬・金銭・バイタル管理、電話など)を介助
量別に評価できる表を検討・作成。
【考察】回復期病棟は、患者一人一人の院内での生活行為への参加
が主体的に可能となり、能力に応じた環境設定や動作方法の移行
が早期に行える場であるが、現状では職員の過介助や入院生活と
いう場の中で患者は受け身となることが多い。能力を活かせる環
境づくりで活動量を維持し、退院後の地域への参加を円滑にする
為に生活行為評価表の活用が望ましいと考える。
【今後】今後は作成した評価表の活用により回復期病棟スタッフ
間での評価視点・意識の統一化を図り、それを元に連携・情報共
有のなされたサービスの提供やFIM点数との相関等、妥当性・信
頼性を検証していく。
O22-3
O22-4
○松岡 優(理学療法士)
,福田浩巳,篠宮 健,西田宗幹
○野上花江(作業療法士)1),梶原浩司1),柳原博之1),柿並康太郎1),
小西俊史1),木村 愛1),上之園沙也1),関本菊臣2)
医療法人鴻池会 秋津鴻池病院 リハビリテーション部
1)医療法人和同会 宇部西リハビリテーション病院
2)医療法人和同会 宇部西クリニック
当院の内科病棟職員における早期離床・廃用症候群
に関するアンケート調査
〜廃用予防に向け見えてきた今後の課題〜
回復期・生活期リハスタッフ間の情報共有の取り組
みに関して 〜スタッフアンケートを通じて〜
【はじめに】本研究は、早期離床や廃用症候群に関する知識や捉え
方について調査を行い、職員全体で早期離床を目指す一助とする
ことを目的に行った。
【対象と方法】調査対象は当院内科部門の
看護・介護・リハビリテーション(リハ)職員110名。アンケート
の回答方法は選択法とし、基本情報、廃用症候群や早期離床に関
する計15項目とした。【結果】
「廃用症候群を知っているか」
「早期
離床が必要か」について、
「はい」の回答率は看護師・リハ職員が
100%、介護職員で約半数を占めた。廃用症候群で起こりうる障
害として「せん妄」
「感染症」
「免疫機能低下」を選択した者は、全
体で30%以下と少なく、
「廃用症候群は臥床1日目から起こる」と
した回答率は約40%、1日に必要な離床時間を「 4時間以上」とし
た回答率も約18%と低かった。早期離床が行えていない要因と
して「早期離床のメリット・安静臥床のデメリットを知らない」
「リスク管理ができない」
「マンパワーの不足」
「入院からリハ開始
までの期間が長い」が全体で20%以上と高かった。
【考察】全職員
に共通して、廃用症候群という言葉や早期離床の必要性について
認識はしているが、「廃用症候群は全身へ及ぼす障害である」と
いう認識が低く、さらに予防に必要な離床の頻度や時間を誤って
認識している可能性も考えられた。今後、多職種参加型の勉強会
を開催し、共通の認識を持って質の高いチームアプローチを行っ
ていきたい。
【はじめに】当院では回復期・生活期リハビリテーションスタッ
フ(以下リハスタッフ)間の情報共有の方法として、担当者会議
や情報提供書とは別に、回復期から生活期への退院前の情報伝達
をフィードフォワード、生活期から回復期へ退院後の状況報告を
フィードバックと呼び、情報共有を行っている。今回、この取り
組みにより有意義な情報交換が行えているかを把握するため、ア
ンケートを行ったので報告する。【対象と方法】平成26年3月に、
回復期病棟リハスタッフ43名、生活期通所訪問リハスタッフ11
名を対象に、無記名選択及び記述式でアンケートを実施した。【結
果】生活期リハスタッフは回復期リハスタッフから聞きたい情報
が得られたが10割、回復期リハスタッフは生活期リハスタッフか
ら聞きたい情報が得られたが約8割であった。また、退院後の情
報をリハビリに活かせていないが2割であり、
「症例の自宅環境な
どが1人1人違うから」
「回数が少なく、こまめに情報交換が出来て
いないから」といった意見があった。
【まとめ】退院前後に情報交
換を行うことで、回復期・生活期リハスタッフ共に、有意義な情
報交換が行えている。また、退院後に回復期リハスタッフは生活
期リハスタッフからの情報を今後のリハビリに活かせていると考
える。しかし、退院後の情報をリハビリに活かしきれていない面
も挙げられた。今後、フィードバックの情報を他の症例へより有
効に応用していく必要がある。
75
O22-5
O22-6
○實山潮美(看護師)
,平野史子,小林洋子,久保利枝,大西朋子
○湊 哲至(理学療法士),深田光穂,新井秀宜,木本真史
医療法人社団関田会 ときわ病院
医療法人社団生和会 彩都リハビリテーション病院
リハビリテーション部
移動・移乗動作の情報共有ツール作成への取り組み
〜ADL表の作成・活用とその効果〜
回復期リハビリテーション病棟における歩行自立移
行の阻害因子
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟では患者のADL向上
をめざし多職種間で情報共有・連携を図ることは重要である。当
病棟では情報共有不足からベッドサイドでの介助が統一できて
おらず、患者が転倒に至った事例が発生する現状があった。そこ
で、移動・移乗動作の情報共有ツール(以下ADL表)を看護師が作
成し、作成前後で職種間連携に関する意識調査を行った。その取
り組みの経過および今後の課題について報告する。
【目的】ADL
表作成により職種間で情報共有・連携への意識を高め、統一した
介助が実践できADLの向上へつなげる。
【方法】期間:2013年10
月〜2014年3月。対象:当病棟看護師22名・介護士11名、セラピ
スト49名、計82名。具体的内容:ADL表を作成し、ベッドサイド
に設置。作成前後で選択・自記式の質問紙調査を計4回実施して
ADL表の改良と共に取り組みの効果を評価した。
【結果】調査1〜
4の回収率はそれぞれ87%・62%・94%・79%であった。調査
結果からADL表の活用率が90%以上を占めていることがわかり、
情報共有の効果や関心の高さが確認できた。
【考察】今回、ADL表
の作成は移動・移乗に限られた内容ではあるが、ベッドサイドで
統一した介助の実践や職種間で意見交換の手段として活用できた
ことから、情報共有ツールとして成果が得られたと考える。今後
も多職種間で連携強化を図り、より効果的なツールとして完成度
を高めていきたい。
【はじめに】回復期リハビリテーション (以下,リハ) 病棟では、日
常生活活動 (Activities of Daily Living) (以下,ADL) の改善が重
要である。その中でも特に歩行能力が重要である。
【目的】院内歩行自立の阻害因子について検討した。
【対象】2014年4月から2015年2月に当院回復期リハ病棟 (120床)
に入院した全患者629人である。
【方法】機能的自立度評価法 (Functional Independence Measure)
(以下,FIM) を使用し、FIM6または7を“自立”と設定した。入院時
及び退院時のFIM移動項目を用いて病棟生活とリハ練習中の歩行
自立移行率を算出し、その差について検討した。
【結果】歩行自立移行率は、病棟生活45.7% (250人) 、リハ練習中
66.0% (348人) で、その差は20.3% (98人) であった。
【考察】病棟生活とリハ練習中において歩行自立移行率に差があっ
た。その阻害因子として高齢、認知機能の低下、全身状態不良が
あった。歩行自立移行率を改善する為に、今後さらなる効率的な
リハの実践と、病棟スタッフとの連携が重要である。
O23-1
O23-2
○新舩辰也(介護福祉士・ヘルパー)
,宮添麻依香,椎名隆寿
○沖田美登里(介護福祉士・ヘルパー),臼井一明,糸井なつよ,
関雄一郎,郡司敏江,鈴木美和子,鈴木孝子,森山俊男
IMSグループ 医療法人三愛会
埼玉みさと総合リハビリテーション病院
栃木県医師会 塩原温泉病院
介護福祉士の役割拡大における、多職種の意識変化
と行動の実態
ケアワーカー企画、マネジメントの夏のアクティビ
ティ〜多職種連携の成果〜
【はじめに】回復期では、一人の患者に多職種が関わっており、連
携が重要である。当院は、介護福祉士が担当患者を持ち、独自の
フローシートを使用し、排泄に関するケアプランを立案している
が、
「他職種と話し合いができず、患者の情報共有ができない」と
いう現状がある。今回、ケアプラン立案についての課題を明らか
にしたいと考え、研究を行った。
【目的】ケアプラン導入後の多職
種の意識・行動の実態を調査し、課題を明らかにする。
【方法】全
病棟 介護福祉士 看護師 作業療法士に質問紙調査を実施。質
問は、1 立案方法の理解、2 多職種間の情報共有、3 意識・行動の
変化、4 介護福祉士の必要性の項目に分けた。本研究は病院の倫
理委員会の承認を受けて実施した。
【結果】ケアプラン立案方法を
理解していない人が多かったがフローシート活用率は高かった。
情報共有では、他職種に取り組みが理解されておらず、話し合い
が出来ていなかった。役割拡大について、介護福祉士は重荷と答
えたが、他職種95%がケアプランは必要と答えた。
【考察】立案方
法の理解度は低く、説明不足が原因として挙がった。フローシー
トは活用されていたが問題もあり、見直しが必要となった。情報
共有では、話し合いができておらず、情報共有のためには、人間
関係が良好でなくてはならない。現状、介護福祉士は役割に自信
がないが、他職種は活躍を期待している。介護の専門性に自信を
持ち、質の向上が必要である。
【はじめに】当院ケアワーカー(CW)業務の一つに患者のアクティ
ビティ計画、実施がある。現在のアクティビティでは、患者の「持
久力低下」
「気分が乗らない」
「運動系アクティビティが難しい」等
で参加人数が少ない状況にある。そこで多くの患者が楽しく参加
できるテーマ、夏祭りをイメージしたかき氷の提供を考えた。か
き氷提供に当たり嚥下障害患者対応の検討・企画・実施した過程
で、CW主体の多職種連携が図れたので報告する。
【方法】1.企画書作成 2.医師への報告・許可をもらう 3.他職種
への協力依頼 4.トロミつきかき氷の試作 5.提供するかき氷の
決定 6.連携についての調査
【結果・考察】日頃CWと他職種との連携は、主にリハビリ担当者
からの、ADLに関する動作の統一・伝達が多く、CWからは患
者の情報提供・ADL評価依頼などで、一方通行がほとんどであっ
た。今回のアクティビティーでは、企画書を作成し、医師・看護師・
栄養士・ST・OT・PTと相談・検討の連携をとり、注意のいき届
いたアクティビティができ、CWの専門性を活かせた。
【終わりに】患者が喜んでくれ盛り上がったことは、準備や連携が
大変だった分、やりがいにつながる。今後もCWの専門性を活か
した視点で問題点に取り組み、より良いケアの提供ができるよう
にかかわっていきたい。
76
O23-3
O23-4
○尾崎佳子(理学療法士)1,2),長谷川多美子1),石黒祥太郎1)
○上田美里(介護福祉士・ヘルパー),西村一志,谷口真由美,
前橋真由美,加藤千夏
1)社会医療法人愛生会上飯田リハビリテーション病院 リハビリテーション科
2)愛生訪問看護ステーション
特定医療法人社団 勝木会 やわたメディカルセンター
介護教室の取り組み〜理学療法士としての関わりを
経験して〜
回復期リハビリテーション病棟の介護福祉士の課題
【はじめに】当院では介護福祉士(CW)のチーム医療への参加を積
極的に行ってきた。2012年には他職種への意識調査を行い変化
がみられたことを報告した。その後業務改善を行い他職種からの
評価も得てきたが、質の向上について他職種やCW自身からも課
題として挙がってきた。回復期リハ病棟では入院期間が短縮して
きている。他職種との情報共有や発信力が必要であり、これまで
の取り組みを報告する。
【主な取り組み】1CWの受け持ち制の導入、合同カンファレンス
への参加、記録。2CWのミーティングの定例化。3多職種協働の
分科会活動と病棟レクレーションや集団体操の企画、運営。4セ
ラピストからの具体的介護方法の共有。
【他職種からみた現在のCWの姿と評価】医師:以前に比べ意見を
持って参加しており、チームに関わろうとしているのは伝わるが
相変わらず発言は少ない。セラピスト、看護師:実際の日常動作
を一番近くで見ている存在であり、在宅支援に繋がる介入内容を
より発信できるはずだ。
【課題】1理解不十分なままでの介入のため、適切なケアが出来て
いない。2患者の全体像ではなく「排泄」
「更衣」というような一動
作の介入に偏る傾向がある。3回復期リハ病棟での役割を他部署
からの異動者や新人職員に伝える事の難しさ。4CWからの情報
発信力が弱い。等が挙げられた。
【はじめに】 当院では毎月第2土曜日に患者・家族を対象とした
「介護教室」
を開催。テーマは「排泄」
「更衣」
「移乗」
「介護保険制度」
「健康管理」の5つで、毎回1つのテーマについて、基本となる知識
や技術を伝達している。 平成24年1月からは、家族支援やチー
ム連携の強化を目的とし、理学療法士(以下、PT)も参入。今回は
その取り組みを報告する。
【取り組み】
PTは「移乗」に介入。既
存の資料を分かりやすく改定、実技を中心とした参加型の内容に
変更した。開催当日は、
PTが身体に負担の少ない介助方法を指導、
介護福祉士が実際の生活での出来事を絡めて話し、家族が退院後
の介護を想像しやすいよう工夫した。終了後には、家族の抱えて
いた介護の不安や悩みを患者の担当スタッフに伝達。後日担当ス
タッフから家族へ解決方法を伝えるという、2段構えの家族支援
とした。
【結果】アンケート調査より、参加者からは高い満足を得
られた。病棟で働くPTでは拾い切れない不安や悩みなどを、場を
変えて家族と接する事で共有でき、解決へ繋ぐ役割を介護教室に
感じた。また運営に携わることで新たに家族指導上の課題を発見
した。それは家族個人の因子に十分配慮できていないことだ。結
果、実際の家庭環境では継続的に実施することが困難な内容を指
導してしまうことがあるという事だったが、今後介護福祉士らと
ともに、各々の視点を活かして家族支援というものを再考する良
い機会となった。
O23-5
O23-6
○滝上さや香(作業療法士)1),吉村裕子1),池田裕哉1),西野大助1),
西島なみ子2)
○永山研太郎(理学療法士)1,2),亀山雅子2),河田法子2),山口昌夫1)
1)藤聖会 八尾総合病院,2)のりみね苑 居宅介護支援事業所
1)医療法人社団アルペン会 アルペンリハビリテーション病院
2)医療法人社団アルペン会 通所リハビリテーションあいの風
訪問リハビリの介入により,予測した在宅生活と実
生活に差が生じた症例〜生活支援会を通して学んだ
事〜
通所リハにおけるリハビリテーション会議を通して
〜現状の課題と今後の展望〜
【はじめに】当院では,自宅退院後に訪問リハスタッフから報告を
受ける生活支援会を実施している。今回訪問リハの介入で歩行
意欲の向上,自宅での歩行頻度の改善につながった症例を報告す
る。
【症例紹介】60歳代男性。左被殻出血,右片麻痺,失語症。両
親,妹と同居。FIM91点。入浴以外車椅子でADL自立。歩行は短
下肢装具装着で杖歩行見守り。家屋築80年。山間地で段差多い。
家族ニードは歩行自立。
【経過】入院中,家庭訪問にて玄関・廊下・
トイレの改修実施。傾斜や段差に対応できる電動車椅子導入。早
出リハや看護師,介護士の見守りで歩行頻度を増やし,家族へ歩
行介助方法を指導。退院後は訪問リハ,デイケア,外来STを利用。
退院2日後から訪問リハ開始。臥床傾向,歩行意欲低下,雪の重
みで戸が開かずトイレまでの移動に支障あり。家族に対し歩行介
助方法確認。トイレまでの動線検討。本人家族に日中トイレまで
歩く課題を与え,徐々に歩行頻度改善。家族の協力のもと,日中
車椅子を使用せず杖歩行で移動可能となった。
【考察】入院生活
と在宅生活では患者の生活スタイルは異なる。生活支援会を通し
て,担当者の予測に反して歩行頻度が保たれている,在宅では予
想外の事が起こる事を知るきっかけとなった。生活支援会で入院
中と退院後の生活スタイルの相違を理解する事で,退院後の生活
イメージがつきやすく,今後の退院支援に活かせる有効な手段で
あると考える。
【はじめに】平成27年度の介護報酬改定で、リハビリテーションマ
ネジメントの再構築を目的として、リハビリテーション会議(以
下、リハ会議)が新設された。従来のPDCAサイクルに加え、医師
の参加とSurveyを重要視し、適切にマネジメントされたサービス
を提供することになった。改正後2か月間に開催されたリハ会議
を振り返り、現状の課題と今後の展望を報告する。【対象・方法】
平成27年4月から5月に当通所リハビリテーション事業所でリハ
会議を実施した6例において、本人・家族に加え、介護支援専門
員、居宅サービス担当者等の地域の専門職から感想を聴取した。
【結果】会議時間は、全例60分以上を費やして問題点を明らかに
し、本人の願望に沿った対策が検討された。本人からは「わから
ないことがわかって良かった」
「運動の具体的な目標がわかった」
など、曖昧な部分が解決したという有効性を示唆する感想が多
かった。家族からは「問題点が明らかになった」と聞かれた反面、
「はっきり言われることで衝撃を受けてショックだった」との感
想もあった。介護支援専門員からは「毎月のリハ会議実施が大変、
勤務調整が難しい」との意見もあった。
【まとめ】概ねリハ会議の
有効性はあったが、会議時間の短縮や情報整理が必要と思われた。
今後、本会議を通して地域の連携を深め、本人の生きがいに沿っ
たリハ会議に発展させたい。発表では、症例を増やしてサービス
の結果を加えて報告する。
77
O24-1
O24-2
○谷 祐樹(作業療法士)1),兼田敏克1,2),高畑進一2),西川智子2),
堀島優花1),中岡和代2),金尾洋子2,3),東 泰弘2,3),橋本弘子2,4),
由利禄巳2,5),坂本知三郎1)
○高島真奈美(作業療法士),大瀧憲夫,鈴木俊弘
介 護 者 用ADL評 価 法(Self Assessment Burden
Scale)とFIMの関連
他職種間での段階的かつ統一した介入により、ニー
ドであるトイレでの排泄獲得に至った一症例
医療法人穂仁会 大滝病院 リハビリテーション部
1)医療法人篤友会 関西リハビリテーション病院
2)大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学研究科
3)特定医療法人有隣会 東大阪病院 リハビリテーション科
4)藍野大学 医療保健学部 作業療法学科,5)関西福祉科学大学
【はじめに】恐怖感が強く動作介助量が多い症例に対し、頻回に動
作方法を調整し介助方法が統一されるよう連携することで、トイ
レでの排泄が可能となった症例を報告する。【症例】80歳代女性、
自宅で転倒後急速にADL能力が低下、1か月後腰椎圧迫骨折と診
断され回復期病棟入棟。病前より重度の両股関節変形症を合併し
ており、伝い歩きが可能なレベルであったが、腰部と股関節の痛
み、全身機能低下により食事以外のADLは全介助となった。ニー
ドはトイレでの排泄。
【経過】入棟1か月後に鎮痛剤にて痛みは軽
減したが、介助量は多く恐怖感がさらに動作を阻害していたため、
スタッフ全員が同じ方法で介入できるよう動作環境に目印や動作
方法を設置した。動作能力の改善に合わせ、トイレでの排泄方法
を理学療法士と共同で設定した後にトイレ誘導を開始、介助方法
の微妙な違いで痛みや恐怖が生じる為、その後も動作方法は数回
変更する毎に実演と掲示の修正を行い、早出遅出リハビリにて排
泄が効果的に行えているか確認した。その結果、トイレでの排泄
が定着し安全に動作が可能となった。
【考察】介助方法や動作環
境の微妙な違いにより、動作の帰結が異なる症例に対し、時期ご
とに最適な動作方法を頻回にチームで検討・共有し、介入するス
タッフや時間帯に関わらず毎回同じ対応ができるよう生活を設定
したことが、痛みや恐怖を伴わず、安定したトイレでの排泄を獲
得することにつながったと考えられる。
【はじめに】患者の日常生活活動(ADL)能力が入院中から自宅復帰
後に変化したのかを把握することは重要である。入院中のADL評
価はFunctional Independence Measure
(FIM)が主に使用され
るが、採点には知識が、退院後の継続実施には相応のコストが必
要である。そこで、我々は介護者が簡便に使用でき、郵送調査可
能な7項目からなるADL評価法(Self Assessment Burden Scale:
SAB)を作成し、妥当性を確認した。今回はSAB得点からFIM得
点の予測が可能か否かを検討した。
【対象】当院に入院し、かつ、研究に同意した脳血管障害患者とそ
の家族101例。
【方法】患者の主介護者が退院間際にSABを、担当療法士がFIMを
実施した。分析はFIMの各種得点を目的変数、SAB得点を説明変
数とした単回帰分析を行った。
【結果】目的変数をFIM18項目とした時の決定係数R2=0.781、以
下、運動FIM: R2=0.823、FIM7項目:R2=0.805、FIM食事:
R2=0.553、FIM清拭:R2=0.499、FIM下衣更衣:R2=0.774、
FIM移乗:R2=0.614、FIM歩行:R2=0.628、FIM階段:R2=
0.548、FIM排尿管理:R2=0.504であった。
【 考 察 】SAB各 項 目 か らFIM各 項 目 の 予 測 に は 問 題 が あ る が、
SAB7項目からFIM7項目や運動FIMの予測は可能と考える。
O24-3
O24-4
医療・介護のリハビリテーション専門職による連携
方法の再考
病棟看護師からADL指導について相談をうけた透析
患者の3症例
−リハビリ非介入3症例の検討から−
○加藤秀和(理学療法士)1),熱海優季1),竹島勝也2),川上栄一3),
輪違弘樹1)
○橋本健司(作業療法士)1),大谷公人1),辻岡大輔1),中西信敬1),
林 誠二1),村尾 浩2)
1)株式会社エバーウォーク エバーウォーク東向島
2)医療法人社団仁寿会 中村病院
3)社会福祉法人同愛記念病院財団 同愛記念病院
1)社会医療法人清恵会 清恵会三宝病院 リハビリテーション部
2)神戸学院大学 総合リハビリテーション学部
【はじめに】退院後にリハビリテーション(以下、リハ)の介入が無
くなり、活動量低下や廃用が進み、要介護認定となる症例の経験
から、医療と介護の円滑な連携は重要であると考える。今回、月
に1回の地域でのリハ連絡会を通じ、医療・介護のリハ連携が効
果的に行われたケースに関して症例を交えて報告する。
【症例】男
性。70代後半。自転車事故で足関節両果骨折、
プレート固定。
【経
過】遷延治癒で退院後のリハ継続希望から、介護申請し外来リハ
と並行した通所介護を行う事に。術後70日で骨癒合得られず完
全免荷・両松葉杖の見守り歩行にて退院。要介護2で通所利用開
始。連絡会では骨癒合の状況や、症例のパーソナリティなども共
有。術後91日で全荷重可能となり外来リハ終了。術後5ヶ月で長
時間の屋外歩行自立。術後8ヶ月で介護認定非該当、趣味である
ダンス再開。
【考察】本症例を担当する以前から、定期的な連絡会
にて、地域におけるリハ専門職による症例報告や取り組みの発信
を通して医療・介護の側面からの意見交換を重ねたてきたことで、
今回のように退院後早期に通所開始が出来た。さらに本症例にお
いては、遷延治癒により定期的な医療情報の共有が重要であった。
加えて、パーソナリティの共有など、どのように自立した生活を
送るか検討する機会ともなった。単なる書面での情報の共有でな
く、顔を合わせ、症例の経過や退院後の生活を共有しリハの質を
高める連携の場が重要と考える。
【はじめに】当院では、平成25年4月から各療養病棟にPT・OTを1
名ずつ配置し、病棟看護師と連携向上を図っている。今回、透析
病棟から「リハビリ非介入患者のADL指導」について相談を受け
た3症例について介入した。経過および考察を加えて報告する。
【対象及び方法】透析患者3名(男1名,女2名,80〜84歳)の病棟か
ら相談を受けた内容「体重コントロールを図り、身体を動かす習
慣を身に付けたい( 1、2症例目)」、「転倒予防と機能向上を図り
たい( 3症例目)」に対して、症例ごとに自主練習および環境調整
を提案し、FIMの推移と病棟生活や病棟での介助量の変化を調査
した。
【結果】1、2症例目は、週3回タオル体操の自主練習を提案し病棟
看護師と行うが、徐々に病棟全体が行い始めたラジオ体操に参加
するようになり、自主練習から移行した。FIMの変化は認めず、
体重は減少しなかったが、病棟看護師からは、習慣的な運動は意
識し始めていると意見を得た。3症例目は車椅子とベッド柵に目
印を付け、環境調整を実施し転倒予防に努めた。自主練習では、
週3回病棟看護師と行うが、1ヶ月以降は本人の意向に沿った内容
に変更されていた。FIM推移は低下(合計92→91)、病棟看護師か
らは介助量に変化はないが、転倒傾向は減少したと意見を得た。
【おわりに】透析患者の長期入院によるADLの低下を病棟と連携
し、防ぐ取り組みを今後も行っていきたい。
78
O24-5
O24-6
○濱口達也(言語聴覚士)1),坂本敏行1),岡真奈美2)
○杉本浩通(その他),井脇泰弘
1)洲本伊月病院 リハビリテーション部
2)洲本伊月病院 医事課
川村義肢株式会社
高次脳機能障害を呈した症例に対する就労支援を通
して
関係職連携による在宅復帰へ向けた環境設定の事例
【はじめに】入院中の障がい児者が在宅復帰する際には、各関係職
それぞれの専門的な立場や視点からの助言や提案により、もれの
ない環境整備をおこなうことが必要である。今回、生後、間もな
い児童の在宅復帰に向け、在宅医療を安心しておこなえる環境設
定を関係職が連携しておこなった。実施した改修工事を含めた事
例として紹介し、各関係職の連携の大切さを伝えたい。
【経緯】本人は生後ダンディーウォーカー症候群と診断され、在
宅復帰には人工呼吸器、酸素濃縮器を使用した在宅医療が必要で
あった。家族の医療上の管理の適切な実施と不安の軽減を目的に
医療スタッフ、医療機器メーカー、福祉用具事業者、建築業者が
退院前に自宅訪問(家屋評価)を実施した。医療機器を扱う上で
家族と関係職が直接情報交換をおこなうことで、呼吸器搭載のバ
ギーの仕様、医療機器の配置や電源・動線計画などを両親、関係
職種が情報共有できる良い機会となった。
【まとめ】退院予定日から環境整備に必要な日数を逆算し、早い段
階から関係職による自宅訪問(家屋評価)と打合せを実施するこ
とで、本人と家族が安心して生活できる環境整備がおこなえた。
【はじめに】瀰漫性軸索損傷により高次脳機能障害を呈し、退院後
から就労支援を行った症例を経験したので報告する。
【症例】50
歳代男性、高速道路料金所勤務、自動車運転中の事故により意識
障害と左下肢麻痺を認め救急搬送、瀰漫性軸索損傷と診断され入
院。約1ヶ月後にリハビリ目的にて当院に転院。
【経過】入院時か
ら見当識障害、注意障害、記憶障害、遂行機能障害を認めた。入
院中は外的補助手段の導入、機能訓練を中心に介入。退院前にカ
ンファレンスを実施し、職場と現状の能力や今後の方向性につい
て話し合う場を設け、受傷後約6ヶ月で退院。退院後は外来訓練
と職場研修を並行して行った。外来訓練では仕事内容を模擬的
に確認し手順等の知識は保たれていたが、職場研修では瞬時の判
断・修正ができず助言が必要な場面が多かった。職場とは毎月連
絡を取り情報共有、業務に対する対策をとることで改善は認めた
が、就労には結び付かなかった。
【考察】高次脳機能障害を呈した
場合、新しい環境への適応が難しいと思われたため、元の職場で
の復職を目指した。机上の評価だけでなく情報共有をすることで
職場での様子を把握しようとしたが、実際の研修場面を評価でき
なかったことが就労に影響を与えたと考える。能力を十分に把握
しそれに見合った職種を選択した上で就労支援を行うことが望ま
しいが、周囲の障害に対する理解や社会資源が少ないことが今後
の問題点となることが推察される。
O25-1
O25-2
○川口拓海(言語聴覚士)
,諌山敬一,今村純平,山下淳子,
大石 修,井上美保,西川小百合,川崎かおり,平野浩二,
柴田 元
○宮脇直人(理学療法士)1),山田真弓1),大井 優1),吉本大志1),
大西純二2)
65歳以上の大腿骨近位部骨折患者に対する摂食嚥
下リハビリテーション介入効果
当院における術後に誤嚥性肺炎を発症した大腿骨近
位部骨折患者の特徴とその要因
1)医療法人きたじま倚山会 きたじま田岡病院 リハビリテーション科
2)医療法人きたじま倚山会 きたじま田岡病院 整形外科
医療法人かぶとやま会 久留米リハビリテーション病院
【背景・目的】2013年度に実施した大腿骨近位部骨折患者に対す
る調査で、当院退院時点で約4割に嚥下障害を示唆する何らかの
問題があり、摂食嚥下障害との関連因子は入院時BI、年齢であっ
た。当院ではこれらのデータを基に、2014年5月より入院早期か
ら摂食嚥下リハビリテーションの介入を行っている。今回、これ
らの介入が大腿骨近位部骨折患者の嚥下機能低下を予防ができる
か検証した。
【対象・方法】2011年4月〜2014年12月までに入院
した65歳以上の大腿骨近位部骨折患者で、受傷前まで嚥下障害の
疑いのない患者97例を対象とした。介入前の2011年4月〜2014
年4月までの入院患者83例をコントロール群、2014年5月以降の
入院患者14例を介入群とし、退院時の藤島の摂食・嚥下能力グ
レード(以下、嚥下Gr)と入院中の肺炎発症率を比較した。【結果】
嚥下Gr(入院→退院)は、コントロール群で9.1→9.1であったのに
対し、介入群では9.1→9.6であった。2群間に有意な差はなかっ
たが、コントロール群では嚥下Grを下げた症例が6例存在したの
に対し、介入群では全例で維持もしくは改善した。入院中の肺炎
発症率は、コントロール群で2例( 2.4%)であったのに対し、介入
群では0例(0%)であった。
【考察】大腿骨近位部骨折患者に対し、
入院直後から言語聴覚士による嚥下評価を行い、各症例の口腔環
境の改善に向けた介入(口腔ケアの指導、歯科治療)や嚥下訓練等
を行うことで、嚥下機能の維持向上及び誤嚥性肺炎の発症を予防
できた。
【目的】当院では大腿骨近位部骨折に対する手術を行っている。術
前後よりPTやOTが介入しているが、術後に誤嚥性肺炎を発症す
る患者は少なからず存在し、予後にも大きな影響を与えている。
今回PTやOTの介入時に早期発見・予防ができる対策を講じるた
め、術後に誤嚥性肺炎を発症した患者の特徴とその要因を把握す
ることを研究の目的とした。【対象・方法】2014年1月〜2015月4
月に大腿骨近位部骨折のため、当院に入院・手術を受けた患者90
例である。血液データ、術前後のリハビリ内容、離床までの日数、
入院期間、既往歴、合併症などを電子カルテから後方視的に調査
した。
【結果】入院期間中、術後に誤嚥性肺炎を発症した患者は5
例であり、対象者の5.5%が発症していた。特徴は、呼吸器疾患の
既往がある者、認知機能が低下している者、食事に介助を必要と
する者が多く、神経筋疾患を併存する者もいた。更に発症した5
例中4例は、85歳以上の高齢であった。術前後、PT・OTによる嚥
下スクリーニングは皆無で、誤嚥予防に対するアプローチは僅か
であった。
【考察】術後に誤嚥性肺炎を発症する患者の特徴を知り、
入院時から発症リスクの高い患者を抽出することは重要である。
PT・OTは誤嚥性肺炎や嚥下障害に関する知識、評価やアプロー
チの技術を習得し、そして医師・看護師・STとの連携を深め、チー
ム全体で術後の誤嚥性肺炎の早期発見・予防に繋げる必要がある
と感じた。
79
O25-3
O25-4
○日野 恵(言語聴覚士)1),前田 守2),前田三和子2),佐々木聡2),
吉尾定子1),高橋美里1),成兼 結1)
○泉 二郎(医師),関口真理子,山口貴幸,赤羽あゆみ,枝 千尋,
鈴木千尋,伊藤梨紗
1)社会医療法人慈恵会 北湯沢温泉 いやしの郷
2)社会医療法人慈恵会 聖ヶ丘病院 リハビリテーションセンター
新上三川病院
多職種ミールラウンドを通した食事ケア向上への取
り組み
嚥下カンファレンスの試み
回復期リハビルテーション病棟において、昨年よりNST回診を
行っているが、嚥下回診はまだ行っていない。 嚥下の評価は従
来言語聴覚士間で行っていたが、最近病棟単位で医師を交えての
検討を始めた。脳卒中患者が多いため、脳画像を参照している。
嚥下造影検査(VF)は若干例のみ行っており、嚥下内視鏡検査
(VE)はこれからの課題である。検討項目は、気管切開・経鼻経
管栄養・胃瘻の有無、覚醒レベル(JCS)、摂食訓練経過、検査結
果、ゴール、問題点である。1例を示す。71歳男性、左延髄外側梗
塞。嚥下困難で、経鼻経管栄養の状態で発症約1ヶ月後に転院入
院。入院3日後のカンファレンス。摂食訓練は未実施。検査結果は、
RSST30秒で1回、水飲みテスト(トロミなし)は3ccでむせあり。
ゴールは短期目標としてお楽しみレベルの摂取とした。問題点は、
口腔期で舌の筋力低下あり、カーテン兆候あり、軟口蓋の挙上が
不十分で、咽頭期で感覚低下あり、咽頭反射が起こりにくい。常
に唾液の貯留が見られる。喀出力はあり、自己で喀出は行えてい
る。嚥下の際の喉頭の挙上が不十分である。嚥下訓練を試みるも、
スムースな嚥下が行えず、VFを施行して嚥下障害を確認し、体位
を工夫して嚥下訓練を行っている。医師も嚥下の問題を言語聴覚
士にまかせるのみでなく、嚥下カンファレンスに参加する必要を
強く感じており、現況と今後の進行についても報告したい。
【はじめに】今年度の介護報酬改定により経口維持加算が見直さ
れ、多職種での取り組みが重視されている。今回、当加算算定に
向けた多職種ミールラウンドによる情報共有、食事ケアの質向上
へ取り組んだ結果について報告する。
【対象と方法】平成27年4月
以降、当施設入所者を対象に看護師、介護士、管理栄養士、理学療
法士、言語聴覚士(以下ST)によるミールラウンドを実施し、実
施前後でリハ職種が関わる食事評価や調整の件数、内容を検討し
た。
【結果】ミールラウンド実施前、食事評価は月平均14.5件、内
容は嚥下機能評価が多くを占めた。実施後38件と増加し、環境調
整や内容の検討など各職種の専門性を活かしたものが多かった。
また、加算対象外の入所者も継続的観察により変化を早期に捉え、
適切な対応で重症化を予防できる環境が整えられた。
【考察】介
護保険制度の改正により在宅介護が推進される一方、多様な疾患
を抱えた介護度の高い入所者の増加が見込まれている。当加算算
定を契機に職員の摂食嚥下に対する意識が高まり、多角的視点か
ら食事ケアを見直すことで入所者の安全な食事に繋がると考えら
れる。また、STが関わることで適切な評価をもとに迅速な対応
が可能となるほか、他部署とのコーディネーター的役割を果たし
食事に関わる介護業務の質向上に寄与できると思われる。【結語】
多職種によるミールラウンドは、施設入所者の安全な経口摂取継
続に有用であった。
O25-5
O25-6
○藤川成弥(言語聴覚士)
,新城吉孝
○宮尾友香(言語聴覚士)1),池 裕子1),井上浩明1),国澤雅裕2),
井上正隆3)
医療法人社団甲友会 西宮協立脳神経外科病院
1)社会医療法人近森会 近森病院
2)社会医療法人近森会 近森病院 理学療法科
3)高知県立大学 看護学部
当院SCUにおける嚥下障害患者に対する「経口摂取
フローチャート」の作成
嚥下造影検査所見の経験年数による差について
【はじめに】当院は年間約700例以上の脳卒中患者が搬送される急
性期病院で、病床数は164床(SCU24床)
。一昨年度はリハビリ対
象患者が633名、内嚥下リハビリ指示があった人数178名(25%)。
積極的な経口摂取を図る為には看護師との連携が必須である。今
回は当院における嚥下障害患者に対し経口摂取フローチャートを
作成し使用してからの結果と課題を報告する。
【背景】当院では、医師指示の下ST中心にて経口摂取の可否及び食
事形態の選択を行なっている。一方、ST不在日やST非介入の患
者における経口摂取の可否・食事形態の選択はNs中心に行なっ
ている。その際、以前はNsによる統一した評価方法がなく、評価
をST出勤時まで延期する場合や、評価結果が不適切な場合があっ
た。
【目的】上記の状況を改善する為、ST未介入患者に対して、絶食期
間の短縮と評価方法の統一・精度向上を目的に、経口摂取フロー
チャートを作成・運用した。また、運用後の課題に対して、フロー
チャートの改訂、経口摂取時の注意点・介助方法の連絡ボードの
作成等を行った。
【結果】利点として、1.絶食期間の短縮、2.誤嚥の兆候を呈する
患者の減少、3.経口摂取時の注意点の明確化、4.Nsの食事形態
への意識向上等が挙げられた。課題としては、食事形態の選択が
不適切な場合がみられた。今後は、更なるフローチャート改訂と
全病棟への運用拡大を目指していく。
【目的】嚥下造影検査(以下VF)は誤嚥の検出などに有効である。
先行研究では、評価項目の検討や他の検査との比較などは行われ
ているが、評価者の違いよる結果の有無については検討されてい
ない。今回、評価者の経験年数による結果の差について検討した
ので報告する。
【方法】
(対象)当法人所属のST26名。
(具体的手順)患者6名の水
分・ゼリー・全粥のVF画像を、評価基準(日本摂食嚥下リハビリ
テーション学会医療検討委員会案)を3から5段階評価に変更し評
価。項目数22。経験年数1〜3年目と4年以上のグループに分け比
較。(検定方法)Mann-WhitneyのU検定、P<0.05を有意水準と
した。
【結果】22項目の中で差がみられた項目は、ゼリーでは「食物の取
り込み」、水分では「食物の取り込み」、全粥では、「食物の取り込
み」
「口腔内残留(前庭部)」
「(口腔底)」にて差を認めた。
【考察】全食材にて「食物の取り込み」で差を認めた。これは、口唇
閉鎖の動態が画像では評価しづらいことが影響していると思われ
る。全粥での「口腔内残留(前庭部)
(口腔底)」の差は、評価基準に、
嚥下後に開口し目視による確認が必要とあるため、画像のみでは
個人差が生じたと思われる。
【結語】一部項目に差は認めたが、経験年数による検討ではほとん
どの項目で差を認めなかった。今後は、項目毎の一致率などを分
析し、より精度の高い評価を目指していきたい。
80
O26-1
O26-2
○剱持君代(看護師)
○牧野友恵(管理栄養士・栄養士)1),岡村寛子1),阿部紗耶香1),
安田真紀1),大本史子1),尾形のぞ美1),柴原知子1),橋本茂樹2),
横串算敏2)
摂食機能療法の浸透を目指した屋根瓦方式の導入の
効果
回復期リハ病棟入院患者の栄養管理−下腿周囲長・
BMI計測の意義−
公益社団法人 群馬県医師会 群馬リハビリテーション病院
1)札幌西円山病院 栄養科
2)札幌西円山病院 診療部
【はじめに】摂食機能療法を確実に実施できれば、経口摂取の移行
率がアップする。当病棟では、スタッフ間の方法の共有が効果的
に行えず、取り組みの姿勢にも温度差が生じていた。そこで、屋
根瓦方式での伝達を試みたところ、効果が得られたのでここに報
告する。【研究期間】平成25年4月から平成26年4月【対象と方法】
対象は当病棟看護師20名。摂食機能療法の知識を文章で再確認
した後、患者個々へのプログラムをベットサイドで伝達すること
を繰り返した。その間で1年ごとに2回、対象者にアンケートを実
施した。また2年間の摂食機能療法算定日数を比較した。
【結果】
アンケート結果より、25%のスタッフが1年前よりも積極的に取
り組みたいと回答した。算定日数は、平均6.83日/月の増加があっ
た。
【考察】屋根瓦方式は、伝える者と教わる者が共に目で見て
実践し覚えて伝えるため、伝達する側が十分に理解している必要
がある。また、言葉や文章だけでなく現場で具体的な方法を交え
て伝達するため、スタッフの理解が深まり浸透を促す結果になっ
たと考える。算定日数の増加は、スタッフが効果を実感でき必要
性を理解したため積極的に関わることが出来た結果であると考え
る。摂食機能療法実施日が増えたことは、肺炎を予防でき経口摂
取への近道となった。
【結語】摂食機能療法の実施方法を伝達し
浸透するためには、屋根瓦方式による伝達方法は有効であった。 【目的】下腿周囲長(以下、CC)は骨格筋萎縮の程度や体重等の指標
とされ、日常動作との関連も高い事が指摘されている。下方らの
サルコペニア簡易基準案においても評価項目にCCとBMIが含ま
れている。今回、回復期リハ病棟患者において入退院時にCCと
BMIを測定し、入院中の栄養管理にどのように活かせるかを検討
した。
【対象と方法】H26年10月〜27年3月の期間で当院回復期
リハ病棟を入退院した経口摂取患者30名(男10名、女20名)。平均
年齢82才、平均在院日数76.7日、疾患内訳は脳血管6名、骨折17名、
廃用7名。下方らのサルコペニア簡易基準案に基づき、CC30cm
未満又はBMI18.5未満の群(以下、下腿やせ群)とCC30cm以上又
はBMI18.5以上の群(以下、非下腿やせ群)の2群に分け、入退院時
の握力、FIM、Alb、摂取エネルギー・蛋白質量を比較検討した。【結
果】下腿やせ群は入院時57%、退院時40%だった。両群共に入退
院時の比較ではCCとFIMに有意な改善があった(p<0.05)。下腿
やせ群の摂取栄養量は入院時より退院時の方が有意に多かった
(p<0.05)が、AlbとBMIに有意な改善はなかった。【考察】当院回
復期リハ病棟患者の平均年齢は75歳以上で、疾患による筋量低下
以外に加齢、低活動、低栄養によるサルコペニアを合併している
事が多いと考える。下腿やせ群は摂取栄養量が増加していたが、
AlbやBMIに有意な改善がなかった事から、基盤にあるサルコペ
ニアを念頭に置いた栄養管理を強化しなければならない事が示唆
された。
O26-3
O26-4
当院における訪問歯科診療の歯科医師及び歯科衛生
士と言語聴覚士との連携の試み
医科歯科連携における当院での取り組み 〜歯科衛
生士の立場から〜
○池田友紀(言語聴覚士)1),小坂雪乃1),西田智賀1),松岡俊哉1),
小田忠文1),中村靖子2),吉見二朗3)
○岩本麻衣(歯科衛生士),山下江利子,築城みさき,小野琢也,
下田みどり,岩尾邦彦,野田俊郎
1)医療法人敬愛会 西宮敬愛会病院 リハビリテーション科
2)大阪保健医療大学 言語聴覚専攻科
3)医療法人健志会 今津ステーション歯科クリニック
特定医療法人財団博愛会 博愛会病院
【はじめに】近年、摂食嚥下機能向上を目指した医科歯科連携の重
要性が言われている。歯科のない当院では福岡市歯科医師会と協
力して医科歯科連携を開始した。そこで当院での取り組みと今後
の課題について報告する。【内容】H20年度より歯科衛生士(以下
DH)1名、H22年度より2名を回復期病棟へ配属、全入院患者の
口腔内評価、口腔ケア、スタッフ・家族指導等を行ってきた。歯
科の介入は治療主体の訪問診療が殆どで、本来の口腔機能回復の
視点での介入は少なかった。そこでH26年3月より登録歯科医5
名による往診を開始した。運用は月1回歯科オープンシステム運
営会議を合同で開催し、症例検討や問題点の抽出・解決等を行なっ
た。
【結果】DHの介入により早期に口腔の問題に気付き、歯科の
介入増加(前年比132%)に繋がった。また医科歯科連携により、
双方からの勉強会開催も始まった。医科歯科連携開始前と比し相
談しにくい内容も気軽に出来るようになった。登録歯科医の定期
訪問・カンファレンス参加もあり、互いに情報共有が可能となっ
た。
【まとめと今後の課題】医科歯科連携の要として、DHが調整
役や窓口となる必要性を感じた。今後、医科歯科連携をより充実
させるために、病院全体で取り組む連携システムの構築、医科歯
科協働での摂食嚥下に関する知識技術の向上、在宅で継続した口
腔管理を提供できるような医科歯科・歯科歯科の繋がりを強化す
ることが課題である。
【はじめに】当院は回復期リハビリテーション病棟、医療療養病床
を有する療養型病院である。当院では週に1回、歯科医師、歯科衛
生士の訪問歯科診療を受けており、この診療と連携することで、
入院患者の合併症の予防とQOL向上を目指している。今回は言
語聴覚士の実践について報告し、
若干の知見を述べる。
【実践方法】
嚥下障害の患者に対し、訪問歯科診療の評価及び口腔ケア場面に
できる限り立会い、口腔ケアの手順や方法を確認、個々の患者に
合わせたマニュアルを作成し、統一を図っている。また、歯科医
師が嚥下内視鏡検査(VE)を実施し、その結果を基に歯科医師、歯
科衛生士、担当医師、言語聴覚士が協働し、嚥下機能の評価及び
訓練を実施している。
【考察】1.個々の口腔ケアマニュアル作成を
することで方法の統一が図れるようになってきた。また、訪問歯
科診療時に患者の口腔内環境についての情報を共有することで、
適切な口腔ケアの継続、実施者のモチベーション維持につながる
と考える。2.VEは嚥下動態の客観的評価を得ることができ、得ら
れた評価から代償手段や食形態の調整等、スムーズな嚥下訓練の
立案につながると考える。3.義歯不適合や無歯顎の方への義歯作
製、調整により、咀嚼や送り込みが改善され適切な食形態の提供
につながる。【おわりに】今後も訪問歯科診療と連携を図り入院
患者のQOL向上に更なる寄与ができるよう、連携内容や方法を検
討しながら研鑽していきたい。
81
O26-5
O26-6
○阪井美佳(介護福祉士・ヘルパー)
,高野なをみ,松村幸美
○三好里梨子(理学療法士),藤村大輔
白山リハビリテーション病院
香川医療生活協同組合 高松協同病院 訪問リハビリテーション科
口腔環境を整え患者様に笑顔を〜適切なケアができ
る介護福祉士に〜
当院訪問リハビリテーション科における栄養スク
リーニングシステムの導入について
当院には脳血管疾患の後遺症による高次脳機能障害や廃用症候
群、口腔機能および認知面の低下などの患者が多数入院してくる
が、その大半は口腔ケアに介助を要している。口臭や舌の汚れ等
の問題点がある他、表情が乏しく活気が無いといった共通点も見
られる。しかし1日の中で起床時と毎食後の4回、口腔ケアに携っ
ているにもかかわらず食物残渣や義歯の外し忘れ等が見受けら
れ、口腔衛生管理ができていないのではないか疑問を持った。口
腔ケアはブラッシングをすれば清潔が保たれるといった程度の認
識しか無ったが、実際患者それぞれに合わせた口腔ケアを行った
際、表情がすっきりとし徐々に発語が増えるといった変化や、介
助を重ねる毎に患者とのコミュニケーションが図れるなど口腔ケ
アの大切さに改めてきづかされた。介助する側が統一した知識
を持って意識を高めていくことで、口腔ケアがもたらす患者への
有効性が高まるのではないかと感じた。今回介護士間で正しい口
腔ケアが行われているのか意識調査をするとともに、患者の口腔
内状況を観察する意識を高めるため口腔内チェックリストを作成
し、入院時より患者の口腔状況を把握しようと考えた。その結果
をふまえ「食べる楽しみ」
「リハビリのできる身体作り」そして「笑
顔」が引き出せる介護福祉士となれるよう、ケアの質の向上に向
けた取り組みをし検証した。
【はじめに】在宅療養中の要介護者には多くの低栄養リスクが存
在していることが報告されている。現在、病院や施設では医師や
管理栄養士を中心にNSTが稼働し、定期的に栄養評価が実施され、
適切な介入が行われていることが多いが、在宅では有効なシステ
ムが稼働しているとはいい難い状況である。当院訪問リハビリ
テーション科(以下、訪問リハ)においても栄養評価は主観的評価
のみで行われ、評価基準が存在しなかった。そこで、今回栄養ス
クリーニングとしてMNA®-SFを使用したシステムを導入したの
で報告する。
【方法】客観的評価として、当院訪問リハ利用者全員
にMNA®-SFを使用。頻度は開始時、以降3カ月毎に行い、定期的
に評価が行われるようにした。結果は、リハビリテーション実施
計画書に反映している。【考察】在宅サービスでは各職種が単独訪
問のため、幅広い視点や知識を持ち対応することが必要といえる
が、栄養状態に対する客観的評価は行なわれていないことが多い。
簡便に行なえるMNA®-SFを用いることで、定期的に栄養障害やリ
スクを発見することで予防にも繋がっていくと考える。【今後の
課題】栄養障害に対し、医師や各職種とスムースな情報共有を図
り連携を取っていく手段の確立が必要であるといえる。また、そ
の際には統一した内容での連携が必要となるが、現在当科サービ
ス提供地域には栄養パスは存在せず今後の課題であるといえる。
O27-1
O27-2
○入河 毅(看護師)
○藤木千夏(看護師)1),西尾大祐2),倉田睦子1),高橋麻子1),
加藤伸行1),阿部真也2),高橋秀寿3),木川浩志1,2)
医療法人財団尚温会 伊予病院
1)飯能靖和病院 回復期リハビリテーション病棟
2)飯能靖和病院 リハビリテーション科
3)埼玉医科大学国際医療センター リハビリテーション科
摂食嚥下チームでの取り組みと今後の課題
回復期リハビリテーション病棟における摂食・嚥下
専門チームの取り組み
【はじめに】摂食嚥下チーム会がNSTから独立し1つのチームとし
て動き始めて1年が経った。その中でチームとして食べることに
問題を抱えた患者に対し、適切な食事が適切な方法で、確実に提
供されているかという事、生活として食べる営みの再建を目指し
個々が考えて介入出来ているのかを見直す機会があった。今後、
看護師として専門的知識を持って嚥下機能の評価や改善に取り組
んでゆくことが必要であることを考え、病院全体で摂食嚥下機能
改善のための訓練メニューの刷新及び統一、知識の共有化を図る
ことで、どの病棟においても格差のない訓練の導入が行えるよう
試みた。その効果及びスタッフの意識の変化についての確認を行
うとともに今後の課題について報告する。
【方法】回復期病棟に
配属される看護師対象に対して意識調査のアンケート実施 摂食
嚥下チームを立ち上げて1年間を通しての摂食嚥下改善率と前年
度の改善率の比率 病棟で行われる摂食嚥下訓練の内容の刷新と
統一、摂食嚥下に対する勉強会の実施【結果】勉強会での学びや訓
練メニュー活用で効果的な訓練の提供が出来たと感じるスタッフ
もいたが、訓練メニュー統一で個別性に欠ける内容になったと感
じるスタッフも確認された。
【考察】勉強会の実施や訓練メニュー
の刷新、統一を図ることで個々のスタッフに摂食嚥下障害への介
入意識は高まったが、個々に応じた訓練メニューを選ぶ知識が不
十分であることも明らかになった。
【はじめに】回復期リハビリテーション(リハ)病棟では、入院早
期から患者の日常生活活動(ADL)が促進されるように、看護師が
チームとなって働きかけることが大切である。今回我々は、摂食・
嚥下障害が患者のADLを著しく低下させることに着目し、摂食・
嚥下訓練に対応した看護専門チームを結成した。【方法】2015年2
月に摂食・嚥下専門チームを結成し、摂食・嚥下障害に関する研
修会を開催した。研修会はリハ専門医による講演を回復期リハ病
棟看護師らが聴講する形で行われた。研修会後に看護師8名が摂
食・嚥下専門チームを結成し、摂食・嚥下訓練への関わりについ
て話し合った。
【活動】当院では摂食・嚥下訓練にあたり、嚥下造
影検査を通して誤嚥が生じにくい姿勢や食形態を検討し、訓練法
を決定する。検査にはリハ専門医、看護師、言語聴覚士、患者家
族が立ち会い、検査後に摂食・嚥下専門チームでミーティングを
開き、訓練法を共有している。更に、摂食・嚥下専門チームと言
語聴覚士で定期的にミーティングを開き、患者の病態やゴールに
対する理解を深めている。【考察】摂食・嚥下訓練が適切に行わ
れるためには、看護師が研修会などを通して専門的な知識を事前
に学習することが重要と思われた。また、摂食・嚥下訓練が適切
に行われるためには、看護チームを組織し、嚥下造影検査への立
ち会いやミーティングなどを通して患者の病態や訓練法に対する
理解を深めることが重要と思われた。
82
O27-3
O27-4
○壇真由美(言語聴覚士)
,赤星泰代,藤田洋子
○増田洸一(言語聴覚士)1),小前晶子1),上野勝弘1),福田優子2),
三浦真香3),井上千波4),赤羽美恵子4),吉川恵子4),垣谷知佐5),
浅井李美3),小嶋晃義1),古出隆士2)
「食べられる口をつくるプロジェクト」活動報告
当院における摂食・嚥下チームの取り組み
1)医療法人康雄会 西記念ポートアイランドリハビリテーション病院
リハビリテーション科
2)内科,3)歯科口腔外科,4)看護部,5)栄養科
社会医療法人財団白十字会 燿光リハビリテーション病院
【はじめに】白十字会グループでは、平成25年8月より、当グルー
プの患者・利用者の在宅復帰支援、在宅生活支援の一環として、
「食
べられる口をつくるプロジェクト(くちプロ)」の活動を開始し
た。今回は、当院におけるプロジェクトの活動内容を中心に報告
する。
【活動目標】プロジェクトの主目標は次の2点である。
『義歯装着
患者さん全ての咬合機能を回復する。
』
『口腔内疾患に対し、早
期発見・早期対応のシステムを構築する』この主目標に対する副
目標は、次の3点で設定した。 1.全職員に“食べられる口をつく
る”という意識を高めてもらう。 2.協力歯科医院との緊密な連
携体制を構築する。 3.必要に応じて歯科衛生士を直接雇用し、
協力歯科医師と連携を図る。
【プロジェクトメンバー】看護師、歯科衛生士、ケアスタッフ、
PT・OT・ST
【現在までの取り組み】
・白十字会版口腔アセスメントシート、効
果検証シート導入・協力歯科との意見交換会・歯科衛生士2名体
制・口腔ケアシート導入・各種書類の電子カルテ導入・職員への
勉強会
【おわりに】様々な要因で口から食べることができない方はもち
ろん、口から食べられる方にとってもくちプロの役割は重要であ
ると考える。今後は、院内のみならず自宅退院された方に対して
も継続支援ができるよう準備を進めている。
【目的】当院では平成26年10月に摂食嚥下チーム(以下チーム)が
発足した。現在までの経過、成果と今後の課題について検討する。
【経過】チームのメンバーは医師・歯科医師・看護師・管理栄養士・
歯科衛生士・言語聴覚士である。月に一度カンファレンスと回診
を実施し、専用のデータ表に病名や栄養状態、嚥下機能の評価や
食事形態などのデータや検討項目を記載し、チーム内で使用する
とともに電子カルテ上で他職種間での情報共有を図っている。
【結果】平成27年4月までに19例で介入した。16例において介入
前後で嚥下機能評価が可能であったが、介入前後で藤島のグレー
ドは有意に改善した( 3.9±1.7 vs. 4.5±1.5, p<0.05)。また嚥下
造影検査の実施回数はチーム発足前後で有意に増加した( 1症例
(入院患者38症例)vs. 8症例(入院患者37症例)、p=0.01)。
【課題】嚥下機能の問題点や摂食介助方法が病棟看護師に伝わりに
くいこと、回診の頻度が少なくきめ細かな評価が困難である、重
症患者が多く併発症のために介入が中断される症例がいる、栄養
サポートチーム結成などの課題がある。今後は多職種において摂
食嚥下に関する勉強会やチームの活動を啓蒙し、回診の頻度を増
やすなどの対策を検討する。また重症患者においては、より安全
な食事形態を提供するとともにきめ細かい嚥下機能評価をしてい
く必要がある。
O27-5
O27-6
○藤平健太郎(言語聴覚士)
,山中英治
○村木久子(看護師),根本とよ子,小山智生,酒川佐和子
社会医療法人若弘会 若草第一病院 医療支援部 療法課
大森赤十字病院
脳卒中急性期における、摂食嚥下障害に対する取り
組み
急性期病院における摂食機能療法の取り組み
【はじめに】脳卒中急性期の摂食嚥下障害に対して、早期経口摂取
の開始と段階的摂食訓練を進め、ADL向上に努める必要がある。
当院においても発症早期から看護師・言語聴覚士(以下、ST)に
よる嚥下機能評価・訓練を実施し、安全に早期経口摂取が獲得で
きるよう取り組んでいる。今回、当院での取り組みを紹介し、退
院時の経口摂取の帰結や今後の課題を報告する。
【当院での取り
組み】1.入院時、嚥下パスが発生し、リハビリテーション処方箋が
出される。2.看護師にて嚥下スクリーニングを実施し、該当項目
があればSTに嚥下評価依頼。3.ST評価にて経口摂取可否を判断。
4.看護師にて口腔ケア、口腔機能訓練実施。5.STにて嚥下訓練お
よび段階的に食事形態の調整を実施。
【平成26年度実績】平成26
年4月1日〜平成27年3月31日に当院に入院した脳卒中患者458名
のうち、摂食嚥下障害を認め、嚥下訓練を実施した250名(男性
130名、女性120名、平均年齢75.9歳)
。入院時重症度は、重度118
名、中等度90名、軽度42名。退院時3食経口摂取92名、一部経口
摂取71名、非経口摂取87名。誤嚥性肺炎発症率4%。
【まとめ】脳
卒中急性期の摂食嚥下障害に対して、発症早期からSTだけではな
く看護師、NST等多職種による包括的アプローチを重点的に行う
ことが早期経口摂取の獲得を促進させる。今後は、口腔機能訓練
および口腔ケア方法の統一に取り組みたい。
【はじめに】当院は、2012年より「急性期リハビリテーション(=
リハ)による早期社会復帰支援体制の構築」を目標に、急性期リハ
を導入し取り組んでいる。今回は、摂食嚥下機能障害の機能改善
を目指し、「摂食・嚥下チーム」を立ち上げての取り組みを報告
する。
【方法】
「摂食・嚥下チーム」は、医師・ST・各病棟の看護
師で結成し、1。毎月のミーティングによる情報共有、問題点の検
討、2。看護師の摂食機能療法実施に必要な知識・技術向上の研
修会、3。各病棟での摂食機能療法実践と1週間ごとの評価(STと
看護師)、4。摂食機能療法を終了した患者の開始時と終了時の評
価表の集計(2014年9月〜2015年3月)
【結果】対象は、各病棟の摂
食機能療法を看護師が実施した患者59名である。摂食機能療法
終了時、1。藤島レベル向上した患者:19名、2。藤島レベル不変
の患者:30名、3。藤島レベル低下の患者:10名であった。また、
摂食機能療法開始時の各嚥下期の症状では、先行期の障害が126
件と最多であり、中でも高次機能障害が45件と最多であった。訓
練内容では、直接訓練が50件、間接訓練が9件であった【考察】藤
島レベル評価では、
「不変」が30名と最多であったが、ソフト全粥
よりキザミとろみに食あげをしても、藤島レベルアップにはなら
ない事が考えられ、更なる分析が必要と考える。また、訓練は直
接訓練が多いが、間接訓練を実施することで機能改善する可能性
が考えられる。
83
O28-1
O28-2
○衛藤恵美(歯科衛生士)1),森 淳一1),佐藤浩二1,2),森 照明2)
○磯部満里奈(言語聴覚士)
1)社会医療法人敬和会 大分東部病院
2)社会医療法人敬和会 大分岡病院
医療法人社団KNI 北原リハビリテーション病院 リハビリテーション科
歯科介入がADLに及ぼす影響について
〜回復期リハビリテーション病棟での医科歯科連携
の成果から〜
回復期病院にてPEG増設後、3食自力摂取が可能と
なった一例
【目的】脳出血による経口摂取困難の為、経皮内視鏡的胃瘻造設術
(以下PEG)を増設した後、3食自力摂取が可能となった症例に対
し、急性期〜回復期退院まで介入する機会を得た為、報告する。
【症
例】左視床出血により重度運動麻痺、感覚障害に加え、失語症、高
次脳機能障害、嚥下障害を呈した70代男性。嚥下障害は先行期が
主で経鼻経管チューブの自己抜去が頻回。ADLは全介助。
【経過】
演者は急性期から転院まで、回復期入院(以下入院)25日目より
介入。急性期は痰貯留が多く吸引が頻回に必要な為、口腔ケアや
間接的嚥下訓練中心。転院後徐々に直接的嚥下訓練が導入でき、
入院18日目にはゼリー摂取可能。訓練食を経て昼のみ経口摂取
を行うも、主に高次脳機能障害の影響で停滞。入院70日目にPEG
増設。増設後、入院90日目頃より日毎に言語・高次脳機能の改善
がみられた為、病棟での食事摂取を展開。入院103日目に昼食・
夕食の自力と介助併用摂取、入院129日目に3食自力摂取が可能と
なった。
【考察】本症例はPEG増設後、入院期限間際に大幅な機能
改善がみられ、食事を通じて言語・高次脳機能の引き上げが図れ、
ADL向上に繋がった。回復期にて積極的にリハビリ介入できる期
間は半年以内だが、本症例は今後も継続したリハビリにより、更
なる改善が見込めた可能性が高いと考える。
【まとめ】脳血管疾
患発症後の回復過程には個人差があるが、大幅な回復期間に集中
した介入を行うことは重要である。
【目的】社会医療法人敬和会は地域医療支援病院として急性期を
担う大分岡病院、昨年4月に回復期リハビリテーション病棟を開
設した大分東部病院、生活期を担う大分豊寿苑などで敬和会ヘル
スケアリンクを構築している。昨年、回復期開設直後の4月には
地元歯科医師会との医科歯科連携締結、続いて口腔リハビリテー
ション・ケアセンターを開設。現在5名の登録歯科医がリハビリ
テーションチームの一員として訪問歯科診療を行っている。今
回、歯科治療の有無とADLの変化との関連について調査したので
報告する。【対象と方法】対象は平成26月4月から翌年3月までに
退院した患者で、入院時合同評価にて歯科衛生士が介入した患者
197名中(平均75.9±12.8歳、男性99名、女性98名)
。歯科治療を
受けた86名、診断名は、脳血管疾患41名、整形疾患40名、その他5
名。方法は、歯科治療を受けた者と受けなかった者の機能的自立
度評価表(以下、
FIM)
の得点の変化を後方視的に検討した。
【結果】
入院患者総数のうち43%が歯科治療を受けており、治療をうけた
者のFIM得点の改善がみられた。
【考察】回復期リハビリテーショ
ン病棟に入院する患者は口腔内に問題を抱えていることが少なく
なく、歯科治療の必要性も高い。そのため、医科と歯科の連携は
必須と言える。この連携により、チーム目標に連動した歯科治療
行うことで、ADL改善に寄与する可能性が示唆された。
O28-3
O28-4
○岡野雄二(言語聴覚士)
,岡野智美
○高井真由美(歯科衛生士),南 清和
芙蓉会 南草津病院
医療法人健志会 ミナミ歯科クリニック
遷延性意識障害を伴う気管切開患者に対する長期間
の嚥下訓練効果 〜回復期期間以降でも積極的に嚥
下訓練を〜
重度口腔乾燥症の患者への当院における専門的口腔
ケアの取り組み
【はじめに】近年、回復期以降の重要性が提唱されているが、継続
したリハビリ(以下リハ)を希望しても時間的・回数的に充実し
たリハを受けるのは難しい。しかし今回、500日以上の長期間に
わたり気管切開患者に対し嚥下訓練を継続し、経口摂取を再獲得
する事が出来たのでここに報告する【症例】
50歳代、
男性。診断名:
低酸素脳症、神経学的所見:四肢不全麻痺、気管切開、胃瘻増設【経
過】と結果」入院当初、意識障害認め、口腔内唾液貯留や気切部か
らの吹き出しも頻回。X+249日、咀嚼訓練導入。声掛けに対し
表情変化を示す様になる。X+320日、直接嚥下訓練開始。咀嚼
運動の拙劣さはあるが口腔運動から嚥下反射への連動向上。1回
目VFで誤嚥を認め為、カフ付スピーチカニューレ装用しサクショ
ン管より酸素送気下で誤嚥リスクを管理しながらの直接嚥下訓練
に変更。2回目VFでは誤嚥認めず、翌日より訓練食L2(1回/日)開
始。現在L4への形態調整が行えた。
【考察】入院してからの半年
間は遷延性意識障害の残存と、発声・摂食嚥下・身体機能の喪失
は家族にも大きな不安と喪失感を与えていた。その中で長期間リ
ハ介入した事で発症から1年経過しても「再び摂食嚥下能力を獲
得」をする事が出来た。この事は本人のQOLだけでなく家族に喜
びと楽しみを獲得する事が出来た。以上の事から、今回の症例を
通じて回復期以降のリハの提供場所として療養病棟の重要性と可
能性を示したものと考える。
【はじめに】近年日本では超高齢化社会が進展しており、介護保険
制度における要介護者又は要支援者と認定された人は平成21年
で484.6万人となっている。歯科における要介護高齢者の受診も
多く、口腔ケアを行うことが多い。特に施設訪問では寝たきりや
認知症をもつ要介護高齢者への口腔ケアを行うことが多くなって
きた。近年では誤嚥性肺炎の予防に口腔ケアが重要であることが
一般化されつつある。なかでも重度の寝たきりの高齢者では、経
管栄養にて生命維持を図られている場合が多く、経口摂取不可の
為に口腔内が汚れ、乾燥を伴うケースが数多くある。今回は重度
の口腔乾燥患者に対して歯科衛生士による専門的口腔ケアを行っ
た症例を発表する。
【対象】重度口腔乾燥症を伴う要介護高齢者
【考察】重度口腔乾燥症を有する要介護高齢者は口腔内の自洗浄
作用は著しく低下しており、口腔機能も低下している場合が多い。
このような対象者には口腔ケアを行う前に唾液腺マッサージ等の
機能的口腔ケアを行い、保湿ジェルを塗布し、口腔の湿潤を回復
させ、汚れを除去する。口腔ケア後には口腔リンス、口腔保湿ジェ
ルを塗布し口腔機能の維持、改善を図る必要があると考える。
84
O28-5
O29-1
○余川ゆきの(歯科衛生士)
○飯田佳子(作業療法士),三上直剛,山崎礼二,西 晃司
医療法人健志会 ミナミ歯科クリニック
医療法人社団 函館脳神経外科病院 リハビリテーション科 作業療法課
口腔内に多量に付着した痂皮状の汚染物を有する患
者に対する専門的口腔ケアの取り組み
頚椎疾患の術後指導のあり方 〜 SF-36の経時的変
化から〜
【はじめに】全身状態が悪く、口腔乾燥が認められ、特に経口摂取
不可の患者の口腔内に痂皮状の汚染物が形成されることがある。
この汚染物は口腔機能が低下し、唾液や、食物で洗い流されるこ
となく蓄積した剥離上皮である。そのまま除去すると、容易に出
血してしまい、そこから痂皮を形成してしまう事になる。今回歯
科衛生士による専門的口腔ケアを行うにあたって粘膜を傷つけず
に痂皮状汚染物を除去を行った症例を発表する。
【対象】口腔内に多量に付着した痂皮状汚染物を有する要介護高
齢者
【考察】効率的かつ、安全に痂皮状汚染物を除去するには、口腔ケ
ア前の保湿が大切である。保湿剤は蒸発しにくく、汚染物の内部
に浸透し、咽頭部にながれないものを選ぶ必要がある。また充分
に軟化させてから適切な器具を用い、咽頭部への侵入を防ぎなが
ら除去する必要があると考えられる。
【はじめに】当院では頚椎疾患と診断され手術適応の入院患者
に対して、術前と退院時に脊椎脊髄疾患神経症判定基準(以下、
NCSS)、術前と術後1年にMOS36-Item Short-Form Health Survey(以
下、SF36)を実施している。本研究では、頚椎疾患手術施行者の
改善率、在院日数、術前・術後1年のSF36から、入院期間中にど
の様な関わりが必要か当院データベースで後方視的に検討した。
【対象と方法】対象は2007年4月〜2014年3月に頚椎疾患と診断
され、手術施行した入院患者74名(男性56名、女性18名、平均年
齢61.43歳)。方法はNCSSにて算出される改善率と在院日数、術
前・術後1年のSF36をNBSscoreにて算出し、比較検討を行った。
【結果】在院日数:平均17.7日、改善率:平均49.1%、SF-36(手
術 前 → 術 後1年):[PF]41.4→44.2[RP]34.5→40.6[BP]38.8→45.
3[GH]42.8→47.1[VT]45.5→48.5[SF]44.1→45.6[RE]39.1→42
.8[MH]43.2→48.1【考察】SF36の結果から当院で頚椎疾患と診
断され手術施行した患者は、手術を施行することで全項目とも向
上が認められたが、
「身体機能(PF)」
「日常役割機能身体(RP)」
「日
常役割機能精神(RE)」においては国民標準値より優位に下回る結
果となった。そのため、短い入院期間中でいかにホームプログラ
ム指導を充実させ、退院後の生活に役割を獲得させるかが重要に
なってくる。また、OTとして早期から自助具の検討や環境整備
により役割の維持や再獲得が大切であると考える。
O29-2
O29-3
○石原雅美(理学療法士)
,山本英里子,秋葉佳受子,奥田紘祥,
飯塚浩二,小林 愛,石井秀子,小原かおる
○中田幸子(看護師),秦美佐子,笹山久美代
医療法人社団弘人会 中田病院
医療法人さくら会 さくら会病院
入院時訪問指導を行って
外泊チェックリストを用いた在宅退院支援への取り
組み
【はじめに】入院時訪問指導加算(以下、入院時訪問)を、多職種の
情報共有の強化と入院期間の短縮を期待して、H27年1月から入
院時訪問を開始した。この取組みを後方視的に調査し、若干の知
見が得られたので報告する。
【対象】H27年1〜4月までの入院患
者90名、うち入院時訪問を算定したのが9名。アンケート対象は
入院時訪問を行ったスタッフ10名。
【方法】対象期間に入院し且
つ入院時訪問を行っていない患者群(以下、非実施群)と、入院時
訪問を行った患者群(以下、実施群)の年齢、転棟時FIM、退院時
FIM、FIM利得、在棟日数、在宅復帰率を比較した。またアンケー
トを実施し入院時訪問の主観的な調査を行った。
【結果】転棟時
FIM
(平均点:非実施群90、実施群65.2)退院時FIM
(平均点:非
実施群107.2、実施群95.3)FIM利得(平均点:非実施群17.2、実
施群27.2)において有意差がみられた。アンケートでは肯定的な
意見が多かった。
【考察】転棟時、退院時FIMは実施群の方が優位
に低く、FIM利得は実施群の方が優位に高かった。さらに在棟日
数に差が無かった。入院時訪問を行い患者個別のゴールが明確と
なる事で、スタッフや患者が退院に必要なADLを認識でき、動作
面での向上がみられた可能性がある。それがFIM利得向上につな
がったのかもしれない。また転棟時FIMが低いと在棟日数の延長
が考えられるが、今回の比較では差がなかった事は、入院時訪問
に一定の効果があったと考えられる。今後は事例数を増やしてさ
らに検討していきたい。
【はじめに】回復期リハビリテーション(以下回リハ)病棟の看護
師の役割は、退院後の生活をアセスメントし在宅退院を支援する
ことである。しかし現状は、多職種間の連携不足や受持ち看護師
の情報が病棟で共有されないことから、退院後の生活をイメージ
した目標設定や家族支援は不十分といえる。そこで独自に作成し
た「外泊チェックリスト」から外泊中の状況を情報収集し、患者・
家族の思いや不安を聞き退院への課題を明確にした。
【方法・対象】
対象は回リハ病棟入院中の外泊患者29名。患者、家族、多職種で
話し合い外泊目標の設定をおこない、帰院時に「外泊チェックリ
スト」項目を看護師が家族から聞き取った。その後退院にむけて
のチームアプローチを決定し次の外泊目標を設定した。【結果】1
回目の外泊時の目標は、自宅での杖歩行や動作確認、自宅改修後
の使用状況、夜間のトイレが出来る等の設定である。ADL状況は、
屋内移動62%、屋外移動51%、入浴41%以上、更衣75%以上、排泄
79%以上、服薬80%以上が実施できた。2回目外泊では、屋内移動
84%、屋外移動53%、入浴46%、更衣84%、排泄92%、服薬92%以
上ができた。
【考察】退院支援において試験外泊を有効にするた
めには、外泊時の状況を把握しチームで介入することが重要であ
る。
「外泊チェックリスト」の目標設定や聞き取り調査から在宅
退院への重要ポイントは「排泄の自立」である。排泄の自立は患
者の自信、家族の介助量の軽減につながる。
85
O29-4
O29-5
○松岡美和(介護福祉士・ヘルパー)
,吉開久美,西本京子,
濱田圭美,永田五月
○塚本賢司(作業療法士)1),田邉晃平1),赤穂善行1),大垣昌之2)
社会医療法人財団白十字会 燿光リハビリテーション病院
1)愛仁会 リハビリテーション病院 リハ技術部 作業療法科
2)愛仁会 リハビリテーション病院 リハ技術部
自己チェックシートを活用した退院支援
当院における退院後訪問調査の報告〜退院前訪問指
導時の環境設定に着目して〜
【目的】介護職員は入院中から在宅生活に向けて生活全般の自己
管理が出来、援助を行う役割がある。しかし、在宅支援にどのよ
うに関わりを持てば良いのか解らないのが現状であった。そこで
在宅生活の自己管理が出来るチェックシート(以下R4と略す)を用
い退院支援への意識の向上に取り組んだ。
【対象・方法】介護職
員10名、他種職36名 1)リハビリ管理者、介護職員管理者による
R4について教育介入と、前後の実態調査 2)教育介入前後のR4
記入率、退院前訪問同行数調査【結果】意識調査の結果、排泄指導
以外の退院支援、R4に対しての理解が低い意見が得られた。R4
記入率80%から98%へ上昇、退院前訪問同行数13回実施。【考察】
「患者に添った環境を援助する」と言う意見の一方で、
「排泄指導
以外に退院支援の方法が解らない」などの意見も多かった。その
ことから、退院支援に対しての理解が低いのではないかと考えら
れる。介入前はR4の意識の理解が低かったが、R4を用いる事で
患者、家族と介護職員の双方向のコミュニケーションの促進に繋
がるという実感を持った。また、患者と共にADLの変化や低下の
早期発見にも繋がるという発見も出来た。今回、記入率の上昇や、
退院前訪問同行件数を増加させた事は、リハビリ管理者、介護職
管理者による教育介入を実施した事で、意識の向上が示唆された
と考える。今後も患者個々に添った援助が出来るよう定期的な教
育介入が必要と考える。
【はじめに】当院では平成26年8月より、自宅退院した患者に対し
て退院2〜4週間後に訪問調査を行っている。退院後訪問調査と
は心身機能の変化や生活を確認し、対策を講じる事を目的として
いる。今回は、退院後訪問指導時の環境設定と退院後の生活を比
較して、今後のアプローチの在り方について述べたい。
【対象と
方法】対象は、平成26年8月〜平成27年3月に、退院後訪問調査を
実施した患者11例(男6名、女5名、平均年齢75.8±10.5歳)。方法
は、退院後訪問報告書を基に、環境設定箇所(玄関、廊下、トイレ、
浴室、居室、その他)について、「問題なし」、「使いにくい」、「再
改修」
、
「不使用」に4分類し分析した。
【結果と考察】玄関、廊下、
トイレに関しては環境設定が指導通り行えており、いずれも「問
題なし」であった。浴室に関しては、設定を行った12件の内7件
に不具合があった。当院では入浴動作の環境設定は、入浴動作シ
ミュレーターで浴槽の出入りを中心に行っている。実際に濡れた
浴室での動作評価を十分に行えていないことが要因である。また
前向きな要因として患者が退院後に能力向上し、
「不使用」となっ
た例もあった。今回の調査結果より、退院前訪問指導前に病院内
で実生活に即した環境設定でのアプローチの重要性がわかった。
また退院後訪問調査は生活を再評価し、患者の状態変化に対応で
きる数少ない機会として、病院から在宅という新しい環境適応へ
橋渡しを担える。
O29-6
O30-1
○小野健一(作業療法士)1),籔脇健司2),金山祐里1),岩田美幸2),
土屋景子1)
○井上美由紀(理学療法士)1),濱崎寛臣1),前田悠希1),竹内睦雄1),
谷口真友1),椎葉誠也1),山内智香子1),野口大助1),今田吉彦1),
桂 賢一2),木原 薫3)
1)川崎医療福祉大学 医療技術学部 リハビリテーション学科
2)吉備国際大学 保健医療福祉学部 作業療法学科
1)熊本機能病院 総合リハビリテーション部,2)熊本機能病院 神経内科
3)熊本機能病院 リハビリテーション科
認知症高齢者の家族介護者に対する共作業支援尺度
の計量心理学特性の検討
当院回復期リハビリテーション病棟における入院時
訪問指導の取り組み
【はじめに】認知症高齢者と家族介護者は、日常的に共作業を行
い、多くの家族介護者は、共作業の継続に難渋している。しかし、
共作業を支援する評価法はない。我々は共作業支援尺度(MSC:
Measure of Supporting Co-occupation)を開発し、信頼性と妥当
性を検討した。
【方法】軽〜中等度認知症高齢者と同居する家族介護者115名を対
象とした。MSCは先行研究をもとに、認知症高齢者との共作業ス
トーリーを喚起し、共作業継続意志を4件法12項目で測定した後、
今後行いたい共作業の重要度、遂行度、満足度を10件法で測定す
る。分析は共作業継続意志の内部構造妥当性、構成概念妥当性を
検討し、共作業継続意志と得られた各因子の信頼性と基準関連妥
当性を検討した。最後に、MSC内質問間の関連を検討した。
【結果】共作業継続意志は、十分な内部構造妥当性が得られ、「共
作業の満足感(5項目)」と「共作業の肯定的展望(4項目)」の9項
目からなる2因子に分類できた。しかし、モデルの適合度は不十
分であった。共作業継続意志と各因子において、信頼性と基準関
連妥当性は確保された。MSC内の質問間には軽〜中等度の関連
があった。
【考察】共作業継続意志の構成概念には、今回の2因子以外にも他
の因子が潜在する可能性が考えられる。今後、共作業継続意志の
因子を再検討し、臨床現場でのMSCの使用を試みることで、臨床
有能性を高めたい。
【はじめに】平成26年度診療報酬改定で入院時訪問指導料加算が
新設された。当院の入院時訪問指導に関する取り組みを紹介する。
【取り組み】1)適応基準の設定:独自の「入院時訪問アセスメント
シート」を作成し、半年間の傾向から適応患者の判断基準を検討
した。2)実施の効果:入院時訪問指導実施者と患者担当セラピス
トにアンケート調査を行い、実施によるリハビリへの影響を調べ
た。3)実績:平成26年5月〜平成27年4月の1年間の実績をまと
めた。
【結果】1)適応基準:最初の半年間は、入院時移動能力が介助歩行
以下かつ自宅が訪問可能範囲で、家族が自宅退院を希望する患者
に実施していた。これを当院での適応基準とした。2)実施の効果:
アンケートから、早期に家屋や家族状況の情報を得ることで、目
標設定や自宅を想定した具体的な介入ができるなど、入院時訪問
指導が有効であったことがわかった。また患者家族からも不安軽
減などの点で有効との感想が聞かれた。3)実績:当院回復期リ
ハ病棟( 86床)における1年間の実施数は入院336名中57名。4月
末時点で自宅退院は29名。入院中、死亡、治療転院を除いた自宅
復帰率は74.4%であった。
【まとめ】今後は、入院時訪問指導で得た情報を自宅復帰へ繋げる
ためにより有効な活用ができるよう取り組んでゆく。
86
O30-2
O30-3
○蒲 泰典(作業療法士)1),有川 徹2),森 彩子2),神田勝彦2),
宗貞行浩2),佐藤啓介2),小川奉彦2)
○椎屋 允(作業療法士),近藤大翼,古賀紀美代,村山友美,
古閑三貴,山下直人,前田尊明,筒井宏益,内賀嶋英明
1)医療法人盈進会 岸和田盈進会病院 リハビリテーション部
2)医療法人社団生和会 徳山リハビリテーション病院
一般財団法人杏仁会 江南病院
すれ違う想い!! 〜退院前訪問指導に関するアン
ケート調査から見えてきたもの〜
回復期リハビリテーション病棟における家族介護負
担感の調査
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ病
棟)では、可能な限り在宅への退院を目標としている。今回、家族
の介護負担感の影響について調査・検討したので以下に報告する。
【対象】平成27年1月から5月までの間で当院回復期リハ病棟に自
宅から入院された患者の家族で、アンケート調査の協力が得られ
た25名(79.8±7.72歳)。【方法】対象患者の、zarit介護負担尺度日
本語版(以下J-ZBI)、Barthel Index(以下BI)を家族から聴取し、
カルテより転帰先、年齢、HDS-R、同居家族を情報収集した。転
帰先は、自宅退院群と自宅外退院群におけるJ-ZBI得点をMannWhitneyのU検定、J-ZBI得点とカルテからの各情報はSpearman
の順位相関を用いて統計処理を行った。【結果】転帰先とJ-ZBIは
有意差がなかった。しかし、J-ZBI下位項目の設問2「自分の時間
が十分に取れない。
」(p<0.05)と設問3「家事や仕事などもこなし
ていかなければならずストレスと思う。」(p<0.01)に有意差が認
められた。J-ZBIと家族BI(p<0.05)、年齢(p<0.05)について相関
が認められた。HDS-R、同居家族で相関は認められなかった。
【考
察】J-ZBIと転帰先との関係で有意差はでなかったが、自分の時
間が取れないことに介護負担を感じており、患者が高齢になるほ
ど介護負担が増大している。そのため、在宅への退院に向けて、
ADL能力の向上と介護者の時間をいかに確保するかが必要であ
ると考えられる。
【はじめに】今回、院内スタッフと地域スタッフとの連携強化を目
的に、退院前訪問指導に関するアンケート調査を実施した結果、
報告書の改変や生活チェックリストの導入に到ったため、ここに
報告する。【対象・方法】対象はセラピスト35名(院内)と当院の
退院前訪問指導に関わったケアマネ25名(地域)とした。方法は、
当院で独自に作成したアンケートを配布・郵送し、退院前訪問指
導に必要と思う情報を身体機能や認知機能、家屋改修や福祉用具
の提案などの25項目から5つ選択してもらった。
【結果】アンケー
ト回収率はセラピスト100%( 35名)
、ケアマネ76%( 19名)で
あった。退院前訪問指導に必要と思う情報は、
セラピストでは1.改
修箇所の提案、2.介助指導、3.福祉用具の提案の順で多かったの
に対し、ケアマネでは1.身体機能、2.基本動作、3.認知機能の順で
多く、意見の違いが認められた。
【取り組み】セラピストは退院前
訪問指導にあたり環境調整や介助指導に重きを置いていたが、ケ
アマネは身体・認知機能などの機能面を踏まえた生活に関わる情
報の充実を望む意見が多かった。今回、意見の違いを埋めるため、
「家」をみる報告書から機能を踏まえた「生活」をみる報告書への
改変および生活チェックリストの導入を行った。今後は今回の取
り組みに対する効果検証を行うと共に、さらに連携強化を図って
いくため、現在当院で使用しているツールの改変などを引き続き
行っていくべきと考える。
O30-4
O30-5
○戸田拓志(作業療法士)
,田宮高道,澁谷香澄,大家佑貴,
吉田 整,斎須雄一郎,平塚健太
○安藤智美(作業療法士),青柳秀和,猪股雄太,栗林麻代
医療法人社団医修会 大川原脳神経外科病院
八潮中央総合病院
脳卒中患者の退院先と家族協力度に関する検討
自宅退院後における追跡調査〜シームレスケアへの
第一歩〜
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟において退院に向け
ての家族指導や協力要請が重要と思われる。小山ら( 2008年)は
社会的要因を含めた自宅復帰指標として「家族の協力度」を作成
した。6段階の家族協力度が実際に自宅退院に影響を及ぼしてい
るかどうかを検討したので報告する。
【方法】2014年4月〜2015
年3月までに当院回復期リハビリテーション病棟から退院した脳
卒中患者93名。転帰先を自宅群・非自宅群の2群に分けて患者
属性、入棟・退棟時の家族協力度、同居家族数、入棟・退棟時の
Functional. Independence. Measure.
(;FIM)総点を比較検討
した。
【結果】自宅群70名に対して非自宅群23名であった。年齢、
性別、病型といった患者属性に差は認めなかった。年齢は非自宅
群で高かったが統計的な有意差は認めなかった。入棟・退棟時の
家族協力度、同居家族数にも差をみとめない一方で入棟・退棟時
のFIMは非自宅群で有意に低かった。
【考察】臨床では「よく顔を
みせる家族がいる対象者は家に帰れている」印象が強かったが今
回の結果はそれを支持するものではなかった。家族背景よりFIM
に見られる重症度やセルフケア能力が自宅復帰に強く影響してい
ることを示唆する結果であった。自宅受入れ可否が一つの要因で
決定するはずはなく、独居と複数同居家族では背景が異なると考
えられる。年齢、同居家族数、重症度などを層別化した上で家族
協力度の影響を再検討する必要があると思われた。
【目的】昨今、地域との結びつきを強く求められるリハビリテー
ション業界において、当院リハビリテーション科では退院後の生
活状況の把握、退院支援の妥当性を評価すべく、追跡調査を行っ
ている。第一報として以下に報告する。
【対象】平成26年10月〜
平成27年4月に自宅退院した患者31名。平均年齢78.7歳±6.4歳。
介護認定を受けた者、または必要性のある者、且つ退院後に介護
保険サービスを利用する者とした。
【方法】退院後1ヶ月を目途
に郵送と訪問による聞き取りにてADL状況(Barthel Index以下、
BI)、活動量(Home-based life-space assessment以下、Hb-LSA)、
介護負担度(日本語版 Zarit 介護負担尺度短縮版以下、J-ZBI_8)、
介護保険サービスの利用状況を調査。【結果】BIとHb-LSAにおい
て正の相関を認めた。BIとJ-ZBI_8において、BI75以下は8.6±7.2
点、BI80以上は2.6±2.5点とBI75以下の群が高い傾向にあった。
また、サービスの利用状況においては退院時に調整したサービス
内容に対して未変更42%、サービス減3%、サービス増55%であっ
た。さらに、BIとの比較にて、BI90以上の群でサービス増52.6%
であった。【考察、展望】BIとHb-LSA及びJ-ZBI_8との比較にお
いて上記の結果から、BIが活動度や介護負担度把握、引いては退
院時支援の一助となる可能性が示唆された。また、サービス利用
状況ではBI高得点者においてもサービス追加希望が過半数以上で
あったことから、そのような患者においても細やかな退院支援が
必要であると考える。
87
O30-6
O31-1
○平田 学(理学療法士)1),蒔田桂子1),一木愛子1),辻村和見2)
○吉村裕子(作業療法士),池田裕哉,肥後香代子
1)神奈川県総合リハビリテーションセンター 地域支援センター
2)神奈川リハビリテーション病院 リハビリテーション工学科
藤聖会 八尾総合病院
長期間にわたる進行性筋ジストロフィー症の父子家
庭を支える取り組み
当院における入院時訪問指導のシステム化とリハケ
アへの反映
【はじめに】平成26年度、当院で入院時訪問指導(以下、訪問指導)
を39名に実施したので報告する。
【対象者】自宅退院が目標で、車で片道約20分圏内居住の必要性が
高いと判断した患者。
【システム】1 転入前、MSWが家族面談し生活環境を把握。2 転入
当日、多職種合同評価にて実施無確定。訪問指導当日、3 当院独自
で作成した家庭訪問用紙使用。4 記録は電子カルテテンプレート
使用。5 間取り図・導線は電子カルテに保存。6 担当スタッフへ
口頭で伝達。7 目標・介入点の統一並びに病棟内生活環境の調整。
【リハケアへの反映】自宅横手すりに応じた居室バデイ設置下での
トイレ誘導。段差解消否定的な家族意見を考慮した病棟内スルー
ン歩行。病前の趣味を活かした個別的な認知課題や園芸活動。病
前の生きがいを考慮した屋外活動等、ハード面、ソフト面のトー
タル的介入を早期から実施。
【データ】退院者37名中33名が自宅退院。自宅退院者のFIM利得
率25年度15.2点→26年度訪問指導有17.6点、FIM効率も0.17点
→0.19点へ向上。アンケートでは、
「導入して良かった」がスタッ
フでは98%、実施患者家族では90%。
【まとめ】業務をシステム化して効率的に実施している。開始後、
リハケアの視点が広がり、FIM値やスタッフ及び患者満足度が向
上した。制度上、担当の専従スタッフが実施出来ない事や加算点
数額が課題といえる。
【はじめに】進行性筋ジストロフィー症は限られた筋力で、巧みな
代償動作や絶妙なバランスで姿勢を保っており、身の回りの環境
が生活に与える影響は大きい。リハ専門相談の関わりにより環境
を調整し、
在宅生活を継続している事例について紹介する。
【事例】
進行性筋ジストロフィー症の30代男性と父親の2人暮らし。四肢
体幹の筋力はMMT1〜2レベルで生活動作全般に介助を要してい
る。脊柱に後側弯の変形があり、弱い筋力で姿勢を保ち動ける範
囲は限られており、長く座って過ごすためには衣服や姿勢の微細
で綿密な調整が必要である。この調整は父親と限られたヘルパー
のみ可能で、レスパイト入院中に拘縮や機能低下をきたした経験
もありその後の利用は難しかった。
【相談内容と支援】市町村保
健師を通じて長期間にわたり節目節目に相談を受けてきた。相談
内容はトイレや入浴の介助負担、車椅子やベッド上座位での坐骨
部の褥瘡や頭頸部の安定について、呼び鈴の選定、ベッド上の尿
処理などであった。身体機能の変化で生じたこれらの要望に対し、
その都度聴取し、複数回の評価・調整の対応をした。ポイントと
なったのは本人の残存能力を活かせること、シンプルで手間がか
からないことであった。
【おわりに】事例が在宅生活を続けるこ
とができるのは本人と家族、その支援者が各々を気遣う絶妙なバ
ランスが保たれているからであり、そのバランスが崩れないよう
にサポートを続けていきたい。
O31-2
O31-3
○小笠原佳奈(看護師)
,加賀谷匠,吉田周子
○田村憲祐(看護師),大江美由紀,國谷賢一,中野克俊
入院中の認知症高齢者の面会に対する家族の思い
回復期リハビリテーション病棟における早期家屋調
査が看護に及ぼす影響〜スムーズな在宅復帰を目指
して〜
青森敬仁会病院 看護部
大阪府済生会 中津病院
【目的】入院中の認知症高齢者の面会に対する家族の思いを明ら
かにし、認知症高齢者の家族に対する看護援助のあり方を検討す
る。
【方法】対象:研究の趣旨に同意を得られた入院中の認知症高齢
者の家族。調査内容:入院中の認知症高齢者の面会に対する思い。
データ収集:半構成的質問紙を用いた面接調査。分析:質的帰納
的分析。倫理的配慮:調査施設の病院長はじめ倫理委員会の承認
を得て実施。
【結果】対象者は患者のキーパーソンの妻・娘・嫁・甥が1人ず
つ、息子3人の計7名。分析の結果、入院中の認知症高齢者の面会
に対する家族の思いは、<知識不足><不安><患者への希望>
<負担><精神的ケア><環境要因>の6つに集約された。
【考察】入院中の認知症高齢者の家族に対する看護援助のあり方
は、患者の現状を正しく理解するために認知症についての正しい
知識の提供や患者の病状の情報提供が必要と考えられた。家族同
士の交流により精神的負担の軽減が期待され、そのような場所の
提供も有効と考える。また、家族が安心して面会できるためには、
家族に対する積極的な関わりが重要であるという看護師の認識や
家族の不安や要望が言いやすい環境づくりが重要であると考えら
れた。
【目的】早期の家屋調査を行うことで、患者・スタッフにどのよう
な影響があるのか明らかにする【研究方法】平成26年4月〜平成
27年3月で入院時訪問指導加算をとった病棟スタッフ、セラピス
トに半構成的面接法によるインタビュー調査を実施。
【結果】入
院初期から環境に合わせた質の高いリハビリや看護が行える。介
護者に在宅復帰への意識付けが早期にできる。他職種と情報共有
ができ役割分担が行え、スムーズな退院調整につながる。訪問に
伴うマンパワー不足や信頼関係が築けていない中で家屋調査に行
くことの困難さがある。
【考察】患者は限られた入院期間で早期
より質の高いリハビリ・看護を受けることができ、介護者への意
識付け、退院支援がスムーズに行うことができることから早期の
家屋調査は有意性があると考える。職種別にアンケート結果を分
析した結果、病棟スタッフは家族との信頼関係の構築や関連職種
との役割分担、退院調整。セラピストは具体的なリハビリ内容の
立案や早期からの問題点の把握、目標設定など異なった視点で調
査を行っていることが分かった。
【結論】早期家屋調査を行うこ
とで患者・介護者・医療者・地域スタッフそれぞれにメリットが
ありスムーズな在宅復帰につながると考えられる。また共通項目
は存在するも調査を行う職種により異なった視点が存在するため
二職種以上で調査を行うことでより質の高いリハビリ・看護・退
院調整が提供できると考えられる。
88
O31-4
O31-5
○岡本賢市(理学療法士)
,林 拓男,臂 宏泰
○森口奈穂子(作業療法士),西田裕司,山田賢次,田代保広
退院前後訪問における理学療法士の役割
回復期リハビリテーション病棟における退院支援 −自宅以外の退院先への退院前訪問指導に関する調
査−
尾道市公立 みつぎ総合病院
社会医療法人生長会 ベルピアノ病院
【はじめに】当院回復期リハビリテーション病棟(以下回復期病
棟)では退院前後訪問を積極的に行い在宅復帰の支援を行ってい
る。今回は障害によりQOLが低下した事例を通して、回復期病棟
における退院前後訪問の果たす役割を考えていきたい。
【事例】
70歳代男性 診断名:中心性脊髄損傷 経過:H26年3月受傷、4
月当院回復期病棟へ転院 同年8月自宅退院 入院時評価:MMT
上肢4レベル、下肢3〜4レベル ADL:FIM65点(運動項目30点、
認知項目35点)
【経過】複数回の退院前訪問により住宅改修や福祉
用具貸与を行うことで自宅内の生活は可能であることが予測され
たが、本人は屋外での活動を希望していた。そこで、屋外の移動
手段として電動カートの使用を検討した。しかし、入院期間内に
屋外への移動手段を含めた屋外活動の自立は困難であったため訪
問リハビリの介入を勧めた。退院後、訪問リハビリスタッフとと
もに退院後訪問を実施し、退院時に設定した環境に対して本人・
家族を交えた意見交換や今後のリハビリテーションの展開につい
て情報交換を行った。
【おわりに】限られた入院期間の中で身体
機能だけではなく、QOLの向上を視野に入れたリハビリテーショ
ンの展開は重要である。退院後訪問は、生活場面の評価のみなら
ずセラピストとしての介入の見直しの場になる。在宅生活を意識
したリハビリテーションの展開を行うには退院後訪問は重要であ
ると考える。
【はじめに】当院回復期リハビリテーション病棟(以下回リハ)で
は、在宅復帰を目指すに当たり退院前訪問指導を実施し、必要に
応じて環境調整や、家庭での生活の仕方等の指導を行っている。
近年、地域包括ケアの推進とともに高齢者の住まいが整備され、
自宅以外の退院先の選択肢が増えてきている。今回、当院回リハ
退院後にサ−ビス付き高齢者住宅や有料老人ホームへの入居を予
定している患者に対する退院前訪問指導実施の現状について調査
した【対象】平成24年4月〜平成27年3月に当院回リハを退院しサ
−ビス付き高齢者住宅、有料老人ホームへ入居した患者51名【方
法】退院前訪問実施群、非実施群を抽出。退院時のADLにより、
訪問実施群を、A群:移動、トイレ動作に介助が必要、B群:入浴以
外のADL自立に分類。各群の指導内容について比較・検討した【結
果】退院前訪問実施群は19名で、A群:11名、FIM平均点運動61.5
点、認知24.2点。B群:8名、運動76.3点、認知27.5点。居室内での
動作確認、環境調整といった指導は両群に共通であった。A群で
は施設スタッフとの移動動作指導、B群では簡単な家事動作や施
設周辺での屋外移動評価・指導を実施していた【考察】退院前訪
問指導の実施は37.2%で、在宅復帰者より低かった。実際の場面
での介助指導や、新しい生活環境での余暇活動や役割の獲得を視
野に入れた環境評価が可能となるため、在宅復帰者と同様に退院
前訪問指導を実施する必要があると考える。
O31-6
O32-1
○伊藤進一(理学療法士)
,岡村 愛,宮野慎太郎,奥川達也,
山田和典,高橋雄太
○児玉 努(作業療法士)1),益満美寿2)
一般社団法人巨樹の会 八千代リハビリテーション病院
1)下関リハビリテーション病院 リハビリテーション科
2)熊本保健科学大学 保健科学部 生活機能療法学専攻
回復期病棟退院後の生活状況・歩行能力の変化につ
いての報告〜追跡調査を実施して〜
在宅復帰するために患者家族が望む患者の活動につ
いて
【はじめに】当院では、H25年6月以降に自宅退院した患者に対し
退院から1か月後、3か月後、6か月後に、電話での追跡調査を実施
している。今回は、調査項目の内、デイサービス(以下DS)
・デイ
ケア(以下DC)
・訪問リハの利用状況、生活場所、FIM歩行得点、
自主トレの有無の変化を検証した。その結果を報告する。
【方法】
対象は、H25年6月〜 H27年3月の間に追跡調査可能であった介護
保険対象患者74名。退院時と1か月後、
3か月後、
6か月後の変化を、
DS・DC・訪問リハの利用状況、生活場所はFisherの直接確率法、
自主トレの有無はχ2乗独立性検定、FIM歩行得点はWilcoxonの
符号付順位和検定にて比較。有意水準は5%未満とした。本調査
はヘルシンキ宣言に沿って行った。
【結果】DS、DC、訪問リハ、
生活場所、自主トレは退院時と1か月後、3か月後、6か月後全ての
比較で有意差が無かった(p>0.05)
。FIM歩行得点は、退院時と
1か月後の比較で有意差がみられた(p<0.05)
。退院時と3か月
後、6か月後の比較では有意差が無かった(p>0.05)
。
【考察】退
院後は入院中に獲得した能力、生活リズムを維持することが大切
となる。今回の結果では、検証項目には概ね変化が無かった。ま
た、追跡調査結果をみると、退院後1か月〜6か月まで、1日の生活
内容も大きく変化していない患者が多かった。これらから、今回
の対象患者に関しては、退院後の生活について適切なアドバイス
ができていたのではないかと考える。
【はじめに】当院の回復期リハ病棟では365日体制で積極的に在宅
復帰を目指し取り組んでいる。在宅復帰するために患者のニーズ
だけでなく、患者家族のニーズに対応することも重要であると考
えている。そこで今回、患者家族が望む患者の活動と介護不安に
ついてアンケート調査を行ったので報告する。
【対象と方法】平成26年6月〜9月の間に、当院の回復期リハ病棟
に入院中の患者で在宅復帰に向けた退院調整を進めた患者家族
87名を対象に、在宅復帰に関する多肢選択式アンケート調査を実
施した。対象者には事前に趣旨説明を行い同意が得られた上で配
布し、回答を得た。
【結果】介護不安のある患者家族(以下、不安群)は70.2%、介護不
安のない患者家族(以下、非不安群)は29.8%であった。在宅復
帰後、患者に自立を求める活動について不安群と非不安群とを比
較すると、不安群、非不安群とも食事、排泄、歩行、意思疎通の自
立を求める割合が高かった。また不安群に比べ非不安群では、家
事や車の運転などの手段的日常生活活動や入院前に行っていた趣
味・余暇活動の獲得を求める割合は高かった。
【考察】在宅復帰に対して約7割の患者家族は介護不安を抱えてい
るが、介護不安の有無を問わず、介護頻度・量が多い日常生活動
作に対する自立を期待しており、介護不安が無い患者家族は、入
院前に行っていた手段的日常生活活動に対しても自立を期待して
いる傾向があることが示唆された。
89
O32-2
O32-3
○岡村大二郎(作業療法士)
○田中意子(理学療法士),百武大志,田中健太,杉野由美子,
藤野泰祐
下関リハビリテーション病院 リハビリテーション科
医療法人社団シマダ 嶋田病院 技術部 リハビリテーション科
自宅退院を決定した患者家族の不安に関する調査
回復期リハビリ病棟に入院し就学支援を行うことで
意欲が向上した一症例
【はじめに】自宅退院決定後の介護に不安を抱く家族と、抱かない
家族の傾向をアンケート調査にて明らかにすることで、退院まで
に有効な家族支援ができると考えた。
【方法】平成26年6月から9月に自宅退院を決定した87名の患者家
族に調査を実施した。全9項目で選択回答とした。
【結果】50名(回収率57.5%)から回答を得た。退院後の介護に不
安があると答えた34名と不安がないと答えた17名を不安あり群
(以下あり群)と不安なし群(以下なし群)の2群に分けた。介護経
験の有無はあり群の55%、なし群の56%が「ない」と答え、住環
境の不安はあり群の50%、なし群の12%が「ある」であった。経
済面の不安はあり群の44%が「分からない」
、なし群の75%が「な
い」で、退院時の身体機能面はあり群の45%、なし群の6%が「不
十分」、認知機能面はあり群の31%、なし群の0%が「不十分」と答
えた。自宅退院時にあり群の67%、なし群の87%が「歩行の自立」
が必要と考え、自宅退院時を決定する際にあり群の52%、なし群
の56%が「患者本人の希望」と答えた。
【考察】調査結果から、退院決定後も自宅での介護に不安を感じる
家族には、退院後の具体的な生活がイメージできない漠然とした
不安を抱いていることが考えられた。今後は退院後の生活に対す
る不安を具体的に評価し、退院後に相談できる体制の強化が必要
と考えられる。
【はじめに】急性発症後意欲低下があった症例に対し、就学支援を
行うことで意欲向上が図れた経験をしたのでここに報告する。
【症
例紹介】10代男性。過呼吸、四肢のしびれと硬直が出現し救急搬
送、精査の結果ギラン・バレー症候群と診断。21病日回復期リハ
ビリ病棟へ転棟。【経過】入院時MMTは上肢3、下肢2。握力は右
15.2kg、左12.2kgと低下。下肢腱反射消失していた。FIMは99点。
回復期転棟時MMTは上肢4、下肢3、握力右29.9kg、左26.6kgと
改善。65病日には上肢支持で立位保持3秒可能も歩行困難であっ
た。長期入院により生活リズムが崩れた状態であったが、就学に
向けて90病日より病棟離床開始し勉強やPC操作は卓上で行なっ
た。97病日就学を目的に家屋調査行い、101病日車椅子にて電車
乗降練習を家族とともに実施し、105病日より半日登校開始した。
120病日松葉杖を使用し乗車練習行い、142病日1本杖での自宅内
動作、通学路の移動練習をして試験外泊した。156病日に自宅退
院しFIMは120点。外来リハビリ継続し188病日独歩獲得し、230
病日に外来リハビリ終了した。MMT上肢5、下肢5、体幹4、蹲踞
姿勢も可能となり、体育の授業に参加できるようになった。
【考察】
通学や授業を受けるための身体的耐久性など、実用的な場面での
訓練を能力に応じて実施した。復学希望も強く目標が明確になっ
たことで意欲向上が図れた。社会復帰への具体的な道筋をつける
事が身体的・精神的回復の一助となると考える。
O32-4
O32-5
○大原裕子(言語聴覚士)1),立石雅子2),後藤多可志2),金森毅繁1),
小關 剛3),長澤俊郎4),小關 迪5)
○吉村史郎(理学療法士)
失語症者の介護者の介護負担感に対するコーピング
について
脳性麻痺による脊椎性頚椎症を呈する事例に対し在
宅での安全な移乗動作獲得を目指した一症例 〜訪
問リハビリテーションの役割〜
1)医療法人社団筑波記念会 筑波記念病院 リハビリテーション部
2)目白大学 保健医療学部 言語聴覚学科,3)医療法人社団筑波記念会 筑波記念病院 婦人科
4)医療法人社団筑波記念会 筑波記念病院 血液内科,5)つくば総合リハビリテーションセンター
株式会社アール・ケア 訪問看護ステーション ママック
【はじめに】度重なるベッドからの転落防止を図るため、訪問リハ
ビリテーションを通じ、本人に合わせた福祉用具作成、環境設定
を行い、安全な移乗動作獲得へ至ったケースを担当したのでここ
に報告する。【事例紹介】65歳、女性、脳性麻痺、頚椎性脊椎症(四
肢不全麻痺)、要介護4、FIM91点、夫と2人暮らし、
【経過】介入時、
頻回にベッドからの転落が発生していた。転落回数は2〜4回/
日であり夜間帯に多く発生、転落時は夫の介助を要していた。車
椅子からベッドへの移乗後、端座位の状態から臀部を後方へ移動
させる際に、足元側にベッド柵が無いため、プッシュアップが適
切に行えておらず、転落していると考えた。足元側へベッド柵使
用を検討したが、下肢を持ち上げる際の妨げとなるため、設置は
不適切だった。また、他の福祉用具を検討するも本人に適応せず
導入には至らなかった。
【取り組み及び結果】本人の移乗動作に
適合するように、寸法、材質、コスト面、安全面を考慮し、簡易手
すりを自己作成した。その結果、ベッドからの転落を防止するこ
とが出来た。
【まとめ】本症例においては、既存の福祉用具では本
人の安全な移乗動作の獲得は難しい状況であったが、既存の製品
にとらわれず症例に適合する用具を作成したことで、安全な動作
獲得に至った。動作の分析とともに、個々の状態に適合する用具
の作成や工夫をすることも、訪問リハビリテーションにおける重
要な役割の一つと考える。
【はじめに】コーピングとは「ストレスを感じた状況に対しストレ
スの影響を最小限に留めようとする努力」と定義されている。本
邦では失語症者の介護者の介護負担感に対するコーピングの研究
はほとんどなく、今回コーピングの状況を検討した。
【方法】失語症者とその介護者34組を対象とし、介護者にコミュ
ニケーション障害に焦点を当てた介護負担感に関する質問紙の
COM-Bとコーピングに関する質問紙の「介護ストレスに対する
対処方略尺度」への回答を求めた。
「介護ストレスに対する対処
方略尺度」を構成する5つのコーピングカテゴリーを説明変数、
COM-Bの各4項目を目的変数としカテゴリカル回帰分析を行っ
た。また、COM-Bの結果より介護負担感の高い群と介護負担感
の低い群の2群に分けMann-WhitneyのU検定を用い、コーピング
の状況を比較した。
【結果】自分自身の時間を持ち気分転換を図る気分転換型のコー
ピングがCOM-Bの「生活に関する介護負担感」において有意に影
響を与える因子として抽出された(p = .004)
。また、介護負担感
の高い群では気分転換型のコーピングカテゴリーの使用が有意に
少なかった(p=.019)
。
【考察】失語症者の家族の生活に関する介護負担感の軽減には、気
分転換型のコーピングが有効であることが示され、失語症以外の
障害の介護者の介護負担感に対するコーピングの先行研究の結果
と一致した。
90
O32-6
O33-1
主介護者と、その他同居家族の介護負担 〜 Zarit介
護負担尺度の相違〜
「できる」を積み重ねる 地域で生きるために本当に
必要な作業とは?
○高橋暢介(作業療法士)
○西山達也(作業療法士)
医療法人健仁会 益子グループ 介護老人保健施設
ミレニアムマッシーランド リハビリテーション科
一般社団法人巨樹の会 明生リハビリテーション病院
【目的】介護負担を評価するものの一つに、Zarit介護負担尺度 日
本語版(以下J-ZBI)がある。今回、主介護者にのみ介護負担が集
中していないかを、その他同居家族の介護負担と比較することが
目的である。
【方法】1.対象:本研究の参加に同意を得た、当デイ
ケア利用者の6家族(主介護者6名・その他同居家族6名)2.方法:
調査期間は、平成27年3月26日〜4月10日とし、12名に対して封
書にて配布・回収をした。封書は10通(回収率83.3%)
。3.分析
方法:全体分析では総得点を単純集計表、点数分布は棒グラフ化。
また詳細分析では、下位尺度としてのPersonal strain
(以下PS)
とRole strain
(以下RS)にて比較。
【結果】全体分析での単純集計
表によるJ-ZBIの総得点(主介護者・その他同居家族)では、A家
族(20点・47点)
、B家族(21点・25点)
、C家族(17点・21点)、D
家族(45点・42点)
、E家族(15点・未回収)
、F家族(未回収・63点)。
詳細分析では、主介護者のPSは『思わない』
・
『たまに』で、RSは『思
わない』
で、
各々4回答。その他同居家族のPSは、
『時々』
・
『よく』で、
RSは『たまに』で各々3回答であった。
【考察】J-ZBIの総得点が主
介護者よりその他同居家族の方が高値であった原因は、中途半端
な家庭内役割及びそのために生じる介護方法の経験値や熟練度の
差と考えられる。一方、主介護者では詳細分析の結果より、実際
の介護場面の多さがRSよりPSが介護負担に繋がったと考える。
はじめに中大脳動脈(左中心前回-後回)脳梗塞後に右上下肢に片麻
痺が残存した症例に対しリハビリテーションを実施。急性期、訪
問リハの経過を踏まえ報告する。症例70歳代、男性、右利き。既
往歴:心房細動、高血圧 妻、長女との三人暮らし 入院時Hope:歩
行で散歩ができるように経過回復期:Br.s入院時上肢2手指1下肢4
退院時上肢4手指2下肢6 発語失行を認めた。介入当初、右上肢、
不整地歩行の練習から介入。右手使用の習慣化を目的にアクリル
コーンを用いて視覚的な段階づけを行った。コーンの高さ、個数
から正のフィードバックを繰り返し、意欲的に取り組まれるよう
になった。入院2ヶ月よりマシンでの自主トレーニングを開始。
以降退院までリハ以外の時間で積極的に行なっていた。入院3ヶ
月から退院時まで外出、外泊7回実施。退院後に向けた自主トレー
ニングも定着が図れた。畑作業に向け、手指固定用ベルトを義肢
装具士と仮合わせを繰り返し、装着の練習も行なった。入院5ヶ
月には外出に同行し、畑での移動、道具の使用を確認。手指固定
用ベルトの購入を提案した。訪問リハ:利用開始時Hope畑を再開
したい 退院後1ヶ月で自宅から1km離れた畑には徒歩での往復が
可能となり、デイサービスにてマシントレーニングは継続されて
いた。考察地域での生活には入院中から対象者にとって本当に必
要な作業、IADLに対してのアプローチが必要だと感じた症例で
あった。
O33-2
O33-3
○森屋崇史(理学療法士)
,東野恵士
○有川康二郎(理学療法士)1),小林雅彦1),渡邉恵介1),越田由香1),
長田千晶1),高山輝彦2),富田 寛3)
もっと外に出かけましょう!!〜電車利用で気付い
た要素〜
生活期リハの立場から回復期リハに求めること
〜退院前後で在宅生活の課題が異なった症例による
考察〜
医療法人社団六心会 恒生病院
1)公立つるぎ病院 医療技術部 リハビリテーション室
2)公立つるぎ病院 内科,3)公立つるぎ病院 リハビリテーション科
【目的】回復期病院で電車利用した長時間の外出訓練は、時間や場
所の条件により困難な場合がある。その為、退院してから電車利
用を避け、QOL低下を余儀なくされる患者も少なくない。当院
は、徒歩5分に最寄り駅が存在し、電車利用できる環境が整ってい
る為、積極的な外出訓練を目指している。そこで考察する機会を
得たので報告する。【方法】症例は右被殻出血、50歳代の男性であ
る。発症後4ヶ月後に外出訓練を行った。院内ADLは自立レベル
(FIM116点)、屋外歩行はT字杖使用し監視レベルであった。高次
脳機能障害は、注意障害・遂行機能障害を呈した。事前にSTと入
念な準備を行ない、
地理や行程の表出はスムーズに行えた。
【結果】
問題は電車利用時に発生した。身体機能要素は、切符処理・電車
とホームの段差・駅構内の階段昇降であった。高次脳機能要素は、
切符購入・女性専用車への乗り込み・ホームの選択ミスであった。
【考察】本症例は外出訓練を切欠に、非予測的な高次脳機能障害の
問題を露呈し自覚した。院内生活は環境の慣れもあり、注意や記
憶の負担、エラーの気付きが少なかった。しかし慣れない外部環
境では、社会性が要求され、多くの刺激と流動的な視覚情報処理
に加え、歩行の不安定性にも注意を向ける必要がある。結果的に
遂行機能の低下を招いたと考えた。電車利用は、院内で経験でき
ないエラーを患者自身が気付き、新たな問題点を解決できる重要
なアプローチであると考える。
【目的】退院前後で在宅生活の課題が大きく異なった症例を通し、
回復期リハで求められる取り組みについて検討する。
【方法】症例は脳梗塞の80代男性で要支援2である。発症4ヵ月後
に回復期病棟を退院し訪問リハを開始した。在宅生活の課題と
して、退院前カンファレンスでは夜間の排泄や入浴などのADL項
目が問題とされたが、退院後の生活では日中の過ごし方が問題で
あった。入院前に行っていた趣味のゲートボールや妻の介護がで
きなくなり、以前に比べ退院後の活動性は大きく低下した。それ
に伴い既往の膝痛が増強し、膝痛のため活動が制限されるという
悪循環に陥った。この対策として訪問リハでは散歩の啓発、自主
トレの指導による活動性の改善を図った。さらに、ゲートボール
の再開を提案し、再開のための体作りを日々の運動の動機付けに
した。
【結果】散歩、自主トレを毎日行うようになり、活動性は大きく向
上し疼痛も消失した。体力が付いたことで自信を取り戻し、ゲー
トボール再開に向けての練習を開始した。
【考察】回復期リハでは在宅復帰やADLがゴールとなりがちであ
る。しかし、退院後は自立支援と共に日常生活の活動を高め、家
庭や社会への参加を可能にすることが重要な課題となる。これら
の課題を解決するため、入院中より退院後の過ごし方や家庭内の
役割、生きがいに配慮した介入が必要である。
91
O33-4
O33-5
○小林公人(作業療法士)1),宮武 慎2),酒井克子1)
○福井亜希子(理学療法士)
1)社会医療法人生長会 介護老人保健施設 ベルアモール リハビリテーション科
2)社会医療法人生長会 府中病院 作業療法室
医療法人社団甲友会 西宮協立訪問看護センター
事例・環境への包括的支援の重要性〜失われていた
役割の再獲得に向けて〜
不自由な環境で「自由に外出できる暮らし」を目標
とする一症例
【はじめに】入院中に膝関節痛が出現し、外出条件として必須であ
る階段昇降能力を満足に得ないまま退院に至ったケースを担当す
る機会を得たので報告する。
【事例紹介】50代の女性。発症以前
は職業の関係上、1年の半分以上を海外で過ごし、ホームパーティ
を主催する等とても活動的であったが、心臓弁膜症手術後に脳梗
塞を発症し左片麻痺。上肢は弛緩性麻痺のためアームスリングを、
下肢は軽度痙性があるためAFOを使用。屋内はT字杖使用にて約
10m見守り歩行、屋外は車椅子にて全介助。入院中、階段昇降の
練習は行っていたが、左膝関節に疼痛出現の為中止。以降、訪問
が開始されるまで約3ヶ月間、階段昇降は非実施。【経過】膝関節
の疼痛を予防する為に自宅内での段差昇降から実施。その後、屋
内の階段、屋外の階段と段階を経て練習を繰り返し行った。訪問
を開始した直後は身体のメンテナンスを行ってから練習を行って
いたが、
「自由に外出できる暮らしをしたい」と目標を定めてか
らは、バイタルサインを測定した後、そのまま屋内外の歩行・階
段昇降練習を行いフィードバックするようにプログラムを変更し
た。【まとめ】セラピストによる身体のメンテナンスを行わずに屋
内外の練習をすることにより、普段の歩行に近い状態が確認でき、
適宜フィードバックが可能であった。整えた環境、身体状況で練
習することも重要であるが、より日常に密着した練習を行うこと
が必要と感じた症例である。
【はじめに】今回、事例とそれを取り巻く環境へ包括的に介入を
行った結果、病前に失われていた夫の為に料理をするという生活
行為が形成され、妻としての役割を再獲得した。退所後もその役
割を継続して担う事ができ、その人らしい生活を送ることが出来
ている事例を報告する。
【事例紹介】A氏 80代女性 転倒による骨折を繰り返し、X年Y
月Z日化膿性脊椎炎を発症し入院。Y+8月当施設へ入所。運動障
害・転倒恐怖感・自己効力感の低下を認める。FIMは59点。転倒
恐怖感・自己効力感の低下に加え、夫の過介護による影響により
妻としての役割を失っていた。
【経過】介入当初、自己効力感の低下や夫の外的期待により、事
例の価値のおく生活行為(夫の為に料理をする)に対して消極的
だった。評価で得た結果をもとに事例が価値をおく生活行為への
介入を段階付けて行った。また同時に夫の関心を評価し、退所を
見据えて実際の生活行為の成功体験をOT場面の見学等を交えな
がら行い、夫の関心と一致できるよう支援した。
【 結 果 】Z+199日 退 所。 退 所 時FIMは86点 に 改 善。
「ほぼ一人
で出来る」と自己効力感が変化。妻としての役割を再獲得した。
Z+229日、事例・夫に対して聴取を行った結果、継続してその役
割を担う事ができていた。
【考察】生活行為の障害を評価し、事例を取り巻く環境(夫)に対
して介入したことが重要であったと考える。
O33-6
O34-1
○古畑志保(作業療法士)
,斎藤正洋,岩本記一
○永岡直充(理学療法士),今田 健
訪問リハビリテーションでの環境調整によって活動
と参加が充実した重度左半側空間無視患者の一例
麻痺側立脚期の骨盤帯の動揺を呈する患者1例に対
し、股関節周囲筋筋活動のタイミングに着目した筋
電学的検討
東京都リハビリテーション病院 地域リハビリテーション科
社会福祉法人こうほうえん 錦海リハビリテーション病院 リハビリ
テーション技術部
【症例】A氏、60歳代、女性、夫と二人暮らし。X年12月、脳梗塞
により左片麻痺を呈し、X+1年4月、訪問リハ開始となる。左上
下肢の麻痺はごく軽度であるが、重度の左半側空間無視と注意障
害が残存している。
【経過・介入】初回訪問時は、退院から1週間であり、在宅生活へ
の混乱や不安が強い印象を受ける。ADLやIADLに関して「退院
してから何をするにもうまくいかない」と自信喪失している様子
がみられる。そこで、生活行為向上マネジメントを用い、更衣動
作や洗濯物干しの使用物品・環境の調整を行うことにより、失敗
の少ない方法を習慣化するよう介入を行う。介入から1ヶ月が経
過し、調整された環境下での更衣動作や洗濯動作が徐々に定着し
てくる。また、本人より、「好きな時に楽しくピアノを弾きたい」
「ボランティア活動を再開したい」との発言があり、前向きな様子
がみられる。今後も更衣動作や洗濯動作の習慣化を目指し、さら
にはピアノ演奏や外出練習も行いながら、A氏らしい生活の獲得
につなげていきたい。
【まとめ】本症例は退院直後で在宅生活に不安を抱え、生活で多く
の失敗を経験し、自信を喪失している状態である。OTが環境を
調整し、失敗をなくすよう関わることで、少しずつ落ち着きと自
信を取り戻し、活動のみならず社会参加の意欲向上につながった
と考える。今回の発表に関して、本人・家族より同意を得ている。
【はじめに】麻痺側立脚期の安定化に向け、股関節周囲筋の筋力強
化練習を重要視し、歩行練習と併用しているが、麻痺側立脚期の
安定化が得られなかった患者を経験した。歩行時の筋出力発揮の
タイミングの視点から、健常成人と患者の違いを筋電図学的に検
討した。
【対象および方法】対象は、脳梗塞を発症した男性1例と健常成人
4例であった。歩行動作時の大殿筋上部線維(以下、UGM)と下部
線維(以下、LGM)、中殿筋(以下、GMM)の筋活動を無線筋電計
km-818MTにて計測した。階級幅10%で正規化処理し、患者は積
分筋電図、健常成人は相対筋電図を求めた。歩行周期における各
階級間の差についてTukeyの多重比較検定を行った。
【結果】患者のUGM、LGMの筋活動は90%と100%の間で有意に
増加し、100%と10%の間で有意な低下を認めた。GMMは90%と
100%の間で有意な増加を認めた。健常成人でUGM、GMMの筋
活動は100%と10%の間で有意に増加し、10%と20%の間で有意
な低下を認めた。LGMは90%の時期から有意な増加を認めた。
【考察】荷重が最も高まる踵接地期の安定には、股関節の矢状面と
前額面の安定を担うUGM、LGM、GMMが同時期に活動すること
が必要と考えられる。患者は遊脚後期に3筋の筋活動がピークを
示し、3筋の活動時期の相違が患者の麻痺側立脚期の骨盤帯の動
揺を引き起こしている要因の1つと考えた。
92
O34-2
O34-3
○永田勇樹(理学療法士)
,高島市郎,大籏章人,宮腰弘之,
木村知行
○渡邊幸久(理学療法士),水上憲昭,鈴木優希,大橋史弥,
森山俊男
医療法人寿人会 木村病院 リハビリテーション部門
栃木県医師会 塩原温泉病院
脳血管障害患者の中殿筋に対して随意運動介助型電
気刺激装置を使用した一症例
IVESによる随意運動促通後にHALを用いたことで
移乗動作能力が向上した症例
【はじめに】今回、回復期の右片麻痺症例に対し、随意運動介助型
電気刺激装置(以下、IVES)を麻痺側中殿筋に使用した結果、歩行
能力に改善を認めたため以下に報告する。
【症例紹介及び方法】
70歳代男性、診断名は左被殻梗塞。介入時評価はBrunnstrom
recovery stage(以 下、BRS)右 下 肢5、Functional Independence
Measure(以下、FIM)99点。杖歩行は監視レベル。歩容は麻痺側
中殿筋が低緊張で、下肢の振り出しは内転筋優位であった。単一
症例研究をBAB法とし、各期間を3週間とした。B期では通常PT
プログラムに加えIVESのパワーアシストモードを用いた歩行練
習とした。A期はIVESを使用せずBと同様なプログラムを実施。
B′期はB期と同様に実施した。週3〜5回治療前に10m歩行所要時
間、右片脚立位保持時間、Timed Up & Go Test(以下、TUG)を比
較した。
【結果】各結果を介入時、B期後、A期後、B′期後の順に表
す。10m歩行所要時間(秒)は24.1、11.9、9.8、7.3、片脚立位保持
(秒)は2.4、2.1、2.0、7.6、TUG(秒)は25.6、8.8、7.8、6.7であっ
た。最終的に杖歩行自立となり、FIMでは118点と改善を認めた。
【考察】福井らは麻痺側中殿筋に対して間歇的電気刺激を実施し、
歩行速度や片脚立位時間等が改善したと報告しており、今回も同
様な結果を得た。IVESは動作に同期して電気刺激を行うため、中
殿筋の機能的な改善を促したと考える。結果、骨盤帯の水平保持
が可能となり下肢クリアランスが改善されたことが歩行能力の向
上に繋がったと推察する。
【はじめに】当院ではH23年よりロボットスーツHAL福祉用(以下
HAL)と随意運動介助型電気刺激装置(以下IVES)を導入している。
今回HAL使用前にIVESを使用し、移乗動作能力が向上した症例
を経験したので報告する。【症例】70歳代男性。脳梗塞。左片麻
痺。発症2ヵ月後当院入院。下肢BRS2。表在・深部感覚重度鈍麻。
移乗動作要介助。移乗動作について、起立時、麻痺側ハムストリ
ングスの動作時筋緊張が亢進し、膝関節の分離した伸展運動が阻
害され、骨盤の後方回旋を生じ、立位時には麻痺側での支持が不
十分で介助を要した。入院から1ヵ月経過も移乗動作のADLに変
化はなかった。HAL単独介入では、立位時に麻痺側への荷重を促
しても大腿四頭筋の生体電位が弱く、HALが十分に機能せず、治
療効果を得る事ができなかった。【方法】3日間連続で各訓練日毎
に、麻痺側の大腿四頭筋にIVESを使用した後、HALを利用した訓
練を実施。IVES、HALともに訓練内容として膝伸展、起立訓練、
立位訓練を実施。この間通常の理学療法は非実施。【結果】3日間
のIVESとHALによる訓練後、立位時の麻痺側大腿四頭筋の生体
電位が増大した。さらに、麻痺側への荷重量が増大し、移乗動作
時の介助量が軽減した。【考察】IVESの電気刺激による大腿四頭
筋の促通により、随意性が改善傾向を示し、生体電位が増大した
と考える。生体電位信号が微弱でHALが十分に機能しない場合、
HAL訓練前にIVESを使用する事で、HALの治療効果を高められ
る可能性が示唆された。
O34-4
O34-5
○清田直人(理学療法士)
○稲嶺海士(理学療法士)
特定医療法人北九州病院 北九州八幡東病院
医療生協かわち野 東大阪生協病院 リハビリテーション室
重度の意識障害,両片麻痺を呈した症例〜 CPGを意
識した歩行練習の有用性〜
移乗動作とステップ動作時の患側下肢にかかる荷重
率を比較して
【はじめに】脳卒中後症例では、重度の意識障害が持続すること
により、ADLの向上が妨げられることが少なくない。長田・内
山は脳卒中後意識障害を呈した症例に対し、歩行練習等の荷重
下での体性感覚入力が意識の改善に有用であるとしている。今
回、右被殻出血後、重度の意識障害を呈した症例に対し、荷重
下での体性感覚入力を意識した歩行、すなわちCentral Pattern
Generator(以下CPG)を意識した歩行練習を行った。その結果、
意識の改善、移乗動作の介助量の軽減が得られたので報告する。
【症例紹介】60歳代女性。既往歴:左被殻出血。診断名:脳出血。
現病歴:右被殻出血。開頭血腫除去術を施行後、当院回復期病棟
へ入院。JCS200〜20、基本動作、ADL共に全介助。
【経過】入院
時より、関節可動域・座位練習を実施するも、瞬間的に開眼する
のみであった。2ヵ月後、両下肢に長下肢装具を装着し、CPGを
意識した歩行練習を開始したところ、歩行中は持続的な開眼が見
られた。5ヶ月後、JCS20〜3となり、歩行は左下肢装具なし、右
下肢knee brace+短下肢装具装着下で可能となった。結果、移乗
動作の介助量は軽減し、家族介助での移乗動作が可能となり、自
宅退院となった。【考察】今回、CPGを意識した歩行練習により、
意識の改善を認め、下肢の支持性向上により、移乗動作の介助量
の軽減を図ることが出来た。CPGを意識した歩行練習は有用であ
ることが示唆された。
【はじめに】移乗動作は、多方向ステップを組み合わせた動作であ
るが、多方向ステップでの動的な荷重率を測定した研究はまだ少
ないとされている。今回、脳卒中片麻痺患者を対象とし、IMAC
(株)の靴型荷重測定装置(ステップ・エイド)を用いて動的な荷
重率の測定を行った。多方向ステップの課題としてFour Square
Step Test(以下FSST)の前後左右のステップ動作を使用した。動
的な荷重率を測定することで実際の移乗動作とステップ課題での
荷重率の変化を調べ、方向別のステップと移乗時の荷重率に関連
性があるのかを検討した。
【対象】当院回復期病棟に入院中の患者で、認知面において、指示
理解が可能な方で、移乗が近位監視レベル以上の中枢疾患6名。
【方法】実際の移乗動作とFSSTのステップ動作を実施し、その時
の荷重を測定した。その際、動画撮影も併用。動的荷重を測定す
るために、ステップエイドを使用した。
【結果】移乗動作では、6名のうち3名が側方ステップ時に患側下肢
にかかる荷重率が最も低かった。移乗動作とステップ課題での荷
重率を方向別で比較すると、6名全てにおいて側方ステップ時の
荷重率の差が最も大きい結果となった。発表時に詳細を含め、考
察を報告する。
93
O34-6
O35-1
○大家佑貴(理学療法士)
,平塚健太
○加藤省吾(その他)1),小嶋純平1),井手 睦2),水流聡子1),
飯塚悦功1),黒木洋美3),進藤 晃4),橋本康子5)
監視歩行可能な脳卒中片麻痺患者の歩行練習におけ
る下肢CI療法−TUG、10m歩行、下肢荷重量を指標
とした歩行機能改善効果−
脳卒中患者のリハビリ介入における基本動作獲得過
程の設計 −8つの能力要素に着目した獲得過程の
可視化−
医療法人社団 医修会 大川原脳神経外科
1)東京大学,2)聖マリアヘルスケアセンター,3)飯塚病院
4)大久野病院,5)千里リハビリテーション病院
【はじめに】監視歩行可能な脳卒中右片麻痺患者の歩行練習にお
いて下肢CI療法を実施した。下肢CI療法の歩行機能改善効果を
検討した。
【症例紹介】30歳代男性。左被殻出血(出血量19.8cc)。
CI療法介入時評価は右片麻痺(Br stage上肢手指2、下肢3)
。歩
行能力は金属支柱付き短下肢装具(以下、AFO)を使用しFAC3、
TUGcom:23.81秒、TUGmax:19.66秒、10m歩 行:16.92秒、
下 肢 荷 重 量 は 安 静 時、右25kg左45kg。 最 大 荷 重 時、右44kg左
64kgであった。【介入】第37病日目より5日間CI療法を実施した。
DONJOY BRACEで非麻痺側膝関節伸展位に固定し、麻痺側は
AFOを使用し歩行練習を15分間3セット実施した。介入前後で歩
行機能を比較した。歩行機能の指標はTUGcom、TUGmax、10m
歩行、安静時と最大荷重時の下肢荷重量とした。また精神面を考
慮し苦痛時は中断可能であることを伝えた。
【結果】TUGcom:
18.19秒、TUGmax:16.21秒、10m歩行:15.19秒。下肢荷重量
は安静時、左右共に35kg、最大荷重時、右56kg左66kgであった。
最終日は苦痛の訴えにより中止となった。
【考察】各歩行機能検
査の改善と麻痺側下肢荷重量の増大を認めた。膝関節を固定する
ことで非麻痺側のぶん回し歩行となり、麻痺側への重心移動を強
いられたことが要因と考えられる。短期間の介入で改善を示した
が、苦痛により中断することもあった。機能改善を実現するため
の適切な訓練期間や訓練量、精神面への配慮方法に関して検討す
る必要があると思われた。
【目的】脳卒中患者のリハビリ介入における基本動作獲得過程の
可視化・標準化を目的とする。寝返り、起き上がり、端座位保持、
立ち上がり、立位保持、移乗、歩行、という一連の基本動作の獲得
過程は連動している。このうち、訓練時期や求められる能力が特
に類似している起き上がり、端座位保持、立ち上がり、立位保持、
歩行の5つを対象として、動作を獲得していく過程の設計を試み
た。
【方法】患者の能力を、体幹、麻痺側下肢、非麻痺側下肢の3軸に分
類して計8個の能力要素を設定し、それぞれ3段階のレベル設定を
行った。各動作に対して、補助具、人的介助を考慮した動作パター
ンを複数設定し、動作パターンごとに患者に求められる“必要能
力”を設定した。さらに、5つの動作に対する動作パターンの組み
合わせを考慮して必要能力を集約し、91個のユニットと24個のユ
ニットグループを設定し、体幹、麻痺側下肢、非麻痺側下肢の3軸
上に配置し、獲得過程を可視化した。
【結論】聖マリア病院で数件の症例情報をレトロスペクティブに記
録し、ユニットとユニットグループの妥当性を初期検証した。主
に片麻痺と廃用性筋力低下を持つ患者に対しては解釈が容易だっ
たのに対して、失調や感覚障害などの障害も持つ患者に対しては
解釈が一部難しいことが考察された。今後は、片麻痺と廃用性筋
力低下に対する介入をベースとして、他の障害を持つ場合のカス
タマイズを検討していく予定である。
O35-2
O35-3
○平野雄一(理学療法士)
,石野洋祐,大塚琴美,釘本 充,
杉山俊一
○梶山 哲(理学療法士),黒瀬一郎,黒田和樹,吉村憲人
特定医療法人 柏葉脳神経外科 リハビリテーション科
社会福祉法人 農協共済 別府リハビリテーションセンター
脳卒中患者の注意機能と認知機能評価が病棟内歩行
自立度に与える因子の検討
感覚障害に対するアプローチによって屋外歩行自立
となった一例
【目的】近年、脳卒中患者の病棟歩行自立度は運動機能だけでな
く注意機能と関連し評価することが望ましく、注意機能は二重
課題遂行能力を反映し歩行能力、自立度に相関すると報告して
いる(広田ら)。多くの医療機関では注意機能評価にTrail Making
Test(TMT)を用いている。しかし、歩行自立度判定は運動機能評
価が中心であり、注意機能を含め判断していることは少ない。本
研究の目的はTMTが脳卒中患者の病棟歩行自立度判定の因子に
なり得るかを検討した。
【方法】回復期病棟脳卒中患者106名(年
齢66.85±12.64歳)のTMTを抽出、判定基準を求めた。除外基準
は検査測定に影響を及ぼす症例とした。統計学的分析は独立変数
を性別、年齢、麻痺側、病型、TMT-A、B、ΔTMT、MMSE、従属
変数を歩行自立としロジスティック回帰分析を行った。その後、
抽出された因子をReceiver Operating Charrcteristic Curveから
曲線下面積(Area Under the Curve;AUC)と感度、特異度を算出、
歩行自立を判断する最も適した判定基準を求めた。なお、5%を
有意水準とした。
【結果と考察】ΔTMTのみ有意差が認められた
(p=0.001)。ΔTMTはTMTBとAの差異を表し、他の評価より個
人差が小さくなると考えるが、AUC=0.283と信頼性に乏しい結
果となった。理由として、年代別TMTの結果と類似し、検査の特
性上ばらつきが生じたと考える。故に、ΔTMTは、病棟歩行自立
の判定因子になり得るが、判定基準を求めることは難しいと考え
る。
【はじめに】今回、運動麻痺は軽度にもかかわらず感覚障害の影
響により歩行不安定であった症例を経験した。症例に対し、感覚
障害に焦点をあてたアプローチを行った結果、歩行能力に改善
がみられ屋外歩行自立に至ったため報告する。
【対象】60歳代男
性。左視床出血。右片麻痺。44病日で当センター入院。右下肢
Br.Stage5、表在感覚0/10、深部感覚0/5。歩行は歩行器見守りレ
ベル。歩容は右足部接地位置のばらつきが多く右下肢が歩行器に
接触してしまう事があった。
【方法】右下肢に注意を向けた上で
の体性感覚入力、足底での感覚弁別課題(硬さ・重さ・素材)、課
題指向型の応用歩行練習(不整地、傾斜等)を実施した。課題設定
は、視覚情報を与えて症例が知覚可能な最小のレベルから開始し
徐々に難易度を高くしていった。【結果】介入開始から3週間後、
運動麻痺に変化はなかったが、右下肢の表在感覚2/10、深部感覚
4/5、歩行は屋外歩行自立レベルに改善した。
【考察】感覚障害は
移動能力やADLに影響を与える因子であり、運動学習とも関連性
がある。しかしながら、感覚障害に対するアプローチは、有効的
な治療法が確立されていない。本症例においては重度感覚障害を
呈していた為、段階的に課題難易度を設定し、外部環境を考慮し
たアプローチを行った。その結果、右下肢の各関節間の協調性改
善、環境に対する自己身体のコントロールの向上が実用歩行の獲
得に寄与したと考える。
94
O35-4
O35-5
○高芝 潤(理学療法士)
,久川 舞,松村文雄,小笠原正
○久川 舞(理学療法士),相原一輝,川渕宏美,高芝 潤
社会医療法人近森会 近森リハビリテーション病院 理学療法科
社会医療法人近森会 近森リハビリテーション病院
高齢脳卒中患者における加齢と歩行自立の関係
脳卒中患者における身体能力と退院時歩行自立の関
係
【はじめに】脳卒中患者における歩行自立には先行研究からも加
齢による影響が考えられる。そこで、高齢者における歩行自立
の特徴と加齢の影響について検討した。
【対象・方法】脳卒中で
当院に入院し、2012年4月〜2014年12月の間退院した患者805
例を対象とした。方法は年齢、後期高齢者、入院時の身体機能、
FIMなどについて後方視的に調査した。 検討は退院時のFIM歩
行項目5点以下のものを未自立群、6点以上のものを自立群とし
比較をおこなった。統計解析はt検定、χ2乗検定、ロジスティッ
ク回帰分析を用い、有意水準は5%未満とした。
【結果】2群分類
では自立群338例、未自立群467例であった。この2群について
単回帰分析を行い、有意であるものを独立変数とし歩行自立に
ついて回帰分析をおこなった。その結果、年齢(B=0.948;0.9180.980)、下肢BRS(B=1.108;1.000-1.227)、入院時座位バランス
(B=0.728;0.538-0.984)、動作時疼痛の有無(B=0.601;0.384-0.939、
入院時FIMの下位項目で表出(B=0.772;0.636-0.936)、問題解決
(B=1.327;1.091-1.614)、排便管理(B=0.948;0.702-0.981)、FIM
総得点(B=1.069;1.045-1.095)が採択された。
【考察】今回の結果
より高齢脳卒中患者における歩行自立の予測は入院時の下肢機能
と認知面、総合的なADL能力に加え、加齢が影響していることが
明確となった。しかし、後期高齢者という要因は採択されず、後
期高齢者であっても積極的にリハビリを進めることが歩行自立に
つながると考えた。
【はじめに】脳卒中患者における歩行自立の要因を分析している研
究は多く、その要因として加齢の影響がしばしば報告されている。
そこで高齢者割合の高い高知県にある当院にて、退院時歩行自立
の要因について身体機能およびFIMの下位項目を含めて分析をお
こなったので、結果に考察を踏まえて報告する。
【対象】脳卒中で
当院に入院し、2012年4月〜2014年12月に退院した患者1064名
とした。
【方法】入院時の身体機能、FIMなどを電子カルテより後
方視的に抽出した。対象者の分類を、退院時のFIM歩行項目5点
以下のものを未自立群、6点以上のものを自立群とし比較をおこ
なった。統計解析はt検定、χ2検定、ロジスティック回帰分析を用
い、有意水準は5%未満とした。【結果】2群分類では未自立群556
例、自立群508例であった。この2群について単回帰分析を行い、
有意であるものを独立変数とし歩行自立についてロジスティッ
ク 回 帰 分 析 を お こ な っ た。 そ の 結 果、年 齢(B=0.967、0.9520.982)、入院時FIM表出(B=0.793、0.674-0.934)、問題解決(B
=1.202、1.021-1.416)、総得点(B=1.061、1.045-1.078)、入院
時座位バランス(B=0.624、0.483-0.806)、動作時疼痛の有無(B
=0.548、0372-0.809)が採択された。【考察】今回の結果より退
院時歩行自立には年齢、入院時の能力面、認知面、疼痛が採択さ
れた。歩行自立に関して、直接的な要因だけでなく訓練進行など
に影響する間接的なものも影響すると考える。
O35-6
O36-1
○田口 脩(理学療法士)
,綱取雅紀,東馬場要,阿比留友樹,
長野友彦,友田秀紀,小泉幸毅
○桑山恭佐(理学療法士),南 隆之
医療法人共和会 小倉リハビリテーション病院
社団医療法人かなめ会 山内ホスピタル リハビリテーション部
脳卒中患者はいつごろ歩行が自立する?−全国デー
タによる予測モデルの検証−
大腿骨近位部骨折患者の簡易身体能力バッテリ−と
FIMとの関連性について
屋内歩行が自立するまでの期間を予測することは、リハビリテー
ションの治療計画立案において重要である。我々は先行研究に
おいて2種類の予測モデル(以下、モデル)を作成し、その内の1つ
(小倉リハモデル)に関しては、有用性を既に示すことができた。
本研究の目的は、もう1つのモデルの一般化に向けて、全国121施
設( 1,508症例)のデータを用いてモデルの妥当性を検証すること
である。モデルは6パターン(パターン1:立位自立・見守り+立
ち上がり自立+認知症有、2:立位自立・見守り+立ち上がり自
立+認知症無+深部感覚障害有、3:立位自立・見守り+立ち上
がり自立+認知症無+深部感覚障害無、4:立位自立・見守り+
立ち上がり見守り・介助+認知症無、5:立位介助+座位自立・
見守り、6:立位介助+座位介助+年齢57歳未満)で構成される。
検証法は、モデルの25−75%四分位区間に対して全国データの区
間に入る割合および予測分布の違いをログランク検定で比較分析
した。結果、50%の割合が入ることが良いとされ、25−75%四分
位区間に全国データの50.3%が収束された。ログランク検定の結
果、6パターン中4パターンで有意差がなかったことから全国デー
タがモデルの傾向を捉えていた。以上より、全国データとの比較
により歩行自立到達時期の予測モデルとしての妥当性が確認さ
れ、ゴール設定の一助になると示唆された。
【はじめに】簡易能力バッテリー(以下:SPPB)とは、バランス項
目、歩行・立ち上がり時間から構成される簡便な運動機能評価法
で特にサルコぺニアの分野での活用報告がなされている。今回、
SPPBとFIMの中でも運動項目に注目し関連性を調査した。若干
の考察を加えて報告する。
【対象】平成26年4月〜27年3月に当院回復期病棟に入院された大
腿骨近位部骨折術後患者の内、MMSE23点以下を除いた42名(年
齢78.76±9.21歳、男性14名、女性28名、大腿骨頸部骨折25名、転
子部・転子下骨折17名を対象とした。
【方法】入院時に評価したSPPB値を0〜6点:低群(20名)、7〜9点:
中間群( 15名)、10〜12点:高群( 7名)に分類した。入退院時に
測定したFIM運動項目を群毎に抽出し比較した。
【結果】低群‐中間群‐高群の順に入院時FIM運動項目(点): 53.0±
14.6‐69.9±6.8‐72.9±10.1、退院時FIM運動項目(点):71.0±13.1
−82.9±5.4−85.6±6.6であった。
【考察】先考研究によりSPPB とADL の関連性は報告されている。
今回の結果においても低群では平均71点までしか改善しておら
ず、見守りや軽介助が必要な項目が目立つ一方、高群では修正自
立レベル以上が多数を占めていた。よって、入院時のSPPBの分
類によりある一定のADL到達度が予測されるのではないかと示
唆された。今後、退院時ADLの予測にSPPBが活用できる様、引き
続き調査していく。
95
O36-2
O36-3
○田中悠三(理学療法士)
,横野裕行,齊藤慶太,加藤 茜
○川北 大(理学療法士)1),飯田修平1,2),宮坂稜平1),関根沙織1),
藤田拓也1),山下哲谷1),辻本徳栄1)
みどり野リハビリテーション病院
1)医療法人沖縄徳洲会 千葉徳洲会病院 リハビリテーション科
2)帝京平成大学 健康メディカル学部 理学療法学科
圧迫骨折後の歩行に関する回復期病院入院時
FIM(できる・している)による予後予測
10m歩行テストにおける最大速度歩行と快適速度
歩行の計測順序の違いによる検討
【目的】圧迫骨折後患者の回復期病院入院時FIM(できる・してい
る)の各項目から、退院時の歩行形態の予測を行うこと。
【方法】
2012年4月から2014年3月までの約2年間で圧迫骨折にて当院に
入院した患者32名を調査対象とした。対象者の入院時FIM項目(で
きる・している)を、退院時に“病前歩行形態へ回復したか否か”“歩
行が自立か否か”の2条件に対し各々2群間で比較検討した。階段
昇降、入浴、浴槽移乗項目は入院時に未実施の場合が多く検討項
目から除外した。単変量解析にて有意差が認められた項目を独立
変数として多重ロジスティック回帰分析を行い、この結果で得ら
れた項目に対しROC分析を行った。尚、当院の規定に従い、個人
情報の取り扱いに十分留意することを条件に本研究実施の承認を
得た。【結果】退院時に病前の歩行形態へ回復した率は28%、歩行
が自立へ回復した率は58%であった。抽出項目とカットオフ値は、
病前回復条件のできるFIMで歩行が5点、しているFIMで歩行が2
点であった。自立回復条件のできるFIMで理解が6点と傾向を示
し、しているFIMで問題解決が5点であった。
【考察】
病前回復
条件のできる・しているFIM共に歩行が抽出され、入院時より歩
行を行える筋力が必要なこと、神経症状や腰背部痛の影響が低い
ことが考えられる。自立回復条件は理解が傾向を示し、問題解決
が抽出され、歩行補助具の使用の理解や転倒への危険回避を行え
る能力などが影響していると考えられる。
【はじめに】10m歩行テストにおける計測方法は様々あるが、快適
歩行速度(以下快適歩行)と最大歩行速度(以下最大歩行)の両方を
計測する際に計測順序は決められておらず曖昧な部分がある。そ
こで快適歩行の計測を最大歩行計測の前か後に行なうかによっ
て、快適歩行に影響が生じるのか。また、それぞれの快適歩行に
おける主観的運動速度においても変化が生じるのか検討した。
【方法】当院回復期病棟入院患者より院内での歩行レベルが見守
り以上の患者男女20名に対し、快適歩行計測後、最大歩行を計測
する快適先行群と最大歩行を先に計測する最大先行群に分け、そ
れぞれ別日計測。各群計測終了後にNRSを用いて主観的運動速度
を聴取。統計処理は各群のスピード比、歩数、歩行率、NRSを対
応のあるt検定にて検討。有意水準を5%未満とした。
【結果】スピード比、歩数、歩行率において有意差が認められた。
NRSにおいては有意差が認められなかった。これにより計測順序
の違いが快適歩行に影響を及ぼすことが示唆された。
【考察】10m歩行テストにおいて最大先行群の快適歩行は所要時
間が短縮したことで再現性に影響が及んだ。これは快適歩行より
努力性の課題(最大歩行)が運動学習され、その後の快適歩行に影
響を及ぼしたのではないかと考える。また、脳幹・脊髄レベルの
歩行では無意識に遂行されているため主観的運動速度に影響を及
ぼさなかったと考える。
O36-4
O36-5
○高氏涼太(理学療法士)
,関 悟
○加藤 渉(理学療法士)
医療法人健康会 嶋田病院 リハビリテーション部 理学療法科
世田谷記念病院 リハビリテーション科
重症脳血管障害と肺炎の併発によりADLが著しく低
下した症例 −レンタル長下肢装具を使用して−
回復期脳卒中患者における糖尿病と運動機能の関係
性
【目的】視床出血にて重度の運動麻痺・感覚・姿勢定位障害、視
床性失語を呈し、肺炎を併発しADL全介助の症例に対し、レンタ
ル長下肢装具(knee ankle foot orthosis:以下,KAFO)を使用
し、PT、OTにて起居動作、ベッド移乗・トイレ移乗の介助量軽
減を図った。
【方法】本症例の予後予測が困難であった為、治療は
KAFOを使用して麻痺側への荷重入力を行いつつ、立位訓練、ト
イレ動作練習、歩行訓練を実施した。PTではKAFOを装着した状
態で姿勢鏡と併用して半側空間無視、pushingの改善を図り、座
位、立位での上肢操作訓練を行った。OTでもKAFO使用にてトイ
レ誘導を頻回に行った。介入時間外は車椅子駆動を促して、非麻
痺側上下肢の協調性を図った。動作が安定次第、病棟スタッフへ
移行していった。【結果】初期評価時はADL全介助でFIM27点で
あったが、最終評価時は起居・移乗はステップターンにて軽介助、
立位は手摺り使用にて見守りで可能となった。移動は車椅子に
て自走見守り、FIM52点となった。
【考察】レンタルKAFOを使用
して起居、ベッド・トイレ移乗の介助量軽減を図った。KAFOに
よる麻痺側への荷重入力を重点的に行い、非麻痺側の機能向上も
行っていくことで、座位・立位時のバランス改善が、介助量の軽
減になったと考えられる。本症例は予後予測が困難な症例で装具
作成の判断に迷うが、初期はレンタルKAFOにて対応し、今後装
具を作成するか判断する一つの方法でもないかと考える。
【目的】本研究は回復期脳卒中患者における糖尿病(以下DM)合併
者の運動機能の特徴を示すことで機能予後予測に役立てる事を目
的に行っていく。【対象】当院回復期病棟を2012年4月〜2014年8
月までに入院していた脳卒中患者から、歩行不可、四肢失調患者
を除外した71名( 71±12.3)を対象とした。
【方法】DMの評価と
して退院時の定期採血からHbA1C(JDS)を採用し、退院時の運動
項目との比較を行う。
運動項目は定期評価している10m通常歩行、
6MD、BergBalanceScale( 以 下BBS)を 採 用。 検 討 方 法 はDMの
評価をHbA1C5.8以上のDM群、HbA1C5.8未満の非DM群の2群
に分けた。下肢麻痺をBrunstrom recovery stage(以下BRS)にて
stage分類し、各stageごとにDM群、非DM群に分け、各運動項目
に対し対応ないT検定・U検定を実施、有意水準を5%未満とした。
下肢BRS各の人数はstage3が6人、stage4が19人、stage5が27人、
stage6が18人である。【結果】BRSstage4群・5群ではDM群、非
DM群にて運動項目を比べた際に10m通常歩行、6MD、BBSとも
に有意差(p<0.05)を認めたが、BRSstage6群では各運動項目で
の有意差は認められなかった。
【考察】BRSstage4・5と運動麻痺
を認める患者ではDMを合併していることで各運動項目の数値に
低下がみられた。これによりDMの合併と運動機能には関係性が
あり、リハビリを進める上での予後予測因子の1つとなりうると
示唆された。
96
O36-6
O37-1
○岩 克典(理学療法士)
,山中誠一郎,及川真人,野口隆太郎
○光村実香(理学療法士),的場千賀子
医療法人社団輝生会 初台リハビリテーション病院 リハケア部
医療法人財団はるたか会 訪問看護ステーションあおぞら
生活期脳卒中片麻痺者に対する装具再作製が歩行能
力・生活状況改善をもたらした一症例
見通しシートを用いた生活密着型ケアの実際−その
人のやりたい事、実現します!!−
【はじめに】生活期における脳卒中のリハビリにおいて、装具の検
討を行った報告は少ない。今回発症後20年経過した脳卒中片麻
痺患者に対し、装具の再作製により、歩行能力・QOLの向上が認
められた症例を担当したのでここに報告する。
【症例】60歳代男
性。平成2年に左脳出血発症し右半身麻痺あり。Br.stageはIII/II/
III、感覚重度鈍麻、失語症、失行あり。FIM112( 87/25)点。より
上手に歩きたいとの希望で平成26年4月より訪問リハ開始となっ
た。
【経過と介入】介入当初、歩容は荷重時の下腿外倒れ・殿部側
方偏位が著明で非効率的であった。発症からの経過が長く、高次
脳機能障害による習熟性の低さにより、歩行練習に対する学習効
果は乏しかった。装具は作製から5年以上経過したプラスチック
AFOを使用しており、不適合がみられた。訪問リハ開始6ヶ月で
装具の検討を行い、プラスチックAFOを再作製した。装具は外転
角度・トリミング、滑り止めを変更した。装具内での足部内反が
軽減し、荷重時の殿部偏位も軽減され、Timed up&Go testが35
秒から25秒へと、歩行速度に改善がみられた。また、本人からは、
歩きやすくなりトイレに間に合わない回数が減少したとの感想が
聞かれた。
【考察】
本症例は、より適合した装具の再選定により
歩容・歩行速度が改善し、生活状況の改善につながったと考える。
本症例の経過より、生活期でも装具へ介入する事でQOLを高める
可能性があることを再認識できた。
訪問サービスでは利用者の生活を基盤にケアが計画されるが、将
来像を想像し具体性を持ったケア内容を立案・実行していくには
工夫が必要である。当事業所では『見通しシート』を用いて本人
のやりたい事をより具体的かつ継時的に多職種連携で考え、ある
べき姿を実現するケア内容の立案・実行に効果を得ている。本発
表は事例を通してその方法と実際について報告する。症例は71
歳男性、頸髄損傷により寝たきり独居生活。ADLは食事のみセッ
ティング後にフォーク使用で自力摂取可、その他は全介助で実施。
膀胱ろう造設の際に敗血症を発症。4ヶ月の入院後、退院したが
ベッドギャッジでの座位姿勢保持も困難な状態でADL・動作が入
院前より大幅に低下。見通しシートを用いて多職種連携で生活レ
ベルの立て直しを図る事とした。見通しシートは利用者の生活上
の問題点を医療・福祉・社会の多方面から項目立てでき、具体的
な支援内容が可視化しやすい。また多職種連携の際に支援内容が
生活全体から具体的に示される事で適切な役割分担でケアを行う
事ができる。さらに状態変化や予定期間よりも早期に達成できた
場合などは、同じシートに新たな支援内容を書き込みながら使用
する事で継時的変化も可視化できる。見通しシートはその人のあ
るべき姿を想像し、本人のニーズやサービス提供者の思いを具体
的支援内容として縦断的に整理して考える事ができ多職種連携で
の生活密着型ケアの実現として有用である。
O37-2
O37-3
○松本浩一(理学療法士)1),原島宏明1),宮野佐年(MD)2)
○堀町尚博(作業療法士)
1)医療法人財団健貢会 総合東京病院 診療技術部 リハビリテーション科
2)医療法人財団健貢会 総合東京病院 診療部 リハビリテーション科
特定非営利活動法人HPT 訪問看護ステーション ポット東
医療機関退院後の訪問リハビリテーション導入と要
介護度の変化との関連性
長期訪問リハビリテーション利用が終了までに至っ
た一症例〜生活の再建を目指して〜
【はじめに】長期に訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)を利用
していた症例において本人や家族の了解を得て終了に至ることが
できたため、考察を含め報告する。【症例紹介】30歳代女性。X年
Y月脳出血発症し、脳神経外科病院に入院。X年Y月+8ヶ月自宅
退院となり訪問リハが開始となる。
【経過】初回訪問時、右上下肢
にて運動麻痺(BRS3)や感覚障害があり、歩行は装具、杖使用にて
屋内自立。屋外は見守り。高次脳機能障害として失語症や注意障
害が認められる。目標としては家事動作の獲得や一人で近所の商
店街に買い物に行けることとした。X年Y月+1年9ヶ月より屋外
歩行における転倒の危険性は低くなり、自主練習としても短距離
であれば屋外歩行が導入となる。目標であった家事動作や買い物
も可能となった。その後、訪問リハの終了についての話を何度か
本人、家族に相談するが、本人の終了に対する不安や訪問リハへ
の依存が強く継続となる。X年Y月+4年3ヶ月より試験的に週1
回の訪問を隔週に変更。変更後も家事動作や買い物は維持できて
いた。X年Y月+4年6ヶ月、本人の了解も得られ終了となる。【考
察】今回の症例は当初の目標を達成できていたが経過とともに訪
問リハへの依存心が高くなり、本来のリハビリの意義を越え、リ
ハビリをすることが本人の人生の一部となっていたと考えられ
た。本人らしい生活の再建を促す意味でも訪問リハの意義を改め
て考える機会となった。
【はじめに】訪問リハビリテーション(以下訪問リハビリ)では、
生活機能低下時の集中的な訪問が効果的とされており、退院後3
か月以内に算定可能な加算も設定されている。今回、退院後の訪
問リハビリと要介護度の変化との関連性について検討した。
【対
象と方法】平成24年4月から平成27年3月の間に当院の訪問リハ
ビリを利用開始した175名の内、上記期間中に要介護認定の更新・
変更のあった113名を対象とした。退院後3か月以内の利用開始
者を退院群、その他を非退院群に分け、要介護度の変化(軽度化・
不変・重度化)との関連性をχ2検定と残差分析を用いて検討した。
また、各群の要介護度変化量を算出し、Mann-WhitneyのU検定
を用いて比較した。統計解析にはR(ver.3.2.0)を使用し、有意水
準は5%とした。
【結果】退院群57名(男性27名、女性30名、平均年
齢80.4±11.5歳)
、非退院群56名(男性17名、女性39名、平均年齢
81.4±9.5歳)であった。χ2検定の結果、群間に有意差を認め(χ2
(df=2)=6.679、p<0.05)、残差分析の結果、退院群における要介
護度の重度化例が有意に少なかった(p<0.05)。要介護度変化量
の群間比較では、退院群が有意に軽度化していた(p<0.05)。
【考
察】退院群における要介護度の軽度化には、重度化例が少ないこ
とが寄与していると考えられ、訪問リハビリによる要介護度の重
度化抑制効果が示唆された。医療機関退院後の訪問リハビリ導入
の有効性がうかがえる結果となった。
97
O37-4
O37-5
○酒井達也(作業療法士)
,相見真吾,安尾仁志,篠山潤一
○高市 彩(言語聴覚士),村吉政輝,濱崎俊光
社会福祉法人 兵庫県社会福祉事業団 総合リハビリテーションセンター
総合リハ訪問看護ステーション
医療法人財団尚温会 伊予訪問看護ステーション
移動の自立を経て生活行為の向上と再び参加に結び
つけることができた一症例について
訪問言語聴覚士の活動報告
【はじめに】腰椎圧迫骨折をきっかけに活動と参加が制限された症
例に対し、訪問リハビリの介入により再び主体的な生活に結びつ
けることができた一症例を報告する。
【症例紹介】85歳男性。要
介護度2。シェーグレン症候群の合併による多発性筋炎。既往に
心房細動あり。現疾患の影響により転倒し腰椎圧迫骨折受傷。寝
たきり状態となり訪問看護・リハビリ開始。
【経過】介入当初、腰
痛の緩和と座位・立位保持能力の向上を目標に基礎訓練を実施。
腰痛は残存するも環境調整等実施し基本動作は自立となる。その
後、立位保持能力が向上し歩行器での歩行訓練を開始。介入から
7ヶ月後、屋内歩行器歩行自立し、趣味である油絵も再開。屋外歩
行練習も実施し、自営の工場の職員と交流が持てるようになる。
また、新たに「自宅で浴槽に入りたい」という本人の希望もあり、
心機能に負担のない動作方法を看護師と検討し介助浴にて可能と
なる。その後、大動脈解離を発症し、血圧コントロールの制限か
らシャワー浴となるが、浴槽に入りたいという思いが強いため主
治医に許可を得て、福祉用具を導入し再び自宅での入槽が可能と
なる。
【考察】本症例の場合、重複疾患を持ち、運動制限がある中
でも、移動手段を獲得することで、入浴や趣味の油絵等生活行為
を向上する事ができた。また、工場の職員と交流を持てたことで
経営者としての役割を果たす「参加」に結びつけることができた
のではないと考える。
【はじめに】当訪問看護ステーションに言語聴覚士(以下ST)が配
属され、約1年半が経過した。今回、訪問STにおける活動の現状
と今後の課題を検討し報告する。【対象及び方法】平成25年11月
から平成27年5月までにSTが関わった利用者37名で、年齢、疾患、
障害、依頼元、介入後の変化について分析した。
【結果】年齢は
70代が多く、6歳〜93歳と広範囲であった。疾患は脳血管疾患が
67%を占め、主となる障害は失語症40%、嚥下障害27%、構音障
害16%の順であった。依頼元は系列の居宅支援事業所と母体病
院からがほとんどであった。発症から短期間での介入では、経管
栄養から経口摂取に移行できたり、発語が増えたりと何らかの改
善がみられた。
【考察】約1年半訪問業務に携わり、機能回復がみ
られることを実感した。利用者と家族との思いを繋げ不安を解消
することが、利用者の残存機能をひき出すきっかけになると考え
る。またコミュニケーションが不自由な場合、会話の機会が少な
い印象を受ける。ST訪問で会話の時間を作り、そこから社会参
加につなげるような役割を担うことも重要である。さらに在宅で
の嚥下訓練等に対応するために、より専門的な摂食嚥下機能評価
や吸引実施などのリスク管理が必要となる。現在、母体病院にて
VE・VFの嚥下機能検査が可能であり、在宅医との調整を行って
いるが、よりスムーズな連携が図れるようシステム作りも急務で
ある。
O37-6
O38-1
○綱脇昇平(理学療法士)
○山崎裕右(作業療法士),久保田裕一,中澤博幸,三井美絵,
有賀夕葵,萱津 碧,石月翔子,北澤和也
訪問リハビリテーションの普及のためには何が必要
か?〜ケアマネジャーへのアンケート結果を元に〜
回復期リハ病棟における集団活動の意義 〜レクの
提供によって離床頻度が増加し充実した個別リハ提
供につながった症例
株式会社シダー あおぞらの里 古賀訪問看護ステーション
JA長野厚生連 鹿教湯三才山リハビリテーションセンター
鹿教湯病院
【はじめに】訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)は地域包括
ケアシステムの中で重要なサービスに位置づけられている反面、
まだまだ普及していない。今回、
ケアマネジャー(以下、
ケアマネ)
へアンケート調査を実施し、普及のための課題を検討したため報
告する。
【調査方法】ケアマネ39名へ無記名アンケート調査を実施。
【調査内容】質問1)訪問リハを重要なサービスと感じますか?質
問2)訪問リハは使いやすいですか?質問3)訪問リハが普及でき
ていない要因は何だと感じますか(複数回答可)?
【結果】質問1)
「感じる」23%、
「やや感じる」59%、
「普通」18%。
質問2)
「使いやすい」
・
「どちらかと言えば使いやすい」26%、「普
通」46%、
「どちらかと言えば使いづらい」23%。質問3)
「単価が
高い」13件、
「通所系サービス(以下、通所)を優先する」12件、
「医
療機関の理解が少ない(指示書含む)」8件、
「利用までの流れが
わかりづらい」7件、
「時間が短い」6件、
「本人・家族が希望しない」
6件。
【考察】普及できていない要因について「通所を優先する」
、「単価
が高い」
、
「時間が短い」との回答が多かったことより訪問リハは
通所と比較されることが多いと考える。そのため、通所との役割
分担を明確にし、関係者へ伝えていくことが重要と考える。また、
調査結果より得られた訪問リハ導入の妨げになっている要因を解
決していくことが普及のために必要ではないだろうか。
【はじめに】当病棟では療法士、看護、介護の多職種で協業してレ
クリエーション(以下レク)運営チームを立ち上げ、効果的な活用
を試みている。今回、個別リハビリテーション(以下リハ)への離
床に消極的だった症例に集団活動を提供したことで、個別リハを
主体的に行うようになりADL改善へと繋がったため報告する。
【症例】70歳代男性。脳梗塞再発による四肢不全麻痺(左>右)、
再発後50病日で当院入院。嚥下障害、歩行障害。入院時FIM:61
点(ベッド上経鼻栄養、尿便意曖昧、日中排泄最小介助)。やや易
怒的な性格傾向。入院後1ヶ月程度は個別リハでの離床に消極的。
レクへの参加も消極的で、参加時には自身に注目が集まることを
敬遠する傾向があったが、種目によっては笑顔も見られていた。
【経過】レク運営チームで協議し、個人が注目を集めることの少な
い種目の実施時に積極的参加を促すという方針とした。徐々に積
極的な参加が増え、対人交流を楽しむようになった。入院後2ヶ
月目には個別リハも主体的に行えるようになり、耐久性や活動性
も向上。病棟内車いす自走も積極的に行うようになった。
【結果】FIM:75点(車いすでの3食経口摂取、日中排泄見守り、
下衣更衣見守り)。
【まとめ】今回の症例を通し、回復期リハ病棟においても他職種が
連携し、患者特性に合わせた集団活動を活用することは1つのア
プローチとして有用であることが示唆された。
98
O38-2
O38-3
○梅原啓子(看護師)
,西戸加奈子
○三宅神奈(作業療法士)1),近藤知美1),西村真由美2)
船橋市立リハビリテーション病院
1)介護老人保健施設 静寿苑
2)京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学系 専門学修士課程 健康情報学
家族の知りたい・私たちの伝えたいを叶える家族教
室
当施設における自主グループ活動の展開と継続にむ
けた支援から
【はじめに】当院では回復期リハ看護師が、患者・家族対象に行っ
ている「脳卒中家族教室」があり、脳卒中の病態説明、回復期リハ
ビリテーション病院*(以下回復期リハ病院)の入院生活、脳卒中
再発予防について各職種から伝えている。患者家族のコミュニ
ティー形成を目的としていたが、参加人数は初年度の3倍に増え、
家族同士のコミュニケーションをとる時間が設けられていない。
家族の知りたい情報・看護師として伝えたいことを明確にする。
【方法】1、脳卒中家族教室主催者の回復期リハ看護師と看護師サ
ブマネジャーの意識調査。2、病棟勤務の看護師にアンケート形
式で意識調査を行い後方視点的分析を行った。
【結果】1、開催する看護師の意識調査結果は脳卒中に特化したも
のではなく、入院患者・家族全員を対象とした家族教室を開催し
たいと思っていた。2、脳卒中家族教室開催を知っている看護師
は96%。講義内容を知っている看護師は54%だった。
【考察】参加人数の増加は入院時オリエンテーションでの広報と
院内掲示板の効果である。個別指導を行えるように看護師指導が
必要。家族が知りたい内容を明確に出来るアンケート内容への変
更が必要。回復期リハ病院での入院生活や生活習慣病予防・介護
予防についての指導を今まで同様、全職種で行い、患者・家族間
のコミュニティーができるような家族教室を開催していきたい。
【はじめに】地域包括ケアシステムの推進に向け、新しい総合事業
など含め、地域の人々が自主的な活動へ取り組むことや社会での
活動を継続していくことが重要となる。【当施設での自主グルー
プ活動】当施設では、入所者による自主グループ活動「あすなろ
会」
(明日元気になろうという意味)の取り組みを行っている。こ
の会は3年前、入所者の「やることがない」という言葉から始まり、
体操と作業活動を入所者本人たちが週4回、ホールで自主的に活
動し現在も継続しているグループである。【自主グループ活動で
の大切な視点】この活動は開始当初の体操のみから作業活動へ発
展し、現在まで継続して入所者の主体的な活動が維持している背
景を整理した。その結果 1,リーダーを担う入所者との調整 2,
ホールというオープンな場での参加しやすい雰囲気づくり 3,体
操や作業活動に必要な物品使用を容易にする工夫 4,継続の見え
る化と考える。参加者の身体・認知・心理的状況に応じて支援に
内容や調整は違うものの、活動全体を主体的かつ継続的に実施す
るサポートを行うため、上記の4つの視点を持ち関わることが大
切であると考える。【おわりに】この「あすなろ会」を通して、主体
的な活動の支援として専門職の役割は、周囲の人を巻き込み、環
境面(人的・物的、そして工夫など)の調整を行う事であり、これ
らの活動は今後の施設や地域での生活を支えていく我々に求めら
れることであるといえる。
O38-4
O38-5
○辰巳茂樹(作業療法士)
○波多野亨(理学療法士)
保健福祉センターとの連携による高齢者運動サロン
の立ち上げに関わって−第2報〜サポーター養成講
座の内容充実に向けて〜
2次予防事業終了後も住み慣れた地域でいつまでも
元気に過ごしてもらうために〜介護予防の意識を高
める取り組みについて〜
医療法人博仁会 福岡リハビリテーション病院
介護老人保健施設 精彩園
【はじめに】当院は介護予防支援センターとして、保健福祉セン
ターと住民主体の運動サロン立ち上げを支援している。平成26
年度は運動サロン3か所、サポーター56名を養成した。アンケー
トから養成講座内容を工夫した結果、サポーターに変化が見られ
た。
【活動内容】
講座は5回実施。1回目はスクール形式、
2回目はグルー
プ形式で講義と実技、
グループ協議とした。3回目は地域のグルー
プに設定し実技とグループ協議。4回目はサロンでの実習。5回
目は振り返り、認定証授与等であった。講座にはPT、OTのべ15
名が関与し、講座前に保健師と会議を開催した。
【結果】理解度を4段階で聴取した。1〜4回目、
「とてもわかりや
すかった」
「わかりやすかった」80%〜90%、5回終了時、
「よく理
解できた」54%、
「だいたい理解できた」46%であった。自由記入
の意見では、1回目「楽しかった」
「教えて欲しい」
、2回目「動けな
い人の方法は」
「伝えられるか心配」
、3回目「男性が参加し易くす
るには」
「ボールを使ってするには」
、4回目「初めの説明を明確に」
「見守りが大事」
「声掛けは工夫して」等の意見が出た。
【まとめ】サポーターは養成講座を通じ、参加者視点から運営側視
点に変化した。講座では具体的イメージが湧く様、グループ編成
や運動資料の作成等を工夫した結果、なじみのメンバーで地域の
課題を共有出来、実習後は参加者をリードする姿勢へ変化した。
【はじめに】26年度より当施設で2次予防事業が開始した。1グルー
プの期間は6ヶ月と決まっており、事業終了後も利用者様が元気
に過ごしてもらうためには利用者様の意識を高め主体的に生活す
ることが大切だと考え、様々な取り組みを試みた。その取り組み
と結果についてここに報告する。
【方法】対象者は2グループ計17名。内容としては1. 介護予防の説
明、2. 運動の理解と自主練習、3. 体力測定と講座による身体状態
の認識と予後の考察、4. 自身で行うバイタル測定や運動等の記録
による健康管理の4つを行った。上記の方法により、自身で生活
習慣を見直しながら介護予防できるよう主体性を高めていった。
そして終了後と半年後にアンケート調査を行った。
【結果】アンケート結果では、事業終了後もカレンダーにチェック
を入れて運動を続けていたり、福祉センターに行って教室に参加
していたりなど利用前と比べ意識や行動の変化がみられた。
【考察】今回の調査により半年後も何らかの形で運動を続けてお
り、自主練習や健康管理することの大切さを理解され介護予防の
意識を高めることができたと思われる。ただ「やり方を忘れてし
まう。
」との意見があり、事業終了後も継続してもらうためには自
主的な事業の参加や広報配布などの支援を今後検討し実施してい
く。
99
O38-6
O39-1
○坂本翔太(作業療法士)1),西尾大祐1),平野恵健1),阿部真也1),
川合まき子1),倉田睦子1),木川浩志1),高橋秀寿1,2)
○高木 梓(理学療法士),桑原健太郎,藤田瑠藍,兼田健一,
藤本浅美
1)飯能靖和病院 リハビリテーション科
2)埼玉医科大学国際医療センター
医療法人社団聖愛会 ぎおん牛田病院 リハビリテーション部
飯能靖和病院主催の患者向け宿泊旅行
外来リハビリの現状と課題〜いきいきと在宅生活を
送るために〜
【はじめに】平成24年度の診療報酬改定にて、医療保険から介護保
険への移行が推進され、外来リハビリテーション(以下、外来リハ
ビリ)は縮小している傾向にある。しかし、医療保険分野において、
在院日数の短縮、自宅復帰率向上を図るために医療保険の維持期
としての外来リハビリの必要性はある。この度、外来リハビリの
需要、介護保険保有率など当院の外来リハビリの現状についてま
とめ、外来リハビリの必要性を検証したため報告する。
【対象と方法】平成25年から平成26年の外来リハビリ患者199名。
人数・年齢の推移、介護保険の保有率について比較した。
【結果と考察】外来患者の人数は増加し、年齢において著明な変化
はなかったが、若年層の増加が認められた。要因としては、在宅
生活での健康増進、外来リハビリが縮小し退院後の受け皿が少な
く当院への紹介が増えたことが挙げられる。介護保険保有率にお
いては全体の3割。保有率が少ない要因としては、自立度が高い、
介護保険適応年齢に達していない、申請するが認可されないなど
の要因が挙げられた。今後、平成28年度には13単位の外来リハビ
リは施行できなくなるため、在宅生活での健康増進・維持が困難
になることが予測される。当院では、退院後のフォローを行うと
ともに、健康増進・維持を目的に消炎(物理療法・パートナース
トレッチ)への移行や地域と連携した「健康教室」の立ち上げを推
進していく。
【はじめに】脳卒中などの後遺症によって移乗・移動能力が低下
した患者は、外出時に様々な介助を要するため、旅行を断念する
ことが多い。昨年10月に当院から在宅復帰した患者向けに宿泊
旅行を行い、好評を得たので報告する。
【参加者】患者17名、患者
家族11名、医師1名、看護師4名、介護士1名、療法士10名が参加
した。患者内訳は年齢:12〜87歳、性別:男7名、女10名、疾患:
脳卒中16名、脳外傷1名であった。患者の大半は移乗・移動に介
助を要した。
【経過】1泊2日で群馬県太田市の温泉付きホテルに
宿泊した。移動には昇降機付き大型バスを使用した。初日には温
泉入浴と宴会を行った。入浴では医療スタッフが移動、更衣、清
拭、入浴を分担して行った。宴会では言語聴覚士が誤嚥予防に取
り組み、医療スタッフが患者の食事を介助した。また、ビンゴゲー
ムやカラオケを行い、参加者同士の親睦を深めた。2日目には美
術館見学と買い物をした。各地で医療スタッフが患者の移乗・移
動を介助し、転倒等の事故は発生しなかった。宿泊中に患者1名
が体調不良となり、医師・看護師による医療処置後に当院へ救急
搬送された。
【考察】
患者が旅行する際には安全確保が大切である。
本旅行は患者の病状を把握した医療スタッフが適宜患者の介助や
医療処置をしたため、旅行は円滑に行われた。医療機関が患者向
け宿泊旅行を開催することは、在宅復帰後の生活の質の向上に役
立つと考える。
O39-2
O39-3
○冨森一矢(介護福祉士・ヘルパー)
○三宅貴志(理学療法士)1),村上重紀2),林 拓男1)
社会復帰の為の地域まるごとケア
地域リハビリテーションの活動から地域ネットワー
クづくりへ〜広島県リハビリテーション支援セン
ターの活動から〜
みどり明星クリニック 通所リハビリテーション
1)広島県リハビリテーション支援センター(公立みつぎ総合病院)
2)広島県地域包括ケア推進センター
はじめに 私達は、鹿児島県鹿屋市輝北町大隅半島の北西部に
位置し、少子高齢化とともに若年層の都市部への人口流出が著し
い地域である。私達はここで、
【高齢者福祉事業を通して社会貢
献を行うことにより輝北町における幸福な生活を創造する】事を
掲げ実践してきた。しかし超高齢化が進むにつれ社会復帰の機会
は限られ現在は、当法人が提供する物ばかりとなった。またさら
に生活機能向上リハビリの促進は、社会復帰の多様化を必要とし
ていた。それならば私達は、今まで以上に地域と共に多様な機会
を提供し、<そのどれかの機会に参加したい。>と考えて頂ける
地域作りこそ、社会復帰の最良と考えた。さまざまな世代による
地域全体の活性化いわゆる【地域まるごとケア】を実践していく
こととなった。具体的取組 1通所リハビリテーションにおける
生活機能向上リハビリの促進 2各世代の参加協力を地域に訴え
実行委員の形成の為の名簿作成 3具体的取組、イベント等の年
間計画の作成継続性重視 4実施と課題抽出 今後の課題地域の
子供、孫世代が中心となる事で、地域高齢者もイベントに喜んで
参加できた。しかしこの多くの提案も【地域まるごとケア】とし
ては発展途上であり、まだまだ入り口の段階である。高齢者の生
活機能向上を図り、今後も取り組みを継続し【地域まるごとケア】
の成功を目指したい。
地域包括ケア体制の推進とは、高齢者が住み慣れた地域や家庭で
安心して暮らし続けることができるよう、医療・介護・予防・住
まい・生活支援などのサービスを切れ目なく提供できる体制を作
り上げていくことであり、地域リハビリテーション(以下地域リ
ハ)の視点と地域包括ケア体制の目指す方向は同じであるといえ
ます。広島県では、広島県地域包括ケア推進センター(以下推進
センターと略)と広島県リハビリテーション支援センター(以下
リハ支援センターと略)による支援・調整を基に、11の地域リハ
ビリテーション広域支援センター(以下広域支援センターと略)
と40の地域リハビリテーションサポートセンター(以下サポー
トセンターと略)が一体となり、地域リハの推進に向けて活動し
ています。地域リハ活動支援事業などをはじめとし、各市町にお
ける地域づくりにおいてリハ専門職等の総合的な関与が期待され
ており、広域支援センターやサポートセンターによる地域リハの
活動は幅広い視点を持った支援と地域ネットワークづくりの推進
に向けた大きな力になるといえます。リハ支援センターとしては、
各市町における広域支援センターやサポートセンターの活動を支
援すると共に地域ネットワークづくり推進に向けた調整役を担う
ことが大きな役割であるといえます。今回は地域の特色を踏まえ
地域ネットワークづくりに向けた支援についてまとめ若干の考察
を加えたので報告したいと思います。
100
O39-4
O39-5
○林 寿恵(理学療法士)1),下村貴文1),藤本慎治2)
○園村加奈子(理学療法士)
1)医療法人社団坂梨会 阿蘇温泉病院
2)介護老人保健施設 愛・ライフ内牧
介護老人保健施設 フォレスト熊本
阿蘇地域リハビリテーション広域支援センター活動
を通じた地域連携〜地域で働くスタッフのコミュニ
ケーション支援〜
老健長期入所者に対して地域を基盤とした互助・共
助の協働について
【目的】平成24年度介護報酬改定では在宅強化型老健と従来型老
健に区分されたが、在宅強化型は全体の7.3%に留まり、平均在
所日数が長期化した施設は全体の92%を占めている。また、認知
症高齢者数は今後益々増加し、在宅復帰する上での大きな課題と
なっている。老健という「共助」は、専門分化した専門職のみで連
携した『個への援助』を、施設という限られた空間の中で提供して
いた。また、地域の必要性を感じながらも家族以外の制度外のサー
ビスを取り入れることなく利用者援助を展開してきた。しかし、
高齢者の生活はもともと居住している住居を取り囲む地域社会の
中で営まれており、今回、これまでの地域の福祉課題と向き合う
活動をしてきた「高齢者ふれあい・いきいきサロン」と協働し『個
を地域で支える援助』と『個を支える地域を作る援助』について取
り組んだ為報告する。
【方法】平成23年5月〜平成27年5月、アクションリサーチ法を用
いて、老健入所する以前からサロンとの関わりのあった認知症高
齢者を事例に、専門職側の「共助」と地域側の「互助」の関係再構
築の取り組みを行った。関わった方には半構造化インタビュー調
査を行った。
【結論】専門職では事例の変化に気づき、専門職以外の支援が身近
な地域にあることを実感でき、地域からは専門職の知識や情報提
供により、その後の支援方法に気付くことができ支える側として
の自信と力を付け、現在も地域づくりを展開している。
【はじめに】当院は平成24年から阿蘇地域リハビリテーション広
域支援センターの活動を行っている。阿蘇圏域の市町村の多くが
山間地であり面積も大きく高齢化率が高い。また在宅サービス事
業所数やスタッフ数も不足している。そのような中、地域で働く
スタッフ同士のコミュニケーションは住民の生活を支える上で欠
かせないものである。しかし、現実には他事業所のスタッフとコ
ミュニケーションを図る機会はほとんどない。そこで圏域の対象
機関や関連職能団体へ呼びかけを行い、ワークショップや事業所
発表会を実施した。現場で働くスタッフ同士で共通話題のワーク
ショップや事業所の取り組みを発表、または聴講する機会を提供
し、
コミュニケーションを促進する機会を造った。実施後アンケー
ト結果を元に考察を含め報告する。
【実施内容】<ワークショップ>実施日:平成26年10月17日 テー
マ『報・連・相』についてみんなで語ろう! <事業所発表会>
実施日:平成27年3月13日 【結果】ワークショップ:参加者64名 事業所発表会:参加者114
名 参加職種はリハビリ専門職の参加に次いで介護士、看護師、ケ
アマネージャーなどであった。
【考察とまとめ】アンケート結果ではどちらとも満足度が高く、他
事業所の方々の話を聞くことができてよかった、との声を頂いた。
今後も地域で働くスタッフのコミュニケーションを円滑にし、住
民の方々の生活を支えることに反映できるよう支援していきたい。
O39-6
O40-1
○安達さくら(理学療法士)
,北村 優
○大澤 輝(理学療法士),村越大輝,矢野清崇,影原彰人,
須賀晴彦
やちよ元気体操応援隊事業の現状と課題について
片側下腿切断された透析患者において義足歩行獲得
に至った1症例〜運動療法に加えて断端管理による
実用的歩行獲得を目指して〜
八千代市役所 健康福祉部 健康づくり課
医療法人社団ふけ会 富家千葉病院
【はじめに】本市では介護予防事業として市オリジナルの「やちよ
元気体操(以下、体操)」を活用した住民主体の健康づくりを推進
している。体操の普及啓発と住民主体の健康づくりを推進する人
材を養成する「やちよ元気体操応援隊(以下、応援隊)」養成講座
は平成18年度より実施。応援隊は地元の自治会館等で自主グルー
プを発足し、住民と共に体操を行っている。事業開始から10年、
試行錯誤しながらも応援隊と応援隊を中心とした自主グループは
増加しており、事業の現状と課題について報告する。
【現状】平成27年5月末現在、応援隊養成講座の受講者は559名、修
了者は507名、応援隊登録者は254名、自治会館等で週1回、1時間
程度、活動している自主グループは39グループ(参加者1,092名)
となっている。その活動効果としては膝や腰等の疼痛軽減だけで
はなく、交流や行動、精神面での良好な変化が見えてきた。また、
公園等で体操を行う自主グループも増えており、男性が参加しや
すい活動として広がりつつある。
【今後の課題】本市の高齢者数は45,000人を超えており、介護予防
事業における住民主体の健康づくりは更に推進していく必要があ
る。今後は応援隊の養成とその活動支援について、より効果的で
効率的な体制づくりを検討していきたい。また、応援隊が高齢化
し自主グループの継続が困難になるグループも出てきているため
継続可能なグループ支援のあり方についても検討していきたい。
【はじめに】血液透析(以下HD)を施行している下腿切断患者は、透
析間の体重増加により断端周径が安定せず、義足作製に至らない
例が多い。今回、断端管理を図ることが、義足歩行獲得の一因と
なった症例を経験したので報告する。
【症例紹介】60歳代男性、8
年前にHD導入。H26年5月左足部糖尿病性壊疸の診断にて左下
腿切断術を施行。H26年6月リハビリ目的に当院へ入院。
【初回評
価】ROM:両股関節伸展0°、MMT:体幹・両下肢3-4、ADL:起立・
立位・歩行見守り(平行棒内)、断端:感染徴候なし、縫合不全あり、
HD:3回/週【治療経過】義足歩行に向けて両側股関節筋力と協調
性向上訓練を中心とした運動療法を開始。縫合部の皮膚血流に問
題はなく、創閉鎖を認め、入院42日後より圧迫療法(シリコンライ
ナー )を開始。透析間での断端周径の日間変動が減少し、56日後
に仮義足採型、79日後に仮義足訓練開始となった。疼痛の出現に
は、断端袋枚数やシリコンライナーの厚さの調節を図った。138
日後に歩行器を用いた義足歩行を獲得し、自宅退院となった。【考
察】本症例は、断端周径の日間変動を観察することで、断端部の
状態を評価することができ、義足採型できた事、身体機能向上に
より円滑に義足歩行訓練へ移行できた事により歩行獲得に至った
と考える。HD患者においても、断端の循環に問題がなければ、圧
迫療法により断端周径の日間変動を軽減することで義足歩行の獲
得は可能である。
101
O40-2
O40-3
○河野祐也(理学療法士)
,前田泰平
○松原 徹(理学療法士)1),野中泰仁2),朝倉直之1)
喬成会 花川病院 リハビリテーション部 理学療法科
1)医療法人社団輝生会 初台リハビリテーション病院
2)ライフステップサービス
回復期片麻痺患者の歩行に対するFES
( 機能的電気
刺激)の使用経験
回復期リハ病棟における移乗用リフト使用患者の傾
向
【 目 的 】Bioness社 のNESS-L300は 歩 行 中 の 足 関 節 背 屈 を 補 助
するFESであり、慢性期にて長期使用した訓練で歩幅、歩行速度
が向上したと報告がある.本研究は回復期での使用報告が少ない
L300を当院の片麻痺患者に使用し、即時的な歩行速度、歩数、身
体運動の変化を観察した.【対象】回復期病棟入院の10m歩行が可
能な片麻痺患者10名(男女各5名 Brs.61名 55名 44名、発症から
91.7±34.0日 年齢71.2±10.1歳)
【方法】10m歩行テストを(1)訓練
時レベル(2)L300を着用にて各2回行い、歩行時間、歩数を測定.患
者の歩行をビデオカメラで撮影し、前額面上の身体動揺( 1歩行
周期の頚部軌跡と足底面の角度)を比較.統計処理に対応のあるt
検定を用いた。尚、本研究は当院倫理委員会の承認を得た。
【結
果】1、10m歩行での歩行時間(1)訓練時歩行15.9±2.7秒/(2)L300
使 用16.1±3.3秒(ns)。 歩 数(1)訓 練 時 歩 行24.2±4.0歩/(2)L300使
用23.9±3.6歩(ns)。L300使用での歩行時間は1回目 16.5±3.8秒、
2回目15.6±2.8秒と2回目に短くなる傾向があった。2、前額面上
の動揺(1)訓練時歩行5.0±1.1°(2)L300使用3.8±1.0°(p=0.004)
【考
察】今回、歩行時間、歩数にL300使用での即時的な変化はなかっ
たが、慢性期での報告や今回1回目より2回目に歩行時間が短縮す
る傾向があることから、回復期でも継続使用により歩行速度、歩
幅の向上が見込まれるのではないか。またL300の即時効果とし
て前額面上の身体動揺を軽減させる可能性がある。
【はじめに】移乗用リフト(以下リフト)は、重症者の安心・安全
を確保する意味で非常に有用とされている。しかし臨床現場では、
時間がかかる、面倒、非人道的などの理由から浸透していないの
が現状である。当院では、定額レンタル契約の元、様々な福祉用
具をレンタルし、提供しているが、中でもリフト導入に関しては、
導入時期や適応基準は不明確である。【目的・方法】リフト使用
者の傾向を探り、リフト導入基準の一助となることを目的とする。
2011年6月1日〜2015年3月31日の期間に、当院でリフトを導入
した患者37名のうち、複数回入院などを除く29名を対象とした。
調査項目は疾患、年齢、入院日数、リフトの種類、リフト使用日数、
意識レベル、入退院時FIM、転帰先などを調査した。
【結果】平均
年齢は66.2±16.7歳であった。入院日数平均は150.6±92.4日、リ
フト使用日数平均は76.1±57.7日であった。意識レベルはJCS1
桁34.5%、JCS2桁48.3%、JCS3桁17.2%であった。FIMは入院
時平均24.4±10.6、退院時平均32.4±25.1で、転帰先は在宅、療養
型病院、急性期病院の順であった。
【考察】入院からリフト使用ま
での期間にばらつきがあり、リフト導入に関して統一性がないこ
とが分かった。リフトに対するスタッフの考え方の違いや使用方
法に対する不安などが原因と考える。重要なことは、患者が安心・
安全に移乗でき、介助者の身体を守る事であるとすると、リフト
の普及に努めていきたい。
O40-4
O40-5
○柴田昌知(その他)
,淡野義長,井手伸二
○竹内俊介(理学療法士),松久麻子,橋本 学,田中裕司,
三橋尚志
一般社団法人是真会 長崎リハビリテーション病院
医療法人社団行陵会 京都大原記念病院
回復期リハビリテーション病棟における福祉用具の
使用状況について〜福祉用具の満足度〜
慢性関節リウマチ患者への足趾形成術後に対する足
趾スプリント製作の試み
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟の運営にあたり、福祉
用具対応は自立支援に向けて重要な取り組みであり、テクノエイ
ド部として専門的な対応を行っている。今回は福祉用具使用終了
時に担当チームが記入する評価結果報告書を用い、福祉用具の満
足度を調査したので報告する。
【方法】対象は2015年1〜5月に物
品の使用が終了した63症例111件。検討項目は、患者身体変化・
患者生活変化・患者気持ちの変化・患者満足度・使用中困ったこと・
使いにくさ・目標達成度・スタッフ満足度・終了理由の9項目で
評価結果報告書より収集した。
【結果】有効数52症例89件。物品
は、立ち上がり支援用具22件、標準型車いす15件、チルトリクラ
車いす12件、リフト11件と続いた。患者満足度は、満足28%、ど
ちらかといえば満足42%、不満足8%、不明22%であり、スタッフ
満足度は、満足45%、どちらかといえば満足43%、不満足10%、不
明2%であった。終了理由は、退院後も継続使用35%、改善27%、
退院先に情報提供10%、退院後の環境に合わせ他物品に変更3%、
転院終了7%、不適合16%であった。
【考察】少なくとも満足して
いるケースが6〜8割、次に繋げることができたケースが8割と多
いことから現状では概ね満足していることが伺える。また、入院
中に身体能力等が改善して終了しているケースや退院後を見越し
た物品変更などもあることから、患者個別の状況に応じ物品を使
用していることが示唆される。
【はじめに】今回、足趾変形の改善を目的に足趾形成術を受けられ
た慢性関節リウマチ(以下RA)患者に対して外反母趾を抑制し、関
節変形予防を図るため夜間就寝時用の足趾スプリントを製作し
た。その有効性を検証する目的でアンケート調査を行ったので報
告する。
【対象】足趾形成術を施行したRA患者4名
【方法】足趾スプリントの提供より1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後の
外来受診時にアンケートを回収した。アンケート内容は使用頻度
と使用感、変形予防効果、劣化の有無、満足度などを調査する。
【結果】1ヶ月後でのアンケートでは、4名とも「毎日」装着してい
た。3ヶ月後では「週に数回」へ減少した。6ヶ月後では2名が「未
使用」だった。使用頻度が減った理由として、「着脱に時間が掛
かる」
「靴下が履けない」
「拘束感や蒸れにより睡眠が妨げられる」
といった意見が挙がった。変形予防に関しては1ヶ月後では「よ
く出来ている」1名、「出来ている」1名、「あまり出来ていない」2
名であり、6ヶ月後のアンケートでは使用継続している2名が「あ
まり出来ていない」だった。スプリントの劣化の報告はなかった。
【考察】RAの足趾スプリント製作について、拘束感や蒸れなどの
不快感があり、素材の通気性・伸縮性の改善の必要性が示唆され
た。変形予防については、2ヶ月以降の予防効果の持続性を再検
討する必要がある。
102
O41-1
O41-2
装具検討会の新たな取り組み −簡易歩行分析シス
テムの活用−
脳血管障害片麻痺患者の歩行訓練におけるバイオ
ニックレッグ使用の効果
○藤本康浩(義肢装具士)1),佐川 明1),大垣昌之2),山木健司2),
加藤美奈2),松岡美保子3),冨岡正雄4)
○渡辺達也(理学療法士)1),飯田修平1,2),川北 大1),山下哲谷1),
辻本徳栄1)
1)川村義肢株式会社,2)社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院
リハ技術部,3)社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院 診療部
4)大阪医科大学 総合医学講座 リハビリテーション医学教室
1)医療法人沖縄徳洲会 千葉徳洲会病院 リハビリテーション科
2)帝京平成大学 健康メディカル学部 理学療法学科
【はじめに】脳卒中片麻痺者の下肢装具の必要性・作製目的・装
具種類などを適切に判断する為、我々が訪問している施設で装具
検討会を実施している。装具検討会は、週2回、1症例に30分程度
で、医師(リハ医)
・装具グループ所属理学療法士・担当理学療法
士と共に、義肢装具士もチームの一員として参加している。対象
者は、主治医から装具作製の処方があった場合や、理学療法士よ
り装具適応と判断された場合、また装具回診により装具適応と判
断された患者である。
【新たな取り組み】従来の評価項目(患者の状況説明・関節可動域
と筋力・立位の支持性の評価・裸足歩行、必要と思われる装具を
装着しての歩行評価)に新たに簡易歩行分析システムGait Judge
System
(以下、GJS)を導入して、GJSより得られる底屈制動モー
メント・足関節角度・表面筋電計位の情報から、客観的に下肢装
具の必要性・装具の種類・継手の選定について検討が行えるよう
に取り組んでいる。
【効果】片麻痺者において、ロッカー機能が再現されているかどう
かは目視で判断が難しい。GJSは、臨床現場で容易に計測ができ、
評価者に歩行の特徴をフィードバックすることができるので、義
肢装具士の立場からも下肢装具の必要性・装具の種類・継手の選
定を提案するうえで有効であると考える。
【目的】本研究の目的は、当院の脳神経外科、リハビリテーション
科に入院する脳血管障害片麻痺患者を対象に、Alter-G社製バイ
オニックレッグを使用した訓練効果を検討することである。
【対象】50歳台、男性、右脳皮質下出血。左片麻痺。
【試験方法】非盲検ABA型シングルケーススタディ。A1期および
A2期は従来の下肢装具使用での訓練、B期はバイオニックレッグ
使用での訓練行い、それぞれを10日間、計30日間行う。訓練時間
は1時間であり、前半の30分間は装具を使用しない通常訓練、後
半の30分間はA期では従来の下肢装具を使用した訓練、B期では
バイオニックレッグを使用した訓練を実施し、各期の訓練効果を
比較検討する。
【評価内容】10m歩行速度、歩行率、Berg balance scale
【経過】A1期に比較しB1期にて麻痺側下肢に対しての円滑な荷重
コントロールの改善あり。これに伴い、歩行スピードの向上、バ
ランス機能の改善がみられる。
【今後の展望】バイオニックレッグは脳神経片麻痺患者に対して
の歩行訓練において効果改善が期待できる。今後は統計的な検証、
被験者数の増加による非実施群と実施群の比較検討を行っていく
事で更なる有用性を検討する。
O41-3
O41-4
○高木志仁(理学療法士)
,池田裕哉,武田好史,上村悠月,
山本政孝
○天竺俊太(義肢装具士)1),勝谷将史2),藤本康浩1)
藤聖会 八尾総合病院
1)川村義肢株式会社
2)西宮協立リハビリテーション病院
体重免荷式リフトPOPOの治療効果
〜既往に変形性膝関節症がある小脳出血後運動失調
を呈した一症例〜
臨床場面での簡易歩行分析システム運用
【はじめに】脳卒中患者の歩行練習において、神経症状の他に運動
器疾患が障害の一因となる場合が臨床上よくある。今回、既往に
変形性膝関節症(以下OA膝)があり、小脳出血後に運動失調を呈
した患者の治療にモリトー社製免荷式リフトPOPO
(以下POPO)
を使用した結果、歩行能力の向上がみられた為以下に報告する。
【症例提示・方法】対象は平成26年12月に右小脳出血を発症した
60代女性。身長150cm、
体重50kg。既往に10年来の両OA膝あり。
40日病日後に当院へ転院し理学療法を開始、90病日後POPO使用
下で歩行練習を開始した。POPO開始時の理学療法評価はstroke
impairment assessment set
(以下SIAS)64点、下肢協調性障害あ
り。T字杖歩行は要見守りで膝外側動揺ありバランスを崩す様子
が観察された。POPOの免荷量は本人が快適と感じる10kgとし、
最大速度で50m歩行6回を13日間歩行した。POPO練習期間中T
字杖歩行の10m歩行速度、歩数、歩行率を評価した。
【結果】10m
歩行速度、歩数、歩行率はPOPO歩行開始時に29秒0、41歩、1.41
歩/秒であったが、13日後に20秒4、31歩、1.51歩/秒となった。【考
察】本症例は両側下肢のアライメント不良・筋力低下に加え、麻
痺側下肢協調性障害が複合し歩幅・歩行率の低下に影響したと考
える。今回体重支持と姿勢制御をPOPOのサポート下で、速い速
度での歩行練習を経験することで協調的ステッピング能力を学習
し、歩行頻度増加が歩行能力向上に影響したと考える。
【はじめに】脳卒中の装具作製では、義肢装具士もリハビリテー
ションチームの一員として歩行評価を行い装具形状や継手選定に
関与する。従来は経験や過去の知見からのアドバイスしか出来な
かったが、簡易歩行分析システムGait Judge System(以下GJS)
により、装具選定に根拠をもって臨むことが出来るようになった。
【取り組み】導入施設では生活期患者の外来診察を積極的に行っ
ている。その際主治医立会いのもと、新たに装具作製を検討して
いる患者だけでなく、過去に装具作製した患者の経過確認として
GJSを取り入れ分析を行っている。義肢装具士、主治医と分析結
果を患者へフィードバックを行い装具選定を行っている。
【症例】60代女性.右被殻出血左片麻痺、3年前に短下肢装具 (油圧
式継手)装着。退院後足部内反、骨盤帯が後方に残り揃え型歩行の
傾向が見られた。
【経過】短下肢装具(油圧式継手)の足部内で内反が発生し踵接地し
てからの下腿前傾が遅れていることが分かった。足部の構造を板
形状からヒールカップ構造へ変更したことにより下腿前傾が改善
された。また3ヶ月後経過確認の為GJSを用いて分析フィードバッ
クをし股関節伸展を意識することで前型歩行に改善され、下腿三
頭筋の活動に変化が見られた。
【まとめ】GJSを用いてフィードバックを行うことで患者自身が
変化を理解し、歩行改善に取り組むことで、経過確認の重要性を
知ることができた。
103
O41-5
O42-1
○木下千津代(理学療法士)1),近藤成美1),諸田洋和1),村田元徳1),
中島洋介2),小池知治1),前田 實1)
○橋本 卓(理学療法士)
1)医療法人三九会 三九朗病院 通所リハビリテーション
2)東名ブレース株式会社
医療法人敬和会 大分豊寿苑訪問看護ステーション
当施設利用者の下肢装具の使用状況とフォローにつ
いて
モチベーションを引き出す訪問療法士スキルの重要
性 −パーキンソン病の一症例を経験して−
【はじめに】パーキンソン病は進行性疾患であり、現在も根本的治
療が困難な難病であるが、リハビリと薬物療法により自立期間を
延ばすことができるのは周知の通りである。今回、娘の結婚を機
に大きな状態の改善が認められた症例を経験したので報告する。
【症例紹介】56歳男性、176cm、89.7kg。妻と二人暮らし、子二人
はそれぞれ県内外で独立。要介護度3、Yahrの重症度分類Stage3。
2003年パーキンソン病確定診断を受け、2013年9月に訪問リハ開
始となる。開始より約半年間は身体面、ADLに大きな変化は見ら
れなかったが、会話の中で娘の結婚式でバージンロードを一緒に
歩きたいという一言が聞かれたため、それに向けてプログラムを
再考した。【方法】2014/5/19〜2014/11/27の約6ヵ月間、結婚式
を想定した動作練習、自主トレメニューの作成、体重管理の促し
を行った。
【結果】期間中の介護度見直しにより要介護度は3から
2へ改善し、バージンロードを娘と一緒に歩くという希望を叶え
る事ができた。さらに、この取り組みの過程で障害者雇用促進企
業への復職も果たした。【考察】症例の運動に対する意識を受動的
なものから能動的なものへ変容させる促しが行えた事により、非
常にポジティブな結果が得られた。併せて利用者との早期ラポー
ル形成の重要さも改めて実感した。今回は一症例だけだが、症例
を増やし、この成功体験を体系化してより質の高い訪問リハビリ
が提供できるよう研鑽していきたい。
【はじめに】当院は平成18年に通所リハビリテーション(以下通所
リハ)を開設し、年々下肢装具利用者が増えている。週に1〜2回
の利用頻度の為、装具の劣化や破損などの異常に気づきにくい事
がある。今回使用装具と修理状況を調査しチェック表を作成した。
【対象と方法】平成20年5月から平成27年3月までに、当通所リハ
を利用した人で装具業者と関わった追跡可能な727件について調
査した。またチェック表作成の為に平成26年10月から平成27年
3月まで装具修理状況の事例を集め写真で記録した。
【結果】平成27年3月末時点で装具使用者は121名で、金属支柱付
短下肢装具が最も多かった。装具修理件数は平成20年度の78件
に対し、平成26年度は175件と増加している。修理内容はベルト
の交換、継ぎ手の修正、部品交換、内張り・滑り止めの張替え、下
腿とのフィッティング、靴の加工等であった。
【まとめ】装具は時間経過に伴い劣化するが、早めに部品修理・交
換すれば長く使用できる一方、身体状況変化に伴う不適合も見ら
れる。今回、装具の種類の修理状況の調査と修理前後の写真撮影
を行い、チェック表を作成した。これにより低頻度の利用者でも
装具の劣化・破損状況を把握できるようになった。今後も回復期
以降の装具の修理の追跡調査や修理事例を記録し、利用者が安心
して歩行が行えるように装具のフォローをしていきたいと考え
る。
O42-2
O42-3
○井口佳奈美(作業療法士)1),伊木和磨1),上野朝子1),鈴川剛弘1),
今田直樹1),鮄川哲二2),沖 修一2),荒木 攻2)
○廣瀬正子(理学療法士)1,2),鈴木 暁1),福崎幸子2)
1)医療法人光臨会 荒木脳神経外科病院 リハビリテーション部
2)医療法人光臨会 荒木脳神経外科病院 診療部
1)医療法人社団明芳会 横浜新都市脳神経外科病院 リハビリテーションセンター
2)医療法人社団明芳会 江田訪問看護ステーション
回復期担当療法士が生活期の訪問リハビリテーショ
ンを経験してみえてきたこと〜主婦として在宅復帰
した症例を通して〜
脳卒中後うつを呈した症例〜在宅での関わり〜
【はじめに】当法人では回復期リハビリテーション(以下、回復期
リハ)病棟退院後に訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)を
利用する方に対し、病院療法士が訪問リハ療法士と共に介入する
取り組みがある。今回、この取り組みを通して主婦として在宅復
帰した一例を報告する。
【症例】70歳代女性、右頭頂部皮質下出
血により重度左片麻痺を呈し入院。29病日に回復期リハ病棟へ
転棟。207病日に自宅退院。211病日より訪問リハ開始。転棟時
Lawton1/8点。病前は友人との外出が多く自宅では主婦として家
事を担っていた。【経過】退院後も病前と同様の生活を送りたい
との希望を入院中から聴取しており、入院中から退院後まで継続
して一本杖・短下肢装具を使用した屋外歩行や家事練習を行った。
退院後、夫の心配により一時活動性が低下したため家族へのフォ
ローも行った。
【結果】270病日頃より友人とスーパーへ買い物に
行けるようになった。不安のあった調理等の家事に対しても前向
きに取り組めるようになった。介入終了時Lawton5/8点。【考察】
回復期と生活期に同一療法士が介入したことで生活歴やニーズを
早期に把握でき、屋外歩行や家事練習を重ね、主婦としての役割
の再獲得ができたと考える。また、家族との信頼関係が構築され
ていたため家族へのフォローができ、本人の安心に繋がったと考
える。病院療法士から退院後のサービス担当者へ情報発信するこ
との重要性を再認識した。
【はじめに】脳卒中後うつ(Post stroke deperession以下PSD)の
発生率は脳卒中患者の23〜40%であり、脳卒中発症後より2年間
に多いとの報告がある。今回、自宅退院後にPSDを生じた脳卒中
症例に対し、在宅での関わりを報告する。
【症例紹介】70代女性。
脳梗塞を発症し、4か月の入院後自宅退院。中等度の左片麻痺、感
覚障害を呈し、屋内歩行自立、屋外見守り、ADLは入浴以外自立。
夫と息子の3人暮らし。病前は社交的で活発な性格であった。
【経
過】退院後、翌週より歩行能力の改善と室内の動作確認のため訪
問リハを開始した。退院後4週目「胸がドキドキする、気持ちが落
ち着かない」と聞き、介護支援専門員(以下CM)に報告した。退
院後6週目「眠れない、耳鳴りがする、デイケアに行っても疲れる
だけ」と訴えが続き積極的な介入が困難であった。CMが役所に
相談、精神科の受診を提案された。本人の同意後、退院後8週目よ
り精神科の往診が開始。服薬処方後眠れるようになり、笑顔も増
えた。退院後48週目歩行速度の改善(200m25分→17分)、50分連
続歩行に挑戦。成功体験が自信に繋がり、
「駅まで歩きたい、電
車に乗りたい」と意欲的な発言が見られた。【考察】本症例は、病
前との生活の違いから「できない自分」を実感しうつ傾向になっ
たが服薬の処方により精神面の安定が図れたことが意欲的な行動
や発言に繋がったと考える。各支援者が情報を共有し関わってい
くことが大切であると実感した。
104
O42-4
O42-5
○長岡伸治(理学療法士)1),坂野裕洋2),村田 淳3),市川淳一1),
竹内良介1),津久家梓1),杉浦健太1),関島章太郎1),伊藤竜司1),
豊田千絵1)
○高橋伸明(作業療法士),今 恒人
介護度別にみた訪問リハビリテーション利用者の特
徴について
活動・参加型の短期目標の検討〜生活行為向上マネ
ジメントを使用して〜
1)医療法人宏和会 やまぐち病院 リハビリテーション科
2)日本福祉大学 健康科学部,3)医療法人宏和会 リハビリテーション部門
かなえるリハビリ訪問看護ステーション
【はじめに】活動意欲が高いにも関わらず、疾患により身体機能が
低下し、外出の機会が減る事例は多い。生活行為向上マネジメン
トの考え方の元、活動・参加型の目標設定を行い、外出機会増加
と意欲向上に取組む機会を得たので以下に症例報告する。【症例
紹介】82歳、男性、パーキンソン病ステージ4。頚部・体幹の可動
性低い。動的バランスの低下により、段差や方向転換時の転倒が
多い。外出機会は通所介護のみ。【経緯】外出機会が減少したこと
で精神面に落ち込みが見られる。活動と参加の目標設定に繋げる
ため、利用者が外出したい理由、外出の目的等を掘り下げて聞き、
短期目標を検討した。生活行為向上マネジメントシートを使用し
て本人の現状能力を整理し、習慣としていた近所の神社への参拝
を目標に設定。独歩から杖歩行に変更し、歩行の安定性・持久性
の向上を図った。
【結果】現在は近位監視で神社への参拝が行え
るようになり精神面の改善がみられ、ご自身が大切に思っている
外出機会が増加した。
「他の目的地へも行きたい」と更なる意欲
の向上も見られるようになった。
【考察】今回のように、外出への
希望がありながらも、果たせない利用者は少なくない。生活行為
向上マネジメントの考え方は、利用者の背景や目的をより明確に
し、生活行為向上マネジメントシートを活用することで、意欲を
引き出しつつ達成可能な目標を設定し実現することが出来ると考
える。
訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)は、支援から介護を必要
とするものまで、様々な利用者を対象に行われている。そこで、
介護度の違いによる訪問リハ利用者の特徴を明らかにすることを
目的に、当事業所の利用者104名を対象にアンケート調査を実施
し、比較検討した。平成26年9月1日から12月31日の期間に担当
セラピストが年齢、性別、原疾患、配偶者の有無、主たる介護者、
訪問リハビリの目的、基本動作の状況、移動の手段、平均的な1週
間の活動頻度、疼痛の有無について聴取した。さらに疼痛を有す
るものには、疼痛の部位、強度、種類、持続期間についても聴取し
た。得られた結果は、
要支援群(要支援1・2)
、
低介護度群(要介護1・
2)
、高介護度群(要介護3-5)に分類した。その結果、要支援群は
後期高齢者の女性で運動器に問題を抱えているものが多かった。
低介護度群は、神経疾患を罹患した後期高齢者が半数以上を占め
ており、基本動作や歩行は自立しているものが多かった。高介護
度群は神経疾患を罹患した後期高齢者で、高齢の配偶者が介護し
ているものが多かった。また、介護度に関わらず、多くの対象者
では腰部や下肢に中等度から高強度の疼痛を1年以上も抱えてお
り、活動頻度が極端に少なかった。以上の結果より、訪問リハ利
用者では、介護度の違いに関わらず、活動頻度を高めるような働
きかけと慢性的な疼痛の管理が重要であることが示唆された。
O42-6
O43-1
○中島鈴美(理学療法士)
○小笠原涼介(理学療法士),武田 哲
訪問リハビリ修了についての一考察
自宅退院後の活動・社会参加支援が円滑に行われた
症例〜回復期との情報交換・目標共有の在り方につ
いての一提案〜
三軒茶屋リハビリテーションクリニック
一般財団法人脳神経疾患研究所 南東北通所リハビリテーションセンター
今年度の介護保険改定において訪問リハビリ(訪問療法)は、活
動、参加に対して方向付けを見据えたかかわりが求められた改定
となっている。その本意は身体機能の向上、維持を目標に、多く
は歩行練習など機能面へのアプローチが占めていた現状から、在
宅における生活の質の向上、再構築についての取り組みを見直し、
在宅(地域)におけるリハビリテーションの在り方が問われている
ものと考える。当クリニックでは、訪問開始時から状態の変化に
応じて訪問頻度調整行い、当事者が主体的に生活を送れることを
働きかけている。状態に合わせて頻度調整し修了に結び付けた事
例を通して、訪問の修了について考察を加える。
【事例】H21年
脳梗塞発症。右麻痺、軽度失語症。半年後自宅退院。歩行時の首
の緊張が高くなり「将来が見えない」と抑うつ的な気分の状態が
続きH24年8月より訪問開始。
【訪問理学療法内容と頻度】身体の
特徴の説明と注意点を反復助言し、屋外歩行で不安個所について
実践する。週1回から開始し12ヶ月後隔週、15ヶ月後月1回へ頻
度を変更し、本人から課題を提示してもらい慣れた場所以外へも
外出するようになり18ヶ月後修了。
【まとめ】訪問療法では開始
より活動、参加を見据え、心理面に配慮し当事者の不安、課題に
ついて能力を見極めることが重要である。更に療法からの転換を
念頭に自身でも考える支援や環境作りの働きかけが当事者の主体
性への手掛かりとなる。
【はじめに】回復期から通所リハビリへ移行後、活動・参加レベル
の目標設定と同意形成までに難渋する場面が多い。今回、退院前
訪問における同グループ回復期病棟との情報交換・目標共有によ
り活動・社会参加支援が円滑に行われた事例を経験した為以下に
報告する。
【症例紹介】70歳代後半、女性、要介護1、既往:脳性麻痺・
高血圧症、HDS-R:24点、FIM:111点(独歩自立) 外出先にて転
倒し左大腿骨頸部骨折を受傷(THA施行)。受傷2ヵ月後回復期病
院へ転院され受傷3ヵ月後に自宅退院。その後、実態調査及び退
院前訪問を同時に実施。買い物・友人宅(アパート3F)・温泉に行
きたいとの希望あり、支援内容を屋外歩行練習・友人宅周囲の環
境評価と階段昇降練習・入浴動作練習に決定。本人の同意を得る。
数日後、通所リハビリ利用を開始し上記内容で約3ヵ月間支援し
た。
【結果】利用1ヵ月:パン屋(約200m先)への買い物、1ヵ月と2週:
スーパーへの買い物(毎日)、2ヵ月:友人宅への訪問(3回/週)、3ヵ
月:友人との外食(1回/月)が可能となる。
【考察】活動・社会参加
に繋がった要因として回復期入院中に活動・参加レベルの目標を
明確に設定していたこと、退院前訪問において回復期との十分な
情報交換・目標共有が行われ、通所リハビリでの支援が早期より
開始・展開できたことが考えられる。【おわりに】地域包括ケアシ
ステム構築に向けた第一歩としてまずはグループ内におけるシー
ムレスな連携体制を整備していくことが重要と考える。
105
O43-2
O43-3
○立花浩亮(理学療法士)
,志田知之,大石浩隆,上杉義隆,
中倉孝行,中村真由美
○山岡直緒樹(理学療法士)
医療法人天心堂 志田病院
医療法人南の風 みなみの風診療所 通所リハビリテーションみなみの風
要支援者への自主訓練がもたらす身体機能改善の効
果について
通所リハでの就労支援へ向けた介入経験 〜一症例
を通しての報告〜
【はじめに】通所リハビリテーション(以下、DC)では要支援者に対
し、主に集団体操が実施され、自主訓練指導は行えていなかった。
そこで個別に自主訓練カードを作成し、その導入前後で身体機能
の変化について評価した。
【方法】自主訓練カードの内容は、利用者の身体状況と当施設にて
使用可能な機器を参考に担当セラピストが利用者との協議の上
決定した。評価対象者は平成26年6月〜11月の期間内で当院DC
を利用した要支援1(7名)、要支援2(12名)の計19名とし、自主訓練
カード導入前後で、BBS、TUG、5m歩行を比較し効果を検証した。
【結果】導入前のBBSは36.4点、TUGは27.0秒、5m歩行は13.7秒
で あ っ た が、導 入 後 のBBSは41.6点、TUGは27.8秒、5m歩 行 は
13.7秒で、BBSに有意な差が認められた。
【考察】BBSが改善した理由として、マシントレーニング等によ
る身体機能へのアプローチにより基礎的な筋力強化が図られバラ
ンス向上に繋がったと考えられる。しかし歩行等の応用動作へ繋
げる事が不十分であると思われ、今後は更に質の高い自主訓練の
導入やカードの改訂が必要である。また、身体機能の向上だけで
なく社会活動への参加に向けたアプローチも必要と考えられる。
【まとめ】今回の取り組みにより身体機能面での改善は認められ
たが、実際の動作へ繋げるには更なる工夫が必要であり、今後の
課題である。
【目的】脳卒中生活期のリハは介護保険領域が中心で、対象は高
齢者が多く関わるセラピストも就労に向けた介入をする機会は
少ない。今回、就労継続支援B型の利用に至った症例を通して介
入の報告をする。
【症例紹介】左被殻出血、失語症、50歳代男性、
要支援1、発症33ヵ月で当通所リハ開始。車の運転可能、Barthel
Index:100点。【経過】27ヵ月間の外来リハ期間中に就労の話が
あるも関心は示さず。通所リハ利用後も就労の話は続け、発症
42ヵ月目に初めて就労の意志を確認。通所リハで色々な経験を
し、徐々に気持ちが変化したとの意見が聞かれた。49〜51ヵ月目、
2ヵ所の職業支援センターへ同行し3回に分け評価が行われた。
52〜53ヵ月目、3ヵ所の就労継続支援B型の見学に同行し1ヵ所を
体験。54ヵ月目、体験した所を週3回で利用開始。56ヵ月目、週
4回の利用へ。セラピストの同行により、職業支援センターから
は情報の共有や評価が行いやすい、ご家族からは安心するとの意
見が聞かれた。【考察】発症から長期間就労への関心を示さなかっ
たが、継続した就労の意志確認や、基本となる能力面へのアプロー
チを行うことで就労への意識の変化が現れた。そのタイミングで
職業支援センターや事業所との連携を行い、見学へ同行すること
で利用に至りやすかったと考える。今回の就労支援へ向けた介入
を経験し、今後も就労年齢にあたる対象者への介入や、要支援者
でも社会参加に向けた介入を行っていきたい。
O43-4
O43-5
○中野仁史(理学療法士)
,高柳公司,有村圭司,八田勝也,
田邊花倫,小島 進
○松並健治(理学療法士),米倉友理子,稲福 唯,兼城賢也,
久貝明人,千知岩伸匡,湧上 聖
医療法人社団東洋会 池田病院
医療法人緑水会 宜野湾記念病院
当院短時間通所リハビリテーションの現状と今後の
課題
当院における通所リハ利用者の課題
【はじめに】平成27年度介護報酬改定により、通所リハビリテー
ション(以下通所リハ)に対し、活動と参加に焦点を当てた取り組
みが求められている。当院では平成24年より短時間(1-2時間)通
所リハを開始し3年が経過し、現状について調査したため報告す
る。
【対象・方法】
平成24年6月の開始から平成27年5月までの
通所リハ利用者82名(男性39名、女性43名)平均年齢73.4±10.4歳。
カルテより年齢、性別、主病名、介護度、利用状況について調査し
た。利用状況については、通所リハ継続者と終了者に分類し、終
了者の転帰と利用期間を調査した。
【結果】対象者の内訳は運動
器疾患53名、脳血管疾患29名。介護度分類は要支援1、31名、要
支援2、34名、要介護1、10名、要介護2、6名、要介護3、1名。通所
リハ利用者のうち、終了者41名、継続者41名。終了者の終了理由
は、身体機能向上15名、通所介護移行4名、状態悪化(内科疾患増
悪等)13名、その他サービス移行1名、施設入所3名、死亡5名であっ
た。身体機能向上による終了者の利用期間は、1年未満5名、1年
〜2年未満3名、2年〜3年未満7名であった。通所リハ継続者では
2年以上利用している者が39名であった。
【考察】当院通所リハに
おいて、終了者のうち15名は身体機能向上により、終了し社会参
加に至った。しかし、
継続者のほとんどが長期利用であり、今後は、
継続者の分析や自立支援の内容についての再検討が課題であると
思われた。
【目的】平成27年度介護報酬改定に伴い、リハビリテーションマネ
ジメントの基本的な考え方として、調査、計画、実行、評価、改善の
サイクルの構築が必要とされている。今回、通所リハビリ利用者の
課題収集を目的として、調査に焦点をあて検討することとした。
【対象・方法】平成27年4月から5月において、当院通所リハビリ
テーションを利用し、調査内容に同意を得られた方41名を対象と
した。カルテより1)年齢別2)性別3)疾患別4)介護度別の4項目
を収集し、「興味・関心チェックシート」を使用した質問による
調査を実施した。
【結果】1)年齢別:80.75±7.6歳。2)性別:男性13名、女性28名。
3)疾患別:脳血管疾患46.3%、運動器疾患51.2%、廃用症候群
2.4%。4)介護度別:要支援1が4.9%、要支援2が17.1%、要介護
1が26.8%、要介護2が26.8%、要介護3が14.6%、要介護4が7.3%、
要介護5が2.4%。
質問結果より「してみたい」の回答が多かった項目は、旅行・温泉
61.0%、散歩46.3%、友達とおしゃべり・遊ぶ36.6%、映画・観
劇・演奏会36.6%、地域活動(町内会・老人クラブ)34.1%、買物
34.1%。
【考察】結果から、旅行や散歩などの活動内容に希望を持っている
ことが判明した。今後は、定期的な調査、必要に応じた会議や計
画書作成を継続し、活動・参加へのリハビリテーションを提供し
ていくことが課題である。
106
O43-6
O44-1
通所リハビリテーション利用者における初回評価か
ら1年後の身体活動量変化と関連する要因
兵庫県淡路圏域における地域リハビリテーション支
援事業の展開(1)〜淡路圏域地域リハビリテーショ
ン支援センターの立場から〜
○畠山 功(理学療法士)1,2),対馬栄輝2),中濱雄太3),畠山千春3),
小笠原啓太3),澤谷晴香3),宮本亜矢子3)
○廣岡幸峰(理学療法士)1),藤本康弘1),中尾幸代1),平瀬千恵2),
久田佳宏2),柿本裕一2)
1)社会医療法人仁生会 訪問リハビリテーション西堀
2)弘前大学大学院 保健学研究科
3)社会医療法人仁生会 西堀病院通所リハビリテーション
1)順心淡路病院 リハビリテーション科
2)兵庫県淡路県民局洲本健康福祉事務所
【目的】高齢者の行動変容として身体活動量(活動量)が重要である
が、要支援や要介護者に関する活動量の報告は少なく、縦断研究
は行われていない。本研究は、通所リハビリテーション(デイケ
ア)利用者の初回評価から1年後の活動量変化と関連する要因を
検討している。
【方法】対象は、当院デイケア利用者の内認知症の
既往がない歩行自立者36名。性別は男性21名、女性15名、平均
年齢は73歳(53-96)。活動量は、ライフコーダEXを1週間装着し
歩数を評価した。身体機能は最大10m歩行速度、Timed Up and
Go Test(バ ラ ン ス)、6Minutes Walking Distance(全 身 持 久 力)、
等尺性膝伸展筋力を評価した。心理面は、転ばない自信のFall
Efficacy Scale改訂版、健康関連QOLのSF8 Health Surveyを評価
した。活動範囲は、Life-Space Assessmentを評価した。日常生
活活動は、Functional Independence Measureを評価した。個人
因子は、同居家族、初回評価から1年間の転倒、役割や趣味、既往
歴の有無を評価した。検討項目は、初回評価から1年後の活動量
変化と関連する要因とし、統計ソフトR-2.8.1を使用し多重ロジ
スティック回帰分析により検討した。
【結果と考察】統計解析の
結果(p<0.05)、デイケア利用者の初回評価から1年後の活動量変
化と関連する要因として、年齢(オッズ比2.75)、既往歴の有無(オッ
ズ比0.37)、SF-8活力(オッズ比2.23)、バランス(オッズ比4.9)、全
身持久力(オッズ比3.45)が重要であると考える。
【はじめに】兵庫県では、県内に圏域リハビリテーション支援セン
ターを設置するなど、地域リハ体制整備を推進している。当院に
おいても県より淡路圏域地域リハビリテーション支援センター
(以下、当支援センター)の指定を受け、平成17年から活動を開始
した。今回は、平成25年度以降の当支援センターの活動を報告す
る。
【当支援センターの活動】平成21年度より、保健所協力のもと各
関係機関の代表と協議する実務レベルの会議を開催し、地域の課
題の把握や解決のための戦略を立ててから活動をすることとなっ
た。
【現在の活動】1)各施設リハスタッフ責任者との連携(病院施設、
訪問リハビリ、通所リハビリ連絡会)
、2)理学療法・作業療法・
言語聴覚士協会との連携、3)地域リハ関係職種との連携、4)脳卒
中クリティカルパスを利用した急性期〜生活期へ相互理解の支
援、を中心に活動を継続している。地域包括ケアに向けて、地域
の課題や今後リハ職が求められる役割について、各機関を交えて
協議し解決に向けた活動を行っている。
【今後の活動】当支援センターは、地域で切れ目なくリハ資源が受
けられる体制整備を目指している。今後も洲本健康福祉事務所
と地域の課題を共有し、協働しながら地域リハ体制整備の活動を
行っていく。
O44-2
O44-3
○平瀬千恵(その他)1),久田佳宏1),柿本裕一1),廣岡幸峰2),
藤本康宏2),中尾幸代2)
○前田和崇(理学療法士)1),徳永能治2),出田康紘1),種村優香1)
1)兵庫県 淡路県民局 洲本健康福祉事務所(洲本保健所)
2)医療法人社団順心会 順心淡路病院
1)長崎県島原病院 リハビリテーション科
2)長崎県島原病院 脳神経外科
兵庫県淡路圏域における地域リハビリテーション支
援事業の展開(2)
脳卒中になっても安心と思える地域を目指して〜脳
卒中ノートによるセルフケアへの取り組み〜
【はじめに】兵庫県淡路圏域では、平成21年度から保健所が地域リ
ハビリテーション支援事業(以下地域リハ事業)に圏域支援セン
ターと共に積極的に取り組んでいる。保健所本来の業務と地域リ
ハ事業の活動は、それぞれが関与することで地域包括ケア推進の
ための基盤が整備されると考える。
【保健所の業務】保健所は、1)保健医療計画の策定−圏域における
医療体制の現状分析や関係機関と地域の方向性の検討を行う。今
年度は、医療計画の一部として「地域医療構想」を策定。2)医療連
携・医療介護連携の支援−「地域包括ケアの推進」を目的に、今
年度は圏域内の他職種連携のための「医療・介護連携合同会議(仮
称)」の設置・運営と調整。3)関係機関との協力体制の構築−市の
計画策定会議への出席、介護予防事業の圏域事業報告や情報共有
への支援。
【地域リハ支援事業における保健所の役割と今後】保健所は、上記
のような業務を推進しながら、圏域支援センターと協働して地域
リハ事業を展開している。地域医療構想では、病院の機能分化を
進め、連携を強化していくことが求められるが、地域リハ事業で
既に行ってきた「脳卒中地域連携クリティカルパス」のデータ分
析や、パスを通じた病院間連携が反映できると考える。今後は、
これらのネットワークを生かして施策展開していきたい。
【はじめに】当地域では2009年より脳卒中地域連携パスを運用し、
脳卒中になっても安心と思える地域を目指して医療・福祉の連携
を図っている。昨年は「島原脳卒中症例集」を作成し、発症から在
宅に至る課題について共通認識を得ることができた。今後は患者・
家族が脳卒中に対する理解を深めセルフケアを促すことが重要と
考え、その補助ツールとして「島原脳卒中ノート」を作成したため
報告する。【方法】脳卒中地域連携パスを運用する急性期・回復期・
生活期の連携施設から6施設15名(医師、看護師、療法士、薬剤師、
ケアマネージャー、社会福祉士)で編集委員を編成し、各専門分
野で分担し執筆、編集した。
【結果】内容は脳卒中の病態や予防の
ための生活習慣・服薬について、さらに脳卒中後の生活に必要な
情報を中心に記載した。また、病院受診時に情報を伝えやすいよ
うに患者本人の情報(基本情報や血圧・服薬情報)の記入欄を設
けた。大きさは携帯しやすいA5版とし、脳卒中で入院した患者・
家族を対象に配布している。
【考察】実際に関わるスタッフの手
で編集することで、連携回復期病院のタイムスケジュールや関連
公的機関、地域包括支援センターの連絡先などの地域性の高いも
のが作成された。このような情報は発症前後の患者・家族の不安
軽減につながるものと考える。今後はアンケートを実施し内容を
充実させ、当地域の脳卒中患者・家族の安心のため継続的に役立
てたい。
107
O44-4
O44-5
「住民運営の通いの場」立ち上げにおけるリハビリ
テーション専門職の役割
『はちせい生活支援活動研究会』活動紹介
○今田直樹(作業療法士)1),佐藤優子1),沖 修一1),荒木 攻1),
山口麻子2),久岡桂子2),空崎菜都3),松田千鶴子3)
○黒澤秀幸(作業療法士),浜口龍太
1)医療法人光臨会 荒木脳神経外科病院
2)広島市西区健康長寿課保健予防係
3)広島市庚午地域包括支援センター
八王子保健生活協同組合 城山病院 地域リハビリテーションセンター
八王子保健生活協同組合城山病院 地域リハビリテーションセン
ター作業療法士 黒澤秀幸『はちせい生活支援活動研究会』紹介 介護保険による生活援助機能は縮小の方向にあり、地域包括ケア
の流れにあっては、地域住民による互助活動の仕組みの構築が求
められています。今回、私たちは生協という特性を活かした互助
活動の仕組みを構築していくべく、2012年度から「生活支援活動
研究会」を立ち上げ、今後、地域で求められる互助活動について
学習とその互助活動について検討を行ってまいりました。その内
容についてご紹介したいと思います。
【はじめに】国の「平成26年度地域づくりによる介護予防推進支援
モデル事業」の対象に、当院所在地区が選ばれ、地域病院リハビリ
テーション専門職(以下リハ職)として、住民運営の通いの場立ち
上げに参加する機会を得た。過程を振り返り、リハ職の役割を報
告する。
【取組】行政保健師、地域包括支援センター、リハ職の3
者で事前協議を重ね、週1回・2時間、全10回の講座を企画し、講
座前後には体力測定を実施。ラジオ体操・ロコトレ・元気じゃけ
ん体操(ご当地体操)を必須とし、他ミニ講座を実施。又、毎回後
半には参加者の仲間づくりを図る交流会を行い、参加型の教室で
はなく、参加者主体の考える機会を設けた。開催にあたり住民へ
は、行政より地区社協・地区民児協・町内会・老人会等に協力を
仰ぎ、ちらし回覧による周知広報を行う。
【結果】平均38.3人/回
の住民が毎回参加。終了時には、2つの町内において民生委員を
中心とした住民自身運営による通いの場が立ち上がる。
【まとめ】
今回、実施運営・調整は行政が担い、地域包括支援センターは地
区現状を伝える運営補助、リハ職は体力測定とフィードバック・
意識向上を図る講座などを担当。各役割を明確にしたことで、地
域で介護予防に取り組む基盤整備が行え、住民も行政や専門職に
与えられるのを待つのではなく「自分達で運営する」という今後
の介護予防において意識付けを図ることができ、通いの場立ち上
げに繋がった。
O44-6
O45-1
○山本なお子(看護師)1),渡辺幸太郎1),大井清文1),東 孝喜2)
○西村直美(看護師),高木さよ子,竹田弘美,吉村郁恵,
山田美恵
1)公益財団法人 いわてリハビリテーションセンター
2)せいてつ記念病院
医療法人和同会 宇部西リハビリテーション病院
東日本大震災後の岩手県沿岸地区サポートセンター
の健康講座の参加者評価
看護師が家屋調査に参加することの有効性を知る
全国規模の研究大会に参加してみると、家屋調査に参加している
Nsが少ないという報告を聞くことが多かった。わたしたちは、勤
務上調整がつく限り、受け持ちNsが家屋調査に参加して来た。し
かし、統一した調査項目・マニュアルの整備はなく、同行した他
メンバーとのカンファレンス時に、意見を述べるに留まり、Ns
の家屋調査参加の効果については明確ではない。 今回私たち
は、他職種がどのような部分でNsに期待しているのかを意識調査
し、そこからNsの家屋調査に参加することの有効性を知りたいと
思った。 PT、OT、Nsともに観察している項目に差があり専門
性が発揮された調査結果が出た。また、Nsは他職種から家族看護
を期待されている結果となった。そのため今後Nsは日常生活に
限らず家族の介護力、退院後の生活と資源の活用についても視野
に入れながら幅広く観察していく必要性がある。病棟での環境設
定、環境の修正をスムーズに進め、実際の生活の場での動作確認、
家族への注意喚起や必要な指導、患者が安全に暮らすことが出来
るように患者や家族に退院後の生活のイメージを持ってもらえる
ように働きかけることが大切である。2014年の法律改正を受け、
「入院時訪問指導加算を取得するため入院前後7日以内に訪問」を
している。マンパワー不足により、Nsが家屋調査へ現在同行する
ことが難しい状況である。しかし、この結果を受け今後参加出来
るように勤務状況を調整していきたい。
【目的】仮設住宅に入居している高齢者に実施した健康講座の効
果を明らかにする。
【対象】平成26年5月〜平成27年1月までの健康講座に継続的に参
加し、本研究の発表に同意を得た13名(平均年齢75.8±4.3歳、男3
名、女10名)で、開設日以外にも地域の活動センターで自主的に運
動を実施していた。
【方法】健康に関する講義、セルフストレッチング方法とロコモ
ティブシンドローム予防運動を2か月に1回実施。5月と11月に握
力、長座位体前屈、片脚立位の測定、5月と1月にSF8と健康講座
の感想の聞き取り調査を行った。
【結果】握力は前19.7±6.7 kgから後22.0±6.1kg、長座位体前屈は
前26.3±10.1 cmから後36.3±7.9cmと有意に上昇した。片脚立
位時間は前6.8±11.5秒、後6.5±8.0秒、SF8身体的サマリースコ
アは前44.35、後 48.20、精神的サマリースコアは 前43.85、後
48.89で有意差は認められなかった。
「皆さんと一緒に楽しく取
り組むことが出来た」
、
「健康のために毎週サポートセンターで運
動をしている」
、
「運動と栄養など親切な講義で癒された」や「元
気になりました」などの感想が得られた。
【考察】本講座が自主的な運動を継続する契機となり、握力と長座
位体前屈は改善した。QOL尺度の改善は認められなかったが、感
想で精神面の効果があったことが述べられた。
108
O45-2
O45-3
○斎藤ミキ(管理栄養士・栄養士)
,佐藤真理,泉ひかる
○齋藤麻衣(社会福祉士),佐藤明日香,川崎真弓,高宮一枝,
大仲功一,鈴木邦彦
福岡リハビリテーション病院 栄養課
医療法人博仁会 志村大宮病院
リハビリ充実に向けたチーム医療のなかで管理栄養
士の役割を考える
チームアプローチにおける医療ソーシャルワーカー
の役割と効果
【はじめに】当院は一般病棟、回復期リハビリテーション病棟、地
域包括ケア病棟で構成される4棟228床のリハビリテーションを
中心とした施設である。管理栄養士は、脳卒中を中心とした疾患
病棟担当と整形疾患病棟担当と外来およびその他担当の計3名体
制となっている。今回はNST、褥瘡、脳血管専門チームに関わる
立場から考える課題と目標について報告する。
【取り組み内容と
経過】脳卒中患者は、NSTや褥瘡、脳血管専門チームの対象症例
として挙がってくることが多く、栄養管理を共通の問題点として
複数チームで検討されていることもしばしばある。情報を効率よ
く収集し医師をはじめ他職種へ栄養管理の視点から情報発信する
ために、院内メールの活用やカルテ入力の工夫を行った。カルテ
にはチーム、アセスメント、評価予定内容などをなるべく詳細に
記載することで、他職種からの問い合わせや評価に必要な情報を
受信するなど双方向のやりとりがうまれている。
【まとめと課題】
適切な栄養管理はリハビリテーションを特徴とする当院にとって
重要な要素であり、栄養管理を共通の問題点として複数チームで
検討される症例では管理栄養士の担う役割は大きい。取り組みに
よってコミュニケーションの良い経過が得られているが、管理栄
養士間や院内チーム間のさらなる連携を目標に、効果的なチーム
アプローチの実現に向けた情報共有方法や仕組みづくりの課題に
継続して取り組んでいきたい。
【目的】近年の医療政策においては、人口の高齢化や疾病構造の変
化等、社会情勢の変遷とともに医療機能の分化と連携の推進が求
められている。各々の専門性を前提とし、目的と情報を共有・補
完し合い患者に適切に対応したチーム医療を提供していく中で、
社会的・心理的観点に特化したソーシャルワーク実践とチームア
プローチについて報告する。【方法・結果】80代女性。脳血管疾
患発症後の回復期リハビリテーション目的で入院。過去にも回復
期病棟に入院歴がある。麻痺は重度で今後も劇的な回復は期待で
きないことが予想され、今後の方向性について早期に家族と相談
をしていく必要性があったが、家族はスタッフとの面談を拒絶。
相互理解は困難を極めたが、本人と家族の過去と現在の発言に焦
点をあてアセスメントを実施。家族の歴史や現在置かれた状況を
紐解いた結果、セルフイメージの高さ故に専門職の意向伝達に恐
怖を抱き、拒否というかたちで表れたのではないかと推測。その
想いをチームに還元し、多職種協働で患者家族が理解促進できる
よう配慮した医療提供を行なうことで、障害受容や自己決定を促
すことができた。【結論】患者・家族の主体性を回復することが
意思決定の過程には必要不可欠である。MSWが個人の問題を社
会化する一歩を担うことで、医療の質を高めるとともに効率的な
医療サービスが提供されるよう努めたい。
O45-4
O45-5
○長田 梓(介護福祉士・ヘルパー)
,城間真喜子
○山本陽子(看護師),竹下美保
医療法人おもと会 大浜第二病院
西記念ポートアイランドリハビリテーション病院
介護職の病棟回診参加への取り組み〜介護職として
の役割意識の向上に向けて〜
がんリハビリテーションにおける看護師の役割〜緩
和ケア期における患者の事例を振り返って〜
【目的】回復期リハビリテーション病棟において、
多職種間の連携、
チームアプローチは重要である。介護職も多職種による病棟回診
に参加することで患者のADL拡大に繋がるのではないかと考え、
平成27年1月から介護職の回診参加を導入した。しかし、回診参
加に対する不安や負担の意見があった為、意識調査を実施した。
調査の結果に対する取り組みを報告する。
【対象】回診に参加した介護職17名
【調査内容】1.参加後の感想 2.良い点・大変な点 3.情報伝達が
行えているか 4.情報を伝えるために工夫していること 5.回診
参加は必要か
【結果】回診に参加して「良かった」は25%「まあまあよかった」が
31.2%と回答に対し「やや大変」が37.5%と上回った。
【取り組み】1.回診シートの作成 2.介護職の役割について勉強会実施
【考察】調査の結果から、情報収集や伝達に対する不安が課題と
なったため、回診シートを作成しチームで情報を記入するように
した。介護職はADLに携わっており、24時間を通して自立支援を
行っている。だからこそ、細かい情報を多職種に伝えようという
意識が向上してきたと考えられる。
【おわりに】介護職の回診参加を導入し情報を共有するという目
的を持つことで積極的に情報収集する姿勢がみられた。今後も多
職種と協働しながら情報伝達を円滑に行い、患者・家族のニーズ
に合わせたケアを提供しチームケアの質の向上に努めたい。
はじめに:当院は2013年4月に開設した病院である。今回私は、
第2腰椎転移性脊椎腫瘍による腰椎後方除圧固定術後の患者様を
受け持った。緩和ケアが主体となる時期のこのケースを振り返り、
看護師は他職種チームのキーパーソンとしての役割があり、患者・
家族が最期までQOLを維持し、自分らしく生活できるように援助
する必要がある事を学んだ。事例紹介:A氏( 60代男性)平成21
年A病院にて前立腺がんを指摘され、化学療法を行われたが効果
が見られず、平成25年7月にB病院にて放射線治療中に腰椎への
転移のため歩行障害を生じ、C病院にて腰椎後方固定術を施行さ
れ、10月中旬当院へ転院となった。経過:11月上旬ごろにはリハ
ビリ室を歩行器で360mは歩行できるようになった。しかし、12
月中旬、肝臓への転移が見つかり予後2か月と診断される。ADL
は、12月中旬には車椅子移乗も全介助が必要となる。1月初旬自
宅へ退院し、終末期在宅医療へと移行となった。考察:今回A氏
は在宅へ退院する事が出来た。しかしそれは本人が当初希望した
通りの状態での退院ではなかった。緩和ケアが主体となる時期の
患者は、疾病の進行によりADL向上が困難な事が多い。その中で
看護師はチームのキーパーソンとしての役割があり、患者の変化
に合わせ、他職種にカンファレンスを呼び掛け、情報を共有する
ことで、患者・家族が最期までQOLを維持し自分らしい生活が送
れるように援助する必要があると考える。
109
O45-6
O46-1
○丸山和樹(理学療法士)
,遠藤正英,後藤良幸,内藤紘一,
猪野嘉一
○益池 亨(看護師),寺野民子,柴田裕美,松谷彩香,錦見俊雄
医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院
社会医療法人若弘会 わかくさ竜間リハビリテーション病院
リハビリテーション回診が担う役割
脳卒中の再発予防に対する生活指導とその効果
【目的】リハビリテーション(以下リハ)を行う上で、臨床上の悩み
を抱えるセラピスト(以下Th)は多いと考えられる。その為、当院
は指導体制を充実させる取り組みとして、リハ専門医(以下リハ
医)を中心にリハ部全体の管理者(以下管理者)、リハ部における
病棟責任者(以下責任者)が参加するリハ回診を週1回実施してい
る。そこでThの悩みを検討する場として、リハ回診がその役割
を担っているかアンケート調査を行った。
【方法】対象は当院Th
62名、アンケート内容は、臨床上における悩みの内容とその相談
相手、及びリハ回診で受ける助言とした。
【成績・結論】回収率は
88.7%で、臨床上の悩みを抱えるThは100%だった。悩みの相談
相手は病棟内のThと責任者の割合が高かった。当院は病棟配属
制で、各病棟に責任者を配置している為、病棟内のThに加え、責
任者にも相談が行いやすい環境が作られていると考えられる。ま
た普段の悩みとリハ回診で受ける助言の内容では上位2項目が同
項目となり、その他は異なる項目だった。つまり、リハ回診では
リハ医に加え、管理者、責任者が参加し、病棟内で検討した内容
に対して、より専門的な視点から確認、見直しが行えるだけでな
く、より多角的な視点から新たな課題の発見が行えるのではない
かと考えられる。その為、個々のThがリハ回診の役割を理解し、
積極的にリハ回診を活用していくことでリハの質の向上に繋がる
のではないかと考えられる。
【はじめに】当病棟では脳卒中の再発で再入院する患者は少なく
ない。症状が軽症で自覚症状が少ない、また健康管理が必要な患
者に対し再発予防教育を行い、健康管理や生活習慣の改善・維持
につなげる事が出来たので報告する。
【方法】対象は在宅等で自己にて健康管理を行う患者13名。《個別
指導と介入方法》(1)脳卒中の再発危険因子の抽出(2)患者と共に
生活指導の目標設定(3)計画(健康指導と生活指導)を実施(4)評価と
モニタリングを行う。
【結果】再発危険因子は、(1)既往症は高血圧症・脳梗塞等、(2)服薬
中断、(3)生活習慣であった。服薬管理は2〜5週間で薬袋管理が
獲得でき、血圧管理は1・2週間にて自己測定が出来た。栄養管理
は、買出し・調理実習を行った。動作習得は全事例においてゴー
ルに達した。
【考察】患者指導は時間をかけて毎日繰り返し動作を行い、経過を
日々確認、フォローした事が行動の変容に繋がったと考える。指
導を通して出来た事を評価し褒めたり、一緒に喜んだりした事が
やる気や達成感・満足感に繋がり指導効果が上がったと考える。
【まとめ】
〔 1〕高齢や高次脳機能障害のある患者には、疾患の理解
が難しい為、パンフレットの改善が必要である。
〔 2〕担当看護師のレディネスに差がなく、指導力に個人差がない
よう指導力を高める為の看護師への教育に取り込む必要がある。
O46-2
O46-3
○須内陽子(看護師)
○佐野真理絵(理学療法士),小柳ひとみ,眞島豊樹
社会福祉法人奈良県社会福祉事業団 奈良県障害者総合支援センター
医療法人仁愛会 介護老人保健施設 千歳園
指定障害者支援施設における地域移行支援の現状と
課題
当園におけるリピート利用による在宅生活支援の取
り組み〜家に帰るのが楽しみになってきた!〜
【目的】施設看護師として側面的援助をするために、指定障害者支
援施設の生活支援員が行う地域移行支援の実態調査から課題を明
らかにする。
【研究方法】Α施設の生活支援員16名 を対象に20××年7月の10日
間に質問紙調査を実施。石橋みゆき他「退院支援過程における退
院調整看護師とソーシャルワーカーの判断プロセスの内容」
(一
部改変)
をリッカートスケールで回答。エクセル統計「Statcel。3」
で分析した。
【倫理的配慮】アンケート記入をもって研究参加の承諾が得られ
たと判断し、質問紙は無記名とした。協力しなかった場合・途中
中止でも不利益を被らない。
【結果】アンケートの全項目において「判断プロセスの必要性あ
り」は約9割、
「判断プロセスが実施できた」は約5割。7カテゴリー
で「必要性」と「実施」の乖離が大きかったのは「地域移行準備カ
ンファレンス」
「地域移行支援の評価」
。フリードマン検定では経
験年数10年未満と10年以上で、
乖離の有意差を得た。
(P=0.008)
【結語】今回は生活支援員の特定を避けるため詳細な分析は出来な
かった。しかし地域移行支援の判断プロセスでその必要性が分か
りながらも実施出来ていない課題について知ることが出来た。今
後支援行動の背景にある個々のキャリアや判断・意図等を詳細に
分析することでより課題を明確にし、看護師として職種間協働を
構築できうるよう連携を図っていく必要がある。
【はじめに】在宅支援に取り組む中で、長期間の入所希望や在宅生
活への不安が強い場合には、入所と在宅生活を繰り返すいわゆる
リピート利用を勧めている。取り組みを行うことでみえてきたこ
とを報告する。
【取り組み紹介】目的と期間を相談した上で入所
する。入所前より居宅訪問を行い、それをもとに在宅カンファレ
ンス開催やケアプラン作成、在宅生活を想定した個別リハビリや
生活リハビリの提供、外出泊を行う。多職種連携はもちろん、利
用者や家族と一緒に取り組んでいる。主な退所先は自宅や在宅
型施設であるが、特養の場合もリピート利用しながら待機するこ
とも多い。在宅生活中は当園ショートステイや訪問リハビリ、通
所リハビリ等を利用し、1〜3ヶ月程で再入所となる。【結果】リ
ピート利用を繰り返すことで職員は1.自宅での問題点が聞け入所
やショートステイ中のリハビリやケアに活かせる。2.密な情報共
有により信頼関係が築ける。家族や入所者は3.介護に対する安心
感が持て入所中も外出泊が行える。4.日常の様子を伝える機会が
増え入所者の状態が分かりやすくなるといったメリットがみられ
た。しかしながら、5.環境の変化で入所者に混乱が生じるといっ
た点もみられた。
【まとめ】リピート利用することで当初困難と
思われていた在宅生活が継続することができるようになった。在
宅生活の不安が解消され、住み慣れた家で家族と過ごすことが楽
しみとなった。
110
O46-4
O46-5
○紅野喜代(作業療法士)
,大塚浩一
○相見真吾(理学療法士),丸山洋司,酒井達也,安尾仁志,
篠山潤一
医療法人池慶会 池端病院訪問リハビリテーションセンター
社会福祉法人 兵庫県社会福祉事業団総合リハビリテーションセンター
地域ケア・リハビリテーション支援センター
複数の事業所を利用しながら在宅生活を送る利用者
を支援するために 〜カンファレンスの重要性〜
当事業団の入所施設等における「リハビリテーショ
ン専門職種の活用」の実践報告
【はじめに】退院後複数の事業所を利用しながら在宅生活を開始
した頸髄損傷の症例を担当した。リハビリテーションサービス(以
下リハ)を提供していく過程に於いて複数回のカンファレンス(以
下カンファ )が有効であったので報告する。
【症例紹介】65歳男性
(転落による頸髄損傷)要介護5。通所リハ(3事業所)と訪問看護、
訪問リハ、短期入所を利用し、計5事業所のリハスタッフが関わっ
ている。
【経過】(1)退院前カンファ:本人の状態確認。入院中の
申し送りや退院に向けての調整を行う。(2)サービス開始時カン
ファ:環境設定、
各サービス内容確認。介助方法などの統一を行う。
サービスが開始されたが本人の回復に対する期待やリハに対する
要望などが強く現実のサービスとの差が問題となった。この為(3)
初期リハカンファ開催:本人の思いを確認しリハビリ課題や方針
の統一化。短期目標を設定。その後家人の介護負担が増大しサー
ビス追加となり(4)3か月時点リハカンファ開催:再度課題抽出し
共通の次期短期目標を設定。
【結果】退院が決定してからサービ
ス開始早期間に複数回のカンファを実施したことにより、利用者
に対し統一した対応が出来訓練に繋げやすかった、また本人の不
安や不満も軽減出来その時々の問題解決も行いやすかった、等の
効果が認められた。【まとめ】平成27年度の介護報酬改定でリハ
会議が重要視されているが当症例に対しても有効な結果が得られ
た。
【はじめに】当事業団では、入所施設等におけるセラピスト等専門
職員派遣事業を実施している。これはリハビリテーション専門職
が介護職員に対して、入所者の個別相談と研修を通して実践的な
助言を行う取り組みである。今回、リハ専門職の介護職員への関
わり方について検討した。【対象と方法】平成24〜26年度に施設
で実施した個別相談件数と相談内容、研修回数を集計した。
相談内容は、国際生活機能分類を参考に活動、環境因子、参加に
分類し、運動方法を加えた4つのカテゴリーに分け集計を行った。
【結果】相談件数は3年間で計693件であった。内容は活動、環境
因子についての相談が多かった。研修回数は3年間で計35回開催
した。
【考察】3年間を通して、施設での個別相談内容は活動、環
境因子が多い傾向が見られ、共通した課題が生じているものと考
える。活動、環境因子が多かった要因として、入所者の高齢重度
化により心身機能や活動性の低下が生じ、以前の動作や生活様式
を維持することが困難となり、介護職員の介助量の増加、車いす
等の環境面の不適合が生じていると考える。
このような課題に対して、リハ専門職が心身機能や生活動作の評
価を行い、介護職員と共に環境や動作方法の検討や研修を通じて
介護技術の向上を図ることで、介護職員を通して間接的に入所者
に関わりを持つことや、現場の介護職員の支援方法を再考する一
助になるのではないかと考える。
O46-6
O47-1
○井料大樹(介護福祉士・ヘルパー)
○松田恵介(看護師),武智智子,香川雄太,大西彩季
社会福祉法人紘徳会 特別養護老人ホーム みどりの園
医療財団法人尚温会 伊予病院
入所者様の在宅復帰を目指して
病棟訓練におけるリハビリスタッフと看護・介護ス
タッフの意識の違い〜正しいアプローチを求めて〜
【はじめに】特別養護老人ホームにおける入所者様の在宅復帰に
向けた取り組みについて報告する。取り組み 生活相談員・機能
訓練員が事前のアセスメントを細かく実施し、利用者様・御家族
のニーズの把握、転倒転落等のリスク管理、介助方法の統一、身
体・精神機能面に対する目標設定を行い、情報共有を図る。 定
期的に利用者様の状況把握と介助方法の見直し、必要であれば目
標の変更を行うためRST
(リハビリテーションサポートチーム)会
議を開催することで、より利用者様の個別性を尊重した介護へと
繋げる。【症例紹介】K・K様【ニーズ】今まで過ごしてきた家で
ゆっくり生活したい。
【ゴール】小規模多機能利用にて在宅復帰
することができた。【考察】ニーズを把握した段階から具体的な
目標を立て、多職種で連携を図りながら共有された介護を提供す
ることが大切であった。また、経過をみながら常に目標の見直し
を行い、介助方法を変更することの重要性を感じた。また、自宅
外出を繰り返し、住宅環境の調整・自宅を想定した動作を日常の
介護の中に取り入れることが、在宅復帰にむけてより効率的であ
り、介護職に求められる力量であると感じた。まとめ 利用者様
に関わる職種の中で、最も接する機会の多い介護職の力量と意識
が、利用者様のQOLに大きく影響を与えるということを常に意識
し介護を提供していきたい。 【はじめに】当病棟は、整形外科の回復期病棟であり多くの患者が
病棟訓練を行っている。病棟訓練におけるリハビリスタッフと病
棟スタッフとの観察点や訓練に対する意識の違いを明らかにし、
リハビリスタッフが病棟訓練に求めるものや観察ポイントを伝達
し、病棟スタッフの意識・知識の向上につながったことをここに
報告する。
【対象】病棟看護・介護スタッフ16名 病棟リハビリスタッフ19
名
【方法】病棟訓練に対するアンケートを行い、リハビリスタッフと
看護・介護スタッフとの意識・観察ポイントの違いを明らかにし、
その後、看護・介護スタッフに伝達講習を行う。
【結果】アンケートの結果より病棟訓練における観察ポイントに
多くのズレは無く、看護・介護スタッフも全体的に患者の状態観
察が行えている。しかし、正しい歩行補助具・コースが選択され
ていなかったり、また運動機能的面に関しての観察が不足してい
ることが分かった。
【考察】アンケートにより病棟訓練に対する病棟スタッフの自己
評価が低い原因としてリハビリスタッフはエビデンスに基づいて
行っているのに対して看護・介護スタッフは漠然と訓練を行って
いたのが原因だと考えられる。病棟スタッフがリハビリスタッフ
の知識・技術をより理解することにより、病棟訓練も共通の意識
を持った質の高いものを提供できると思われる。
111
O47-2
O47-3
○川辺七美子(看護師)
○中村孝史(理学療法士)1),高岡光弘1),河村和也1),一宮晃裕1),
稲次正敬1),湊 省1),稲次 圭1),稲次美樹子1),高田信二郎2),
日浅拓也1),土井大介1)
多職種との連携、リハビリ看護の質の向上に向けた
意識調査
新しい介助札を使用してみて〜介助札からのチーム
アプローチ〜
千葉徳洲会病院
1)医療法人凌雲会 稲次整形外科病院 リハビリテーション部
2)独立行政法人 国立病院機構 徳島病院
多職種との連携、リハビリ看護の質の向上に向けた意識調査はじ
めに回復期リハビリ病棟では在宅復帰を目的に入院してくる患
者のADL,QOL向上を目指し、多職種間で情報の共有やケアを行
える様病棟独自のADL表を作成し活用してきたが、情報の共有不
足や、価値観の違い、ADL介助の協働作業困難等によりADL表が
有効に活用できていない事実が発生してきた。当病棟ではワー
キンググループを発足し従来のADL表を修正、新ADL表を作成し
た。今回、新ADL表開始後患者のADL,QOL向上、家族指導、多職
種との連携に有効活用できているか看護師、看護補助者、セラピ
スト対象にアンケート調査を行ったのでここに報告する。方法・
対象平成27年3月24日〜30日を第1期として回復期リハビリ病棟
看護師、看護補助者、セラピストを対象にアンケート調査を行っ
た。結果NS,看護補助者、セラピスト共に共通して多かった回答
は、ADLの介助がし易く、ADLの周知ができる様になりケアの統
一ができる様になった、だった。NS、看護補助者で表の更新がさ
れていない、コミュニケーションが図れていないに対してセラピ
ストはできていると回答が多かった。ADL表の活用ができている
か、QOL向上に役立っているかに対してNS,看護補助者はそう思
う、セラピストはそう思わないという回答があった。終わりに新
ADL表を開始して日も浅い為、第二期として6月に再度アンケー
ト調査を予定している。
【はじめに】当院では車いすや歩行補助具等に介助札を設置して
おり、介助レベル毎に色分けをしていたが、動作別の介助レベル
は理解しにくかった。今回、動作別の介助札を作成し、病棟スタッ
フ間の介助札に対する見方や意識に変化があったかを検討し、そ
の結果を報告する。
【方法】対象者は病棟で勤務する看護師延べ
60名、介護士延べ9名、リハビリスタッフ延べ34名、合計103名で、
無記名でのアンケートを依頼。その結果を基に課題を挙げ、修正
を行い、再度アンケートし、検討を行った。【結果】初回アンケー
トにより介助札を変更して 1。分かりやすい80% 2。変わら
ない3% 3。分かりにくい17%という結果であった。定期的に更
新ができていないことに対して週1回、委員による啓発・確認・
更新を行った結果、修正後アンケートでは82%のスタッフより改
善できているとなった。現場においても、患者さんの身体レベル
が把握し易くなり、初見の患者さんであっても動作確認の時間短
縮が図れた。さらに嚥下札の設置により嚥下レベル把握や、リス
ク管理が容易になった。車いす駆動と移乗の区別が一覧表作成等
により明確化された。
【まとめ】介助札変更等により、介助方法や
介助量を、チーム全体として、より把握することができるように
なった。また、誤嚥リスク軽減、移動・トイレ内動作等の注意喚
起を促せたと思われる。今後このシステムの継続とチーム全体へ
の統一見解の啓蒙が必要であると考える。
O47-4
O47-5
○伊藤亘佑(作業療法士)
,三上和洋,森田和幸,吉田 彩,
川上加奈,小野圭介,品田慶太
○手塚拓也(理学療法士)1),神林 薫1),居村茂幸2),川原田晴通1),
飯田 彩1),川波真也1),緑川知世1),小林早紀1)
社会医療法人北斗 十勝リハビリテーションセンター
1)医療法人愛正会 やすらぎの丘温泉病院 リハビリテーション科
2)植草学園大学 保健医療学部 理学療法学科
当院における「排泄支援チーム」導入後の意識調査
について 医療療養病床の生活支援における当院の試み〜リハ
の視点から見た多職種連携の課題〜
【はじめに】当院回復期病棟では、質の向上、チーム連携強化の一
つとしてNrs、Cw、PT、OTの多職種で「排泄支援チーム」を立ち
上げ、患者の排泄自立や介助量軽減を目標に取り組んできた。今
回、チーム立ち上げから一年経過し、チームの有効性や回復期病
棟担当スタッフが排泄に対してどのように意識が変わってきたか
アンケートを行い、その結果と課題について考察した。
【方法】1)対象:回復期病棟担当スタッフ136名
2)方法:選択・記述式アンケートを配布
【結果】有効回答136名中120名(回収率88%)
。多職種で排泄動作
に介入することに対しては90%以上のスタッフ有意義と回答し
ており、
「情報共有が図れる」
「多視点での評価が行える」などの
意見が半数以上を占めていた。
「排泄支援チーム」が介入した患
者には効果があったとの意見が約80%近く占めているが、
「わか
らない」との意見も20%近く聞かれていた。スタッフの90%が排
泄に対し意識は向上しており、特に「介助方法の統一」や「排泄パ
ターンの把握」などへの意識が高まっていた。
【考察】多職種で活動を行うことで、スタッフ間のチーム連携は強
化され、患者に対しても効果が見られている。活動を通じ、チー
ムメンバーだけでなく他スタッフでも排泄に対する意識向上につ
ながり有益な活動になった。一方、チームの介入効果が「わから
ない」という意見もあり、症例やデータ公開などで具体的に結果
を提示する課題が残った。
【はじめに】当院の重症(施設区分1)医療療養病床(以下療養病床)
の現況、多職種連携の結果、課題につき報告する。
【現況】対象療養病床は52床であるが、85歳以上が55%、脳血管障
害が75%、医療区分2と3が90%、FIM18点が約30%を占めている。
また、褥瘡発生率は約15%である。当院では療養病床にもリハ職
を専従配置して5年が経過したが、個別リハはベッドサイドが主
であるため生活面へのアプローチには限界があった。
【取組み】患者の生活像を多職種が検討する場として、既存の
「ベッドコントロール会議」を利用して病棟職員全体にリハ視点を
持った生活支援を求めた。その内容は、ベッド上の姿勢、ポジショ
ニング、離床、移乗、摂食状況等の生活面の評価と、援助技術につ
いての標準化と情報共有である。
【結果】他の職種からのポジショニングや環境調整についての相
談が増加した。それに伴い、関節拘縮の程度や覚醒水準の変化の
報告も増加した。
【課題】課題としては1)病棟の人手不足、2)リハ視点の不足、3)
援助技術の標準化の不足の3点が挙げられる。今後は、リハ専門
職によるポジショニングや離床方法の研修会の実施、この間の取
組みによって密接となった職種間のコミュニケーションの維持な
どにより、重度障害を持つ患者の生活支援にリハ視点が一層浸透
するように働きかけていきたい。
112
O47-6
O48-1
○水俣美幸(理学療法士)
,吉田恵子,中村仁哉,松崎哲平,
三池真未,堀川 透,豊福雄太
○布谷麻衣子(理学療法士),木村昌靖,坂之上豊子,森本幸二,
岡部伸太郎,盛川しのぶ,藤岡真紀,北惠詩織,渡邉 学,
深田 慶,谷 直樹
人吉リハビリテーション病院
地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪府立急性期・総合医療センター
ADL能力に応じた解除を行うための意識改革に向け
た取り組み 〜セラピストと看介護スタッフのペア
介入を導入して〜
PD患者のDBS治療前後の身体・認知機能の変化 【はじめに】近年、薬効の得られにくいParkinson病(PD)に対し
て、脳深部刺激療法(DBS)が行われている。DBS治療前後の評
価では、認知機能の低下,精神症状が変化したとする報告があ
る。先行研究では、DBS治療前後に多職種が包括的な評価をし
ている報告は少ない。当院で施術したDBS治療前後に、多職種
で身体・認知機能の多角的な評価を行い、治療後の変化を明ら
かにすることを目的とした。【対象】2014年5月よりDBS治療を
行ったPD患者6名の内、DBS治療後の評価が実施可能であった3
例を対象とした。
【方法】評価時期はDBS治療の術前・術後・半
年〜1年時、内容は歩行、バランス、筋出力、FIM、UPDRS、知能
検 査(MMSE,WAIS-3)注 意 検 査(TMT、PASAT)遂 行 機 能 検 査
(KWCST、BADS、FAB)、構音機能検査(SDS、MMBI)、評価者は
医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士が各項目
を評価した。
【結果】片脚立位時間は大幅に延長し、さらに10m歩
行、TUG(Time up&go test)、歩行速度、歩幅、継ぎ足歩行数は
改善した。握力の増減は個人差があった。認知機能の低下や、抑
鬱症状が出現した患者は遂行機能が低下した。また、失語症状が
出現した例があった。
【まとめ】術後及びその後の経過で多職種
が連携して評価をし、各分野別に多項目の詳細な結果が得られた。
認知機能は低下するも身体機能は向上傾向であり、様々な指標を
用いたことで治療前後における変化の特徴が明らかとなった。
【はじめに】当院の療養病棟では、医療依存度が高い患者の割
合が多い為、介助者は時間や作業効率が優先となりがちで、ま
た、ADL能力を十分に理解しないまま介助にあたる事で「できる
ADL」が「しているADL」に繋がっていない傾向にあった。今回、
看介護スタッフに対する、ADL能力に応じた介助を行う為の意識
改革に向けた取り組みを行ったので報告する。
【方法】1)セラピス
トの早出遅出に合わせ、看介護スタッフとペアを組み、患者の介
助にあたった。セラピストから看介護スタッフへの介助方法の指
導と、情報交換の中で患者の能力に応じた介助方法の検討を行っ
た。2)事前に、
「できる・しているADL」の理解を深める為の勉
強会を実施。また、介助方法のデモンストレーションと解説書類
を作成した。3)取り組み前後で、看介護スタッフに対して「アン
ケート意識調査(評定法)」
、
「患者ADLの把握状況調査」で意識の
変化を比較した。また、この取り組みによる成果を測る為、患者
のADLの変化を「FIM」を用いて比較した。
【結果】
「アンケート意
識調査(評定法)」では5段階評定平均値が2.9から3.7へ向上した。
「患者ADL把握状況調査」では正解率が57.1%から65.4%に向上
した。患者のADL
「FIM」では点数が向上した。
【考察】セラピス
トが看介護スタッフの介助場面に介入し、ペアで介助にあたる事
で、患者の活動能力や目標、具体的な介助方法を理解できるよう
になり、意識の向上に繋がったと思われる。
O48-2
O48-3
○波多野恵信(作業療法士)
○中澤希紀(作業療法士),細谷竜佑,松元まり子,渡辺理人,
山田 学
岡山旭東病院 リハビリテーション課
蒲田リハビリテーション病院 リハビリテーション科
一般社団法人巨樹の会 蒲田リハビリテーション病院
急性期脳卒中患者へ病棟訓練を導入した効果と今後
の展望〜早期のFIMセルフケア項目に着目して〜
急性期在院日数が日常生活自立度に与える影響
【はじめに】当院では急性期から身体機能面に限らず、日常生活
への介入を実施し、他職種や家族も巻き込んだ支援は重要と考え
2014年度から病棟訓練を導入した。その中で病棟訓練導入の効
果と今後の展望を考えた。
【方法】2013年度に入院し、訓練処方のあった症例で在院日数が
14日以上の初発の脳梗塞・脳出血症例148例(男性83例、女性65
例、平均年齢70.8±14.1歳)をA群、2014年度上半期に入院し、同
条件の症例79例(男性42例、女性37例、平均年齢75.8±9.8歳)をB
群として比較検討を行なった。調査項目は平均在院日数、リハ開
始時FIM総得点、退院時FIM総得点、FIMセルフケア項目(食事・
整容・清拭・上半身更衣・下半身更衣・トイレ動作)のリハ開始
時から4週までの週ごとと退院時のFIM利得とした。
【結果】退院時のFIMセルフケアの食事・清拭・上半身更衣・下半
身更衣・トイレ動作のFIM利得で有意差が認められた。また平均
在院日数はA群36.0±3.2日、B群31.2±1.9日で、リハ開始時FIM
総得点はA群58.0±33.7点、B群54.5±31.7点で、退院時FIM総得
点はA群84.2±38.6、B群78.6±39.6点であった。
【考察】退院時のFIMセルフケア項目に有意差が認められたこと
や、B群は平均在院日数が短縮し、退院時FIM総得点は低い傾向に
あることから、早期に動作能力的な変化は少なくても、退院に必
要な動作能力の把握や家族との連携などから、効率的な退院支援
に貢献できたのではないかと考えられる。
【始めに】医療制度改革により、回復期を含む在院日数の短縮が命
題となっている。現在、他施設間での一貫した医療の提供が重要
とされ、急性期病院から回復期病院へ早期に移行することが推奨
されている。その為、急性期・回復期在院日数の変化によって日
常生活自立度に影響するか検討した。
【対象】2014年4月〜12月
の期間内に当院に入院した整形疾患患者のうち、急性期転院者・
施設退院者を除外した179名を対象とした。
1.急性期在院日数・回復期在院日数・入退院時のMMSE・Alb・
FIM運動項目得点の関係をPearsonの積率相関係数を用いて検討
した。
2.1で相関が得られた項目に対し、ロジスティック回帰分析を行
い、急性期在院日数が影響を与える要因の検証を行った。なお,得
られたデータは全て数値化し、有意水準は1%未満とした。
【結果】
1 .急性期在院日数と、回復期在院中のFIM運動得点、FIM利得に
負の相関が有った。回復期在院日数と、回復期在院中のFIM利得
「入院時
に正の相関が有った。2 .ロジスティック回帰分析では、
Alb値」に有意なオッズ比が認められた。
【考察】一貫した医療の
提供を行っていく上で、急性期病院での関わりの重要性が示唆さ
れた。また、ロジスティック回帰分析の結果で「入院時Alb値」以
外の因子に関連が見られなかったことにより、日常生活自立度以
外の要素が在宅復帰を行なう上で重要となることが推測された。
113
O48-4
O48-5
○山本洋平(理学療法士)
,田口潤智,堤万佐子,中谷知生,
三谷 好,粟田智春,兒玉 裕,大塚隆行,宇治橋智,木下香苗
○脇田 光(理学療法士),田口潤智,笹岡保典,堤万佐子,
中谷知生,山本洋平
医療法人尚和会 宝塚リハビリテーション病院
宝塚リハビリテーション病院
座位時間表を用いた離床時間の調整が回復期脳卒中
患者のADLに与える影響
回復期病棟における理学療法士の自己評価と他職種
からの評価の比較
【目的】回復期病棟の主要な役割である入院患者のADLの向上に
は積極的な運動療法が必要であり、そのためには個々の患者に対
するコンディショニングが重要となる。特に要介護の患者には廃
用症候群や過用症候群のリスクを考慮したうえでの適正な離床時
間の確保が課題である。今回、日中の離床時間やその経過の情報
を各専門スタッフが共有できるように座位時間表を用いて管理
し、入院患者のADLに与える影響を検証した。
【対象および方法】対象は当院に入院した看護必要度が10点以上
の脳卒中患者で、座位時間表を用いる介入群と用いない非介入群
のそれぞれ10名とした。座位時間は元々使用していた排泄管理
表に記録し、経過をみながら離床時間を調整した。評価項目は
FIM利得と日常生活自立度、BMIとし、入院1ヵ月後と5ヶ月後を
比較した。
【結果】FIM利得の平均は入院1ヵ月後に介入群5.4点、
非介入群4.5
点とt検定において有意差はなかった(p<0.607)
。入院5カ月
後には介入群10.3点、非介入群5.3点と有意傾向にあることが示
唆された(p<0.056)
。評価期間中に日常生活自立度が1ランク
以上向上したのは両群とも5名、BMIが標準値外になったのは介
入群0名、非介入群1名であった。
【考察】座位時間表を用いることで日中の離床時間は明確になり、
患者の状態に合わせた調整が行いやすくなったことがADLの向
上に寄与したものと考える。
【はじめに】回復期病棟における理学療法士(PT)の役割は「セラピ
スト10カ条」に示されている。【目的】回復期病棟のPTの役割に
対して、PT自身の評価と他職種の評価を比較する。【方法】対象
者は当院に勤務するPT、医師、看護師、ケアスタッフ、作業療法
士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカーとし、PTの役割に対し
て5段階評価を行うアンケートを実施した。集計は項目ごとに百
分率を算出し、PTと他職種の項目の比較を行った。【結果】PTの
自己評価が最も高い項目は「カンファレンスへの参加( 49.9%)」
であり、最も低い項目が「情報提供( 30.4%)」であった。他職種
からの評価が最も高い項目は「福祉用具の選定(73.3%)」であり、
最も低い項目が「情報提供( 57.0%)」であった。
「カンファレン
スへの参加(61.5%)」は「福祉用具の選定」
「家屋調整」
「基本動作
の獲得」
「転倒予防」に継ぐ結果であった。
【考察】他職種からの評
価は全ての項目で「できている」
「ややできている」が過半数以上
を占める結果となり、PTの自己評価よりも他職種からの評価は高
いと言える。PT、他職種ともに最も評価が低い項目として「情報
提供」が挙げられた。この結果から、カンファレンス等の特定の
場だけでなく日常的な情報共有を活発に行う必要性があると考え
る。このため、情報集積の場を設けること、繰り返しの確認や伝
達を聞いた側に行動が伴う周知方法をとること等の情報提供方法
の改善が課題である。
O48-6
O49-1
○安元信貴(理学療法士)
,伊藤博明,井手 昇,上田美貴子,
宮崎美香
○飯島荘史(社会福祉士),山口沙織,木村亮太,森 淳子,
山本啓子,川口 幹
医療法人三井会 神代病院 リハビリテーションセンター
一般社団法人是真会 長崎リハビリテーション病院 臨床部
当院回復期リハビリテーション病棟における入院料
算定基準の変更と治療成果の変化
社会資源データベースシステムを用いた情報共有に
向けた取り組み
【目的】回復期リハビリテーション(以下リハ)病棟において、入院
料1算定基準(以下1)は専任医師や専任社会福祉士の配置、13:1以
上の看護配置など、手厚い人員の配置が条件に課せられる。その
分、充実した医療を提供でき、良い成果も期待できると考えられ
ている。当院回復期リハ病棟でも平成26年4月より専従医師、専
従社会福祉士を配置し、平成26年6月に入院料2算定基準(以下2)
から1へ変更した。そこで今回我々は、変更の前後における治療
成果を比較検討したので、ここに報告する。
【方法】入院料算定
基準変更の前12か月間と変更後10か月間での、年齢、在院日数、
FIM利得、FIM効率、在宅復帰率を比較検討した。
【結果】2におけ
る当病棟の平均年齢79.5才、平均在院日数70.2日、平均FIM利得
13.1点、平均FIM効率18.5%、在宅復帰率86.0%であった。1へ
変更してからの平均年齢80.3才、平均在院日数81.6日、平均FIM
利得25.4点、平均FIM効率31.4%、在宅復帰率83.0%であった。
【考察】今回の結果から、FIM利得の向上がみられたが、在院日数
に伸びがみられた。しかし、FIM効率は向上しており、医療サー
ビスの質が向上したことによるものと考えられる。在院日数の延
長や在宅復帰率に低下がみられたことについては、1に課せられ
ている重症者受け入れ比率の上昇によるものと思われた。今後は
更に在院日数の短縮及び在宅復帰率の向上を目指していきたい。
【目的】当院は回復期リハ病棟3病棟を有し、各病棟(47〜48床)に
社会福祉士(以下、SW)2〜3名を配置している。SW内における社
会資源情報の適時適切な共有化を目的に、2013年より社会資源
データベースシステム(以下、DB)を開発し運用している。今回そ
の使用効果について検証した。
【方法】1)病棟配属のSW7名に対して、DBの機能6カテゴリー54
項目について活用状況を調査した。6カテゴリーの内訳はA:基本
情報、B:詳細情報、C:スタッフ情報、D:申請書等、E:空床状況等、
F:その他。活用状況は5点(大いに活用している)〜1点(活用してい
ない)の5段階評価とした。
2)DB導入前後の変化を業務改善の視点でSW内にて協議した。
【結果】1)各カテゴリーの活用状況に差があった。平均点は高い順
に、E、A、B、D、F、Cであり、EとAが活用されている傾向にあった。
2)業務改善が図れたという意見が多数で、導入のメリットとして
「その場ですぐに対応できる」
「書類作成の手間が軽減」
「最新情報
が手に入る」等、デメリットとして「機能更新毎に操作の習得が必
要」
「時間や場所による使用制限」が挙げられた。
【考察】DBの使用により情報共有化につながっていることが確認
された。特に施設の基本情報を軸とした最新の社会資源情報を共
有化することは、患者サービスの向上にも直結し、チーム運営に
も貢献できる可能性が考えられた。
114
O49-2
O49-3
○畠中稔生(社会福祉士)1,2),中山美香2),上野真由子1,2)
○穂保真由美(社会福祉士),東 妙香,笠井世志子,中山かおる
1)阪南市民病院 医療福祉相談室
2)阪南市民病院 医療福祉サポートセンター
医療法人社団輝生会 初台リハビリテーション病院 リハケア部
ソーシャルワーカー・ケアマネジャー部門
回復期リハビリテーション病棟入院患者に向けた
ソーシャルワーク支援に関する一考察
自己決定援助についての気づき〜 SWが葛藤を感じ
たケースより〜
【初めに】今回、意思表示困難は本人の妻から本人の回復を望まな
い発言があり、SWとしてその妻を代理判断者として支援する事
に葛藤を感じた事例を経験した。この事例を振り返り、SWが自
己決定支援する上での気づきがあったので報告する。
【事例】57
歳男性。橋出血。意識ほぼ清明。四肢麻痺、高次脳機能障害。気切、
胃瘻。ADL全介助。
【経過】本人発症後から、妻は本人に代わり様々
な決定を行っていた。SWは面接にて傾聴、受容を行い、信頼関係
を構築。妻の語りから本人の回復を望んでいないのではなく、病
前の本人の言動から「本人はこの状態で生き続けることをで望ま
ないあろう」と推測した上で判断している事、その中で、妻も迷い
葛藤があることを理解でき、SWの中の葛藤は薄れていった。妻
は本人に意思決定能力はないと考えていたが、回復が予測された
為、SWはチームと協働し妻が本人の能力を適切に理解出来るよ
うに働きかけた。意思表示可能となった本人より、
「長生きしたい」
との言葉がきかれ、妻は自分の考えと本人の思いの相違に気づき、
本人の意思を確認しながら、療養先を決定した。
【考察】適切な代
理判断者であるとアセスメントするには情報収集が重要であり今
回はそれの不足により、SWに葛藤が生じたと考えられた。妻は
病前の言動から本人の意思を推察していたが、本人の考えに変化
が生じていた。本人への意思確認、意思決定能力をアセスメント
し続ける重要性を再認識した。
【目的】回復期リハビリテーション病棟支援において、患者を中心
とした多職種連携によるチームアプローチが重要である。今回は
発症を機に生活問題が表面化した事例における当患者へのソー
シャルワーク支援について後方視的に検証し、示唆を認めたの
で報告する。
【事例】52歳女性。脳梗塞を発症。左上下肢麻痺と
高次脳機能障害(遂行機能障害等)が残存し、当院回復期リハビリ
テーション病棟に入院される。夫(警備会社勤務)と娘(療育手帳所
有:授産施設通所)の3人暮らし。病前はパート勤務しつつ、家庭
内経理や家事等を一人で担っていた。
【方法】当患者へのソーシャ
ルワーク支援過程を時系列で整理し、抽出された各課題に対する
アプローチを検証した。今回の後遺症の影響で在宅生活に同居者
の介助が不可欠、家庭環境から可能な援助が限定的になる、相談
できる親族や家庭を包括的視点で見守る人が周囲にいない等の課
題が上がった。【考察】本人が希望を持って入院生活を送ること
ができたのは、看護師やセラピスト、ケアマネージャーや遠方の
親族などと行った複数回の協議、同居者への介助指導や相談支援
など、日常的に支援を行うチームアプローチが円滑に作用してい
た影響が大きかった。各担当者のもつ情報とソーシャルワーク支
援で行ったアセスメントを適宜共有し、チームアプローチによる
課題解決へと繋げる能力がソーシャルワーカーに求められると考
える。
O49-4
O49-5
○高橋直之(理学療法士)1),高田信二郎2),稲次正敬1),湊 省1),
稲次 圭1),稲次美樹子1),土井大介1),高岡光弘1),河村和也1),
一宮晃弘1),岩藤のり子1),伊藤千恵1)
○松平康子(介護支援専門員)1),矢野純子2)
1)医療法人凌雲会 稲次整形外科病院
2)独立行政法人 国立病院機構 徳島病院
1)医療法人社団甲友会 法人本部 連携推進部
2)医療法人社団甲友会 西宮協立訪問看護センター
人生の最終段階における医療の決定プロセスに対す
るガイドラインに従って相談支援を行った一症例
参加を実現する退院支援〜ケアプランをICFの視点
から考える〜
【はじめに】当院は『平成26年度人生の最終段階における医療体制
整備事業』にモデル事業所として選定された。患者の医療の希望
について表明を支援し、他職種での検討、療養先の調整を実施し
た相談支援の一例を報告する。
【当院の概要】一般病棟19床と回
復期リハビリテーション病棟35床、他にグループ関連施設として
介護保険施設、在宅系入居施設を複数運営している。
【相談支援
体制の構築】
『人生の最終段階における医療の決定プロセスに対
するガイドライン』
(以下ガイドライン)に従って相談支援体制及
び困難事例等を検討する委員会を組織した。職員に対してはガイ
ドラインへの理解と人生の最終段階における患者の医療の選択支
援について理解を深める為の研修会を実施した。
【症例紹介】79
歳女性。重度の認知症で家族の介護疲れにより老人保健施設に入
所。誤嚥性肺炎を患い入院。今後経口摂取困難との判断。肺炎症
状は軽快したが委員会から関わりの必要性を検討され医師から病
状説明後、相談員が家族の病状理解度を確認。家族は「今後、経
管栄養は希望しない」との表明があり検討と話し合いが実施され
た。本人の思いも考慮し、栄養は本人の気分と経口摂取可能な物
のみとした。今後の治療における医療の希望は書面に記し、老人
保健施設へ退院した。
【終わりに】今後、人生の最終段階における
医療の希望を支援する為にガイドラインに従って実施されていく
ことが期待されている。
ケアマネジャーは、介護保険法に位置付けられる大きな社会的役
割を持つ専門職として、
「尊厳を保持し、その有する能力に応じ
自立した日常生活が営むことができる」ように、本人像を捉えて
支援する必要がある。そこで1CF( 国際生活機能分類)を使って
全体像を把握し、その人らしい「参加」の実現に向けた当事者中心
の医療・介護・福祉の協働での支援が重要だと考える。それを退
院支援の場面でケアマネジャーはどのように行うのか。市内にお
けるケアマネジャーが入院先の病院スタッフにどのようにかかわ
り、どのように退院時カンファレンスを活用し、どうケアプラン
作成に活用しているのかアンケート調査を実施した。退院後、再
び参加できたケースから、川越が述べる、
「本人が「達成したい」
「達成できそう」と思える目標を設定し、達成することで意欲向上
を図るため、短期目標が徐々にアップしていくように・・」と、
退院時カンファレンスにて、家庭参加から「社会参加」も見据えた
「段階的目標」設定が重要であることが分かった。そのためにも入
院「早期に」病院スタッフの情報とケアマネジャーがとった情報
を統合し、全体像からその人らしさ・個性を共に捉えることが必
要だと思われる。その人らしさを支える多様なリハビリテーショ
ンが提供できるよう、ケアプランをICFの視点で作成し、その人
らしい参加の実現を入院時からの退院支援として目指していきた
いと考える。
115
O50-1
O50-2
○北川 歩(理学療法士)
,野崎晋平,豊田貴信,森下一幸
○長谷川達郎(理学療法士)1),大瀧憲夫2),池上慎太郎1)
社会福祉法人聖隷福祉事業団 浜松市リハビリテーション病院
1)医療法人穂仁会 大滝病院 リハビリテーション部
2)医療法人穂仁会 大滝病院 医局
回復期リハビリテーション病棟入院患者の転倒恐怖
感が身体活動量に及ぼす影響について
脳血管疾患患者の転倒要因についての検討
【目的】本研究では、当院の回復期リハビリテーション病棟入院患
者を対象に転倒恐怖感が身体活動量に及ぼす影響について検証す
ることを目的とした。
【対象】対象は回復期病棟入院患者のうち
日中の移動手段が歩行である患者23名(平均63.9歳)とした。
【方
法】転倒恐怖感の評価としてFall Efficacy Scale
(以下FES)、身体
活動量の評価としてLife-Space Assessment
(以下LSA)を用いて
調 査 し た。 身 体 機 能 の 評 価 と し てFunctional Independence Measure
( 以下FIM)の運動項目、連続歩行距離、Timed Up and
Go test
(以下TUG)を評価した。
【結果】相関分析の結果、各項目
で相関を認めた(p<0.01)
。また、FESとLSAをそれぞれ従属変
数とし、重回帰分析を行った結果、どちらも連続歩行距離の影響
度が高いと判断された。
【考察】結果より、転倒恐怖感が強い患者
ほど身体活動量の低下を認めた。恐怖感が強い事で活動意欲の低
下、向上心の低下、発動性の低下などを引き起こす可能性がある。
病院内での患者の移動手段は、担当医と理学療法士が評価し決定
している病院や施設が多い。その際、身体機能面への注目度が高
く、患者の心理面への配慮が不十分である可能性が考えられる。
不安感が強い患者に対しては、成功体験を繰り返し与え、自己効
力感を高めていくことも必要である。
【結語】身体活動量の向上
には、身体機能、ADL能力の改善のみならず、心理面への配慮が
重要である事が示唆される。
【はじめに】患者の円滑な在宅復帰を目指す上で、その阻害因子と
なる転倒を防止することは重要な課題である。当院でも転倒予防
策を講じているが、完全に転倒を予防するには至っていない。先
行研究で脳血管疾患の転倒危険度の高さが指摘されており、当院
においても他疾患に比べ脳血管疾患の転倒者が多い。今回、回
復期リハビリテーション病棟(以下、回復期)入棟時評価、ヒヤリ
ハットから転倒要因について検討したので報告する。
【対象】平
成26年4月1日から平成27年3月31日に回復期から退院した脳卒
中、頭部外傷患者52名を以下の2群に分類した。転倒群10名(男
性7名:女性3名、年齢71.3±9.3歳)非転倒群42名(男性22名:女
性20名、年齢79.2±7.5歳)。【方法】回復期入棟時評価(FIM、高次
脳機能障害など)
、年齢、性別で転倒の有無を比較。統計処理は、
Mann-WhitneyのU検定、χ二乗検定を使用し、優位水準を5%未
満とした。ヒヤリハットから転倒場所、転倒時期も調査した。【結
果と考察】転倒、非転倒群の比較において、年齢、高次脳機能障害
で有意差があった。転倒場所は自室が7件(50%)、転倒時期は1ヶ
月以内4件(約29%)、1〜2ヶ月が4件(約29%)であった。転倒予
防策が講じられることで、FIMやMMSEで転倒リスクを把握する
のは不十分であることが示唆された。また、注意や抑制機能といっ
た高次脳機能障害が動作獲得期間や獲得した動作での転倒に関与
していると考えられる。
O50-3
O50-4
○戸田充康(理学療法士)
,米崎厚志,朝賀成美,柴田鮎香,
熊澤征哉,石田洋子,工藤由佳,高橋れもん,菊地朝美
○岡田啓太(理学療法士)1),増永拓也1,2),西田健二1),田中 敦1),
梶原敏夫1),浅田啓嗣2)
新戸塚病院 リハビリテーション科
1)知多リハビリテーション病院 リハビリテーション部
2)鈴鹿医療科学大学大学院 医療科学研究科
当院回復期リハビリテーション病棟における転倒予
防の取り組み
〜アセスメントシート・シグナルシートの活用〜
回復期脳卒中患者の転倒リスクレベル別転倒要因の
分析〜リスクレベル別転倒予防策の検討〜
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟ではADLの拡大に伴
い、転倒・転落事故が多く発生しやすく、転倒・転落事故の防止
は重要課題の一つである。そのため、
当院回復期病棟では、看護部・
リハビリテーション科合同の転倒対策チームを発足し活動してい
る。今回、その活動内容について紹介していく。
【取り組み】活動内容は主に1)日本看護協会・回復期リハビリテー
ション病棟協会の転倒アセスメントシートを統合したシート(16
点満点)の活用。2)排泄シグナルシートの活用である。アセスメ
ントシートでは8点をカットオフとし、8点以上の患者は担当リハ
スタッフに生活場面での転倒リスクの有無を確認し、リスクあり
と判断した際は、病棟に設置している転倒リスク者リストに記載
しスタッフへの周知を促している。シグナルシートでは、排泄時
に患者の動作能力を把握できるよう、排泄に関する移乗・下衣操
作・清拭の介助量や注意事項を記載したシートを車椅子・歩行器
に設置している。
【まとめ】シグナルシートの活用によりスタッフの介助不足が減
少し、転倒数に変化がみられている。しかし、カットオフ値以下
での転倒がみられているため、今後カットオフ値の再検討をする
とともに、疾患別の傾向を調査しシートの見直しを図っていきた
い。
【目的】回復期脳卒中患者を転倒リスクレベル別に分類し、そのレ
ベル別障害特性と転倒要因を分析し検討した。
【対象・方法】入院中の脳卒中患者47名を対象に、転倒アセスメン
トシートを使用して低・中・高リスク群に分類し、それぞれの転
倒状況を観察・分析した。各リスクレベル別に入院時及び4週後
のFIM得点を転倒の有無で比較し、転倒要因を検討した。
【 結 果 】各 リ ス ク 群 の 転 倒 率 は 低 群14.3 %、中 群20.0 %、高 群
55.0%であった。中群の転倒は全て入院から4週以降に発生して
おり、高群は期間を問わず転倒する傾向が認められた。中群FIM
は入院時及び4週後の得点差が転倒群で有意に大きく、急激な運
動機能向上が転倒と関連していた。高群FIMは転倒の有無による
差は認められなかった。認知症の有無による転倒率は中・高群と
もに差はなかった。高群の認知症患者は監視、介助レベルにも関
わらず単独での移乗、移動動作で転倒していた。非認知症患者は
ベッド周囲の物を取ろうとリーチ動作や起居動作中に転倒する傾
向があった。
【結論】中群において、運動機能の急激な変化が転倒予測因子にな
りえることが示唆された。高群では、認知症の有無に関わらず転
倒しており、非認知症患者はベッド周囲の物を取るなど欲求充足
行動が転倒に繋がっていた。各リスク群で転倒の要因が異なって
おり、各リスクレベルに見合った教育的指導、環境設定が重要で
ある。
116
O50-5
O50-6
○加藤和恵(理学療法士)
,福澤 至,古本節子,芝尾與志美
○西川美穂(理学療法士),杉谷英太郎,三宮克彦,大橋妙子,
江口淳子,田中昭成,加納雄太,山下翔平,前田 徹,
中島裕太,渡邊 進
障害者支援施設<にじ>における転倒予防に向けた
取り組み〜インシデント管理システムによる分析を
共有して〜
パーキンソン病、脳卒中患者の転倒要因の分析
〜転倒アセスメントシートを使用して〜
社会福祉法人農協共済 別府リハビリテーションセンター
医療法人社団寿量会 熊本機能病院
【はじめに】障害者支援施設<にじ>では、自立訓練と就労移行支
援に特化し、障がい者の社会復帰に向けた支援に取り組んでいる。
入所者の過半数は脳卒中や脳外傷の後遺症により片麻痺や高次脳
機能障害を呈しており、転倒のリスクを抱えながらも社会生活力
向上に向けた約30種類のプログラムを実践している。しかし安
全な社会生活に向け転倒予防の自己管理が重要である。今回イン
シデント管理システム「セーフマスター」を用いた分析により実
践した転倒予防策を報告する。
【取り組み内容】(1)インシデント管理システムを使用し転倒要因
を分析、改善策の検討及びその実践(2)職員の安全意識向上を図り
レベル0(気づき)の報告を徹底(3)インシデント報告入力のチャー
ト化(4)入所日の環境調整と動作確認、早期の情報共有化(5)入所
者全体朝礼で転倒予防アナウンスの実施(6)転倒の注意喚起に対
し利用者間で確認する機会の設定(7)補装具安全チェックデーを
定期的実施
【結果】インシデント報告は前年度と比較し減少、レベル0の報告
は増加し安全意識が高まった。補装具安全チェックでは車いすの
ブレーキの緩みやタイヤ、杖先ゴム、装具の靴底の摩耗等を発見
することができ補装具の不備による発生要因はゼロであった。
【まとめ】インシデント管理システムを活用し、事例を分析、共有
することで安全に考慮した自立支援へとつながった。
【目的】当院で使用している転倒アセスメントシートの評価項目
から、疾患特性に応じた有用な転倒要因を抽出することを目的と
した。【対象と方法】平成26年1月〜12月に当院に入院したパーキ
ンソン病(以下、PD)患者93名、脳卒中(以下、CVA)患者287名であ
る。PD、CVA患者の入院時の転倒アセスメントシートの項目【転
倒既往、機能障害、移動能力、排泄障害、環境因子などの大項目
11種別を細分化した小項目34種別】を調査した。各疾患を入院中
の転倒群と非転倒群に分け、カイ二乗検定を用い2群間において
有意差のある小項目を比較した。
【結果】PD転倒群では、転倒既
往、寝たきり度Bレベル以上、車椅子・歩行補助具使用、便・尿失
禁、夜間トイレでの排泄の項目で、CVA転倒群では、転倒既往、麻
痺、筋力低下、車椅子・歩行補助具使用、移乗要介助、トイレ要介助、
車椅子移乗監視の項目で有意に高かった。
【考察】PDの転倒要因
の特徴として、排泄に関する項目が挙げられた。PD患者は蓄尿
障害によりトイレ動作が性急となり易く、トイレ内の狭い空間で
歩行障害が増強することが要因と考えられる。CVAの転倒要因で
は、麻痺、筋力低下などの機能障害に加え、移動、移乗能力低下に
関する項目が挙げられた。先行研究でも、移乗を中心に中等度以
上の介助を要するものに転倒が多いと言われている。CVA患者は、
回復段階において自己の身体機能を過剰評価してしまうことが転
倒の要因ではないかと考える。
O51-1
O51-2
○井上健太(理学療法士)1),池上泰友1),中田みずき1),
佐々木宏樹1),清水富男2)
○小川聖太(理学療法士)
1)社会医療法人愛仁会 千船病院 技術部 リハビリテーション科
2)社会医療法人愛仁会 千船病院 診療部 リハビリテーション科
一般財団法人操風会 岡山リハビリテーション病院
Seated Side Tapping testを用いた急性期脳卒
中患者の体幹座位バランス評価の有用性について
当病棟におけるセンサーマットのスイッチ入れ忘れ
に起因する転倒・転落事故減少のための取り組み
【はじめに】当病棟では転倒・転落防止のために、対応策としてセ
ンサーマットの設定を行うことが多い。その中で患者によって細
かい設定が必要な場合は、センサーマットに設定を記入するなど
の工夫をしていた。しかし、それでも患者から離れる際にスイッ
チを入れ忘れることが時折見られることがあり、それが転倒に繋
がるケースもあった。そこで当病棟では今年度より新たな取り組
みとして、センサーマットのスイッチ入れ忘れを発見した場合、
即座に師長に報告し報告書を作成するようにした。その際、事故
ではなくても誰がいつ忘れたのかを調査し原因を追及すること
で、スイッチ入れ忘れによる転倒・転落事故の予防とともに、職
員の意識の向上を図ることを目的にした。その取り組みの成果と
経過について報告する。【対象と方法】当病棟におけるH26年度と
H27年度スイッチ入れ忘れによる転倒・転落事故の件数を比較し
た。
【結果】H26年度の全転倒・転落113件のうちスイッチ入れ
忘れが原因のものが9件。H27年度は全5件のうち0件となってい
る。【考察】これまで転倒・転落予防のために主に環境面の工夫
を中心に取り組んできていたが、スイッチを入れることを忘れて
しまっては意味がないので、結局は職員の意識の向上が必要だと
考える。今回の取り組みでは昨年度と比較して転倒・転落事故件
数が減少した。これは責任を明確にすることで各職員の意識の向
上につながったのではないかと考えられる。
【目的】 脳卒中患者の機能評価をする場合、立位でのテストに
は、転倒の危険があり安全に評価できないことが多いため、座位
で運動機能を安全に測定できるSeated Side Tapping test
(以下
SST)を岩田らは開発した。虚弱高齢者の歩行速度やTimed Up
&Go test
(以下TUG)と有意な相関関係が認められていることを
示した。今回我々は急性期脳卒中患者におけるSSTの有用性に関
して検討したので報告する。
【方法】対象は当院入院中の脳卒中
患者25名(平均年齢72.1±11.4歳)
。測定項目は膝伸展筋力、10m
歩行時間(以下歩行時間)
、TUG、SST、Berg Balance scale(以下
BBS)、Functional Assessment for Control of Trunk(以下FACT)
とした。各測定値との関連性についてはPearsonの積率相関係数
を使用した。
【結果】膝伸展筋力は20.6±9.9kgf、歩行時間10.3±
5.2秒、TUG14.1±8.0秒、SST11.4±3.3秒、BBSは48.9±6.8点、
FACT16.6±2.5点 で あ っ た( 平 均 値±標 準 偏 差 )
。SSTと の 相 関
関係は、膝伸展筋力(r=0.40,p<0.05)
、歩行時間(r=0.65,p<
0.01)、TUG(r=0.72,p<0.01)、BBS(r=0.63,p<0.05)、FACT
(r=-0.73,p<0.01)であった。
【考察】今回の研究では急性期脳卒
中患者を対象にした場合SSTは各測定値と相関を認めた。SSTは
立位での運動機能と関連する可能性が示唆された。以上のことよ
り急性期脳卒中患者に対する安全な運動機能評価としてSSTは有
用なものであると考える。
117
O51-3
O51-4
○鈴木真希江(看護師)
,浜本裕子,小島里美,中村陽香
○加藤亜希(看護師)
JR東京総合病院
医療法人杏園会 熱田リハビリテーション病院 4B病棟
看護師が同行した家屋評価と退院後の訪問からみえ
た転倒転落予防へのアプローチ
下向き・オメガ固定法による経鼻経管栄養チューブ
の固定
【はじめに】転倒により骨折した高齢患者は退院後転倒で再骨折
するリスクが高い。そこで在宅での転倒転落予防の為に、生活動
作などの行動パターンを把握している看護師がA氏の家屋評価に
同行、退院後の自宅訪問も行い入院中の看護援助を実施、評価し
たので報告する。【対象】右大腿骨頚部骨折後の94歳女性A氏【方
法】看護の視点で確認する内容5項目を家屋評価で価し看護実践
に活かす。退院後自宅訪問を行い転倒予防評価する。
【倫理的配
慮】本人、家族に同意書をもって研究の主旨を説明し御了承を頂
き、当院看護研究委員会での承認を得た。
【結果】看護師が家屋評
価した事で、家族に自宅で実際に使用している座布団、靴下など
の生活用品改善の提案や自宅で必要な排泄訓練や手すりの位置、
転倒転落予防体操の指導を十分に行うことが出来た。
【考察】高
齢者にとっては今までの生活を変えることは容易ではない。私た
ちはその人の生活スタイルを温存しつつ、生活の中で転倒予防の
工夫していき、どんな社会資源を活用できるかを入院中から少し
でも患者、家族とともに考え、整えていく必要がある。転倒予防
対策として看護師も家屋評価に行く基準を作成し、同行する機会
を増やしていく必要性があると考える。
【結論】看護師が家屋評
価に同行する事は、本人の生活動作を考えた生活環境の整えが出
来、転倒転落予防対策として自宅で具体的な援助方法を家族やケ
アマネージャーに発信できた。
【はじめに】当病棟では経鼻胃管挿入患者は9名平均年齢88.3歳と
高齢である。長期に管理するに当たり皮膚トラブルが問題となっ
ている。今回下向き固定法とオメガ固定法によって皮膚トラブル
の改善への取り組みができたため報告する。
【研究方法】実態調査・評価介入型研究
【結果】皮膚トラブルはテープ交換時に鼻腔上方に発赤・潰瘍形
成がみられた。テープ・カテーテルのトラブルはテープのはがれ
が多く、発生個所も同じ場所に集中していた。手技の統一を行い、
新しく皮膚のトラブルが発生することがなくなった。
【考察】テープのはがれの要因は流涎などによる汚染・ミトンや
顔振りなどによる摩擦・吸引頻度などの体動がテープの粘着力低
下と関係しているため、固定箇所を頬部に限局せず耳介や前額部
など個々の状況に合わせた方法を選択した。また、固定法だけで
なく高齢者は皮膚の脆弱化により、環境調整や個々の皮膚の状態
に応じたスキンケア対策が必要である。
【結論】テープ・カテーテルの実態調査をすることで、現状と問題
点が明らかとなり皮膚トラブルの改善につなげることができた。
今後も皮膚の状態・体動・身体の変化などを考慮した固定法を検
討していく必要がある。
O51-5
O51-6
○永岡直充(理学療法士)
,今田 健
○岩下 修(理学療法士),廣畑淑郎,樺島広貴,島田崇史,
山本忠史
社会福祉法人こうほうえん 錦海リハビリテーション病院
リハビリテーション技術部
株式会社アール・ケア 訪問看護ステーション ママック
脳 血 管 疾 患 を 持 つ 患 者1例 に 対 し、FVC、FEV1.0、
PEFの値より呼吸機能評価に適したマウスピースの
選定
住み慣れた地域で生活を支える為の取り組み
〜事前予測による入院の現状と課題〜
【はじめに】呼吸筋麻痺や筋緊張異常により呼吸機能が低下する脳
血管疾患患者に対する呼吸機能検査は、プログラム作成やリスク
管理上の指標となる。測定時にマウスピースより息の漏れが生じ
る口腔周囲筋麻痺を伴う患者に対し、正確な呼吸機能評価の実施
に向け、
患者にあったマウスピースを検討した。
【対象および方法】
対象は、脳幹梗塞を発症した女性1例と比較対象とした健常成人
6例であった。呼吸機能検査機器(スパイロバンク)を用いたFVC
PEFを求めた。紙製とゴム製マウスピース、
検査よりFVC、
FEV1.0、
大人用と小児用サージカルマスクの4種類のマウスピースを用い
て、各2回測定し予測基準比を求めた。マウスピースの種類間に
おける各パラメータに対してTukeyの多重比較検定を用いて比較
した。【結果】健常成人のFVC、FEV1.0、はマウスピースの種類間
で差を認めず、PEFは大人用サージカルマスクが有意に低値を示
した。患者のFVC、FEV1.0は小児用サージカルマスクが有意に高
値を示し、
PEFは紙製マウスピースが有意に高値を示した。
【考察】
小児用サージカルマスクは患者の口を覆い息の漏れを抑える為、
呼気量を評価するFVC、FEV1.0において正確な測定を可能にする。
PEFにおいて、サージカルマスクはマスク内で生じる呼気の滞留
が死腔となり、呼気速度の評価には適さない。口とタービン間の
間隙が少ない紙製マウスピースがPEFの測定には有用と考えた。
【目的】主治医からの指示及びケアマネジャーからのケアプランを
基に訪問看護ステーションから訪問リハビリテーションを提供し
ているが多様な事由にて入院するケースがある。この状況を防ぐ
べく入院リスクが高いと考えるサービス利用者(以下利用者)に
対し実施した取り組みを報告する。【対象】岡山県南地域在住の利
用者(医療、介護保険を含む)261名【方法】入院リスクが高いと思
われる利用者を選出しその要因を以下に分類( 1.内科疾患 2.肺
炎・発熱 3.転倒・転落 4.運動器疾患 5.心的事由 6.その他)。
これらの利用者が入院に至る可能性を予測し、未然に防ぐための
具体的な取り組みを個別・グループで検討した。避けられず入院
に至った利用者ではその事由を調査した。期間はH26年6月〜11
月の6か月間とした。
【結果】対策を行った利用者49名。対策する
も入院となった利用者24名。対策を行わなかったが入院となっ
た利用者39名であった。対策上位項目は3.1.2.があげられた。ま
た入院事由上位項目は6.1.2.であった。【考察】対策上位項目であ
る3.については入院事由上位項目に含まれておらず、対策の効果
がうかがわれる。一方、1.2.については対策上位項目にあがって
いるにも関わらず、入院事由上位項目に含まれている。また入院
リスクが高いと考えなかった利用者における入院数が、入院リス
クが高いと考えた利用者の入院数を上回ったことから、現状の評
価に課題があることが示唆された。
118
O52-1
O52-2
○住野秀美(看護師)
,大庭かおり
○関あゆみ(看護師),宗貞行浩,渡辺恵子,高見和恵
医療法人社団菫会 名谷病院
医療法人社団生和会 徳山リハビリテーション病院
抑制廃止と転倒との関連性について インシデント
レポートから見る取り組みの評価と今後の課題
転倒予防に向けた「環境ラウンド」導入によるスタッ
フの意識変化
【はじめに】私たちはH25年3月より患者を病室以外で見守るD
ルーム係を作り、抑制廃止に向けた取り組みを行った。抑制を廃
止すると転倒が増えるのでないかという声があり、実際に抑制廃
止前後で転倒件数に変化があったのかを調査し、今後の課題を見
出すため本研究を行った。
【倫理的配慮】インシデントレポート・
意識調査は個人が特定できないよう配慮した。
【対象と方法】対象
は見守りや介助が必要な患者とした。期間は抑制廃止前のH24
年3月から廃止2年後のH27年2月までとし、転倒件数や時間帯、
場所をインシデントレポートから収集した。病棟スタッフにも意
識調査を行った。
【結果】抑制廃止前の転倒件数は50件。廃止後1
年では62件、2年では45件であった。場所別ではベッドサイドで
の転倒が多かった。抑制廃止2年目は起床時の転倒件数が減って
いた。【考察】抑制廃止当初は見守りの捉え方に個人差があった
ため、見守りや介助方法を統一する事で転倒件数を減らすことが
できたと考える。また、感染症の流行でDルームを閉鎖した時期
の転倒が多く、場所別でみるとベッドサイドでの転倒が多いこと
から、転倒予防には、患者の活動に合わせた見守り環境を作るこ
とと、感染予防対策、夜間やベッドサイドでの転倒防止策を行う
ことが必須であると考えた。
【おわりに】転倒予防は見守る環境
を作ることであると実感した。その人らしさを大切にし、尊厳あ
る看護を提供できるよう努力したい。
【目的】当病棟は、麻痺や筋力・認知機能低下、高次脳機能障害を
有する患者がADL向上に伴い転倒するリスクは高い。ベッドサ
イド環境は転倒対策を立案していながら実施されず転倒が発生す
る現状があった。今回環境ラウンドを導入し転倒予防に向けた環
境設定に対する看護師の意識変化を調査した。
【方法】対象者:看
護師研究期間:平成26年10月1日〜平成27年3月31日用語の定義:
環境設定とは、転倒防止用具を用いて安全なベッドサイド環境を
作る事。転倒防止対策表とは、環境設定を明記した表。手順:病棟
ラウンド2回/週内容:1.転倒防止対策通りのベッドサイド環境で
あるか確認2.実施できていない場合は対策通りの環境に設定3.担
当看護師へ実施できていなかった内容を報告4.環境ラウンド導入
前後の転倒件数の比較5.環境ラウンド後アンケート調査【結果】
環境ラウンド導入前後の転倒数は前9件、後2件と減少した。アン
ケート結果は、転倒防止対策表を見る回数が増えた「とても思う」
46%「少し思う」37%、ベッドサイド環境に疑問を持つようになっ
た「とても思う」23%「少し思う」62%、環境ラウンド以外でも転
倒防止対策表を活用できた「とても思う」46%「少し思う」37%の
結果となった。
【考察】環境ラウンドに参画したことで看護師の
転倒防止対策に対する意識が向上した。ベッドサイド環境に目を
向け環境を整える事が出来た。その結果、環境設定による転倒の
減少に繋がった。
O52-3
O52-4
○奥村真紀(看護師)
○秦 幸恵(看護師),本間宮子,檜山夏美,菅井 妙,武田憲夫,
齋藤栄美子
熱田リハビリテーション病院 4A病棟
鶴岡市立湯田川温泉リハビリテーション病院 看護部 看護課
整形外科疾患患者の転倒転落に内服薬が与える影響
当院における回復期病棟患者の転倒・転落の現状と
他職種協働による有効な予防対策
【はじめに】当病棟の整形外科疾患者は早朝、排泄関連による転倒
転落が多い。転倒転落の内服薬による影響についての先行研究は
あるものの、その関連性は明らかになっていないため調査を行っ
た。
【方法】平成26年1月〜12月に当病棟に入院された整形外科疾患患
者99名のうち、転倒転落患者23名をインシデントレポート、診療
録から単純集計した。
【結果】当病棟の整形外科患者の転倒転落率は23%である。その
うち利尿剤を内服している患者の転倒転落率は60%と最も高く、
次いで精神安定剤を内服している患者が42%、抗痙攣薬が38%、
下剤が33%、睡眠薬が29%、降圧剤が29%の順であった。また利
尿剤と精神安定剤の併用では75%であった。
【考察】当病棟での整形外科疾患患者の転倒転落率は23%。その
うち利尿剤内服患者の転倒転落率は60%と高値を示している。
これは早朝覚醒後、慌てて排尿行為を行なおうとして起こってい
る。また精神安定剤や抗痙攣剤の作用でめまいやふらつきなどに
よりさらにその確率が高くなっている。したがって利尿剤、精神
安定剤、抗痙攣薬を併用している患者はさらに転倒転落のリスク
が増大している。今回の結果を踏まえ転倒転落の危険因子として
内服薬に着目し、病棟スタッフ間で情報共有をし、適切な対策を
行ない、援助してゆく必要があると考える。
【はじめに】ここ数年、当院でのインシデント・アクシデント報告
の70%を転倒・転落(以下、転倒)が占めている。平成24年度当
院の転倒転落率6.2‰(転倒数/入院患者延べ人数)
。平成24年度
当病棟(回復期40床)の転倒は96件、その内約66%がベッドサイ
ドでの転倒であった。そこで転倒件数を減らすため、当病棟で新
たなシステムを導入し、転倒件数減少に結びつけたので、その経
緯と結果を報告する。
【方法】特にベッドサイドに着目した環境
チェック表を作成、多職種が参加した転倒予防対策チームを発足
させ、平成25年度7月から15ヶ月間取り組んだ。この間の転倒デー
タを、本システム導入前後の15ヶ月間と比較検討した。
【結果】導
入前の患者数は288名、入院延べ人数は16540名。この間の転倒
件数は124件、転倒転落率は7.5‰。入院患者数に対する転倒患者
数は97名。ベッドサイドでの転倒は86件、69%であった。
導入後の患者数は249名、入院延べ人数は15890名。この間の転
倒件数は76件、転倒転落率は4.8‰となり、転倒転落率は有意な
減少(p<0.01χ2)が見られた。患者数に対する転倒患者数は50
名。また、ベッドサイドでの転倒件数は40件、割合は53%であり、
。
【考察】他職種協働で
この比率も有意に減少した(p<0.05χ2)
きめ細かな観察と迅速な対応を行ったことで、転倒を減少させた
と考える。これを受け、院内他病棟へも本システムを導入し病院
全体の転倒減少に向け検討を始めている。 119
O52-5
O53-1
○渡辺幸太郎(理学療法士)1),大井清文2),佐藤英雄1)
○中江基満(理学療法士),山本裕季,竹前恵美,林 容子
1)いわてリハビリテーションセンター 機能回復療法部 理学療法科
2)いわてリハビリテーションセンター 診療部
滋賀県立成人病センター リハビリテーション科
回復期病棟における自立歩行獲得後の転倒分析
脳外科の合併症である肺炎に対する病棟との取り組み
【はじめに】脳卒中は一般に呼吸器感染、尿路感染、転倒、皮膚損
傷など急性期合併症の頻度が高く、発症前から機能障害がある例、
重症脳卒中既往例や、高齢者例に、特に合併症が多い。合併症が
あると死亡率のみならず機能的転帰も悪くなるので積極的に合併
症予防と治療に取り組むことが推奨されている。当院脳卒中入院
患者の重症例(FIM<40)の割合は4割を占め、当院患者において
も合併症を起こされる危険性が高く、合併症予防は非常に大切で
ある。急性期から呼吸リハビリテーション等を積極的に行うこと
は、肺炎の発症を少なくするために推奨されている。そこで今回、
病棟と連携し、合併症である肺炎を予防・改善する取り組みを行っ
たので紹介する。【方法】病棟Nsと、体位ドレナージと呼吸介助に
関する実技の勉強会を行い、病棟サイドでの呼吸リハビリの実施
を図った。体位ドレナージ実施時間表を作成し、体位の時間管理
と病棟との連携を図った。当院での体位ドレナージの方法を作成
し、病棟との統一化を図った。【結果】脳卒中を含め、脳外科対象
患者様の合併症である肺炎予防・改善に対する意識づけや、病棟
と協働して取り組むきっかけができた。
【考察】体位ドレナージ
方法の統一と、時間管理を行うことで、以前よりも効率的に肺炎
予防が図れたのではないかと考える。今後、早期離床も含め、さ
らなる病棟との連携を図っていき、患者様の為に、より良いケア
が提供できればと考える。
【目的】回復期病棟での移動自立後に転倒した事例を分析し、注意
すべき項目の明確化を目的とした。
【対象と方法】2013年4月〜2014年3月に、入院中に病棟内歩行が
自立し、
その後転倒に至った25例を、
杖なし歩行群(以下1群)6名、
杖歩行群(以下2群)14名、歩行車歩行群(以下3群)5名の3群に分
け、転倒発生の時間帯、場所、発生時の状況、病棟内歩行自立から
転倒発生までの日数を検討した。
【結果】転倒発生時間帯は3群とも午前5:00〜8:00が多く、発生
場所は、1群は自室内が100%、2群は自室内が80%、3群は自室
36%、廊下36%、トイレ・食堂が14%であった。発生状況は、1
群は排泄や更衣に関連し、2群は排泄や廊下移動中に関連し、3群
は排泄に関連したものが多かった。病棟内歩行自立から転倒発生
までの平均日数は、1群が30.5±33.7日、2群が18.7±14.2日、3群
が21.0±18.2日であった。
【考察】全ての群で朝方の転倒が多く、朝方は更衣、整容及び排泄
等自室内で行うべき活動が多く、同時に転倒の危険性も高いこと
が示された。特に全ての群で排泄に関連したものが多く、尿便意
を伴う状況がどのように歩行に影響するかを今後検討する必要性
が示唆された。また歩行自立後より約3〜4週間は転倒リスクが
高く、3群とも自室内の転倒が多いことから、慎重な自室内環境の
評価や歩行補助具の選定の必要性も示唆された。
O53-2
O53-3
○細野 祥(理学療法士)
,岡部知昭,西田和正,千葉和正,
阿部雄太
○岩村有梨名(作業療法士)1),多田雅子1),神尾昭宏1),渡辺英利1),
佐藤邦宏2),大谷美江子2),坂本理恵3),西村はるよ3)
転倒骨折による再入院を防ぐための取り組み
回復期リハビリテーション病棟における転倒・転落
対策についての検討
〜1年間の病棟ラウンドを通して〜
医療法人真正会 霞ヶ関南病院
1)社会医療法人大道会 森之宮病院 リハビリテーション部 作業療法科
2)社会医療法人大道会 森之宮病院 リハビリテーション部 理学療法科
3)社会医療法人大道会 森之宮病院 看護部
【はじめに】当院回復期リハビリテーション病棟を退院後に転倒
骨折し再入院された方を担当する機会があった。退院支援の中で、
転倒予防に対する取り組みは多くあるが、退院後の生活を見据え
た取り組みは十分とはいえない。今回、転倒骨折により再入院さ
れた方の傾向を調査し、入院中のかかわり方について考察したの
で報告する。【対象と方法】当院退院後、平成25年度4月〜平成26
年度3月に転倒骨折により再入院された31名。退院から転倒骨折
までの期間を分け、それぞれの特徴をカルテ記録より後方視的に
調査。
【結果】期間でみると、180日未満が7名、180日以上は24名。
退院後6ヶ月以内に転倒骨折する方の特徴として、既往に転倒骨
折や廃用症候群があり、入院中に複数回の転倒歴があった。また
自宅での転倒状況で日中はなく、朝や夕方の時間帯に多い特徴が
あった。
【まとめ】退院支援する中で、安心・安全というものは当
たり前のことである。退院後の転倒予防のため、自宅訪問や外出・
外泊を通し環境調整を行ってきたが、残念ながら今回の様に退院
6ヶ月以内と早期に転倒骨折された方がいた。これまで実施した
訪問は日中の時間で、結果から得られた時間帯での訪問は行って
いなかった。このことから、転倒が起こりやすい時間に合わせた
自宅での動作確認や主介護者との情報共有を行う必要性が高いと
思われる。そこから入院中の自宅外出・外泊について見直し、新
たな方法を試みたい。
【はじめに】当病棟では平成25年度より、セラピストと看護師合同
で転倒・転落対策チームを発足し病棟ラウンドを開始した。転倒・
転落防止に向けた環境整備と、患者の尊厳を尊重し身体拘束を減
らしながら対応策を検討した。結果、転倒・転落発生要因に変化
が見られたので以下に報告する。
【対象と方法】対象は、病棟ラウンド実施前の平成25年度と、実施
後の平成26年度に転倒・転落した当病棟入院患者70名。患者属
性(性別・年齢・病型・Fugel-Meyer・MMSE・FIM)、転倒・転
落件数、発生場所、発生日時、発生要因を分析し、比較・検討を行っ
た。尚、本研究は当院倫理委員会の承認を得ている。
【結果】病棟ラウンド実績は年間で計24回。平成26年度の転倒・
転落発生件数は48件(平成25年度50件)
。転倒・転落件数、場所、
日時に大きな変化はみられなかったが、発生要因は昨年度最多の
「物をとろうとした」が23件から7件へと減少した。
【考察】転倒・転落対策チームを発足し、ベッドサイドの環境整備
に重点を置いた病棟ラウンドを実施したことにより、ベッド周囲
が整備され、さらに看護師や対象者の環境整備への意識が高まり、
物を取ろうとして転倒・転落することの減少に寄与したと考える。
一方で相対的な転倒・転落件数に変化が見られておらず、他の要
因による転倒・転落への対策も今後検討していく必要がある。
120
O53-4
O53-5
安心安全な回復期リハ病棟構築に向けた転倒転落防
止活動の課題整理
尿意伝達ができない入所者の危険行動に関する事例
調査
○太田有美(作業療法士)1),洲上祐亮1),尾上佳奈子1),
蓑田もと子1),森 淳一1),川原ちひろ2),佐藤浩二3)
○佐藤春佳(作業療法士)
,森 淳一,太田有美,渡辺亜紀,
佐藤浩二
1)社会医療法人敬和会 大分東部病院 リハビリテーション部
2)社会医療法人敬和会 大分豊寿苑
3)社会医療法人敬和会 大分岡病院
1)社会医療法人敬和会 大分東部病院
2)社会医療法人敬和会 大分岡病院
【はじめに】平成26年度の転倒・転落内容を分析するとともに、定
点分析により転倒・転落予防が適切に行われているか調査したの
で考察を加え報告する。
【対象と方法】26年度25件の転倒・転落
報告書を分析するとともに、4月30日時点の入院患者50名を対象
に転倒対策が具体的であるかを時間、場所、方法、対策の周知の4
項目について担当セラピストにアンケートを実施し、その内容を
リハリーダー2名で検証した。
【結果】報告書より転倒場所は居室
が多く、時間帯は日勤帯よりも夜勤帯が多かった。転倒状況・要
因は転倒対策不履行による転倒、動作の確認不足、環境調整不足
であった。アンケート結果の検証では、80%の患者に対し対策立
案がされていた。しかし、30%の患者では対策時間が限定的とな
りすぎ不十分と判断された。また対策場所でも、ベッド周囲や居
室内に限定され46%で不適切と判断された。対策と方法において
も、ベッド柵や転倒対策物品を不用意に使用しており66%で不適
切と判断された。対象患者には対策周知として紙面の掲示を行っ
ていたが、82%はADL能力の向上に合わせた対策更新が不適切と
判断された。【考察とまとめ】今回の調査から対策の立案はされ
ているが、患者の状態に沿った具体的な対策立案まで至っていな
い状況にあった。今後、安心安全な回復期リハ病棟構築に向けて
対策方法の検討と関係職員との協働体制を強化し対策を具体的に
していくことの重要性が示唆された。
【はじめに】尿意伝達が行えず危険行動を認める事例に対し、危険
行動の表出が尿意伝達のサインではないかと仮説を立てた。仮に
仮説が正しければ、個別の排尿リハやケアを提供すれば、転倒・
転落防止にも繋がる。今回、膀胱機能と危険行動の関連性につい
て事例調査を行った。
【対象】介護老人保健施設入所中の尿意伝
達のできない3例(A氏70歳代男性、B氏80歳代女性、C氏80歳代
女性)。3名共に転倒・転落リスク高く危険行動を認める。【方法】
24時間の膀胱機能評価と併せ危険行動の観察された時刻と内容
を記載した。膀胱機能評価は、残尿測定器ゆりりんを用いて行い
危険行動と照合した。ここでの危険行動は、そのまま放置すれば
転倒・転落へ繋がる可能性のある行動とした。【結果】3名共に失
禁直後に危険行動有り。A氏は13回排尿があり内2回はトイレ誘
導をした。残り11回は失禁であり直後に「車いすから急に立ち上
がる」等の行動を認めた。B氏は7回の排尿有り全て失禁であった。
全て失禁後に「布団を剥ぎベッドから上体を出す」等の行動を認
めた。C氏は10回の排尿があり、内3回はトイレ誘導をし、残り7
回は失禁であった。全て失禁後に「体を起こし脚を投げ出す」等
の行動を認めた。
【考察】3名の危険行動は、尿意伝達と関連があ
ると考えられた。この結果を受ければ、膀胱機能を捉え個別的な
排尿へ関わる事により、危険行動の抑制、ひいては転倒・転落防
止に繋がると考えられた。 O53-6
O54-1
○大久保訓(作業療法士)1),後藤由美1),山本なお子1),高階欣晴1),
山下浩樹1),上斗米律子1),菊池浩子1),青木俊明1),大井清文2),
高橋 明1)2)
○原麻由美(看護師),栗原千絵,藤田真由美
岩手県地域リハビリテーション関係職員研修会「リ
スク管理」における活動報告
安全な入院生活をおくるために〜転倒転落予防〜
1)いわてリハビリテーションセンター 地域支援部
2)いわてリハビリテーションセンター 診療部
医療法人明倫会 本山リハビリテーション病院
【目的】本山リハビリテーション病院は平成25年7月に開設された
新しい病院で、看護師、介護士、リハビリ職員の複数体制で各病
棟が構成されている。対象患者は、脳血管疾患と整形疾患が主で
ある。当回復期病棟では、麻痺や疼痛などから日常生活に制限の
ある患者が機能訓練を行うことで、徐々にADLが拡大していく過
程である反面、転倒転落のリスクが高くなり、ヒヤリハットやイ
ンシデントに繋がっている。当初は、他職種間のコミュニケーショ
ン不足もあり、職員全体で転倒転落のハイリスク患者の状況を把
握・共有できていないことが問題として考え、この取り組みを行っ
た。
【方法】インシデントの原因追及をし、介入できるものを洗い出し
た。その対策として、他職種間の情報共有ツールの作成、他職種
間でのカンファレンス実施、ポスター掲示、夜間業務分担見直し
を行った。
【結果】インシデント、ヒヤリハット数が52.6%減少した。
【考察】今回の取り組みにより、他職種間での情報共有、カンファ
レンスを行うようになったことで、声掛けが活発になり、職員全
体の転倒転落に対する意識が高まったと考える。
【はじめに】当センター地域支援部では、平成10年より地域リハ
ビリテーション関係職員研修会を県内各地で実施している。平成
26年度はリハビリテーション(以下、リハと略す)おけるリスク
管理を見直す必要があると考え、このテーマの研修会を実施し再
確認したことを報告する。
【研修会の内容】テーマ:リハ分野に
おけるリスク管理〜リスク解決のコツ・あれこれ〜 内容:1概要2起居・移乗3口腔ケア4排泄5情報交換 構成:講義・
実技 対象:地域リハに関係する職員:医療職・介護職・行政職など スタッフ:医師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・
保健師【結果】参加人数は178名であり、このうちプログラム全体
として参考になった割合は82.9%であった。
参加者の意見として、
「実技を交えた講義を受け、普段忘れていたことや大切なことを
学び、リスクを予測するきっかけとなった」
、「様々なリスクに対
し色々な事が繋がっていることを感じた」
、
「実践してみようと感
じ、ミーティングの際や施設長に提案してみようと思った」
、
「多
職種や多施設が気軽に相談出来る関係作りが重要と思った」等が
挙げられた。【考察】リスク管理の研修会において多職種が日常
を見直す意味で、講義に加えて実技体験することは、理解されや
すく興味を持って参加していた。また施設内・地域内において安
全対策の情報共有に苦慮していることを再確認し、今後この点に
関して検討していく。
121
O54-2
O54-3
○牧野優徳(作業療法士)
,黒土達也,豊永英津子,宮崎由美,
山内信二
○藤井博昭(理学療法士),早川佳伸,徳井大知,加藤麻美
医療法人博光会 御幸病院
鵜飼リハビリテーション病院
当院における転倒転落防止対策プロジェクトの成果
と課題
入院初期評価から転倒対策を導き出す評価・対策
シートの作成
【はじめに】当院では2013年より、医師・薬剤師・看護師・介護
士・理学療法士・作業療法士・医事課・総務課・情報管理課・そ
の他医療安全管理責任者によって構成される転倒転落防止対策プ
ロジェクト「つっこけん隊」を立ち上げ、回復期病棟を中心に活動
を行っている。今回、プロジェクトの立ち上げから現在までの成
果と課題について報告する。
【目的】1.多職種協働での取り組みに
よる「転倒防止」の強化 2.患者様一人ひとりに合わせた活動へ
の支援 3.患者様の意欲や想いを大切にした活動への支援 4.患
者様が安全・安心に活動できる環境作りの強化5.転倒を予防する
視点での活動支援【活動内容】1.転倒事例検討会の実施 2.転倒現
場ラウンド・ミーティング 3.対応前後のラウンド報告書の作成
4.院内勉強会 5.転倒啓発ポスターの作成【結果】平成24年度の
インシデント総件数での転倒・転落の占める割合は35.3%であっ
たが、平成25年度の転倒・転落の占める割合は26.2%と減少が認
められた。しかし、統計では有意差はなかった。
【考察】転倒転落
防止プロジェクト発足後、転倒転落によるインシデントの割合は
大きく減少したが有意な差は認められていない。要因として、1.活
動内容は転倒転落後の対応であり転倒される前の予防措置活動が
行えていなかった事2.月毎の症例数3.活動回数が大きかったので
はないかと考えた。今後、改善案を基に取り組みを実施し、デー
タ収集を行い有効性を検討していく。
【はじめに】当院では平成26年度の入院から1週間以内における
ベッドサイドでの転倒が32件であり、その内3日以内の転倒が16
件と半数を占めていた。そこで入院初期の転倒予防のため、転倒
の危険性の評価から転倒対策を導き出す、転倒危険度評価・対策
シート(以下、対策シート)を作成した。今回はその対策シートの
有用性を後方視的に調査した。
【対象】対象は入院から3日以内に
ベッドサイドで転倒した13名(以下、転倒者)と自立度が高かっ
た13名(以下、自立者)とした。
【方法】対象者の入院から転倒直
前までのカルテを確認し、実際に行われていた転倒対策を調査し
た。また、対策シートにて転倒対策を導き出し、実際に行われて
いた転倒対策と比較した。
【結果】実際に行われていた転倒対策
は、転倒者で特殊コールの設置が3名、足元柵の設置などベッド柵
の工夫が9名であった。自立者は特別な対策はされていなかった。
また、対策シートにて導き出された転倒対策は転倒者の全てに特
殊コール設置の必要性、10名にベッド柵の工夫が示された。自立
者では転倒対策の必要性は示されなかった。転倒者において特殊
コールの設置については実際に行われた転倒対策と導き出された
転倒対策に差がみられた。
【考察】実際に行われた転倒対策と今
回の対策シートの比較において、対策シートでは過不足ない対策
を導き出すことができた。転倒危険性の評価から転倒対策を導き
出す対策シートの有用が示唆された。
O54-4
O54-5
○寺林俊樹(理学療法士)
,藤田玄弥,森田慎也,伊東克晃,
松田奈央,久崎磨咲,新林正子,沖山正子,野上予人
○高橋 健(看護師),前田久美
かみいち総合病院 回復期リハビリテーション病棟
医療法人仁寿会 サニーサイドホスピタル
当院回復期リハビリテーション病棟におけるThe
Standing Imbalance Disequilibrium
(SIDE)を用
いた転倒予防対策への試み
回復期リハ病棟の複数回転倒症例の検討
【背景と目的】回復期リハビリテーション病棟(以下回復期リハ
病棟)に入院した約2割の患者が転倒していると報告されている。
適切な転倒予防のための対策を行う上では転倒の危険性をより簡
便に評価し、他職種で情報共有しやすい指標の導入が必要である。
今回我々はThe Standing Imbalance Disequilibrium
(以下SIDE)
に着目し、転倒との関連について検討したので以下に報告する。
【方法】2014年9月1日〜2015年3月31日までに当院回復期リハ病
棟に入院していた患者104名(平均年齢78.0±10.0歳、女性73例、
男性31例、整形外科疾患72例、中枢神経疾患20例、廃用症候群12
例)を対象に当院回復期リハ病棟入院時のSIDEおよびリハ介入開
始時のMini Mental State Examination
(以下MMSE)を測定し、
入院1ヶ月以内の転倒報告との比較検討を行った。転倒報告は当
院における基準であるインシデントおよびヒヤリに該当するもの
として報告された例とした。
【結果】入院1ヶ月以内の転倒報告は
ヒヤリ例も含めて17%であった。入院時のSIDEと転倒報告の割
合は0レベルで30%、2aレベルで17%、1レベルで10%となった。
各SIDEレベルでMMSEの点数を比較したが、0レベルの転倒報告
例に低い傾向を認め、1及び2aレベルでは日時の見当識の影響が
伺われた。
【まとめ】SIDEレベルを測定し、さらに認知機能の評
価を加えることで、より転倒の危険性を予測する精度を高められ
ることが示唆された。
【はじめに】回復期リハを行う上で、ADL拡大とともに転倒のリス
クは大きな問題である。入院生活の中で、転倒を複数回起こした
患者様に共通する因子を明らかにする。
【対象】過去1年間、入院
中に複数回の転倒を認めた患者20名【方法】転倒した時間、場所、
状況、自立度を検討した。また、FIM運動項目、認知項目の合計点、
トイレ動作、ベッド移乗の各項目の点数を検討、考察した。【結果】
転倒件数全52件、場所別ではベッド周囲52%、トイレ内26%、食
堂5%、廊下3%で、状況としては「ひとりで行おうとした」が過半
数を占めている。また初回転倒から次回の転倒までの間隔平均は
21.4日であった。FIM項目では運動機能平均49.0/91 認知機能
24.3/35 トイレ移動3.5/7 トイレ動作3.6/7 ベッド移動4.5/7
であった。
【考察】転倒を複数回起こす症例の傾向として、認知機
能がある程度維持されているが、運動機能的には介助を要する症
例が多く見られた。特にベッドサイドでは最小介助の転倒者が多
く見られた。場所として生活の主な場所であるベッド周囲やトイ
レが多数見られた。回復期でのリハが進むにつれ、まだ介助が必
要である状況に対して、本人は機能訓練では行えたという自信や、
ADL自立への関心が行動に移ったのではないかと考えられる。今
後、転倒リスクの高い症例に対して、自立心を妨げることなく安
全に配慮し、転倒予防を行っていく必要があると考えられる。
122
O54-6
O55-1
訪問リハビリ利用者の転倒と骨折状況について
竹踏み運動がバランス機能に与える影響
○板垣沙織(理学療法士) ,三村 健 ,清水美穂 ,
桑原 至1,2),島田 悟1,2),小川美苗1,2),池浦一樹1,2),
池浦理恵1,2),萱森恵美1,2),山田尚子1,2),木下佳織1,2),
大野美沙1,2),山口幸子1,2),山崎美穂1,2),萩荘則幸1,2)
1,2)
1,2)
1,2)
○西村圭祐(作業療法士),成松萌絵,山下義人,松本有史,
前田 徹,馬場隆俊
1)医療法人社団らぽーる新潟 ゆきよしクリニック
2)医療法人社団らぽーる新潟 ゆきよし訪問看護ステーション
順心リハビリテーション病院 リハビリテーション部 作業療法課
【目的】足底の感覚刺激がバランス機能の改善に好影響を与える
ことは広く知られている。今回、臨床において簡易に行える足底
感覚刺激法である竹踏み運動が、バランス機能に与える影響につ
いて検討した。
【方法】対象は、当院回復期リハビリテーション病棟入院の病棟内
歩行自立レベルの症例28名(脳血管疾患20名、運動器疾患8名)と
した。対象者は立位で3分間両足交互に竹踏みを行い、介入前後
で座位下肢荷重力、静的バランス機能検査であるFR、動的バラン
ス機能検査であるTUG、歩行能力検査であるMWSを測定し改善
群と非改善群に分類した。
【結果】竹踏み介入前後において、座位下肢荷重力では22例(76%)
が改善、FRでは22例(76%)が改善、TUGでは5例(17%)が改善、
MWSでは6例(21%)が改善した。
【考察】竹踏み介入後、足底メカノレセプターが賦活され感覚
フィードバックが増加し、患側下肢への重心移動が起こり、支持
性が高まることで静的バランスに改善傾向みられたと考えられ
る。一方、動的バランス、歩行能力の主要因子は、患側膝伸展筋
力と両足圧中心累積移動距離である。患側下肢の支持性は高まり
歩容の改善はみられたものの、動作として定着しておらず両足圧
中心累積移動距離は減少しなかったものと推察される。今後、さ
らに症例を重ね結果の信頼性を高めるとともに、動作学習と動的
バランスについても検討して行く必要がある。
【はじめに】当法人では、訪問リハビリを介護保険と医療保険のそ
れぞれで、医院から、及び併設の訪問看護ステーションより実施
する4パターンで行っている。登録している全利用者は451名(男
性201名、女性250名)である。
【目的】当法人の訪問リハビリの利用者を対象に、転倒と骨折状況
について調査した。
【方法】全利用者に対し、過去1年間における転倒の有無、転倒に
よる骨折の既往の有無を調査した。その後、骨折の既往がある方
に対し、転倒スコアで評価した。尚、HDS-Rで20点以下の場合は、
対象から除外した。
【結果】過去に転倒による骨折がある方は、全利用者の約15%で
あった。全利用者の約33%で過去1年間に転倒がみられた。疾患
別にみると脳血管障害が最も多く、次いで、パーキンソン病であっ
た。そのうちの約8%が骨折に至っていた。過去に転倒の既往が
ある方は、再転倒リスクが高かった。
【考察】今回の調査では、骨折に至らなくとも、転倒の頻度が高い
ことが分かった。高齢者の転倒は様々な要因が重なり発生するた
め、一つの要因に対する介入では不十分であるが、生活の場で介
入を行う訪問によるリハビリテーションの特性を生かし、転倒リ
スクを軽減していくことが今後の課題と考える。
O55-2
O55-3
○秋吉朋子(作業療法士)
,尾関 誠,竹内修太,谷口嘉奈子,
下岡奈緒,池田昌弘,槌田義美,山鹿眞紀夫,古閑博明
○道下裕之(作業療法士),猪野嘉一
熊本リハビリテーション病院 リハビリテーション部 作業療法科
医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院
リハビリ中の転倒・転落をなくすために
−取り組みの経過と効果−
当院リハビリテーション部におけるヒヤリハット報
告の簡略化 −導入後の変化−
【目的】当院リハビリテーション部のリハビリ中の転倒・転落防
止対策として、インシデント・アクシデント報告と対策、KYTを
行っていたが、件数に大きな変化はなかった。
そこで、過去の状況を分析し、転倒予防実技講習会と歩行自立判
定基準表という追加の取り組みを行った結果、転倒・転落件数に
対して一定の効果が認められたので、その取り組みとの関係を考
察した。
【方法】H20年度からH24年度までの転倒・転落状況の分析を基に、
H24年度に転倒予防実技講習会を実施した。H25年度に歩行自立
に必要な動作をPT、OT全スタッフで議論し、歩行自立判定基準
表を作成・導入した。
そして、H22年度からH26年度までの過去5年分の転倒・転落件
数と、一連の取り組みとの関係を分析した。
【結果】例年、転倒・転落が十数件あったが、H26年度は半減した。
【考察】従来の受身的な内容の取り組みに、個々人が主体的に取り
組む内容を追加したことで、環境・スタッフ・患者という3つの
要因の不足部分を補え、転倒・転落件数の減少につながったと考
える。
この中でも特に影響の大きいスタッフ要因を詳細にみると、1年
目のスタッフは知識や経験の不足を補い、2年目以上は慣れによ
る意識低下を再度喚起することができたためと考える。
【はじめに】当院リハビリテーション部ではヒヤリハット(以下、
ヒヤリ)報告を促進してきたが報告件数の増加には繋がらなかっ
た。また、ヒヤリ・事故の報告者は院内書式に基づきPCへの入力
を行うが「ヒヤリを発見しても、すぐにPC入力することが難しい」
との意見が散見された。そこで報告用紙の書式を改編し、各職員
が未記入の用紙を常に携帯し手書きで記入できるようにするな
ど、ヒヤリ報告の簡略化のための仕組みを導入した。その結果ヒ
ヤリ件数の増加、事故件数の減少が認められたため報告する。【方
法】対象期間は平成26年4月1日から平成27年3月31日迄とした。
また導入以前の平成26年4月から8月を未導入期、9月から平成27
年3月を導入期として月平均での報告件数を比較した。【結果・
考察】未導入期と導入期の比較では月平均のヒヤリ件数4.0件から
10.4件と増加、事故件数8.0件から3.7件と減少した。またヒヤリ
件数を報告者別で見ると、ヒヤリ発生の当事者が3.8件から6.9件、
周囲の発見者が0.2件から3.6件と増加した。これはヒヤリ報告の
簡略化により当事者のみならず、周囲の発見者からの報告増加に
繋がり、ヒヤリ件数が増加したと考える。また、それにより安全
管理の意識が高まり事故件数の減少に繋がったと考えられる。今
後、安全管理の意識をより高めるために他部門での導入を検討し
ていく。
【倫理的配慮】本研究は当院倫理審査委員会による承諾
を得て実施した(審査番号2015051101)。
123
O55-4
O55-5
多様なリハビリサービスにおけるヒヤリハット分析
と職員間の情報共有を目的としたノート導入の試み
(第1報)
デイケアにて転倒記録表を活用して転倒再発予防を
行った一症例
○後藤悠人(理学療法士)1,2),松浦大輔1),井上靖悟1),鈴木 研3),
大高洋平1,4)
○丸山陽介(理学療法士)1),中村幸輝1),佐藤友昭1),阿部悠香1),
伊元勝美1),坪井文子2)
1)東京湾岸リハビリテーション病院 リハビリテーション部 理学療法科
2)千葉大学大学院 医学研究院 認知行動生理学,3)谷津居宅サービス
センター,4)慶應義塾大学 医学部 リハビリテーション医学教室
1)神谷病院 リハビリテーションセンター
2)神谷病院 看護部
【はじめに】リハビリサービスは病期や保険制度により多様なサー
ビスが存在する。それぞれのサービスは、対象や目的が異なるた
めに起こるリスクの特徴も異なる。リスク管理においてハイン
リッヒの法則からヒヤリハット分析は重要視され、リハビリでも
多くの報告が見られる。しかし、サービス別に分析をした報告
は少ない。また、リスクの分析・軽減には職員の意識向上が重要
で報告しやすい環境づくりや情報共有が必要である。今回、サー
ビス別のヒヤリハット分析と情報の共有を目的に、ヒヤリハッ
トノートの運用を開始して5ヶ月が経過した。運用方法と若干の
サービス別傾向を報告する。
【当院リハビリ】回復期・一般・療
養病棟の入院リハビリ、外来リハビリ、みなし指定にて短時間通
所リハビリと訪問リハビリを提供し、セラピストは25名在籍して
いる。【運用方法】ノートはスタッフルームの目立つ場所に置き、
記入者は匿名で対象者の利用サービスと事象・対策を記入。情報
共有は月一回の全体会議で伝達し、職員へ一読と記入を促してい
る。今後、
半年に1度、
集計し各サービス別に事象を分析する予定。
【実績と傾向】5ヶ月間で27件の記入があった。傾向は入院中の対
象者の場合、バランス・基本動作・歩行練習などのリハビリ実施
内の技術的問題が多かった。自宅から来院する外来や通所リハビ
リ対象者はリハビリ実施内だけでなく、開始前後のベッドや椅子
への移動時に起こる傾向があった。
【はじめに】地域在住高齢者において転倒の再発予防のためには、
その状況を正確に把握することが重要である。しかし、入院患者
と違い正確な情報を得るのは困難である。そこで、転倒発生時の
状況を自身で記録する表を作成し、デイケア利用者に活用した。
これにより転倒発生時の状況を正確に把握し、的確な介入を行う
ことを目的としている。今回、この記録表とその効果について、
一症例を対象に報告する。
【症例】81歳男性、要支援2。H24左大
脳のラクナ梗塞にて軽度右片麻痺を呈した症例。ADLはFIM118
点、歩行は室内・屋外自立。過去、自宅にて数回転倒経験がある
が、詳細は不明であり、本人は再発予防を重要視していなかった。
【記録表】転倒発生時の状況をその場で簡易的に記録し、デイケア
利用時に記録表を持参していただいた。記録の内容から原因を分
析し、動作指導や環境調整を行った。【結果】転倒記録表より、急
な方向転換の際に麻痺側に回る習慣があり、過去にも同じ状況で
数回転倒していることが判明した。これに対し、方向転換時の動
作練習を実施し、足の運びを修正した。その後、転倒発生はなく
なり、本人から「転ばないように気を付けている」との発言が増え
た。
【考察】転倒記録表を用いることで、転倒時の状況を正確に把
握し適切な指導が行えただけでなく、転倒について本人自ら振り
返る機会を作ることができ、再発予防の意識付けが行えたと考え
られる。
O55-6
O56-1
○上野弘樹(理学療法士)1),中村英史1),西谷拓也1),上地本高1),
谷内香織2),北川敦子1),杉浦有子1),池田拓史1),中山さやか1),
霜下和也1),橋本 実1),茶谷雅明1),酒井友紀1),後藤伸介1)
○片山絵美(作業療法士),牧野洋良
当院における理学療法士・作業療法士・言語聴覚士
の経験年数及び病棟配属年数とアクシデントとの関
連性
当院急性期病棟におけるST嚥下訓練後早期からの
OT介入についての報告と課題
八潮中央総合病院 リハビリテーション科
1)やわたメディカルセンター,2)芦城クリニック
【背景・目的】食事動作にOTが介入することで食事動作能力の向
上を認めた報告は多い。しかし、急性期病棟での嚥下困難者への
食事動作の介入に対する報告は少ない。そこで、嚥下訓練終了後
早期に食事動作能力の向上、退院後の食事介助や姿勢指導を目的
としたOT介入を行ったので結果を以下に報告する。
【対象】対象
は誤嚥性肺炎を呈し、嚥下訓練終了後に食事摂取可能となった患
者6名(年齢86.3±6.7歳、男性3名、女性3名)。【介入方法】ST嚥
下訓練終了後、OTによる食事場面の評価を行い、自助具の選択や
食事姿勢の評価を行った。
【結果】6例中2例に自力摂取に際する
持久性の改善(自立摂取可能時間の延長)を認めた。また退院者決
定者3例の主介助者に対して、事前に食事摂取時の注意点や姿勢
指導を行う事ができた。
【考察】急性期病棟における嚥下訓練終
了患者に対して、ST終了翌日からOTが食事場面での評価、自助
具の選定等を行い、病棟スタッフへ伝達した結果、食事動作能力
の向上が示唆された。また退院が決定した患者の主介助者に食事
動作や姿勢の指導を行うことで、退院後の食事動作能力の低下や
誤嚥の予防が期待出来ると考えられる。
【今後の展望】食事動作
に関して評価や治療方針を統一することで、早期からOTが食事
動作に関わる意義をさらに強く示していけると考えられる。今後
は、症例数を増やし継続していくことで、評価・治療の明確化を
図っていきたい。
【はじめに】当院は一般病棟と回復期リハ病棟を有しており、PTと
OTとST
(以下療法士)の配置は基本的に病棟専従としている。ま
た、療法士は数年毎に配属する病棟や部署を異動している。近年、
アクシデントと療法士の経験年数(以下経験)との関連性が報告
されているが、病棟配属年数(以下配属)との関連性を検証した報
告は少ない。そこで、今回の研究目的を経験及び配属とアクシデ
ントとの関連性を検証することとした。
【方法】平成26年4月から
平成27年3月の間のアクシデント報告者実数(以下報告者数)につ
いて調査した。対象は当院の全療法士67名とし、調査項目は経験
及び配属別の療法士数に対する報告者数の比率(以下発生率)と
した。なお本研究では、アクシデントを日本医療機能評価機構の
基準によるレベル1以上とした。次に、経験及び配属の平均値を
基準値として全療法士を2群化し、両群間での発生率の比較検証
【結果】報告者数
をχ2検定で行った。有意水準は5%未満とした。
は33人(延数63人)であった。経験及び配属の平均値は、5.3±5.5
年、1.1±1.4年であった。経験6年未満/以上の発生率は、40.4%
/64%であり、配属2年未満/以上の発生率は、50%/47.4%で
あった。経験及び配属と発生率との間に有意な関係は認められな
かった。【考察】経験及び配属が長い療法士であってもアクシデ
ントの発生率が低いとは言えなかった原因については、他の要因
が影響している可能性がある。
124
O56-2
O56-3
○納富亮典(作業療法士)
,福山英明
○勝田泰弘(介護福祉士・ヘルパー),下野美帆
白十字病院 総合リハビリテーションセンター 作業療法課
社会医療法人社団三草会 クラーク病院
車椅子シーティングと、介助方法の統一により食事
自己摂取が可能となった一例
食事姿勢改善への取り組み
〜食事姿勢評価表を用いて〜
【はじめに】右アテローム血栓性脳梗塞を発症した症例を経験し
た。食事において車椅子座位での疼痛の訴えが頻回であり、食事
拒否を認めた。シーティングや、移乗方法の統一、等により自己
摂取が可能となったため報告する。
【症例紹介】80歳代女性、右利
き。X年、右アテローム血栓性脳梗塞発症。第40病日に当院回復
期病棟へ入棟。第63病日より担当開始。既往に右不全麻痺あり。
JCS1-2、Br.stage:(L)2-3-3、MMSE:15/30点、FIM:27/126点。
病前は独居、ADL自立。
【経過・結果】車椅子姿勢評価は、ズレ度
JSCC版を利用。初期の第63病日ではズレ量:
(R/L)7.8/2.5cm、
ズレ度:
(R/L)12.0/3.8%であった。Faces Scale
( 以下、FS):5.
FIM:食事1/7点であった。シーティングとして、標準型車椅子→
座位変換型車椅子へ変更。クッションも標準的ウレタン→アン
カー付きウレタンへ変更。オーバーテーブルも併用した。また初
期は移乗時の不安感を認め、ベッド⇔車椅子移乗を立位移乗より
スライディングボードを利用した座位移乗へ変更し、病棟スタッ
フと共有した。結果、第75病日には、ズレ度JSCC版:ズレ量:(R/L)
1.1/0.8cm、ズレ度:
(R/L)1.7/1.2%。FS:1.FIM:食事4/7点へと
改善した。
【考察】症例の食事拒否は疼痛の影響が大きく、要因と
しては、車椅子の不適合と、病棟での移乗時の不安感が考えられ
た。車椅子の身体適合を実施し、また多職種での移乗方法を含む
対応統一により不安感が軽減し、安心・安楽に食事摂取可能となっ
たと考えられた。
【はじめに】当病棟では食事中の座位が保てず姿勢崩れのある患
者に対して、姿勢が崩れた際に補整を行っているが、スタッフ個々
で基本姿勢の保持について理解が不十分であり、病棟全体でも食
事中の姿勢評価や必要な観察を行うための指標がないため、患者
は安楽な姿勢が保てていない現状がある。今回、統一した姿勢補
整ができ患者にあった食事中の座位姿勢を保つため、評価システ
ムをオリジナルに作成し活用した結果を報告する。
【対象】平成27年3月〜5月に当病棟に入院しており、車いすに乗
車又は椅子に座り食事を摂取している患者 【方法】1)FIMの点数化に基づき患者の食事姿勢内容を含めた
食事姿勢評価表と患者の食事状況を細かく記載できる食事状況
チェック表を作成。2)食事姿勢評価表を使用し食事姿勢を点数
化。姿勢補整が必要な患者をピックアップする。3)ピックアッ
プした患者に対し食事チェック表を使用、食事中の姿勢崩れの把
握と姿勢保持の検討を行う。検討した内容については、担当セラ
ピストや病棟スタッフに情報を共有し姿勢補整を行っていく。
【結果・考察】評価システムを作成し活用したことによって評価
者の差が出ない評価が行え、統一した姿勢補整を行うことにより、
患者にとって適切な食事姿勢保持ができるようになった。今後評
価システムを活用し他職種とも連携出来るようにシステムを構築
する必要があると考えた。
O56-4
O56-5
○奥田絢子(言語聴覚士)1),横山美月1),筒井孝太3),
今井田さおり1),吉田雅志1),久保田将成1),田中利典1),
郡上あきこ2),清水美里2),森 憲司1)
○山本 直(作業療法士)
当院ランチーム活動の取り組み成果について
〜肺炎予防の観点から〜
感覚・注意障害から学習性不使用を呈した症例の食
事への介入
1)医療法人社団友愛会 岩砂病院・岩砂マタニティ リハビリテーション科
2)同 回復期リハビリテーション病棟,3)同 栄養科
医療法人明倫会 本山リハビリテーション病院
【症例】60代男性。右利き。現病歴:X年9月に左被殻出血を発症。
既往歴:パーキンソン病。主訴:「右手で食事したい」。入院時
BRS:4-5-4。表在・深部感覚重度鈍麻。STEF:右0点、左66点。
注意持続・配分性低下。生活内で右上肢使用頻度は減少傾向にあっ
た。学習性不使用の改善と主訴を目標とし、右上肢での食事動作
獲得に向け介入した。
【経過】右上肢での物品把持練習から開始し、
視覚代償下で物品把持が可能になれば積極的に食事場面で練習を
開始した。言語指示により食塊の取りこぼしを抑制し、エラーを
減少させて食事練習を行う中で、徐々に右上肢での食事が定着し
た。【結果】BRS:5-5-6。表在感覚中等度鈍麻、深部感覚軽度鈍麻。
STEF:右61点、左86点に上昇。ADLで注意機能向上が観察でき、
生活全般で右上肢の使用が見られるようになった。
【考察】右上
肢の学習性不使用を呈した症例に対し、ADLへの積極的な参加を
意識させる介入を行った。症例は感覚・注意障害から右上肢の感
覚フィードバック(FB)機構が機能しておらず、物品の把持・操作
が困難だと考えた。右上肢操作時に言語的外在的FBを入力し訓
練を行う中で感覚機能の視覚代償が起こり、物品操作を獲得した
ことでADLへの右上肢の参加が増え、内在的FBが促通された。感
覚FB機構の再学習により更に右上肢の使用頻度が向上し、症例は
学習性不使用から脱したと考える。よって症例の希望に沿った右
上肢での食事動作獲得に至った。
【はじめに】近年、リハビリと栄養との関係性が重要視されている
中、当院では平成25年より、入院患者の食事摂取量増加と誤嚥予
防を目的とした摂食時の良姿位獲得の為に、セラピストが介入す
るチーム(以下ランチーム)を結成し、実施してきた。今回、ラン
チームの介入により、当院回リハ病棟での肺炎発症率の軽減に寄
与しているかどうかを検討したので、報告する。
【対象・方法】当
院回リハ病棟に入院したランチーム介入前の1年間180名(以下A
群)、介入中の1年間168名(以下B群)
、介入後の1年間171名(以下
C群)の肺炎による一般病床への転床率を比較検討した。尚、統
計学的処理は一元配置分散分析を用い、有意水準を5%未満した。
【結果】一般病床への転床は、A群で9/180名(5%)、B群で6/168名
(3.57%)、C群で3/171(1.75%)であり、ランチーム介入にて一般病
床への転床率の低下がみられた。また、A群vsB群、B群vsC群で
有意差は見られず、
A群vsC群で有意差(P<0.05)を認めた。
【考察】
不良姿勢での食事摂取では、誤嚥性肺炎を中心とした肺炎を発症
する可能性が高いと考えられており、当院でもランチームによる
誤嚥予防を含めた摂食時の良姿位の獲得を目指した。A群とC群
で肺炎による一般病床への転床に有意差が認められたことは、ラ
ンチームの活動が、肺炎発症の軽減に寄与している関連性を示唆
していると考え、今後もランチーム活動を継続していく必要性を
支持する結果となったと考えられる。
125
O56-6
O57-1
○田中さゆり(言語聴覚士)
,津山亜紀子,山田如子,河内沙織,
小笠原早苗,高羽みどり,小川裕介,上杉義隆,志田知之
○古岡侑徒(作業療法士),北山朋宏
医療法人天心堂 志田病院
社会福祉法人こうほうえん 錦海リハビリテーション病院
リハビリテーション技術部
当法人摂食嚥下委員会における食事環境改善ラウン
ドの試み
失調症状に対して自助具を工夫して食事摂取が可能
となった一症例
【はじめに】当法人は回復期リハビリテーション病棟、医療療養病
棟、地域包括ケア病床を有する病院に、グループホーム、小規模
多機能ホーム、デイケア、デイサービスといった介護保険施設を
併設している。リハビリスタッフの配置がない介護保険施設では、
通常リハビリスタッフが実施する食事に関して専門的視点での評
価が難しく、適切な現状把握や問題解決ができず、安心で安全な
その人に合った食事環境の提供ができていない状況であった。 そこで、リハビリスタッフをはじめ多職種で構成される摂食嚥下
委員会の活動として、食事環境改善ラウンドの取組みを行ったの
で報告する。
【対象と方法】入院患者及び介護保険施設利用者を対象に、ST・
PT・OTが毎月1回以上、昼食時に、食事姿勢を含む食事環境・動
作・嚥下機能のチェック項目に分けた当院独自の「食事環境調査
表」を用いて評価を行い、指導・助言を行った。
【結果】評価件数485件中、改善が必要であったのは204件であっ
た。各部署によって食事環境全般の問題や指導内容の違い、経過
の違いなどがあったが、姿勢、嚥下機能についての検討が多く、
特に介護保険施設ではスタッフ側が環境調整することで改善でき
ることが多かった。
【考察】ラウンドにより問題点の抽出・解決策の検討を行ったが、
1回のみのラウンドでは環境にすぐに変化が観られにくい為、ラ
ウンドの継続が重要である。
【はじめに】失調症状によって食事自力摂取困難な症例に対して、
自助具の改良・食事介入などを行った結果、食事動作が見守りレ
ベルで可能となったので報告する。
【症例紹介】脳梗塞によって左片麻痺を呈した60歳代前半の男性。
ADL最大介助〜全介助レベル。失調症状は、指鼻試験において測
定過大がみられ、物品を操作する際は、筋出力の微調整が難しく、
動作の粗大さ・拙劣さがみられる。
食事は、失調症状によって、スプーンからの溢し・一口量の調整・
口腔への取り込みが困難で適宜介助を要す状態。
【介入方針】一口量の調整の為に、加工のし易さ・洗浄のし易さを
考慮してスプリント材・プラ板・クリップ・プラスチックのスプー
ンなどを用い、自助皿を改良した。そして、昼食時のみOTによる
食事介入を退院時まで実施した。
【結果】作成した自助皿を使用することで、一口量の調整も行え、
失調症状がありながらも一人で食事が出来る様に至った。
【考察】症例は失調症状によって筋出力の微調整が困難で動作が粗
大であり、溢し・一口量の調整が困難であった。しかし、自助皿
に固定した棒の部分にスプーンが接触し、掬い上げたスプーンが
どんな角度だとしても食塊を削ぎ落とすことが可能であった。一
口量の調整の為の過剰な動作の必要が無くなり、筋緊張のコント
ロールが僅かであるが可能となったことが介助量軽減に繋がった
と考える。
O57-2
O57-3
○樋口正則(作業療法士)
,伊藤 隆,久保進也,石川朝子,
馬場晶子,内田絋輔,松本夏樹,横串算敏,橋本茂樹
○藤井未央(作業療法士),鴻上雄一,坂野智哉,山口日出志
渓仁会 札幌西円山病院 リハビリテーション部 作業療法科
特定医療法人 柏葉脳神経外科病院
当院でのHANDS療法における活動報告
回復期リハビリテーション病棟にてHANDS療法を
実施する上での課題〜1症例を通して〜
【はじめに】当院では2013年8月よりHANDS療法を導入し、当学
会にて導入時の活動報告をした。今回は現在までにHANDS療法
実施した症例の治療効果について報告する。
【対象と方法】対象は2013年8月から20ヵ月間にHANDS療法を実
施した片麻痺者10名とした(平均年齢67.6±10.6歳、発症後平均期
間46.5±66.1ヵ月、麻痺側:左右各5名)。評価項目はSAIS(膝-口・
手 指)、FMA(上 肢 機 能)、MAS(肘 関 節・ 手 関 節・ 手 指)、MALの
AOU、FIM(運動・認知)、麻痺側に対する主観聴取とし、HANDS
療法開始時と終了時で比較した。検定はWilcoxon符号順位和検
定を使用し、有意水準は5%とした。また、
【結果】SIAS(手指)、FMA、FMS(手指)、MOLにおいて有意に改善
を示した(>.05)。その他の項目においては実施前後での変化はな
かった。 主観聴取では全症例においてには「腕が軽い」と変化が
みられた。
【考察】HAND療法により麻痺側上肢、特に末梢部の運動性改善
が図られていた。一方で上肢中枢部の機能及びFIMの変化がない
事を考慮すると、HANDS療法実施と並行してADL場面で末梢機
能を発揮できる介入が重要である。また、MOL及び主観の変化は
麻痺側上肢への意識変容の機会となったと推察され、在宅生活の
中で上肢使用に対する意欲向上が期待出来る。
【はじめに】当院では2014年より、回復期リハビリテーション病
棟(回復期)にてHANDS療法を実施している。今回、HANDS療
法を実施し、自宅退院後に外来作業療法を継続した症例を通し
て、回復期にてHANDS療法を実施する上での課題が浮かび上
がったため報告する。【症例】10代後半女性、脳出血、右片麻痺。
HANDS療法実施後、麻痺手の使用頻度は増加したが、麻痺手の
使用に対して、症例が主体的に問題解決困難な状態で自宅退院と
なった。そのため、外来で作業療法を継続した。
【介入方法】外来
作業療法は、1〜2週間に1回、60分、3ヶ月間実施。内容は、麻痺
手の使用状況や行いたい行為の確認、使用方法の検討とした。評
価は、SIAS上肢遠位、ARAT等を実施した。【経過】麻痺手を使用
して行いたい行為を、症例自身が具体的に挙げられるようになっ
ていった。【結果】退院時と外来終了時を比較すると、SIAS上肢遠
位1b→1c、ARAT7点→15点に向上した。入院中に獲得した行為
は、自宅生活にて習慣化、非習慣化に分かれ、自宅生活を送る中
で症例自身が行いたいと考えた行為が習慣化した。
【考察】入院
中は、自宅退院後に麻痺手をどのような場面で使用するか想像で
きていない事が、麻痺手の使用に対して受動的となる要因の1つ
と考える。解決策として、HANDS療法実施前や実施中に外泊を
行う等、症例が主体的に問題解決できる環境の設定や、より個別
性のある目標、期間設定の検討が必要と考える。
126
O57-4
O57-5
○山岡未奈(作業療法士)
○戸田皓之(作業療法士),末武達雄
一般財団法人操風会 岡山リハビリテーション病院
社会医療法人財団白十字会 燿光リハビリテーション病院
リハビリテーション部
上肢痛にとらわれていた症例への介入を振り返り、
自宅退院に向けてのOTの視点を再確認したことに
ついて
回復期病棟退院後も上肢運動麻痺の改善を認めた一
症例
【はじめに】今回、入院期限約3ヶ月の中で上肢痛が強かった対象
者を通しOTの介入を振り返ると共にOTの立ち位置を再確認し
たことをここに報告する。
【症例】60歳代男性、脳梗塞、妻と二人
暮らし。BRS右上肢2〜3手指4下肢5、肩関節自動運動時痛あり。
ADL入浴以外自立、病棟内独歩自立。
【経過】入院2W後外泊し三
角靭帯複合体損傷受傷、右上肢過緊張となり肩関節安静時痛出現、
ADL依存的で臥床傾向となる。OTでは手関節装具作成、ポジショ
ニング等実施。入院10W頃より装具外れ上肢痛も徐々に治まる
が臥床傾向変化なし。OTではADLの動作指導実施。家事動作練
習を提案するが拒否あり、対象者からは上肢痛に対しての介入希
望が強く聞かれた。入院11W頃より安静時痛落ち着き、調理練習
を行い道具や方法を共に検討。その他家事動作では具体的な場面
を想定するには至らず、入院96日後自宅退院となる。
【結果】麻痺
著変なし、肩関節安静時痛消失。自助具使用しADL自立。
【考察】
上肢痛が治まってきた時期より、一日の過ごし方を共に検討する
ことや上肢痛軽減に対して自主トレを進めることで依存的な生活
から脱却させることができたのではないか。また、家事動作練習
の提案に留まらず自宅生活に必要な動作を整理・細分化させ、対
象者と会話を通しイメージの共有ができれば対象者から、自発的
な発言や在宅生活のイメージの構築を入院期間が限られた中で早
期に引き出せたのではないかと考える。
【はじめに】今回、被殻出血後に上肢運動麻痺を呈した患者に対し
「運動麻痺の回復ステージ理論」を参考に介入を行った。その結
果、運動麻痺の改善を認めた為、考察を加え以下に報告する。【症
例紹介】60代男性。診断名:左被殻出血。現病歴:発症32病日目に
リハビリテーション継続目的で当院回復期病棟に入院。利き手:
右【治療経過】介入当初は促通反復療法、治療的電気療法を中心
に実施。発症93病日目に手指伸展が出現。手指随意性向上に合
わせ、洗体・食事などADL獲得に向けた課題指向型訓練へ移行す
る。発症128病日目に麻痺側上肢を補助的に使用できる様になり、
自宅退院・職場復帰を果たす。退院後のリハビリテーションは
本人希望で行えなかったが、退院4ヶ月後には名前などの書字が
可能となる。【結果】上田式12段階grade:上肢5→11、手指2→5。
MAS1+→1。握力:右0kg→18kg。MFS:右19点→66点。STEF:非
実施→8点。MAL:AOU0点→0.85点、QOU0点→1点。退院4か月
後:上田式12段階grade:上肢12、手指8。握力:右31.2kg。【考察】
本症例は当院回復期病棟退院後も運動麻痺の改善を認め、書字動
作の獲得を果たしている。これは退院時MALの点数向上(AOU0
点→0.85点、QOU0点→1点)が示す様に「運動麻痺の回復ステー
ジ理論」を参考に各時期に合わせた積極的な上肢機能訓練を実施
した結果、生活場面で麻痺側上肢を使用する行動変容を来し、退
院後の運動麻痺の回復の一助になったと考える。
O58-1
O58-2
○森 希望(言語聴覚士)
,木原美喜雄,金子 彰
○石橋美奈(作業療法士),渡辺 誠,前島伸一郎,佐々木祥,
奥山夕子,園田 茂
医療法人さくら会 さくら会病院
藤田保健衛生大学 七栗サナトリウム
急性期重度意識障害患者における神経心理ピラミッ
ドの活用
回復期リハビリテーション病棟における言語性記憶
とFIMとの関係
【はじめに】高次脳機能障害の治療においてRuskの「神経心理ピラ
ミッド」を用いることがあるが、脳卒中の急性期での活用報告例
は少ない。今回、脳出血により意識障害を呈した症例に対し「神
経心理ピラミッド」の階層に対応した評価をもとに、アプローチ
方法を検討した経過について、考察を踏まえて報告する。
【症例】50歳代男性
【現病歴】脳室穿破を伴う左尾状核出血を発症。同日、開頭血腫除
去術、翌日に気管切開を施行。第56病日目に回復期転棟。
【既往歴】特記事項なし
【介入経過】入院当初はJCSIII桁の状態であり、言語刺激や口腔刺
激など外的な刺激入力を繰り返した。第14〜50病日頃はJCSII〜
I桁の浮動的な状態であったが、徐々に追視や自然下で上肢の自動
運動がみられるようになり輪投げや整容などが可能となった。第
50病日以降はJCSI桁となり、机上での言語課題などが可能となっ
た。第115病日頃には、注意機能の向上により単純な動作課題で
持続的に取り組めるようになり、食事や整容などADL場面におい
ても一部自立して行えるようになった。
【考察】急性期における意識の状態を「神経心理ピラミッド」を用
いて評価し、訓練を実施した。脳卒中による急性期の意識状態は、
基礎レベルである「神経疲労」
「無力症」
「注意力と集中力」に対応
すると考えられ、その状態に応じた訓練が提供出来たことにより
効果があったと考えられた。
【目的】脳卒中では記憶能力の低下がADL獲得の阻害因子となる
可能性がある。我々は聴覚的言語性記憶検査(AVLT)の記憶指標
からみた記憶能力とFIM運動項目(以下、FIM)の関係について検
討した。
【対象】回復期リハ病棟に入棟した初発脳卒中患者でテント上一
側性病変を有した131名(年齢30〜93歳、男性74、女性56)を対
象とした。脳出血58名、脳梗塞72名で、左脳病変49名、右脳病変
81名であった。全症例のSIAS言語機能は3点である。
【方法】AVLTの記憶指標のうち、第1施行の達成数である短期記
憶(STM)、第1〜5施行の達成数の総計である全即時記憶(TIM)、
第5施行の達成数から第1施行の達成数を引いた言語学習能力
(VLA)、第5施行実施30分後の遅延再生を算出し、これらの指標
と退院時FIM、病変側との関係について検討した。
【結果】STM、TIM、VLA、遅延再生全ての項目において退院時
FIMとの間に有意な相関を認めた。なかでもTIMは高い相関を認
めた。右脳病変に比べ左脳病変はいずれの指標も低値であった。
左病変ではTIMが低値であっても退院時FIMの良好な例がみられ
た。
【考察】TIMは記憶に必要な注意や学習効果を総合的に表すため、
退院時FIMと大きく関係したと考えられた。左脳病変では内言
語に障害を有することによる、乖離例を認めるが、右脳病変では
TIMが退院時FIMの予測因子になりうると考えられた。
127
O58-3
O58-4
○諸見里優寿(作業療法士)
,謝花江里香,高宮城あずさ,
藤澤欽崇,久田友昭,藤山二郎,濱崎直人,宮里好一
○鈴木拓真(理学療法士)
医療法人タピック 沖縄リハビリテーションセンター病院
天理よろづ相談所病院 白川分院
失行と把握障害、伝導失語を呈した症例のリハ経過
理学療法に音楽を取り入れ、せん妄状態が改善した
一症例
【はじめに】今回重度麻痺はないが、頭頂葉症状が右手に出現し、
ADLに困難を来した症例を経験した。本症例の失行、把握障害に
着目し経過と若干の考察を交えて報告する。
【症例紹介】50歳代、女性、右利き。大動脈解離術後に脳梗塞発症。
軽度右片麻痺と感覚障害あり。左側頭葉から頭頂葉に散在する脳
梗塞像を認めた。
【神経心理学的所見】伝導失語による音韻性錯語と復唱障害、注意
障害あり。右上肢の物品把持に限局した誤りと把握障害あり。
【経過】本症例に対し道具操作のジェスチャー、模倣訓練を行い多
角的フィードバックを繰り返し行った。またミラーセラピーにて
徒手的介入を行い、動作イメージの想起訓練を行った。退院時に
は道具の把持から操作においての反応速度、指の開きに改善が見
られた。
【考察】今回道具把握の誤りを認めたのは頭頂間溝の外壁前部の症
候である把握障害(Preshaping障害)および中心後回損傷による
肢節運動失行の影響が考えられた。ArbibらによるとPreshaping
は視覚情報から対象物の位置と形状を知覚し、同時に手の形状を
計画している事を示唆している。今回視覚と体性感覚情報の統合
を図る訓練にて、対象物の形状イメージが脳内で表現された事が
運動制御とボディイメージの形成に繋がったと推測する。また、
把握(Preshaping)に着目した訓練を実施したことが肢節運動失
行の治療としても有効であったと考える。
【はじめに】今回、脳底動脈先端症候群と診断された男性を担当し
た。入院時よりせん妄が顕著であったが、音楽を理学療法に取り
入れた結果、せん妄が改善して訓練にも意欲的になり身体機能も
向上したので経過に考察を加え報告する。【症例・経過】(初期評
価2/13)80歳代男性、JCS20〜100とせん妄状態であった。BRS
(右)上肢∨下肢∨手指∨、四肢・体幹に失調があった。バランス能
力はBBS10点であり、ADLは全て中等度〜最大介助だった。(導
入前4/6)立位・座位練習を中心に行ったがせん妄のため訓練自体
が困難になることが多く、精神・身体機能に著明な改善点はなかっ
た。せん妄に対するアプローチを模索していたところ、当院での
演奏会に本症例が参加した際に笑顔がみられ覚醒も良好だった
のに加えて、他部門からも音楽に興味があるとの情報があったた
め、理学療法にも音楽を取入れることにした。(導入1ヶ月後5/7)
JCS10の状態となりせん妄は改善した。訓練にも意欲的に参加し
てもらえるようになり、体幹失調・バランス機能がともに改善し、
それに伴い、立位保持が修正自立、立ち上がり、移乗動作が見守
りに改善された。
【考察】本症例の興味がある音楽を理学療法に
取り入れたことで、聴覚が刺激され網様体賦活系を通して大脳皮
質が活性化され、せん妄が改善したと考える。また、せん妄が改
善して訓練にも意欲的に取り組めるようになり身体機能が向上し
たと考える。
O58-5
O58-6
○瀧麻里那(理学療法士)
,武田祐貴,山下国亮,釘本 充,
杉山俊一
○崎本史生(作業療法士)1,2),藤原瑞穂2),大庭潤平2)
注意の焦点化が脳卒中片麻痺患者の運動パフォーマ
ンスに与える影響
脳血管障害者の在宅復帰に注意障害が及ぼす影響
1)神戸リハビリテーション病院
2)神戸学院大学 総合リハビリテーション学研究科
医療リハビリテーション学専攻
特定医療法人 柏葉脳神経外科病院
【目的】言語教示を用いた注意の焦点化には、自己の身体に注意
を向けさせるinternal focus (IF)と身体外へ注意を向けさせる
external focus(EF)がある。本研究の目的は、運動麻痺を有する
脳卒中患者に対する言語教示の違いが運動パフォーマンスに与え
る影響を検討することである。
【方法】対象は、脳出血により軽度
右片麻痺を呈した60代、男性患者1名とした。測定課題は、立位
での麻痺側股関節屈曲運動を1セッション10回として実施した。
IF条件における言語教示は「足の付け根に力を入れて出来るだけ
股関節を曲げてください」
、EF条件では「紐まで届くように股関節
を曲げてください」とし、各条件における麻痺側下肢挙上距離(床
から膝関節裂隙までの距離)を、Image Jで算出した。置換ブロッ
ク法によるランダム順序で各条件3セッションずつ実施した。統
計分析は、2条件間の差の比較としてMann-WhitneyのU検定を
用いた。また、ばらつきの評価として、任意の連続した各条件1
セッションから変動係数(CV)
を算出した。有意水準は5%とした。
【結果】麻痺側下肢挙上距離は、IF条件と比べEF条件で有意に大き
かった(P=0.014)。CVではEF条件が小さかった(3.0% vs 6.0%)。
【まとめ】EF条件はIF条件に比べ、脳卒中患者において麻痺側下
肢拳上距離は大きく、ばらつきの少ない運動を導いた。本研究は
単一事例を対象としており、結果の一般化のためには今後も継続
した検討が必要である。
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟の役割として在宅復
帰は重要であり、その要因は多岐にわたる。一方、脳血管障害者
に多くみられる注意障害が在宅復帰に影響を及ぼすかは明らかに
されていない。本研究の目的は、注意障害と在宅復帰の関係を検
討することである。
【対象・方法】対象は、当院に平成25年4月か
ら平成26年3月の1年間に入院した脳血管障害患者394名から、再
発、死亡退院、急変による転院、失語症、失行症を除外し、基本情
報と退院時Functional Independence Measure(以下FIM)、作業
療法評価(片麻痺機能テスト、MMSE、HDS-R、TMT)の記録があ
る79名分のデータである。方法は、対象者を在宅群と非在宅群に
分類し、上記の項目について2群の比較を行った。
【結果】年齢、
家族構成、片麻痺機能テスト、MMSE、HDS-Rは有意差を認めな
かったが、TMTでは非在宅群で在宅群より有意に長かった。FIM
運動項目では、トイレ、風呂、歩行等、認知項目には、問題解決、
記憶に有意差が認められ、在宅群は非在宅群より有意に高値で
あった。【考察】今回の結果より、在宅群・非在宅群の麻痺重症度、
認知機能に有意差はなかったが、注意障害がADLに影響している
可能性があり、在宅復帰を妨げている可能性があることが示唆さ
れた。今後、注意障害が在宅生活に及ぼす影響を、生活機能のレ
ベルでも考える必要があり、注意障害の行動評価と合わせ研究を
進めていきたいと考えている。
128
O59-1
O59-2
○並木幹子(作業療法士)
○田澤繁之(作業療法士)
独立行政法人労働者健康福祉機構 関東労災病院
中央リハビリテーション部
みどり野リハビリテーション病院 リハビリテーション科
くも膜下出血により高次脳機能障害を呈した高齢患
者の復職支援
メモリーノートを使用する意味を共に考えた事例報
告〜復職を目指した関わりを通して〜
【はじめに】くも膜下出血により高次脳機能障害を呈した70歳代
男性に対して、復職を目的に作業療法を実施した。高齢者の非正
規雇用は入院などを契機に離職となりやすいが、急性期から復職
を見据えた介入が適切であったと考え報告する。
【症例紹介】70
歳代男性。妻と二人暮らしでマンション管理人と公園事務のパー
ト就労をしていた。後頭部痛からくも膜下出血と診断され、開頭
クリッピング術が施行された。
【初期評価】6病日より病棟OTを
開始し、床上安静で見当識障害著明、幻覚もみられた。19病日よ
り訓練室OT開始し、著明な麻痺なく、見守り歩行可能。見当識障
害は改善したがHDS-R20点で、金銭を数えられず作話がみられ、
ベッド上立位で更衣し転倒するなど、注意障害、記憶障害、遂行
機能障害、社会的行動障害、病識の低下がみられた。
【介入経過】
家族に頻回なリハビリ見学、外泊を勧め、NsやMSWと情報交換
し、回復期病院転院を取りやめ60病日に自宅退院しOT外来継続
した。電話練習など仕事内容を想定した介入をし、新聞記事のま
とめやかなひろい課題を宿題にしてOT時に振り返りを行った。
会社とのやりとりに対し助言を行った。
【最終評価】HDS-R28点、
金銭管理や電話応対可能となり、全般的に高次脳機能は改善した。
127病日で2つのパートに復帰できた。
【考察】急性期での回復に
合わせ、早期に自宅退院し自宅での生活を行いながらOT介入で
きたことが、復職支援の一助になったと考える。
【はじめに】記憶障害を呈した事例に対し、メモリーノート(以下
ノート)の意味を共に考え活用していくことで、復職に至った経
過を報告する。本報告は本人・家族の同意を得ている。
【事例紹介】
50歳代の女性。くも膜下出血を発症し身体面に麻痺はなく、高次
脳機能障害として記憶障害、注意障害、病識の低下が認めたもの
のADLは全自立であった。病前は市役所に勤務し「家族のために
もう一度働きたい。
」と願っており、発症から6カ月後に復職を目
指し外来リハビリを開始した。【経過】入院中はノートを使用して
いたが、内容に一貫性や統一性がなく退院後は使用していなかっ
た。そのため、ノートに習慣化、内容の統一化、要約化の順に意
味を段階づけ介入した。その都度説明を実施し、事例の意見も参
考にするため面接の機会を多く設けた。その結果、記憶障害、注
意障害の改善や病識の受容を認めノートを確認し想起することが
実用的に可能となった。その後、職場で実務訓練を行い、ノート
を使用しながら職場の環境に慣れ、記憶障害は残存しているが7
カ月後に復職が実現したため、外来リハビリ終了となった。終了
1カ月後の調査ではノートを使用し業務に励んでいた。
【結語】復
職できた要因として、ノートの段階づけや面接を設けたことで目
的が明確化され、使用する意味を理解し使用していくことで復職
後も記憶障害は残存しているが、代償手段として有効に活用でき
ているのではないかと考える。
O59-3
O59-4
○秋山尚也(作業療法士)1),片桐伯真2)
○西原大助(社会福祉士)
1)浜松市リハビリテーション病院
2)聖隷三方原病院
東京都リハビリテーション病院 医療福祉連携室 相談科
医療から地域、就労へシームレスな支援実現に向け
て、高次脳機能障害地域支援ネットワークシステム
作成の取り組み
高次脳機能障害者 就労状況 実態追跡調査 報告
2 −職場訪問 インタビュー調査結果から−
本高次脳機能障害者就労状況実態追跡調査は、当院で実施する高
次脳機能障害者特別訓練プログラム(グループ訓練)の修了者で、
プログラム修了時に就労を目指していた患者22名の就労実態を
把握する事を目的に、調査票や質問紙の郵送実施。さらに、障害
者雇用で就職した2名については職場訪問し、患者と会社上司に
インタビュー調査を実施した。前回の長崎2014大会では、就労群
と非就労群の2群に分けて、就労を可能にした個人の要因につい
て調査票や質問紙をもとに分析、報告した。結果、就労支援サー
ビスの利用状況や、障害の程度を示す神経心理学的検査の結果な
ど個人の要因のみの分析だけでは、就労の可否を判断するには限
界があると考察した。しかしながら、健康感QOL(SF-8)と認知
機能の程度(WAIS-3)を群間比較した結果では、就労に向けた取
り組みを行うことで、健康感QOLが向上する事や、WAIS-3の言
語性IQ、言語理解が比較的保たれている事が、就労に至った要因
の一つである事が示唆された。そこで、本大会では障害者雇用と
して就職した患者2名の質問紙の結果や職場訪問による、患者と
会社上司等へのインタビュー調査結果をもとに、就労継続を可能
とする環境要因について分析した結果を報告する。
【はじめに】高次脳機能障害者の支援において、障害が見落とされ
る事や、適切なサービスに繋がらない事例が散見される。我々は
今回、医療から地域、就労に至るまで標準的な支援が提供される
事を目的とした、高次脳機能障害地域支援ネットワークシステム
(以下システム)を作成した。以下に取り組みを報告する。
【取り
組み】2011年より、地域で支援に携わる関係職種が集まり勉強会、
意見交換会を行い、システム作成に着手。2012年より運用を開始
した。【方法】対象は高次脳機能障害と診断され、60歳以下の社会
参加を目指す方とした。システムは協力が得られた施設間( 8病
院、22施設)で運用。各施設の主支援者が主体となり共通の書式
(評価内容、対象者への説明文、制度・サービス内容、地域施設選
択シート、生活・就労チェックリスト等)を作成し送付した。シ
ステムは当院ホームページよりダウンロードできるようにした。
【結果】運用を開始して28名が利用。
(内13名が就労、2名が地域
施設へ移行、その他は外来通院、主婦業再開)すべての事例にお
いて適切な情報提供ツールとして活用でき、支援継続に繋がって
いる。
【考察】支援に不慣れな初心者でも、チェックし適切な評価
を行い、次施設に移行するタイミングが分かれば継続した支援に
繋がると考えられる。今回は障害を熟知した医療機関を中心とし
た活用にとどまった為、今後は啓発活動を行なうと共に、他地域
への普及も検討していきたい。
129
O59-5
O59-6
○下田尚子(社会福祉士)
,堀田富士子,齋藤正洋,古畑志保,
林龍太郎
○平山淳一(言語聴覚士),溝渕敬子,橋 縁,櫻井大樹,
旭 俊臣
東京都リハビリテーション病院 医療福祉連携室
地域リハビリテーション科
旭神経内科リハビリテーション病院 リハビリテーション部
言語聴覚療法科
高次脳機能障害者の就労支援におけるMSWの取り
組み
〜医療機関における就労支援と家族支援について〜
新規就労に至った失語症者の取組の1例
当院では東京都より受託した高次脳機能障害支援普及事業を展
開、支援者からの相談支援や研修会の開催、新規外来受診支援や
関係機関との連携等を実施している。就労に関する相談は平成
24年11月から平成27年5月の間に18件寄せられ、相談全体の1割
を占めている。就労支援に関しては本人よりも家族からの相談
が多く、高次脳機能障害の評価・診断を行った後に一部では医療
機関から直接企業へ連携した例も見られる。平成24年11月から
平成27年5月の間にあった本人またはその家族からの就労に関す
る相談のうち、直接面談を実施した8件が対象(当院で実施中の
高次脳機能障害者特別訓練プログラム(以下「グループ訓練」)の
家族相談含む)。グループ訓練に参加した4名は、本人にはWHO
「QOL26」を、家族には多次元介護負担度感尺度(BIC-11)を計3
回(初回、中間、終了時)実施した。その評価結果とともに、就労
支援機関への連携や新規に就職あるいは復職につながった事例を
報告する。相談後の状況は就労(障害者雇用、新規)3名、復職2名、
復職準備中1名、就労継続支援B型への通所1名、職業障害者セン
ター通所1名。高次脳機能障害者への支援において家族支援は重
要であり、家族が「支援者」の役割を獲得できるよう支援者が働き
かけ、就労支援に協力することが必要と感じている。今後も就労
支援において当事者支援、関係機関との連携をすすめるとともに、
家族支援も大切にしていきたい。
【はじめに】失語症者は就労困難な例が多く、就労率は1割前後と
言われており、新規就労では更に困難となる。今回、新規就労に
至った失語症者の一例について報告する。
【症例】50代右利き男
性。現病歴:H24.2月民家2階から転落し、脳挫傷、左硬膜下血腫、
多発骨折受傷。急性期・回復期を経て自宅退院。リハビリと就労
支援目的に当院受診。右肩痛による挙上制限はあるがADL自立、
明らかな麻痺・感覚障害はない。中等度流暢性失語と失読失書を
認めた。
【経過】H24.7月より外来リハビリ実施。H25.2月就労
移行支援B型事業所と障害者就業・生活支援センター利用開始。
失語症・高次脳という理由で職場体験を断られたり、書類選考で
落とされることが続いた。H26.3月障害者職業センターで障害評
価実施。その結果を基に関係機関との担当者会議を開き、就労の
方向性・各事業所の役割見直しを行った。その後、当院障害者雇
用枠での業務適応を検討。H26.8月栄養科調理補助として障害者
雇用に至る。
【考察】本症例の就労困難の原因として、年齢や性別
が原因となったケースもあったが、それ以上に失語症自体が企業
にとって新規採用には不安要素が強く、書類選考で不可となる現
状が見られた。本例が当院障害者雇用として安定した就労継続が
続けられている要因として、医療機関では失語症について理解が
あったこと、就労支援者(担当ST・OT・MSW)が就労前後での
環境調整を行うことができたことが考えられる。
O60-1
O60-2
○平田好文(医師)
,大隈秀信,尾崎美紀子,國徳尚子,佐藤達矢
○泉 二郎(医師),関口真理子,山口貴幸,赤羽あゆみ,枝 千尋,
鈴木千尋
医療法人堀尾会 熊本託麻台リハビリテーション病院
新上三川病院
地域包括ケア体制と回復期リハビリテーション病院
における認知症状を伴う症例の検討
高次脳機能カンファレンスの試み
【目的】2025年を迎えるにあたって、認知症患者増加の問題は重
要な因子の1つである。回復期リハビリテーション病院において
認知症状を伴う症例は増加しつつあり、地域包括ケア体制にどの
ような問題が生じていくのかを把握することが必要である。われ
われは、認知症状を伴った患者に注目して、地域包括ケア体制と
回復期リハ病棟の現状を検討したので報告する。
【方法】1.地域包括ケアシステムにおける人口動態と認知症患者の
現状 2.回復期リハ病棟における認知症状を伴う症例の現状 ※
認知症状は認知症高齢者の日常生活自立度2以上とした
【成績】1.熊本市高齢者実態調査によると、当地区の地域包括支援
センターの人口35,598人のうち高齢者は、5,910人( 16.7%)で、
その中で要介護者は1,295名( 22%)であり、認知症状を有する要
介護者は1010名( 78%)を占めていた。2.当院の回復期リハ病棟
では、過去6ヶ月のリハ目的で入院した患者の認知症を有する割
合を疾患別にみると、脳卒中リハ100名中28名( 28%)
、骨折など
運動器リハ71名中32名( 45%)、肺炎を含めて廃用症候群43名中
22名( 51%)であった。3.回復期リハ病棟の在宅率は78%である
が、認知症状を有する症例の在宅率は50%であった。
【結論】回復期リハビリテーション病院においては、認知症状を有
する症例の動向が回復期リハ病棟の在宅復帰率に大きな影響を及
ぼす可能性が推測される。
回復期リハビリテーション病棟において、主として脳血管障害患
者を担当しているが、脳梗塞や脳出血患者に加えて、くも膜下出
血や頭部外傷患者が増加中である。廃用性筋力低下以外にはっき
りした四肢麻痺がなく、高次脳機能障害が主である患者も増えて
きていて、最近言語聴覚士と供に月に1度の高次脳機能カンファ
レンスを始めた。医師は脳画像を担当し、言語聴覚士は各種評価
を行っている。評価の内容は、高次脳機能障害が言語・注意・記憶・
遂行機能・その他のどれにあたるか、MMSEや各種の評価、CBA
による点数化、目標、前回との変化、などである。当初2ヶ月の症
例は、頭部外傷後4例、くも膜下出血出血後1例、脳動静脈奇形出
血後1例である。1例を示す。69歳男性、脳挫傷後。評価は、注意、
記憶、遂行障害あり。MMSE18点。遅延再生、書字、模写など低下。
全般的認知機能・注意機能低下など広く高次脳機能障害脳機能障
害あり。感情や表情に乏しさあり。今後の生活について考えるこ
となども難しさあり、感情に沿った行動決定が目立つ。危険行動
あり、常に目が離せない状態。CBAは13/30点。目標:意欲的面
での食事量の改善、病識・意欲の向上。1ヶ月後には意欲、自発性
やや向上、スタッフに対する易怒性が軽減した。高次脳機能障害
については従来言語聴覚士により検討されているが、医師も参加
すべきであり、今後の進行具合を報告する。
130
O60-3
O60-4
○山戸久世(看護師)
,伊藤みゆき,河北房枝,松下明美,山際 涼,
山下知子,山崎光子,中嶋昌代,岸 典子,仙石 淳
○深谷愛基子(言語聴覚士)
1)兵庫県立リハビリテーション中央病院 性機能研究会
2)兵庫県立リハビリテーション中央病院 性機能研究会 泌尿器科
医療法人社団K.N.I 北原国際病院
男性脳血管障害患者における性機能調査と、退院時
患者指導パンフレットの作成
他職種・家族と協働して発動性の向上を目指した症
例について
【目的】近年、脳血管障害の発症が若年齢化しており、性機能への
影響が在宅復帰後に少なからず問題となっていることが予想され
る。そこで今回、脳血管障害患者の性機能調査を基に退院時患者
指導パンフレットを作成したので報告する。
【対象と方法】性機能調査は当院の回復期リハ病棟に入院した62
歳以下の脳血管障害患者のうち同意が得られた男性患者を対象
とし、記名式アンケートの郵送と入院診療録との照合によりおこ
なった。更にこれらの結果を基に性行為の再開についての退院時
患者指導パンフレットの作成を試みた。
【結果】退院後1ヵ月でのアンケートは23名( 54.8%)
、発症後1年
では21名(56.8%)回収され、後者における回答時年齢は平均49.0
歳( 34〜63歳)であった。そのなかで、性交渉は76%の患者で再
開するも以前と同程度に可能であったのは再開例の38%であっ
た。また、性交渉が心血管系へのリスクとなることを不安視する
ケースが多く、性の問題に関する生活指導を希望する割合は退院
後1ヵ月( 21%)から発症後1年でほぼ倍増した( 40%、p=0.024)。
そこで患者指導パンフレットではこれらの不安を抑えることを主
眼とし、性行為再開にあたってのアドバイス等をQ&A方式で記載
した。
【結語】退院後の性生活を考慮して、パートナーも含めた生活指導
をおこなうことは、多くのケースにおいて有用であると考える.
【はじめに】今回、くも膜下出血後に両側基底核・右側頭・前頭葉
の梗塞と正常圧水頭症を合併し、軽度の両麻痺と多彩な高次脳機
能障害を呈した症例に対し、神経心理ピラミッド(rusk研究所)の
階層に注目しながら他職種・家族と協働し病前のADLや趣味活動
を取り入れることで発動性の向上を測り、若干の改善を認めたた
め報告する。【症例紹介】54歳女性。現病歴:X年突然右後頭部痛
出現。数日頭痛持続した後A病院受診。頭部CTにてくも膜下出血
と診断され、左ICPCクリッピング術施向。その後両側基底核に
梗塞と水頭症を確認。VPシャント・頭蓋形成術施行。リハビリ
目的の為、B病院へ転院。
【初期評価】身体機能:Br.Stage両側上
肢5手指5下肢6。感覚は表在深部共に軽度鈍麻。基本動作・ADL
は軽介助。神経心理学的所見は行動観察より失見当識・全般性注
意障害・左視空間認知低下・前頭葉症状・記憶障害・失行。口腔
器官は軽度左顔面神経麻痺。構音では発声量低下あり。言語機能・
嚥下機能には明らかな機能低下を認めず。【訓練】症例が意欲的に
参加できる可能性のある項目(演劇・整容・音楽会)を選定し他
職種・家族と協働し実施した。各々のプログラムにおいて症例の
意欲的参加や情動的変化が認められた。【考察】神経心理ピラミッ
ドにおける階層の適切な評価に基づいてプログラムを立案・実施
することで、症例の意欲的参加や情動の変化が引き出されたと考
える。
O60-5
O61-1
○片桐伯真(医師)
○石垣 南(作業療法士)
高次脳機能障害患者地域支援拠点病院の業務にまつ
わる課題 各種診断書作成からみえてきたこと
危険認識が難しい症例と家族の思いに沿い、退院後
の生活を見据えた目標を共有することの大切さを学
んだ事例
聖隷三方原病院 リハビリテーション科
財団法人操風会 岡山リハビリテーション病院
リハビリテーション部 作業療法室
【はじめに】高次脳機能障害者支援は医療現場での診断と障害認
定がその後の支援のスタートとなることが多い。その際必要とな
る診断書は障害認定・経済的補償・資格の再認定等多彩であり、
その診断や書類作成に際して医療現場での負担は大きい。今回は
支援拠点病院である当院の課題を検討した。
【対象・方法】平成26年1月より12月までに当科で作成した診断書
736件の内、高次脳機能障害者に対して作成した診断書の種類や
その数など書類作成に関わる現状を把握し、今後の支援での課題
を検討した。
【結果】当科で高次脳機能障害者支援として作成した書類は自立
支援関連31件、精神年金20件、自賠責後遺診断23件、公安提出診
断書19件などであった。診断書の依頼は他県など圏域外からの
ものも多く認めた。
【考察】診断書作成においては、地域で記載可能な医療機関が限ら
れることから、記載可能な医療機関の負担が増えてしまうことが予
測される。記載に際しても情報収集や評価などに時間がかかるも
のが多い。様式によっては手書きが基本となり、書類発行時期も更
新診断では期限が決められており、業務負担につながっている。
【結語】高次脳機能障害者支援に関連した地域との連携に際して、
書類の果たす役割が大きい反面、記載の手間など医療機関の負担
を認める状況で、今後は地域で記載可能な医療機関を増やすこと
などが求められる。
【はじめに】身体失認と注意機能低下を呈した左片麻痺患者に対
し、本人・家族間での生活イメージの共有を図り自宅退院へ繋がっ
たため報告する。
【症例】70代前半男性、心原性脳塞栓症(右中大
脳動脈領域)、左片麻痺(Brunstrom Recovery Stage2〜3)、左身
体失認、左半側空間無視、左同名半盲、注意機能低下。病後3ヶ月
半時点で移乗が軽介助となるも姿勢修正に細かな声掛けを要し、
サイドケイン歩行中等度介助、車椅子自走困難、危険認識困難。妻、
娘と同居、居室からトイレまでは10m、180°方向転換が必要。【経
過】本人は歩いてトイレに行きたいが家族に迷惑はかけたくない
という思いも強い。家族はポータブルトイレの使用を考えていた。
家族に実動作で介助量を伝達、高次脳機能障害について説明。そ
の後家族経由で本人へ退院のためにポータブルトイレ動作を獲得
する必要がある事と、歩いてトイレに行く練習も入院中から退院
後にかけて実施していく事を提案し理解を得た。その上でポータ
ブルトイレの家族指導と動作練習を実施、獲得に至る。歩行とト
イレ動作の練習も行い、退院後は訪問リハビリテーションへ移行
する。【考察】本人・家族間には現状認識や思いに差があったが、
家族を経由して現状への理解度を高めることで一貫した動作・介
助指導に繋がったと考える。退院後とその先まで長い視野を持ち、
本人や家族の思いを踏まえながら、現段階と退院後に必要な介入
を考え、目標を共有することが大切であると学んだ。
131
O61-2
O61-3
○村中良成(作業療法士)
,佐藤英人,今井幸恵
○田村政子(看護師),大村倫加,武藤嘉奈子,菊池 舞,
佐藤千恵子
医療法人珪山会 鵜飼リハビリテーション病院
医療法人社団健育会 竹川病院
高齢者うつ状態を呈した3症例に対して作業に根ざ
した介入(OBP)を実践して
Team approach with smile〜重度高次脳機能障
害患者が本来の自分らしさを取り戻すまで〜
【はじめに】海外では「高齢者うつ状態」が身体、認知機能低下の
予測要因と示唆され対策が求められている。また、脳卒中後うつ
状態(以下、PSD)はリハを妨げると報告している。今回は、近年作
業療法(以下、OT)で推奨される作業に根ざした介入(以下、OBP)
が精神機能に与える影響を検討したため報告する。
【対象・方法】対象は、当院入院中の65歳以上の内、MMSE-J13
点以上、GDS-15が10点以上(うつ状態)の3名。介入計画は(1)通常
OT(ベースライン期)、(2)(1)にOBPを加えたOTを1週間(介入期)、
(3)フォローアップ期を1週間とした。なお、(1)は症例A:1週間、
症例B:2週間、症例C:3週間と期間を変えて実施した。従属変数は
GDS-15を1週毎に測定し、(1)(2)間の効果の差、ならびに(3)にて(2)
の持越し効果(carryover effect)を確認した。
【結果】(1)は全例がうつ状態で推移(A:12〜13点、B:10〜12点、
C:12〜15点)。(2)は全例がうつ状態からうつ傾向へと改善(A:9点、
B:7点、
C:9点)。(3)は全例とも(2)の効果が継続した(A:7点、B:7点、
C:7点)。
【考察】爲近はPSDになじみのある作業は、現実と対時し価値観の
再構築への糸口になると報告している。今回は運動器疾患の高齢
者うつ状態も対象としたが、OBPによるなじみのある作業が精神
機能改善へ効果がある可能性が示唆された。
【はじめに】意思疎通困難で大声を出し落ち着かない患者に、私た
ちはしばしば疲弊する。単独の職種では対応に限界があり、チー
ムでケアを統一した結果、予測以上の改善を遂げた症例を経験し
たので報告する。
【症例】A氏、88歳男性。外傷性くも膜下出血
のため、重度の高次脳機能障害、失語症、せん妄を認め、意思疎通
は困難だった。保存的治療後リハビリ目的で入院した。
【経過】
家族は前医と同じ抑制衣や体幹抑制を希望したが、管類の自己抜
去を防ぐミトンのみ継続とした。まず、患者が発する声や行動に
着目し、要望を推測した。看護室近くの見守りで、排泄と人恋し
さのシグナルが多いとわかった。1ヶ月後、職種を超え、目標を定
め情報の共有とケアの統一を図った。転倒を案じる家族には信頼
を得るよう細めな声掛けと経過説明を繰り返した。2か月後、ト
イレ誘導を始め経口摂取訓練もすすめた。夜間は寂しさの緩和に
努めた。終日のトイレ誘導により転落に繋がる行動は減った。3
か月後、経口摂取や簡単な会話も可能となり抑制も中止した。4
か月後、シルバーカー歩行可能となり退院した。FIMは18点から
60点まで改善した。
【考察】今回の事例では、患者の細かなシグナ
ルに注目し、早期に患者の要望をとらえ対応できた。患者、家族
に常に寄り添い、他職種とチームで情報共有し、同じ目標に向かっ
てそれぞれの職種の力を最大限発揮することにより、効果が表れ
たと考える。
O61-4
O61-5
○恩庄美樹(介護福祉士・ヘルパー)
,小山さおり,吉尾雅春,
橋本康子
○桑原優希子(言語聴覚士),高野麻美,吉田菜保,香川隼人,
佐々木竜司,井上朋香
医療法人社団和風会 千里リハビリテーション病院
医療法人社団輝生会 船橋市立リハビリテーション病院
病棟全体で取り組んだ抑制しないケアの症例報告
〜高次脳機能障害患者へのチームアプローチ〜
危険に配慮した気付きが身につき、自立範囲が拡大
した症例
【はじめに】当院は回復期リハビリテーション病院である。脳出
血により高次脳機能障害の症状を有した患者に対して、言葉の抑
制、行動抑制を行わないチームアプローチを実践したので症例を
報告する。
【症例紹介】症例1: 77歳 女性 左前頭葉皮質下出血
症状:高次脳機能障害(脱抑制 見当識障害 失語症)右半身麻痺
症例2: 60歳 男性 左被殻出血
症状:高次脳機能障害(脱抑制 見当識障害 失語症)嚥下障害 右半身麻痺
【方法】高次脳機能障害患者に対して、担当チームが患者のアセス
メントを行い、病棟スタッフ全体で協力し適切な援助を行った。
患者の主担当チームだけでは対応が困難となる脱抑制行動(易怒
性 暴力 徘徊 衝動性 イライラ)に対して、マンツーマンの
付き添い対応等、病棟スタッフ全体がチームとして役割を担い言
葉の抑制、行動抑制を行わないケアを実施した。
【結果】粗暴行為減少、発語増加、表情が豊かになり生活リズムが
整った。困難であったリハビリがスムーズに行えるようになった。
又、衝動的な外出欲求が減少し予定にそった行動がとれるように
なった。
【考察】高次脳機能障害患者に対して、スタッフの都合に合わせない
ケアはとても有効かつ重要であった。回復期リハビリテーション病
棟でも抑制廃止の意識を持ち、実行していくことが必要である。
132
【始めに】障害の認識は、知的気付き、経験的気付き、予測的気付
きからなる階層モデルが示されている(Brucw Crosson 1995)。
注意障害や左半側空間無視が残存しながらも、予測的気付きが向
上し、一部屋外歩行が自立となった症例を経験したので報告する。
【症例】30代男性 脳梗塞により左片麻痺、高次脳機能障害(左半
側空間無視、注意障害、遂行機能障害、病識低下)を呈した。発症
4か月で回復期リハ病棟を退院、外来リハビリ(PTOTST2〜3回/
週)が開始された。【経過】退院直前:左側をぶつけても「家では大
丈夫だと思います」と現状に対する認識が不十分な事から、自宅
内自立、屋外見守り設定にて退院。1期(外来開始1ヶ月):
「左側を
よくぶつける」との発言は増えるが、動作性急で行動変容には至
らない。エラー時、誤りに対する振り返りを実施。自宅で転倒あり。
2期(外来開始2ヶ月):転倒後の振り返りにて「一度にやると危な
いから、ゆっくりやる」
「左側をぶつけるから、足一つ分右側に寄
る」と慎重さが増し、行動も安定。危険リスクを考慮した行動が
可能と判断し、自宅周辺のみ屋外自立となった。
【考察】本症例は
転倒後に自分のリスクについての発言が聞かれ、徐々に行動も変
化を認めた。これは、転倒時の行動を意識的に考えられるよう振
り返りを行い、問題点を抽出、対策を検討したことが、予測的な
気付きへ繋がり、リスクを考慮した行動に変化したと考えられる。
O61-6
O62-1
○赤繁加栄(作業療法士)1),荒木理恵1),安倍崇文1),井上雅博2)
○井出 大(理学療法士)1,2),大淵康裕1),松久恵介1),瀬戸景子1),
佐藤雅晃1),長谷川好子1),高尾 恵1),羽生樹理1),岩崎彩芽1),
下田憲太郎1),上野今良1)
1)社会医療法人祥和会 虹の会訪問看護ステーション
2)社会医療法人祥和会 脳神経センター大田記念病院 訪問診療科
1)医療法人社団永生会 南多摩病院 リハビリテーション科
2)医療法人社団永生会 地域リハ支援事業推進室
注意障害に対する訪問作業療法での関わりの一例
急性期病院における肺炎患者に対する早期介入への
取り組み
脳出血により軽度の右不全麻痺と注意障害を呈した70歳代女性。
3週間の入院でのリハビリテーション(以下、リハビリ)により、
右不全麻痺は改善、ADLは入浴以外自立となり、早期に自宅退院
の運びとなった。しかし注意障害は残存し、
「主婦」と「そろばん
教室の先生」という入院前の役割を担うことは困難と推察された。
そこで介護保険サービスにて通所介護と訪問リハビリでの作業療
法(以下、訪問OT)が開始となった。訪問OTでは目標を明確にす
るため、生活行為向上マネジメント(以下、MTDLP)をツールと
して用いた。また注意障害に対しては、障害について知ることで
日常生活での気づきを促し、自己管理能力の向上を目指した。そ
の結果2ヶ月後、1つ目の役割「主婦」の中でも「料理をしたい」と
いう目標に対してMTDLP目標実行度初回3→最終3、目標満足度
初回2→最終8という結果を得た。これは注意障害について理解
を深めたことで、自分の能力に応じた無理のない範囲で料理がで
きるようになり、それが満足度の向上につながったと考えられる。
また2つ目の目標「そろばん教室を再開したい」が家族の協力のも
と可能となり、訪問OTは終了となった。入院中のリハビリ担当
者との連携を密にし、退院後も継続したリハビリが提供できたこ
とも、患者が安心して生活する中で自分の問題点に気づき、障害
への理解を深めることにつながったと考えられる。
【はじめに】当院は東京都八王子市にある急性期病院(一般病棟
170床)である。当院では自宅、施設より肺炎にて救急搬送され
る場合も多く、安静による廃用症候群の進行例が多い問題を抱え
ていた。そのためリハ早期加入、早期離床を促進する対策を平成
26年度より講じた。ここに得られ効果について報告する。【対象
と方法】対象は平成25年度、26年度に当院の肺炎入院患者で、平
成25年度(以下25年度)92名、平成26年度(以下26年度)223名
(死亡例は除外)
。方法は26年度より開始した病棟担当制強化、日
曜日介入や土曜日祝祭日出勤者増と医師、看護師との情報共有強
化の効果を以下の項目から検討した。1)平均年齢 2)入院日から
リハ開始日までの期間(以下リハ未処方期間)
3)在院日数 4)
在院日数とリハを実施日数の割合(以下リハ実施率)の平均値
5)在宅復帰率【結果】対象患者の平均年齢は25年度が83.6歳、26
年度が82.5歳。リハ未処方期間は25年度が6.9日、26年度では4.1
日。在院日数は25年度が46.4日、26年度は29.8日。リハ実施率
は25年度が56.03%、26年度が69.02%。在宅復帰率は25年度が
58.5%、26年度が64.7%。【考察とまとめ】今回の結果より病棟担
当制強化や医師、看護師との情報共有強化等の対策によりリハ未
処方期間の短縮(p<.05)とリハ実施率の向上(p<.001)が認め
られたと推察される。在院日数の短縮は平成26年度よりDPC対
象病院となった影響が大きいものと考えられた。
O62-2
O62-3
○小野山絢香(作業療法士)
,渡井陽子,伊藤沙夜香
○石田俊介(理学療法士)
医療法人偕行会 名古屋共立病院
医療法人清仁会 洛西シミズ病院
急性期病院における脳血管疾患患者のリハビリ実施
単位数と日常生活動作能力の関連について
−非透析群と透析群の比較−
当院回復期リハビリの在宅復帰困例の特徴と一考察
【はじめに・目的】急性期脳血管疾患患者においてリハビリ訓練
時間と日常生活動作(以下、ADL)の相関についての報告があるが、
それらは血液透析の影響は報告されていない。本研究では当院に
おける透析の脳血管疾患患者のリハビリ実施単位数とADL能力
の影響を調査し、今後の課題について考察したので報告する。
【方法】対象は2014年4月から2015年3月の間に当院急性期病院へ
入院し、リハビリを施行した脳血管疾患患者115名。そのうち非
透析患者をA群、透析患者をB群とした。対象者の内訳は、A群92
名(男性55名、女性37名)であり、平均年齢は74.4±11.8歳。またB
群は23名(男性12名、女性11名)であり、平均年齢は75.9±8.0歳。
調査項目は、1日平均リハビリ実施単位数、在院日数、当院退院時
の転帰、Barthel Index(以下、BI)、BRS-tを診療録より後方視的に
調査した。
【結果】ベースラインとして、性別・年齢・入院時BRS-tでは2群間
に有意差は認めなかった。B群で有意に低かったのは、リハ実施
日数・単位数、入院時BI、BI改善率であった(p<0.05)。
【考察】B群でBI改善率やリハ実施単位数が有意に低かったもの
の、退院時の転帰に差が認められなかったのは、リハ実施日数で
カバーしている可能性が示唆された。透析患者には今後より効率
的なリハビリの提供が必要であると考える。
【はじめに】当院回復期リハビリテーション病棟立ち上げから一
人でも多くの患者さんの社会復帰・在宅復帰を目指し取り組んで
きた。しかし、在宅復帰を果たせずに、施設入所や転院などの経
過をとる症例(以下非自宅群)も経験してきた。今回、非自宅群を
対象にその特徴を調査し、今後社会復帰に関わる中での意識や取
り組みについて考察し、ここに報告する。
【対象】平成24年9月〜平成27年2月の間で当院回復期リハビリ
テーション病棟へ入棟した357名の患者の中で、在宅復帰を果た
せなかった51名とした。その中で、入院中に転倒や全身状態の悪
化などで転院となった12名を除く39名を対象とした。
【方法】カルテやスタッフなどの聞き取り調査などにて情報収集を
実施。調査内容は、非自宅群の年齢、性別、疾患名、退院時のFIM
得点(運動項目・認知項目)、家族構成の有無などとした。
【結果】非自宅群の平均年齢は80.6歳、性別は男18名・女21名、疾
患割合は脳外科疾患30名、整形疾患7名、廃用症候群2名であり、
約8割が脳外科疾患であった。FIM平均運動得点は40.5、平均認
知項目17.0であった。
【考察】FIMに関して、運動項目、認知項目共に低い群は約半数を
占めており先行研究と同様の結果になった。その為、入院時から
FIMを確認する事で早期から患者の状態を把握し身体機能向上だ
けでなく、環境も含めて考えて対応していくことが重要である。
133
O62-4
O62-5
限られた資源の中で回復期リハビリテーションサー
ビスの質の向上を目指して
当訪問看護ステーションにおける訪問リハビリテー
ションでの複数担当による試み
○茨木 亮(理学療法士)1),山口勝生1),玉井晃子1),横山武志2),
大垣昌之3)
○竹村壮司(理学療法士)
,川上寿一,川本 潔,田村恵子,
上田将之,大江 幸,佐敷俊成,安土由季
1)愛仁会リハビリテーション病院 リハ技術部 訪問リハビリテーション科
2)愛仁会リハビリテーション病院 リハ技術部 作業療法科
3)愛仁会リハビリテーション病院 リハ技術部
滋賀県立成人病センター リハビリテーション科
【目的】当院回復期リハビリテーション病棟は県立の専門的機関
としての役割を担う。セラピスト数や提供単位数、提供日等は多
くないが、取り組みを工夫するよう試行錯誤を重ねている。今回
当院の実績と全国のそれを比較し、現状や課題を検討した。
【方
法】2013年4月より2014年9月末までに当院回リハ病棟を退院し
た患者324名について、患者属性・原因疾患分類・入院までの期
間・入院日数・退院経路・FIM利得・提供単位数について、全国
のデータと比較検討を行う。
【結果】患者属性は平均年齢68.0歳
(全国75.2歳)で年齢構成は45歳未満の若年層が多かった。原因
疾患は脳血管疾患の割合が55%(全国47.7%)と多かった。平均
入院日数は53.0日(全国71.9日)と短かった。FIMは入院時平均
90.3点(全国74.3点)で退院時103.9点(全国90.5点)であったが、
在院1日あたりのFIM利得は0.26点(全国0.23点)とやや高かっ
た。平均提供単位数は当院4.7単位(全国6.1単位)と少なかった。
【考察】三次機能を担う専門機関として、
若年者や重度脊髄損傷者、
高次脳機能障害患者に対し総合的サービスの提供を行っており、
限られた資源の中でサービス提供するため当院で取り組んでい
る、トータルチームアプローチの徹底・状況に応じた様々なカン
ファレンス・入院前の情報収集等が有効であると考えられた。今
回FIM等の指標について検討したが、リハビリテーションの質に
ついてはさらに検討の意義はあると考える。
【はじめに】訪問リハビリテーション(以下:訪問リハ)利用者へ
の訪問は、当ステーションの場合、基本的に1利用者1担当制を
取っている。そのため利用者、担当者の急な予定変更時には対応
できない場合があり訪問リハ休止となることがある。また担当制
であるため、利用者に対しての相談など他の担当者との情報共有
が出来ていない現状がある。今回、訪問エリア別で1利用者を複
数で関わることにより一定の効果を得たので報告する。
【方法】実施状況の変化をH26.2.1〜2.28、H26.7.22〜8.16の各
1ヶ月間調査。複数担当の効果はスタッフ教育の視点からも調査。
複数担当は1.各担当者の利用者訪問休止数を把握。2.エリア地域
リーダーが中心となり利用者の同行訪問を促し複数での関わりを
作る。【結果】実施状況は対策前:リハ休止件数12件。2人以上の
関わりがある利用者の割合は39.8%。対策後:訪問休止件数0件。
2人以上の関わりがある利用者の割合は80.6%。スタッフ教育の
視点は相互の指導・助言を行える仕組みができ、他職種間でも情
報共有が容易になった。
【考察・結語】複数担当により、継続した訪問リハを実施できると
ともに、訪問件数減少につながる。また、他職種の意見が反映さ
れやすく、より質の高い訪問リハを提供できると考える。セラピ
スト間の情報交換量や指導内容等が異なるため、より多人数での
関わりを持つことが必要ではないか。
O62-6
O63-1
○山内直人(理学療法士)1),眞鍋克己2),得居 姻1),玉井 梢1),
真木祐魅1),黒河理恵1),工藤尚子2)
○益山康秀(理学療法士)
1)介護老人保健施設まなべ
2)西条市民病院
医療法人 玉水会病院
ユニット担当制と複数担当制における効果と問題点
当院回復期リハビリテーション病棟でのリハビリ予
定表活用における意識調査
【はじめに】当院の回リハ病棟ではリハビリ予定表(以下、予定表)
を掲示し、情報共有ツールとして運用中である。今回、予定表が
機能している実態とスタッフの意識に関する質問調査を行ったの
でここに報告する。
【対象・方法】対象は病棟配属のリハビリスタッフ、看護師の計28
人。回答数は22人(回収率79% )。方法は質問紙調査にて無記名。
質問項目は以下の4項目「質問1.1日のうち予定表を何回みるか」
「質問2.予定表として発信している情報は十分だと思うか」
「質
問3.スタッフが予定表をみる動機として何が重要だと思うか」
「質問4.予定表の改善活動に参加してみたいと思うか」とした。
【結果】質問1は「 5回以上」と「 5回から3回」の合計で95%、質問2
は「そう思う」と「ややそう思う」の合計で86%、質問3は1番目か
ら3番目までの順位づけで多い順に「スタッフの行動計画」
「多職
種との連携づくり」
「病棟全体の把握」が同数で17%、「患者・家
族の満足度」が15%、
「患者状態の把握」
「患者・家族の行動変容」
が同数で14%、「医療安全・リスク管理」が8%、質問4は「そう思
う」と「ややそう思う」の合計で54%となった。
【考察】予定表をみる動機として、上位の3項目はいずれも業務効
率に関するものとなり情報ツールとしての認識が反映された結果
と考える。一方で、患者の状態把握や行動変容に向けた認識につ
いては、今後の調査課題として考える必要がある。
【はじめに】当施設は3ユニットの介護療養型老人保健施設で、平
成27年4月末現在、在宅復帰率は71.4%である。当施設のリハは、
ユニット担当制と複数担当制を併用しており、その効果と問題点
を検証した。セラピスト3名は各ユニットに配属されており、短
期集中リハビリテーション実施加算(以下:短期リハ)対象者は
完全に複数担当制である。短期リハ終了後はユニット担当者が介
入するが、他ユニット担当者も不定期に介入している。
【方法】利用者・職員にアンケートを実施。
【対象】利用者12名(男性3名・女性9名)に実施。職員34名に実施。
【結果】利用者は、ユニット担当制と複数担当制併用が『良い』
50.0%『悪い』16.7%『どちらでもない』33.3%であった。職員は、
『良い』88.2%『どちらでもない』11.8%であった。
【考察】ユニットケアの利点は情報量の制限にある。しかし、リハ
においては視野が狭くなり、利用者の変化に気付きにくい点も考
えられた。また、担当者の休みにフォローに入りにくいという問
題点があった。複数担当制の利点は、多角的な意見を取り入れる
事ができる点にある。しかし、情報が多量となり、セラピストの
負担が増大する。どちらも利点欠点があり、試行錯誤しながら業
務改善を行なっている。今後も利用者にとってより良いリハが提
供できるように模索していきたい。
134
O63-2
O63-3
○西岡友美(看護師)1),竹下昌美1),坂本洋子1),川尻いづみ1),
石垣恭子2)
○近藤美由紀(看護師),松井清美,前田延枝
1)社会医療法人財団白十字会 燿光リハビリテーション病院
2)兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科
岡山光南病院
多職種の情報共有を円滑にする日程表の試作運用
褥瘡対策評価シート改訂の取り組み
〜アンケートを用いた意識改革〜
【はじめに】2014年に診療報酬改定で在宅医療充実のための「在宅
患者訪問褥瘡管理指導料」が新設され、在宅での褥瘡対策にも注
目が集まってきており、回復期でも更に「退院後」に着目をしなけ
ればならない。回復期リハビリ病棟では離床に対する取り組みが
特に重要視されており、当院では年に1〜2例の褥瘡発生率となっ
ている。褥瘡評価や対策についても褥瘡発生率が少ないため、褥
瘡対策評価シートについて、病棟看護師対象にアンケートを行
なった。有意義に活用していないと感じているスタッフが半数近
くを占めた。回復期リハビリ病棟で行なっている褥瘡対策がより
良いものに改善し、評価・対策できないか、また退院後の連携で
活用できないか、褥瘡対策評価シートについて検討し報告する。
【方法】当病棟看護師17名対象に行なった事前アンケートから褥
瘡対策評価シートの改訂を行い、実際に評価・対策を実施。退院
後まで経過を追い、活用が成されたかを検証する。
【考察】事前アンケートでは褥瘡対策評価シートの個別性の出し
にくさ、プランへの反映の難しさなどの意見が目立った。褥瘡対
策評価シートでアセスメントが行なわれる事で、プランへの反映
につながると考え、ポジショニング、褥瘡発生に関するメカニズ
ムの勉強会を行なう。これにより、褥瘡対策評価シートの内容が
少しずつ改善することができた。
【はじめに】Y病院回復期リハビリテーション病棟では、リハビリ
セラピスト(以下セラピスト略す)と病棟で互いのスケジュール
が把握しづらく予定が重複することがある。多職種間の情報共有
を円滑にする目的で日程表を試作運用し、課題がみえてきたため
報告する。
【対象】
病棟スタッフ30名 セラピスト30名【方法】1.病
棟スタッフ、セラピストへアンケート調査(日程表導入前)
2.病
棟スタッフへ患者不在実態調査(日程表導入前)
3.日程表作成
(時間毎の記入) 4.日程表使用における半構成面接 5.日程表の
改定(チェック項目を追加) 6.日程表を使用した一事例調査7.病
棟スタッフへ日程表に対する半構成面接【結果・考察】日程表導
入前の結果では、病棟スタッフは「血糖測定などの時間処置の際
患者が不在であること」
、セラピストは「処置や他科受診が重なり
リハビリの中断や時間変更することが困る」との意見が聞かれ、
時間毎に記入できる日程表を作成した。しかし、全て記入が必要
で時間がかかっていた。そこで、外来受診や外部からの訪問予定、
血糖測定などのチェック項目を増やし、リハビリの時間のみが記
入できるように日程表に改定を行った。試作運用までの期間が短
かったが一事例の運用を行った。その結果、
「お互いのスケジュー
ルが把握できよかった」との言葉がきかれ、今後継続して日程表
を使用することで多職種の連携が図れ、コミュニケーション不足
を補うことができると期待される。
O63-4
O63-5
○栗田理央(看護師)
○田崎龍仁(作業療法士),田中義志男,日高ちひろ,高尾優樹,
萱野幸三
亀田リハビリテーション病院
特定医療法人財団博愛会 博愛会病院
カンファレンスシートを用いた情報の共有化
ADLチェックリストの作成
【はじめに】当院では看護補助者の電子カルテ閲覧権がなく、他職
種との情報共有が困難であるという問題が生じている。そこで、
患者の情報の記載された紙媒体でのカンファレンスシートを作成
し、カンファレンスの際に導入した。導入後、アンケート調査を
行い、看護補助者の意識や、今後の課題について検証したため報
告する。
【方法・対象】当院の看護補助者にカンファレンスシートについて
のアンケート調査(ゴール設定・各職種の役割・方針・リハビリゴー
ルの共有)を行い、カンファレンスシート導入前・導入から1ヶ月
後・3ヶ月後の結果を比較した。
【結果と考察】全ての項目で「そう思う」
「ややそう思う」の割合が
上昇し、「どちらでもない」
「あまり思わない」
「思わない」の項目
の割合が減少した為、カンファレンスシート導入前よりも情報共
有が簡易になったと考えられる。しかし、
『カンファレンスの情
報を正確に周知しているか』という問いには14.3%→61.5%と上
昇したが、入手できる情報は限られており、情報共有は不十分で
ある。カンファレンスのタイミングによっては情報は最新のもの
ではないことと、シートに沿って行うことでシート外の情報が得
られにくい為と考えられる。しかしシートを用いることで全職種
がゴール設定を把握出来たという利点もあり、今後はシートの内
容・運用を見直し、改善を行っていく必要もある。
【 は じ め に 】当 院 で は 日 常 生 活 動 作( 以 下ADL)の 評 価 と し て
functional independence measure( 以 下FIM)とBarthel Index
(以下B.I.)を使用している。特にFIMは在宅復帰に必要な「して
いるADL」の指標として重要視しているが、食事の配膳や下膳、
頭部や背部の清拭は評価しない特徴があり、実際の生活場面を網
羅しているわけではない。FIMの項目以外に必要とされる生活場
面の動作の評価に関しては、担当者の習熟に依存している現状が
あったため、標準化したチェックリストを作成し運用を行った。
【チェックリストの作成】食事・整容・更衣・排泄・入浴につい
て生活場面で必要とされる準備や動作についてのチェックリスト
を作成した。作成には当院の作業療法士全員が関わり、どのよう
な点を評価しているかをリストにした。リストは項目毎に、問題
点や必要性の有無について判定を行い、問題がある場合は、治療
的な介入・訓練による介入・福祉用具や環境調整による介入等の
対応を選択するようにした。このようにチェックリストは評価の
みならずアプローチ方法も記載する用紙とした。
【運用並びにアンケート調査】H27.6.15〜 H27.8.15の2ヶ月間で、
当院の理学療法士・作業療法士がADLチェックリストを運用した
後にアンケート結果を行う。
【結果】結果については現在運用中の為、発表スライドにて報告を
行う。
135
O63-6
O64-1
○齊藤弥里(介護福祉士・ヘルパー)
○栢瀬大輔(理学療法士),手塚康貴
医療法人社団帰厚堂 南昌病院
阪南市民病院 リハビリテーション室
ブレーンストーミング法を用いた業務改善の検討
当院回復期リハビリテーション病棟の現状
−2年間の取り組みと今後の課題−
【はじめに】私たちは日々業務中心となり、慣例で業務を行ってい
ることが多くあると感じていた。患者の療養生活をより良くす
る為に、介護業務の改善が必要だと考えた。効果的な改善アイデ
アを生み出す為の方法の1つであるブレーンストーミング法(以下
BS法と略す)という方法を知った。今回、
BS法を用いて介護スタッ
フ全員で業務改善のアイデアを出し合った結果、患者を第一に考
えたアイデアが集まり効果的な業務の改善を見出す事ができたの
で報告する。
【研究目的】患者の療養生活をより良くするために、BS法を用いて
効果的な業務改善が出来るかを知る。
【結果】カテゴリーをつくり大きく9つに分けた。1.食事 2.排
泄、清潔 3.入浴ケア 4.患者の環境設定 5.リスク 6.整容ケ
ア 7.コミュニケーション 8.多職種との連携 9.医療処置であ
る。アイデアの総数は100個出た。その内訳は、1.食事7個 2.排
泄、清潔8個 3.入浴5個 4.患者の環境設定22個 5.リスク7個
6.整 容10個 7.コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン8個 8.多 職 種 連 携29個 9.医療処置4個である。その中からそれぞれ必要度・優先度を検
討し業務改善を現在も行っている。
【結論】1.アイデアが多く出たカテゴリーは、多職種連携である。
2.BS法を実施し業務改善のみでなく、気付きも引き出し、介護ス
タッフ同士のコミュニケーションを図ることができた。
【はじめに】当院は指定管理者制度導入後のH25年4月、新病院完
成と同時に回復期リハビリテーション病棟( 42床)を開設した。
今回、開設から2年間における取り組みを振り返り、今後の課題を
検討したので報告する。
【課題と取り組み】開設当初は経験年数3
年以下のセラピストが約半数を占めることや、大半のスタッフが
回リハ病棟未経験であることからシステムの構築や教育、スタッ
フ間の情報共有が喫緊の課題であった。そこで回リハ病棟に関わ
る全職種によるワーキングチームを立ち上げ、定期的な多職種参
加型の勉強会の実施やカンファレンスの進め方の検討などを行っ
た。カンファレンスに関しては原則全員参加とし、共通の目標設
定を行い共有することとした。また、退院支援に難渋したケース
に対して退院後の振り返りカンファレンスを実施し、設定した目
標の妥当性の検証や到達度の確認、各職種の関わり方の振り返り
を行い、問題点と課題点を参加者で共有することとした。
【考察
と今後の課題】共通目標の設定や情報共有の場を設けたことで各
職種の役割が明確化されたが、システムの周知や定着化はまだ十
分とは言えず今後も経過をみていく必要がある。また、振り返り
カンファレンスから浮かび上がった問題として、退院支援の時期
が遅く対応が後手に回るとの意見が多く寄せられた。院内クリニ
カルパスの活用が不十分なところもあり、内容の見直しや活用方
法の検討が急務であると考える。
O64-2
O64-3
○辻本徳栄(作業療法士)
,山下哲谷,遠藤恵子
○山上美誉子(理学療法士),小林郁美
医療法人沖縄徳洲会 千葉徳洲会病院 リハビリテーション科
医療法人社団甲友会 西宮協立リハビリテーション病院
リハビリテーション部
当院回復期病棟におけるカンファレンス運用の現状
と課題
回復期リハビリテーション病棟セラピストの役職者
による紹介状添削の取り組み(第1報)
【はじめに】当院回復期病棟では、月1回定期的に多職種参加のカ
ンファレンスを開催しているが、情報共有や目標設定等がスムー
ズにいかないことも多い。有効的なカンファレンスを目指すべく、
アンケートによる現状の把握と問題点の抽出を行った。今後の課
題と改善策を合わせて報告する。
【対象と方法】カンファレンスに参加したことがあるスタッフ
(Dr・Ns・SW・NT・PT・OT・ST)46名を対象に、2015年4月
に質問紙を用いて選択項目と自由記載項目でアンケートを行っ
た。
【結果】アンケートに答えたスタッフのうち、2015年3月のカン
ファレンスに参加したスタッフ37名に関し、カンファレンスが
「有効的でない」と答えた人が28名( 76%)であり、原因として多
かったのが、「報告中心」
、
「次回の具体的目標が不明確」
、
「他職
種との情報交換不足」
、
「検討事項が不明確」であった。また、
「退
院先、入院期間、家屋調査日の目安の決定」を初回時と回答した
人と2か月目以降と回答した人の、認識のずれがみられた。
【考察】課題として検討事項(問題点抽出、議題、目標)の明確化が
考えられた。改善策として特に今後の大まかな方向性を決める為
に重要な初回カンファレンスでは、退院先、入院期間、家屋調査
日の目安の決定と、チーム目標と各職種の具体的なゴール設定を
協議するといったカンファレンスの共有ルールの定着が考えられ
た。改善策後の結果を当日報告する。
【はじめに】当院では、退院後にリハビリテーションを継続される
全患者の紹介状を作成し、各事業所に送付している。この紹介状
の質の統一を図る為、病棟セラピストの役職者が統括し紹介状の
添削を行った。その結果を、考察を加え報告する。
【方法】添削は
平成25年7月から当該病棟の全セラピスト27名を対象に院内メー
ルを用いて開始した。また、過去一年間の紹介状を集め添削量の
変化や指摘箇所の傾向を抽出した。セラピストに対しては、特に
意識して記載している内容や添削の必要性・業務負担について等、
アンケート調査を実施した。
【結果】役職者からの添削量は徐々
に減少しているものの、
「今後の課題」に関する指摘が多く、セラ
ピストも「今後の課題」の書き方が難しいと感じていた。また添
削は必要と感じるものの、業務的に負担と感じている例もあった。
【考察】指導時間が長くなるのは生活期のイメージが出来ておらず
「今後の課題」が書けていない場合であり、時間的な負担が大きく
なっていたと考えられる。また院内メールでのやりとりが主とな
り、お互いの意図が伝わり難く添削による心理的負担も出現した
と考えられる。
【まとめ】当院では退院後、スムーズに地域のスタッ
フに介入して貰えるよう「今後の課題」を意識して指導している。
今後は時間的・心理的負担の軽減、紹介状の質の維持の為指導方
法の検討、紹介状の書式の変更を行い、変化点について継続して
調査を実施していく。
136
O64-4
O64-5
○小林郁美(作業療法士)
,山上美誉子
○鹿末 匡(介護福祉士・ヘルパー),戸田美智子,坂本奈穂子,
茨木ゆかり
医療法人社団甲友会 西宮協立リハビリテーション病院
リハビリテーション部
一般財団法人神戸在宅ケア研究所 神戸リハビリテーション病院
回復期リハビリテーション病棟セラピストの役職者
による紹介状添削の取り組み(第2報)
介護ケア検討会の取り組み〜勉強会とマニュアル作
成を通じて介護の質向上につなげる試み〜
【はじめに】当院では、退院後にリハビリテーションを継続される
全患者の紹介状を作成し、各事業所に送付している。この紹介状
の質の統一を図る為、病棟セラピストの役職者が統括し紹介状の
添削を行った。その結果を、考察を加え報告する。
【方法】紹介状
添削は平成25年7月から当該病棟の全セラピスト27名を対象に院
内メールを用いて開始した。また、過去1年間の紹介状を集め添
削量の変化や指摘箇所の傾向を抽出した。セラピストに対しては、
特に意識して記載している内容や添削の必要性・業務負担につい
て等、アンケート調査を実施した。
【結果】特に意識して記載して
いる内容と書き方が難しいと感じている半数以上が、
「今後の課
題」であった。また、役職者からの指摘・指導の多くも「今後の課
題」であった。
【考察】経験年数が浅く、回復期しか経験していな
いセラピストは、退院後の患者・家族の生活状況がわからず、知
らない場合がほとんどである為、
「今後の課題」に書きづらさが
あったと考えられる。
【まとめ】回復期リハでは、退院後の生活を
想定した関わりが必須である。紹介状は、生活期への情報提供だ
けでなく退院後の生活の想定とリハビリを見直すための教育的な
背景を踏まえた必要なツールの1つと考える。
「今後の課題」につ
いては、ポイントを絞って簡易に表記できる書式変更と各事業所
へのアンケート調査を行い、生活期の関係者が必要とする内容の
修正も検討していく。
【はじめに】患者層が重症化・亜急性期化する回復期リハビリテー
ション病院において、介護職員は看護師とのパートナーシップと
伴に患者の状態に応じた介護実践能力が必要である。3年前に立
ち上がった介護職で運営・活動をする当委員会の活動を振り返
り、回復期リハビリテーション病院における介護サービスの質向
上に向けての示唆が得られたので報告する【方法】1.介護職員へ
ケアに関するアンケートを実施し、マニュアルの不足項目・ケア
に関する不安や疑問の把握2.アンケート結果をもとにした勉強会
企画・運営3.勉強会内容でのマニュアル作成・追加4.マニュアル
浸透度のアンケート【結果】アンケートの結果、日々のケアに対
し、不安や疑問を抱えながら実践している場面が多く、昨年度作
成しているマニュアルも浸透しておらず活用されていないことが
わかった。そこで、介護実践場面で活用できる内容の参加型の勉
強会を実施し、その後マニュアルを作成すると浸透度もよく、介
護職員の不安や疑問も軽減した。
【考察】現場の意見を把握して
問題点を明確にすることがケアの質向上の基盤である。問題点の
把握・問題解決に向けた勉強会の実施・勉強会の内容を反映した
マニュアル作成・評価というプロセスを繰り返していくことが介
護ケア検討会目標の「安全・安楽を基盤とした介護サービスの統
一と質向上」につながる。今後は介護サービスの質が可視化でき
る評価指標への取り組みが必要である。
O64-6
O65-1
○伊藤卓也(理学療法士)
○北川由美子(理学療法士),木村繁文,藪越明子,藪越明子,
木村亜沙子,越野有香,東方瑠美,西田好克
主体会病院 総合リハビリテーションセンター
医療法人社団和楽仁 芳珠記念病院 リハビリテーションセンター
リハビリテーションスタッフにおけるストレス
チェックの取り組み
当院の母親教室において自宅での運動継続に対する
動機づけの要因の検討
【はじめに】従業員数50人以上の事業場に対し、ストレスチェック
等を義務づける制度が創設された。平成25年度精神障害労災請
求件数は過去最多となり、医療・福祉業界は、製造業に次いで2番
目の多さであった。そこでリハビリスタッフを対象に、ストレス
チェックを実施したので、その取り組みについて報告する。
【方
法】対象は当院リハビリスタッフ67名(男性32名、女性35名)
。ス
トレスチェックは厚生労働省が推奨予定の職業性ストレス簡易調
査票を用いた。職業性ストレス簡易調査票は、仕事のストレス要
因、ストレス反応、修飾要因からなる。得られた回答は標準化デー
タにより作成された素点換算表( 1が「最もプロフィール不良」、5
が「最もプロフィール良好」)を用いて検討した。
【結果】男女と
も仕事のストレス要因は、心理的な仕事の負担[量]および[質]
、
自覚的な身体的負担度で1の割合が高かった。また自覚的な仕事
の適性度、働きがいは5の割合が高かった。ストレス反応は不安
感で1の割合が高かった。修飾要因は上司からの支援度、同僚か
らの支援度で5の割合が高かった。
【考察】
同僚や上司からの支援、
仕事の適性度や働きがいを実感できる職場であったが、心理的な
仕事の量的・質的負担、自覚的な身体負担度が不良であり、不安
感を感じている職員が多くみられた。不安感を解消していくとと
もに、ストレス要因となっている、仕事の量・質、身体負担を見
直していきたい。
【はじめに】妊娠や出産に伴うマイナートラブルのうち、腰背部痛
や骨盤痛等の症状や尿失禁に対しては理学療法の効果が期待でき
る。当院ではH23年度より、理学療法士が院内の母親教室で、講
義や運動指導を行っており、妊婦が自宅で運動を継続できるよう
改善に取り組んできた。今回、これらの取り組みが妊婦の自宅で
の運動継続に有効であったかをアンケート調査にて検討するこ
ととした。
【方法】対象は当院の母親教室に参加しアンケート調
査に同意が得られた妊婦149名とし、対照群、ロール(丸めた新聞
紙にタオルを巻きつけた道具)を配布しパンフレットの内容を変
更した群、ロールの配布と経産婦スタッフの教室参加を必須とし
た群の3群に分けた。アンケート内容はQ1.内容の分かりやすさ、
Q2.自宅での運動を継続の可否とした。また、以前に当院の母親
教室に参加したしたことがある50名には、Q3.自宅で運動を継続
できたかの質問を追加した。統計処理はFisherの正確検定を用
い、有意水準は両側5%とした。
【結果】Q2において、ロールを配
布した群では自宅でも継続できそうと答えた妊婦の数が有意に多
かった(p<0.01)。Q3に関しては、ロール配布、経産婦の教室参
加に関わらず有意差は認めなかった。
【考察】母親教室直後の運
動の動機づけとしてロールの配布は有効であったと思われる。自
宅で運動を継続できるように更なる改善が必要かと考える。
137
O65-2
O65-3
○森本 太(看護師)
,東 慎二,池田利恵,宗重理恵子,長野美香,
山端恭子,岸 典子
○中井智洋(事務)1),松井豊晴1),田中 仁1),島 勝紅2),
塩見和哉2)
社会福祉法人兵庫県社会福祉事業団 兵庫県立リハビリテーション中央病院
1)株式会社ルピナス
2)リハビリ訪問看護ステーションルピナス
回復期リハ病棟患者の食事環境の改善〜居室からデ
イルームへの食事に向けての取り組み〜
新規利用申込者の動向
−いかに早期に介入することができるか−
【はじめに】A病棟は、
デイルームからナースステーションが遠く、
死角になっていることや、全員を収容するには狭いなどのハード
面に問題があり、ほとんどの患者が居室で食事をしていた。今回、
寝食分離の基本であるデイルームでの食事に向けての取り組みを
行い、看護師・看護補助員(以下スタッフ)の食事に対する意識や、
患者の変化がみられた経過を報告する。
【方法】スタッフを対象にデイルームでの食事開始前に、アンケー
ト調査で課題を抽出した。環境面、安全面、スタッフへの説明・
指導に分類し、対策を明示した。開始後も改善を行い、スタッフ
に再度アンケート調査し、取り組みについて検証・評価を行った。
【結果・考察】環境面では、テーブルの配置を変え、食事を2部に
分ける事で、限られた空間の中で有効活用することができた。安
全面では、常駐するスタッフを決め、配膳・配薬はリストバンド
と患者呼称することで、
患者誤認が起きることはなかった。スタッ
フに対し、タイムリーに説明・指導していくことで混乱なく円滑
に実施できた。実施後のアンケートでは、看護師の94%・看護補
助員の75%がデイルームで食事をするほうが良いと答えた。患
者同士の共有の場になる、生活のメリハリが出た等、メリットと
なる意見が多かった。デイルームで食事することで、食事をする
場だけではなく、生活の中の楽しみや交流の場として環境調整が
行えたと考える。
新規利用者をいかに早期に介入するかは営利法人立の訪問看護
ステーションでは経営的に非常に重要である。今回、新規利用申
込者の動向について分析したところ、早期介入するための対策に
ついて見解を得たので報告する。
【対象】平成25年4月1日〜平成
27年3月31日までの2年間の新規利用申込者498名。利用申込日、
契約日、初回訪問日、訪問看護指示書(以下、指示書)発送日・到
着日、主治医の所属機関について分析した。
【結果・考察】実際の
利用に至ったのは410名(未利用者88名)利用申込〜契約まで8日
(中央値、以下同じ)
、利用申込〜初回訪問まで21日。指示書の発
送後、到着まで8日で診療所は早く、病院では規模が大きくなるに
つれ遅くなる傾向にあった(500床以上13日)。未利用の理由は利
用前の病状悪化や転倒骨折、退院延期、本人の利用意思なし等さ
まざま。契約は本人・家族の都合を最優先し、週末を含み契約日
をいつに設定されても対応できる人員配置。初回指示書は原則持
参。発送する場合は本人・家族・担当者の了解の元、できるだけ
早期に。病院の地域連携室とのコミュニケーションをさらに図り、
がん末期等、ケースによっては指示書の即日交付を依頼する等の
対策を講じることで早期に介入しうる。今後も、地域包活ケアシ
ステムにおいて高齢者、障害者等が住み慣れた環境において自立
した生活を営めるように、遅延なく質の高いサービス提供をして
いきたい。
O65-4
O65-5
○吉田 卓(作業療法士)
○甲斐多加代(看護師),福永奈生美,甲斐誠子,真崎玲美,
會川裕子,有井瑠吾,梅尾さやか
竹川病院 通所リハビリテーションセンター ケアセンターけやき
独立行政法人地域医療機能推進機構 湯布院病院
湯布院病院附属居宅介護支援センター
通所リハビリテーションにおける稼働率向上への取
り組み〜スタンプラリーを活用して〜
通所リハビリテーションにおける看護チームの取り
組み〜看護リーダーを導入して〜
【はじめに】通所サービスにおいて、気候や気温は稼働率の増減に
大きく関わる要因の一つである。特に冬場は影響を受けやすい季
節である。当通所リハビリにおいてもお休みされる方が多く、通
所される稼働率も伸び悩んでいた。そのような状況を打開するた
めに、簡易的で視覚的にも成果がわかりやすく、動機付けしやす
いスタンプラリーを導入し、結果が得られたため報告する。
【対象と方法】期間は平成27年1月〜4月の4か月間で対象はリハビ
リ目的で通所される方が多い1時間以上2時間未満の時間帯のご
利用者、計62名とした。方法として連絡帳にスタンプラリーを貼
り付け来所されたらスタンプを押し、貯まったら景品をお渡しす
るという取り組みを行った。しかし、開始当初スタンプラリー自
体を拒否される方が多く、理由として子供っぽいということや、
持ってくるのが面倒ということがあったが改良し定着を促した。
【 結 果 】実 績 に 対 す る 休 み の 比 率 は 前 年 の 平 成26年1〜4月 は
23.4%であったが、平成27年1〜4月は16.3%と減少した。
【考察】スタンプラリー導入により、達成感を生み簡易的な目標と
なった。また、休まず来られると景品が貰えるということが動機
付けとなり満足感の向上に繋がったと考える。今後スタンプラ
リーを継続していき、リハビリ、ケアの質の向上、利用者さんと
の信頼関係を築いていくことが重要である。
【はじめに】平成26年4月現在当通所リハビリテーション(以下通
所リハ)の職員数はリハ職、介護職等22名、うち看護師は3.5名で
ある。利用者数173名、要介護3以上の割合は21.3%である。多
職種が流動的に働く現場は利用者情報や業務上の連絡事項等の情
報が錯綜し、連携の不備による混乱を招いていた。混乱の原因は
職種間の連携不足にあると考え、日々の業務リーダー(以下看護
リーダー)を置く事で看護師が業務全体を統括する役割を担う提
案をし、導入を試み効果が見られたので報告する。
【実施方法】平
成26年9月に導入開始。導入後全職員を対象とした意識調査を実
施。
【結果と考察】看護チームで検討を重ね、看護リーダーを導入
した事で情報の集約及び発信の統一ができ、利用者への対応が円
滑となった。他職種への効果としては利用者の医療情報を周知す
る事で全職員が統一したケアを行えるようになった。看護リー
ダーが日々の問題点を抽出し看護チームでカンファレンスを行う
事で、問題に対する解決策が明確となった。従来看護師は緊急時
の対応等医療面を重視し、利用者に対して個々の関わりが多かっ
た。今回看護リーダーを通してチーム活動を実践する事で、通所
リハでの介護予防や自立支援に目を向けた看護が展開出来るよう
になったと考察する。
【まとめ】看護師がリーダーシップを発揮
し通所リハ内のチームワークの強化、更には利用者を取り巻く多
職種との連携を深めていく必要がある。
138
O66-1
O66-2
○寺脇 希(言語聴覚士)
,葛原 匡,細谷菜緒,竹内邦夫,
土井千代美,善岡友紀,藤田祥子,天野純子
○野村幸代(看護師),山越千恵,酒井昌子,濱屋あかね,朝日信裕,
八倉巻舞,藤本万理,木倉敏彦
体重過多で離床困難な症例に対して、基礎代謝量測
定による栄養管理を行った一例
効果的なリハビリテーション栄養がADL拡大に結び
ついた事例〜神経筋疾患による二次性サルコぺニア
患者の一症例の報告〜
医療法人ハートフル アマノリハビリテーション病院
リハビリテーション部
富山県高志リハビリテーション病院
【はじめに】当院では活動係数やストレス指数に基づいた必要エネ
ルギー量を算出し、患者への栄養管理を行っている。さらに、必
要に応じて基礎代謝測定を行い、より個々の患者に対応した栄養
管理を目指している。低体重の患者への介入が多い中、入院時の
体重過多が問題となり、離床に向けて減量が必要である症例を経
験したので報告する。
【症例および経過】40代男性。左被殻出血発症。受傷時の体重は
135kg、当院入院時(44病日)は118kg。入院時ADLは全介助レベ
ル。体重過多のため車椅子や機械浴への移乗が困難。入浴が行え
ず清拭のみで対応し、常にベッド上での生活であった。入院中に
呼吸代謝モニタシステム(AE-310S、ミナト医科学製)を用いた
基礎代謝量測定を4回実施。結果に基づいて栄養管理を行った。
185病日で100kgを下回り、機械浴が可能となった。136病日か
らリフト移乗練習を開始し、260病日で車椅子座位にて3食の経口
摂取(半介助)が可能となった。また、330病日頃より3時間程度車
椅子上で過ごす事が可能となり、481病日、76.2kgで在宅施設へ
の退院となった。
【考察】呼吸代謝モニタシステムを用いて測定した値を利用し、摂
取エネルギー量のみではなく、タンパク質・脂質摂取量を考慮し
た栄養管理を行った。その結果、機能・活動の向上を図りながら、
在宅施設退院が可能な体重まで減量することが可能となったと考
えられる。
【はじめに】神経筋疾患による廃用症候群患者がリハ栄養の関わ
りで栄養状態・ADLが改善した1例を経験したので報告する。【症
例】皮膚筋炎、廃用症候群の60歳代女性。入院時、身長157.6cm、
体重38.8kg、BMI15.5、骨格筋量13.6kg、TP6.1g/dl、Alb3.2g/dl
で低栄養。FIM 48点(運動13点、認知35点)。胃管留置し、経管
栄養( 1200kcal)。【倫理的配慮】対象者に症例検討の目的および
個人情報の秘密厳守を保証したうえで、文章と口頭で説明し発表
の承諾を得た。更に看護部倫理委員会の同意を得た。【経過】転
院時より筋炎再燃し、入院2か月頃より病状安定した。栄養摂取
方法は経管栄養から経口摂取へ推移し、リハビリ後のロイシン摂
取も取り入れた。医師・栄養士・療法士と連携し、患者の状態に
合わせた必要エネルギー量とタンパク質量を算出・調整して嚥
下状態に合わせた形態を考慮した栄養摂取に取り組んだ。また、
患者の症状を確認し、患者の意見や嗜好を取り入れながら食種変
更のタイミングを計った。
【結果】病状安定から約5か月後の退院
時、栄養摂取量は、経口より1830kcal
(タンパク質量78g)
。体重
39.9kg、BMI16.0、骨格筋量14.8kg、Alb4.1g/dl。FIM 106点(運
動71点、認知35点)
。
【考察】疾患と患者の状態を考慮したリハ栄
養に取り組むことで、栄養状態とADLの改善が得られた。患者の
意見を尊重し取り組むことで、リハビリや食事への意欲向上に繋
がったと考える。
O66-3
O66-4
○園田明久(理学療法士)
○藤岡友美(管理栄養士・栄養士)1),山田賢次2),植野博行2),
石田麻美3),辻 貴史4),山岸広幸4),久村岳夫4),戸田爲久4),
録家時子5)
超高齢者に対しBCCAを含む栄養ケア食品の検討を
行った症例
回復期リハビリテーション病棟における栄養管理の
介入を目指して〜第3報〜
メディカルケアセンター ファイン
1)阪南市民病院 栄養管理室,2)ベルピアノ病院 リハビリテーション室
3)ベルピアノ病院 看護部,4)ベルピアノ病院 医療診療部
5)ベルピアノ病院 栄養管理室
【はじめに】今回、第二腰椎圧迫骨折で入院した超高齢の症例に対
し、リハビリテーションに加え、BCCAを多く含む補助食の検討
を行ったことにより、栄養状態の改善及びADLが向上したためこ
こに報告する。
【症例】入院時、90歳代前半、女性、第二腰椎圧迫骨折、身長:
149cm、体重:32.5kg、BMI:14.63、上腕周囲長:16.5cm、下
腿 周 囲 長:25.5cm、下 肢 筋 力:MMT2〜3、握 力:10kg、Alb:
3.0g/dL、エネルギー摂取量:1600kcal/日を7〜9割摂取してい
た。訓練は1日に理学療法1時間と作業療法1時間の計2時間をほ
ぼ毎日実施した。入院3ヶ月目より、メディミル・ロイシンプラ
ス( 200kcal)を補助食として毎昼食時に摂取していってもらっ
た。
【結果・考察】入院時より最初の2ヶ月は、各数値に向上がみられ
たが、依然として低栄養状態のままであった。そのため、メディ
ミル・ロイシンプラスを3ヶ月目より摂取してもらった。結果、
各数値ともに大きく向上がみられ、低栄養状態を脱することが出
来た。さらに、症例は入院前よりも歩行が安定し、ADLも自立し
た。今回、メディミル・ロイシンプラスの使用を開始した3ヶ月
目からの各数値の上昇が著しかった。つまり、超高齢の症例にも
BCCAを多く含む補助食は有用であると考える。今後、データ数
を集めて研究を継続していく。
【はじめに】近年リハビリテーション栄養(以下リハ栄養)への研究
が進み、栄養介入について研究を実施している。今回は第三報と
して、栄養評価方法の検討とリハビリの評価項目への関連性つい
て検討を行ったので報告する。本研究は当院の倫理委員会にて承
認を得ている。
【目的】栄養スクリーニングおよびアセスメントを行う上で有用
な栄養評価ツールを検討し、リハビリでの評価を用いて比較、検
討する。
【方法】平成25年4月から9月および平成26年6月から平成27年3
月の回復期病棟入院患者のうち在院日数を考慮し、2か月までの
評価が可能で、研究への同意を得られた41名を対象に、栄養予
後予測として使用されるOPNIおよび客観的な栄養評価として
CONUTを使用し、リハビリの評価では30秒立ち上がり、上腕お
よび下腿周囲長、握力、膝伸展筋力、FIM(運動・認知)を実施し、
各項目の相関について検定を行った。
【 結 果 】OPNI(初 回)vs. CONUT・ 膝 進 展 筋 力・30秒 立 ち 上 が
り回数・上腕周囲長・下腿周囲長・FIM運動(<0.001)、握力・
FIM認知(<0.05)で相関を示した。
【考察】OPNIは栄養予後予測としてリハビリの効果を予測できる
リハ栄養の分野でも使用できる評価ツールであることが示唆され
た。
139
O66-5
O66-6
○守屋一憲(理学療法士)1),三島誠一1),千田菜実子1),佐藤将也1),
鈴木里穂1),志田 晃2),松田泰樹1),丸山祥子3)
○田邉龍太(理学療法士)1),堀 健作1),當利賢一3),青木大輔1),
中井友里亜1),湯浅康史1),松尾恵利香1),村尾彰悟1),江原加一1),
牛島美幸1),江口 宏1),百留あかね1),大久保智明1),
野尻晋一1),山永裕明3)
当院における低栄養患者に対するリハビリテーショ
ンの効果−筋力・パフォーマンスの視点から−
訪問リハビリテーション利用者における栄養良好群
と要栄養ケア群の相違
1)社会医療法人 高橋病院 リハビリテーション科
2)社会医療法人 高橋病院 呼吸器内科
3)社会医療法人 高橋病院 栄養科
1)訪問看護ステーション 清雅苑
2)熊本機能病院 総合リハビリテーションセンター
3)介護老人保健施設 清雅苑
【目的】近年のリハビリテーション(以下、リハビリ)では、Albや
BMIといった栄養指標から運動負荷量の調整を要することがあ
り、リハビリテーション栄養の重要性が高まっている。そこで
我々は、Albが低値の状態で運動負荷量の調整を要する患者で
あっても、パフォーマンスの向上を認める症例が存在している
という仮説を立て、これを検証した。
【対象・方法】2014年12月
〜2015年4月までに退院した患者の内、本人の同意が得られた
21名(男性9名、女性12名 81.4±8.7歳)を対象とした。除外基準
は経口摂取不可、認知機能低下による運動の指示理解不良、重度
腎機能障害の症例とした。入院時・退院時でAlb、握力、Short
Physical Performance Battery(以下、SPPB)の測定を行った。そ
してAlb3.6g/dl未満を低栄養群、Alb3.6g/dl以上を非低栄養群と
し、
群内で一元配置分散分析を行った。有意水準は5%とした。
【結
果】非低栄養群の入退院時の握力、SPPBには有意差はなかった。
低栄養群のSPPBでのみ、入院時1.7±2.3から退院時4.6±3.1へ有
意に上昇した。
【考察】今回の検証では、どちらの群でも筋力は優
位な改善を認めなかったが、低栄養群でSPPBの優位な改善を認
めた。低栄養状態でもパフォーマンスが向上するのであれば、低
栄養患者へのリハビリ効果が見直される可能性もある事が示唆さ
れた。今後は対象を拡げて、経管栄養患者なども含めた更なる検
証を続けていきたい。
【はじめに】今回、訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)の利用
者へMini Nutritional Assessment (以下MNA)を用い、栄養良好
群と要栄養ケア群の違いを検討した。
【対象・方法】対象は訪問リハ利用中の65歳以上の経口摂取可能
な高齢者で、回答困難な者を除いた105名(平均年齢78±8.41歳、
男性40名、女性65名)である。方法は栄養良好群と要栄養ケア群
を目的変数としMNAの各18項目を説明変数として数量化2類に
より影響する項目を検討した。栄養良好群はMNA 24点以上の栄
養良好者と17-23.5点で体重減少が無く栄養ケアが必要でない者
とし、要栄養ケア群はMNA16点以下の低栄養者と17-23.5点で体
重減少が有り栄養ケアが必要な者とした。
【結果】数量化2類の結果、レンジは「B.体重減少の有無」1.63、
「N.食事の状況」1.51の順で高かった。相関比は0.84、判別的中
率は99%であった。【考察】栄養状態悪化による体重減少を見逃
さないため、栄養状態良好者でも定期的な体重測定が重要である
と示された。また食べる能力を問う「N.食事の状況」が高い順位
で示されたことは、食事摂取能力低下が栄養状態悪化につながる
可能性を示唆している。定期的に体重測定や食事摂取能力の評価
を行い、問題があれば主治医へ報告し食事方法や強化食の検討、
管理栄養士への相談等の対応が必要と考える。
O67-1
O67-2
○川口左恵子(作業療法士)
,森下遥加,大倉朱美子
○西田有里(作業療法士),池田裕哉,吉村裕子,江尻真由美
特定医療法人健康会 京都南病院
藤聖会 八尾総合病院
リハビリにおける本人・家族への対応
〜臨床心理士の視点を踏まえて〜
能力活用セラピーが良影響をもたらした一症例〜重
度認知機能低下患者が独居可能となるまでの経過〜
今回、脳梗塞を発症した60歳代男性のリハビリテーション(以下
リハビリ)を担当する機会を得た。脳梗塞後遺症としての身体所
見は軽度制限見られるが日常生活は自立されている。リハビリに
対しては意欲的だが、疾患の既往が多く、血圧の変動が大きいこ
とも影響して精神面の不安定さがみられた。妻は常にリハビリに
同席され、本人以上に不安の訴えが多かった。本人は妻の同席の
有無でリハビリ中の表情や会話内容に差があった。約半年間の関
わりでは身体能力の向上以外に、本人・妻の不安を傾聴すること
にも留意してきた。今回、その取り組みについて臨床心理の立場
より助言を頂く機会を得たので報告する。
【はじめに】重度認知機能低下患者への能力活用セラピーが認知
機能改善に影響をもたらし、独居可能の一助となったのではない
かと考えたためここに報告する。
【症例紹介】60代男性、X年Y月に左視床出血発症、病前生活は独
居(市営住宅)、介護保険滞納。家族関係不仲。入院時FIM46/126
点(運動36、認知10)。退院時FIM104/126点(運動77、認知27)。
【介入と経過】
当病棟転入時、
SIAS58点、
重度認知機能低下(HDS-R9/30
点)
、様々な高次脳機能障害、右上下肢に中等度麻痺あり。ADLは
車椅子見守り(抑制帯使用)、身辺処理動作は中等度介助。当初は
病識欠如、帰宅願望、不穏、暴力行為あり。初期目標は施設退院。
OTでは、生活歴と対象者の興味に即した木工、調理の計画から開
始。役割を果たせるよう場面設定し、OT自身も仕掛け人として
役割を演じた。また、チームでは患者の訴えを傾聴し、不穏行動
の原因把握に努めた。介入から約1ヶ月頃、不穏や暴力行為は軽
減。独居を視野に入れてのアプローチ開始。約6ヶ月後、独居で
の自宅退院となった。
【考察】生活歴から馴染みの作業を選択する、自己意思決定を促す。
OTの関わりは、安心感を与え褒めることが大切である。また、感
謝の伝達や役割認識を促すことが生きがいへ繋がり良循環をもた
らした。OTの演じる「仕掛け」が対象者の「底力」を引き出す結果
に繋がったと考える。
140
O67-3
O67-4
なじみのある作業を通して自信に繋がった症例
〜自発的な他者との交流を目指して〜
長期経過の中でADL介入拒否からほぼ自立に至った
頸髄損傷不全例
○岡本美希子(作業療法士)1),佐藤里衣1),小倉由紀1),高浜功丞1),
山田弘美2),村山尊司2),会沢希美2),飯塚正之2)
○木村麻里(作業療法士)1),黒川良輔2),酒井直美1),佐藤 渚1),
北田利弘1),可児利明1)
1)千葉県千葉リハビリテーションセンター リハビリテーション療法部
成人療法室 作業療法科
2)千葉県千葉リハビリテーションセンター
1)医療法人社団健育会 竹川病院 リハビリテーション部
2)医療法人社団健育会 介護老人保健施設 ライフサポートひなた
【はじめに】灘村らは、
患者同士の交流や集団活動での成功体験が、
退院後の閉じこもり予防につながる可能性を述べている。今回、
30病日でADLは軽介助となったが、認知機能低下や高次脳機能障
害を呈した症例を担当した。病前は画家で社交的であったが、日
中は食堂で無表情で座っていた。絵画を通した成功体験により表
情変化がみられ、デイサービスでの他者交流に繋がった。【症例
紹介】既往に認知症のある80歳代男性。右側頭葉-頭頂葉皮質下
出血後25病日後に当院入院。失語および選択性・転導性の注意
障害が著明であった。35病日のFIM認知項目5点。
【倫理的配慮】
ヘルシンキ宣言に基づき同意を得ている。
【介入と経過】病前職
業である絵画から介入を進めた。受け入れは良好であった。また、
他患者に見てもらえる環境設定や、
絵を院内に掲示した。68病日、
集団活動への参加を促すと、状況に合わせ自己紹介をし、他者と
交流する場面が見られた。98病日、セラピストがきっかけを作る
ことにより、病棟でも他者に話しかける場面がみられた。FIM認
知項目20点。退院後は週2回デイサービスを利用し、他利用者と
の交流がみられている。
【考察】周囲に褒められることが自信と
なり、集団活動での他者交流に繋がったと考える。また、病前は
社交的な性格であったことから他患者と関わることの出来る環境
設定が、退院後も他利用者との交流に繋がり、スムーズにデイサー
ビスへ移行できたと考える。
【はじめに】不全脊髄損傷者は歩行への期待が高く、更に男性の場
合、ADLは家族に対して依存的になることが多い。今回、長期経
過の中で機能訓練や症例に合わせた介入によってADLがほぼ自
立に至った不全頸髄損傷例について報告する。
【症例】60代男性
C5不全四肢麻痺。介入時のADL全介助(FIM48/126点)。【介入】
当初はADLの介入に対し拒否的であり福祉サービスの利用も否
定していた。そこで機能訓練を中心に、箸操作やトイレ動作訓練
から介入した。ガンの発症などで1年4か月の長期入院となり、精
神的な落ち込みがみられ、ADLに対しては柔軟な姿勢となった。
自己主張が強いが情に厚い面もある症例に対し、一方的に押し付
けず、一緒にADL方法を検討し本人の意欲を高めるよう関わっ
た。また、症例との信頼関係構築の中で患者とOTではなく、一人
の人として関わっていることを伝え、時にはくだらない話をし、
教えを請うこともあった。また、不安な気持ちを傾聴し、自分も
完璧な人間ではないことを伝えた。【結果】入浴は一部介助、そ
れ以外のADLは自立となった(FIM118点)。【考察】ADLの介入
が出来た要因は、ガンの発症による障害受容が一番大きいと思わ
れる。更に、OTとの信頼関係や身体機能の向上があったために
ADL練習に移りやすかったと思われる。そして、症例の性格に合
わせ、導入の仕方や関わり方を検討することでADLの訓練意欲の
向上が得られ、ADL能力の獲得が可能となったと考える。
O67-5
O67-6
私たちは患者さんの「社会参加」にどう対応するべ
きか?
「母を1人にしておけない」〜施設入所から自宅退院
へ目標変更となった事例を通して〜
○一場博和(言語聴覚士)
○横尾沙友里(作業療法士),小林美智,小堤祐紀,下重 斎
医療法人健康会 嶋田病院 リハビリテーション部
一般財団法人 太田綜合病院付属太田熱海病院
【はじめに】近年、患者さんのQOL改善に「活動」や「社会参加」が、
以前より注目されるようになってきている。今回、ST外来リハビ
リで社会復帰に至った症例の活動面・心理面の変化をST側のア
プローチとあわせて報告する。そして社会参加、職業復帰にどの
ような姿勢で対応すればいいかを考えたい。
【症例】男性 60歳代 脳出血にて3週間の急性期病院入院を経て
自宅退院。当院外来STリハビリ開始した。身体麻痺なし。
「パソ
コン操作できない」
「左側が見えにくい」訴えあった。
【経過】外来リハ開始時、提案した課題に消極的な姿勢だった。そ
こで、症例の話を聞くことから行った。話を聞くうちに、STと話
す内容を事前にまとめてこられるようになった。その期間の中で、
自らの意思で職場復帰や畑仕事などに取り組まれるようになっ
た。
【考察】症例は病前レベルではないが社会復帰を果たした。STの
アプローチは症例の想いに寄り添うことが主だった。症例が社会
復帰を果たすまでにみられた活動面・心理面の変化から、私たち
がどういう姿勢で患者さんに対応したらいいかを検討する。
【はじめに】今回、療養病棟入院中のA氏を担当した。A氏は施設
入所予定であったが、父の入院を契機に自宅退院へ目標を変更し
た。A氏と生活イメージを共有する中で、A氏の障害に対する考
え方に変化がみられた。その結果、活動・参加が拡大し、自宅退
院に繋がったため以下に報告する。
【事例】A氏。60代男性。中
心性頚髄損傷(C3・4、6・7)。両親との3人暮らし。回復期病棟
を介し、施設入所待機のため療養病棟へ転棟。転棟時FIM 54点、
BI 20点。主訴「歩いて家に帰る」
。運動麻痺は上肢優位の不全麻
痺。【経過】転棟後は能力維持、生活スタイルの確立を目標にOT
介入した。その後、父の見舞いや自宅外出を経て、A氏は「母を1
人にしておけない」と自宅退院を希望され、OTRは自宅での生活
イメージを共有し介入した。機能面に固執していたA氏であった
が、経過の中で、電動車椅子や自助具、サービス利用に対し受け
入れがスムーズとなっていった。また、自身の生活を作業の視点
でみるようになり、転棟から10カ月後、身体機能に著変はなかっ
たが、FIM98点、BI70点へ改善し、A氏は自宅へ退院され、母を安
心させたいという希望を叶えた。【考察】OTRは「母を1人にして
おけない」というA氏の想いに寄り添い、A氏と共に自宅退院へ目
標を変更した。目標達成に向けてA氏とOTRが協業したことで、
A氏は自身の生活を作業の視点でとらえ、活動・参加の拡大、自
宅退院へ繋がったと考える。
141
O68-1
O68-2
○朝倉三和(理学療法士)
○西澤志織(作業療法士)
医療法人社団三喜会 鶴巻温泉病院 リハビリテーション部
医療法人社団三喜会 鶴巻温泉病院
認知行動療法を応用した介入が患者の日常生活動作
能力および発言内容に及ぼした効果
認知行動療法を応用した介入で患者の行動変容を促
せた事例
【はじめに】理学療法に拒否が聞かれた患者に対し、認知行動療
法を応用した介入を行った結果、日常生活動作能力の向上と発言
内容の変化を認めた。本患者に実施した介入の効果と、理学療
法における心理面に対する介入の重要性について報告する。
【症
例紹介】80歳代女性で、心不全後の廃用症候群で当院回復期リ
ハビリテーション病棟に入院した。病前より、両側変形性膝関
節症による疼痛がありながらも日常生活動作は自立していたが、
入院後は「痛いからできない」という発言が聞かれ、Functional
Independence Measure
(FIM)運動項目は50点であった。本研
究は本人の同意と当院臨床研究倫理審査委員会の承認を得た。
【介
入】日常生活動作能力の向上を目的に、運動療法に加え、認知行動
療法を応用した介入を1日2回( 1回60分)
、1か月間実施した。目
標を明確にし、他者交流を促し、ひと言日記をつけてもらい、で
きる動作に気づくように促し、日常生活でのできる動作の導入を
図った。
【結果】介入1か月後のFIM運動項目は69点となり、「痛
くても歩きたい。歩ける」と、発言内容が変化した。
【考察】認知
行動療法を応用した介入により、自分がすべきことを考えられた
こと、痛みがあっても成功体験をした患者が少なくないことを認
識したこと、自信がついたことでFIMが改善したと考える。理学
療法士は、身体面に限らず心理面に対しても介入する必要がある
と考える。
【はじめに】入院時より、自己効力感が低下した症例に、認知行動
療法を応用した介入を行った。その結果、退院後の生活を前向き
に捉え、行動することが可能となった介入について報告する。本
人、家族の同意と当院臨床研究倫理審査委員会の承認を得た。【事
例紹介】当院回復期病棟に入院した左肘頭骨折、左寛骨骨折を
呈した70歳代後半の男性である。受傷前よりうつ病があり、食
事とトイレ以外は臥床していた。下肢の全荷重許可後のADLは
軽介助から見守りで可能であった。しかし、自己効力感が低く、
Functional Independence Measure(FIM)53/126点であり、
介助者に依存していた。
【介入】通常の歩行練習、ADL練習に加え、
認知行動療法を応用した面接を2週間に1回( 30分/回、計5回)
、
10週間実施した。初回は現状認識の修正を目的に、現在できる動
作と退院後に必要な動作を話し合った。次いでADLの満足度を聴
取し、目標を共有した。2回目以降は自己効力感の向上を目的に、
ADLの満足度を振り返った。【結果】FIM115/126点となり、満
足度も上がった。また、
「退院後は散歩やデイサービスへ通う」
との発言が聞かれた。
【考察】本症例は、退院後の生活を前向きに
捉えることが可能となり、ADLが自立した。通常の作業療法介入
に加え、認知行動療法を応用した面接を実施したことが、行動変
容に繋がったと考える。身体障害者領域の認知行動療法の有効性
が示唆された。
O68-3
O68-4
○高路陽人(理学療法士)1,2)
○北浦明子(看護師)
1)医療法人社団いなもち医院
2)Asha
阪南市民病院 看護部
リハビリに笑顔を
〜適応障害に対するリハビリを通じて〜
脳挫傷による重度の機能障害を克服し復学可能と
なった一事例
【はじめに】回復期リハビリ病棟(以下回リハ病棟)は在宅復帰を
目指したケアを実施している。在宅復帰には、安心して暮らせる
場と役割再獲得が重要である。高校生にとって社会復帰は、自宅
への退院だけでなく、学生という役割を取り戻すことができて社
会復帰といえる。16歳の青年期にある学生が真の社会復帰を目
指すことができた事例について報告する。なお、発表に際して承
諾を得た。【事例紹介】A氏16歳男性。高校2年生。母と15歳妹
の3人暮らし。自転車乗車中交通事故に遭遇し、急性硬膜下血腫、
脳挫傷による重度の運動障害を伴いリハビリ目的にて転院となっ
た。入院時FIM60点とほぼ全介助でジェスチャーによる意思疎通
が可能な状況であった。【経過】A氏の強い希望は復学であり、在
宅復帰と復学を目標設定した。高次脳機能の改善後早期から入院
生徒学習支援事業を活用した学校との連携で学習支援を開始し、
合計46回の病院での講義を経たのち、学校の授業への外出が可能
になった。その後自宅へ退院し復学できた。【考察】青年期の発
達課題は、自我の確立であり、16歳の青年前期は自分の固有の生
き方・考え方を模索する段階である。多感な時期であるため、重
度の運動障害の経験は決してマイナスだけでなく、障害受容の過
程で出会う人との関わりや親密性により障害受容と発達課題であ
る自己受容につながった。結果A氏の希望する復学を実現可能に
できた。
【はじめに】イジメによる適応障害あり、3年以上ひきこもり重度
の膝関節拘縮を呈した症例に対し、膝関節伸展を図りつつ社会参
加を促した症例を経験した。
【症例】20代女性。小学生のころよ
りイジメにあい、高校卒業後も自宅に引きこもっていた。家庭環
境の問題もあり、日中体育座りで生活していたため家族により社
会参加のために病院受診された。
【評価】両膝関節伸展-90度、両
股関節伸展-15度。目を合わせることができずコミュニケーショ
ンは一部Yes/No程度であった。
【経過】リハビリ開始当初、コミュ
ニケーションがとれなかったが話しかける等の介入を行った。介
入3日頃より、関節可動域練習の導入が可能。少しずつ笑顔もみ
られるようになってきたがOTによる更衣や入浴練習等では肌を
見せることが困難。介入を続けることで徐々に会話が可能になり、
積極的に関節可動域練習が可能。外出することを目標に歩行練習
も開始でき、笑顔も増えた。退院時には両膝関節伸展は-20度ま
で改善、歩行も数100m可能となったが社会参加は困難であった。
そこで精神科のデイと連絡をとり外来と併用して引き続き介入を
行った。【まとめ】リハビリにとって身体能力の向上は責務であ
るが、そのためにはリハビリ時間内外問わずメンタルケアを実施
していくことも特に重要である。私たちは患者を笑顔にするリハ
ビリを提供していく必要がある。
142
O68-5
O68-6
○村松伸江(理学療法士)
,豊田貴信,森下一幸
○富永安那(作業療法士),岡本 幸,深野美和,関 真吾,
鬼塚北斗,川内基裕,金 隆志
社会福祉法人聖隷福祉事業団 浜松市リハビリテーション病院
小金井リハビリテーション病院
高齢頸随不全損傷者への医療者対応
〜身体機能と環境への配慮を大切にした一症例〜
愛犬との時間を通して表情が明るくなり意欲が向上
した症例
【はじめに】身体機能とhopeが乖離した、頸髄不全損傷患者を担
当した。医療者間で症例の思いを共有し、身体機能や環境に配慮
したことで、症例がneedへ気付き、FIM点数向上に繋がった。取
り組みについて振り返り、報告する。
【症例紹介】70歳代女性。交
通事故にてC6/7脱臼骨折受傷。11病日目に気管切開、23病日目
にC6/7後方固定術施行。72病日目に当院転院。230病日目に自
宅退院。発表に当たり症例の承諾は得ている。
【経過・考察】転院時、
hopeは歩行自立であったが、受傷のショックと耐久性低下によ
り、離床拒否や介助依存が認められた。心境を傾聴し、医療者間
で症例の思いを重点的に共有した。離床促しのため、夫への信頼
や安心感を活用して、夫に介助を依頼・指導を行い、離床へ繋げ
た。また個室利用者であったため、他者交流が少なく、ショック
が延長していた。そこで食堂での食事機会にて他者交流を図りた
く、PTは車いす自走自立を中心に、Ns.等は環境設定を行い、食堂
での食事に至った。交流を通して心的サポートや離床時間延長が
行え、症例は成功体験より自立心が芽生えた。110-205病日間は
感情の起伏が認められたが、現状に見合った排尿自立へのneedが
傾聴できた。そこで共にneed獲得へ挑戦すると、排尿のFIM点数
が著しく向上した。よって症例の思いを家族・医療者間で共有し
たことが、needへの気付きや課題に対する主体的行動へ繋がり、
動作能力向上を支援出来たものと考える。
【はじめに】病前大切にしていた愛犬との時間を通して表情が明
るくなり離床意欲、リハビリテ−ション(以下、リハ)意欲向上がみ
られ、生活場面でも変化がみられた事例を経験したためここに報
告する。
【症例】左被殻出血を呈した50歳代女性。重度右片麻痺
と失語症・記憶障害・注意障害を認め、入院時FIMは30点であった。
病前は夫と2人暮らしで、愛犬を家族のように可愛がり、仕事と愛
犬の世話が日課であった。
【経過】症例は入院当初からリハ以外
の時間は常に臥床し、流涙することも多くリハが進めづらい場面
もみられていた。そこでご家族との相談から、人間作業モデルに
基づき価値の高い作業であった愛犬との時間の提供を試みた。今
回週1回愛犬と過ごす時間を提供することで、日常生活場面でど
のような変化があったかを意志質問紙を用いて評価した。症例は
愛犬に会えると伝えた時期から表情が明るくなり、流涙する場面
はなくなった。また、リハ後に離床できるようになり、1時間程度
離床時間が増え、意志質問紙では1ヶ月で35点から42点へ向上し
た。その後中断期間には再度流涙がみられるようになり、意欲低
下から更衣場面では介助量が増えたが、再開直後から介助量も軽
減し、退院時にはFIM90点となった。
【考察】本事例は遂行能力の
変化から個人的原因帰属が低下し、病前の役割は喪失に近く、自
閉的な生活を送っていたが、愛犬との時間が「意志」の要素を賦活
し良循環を生み出したと考える。
O69-1
O69-2
○佐々木翼(介護福祉士・ヘルパー)
,一條佳子,小笹 廉,
佐々木喜之,辻澤彩未,岡村寛子,菅野衣美
○二宮 悠(理学療法士),高芝 潤
札幌西円山病院 看護部 6B病棟
社会医療法人近森会 近森リハビリテーション病院
回復期病棟における離床評価方法の検討
〜 METSを用いたカロリー数値を活用して〜
退院時に車椅子を使用していた脳卒中患者における
在宅復帰の要因の分析
【 1.はじめに】患者の離床機会の拡大を図っていくことを目的と
して、離床状況を客観的に評価するツールを作成する取り組みを
行なった。今回はMETSを活用しデータ化することで共通認識を
図ることを試みたが、適切な評価と離床機会の拡大に反映できな
かった。その取り組みを報告する。
【 2.実施】a.離床チェック
表を作成し、日中の余暇時間の活動内容( 20分毎に観察)と、ルー
ティン化されたADL動作の時間と回数を記載。b.記入した数値
と体重を計算ソフトに入力し、1日の消費カロリー量を算出する。
c.算出した消費カロリーの数値と、栄養科で算出している摂取カ
ロリーを比較する。消費カロリーを摂取カロリーに近づけること
で、十分な活動ができていると評価しようと考えた。【 3.結果】
離床チェック表を活用することで、日中の離床時間と活動内容が
把握しやすくなり、根拠立てて離床状況を説明するための指標と
なった。しかし、消費カロリー量が正確に算出されず、評価に結
び付けることはできなかった。
【 4.考察】正確に算出されなかっ
た背景として、METSでは体重が運動強度に関係してくる為、疾
患や障害を持つ高齢者には体重によって消費カロリーの差が顕著
に表れてしまったことや、活動内容を正確に記入できていなかっ
た事が考えられる。
【 5.おわりに】METSの消費カロリーでは、
同様の活動でも疾患や障害を持つ高齢者が実際に消費している運
動強度は少ない可能性があった為、今後検証が必要である。
【はじめに】脳卒中患者の在宅復帰の要因は散見されるが、車椅子
使用例を対象にした報告は少ない。今回は退院時に車椅子を使用
していた症例を対象に在宅復帰の要因分析を行った。
【対象と方法】対象は2012年3月1日から2014年3月31日の間に退
院し、退院時に車椅子を使用していた脳卒中患者477例(年齢74.5
±11.8、除外基準:急性期転院、死亡)とした。方法はカルテより
介護度、同居人、身体機能、能力、FIMなどについて調査した。比
較は転帰が自宅退院(以下;在宅群)と、その他(以下;非在宅群)の
2群 で 検 討 し た。 統 計 処 理 はMann-WhitneyのU検 定 と ロ ジ ス
ティック回帰分析を行い、有意水準は5%未満とした。
【結果】2群の分類では在宅群207例、非在宅群270例であった。こ
れら2群を比較、有意であったものを独立変数とし、在宅復帰につ
いてロジスティック回帰分析を行った。その結果は、退院時同居
人(B=8.264、4.523-15.099)、床上動作(B=1.239、1.063-1.444)、
年齢(B=1.037、
1.011-1.064)、
入院時体重(B=1.034、
1.006-1.063)、
退院時FIMの運動項目合計(B=1.048、1.032-1.064)が採択され
た。
【考察】今回の結果では年齢、退院時FIM運動項目、床上動作や体
重など機能や能力と関連した要素が採択されていた。また、社会
要因として退院時同居人も抽出されており、車椅子使用例の在宅
復帰では重要な要因になると考える。
143
O69-3
O69-4
○佐々木奈都美(理学療法士)
,荒谷光太郎,奈川英美,小田桐伶,
三浦康彦,原子 由,齊藤成美,岩田 学
○平田貴大(理学療法士)1),石黒祥太郎1),内山 靖2)
一般財団法人黎明郷 弘前脳卒中・リハビリテーションセンター
1)社会医療法人愛生会 上飯田リハビリテーション病院
2)名古屋大学 大学院医学系研究科 理学療法学講座
回復期脳卒中患者の退院時期による身体機能・ADL
の違いについて
回復期リハビリテーション病棟における入院時FIM
得点による改善期待値と実際のFIM利得について
【はじめに】自宅退院例において退院時期を回復期病棟入棟後早
期に予測する為、発症4週目の身体機能、ADLは退院時期によっ
て差があるのかを明らかにすることとした。
【対象】2012年2月〜2014年6月に当院急性期病棟へ入院後、回復
期病棟を経て退院した初発脳卒中患者1114例の内、自宅退院した
患者で、記録の不備がない302例を対象とした。
【方法】診療録より、退院時期、発症4週目のFIM、BBS、MMAS、
FMAの記録を抽出した。退院時期は、発症から1か月目、2か月目、
3か月目、4か月目、5か月目の5群に分類した。退院時期を因子と
し、一元配置分散分析もしくはクラスカルワリス検定を行い、多
重比較法を行った。有意確率はp=0.05とした。
【結果】FIM運動項目、FIM認知項目、BBS、MMAS、FMA下肢は、
いずれも有意な差が認められた。FIM運動項目、MMAS、FMA
下肢は、4か月目と5か月目の間以外は、有意な差が認められた。
BBSは1か月目と2か月目の間、4か月目と5か月目の間以外は、有
意な差が認められた。FIM認知項目は1か月目と3か月目、1か月
目と4か月目、1か月目と5か月目の間のみ、有意な差が認められ
た。
【考察】発症から4週目の時点では、発症から4か月目に退院する群
と5か月目に退院する群には有意な差が認められなかった。長期
入院が必要な患者は、経過を追って退院時期を検討する必要があ
る。
【目的】近年リハビリテーション病棟の質的整備が進み、各病棟の
特色を生かしたリハビリテーションの提供が求められる。そこで
当院における過去と現在のアウトカムを比較し、そこから得られ
る傾向や今後の課題について検討する。
【対象】平成25年4月1日〜平成26年3月31日までに当院に入院さ
れた脳血管障害患者のうちFIMデータに欠損があった者を除外し
た208名を対象とした。
【方法】平成19年の入院時FIM‐FIM利得(177名)を散布図から近似
曲線を算出し、入院時FIMから予測できるFIM利得の期待値とし、
対象者の期待値と実際に得られたFIM利得とを比較した。
【結果】平成25年におけるFIM利得の平均14.6点であり、標準偏
差14.2であった。実際のFIM利得が期待値を上回ったのは全体の
64%であった。
【考察】6年間でリハビリテーション室の拡大や各療法士の増加に
加え、1患者あたりの平均実施単位も1.6倍に増加していることか
ら、リハビリテーションの量的な増加の影響が示唆された。
【結語】今回、過去から算出した期待値を上回る結果が得られた。
今後の課題はリハビリテーションの質的な影響について検討して
いく必要があると思われる。
O69-5
O69-6
○二宮一騎(理学療法士)
,阿座上広希,横野裕行,加藤 茜
○佐藤健太(理学療法士),石崎由委,古村恭奨,川尻隆晴,
小山内ゆか,川村 茜,梅原靖孝,山本祐司
みどり野リハビリテーション病院 リハビリテーション科
定山渓病院 リハビリテーション部 理学療法科
回復期リハ病院から自宅退院した患者の追跡調査報
告〜退院後のFIMによる項目別変化に着目して〜
入院情報からみた当院慢性期脳血管障害患者のFIM
得点変化に関与する因子の検討
【はじめに】回復期リハ病院の退院患者の生活把握は、セラピスト
にとって入院中の取り組みや退院調整の検証となり、その重要性
や研究報告が数多くされている。本研究では退院後のFIM項目別
変化について検討することを目的とした。
【対象・方法】H25.6
月〜 H26.9月までに当院を自宅退院後6カ月の電話調査が可能で
あった167名を対象とした。方法は退院時と比べ、退院1、3、6カ
月後(以下1M、3M、6M)のFIMを本人及び家族から調査し、退院
時FIM総点数を四分位法にて4群(93点未満、94-108点、109-118
点、119点以上)に群分けし、FIM各中項目別にFriedman検定に
て検討し、さらに先行研究の運動項目によるADL自立度と比較
した。
【結果】群別では、93点未満、94-108点はセルフケア、排
泄、移乗項目が全ての時期で有意に向上した。移動項目では93点
未 満 は3Mで、94-108点、109-118点 は、3-6Mで、119点 以 上 は
1-6Mで有意に向上した。ADL自立度との比較では、93点未満は
6Mで半介助レベルから変化はなかった。また、3-6Mにて運動項
目の減少がみられた。
【考察】93点未満は、6Mで半介助レベルと
ADL自立は困難であり、3-6Mにて運動項目が減少した因子とし
て、行動範囲や活動量の増加による転倒・転落リスクによる点数
の減少や活動量の低下による点数の減少が考えられる。
【結語】
退院時FIMから時期における中項目別FIMの変化傾向を掴むこと
が出来た。今後、小項目別での変化の傾向、退院後の転倒の有無、
活動量の変化を比較し、検討していく必要がある。
【はじめに】当院入院患者の約半数が脳血管障害(以下、CVA)を主
疾患としている。今後の効果的な関わりを模索する為、FIM変化
に関与する因子の検討を行った。
【対象】発症から180日以上経過
し、2010年10月 〜2014年3月 に 入 院 し たCVA患 者28名 と し た。
【方法】(1)全対象の入院時、1年後のFIM平均を算出した。入院時
から1年後のFIM変化量より、向上群と不変・低下群に分けた。(2)
入院時の心身機能(言語障害・高次脳機能障害・精神障害の有無、
動作能力評価表合計点)・一般情報{訓練単位数(以下、単位数)、発
症からの日数(以下、発症日数)、今後の方向性、医療区分}を調査
し、2群間の差をみた(有意水準p<.05)。(3)FIM変化量と(2)で差
がみられた項目の相関をみた。また単位数と発症日数の相関をみ
た(有意水準p<.05)。(4)2群間の単位数をROC解析し、カットオ
フ値を算出した。【結果】(1)入院時31.9点、1年後32.9点であった。
(2)発症日数・単位数に有意差がみられた。発症日数は向上群
1217.4±838.8日、低下群2714.9±1408.7日であった。(3)FIM変
化量と単位数(r=.52)、発症日数(r=-.29)、発症日数と単位数(r=.46)に相関がみられた。(4)3.68単位(感度.64、AUC=.74)であった。
【考察】結果(1)より、慢性期においてもFIMが向上する可能性があ
ることが示唆された。結果(2)(3)(4)より、発症から180日以上経
過したCVA患者においても、発症日数と単位数を考慮した関わり
によりFIMが向上する可能性があると考える。
144
O70-1
O70-2
○宮崎博子(医師)
,久保陽介
○井上裕也(言語聴覚士)1),福田みのり1),渡辺 瞬1),田場恵巳1),
土肥典子1),林 拓也1),石津友美1),花房義和1),石田浩一1),
松本憲二1),坂本知三郎1),吉田直樹2)
幼児の機能性構音障害について10年間の外来診療
の報告 −般病院における診療の拡大を望む−
オーラルディアドコキネシスに基づく嚥下機能安全
性評価の妥当性の検証
京都桂病院 リハビリテーションセンター リハビリテーション科
1)医療法人篤友会 関西リハビリテーション病院
2)リハビリテーション科学総合研究所
【はじめに】当院リハ科では、依頼に応じて幼児の機能性構音障害
の診療を行っている。2005年の開始から10年間の診療について
報告する。【対象児童と診療方法】基本的に4歳以上未就学児。依
頼は児童福祉相談所、口コミで直接母親から。当院小児科外来で
基本診察の後、リハ科外来にリハ依頼。
【結果】ST実施者87人の
うち機能性構音障害は59人。男児38人、女児21人。年齢:5.15
±1.2才。実施機関:176.9日。構音障害の種類:置換・省略・歪
み:44人、異常構音(口蓋化構音、側音化構音、鼻咽腔構音、声門
破裂音等)15人。転帰:ゴール達成し終了:37人(62.7%)
、ドロッ
プアウト(親の意向)
:12人(20.3%)
、小学校のことばの教室に移
行:2人( 3.4%)
、評価のみで終了1人( 1.7%)
。カルテ記載なし1
人( 1.7%)、リハ継続中:6人( 10.2%)
。機能性構音障害以外の疾
患(自閉症、発達障害(ADHD、LD)
、舌小帯短縮症等)28人。男
児17人、女児11人。年齢5.18±2.66才。
【考察】幼児の機能性構音
障害には医療的指導が必要なケースが存在する。構音障害は学校
という集団生活において、児の劣等感や閉じこもり、いじめの原
因になりうるほか、親の不安や情緒不安定の誘引になる。ドロッ
プアウト例には経過の良好なケースも多く、それも合わせると、9
割以上の児童が週1回のSTで良くなっている。リハ医や言語聴覚
士が機能性構音障害を積極的に受け入れ診療する意義は大きいと
考える。
【背景】オーラルディアドコキネシス(以下OD)は嚥下機能と関連
性があることが示されている。しかし、ODの回数で嚥下障害の
有無を判定できる明確な研究結果が無いまま、新聞記事等を根拠
に、
「/ptk/の回数が8回以上あれば安全」という記述がインター
ネット上で散見される現状がある。そこで、この基準では「安全」
と判断される対象者の中に、嚥下機能が低下している方々がどの
程度の割合で存在するかを、当院入院中の患者様を対象に調査す
ることにした。
【対象】平成26年11月〜平成27年4月まで、当院回復期病棟に入院
された脳血管疾患患者で言語聴覚療法を実施した男性50名、女性
28名の計78名(平均年齢74歳)を対象とし、OD
(ST3名以上での
ペン打ち法)と藤島Gr( 7以下は問題ありとされる)の評価を実施
した。
【結果および考察】OD8回以上の対象者は53名、そのうち、藤島
Gr7以下が15名( 28.3%)であった。「OD8回以上なら安全」との
判断には危険が伴うことが示された。ODの基準値は、あくまで
も構音機能の指標である。しかし、一方で“ODと嚥下機能の関連
性”が示されていることから、ODを嚥下機能の安全性評価の基準
とする「誤用」が生まれた可能性がある。なお、本研究はODが嚥
下機能の判断に使えることを否定するものではなく、ODと嚥下
機能の関係性について、今後の研究の発展には期待がもたれる。
O70-3
O70-4
○木村由美子(言語聴覚士)
,清久 翔,山下裕史,山本由佳,
槌田義美,山鹿眞紀夫,古閑博明
○遠藤健二郎(言語聴覚士),小熊恵子
熊本リハビリテーション病院 リハビリテーション部 言語聴覚科
在宅総合ケアセンター成城 訪問部
回復期リハの課題
〜 STの退院後訪問から見えてきたこと〜
重度障害者用意思伝達装置としてのアイトラッキン
グデバイスの検討
【目的】STが退院後訪問を行った症例について生活状況を調査し、
回復期リハにおけるSTの関わりを見直した。
【方法】対象はH25〜26年度に退院後訪問を行った患者27名(男性
18名、女性9名、平均年齢69歳)。言語や摂食嚥下などに関する生
活状況について、本人と家族に対し当院で作成した質問紙を用い
て調査した。障害の内訳は失語症11名、摂食嚥下障害9名、高次
脳機能障害・認知症19名、構音障害12名。(同一症例で重複あり)
【結果】対象者の約半数が以下のような問題を抱えていた。失語症
では家族が本人の意志を汲み取ることができない、コミュニケー
ションの相手が限られていることがあがった。摂食嚥下障害では
家族の自己判断によるトロミや食形態の調整、嚥下食調理の負担
があがった。高次脳機能障害・認知症ではスケジュール管理がで
きない、公共交通機関の利用や携帯電話操作の混乱、性格変化に
対する家族の精神的ストレスがあがった。
【考察】失語症では家族へのコミュニケーション方法の丁寧な指導
や社会参加を踏まえた訓練の充実が、摂食嚥下障害では介護力を
考慮した指導・サービス提案が、高次脳機能障害・認知症では多
職種と情報共有したリハプログラム立案の必要性が考えられた。
今後は退院前訪問や外泊時のアンケート等を活用し、実生活を想
定したリハプログラムを取り入れるとともに、家族指導は入院中
に計画的・段階的に行える方法を検討していく。
【目的】重度障害者用意思伝達装置として視覚入力装置が開発さ
れているが、価格や助成申請の問題により導入困難なことが多い。
そこで今回、重度身体障害者に対して、ソフトウェア開発者向け
のアイトラッキングデバイスと無料の支援ソフトを使用し、コ
ミュニケーション能力の拡大を検討した。
【対象】20歳代、男性。平成24年脳腫瘍を発症。重度四肢麻痺、口
頭での意思伝達は困難。ADL全介助。
【方法】所有のパソコンにアイトラッキングデバイスを接続。本
人が操作しやすいように、無料の支援ソフトを使用し、パソコン
画面を編集した。操作練習は週1回の訪問STと週3回のデイサー
ビスで行った。
【結果】使用開始時は誤操作が目立ったが、操作練習を通して軽減。
他者からの質問に対して、簡単な文章を入力し返答することが可
能となった。本人、家族はWEBでの動画検索を希望しているが、
自由な使用にはまだいたっていない。
【考察】現在、福祉機器に限らず様々な機器が開発されている。そ
れらを組み合わせて使用していくことで、より個人に合わせた方
法を検討していけると思われる。しかし、支援の体制の情報の共
有化はまだ十分とは言えず、今後の課題であると思われる。
145
O70-5
O70-6
○佐藤菜実子(言語聴覚士)
,木佐高志,岩田久義,竹内茂伸
○江村 編(言語聴覚士)1),舛田悠子1),漆戸恒典1),石山寿子1,2)
社会福祉法人こうほうえん 錦海リハビリテーション病院
1)医療法人社団永生会 南多摩病院 リハビリテーション科
2)日本大学 歯学部 摂食機能療法学講座
在宅失語症者に作業選択意思決定支援ソフト
(ADOC)を用いる際の注意点の検討−中等度失語
症者1例の取り組みを通して−
二次救急病院における小児への外来言語聴覚療法の
実施状況と今後の課題
【はじめに】目標設定において、失語症者の意思決定を促す目的で
作業選択意思決定支援ソフト(以下ADOC)を用いた取り組みを
実施し、
使用における注意点について検討した。
【症例】
80代女性。
脳梗塞後の右不全麻痺と中等度失語症が残存。ADLは一部介助レ
ベル、軽度認知面低下。
【取り組み】ADOCを用いてインタビュー形式で実施。その際、
失語症により有意味語の表出が乏しく指示理解も不十分、また
iPadの操作や手順の理解が難しい等の問題により詳細部分の聴取
に時間を要した。対応として、本人に合ったコミュニケーション
手段の活用(短文での質問、yes/noでの返答を促す、選択肢を提
示、言いたいことを推測する、コミュニケーションノートの使用)
や、施設職員からの本人についての情報収集、本人の生活背景を
把握する等の環境評価を実施。またiPadの操作についてはSTが
最初に見本を示した。
【結果】
「整容」のイラストを選択し、義歯を自分で外せるようにな
りたいという意思を聴取し、本人がしたいと思う生活行為を目標
に反映させることができた。
【考察】本症例は、ADOCのイラスト選択後の詳細部分の聴取に労
力を要した。失語症者にADOCを使用する際には、失語症の状態
を理解し対象者に合ったコミュニケーション手段を活用するこ
と、また生活背景の把握等の環境評価を実施のうえ、目標設定に
取り組んでいく必要があると考える。
【はじめに】小児のコミュニケーション障害への対応は医療・福祉・
教育の分野に渡っているが、受け入れ可能な施設が少なく即時対
応が困難な場合も多い。当院では主に成人を対象にリハビリを実
施しているが、小児科とリハビリテーション科が併存する地域で
も数少ない医療機関として、外来にて小児への言語聴覚療法も、
少数ながら実施してきた。これまでの実施状況を報告し、今後の
課題を検討する。【実施状況】症例:2012年5月〜2015年5月に処
方された10例。診断名:機能性構音障害7例。言語発達遅滞2名。
言語発達遅滞+構音障害1例。初診時平均月齢:53.5(±16.4)ヶ
月。初診経緯:当院小児科を構音・言語の主訴で受診1名、当院
小児科を他疾患で受診しリハビリ指示3名、療育機関からの紹介3
名、保健福祉センターからの紹介3名。平均介入期間:
(継続中の
4例を除く6例)9ヶ月。うち構音障害例7ヶ月、言語発達遅滞を含
む例13ヶ月。帰結:改善終了4例、ことばの教室へ移行1例、改善
のうえ経過観察1例。
【今後の課題】就学前の集中的な訓練を必要
とする機能性構音障害を中心に受け入れ、1年以内の改善終了が
多いが、月齢の低い言語発達遅滞児で療育機関の早期の受け入れ
が困難な例への介入では、長期的な支援が必要となっている。成
人施設での限られた資源・体制にて、地域のニーズに応えるため
には、予後予測能力とソーシャルワーク能力の向上を図り、即時
対応に特化していく必要性が示された。
O71-1
O71-2
○下村彰宏(理学療法士)
,及川真人,山中誠一郎
○坂下竜也(作業療法士),北御門誠,眞戸原新一,原田 遥,
野畠稔宏,轟 春美
初台リハビリテーション病院
医療法人徳洲会 福岡徳洲会介護センター 通所リハビリテーション
当院における短時間通所リハの開設から現在の課
題、今後の展望について
回復期病棟開設に合わせた通所リハビリでの取り組
み 〜 BI・FAIを用いた効果検証〜
【はじめに】高齢化が進む中で生活期リハビリテーションは年を追
うごとに重要になってきている。当法人においても平成24年10
月に1-2時間通所リハ(以下短時間通所リハ)を開始した。【目的】
開設から経過する中でスタッフが考える短時間通所リハの課題の
整理と、利用者アンケートより課題の抽出、今後の展望と共に報
告する。
【方法】
1)
利用者の特徴を電子カルテより抽出 2)スタッ
フへアンケート調査(個別リハ、評価、自主トレ等)
3)利用者へ
アンケートを実施(接遇、
診察、
サービス内容等)
1)〜3)を分析、
課題を抽出した。アンケートおよび研究は当院倫理委員会承認の
もと行った。
【結果】長期通院の外来患者においては計画的な短時
間通所リハへの移行が行えた。利用者(男118 女79)の特徴と
して脳血管疾患の割合が85%、要介護3〜5の方が40%であった。
アンケートから自主トレーニング(以下自主トレ)と評価が課題
と感じるスタッフが多かった。利用者からはサービスに概ね満足
を頂いていると共に、スタッフ同様自主トレの内容に対しご意見
が多かった。
【考察】個別リハ以外のサービス(特に自主トレ)の
充実が不可欠であるとともに、今年度の改定で示唆された「通い
続けるリハビリ」でなく、生活での目標をより明確にし、利用者主
体で自主トレ等獲得できるような関わりが必要となっている。そ
れに対し今後取り組む詳細な評価やアプローチが課題となってき
ている。
【はじめに】当施設の母体である福岡徳洲会病院は昨年回復期病
棟を開設した。退院後の利用者が活用できる施設運営を検討し、
入浴サービスを廃止して訓練のみの利用とした。評価方法や集団・
個別訓練を再考してリハビリテーション(以下リハビリ)に特化
した後、利用者の生活行為の検証を行った。結果、改善が得られ
た為報告する。【方法】対象は平成26年5月から平成27年2月まで
の新規利用者48名とした。内訳は、男性23名、女性25名、要支援
者 は1が10名、2が8名、要 介 護 者 は1が10名、2が6名、3が8名、4
が5名、5が1名、平均年齢74.7±7.7歳、平均利用時間5.6±2.2時間、
平均利用日数2.1±0.9日であった。生活行為の評価として日常生
活動作ではBarthel Index(BI)を、生活関連動作ではFrenchay
Active Index(FAI)を使用し、初回時と3か月後での前後比較を
行った。統計処理はt検定を用い有意水準は5%未満とした。
【結果】
平均で初回時BI82.6±20.8点、FAI10.2±8.8点、3か月後BI84.9±
21.0点、FAI11.4±8.6点であり、共に有意差が得られた。また利
用開始が退院後1か月以内の22名と1か月以降の26名で検証した
結果、BI・FAI共に1か月以内では有意差が得られたが、1か月以
降では有意差は得られなかった。
【まとめ】今回、回復期病棟開設
に合わせリハビリに特化した内容で検証を行った。退院後早期か
ら通所リハビリを利用する事で、より生活行為の向上を図り得る
事が確認できる結果となった。
146
O71-3
O71-4
○谷口理恵(作業療法士)
,白石枝里,秦 里美,佐藤浩二,
岸川正純
○塩釜冬樹(介護福祉士・ヘルパー),瀧村友貴
社会医療法人敬和会 介護老人保健施設 大分豊寿苑
富家在宅リハビリテーションケアセンター
通所リハビリテーションにおけるSPDCAサイクル
を回すシステム構築に向けた取り組み
通所リハビリテーションでのリハビリをADLに定着
させる取り組み〜介護職からの提案と実践〜
【はじめに】平成27年度の介護報酬改定では通所リハビリテー
ション(以下通所リハ)における活動・参加への取り組みが推進
されている。今回当通所リハにおいて、SPDCAサイクルを回し、
自立支援を後押しできるリハ活動に向けたシステム作りを進めて
いる。現状を整理し現在の取り組みを報告する。
【対象と方法】平成26年度に通所リハを利用した287名に対し、リ
ハスタッフによるサービス担当者会議への参加状況を分析した。
またこの対象者のうち、個別リハ加算を算定した利用者167名の
個別リハ内容が心身機能、活動、参加のどの項目に含まれている
かを、通所リハ記録をもとに分析した。
【結果】サービス担当者会議への参加状況は94%がリハスタッフ
以外の参加で、リハ状況の報告は書類での情報提供に留まり、直
接参加は6%であった。また、個別リハ加算の算定者のうち、言語
訓練を含めた機能訓練中心の心身機能の介入83.8%、活動の介入
16.1%、参加への介入0.1%であった。
【考察】結果からSPDCAサイクルを回す体制強化に向けて、サー
ビス担当者会議へリハスタッフが参加する体制構築と、活動・参
加につながるリハ内容の追加と見直し、加えて、リハ効果検証の
ため、定期的に自宅を訪問する体制を強化した。発表ではその成
果も報告する。
【はじめに】通所リハビリテーション(以下通所リハ)の介護ス
タッフ間において、通所リハ事業所でのPT、OT主導のリハビリ
を介護職の立場から利用者のADLの向上、生活目標の達成に結び
付けることを支援したいとの意見が課題として取り上げられた。
そこで介護職として、支援できる生活関連リハビリの提案と実践
を報告する。
【症例】73歳、女性、主介護者は夫、脳梗塞による左
片麻痺、T字杖歩行にて自立、要介護1、入浴のみ一部介助。転倒
防止、筋力強化といった身体不安の払拭から「一人でできること
を増やしたい」といった漠然とした希望があった。
【経過】通所リ
ハ利用開始以来、パワーリハビリ、自主トレーニング、集団体操、
アクティビティー等、総じて意欲的。リハビリ意欲を生活動作に
発展させるために、血圧測定を自ら行い、数値を記入する、自分
の荷物をロッカー等に片付ける、自主トレーニングの設定と準備
を自ら行う等の習慣化を図る。【結果】通所リハ利用時間全ての行
動がリハビリであり、生活動作を自分一人でできるという自信に
よって、具体的な生活目標「店に行き、自分で歩き、衣服を選んで
買いたい」
「人混みの中でも、足元が多少不安でも、自ら気を付け
て歩いて、きれいな桜を見上げたい」という社会参加意欲に繋げ
られたと同時に、家庭においても自分でできる簡単な調理や掃除、
夫との屋外歩行を兼ねた買い物を行うなど、さらなる生活動作の
拡大に結び付けられた。
O71-5
O71-6
○佐藤広隆(作業療法士)1),稲次正敬2),湊 省2),稲次美樹子2),
高田信二郎3)
○吉田直仁(理学療法士)1),佐藤祐一1),荻原久佳2)
1)医療法人凌雲会 老人保健施設昴
2)医療法人凌雲会 稲次整形外科病院
3)独立行政法人国立病院機構 徳島病院
1)医療法人社団健育会 介護老人保健施設 しおん
2)学校法人こおりやま東都学園 郡山健康科学専門学校
明日も行きたいと思う施設を目指して
〜聞き取り調査から「おもてなし運動」の実践へ〜
当施設デイケア利用者における生活の現状と変化
【はじめに】近年通所系サービスが増加する中で、利用者が満足で
きる施設であるためには、スタッフの対応が重要である。聞き取
り調査から利用者のニーズを把握した結果をもとに、当施設での
「おもてなし運動」の取り組みを報告する。
【調査】対象:当施設通所リハビリ利用者30名。平均年齢72.9±
26歳。男性10名、女性20名。平均要介護度2.4。方法:聞き取り
調査。内容:1.事業所を選ぶ際重要視すること。2.利用時に楽し
みにしていること。3.現状の課題と今後期待すること。調査の結
果は、いずれもスタッフや他の利用者との関係など人とのつなが
りに関連した回答が上位を占めた。
【取り組み】上記結果より当施設の「おもてなし運動」を企画した。
「当事業所におけるおもてなし」についてミーティングを重ねた。
おもてなしの精神にのっとり、上記の調査を参考に、
「言葉」
「態
度」
「しつらえ」
「環境整備」等の観点から、それぞれを相手の立場
に立って表し、準備をした。
【考察】
「サービス」が対価を伴うのに対し、
「おもてなし」は対価
を求めず、相手の立場に立つという姿勢や心が重要となる。それ
はただ奉仕するという意味でもない。いつでも、どこでも、誰に
でも、という「サービス」とは異なり、この時、この場所で、この
人にだけといった一期一会の精神、
「個」がそこにある。それゆ
えに利用者側は、単なる介護サービス以上の満足を得られる施設
へつながっていくと考える。
【目的】当デイケアでは介護度重度化予防を目指している。そこ
でより現状を可視化する目的でE-SASを試験的に導入し、当デイ
ケア利用者の活動範囲や生活状況の把握、3ヵ月間の変化を比較・
検討した。
【方法】対象は、当デイケアを利用しており、自己回答が可能で
TUGが測定可能な42名(要支援者22名・要介護者20名)とした。
H27年2月5月の2回にわたりE-SASによる評価を実施し、要支援
者の基準値との比較をした。また、平均値との比較、3ヵ月間での
変化を比較・検討した。統計処理としてwillcoxonの符号付順位
検定を用い有意水準は5%とした。
【結果】基準値と比較し、要支援1では(ころばない自信)
・
(入浴動
作)・(歩くチカラ)・(休まず歩ける距離)、要支援2では(ころば
ない自信)
・
(入浴動作)
・
(歩くチカラ)
・
(休まず歩ける距離)
・
(人
とのつながり)の項目で50%以上が基準値を上回る数値であっ
た。3ヵ月間の変化では、要支援・要介護ともに(ころばない自信)
でのみ有意差がみられた。
【考察】3ヵ月間の比較で、(ころばない自信)でのみ有意差があっ
たことについて、当デイケアでは要支援者にも個別リハを実施し
ており、転倒予防に対しバランス練習を積極的に取り入れるなど、
スタッフの意識の高さがあったのも要因の一つではないかと考え
られる。今後、介護度重度化予防を目指す上で、E-SASを導入す
るメリット・支援プログラムも検討していきたい。
147
O72-1
O72-2
○福元浩二(理学療法士)1),竹内正人2)
○福元浩二(理学療法士)1),竹内正人2),志賀紀美子1),木村一美1),
黒相恭子1),伊賀 健1)
当院通所リハで行われるリハケア・プログラムの緻
密化 第1報〜運動・栄養・QOLの三位一体を考慮
して「E-SASの試験的導入」〜 当院通所リハで行われるリハケア・プログラムの驚
異的な効果 第1報〜基本的ケアにおける特に水分
の重要性〜
1)社会医療法人社団さつき会 袖ケ浦さつき台病院 通所リハビリテーション
2)社会医療法人社団さつき会 総合広域 リハケアセンター
1)社会医療法人社団さつき会 袖ケ浦さつき台病院 通所リハビリテーション
2)社会医療法人社団さつき会 総合広域 リハケアセンター
【はじめに】PTはE-SASを、OTは生活行為向上マネジメントを
進めているが、統合されたプログラムはまだない。当院短時間通
所リハでは、今後「運動・栄養・QOLの三位一体」を考慮したリ
ハケア・プログラムの緻密化を図りたいと考えている。今まで
の活動評価はBIのみとなっており、きめ細かなリハケア・プログ
ラムは提供できていなかった。今回、日本理学療法士協会による
E-SASを試験的に導入したので報告する。
【目的】E-SASによりリハケア・プログラムの緻密化を行う。
【方法】記入・回答が可能な通所リハ利用者72名(男性32名 女性
40名)、平均年齢74.4歳を対象にE-SASを2回にわたり実施する。
その間2ヶ月での全体・介護度別・男女別・年齢別の比較を統計
学的に行う。
【結果】介護度別では要支援者で「TUG」の改善を有意に認めたが、
「入浴動作」
「転ばない自信」
「人とのつながり」の改善はなかった。
E-SAS項目の「休まず歩ける距離」
「生活の広がり」で改善が見ら
れるも、統計的有意差は認められなかった。
【考察】ICFで考えると、
「基本動作」の改善が一部、
「活動」では
一部改善するも有意差なく、
「参加」や「背景因子」では改善もな
かった。今後は、1)栄養評価や心理・社会面でのQOL評価を加え
ることで、2)参加へのアプローチをするなど、3)個人的な背景因
子を考慮したプログラムの緻密化を図りたい。
【はじめに】当院短時間通所リハで行われるリハケア・プログラ
ムは、ICFに対応した1)基本的ケア、2)自立支援、3)その人らし
さの支援の3つからなる。基本的ケアは1)水分、2)運動・活動、3)
栄養・食事、4)排泄の4つからなる。今回、水分の重要さを検討
する。
【対象】デイケア開設後1年の間に関わった全症例89名
【方法】水分摂取量と歩行量の初期、3か月後、6か月後を測定する。
認知機能としてHDS-R、バランス能力として片足立ち、歩行機能
としてTUG、全身的体力として握力の初期、3か月後、6か月を計
測する。また介護度維持・改善率、介護度改善度を出す。
【結果】水分摂取量は829⇒1230⇒1600ml、歩行量は1834⇒3892⇒5754
歩と増加。HDS-Rは14.7⇒17.8⇒20.1点、片足立ちは7.5⇒8.5⇒9.0秒、
TUGは17.2⇒13.8⇒10.3秒、握力は20.7⇒21.5⇒22.4Kgと改善した。介
護度維持・改善率は81.4%であり、平均1.45の介護度改善であった。
【考察】水分摂取量は、初期には脱水傾向あり、その後脱水の改善
と共に、1)身体の活動性の向上(バランス能力、歩行機能、歩行量
など活動性、全身的体力の向上)と、2)意識の覚醒度の向上(認知
機能の向上)などが改善した。水分は、要介護度の大幅な改善の
ベースになったと考えられた。基本的ケアにおける水分は非常に
重要である。
O72-3
O72-4
○谷口貴子(理学療法士)
○畑中亜美(理学療法士),植田明子,櫻田教夫,中谷玲二
医療法人社団甲友会 西宮協立デイケアセンターほほえみ
医療法人社団洞仁会 洞爺温泉病院 リハビリテーション課
リハビリテーションマネジメントの充実
〜通所リハビリテーションでの導入と実際〜
当院通所リハ利用者に対する生活健康記録表の紹介
平成27年度介護報酬改定にて、
「地域包括ケアシステム」の構築
に向けた取り組みの一つとして、活動と参加に焦点を当てたリハ
ビリテーションの推進が明示された。また、その中でも、介護保
険分野でのリハビリテーションでは「心身機能」
「活動」
「参加」の
要素にバランスよく働きかける効果的なリハビリテーションの提
供を推進し、リハビリテーションマネジメントの充実を図ること
が求められている。当施設は、短時間型と一日型の通所リハビリ
2事業所を運営している。契約数は、合計約250名。要介護度は、
要支援1〜要介護5まで幅広くご利用いただいている。以前より、
リハビリテーションの質向上のため、必ず利用前自宅訪問を実施
し、積極的な担当者会議への参加、必要に応じて自宅訪問指導を
推進してきたが、平成27年4月の改定を受け、さらなる充実を図
るためSPDCAの流れを導入するため、整備した。変更後2ヶ月の
実績では、計14名がリハビリテーション計画を見直し、マネジメ
ント加算2を算定することとなった。今回は、当施設でのリハビ
リテーションマネジメント充実に向けての流れや、医師からの説
明、利用者、家族、ケアマネジャーなどとのリハ会議開催などの
取り組みを、若干の症例を交えて紹介する。
【はじめに】当院では通所リハ利用者に対し定期的な運動機能評
価に加え、H26年4月より利用者の心身及び健康状態を把握でき
るよう簡易的な生活健康記録表(以下、表)を作成、活用している。
H27年3月までの1年間の結果も合わせて紹介する。
【方法】対象は通所リハ利用者40名。調査項目は利用者の生活上
の問題点として挙がりやすい、転倒、食欲、食事や水分のむせ、
睡眠、心配事、体調とした。また簡易に聞き取れるよう3段階で
チェックをつける方法を取り、毎月1回、介護職員が聞き取りを
行った。
【結果】1年間で38名が何らかの項目に問題があるとした。各項目
では28名が転倒した、しそうになったと回答し、24名が食事や水
分でむせる、たまにむせると回答した。また利用時の観察や評価
から問題がないと判断していても自覚的には問題があると回答す
る場合があった。問題があった項目については状況を詳細に聞き
取り、必要に応じセラピストによる再評価や訓練の強化、訪問指
導、家族や他職種と連携を行った。
【考察】表の活用により、運動機能以外の利用者個々の生活や心身
状況が把握しやすくなったと考える。利用者の日常の様子を細や
かに観察、評価をすることは重要であるが、普段の観察や評価と
一致しない項目もあり、この表を併用していくことで生活全般に
おける問題点の見落としを無くし早期対応に繋がると考える。
148
O72-5
O72-6
○阿保涼子(理学療法士)
,伊藤貴史
○大井 亮(理学療法士)1),花岡真史2)
医療法人社団苑田会 苑田会リハビリテーション病院
リハビリテーション科
1)JA佐久浅間 生活部 介護福祉課 (JA長野厚生連小諸厚生総合病院より出向)
2)JA佐久浅間 生活部 介護福祉課 (JA長野厚生連佐久総合病院より出向)
当院通所リハビリ利用者の満足度調査について
〜地域包括ケアシステムを視野に入れて
通所介護の居宅訪問におけるリハビリテーション専
門職と現場職員との連携
【はじめに】当院通所リハビリは平成26年4月に開設し、平成27年
5月現在、利用者数42名となっている。今後の運営に反映させて
いくために今回、アンケート調査を実施した。
【対象および方法】
対象は平成26年12月現在の利用者16名で、14名から回答を得た。
なお、本調査の趣旨は説明し同意を得た。調査は1.リハビリ・自
主トレの内容、2.送迎の時間・対応、3.利用時間、4.利用頻度、5.ス
タッフの対応、6.担当者の対応・技術、7.利用料金、8.施設・設備
の8項目を、質問紙を用い、5段階のリッカード尺度で行った。【結
果】満足度(とても満足・やや満足の回答率)は、スタッフの対応
が93%、担当者の対応・技術が86%、送迎の時間・対応が79%、
リハビリ・自主トレの内容、利用料金が71%、利用時間、利用頻
度が57%、施設・設備が50%であった。
【考察】今回の調査の傾向
として、スタッフ・担当者の対応・技術等、ソフト面では高い満
足度を得ているが、施設・設備等、ハード面については低い結果
となった。今後さらに高い満足度を得るためには、利用者とのか
かわりを大切にしながら、自主トレ・リハビリの内容、施設・設
備を更に充実したものにしていく必要がある。今年度の介護保険
改訂では、通所リハビリは維持ではなく、住み慣れた地域で充実
した生活を送るためのステップとして位置づけられている。当院
では「次につながる終了」を目指してリハビリに取り組んでいこ
うと考えている。
JA佐久浅間の介護福祉事業はJA長野厚生連病院へ出向を依頼し、
2005年より小諸厚生総合病院、2013年より佐久病院から1名ずつ
の理学療法士が出向している。出向した理学療法士は5ヵ所の通
所介護事業所で算定している個別機能訓練加算Ι、個別機能訓練
加算Ⅱ、運動器機能向上加算の業務に携わり、個別機能訓練加算
Ι、運動器機能向上加算ではマネージメントと加算算定者の全体
把握、個別機能訓練加算Ⅱでは算定要因として働いている。
H27年度介護報酬改定において、個別機能訓練加算に「利用者の
居宅を訪問し、生活状況を確認する」ことが算定用件として加わ
り、JA佐久浅間では2種類の居宅訪問を行っている。まず、理学
療法士と通所介護職員が同行して居宅へ訪問し、居宅の生活状
況の確認、目標と課題の抽出、アプローチ方法を検討。次に、通
所介護職員が3ヵ月ごとに目標と課題の状況変化を把握する居宅
訪問を行っている。この2つの居宅訪問のシステムを導入したこ
とにより、少ないリハビリテーション専門職の配置でも現場のス
タッフと連携を図り、居宅の生活をふまえた機能訓練とケアを提
供できる体制へと変わった。今回、JA佐久浅間の居宅訪問システ
ムの内容と、居宅訪問により居宅の生活をふまえた通所介護のケ
アへと変化した症例を報告する。
O73-1
O73-2
○江添秀美(看護師)
,江藤日呂子,吉越美佳,今村由里子
○高橋 亮(理学療法士)1),藤田和樹2),川端 香2),小林康孝3)
福岡リハビリテーション病院 看護部
1)福井総合病院 リハビリテーション課
2)福井医療短期大学 リハビリテーション学科
3)福井総合病院 リハビリテーション科
脳卒中後に経管栄養を受けている患者の便秘に対す
る腹部マッサージ法の効果
立位と膝立ち位における前頭前野の脳血流動態に関
する検討
【はじめに】当病棟では、経管栄養患者の便秘が多く、下剤の使用
や便処置を頻繁に施行しているが、便秘に有効とされる腹部マッ
サージを行う頻度が低いのが現状である。今回、腹部マッサージ
に着目し、脳卒中後の経管栄養を受けている患者を対象に、個別
的に検証を行い、自然排便を促し下剤使用を最小限にしていきた
いと考え、本研究に至った。
【対象】当病棟に入院中の経管栄養を
受けている患者5名【方法】先行研究を参考とし、1日1回オリーブ
バージンオイルを使用し施行。実施前4週間と実施中4週間の排
便量と下剤の使用回数を観察記録した。
【結果】5名中1名が排便
回数・排便量が増加した【考察】今回5名中2名は2〜3日に1回と
いう排便パターンがみられるようになった。継続的な腹部マッ
サージにより、腸管の蠕動運動が促進され規則的な排便に繋がっ
たのではと考える。効果があった1名の特徴として痩せ型で皮下
脂肪が少なく十分に腹部マッサージによる圧をかけられたこと
や、比較的若年であったことから腸蠕動運動が保たれていたと考
えられる。また、マッサージ終了後、再び便秘傾向となり追加処
置が増加したことからマッサージによって排便が促された可能性
が高いといえる。今回の結果より、対象者の体型、体質、年齢、施
行時間で腹部マッサージが有効に働く傾向にあると考えられる。
今後更に対象者を増やし、個々人にあった方法を確立し、現場に
活かしていきたい。
【目的】リハビリテーションの分野において、膝立ち位は膝・足関
節の影響を除外し、安全面の確保が得やすいが、その姿勢制御時
の脳活動は明らかにされないまま多用されている。本研究の目的
は、機能的近赤外分光法(fNIRS)を用い、立位と膝立ち位におけ
る前頭前野の脳血流変化について検討することである。
【方法】対象は健常成人右利き男性10名(年齢23.2±4.0歳)
。課題
は立位と膝立ち位の2条件とし、その間の脳血流変化をfNIRS(島
津製作所製、SMARTNIRS)を用いて測定した。測定プロトコル
は安静20秒-課題30秒-安静20秒を1セット、3連続課題とした。測
定部位は国際10-20法に基づき、両側前頭前野を覆うよう3×7の
全32チャンネル(ch)を装着した。関心領域は左右前頭前野背外側
部(DLPFC)とし、左右7chずつとした。脳賦活指標は、3セット
の酸化ヘモグロビン(oxy-Hb)値を加算平均した後、安静5秒間の
平均値と課題5秒間の平均値の差を算出し、2条件間で比較した。
統計処理はWilcoxon signed-rank testを用い、有意水準は5%と
した。
【成績】立位に比べ膝立ち位において右DLPFCに相当するch1、7、
20でのoxy-Hb量の有意な増加(p<0.05)を認めた。【結論】膝立
ち位では、身体の揺らぎに対し注意機能を積極的に用いた結果、
右DLPFCが賦活したと考える。
149
O73-3
O73-4
○下川幸蔵(作業療法士)1),堀 敦志1),幸 信歩1),梅谷幸代2),
村山順一3)
○梅谷幸代(作業療法士)1),下川幸蔵2),幸 信歩2),堀 敦志2),
中森健太3)
1)福井医療短期大学 リハビリテーション学科 作業療法学専攻
2)福井病院 リハビリテーション課 作業療法室
3)福井病院 精神科
1)福井病院 リハビリテーション課 作業療法室
2)福井医療短期大学 リハビリテーション学科 作業療法学専攻
3)福井病院 精神科
バーチャルリアリティゲーム実施時の脳血流量の違
い−統合失調症患者と健常人の比較−
早 期 介 入 を 目 指 し た、病 棟 で の 作 業 療 法 の 展 開 〜処方までの日数から考える〜
【はじめに】近年、統合失調症の病態は、神経発達が阻害され、前
頭前野・視床・小脳ネットワークにおける神経細胞間の統合異常
が生じ精神症状や認知障害が発生するとされており、運動学習を
阻害することがある。また、バーチャルリアリティゲーム(以下
VRG)は、認知機能や運動技能に関連する脳の領域が活性される
など、双方に作用するとされている。今回統合失調症患者と健常
人でのVRG実施中の脳血流量の違いについて調査した。
【方法】ICD-10により、統合失調症の診断を受けた患者11名と健
常人4名のうち本研究の目的・内容を十分に理解できる者を対象
とし、30秒間休息の後、60秒間VRGを実施しその後30秒間休息
をする。その時の脳血流量を近赤外線効能機能イメージング装置
にて測定する。その結果を独立サンプルのt検定を用いて比較検
討した。
【結果】60秒間のVRG実施時とその後の30秒間の休息時の脳血流
量は、健常人群に比べ統合失調症群は、運動野に相当する領域の
脳血流量が有意に低下していた(p<0.05)
。それ以外の部位では
健常人群と有意な差は認めなかった。
【考察】統合失調症患者では、VRG実施中の運動実行系の脳血流量
が低下しており、運動学習を阻害する要因である可能性がある。
また、今回の脳血流量の測定は、短時間でかつ単発的介入であり、
今後測定時間の延長及び継続的な介入の効果についても検証して
いきたい。
【はじめに】精神科医療では、地域生活への復帰を目標とし、早期
に作業療法(以下OT)を行うことが重要とされる。しかし、作業
療法士が未処方の患者の様子を知る機会は少ない。このことが、
OT早期介入の阻害因子であると考えた。そこで今回、病棟で新
規OTを実施することで、
「入院からOT処方までの期間(以下、処
方前期間)」の短縮が図れると仮説した。
【方法】新規OTを開始した時期は、1病棟では平成25年5月〜、2病
棟では6月〜であった。それぞれ翌年2月までの処方前期間と処
方件数を調査し、実施前H24年と比較した。
【結果】処方前期間は1病棟は平均12.3日から11.2日に短縮し、2
病棟は13.9日から17.9日に延長した。処方件数は1病棟は10件か
ら30件に、2病棟では30件から59件に増加した。
【考察】病棟でのOT実施は、未処方の患者の様子を早期に知り、作
業療法士から医師に処方を依頼するなど、医師や病棟職員との連
携を可能とした。また、見学・試し参加が自由なことが参加のし
やすさに繋がり、病状の問題から処方が見送られていた患者も処
方され、処方件数が増加した。しかし、2病棟では前要因に加え、
急性期・閉鎖病棟という特性が関与し処方前期間が延長したと考
える。今回のように枠のある活動では、要安静期離脱を見極めて
参加を促すには限界が感じられ、より個別での対応が重要である
と考える。
O73-5
O74-1
○幸 信歩(作業療法士)1),下川幸蔵1),寺前 綾2),梅谷幸代2),
岩本和典3),堀 敦志1),石田圭二1),村山順一4)
○土中伸樹(理学療法士),原田英昭
長期入院患者のライフヒストリーと作業療法介入の
意義 −2つの事例から−
パーキンソン病Pisa徴候に対する新たな理学療法の
検討〜シーティング技術とロングブレス呼吸練習に
より改善した症例〜
1)福井医療短期大学 リハビリテーション学科 作業療法学専攻
2)福井病院 リハビリテーション課 作業療法室,3)福井病院 看護部
4)福井病院 精神科
養和病院 リハビリテーション課
【目的】パーキンソン病Pisa徴候に対してティルト・リクライニン
グ車椅子(以下:TR車椅子)による姿勢調整とロングブレス呼吸
練習を利用した新たな治療法により外来リハで改善した症例を報
告し検討を加える。
【症例】女性 年齢70歳台後半体重40kg UPDRS総点26点 2014
年5月当院外来リハに紹介。評価:Hoehn-Yahr分類2度〜3度、座
位時の前額面体幹線(胸骨上端と左右上前腸骨棘の中点を結んだ
線)右側屈角度9°。歩行時右立脚中期の前額面体幹線右側屈角度
11°。歩行スピード11.88秒/10m。
【方法経過】2014年5月6月一般的なパーキンソン理学療法プログ
ラムを週に2回60分実施。著変なく7月よりプログラムを変更、左
L1〜 L5傍脊柱筋に低周波治療、TR車椅子(T20°、R110°)上、左
側臥位にてロングブレス呼吸練習( 10回×4セット)
。栄養指導開
始。
【経過】6か月後 体重47kg UPDRS総点7点。前額面体幹線座位 右側屈角度2°。歩行時右立脚中期の前額面体幹線右側屈角度1°。
歩行スピード8.95秒/10m。外出が増加。
【考察】パーキンソン病姿勢障害の原因は、神経系の直接的障害だ
けでなく筋骨格系の間接的障害、特に体幹のインナーマッスルの
筋力低下を起因とする重心軸のズレも関与するのではないかと推
察する。この方法は首下がり症候にも効果があり試みるべき治療
法の一つと考えられる。
【はじめに】平成26年厚生労働省は精神科病院の病床数削減と患
者を1年以内で退院させ、地域へという方針を決定したが、現実的
には長期入院者は未だ多い。そこで、長期入院患者のライフヒス
トリーに焦点を当て、生活に作業療法(以下OT)がどのように影響
しているかを事例検討した。
【方法】最長期入院者を選択し、OT
介入の有無から2名をあげた。50年間のカルテと当時の状態を知
る職員のインタビューから、入院生活の状態患者をまとめ、ライ
フヒストリーを読み取った。
【事例】A氏。70歳男性、
統合失調症。
入院歴40年。OT介入歴33年間。FIM103点。B氏。71歳男性、統
合失調症。入院歴40年。OT介入なし。FIM46点。
【結果】OTの
介入があるA氏は現在もある程度の精神機能が維持され、自分の
意志を他者に伝達ができている。OT介入が無いB氏はコミュニ
ケーションパターンが限られ、自分の意志が伝達し難い状態であ
る。【考察】2つの事例から、長期入院を余儀なくされている患者
に対し、OTが介入することで精神機能低下の予防と、院内生活に
おける生活の活力を再構築できると考えた。また、残された人生
を意味ある時間へと転換させていくことにつながり、QOLおよび
QODの実現が図れる可能性がある。
【結語】今後は、長期入院患
者のライフヒストリーに可能な限りの本人のナラティブを加え、
OTが介入する意義を考察していきたい。
150
O74-2
O74-3
○壹岐英正(理学療法士)1,2),山田晃司2,3),寺西利生2,3),
冨田昌夫2),渡邊靖之1),澤 俊二3,4)
○大河原一真(作業療法士)
1)医療法人瑞心会 渡辺病院 リハビリテーション科,2)藤田保健衛生大学
医療科学部 リハビリテーション学科,3)藤田保健衛生大学大学院 保健学研究科
4)金城大学 医療健康学部 作業療法学科
医療法人常磐会 いわき湯本病院
Bedridden patientsへ の 運 動 療 法 が 唾 液 中 の
Cytokine分泌に与える影響
非接触型睡眠計を用いた睡眠位相評価〜睡眠中の体
動強度より推定〜
【はじめに】近年、睡眠中の体動と睡眠の深さは密接に関連してい
ると先行研究で報告され、医療現場において簡易的に睡眠位相評
価を行った例が報告されている。今回、虚弱高齢者、有疾患者に
対し、非接触型睡眠計を用い簡易的に睡眠位相評価が可能か検討
する。
【方法】某病院入院中の患者20名(離床している群、離床していな
い群各10名)及び、健常成人10名の夜間の睡眠位相評価を行った。
測定機器は睡眠計(オムロンヘルスケア社製HSL-102)を用い、体
動強度を測定し、専用ソフトSleep Design Viewerでデータを抽
出した。統計処理は統計ソフトR(Ver.2.8.1)を用いて、対応のあ
る差の検定を実施した(P<0.01)。
【結果】算出された体動は(平均値±標準偏差)、健常成人( 11.5±
23.4)、離床している群( 12.6±28.5)、離床していない群( 47.4±
24.4)となった。いずれの群間においても有意差が見られた。
【考察】睡眠周期は加齢による影響、日中の活動性による影響が多
く報告されている。今回、活動性から対象者の抽出を実施し、群
間全てに有意差が見られる結果となった。非接触型睡眠計におい
て虚弱高齢者の睡眠位相評価が可能であることが示唆された。
【まとめ】経時的な睡眠位相が追従することが可能であったため、
他の要因との関連を見ることが今後、非接触型睡眠計の妥当性検
討に必要であると考えられる。
【はじめに】寝たきり者(Bedridden patients:Brp)は医療・介
護関連肺炎に罹患しやすいため、Brpの免疫力向上が急務である。
一方で運動による免疫改善効果については諸家よる報告がみられ
るが、Brpに対する免疫改善効果についての報告はない。また免
疫応答測定について、安全性が高く非侵襲的である唾液を検体と
した測定が可能との報告がある。本研究は、Brpへの運動療法が
唾液中のCytokine分泌に与える影響について検討を行った。
【対
象および方法】発症後6ヶ月以上経過したBrp 21名を対象とし、
運動療法は臥位および坐位での自動介助運動を約20分行った。
効果判定は、運動負荷量として収縮期血圧、脈拍、呼吸数を、免疫
学的検査としてInterleukin
(IL)のうちIL-6、IL-8、IL-15を測定し
比較検討した。さらに14名の検体を用い、誤嚥性肺炎の起因菌で
ある肺炎桿菌などに関与するIL-17について免疫学的検査を行い
比較検討した(p<0.05)。なお本研究は、藤田保健衛生大学疫学・
臨床研究倫理審査委員会において承認を得た(承認番号13-206)
。
【結果】運動負荷量は介入前と比較し有意に増加し、IL-6、IL-8、
IL-15において介入前と比較し介入後に有意な増加を認めた。さ
らにIL-17においても介入前と比較し介入後に有意な増加を認め
た。【考察】今回の結果よりBrpに対する運動療法は免疫改善効果
があり、さらに誤嚥性肺炎の予防および自然治癒誘導に関与する
可能性が示唆された。
O74-4
O74-5
○播磨勇弥(理学療法士)
,田中 仁
○坂本義拡(作業療法士),藤原正盛,清水淳也,大林真由美,
大垣 樹,佐藤大介,清水麻美,三宅沙織,伊藤圭祐,
岩村優輝,富永正吾,夏目重厚
株式会社ルピナス リハビリ訪問看護ステーション ルピナス
医療法人榮昌会 吉田病院附属脳血管研究所
訪問リハビリテーション介入患者における自主訓練
実施状況調査〜自主訓練指導方法との関連〜
脳 卒 中 患 者 上 肢 に 対 す る 全 身 振 動 刺 激(Wholebody vibration;WBV)を用いた効果の検証
【はじめに】近年、WBVを用いた脳卒中患者下肢への介入による
改善報告があるが、上肢に対しての報告は少ない。今回、上肢に
対して介入したところ効果があったので以下に報告する。
【症例紹介】80歳代男性、左視床梗塞。右上肢麻痺軽度、感覚障害
中等度認め、書字は拙劣であった。
【方法】WBVの直前、直後の評価を行った。WBVの手順は椅坐位
で手掌を前方にあるPower Plate(プロティア・ジャパン社製)の
台上に接触させ振動刺激を行った。刺激条件は周波数30Hz、振
幅4-8mm、5分間とした。
【結果】WBV直前→直後、Fugl-Meyer Arm score65→65/66点、
上肢振動覚右15→15秒、2点識別覚右測定不可→13mm、動的2点
識別覚右測定不可→13mm、Purdue Pegboard右5→6本であっ
た。書字は形態の崩れが減少し早く書けるようになった。
【考察】Dellonは手による物体認知や巧緻機能に動的触覚が重要
で、また動的触覚は順応の速いマイスネル小体で感知され、30Hz
の振動で最も興奮すると述べている。今回WBVの刺激がマイス
ネル小体を興奮させ、求心性に中枢へ働きかけられたことで物体
認知が向上し操作性が改善したと考える。今後、効果持続時間や
WBVに訓練を併用させるなど様々な効果について症例を積み重
ね、WBVが有効な治療ツールとなるようさらなる臨床研究を進
めていきたい。
【対象・方法】当事業所で訪問リハ介入している62名の対象者に
対して運動変容ステージと在宅運動セルフ・エフィカシー尺度
(以下HEBS)を用いて自主訓練の実施状況とセルフ・エフィカ
シーについて調査を実施した。セラピストに対して自主訓練指導
時の回数設定・頻度設定・メニュー表作成・実施状況確認の有無、
訓練項目数についてアンケート調査を実施した。各項目をそれぞ
れ二群に分け運動変容ステージとHEBS得点の違いに有意差があ
るか比較検討した。
【結果】メニュー表作成実施群と非実施群の比較では、運動変容ス
テージにおいて実施群が有意に高い傾向を示した(p<0.05)
。訓
練項目数1項目群と2項目以上群の比較では、運動変容ステージに
おいて2項目以上群が有意に高い傾向を示した(p<0.05)
。同様
にHEBSにおいても2項目以上群が有意に高い傾向を示した(p<
0.01)
。
【考察】メニュー表作成実施群の運動変容ステージが有意に高い
傾向であった理由として、作成により実施忘れや内容が分からな
くなることの防止、視覚的な反復により自主訓練に対する認識が
高まることなどが影響していると考えられ、メニュー表作成の重
要性が示唆された。訓練項目数の設定では自己効力感や意欲が低
い対象者に対しては実施を継続させるために負担が少ない1項目
で設定していたことが考えられ、2項目以上群の運動変容ステー
ジとHEBS共に有意に高い傾向であったと考えられる。
151
O74-6
O75-1
○山口日出志(医師)
,金子貞男
○峯廻攻守(医師)
柏葉脳神経外科病院 脳神経外科
医療法人渓仁会 札幌西円山病院
脳神経外科専門病院におけるニューロリハビリテー
ション
東日本大震災・原発事故被災者4年間の軌跡
〜浪江町町民の場合〜
当院は脳卒中、脳腫瘍の外科治療を主とした急性期治療を行っ
ている脳神経外科専門病院である。同時に回復期リハビリテー
ション病棟を有し、段階的患者管理方式による病床管理を行い、
急性期から回復期までシームレスなリハビリテーションを掲げ
てきた。今回我々は、脳卒中患者に対して急性期から回復期まで
の治療を完結させるため、ニューロリハビリテーションを導入
した。当院の取り組みと展望を報告する。当院では、脳卒中患
者に対し可及的早期からリハビリを開始し、まず座位耐性を確立
し、ミラーセラピーや治療的電気刺激などを行い残存する皮質脊
髄路の興奮性を効果的に刺激する。次に、課題指向型訓練、随意
運動介助型電気刺激装置MURO solutionを用いた上肢訓練、ロ
ボットスーツHALを用いた歩行訓練を行い皮質ネットワークの
再組織化を促す。重症例ではMURO solutionやHALによる運動
関連領域へのsensory feedbackを重要視している。さらに、シ
ナプス伝達を効率化するため、課題指向型訓練の継続やTransfer
packageを行う。ただし、現状では最重症例の改善には限界があ
り、neuromodulatorとしてtDCSやrTMSの導入を考慮している。
将来的には、脳卒中後の機能回復にも再生医療が行われると予測
され、真の意味での機能再生にはニューロリハビリテーションは
必須と思われ、さらに、機能回復から機能再生に向けたリハビリ
テーションへのパラダイムシフトが起こると考えられる。
【目的】震災・原発事故4年を経、国民が被災者の真の情報を知る
機会は皆無。演者は作年10月浪江町仮設津島診療所に出向、真の
現状を知り、仲間に情報を発信の為、本演題を報告。【対象・方
法】対象は浪江町民。方法は町健康保健課作成の「健康白書」を
報告。【結果】1)
. 検診受診者は震災後、体重が増加、血圧値上昇、
糖尿病型・脂質異常者割合も増加し循環器疾患発症リスク増強。
2)
. 高血圧症・糖尿病型・脂質異常・肝機能異常新規発症は震災
前体重と震災後体重増加が関連。3)
. 避難1年後は周産期疾患・
循環器疾患・筋骨格疾患が上位、3年後は悪性新生物・精神行動
障害・循環器疾患が上位。その変化は長期避難生活下のストレス・
精神の不安定・運動不足・体重増加・慣れない避難先での医療機
関探し等、疾患の早期発見の遅れが重要な一因。【考察】1)
. 町は、
町民の生涯に渡る検診体制確立と医療費無料制度化を国に対し要
望、しかし国は未だに対応せず。2)
. 被爆者援護法と同等の法整
備と健康手帳公布の要望を双葉郡一丸となって実施すべきと呼び
かけてきたが足並みは揃わず、今後共双葉郡のみならず県内避難
市町村一丸となり県・国と対峙すべきである。3)
. 更には住民主
体の活動が最も必要且つ重要である事は、広島・長崎の歴史的経
験が示唆。4)
. 全国の医療従事者は、健康を守る視点から震災・
原発事故被災者の立場に立ち、被災地の現状を正しく把握した上
で、継続した支援に務めるべきである。
O75-2
O75-3
○川口広志(理学療法士)1),山田智子2),中塚 恵2),上野勝弘1),
福田優子3),小嶋晃義1),古出隆士3)
○高橋英士(理学療法士)1),杉山政隆1),井戸哲史2),西田和美1),
角田真澄1),西川 優1)
連合弁膜症術後の経過が不良であったが回復期リハ
ビリテーションにより自宅復帰に至った高齢者廃用
症候群の一症例
回復期リハビリテーション病棟における2型糖尿病
患者の日常生活活動量と血糖コントロールの傾向調
査
1)西記念リハビリテーション病院 リハビリテーション科,2)西病院
リハビリテーション科,3)西記念リハビリテーション病院 循環器内科
1)医療法人名南会 名南ふれあい病院
2)名南介護老人保健施設 かたらいの里
【背景】開心術を要する高齢者では、手術の適応や周術期合併症に
苦慮するのみならず、術後リハビリテーション(リハビリ)が必要
となる。我々は連合弁膜症に対する開心術後、未抜管かつ経腸栄
養の状態で回復期リハビリを開始し自宅退院可能であった一例を
経験したので報告する。
【症例】88歳女性、重症大動脈弁狭窄症および僧帽弁閉鎖不全症に
対して大動脈弁置換術、僧帽弁形成術を施行された。術後人工呼
吸器離脱困難であり気管切開に至った。呼吸器は離脱し術後70
日目で回復期リハビリ病院である当院へ転院した。入院時気管内
チューブ装着し経鼻経管チューブによる経腸栄養であった。痰の
貯留による無気肺を認め、機能的自立度評価表44点、徒手筋力テ
スト2〜3、セルフケア全介助、認知機能検査29点であった。嚥下
訓練、抜管訓練、モビライゼーションを開始し、可動域訓練、身体
持久力訓練、トイレ動作訓練等を行った。第55病日3食経口摂取
可能となり第82病日抜管した。他者に依存的でリハビリの進行
は遅かったが、自宅退院を動機付けとして進めたところ、シルバー
カー歩行や伝い歩きが可能となり、トイレ動作、食事は自立し、
家屋改修と家族の介助により第102病日自宅退院した。
【考察】手術リスクは低く開心術の適応であったが術後の回復が
悪く長期のリハビリを要した。連日のリハビリや精神賦活、家族
の協力等が総合して自宅退院できたと考えられた。
【目的】2型糖尿病の運動療法は日常生活活動(以下ADL)に応じた
身体活動量(以下活動量)増加による血糖コントロールの安定化と
同時にエンパワーメント向上を図る必要がある。一般的にADL自
立度や活動量が高い場合に血糖コントロールが良好な改善経過を
辿るとされ、年齢に応じた運動負荷量が掲げられているが、諸疾
患を呈する糖尿病患者に対する活動量の指標は未だ定かでない。
そこで、糖尿病患者の活動量と血糖コントロールの関係にどの様
な傾向があるかを明確化し、回復期リハビリテーション病棟(以下
回復期病棟)における身体活動に基づいた患者教育に繋がるので
はないかと推論した。
【対象】2014年10月〜2015年7月までの当院回復期病棟在院患
者。既往歴に2型糖尿病があり、病棟内移動能力が監視以上の者
とした。
【方法】日常生活活動量(総消費エネルギー量・歩数・運
動量)と血糖コントロール(HbA1c、空腹時血糖値、食後2時間血糖
値)の各平均値を指標とし、測定機器はライフコーダGS(株式会社
SUZUKEN 生活習慣記録機)を使用して入院月から3ヶ月間の各1
週間を計測した。群分けは「インスリン群」、「経口薬群」とした。
【成績・結論】本研究を通し、回復期病棟入院中における活動量の
変化が血糖コントロールに与える要因の傾向を報告する。
152
O75-4
O75-5
○眞砂 望(理学療法士)1),成田 渉2),森脇美早1),長谷 斉2)
○小平めぐみ(その他)1),植田裕太朗2),竹内孝仁1)
1)社会医療法人祐生会 みどりヶ丘病院
2)社会医療法人祐生会 みどりヶ丘病院脊椎脊髄外科センター
1)国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科
2)国際医療福祉大学大学院 博士課程
初期の腰部脊柱管狭窄症は指導でどこまで改善でき
るのか?〜マッケンジー法を用いた取り組み〜
特別養護老人ホームの肺炎率とケアの実態調査
みどりヶ丘病院では脊柱管狭窄症の初期ではマッケンジー法の理
論を用いて自主体操と良姿勢保持、日常生活動作指導を徹底して
いる。結果的に徒手的介入はほとんど行わずに臨床症状が軽減す
る症例が多かったため、その詳細について報告する。
【方法】日本整形外科学会腰痛疾患質問票(JOABPEQ)とViasual
analog scale
(VAS)を用いて経過を追跡できた30例(男性10例、
女性20例)についてその効果と指導した内容について検討した。
改善例と悪化例については一部画像でも評価した。
【成績】改善例は疼痛関連障害が最も多く16例、次いで歩行障害
が12例と多く改善し、腰椎関連障害と心理的障害は最も少なく5
例しか改善しなかった。VASは腰痛の軽減は6例、下肢痛は11例、
下肢のしびれは9例で改善を認めた。またいずれの尺度でも改善
が見られない症例は3例おり、そのうち2例は腰痛の強さが開始時
よりも増強していた。体操指導は臨床症状が改善するものを評価
から抽出して指導したが、指導された体操の種類としては伸展運
動が18例と最も多かった。体操している状態を画像評価すると
改善例、悪化例ともに画像上で検証できた。初期の脊柱管狭窄症
は徒手介入なしでも臨床症状が改善できた。徒手介入との併用で
さらなる効果が期待できるし、依存傾向のある例では指導のみで
も効果は期待できることがわかった。
【目的】平成27年度から介護保険基本報酬が引き下げられた。特
別養護老人ホームが生き残るには、稼働率が鍵となる。その稼働
率を引き下げる要因は入院である。死因の第3位に上がる「肺炎」
に注目し、特養の入院の有無とケア状況の実態を明らかにする。
【対象】2013年6月講習会参加施設、特養ホーム170施設12,758
名(男女2,601-10,157)
(回収率93.9%)。平均年齢86.1歳、平均
要介護度3.9。
【方法】2013年6月講習会で使用している入所者状
況表をもとに、入所者属性、ケア状況(水分量、食事量、運動量、
食事形態等)
、過去1年間の肺炎、喀痰吸引の有無について調査し
た。倫理的配慮:本研究は個人情報保護規定をもつ老施協の協
力のもと行われた。【結果】過去1年間の肺炎入院率は平均7.7%
( 0−42%)、喀 痰 吸 引 率 は 平 均6.9%( 0-40%)。 肺 炎 入 院 の 有 無
と吸引の有無には関連が認められた。1日の平均水分摂取量は、
1173.4ml±402.23。平均食事摂取量は、1,293kcal±253.7であっ
た。肺炎入院あり群となし群の2群間の比較では、1日の水分摂取
量、食事量、離床時間、屋内歩行距離、1ヶ月の外出回数に有意な
差が認められた(Mann-Whitney検定p<.05)
。 また、肺炎なし
群は、常食、軟飯、椅子座位、食事動作自立、むせなし、義歯良好、
口腔ケア自立、見守り、一部介助に有意に多かった(p<.05)
【考
察】特養の肺炎入院者は、ケアの状況によって発生状況が異なっ
ていた。より活動的な生活を送ることが肺炎入院率軽減につなが
るといえる。
O75-6
O76-1
○松原健太(理学療法士)
,峰松俊寛
○河野徳子(看護師)
長崎県島原病院 リハビリテーション科
西広島リハビリテーション病院
心大血管リハビリテーションの開設から一年
〜実績と地域の特徴について〜
医療依存度の高い患者を在宅介護すると決めた妻へ
の支援〜介護経験のない妻への退院指導を行って〜
【はじめに】心大血管リハビリテーション(以下、心リハ)は心筋
梗塞の再発予防や心不全の改善のみならず、二次予防効果などの
生命予後の改善、精神的効果およびQOLに及ぼす効果も期待でき
る。当院では平成26年6月に心リハを開設した。開設から1年が
経過し、心リハの当院における実績と特徴についてここに報告す
る。
【方法】平成26年6月から平成27年5月までの間に当院に入院し、
心リハが実施された患者について性別、年齢、疾患、リハビリ開
始時Barthel Index(以下、リハ開始時BI)、退院時Barthel Index(以
下、退院時BI)について分析を行った。
【結果】心リハ実施者は43名(男性27名、女性16名、平均年齢77.4
±12.4才)であった。疾患は慢性心不全が最も多く31名であった。
リハ開始時BIは平均54.8±33.8点、退院時BIは平均75.1±38点で
退院時BIの方が有意に高かった(p<0.01)
。
【考察】リハ開始時BIより退院時BIの方が有意に高いことから、心
リハ実施者のADLは向上し一定の効果が得られたものと考える。
また平均年齢は高く、慢性心不全患者が多い。当地域は高齢化が
進んでおり、都市部とは心リハ対象者が異なっている可能性が考
えられる。この件についても比較検討し、報告する。
【はじめに】気管切開・胃瘻造設している患者を受け持った。施
設退院を予定していたが入院三か月頃妻が強く自宅退院を希望し
た。要因は同室の同疾患患者とその家族が自宅退院すると知り、
妻自身頑張れば自宅退院出来ると考えた為である。妻は介助経験
がなく、気管切開や胃瘻に関する知識もない為不安を感じていた。
指導を開始し、退院時には技術習得でき妻からは前向きな発言や
笑顔が見られるまでになった。取り組みを報告する。
【症例】70
歳男性、脳出血術後、気管切開・胃瘻造設あり。ADLはFIM1〜3
レベル、発声困難。妻70歳、専業主婦。二人息子がいるが独立し
現在は二人暮らし。【介入方法・結果】気管切開部及び口腔からの
吸引、胃瘻からの経管栄養、投薬について在宅を想定した手技を
写真付きリーフレットに作成、段階的に指導。日常ケアを通して
妻の不安表出を図りながら訴えの傾聴、時に技術の習得状況に肯
定的評価を行った。また、妻に夜間の介助状況を知って頂く為に
宿泊体験を実施した。結果、妻は一つ一つ丁寧に実施出来るよう
になった。また、実際の介助状況が分かったと発言があった。現
在、訪問看護によると技術は問題なく丁寧に行えていると情報あ
り。
【考察】妻の不安は退院後の生活が想像出来ず、漠然としたも
のであった。技術習得を図りながら肯定的評価を妻へ行うことで
自己効力感が向上し、退院後の生活を想像しやすくしたことで不
安の軽減に繋がったと考える。
153
O76-2
O76-3
○佐藤和男(看護師)
○早坂美津代(看護師),平 美穂
医療法人渓仁会 札幌西円山病院
医療法人社団脳健会 仙台リハビリテーション病院
間欠的導尿が適応になった患者の家族看護
−主介護者の自己効力感を高める支援−
入院時オリエンテーション内容の充実
〜在宅生活を継続するために〜
【はじめに】間欠的導尿が必要になった高齢者が自宅退院をする
ことに不安を感じている家族に対し、主介護者の手技取得のため
自己効力感を高める支援・指導を行った事例を報告する。
【事例】患者80歳代女性右大腿骨頚部骨折人口骨頭挿入術後。血
小板増多症による易疲労や歩行のふらつきがあり見守り介助が必
要。主介護者:長女60歳代、夫と3人暮らし。夜間6回以上の頻尿
のため、日中の活動低下や夜間せん妄を生じていた。薬物療法で
は改善なく、就寝前に導尿を行うことで継続した睡眠を得られた。
自宅退院に向け患者と長女と面談し、長女が間欠的導尿を行う方
針となる。
【実践】H26.5.28〜6.21 指導行程表、指導パンフレットを作成。
導尿モデルによる演習。
「一言カード」を活用した長女へのフィー
ドバックを行う。
【結果・考察】間欠的導尿の手技取得の指導用ツールを工夫し、指
導行程を可視化したことで、統一した指導を実施することができ
た。また、「一言カード」を活用し長女にフィードバックしたこ
とは、長女の不安な気持ちを軽減させ、演習を繰り返すことで「で
きる」という長女の自己効力感を高めたと考える。
「不安だった
が看護師の声かけや笑顔が励みになった」という発言から、継続
的なチームの関わりにより長女がエンパワーされ、自宅退院への
自信へと変化したと考える。
【はじめに】回復期リハ看護は、患者が退院後に在宅生活を継続す
るためには大変重要であり、その指導は入院当初より始まる。こ
れまでの入院時オリエンテーションではリハビリ病棟の役割や家
族の協力の必要性について説明が不十分であった。家族には入院
時から患者の回復状況を見極めての退院に向けた指導を進める必
要がある。そこで入院中に進められる退院に向けての指導や準
備についてパンフレットを使用し内容の充実を図った。【研究方
法】対象:パンフレット使用前後の調査ケース 15名 時間計測
を行ったケース 30名方法:1.家族及び看護師へのアンケート
調査 2.新パンフレットの作成 使用 3.使用前後の家族への
アンケート調査 4.オリエンテーション時間の計測【結果】対象
患者は全員、退院後も何らかの障害が残存し家族のサポートを必
要とする病態であった。しかし前調査では急性期病院で障害残存
の有無やその可能性、予後や退院後の生活について説明を受けた
ケースは0件であった。外泊や家屋調査などの退院準備を行う必
要性については,約半数が知らなかったと回答している。この結
果を受けパンフレットに入院から退院までの一連の実施内容と大
まかな実施時期を組み入れた。使用後の結果は、家族はいつ頃に
何を行うのかが一目でわかり退院後のイメージがつけやすく、心
の準備が出来たと回答があった。また内容の統一と、1件につき
12分前後の時間短縮が図れた。
O76-4
O76-5
○日比健一(作業療法士)
,小口和代,宗像沙千子,鈴木琢也,
春日井万穂,小沢将臣,寺澤亨洋
○荒井 真(作業療法士)
医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 リハビリテーション科
医療法人誠和会 倉敷紀念病院 リハビリテーション科
回復期リハビリテーション病棟における患者家族教
室の取り組み
作業療法に家族の気持ちを汲み上げたい
〜「○○して欲しい」を形にした希望シートの導入〜
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟では、家族への積極的
な退院支援が望まれる。当病棟で作成した情報提供用のパンフ
レットを用いて、家族に当病棟の特徴と自主的な訓練の必要性を
「患者家族教室(以下教室)」にて説明し、教室後にアンケート調査
した。
【対象】平成27年1〜3月に当病棟に入院した患者53名(平均年齢72
歳)の家族のうち、教室(総数6回)に参加した18名(男性/女性:6/12、
患者との続柄:配偶者9、子7、兄弟1、子の配偶者1) 、平均年齢60歳。
【方法】教室の内容は「当病棟の特徴」
、
「廃用症候群」
、
「自主的な
訓練(以下自主訓練)」で全患者共通とした。アンケートは5段階評
定法にて、教室が「分かりやすかったか」
「参加して良かったか」
を聴取した。また、教室前と2週後で、家族の自主訓練への参加の
有無をカルテより調査した。
【結果】教室に参加した家族の割合は34%だった。アンケートで
は参加者の80%以上が「分かりやすかった」
、
「参加して良かった」
と回答した。自主訓練の参加率(教室前後)は、教室参加者が39%
から61%、教室不参加者が14%から54%だった。
【考察】教室の内容は多様な年齢や続柄の家族に一定の理解が得
られた。一方で説明だけでは自主訓練の参加を促すには十分では
なく、実際に患者の状態を確認し、自主訓練の指導を受ける必要
があった。また、教室への参加者が少ないという課題もあり、教
室の運営にも再考していきたい。
【目的】意思表出が困難なびまん性軸索損傷を呈した症例を担当
した。介入当初は症例のニーズが十分に引き出せないまま作業療
法を実施する状況が続いたが、症例家族は非常に熱心な支援を続
けていた。そんな家族の気持ちを少しでも作業療法の内容に汲み
上げたいと思い、COPMを基にして作成した家族向けの希望シー
トを導入した。その内容を活かして行った作業療法の介入結果を
以下に報告する。
【方法】希望シートの作成においては、次の2点に焦点を絞った。
家族が症例に対して希望する「○○して欲しい」という気持ちを、
作業という形で表現できること。またそれに対する家族の評価を、
遂行度と満足度という形で表現できること。
【結果】1.
『食事を上手にできる様になって欲しい』
、遂行度:
5→8、満足度:7→8。2.『一人でトイレに行って欲しい』、遂行度:
3→5、満足度:2→5。3.『散歩ができる様になって欲しい』、遂行度:
1→9、満足度:1→9。
【結論・考察】いずれの作業に対しても、遂行度・満足度共に改善
を見せた。そして家族が希望する気持ちの中で、症例自身が望ま
ない作業は無かったと考える。それは、本症例の性格や興味・関
心のある作業を最も理解しているのは、やはり家族であるからだ
と感じた。今回、症例にとっての意味ある作業が、希望シートと
いうツールを通して、何とか見出すことができたのではないかと
考える。
154
O76-6
O77-1
ショートステイを利用したメンテナンスリハビリ
テーションにより身体機能が改善し在宅生活を継続
した一症例
自宅でのトレーニング継続を目指す
〜訓練カードを活用して〜
○徳下奈緒美(介護福祉士・ヘルパー)1),溝口佑紀奈1),石橋悦次2),
石橋寛之3),石橋杏里3),石井初美3),山本 香2),西角貴利3),
岩村雅紀1),石崎 匠3)
○川島康裕(理学療法士)1),光田尚代1),井尻朋人1),鈴木俊明2)
1)医療法人社団石橋内科 ショートステイ杏の里
2)医療法人社団石橋内科 石橋内科
3)医療法人社団石橋内科 広畑センチュリー病院
1)医療法人寿山会 喜馬病院 リハビリテーション部
2)関西医療大学 大学院 保健医療学研究科
【はじめに】介護老人保健施設ヴァンベールでは在宅生活の支援と
して、ショートステイを利用した短期集中のメンテナンスリハビ
リテーションを提供している。その結果、特養への入居を止め在
宅生活を継続できたので報告する。
【評価とアプローチ】症例は脳
出血による右片麻痺を呈していた。家人希望はトイレの介助量軽
減で、2人介助を要していた。坐位姿勢は胸腰椎屈曲し骨盤後傾・
右回旋、右股関節内転位であった。立ち上がりは伸展相で体幹伸
展と右股関節伸展が乏しく右股関節内転が増大するため右への荷
重が困難であった。そのため左股関節内転に伴う骨盤右下制が生
じ体幹は右前方へ傾斜した。問題点は体幹伸展、右股関節伸展・
外転の関節可動域制限とした。治療期間は2週間で個別リハビリ
を計12回実施し、ストレッチング、立ち上がり練習を行った。さ
らに、介護士との立ち上がり練習、自主練習でマシントレーニン
グを実施した。また、入所前後のパフォーマンステストの結果と
在宅で行える練習を家人に情報提供した。
【結果】立ち上がり・移
乗が見守りとなり、特養への入居を止め在宅生活を継続した。【考
察】自主練習などを含むメンテナンスリハビリテーションにより、
身体機能の改善が得られ介助量が軽減した。また、治療効果や予
後予測などの情報提供が家人の精神的負担の軽減に繋がったと考
えた。さらに、定期的な支援プランの提案により継続的な在宅生
活支援ができたと考えた。
【目的】当法人のショートステイ入所者はトレーニングを行って
いる。しかし、自宅での様子を伺うと運動はせずに過ごしている
という声がほとんどだった。そこで、在宅でもトレーニングを行
えるシステム作りを考えることとした。【方法】1.在宅訓練カー
ドの作成→目標に沿ったトレーニング内容の設定 2.変化比較
のために10m歩行(車いす移動)のタイムを用いる1 ショートで
のトレーニング定着前2 ショートでのトレーニング定着後3 2
+在宅でのトレーニング開始後 3.対象者:ショートを定期利
用され介助者なく訓練出来る75歳〜101歳の男女10名【結果】21
と22を比較→平均速度6.7秒アップ22と23を比較→平均速度2.5
秒アップ歩行のタイム比較において統計学的に有意な変化は見
られなかった。
【考察】在宅でのトレーニング介入期間が短く、対
象者数も少なかった。利用者様の運動に対する意識、体調の変化
(便秘解消や持久力アップ等)も見られた。また、目標を明確にし
たことで、利用者様、ご家族やスタッフが共通した目的をもって
トレーニングに取り組めた。【まとめ】今後の課題として、利用者
様の目的を中心に、在宅訓練カードが利用者様ご本人・ご家族・
ショートステイスタッフだけでなく各事業所のスタッフをつなぐ
ツールとなってひとつのチームを作り、夢の実現を目指したい。
引き続き訓練カードを活用して、在宅でもトレーニングを継続し、
24時間リハビリを目指していきたい。
O77-2
O77-3
○小柳ひとみ(理学療法士)1),橋詰 謙2),古名丈人3),西野 歩4),
阿部 勉5)
○田辺大起(理学療法士)
1)医療法人仁愛会 介護老人保健施設 千歳園
2)大阪大学 医学系研究科,3)札幌医科大学 保健医療学研究科
4)社会医学技術学院 作業療法学科,5)リハビリ推進センター株式会社
国保 日南病院
片麻痺のスキーツアー〜“コスモス”30年の歩み〜
地域における足漕ぎ車椅子の利用
【はじめに】片麻痺者を対象にした先行研究では、屋内での足こぎ
車いす訓練で、歩行速度が有意に増加したと報告されている。今
回は訪問リハの場面を利用し、地域で足漕ぎ車椅子を使用する効
果を検証したので報告する。
【目的】足漕ぎ車椅子の地域使用に関する検証。
【方法】当院倫理委員会の承認を得て実施した。対象者は79から
83歳の片麻痺者で男2名、女1名である。足漕ぎ車椅子はTESS社
製プロファンドを約6ヶ月間使用し、膝伸展筋力とTUGを前後で
比較し検討した。走行状態の計測にはアップル社製iPad miniを
使用した。なお雨天などで屋外使用できない日は通常の歩行練習
や筋力増強練習を行っている。
【結果】6ヶ月間の介入内容と前後の改善率をいずれも平均で示
す。実施回数23回、積算距離33km、累積高度807m、平均走行時
間29分/回。TUG53.6%、膝伸展筋力右24.4%、左41.9%、走行速
度13.8%。3名とも活動や参加が増え使用感についても楽しいと
語られた。
【考察】今回の条件で歩行や下肢筋力が改善する可能性が示唆さ
れた。また足漕ぎ車椅子は、比較的安全に1〜2kmの散歩が可能
なため一緒に歩く介助者も運動になる。一次予防対象者も一緒に
歩くなどの設定を行えば、介護予防への応用が期待できる。
【結論】足漕ぎ車椅子の地域利用は身体機能の改善が望め介護予
防への応用が期待できる。
【コスモス】1986年、リハビリテーション外来通院をしていた一
人の脳卒中右片麻痺患者(元アルペンスキー国体選手)が「スキー
に行ってしまった」事に端を発し、ほかの片麻痺患者3名と数名の
サポートスタッフが連れだってスキーツアーが敢行され、悪戦苦
闘のスキーチーム“コスモス”の日々が始まった。年に1回、3日間
滑るスキーツアーが30周年を迎えた。その活動を紹介する。
【参加者】片麻痺を有するが、日常生活は自立し、スキーを楽しみ
たい方が中心。運動麻痺や感覚障害のレベルは様々。30年間で
延べ40名。スタッフはDr、Ns、PT、OTなど延べ150名。
【サポート】用具の着脱と運搬、移動、リフト乗降、転倒時の補助、
滑走時の支援(ザイル、スキーブラ)
。
【上達】発症前のスキー経験、体力・歩行能力、年齢と関係する。
発症前にスキー経験があり下肢の麻痺が経度で、独歩(装具を使
用していても)が出来れば15度程度の斜面ならほどなく滑れるよ
うになる。スクワットやランジが出来、豊かなスキー経験があれ
ば20度以上の斜面や多少の悪雪でも障害を感じさせないレベル
になる場合がある。
【結語】条件(ゲレンデの選択、充実したサポート体制、ブラやザ
イルなどの工夫)が整えば、片麻痺があってもスキーを楽しむ事
が出来る。コスモスは身体的なリハビリテーションの場でもある
が、種々の人々との出会いがQOLを拡張する場でもある。
155
O77-4
O77-5
○宮嶋利成(理学療法士)1),瀧澤素子1),鶴岡弘将1),佐藤仁俊1),
村山尊司1),樋口幸治2)
○大川 舞(作業療法士)1),篠原 淳1),新武松美2),山口澄恵2)
1)千葉県 千葉リハビリテーションセンター
2)国立障害者リハビリテーションセンター
1)社会医療法人 製鉄記念室蘭病院 訪問リハビリテーションセンター
2)室蘭市地域包括支援センター憩
障害者の健康づくりプログラムの構築と普及のため
の地域連携型モデル事業−当センターにおける健康
づくりの実践−
地域での介護予防を考える−地域包括支援センター
との連携を通して見えたこと−
【目的】障害者の健康づくりに関する環境整備を促進するため、平
成25年度より関東近郊5施設において、障害者の健康づくりプロ
グラムの構築と普及に向けた取り組みを行っている。本研究は、
当センター障害者支援施設での健康づくりの実践について報告す
る。【方法】対象は本研究の主旨に同意の得られた当施設利用者
13名(年齢38.8±10.7歳、脳血管疾患10名、脊髄損傷2名、脳性麻
痺1名)で、個人に合わせた運動・栄養・生活の介入指導を5ヵ月
間行った。介入前後に、身体測定(体重、BMI、腹囲、体脂肪率、
内臓脂肪レベル)
、および特定健診と同様の血液検査を実施した。
運動指導は週1〜5回( 1回最大45分間)
、障害特性に配慮し、筋力
ex、自転車ex、バランスex、歩行exから選択し集団で行なった。
栄養指導は、栄養教室の開催や健康管理カレンダーの活用、食習
慣に関する助言等を行った。生活指導は、セミナー開催や適宜健
康相談を行った。
【結果】介入の結果、体重、BMI、腹囲、内臓脂肪
レベル、TG、HDL-Cで有意な改善を認めた(P<0.05)
。また、特
定健診によるメタボリックシンドローム該当者が4名から1名に
減少した。
【考察】障害者の健康づくりには、障害特性に配慮した
運動プログラムの提供や多職種による働きかけ、対象者の動機づ
けを高めることが重要と考える。今後も他施設・各地域と連携し
ながら、障害者の健康づくりに関するスタンダード・プログラム
の構築・普及を図りたい。
【はじめに】今回、室蘭市地域包括支援センター憩(以下、包括憩)
と共同で健康教室を地域の健康サークルを利用して開催した。そ
の内容と結果、今後の活動について報告する。
【健康教室】室蘭市
内銭湯・休憩室で月1回、1時間、計6回開催。平均年齢81.2歳の
男女。包括憩による講義と当センターによる運動を実施。【結果】
参加者は健康教室に楽しく参加できていた。運動の大切さは理解
されたが、自宅で運動が習慣となる人は少なかった。身心機能に
は個人差があり、同じ内容で提供すると教室が円滑に進まなかっ
た。当センターは地域の現状を知ることができ、包括憩はリハビ
リの視点を含めて対象者を訪問することができた。
【考察】教室
は参加者間の繋がりを更に強くし、健康を意識させるきっかけを
作った。実生活に繋がりにくい運動は習慣化しなかった可能性が
あり、運動と生活行為を関連付けて関わる必要があった。円滑に
教室を開催するためには身心機能を評価しグループ分けする等の
工夫も必要であった。リハビリと包括がともに関わることで新た
な気づきが生まれた。また地域作りに訪問リハビリの経験が活か
せると認識できた。
【結論】参加者の声を直に聞けたことで、地域
という視点を意識した関わりが重要であると実感し、そのために
は包括との連携が重要だと認識できた。
【今後の活動】地域に根
差し、住民も主体となれる活動の一助となれるよう、今回の課題
を検討し、次に繋げていきたい。
O77-6
O78-1
○布澤良太(理学療法士)1),河越由理1),小川菜美1),山下和典2),
岩谷 大2)
○門田琴子(理学療法士),喜多一馬,増岡康介,上原貴廣
1)医療法人社団千春会 介護老人保健施設 春風
2)医療法人社団千春会 千春会病院
北大阪警察病院 リハビリテーション技術科
90分通所リハビリテーションについて
短時間デイケアによるQOL向上への取り組み
理学療法臨床実習生における、自律性支援の認知と
ストレスの関係
【はじめに】臨床実習は実習生にとってストレスが多く、中には心
身のバランスを崩すような例もある。実習生のストレスの一因に
指導者との関係性があり、実習生は指導者の一方的指導や問題解
決への支援不足を感じていると報告されていることから、実習生
の指導に対する認識がストレスに影響する可能性が考えられる。
そこで今回、実習生の指導者からの自律性支援に対する認識とス
トレスとの関係性について調査を行った。
【方法】対象は当院で理学療法臨床実習を実施した実習生20名。
自律性支援の認知の評価は藤田らが作成した尺度を参考に作成し
た「臨床実習用の自律性支援の認知尺度」を、ストレスの評価は小
林らが作成した「青年用疲労自覚症状尺度」を用い、Spearmanの
相関係数を求めた。
【 結 果 】自 律 性 支 援 の 認 知 尺 度 は39.0点、疲 労 自 覚 症 状 尺 度
は77.04点。Spearmanの 相 関 係 数 は 高 い 負 の 相 関(r=-0.79,
p=0.001)を認めた。
【考察】結果より、実習生において自律性支援の認知が高いほどス
トレスが低くなることが示された。理学療法臨床実習において、
実習生のストレスは非常に重要な問題であり、指導者側の問題と
して実習生に対する支援の仕方を考慮する必要性が示唆された。
実習生の精神状態は、指導に対する認識や心理欲求の充足度合い
などによる影響が推測されることから、今後様々な関係性につい
て検討していきたい。
【はじめに】当施設は大規模型短時間通所施設サービス( 3−4時間
の2単位、各定員50名)を運営しているが、利用者数増加で個々の
ニーズに合った運動の提供が困難となった。そこで要支援者を中
心とした利用者に15分のエアロビクスを含む4コース(腰痛改善・
膝痛改善・生活習慣病予防・認知症予防)の 90分通所リハを実施
したので、ここに報告する。
【方法】平成26年10月〜平成26年12月において、90分通所リハを
利用した16名(平均年齢75.8±6.7歳、
平均介護度0.9)全員に対し、
基本チェックリスト、各々の希望するコース別の運動、腰痛改善
コースには腰痛症患者機能評価質問表(JLEQ) ・膝痛改善コース
には変形性膝関節症患者機能評価尺度(JKOM)を実施し、初回と3
か月後を比較した。
【結果】最大歩行速度(秒)は初回6.96±1.8から3か月後6.74±1.8で
あり、
膝伸展筋力(N)は34.8±12.6から36.6±11.5であった。腰痛・
膝痛改善コースではJLEQにおける総得点が初回41.7±22.7から
3か月後39.4±22.6であり、JKOMは40.3±32.7から38.3±29.2で
あった。JLEQ・JKOMともに痛み得点の改善はみられなかった
が日常生活活動制限得点・参加制限得点で改善傾向にあった。
【まとめ】90分通所リハの介入により、歩行スピード・膝伸展筋力
の運動機能が改善傾向であった。その為、二次的に日常生活活動
制限得点・参加制限得点が改善傾向である考えられる。継続して
行うことで、利用者のQOLの向上を目指していきたい。
156
O78-2
O78-3
○宮本宗明(作業療法士)
,和仁久見子,深沢由香里,朝倉直之
○杉浦恵介(理学療法士)
医療法人社団輝生会 初台リハビリテーション病院
圏央所沢病院 リハビリテーション科
実習生教育に関する当院OT部門の取り組み
〜臨床実習指導者、作業療法実習生へのアンケート
調査から見えた現状と今後の課題〜
中堅スタッフの人材育成
【はじめに】当院の作業療法実習生(以下OTS)指導はスパーバイ
ザー(以下SV)中心に行ってきた。実習形態はOTSが患者担当し
評価・治療プログラム立案・実施(以下従来型)であったが、平成
22年度にSV・OTS・患者の負担軽減と質の高い実習を目的にク
リニカルクラークシップ(以下CCS)を推進。昨年度のアンケー
ト調査で実態を調査し報告する。
【対象】平成26年度 OTSを担当
した作業療法士(以下OT)15名、OTS15名。
【方法】無記名の質問
紙調査。内容:実習形態、OTS振り返り、CCSについて等。【結果】
実習形態:CCS38%、従来型との混合62%、従来型0%。OTS実習
前の不安:コミュニケーションや治療技術。終了時:OTの視点
や目標設定、レポート作成等。OTSに望む事:OTの視点や楽しさ、
コミュニケーション、接遇等。レポート指導:平均1時間。CCS
イメージ:負担軽減しOTSの能力に応じた柔軟な形態、受身的等。
【考察】OTSとSVで臨床実習への期待感で相違があり、施設-養成
校で事前の課題共有と適切な目標設定が必要。SVの思いを適切
に伝えるには、OTSが能力を発揮しやすい環境作りとCCSが有効
と考える。今後は卒後教育でCCSの理解を深めること、卒前教育
でOTの将来像を見据えて実習に臨むようOSCE等を通して課題
を共有。また部門では実習生教育係を交えてSVの育成やサポー
ト、OTSとの連携を強化。これにより患者への質の担保と負担を
軽減し、個々の学生に合わせた臨床実習となる事を期待する。
【はじめに】PT/OT/STの多くが疾病に対する知識、運動療法や徒
手療法についての技術を得るため、講習会に参加し自己研鑽に励
んでいる。日本の製造業では「カイゼン」は当たり前であり、常に
業務改善を図っている。PT/OT/STが主体的に業務改善を行って
いくよう研修会を企画し実施した。
【研修内容】目標:業務改善の課題を分析・解決の能力を養う 期
間:平成26年10月1日〜平成27年3月31日 対象:法人内のリハ
部門に所属する職員 経験年数:不問 法人内のリハ部門に所属
する88名を対象に研修への参加の有無を確認し、37名の参加希望
者の中からPT6名、OT2名、ST1名の計9名を人選した。
【研修方法】論理的思考を養うため、MECE、ロジックツー、PDCA
サイクルなどの研修と看護部、事務部、コメディカル部の各管理
者に講師を依頼し、管理者としての心得、各部署の業務内容の講
習を行った。前述した講習を受けるのと同時に、所属する部署の
業務内容を客観的に分析し発表した。その後、所属する部署の課
題を抽出、改善策を立案、企画書を作成し業務改善を行った。そ
して、半年間に行った業務改善の結果を発表し研修を終了とした。
【まとめ】一般的にPT/OT/STは養成校を卒業すると病院や施設に
入職する。新人研修として疾病に対する知識、リスク管理など研
修を行っているが、中堅を意識した研修を企画していることは少
ない。そのため、中堅研修を計画的に実施していく必要がある。
O78-4
O78-5
○石澤理恵(言語聴覚士)
,小林宏彰,清水理江,白波瀬元道
○和泉亜由美(理学療法士)1),片平達也1),康 大仁1),桑山浩明2),
大江与喜子3)
医療法人社団永生会 永生病院
1)医療法人財団樹徳会 上ヶ原病院 リハビリテーション室
2)ポシブル医科学株式会社
3)医療法人財団樹徳会 上ヶ原病院 内科
時間内で満足度と理解度の高い勉強会に向けての工夫
生活期病院におけるポジショニングに対する意識調査
【はじめに】当院はケアミックス型の病院で、回復期1病棟にPT、
OT、ST計22名が配属されている。この3職種合同の勉強会が月
一回、業務時間内の30分で行われ、特定の年長者だけが発言する、
時間内に完結しない、
等の問題がみられていた。そこで2014年度、
参加者全員の発言、時間内の完結、の実現のため勉強会係で取り
組みを行った。取り組みの工夫と効果について報告する。
【方法】例年まで担当者のみで担っていた当日までの準備や当日の
進行に勉強会係が介入し、以下の4つの工夫をした。1.参加者全
員が自分の意見を持って参加するよう宿題を導入する。2.時間
内に完結するよう進行過程それぞれに費やす時間を明確化する。
3.参加型の勉強会となるよう参加者全員に役割を持たせる。4.
アンケート内容を見直し、勉強会が担当者、参加者にとってどん
なものとなったかを毎回振り返る。
【結果】
大きく3つの成果が得られた。1.所要時間が短縮した。2.
参加者全員が発言出来た。3.アンケートの集計より満足度や理
解度が向上した。
【考察】今回の取り組みにより勉強会に要する時間が短縮し、満足
度が向上した。また、参加者全員が発言する機会が増えたことで、
理解度が向上した。その結果、より有意義な勉強会になったと考
えられる。一方、例年より勉強会係の負担が増えたことが課題と
して挙げられる。
【はじめに】当院では、ポジショニング実施において、クッション
が変わると対応が困難、紙面通り配置したが隙間ができる等の問
題が生じている。今回、当院におけるポジショニングの特徴と傾
向を調査し、問題解決への一助としたいと考えた。
【方法】臨床経
験15年以内のリハビリテーション職員(以下リハビリ職員)、看護
師、看護助手の各10名計30名に、写真を用いてインタビューを実
施。その回答を観察・リスク・実践項目に分類し、各項目の回答
数を職種、経験年数、院内・外部研修受講の有無、養成校での学
習機会の有無で比較した。
【成績】回答数の平均値では、職種別で
はリハビリ職員の観察・リスク項目が多く、経験年数別では1〜
3年目の観察・リスク項目が少なかった。院内・外部研修受講の
有無では院内・外部研修ともに受けた者の観察項目が多く、養成
校別での学習機会の有無では有意差はなかった。各項目の着目度
では、観察項目は局所圧のかかる部位で高く、足関節で低かった。
リスク項目は褥瘡と屈曲拘縮で高く、伸展拘縮で低かった。
【結論】
ポジショニングの特徴と傾向に職種、経験年数、内・外部研修受
講の有無が影響し、養成校での学習機会の有無は影響しない。こ
のことから入職以降の教育やスキルアップのための外部研修への
参加機会の提供が重要である。足関節や伸展拘縮は離床をすすめ
る上で影響は大きいため、これらの部位に対する観察の意識や意
義を学習する必要がある。
157
O78-6
O79-1
○豊田平介(理学療法士)
,渡邉要一,荒尾雅文
○長谷川士朗(理学療法士),山田真矢,野村昌代
医療法人永生会 法人本部 リハビリ統括管理部
医療法人東樹会 あずまリハビリテーション病院
リハビリテーション職員への接遇能力向上のための
取り組み 〜接遇課題に対する回答形式の導入〜
開院3年目回復期病院における理学療法士指導の取
り組みについて〜理解度評価表を活用して〜
【はじめに】医療や介護はサービス業であり選ばれる医療機関・施
設となるための接遇に対する取り組みが行われている。今回、効
果的な接遇向上を目的として接遇への課題設定を行い、考え、共
有することを目的とした取り組みを行ったので報告する。
【方法】リハビリテーション職員を対象として接遇に関する課題を
提示し、職員に回答してもらった。回答した内容を発表し、回答
に対する検討を行った。接遇課題への取り組み期間は6ヶ月間と
して、ミーティングの時間(30分以内)を利用し、月に2回程度行っ
た。取り組み前後に接遇への意識調査と取り組みに対してのアン
ケートを行った。
【結果】取り組みに対する評価は高く、接遇に対する意識が高まっ
た内容が多かった。
【考察】今回、提示された接遇課題に回答および発表することを
行った。他のスタッフの意見が聞けて接遇に対する情報共有がで
きたことやより具体的な内容で実践的で意識の高まりになったと
言える。また主体的な気づきを促す機能を強化することへ反映で
きた結果だと言える。これから医療や介護のマーケットは拡がり
をみせ、サービス化が進展する中で他職種や他分野の方たちとの
連携や協業もより重要になり、接遇への取り組みもより能動的に
ならなくてはならないと考える。今回の取り組みはその一端とし
て、望まれる行動への定着化に向けて継続が必要だと考える。
【目的】当院の理学療法士は経験年数3年以内の者が6割を占めて
いる。知識・技術の評価尺度として「理解度評価表」を使用し、課
題項目を抽出して部門内研修を行っている。今回、理学療法士指
導の成果や課題の共有のために比較・検討を行った。
【対象】開院時から現在まで在籍している理学療法士13名。経験
年数4年以上6名(以下経験者)と入職時新卒者7名(以下新人)の2群
に分けた。
【方法】評価は約半年毎に計4回(平成26年1、6、12月、平成27年4月)
実施。前記2群における評価点数を(1)小項目の平均評価点数の推
移(2)評価点の分布とその割合(3)部門内研修による評価点数の向
上度の3点について検討した。
【結果】(1)1回目評価の平均値では経験者を新人が上回っていた。
その後両群ともに点数の向上がみられた。(2)経験者は順調に高
点数項目の割合が向上したが、新人ではばらつきがみられた。(3)
研修実施前後での比較では研修内容に一致した項目の評価点数の
向上が得られていた。
【考察】新人は的確な自己評価ができていない状況であった。評
価表を用いることで新人の能力(臨床面・自己評価面)を確認す
ることができた。点数の向上度について、
「研修」と「経験」にお
ける変化の鑑別は困難であったが、部門内研修における成果の確
認はできた。理解度評価表を用いた指導は課題項目の抽出・改善
の観点からは有用であると考える。
O79-2
O79-3
○小杉 正(理学療法士)1),森 真野1),貞末仁美1),上本武子1),
大垣昌之2),兒島正裕1,3)
○大西徹也(理学療法士),中島由美
1)社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院 教育研修部
2)社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院 リハ技術部
3)社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院 診療部
医療法人社団和風会 橋本病院
セラピスト部門における教育研修の取り組みと教育
に関するガイドラインの活用について
統計の知識って臨床で必要?当院新人セラピストの
統計学知識の現状と対策
【目的】学会発表や文献抄読などでの統計解析の理解に苦手意識
を抱いている職員は多い。そこで新入職セラピスト(理学療法士、
作業療法士、言語聴覚士)12名に対しアンケート調査を実施した。
【方法】アンケート内容は、養成校の種類、研究や学会発表を行う
にあたって難渋すると思う項目3つ、統計に行き詰った時の対応
を記述回答とした。1養成校で統計学履修の有無、2統計手法を用
いたことがあるか、3グラフを作ったことがあるか、4変数の尺度
の理解、5対応ありと独立の理解、6標準偏差の理解、7正規分布の
理解、8有意差の理解、9相関の理解、10適切な検定方法選択、11
統計処理の実行、12統計の目的を明確にとらえデータ収集が行え
るかの12項目をYES/NO回答とした。
【結果】難渋する項目ではデータ収集方法が最も多く、次いで統計
解析、テーマ決めであった。統計に行き詰った時の対応は半数が
行ったことが無いという意見であり残りは詳しい人に聞くという
結果であった。12項目の回答は、項目1以外の2〜12項目はすべ
て3割未満の理解度であった。
【考察】結果より現状では統計学の理解度は乏しい。今年度より
定期的に院内勉強会を開催し理解度の向上に努め、対策方法と結
果を本学会にて発表する。統計の知識は臨床で必ずしも必要では
無いが、学会参加や研究論文を読み解き臨床に生かすために重要
であるため、スタッフの知識向上に挑みたい。
【はじめに】医療の進歩や医療情勢・社会情勢の変化、近年の診療
報酬改定にも見られるように、リハビリテーション医療に求めら
れているものは、より高度になり、広範囲となっている。一方、
新入職自身は養成校で上記の内容を十分に教育されておらず、そ
れを現場で教育することになっている現状がある。当院でも多く
の施設がそうであるように毎年多くの新入職員を獲得している。
新入職員にどう教育するかが教育・研修の課題であり、2013年度
より各療法科より独立した教育研修科を設立し、横断的な教育を
行えるようにした。
【方法】当院では2013年度から法人グループ独自の“教育ガイドラ
イン“を作成し、全セラピストに配布し、各自の業務理解度や習
熟度を確認できるようにした。2014年12月に全セラピストの業
務理解度や習熟度を確認するために、教育ガイドラインの集計を
行った。今回、当院における職種ごと、年次ごとに教育ガイドラ
インの整理、分析を行った。
【結果】年次があがることにつれて業務離解度や習熟度が高まっ
ていた。しかし、目標とするレベルまでに達成しているスタッフ
は少ないことがわかった。
【今後の課題】2015年度より、教育研修科は教育研修部となり、医
師、看護師とともに全病院的な教育研修ができる体制となった。
課題は多いが、特にOJTを中心に運用していく。
158
O79-4
O79-5
○夏山真一(作業療法士)1),兼田敏克1),西下 智1,2),
西脇百合子1),花房義和1),石田浩一1),松本憲二1),坂本知三郎1)
○只石朋仁(理学療法士)
1)医療法人篤友会 関西リハビリテーション病院
2)リハビリテーション科学総合研究所
医療法人渓仁会 札幌西円山病院 リハビリテーション部理学療法科
臨床経験の浅い作業療法士のできるFIMと看護師の
FIMにおける較差の現状〜排泄動作評価に関して〜
卒後教育としての形成的評価の活用と効果
−理学療法版mini-CEXの運用から−
【要旨】mini-clinical evaluation exercise(CEX)は米国で研修医
教育の一環として行われる形成的評価の一手法である。それを元
に当院理学療法版mini-CEXを作成、運用している。6つの評価焦
点項目を6件法で採点し、評価直後にフィードバックを実施して
いる。評価者間の信頼性と実施による効果を検討した。
【方法】新人職員4名の理学療法場面をビデオ撮影し、その映像を
見て採点した。評価者は7名、平均経験年数12.8年であった。項
目ごとの級内相関係数と、可(3点以上)不可(3点未満)2群に分類
し一致率を求めた。
【結果】級内相関係数は0.334-0.729であった。2群の一致率は1項
目で85.7%、他は90%超であった。
【考察】級内相関係数は0.6以上が3項目(コミュニケーション、理
学療法評価、総合的臨床能力)
、0.5-0.6が2項目(情報収集、基本
的動作介助手技)
、0.4以下が1項目(治療の組み立て)であり、1度
の評価における評価者間信頼性は十分とはいえなかった。しかし
可否判定において高い一致率を得た。採点に差が大きい項目もあ
るため採点判断基準を設定し、評価者を変えながら複数回実施す
る対応が必要と思われる。当院では運用後より若手職員のインシ
デント数が減少傾向を示している。mini-CEXの運用により若手
職員の力量に合わせた指導と業務の振り分けが行えた結果と考え
られた。
【はじめに】この10年間で作業療法養成校は急増し、臨床経験の浅
い作業療法士(若いOT)が多くなっている。回復期病院では、日
常生活活動(ADL)能力を効果的に高めることが求められており、
当院では若いOTがADL能力を的確に把握できるように教育プロ
グラムを実践している。特に排泄への取り組みは、介助者の苦痛
となるため大切であり、訓練時の「できるADL」と病棟生活の「し
ているADL」の一致が重要と言われている。そのため今回、教育
プログラム終了後の若いOTの「できるADL」と病棟生活の「して
いるADL」の一致状況と較差があれば現状を調査した。
【方法】対象は本研究に同意した脳血管障害患者の担当の若い
OT9名 と看護師8名。調査は、若いOTの「できるADL」とその担
当看護師の「しているADL」の排泄動作(トイレ移乗・トイレ動作)
のFIM点数を調べた。そして点数を介助者有無かつ介助者手出し
有無で分類し、較差の有無とその内訳を調べた。
【結果】較差は5名にあった。その内訳は、見守り群と介助群3例、
修正自立群と見守り群1例、修正自立群と自立群1例であった。
【考察】9名中5名の較差は多いように感じる。較差が生じる原因
は教育プログラムや若いOTと看護師との連携、双方の採点方法
等が考えられた。そして、較差内容では介助者有無や介助者手出
し有無においても差があり、どこに問題があったのかを検討する
必要がある。
O79-6
O80-1
○神浦梨絵(理学療法士)
,楠本雅也
○中村里江(看護師)1),児嶋明子1),岡田千代子1),櫻庭智子1),
村尾 浩2)
医療法人倚山会 田岡病院 リハビリテーション科
1)医療法人春秋会 城山病院
2)神戸学院大学 総合リハビリテーション学部
当院における新人教育変遷の取り組み報告と今後の
課題
回復期リハビリテーション病棟での退院支援チェッ
クリストを用いた看護師教育の試み
【はじめに】当院の療法士は現在84名であり、毎年5名以上の新入
職員(以下新人)を増員している為、教育は重要な課題である。卒
後教育の重要性が問われている近年において、過去の新人教育か
ら学び変更してきた取り組みを紹介する。
【取り組み】既存スタッ
フ→1)事前オリエンテーション、2)技術講習、新人→1)オリエン
テーション、2)業務報告書作成、3)技術講習参加、4)新患対応テス
ト、5)技術講習アンケート調査を実施。指導時は指導項目チェッ
クシートを使用し、指導者以外のスタッフも新人の教育状況が把
握できるようにした。
【変更点】1)指導者:ローテーション制で数
名(経験年数2〜5年目)→2名(5年目以上の責任者と2年目の教育者
で固定)、2)教育期間:半年→1年、3)技術講習:10回→13回【結果】
1)技術講習では、アンケート結果と業務における必要性を考慮し、
回数・内容・順番を随時変更した事で、
「必要な知識が増えて自
信に繋がった」という意見が増えた。2)指導者を固定した事で指
導・相談がし易くなったが、指導者以外のスタッフは新人と関わ
る機会が減少し、指導者の指導能力によって教育に差が生じた。
3)教育期間の延長に伴い慣れが生じた。
【課題】新人が自立するに
つれ教育者が新人を気に掛ける頻度が低下し、新人のリハビリ内
容や言動を疑問に感じることがある。今後、新人及び指導者を定
期的に評価・フィードバックする機会を作る等、環境を変化させ
ていくと共に、指導者教育も新人教育の一環に加えていきたい。
【はじめに】春秋会城山病院では回復期リハビリテーション(以
下、リハ)病棟を開設して5年が経過したが、勤務する看護師のほ
とんどがリハ医療の教育を受けた経験がなかった。そこで、回復
期リハ病棟における看護師の実務をマニュアル化した退院支援
チェックリストを作成した。今回、退院支援チェックリスト使用
の教育効果について検討した。
【対象と方法】回復期リハ病棟に勤務する看護師12名を対象とし、
チェックリストの項目である( 1)入院患者の病状および障害像、
(2)ADL能力、
(3)患者の意向、
(4)家族の意向、
(5)家族構成、
(6)
病棟での環境整備、( 7)看護計画立案、( 8)介護保険状況等をそ
れぞれ「できた」、「できなかった」の2段階で評価し、チェックリ
スト使用前後で比較した。
【結果】退院支援チェックリスト使用前後で、
「できた」と回答を得
た比率は(1)75.0%,83.3%,
(2)100%,83.3%(3)100%,100%(4)
50.0%,66.7%(5)83.3%,91.7%(6)100%,91.7%(7)83.3%,100%
(8)58.3%,91.7%であった。
【考察】概ね、使用前からできたとする項目が多く存在したが、家
族の意向と介護保険状況については退院支援チェックリスト使用
の教育効果があったものと考えられた。
159
O80-2
O80-3
○橋本彩花(看護師)
,成瀬友美,松尾千恵美,坂倉美砂江,
岸 典子
○竹内悠子(看護師),濱本利恵子
兵庫県立リハビリテーション中央病院
会医療法人愛生会 上飯田リハビリテーション病院 3階病棟
回復期病棟における看護計画立案時の看護師の視点
の変化〜関連図を活用して〜
回復期リハビリテーション病棟における退院指導
〜脳卒中ノートを作成して〜
【はじめに】リハビリテーション看護は入院時より退院後の生活を
見据えた看護計画が必要とされ、患者の個別性に応じ、多岐にわ
たる支援を行う必要がある。A病棟では担当看護師が中心となり
看護計画をたて、その計画の実施や評価はチームで行っているが、
計画の視点が、ADL動作の獲得や排泄・転倒転落予防に偏ってい
た。そこで、リハビリテーション看護に必要な視点で、適切な時
期に介入できるようになるため、対象者の問題点の明確化に効果
があると言われている関連図作成に取り組んだ結果、看護計画の
偏りが改善し、多岐にわたる看護計画立案ができるようになった
ので報告する。
【研究目的】A病棟で平成26年5月以降、関連図作成を推進するこ
とにより、平成25年と、平成26年の同時期の看護計画を分析し、
看護師の視点の変化を明らかにする。
【研究方法】看護師が受け持ち患者の関連図を作成し、取り組み前
の平成25年と、作成後の平成26年に分け、看護計画の問題リスト
を収集し、看護師の視点をKJ法によりカテゴリー化し、関連図作
成後の視点の変化を調べた。
【結果・考察】関連図作成後、病態を意識した計画、身体を整える
事や患者や家族の役割・関係、本人と家族のストレス、退院後の
生活を見据えた看護計画、その他全ての分野で計画数の増加が
あった。関連図作成により、看護師の視点の変化がみられた。
【はじめに】急性期病院での在院日数の短縮化に伴い、脳卒中患者
は発症初期に退院指導を受けることが多く、理解不十分のまま回
復期病棟に転院することがある。そこで脳卒中患者に対して回復
期病棟での退院指導が重要であると感じた。看護師の退院指導方
法の統一化を図るため、脳卒中ノートを使用した退院指導を行い
その効果を検証した。
【方法】事前に看護師にアンケート調査を
行い、それに基づいて脳卒中ノートを作成し、勉強会を開催した。
その後脳卒中ノートの運用を開始した。運用前後2ヶ月での看護
師の退院指導に関する状況をアンケート調査した。【結果】退院指
導については全33名が退院指導は必要と回答していたが、実行で
きていたのは21名であった。実際の退院指導での問題点は、質問
された事にのみ答えるような簡単な指導しか行われていないこと
にあった。運用後の調査では、受け持ちや指導時期の関係で、全
員が経験するには半年程度の期間が必要であったが、脳卒中ノー
トによって効果的に退院指導が行われるようになった。
【考察】
回復期の看護師としては、技術指導とともに、患者のこれからを
考えることが重要である。脳卒中ノートの活用で患者の生活や内
服情報を見直したり、看護師自身の学習を深めたりと、退院指導
に対しての意識は向上したと考える。現在では看護師全員が使用
できるようになり、脳卒中患者の退院指導方法の統一化を図るこ
とができた。
O80-4
O80-5
○田中桃子(看護師)
,平川 梢,金丸亜希,氏福恵美子
○岩澤れい子(看護師)
一般社団法人是真会 長崎リハビリテーション病院
医療法人鉄蕉会 亀田総合病院
内服薬インシデント・アクシデント減少に向けた取
り組み〜内服班による現場教育を通して〜
急性期病院における認知症看護研修の効果と今後の
課題
【はじめに】当院は、事故を未然に防ぐために些細な事象を含め
たインシデント・アクシデントレポートの提出を啓発している。
2014年4月医療安全委員会に「内服班」を配置し、内服薬に関する
環境整備や現場教育を行っている。今回、与薬業務に着目しイン
シデント・アクシデント(以下エラー)の推移調査と要因分析か
ら課題抽出を行ったので報告する。
【対象と方法】対象は病棟配属の看護師73名。2014年6月〜10月
に、シミュレーション動画の視聴と意見交換、内服薬手順の個人
評価、処方箋ファイルの整理を行った。調査期間は2014年の1年
間で、エラー件数の推移と要因を後方視的に調査分析し、実施前
後と比較した。エラーは与薬業務の確認事項である正しい患者・
薬剤・用量・用法・時間に分類した。
【結果】2014年のエラー件数は98件、1月〜6月は68件、7月〜12
月は30件で、38件の減少を認めた。最多月は6月の17件、最少月
は7月の1件であった。エラーの内訳は、時間間違いが46件で全体
の46.9%を占め、その内の84.8%が与薬忘れであった。時間間違
いの背景要因は、確認不足が59.4%で、忙しいと感じている者は
78.0%であった。
【まとめ】個人評価や意見交換などの現場教育は、手順に対する看
護師個々の意識変化に繋がったと考える。今回の調査で明らかと
なったエラー要因に対し、企画運営することが今後の活動課題で
ある。
【はじめに】急性期医療を担う当院で、看護職に向けた認知症看護
の院内研修を始め3年が経過し、のべ71名の看護職員の受講が終
了した。急性期病院での認知症看護は未開発な部分も多いため、
研修内容が受講者の実践に役立っているかを評価し今後の課題を
見いだす必要があった。3年間の効果を振り返りここに報告する。
【対象】認知症看護研修の受講者(看護師・介護職など)、任意で回
答のあった41名
【方法】受講者にアンケート調査を実施。5項目の質問とそれぞれ
に対する自由記載を設置。また、研修導入時に調査した認知症者
に対する気持ちなどの言語もカテゴリー化し、研修前後での変化
を比較する。
【結果とまとめ】研修内容は実践に役に立っているか?はい:38
名いいえ:3名、認知症の人への対応の仕方は学習前と変わった
か?はい:36名いいえ:5名、認知症の人への対応で困っている
ことはないか?はい:25名いいえ:14名無回答2名。自由記載で
は認知症の人への対応に関して、
『認知症』がどのような現象かと
言うことが解り、依然として困ることも多いがゆとりを持って関
わることができるようになった、という意見が多くみられた。ま
た、受講者の約6割からフォローアップ研修の要望もあった。今
後の課題として、認知症看護に関する理解や意欲の継続を支援す
る教育、事例検討などで実践効果を検証する機会の提供などの必
要があることが示唆された。
160
O80-6
O81-1
○森本信三(理学療法士)1),宮尾康平1),國部久也2)
○白岡幸子(作業療法士)1),登能 淳1),小川美歩1),山根慎吾1,2),
沖田啓子1),岡本隆嗣1)
当院における病棟勤務者の腰痛実態調査
〜今後の対策に向けて〜
当院職員教育におけるeラーニングの現状
1)公益財団法人白浜医療福祉財団 白浜はまゆう病院
南紀白浜温泉リハビリテーションセンター
2)公益財団法人白浜医療福祉財団 白浜はまゆう病院
1)医療法人社団朋和会 西広島リハビリテーション病院
2)広島大学大学院 医歯薬保健学研究院
【目的】看護師の腰痛を取り巻く要因は多岐にわたるため、腰痛へ
の対策を展開する必要があるといわれている。そこで、当院の病
棟職員に対して、腰痛有訴者の現状を把握し、どのような要因で
腰痛が起こり、病棟職員のQOLにどれくらい影響を及ぼしている
か調査を行なったので報告する。
【対象と方法】白浜はまゆう病院の病棟で勤務する職員にアンケー
トを配布した。腰痛の有無、腰痛の原因、日常生活の障害を評価
す るRoland-Morris Disability Questionnaire(以 下RDQ)な ど の
アンケート調査を行なった。
【結果】145名のアンケートを回収した。平均年齢は35.6±10.2歳
であった。回答を得られた病棟職員の、現在腰痛を有するものは
71.7%であった。また、腰痛を有する者の中で、腰痛の原因で思
い当たることとして、移乗介助81.7%、排泄介助68.2%、入浴介助
53.8%の順であった。腰痛を有する者の中でRDQの日常生活の
障害が重い者が28.8%、程度が軽いものが42.3%であった。
【考察】今回当院の病棟職員において腰痛を有する者が多く存在す
ることが確認できた。また、腰痛により日常生活に支障をきたし
ている者も多くいた。この結果から、腰痛によりワークライフバ
ランスが乱れている職員に対して、腰痛に対する情報の提供、作
業管理、作業環境管理を実践していくことが課題である。
【目的】当院では平成23年から職員教育にeラーニングを導入し
た。eラーニングの現状を把握すること及び、今後の活用につい
て検討することを目的に見直しを行った。【当院のeラーニング】
テーマに沿って動画を自院で作成し、院内情報システム(以下
LAN)またはホームページで視聴後、3問の確認問題とコメントを
回答し、メールで送信する研修方法である。また、過去の院内研
修をLANのライブラリに掲載し、自由に視聴出来るようにしてい
る。
【方法】過去4年間に行ったeラーニングの内容、実施方法を見
直し、職員の意見を分析した。【結果】研修は4年間で21件実施し、
受講率は100%であった。医療安全、感染防止、情報管理という
テーマで全職種を対象としたものだった。研修結果、個人成績は
担当委員会で回覧し、職員にフィードバックするとともに、必要
に応じて所属長から個人に指導を行った。一方、職員意識調査で
はeラーニングは都合の良い時に受講でき、感想を書くと内容を
振り返ることができること、また、研修に参加できなくても後日
LANで見ることができると記載があった。加えてライブラリで
過去の研修を視聴していることもわかった。【考察】eラーニング
は研修時間の制約を解決する有効な手段であり、職員自身や所属
長が学習状況を把握することができることが確認できた。しかし、
単発のテーマでの実施であり、継続した学習が行えていない事が
分かった。
O81-2
O81-3
○岡山尭憲(看護師)
○山下兼王(介護支援専門員)
医療法人社団甲友会 西宮協立脳神経外科病院
医療法人共和会 南小倉ケアマネジメントセンター
回復期リハビリテーション看護師の職業アイデン
ティティと職務キャリア意識の傾向
新規事例検討会によるケアマネジメントへの効果〜
職員意識とサービス調整内容の変化に基づく分析〜
【はじめに】近年、看護師の活動場所は超急性期から施設、在宅ま
で幅広く、活発な制度改革が行われている。2000年には病院と
在宅との中間施設として回復期リハビリテーション(以下、回復
期リハと略す)病棟が導入され、ADL能力の向上と家庭復帰を目
指す医療が提供されている。そこで、所属毎に看護師としての意
識の違いを尺度を用いて調査し、ここに報告する。
【方法】18施設
295名へアンケート調査を実施。
「看護師の職業的アイデンティ
ティ尺度」と「看護師の職務キャリア尺度」を用いて調査した。
229名(回収率78.9%)から回答を得、その全てを有効回答とした。
対象の属性を回復期リハ、内科病棟、外科病棟、ユニット、外来、
精神科、手術室、透析室に分類し、得点結果は一元的な尺度とし
て取り扱い、単純加算による比較を行った。
【結果】職業アイデン
ティティの認識、職務キャリアに関する自己評価、いずれも回復
期リハ病棟が他部署より得点が高かった。
【考察】今回の研究は実
態調査であるために、結果の違いに対する要因の調査は行ってい
ない。しかし、先行研究では回復期リハ病棟における看護の特色
としては、入院中のADL拡大等の直接的ケア機能と、退院後の生
活を見据えた調整機能、相談機能も重要であるとされている。そ
のため回復期リハ病棟は、退院後の生活を鑑みた上でのPDCAサ
イクルを行う期間が他部署より長く、看護機能の実感が得られや
すいのではないかと推察される。
【目的】質の高いケアマネジメントを目指し、医師等の助言のも
と新規事例検討会(以下、検討会)を平成25年4月より実施してい
る。今回、職員の業務に対する意識とサービス調整に変化がみら
れたので報告する。
【対象と方法】職員10名を対象に、ケアマネジ
メントに対する意識変化についてアンケートを実施した。さらに
平成25年の新規利用者88名と、平成26年の新規利用者100名を対
象にサービス調整内容を比較した。【結果】アンケートでは、「具
体的な目標設定を意識するようになった」90.0%、
「アセスメン
トで生活全体を意識するようになった」80.0%等、検討会を通し
て業務一つひとつを意識するようになっていた。サービス調整で
は、福祉系サービスのみの利用は2.0%減少し、医療・福祉系サー
ビス併用も3.5%減少していたが、医療系サービスのみの利用は
3.7%増えていた。特に訪問看護が5.5%、訪問リハが6.4%と訪
問系の医療サービスが増加していた。
【考察】検討会では、事例に
対し医師等が直接助言を行なうため、病状等の評価の仕方など再
認識できるようになった。そのためアセスメントの幅も広がり、
ケアプランを作成する際、目標設定が具体的なものになったと考
えられる。また、目標等が具体的になることで、徐々にサービス
内容に変化がみられたのではないかと推察される。今後も検討会
を重ね利用者の人生観に寄り添える支援を行うため、質の向上を
図っていきたい。
161
O81-4
O81-5
○竹内正人(医師)1),板倉大輔1),室橋 敬4),島津博文2),
田丸由香3),竹内美佐子1)
○山上真弘(理学療法士),松岡丈司,谷 有人,石原佳子
1)袖ケ浦さつき台病院,2)介護老人保健施設 カトレアンホーム
3)さつき会ケアマネセンター,4)特別養護老人ホーム 袖ケ浦菜の花苑
医療法人誠和会 倉敷紀念病院 リハビリテーション科
地域包括リハケア実現に向けた組織内連携としての
「リハケア塾」の役割と効果 〜初級編〜
当院特殊疾患病棟の教育的介入システム導入による
ケア満足度の変化からみる教育期間の検討
【はじめに】特殊疾患病棟ではリハビリテーション(以下リハ)は
包括医療であり、リハ職が直接患者に十分に関わることができな
い現状がある。そのため、病棟スタッフとの協働が必要不可欠で
あり、リハ的ケアの病棟スタッフへの教育システムが求められる。
そこでリハ職による病棟スタッフへの教育的介入システムを導入
した。今回、ケア満足度の変化から教育期間について検討をした。
【方法】教育的介入システムとして、1)リハ職の特殊疾患病棟へ
の専任化、2)リハ職の病棟ミーティングへの参加、3)ポジショニ
ングの個別検討(姿勢、体転枕の位置など)
、以上3つを導入した。
システム導入に伴い、導入前と導入4ヶ月後、導入8ヶ月後に病棟
スタッフにケア満足度調査を行い比較した。質問項目は身体機能、
動作能力、座位機会、コミュニケーション、その他の5項目とし、
評価は「非常に満足」〜「非常に不満」までの5段階とした。統計
処理はSPSS 20を使用しScheffe法にて群間比較を行った。
【結果】システム導入前と比較したところ、導入4ヵ月後には、身
体機能(拘縮予防)
、コミュニケーションの項目に有意差がみられ
た。導入8ヶ月後には、身体機能(ポジショニング)の項目におい
ても統計的有意差がみられた。
【結論】特殊疾患病棟において教育的介入システムの導入により、
病棟スタッフがリハ的ケアを満足感を得て行うには4ヶ月〜8か
月と中長期的な教育期間が必要であることが示唆された。
【はじめに】当会は医療と福祉の法人を有する。高齢者・障碍者・
認知症のある本人、家族、スタッフの「よりよい生活とより豊かな
人生」への支援方法として、ICFに基づいた「基本的ケア」
「自立支
援」
「その人らしさ支援」をリハケア力として地域に浸透していき
たいと考えている。【目的】リハケア塾は、共に学び、お互いから
お互いについて学び、リハケア・ICFの理解と仲間づくりによる
実践への動機づけと人材育成、組織内の仕組みづくりをする。今
回は初級について報告する。
【対象】
医療と福祉の各専門職。
【方法】
平成25年度にリハケア塾を開催し法人内資格とした。初級、中級、
上級、指導者を想定している。初級の内容は、1.ICFの基本的理解、
2.リハケアの理解、3.基本的ケアの理解、4.自分を知る・他者を
知る、5.多職種連携・チーム力、6.多職種連携・信念対立であり、
演習やグループワークを多用した。最終的に試験を受け、合格者
に認定証を発行し、参加者25名中認定者は19名であった。アン
ケート調査を実施した。
【結果】参加者は高齢者がADL・QOLの
低下の悪循環に陥っている現状を感じ、ICFを理解することでア
セスメント力の向上が期待できると感じていた。また、多職種連
携の重要性、自己理解、他者理解の大切さを実感できていた。
【考
察】リハケア・ICFの実践のイメージ、リハケア推進の動機付け、
仲間づくりの初級の目標が概ね達成できた。
O82-1
O82-2
○今田美紗(社会福祉士)1),瀧川直秀1),中 千草2),安達千穂3),
池田美智子1),仲川祥代1),長野恵理1),山口知美1),安井憲司1),
江城久子1)
○小森浩史(理学療法士)1),森下奈由子2),入江隆三郎3),
入江聰五郎3)
大腿骨近位部骨折地域連携パスにおける骨粗鬆症治
療の現状
−骨粗鬆症リエゾンサービス開始による意識変化−
中規模ケアミックス病院の回復期における直入院の
影響について
1)入江病院 リハビリテーション科,2)入江病院 看護部
3)入江病院
1)医療法人社団甲友会 西宮協立脳神経外科病院 診療協力部 地域医療課
2)西宮協立リハビリテーション病院,3)西宮協立訪問看護センター
【はじめに】当院はケアミックス病院(急性期一般76床、地域包括
ケア18床、回復期50床、療養55床)である。回復期病床は中播磨
シームレス研究会に参加しながら紹介と自院で回復期リハ病棟2
の施設基準で運用している。以前まで紹介入院は一般病床で状態
を把握後、回復期病床へ移っていたが、連携パス改定により平成
26年5月から紹介直入院(直入院)の受け入れを開始した。その影
響について比較したので報告する。
【対象・方法】対象は当院回復期リハ病棟に直入院前の平成25年5
月1日〜12月31日(以下H25)と直入院後の平成26年5月1日〜12
月31日(以下H26)に入棟したものを脳血管、運動器疾患別に分
類し転機、FIMの変化を分析した。
【結果】H25と比較してH26は、入棟までの期間は短縮できたも
のの、入院時より施設、療養病院希望が多く在宅復帰率が低下し
た。転床者を除く実績ではリハ単位、FIM利得・利得率の増加が
みられた。
【考察】直入院の受け入れに際し、入棟時に院内担当者間カンファ
レンスを充実させ情報共有をはかったこともあり、リハビリの実
績では前年度を上回る効果がみられた。しかし、在宅復帰率は低
下したため、今後は施設、療養病院希望者でも在宅に復帰できる
よう、さらなる回復期としての工夫を検討していくことと紹介元
との連携を高めるなど対策が課題となる。
【はじめに】2014年に骨粗鬆症リエゾンサービス(以下OLS)制度
が開始され、当法人より3人の骨粗鬆症マネージャーが誕生した。
OLS開始前の準備段階から、様々な講演を通じて医療サイドの意
識が変わり、より積極的に骨粗鬆症に対する意見交換が行われて
いた。今回当法人の取り組みと、制度開始前の骨粗鬆症治療の現
状を報告する。
【対象と方法】大腿骨近位部骨折患者のうち地域連携パスを使用
し た399例 の う ち1:OLS認 知 前 の2010年-2012年 の221例( 男 性
61例、女性160例)と2:OLS認知後の2013年-2014年の178例(男
性48例、女性130例)を対象とした。平均年齢は1:83歳、2:81歳で
あった。対象群の内2次骨折(対側骨折)の割合、それらの症例の
骨粗鬆症治療の有無を調査した。1:221例中33例( 15%)、2:178
例中29例( 16%)であった。そのうち骨粗鬆症治療が行われてい
た数は1:3例( 9%)、2:14例( 48%)であり、リエゾンサービス開
始に向けての意識の変化により、骨粗鬆症治療率が上昇した。
【考察】OLSが始まり、今後当院でも1次、2次骨折予防の推進が期
待されるが、OLS開始前の意識変化だけでも骨粗鬆症治療率が上
昇していた。当法人では、
2015年より「骨リボン(Re・Bone)運動」
と称しOLSを開始した。今後本格稼働によりさらなる効果が期待
できると考える。
162
O82-3
O82-4
○松岡規代(看護師)
○中村太一(言語聴覚士)1),佐野裕美子1),渡邊亜紀1),森 淳一1),
佐藤浩二2),森 照明2),齋藤卓也3),佐々木真理子3),田中依子3)
一般財団法人神戸在宅ケア研究所 神戸リハビリテーション病院
1)社会医療法人敬和会 大分東部病院
2)社会医療法人敬和会 大分岡病院
3)社会医療法人敬和会 大分豊寿苑
回復期リハビリテーション病院が取り組む紹介元急
性期病院との連携について
〜入院前訪問面談アンケート結果を通して〜
地域に根ざした回復期リハ病棟を目指して、当院の
取り組み
【目的】当院は回復期リハビリテーション病院で全て急性期病院
からの紹介である。地域連携パスでの入院患者が大半を占め、当
院が初めての方が多く、スムーズな移行目的に転院前に急性期病
院に訪問し面談を行っている。今回アンケート結果から訪問面談
は地域医療連携を推進していく上で大切な取り組みと考え報告
する。
【方法】当院入院前に看護師が訪問し、患者・家族に急性期
MSWと共に面談を行っている。アンケート調査対象:急性期病
院担当者56名・訪問面談を実施した家族44名調査期間:2014年
12月1日〜12月28日【結果】 訪問面談に対する回答は、急性期病
院連携担当の看護師・MSWは「訪問面談が必要」89%であった。
理由は病状の確認、医療処置・看護ケアが直接に伝える事ができ
るが多数を占めた。患者・家族は「面談して良かった」96%であっ
た。理由は転院への不安の軽減、安心できたが多数を占めた。【考
察】訪問面談は、急性期の医師、看護師、MSW、セラピスト等、多
職種から情報を得、安全、安心な医療を提供していくための情報
交換の場と共に、早期から切れ目のない連携は患者、家族にとっ
て困りごとが少なく、安心した移行に繋がると考える。また連携
機関間の相互交流効果が深まり重要と考える。さらに地域包括ケ
アの中で回復期リハビリテーションの役割を発揮し、急性期・回
復期・生活期へとスムーズな移行ができる様に顔の見える連携を
今後も必要と考え継続していきたい。
【はじめに】地域包括ケアが叫ばれている中、どの回復期リハ病棟
においても地域連携を模索している事と推察する。当回復期リハ
病棟では、従来の情報提供書に加えケアマネジャー(以下、CM)
が立案するケアプランに沿ったオリジナルの連携シート、通称
「いきいきプラン(以下、プラン)」を作成し地域連携を強化して
いる。今回はこのプラン及びその有用性を紹介する。
【対象と方
法】プランは、入院中に獲得された生活機能を確実に在宅生活に
いかせること、また一層の生活機能向上を図ることを目的として
いる。平成27年4月から5月までに作成した13名のプランに対す
るCMの感想、並びに同年5月18日に開催した地域CM交流会に参
加した50名のCMの感想を通して有用性を検討した。
【結果】プラ
ンの活用により、在宅復帰に向けた課題や目標が明確となり、カ
ンファレンスや在宅訪問で回復期リハ病棟との情報交換が行いや
すくなったとの感想が多く得られた。また、ケアプラン立案に向
けてプランの情報が有用であった、退院前からの連携がスムース
に行えるなどの感想が得られた。【考察・まとめ】今回の取り組
みにて、在宅部門と共に退院後の支援を検討する機会が増え、回
復期と在宅部門における相互理解を深める一助となっていると判
断する。今後は活用頻度を高めると共に、退院後の在宅生活定着
度を一定期間追跡しシームレスな地域連携体制構築を図り、地域
包括ケアシステム構築に貢献していきたい。
O82-5
O82-6
○斉藤秀之(理学療法士)1),金子 哲1),大地 寛1),直井洋明1),
高木和宏1),上岡裕美子1),神林 薫1),沼尻一哉1),大曽根賢一1),
鈴木和江1),鈴木京子2),赤津明男2),宇佐美泰男3),
植草義史3)
○安尾仁志(理学療法士),相見真吾,酒井達也,篠山潤一
茨城県理学療法士会が取り組んでいる北茨城市にお
ける在宅医療・介護連携拠点事業
−2年目の実績と現状−
兵庫県における地域リハビリテーション推進体制の
再構築
兵庫県社会福祉事業団 総合リハビリテーションセンター
兵庫県地域リハビリテーション支援センター
1)公益社団法人茨城県理学療法士会,2)北茨城市
3)宇佐美歯科医院
【はじめに】兵庫県の地域リハ推進体制は、これまで県下に2つの
全県地域リハ支援センターと、9つの圏域(広域)リハ支援セン
ターを設置し、地域のリハビリテーション従事者に対する研修や
技術的支援等を中心に実施してきた。しかし、圏域支援センター
への聞き取りにより、いくつかの課題が明確となったため、今回、
地域リハ推進体制の見直しを行ったのでここに報告する。
【地域リハにおける課題】平成26年度当初に各圏域支援センター
を訪問し、以下の課題が明確となった。1)地域リハ事業の目的が
現状に合っていない。2)圏域支援センターは事業内容に困惑し
ており、委託費の減少と組織や個人への負担が増加している。3)
都市部、郊外、農村部等と圏域毎に地域課題が異なる。
【平成26年度の取り組み】各圏域担当者による連絡調整会議の開
催や、圏域の取組の一覧表の作成、各圏域支援センターへ訪問を
実施し、全県と圏域支援センターで今後の方向性についての協議
を重ねた。結果、地域包括ケアシステムの推進に向け、1)リハ専
門職のネットワーク化、2)市町による地域支援事業へ活用される
人材の育成と運用を、活動目標として位置付けた。
【今後の取り組み】平成27年度、圏域支援センターは、職能団体
による人材育成事業と連携しながら、地域リハ資源の把握と各市
町との関係強化に努め、地域支援事業に参画する人材のコーディ
ネートを行う予定である。
【はじめに】平成23・24年度の国の在宅医療連携拠点事業を受け、
平成25年度から「茨城県在宅医療・介護連携拠点事業」が実施さ
れた。茨城県理学療法士会が北茨城市の拠点事業者として3年間
事業に取り組む機会を得たので報告する。
【経緯】北茨城市は平
成23年3月の東日本大震災で甚大な被害を受けた。平成24年度茨
城県地域支え合い体制づくり事業費補助金により、日本理学療法
士協会が推奨していた「地域自立支援センター」を、北茨城市立総
合病院(現、北茨城市民病院)内に「北茨城地域自立支援センター」
として開設した。これを契機に、平成25年度から開始された茨城
県在宅医療・介護連携拠点事業のなかで、北茨城市における在宅
医療・介護連携拠点事業者として本会が3年間事業を委託された。
【実績】平成26年度は退院支援、日常の療養支援おける理学療法士
等の活動がそれぞれ21件、158件と飛躍的に増加した。新たにリ
ハビリテーションニーズを視点とした事例検討会を開催し、事例
を中心とした多職種連携の実践を可視化した。北茨城市の第6期
高齢者福祉・介護保険事業計画に「協議会の設置に取り組む」と
明記された。
【現状】平成27年度は事業最終年度であり、茨城県、
北茨城市、保健所、関係機関、住民などが一体となって本事業の
成果を創出する方向性である。
【考察】職能団体が一定の条件の
もとで在宅医療・介護連携に参画するモデルが示唆された。
163
O83-1
O83-2
○粕谷有実(理学療法士)1),赤池優也1),竹内正人2)
○徳田 唯(理学療法士),栗原 真,大島埴生
1)社会医療法人社団さつき会 袖ケ浦さつき台病院 リハビリテーション部
身体リハビリテーション課
2)社会医療法人社団さつき会 総合広域リハケアセンター
一般財団法人操風会 岡山リハビリテーション病院
地域包括ケアにおける回復期リハ病棟の役割の模索
( 1)−本人・家族を含めたチームでよりよく、より
豊かに−
円滑な他職種連携を図るために−岡山リハビリテー
ション病院での勉強会を通じて−
【はじめに】当院回復期リハビリテーション病院では、他職種間で
の連携を円滑に図るため、関係部署が集まり、勉強会を開催して
いる。その目的は、知識の共有ではなく、多様な思考を知り、連
携の基本となる他職種の相互理解を深めるためである。本論では、
勉強会の事例をもとに他職種連携の在り方を模索する。
【方法】勉強会でのディスカッション内容を分析した。
【結果】トイレ内動作で見守りが必要となる症例に関して、何度も
自立度の変更を検討していたが、転倒リスクを考慮して自立度の
変更が困難であった。しかし、見守りをさらに細分化することで、
「トイレの外で見守る」
「トイレの中で見守る」
「本人に気づかれな
いように見守り、様子をうかがう」という意見を得ることができ
た。
【考察】私たちはある程度、自分の先入観で物事を判断し、“自立、
見守り、一部介助、全介助”といった言葉のみで患者の自立度を表
している。今回の事例では“見守り”という意味合いについて、各々
でその意味合いが異なっている。担当間での話し合いやカンファ
レンスという形ではなく、勉強会という形をとることで、担当外
から多様な意見が出てきた。カンファレンスなどは無意識的に方
向性を定めてしまいやすい。勉強会という自由な発言の場で意見
交換を行うことで意見の多様性が生まれ、他者の思考を自身に取
り入れるきっかけとなると考えられる。それこそが他職種連携の
礎である。
【はじめに】当院は、
「病前の悪循環を明確化し、生活期で良循環
への転換」を図る取り組みを行っている。そこでは、患者のみな
らず家族自身もよりよく、より豊かになる支援を行なうことが可
能となる。【症例】常に監視を要する高次脳機能障害の長男の介
護を、長男妻が家事や農業をしながら行っていた。長男妻のQOL
を支えていた患者本人( 80歳代女性)が、広範囲脳梗塞による重
度左片麻痺と高次脳機能障害を発症した(要介護5)
。
【取り組み】
生活期のチーム調整として、退院前に2回「退院支援カンファレン
ス」
、退院後は当院リハ医による「リハケア外来」を実施した。ま
た、長男の高次脳機能障害を理解するデイサービスに、長男妻の
QOLを確保するため時間を合わせ利用、生活混乱期に訪問リハの
介入を設定した。
【結果】問題となるトイレ動作介助方法が、長男
妻が自宅でできる設定へ、長男が手伝える環境へ訪問リハスタッ
フの介入により入院期間中から設定できた。また、長男も患者の
介助を積極的に実施できるようになり、長男自身の役割も増えた。
【考察】1.
「より豊かにするための治療的環境作り」
:入院期間中か
ら、心理・環境面の1番の課題である長男妻へのアプローチを生
活期のチームで対応することができた。2.
「より良くするための
最適化を図る」:入院期間中から、本人・家族を含めたチームで
の交流を積み重ね、生活期とのズレを修正することで最適な方法
が設定できた。
O83-3
O83-4
○管田紳介(理学療法士)
○宗本香織(作業療法士)1),上藤恵子1),小野田光宏1),大嶋孝司2),
原早恵子2),井上 彰1),田中頼子1),中西郁郎1),西尾 健2)
特定医療法人成仁会 くまもと成仁病院
1)京都市地域リハビリテーション推進センター 支援施設課
2)京都市地域リハビリテーション推進センター
当院の回復期リハビリテーション病棟における在宅
復帰率向上について
地域支援者との連携で生活能力の向上に至った取り
組み〜重度記憶障害者のタブレットPCの活用〜
【はじめに】当院では平成26年5月より回復期リハビリテーション
病棟(以下、回復期リハ病棟)を新規に開設した。開設後より在宅
復帰率に安定した向上が得られにくい状況があり、その背景には
新規入院患者における重症者割合が高い事や家族が在宅生活を
イメージし難い事があった。今回、多職種にて在宅復帰率向上へ
の対策を行ったため以下に報告する。
【方法】回復期リハ病棟の
関連スタッフにて会議を開催し、毎月開催するカンファレンスに
て家族に対して多職種と共にADLに関する状況・指導を実際の
場面にて行い目標達成度を共有する、Functional Independence
Measure
(FIM)の採点をリハビリ・病棟の両方で行い、している
ADL・できるADLの差異を少なくし現状把握を行う対策を立案
し実施した。また平成26年5月〜平成27年4月における日常生活
機能評価、在宅復帰率の変化を経時的に調査した。
【結果】開設初
期と比較し対策後では日常生活機能評価にて改善がみられ、平成
27年4月では在宅復帰率84%であった。
【まとめ】
今回、
対策を行っ
たことにより多職種間における目標や現状把握等の共有がより密
にでき、重症患者のADL向上が得られた。また家族にとって在宅
生活を考える機会が増え在宅復帰に対する協力が得られ易くなっ
た点も在宅復帰率の向上に繋がったと考える。現在、当院は回復
期リハ病棟入院料2へ移行しており、今後も継続して家族や他職
種との連携を密に行っていく事が必要である。
【はじめに】当センターでは生活期への移行時の支援に関わるこ
とが多い。今回、受傷から8年目で転入院となった重度記憶障害
者に対し、2年間継続的に関わり、生活場面での実用的な記憶補助
具(タブレットPC:以下PC)の活用に至った取り組みを報告する。
【症例】35歳男性。頭部外傷による左上下肢麻痺、四肢・体幹失調、
高次脳機能障害(記憶・注意等)あり。予定管理ができずADLは
常に誘導が必要。(WMS-R:一般54.言語63.視覚70.注意63.遅延
50未満、FIM:61/126点[運45認16])【経過】OTが手順書を作成
し予定入力や確認、日記作成を促し、操作練習や家族指導を反復
するが、退院後の生活場面での活用は不十分。そこで、支援に携
わるヘルパーへ直接指導を開始。PC使用目的や外出援助時の具
体的な活用方法を繰り返し指導すると、ヘルパーがPC使用を促す
ようになり、症例のPC操作機会が増え手順を獲得。徐々に予定把
握や生活の振り返りも可能となり、自発的行動が増加。インター
ネット検索等、活用方法も拡大。それに伴い、OTと地域支援者と
の情報交換も積極的になり、支援方法も変化が見られた。
【まとめ】
記憶補助具の導入時は、本人や支援者に対する一方的な操作方法
の伝達に留まりがちだが、今回のように相互に連携しながら、生
活に見合った具体的な取り組みと実用的な活用を行うことが重要
である。それにより、対象者の生活能力の向上と、対象者に関わ
る地域支援者間の連携も期待できる。
164
O83-5
O83-6
○藤堂恵美子(理学療法士)
,脇田英樹,水野里枝
○逢坂伸子(理学療法士)1,3),内山 靖1),清水純一2)
多職種が在籍する訪問看護ステーションでの多機能
情報端末による情報共有の取り組み
地域ケア会議におけるリハ専門職の関与について 第2報〜地域包括支援センター主管課とリハ専門職
へのアンケート調査〜
1)公社)日本理学療法士協会 地域保健総合推進事業研究班
2)一般社団法人日本作業療法士協会 地域保健総合推進事業研究班
3)大阪府立大学 総合リハビリテーション学研究科
巽病院 訪問看護ステーション
【目的】多職種が在籍する訪問看護ステーションにおいては、職員
同士の情報共有が大きな課題である。そこで、全職員への多機能
情報端末(iPad)導入により、利用者の情報共有がスムーズとなっ
た取り組みについて報告する。
【方法】当ステーションで以前より使用していた介護事業者支援シ
ステム(HOPE WINCARE-ES V2)がiPad対応となり、平成26年
8月に全職員23名(看護師7名、理学療法士10名、作業療法士5名、
言語聴覚士1名)に1台ずつiPadを導入。試験運用を経て平成26年
12月より本格運用を開始した。
【結果】iPadで写真や動画を撮影することによって、利用者に対
しては姿勢や動作をその場でフィードバックできるようになり、
同じ利用者を担当している職員に対しては状態を伝えやすくなっ
た。また、褥瘡やポジショニング等を撮影することにより、看護
師との連携強化にも繋がった。さらに、その利用者を訪問したこ
とがない職員とも情報共有や意見交換が行えるようになった。
【考察】多職種での情報共有は、口頭のみよりも写真や動画を用い
ることで利用者像が明確となるため、申し送りがスムーズとなり、
意見交換による教育効果も高く、サービスの質向上へと繋がって
いる。今後は同法人内の居宅介護支援事業所や訪問介護事業所、
病院、老人保健施設とも情報共有を強め、地域包括ケアを見据え
た連携強化を図っていきたいと考えている。
【目的】リハ専門職が個別地域ケア会議(以下、ケア会議)で取り
組むべき内容を把握し、実践に必要な知識や技術を明らかにする
ことで、ケア会議の推進方法やあり方を提案していく。
【方法】平成25年度調査において、リハ専門職がケア会議に出席し
ていると回答した市町村の地域包括支援センター主管課(以下、
主管課)および出席したリハ職に郵送によるアンケート調査を
行った。調査対象者には調査目的などを書面にて説明し、回答を
もって同意したとみなした。分析は、ケア会議におけるリハ職の
役割等について比較・検証を行った。
【結果】主管課調査の回答134件(回答率:67.0%)
。そのうち、ケ
ア会議にリハ職が参加していたのは89件であった。リハ職調査
の回答は68名(回答率57.6%)そのうち、ケア会議に参加してい
たリハ職は53名(PT41.5%、OT56.6%)であった。リハ職が役割
を果たすために必要と思う内容は、リハ職の視点が生活に根ざし
たものであること( 94.4%)、地域の多職種と一緒に解決していく
心構え( 84.3%)であった。リハ職は個別課題では、課題の発見
( 83.0%)
、支援方法の検討( 81.1%)
、地域課題では、課題の発見
( 56.6%)
、ネットワーク機能の構築(35.9% )を実行できていると
回答。【結論】リハ職には、個別支援のみならず、地域課題に対す
る幅広い支援について理解していることが求められている。他職
種の専門性を理解し、協働できるリハ職の育成が重要である。
O84-1
O84-2
○小長野豊(理学療法士)
,井戸尚則
○伊藤理恵(作業療法士),平田篤志,中原啓太,平松良啓
医療法人社団峰会 東海記念病院 リハビリテーション部
西宮協立リハビリテーション病院
回復期リハビリテーション病棟リハスタッフと生活
期との連携について
〜ケアマネ交流会でのアンケート結果〜
回復期から生活期へと繋ぐ
−自分らしい生活への支援−
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟(以下、回リハ病棟)
は、回復期から生活期へ移行する「地域への架け橋」としての役割
が大きく、ケアマネージャ(以下、ケアマネ)や退院後に関わるス
タッフとの連携が重要になる。しかし、リハスタッフと生活期と
の連携が十分に行えているか疑問に思うことがある。
【目的】ケア
マネに対しアンケートを行い、リハスタッフと生活期との連携が
十分に行えているか明らかにすること。
【方法】アンケート内容
は1)リハサマリーは十分か2)退院前カンファは十分に行えている
か3)退院前カンファでのリハからの情報は十分か4)もっと積極的
に退院前カンファを開催したいか5)退院前カンファが行えなかっ
たときの理由6)その他とし、1)〜4)は4件法、5)6)は自由記載にて
実施した。【結果】1)十分50.0%・まぁ十分38.9%・やや不十分
11.1%・不十分0%、2)十分44.4%・まぁ十分22.2%・やや不十
分33.3%・不十分0%、3)十分38.9%・まぁ十分50.0%・やや不
十分11.1%・不十分0%、4)よく思う55.5%・まぁ思う38.9%・
あまり思わない5.6%・思わない0%、5)依頼しにくい57.1%・日
程が合わない14.3%・連絡がない28.6%であった。
【まとめ】リ
ハからの情報内容は概ね十分であったが、退院前カンファが十分
に行われていないことが示唆される。地域への架け橋である回リ
ハ病棟においては、積極的に地域の多職種とface-to-faceでの連
携を図ることが重要である。
【はじめに】
今回、作業選択意思決定支援ソフト(Aid for Decisionmaking in Occupation Choice:以下ADOC)を用いて設定したリ
ハビリ目標に対して、回復期リハ病棟から訪問リハへ一貫した情
報共有と実践を行うことで参加へ繋がった事例を報告する。尚、
本報告に際して本人の同意を得た。
【事例紹介】A氏、90歳代男性、妻と2人暮らし。 頸部脊柱管狭
窄症と診断、頸椎椎弓形成術施行後、当回復期病院入院。四肢不
全麻痺。両側感覚障害。退院時FIM101/126(運動68、認知33)、
MMSE28/30。
【介入経過】
〈回復期〉4ヶ月間実施。ADOC面接で家事の手伝いや
妻との外出を大切にしてきたと語った。重要な活動は、1)更衣、
2)食事、3)移動、4)入浴、5)洗濯を挙げた。初期のADL介入と後期
以降の自宅環境に合わせた介入を訪問リハスタッフと情報共有し
た。〈訪問リハの経過〉週2回、3か月間実施。1カ月目は自宅内動
作に介入。入浴が自立となった。2か月目から洗濯干しや買い物、
地域行事へ介入した。
【結果】ADOC(満足度の変化)1)更衣(1/5→5/5)、2)食事(1/5→4/5)、3)
移動(1/5→5/5)、4)入浴(1/5→5/5)、5)洗濯(1/5→5/5)。参加:妻と
の買い物、1日2回の散歩(地域の人との交流)、月1回の茶話会参加。
【考察】本事例におけるADOCで設定したリハビリの目標を訪問
リハへシームレスに引き継いだ実践過程は、医療・介護の連携と
リハビリの提供として重要であると考える。
165
O84-3
O84-4
○小滝雅博(介護福祉士・ヘルパー)
○米村武男(理学療法士),萩原美里,熊谷菜々,伊藤勝一
西広島リハビリテーション病院
IMSグループ明理会
介護老人保健施設 相模原ロイヤルケアセンター
介護福祉士が行う退院支援の取り組み
〜事例を通して見えた今後の課題〜
老健における自宅復帰に影響を与える因子
【はじめに】自宅退院が決まっている患者の入院から退院までの
関わり方と退院後に訪問調査を行うことで介護福祉士が行う退院
支援の課題について以下に述べていく。
【事例】78歳女性。くも膜下出血。四肢に明らかな麻痺なし。
MMSE:16点。HDS-R:10点。 入 院 時FIM:72 退 院 時FIM:
113
【経過】入院当初、見当識障害がありADLに声掛けや見守りが必要
であった。自宅復帰を目指して退院後の生活を想定しながら病棟
生活の場面で患者が動作で困った時や間違えた時に、その場で声
掛けし修正することを反復して行った結果、動作を習得すること
ができ自立となった。退院2ヶ月前から屋外歩行や入浴訓練を実
施し家族に介助指導を行った。退院1ヶ月前に外泊訓練を3回実
施し患者・家族が自信を得ることができ自宅退院となった。退院
後6ヵ月後に自宅訪問を実施し、家族の見守りのもと家事動作や
散歩など行い継続して在宅で生活することができていた。
【考察】ADL自立に向けて、入院早期から患者が動作で困った時
や間違えがあれば、その場で声掛けし修正することを反復して
行ったことが良かったと考える。今回、退院後に訪問したことで
高齢者が在宅で生活を継続するには家族の協力が必要であること
が確認できた。今後は、家屋環境だけでなく退院後、地域に馴染
めるよう家の周囲や近所の環境情報を得て退院支援を勧めること
が重要と考える。
【はじめに】地域包括ケアシステムの構築に向けて老健では在宅
復帰支援の推進を大きな役割の一つとしているが、退所を見据え
た利用者支援の難しさは多くの施設が課題としている。今回、老
健入所元を分類すると共に入所中のFIMの改善が自宅復帰の要
因となるかについて研究したので報告する。
【方法】平成26年4
月から27年3月に当施設を退所した利用者195例を、自宅復帰群
44例、在宅復帰施設群22例(有料・サ高住・ケアハウス・グルー
プホーム)
、非施設群129例(特養・老健・入院)に分類した。分
析は後ろ向き縦断研究とした。3群において、入所元からMannWhitney U-test with Bonferroui correctionを用い、自宅復帰群
においてもFIMの上昇幅を比較検討した。
【結果】3群では施設か
らの入所者がFIMの上昇幅で有意差があり、次いで病院、自宅で
あった。自宅復帰群においてFIMの運動項目では、入所時に比べ
退所時には、移乗・移動能力の項目が改善され、認知項目では認
知症が重度ではない事が認められた。
【考察】老健で積極的に関
わる事でFIMが改善され、自宅復帰が促進する事が出来た。老健
からの退所先は他の介護施設への入所希望が多く自宅復帰の意向
は少ないが、活動量の向上、認知面が保たれれば自宅復帰に繋が
る傾向にあった。また、家族にリハの見学、働きかけをしていく
事で自宅での生活がイメージ出来、最終的に自宅復帰に至った症
例もあり、介護者への支援体制の構築も重要だと考えた。
O84-5
O84-6
○熊谷菜々(作業療法士)
,米村武男,伊藤勝一
○佐藤昌利(理学療法士),高木 芽,幸野真希,舩山奈美子
IMSグループ明理会
介護老人保健施設 相模原ロイヤルケアセンター
一般財団法人 三友堂病院 三友堂訪問看護ステーション
老健におけるOTの関わり当施設のサービスを利用
しながら在宅生活を継続している一症例
人工呼吸器装着にて長期にわたり在宅生活を維持で
きた一例〜訪問看護師と連携による支援〜
【はじめに】老健OTは、利用者家族に寄り添い、精神的な関わりや
環境調整等を通してADLを向上させ、在宅復帰の強化を支援する
役割をも担っている。今回、入所から在宅生活の継続に至るまで
の老健OTとしての包括的な関わりを経験したので若干の私見と
共に報告する。
【症例】80代女性。要介4。左大腿骨骨折。介入時
FIM69点。HDS-R22点。
【経過】利用者家族の想いとして自宅ト
イレの使用が挙げられた。入所後訪問より、トイレ内は改修が必
要と判断し、動作の見守りを目標とする介入を開始した。当初、
移乗する際はコールを押す事を促すも、フロアとの関係性が築け
ない事でコールを押せず、自ら動き転倒を繰り返していた。その
後、OTが利用者とフロアの仲介となったり、積極的な声掛けや環
境調整を実施していくうちに、転倒はなくなり、動作が見守りに
て可能になった。退所前訪問で改修内容、福祉用具を提案する事
により、自宅改修後、試験外泊を行い、在宅復帰の運びとなった。
在宅復帰時のFIMは83点、HDS-Rは26点に向上した。現在は当施
設のデイケア、ショートスティを併用しながら在宅生活を継続し
ている。
【考察】
地域包括ケアシステムの構築を一層推進する中で、
今回担当した症例のように変わりゆく環境のなかでも、継続した
信頼関係を築く事が重要であると学んだ。今後も老健OTとして
利用者家族の精神面の安定を図り、自分らしい生活を最期まで続
ける事が出来るよう支援していきたい。
【はじめに】本症例は気管切開下人工呼吸器(以下TPPV)装着にて
退院、6年以上ADLがほぼ自立され、屋外歩行可能な状態で在宅
生活を維持されている。現在に至るまでの看護師とリハビリス
タッフとの連携と関わりについて報告する。
【症例紹介】70歳代
男性、H19年8月に肺結核後遺症及び慢性肺気腫にて慢性呼吸不
全となり、TPPV装着にてH20年7月に退院。妻と長男の3人暮ら
しでキーパーソンは妻。
【経過】H20年7月から訪問看護開始。平
日毎日の訪問と24時間対応体制をとり、病状観察、人工呼吸器管
理、介護者の精神的支援を実施した。TPPV装着にて行動制限あ
るものの、自室内では排泄動作を含めADL自立、下肢筋トレや歩
行練習も看護師により施行されていた。しかし、妻はTPPV装着
の夫を心配して外出もままならず、不安や精神的ストレスを募ら
せていた。また、H23年6月頃からポータブルトイレ動作時の呼
吸苦出現。胸郭の硬さや肩甲帯の可動性低下がみられた。主治医
指示にてリハビリ介入となる。【リハビリ介入後】1。リハビリス
タッフ介入による機能的向上 2。連携により情報と問題点共有
し、統一した援助の提供 3。妻の精神的安定【まとめ】看護師・
リハビリスタッフ間の連携にて情報を共有し、それぞれの専門性
を生かした関わりができたことが、病状の安定、ADLの維持、症
例・妻の精神面の安定を図れ、長期に渡り在宅生活維持へつながっ
たと考えられる。
166
O85-1
O85-2
○赤池優也(理学療法士)1),粕谷有実1),竹内正人2)
○東小百合(理学療法士)1),田末敦子1),蔦壁 梓1),伊藤恵美1,2),
荒堀由妃3),奥村 悠3),堀 大介4),白井里志5)
1)社会医療法人社団さつき会 袖ケ浦さつき台病院 リハビリテーション部
身体リハビリテーション課
2)社会医療法人社団さつき会 総合広域リハケアセンター
1)公益財団法人 丹後中央病院,
2)名古屋大学大学院 リハビリテーション療法学専攻,3)京都府丹後保健所
4)網野自動車教習所,5)京都府京丹後警察署
【はじめに】当院は「統合モデルの実現」ができるように取り組ん
でいる。そこでは、本人・家族だけでなく、スタッフもよりよく、
より豊かになることができる。
【症例】80歳代女性で、広範囲脳梗
塞による重度左片麻痺と高次脳機能障害。
「病識なく、注意力障
害もあり、転倒リスク高く歩行は困難」
(要介護5)と車椅子設定
と“諦め”て在宅復帰させた。退院後当院リハ医によるリハケア外
来にて「本人が歩きたいというから歩かせてあげたい」というデ
イサービススタッフは、
「専門職が居ないのにやっていいのか…」
と施設での歩行への関わりに“束縛”があった。
【取り組み】リハ医
の指示のもと、デイサービスの現場に出向き、歩行指導をするこ
とになった。
【結果】週3回のデイサービスで入院時よりも健側下
肢の筋力向上を認めた。指導後、短下肢装具手すり歩行、介護職
の軽介助で10mが安全にできるようになり、入院期間中からの本
人の“希望”が実現できた。回復期スタッフは“その人らしさの支
援”ができ、生活期スタッフは“束縛から解放”され、共に大きな成
長と学習が得られた。
【考察】回復期は医学モデル、生活期は生活
モデルを重視しやすい。お互いの弱点をシッカリ押さえながら、
お互いの長所を活かし合う多職種協働が、生活の場での「参加」に
おいて活かされた。スタッフもよりよくより豊かになることが可
能になる「統合モデルの実現」にむけてプログラムを緻密化して
いきたい。
【はじめに】丹後中央病院は、平成23年度に京都府より丹後地域リ
ハビリテーション支援センター(以下丹後リハセン)の指定を受
け様々な活動を行っている。丹後は、高齢化率の高い地域であり、
公共交通機関はあるが運行頻度が低いことや、山海地域の地理的
高低差などの理由から高齢者を含む殆どの住民が車を利用してい
る。このような地域環境の中で高次脳機能障害者や高齢者の自動
車運転について、丹後リハセン、あみの自動車教習所(以下教習所)
及び京丹後市警察(以下警察)と共同連携した取り組みを報告す
る。
【活動内容】1)教習所や警察との会議の開催 2)教習所の方
と岡山県への視察 3)教習所職員に対し作業療法士による高次
脳機能障害に関する勉強会の開催 4)事例検討会「自動車運転の
ためのリハビリテーション“車が足”丹後の高齢者の暮らしを支え
よう」の開催 5)FMたんごで、パーソナリティーと丹後リハセ
ン、作業療法士、教習所副管理者、警察交通課長との会談の収録・
放送【まとめ】丹後地域の生活の足である自動車運転について、関
係機関と連携を試みたことで高次脳機能障害者や高齢者の運転再
開に向けた情報を共有でき今後の支援に結びつけることができ
ると考える。地域包括ケアを推進していくために、今後も丹後リ
ハセンとして新たな課題や事例に対して医療・福祉・介護の連携
に止まらず垣根を超えた様々な職種や機関との連携が重要と考え
る。
地域包括ケアにおける回復期リハ病棟の役割の模索
(2)〜回復期リハ病棟スタッフとデイサービスとの
協働〜
丹後の暮らしを支える自動車運転再開に向けた連携
−地域リハ支援センターと教習所、警察との連携−
O85-3
O85-4
○大垣昌之(理学療法士)1),中西真一2)
○徳丸桂介(理学療法士)1,2),黒瀬一郎1,3),古宮敏浩1,4),吉村憲人1,3)
大阪府三島圏域における療法士間の連携
〜セラピスト幹事会を通じて〜
県協会の地区ブロックにおけるリハビリテーション
スタッフの連携と課題
〜リレー症例検討会を通して〜
1)大分県理学療法士協会 別杵速見ブロック,2)特定医療法人社団春日会
黒木記念病院,3)社会福祉法人農協共済 別府リハビリテーションセンター
4)医療法人健悠会 介護老人保健施設 ウェルハウスしらさぎ
1)社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院
2)社会医療法人祐生会 みどりヶ丘訪問看護ステーション
【はじめに】平成19年度から、地域リハビリテーションの課題検討
の場として、大阪府三島圏域(高槻市、茨木市、摂津市、島本町)
の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士によるセラピスト連絡会
が発足した。セラピスト連絡会(以下連絡会)の企画運営はセラ
ピスト幹事会(以下幹事会)が行っている。以下考察を交え報告
する。
【方法】幹事会は、大阪府三島圏域に在籍する急性期医療機
関、回復期医療機関、生活期施設事業所などに勤務する理学療法
士、作業療法士、言語聴覚士をもって構成される。また各職能団
体から代表者1名ずつを委員として加えて運営している。幹事会
では、圏域内のセラピストや関連職種との連携に関する議論や研
修会の企画開催などを実施している。
【結果】平成24年度連絡会
のテーマは、
「嚥下と栄養」とし、各職種から実践報告を実施した。
また、地域連携における各専門職の現状と課題を、各職種から報
告し現状を共有した。平成25年度連絡会のテーマは「医療と介護
の連携」とし、2015年12月に開催予定である。
【結論】病病連携、
病診連携、医療介護連携など様々な連携の重要性が謳われている
中、各職能団体において連携の課題や対策を議論し実践している
ところは少ない。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の連携を
議論できる場も少なく、今後関連職種との連携も含めてますます
重要になってくるため連絡会を企画する幹事会の位置づけは重要
となると考える。
【はじめに】今回大分県理学療法士協会 別杵速見ブロックにお
いて、各病期施設間の連携の強化を主な目的として、リレー形式
の症例検討会を企画した。その内容と今後の課題について報告す
る。
【内容】一症例の各病期(急性期・回復期・生活期)の担当者に趣
旨説明と発表の協力依頼をした。発表準備が円滑に進むよう、症
例ごとにコーディネーターを設け、発表者間の連絡調整等を行っ
た。発表のテーマは「各病期における重要課題」
「難渋した点」
「予
後予測」
「添書の重要性」を例として挙げた。検討会終了後に参加
者全員にアンケートを実施した。
【結果】アンケート結果として、参加者全員より今回の企画に対す
る高評価が得られた。各病期における着目点や課題を共有するこ
とができ、情報交換も直接行うことができたことは成果と思われ
る。また装具の作成時期、自宅環境の情報共有、予後予測、添書
に必要な情報など臨床的な課題も提示された。発表者・聴講者と
もにディスカッションを望む声が多く、次回の企画で検討したい。
【今後の課題】参加施設に偏りがあり、ブロック内全域の連携とし
ては不足の点があると思われる。各病期施設間の連携と情報交換
はまだ課題が残されており、協会の事業を通した連携が図れるよ
う今後も企画していきたい。
167
O85-5
O85-6
○伊藤勝一(看護師)
,米村武男
○宅野博明(理学療法士),川口津和
IMSグループ明理会 介護老人保健施設
相模原ロイヤルケアセンター
医療法人社団甲友会 法人連携委員会
介護老人保健施設における在宅復帰への取り組み
〜職員の意識向上と多職種連携〜
チームケア・地域連携を目指す“ち〜む甲友会”作り
〜セラピスト発ちーむ甲友会の活動報告〜
【はじめに】当施設における25年度の在宅復帰率は約10%であっ
た。今回、全職員の在宅復帰への意識向上と多職種との連携によ
り、在宅復帰率30%を目指した取り組みを行ったのでここに報告
する。
【方法及び取り組み】平成26年4月から平成27年3月の期間、在宅
復帰率向上のため、1.看取りケアの実施、2.施設環境の整備とし
て在宅復帰委員会の立ち上げ、フロアでの在宅復帰カンファレン
スの実施、勉強会の開催、3.サービスの向上として里帰り在宅復
帰、入所前後訪問、4.多職種との連携としてケアマネのフロア配
置、入所と通所サービスの連携、介護職によるフロアリハビリの
強化を計画した。
【結果】看取りケアの実施・勉強会・委員会活動などや家族の理
解のもとに里帰り在宅復帰を実施することにより、全職員の在宅
復帰への意識が向上でき、多職種との連携が図られた。その結果、
在宅復帰率30%を達成することができた。
【考察】今回、職員の意識向上と多職種の連携により在宅復帰率を
達成できた。利用者は「家に帰りたい」との思いを誰もがもって
いる。在宅復帰は最終的に利用者・家族の満足に繋がるものであ
る。今後も老健施設は中間施設としての役割を担えるように、利
用者の満足が向上できる取り組みを施設全体で行っていきたい。
当法人では、法人内で実践的な連携ができるように、平成22年「甲
友会連携ワーキングチーム」を発足した。法人内の様々な課題か
ら優先課題を抽出し、現場の声を集めて「企画会」として取り組
み、チーム作りを継続している。平成24年は、法人内の連携を深
めるための「交流」の方法を検討した。そのなかで、同一職種間の
法人内連携に課題があることが分かった。そこで、セラピストの
集まりである「セラピスト発ちーむ甲友会」が発足した。平成25
年〜26年にかけて、半年に1回、計4回実施した。お互いを知るた
めの情報交換と、法人内連携を体感し協働の理解を深めるために、
4施設の紹介とテーマを決めたディスカッションを行った。参加
者は、現場のリーダークラスで、法人内の患者のスムーズな流れ
からスタッフ教育まで、さまざまな視点からの意見を交わした。
会議は1時間という限られた時間であったが、情報交換に留まら
ず、お互いの悩みを共有し、法人全体の視点から自施設を見直す
機会にもなった。そして、現場からの課題として、法人内研修、
見学の見直しが必要ではないかとの声があがった。今後は、セラ
ピスト発ちーむ甲友会で抽出した課題を、現場からの声として、
各所属長と検討する。また、4施設での合同症例検討等を通じて、
さらに現場の若いスタッフが法人内連携や地域連携の視点を持つ
機会となるような企画を考えていきたい。
O86-1
O86-2
○野口歩美(言語聴覚士)
,横山治久,金子雅俊,玉川輝明,
塚本かよ子,中村祐喜,平原優美,山口ゆり子,藤村仁美
○水川佳子(管理栄養士・栄養士)
経鼻経管栄養から3食経口摂取へ 心理的変化と周
囲の関わり
食事を拒否する患者に病前の生活スタイルをふまえ
た環境、食事メニューを取り入れ栄養摂取の改善が
みられた症例
医療法人社団幸隆会 多摩丘陵病院
医療法人社団甲友会 西宮協立リハビリテーション病院 栄養科
【はじめに】重度嚥下障害による経鼻経管栄養から経口摂取に改
善した症例について、心理的変化と周囲の関わりに焦点を当て報
告する。
【症例】82歳男性、脳梗塞(左小脳半球、両側視床、左橋〜
中脳)。軽度上下肢失調、中等度運動障害性構音障害、重度嚥下障
害を認め、リハビリ目的で入院。
【経過】初回評価:RSST1回/30
秒間。改訂水飲みテスト基準1。右口唇麻痺、
舌の筋力低下あるも、
会話明瞭度(1)〜 (2)。嚥下咽頭期障害を主とし、藤島式摂食・嚥
下能力Gr2。入院生活のストレスと病気を受け入れられず易怒的、
苛立つ様子あり、摂食できないことへの不満を訴え続け、食事開
始を懇願される。現状を医師や看護師と共有し、誤嚥の危険性、
全身状態の管理等バックアップ体制を整えた上で少量の食物を用
いた直接的嚥下訓練を開始。しかし、痰の増加等が明らかとなり、
ご本人も“飲めない”という現実を認識し始めた。そこで、改めて
その原因や嚥下障害について説明、直接的嚥下訓練はご本人同意
の元に中止し、間接的嚥下訓練を集中的に実施した。病棟では、
十分な休息時間の確保等ストレス軽減を図った。嚥下食から経口
摂取開始。徐々に、ご本人も現状を受け入れ、最終的には安全な
食形態の選択が可能となった。
【考察】
ご本人の心理的状態を把握、
他職種と共有し介入したことで、病状の認識とリハビリに対する
気持ちにも変化がみられたことが、嚥下機能回復においても大き
な要因となったと考える。
【はじめに】食事拒否があり摂取量が低下、体重減少もみられた患
者に対し栄養士が食事場面に立ち会い観察することによって食事
摂取に対し改善が見られた症例について報告する。
【症例】86才
女性、脳出血にて当院に入院。入院時には経管栄養による栄養の
みであったが、入院2日目より昼食のみペーストハーフ食が併用
開始となり、入院8日目には3食経口摂取となった。入院50日目
頃から食事拒否により摂取量が2、3割程度となり体重減少がみら
れるようになった。また、認知機能の低下がみられ、発話は殆ど
ジャーゴンであった。病前はご友人と午前中に喫茶店にてお茶を
楽しむ生活をされていた。
【方法】ST訓練時に喫茶店にお茶をし
に行くという設定で身支度を整え、食堂にて軽食提供を開始する。
【結果】喫茶店の時間には発話は明瞭となり、会話が成立。 毎日
会話を交わし観察することにより個人の好みを察することがで
き、反応が良いものを中心に喫茶メニューを組んだことで栄養摂
取に努めることができた。
【まとめ】栄養士も患者の食事場面に
関わり観察することで、手ごたえを感じる栄養摂取に努めること
ができた。また、栄養補助食品の活用においても単に開封、提供
するのではなく、アレンジをすることで、食べる事への負担も軽
減できた。この症例を通して栄養士も患者を観察する目と栄養補
助食品の活用が個々に応じてアレンジ出来ることが重要と実感し
た。
168
O86-3
O86-4
○小島亜也奈(看護師)
,神戸有恵,丹羽郁子,木村隆文
○南カオリ(歯科衛生士),南 清和
社会医療法人大雄会
医療法人健志会 ミナミ歯科クリニック
家族が高い満足感を得るために
−早期より家族も介入することで経口摂取の一部獲
得が可能となった一症例−
開口困難な患者への専門的口腔ケア時の包括的アプ
ローチ
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟に入棟早期より家族に
も積極的に介入してもらい、経管栄養からの離脱は果たせなかっ
たものの、昼食の一部を経口摂取で摂取することが可能となり家
族が高い満足度を得た症例を経験したので報告する。
【症例】80
歳代男性。心原性脳梗塞(左中大脳動脈閉塞)にて保存的加療後、
第42病日に回復期リハビリテーション病棟へ転入。重度の右片
麻痺・全失語にてADLは全介助状態であり、体動活発にて落ち着
きがなく転倒リスクが高いため、抑制を必要とした。嚥下機能は
比較的保たれていたが、転入時はまだ経鼻経管栄養状態であった。
妻は自宅退院を希望し、3食とも経口摂取への移行を希望してい
た。
【経過】転入初日よりミキサー食の3食経口摂取にトライし、
中等量摂取可能であったため、経鼻胃管を抜去し、10日後には全
粥・刻み食へ変更した。しかし徐々に摂取量は低下し、妻ととも
に食材、環境等の変更を試みたが、転入25日目に経鼻胃管を再開
した。
最終的には経管栄養は離脱できなかったが、昼のみ病院食半量と
妻が持参するゼリーを経口摂取可能となり、施設入所となった。
退院17日後に、施設においても同様の量を昼のみ経口摂取は継続
できているとの報告を受けた。
【考察】妻の希望である経鼻胃管抜
去・3食経口摂取は達成できなかったが、多種々での経口摂取へ
の介入に早期より妻も参加したことで妻自身の満足感につながっ
たと考えた。
【はじめに】重度認知症、脳性麻痺、脳血管障害後の患者に口腔ケ
アを行おうとすると、開口ができず口腔ケアが困難な場合が多く
みられる。開口障害がある患者は唾液の分泌量も低下し自浄作用
の低下が起きる。また口腔内では1mg中10億の細菌を含むバイ
オフィルムが形成され誤嚥性肺炎の大きなリスクファクターとな
る。開口が困難な患者に口腔内の表層のみを清拭するだけではバ
イオフィルムは除去できず、同時に歯牙の裏側や歯肉、粘膜や舌
の清掃も困難となる。今回開口困難な患者に対して歯科衛生士に
よる専門的口腔ケアを行った症例を発表する。
【対象】開口困難な要介護高齢者
【考察】開口困難な患者へ口腔ケア行うにあたってまずは声掛け、
脱感作が必要である。バイオフィルムはブラッシングによる物理
的清掃のみでしか除去できないので開口チューブを用い、開口し
た状態で吸引器ブラシを用いて行う必要性があると考える。
O86-5
O86-6
○吉見二朗(歯科医師)
,南 清和
○下村真弓(言語聴覚士)1,2),石山寿子2,3)
摂食嚥下障害を有する患者へのアプローチ
STの認知神経アプローチにより栄養状態が改善し
た一例
〜嚥下障害のない整形疾患患者にSTが介入する意義〜
1)市立御前崎総合病院 リハビリテーション・センター
2)永生会 南多摩病院 リハビリテーション科
3)日本大学大学院 歯学研究科
医療法人健志会 ミナミ歯科クリニック
【はじめに】現在日本では、4人に1人が65歳以上という超高齢化
社会を迎えており、歯科医療の現場でも摂食嚥下障害を有する患
者を診療することが多くなっている。摂食嚥下障害患者に対する
我々歯科医師の役割は非常に大きく誤嚥性肺炎の予防たけではな
く、口腔機能の維持、向上、栄養状態の改善、患者のQOLの向上
に努めなければならない。今回は準備期障害の改善を行い、嚥下
内視鏡検査等の検査を行い、食事指導、支援等を行った症例を発
表する。
【対象】摂食嚥下障害を有する要介護高齢者
【考察】摂食嚥下障害を有する患者へ我々歯科医師の役割は歯科
治療のみではなく、摂食嚥下について包括的なアプローチを行う
ことが大切であり、様々な職種との連携を行うことが必要である
と考える。
【はじめに】高齢の骨折患者では、術後の認知機能低下により栄養
状態が悪化することがある。一方、整形疾患患者においては、嚥
下障害がない場合にST(以下、言語聴覚士)が介入する機会は少な
い。今回、STによる認知神経アプローチで栄養改善に至った症例
を経験する機会を得た。本症例を通じて、嚥下障害のない整形疾
患患者に対してもSTが介入する意義を検討する。
【症例】70代女
性、大腿部頸部骨折。BMI17、Alb2.6。術後に認知症が悪化、嚥
下食を介助摂取していたが、開口範囲が狭く十分な摂取量確保で
きず、リハビリが難渋した。 PTからの依頼で、16病日でST介入
に至った。
【経過】STは、食物認知障害を中核にとらえ、自発的
開口を目的に、一口大食を箸で自力摂取する運動学習を繰り返し
た。20病日で8〜10割摂取可能となり、持続的点滴は終了となっ
た。その後もリハビリ負荷に合わせ、吸綴反射を利用したストロー
摂取など、補助食品の選択で介入した。60病日でAlb3.1、手つな
ぎ歩行可能となり、リハビリ病院へ転院した。【考察】今回の症
例は、NST対象の整形疾患患者(7名/162名)のうち、唯一、嚥下障
害がないにも関わらずSTが介入した一例であった。骨折患者に
おいては栄養改善により、死亡率の低下やリハビリ期間の短縮が
期待されている。今回の症例を通じて、嚥下障害のない整形疾患
患者に対しても、STが積極的介入する意義はあると考える。今後
も、機能面だけではないSTの摂食嚥下アプローチを広く示してい
きたい。
169
O87-1
O87-2
○河内沙織(言語聴覚士)
,山田如子,田中さゆり,津山亜紀子,
上杉義隆,志田知之
○栄 諭子(言語聴覚士)1),木村純平2),松本里美3),小橋紀之4)
いつまでも美味しく食べ続けるために
〜誤嚥性肺炎を繰り返す患者の傾向より考える〜
当院の摂食嚥下障害患者の動向について
〜『高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイド
ライン』発表前後の比較〜
1)適寿リハビリテーション病院 リハビリテーション部 言語療法科
2)耳鼻咽喉科 木村医院,3)適寿リハビリテーション病院 医療相談室
4)適寿リハビリテーション病院
医療法人天心堂 志田病院
【はじめに】リハビリテーション病院を退院後、誤嚥性肺炎を繰り
返し発症する患者は少なくない。その結果、嚥下機能や全身機能
が低下し長期臥床状態となり、最悪死に至る場合もある。今回、
その予防対策等に資するため、誤嚥性肺炎を繰り返す患者の傾向
について調査を行った。
【対象・方法】平成22〜26年度の5年間のうち、誤嚥性肺炎の診断あ
るいは疑いで当院に2回以上入退院を繰り返した患者14名を対象と
し、基礎疾患、前回発症からの期間、嚥下機能、FIM等を調査した。
【結果】14名の内訳は、男性10名・女性4名、平均年齢は83.4歳で、
脳血管疾患、呼吸器疾患、心疾患を有している者が多かった。又、
要介護度が高く、FIM点数が低い程、誤嚥性肺炎を繰り返し発症
する傾向にあり、対象者の8割が3回以上の入退院を繰り返してい
た。更に、肺炎を繰り返す毎に嚥下グレードやADL能力、認知機
能の低下が認められた。
【考察】誤嚥性肺炎=絶飲食でなく、発症の際に適切に嚥下機能を
評価し、かつ早期に直接訓練を開始する事で、口と全身の廃用を
防ぐ事ができ、更に離床し口から食べる事で、呼吸機能の改善、
脳の活性化にも繋がると考えられる。誤嚥性肺炎を引き起こす原
因や、これによる負の連鎖を早期に断ち切る為には、身体機能・
栄養状態・呼吸・認知機能等の問題を総合的に捉え、患者・家族
指導のみならず、地域に向けて啓発活動を強化することも必要で
ある。
【目的】2012年6月に日本老年医学会より『高齢者ケアの意思決定
プロセスに関するガイドライン(人工的水分・栄養補給の導入を
中心として)』
(以下、ガイドライン)が発表された。ガイドライ
ン発表前後の3年間に当院を入退院した患者の動向を確認し、回
復期リハ病院のSTとして何をすべきか検討したい。
【方法】2011年7月〜2014年6月末までに入退院した患者で、入院
時嚥下グレード6以下146名の、栄養ルート、退院先について以下
の3期間に分けて比較した。期間A:ガイドライン発表前1年間
( 2011年7月〜2012年6月末)、期間B:ガイドライン発表後1年間
( 2012年7月〜2013年6月末)、期間C:ガイドライン発表後2年目
1年間(2013年7月〜2014年6月末)。
【結果】
入院時の経鼻胃管栄養の患者は、
期間Aは2名、
期間Bは8名、
期間Cは22名と増加していた。急性期病院への転院または死亡と
なった患者は、期間Aは3名、期間Bは14名、期間Cは27名と増加
していた。また急性期病院への転院や死亡となった患者44名の
うち38名が嚥下内視鏡検査にて喉頭知覚低下ありとされていた。
【結語】ガイドライン発表後、経鼻胃管栄養の患者、入院後に死亡
する患者、状態悪化や胃ろう増設目的で急性期病院へ転院する患
者が増加傾向である。また、急性期病院へ転院となった患者の多
くが、嚥下内視鏡検査で喉頭知覚低下を指摘されており、予後予
測のひとつとして喉頭知覚についての評価が有用であることが示
唆された。
O87-3
O87-4
○西岡奨太(言語聴覚士)1),大村智也1),石橋寛子1),立花恵理1),
山田梨絵1),直江 貢1),國友一史2),柳澤幸夫3)
○八木通博(言語聴覚士)1),荒木潮彦1),大崎あやの1),椎木麻理1),
馬場優香1),武石武雄1),早川亜津子1),北園和成2),田上寛容2),
高尾尊身2)
当院入院患者の口腔衛生状態に関連する因子の検討 1)医療法人久仁会 鳴門山上病院 診療協力部 リハビリテーション部門
2)医療法人久仁会 鳴門山上病院 診療部
3)徳島文理大学 保健福祉学部理学療法学科
種子島における急性肺炎・誤嚥性肺炎の再入院数と
関連要因についての一考察
1)社会医療法人義順顕彰会 田上病院 リハビリテーションセンター
2)社会医療法人義順顕彰会 田上病院
【はじめに】近年、誤嚥性肺炎予防の観点から口腔衛生の重要性が
提唱されている。当院では呼吸ケアチームによる呼吸ケアと併せ
誤嚥および誤嚥性肺炎リスクの高い患者に対する口腔ケア等、多
職種によるアプローチを展開している。今回、口腔アセスメント
結果より口腔衛生状態に関連する因子について検討を加えたので
報告する。
【対象と方法】平成26年12月から平成27年4月までの期間に口腔
アセスメントを行った214名(男性80名、女性134名、平均年齢81
±9.6歳)を対象とした。口腔アセスメントの結果より口腔衛生状
態良好群と不良群に分類し、両群間の経口摂取の可否、肺炎既往
の有無、障害老人の生活自立度、嚥下Gr 、口腔ケア実施上のリ
スク、FIM、HDS-Rを比較検討した。統計解析にはχ二乗検定、
Mann-WhitneyのU検定を用い、有意水準は5%未満とした。
【結果】214名中53名( 24%)が口腔衛生状態不良であり、経口摂
取の可否、嚥下Gr 、口腔ケア実施上のリスク、FIM、HDS-Rに有
意差を認めた(p<0.05)
。その他の項目は有意差を認めなかった。
【考察】兵頭らは、自立高齢者に比し言語、咀嚼、嚥下等の機能障
害を有する症例において口腔衛生状態不良者が多いと報告してい
る。また、田村らは非経口摂取者の唾液分泌量低下による口腔機
能低下を招来するリスクを指摘している。以上より、本研究で抽
出した嚥下機能、認知、心身生活機能の向上を図り経口摂取を促
進することが口腔衛生状態の改善に繋がるものと示唆された。
【目的】当院に入院する急性肺炎または誤嚥性肺炎患者に対する
臨床的な印象として、症状の再発により入退院を繰り返している
ことが挙げられる。再発予防を目的として、当院における上記疾
患による再入院数とその関連要因との共変関係を検証する。
【方法】H24年10月〜 H26年9月に退院した患者の中で対象疾患
により2回以上入院した70名を抽出した。その後、入院数n回のう
ちn-1回目退院時のデータを調査した。1.入院数、2.総タンパク数
(TP)、3.藤島の摂食嚥下能力グレード(藤島Gr.)、4.基本動作能力、
の4項目を調査し、1.を目的変数、2.3.4.を説明変数、p<.05を統
計学的有意とする重回帰分析を実施した。
【 結 果 】各 変 数 の 算 術 平 均 お よ び 標 準 偏 差 は 入 院 数2.957回
(SD=1.184)、TP6.405mg/dL(SD=0.786)、藤島Gr.5.657(SD=3.049)、
基本動作能力26.64点(SD=35.34)であった。偏回帰係数検定の結
果、藤島Gr.のみ有意差を認め(p=.02)、TP(p=.60)、基本動作能力
(p=.45)は有意差を認めなかった。
【考察】本研究の結果、藤島Gr.のみ目的変数に影響を与えること
が明らかになった。TPについて対象には低蛋白の傾向があると
示唆される。基本動作能力について対象は入院前にベッド上また
は車椅子生活の中心であったと考えられる。再発予防として嚥下
機能や栄養状態・活動性など幅広いアプローチが求められる可能
性があること、そして院内スタッフや院外関係者との他職種連携
が必要であることが考えられる。
170
O87-5
O87-6
○田中奈三江(言語聴覚士)1),堀江弘恵1),寺田亜弥1),宗川早苗1),
能口祥子1),竹下康子2),岩水 淳2),藤田亜希子2),浅江由美子3),
利川優子3),佐田順子3),阿部香織3),岩上隆紀4),森田祥弘4),
手塚康貴1,5)
○大森雄仁(言語聴覚士),藤田圭絵,山本朋美,渡邉 薫,
大川内柚香
口腔内環境と嚥下機能の関連について
急性期病院における嚥下障害患者の現状
〜誤嚥性肺炎患者を対象とした調査〜
一般財団法人操風会 岡山旭東病院 診療技術部
リハビリテーション課
1)阪南市民病院 リハビリテーション室,2)阪南市民病院 歯科口腔外科室
3)阪南市民病院 看護部,4)阪南市民病院 医療診療部 歯科口腔外科
5)府中病院
【はじめに】近年、早期退院が推奨されているが、肺炎を機に嚥下
能力が低下したり病前と同様の生活復帰が困難となる症例も存在
する。当院の誤嚥性肺炎(以下APN)患者について実態調査を行っ
た。
【対象・方法】2012年〜14年にAPNで入院し、病前に経口摂取を
行っていた52名(男性33名 女性19名 平均年齢80.7歳)を対象
に、退院時嚥下レベル7以上を経口群、7未満を非経口群とし各人
数を算出し、年齢、FIMgain、転帰先を調査した。
【結果】経口群33名( 63%)。内、嚥下食対応26名。非経口群19名
( 37%)。内、胃瘻造設者6名。両群でFIMgainに差を認めた。転
帰先は、総合・療養型病院、自宅や施設があり、非経口群では転
院が多く病前の生活環境へ戻れた者の割合は26%であった。
【考察】対象者の約37%は経口摂取再獲得が困難であった。当院
は、パーキンソン病を有し嚥下障害が重度であるAPN患者も多
く、本結果に繋がっていると思われる。非経口群の多くは病前環
境への復帰が困難で、栄養確保手段が不安定なことや胃瘻造設に
よる介護負担の増加、身体や認知機能の改善が不十分であったこ
とが影響していると考えた。経口群でも嚥下食対応が必要であっ
た者が多く、APN患者に対しては疾病治療だけでは不十分であ
り、早期からSTが介入し嚥下機能の評価や訓練を行うとともに、
安全な経口摂取が継続できるよう対象者やご家族への指導にも取
り組んでいく必要がある。
【はじめに】当院では多職種による口腔ケアワーキングチーム(以
下:口腔ケアWT)があり、Eilersらによる報告を参考に院内で共
通の口腔アセスメントガイドシート(以下:OAGシート)を用い
て口腔環境を評価している。今回、口腔ケアWTが介入している
患者の中から、言語聴覚士が介入している嚥下障害を有する患者
の嚥下機能とOAGシートのスコア(以下:OAGスコア)との関連
について調査したので報告する。
【方法】2014年4月〜9月の口腔ケアWT及びSTが介入している嚥
下障害患者46名を対象とした。嚥下機能の評価として藤島式嚥
下グレード(以下:嚥下Gr)を用いた。口腔ケアWT初回介入時よ
り介入終了時の嚥下Grが1以上向上した群を嚥下Gr改善群、不変
または1以上低下した群を嚥下Gr非改善群とした。1.OAGスコア
について、口腔ケアWTの介入時と、終了時で比較した。2.介入終
了時のOAGスコアと嚥下Grの関連性について調査した。統計処
理は、1ではWilcoxonの符号順位検定を、2ではスピアマンの順位
相関係数を用いた。
【結果】1.嚥下Gr改善群では、OAGスコアも改善となるものが有
意に多く(p<0.05)
、嚥下Gr非改善群では、OAGスコアの低下が
認められた(p<0.05)。2.OAGスコアと嚥下Grには高い相関関係
を認めた(r=-0.73)
。
O88-1
O88-2
○八木澤研介(言語聴覚士)
,櫻井貴之,泉理咲子,伊藤 隆
○福井茉亜子(言語聴覚士),梅澤謙介,佐藤高大
札幌西円山病院 リハビリテーション科
北海道勤労者医療協会 勤医協苫小牧病院
内服時の姿勢に完全側臥位法を取り入れた一症例
完全側臥位法によって経口摂取を確立した症例
【はじめに】1日に9回の内服を必要とするパーキンソン病患者に
対し、内服時の姿勢に完全側臥位法を取り入れた。ムセの減少な
どの効果が認められたため、考察を交え報告する。
【症例紹介】70代女性。Hoehn&Yahr stageV、嚥下Gr.7、FIM49
点(平成26年9月)
。
【経過】平成26年10月、内服時のムセが多くなり、姿勢を端座位に
設定するが効果は殆ど認められなかった。平成26年11月、完全側
臥位法での内服をSTリハビリ内で試みたところ、ムセが減り湿性
嗄声も聞かれにくい為、内服時の姿勢を同方法に変更した。症例
自身「側臥位の方がムセないし楽」と話され、看護師からは内服時
のムセが減少したことや、ポジショニングが容易となったことで
負担が軽減したとの報告を受ける。しかし、サクションで薬色の
痰が引けたという報告や、内服後数分経過してからジュースを飲
んだ時にムセて薬が出てきたという報告が数回聞かれた。
【結果と考察】完全側臥位法の導入により、9回行われる内服を安
全に行うことが可能となり、症例と介助側双方の負担を軽減させ
ることが出来た。同方法は咽頭に貯留スペースを作り嚥下する方
法の為、サクションで薬色の痰が引けたという報告などから、咽
頭に残留していた可能性は否定できない。完全側臥位法は全症例
に適した姿勢とは言えないかもしれないが、摂食姿勢を検討する
上で選択肢の一つとして加えるべきと考えられる。
【はじめに】入院時に経口摂取のみでの栄養確保は困難と考えら
れたが、完全側臥位法実施により3食経口摂取を確立でき自力摂
取を獲得した症例を担当したため報告する。
【症例】80代、女性、間質性肺炎・誤嚥性肺炎発症。息子と2人暮
らし。自宅退院希望。自宅でもムセがあり誤嚥性肺炎を繰り返し
ていた。
【初期評価】ギャッチ60度・全粥・細かい刻みトロミ食
を自力摂取も数口で嚥下後のムセ(+)、喉頭拳上範囲・スピード低
下、喀出力低下、痰絡み(+)、易疲労性【経過】ミキサートロミ食へ
変更もギャッチ位では咽頭残留・嚥下後のムセ認め疲労感強いた
め、完全側臥位法を実施。ムセや疲労感なく全量摂取可能。4か
月後やわらかご飯・軟菜一口大へ形態アップ。完全側臥位法にて
自力摂取を獲得し経口摂取のみでの栄養確保が可能となった。
【考
察】完全側臥位法とは鶴岡協立リハビリテーション病院の福村が
考案した方法である。側臥位をとることで咽頭側壁を底面とする
空間に食塊を貯留でき、披裂間切痕からの誤嚥を防ぐことが出来
る。今回担当した症例は嚥下反射遅延による食塊の早期咽頭流入
や、咽頭クリアランス低下による咽頭残留後の披裂間切痕からの
流入が考えられ、側臥位をとることで誤嚥のリスクを軽減できた
と考える。今後、咽頭期が重度で経口摂取の強い希望がある症例・
早期に経口摂取開始が望ましい症例等には一つの手段として提案
していくことも有効ではないか。
171
O88-3
O88-4
○堀江弘恵(言語聴覚士)
,能口祥子,増井新悟,二見孝明,
湊谷勇人,橋本 篤,谷口真基,板野郁也,吉木玲子,
寺田亜弥,宗川早苗、田中奈三江,手塚康貴,藤本和己
○黒部和子(言語聴覚士),加藤 夕,木倉敏彦,神谷千春,
河浦恭子,藤田明美
舌骨の支持性と喀出力の改善に焦点をあてた嚥下訓
練の試み
回復期の訓練において完全側臥位が有用であった脳
梗塞後の重度嚥下障害
阪南市民病院 リハビリテーション室
冨山県高志リハビリテーション病院
【はじめに】嚥下訓練の結果、経口摂取が可能となっても、間もな
くして再び誤嚥性肺炎をおこして再入院となる症例を経験するこ
とがある。今回、舌骨の支持性と喀出力の両面に焦点をあててア
プローチした結果、退院後も良好に嚥下機能を維持できている症
例を経験したので、報告する。
【症例】2013年4月〜2015年5月に、
誤嚥性肺炎で入院した63歳から87歳の男性3症例で、舌骨下垂が
高度にみとめられ、湿性嗄声があり、不顕性誤嚥が顕著であった。
【経過】訓練開始時、全症例に湿性嗄声・咳払い困難・仰臥位での
頭部挙上困難・舌骨下垂2横指・喀出不全・咽頭残留感の乏しさ・
不顕性誤嚥がみとめられた。主に舌骨上筋群の筋収縮や声門閉鎖
を促す運動とアクティブサイクル呼吸法の指導により、無理なく
順調に舌骨の支持性と喀出力の改善が得られた。併せて、姿勢調
整も行うことによって、不顕性誤嚥のリスクを最小にして訓練を
すすめることができた。また、退院後半年以上を経過しても効果
は持続し、誤嚥性肺炎を再発することなく、自宅で経口摂取を継
続できている。
【考察】嚥下機能の改善、
誤嚥性肺炎の再発予防に、
舌骨の支持性と喀出力を高めるアプローチは有効であったと考え
る。また、同時に、姿勢調整の検討も不可欠と思われた。
【はじめに】完全側臥位法は、咽頭の構造に着目して誤嚥のリスク
を軽減することで重度嚥下障害患者でも経口摂取を可能とする補
助技法である。今回回復期リハビリの過程でこの方法を使用し、
嚥下機能の改善に繋げた経験を報告する。【症例】70代、男性。心
原性脳梗塞(右側頭葉、後頭葉、視床背側)を発症、左片麻痺及び
体幹失調症状が出現。その後左小脳半球にも梗塞が出現し、ADL
はほぼ全介助となった。57病日に当院へ転院となった。【経過】
転院時、発語器官の運動には問題はなかったが、発声は声量の低
下・湿性嗄声を認めた。栄養管理は経鼻経管栄養にて行っていた。
65病日に座位でVFを実施したところ、舌での送り込み不良、嚥下
反射遅延、喉頭挙上不良、舌骨の上前方への運動制限があり嚥下
中誤嚥を認めた。さらに喉頭蓋谷・梨状窩に残留を認めた。73
病日にVEを実施、座位では唾液の誤嚥を認めた。完全側臥位で
は喉頭侵入・誤嚥なく嚥下可能であったため、翌日からこの体位
でゼリーでの直接訓練を開始した。その後段階的に食事回数・食
事量を変更し、132病日には座位での3食経口摂取が可能となり、
161病日に退院となった。
【考察】座位では誤嚥のリスクが高い患
者に対し完全側臥位法を用いることで、直接訓練が可能となりそ
の後経鼻経管栄養から経口摂取に至った。本法の補助技法として
のメリットだけではなく、直接訓練を継続できるというメリット
も重要と考える。
O88-5
O88-6
○木倉敏彦(医師)1),藤本万里2),狩山 栞3)
○山崎隆博(理学療法士)
1)富山県高志リハビリテーション病院 内科
2)富山県高志リハビリテーション病院 言語聴覚科
3)富山県高志リハビリテーション病院 看護部
医療法人崇徳会 田宮病院 コメディカル部 リハビリテーション室
完全側臥位法での直接摂取訓練が有効であった深頚
部膿瘍術後の嚥下障害
ポジショニングによる呼吸・嚥下への即時的効果
−寝たきり者のリハビリテーション・ケアを考える−
【目的】個別評価に基づいたポジショニングにより、頚部や顎関節
の筋緊張と関節可動域(以下、ROM)、呼吸や嚥下への即時的効果
が得られた長期臥床患者を経験したため、報告する。
【症例】90代女性。脳梗塞、認知症。[介護度]要介護5[日常生活自
立度]C-2【方法】ハンドリングにて脊柱伸展と胸郭拡張差の小さ
い側の胸郭の拡張を促す位置を評価し、クッションを設定。呼吸
と嚥下の状態を評価しながら足上げ15°、背上げ20°とした後圧抜
きを実施。施行前後の比較として、頚部と顎関節のROM、頚部
前屈と閉口の筋緊張、呼吸数、呼吸様式、吸気時の喉頭下制距離、
唾液嚥下時の様式と喉頭拳上距離を評価。
【結果】(施行前→施行
後)・ROM:頚部前屈-40°→-10°、顎関節(無歯のため口唇間を計
測)3.5cm→0cm・筋緊張(Modified Ashworth Scale):頚部前屈
3→1+、閉口2→1・呼吸数:26回/分→20回/分・呼吸様式:口→
鼻・吸気時の喉頭下制:1.06±0.22cm→0.32±0.04cm・嚥下様式:
開口→閉口・嚥下時の喉頭拳上:1.0cm→2.5cm【考察】個別評価
に基づいたポジショニングにより、嚥下の阻害因子である頚部後
屈位や異常筋緊張、開口頻呼吸や開口嚥下、吸気時の喉頭下制の
軽減を即時的に認めた。生命維持活動である呼吸・嚥下の安楽化
は、同じ姿勢を長時間強いられ、苦痛を訴えることも困難な長期
臥床患者にとって、一時的な苦痛の緩和だけでなく、より安楽な
生活をより長く営むことに繋がるのではないか。
【はじめに】深頚部膿瘍は術後に嚥下障害を合併することが少な
くない。今回、術後4ヶ月以上にわたって改善に乏しい症例を紹
介され、リハビリテーションによって改善を見たのでその経過を
報告する。
【症例】61才、男性。深頚部膿瘍の診断でA病院耳鼻咽
喉科へ入院した。術後嚥下障害が残存し、バルーン拡張・頭部挙
上訓練等の嚥下リハを行ったものの経口摂取に至らず、141日目
に当科へ紹介転院となった。
【入院後経過】入院時VFでの評価で
は、嚥下反射の遅延と嚥下力の低下・咽頭残留を認めた。通常の
体位での直接摂取訓練では誤嚥のリスクが高いと考え、完全側臥
位でのVEを行った。その結果、側臥位であれば誤嚥のリスクは
回避可能と判定し、直接摂取訓練を開始した。その後は徐々に摂
取量を増やしていき、経管栄養から離脱し、更に食種を変更して
いった。機能の改善が見られたと判断してVFで通常体位でも摂
取可能になっていることを確認し、最終的には坐位で通常の食事
摂取が可能となった。
【考察】直接摂取訓練が危険な場合は間接訓
練が主となるが、特に理解力に乏しい方などでは困難も多い。ま
た、嚥下力増強のためにも直接訓練の利点は大きいと考えられる。
今回、誤嚥のリスクの少ない体位である側臥位を用いて早めに直
接訓練を行ったたことが改善につながったものと考える。【結語】
完全側臥位法は重症例の摂取法としてだけではなく、早期に直接
訓練を行うためにも有効な方法である。
172
O89-1
O89-2
○佐野嘉美(作業療法士)
,三穂野大樹,大橋妙子,今田吉彦,
中島雪彦
○立川賢佑(言語聴覚士)1),中村太一1),衛藤恵美1),渡邊亜紀1),
森 淳一1),佐藤浩二2),森 照明2)
医療法人社団寿量会 熊本機能病院 総合リハビリテーション部
1)社会医療法人敬和会 大分東部病院
2)社会医療法人敬和会 大分岡病院
パーキンソン病患者における体重減少の要因検討 〜パーキンソン病統一スケールを用いて〜
【はじめに】臨床において、パーキンソン病(以下、PD)患者の体重
減少に伴い身体機能・ADL能力低下に繋がる印象を受ける。しか
し、明らかな要因なく体重減少しているPD患者は少なくない。そ
こで体重減少の要因を検討し作業療法(以下、OT)評価の一助とす
る。
【対象と方法】平成23年1月〜平成26年12月の期間で当院に2
回以上入院したPD患者で、1)誤嚥性肺炎や骨折など明らかな合併
症がなく 2)全食経口栄養摂取 3)Hoehn&Yahr stage2〜5の条
件を満たす57名である。
体重が減少した29例を体重減少群(以下、WL群)、体重が安定して
いた28例を体重安定群(以下、WS群)の2群に群分けした。PD統一
スケールの抑うつ状態、意欲・自発性低下、嚥下障害、食事動作
能力、振戦による障害度、頚部固縮、ジスキネジアによる障害度、
食思不振の項目を調査し、多変量解析(数量化2類)により体重減
少への影響度を分析した。
【結果】食事動作能力、嚥下障害、意欲・
自発性低下、頚部固縮、振戦による障害度、食思不振、抑うつ状
態、ジスキネジアによる障害度の順で影響度が強かった。相関比
は0.78、判別的中率は87%であった。
【考察】先行研究同様、今回
の調査でも食事動作や嚥下障害は体重減少への影響が強く、意欲・
自発性低下による影響も示唆された。今後、OTとして食事動作
指導や食事環境整備は勿論、意欲など精神面の経時的評価により、
PD患者の体重減少による身体機能・ADL能力低下を予防したい。
回復期リハビリテーション病棟退院後の摂食・嚥下
障害者の経過に関する調査報告
【はじめに】当回復期リハビリテーション病棟(以下、回リハ)で
は、食べられる口づくりに向け、口腔リハ・ケア、医科歯科連携、
チームでの栄養管理の徹底に積極的に取り組んでいる。今回、回
リハを退院した摂食・嚥下障害者の退院後の食形態や食事回数な
ど食事状況に関する調査を行ったので考察を加え報告する。
【対象・方法】対象は平成26年度中に回リハに入院し、在宅復帰
した158名の内、入院時の摂食・嚥下状況のレベル(以下、レベ
ル)が9以下であった36名。男性25名、女性21名、平均年齢78.0±
10.7歳。方法は、介護支援専門員または施設職員に電話にて食事
状況の聴き取り調査とした。
【結果】レベル改善者は3名、低下者6名、維持者27名であった。改
善者は3名とも胃瘻造設者であり、低下者のうち4名も胃瘻造設者
であった。胃瘻造設者において、改善と低下に分かれた要因は食
事介助への家族の介入頻度の影響が考えられた。
【考察】対象者の8割以上が維持・改善者であったことから当院回
リハでのアプローチに一定の効果が得られたと考える。また、重
度嚥下障害者においてレベルの改善、或は低下を左右する要因に
家族の介入が挙げられたことから、今後、重度嚥下障害者の退院
支援を行う上で家族指導の重要性が示唆された。
O89-3
O89-4
○今野公二(言語聴覚士)1),菅沼宏之2),東出志帆1),木下 瞳1),
桝田賢一1),竹林浩美1),今城良太1),清野菜摘1),三好美里1)
○二宮静香(歯科衛生士),吉良真奈美,高倉李香,松尾佑美,
山添淳一,平塚正雄
1)札幌東徳洲会病院 リハビリテーションセンター
2)札幌東徳洲会病院 リハビリテーション科
医療法人博仁会 福岡リハビリテーション病院 歯科
急性期病院としての摂食嚥下障害患者の地域・施設
間連携について〜介護施設・居住系サービス事業所
へのアンケート調査をもとに〜
リハビリテーション医療に携わる看護師の口腔ケア
に関するアンケート調査
【目的】急性期や回復期の医療現場において看護師の口腔ケアへ
の関心は高いが、口腔ケアの手技や口腔に関する症状に対しては
苦慮している看護師も多い。今回、我々は脳卒中医療に携わる急
性期病院と回復期病院に勤務する看護師の口腔ケアに関する実態
を把握する目的で調査を行った。
【対象】対象は急性期病院に勤務する看護師42名(平均年齢:33.5
±6.8歳)と、回復期病院に勤務する看護師21名(平均年齢:36.5
±5.6)とした。調査方法は当院歯科で作成した口腔ケアに関する
アンケート調査用紙を用いて行った。
【結果】看護学生時代に口腔ケアに関する講義などを学んでいな
かったものは急性期病院勤務者で52.4%、回復期病院勤務者で
28.6%であった。看護師の資格取得後においても口腔ケアの研修
を受けていないものは急性期病院勤務で16.7%、回復期病院勤務
者で52.4%であった。口腔ケアで困った内容に関しては、両病院
勤務者ともに開口指示が得られない患者の口腔ケアと答えたもの
が多かった。
【考察】口腔ケアの手技などに苦慮している看護師が多い理由と
して、口腔に関する知識や口腔ケアの基本的な技術の習得を受け
る機会が少ないこと、開口指示が得られない状態の患者に接する
機会が多いことなどがその要因と考えられた。脳卒中医療に携わ
る看護師への口腔に関する知識の情報提供や口腔ケアの技術移譲
を行う環境作りが必要と考えられた。
【はじめに】当院は許可病床数325床の急性期一般病院である。近
隣の介護施設や居住系サービス事業所(以下施設)からの入院が
多く、誤嚥性肺炎による入院や、様々な疾患が契機となり嚥下障
害をきたす患者も多い。嚥下障害を有する患者において施設-病
院間の入退院を繰り返す患者もおり、急性期病院として地域・施
設間連携が重要である。今回、近隣の施設に対し嚥下障害に関す
るアンケート調査を行った。調査結果をもとに急性期病院が求め
られる連携について考察する。
【方法】H26年10月〜H27年3月
に当院言語聴覚士が介入していた患者のうち施設へ退院した患者
の退院先へアンケートを実施。
【結果】施設入所時、病院からの食
事に関する情報提供の満足度について、満足している9%、やや
満足している14%、普通41%、やや不満32%、不満5%であった。
食事について病院から情報提供してほしい内容については、食事
形態についてが,多数を占めた。食事形態の情報提供について、よ
り具体的な物性(食材の固さ、トロミの程度、キザミの大きさ等)
の記載を求める意見が多かった。
【考察】現在、施設毎に食事形態
の名称・段階が存在しており病院-施設間で統一されていなく情
報提供時に混乱を来している。今後、日本摂食嚥下リハ学会調整
食分類2013が浸透する事により食事形態の具体的な物性につい
て共通した分類・用語で情報提供が可能となると思われる。
173
O89-5
O90-1
○高倉李香(歯科衛生士)
,二宮静香,吉良真奈美,山添淳一,
松尾佑美,平塚正雄
○高山恭兵(作業療法士),合歓垣紗耶香,西郡瑞季
回復期リハビリテーション医療に携わる看護師が口
腔ケアで苦慮した症例に関する調査
大好きな夫に手料理を食べてもらい笑顔になってほ
しい〜人工股関節・膝関節置換術後の関節リウマチ
事例への作業療法〜
医療法人博仁会 福岡リハビリテーション病院 歯科
医療法人社団和楽仁 芳珠記念病院
【目的】リハビリテーション医療に携わる看護師は口腔ケアへの
関心が高く、口腔ケア手技などに関して歯科衛生士に相談を持ち
かけるケースも多い。今回、我々は回復期病院に勤務する看護師
が口腔ケア介入で苦慮した症例についてその要因を検討する目的
で調査した。
【方法】対象は2014年1月から12月までの1年間に、看護師が当院
入院患者において口腔ケアの実施が困難と判断し、歯科スタッフ
へ協力を依頼した14症例とした。
【結果】口腔ケアが困難と判断された症例はすべて口腔ケア時に開
口指示が入らず、開口維持が得られない症例であった。開口指示
が入らない要因は高次脳機能障害8例、口腔過敏などによる咬反射
3例、意識障害2例などであったが、大部分の症例はこれらの複数の
要因が影響していた。看護師への指導内容では痛みを与えないた
めの口腔ケア手技、脱感作療法を併用した口腔ケアなどであった。
【考察】脳卒中患者では失語症や失行などの高次脳機能障害によ
りリハビリテーションの進行が遅れる場合があり、口腔ケアの実
施においてもその影響を受けやすい。また、長期間の口腔への刺
激が欠如するような経管栄養患者では経口摂取患者に比べて口腔
過敏が生じやすい。今回の結果では、症例の大部分が脳血管障害
であり、高次脳機能障害のある症例や経管栄養症例が多かったこ
とから、これらの要因が口腔ケアへの協力性に影響していたもの
と考えられた。
疼痛により人工股関節・膝関節置換術(以下THA、TKA)を実
施した関節リウマチ事例に対し、生活行為向上マネジメント(以
下MTDLP)を用いて介入した。MTDLPとは、日本作業療法士協
会により開発された作業療法士の包括的な思考過程を分かりやす
く表したツールである。「大好きな夫に手料理を食べてもらいた
い」という目標を事例と設定、MTDLPを用いて作業療法計画を見
える化し、実践したことで事例にとって豊かな地域での生活に繋
げることが出来たため報告する。
事例は70歳代女性で関節リウマチであり、発症から約20年経過
していたが医療機関で動作指導を受けた経験は無かった。今回、
関節痛緩和のためTHA・TKA目的で当院入院となった。事例は
夫との仲が非常に良く、今後も夫のために料理を作ることを望ん
でいた。
そこでMTDLPを用いて、関節負担を軽減した方法で調理を実
施し、今後も長く夫に手料理を食べてもらえるためのOT計画を立
案、紙面にて提示し事例・夫と計画を共有した。共有した計画を
事例と共に実施した結果、事例の想いを叶えた自宅退院に至った。
本人の想いを把握し、実現出来るよう支援することは,地域でよ
り長く豊かに生活するために必要なことであると今回の事例を通
して実感した。そのために目標を共有し、支援計画を本人や家族
に提示し理解してもらうことは、いきいきとした地域生活に向け
た円滑な支援に繋がるのではないかと考える。
O90-2
O90-3
○齋藤由香(理学療法士)1),浅川育世2),前沢孝之1),長枝里香1),
小貫葉子1),佐野 岳1,3),橋爪佑子1),上岡裕美子2)
○鈴木宏明(介護福祉士・ヘルパー),北田千晴,石野美恵
1)茨城県立医療大学付属病院 理学療法科
2)茨城県立医療大学 保健医療学部 理学療法学科
3)茨城県立医療大学大学院 保健医療科学研究科
社会福祉法人真寿会 特別養護老人ホーム真寿園
歩行自立を達成した脳卒中後遺症者における病院退
院後の生活空間低下の関連要因
生活の中での個人に向けたアプローチ
〜得意分野を活かして〜
【はじめに】当施設は、入居者一人ひとりの生活習慣を尊重し「個
別ケア」に取り組んでいる。日常生活の中で活動参加の働きかけ
や家事などの出来ることへの対応を行っているが、以前携わって
いた仕事や趣味など、より個に目を向けた対応を取り入れること
でどのような影響があるかを検討した。
【取り組み】取り組む内容について、家族への聞き取り・内容の情
報収集を行い職員も学んでいくことで方法を検討。必要になる物
品を準備し実施。初めは小規模なユニット内から行い、徐々に規
模を広げていく。
【結果・考察】施設に入居されてもできるだけ以前と変わらない生
活をサポートしていくことが大切である。その時、入居者の生活
習慣や好みを把握し、より個に目を向けた上でそれぞれが携わっ
ていた仕事や趣味を具体的かつ本格的に取り入れることにより、
生活の中で楽しみが提供できる。それと同時に職員の関わり方や
学びにも繋がると考える。日常生活において気分の浮き沈みがあ
る中で本格的な場を提供し、本人も思い出しながら行うことで心
理面・身体面のバランスを取ることができ、少しずつでも変化が
あると考え、事例を通して振り返る。
【はじめに】障がい者の地域での閉じこもり予防に身体的・心理
的要因が注目を集めている。本研究では、回復期リハビリテー
ション病棟を退院した脳卒中後遺症者を対象に退院後の生活空
間を低下させる関連要因について調査を行った。
【対象と方法】
対象者は回復期リハビリテーション病棟に入院し、歩行自立と
なった脳卒中後遺症者28名。入院前・退院後の生活空間(LSA)
の変化率と退院時基本動作・日常生活活動(FIM)、10m歩行所要
時間、Timed Up & Go Test(TUG)、転倒自己効力感との関連を
Spearmanの順位相関係数を用いて検討した。また環境要因につ
いて、生活空間の変化率の四分位範囲を以て低下群(下位25%)と
【結果】対象者は
維持群(上位25%)に分類しχ2検定を実施した。
年齢61.3±12.2歳、男性17名・女性11名であった。生活空間の
変化率と有意な相関を示したものは、転倒自己効力感(r=0.432)、
TUG(r=-0.435)、基本動作(r=0.544)であった。環境要因は“装具・
補助具の使用”、“退院後リハビリテーションサービスの利用”で
あり、移動時に装具・補助具を使用している者が有意な生活空間
の低下をきたしやすいことが示された(p<0.05)。
【考察と結論】
退院後に生活空間低下をきたしやすい要因として、基本動作能力
やバランス能力、転倒自己効力感が関連し、装具・補助具を使用
している者は退院後リハビリテーションサービスの利用にも関わ
らず、閉じこもりのリスクが高いことが示唆された。
174
O90-4
O90-5
○渡辺浩司(作業療法士)
,高野裕子,富田正身,小池沙由里,
高田明規,菊地秀晴,山口淳子,福田卓民
○三島将太(作業療法士),北山朋宏
医療法人社団慶成会 青梅慶友病院 リハビリテーション室
社会福祉法人こうほうえん 錦海リハビリテーション病院
リハビリテーション技術部
障害高齢者の活動状態とその対応について
機能改善希望リハから活動・参加改善希望リハへと
心境に変化がみられた症例に対する一考察
【はじめに】障害高齢者の活動状況に関する報告は少ない。今回
は療養病床に入院した障害高齢者のその後の活動状態を複数の視
点で示したので報告する。
【方法】対象は2012年4月から2015年
2月の間に当院に入院し、2年以上在院した108名(平均85.7±6.9
歳)とし、活動の導入から定着・継続を目的に対応した。具体的
な対応内容は移動方法の選定とルートの確定、活動参加の習慣化、
活動前後の生活状況の調整などであった。取り組みの検証には日
中の活動場所・活動時間・活動種目をそれぞれ数値に置き換え、
入院月から2ヵ月ごと、
1年間の経時的変化について検証した。
【結
果】入院から1年間の変化について、活動場所は2.8±1.9ヵ所から
3.3±2.0ヵ所へ、活動時間は2.2±2.4時間から3.1±2.1時間へ、活
動種目は2.5±1.7種目から3.6±1.7種目へそれぞれ増加した。各
項目とも入院月と2ヵ月後の間に有意差を認め、それ以降は横ば
いの状態であった。
【考察】今回の結果は、活動性向上を目的とし
た当院の取り組みが、入院から2ヵ月間で生活パターンを構築す
るものであったことを示していると考えることができる。今後は
より短期間で定着・継続できるような対応を検討する必要がある。
また、今回用いた活動場所・活動時間・活動種目は、その組み合
わせにより活動自体の質を変化させる要因になり得ると思われる
ため、対象者個々の活動状態の質に関する検証を深められるよう
取り組みを継続したい。
【はじめに】当院通所リハビリテーションを利用している1症例に
生活行為向上マネジメント(以下MTDLP)を活用したアプローチ
を行った。その結果、機能改善希望リハから活動・参加改善希望
リハへと症例の心境に変化がみられたためその要因について考察
を加え報告する。
【症例紹介】脳梗塞により左片麻痺を呈した60歳代男性。要介護2。
2年前から当通所を利用開始。ADLはFIM119/126点(運動87、認
知32)。歩行は杖と装具を使用し屋内外ともに自立。
【経過】これまで症例は機能の改善に向けたリハビリを希望され、
動作練習などこちらが促す活動参加の改善に向けたリハビリには
消極的であった。ケアプランの見直しを行うために開催された担
当会でMTDLPを活用した際、「バスで旅行がしたい」という目標
を掲げることが出来た。バスの利用に必要となる動作項目を挙げ、
バス会社協力のもと実物のバスで動作練習を行い、次いで自宅か
ら駅までバスで移動する練習を行った。
【結果・考察】練習開始後間もなく「鞄はリュックが良いかな」
「旅
行中はどれくらい歩けるだろうか」など旅行に向けて必要となる
道具や能力を自身で考えるようになった。また、利用日以外でも
屋外を歩く頻度が増えた。介入初回から最終の実行度は1/10〜
6/10、満足度は1/10〜7/10であった。実場面で練習を行うこと
は、目標達成に向けリハビリで何をする必要があるのかなどセル
フフィードバックが働きやすくなると考えられる。
O90-6
O91-1
○有馬直也(理学療法士)1),鮎川佳史1),平岡明彦1),濱島慎也1),
有村真也1),台場 耕2)
○松本朋子(作業療法士)
1)医療法人厚生会 エスポワール立神
2)医療法人厚生会 立神リハビリテーション温泉病院
岡山極東病院 診療技術部 リハビリテーション課
要支援者における運動機能と人との繋がり、生活活
動性の関係−第1報−
パーキンソン病患者の復職支援
〜職場の環境調整を行う機会を得て〜
【はじめに】幻聴症状が出現し仕事に影響が出たため、薬剤調整目
的で入院したパーキンソン病患者に対し、退院後も外来OTを行
い復職後の症状再燃を防ぐために環境調整を行ったので報告す
る。
【症例】50歳代、男性。現病歴:パーキンソン病(Yahr3)。症
状:幻聴、小刻み歩行、すくみ足。OT評価:小声・吃音だがやりと
りは可能。MMS:29/30点。基本動作や歩行中等度介助。入院前:
妻・娘と三人暮らし。ADL自立。職務内容:PCで書類作成、電話
対応など。
【経過】入院時期ADL動作の獲得と復職にむけ作業の
耐久性向上、移動手段の検討。退院後外来OTにて復職支援を継続。
その際「仕事量をこなせるか」
「手間をとらせるのでは」など不安
の訴えが増加。対策を立案し職場に本人・妻から相談。復職後症
状再燃の有無や復職後に生じた問題に本人・妻と対策を考えるな
ど継続して支援を行った。【考察】OTが介入することで職場環境・
仕事内容・移動手段等の不安要素に対し医療的視点で対策を立案、
それを職場に相談し調整を行い、復職後も幻聴の再燃なく仕事を
行えている。今回、職場に出向き実際の環境や本人の様子、人事
担当者と話をする機会はなかった。それについてはジョブコー
チなどの社会資源の利用も一つの方法ではないかと考える。
【お
わりに】今回OTとして身体機能や自宅ADLだけでなくAPDL面に
しっかり介入する必要があると感じた。そのために本人・家族、
さらに職場の方とも協力していく必要があると感じた。
【はじめに】要支援者の方々を対象とし、通所リハビリテーション
において運動機能向上を目的としたリハビリテーションを実施し
てきたが、効果は十分であるとは言い難い。介護報酬改定後、
「社
会参加」へ結びつけるよう明確に言われるようになっており、要
支援者においても運動機能と人との繋がり、生活活動性の関係性
を明らかにし改めてプログラム立案の再検討を図る必要があるの
ではないかと考えた。
【対象】要支援認定を受けた22名。平均年齢75歳。
【方法】人との繋がり:日本語版LSNS-6(以下LSNS)
。生活活動性:
生活空間の評価LSA(以下LSA)を聴取。運動機能評価:5m歩行速
度。Timed up and go test
(以下TUG)を計測。
【統計処理】関係分析:LSNS、LSAと歩行速度、TUG。比較検討:
LSNSカットオフ値を12点とし、
12点以上(以下A群)12点以下(以
下B群)とし、歩行速度、TUGを比較。
【結果】関係分析:全てにおいて、中等度の相関有り。比較検討:
両者共B群が有意に遅かった。
【考察】運動機能、人との繋がり、生活活動性の関係性はみられた
事からプログラム立案の際、運動機能のみではなく人との繋がり
や生活活動性も充分考えたプログラム立案の必要性が再認識出来
た。LSNS12点以下の者は、運動機能も低い傾向を示しており何
らかの要因があるものと考える。今後、要因分析まで行い社会参
加出来る支援が行える様していきたい。
175
O91-2
O91-3
○茂木正和(作業療法士)
○廣重眞美(理学療法士)1),山本恵子1),高田淑恵1),河原利枝1),
矢守 茂2)
IMSグループ 埼玉みさと総合リハビリテーション病院
1)社会医療法人祥和会 脳神経センター大田記念病院 リハビリテーション課
2)社会医療法人祥和会 脳神経センター大田記念病院 リハビリテーション科
調理動作の役割獲得を目指して
〜頸髄損傷患者への随意運動介助型電気刺激装置
(IVES)による介入〜
補助人工心臓装着中に脳梗塞を発症した片麻痺患者
の経過の一例
【はじめに】今回、頸髄損傷患者にIVESを使用し、病前役割の調理
動作能力向上が図れた為報告する。
【症例】
50歳男性。転落し受傷。
第5頸髄髄節以下の損傷で四肢麻痺を呈し、AISA:D。感覚:正
常も両手に痺れ。当院入院後約4ヶ月経過し、院内独歩・ADL・
調理動作は環境設定下で自立も、左上肢優位の筋力低下から日常
生活での使用は少なく、フライパン操作は拙劣であった。【介入】
IVESパワーアシストモード使用。橈側手根伸筋・総指伸筋に電
極貼付、経過で母指・小指対立筋に追加した。訓練は40〜60分/
日、
3〜4日/週、
5週間実施。内容はIVES装着下で1。自動運動、2。
物品操作課題と自主練習を実施した。評価項目は左上肢のSTEF、
a-ROM、MMT、握 力、Modified ashworth scale
(MAS)、母 指
と 小 指 の ピ ン チ 力、対 立 運 動、日 本 語 版Motor Activity log14
(MAL)
、フライパン操作を実施した。【結果】STEF:59→66点。
a-ROM: 手 関 節 背 屈35°→45°、橈 屈10°→15°。MMT: 手 関 節
背屈4‐→4、橈屈4‐→4。握力:9.0→12.2kg。MAS:手関節背屈
1+→1。ピンチ力:1.5→2.0kg。対立運動:指尖→指腹つまみ。
MAL:AOU3.3→4.3、
QOM2.3→3.9。フライパン操作が向上。
【考
察】IVES使用により、標的筋の随意性促通、相反抑制による拮抗
筋の痙縮軽減が図れたことで、フライパン操作の向上に繋がった
と考える。また、MALの結果から左上肢使用の意識付けが示唆さ
れ、IVES使用との相乗効果もあったと推測する。
【はじめに】補助人工心臓(以下VAD)装着中の合併症の一つとし
て血栓塞栓症が知られている。今回、VAD装着中に脳梗塞を発症
し、心臓移植を経て外来リハビリを行うことになった片麻痺患者
の一例について、移動能力や生活状況の変化を観察する機会を得
たので経過を報告する。
【症例】20歳代男性。診断名は拡張型心
筋症。2008年4月体外式LVAD装着、同年5月に脳梗塞(左片麻痺)
発症。2010年9月心臓移植術施行。2011年2月自宅退院し、同年
9月から当院で外来リハビリ開始。
【経過】外来当初は、ADLは車
椅子レベルで修正自立。立位耐久性が低く、短下肢装具を作成し
日常生活場面での立位動作の安定化を図り、外来リハビリで歩行
訓練を実施していった。Timed up and go testは、63.33秒・48
歩( 2012年4月)から14.59秒・16歩( 2013年10月)へと改善し、
短距離平地歩行であれば支持物無しでの歩行移動が可能となっ
た。経過中に大学への復学や、自動車運転講習受講の後に運転再
開を行う等、社会復帰を行った。現在は車椅子移動を主体としな
がらも自宅内や場面によっては歩行移動を行っており、日常生活
の活動の場が拡大してきている。【結果・まとめ】本症例は片麻
痺による移動能力・ADL低下に対しては長期にわたり改善を認め
ている。心臓移植という大きなイベントを経て日常生活の再構築
を図り、より活動範囲の選択肢を増やすためにも、継続した介入
が必要であることを経験した症例であった。
O91-4
O91-5
○一木愛子(作業療法士)
,蒔田桂子,平田 学
○中村珠緒(作業療法士)1),田中未佳1),奥田ゆかり1),水田忠久2)
神奈川県リハビリテーション支援センター
1)医療法人篤友会 坂本診療所 療法部
2)医療法人篤友会 坂本診療所 リハビリテーション科
能力を活かす環境支援と介助量のコントロールによ
り動作獲得に至った1症例
就労に必要となる支援についての考察
【はじめに】本人、家族、支援者の中には、リハ専門職が行うこと
が訓練であると考える傾向があるように感じる。しかし、リハ専
門職が関わる頻度には限りがあり、それだけでは効果は期待でき
ない。今回、月2回の外来と生活場面での環境調整や動作への助
言を行い、動作獲得に至った生活期の症例について報告する。
【症例紹介】脊髄小脳変性症を中学生の時発症した20代女性。障
害者支援施設入所。身体状況は、著明な可動域制限はなく、MMT
は上肢3、下肢2。座位保持可能。姿勢修正困難。上肢操作時の体
幹保持能力は低い。ADLは食事、整容・上衣の更衣を除き要介助。
移乗は環境に左右され、歩行は軽介助にて可能。
【介入内容と結果】
1)
から4)
の内容を施設の支援員へ助言した。1)
生活での車椅子駆動と移乗準備を自力で行う。2)ベッド環境を
利用した起き上がりや移乗を軽介助で行う。3)入浴での洗体や
移乗時に手すりを使った立ち上がりや立位を導入する。4)排泄
環境を調整し、徐々に一連の動作を自力で行う。入所7か月後移
乗、一連の排泄動作は監視レベルとなり、ADL全般の介助量は軽
減した。
【まとめ】生活動作を獲得するためには、能力を活かす環境調整や
適度な介助が重要である。日常生活での動作の継続は、進行性の
疾患である対象者の著しい機能低下を防止し、生活期での機能訓
練としての意味を含むと考える。
当院はリハビリテーションに特化した診療所であり、外来リハビ
リテーション部門と訪問リハビリテーション部門からなる。外来
部門には、主に急性期病院や回復期病院から退院した患者が来院
する。そのため当院に受診した時点で、支援を受けながらも在宅
生活を送ることができるレベルに回復している方が多い。しかし
ながら、家事や趣味活動、社会的参加においては入院前より低い
傾向にあり、社会的参加の面で支援する事が少なくない。なかで
も青年期、壮年期、中年期の患者では、入院前には就労していた
方も多く、支援が必要となりやすい。今回、当院で就労支援した
患者の中で就労可能となった事例を分析し、必要となった支援に
ついて後方視的に調査した。対象は2011年4月1日から2014年6
月30日までに来院し、就労支援を行った患者113名とした。その
中で就労可能となったのは82名であった。うち23名は運動器疾
患であり、59名は脳血管疾患であった。就労に至るまでの期間は
1ヶ月以内から34ヶ月と幅があるものの、受傷から平均6ヶ月程度
であった。達するまでの過程で、機能的な回復や代償手段の獲得
の支援はもちろんのこと、就労支援機関への紹介、就職活動時の
助言、就労後の定着支援等、支援内容は多岐に渡った。調査の結果、
継続的な支援によって就労の可能性があることが分かった。今後
も就労支援機関や職場等と連携し、患者の社会的参加の機会を広
げられるよう支援していきたい。
176
O91-6
O92-1
○安政尚子(理学療法士)1),服部芽久美1),津田明子1),東 祐二1),
篠山潤一2)
○佐藤佳直(作業療法士)1),菅原大介1),畑野美智子1),橋本祐治2),
戸島雅彦3)
1)社会福祉法人 兵庫県社会福祉事業団総合リハビリテーションセンター 障害
者支援施設 自立生活訓練センター,2)社会福祉法人 兵庫県社会福祉事業団総
合リハビリテーションセンター 地域ケア・リハビリテーション支援センター
1)特定医療法人医翔会 札幌白石記念病院 リハビリテーション部
2)特定医療法人医翔会 札幌白石記念病院 脳神経外科
3)特定医療法人医翔会 札幌白石記念病院 リハビリテーション科
障害者支援施設における維持期脳血管障害者に対す
る屋外歩行自立への取り組み
当院における自動車運転評価としての高次脳機能検
査の実施について
【はじめに】屋外歩行には公共交通機関の利用・耐久性・歩行速度・
注意機能など種々の能力が必要とされる。しかし、脳血管障害者
は回復期病院において、病院周辺の限られた環境下で歩行練習を
行った後、介護保険サービスを利用し在宅へ移行することが多い。
本施設では集団訓練を中心として歩行能力向上に向けたプログラ
ムが多数ある。そして個々の歩行耐久性を評価する立位耐久走を
年4回実施している。今回、立位耐久走における脳血管障害者の
経時的な変化について報告する。
【方法・結果】立位耐久走は1周250m屋外教習コースを40分間歩
行しその周回数を記録するものである。対象は平成25年度に回復
期病院を経て障害者支援施設に入所した脳血管障害者12人で、右
片麻痺者9人、左片麻痺者3人、入所時の下肢BRS
(3:7人,4:3人,5:2
人)であった。立位耐久走における初回参加時と最終参加時の周
回数・歩行距離の変化を調査した。最終参加時には12人中7人が
周回数の増加を認め、その平均歩行距離は2714.3±742.0mであ
り、最終参加時には7人は屋外歩行が自立となっていた。
【考察】本施設における機能訓練は、病院と比べ個別に関わること
は短時間ではあるが、継続的な集団訓練や外出訓練を通して歩行
耐久性の向上や屋外歩行自立に繋がっている。維持期の脳血管障
害者がさらなる歩行の訓練機会を持つことで、歩行能力を高める
ことができることが分かった。
【目的】当院は脳神経外科急性期病院で、平均在院日数は約12日間
と短く、治療を終えてすぐに自動車運転再開を希望する患者が多
い。当院では初期評価時に運転の有無を確認し自動車運転評価に
関する高次脳機能検査を実施している。急性期評価結果とその経
過について報告する。【対象】2014年10月〜2015年4月までに脳
外科疾患発症により入院し、退院後に自動車運転の再開を希望し
た71症例を対象とした。また、入院期間中に各評価基準を満たさ
なかった症例に対し、退院後1カ月または2カ月を目安に、外来に
て同評価を実施した。
【方法】かな拾いテスト、TMT-A、TMT-B、
RCPM、SDMT、FABの6項目の検査を実施し、文献上のカットオ
フ値を基準とした。全項目においてカットオフ値を満たせば、運
転を控えるべきとは言えないと判定した。基準を下回る項目が1
つ以上あれば、運転を控えるべきと判定した。
【結果】71症例中
48症例は入院中に基準を満たし、22症例は基準外となった。特に
TMT-BとSDMTでカットオフ値を下回る傾向がみられた。基準外
のうち8症例は外来にて再評価をし、6症例は基準を満たした。
【考
察】一見して健常な患者でも、急性期では注意機能等が低下して
いることが多い。TMT-BやSDMTは、そのような患者を検出し、
適切な指導を行う上で有用と考える。退院後に機能が改善する症
例が多いことから、入院時の評価判定だけでなく、予後予測に基
づいた外来でのフォローが必要である。
O92-2
O92-3
痴呆スクリーニングのためのミニメンタルテスト及
び服薬能力判定試験を用いての内服自己管理導入を
試みて
回復期リハビリテーション病棟入院患者の健康関連
QOLと主観的QOLに影響を与える要因の検討
○小野田里美(作業療法士)1),越前谷友樹2),山口和人2),
秋月千典3)
○中田嘉美(看護師)
,河原直美,永野美紀,橋本和樹,阪口知佳,
糸田恭子,鎌田真由美,寺田郁子,角本貴子
1)訪問看護リハビリステーションあるふぁ相模大野
2)三郷中央総合病院 リハビリテーション技術科
3)目白大学 保健医療学部 理学療法学科
社会医療法人生長会 ベルピアノ病院
【はじめに】当病棟は、療養型病院192床の中にある48床の回復期
リハビリテーション病棟である。その為入院対象者の平均年齢は
80歳と高いが、在宅復帰率は80%以上あり、さまざまな自立支援
を試みている。その中で、より安定した在宅生活を継続していく
為には、内服自己管理が出来る事が重要と考える。今回、痴呆ス
クリーニングのためのミニメンタルテスト及び服薬能力判定試験
を用いての内服自己管理指導を試みたのでここに報告する。
【実施及考察】痴呆スクリーニングのためのミニメンタルテスト
(MMSE)18点以上の対象者において、
服薬能力判定試験(JRACT)
評価にそってフローチャートを作成し、判定結果をもとに内服自
己管理訓練を開始した。1.服薬管理能力(薬袋の理解)2.服薬
作業能力(手先の器用さ)3.薬の管理能力(家庭での長期管理)の
それぞれの評価を実施し、各項目の評価にそって訓練方法の工夫
を取り入れた。患者の内服自己管理能力と退院後の生活に応じた
方法を取り入れる事でその人にあった内服自己管理ができた。ま
た、看護師だけでなく介護福祉士および多職種も含め、共に情報
共有し関わる事ができた。
【目的】回復期リハビリテーション病棟入院患者のQOLに影響を
与える要因を検討することで、リハビリテーションの質の向上に
寄与することを目的とした。【方法】急性期病棟から回復期リハビ
リテーション病棟へ転棟してきた脳血管疾患患者7名、整形外科
疾患患者5名を対象とした。転棟時と退院時の健康関連QOL、主
観的QOL、日常生活動作能力、精神心理面、認知機能、患者のニー
ズ、身体機能、日常生活に対する自己効力感を測定し、転棟時と
退院時の比較、疾患別の比較、転棟時と退院時における各評価指
標間の関連を調査した。
【結果】転棟時と退院時の比較では、脳血
管疾患患者の主観的QOL以外の評価項目において向上が認めら
れ、健康関連QOL、日常生活動作能力、患者のニーズ、身体機能、
自己効力感に有意な改善が認められた。健康関連QOLと日常生
活動作能力の間には転棟時と退院時ともに有意な相関が認めら
れたが、主観的QOLと日常生活動作能力の間には認められなかっ
た。主観的QOLは転棟時には精神心理面と相関を認め、退院時に
はさらに健康関連QOL、患者のニーズと有意な相関を認めた。
【考
察】日常生活動作能力はQOLに部分的にしか関連していないた
め、日常生活動作の獲得のみに留まらず、QOLの改善に特化した
介入が必要であることが示唆された。そのため、患者自身がリハ
ビリテーションへ主体的に参加し、退院後の地域での生活を考慮
した介入が必要であると考えられる。
177
O92-4
O92-5
○篠原真弓(看護師)
,岩田かおる,川端智子,中田幸子
○加藤一俊(理学療法士)
医療法人さくら会 さくら会病院
農協共済別府リハビリテーションセンター
24時間スケジュール表を用いた退院指導を試みて
脳損傷者の自動車運転再開における継続支援の成果
と今後の課題
【はじめに】在宅退院を目標とする患者には、家族への退院指導が
必要になる。十分な指導を受けずに退院が近づくと家族や患者の
不安や焦りが増強する。そこで患者・家族がスムーズに在宅へ移
行できるように、24時間スケジュールを用いての退院指導を検討
したのでここに報告する。
【研究方法】研究期間はH26年7月1日〜 H26年10月30日。対象者
は、回復期リハビリ病棟入院中で在宅退院を目標とした患者であ
る。患者・家族の24時間の生活パターンを円(以下スケジュール
表)で表し、更に患者の要介護項目をスケジュール表に示した。
試験外泊時にスケジュール表を家族と共有し退院指導を行う。
【結果】対象患者は11名内期間中に在宅退院した患者は3名。スケ
ジュール表を家族と共有した事で患者の1日の生活が視覚化され
た。3名の患者・家族に排泄回数や時間帯、
外出時間のタイミング、
サービス利用時間について具体的に掲示でき、家族とともに介護
の負担軽減ができる方法を考えることができた。
【考察】これまでの退院指導は、排泄・移動・清潔と日常生活を項
目別に考え指導する傾向にあった。スケジュール表を利用するこ
とで、退院後の1日を家族とともに包括的に考えるために用いた
がまだ在宅退院事例も少なく今後も継続して退院指導のツールと
して用いて評価していきたい。
【はじめに】近年、脳損傷者に対する自動車運転再開評価は全国的
に広がりを見せ、明確な判断基準が模索される中、自動車運転再
開のための継続支援の必要性も生じている。今回、適性相談で不
合格となった後に、当センター障害者支援施設に入所し、自動車
運転再開に向け、トレーニングを実施。その後再度適性相談を受
け合格に至った症例を経験した。本症例を通して、継続支援の成
果と今後の課題について報告する。
【症例】50歳代男性、脳内出血・左片麻痺、FIM:123点。
【方法】DS及び机上・PC上での認知トレーニング(3か月半)
【結果】DS:単純反応・選択反応・注意配分複雑作業検査→若
干の改善傾向、市街地走行による不適切行動総数( 21回→2回)敷
地内コースでの実車評価:計9回の実車後、診断書作成。適性相
談にて合格。公道での路上運転:見通しの悪い交差点進入・信号
遵守にてエラー有、本人の運転に対する気づきが深まる。
【考察】DSや机上・PC上での認知トレーニングの継続により、
神経心理学的検査およびDS評価結果が改善したことから、継続
支援の有効性が示唆された。しかし、手順を踏んで支援を行った
が、実際の路上環境において多数の危険運転行動が生じ、現状の
評価システムの限界も示唆された。公安委員会・自動車教習所な
どと連携をとり、公道での路上運転評価を実施するシステム構築
が求められる。
O93-1
O93-2
○國分麻未(理学療法士)
,松本紗織,小林美智,古川卓憲
○竹内 奨(理学療法士)
一般財団法人 太田綜合病院附属太田熱海病院
特定医療法人敬愛会 リハビリテーション天草病院
リハビリテーション部
自宅退院に向けた移乗の目標設定について
〜安全な移乗獲得を目指して〜
自宅で入浴する為に必要な階段昇降の獲得を目指し
た一症例
【はじめに】今回、脊髄梗塞により完全対麻痺を呈した症例を担当
した。自宅退院に向け、移乗方法の検討を行った。経過を以下に
報告する。
【 症 例 紹 介 】60歳 代 女 性。 急 性 大 動 脈 解 離 術 後 に 脊 髄 梗 塞
(Th12~L1)を呈し、当院回復期病棟に入棟。MMT:上肢・体幹3、
下肢0。感覚:L1以下温痛覚重度鈍麻。移乗動作全介助。
【経過】本症例は残存機能から移乗方法を、直角移乗または、push
upでの側方移乗の獲得が可能と考えた。狭い環境でも移乗可能
な側方移乗自立を主目標とし、介入を行った。移乗にはトランス
ファーボードを使用し、3ヶ月目に直角移乗が自立、5ヵ月目に側
方移乗が見守りにて可能となった。しかし、側方移乗は安全性に
欠け、自立には至らなかった為、直角移乗に目標を変更した。そ
の後、仙骨部に表皮剥離がみられ、この方法では褥瘡のリスクが
伴った。身体機能の予後から設定した2つの方法であったが、い
ずれもリスクが残り、本症例には全介助での移乗が最適と考え、
再度目標の修正を行い、退院となった。
【まとめ】症例の身体機能面の予後から獲得可能な動作を予測す
ることは重要である。その際、様々なリスクも考慮し、症例に適
した目標を設定することの重要性を学んだ。
【初めに】在宅へ退院するにあたり、症例宅の風呂場が2階にあっ
た為、退院後に自宅で入浴するには階段昇降の獲得が必要であっ
た。そこで、特に困難となっていた降段に着目し、評価・治療を
約1ヶ月間実施した。若干の改善が見られたので以下に報告する。
【症例】視床出血による左片麻痺の女性。運動機能はBr-stageで上
肢-手指-下肢全てVであった。階段昇段は手すり使用で軽介助に
て可能だが、降段では大腿直筋及び脊柱起立筋の過活動と非麻痺
側下肢の従重力コントロールが困難な為、重心を前下方に移動出
来ず、麻痺側下肢を下段に降ろす事が困難であった。また、接地
時に膝の痛み有り(NRS:8)既往に変形性股関節症(右THA)、左
膝OA、左膝蓋骨骨折(2回)、外反母趾(両側)などがある。
【介入】降段の獲得を目標に、筋の収縮様式及び姿勢・運動制御の
改善を図った。
【結果・考察】18cm程の階段であれば手すり使用で一足一段での
降段が可能となった(NRS:2)が、自宅の階段は一段23cmと高い
為、膝の痛みの再発に配慮し、二足一段の降段を提案する運びと
なった。今回、過剰な求心的活動を呈していた腰背部及び股関節
屈筋群に対し、遠心性収縮の感覚が入る様介入した事で、固定的
な姿勢・運動制御に改善が見られ、結果、麻痺側下肢を下段に降
ろす事が可能となり、階段昇降の獲得に繋がったと考えられる。
178
O93-3
O93-4
○伊藤奈穂(理学療法士)
,三浦 創,橋本祥行,鳥居和雄,
前川 茜,川田理恵,照屋康治,加辺憲人
○及川真人(理学療法士)1,2),山中誠一郎1),下村彰宏1),
松原 徹1),久保 晃2)
医療法人社団輝生会 船橋市立リハビリテーション病院
1)初台リハビリテーション病院
2)国際医療福祉大学大学院
発症6ヶ月以降も運動麻痺が改善し、移乗が自立し
た症例について
〜段階的に調整した装具を使用して〜
在宅脳卒中片麻痺者の生活空間範囲を身体機能評
価から判別可能か?−30秒立ち上がりテスト、Berg
Balance Scaleからの検討−
M.Knoflach(2012年)らは、脳卒中の重症度や特性、合併症に依
存せず、年齢は機能回復の重要な因子となると報告している。今
回、発症6ヶ月以降も身体機能の改善を認め、全介助であった移
乗動作が自立へと回復した過程を整理し、理学療法アプローチの
効果について考察した。
【対象】30歳代前半、女性。くも膜下出
血の発症後57病日に当院回復期リハビリテーション病棟へ転入
院。入院当初は、意識レベルはJapan Coma ScaleII-10。片麻痺
機能検査は、左上肢II、手指I、下肢II。運動失調は、躯幹協調検
査stageIV、指鼻指・踵膝試験で陽性。座位保持から介助を要し、
Berg Balance Scaleは0点。移乗動作は2人介助が必要であった。
【経過】装具を使用した理学療法アプローチを中心に展開。入院
当初は重度の意識障害があり、覚醒改善目的に両KAFOを使用し
た動的な立位練習より開始。右下肢の筋力・運動失調の改善に伴
い、KAFOは左のみ使用し立位練習を継続。この間もKAFOを段
階的に変化させ難易度を調節した。発症後6ヶ月経過時に、片麻
痺機能検査が左下肢III-3まで改善、支持物を使用した座位保持が
見守りで可能となった。運動麻痺の改善に伴い、MAFOで膝伸展
位での荷重が可能となり、移乗動作の介助量が軽減した。発症か
ら10ヶ月で自宅退院し、その後移乗自立となった。
【結論】若年脳
卒中患者の場合、発症後の期間が経過しても、身体機能・動作能
力の回復を促すことができる可能性が示唆された。
【目的】我々は第50回日本理学療法学術大会において、生活空間
を広範囲群と狭範囲群に分類し、判別因子を検討した結果、10m
歩行評価で判別可能であることを報告した。一方、訪問リハの場
合、10m歩行評価は環境から測定が難しい。そこで今回、在宅に
て評価可能な指標から、生活空間の広狭を判別可能か検討した
ので報告する。
【方法】対象は当院外来及び通所リハの利用者で、
脳血管障害(脳梗塞33名 脳出血77名 くも膜下出血5名)により片
麻痺を呈した115名(男性66名 女性49名 年齢61.7±11.7歳 発症
から1317.5±1095.1日経過)とした。統計学的手法はLife-space
assessmentから分類した広狭を従属変数、CS-30,BBS,FIM,下肢
Br.stage,感覚障害の有無、年齢、性別、障害側、障害名を独立変数
としロジスティック回帰分析を行った。また、抽出された関連因
子についてROC解析を行いカットオフ値を算出した。尚、本研究
は所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】広狭の
判別因子としてCS-30(オッズ比1.292 95%信頼区間 1.077-1.549
p<0.01)、BBS(オ ッ ズ 比1.147 95%信 頼 区 間 1.050-1.254 p<
0.01)が有意な関連を認めた。また、カットオフ値を求めた結果、
CS-30が7.5回、BBSが44.5点となった。【考察】今回の結果から、
在宅リハにおいて生活空間の広狭を判別する際、CS-30、BBSが
有効であることが示唆された。今後、評価をもとに、生活空間と
移動の目標設定の整合性を検討することが重要である。
O93-5
O93-6
○齋藤正洋(作業療法士)
,古畑志保,下田尚子
○渡井賢太(理学療法士),小野雅之,本間由華
東京都リハビリテーション病院 地域リハビリテーション科
桜ケ丘中央病院
訪問リハビリテーションでコミュニケーション中心
の支援によって歩行時の転倒が激減した一症例
訪問リハビリテーションの介入が,生活範囲拡大の
意欲向上につながった一症例
【症例】80歳代 男性 妻と二人暮らし。30年前に脳出血により
右片麻痺(表在覚、深部感覚脱失及び注意障害)となり、以後月に
数回の転倒を繰返していた。
【経過・介入】ケアマネジャーより、
「転倒しないような手すりの
設置」を依頼され、訪問リハ開始となったが、自宅には適宜手す
りは設置されていた。初回評価で症例と介護者との障害に対する
認識のギャップやお互いへの感情に大きなギャップが生じ、介護
や症例らしい暮らしに支障が出ていることが垣間見えた。そこで
転倒しやすい場の環境調整や物を持って移動する際の工夫を、症
例や妻に解決策を出してもらい、相互理解を深めながら訪問リハ
を行った。その結果、月数回の転倒をしていた症例であったが、4
か月間介入した現在まで、一度しか転倒は見られなかった。現在
屋上での園芸作業に向け、チームで思案中である。
【まとめ】症例の障害を言語化して出来る限り自身の能力を理解
していただいた。また、それをどのように克服していくかを伝え、
症例が考えた工夫も取り入れながら介入をした。同時の症例と介
護者の関係性を再構築できたことも、新たな目標に近づくための
ステップと理解していただくことが出来た。訪問リハビリテー
ションは、症例のセルフマネジメントや介護者・チームも含めた
エンパワメントの構築も役割の一つであると考える。今回の発表
に関して、本人・家族への説明、同意を得ている。
【目的】訪問リハビリテーション(以下訪リハ)で、本人の希望を
スムーズにリハビリプログラムに反映させたところ、生活範囲拡
大の意欲向上が認められた症例を経験したので報告する。【症例
提示】40歳代男性、くも膜下出血後気管切除術施行、要介護4。回
復期リハビリテーション病棟(以下回リハ)に5ヶ月間入院し、そ
の後1ヶ月の在宅生活を経て、本人・家族の希望により訪リハが
開始となる。回リハ及び訪問看護では手すり等を使った歩行練
習を行っていたが、訪リハでは介入2週目で階段練習を開始した。
【経過と考察】生活範囲の拡大を主目的とし、PT、STの週1回ずつ
の介入を開始した。開始時のFIMは75点、life space assessment
(LSA)は4点。介入当初の生活スペースは1階に限られていたが
「 2Fにあるプラモデルを見たい」との希望を伺うと、すぐに階段
昇降練習を開始。PTの介助により2Fへ行くことが可能となった。
この成功体験により「次は車のエンジンをかけたい」と意識が屋
外に向くようになった。その後車への移乗練習を行うと、「後部
座席を使ってもっと練習したい」と外出の具体的イメージを持つ
ようになった。妻からは「これなら友人の運転やタクシーで外出
できそう」と家族共に意欲向上が認められた。この時点でのFIM
及びLSAはわずかな改善に留まった。しかし、本人の「やりたい
こと」から成功体験を積ませることで、生活スペース及び活動範
囲拡大の意欲向上に繋がったと考える。
179
O94-1
O94-2
○橋本亮太(理学療法士)1),徳田和宏1),海瀬一也1),小山 隆2),
藤田敏晃3),種子田護3)
○阿部紀之(理学療法士)1),齊藤凡桂1),松田雅弘2)
免荷式リフトPOPO LIV-100を用いた立ち座り動作
の検討〜体幹前傾角度に着目して
中心性頸髄損傷者における体重免荷式トレッドミル
歩行トレーニング(BWSTT)の介入効果−シングル
ケースデザインによる検討−
1)医療法人錦秀会 阪和記念病院 リハビリテーション部
2)医療法人錦秀会 阪和記念病院 リハビリテーション科
3)医療法人錦秀会 阪和記念病院 脳神経外科
1)社会医療法人社団さつき会 袖ケ浦さつき台病院 身体リハビリ
テーション課
2)植草学園大学 保健医療学部 理学療法学科
【目的】当院では脳卒中急性期リハビリに免荷式リフトを用いて
いるが、リフトを用いた立ち座り動作に関する報告は見当たらず、
今回リフトを用いた立ち座り動作の体幹前傾角度を検討したので
報告する。【対象と方法】対象は健常男性8名。年齢33.0±5.1歳、
身長167.2±3.8cm、体重69.8±11.1kg。背もたれのない台にて
座面長は下腿長100%、両側足関節10度、両内果の距離10cmとし
通常の立ち座り動作(control群)は快適速度で行い、リフトによ
る立ち座り動作(リフト群)はリフトに依存させるよう指示した。
対象者右側の肩峰、大転子、大腿骨外側上顆、腓骨頭、外果にマー
カーをつけデジタルビデオカメラ(ビクター製)で撮影し二次元
動作解析ソフト(Dartfish Software Prosuite 5.5)にて殿部離地
〜立位、殿部接地、座位での体幹前傾角度を測定した。体幹前傾
角度は肩峰と大転子を結んだ線と床面への垂直線とし統計学的処
理としてMann-Whitney U検定を用いた。
【結果】
体幹前傾角度を
control群、リフト群の順に示す。殿部離地(41.5±7.0°-2.6±9.8°)
立位( 2.4±2.4°10.0±6.7°)
、殿部接地( 30.6±9.9°-6.8±9.0°)、座
位( 4.6±3.3°-9.8±12.0°)
。リフト群では殿部離地、殿部接地、座
位にて有意に体幹後傾位を示した。
(p<0.05)
【考察】結果から特
に後方へ転倒傾向がある例や体幹前傾による脊柱筋の遠心性収縮
を促したい例には使用方法を検討していく必要があると考えられ
る。
【目的】近年、脊髄損傷の中で不全損傷が増加傾向にあり、損傷高
位以下に運動機能が残存する者で歩行能力を再獲得する可能性が
高い。今回、中心性頸髄損傷者に対し歩行能力の再獲得を目指し
た体重免荷式トレッドミル歩行トレーニング(以下、BWSTT)で
の介入効果を検討した。
【方法】対象は中心性頸髄損傷者1名( 60歳代男性、ASIA機能障害
スケール:D)とし、ABA法を用い各2週間の通常理学療法期(以
下、A期)、BWSTT介入期(以下、B期)に分け、等尺性膝伸展筋力、
筋緊張、WISCI、歩行速度(CWS、MWS)、総軌跡長、矩形面積、
FIM運動項目を各期の前後で測定し、各期の変化と2SD法を用い
て分析した。本研究はヘルシンキ宣言に則って、対象には事前に
研究の趣旨と内容、個人情報保護などに関して説明し同意を得た。
【結果】各期の変化は等尺性膝伸展筋力(右・左)A期12.4N・1.9N、
B期-1.7N・-1.9Nで介入期の変化はなかった。WISCIはA期3、B
期6、CWS( 歩 行 速 度・ 歩 数 )A期0.1m/min・0歩、B期0.24 m/
min・-7歩、MWS(歩行速度・歩数)A期0.22 m/min・0歩、B期0.2
m/min・-4歩となり、2SDを介入期後半で高値を示した。FIMも
A期5点、B期15点と介入後半に2SDを超えた。
【考察】下肢筋力などの機能的な変化がなくても、BWSTTによっ
て歩行能力とFIM運動項目に変化があった。歩行の感覚刺激の増
大による歩行のリズム性の改善と、立位・歩行機構をより安定性
があるなかで高められたことが考えられる。
O94-3
O94-4
○中谷知生(理学療法士)
,田口潤智,笹岡保典,堤万佐子,
小松 歩,木下智恵美,梶川健佑
○梶川健佑(理学療法士),田口潤智,笹岡保典,堤万佐子,
中谷知生
歩行補助具T-Support使用による回復期脳卒中片麻
痺患者の麻痺側遊脚期足関節の過度な底屈運動の変
化
回復期脳卒中片麻痺患者に対し歩行補助具
T-Supportを継続的に使用し屋内歩行能力を獲得し
た一症例
医療法人尚和会 宝塚リハビリテーション病院
医療法人尚和会 宝塚リハビリテーション病院
【はじめに】脳卒中片麻痺患者の歩行時に、下腿後面の筋緊張亢進
により遊脚期の足関節が過度の底屈位となり、足部のクリアラン
スに難渋することがある。
【目的】今回、当院入院中の回復期脳卒中片麻痺患者に歩行補助具
T-Supportを装用することで過度の底屈の抑制を試みた。本研究
の目的はT-Supportが片麻痺患者の歩行時の過剰努力に及ぼす影
響を明らかにすることである。
【方法】症例は70歳代の男性で、右片麻痺を呈し、四脚杖と短下肢
装具を使用し見守りでの歩行動作が可能であったが、麻痺側下腿
三頭筋の筋緊張亢進により麻痺側遊脚期に足関節が底屈位となる
傾向にあった。本症例におけるT-Support装用の効果検証のため、
川村義肢社製Gait Judge System
(以下GJ)を用いた足関節の運動
因子を分析した。
【結果】T-Support未装着時、麻痺側遊脚期の足関節底屈トルク値
は平均3.9Nm、装着時は平均2.1Nmとなった。
【考察】GJは足継手Gait Solutionが底屈位となった際に発生する
油圧を測定する評価機器であり、計測されるトルク値は足関節が
どの程度底屈位へと変位したかの指標となる。T-Support装用に
よりトルク値が減少したことは、遊脚期の足関節の底屈運動が軽
減したことを表しており、T-Supportの使用は片麻痺患者の歩行
時の過剰努力を減少させる効果があることが推察された。
【はじめに】当院では回復期脳卒中片麻痺患者の歩行練習で弾性
バンドが麻痺側下肢のスイングを補助するT-Supportという歩行
補助具を使用する機会が多い。今回、重度の運動麻痺を呈した症
例に対し長下肢装具作成後より継続的にT-Supportを使用し屋内
歩行能力の獲得を目指した。
【目的】T-Supportの継続的な利用
により、回復期脳卒中片麻痺患者の歩行練習にどのような利得が
得られたのかを継時的に観察し報告する。
【方法】症例は40歳代
の男性で、右被殻出血を呈し第49病日後にリハビリ目的で当院に
入院となった。初期評価時のBrunnstrom recovery stageは下肢
IIで、歩行は麻痺側膝折れを認め麻痺側下肢のスイングは困難で
あった。
【結果】当院入院翌日より長下肢装具装着下での歩行練
習を開始した。麻痺側下肢のスイングを自己にて行えるように
なり第67病日からT-Supportを使用した歩行練習を開始した。第
144病日よりT字杖歩行練習、第195病日よりフリーハンド歩行練
習を開始した。最終評価時のBrunnstrom recovery stageは下肢
IIIで、歩行時の麻痺側膝折れが消失し屋内歩行がT字杖使用し自
立レベルとなった。
【考察】T-Supportは側方、後方介助や見守り
下での使用が可能で、弾性バンドの張力調整により麻痺側下肢の
スイングの補助量を適宜変更できる。T-Supportを継続的に使用
することで患者の能力変化に合わせた課題難易度を設定でき、屋
内歩行の獲得に繋がったものと考える。
180
O94-5
O94-6
○木下智恵美(理学療法士)
,田口潤智,笹岡保典,堤万佐子,
中谷知生
○小松 歩(理学療法士)1),田口潤智1),笹岡保典1),堤万佐子1),
中谷知生1),藤本康浩2)
脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニング時に使用する
ことで介助者の腰部負担感を軽減させる歩行補助具
T-Support KOKの使用経験
中心性脊髄損傷により四肢不全麻痺を呈した患者の
歩行トレーニングにおける、歩行補助具T-support
の使用経験
医療法人尚和会 宝塚リハビリテーション病院
1)医療法人尚和会 宝塚リハビリテーション病院
2)川村義肢株式会社
【はじめに】当院では脳卒中片麻痺患者の歩行練習を後方介助に
て実施する機会が多い。後方介助歩行は体幹伸展位を保持させな
がらの動作となるため、セラピストが腰背部の筋疲労を感じるこ
とが多い。【目的】後方介助歩行時に患者とセラピストを繋ぐこ
とで腰部の負担軽減を目的とした歩行補助具T-Support KOK
(以
下KOK)を開発したので、その効果を報告する。
【方法】症例は小
脳出血を呈した40歳代の男性である。歩行動作は右下肢に長下
肢装具を装着しフリーハンド後方介助で実施したが、重心の前方
への崩れが大きく、腰背部の負担感は大きい状態であった。そこ
でKOKを使用した。
【結果】KOKの使用により腰背部の負担感は
大幅に減少し、介助歩行時のセラピストのボルグスケールは未装
着時10が装着時6へと軽減した。また症例の歩行時の体幹伸展位
での保持が容易となり、介助量も軽減した。
【考察】T-Supportは患者の体幹伸展位の保持と、麻痺側下肢のス
イングを補助することを目的として開発された歩行補助具であ
り、KOKは20センチメートル幅のベルトでT-Supportを装着した
患者とセラピストの連結性を増す効果がある。症例は歩行時に重
度の介助が必要であり、セラピストとの体格差が大きく腰背部の
負担が大きい状況であった。KOKの使用により互いの身体重心の
距離が離れずに歩行動作が可能となり、負担感の軽減につながっ
たものと考えた。
【はじめに】当院では中枢性神経疾患により下肢の運動麻痺を呈
した症例に対し、歩行補助具T-supportを使用したトレーニング
を行っている。これは麻痺側下肢を弾性バンドで牽引するもので、
これまで主に脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングにおいて使用
してきた。
【目的】本研究の目的は、中心性脊髄損傷により四肢不全麻痺を呈
した症例に対し、T-supportを使用した場合の歩行因子の即時的
な変化を明らかにすることである。
【方法】上記の症例に対し、フリーハンド後方介助歩行において、
運動麻痺が強くみられる左下肢にT-supportを装着して歩行した
場合と、装着せずに歩行した場合の歩行因子を比較した。評価に
は川村義肢株式会社製Gait Judge Systemを用いた。
【結果】10m歩行時の歩行因子を比較(装着/非装着)すると、10m
歩行の所要時間は13.9秒/16.1秒、ステップ数は20歩/23歩、装
着 下 肢 の 立 脚 後 期 で の 平 均 足 関 節 背 屈 角 度 は12.3°/12.2°、立
脚 後 期 の 平 均 足 関 節 底 屈 ト ル ク(Second Peak: 以 下、SP)は
1.2Nm/0Nmであった。
【考察】脳卒中片麻痺患者ではSP値と歩行速度に正の相関がある
ことが明らかとなっている。本症例ではT-supportの使用がSP値
を高める結果となった。このことは不全麻痺を呈する脊髄損傷患
者においても、T-supportの使用が歩行速度を向上させる効果が
あることを示唆していると考える。
O95-1
O95-2
○濱田美香(理学療法士)
,石川雅樹,村川美幸,高木理彰
○川端紗奈江(理学療法士),袴田 暢,宇佐美かおり,
松下紗和子
山形大学医学部附属病院
医療法人仁愛会 新潟中央病院
大腿骨転子部骨折を受傷した神経性食欲不振症の1
例に対するリハビリテーションの経験
当院における頸髄不全損傷の現状調査
【はじめに】大腿骨転子部骨折を受傷した神経性食欲不振症(以
下、AN)患者のリハを経験したので報告する。
【症例】52歳女性。
ANによる入院歴あり。
【現病歴と経過】階段から転落し、右大腿
骨転子部骨折を受傷。即日、整形外科入院となり髄内釘挿入術
を施行、翌日より可及的全荷重でのリハ開始となった。この時の
ADLはBI70点であった。また、体重は25kgでBMI11であった。
その後、食事廃棄などの逸脱行為あり、術後1週で精神科に医療
保護入院となった。転科後はベッド上安静、リハ時のみ歩行を許
可された。術後2週で杖歩行自立、術後3週で支持なし歩行自立し
た。術後7週で病棟内移動自由となり、病棟外リハも許可された。
階段昇降、床上起立着座練習を開始、すぐに自立しBI100点となっ
た。以後も身体機能維持のリハを継続した。術後5カ月で、体重
29kg以上の増加なく、家族・本人の入院同意が得られなくなり退
院となった。経過中、心機能など全身状態が不良で、体重や時間
などに関する強迫観念といった症状もみられた。そこで心電図装
着などのリスク管理を徹底し、精神症状に合わせリハ以外での自
主トレを禁止するなどの工夫をした。
【まとめ】極度のるい痩状
態にあるAN患者でも、安静度や状態に合わせてリハ内容を変更
することで他の大腿骨転子部骨折患者と同様にADL能力向上を
図ることができた。しかし、リハが体重増加を阻害している可能
性もあり運動強度や頻度に関して検討が必要である。
【はじめに】頸髄不全損傷は機能回復が長期間に渡り、対応に難渋
することも多い。今回、頸髄不全損傷症例に的確な対応をしてい
くために、当院での現状調査を行った。
【方法】対象は当院回復期病棟に入院した頸髄不全損傷症例26例
とし、調査項目は入棟期間、退院先、FIM・改良Frankel分類(入
棟時、退院時、術後・受傷後4・6・8・10・12週)とした。対象
を 入 棟 時 改 良Frankel分 類 でC2以 下 のC群 とD0以 上 のD群 に 分
類、入棟期間、退院先はC・D群間で比較、FIM、改良Frankel分類
はC・D群の各経過を検討した。
【結果】入棟期間はC群87.9±49.1日、D群27.7±13.9日で有意にC
群が長く、退院先はC群自宅13例、転院3例、施設1例、D群全例自
宅であった。 C群の改良Frankel分類について退院時65%で歩行
が可能、36%は歩行困難であった。D群の改良Frankel分類は退院
時89%で屋外歩行を獲得していた。C群FIMは入棟時、運動34.7±
18.7点、合計64.5±21.6点、退院時、運動56.4±23.7点、合計86.3
±25.3点、それぞれ有意差を認め、その他は有意差を認めなかっ
た。D群FIMは全て有意差を認めなかった。
【考察】C群は、長期のリハビリテーションを行っても、退院時に
歩行が可能な症例と困難な症例が存在した。早期での予後予測の
困難さが伺われ、症例ごとに経過を見極め対応していく必要があ
ると思われた。D群は運動機能が早期に改善し屋外歩行を獲得し
退院する症例の割合が多かった。
181
O95-3
O95-4
○梶谷香穂里(理学療法士)
,今田 健
○南都直美(看護師),根 泉,横山 薫
社会福祉法人こうほうえん 錦海リハビリテーション病院
リハビリテーション技術部
鎌倉リハビリテーション聖テレジア病院
大腿骨頸部骨折を受傷した症例に対して6分間歩行
テストと徒手筋力テストを用いた2カ月後の経過
片麻痺患者の移乗動作獲得に向けて〜連合反応につ
いて学び、効果的なケア介入を試みて〜
【はじめに】左大腿骨頸部骨折により人工骨頭置換術を施行され、
当院へ転院した症例を担当した。股関節周囲筋群の著明な筋力低
下により歩行の再獲得が困難であった。筋力増強を中心に自宅復
帰に向けて介入を行った。
【症例紹介】左大腿骨頸部骨折の診断に
よりリハビリテーションを受けている70歳代後半の男性であっ
た。自転車に乗ろうとした際に転倒、その後左人工骨頭置換術を
施行された。受傷前は約1kmの距離を毎日歩行していた。入院時
のFIMは111点で入浴や歩行に監視が必要であった。
【経過】入院
時、6分間歩行テストの結果は240mであった。中殿筋の徒手筋力
テストは術側が2で非術側が4、大殿筋は両側とも3であった。そ
の後、股関節周囲筋群の筋力増強練習や術側での立位バランス練
習等を行った。歩容は100mを超えるとデュシェンヌ歩行が認め
られた。1カ月後の6分間歩行テストは250mで中殿筋の筋力は術
側が3へ改善が認められ、非術側が4であった。退院時は筋力に変
化は認められなかったものの、6分間歩行テストは300mまで延長
した。【考察】入院時と1カ月後の6分間歩行テストでは若干の延
長が認められた。しかしながら、高齢者が在宅生活を継続してい
く上で必要となる歩行距離の目安は400mと報告されている。し
たがって現時点における本症例の歩行耐用能は未だ十分であると
は言えず、加えて受傷前より毎日外出する習慣があった点からも
歩行距離のさらなる延長が求められる。
【 1. はじめに】脳卒中の回復過程においては移乗動作に伴う麻痺
側の連合反応により、ADL獲得に支障を来す場合がある。リハビ
リ訓練ではセラピストにより連合反応を理解した介入がされてい
るが、訓練以外の介助場面において、病棟スタッフが連合反応を
理解したケアはできていない現状がある。そこで連合反応につい
て勉強会を行い1事例に対し移乗動作場面でケア介入を試みた。
【 2. 事例紹介】81歳男性脳出血、失語右麻痺あり。入院時BRS上
肢2手指2下肢3、FIM運動15点認知13点。病前ADL自立。1年前
アルツハイマー型認知症と診断。妻と二人暮らし。
【3. 看護実践】 1)セラピストが講師となり「連合反応について」勉強会を行った。
2)セラピストによる移乗デモンストレーションを行い、その様
子を写真に撮り5段階の動作に分けてポイントを記入したものを
ベッドサイドと車イスに表示した。
3)ベッドと車イス間、トイレでの便座と車イス間の移乗動作に介
入し、5段階の各動作が計画通り実施できたかチェックリストに
記入した。【4. 結果】2ヶ月実施し立位時にベッド柵を把持してし
まうことがときどきあったが、それ以外は計画通り実施できた。
病棟スタッフは介助方法のポイントを見ながら実施できた。実施
後の身体状況は、BRS上肢3〜4手指4下肢4、FIM運動21点認知13
点で運動が6点改善した。移乗介助は重介助から軽介助となり、
オムツ対応からトイレへ誘導し排泄できるようになった。 O95-5
O95-6
○安達俊太朗(作業療法士)
,高橋里佳
○藤原崇光(理学療法士)1),佐治泰範1),吉村さつき1),坂本飛鳥2),
山口 哲1)
歩行能力向上が認められたALS患者のリハビリテー
ション
皮膚筋炎に対しThreshold を用いた呼吸筋訓練と
ストレッチポールを用いたエクササイズの併用が効
果を示した一症例
医療法人徳洲会 山形徳洲会病院 リハビリテーション科
1)医療法人 山口てつ整形外科クリニック
2)学校法人 聖隷学園 聖隷クリストファー大学
【はじめに】筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)に対する運動療法の効
果については十分な根拠が少なく、むしろ運動により筋線維の変
性、筋力低下をもたらすとされてきた。今回、上下肢の筋力が徒
手筋力テスト(以下MMT)で3以上あったALS患者において筋力訓
練及び歩行訓練を施行した結果、歩行能力向上が認められたため
報告する。
【症例】
70歳代男性。X年、
歩行時に転倒するようになり、
下肢筋力低下及び呼吸困難感が出現する。5ヶ月後、検査目的で
当院へ入院。その2ヶ月後、針筋電図検査でALSと診断されリハ
ビリ開始となる。【初回評価】筋力は両上下肢手指ともにMMT4
レベルで左右差なし。歩行は不能だが、4点杖で立位保持可能。
ALSFRS−R19点(配点:言語1、歩行1、階段昇降0、呼吸困難1等)。
ADLはFIMで44点。気管切開しているが人工呼吸器未装着で、自
発呼吸で生活可能。
【経過】ベッド上での関節可動域訓練、上下肢
筋力訓練から開始した。筋力訓練は等張性運動で行い1日15分程
度とし、週5日施行した。その後段階的に立位訓練、歩行訓練を追
加した。結果MMTの値に変化はなかったが、歩行はT字杖で近位
監視レベル、ALSFRS−R21点、FIM52点とADL面でも改善した。
【考察】ALS患者に筋力訓練を施行した結果、筋力を低下させる
ことなく歩行能力が向上した。Bello-Haasらの報告にもあるが、
本症例の結果からもMMT3以上の筋力を有するALS患者に対し、
筋力訓練はADLの向上に有効であると考えられた。
【目的】重度の筋力低下により高負荷の筋力訓練の実施が困難な
皮膚筋炎の患者に対して呼吸筋訓練とストレッチポールを用い
たエクササイズ(以下、SPex)を並行して実施した際の治療効果を
報告する。【方法】対象は平成22年に皮膚筋炎を発症した37歳の
女性である。持久力及び易疲労感の改善のため呼吸筋に着目し
Thresholdを用いた呼吸筋訓練を行うと共に、動作時の体幹支持
性の低下に対して腹横筋の活動を賦活する目的でSPexを実施し
た。運動は16週間実施し、評価は筋力にFI-2を、持久力に6分間歩
行を、体幹の支持性とバランスの複合的な評価にTimed up and
go test(以下、TUG) とFunctional reach test(以下、FR) を用いて
2週ごとに行った。
【結果】運動実施前後の比較にて、TUGが13.4
秒から10.2秒へと改善し、FRが19.2cmから33.5cmへと改善し、
6分間歩行の結果は81mから141mへと改善した。FI-2での筋力
の向上はみられなかった。
【考察】呼吸筋訓練とSPexを並行して
実施していったことで、呼吸筋の筋力向上と胸郭の運動性の改善
が持久力向上に寄与し、また腹横筋の活動が促されたことによる
体幹支持性の向上がバランス能力の改善につながったと考える。
本結果より、重度の筋力低下が高負荷での訓練の実施を困難にし
ている皮膚筋炎に対してThreshold による呼吸筋訓練とSPexを
並行して実施することが持久力の向上と体幹の支持性、バランス
能力の向上に効果がある可能性が示唆された。
182
O96-1
O96-2
○甲斐千尋(理学療法士)
,佐藤里衣,尾花智子,会沢希美,
森 雅美,太田春恵,阪野栄美
○久田真央(理学療法士),田井裕之,吉尾雅春,中尾睦美,
森 涼子,磯崎恵都子,藤田博敏
千葉リハビリテーションセンター リハビリテーション療法部
理学療法科
医療法人社団和風会 千里リハビリテーション病院
視力障害が合併した対麻痺1症例について多職種支
援が効果的であった事例報告
注意情動障害をもつ、弛緩性片マヒ患者に対する
チームアプローチの経験
【はじめに】対麻痺に視力障害が合併した60代女性が、再び日常に
戻る過程に多職種で関わった。チームで支援する事の有効性、重
要性を再認識したため、その関わりを振り返り考察したい。
【 症 例 の 概 要 】大 動 脈 解 離 後 の 対 麻 痺( 障 害 高 位Th3、Asia
Impairment Scale B)と、低酸素血症による視力障害を呈してい
た。認知機能低下無し。持ち家にて息子・母と3人暮らしであっ
たが受傷を機に母は施設入所となった。入院当初より「一番重症
だ」と落ち込み流涙、積極的なリハビリ介入は困難だった。自宅
退院を希望するも、施設入所との間で気持ちが揺れていた。家屋
訪問後、自宅退院を決断し、その後は気持ちの浮き沈みはあるも、
前向きにリハビリに取り組めた。視力障害にも配慮したADL・
IADL練習、余暇活動等、退院後の生活を患者と共に想像しなが
ら入院期間8ヶ月、気持ちに寄り添い多職種で粘り強く支援した。
退院前訪問では、症例宅にて退院後に関わる全ての職種のスタッ
フと申し送りを行った。退院後訪問では、
「自宅に帰って良かった」
と笑顔で、前向きに生活していた。
【まとめ】視力障害により、通常の対麻痺では獲得できる動作にも
介助を要し、代替手段が必要であったが、多職種のあらゆる視点
と工夫が効果的だった。
「ふたたび自分らしく暮らす」
姿について、
受傷後早期に想像することは難しいが、気持ちに寄り添い、希望
を実現できる方向へ多職種で関わっていく重要性を再認識した。
【はじめに】右中大脳動脈梗塞により左片麻痺を呈したが、長下肢
装具(以下KAFO)を作製し介助歩行として日常生活場面へ導入し、
注意・情動障害に対してチームで取り組んだ症例を経験したので
報告する。キーワード:装具、介助歩行、チームアプローチ
【症例紹介】65歳、女性。右中大動脈梗塞。48病日に当院転院。
左片麻痺・注意障害・音声障害・嚥下障害。BRS上肢I手指I下肢I、
移動は車椅子。FIM68点(運動42点、認知26点)。夫と長女の3人
暮らし、理髪店経営。住居スペースは2階。
【理学療法経過】入院後備品KAFO使用した立位・歩行練習を開始
した。入院24日KAFO作製。入院60日スタッフ後方介助による
KAFO歩行にてレストラン往復150mを昼夜で実施した。入院87
日BRS上 肢II手 指II下 肢III、移 動 はAFO+T-cane見 守 り。FIM95
点(運動67点、認知28点)。チームアプローチとして、依存性及び
易怒性に対しチームの関わりの統一を図った。また、看介護を対
象に患者を交えて装具装着方法と介助指導を行った。動作に対す
る患者自身の受けとめ方をできるだけ尊重しつつ、歩容改善や車
椅子管理の指導を行った。
【考察】本症例はリハビリに対する意欲が高く、早期よりKAFO使
用した立位・歩行練習を開始し、看介護でもできるだけ楽しい関
係性を保ちながら日常生活場面でも積極的に介助歩行を行い歩行
頻度の増大を図ることができた。このことが、神経の再組織化や
運動学習となり歩行動作獲得に繋がったと考える。
O96-3
O96-4
○米澤 卓(理学療法士)
,藤田聡行,森佳寿代,小串健志,
石橋尚基
○篠原梨奈(作業療法士),村越大輝,矢野清崇,影原彰人,
須賀晴彦
多発性骨髄腫による病的骨折に対する回復期リハビ
リテーションの経験
チームアプローチが奏功し、義足歩行にて自宅退院
した1症例−易疲労性により大腿義足作成困難と思
われた透析患者を経験して−
医療法人社団心和会 新八千代病院 リハビリテーション科
医療法人社団ふけ会 富家千葉病院
【はじめに】多発性骨髄腫は病的骨折や疼痛を引き起こし、活動の
制限など様々な問題を生じさせると言われている。今回、全身の
疼痛により活動量が制限された症例に対して、疼痛コントロール
に加え、応用行動分析を用いた対応を報告する。
【症例】60歳代男性、腰痛・両下肢痛が増悪し歩行困難となり入院。
多発性骨髄腫による多発骨折(両側大腿骨頚部骨折、胸椎〜腰椎圧
迫骨折、両恥坐骨骨折)と診断。がんセンターで化学療法により一
時寛解を認め、近医の骨・関節センターで両側人工骨頭置換術施
行。その後、疼痛コントロールと退院支援を目的に当院回復期リ
ハビリテーション病棟へ転院となる。移乗・車椅子移動は自立。
胸腰椎部の持続痛が強く、誘因のある突出痛と予測不能な疼痛が
混在していた。
医師から麻薬とNSAIDsによるコントロールが行われ、チームと
してトータルペインの概念を基に情報を共有した。持続痛が緩和
され、日内の突出痛への対応についてチームアプローチを行った。
レスキューとしての強い麻薬から離脱することができ、独歩で自
宅退院となった。
【考察】進行したがん患者の特徴として、複数の苦痛を同時かつ高
頻度に有すると言われている。症例では、疼痛に関する頻回な声
掛けから、疼痛を引き起こす傾向があり活動を制限させていた。
先行刺激に含まれていた疼痛を意識させる声掛けをやめること
で、活動量を増加させることができたと考えられた。
【はじめに】透析導入患者が大腿切断後に義足を作成した報告は
少ない。今回、チームアプローチにより大腿義足着用となり自宅
退院に至った透析患者の症例を経験した為、報告する。
【症例】59歳男性。7年前透析導入。H25年5月足部壊疽(PADによ
る)のため左大腿切断術施行。同年7月義足歩行を希望され当院回
復期病棟へ入院。入院時、著しい心機能低下による心不全・術後
廃用により持久力・筋力低下が著明であった。易疲労性から積極
的なリハビリ(以下RH)は困難であり、予後の不安から抑うつ傾向
を認めた。FIM:86点。基本動作・トイレ動作:中等度介助
【経過】入院初期、心不全改善を目標とした透析管理を医師・看護
師が主動となり行い、RHは持久力・筋力の向上を目標として介入。
中期、心不全の改善と持久力の向上を認め、RH時のみ義足を着用
した基本動作・ADL訓練を開始した。また、患者の希望である義
足歩行に近づくことで、意欲向上に繋がった。終期、自宅の調整
においてMSWは自宅(借家)の社会的環境整備・支援を行い、RH
はMSWとの連携を図り、自宅内環境の提案及び自宅環境に沿っ
たADL訓練を行った。自宅内歩行、トイレ動作の自立、通院透析
の目処が立ち、同年11月自宅へ退院となった。
【考察】今回、大腿切断後の透析患者において、義足着用にて自宅
退院が可能となった要因の一つとして、入院から退院までの各時
期に適したRHの実施、及び専門職との関わりが重要であること
を経験した。
183
O96-5
O96-6
○阿部卓弥(作業療法士)
,前野 歌,河村怜美,山口翔平,
田中三絵,工藤 理,南部浩志,小川輝史,原田拓哉
○松岡丈司(理学療法士),石原佳子,谷 有人,山上真弘,
辻村英香,遠山治子
当院で最期を迎えた筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者
の苦痛の緩和〜チーム内でのリハビリテーション職
の役割と可能性〜
当院特殊疾患病棟入院中のパーキンソン病患者にリ
ハビリスタッフと他職種が協働しROM訓練とポジ
ショニングを実施した一症例
医療法人渓仁会 定山渓病院 リハビリテーション部 作業療法科
医療法人誠和会 倉敷紀念病院
【はじめに】当院ではALS患者の中で人生の最期を迎えられる方が
いる。ALS患者は、疼痛に限らず多くの苦痛を持つと言われてい
る。今後更にチームとしてALS患者の苦痛緩和が図られる為に、
苦痛内容を把握、職種毎の支援について振り返りを行い、リハビ
リテーション職(以下リハ職)の役割と可能性について検討した。
【対象】過去5年間のALSによる死亡退院患者18名
【方法】対象患者の苦痛の種類と苦痛に対する関わり内容、関わっ
た職種の診療録を調査しカテゴリーに分類した。
【結果】苦痛の種類はADL低下、疼痛、身の置き所のなさ、呼吸困
難感、嚥下障害、不眠、不安が多かった。関わり内容は、PTは疼痛、
呼吸困難感、OTはADL低下、不安、STはコミュニケーション障害、
嚥下障害、医師・薬剤師は症状緩和全般、栄養士は嚥下障害に対
して多く、専門性を生かしつつ、多職種で苦痛に向かっていた。
不条理感等の内面的苦痛に対応した記載は看護職に多かった。
【考察】表出した苦痛の背景には急速な進行という疾患特性が大き
いと考えた。緩和ケアでは苦痛をトータルで捉え関わる事が重要
である。各職種、関わりの中では内面的苦痛に対しても各々情報
を持っていると思われるがそれが記載されていなかった。内面的
苦痛は、一対一で密に関われるリハ場面で表出されやすいと考え、
得た情報を他職種に繋げる役割を担っていく事で、チームとして
一層の苦痛緩和に繋がる可能性があると考えた。
【背景】特殊疾患病棟のリハビリテーション(以下リハビリ)は包
括報酬となっており、リハビリ実施が制限される事が多くみられ
る。よって関節拘縮(以下拘縮)や褥瘡の出現、離床機会が減少す
るなど寝たきりとなる原因になりうる。当院特殊疾患病棟では1
週間に1回約20分程度しかリハビリを実施できていない状況であ
る。そこで、今回先行研究を基に病棟スタッフと協働でポジショ
ニングと関節可動域(ROM)訓練を実施した。実施後の効果や明
らかになった多職種連携の課題について報告する。
【対象と方法】対象は80代女性、パーキンソン病発症後7年経過。
高齢障害者の日常生活自立度判定ランクC。方法は現行のリハビ
リに加え、セラピストが検討、修正したポジショニングを病棟ス
タッフが中心に実施。ROM訓練は1日2回(午前・午後)、1関節(股
関節、膝関節、足関節)各5回。セラピストが看護師にROM訓練
を指導し4週間実施した。
【結果】ROMは実施前と比べ股関節、膝関節伸展ROMが15°の改
善が得られた。また、スタッフ間で話し合う機会が増え、病棟ス
タッフがリハビリ内容に興味を持つ機会にもなった。課題として
病棟スタッフの業務負担が増えた。
【考察】多職種が協働してポジショニングとROM訓練を併用して
行った。結果、4週間で拘縮の進行を回避でき、さらに拘縮のその
ものが改善する可能性が示唆された。また、課題として病棟スタッ
フの業務負担が増える事となった。
O97-1
O97-2
○高石菜美(理学療法士)
,佐藤幸喜,藤原愛作,大戸 真,
小野秀幸
○三浦翔平(理学療法士),石橋悦次,石橋寛之,石橋杏里,
小谷享之,大野真輝,溝口佑紀奈
特定医療法人明徳会 佐藤第一病院 リハビリテーション部
医療法人社団石橋内科 広畑センチュリー病院
当院回復期リハビリテーションユニットにおける
FIM Motor Gainの改善に向けた取り組み
病棟における介助量の誤差について
〜 FIMを用いた検証〜
【はじめに】FIM Motor Gain
(以下FMG)を高めるためには、多
職種連携は非常に重要となる。今回の活動は療法士の介入内容の
標準化と情報共有の推進の強化がFMGに影響を及ぼす要因とな
るかを比較検討した。
【対象】平成26年10月〜平成27年3月まで
に回復期病棟に在籍した患者101名と平成25年同時期の患者89
名を比較対象とした。
【方法】1。更衣・トイレ動作がFIM5点以
下の患者に、介入時に必ず2項目の練習を行った。2。カンファレ
ンスを週に1度開催し、対象者のADLについて療法士間で情報共
有した。3。病棟看護師に介助方法を実演し、その際に療法士が
2名以上の看護師に指導し、日常のケアの中で実践できるように
した。
【結果】平成25年はFMG0.19点(在院日数:70.1日)、平成
26年はFMG0.24点(在院日数:55.9日)であり、FMG向上と在院
日数の短縮が認められた。また介入全体に占めるADL介入時間
は3%増加、介助方法の実演は平均1.9回/月増加した。
【考察】3つ
の方策の中で、特にカンファレンスを毎週実施する事で、患者の
問題点が明確化され、早期から介入内容の変更が出来た。その結
果効率的なマネジメントが図れるようになり、在院日数の短縮、
FMGの向上に繋がったと考える。また介助方法の実演により多
職種と介助方法が統一され、患者の動作習熟が促進されたと推察
する。今後、更にFMG向上を図る為には、本研究で重視した項目
以外のADLに関連する要因を調査していく必要があると考える。
【目的】
「リハビリ室でできるADL」と「病棟でしているADL」で差
が生じているといわれている。機能的自立度評価法(FIM)を用
いて、どの項目において差が生じているかを検討した。
【方法】対象は疾患を問わず回復期病棟に平成26年1月〜9月の期
間に3か月以上継続して入院している全ての患者様計40名(男性
14名、女性26名)。平均年齢は81.0±10.7歳。リハビリスタッフ・
病棟スタッフのそれぞれの点数を入院1ヶ月・2ヶ月・3ヶ月目で
平均化し、ピアソンの相関係数を用いて統計解析を行った。項目
については食事・整容・清拭・更衣上下・トイレ動作・移乗(ベッ
ド・トイレ・浴槽)の9項目を比較・検討した。
【結果】
「下衣更衣」
「ベッド・トイレ・浴槽への移乗」の4項目で
相関関係の低下を認めた。1ヶ月目は全項目において(r=0.90〜
0.97)と強い相関関係を示したが、ベッド・トイレ・浴槽への移
乗の2ヶ月目は(r=0.85〜0.88)、3ヶ月目では4項目全てにおい
て(r=0.79〜0.85)と相関の低下を認めた。
【考察】このようになる理由として、入院直後は職種間同士の申し
送りが密に行えていることが考えられる。2ヶ月以降になると、
職種間での申し送る時間が不十分になりつつあることが予想さ
れた。また、差が大きくでた動作は全身を使った動作であり患者
様自身も痛みや疲労感を訴えることが多く、病棟内では過介助と
なってしまう状況に陥っていることが考えられる。
184
O97-3
O97-4
○伊藤雄亮(作業療法士)
,上部鉄平,篠田祐子,望月千帆里,
中島賢志
○竹内睦雄(理学療法士)1),野口大助1),濱崎寛臣1),三宮克彦1),
桂 賢一2),徳永 誠2),渡邊 進2)
入院時FIMの重症度別において、自宅復帰に影響を
及ぼす因子の検証
当院回復期リハビリテーション病棟入院患者の在院
日数の差に関する検討〜在宅復帰した入院時FIM低
得点者に焦点を当てて〜
蒲田リハビリテーション病院
1)熊本機能病院 総合リハビリテーション部
2)熊本機能病院 神経内科
【はじめに】脳卒中は一般的に障害が複雑で客観的に捉えにくい
ため、予後予測が難しいのが現状である。そこで回復期リハビリ
病棟における脳卒中リハビリの予後予測の因子として、機能的自
立度評価表(FIM)に着目した。先行研究により分類された3群の中
で,FIMの小項目得点を用いて自宅復帰へ向けて重要となる因子
の検証を行った。
【対象】平成24年1月1日から平成25年12月31日の期間内に、当院
に入院した脳血管疾患患者の内、急性期病院へ転院となった退院
者を除外した370名を対象とした。
【方法】入院時FIM総得点を先行研究より用いて、重症度別に3群
に分類した。さらに群間内で自宅に退院した者と施設に退院した
者の2群に分け、退院先を従属変数とし、入院時FIM小項目を目的
変数としたロジスティック回帰分析を行った。 なお、得られた
データはすべて数値化し、有意水準は5%未満とした。
【結果】FIM小項目得点を説明変数としたロジスティック回帰分
析では、中等度群と軽症群には有意差はみられず、強化群にのみ
「表出」という項目に有意なオッズ比がみられた(p<0.05)。
【考察】入院時FIM総得点での強化群にのみ「表出」という項目に
有意なオッズ比がみられたことから、強化群が自宅退院するため
には入院時の「表出」項目が指標になることが示唆される。
【はじめに】当院回復期リハビリテーション病棟(以下、リハ病棟)
に入院した脳卒中患者のうち、在宅復帰したFIM低得点者の在院
日数に差が生じる要因を調査した。
【対象と方法】対象は2009年1月〜2014年11月にリハ病棟に入院
した脳血管疾患患者のうち、入院時FIM総得点が30〜69点、入院
期間が61日以上、転帰先が自宅及び在宅施設の3つの基準全てに
該当した患者。平均在院日数100.8日±40日を基に、標準群(61〜
141日)と長期群( 142日以上)の2群に分け、年齢による影響を排
除するため各群の対象年齢を統一し31名ずつを無作為抽出した。
統計学的分析は、FIMの点数経過と在院日数を要因とした対応の
ある二元配置分散分析を用い、FIM総得点、運動FIM合計点、認知
FIM合計点それぞれのFIMの点数経過を比較、検討した。
【結果】FIM総得点では標準群と長期群において2か月時点で有
意差を認めた。運動FIM合計点では1か月時点、2か月時点で有意
差を認めた。認知FIM合計ではいずれの期間でも有意差を認めな
かった。
【考察】標準群と長期群で、入院時のFIM総得点、運動FIM合計点、
認知FIM合計点に差がなく、入院1か月時点の運動FIM合計点、入
院2か月時点のFIM総得点、運動FIM合計点に差があることから、
在院日数が増加する要因として、入院1か月時点の運動FIM合計
点、2か月時点のFIM総得点、運動FIM合計点の改善が影響してい
ることが示唆された。
O97-5
O97-6
○渡邉祐基(理学療法士)
,櫻井貴浩,久保 瑛,小宮里紗,
桑名 岳
○池田俊昭(理学療法士)1),畑山直樹1),橋口美沙1),下赤久美1),
窪田正大2),竹内明禅1),八反丸健二1)
一般社団法人巨樹の会 蒲田リハビリテーション病院
1)医療法人慈圭会 八反丸リハビリテーション病院
2)鹿児島大学 医学部 保健学科
回復期リハビリテーション病院における大腿骨関節
包内・外骨折の在院日数とFIMの比較について
FIM運動項目総得点と退院先の関係性について
−運動器疾患患者において−
【目的】大腿骨骨折は関節包内・外骨折の相違や手術方法など様々
ある。特に、関節包内骨折では人工骨頭置換術等は脱臼リスクを
生ずる。そこで大腿骨骨折における予後予測検討の為、FIM、急
性期・回復期在院日数を比較・検討した。
【対象】2011年5月〜
2015年3月までに急性期病院に転院した患者を除く、当院を退院
した大腿骨骨折患者の急性期在院日数と当院在院日数を比較し、
当院での入退院時のFIMとの関連性を比較分析した。
【方法】対
象を関節包内骨折と関節包外骨折の2群に分け、急性期・回復期
在院日数、入退院時の運動項目・認知項目FIM、FIM総点での相
関分析を行った。関節包内・外骨折での入退院時のFIM総点でt検定を行った。
【結果】入院時FIM運動項目点数(下衣更衣、総点)、
FIM総点では関節包内骨折に比べ関節包外骨折が有意に高かっ
た。入院時と退院時FIM総点には正の相関がみられた。急性期・
回復期在院日数で相関はみられなかった。関節包内・外骨折での
退院時FIM総点には相関がみられなかった。関節包内・外骨折で
の入退院時のFIM総点で有意差がみられた(p<0.01)
。
【考察】関
節包内骨折は術後脱臼リスクが高い症例が多く、FIM運動項目(下
衣更衣、総点)に影響を及ぼすが、認知機能の向上に伴い、脱臼に
対する理解を得ることでFIM総点の上昇に繋がったと考える。急
性期在院日数が短く、入院時FIM運動項目点数が高い程、当院で
早期からADL面の治療介入が可能となり、退院時のFIM総点が高
くなると考える。
【目的】当院では、入院時及び経過カンファレンスを多職種で行い、
機能的自立度評価法(FIM)を用いて現状のADL状況、今後の方向
性を協議している。我々は辻らの提唱したFIM運動項目総得点の
もつ意味(FIM運動項目総得点とADL介助度合いの関係性)を用
いて、カンファレンスをより円滑にしている。今回、FIM運動項
目総得点が転帰先決定にどのような影響を与えるか検討した。
【対象及び方法】平成26年8月〜平成26年4月まで入院の運動器疾
患患者約259名(平均年齢76.1歳±14.2)の退院先別に、自立生活
群210名(自宅、ケアハウス、クループホーム)、介助生活群49名
(転院、施設)の2群に分けFIM運動項目総得点を比較した。
【結果】生活自立群79.1点、生活介助群53.6点であった。
【考察】当院カンファレンス時の目標は、FIM運動項目総得点80
点台を目指すこととしているが、今回の調査結果からも運動器疾
患患者においてFIM運動項目80点以上目標にすれば、自宅退院へ
と繋がることが示唆された。また、FIM運動項目が70点以上、す
なわちセルフケアが自立しているにも関わらず、転帰先が施設に
なった対象者が11名いた。施設入所となった多くの理由は家族
の受け入れ状況が影響していることが分かった。対象者に対して
はチームで早めの対応を進めていく必要があると考えられる。
185
O98-1
O98-2
○中村絵美(看護師)
,結城可奈英,梅木真弓,納谷典子,金坂雅子,
渋谷法子,北城美幸,阿部くるみ,小野典子
○三浦早苗(作業療法士),手塚康貴,塩谷求美,中村元紀,
宮武 慎,納谷貴之,藤原いずみ,米屋真須美,勝田真理
苫小牧東病院 南4回復期リハビリテーション病棟
社会医療法人生長会 府中病院
患者・家族にとって最善な生活とは
〜一症例からの学び〜
多職種協働による、
「子育て作業」の支援が母親役割の
形成につながった妊娠初期に脳梗塞を発症した事例
【はじめに】回復期は機能レベル、心理状態ともに変化改善が大き
く見られる時期であり、多くの患者は精神的不安定・悲観期を経
て障害重要し自宅復帰を目指している。その一方で家族にとって
は介護に対する戸惑いや不安・混乱をもたらす。家族の目標とし
ていたADLに到達したが、要介護5の判定後、施設入所への意向
となった事例を振り返り、退院支援における看護師の役割につい
て考察し報告する。
【症例紹介】79歳女性、アテローム血栓性脳梗塞、入院期間163日、
高次脳機能障害左片麻痺・構音障害・嚥下障害。長女夫婦と3人
暮らし
【経過】長女の面会は1回/週。施設入所を知った時「家に帰れない
なら、この6カ月は無駄な時間だった」と本人が話していた。入院
時:FIM43点 車椅子2人介助・未離床・オムツ排泄・経鼻経管
栄養退院時:FIM80点 車椅子自力操作可能・4点杖歩行練習中・
トイレ排泄・経口摂取
【考察】ADL向上に至るまでの過程や成果を家族に情報提供し、
患者と家族が素直にお互いの思いを言える機会を創出する必要が
あった。家族に早期から介護参加してもらう事で介護に対する不
安の軽減、退院後のイメージに繋げられた可能性がある。要介護
5の判定が家族の介護意欲を喪失させた可能性がある。
【おわりに】本人と家族双方の真意を引き出し、よりよい決定を目
指せるように適切な情報提供をするなど働きかけが必要である。
【目的】妊娠初期に脳梗塞を発症した事例に対し、産科と連携した
作業療法により、産前後の習慣と母親役割の形成の一助となった
ので報告する。【事例】X年Y月Z日、看護師として勤務中に脳梗
塞を発症した20歳代の女性、A氏。妊娠3ヶ月であった。Z+34日、
当院回復期病棟入棟。
【初期評価】中等度の運動麻痺、軽度の注意
障害があり、FIM92点、車椅子でトイレ自立も両手動作が困難で
あった。運動麻痺の改善、復職への関心が強く、出産と子育てに
関する発言はなかった。
【経過】前期:運動麻痺に対する回復的な
アプローチを中心に実施、左上肢のADL参加が増加した。外泊前、
妊婦の身体を考慮した家事動作指導や環境調整を行った。転換期:
両手での家事動作が可能となった頃、当院産科受診をきっかけに
出産の不安を語るようになった。後期:Z+65日、産科を含む多職
種でカンファレンスを実施。事前に産科で沐浴・母親学級の見学
を行い、A氏の能力に合わせた新生児の抱き方やオムツ交換の方
法を助産師と検討した。人形や哺乳ビン等実物による模擬練習の
中で「こうしたらオムツが替えられそう」と語り、自ら工夫する場
面も見られた。Z+120日に自宅退院、Z+184日に当院で出産。
【最終評価】退院時の運動麻痺は軽度、FIM118点であった。産後、
子育てに関して「完璧ではないけど順調」と語った。
【考察】多職種で連携し環境を整え、子育ての作業を経験できるよ
うにすることで、母親としての役割に貢献できたと考える。
O98-3
O98-4
○前岡伸吾(作業療法士)1),公文梨花2)
○下田有紀(作業療法士)1),本多龍介2),樫村友賀里1),齋藤康子1),
佐藤紗代1),廣瀬沙織1),角田 浩1)
1)公益財団法人 天理よろづ相談所病院 白川分院
2)公益財団法人 天理よろづ相談所病院
1)公益社団法人 地域医療振興協会 公立黒川病院
2)医療法人社団俊香会 介護老人保健施設 羽生の丘オーベルジュ デイケア
「日課であった耳鼻科への通院をしたい」と希望する
ケースへの生活行為向上マネジメントを使用した関
わり
訪問リハビリと通所リハビリ協働によるCI療法の取
り組み
【始めに】膿胸による廃用症候群により、寝たきりとなった91歳の
男性を担当した。今回、生活行為向上マネジメント(以下MTDLP)を
用いて関わり、本人の望む形での退院支援が出来たので報告する。
【事例紹介】病前は2本杖にて近所の耳鼻科に通院し、友人に会う
ことが日課であった。MTDLPの聞き取りシートより希望は「病
前と同じようにサービスを利用せず、日課である耳鼻科にも通院
したい」であった。
【作業療法評価】MTDLPのアセスメントシートの結果、動作時の
呼吸苦や易疲労性により更衣やトイレ動作等に介助を要してい
た。認知面は問題なく、訓練に対しての意欲は高かった。屋内生
活の自立と妻の見守りにて通院できるようになることを共有の目
標とした。
【経過および結果】MTDLPを用いて合意した目標獲得に向けて作
業療法では筋力訓練、トイレや入浴訓練を実施した。理学療法士
には2本杖歩行の獲得と看護師、介護士にはトイレや更衣等、日中
の活動量向上と自立に向けた関わりを依頼した。経過の中で本人
の意欲や活動量が上がらない時期には、再度アセスメントシート
を用いて、目標達成への動機づけの再確認を行った結果、ADLは
自立し、通院可能なレベルまで歩行能力の改善を認めた。
【考察】MTDLPを用いたことで、希望とする生活像を達成するた
めの意欲を維持し続ける事ができた。それにより病棟での活動量
も向上し、目標を達成することができたと考える。
【はじめに】Constraint-induced movement therapy(CI)におけ
るTransfer Package(TP)は麻痺側上肢を日常生活で用いるため
の行動戦略である。訪問リハビリは在宅生活へ直接介入するため、
日常生活に対応した指導が可能だが単位限度のため療法士による
直接介入時間が不十分となり、CIの実施が難しい。
【目的】訪問リハビリ利用者に対し通所リハビリ担当と連携した
施設間恊働によるCIを実施し、その効果の検証を目的とした。
【症例】80歳代男性。診断名:心原性脳塞栓(左片麻痺)現病歴:発
症後A病院にて入院加療し当院へ転院、回復期リハビリ病棟を経て自
宅退院。訪問リハビリと通所リハビリを開始し430病日よりCI実施。
【方法】目標動作は茶碗を左手で持ち上げて食べることと設定。
第1週CI前評価、第2〜4週CI実施、第5週CI後評価を実施。訪問
リハビリは週2回、通所リハビリは週1回で利用。決められた課題
に対して健側の使用を制限し麻痺側機能練習を、1日2時間リハ
介入時はさらに1時間のCIを行った。TPとして行動契約、Motor
Activity Log、日記等を実施。また独自に作成したCIファイルを
用いて施設間の情報交換を行った。
【結果】日常生活で左手の使用頻度が向上し、茶碗を持ち上げて食
べることが可能となった。
【考察】訪問リハビリと通所リハビリが協働することにより、生活
機能の向上に焦点をあてたCIが実施でき目標達成に至った。施設
間協働によるCIの有用性が確認された。
186
O98-5
O98-6
○荒巻祐麻(作業療法士)
,下河邉勝世
○山崎紗由利(作業療法士),益永真理,山田友春,田口雅大,
小林 圭
社会医療法人共愛会 介護老人保健施設 あやめの里
鹿教湯三才山リハビリテーションセンター
鹿教湯病院訪問リハビリテーション科
自分らしい生活の獲得に向けて〜馴染みのある作業
により希望する場所へ戻った事例〜
生まれた家で暮らしたい!〜連携に着目して〜
【はじめに】受身的な生活を送っていたA氏に対して、その人らし
さを追求した作業や活動が獲得できるように関わった。その後、
生活に変化がみられ本人様の希望する場所へ戻ることになったA
氏を含め以下に報告する。
【事例】80歳代女性。独居。バスで買い物に行くなど主体的な生
活を送っていたが、風邪を引いたことによりベッド主体の生活と
なる。長男が在宅介護を行っていたが活動性の低下を認め当施設
へ入所となる。
【経過】身体能力の向上はみられたが、職員に言われてから行動す
るという受身的な生活を送っていた。家事動作や趣味活動を日常
生活で行っていくことが自分らしい生活の獲得へ繋がるのではな
いかと考えチームアプローチを行った。日常生活の中で自発的な
発言や行動がみられるようになり、その後、A氏の希望する自宅
へ退所となった。顔馴染みの利用者と共に生活し、1日を通して
馴染みのある作業活動をすることが習慣化してきたことが自分ら
しい生活を獲得することへと繋がったのではないだろうかと考え
る。また、主体的な生活が送れるように変化したことが家族の気
持ちを動かし、希望する場所へと戻ることに繋がったのではない
だろうかと考える。
【おわりに】これからも、趣味活動や家事動作など利用者様にとっ
ての馴染みのある作業を行っていくことで本人・家族様が希望す
る場所へと戻れるようにチームアプローチを行っていきたい。
はじめに高次脳機能障害を有する事例で、在宅復帰の希望を叶え
るために介護保険法や自立支援法、社会福祉協議会独自の事業、
地域住民、友人など、様々な人々との関わりがあった。その中で
感じたことをここにまとめる。事例紹介50代後半の男性。独居。
左被殻出血(右麻痺、失語症、注意障害、病識の欠如)。入院中、高
次脳機能障害の影響から自宅での生活は困難であると判断され、
高齢者保健福祉支援センター・居住部で生活をしていた。しかし、
在宅復帰の要望が高まり、退院3ヶ月後に訪問リハビリテーショ
ン(以下訪リハ)開始となる。経過自宅は古民家で、囲炉裏の生活。
病前はほぼ自給自足の生活を送っていた。在宅復帰に向けて定期
的にカンファレンスを開き、情報交換や今後の予定の確認を行っ
た。試験外出時、火の管理のリスクの高さ等様々な問題が生じた
ため、解決方法の検討、情報の共有をはかった。現在は自宅復帰
したが、新たな課題や問題が生じており、その都度対応している。
考察今回の介護保険法の改定では療法士としてのマネジメント能
力がよりいっそう必要とされている。今回の事例に関しても、今
まで関わりの少なかったスタッフとの連携や、リスク管理の提案、
活動や参加へのアプローチなど、様々な角度からの視点を持ち、
関わることが必要となっている。そのためには訪問リハの出来る
ことや考えを伝え、こまめな幅の広い連携を取っていくことが必
要である。
O99-1
O99-2
○佐々木謙(理学療法士)
,岩村和幸,澤口義博,中田隆文
○舟久保旭(理学療法士)
COPD患者に対する運動療法は在宅療養日数に影響
するか
訪問リハビリテーションにおいて、目標の確認と具
体的な数値測定で主体性を引き出した関わりについ
て
須藤内科クリニック リハビリテーション科
甲州リハビリテーション病院 訪問リハビリテーション
【はじめに】COPDには下肢の運動療法を中心とした呼吸リハ
の継続が重要であり、国際的なガイドラインでは呼吸困難の改
善、運動耐容能の改善、予後の改善などの効果が示されている。
COPDに対する呼吸リハは地域における継続が望ましく、公的介
護保険制度の訪問リハや通所リハでも実施され、通院や通所が困
難な事例では訪問リハが実施される。COPDへの訪問呼吸リハの
成績に関する報告は少ない。
【目的】在宅COPDに関して、運動療法の継続が在宅療養日数に影
響するかを検討する。
【方法】当院より実施した、在宅COPD114例への訪問呼吸リハに
て、積極的に運動療法を実施した群(実施群)と実施できなかっ
た群(非運動群)との間における在宅療養日数について調査した。
統計は2群間のt検定を用い、危険率5%をもって有意とした。
【倫理的配慮】本研究は当院の倫理審査にて承認を得ている。
【結果】非運動群平均271日に比較し、運動群平均834日と在宅療
養日数が有意に長かった。
【考察】長期在宅療養が可能だった事例は積極的な運動療法が実
施されており、かつ自主トレーニングにも積極的だった。自主ト
レーニングが可能な事例の訪問リハの頻度は少なく、自主トレー
ニングが不十分だった事例には訪問リハの頻度を増やすことで適
切な呼吸リハが提供できたと考えられた。訪問呼吸リハはCOPD
の生命予後にも寄与できる可能性がある。
【はじめに】訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)では、訪問
時間以外で、どのように過ごすか課題となる事が多い。今回、訪
問時間以外で本人が主体的に運動や活動に取り組む事ができた
ケースについて報告する。
【ケース紹介】70代男性で頸椎後縦靭帯骨化症。ADLは自立して
おり、屋内の移動は歩行器歩行や伝い歩き、屋外は歩行器や両杖
にて見守りにて可能であった。本人の希望は、病前に行っていた
定期的な集まりへの参加、カフェまで歩いて行きたいであった。
【支援内容・成果】利用者の希望とリハのアセスメントを踏まえて、
目標を設定した。運動メニューを提案し日課として取り組んでも
らった。継続してもらうために、目標の確認と測定を毎月行なっ
た。運動メニューは、本人の状態に合わせて、適宜、追加・変更
していった。測定を行うことで運動効果があることを本人に実感
してもらうことができ、本人が主体的に継続して運動を行うよう
になった。その結果、歩行能力も伸び屋外の散歩などへの活動に
つながった。さらに、屋外への外出機会が増えることで、近所の
人からも声かけをしてもらえることも増え励みとなった。
【まとめ】活動・参加につなげていくためには、いかに利用者本人
が主体的に運動に取り組めるかが重要であると考える。今回は、
目標の定期的な確認と具体的な数値で経過を追う事で、本人の主
体性が生まれ、希望の実現に向けてサポートできたケースと考え
る。
187
O99-3
O99-4
○加藤太一(言語聴覚士)
,川越潤一
○井浦由基(作業療法士)1),佐藤健三1),横山大輔1),曽我知保1),
小松弘典1),前田香苗1),吉川 歩1),小笠原正2)
桜ヶ丘中央病院 リハビリテーション科
1)社会医療法人近森会 訪問リハビリテーションちかもり
2)社会医療法人近森会 近森リハビリテーション病院
訪問リハビリテーションにおける定期評価の試み
当事業所における社会参画支援の有用性が得られた
一事例
【はじめに】平成27年度介護報酬改定の「活動と参加に焦点を当て
たリハビリテーション(以下、リハ)の推進」により、リハの理念
を踏まえた「心身機能」
「活動」
「参加」の要素にバランスよく働き
かける効果的なサービスを推進するための理念の明確化と、
「活
動」
「参加」に焦点を当てた質の高いリハの着実な提供を促すため
のリハマネジメントの充実を図ることとされた。訪問リハにおけ
るリハマネジメントにはリハ会議の強化やモニタリングなどの
PDCAサイクルに準じた介入が必要となる。特に、モニタリング
においては特定の評価を定期的に実施し、訪問リハ介入における
効果判定を行うことが重要である。今回、
「心身機能」
「活動」
「参
加」の各レベルにおいて評価項目の統一化を図った。
【方法】
「心身機能」の評価項目はMMSE
(HDS-R)
。
「活動」はTime
Up and Go test・FIM等。
「 参 加 」はLSA。 個 人 因 子 はVitality
Index。総合的な評価項目は暮らしぶり評価尺度(全国国民健康
保険診療施設協議会)
。以上の各評価を3ヶ月ごとに実施した。
【結果・考察】各評価項目が訪問リハにおける「心身機能」
「活動」
「参加」の効果判定として妥当なのか検証する必要はあるが、いず
れも簡便に評価できる点では、訪問リハのような時間の限られた
中で行う評価としては使いやすい。
【はじめに】今回、当事業所における社会参画支援を実施後、活動
や行動・夫の過介助・IADL参加場面に変容を認めた事例を経験
したので報告する。
【事例】60代女性、脳内出血、右片麻痺、失語症。要介護3。夫と
二人暮らし。6ヵ月の入院加療後、自宅退院。夫の過介助にて
ADL・IADL全般に介助。FIM:64/126、LSA:4/120、手段的日
常生活活動尺度(以下、IADL尺度):0/8。
【社会参画支援】当事業所の利用者とその家族を対象に、ピアカウ
ンセリング(自己信頼の回復・意識確立・介助者から自立するた
めの支援)、閉じこもり予防、コミュニティーの拡大、自助グルー
プへの参加・結成を主目的に、年単位の行事や趣味活動等の体験
を通じた支援。
【 経 過 及 び 結 果 】介 入 当 初 は 外 出 練 習 を 強 く 拒 否 さ れ、ADL・
IADL練習を中心に実施。介入から4ヶ月後、日常的に自助具使用
での麺類摂取が可能となり、興味のある飲食店への外出練習を実
施。しかし、定着には至らなかった。介入から6ヶ月後、社会参画
支援を実施。その後、買物練習の受け入れがあり練習を開始。結果、
週3回の夫との買物が定着。過介助が軽減し調理の味付けも日課
として定着。FIM:94/126、LSA:30/120、IADL尺度:2/8。
【考察】本事例と家族は、社会参画支援を通した成功体験が、自己
信頼の回復、主介護者が関わり方を再認識したことで、IADL参加
場面、活動・参加の拡大に繋がったと考える。
O99-5
O99-6
○原田あゆ美(作業療法士)1),久木渉平2),清水佳子2),森岡秀彰1),
赤峰孝宏1),斉藤秀之3),岸 清志4)
○岩本記一(作業療法士),武田久美子,片岸美佳,山田幸子
1)訪問リハビリテーション事業所 にしまち幸朋苑,2)通所リハビリテーション事業所
にしまち幸朋苑,3)こうほうえん いなばエリアリハビリテーションアドバイザー
4)にしまち診療所 悠々
世田谷区社会福祉事業団 訪問看護ステーション三軒茶屋
活動・参加に繋げる訪問リハビリテーションの経験
〜作業療法士として関わった在宅高齢者の一症例〜
最期まで家でいたい〜終末期がん患者に対する訪問
作業療法の役割〜
【はじめに】今回、がん末期状態で独居生活を継続し、自宅で亡く
なった症例の経過および訪問作業療法(以下、訪問OT)の関わりと
役割について報告する。なお、発表にあたり家族より同意を得た。
【症例紹介】70代男性、独居。前立腺がん末期、軽度左片麻痺。要
介護2、元准看護師。末期状態となり、
「最期まで家にいたい」と
の訴えが聞かれていた。
【経過】X年5月〜移動能力の維持、環境調整等を目的に訪問OT開
始。7月頃寝室や浴室での転倒が頻発し、臥床中心の生活となる。
末期の告知後、
「早く死にたい」と抑うつ状態であった為、傾聴を
中心に関わった。また、訪問時には症例が好きな煙草を座位で吸
えるよう環境調整を行った。症例の病状変化は連絡ノートで情報
共有した。X+1年1〜2月食欲低下し、座位保持困難。傾眠傾向
となり会話量が減少。3月全身転移の診断。疼痛により寝返りが
出来なくなり、エアーマットを導入。ヘルパー、看護師へポジショ
ニング方法と体交時の注意点を伝達。4月上旬在宅酸素、吸引器
導入。OT訪問の翌日、意識レベル低下し、自宅にてヘルパーに見
守られ永眠された。
【考察】症例に対し身体機能や精神機能、環境面など様々な側面か
ら介入すると同時に、症例の希望する作業への支援は訪問OTの
役割の一つではないかと考える。また、がん末期の病状変化に迅
速に対応するには、訪問する多職種間での情報共有と症例に対す
る統一した関わりが重要だと考える。
【はじめに】活動・参加に繋げた在宅高齢者を経験したので報告
する。
【症例紹介】70歳代後半女性。2型糖尿病、抑うつ、アルツハイマー
型認知症にて服薬・通院中であった。60歳頃から易転倒、外出機
会減少、身体・認知機能低下し、昨年3月から週1回短時間通所リ
ハで作業療法を受けていた。しかし、這いずり移動状態となった
ため、短時間通所リハを中止し11月から訪問リハに移行した。夫
は仕事で忙しく、別居の二人の娘が生活の支援をしていた。
【初期評価】主訴は転倒が怖いであった。BMI28、両下肢MMT4、
両 足 関 節 背 屈0°、両 足 底 異 常 感 覚、片 脚 立 位 困 難、SDS40点、
HDS-R14点で、臥床傾向や個人因子から家族の介護負担感があっ
た。
【経過】転倒、不安による活動減少を主たる問題点、入浴自立、デ
パートへの買物を目標に週1回の訪問作業療法を開始した。1ヶ
月で自宅内歩行移動可能となり、短時間通所リハで作業療法を
併用となった。2ヶ月目から、糖尿病に起因する障害の改善と活
動・参加を誘発する行動療法を開始し、本人の内発的行動を促し、
BMIは25に改善した。現在、自宅内歩行移動自立、趣味の俳句、
家族と外食・外出の活動が増え、旅行という参加目標が出現した。
【考察】真のニーズや問題点は人生歴・生活歴や環境因子に起因し、
対象者の活動・参加には、客観的指標によるモニタリングが有効
と思われた。
188
O100-1
O100-2
○温井泰夫(介護福祉士・ヘルパー)
,熊木晴美,高本真紀子
○笹島翔太(看護師)
医療法人社団輝生会 初台リハビリテーション病院 リハケア部
札幌西円山病院 看護部 6B病棟
入院時ADL重介助の患者に対し自宅退院に向けた介
護福祉士の関わりについて
−排泄ケアの関わりの変化を通して−
左片麻痺を有する高齢者の生活機能再獲得に向けた
援助〜排尿ケアに焦点を当てて〜
【はじめに】入院時、左大腿転子部骨折により疼痛強く床上対応の
患者で、排泄についてはベット上でオムツ交換をしていた。入院
前の車椅子での在宅生活を目指し介護福祉士としての関わりを振
り返ったので報告する。
【症例紹介】80歳代女性、左大腿転子部骨折。負荷・捻転禁止。
10年前から両側大腿骨骨頭壊死にて車椅子ベースの生活となる
が、掃除をヘルパー利用し、その他の生活は自立していた。発症1
年前に夫が亡くなり独居。
【経過】入院時ADL1〜3人介助が2週間で1/2荷重可、3週間で車椅
子移乗が1人介助になり、本人の希望に合わせ食後にトイレ誘導。4
週間で全荷重可となり夜間もトイレへ誘導。夜間寝ぼける事があ
る・失禁がある・失禁時の陰部の痛みがあると言う本人の訴えよ
り、本人と退院後の生活をイメージしながら排泄方法の検討を重ね
た。ベット上で排尿時にパット交換する方法で練習を開始、車椅子
移乗・移動し日中はトイレへ、夜間はベット上でのパット交換が自
立。FIM運動項目は37点から退院時は53点になった。
【考察】認知機能が保たれているケースであったため、在宅生活を
想定し本人と相談しながらADL自立を目指した。ADLが自立す
ることを意識して話し合ってきたが、本人の言動より目先のADL
自立しか見れていなかったと反省し、入院前の生活全般をしっか
りと理解し社会復帰までを意識した関わりをすることが介護福祉
士としての重要な役割であったと学んだ。
【 1.はじめに】今回「もてる力・できる力」を見極め、チームで連
携しアプローチすることでトイレ動作が確立し、生活機能の再獲
得に繋がった事例を報告する。【2.事例紹介】A氏70代後半男性。
脳梗塞後左片麻痺残存し、リハビリ目的で当院入院。
【 3.看護の
実際】A氏は尿意を訴えることができるという点を「もてる力」と
捉え排尿ケアに焦点を当て関わった。
1)排泄パターン確立:入院時は尿意訴えあるが失禁も多く、定時
トイレ誘導から開始した。その後2週間で失禁が減りトイレでの
排泄が増えてきたため、時間誘導中止。排尿間隔空いた時のみ声
かけに変更。
2)排泄動作:入院時は座位・立位ともに不安定のため2人介助。
排泄中も見守りが必要で、A氏は「迷惑掛けてごめんね」と涙ぐむ
こともあった。入院2週間程で立位動作安定したためチームで検
討し1人介助とした。その後座位バランスも安定し、排泄中の見
守りを中止。この時期には、患者自らトイレ動作を確認しながら
行えていた。
【 4.結果】1.トイレ時間誘導や声かけによって、ト
イレでの排尿回数が増え、尿失禁の回数が減少した2.できる排泄
動作が増えた3.トイレでの排泄に積極的になった【 5.考察】
「排
尿」というひとつの生活機能再獲得向けて、患者のADLを把握と
状況に合わせた看護計画の変更が必要であるとともに、患者が
「もてる力・できる力」を最大限に発揮することは、本人の意欲向
上、さらにはQOLの向上につながったと考える。
O100-3
O100-4
○和井内美穂(介護福祉士・ヘルパー)
,畠山愛菜,坂下美里
○岩場加奈子(看護師),坂根嘉奈子
医療法人社団帰厚堂 南昌病院
錦海リハビリテーション病院
排泄の自立支援の過程における布パンツの使用
オムツ外しスコアとオムツ依存度の関連
【はじめに】A病棟では、患者の状態の変化に伴い排泄の自立に向
けた排泄ケアの方法の変更が多い。その中で、あわないオムツや
尿とりパットを使っていることがある。そこで、リハビリパンツ
を使用しトイレ誘導可能な患者に布パンツへと移行を試みた。
【目的】布パンツを使用して、快適な尊厳ある排泄ケアをしながら
自立を図る。
【方法】期間:平成27年5月〜平成27年6月 対象:当研究の趣旨
の説明に同意した、日中リハビリパンツを使用している失禁のな
い患者9名。方法:布パンツに変更し、対象者に聞き取り調査を
行う。
【結果】布パンツに変えてよかったと答えた患者が9名中7名だっ
た。良かった点として肌触りがよかった、蒸れがなかった、パン
ツの上げ下げがしやすく、布パンツの使用は良かった。悪かった
と答えた患者は0名であった。
【考察】布パンツは通気性に優れ、肌環境・排泄動作に良く、患者
の自信につながったが、失禁の不安も大きいため、逆に意欲低下
もあり得る。
【結論】布パンツは、排泄動作・肌環境・患者の排泄の自立に向け
て良い影響を与えた。しかし、失禁の際のケアが重要。本人の意
思を尊重し、布パンツに変える基準・方法を吟味することが今後
の課題である。
【はじめに】排尿ケアの実践は、被介護者の膀胱機能の評価と自己
管理能力の評価から始まると言われており、オムツ外しには膀胱
機能、身体機能、認知機能が関連している。本研究は各機能の経
過とオムツへの依存の程度の推移を調査することでオムツ外しへ
の示唆を得ることを目的とする。
【方法】オムツへの依存の程度を評価するオムツ依存度を作成した。
入院時オムツを使用し、3ヶ月以上の入院期間があった患者31名を
対象とし、岩坪のオムツ外しスコア(膀胱機能、認知機能、身体機能
各スコアの合計)と、オムツ依存度を1か月ごとに評価した。
【結果および考察】3か月目にオムツ依存度が0になったのは9名
(29%)、減ったのは14名(45%)、減らなかった、増えたのは8名(26%)
であった。3か月目以降にオムツ依存度が0になる症例はなかった
ため、オムツ外しは3ヵ月を目途に行い、以降はオムツの選択、介
護指導に重点をおいて介入することが必要である。またオムツ外
しスコア3点以上であればオムツが外れる症例がでてきているこ
とから、3点以上を目指して介入していくことが必要である。オム
ツ外しスコアが高得点でもオムツが外れなかった要因として、失
語症のため尿意を確実に伝えられない等があり、尿意が伝えられ
るように介入していくことが必要であることが示唆された。
【結論】オムツ外しは入院から3か月を目途に、オムツ外しスコア3
点以上で尿意が伝えられるようになることを目標として行う。
189
O100-5
O100-6
○田中 龍(作業療法士)
,及川 岳,上野央幹
○吉田雪絵(看護師),小滝智美,佐渡祐子,鳥海 悟,馬崎昇司
医療法人友愛会 盛岡友愛病院 リハビリテーション科
医療法人真正会 霞ヶ関南病院
脳卒中片麻痺患者におけるトイレ動作訓練への介入
〜主体的な活動訓練に対する意欲の向上に向けた関
わり〜
回復期リハビリテーション病棟における便秘改善へ
の取り組み
【はじめに】トイレ動作とは、排泄動作を遂行するために行う一連
の起居、移乗動作や上肢の操作など全般を指す。排泄は生活の基
本部分であり、尊厳にも大きく関わる重要な行為である。
【症例紹介】70代男性。X-6年ペースメーカー留置。X年、他院に
て日経皮的大動脈弁置換術施行。X+3日、脳梗塞発症。右MCA領
域に梗塞巣を認めた。X+30日、
当院転院。Brs上肢・手指2、下肢3。
基本動作:非麻痺側方向への移乗はほぼ介助なく可能。立位保持
介助。主訴:動作疲労度とは別に腹部状態への固執が強くリハビ
リへの意欲に影響あり。
【needs】トイレでの排泄が家族・本人の希望
【経過・結果】
(初期→最終)修正borg.scale:安静時臥位2→0、端
座位6→4、食後車椅子座位5→4、訓練後8→7。簡易座位保持分類:
レベル1→レベル2。理学療法にて歩行訓練導入後、リハビリへの
モチベーション向上。トイレ動作も実施しているがリハビリ以外
では行えていない為、妻が面会に来た時間を利用し、トイレ動作
練習を一緒に行うようにした。
【考察】オムツを使用している為か移動やトイレに行くことが訓
練としてとどまっていると感じる。身体機能として可能なレベル
であっても在宅では介助への負担となることも推測される。在宅
では妻が介護者となる為、人的環境を交えつつ、繰り返し練習し
ていくことで今後の介助方法の選択、主体的な意欲・動作等が変
化していき、活動訓練が生活化となるのではないかと考えた。
【はじめに】当院の回復期リハビリテーション病棟(以下回復期リ
ハ病棟)において入院時より、内服薬は種類、量ともに減少するが、
下剤は増える傾向にある。またかかわりの中で排便のコントロー
ルが意欲や睡眠に影響を及ぼすことが多く、下剤への依存度が高
くなることを感じる。今回、下剤のみに頼らない排泄のセルフケ
ア確立に向けた取り組みを実施したので症例を通して報告する。
【対象と方法】対象は平成26年7月1日から平成27年1月31日の間、
当回復期リハ病棟に入院されていた患者97名(経管栄養の方は除
く)
。起床時の水分摂取や運動など、退院後も継続できるものを
毎日実施し、下剤の量や種類の増減を集計し検証した。また、期
間終了後に便秘に不安を感じている方に同様のかかわりを実施し
た。
【結果】期間内に取り組みを実施できた方は53名で、内9%の方が
下剤の量が減少し、種類が減少した方は0名だった。また便秘に
よる食事量の減少や不眠が認められた方に取り組みを実施するこ
とで、これらが改善され不安の軽減に繋がった。
【考察】今回の研究を通して、便秘という不安の一つを自己解決す
ることは、退院に向けての自信を獲得でき、意欲的な退院後の生
活に繋がることが分かった。下剤そのものを中止することは困難
であることも多いが、入院中から水分摂取や運動にて自然排便を
促し、下剤のみに頼らない習慣を定着させる必要性は高いと考え、
今後も関わりを継続し支援していきたい。
O101-1
O101-2
○山田邦彦(介護福祉士・ヘルパー)
○蓑田もと子(理学療法士)1),森 淳一1),太田有美1),洲上祐亮1),
尾上佳奈子1),佐藤浩二2)
西広島リハビリテーション病院
1)社会医療法人敬和会 大分東部病院
2)社会医療法人敬和会 大分岡病院
機能性尿失禁により衣類汚染を繰り返す患者の介護
〜退院後の生活を想定した排泄ケアを行って〜
患者個々の膀胱機能に沿ったトイレ自立に向けて
【はじめに】機能性尿失禁により衣類汚染を繰り返す患者と妻に
対し、発症前の生活での役割等を考慮した援助を行った。退院後
の生活を想定した排泄ケアについて事例を通して述べる。
【方法と結果】発症前の生活は、家事への参加が多かった。妻は日
中は仕事で一人留守番が必要である。介護の目標は排泄の自立と
した。入院時、
下衣を自ら脱ぎ3〜4回/日 程の衣類汚染があった。
そこで、介護のケアとして、排尿パターンを細かく把握し、徹底
したトイレへの時間誘導を実施。初めは出ない事も多かったが、
小さな成功体験を重ねて日中は布パンツを着用するまでに至っ
た。夜間は少量の尿漏れが残存した為、パットの自己交換方法を
指導し、衣類汚染はなくなった。
【考察】自宅退院する患者と家族にとって排泄が自立か否かでは
身体的、精神的負担が大きく違う。今回、排尿パターンの把握と
徹底したトイレへの時間誘導、尿漏れ時のパットの自己交換方法
を指導した事で、目標である排泄の自立に繋がったと考える。介
護福祉士としては、退院後の生活場面を想定し必要となる動作や
家庭での役割を確認し、患者と家族の立場になってケアにあたる
事が大切だと考える。
【はじめに】我々は、実用的な諸動作の獲得を目指したリハサービ
スの提供が一つの使命であるが、そのテーマの一つに排泄行為を
据え取り組んでいる。具体的には患者個々の膀胱機能を踏まえ
た適切な動作指導のあり方を検討している。今回、その成果につ
いてADLとQOLの観点から整理し報告する。
【対象】平成26年10
月〜27年3月までに当院回復期リハ病棟に入院し、泌尿器科受診
を受けた16名中、調査に協力の得られた7名(平均年齢82.3±7.1
歳、男性6名、女性1名)とした。【方法】7名の泌尿器科受診後の膀
胱機能改善の有無を調査し、改善した膀胱機能の症状ごとにADL
の変化点を整理した。併せて尿失禁症状に関するQOL質問指標
ICIQ-SF日本語版(最高0点、最低21点)の得点を比較した。
【結果】
7名全員が膀胱機能は軽快し、ICIQ-SFは1〜10点の改善を認めた。
この内4名は排尿回数軽減により頻尿や夜間の睡眠が改善し、訓
練へ集中出来るようになった。1名は頻尿と尿失禁が改善しトイ
レ動作が安定した。1名は尿意からトイレ移動まで禁制を保つ場
面が増加したことでベッド上の意図的な失禁が減りトイレ動作や
歩行訓練の意欲向上に繋がった。1名は留置バルーン抜去となり
トイレ動作が自立した。
【考察とまとめ】従来我々は、膀胱機能の
把握が不十分なままに動作指導を行っていたように思われる。今
回の調査により膀胱機能の把握と治療を行い並行してADL訓練
を行うことで、対象者の自尊心や活動の促進になることが示唆さ
れた。
190
O101-3
O101-4
○渡邉江身子(看護師)
,草野綾子,鈴木絢子,小埜早苗,矢内 遥
○川原ちひろ(作業療法士)1),太田有美2),佐藤浩二3)
医療法人常磐会 いわき湯本病院
1)社会医療法人敬和会 介護老人保健施設 大分豊寿苑
2)社会医療法人敬和会 大分東部病院
3)社会医療法人敬和会 大分岡病院
膀胱留置カテーテルへの取り組み
下部尿路機能障害の有無を把握した上で排尿動作へ
介入することの重要性
【はじめに】A病院は、療養病床と地域包括ケア病床を持つケア
ミックス型病院である。入院患者の約半数が急性期病院からの転
院患者であり、そのほとんどの患者が入院時には膀胱留置カテー
テルが挿入されている。膀胱留置カテーテル挿入中の患者は平均
52.5人であり、抜去に至った人数(改善数)は1ヶ月平均4.8人と
少ない状況であった。そこで今回、改善数を増加するために排泄
委員会を中心に各部署で、
「膀胱留置カテーテル抜去のアセスメ
ント表」を活用し、残尿計での計測を取り入れた抜去計画の立案
と実践を行った。その結果、改善数が増加したので報告する。
【方法】1.排泄委員会において、膀胱留置カテーテルのアウトカム
一覧表を使用し、抜去可能な患者のリスト作成と検討
2.「膀胱留置カテーテル抜去のアセスメント表」をもとに、各部署
のカンファレンスで検討
3.抜去計画の立案と実施
4.超音波残尿測定の実施
【結果】1ヶ月の平均の改善数が4.8人から8.6人に増加した。排泄
が自立し、自宅退院に向けることができた患者もいた。早期に膀
胱留置カテーテルを抜去することによりADL向上につながった。
看護師の意識が向上し、
【考察】アセスメントシートを使用することで、
患者の状態を具体的に把握し計画の立案実践に繋げることができたと
考える。今後も委員会や他職種カンファレンスで情報を共有し、より
多面的なアプローチから、膀胱留置カテーテルを改善していきたい。
【はじめに】当介護老人保健施設(以下、当老健)はADL・IADL向上に
向けチーム協働で関わっている。普段の排尿動作指導において、動
作は自立しても尿意切迫感や頻尿等で実用的な排尿動作自立に繋が
らないことをしばしば経験する。今回、当老健入所者の下部尿路機
能障害者の割合を調査し、療法士としての介入のあり方を考察する。
【対象】平成26年10月28日時点の入所者87名の内、留置カテーテ
ル 使 用 者5名 を 除 く82名(男 性28名、女 性54名、平 均 年 齢85.6±
20.6歳、平均要介護度3.2)とした。
【方法】下部尿路機能障害の有無に関して、ユリケア社製のゆりり
んを使用し看護師・介護士と協働して調査した。また、下部尿路
機能障害有りの判定は、文献を参考に残尿100ml以上、最大蓄尿
150ml以下、排尿回数日中8回・夜間3回以上のどれか1項目でも
あった場合とした。
【結果】82名中35名(42.7% )は頻尿や残尿が多い等、何らかの下
部尿路機能障害が疑われた。また74名(90.2% )はオムツまたは
オムツ型パンツを使用し、その内52名(70.3% )は失禁を認めた。
【考察】今回の調査で、下部尿路機能障害が疑われる入所者は35名
(42.7% )であった。このような入所者を機能性尿失禁者と捉え、
動作指導のみを行ったとしても、実用的な排尿動作獲得には至ら
ずQOL改善にも繋がらない。療法士が動作に介入するのはもち
ろんだが、その奥にある排尿状況や下部尿路機能も把握した上で
介入することが重要である。
O101-5
O101-6
○酒井祥平(理学療法士)
○大野有加(理学療法士),徳永真澄
医療法人伴帥会 愛野記念病院 リハビリテーション部
オリーブ大久保西江井島病院 訪問看護ステーション
訪問リハビリテーション介入により早期離床を目指
した一症例〜排泄に対するアプローチに着目して〜
環境調整・介助指導を中心に介入した一症例
〜1ヶ月でオムツ内排泄からの脱却を〜
【はじめに】訪問リハビリテーション(以下リハ)において排泄に着
目して介入を行い、早期離床と活動性の向上につながった症例を
経験したので報告する。
【症例紹介】70歳代、女性、要介護2、主
介護者5女(介護職)。転倒され腰椎圧迫骨折受傷。コルセット・
鎮痛剤処方され、本人の希望で自宅療養中。開始時布団で臥床状
態。ADLは疼痛により自力体動困難、排泄オムツ使用、尿意便意
正常。主訴は腰痛とオムツ除去。発症前通所リハ週3回利用。
【経
過】早期離床と排泄自立を目標にリハ開始。主治医よりリスク管
理や離床に向けて情報収集を行い、CMと連携しベッドとポータ
ブルトイレの導入を行った。リハ内容は機能訓練と起居動作や
排泄動作の練習を行い、家族へ介助方法の指導を行った。3週後
ポータブルトイレでの排泄が自立となり、座位生活も可能となっ
た。トイレ排泄の希望を受け、移動動作の練習と動線上の手すり
設置を行った。6週後トイレ排泄の獲得と目的を持った離床によ
り自ら歩行練習を行うようになった。
【結果】<開始時→3ヶ月後
>日常生活自立度:C1→J2、NRS腰部:9/10→2/10、BMS:3点→39
点、
BI:25点→90点、
通所リハ再開。
【考察】
早期離床を目指す中で、
主治医と連携を行い、医学的情報を共有する事が重要だと考える。
排泄の支援は、本人の能力と住宅環境や介護環境など多角的に評
価を行い、経過に合わせてアプローチを行う事が必要であり、生
活全般への支援につながると考える。
【はじめに】退院1ヶ月後から日中独居の生活が想定されていた症
例を経験した。本人のトイレでの排泄希望が強かったが、退院時
はオムツ内排泄が想定されていた。そこで、環境調整、介助指導、
トイレ動作練習を中心に介入した結果、トイレ動作が獲得できた
ため報告する。【症例紹介】73歳女性。平成25年12月下旬右小脳
出血を発症し、開頭血腫除去術を施行。平成26年2月上旬に回復
期病棟入院。入院中は失調症状が強く退院時はオムツ内排泄が想
定されていた。日中勤務の長女と二人暮らし。
【初期評価(8月上旬)】体幹と右上肢に失調症状を認める。移乗動
作は軽介助レベル。ポータブルトイレ(以下、Pトイレ)動作は下衣
操作全介助レベル。【経過・介入】Pトイレ動作の獲得を目標に、
環境調整、移乗・Pトイレ動作練習を中心に介入。娘とヘルパー
には、毎回の動作が練習であることを理解していただき、過介助
にならないよう介助指導を行った。排泄のタイミングに介助者が
訪問できるようサービスの利用を調整した。
【最終評価(9月上旬)】 体幹の失調症状が軽減。Pトイレ動作はパッド操作のみ要介助レ
ベルへと向上した。
【考察】訪問リハビリで症例に介入できる機
会は少ない。そこで最大能力が発揮できる環境調整を行ったうえ
で、1日の大半を一緒に過ごす家族に、リハビリ以外のトイレ動作
も練習としていただくことで、トイレ動作が獲得できたと考える。
191
O102-1
O102-2
○岸 愛子(理学療法士)
,原 卓也,橋本 篤,栢瀬大輔,
手塚康貴
○徳井大知(作業療法士),佐藤英人,今井幸恵
自転車エルゴメーターと音楽を組み合わせた運動が
認知機能に与える影響
回復期リハビリテーション病棟における脳卒中患者
の認知症の有無がFIM運動項目の利得に与える影響
について
阪南市民病院 リハビリテーション室
医療法人珪山会 鵜飼リハビリテーション病院
【はじめに】近年、認知機能障害に対する有酸素運動の有効性が数
多く報告されている。また、有酸素運動と音楽を組み合わせる事
で、より認知機能を向上させるという報告もみられるが、本邦に
おける研究報告は散見される程度である。そこで今回は、音楽と
エルゴメーターを組み合わせた運動を行い、認知機能に与える影
響を検討したので報告する。
【症例】
67歳女性。左ラクナ梗塞発症後48日経過。軽度の右片麻痺、
感覚障害を有していたが、病棟内杖歩行は自立であった。
【介入方法】通常の理学療法後、テンポ100bpmの曲のリズムに合
わせながら、5分間自転車エルゴメーターを駆動した。運動強度
は最大酸素摂取量の30%で、週3回の介入を1ヶ月間継続し、介入
前後で評価を行った。
【結果】MMSE(23点→27点)、仮名拾いテスト(意味なし正答数
8/60→28/60、意味あり正答数18/60→24/60)、TMT-A(182秒誤
りなし→141秒誤りなし)TMT-B(211秒誤り3回→152秒誤りなし)
となった。
【考察】介入前後で身体機能とともに認知機能の改善がみられた。
音楽のリズムに合わせて自転車エルゴメーターを駆動する事で、
運動だけでなく認知課題としても作用し認知機能の改善につな
がったと考えられる。今後は症例数を増やし、疾患による影響、
認知症の重症度やタイプの違いによる有効性などを検討していき
たい。
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ病
棟)の現状と課題に関する調査報告書では、回復期リハ病棟の指
標としてFIM利得が広く用いられ、入院時のFIM運動項目(以下、
FIMM)の合計点で層別されたFIM利得も報告される。またFIM全
介助レベルでは改善の難しい患者が多く含まれ、利得が小さくな
るとの報告もある。一方、近年では回復期リハ病棟の認知症を併
存する患者は増加傾向にある。認知症を併存した患者では、移動・
階段移動以外の項目でFIM項目別得点は有意に低いとの報告もあ
る。そこで今回は、FIMM利得に着目し、認知症の有無が及ぼす
影響について調査を行った。【対象】H26.4.1〜 H27.3.31に当院
に入院した初発脳卒中患者413名のうち、発症後61日以降、状態
悪化による転院、意識障害併存した患者、を除いた352名。【方法】
1)退院時の認知症高齢者の日常生活自立度判定基準にて正常を非
認知症群、1以上を認知症群の2群に分類。
2)カルテより年齢・性別・発症後期間・FIMM利得を後方視的に
収集。
3)認知症群、非認知症群の入院時FIMM合計を10点毎の9層に層
別し、両群間でFIMM利得の有意差をMann-WhitneyのU検定に
て検討。【結果】認知症群144名、非認知症群208名であった。
両群間で年齢・性別・発症後期間に有意差は認めなかった。
入院時FIMM60点台にのみ有意差を認め、その他の層には有意差
を認めなかった。
O102-3
O102-4
○嶋津皓介(理学療法士)
○村上正和(作業療法士)
医療法人社団久英会 高良台リハビリテーション病院
社会医療法人仁生会 西堀病院
認知症予防に効果のある運動課題を認知症患者のア
プローチに用いた一考察
認知症を合併した整形疾患患者の転帰先に影響する
因子の検討
【初めに】社会の高齢化が進む中で、今後は認知症有病率も高く
なっていくと考えられる。そこで理学療法士として身体機能面・
基本動作能力のみでなく認知機能面にも着目したアプローチを検
討していく必要性を感じ、今回はデュアルタスク課題をリハビリ
介入に導入した症例の報告を行う。
【方法】Multi Target Step (以下MTS)といわれるデュアルタスク
を1ヶ月間アプローチへ導入する。この課題は縦幅3mの範囲に
色のついたマーカーを設置し、決められた色のみを踏みながら歩
くというものである。マーカーの踏み間違え数と所要時間を計測
し経過観察行い、屋内・屋外での杖歩行訓練中の変化点と結び付
けていく。
【結果】1ヶ月間のMTS実施にて踏み間違い数の減少・所要時間の
短縮が見られた。認知機能面(HDS-R)の向上は見られなかったが、
運動機能面の向上が見られ、その他にも動作中に自身の周辺環境
に注意を分配し障害物や段差等の存在に気づき確認するという習
慣を身に付ける事が出来た。その結果、屋内・屋外での杖歩行中
に階段や小さな段差での躓き等が無くなり転倒リスクの減少に繋
がった。
【考察】MTS課題では「歩くという運動課題」を行いながら「マー
カーを確認するという認知課題」を同時に遂行する必要がある。
今回の結果より、このデュアルタスクが、基本動作能力の向上と
動作中の注意分配能力の向上に効果的である事が示唆された。
【はじめに】本研究の目的は回復期病棟に入院した認知症を有す
る整形患者を対象に、ADL自立度が自宅復帰に影響するか、また、
どのADLが自宅復帰に重要かを明らかにすることである。対象平
成26年度に当院回復期病棟に入退院し、本研究に同意を得た整形
患者104名とした。【方法】1. 対象を認知症なし群、軽度認知症群、
重度〜中等度認知症群に群分けし、各群間で転帰先を比較した。
2. 重度〜中等度群をさらに自宅復帰群と非自宅復帰群に分け、各
群間で運動FIM及び同居家族の有無を比較した。3. 重度〜中等
度群において、転帰先を目的変数、各FIM運動項目を説明変数と
してロジスティック回帰分析を行った。有意水準はいずれも5%
未満とした。
【結果】1. 3群間で有意差が認められ、重度〜中等
度群で最も自宅復帰率が低かった。2. 退院時運動FIM(P=0.19)、
同居家族の有無(P=0.46)ともに有意差が認められた。3. ロジス
ティック回帰分析の結果採択された項目は、トイレ移乗(OR3.0、
P=0.02)であった。【考察】回復期病棟に入院した整形疾患患者に
おいては、認知症が重度なほど自宅復帰は困難であるが、重度認
知症患者であってもトイレ移乗を主としたADLの自立度を高め
ることや同居家族がいることが、自宅に退院するための一要因と
なることが明らかとなった。今後は問題行動の有無、家族の介護
力、社会資源等も考慮することで、患者及びその家族がより安心
して自宅で暮らせるような方法を模索したい。
192
O102-5
O102-6
○鈴木 聡(医師)1,2)
○金森祐治(医師)
1)長野県厚生農業協同組合連合会 鹿教湯三才山リハビリテーションセンター
三才山病院
2)社会医療法人医仁会 中村記念病院 脳神経外科
福岡リハビリテーション病院 神経内科
高次脳機能障害に対する介入によりHALを活用した
痙縮治療の質を向上させた一症例の報告
車を運転している認知症患者についての調査と対応
【目的】当院で認知症と診断し、自動車の運転に関する対応を行っ
た症例とその結果について報告する。
【方法】神経内科外来(もの忘れ外来を含む)を受診し、認知症と診
断した患者を対象に自動車を運転しているか否かを聴取し、運転
をしている場合はその理由についても聴取した。家族には患者本
人の運転中の誤りの有無、運転の中止希望の有無を確認した。運
転をしている患者に対しては中止するよう説明し、運転中止が継
続できているか追跡調査した。
【結果】2012年9月から2015年3月までに受診し、認知症と診断
し た113名 の う ち、7名(全 員 男 性、年 齢:76.4±6.4歳、MMSE:
19.4±3.8点) が初診時に自動車の運転を行っていた。7名中6名は
運転中に何らかの誤りがあり、7名中5名は家族からの運転中止の
希望があった。運転をしている理由は趣味(3名)、移動手段(3名)、
無回答(1名)であった。その後7名中6名は運転を中止することが
できたが、全例において医師からの説明のみでは中止できず、運
転する理由を解消するよう工夫したり、鍵を隠すなどして強制的
に運転ができない状況をつくったりする必要があった。
【結論】患者にとって長年の習慣となっている自動車の運転を中
止させることは容易ではない。患者背景を考慮し、家族と協力し
ながら運転の中止のための方策を模索する必要がある。
脳血管障害により痙性片麻痺が後遺した症例では、我々は痙縮に
対しA型ボツリヌス毒素(BoNT/A)療法及び低頻度反復経頭蓋
磁気刺激(rTMS)療法を実施。これらの療法に他動介助運動を組
み合わせる事で、即時の痙縮軽減と関節可動域の改善を図ってい
る。Brunnstrom Stage III以下の症例で上下肢機能改善を得るに
は、痙縮治療に加え分離運動の促通を目的とした自主練習を自宅
でも継続頂く必要がある。そこで我々は1)肩甲上腕リズム再獲得
を意識したモビライゼーションと2)分離運動促通を目的とした自
動介助練習及び他動介助練習から成る“三才山パッケージ”を35
日間入院で実施している。2)については当院でのリハビリテー
ション(リハ)では、HAL(福祉用及び単関節)を活用する事で、共
同運動パターンの抑制と分離運動再獲得が得られており、動画に
て供覧する。しかし、遂行機能障害などの高次脳機能障害を後遺
した症例では、退院後に適切な自主訓練を遂行できず、外来リハ
や訪問リハでの定期的な自主訓練確認が欠かせない。また、家族
に対し他動介助練習を指導しても、家族の加齢に伴い練習量が減
少する場合があり、家族背景にも注意を払う必要がある。右脳梗
塞により左痙性片麻痺・半側空間無視・注意障害・遂行機能障
害を後遺した68歳右脳梗塞症例で、標準上肢機能検査(STEF)で
29→86→70→80→69→77と改善と悪化を経験したので上記注意
点を踏まえた経過を報告する。
O103-1
O103-2
○水谷仁美(作業療法士)
○村田貴美恵(介護福祉士・ヘルパー),山本貴子,立石千春
医療法人珪山会 鵜飼リハビリテーション病院
医療法人社団敬愛会 佐賀記念病院
認知症の行動・心理症状(BPSD)を発現した脳血管
障害例に対する自宅退院に向けた関わり
〜主介護者への家族教育を通して〜
不穏症状の軽減に向けたレクリエーションの見直し
〜自分らしさを取り戻す為に〜
【 は じ め に 】今 回、脳 血 管 性 認 知 症 と 行 動・ 心 理 症 状( 以 下、
BPSD)を呈した症例を経験した。自宅退院に向け主介護者の夫
へ家族教育を行った成果を報告する。本研究に際し症例・家族の
同意を得た。
【症例紹介】80代女性、診断名は脳梗塞。心身機能はBRS左上下肢
2、MMSE-J19点。うつ・興奮等のBPSDを認め、特に夫の抑制的
対応がBPSDを増悪させていた。
【経過】発症102日から175日まで夫へ家族教育として,支持的対応
などの具体的な方法についての教育を適宜実施。症例と夫の心理状
態の変化をNumeric Rating Scale
(以下、NRS)
、夫の介護負担度を
Neuropsychiatric Inventory
( 以下、NPI)にて評価し、介入前後で
比較した。NRSの評価項目は一緒に過ごす際の安堵感・相手への
接し方の満足感・介護への不安・退院への不安・日々の気分とした。
【結果】NRSは、症例の心理状態に変化を認めた。NPIは、興奮・
うつ・不安・無関心・脱抑制・易刺激性のいずれにおいても改善
がみられた。負担度は興奮を除き0となった。
【考察】BPSDは在宅生活を送る上で介護負担を増大させる可能性
があることが指摘されており、入院中にこの点を考慮しておくこ
とも重要であると思われる。今回、夫への家族教育により理解が
得られたことやその成果として関係が良好になったことでさらに
心理状態の改善とBPSDの軽減に繋がり、今後の症例と夫のより
よい生活を構築する一助となったと考える。
【はじめに】当院では、認知症や認知力低下の見られる患者の為の
レクリエーションの場を設けている。1日のメリハリをつける為
に、レクリエーションを開始するも興味がないと関心を示されな
い事も多く「その人らしさ」を引き出す事も、生活のリズムの確立
も出来なかった。
「らしさ」を引き出していく為に今までのレク
リエーションの内容を見直し、患者に変化が見られ少しずつでは
あるが効果が得られたのでここに報告する。
【倫理的配慮】研究同意書を作成し対象患者、家族に説明了解を得、
当院の倫理員で承認を得た。
【対象】女性2名60代〜80代
【研究期間】平成27年2月〜3月
【方法】1家族からの情報収集2長谷川式簡易知能評価スケール3レ
クリエーションを麻痺や認知症がある患者も対応出来るようプロ
グラム」を作成。4RO式、回想法の活用5介護日誌に記録する。
【経過・結果】興味があるものには積極的に取り組まれ、他患者へ
の声掛けや関わりが多く見られた。1日の活動量が増え日中の離
床に繋がった。レクリエーションに静と動を取り入れた事で、患
者の嗜好が把握出来た。
【考察】レクリエーションにより過去の職業や趣味を思い出し、忘
れていた本来の自分に気付き、個性が表れ「その人らしさ」を引き
出す事が出来たように思われる。リハビリ以外は単調な入院生活
に活気が湧き、意欲の向上に繋がったのではないかと考える。
193
O103-3
O103-4
○永野真理子(作業療法士)
,金平真実,小林礼佳,黒川直彦
○竹中博紀(作業療法士),橋本佳奈,熊倉周平,小泉美加,
有泉涼太,南部浩志,小川輝史,原田拓哉
小集団活動が重度認知症者のコミュニケーションに
及ぼす影響
集団作業療法による認知症高齢者への取り組み
〜集団での受容体験が自己の存在意義へと繋がった
事例〜
倉敷老健 通所リハビリテーション
医療法人渓仁会 定山渓病院 リハビリテーション部 作業療法科
【目的】重度認知症者に対し、主に非言語的コミュニケーション
を用いた小集団活動を行い、集団力動が認知症者のコミュニケー
ションや意欲にどのように影響を及ぼすかを検討する。
【対象】当通所リハビリテーションの利用者5名(MMSE平均4.4
点)
【方法と分析】週1回、30分OTスタッフ2名が集団プログラム
を同内容で3カ月間、同一環境下で実施した。対象者の反応を毎
回記述し質的統合法(以下KJ法)により統合した。コミュニケー
ション能力の評価にコミュニケーションと交流技能評価(以下
ACIS)を、意志・意欲の評価に意志質問紙(以下VQ)を用い、検
定にはWilcoxon符号付順位検定にて分析しG*Power にて効果
量を求めた。
【結果】KJ法では、無関心や反応の乏しさはある反面、集団力動が
良い方向とも悪い方向とも働き様々な感情(親しみ・楽しみ・不
安・攻撃性など)を産み出していた。量的研究では、ACISは初回
総得点の平均値は32.0±12点で最終総得点の平均値は36.2±9点、
VQは初回総得点の平均値は18.75±3.5点で最終総得点の平均値は
17.0±1.4点、どちらもWilcoxon符号付順位検定では有意差なし、
効果量ではACISは0.74と改善に効果量が大きいと示された。
【考察】重度認知症小集団において意志・意欲には変化が見られ
なかった。一方で、集団の場を重ねる事でコミュニケーション量
が増加する事が示された。集団力動が働き認知症者の様々な感情
を産み出したことが一つの要因と考えられた。
【はじめに】年老いた自己の存在を周囲に対し迷惑と捉え、悲観的
な発言が見られる認知症を呈した事例に集団作業療法(以下、集団
OT)を実施した。自身の発言や行動が集団で受容され、老いに対
する捉え方の変容に繋がった経過を報告する。
【事例紹介】90代
後半女性、認知症、心不全を呈しADLは食事以外介助を要する。
老いへの不安や諦めから申し訳ない気持ちが生まれ、認知症状が
悪化していた。今の自分を受け入れ肯定的に捉えられる場が必要
と考え集団OTを導入した。【集団OTの内容】認知症を呈し対人
交流に介助を要する8名と、OTR4名にて精神機能とQOL向上を
目標に対人交流や役割が引き出される場を設定し、週1回6ヶ月間
実施した。
【経過】導入時は周囲の状況を把握できず、得意な体操
にのみ取り組み他患との交流はなかった。老いによる悲観的な発
言がみられた際にOTRが周りに伝える関わりを持った。他患に
よる傾聴が増え徐々に昔の思い出を語るようになった。経過の後
半では周りの人や物事のおかげで自分が今ここにいると語り、周
囲に感謝の気持ちを示すようになった。
【評価結果】MENFIS:
32→29、GBS:77→66、PGC:13→11に改善した。【考察】集団
OTを通して自分と似たような他患に年老いた自分の思いや行動
を受容され共感できたことは、不安感の軽減と共にこれからの自
分はどうあるべきか自己の存在意義を確認する機会となり、老い
に対する捉え方の変容に繋がったと考える。
O103-5
O103-6
庭を通して入居者の生活が広がる可能性
〜私たちの認知症ケア宣言の実践を通して〜
認知症患者への視覚的プロンプトを用いたトイレ動
作自立へ向けた取り組みがBPSD改善に繋がった一
症例
○小泉幸子(介護支援専門員)
,本間初江,古谷智宏,岸田絵美,
高山潮美,緑川瑞希,富安美加,長谷川由美子,栗山奈穂子,
小林 香,波多江美子,渡辺小百合,町田美恵子,小島定義,
高橋ゆかり
○三野正貴(作業療法士),中野渡千恵美,直江有洋
医療法人勉仁会 中垣病院
社会福祉法人真寿会 グループホームアダーズあいな
【はじめに】私たちのグループホームは木造平屋建てで建築され
ており、
住み慣れた“家”の雰囲気を大事にしている。また、
1ユニッ
トごとに庭のスペースを設け、洗濯物や布団を干せるようになっ
ている。入居者の中には当施設に入居する前に野菜作りや草花の
世話を生きがいにされていた方がおられた。庭の空きスペースを
利用し草花を植えたり野菜作りが出来る畑を作ることにより、入
居者の生活の広がりと草花の成長の楽しみや収穫の喜びに繋げら
れ、より豊かな生活を送れるのではないかと考え、その取り組み
を実践したため報告する。
【取り組み・経過】畑としての土づくりから始まり、草花や野菜の
種類を入居者主体に話し合い、入居者の家族、地域の方々、ボラ
ンティアの協力を得ながら“畑で野菜を育てる”ことを入居者の日
課の一つとして位置づけて実践した。
【考察】庭で草花を育て、野菜を育てることは、その成長過程を観
ながら入居者の毎日の楽しみと喜びに繋がった。一緒に収穫した
時の入居者の笑顔やその材料を手際良く包丁で切ったりする場面
を見て、私たちスタッフや家族の方も心から喜ぶことができた。
認知症があっても住み慣れた地域で役割を感じながら生活が出来
る事が入居者の幸せにつながる一つであることを実感し、今後も
“庭”を活用した取り組みを実施していきたい。
【はじめに】認知症患者に対しては、失敗の少ない学習により、動
作獲得を目指す応用行動学的アプローチが実施されている。今
回、車イス安全ベルト(以下、ベルト)により行動に制約がある認
知症患者が視覚的プロンプトを用いる事で、トイレ動作が自立し、
BPSDの改善に繋がったので、報告する。
【事例紹介】80代女性。血管性認知症(MMSE:15点)。脳梗塞左片
麻痺(BRS:VI-VI-VI)。身体・認知機能の低下から独歩は転倒の危
険性高く、ベルトにより行動を制約。車イス自走可能だが、便器
へのアプローチが不定で、ストッパーのかけ忘れあり。移乗要見
守り。下衣の上げ下げ、清拭は時間要するが自立。尿意あり、失
禁なし。尿意の訴えの間隔短く、誘導するも排泄ない事があり、
誘導に間隔を設けると「トイレに行かせてくれない」と興奮する。
阿部式BPSDスコア(以下、ABS)17点。
【取り組み】カンファレンスにて問題点や介入法の共有。便器へ
のアプローチ位置を床面に提示。アプローチ〜排泄までの動作を
ポスターで掲示。排泄チェック表の記入。
【結果と考察】症例のトイレ動作が自立し、ABSは11点に減少し
た。その要因として、視覚的プロンプトによる動作の導きとチェッ
ク表による統一された介入により、適切な動作学習が促進され、
動作獲得に繋がったと考える。ベルトによる行動の制約が必要な
くなり、意思通りの排泄が可能となった事で、興奮や暴言、不満
の減少に繋がったと考える。
194
O104-1
O104-2
PC版半側空間無視評価ソフトの活用の検討
〜事例報告を通して〜
Gerstmann症候群患者におけるペグボードを用い
たmental rotation課題訓練
河島則天2),
池田吉隆3),加辺憲人1),
○佐々木竜司(作業療法士)1),
石垣賢和1),増井裕浩1),川島瑠璃子1),佐々木智也1)
○掬川晃一(作業療法士)1,2),前田眞治2),山本 潤2),小暮英輔2),
近藤 智2),今井 舞2)
1)医療法人社団輝生会 船橋市立リハビリテーション病院
2)国立障害者リハビリテーションセンター
3)医療法人社団 輝生会本部
1)国際医療福祉大学熱海病院
2)国際医療福祉大学大学院
【はじめに】当院では2014年よりPC版半側空間無視評価ソフトで
ある「視覚性注意障害評価システム @ATTENTION」(以下、本ソ
フト)を導入した。今回、本ソフトの活用方法を検討したので2症
例を交えて報告する【対象】症例A:右被殻出血にて左半側空間無
視(以下USN)を呈した40代男性。症例B:左脳梗塞にて右USNを
呈した70代男性【方法】回復期リハ病棟入院中のUSNを呈する2
症例に対し本ソフト、日本版行動性無視検査(以下BIT)、ADLの評
価を実施し、本ソフトの活用方法を検討【結果】症例A:以下発症
1ヶ月→2ヶ月の結果を示す。BIT通常検査94/146点→106/146
点、行動検査22/81点→33/81点。発症1,2ヵ月時の本ソフトの評
価結果を示したグラフ上でも探索範囲と反応速度の改善を認め
た。症例B:発症6ヶ月、ADL場面においては右USNを認めてい
たが、BITは通常検査132/146点とカットオフ値を満たしていた
が、本ソフトの受動試験においては右USNの兆候が表れた【考察】
症例Aより、本ソフトにてUSNを呈した患者の経過を追うことが
出来る可能性、机上検査との相関関係を示す可能性が示唆された。
症例Bより、机上検査では精査困難な患者に対し高い感度での精
査と数値化が出来る可能性、ADL場面でのUSNの観察評価、環境
設定について、根拠の一つとなり得る可能性が示唆された【今後
の展望】今後も症例数を増やし、活用方法の検討が必要。また、今
回は使用しなかったが、眼球運動分析装置も活用予定である。
【緒言】Gerstmann症候群(GS)に対し、ペグボードデザイン集(ペ
グ)によるmental rotation (MR) 課題を用いた系統的アプローチ
を試み、課題の改善が認められたので報告する。【症例】80歳代右
利き女性、左頭頂葉梗塞、GS四徴候と失読を認めた。
【発症5週】
Kohs:IQ55.2、Rey複雑図形:20.5(模写)・3.0(即時再生)・2.5(30
分)/36点、GS関連症状検査(種村):55/91、CADL:104/136。
【経過】ペグの見本を、右または左へ90°回転をさせたイメージ
をボードに再現するMR課題を1日1回週5回施行。その後徐々に
set2(2本の直線)・set3(対角線と数の概念)の課題が可能となった。
【 発 症9週 】Kohs:IQ69.2、Rey複 雑 図 形:27.5(模 写)・13.5(即
時再生)・6.5(30分)/36、GS関連症状検査(種村):79/91、CADL:
125/136と改善した。
【考察】構成課題の内的イメージは、膨大な量の視覚性長期記憶を、
視床枕で選択し一次視覚野へ産生することで処理されており、視
床枕の情報は更なる処理を受けるために側頭葉と頭頂葉へ送られ
ると考えられている。また角回は、側頭・後頭・頭頂葉の各連合
野から情報を統合する場と考えられている。本課題は角回が、位
置・形・数・方向の認識を行う頭頂葉と言語・色の認識を行う側
頭葉を積極的に統合し、視床枕に働きかけたことで、角回が賦活
され内的イメージの向上に繋がったと考える。
O104-3
O104-4
○黒澤一喜(作業療法士)
,古牧典之,高野陽子,宮之脇義文,
森山俊男
○福尾好英(作業療法士),森田秋子,伊藤 梓
TMTとT-TMTの実施時間の比較・検討
失語症者に対する行動観察を用いた認知機能評価に
ついて
−認知関連行動アセスメントの導入とその効果−
栃木県医師会塩原温泉病院 リハビリテーションセンター
医療法人珪山会 鵜飼リハビリテーション病院
【はじめに】前回我々はTMT partAと同様の配列を用いたタッチ
パネル版TMT (以下T-TMT)を作成し、TMTが困難でもT-TMTで
は実施可能な3症例を確認した。今回、T-TMTの基礎的実験とし
て、TMTとT-TMTにおける実施時間の比較・検討を行った。
【方法】対象は健常成人男女54名、当院入院中の脳血管障害患者男
女40名にTMTとT-TMTをそれぞれ一回ずつ実施した。実施順は
ランダムとし、間隔は1週間以上とした。
【結果】TMTと比較し、T-TMTの実施時間が短く、両者に有意差
が認められた。TMTとT-TMTの間に有意な中等度の相関が認め
られた。(r=0.60)
【考察】T-TMTの実施時間が短くなった理由として、T-TMTでは
1. 数字を線で結んでいく作業ではなく、数字1つ1つをタッチす
る作業であること。2. 検査画面と対面で全体を見渡しやすく、次
の数字をタッチする間に画面全体を見渡す事ができるという視覚
的な有利さがあったことが考えられる。また、両者に有意な中等
度の相関が認められたことから、TMTが実施困難な患者に対し、
T-TMTを実施することで注意機能評価の参考となる結果が得ら
れる可能性があると考える。
【はじめに】失語症者の認知機能評価では言語性検査を用いるこ
とができず、レーブン色彩マトリックス(RCPM)など動作性検査
を実施することが多いが、重症例では検査不能となり行動評価を
行うことも多い。今回、RCPMが実施不能であった失語症者の認
知機能を、認知関連行動アセスメント(CBA)を用いて評価し、そ
の後、評価の状況についてアンケートを行ったので、結果を報告
する。
【方法】1.対象は、RCPMが実施不能の失語症者10名。OT、STが
CBAにて認知機能を評価した。2.評価を実施した者を対象に、(1)
CBA導入前後での、認知機能の捉えやすさ、(2)CBAの有効性、(3)
CBAの課題、について、(1)は11段階の数値的評価スケール(NRS)
で、(2)と(3)は自由記載にて回答を求めた。
【結果】1.CBAにより全例の評価が可能となり、得点は症例ごと6
−22点であった。RCPM不能の理由は、指さしが行えない、評価
体勢がとれないなどがあった。2.(1)NRS平均4.2/8.0(導入前/導
入後)であり、認知機能のどの部分を捉えているか明確になった、
(2)RCPM不能でも、感情や判断を含めた認知機能の全体像がつか
める、(3)評価者により評価場面が異なり、結果にばらつきが生じ
るため他者と結果の摺り合せが必要、などが挙がった。
【まとめ】失語症者の認知機能は机上検査だけでは十分に評価で
きない。CBAを用いることで感情、判断等の視点からも認知機能
を捉えることが可能であり、失語症者の評価には有効であった。
195
O104-5
O104-6
○山田寛之(理学療法士)1),正分祐衣2),吉田 圭2),藤野文崇3)
○萱島千治(看護師),大村礼子,菅 真理,加嶋律子,
伊藤美津子
脳ぽちで脳血管性認知症患者の認知機能の悪化を早
期に発見した経験
高次脳機能障害患者のインスリン自己注射自立に向
けての取り組み
1)社会医療法人ペガサス 馬場記念病院
2)エントレリハ
3)地方独立行政法人 りんくう総合医療センター
社会福祉法人 農協共済 別府リハビリテーションセンター
【はじめに】ウェルニッケ脳症により高次脳機能障害を呈した患
者が成功体験を積むことで、インスリン自己注射手順の定着を図
り、チーム目標である障害者支援施設に入所することができたの
で報告する。
【対象】50歳代男性 診断名:ウェルニッケ脳症、2型糖尿病 障
害名:超皮質性感覚失語、高次脳機能障害(記憶障害・注意障害・
遂行機能障害・病識の低下・感情コントロールの低下)、歩行障害 家族構成:妻と子どもの4人暮らし 本人・家族の目標:自宅復
帰(本人)、インスリン自己注射の獲得(妻)
【経過】インスリン自己注射手順の定着に向けてチェックリストを
作成し指導を行った。しかし、指導時のスタッフの関わり方(多く
の情報を与える声かけ、複数で指導する)や指導する環境(人の出
入りが多い、ざわついている)が患者のストレスや混乱に繋がり、
苛立つ場面がみられた。混乱や失敗をなくすために本人の能力に
合った達成可能な目標を設定し、内容をフィードバックしながら、
繰り返し指導を行った。また、スタッフの関わりが統一できるよ
うに職種間の情報共有の工夫を行った。
【結果】成功体験の積み重ねにより、インスリン自己注射手順の定
着、訓練意欲の向上、コミュニケーション能力の向上がみられた。
【考察】患者ができないことに挑戦していけるよう導いたこと、成
功体験により、喜びや達成感を得たことが自己肯定感を高め、訓
練意欲にも繋がり、自身の能力が向上したと考える。
【はじめに】高齢化社会において、認知症予防と認知機能の悪化の
早期発見は重要な課題である。今回、脳機能トレーニングソフト
脳ぽち利用患者で、認知機能の悪化を早期に発見することができ
たので、その経験を報告する。
【症例】80代女性。2014年5月脳血
管性認知症と診断される。7月、エントレリハ利用を開始。FIM
の認知項目は25/35、HDS-Rは11/30、脳ぽちの計算課題の正答
率は50%程度であった。
【経過】エントレリハ利用時に日常的に
脳ぽちを利用していたが、2015年1月、急に脳ぽちの計算課題の
正答率が0%となった。HDS-Rをとると6/30となっていた。そこ
で、病院にて診察した結果、脳血管性認知症の進行が発見された。
【考察】毎回の通所時に脳ぽちは脳機能のトレーニングを目的と
して利用していた。今回、急激な脳ぽち課題の正答率が低下した
ことによって、脳血管性認知症の進行を早期に発見することがで
きた。毎回の施設利用時にHDS-Rで検査することは難しいが、ト
レーニングやレクレーションの一環として脳ぽちを利用すること
は容易であり、脳ぽち課題の正答率の変化を継時的にみておけば、
認知症の進行や今回の様な急性増悪を早期に発見できるものと考
える。また、脳ぽちの利用は、HDS-Rの測定のような専門的な知
識は必要なく、認知機能の一部ではあるが、より容易に経時的変
化を捉えることができるツールといえる。
O105-1
O105-2
○清水淳也(作業療法士)
,秋田如奈,鈴見明希,上田恵理子,
中河苑美,間嶋亮子,井徳勝子,口之町やよい,夏目重厚
○荒木清美(理学療法士),青柳陽一郎,粥川知子,深谷直美,
北村典子,古川浩介
医療法人栄昌会 吉田病院附属脳血管研究所 リハビリテーション部
1)藤田保健衛生大学 坂文種報徳會病院 リハビリテーション部
2)藤田保健衛生大学 医学部 リハビリテーション医学I講座
当 院 に お け る 脳 卒 中 後 う つ 状 態(Post-stroke
depression, PSD)に対する急性期から回復期リハ
病棟までの支援システムの構築
周術期消化器癌患者における不安とうつの検討
【目的】脳卒中ガイドラインにおいて、脳卒中後に高率に出現する
うつは、身体機能、認知機能、日常生活動作(ADL)を障害する因
子となるため、積極的に発見に努めるべきであると推奨されてい
るが、PSDに対する具体的な支援システムに関する報告は少ない。
当院では2009年から急性期からDr、Ns、OT、STらで「うつ・精
神的・心理的支援パスチーム(以下、うつパス)」を組織、2013年
から回復期病棟でも同様に評価・治療するシステムを構築した。
本研究の目的は脳卒中発症後、急性期から回復期に入院した患者
のPSDの状態と身体機能、日常生活機能との関連を検討すること
である。
【対象と方法】2014年〜2015年に脳卒中で当院に急性期から回
復期病棟に入棟した意識障害のない患者でPOMS検査が可能で
あった153名(内訳:男性92名、女性57名、年齢69.93±12.6歳)
を対象とした。評価は気分感情評価はPOMS短縮版、身体機能は
NIHSS、BRS、日常生活評価はFIMを調査した。評価時期は入院
時、回復期入棟時にNs、リハスタッフが評価した。統計学的解析
はPOMSの各6項目および各測定項目とを、身体機能、ADLのいず
れが感情状態に影響を及ぼすのか分析検討した。
【結果】脳卒中後の感情状態は、発症後早期から十分に評価・治療
することの必要性を示唆しており、当院における急性期から回復
期まで継続したPSDの評価・支援対策の効果が示された。発表で
は、結果に考察を加えて、報告する。
【目的】がん患者の多くに不安や抑うつ的な訴えがあり、精神状態
が懸念される。本研究では、消化器癌患者の周術期の心理状態(不
安、うつ)の変化について検討することを目的とした。
【方法】対象は、2014年10月〜2015年1月に当院外科で消化器癌
の手術を施行した23例とし、心理状態について質問紙(不安は新
版STAI、うつは日本語版SDS)を用いて評価した。測定時期は、
術直前と術後10日目とし、術前後を比較した。また、術前後のう
つ変化量と術後リハビリ期間・術後退院までの期間との相互関係
を評価した。
【結果】STAIは、術前は52%、術後は48%の患者が高不安であり、
有意差はみられなかった。SDSは、術前は20%、術後は35%の患
者が抑うつ傾向にあり、術後有意に増加した(p<0.05)。また、
術前後のSDSの変化量と術後リハビリ期間(r=0.42)
・術後退院
までの期間(r=0.47)には弱い正の相関関係が示された。
【結論】手術を施行した患者の不安の変化は見られず、術前後とも
高率であり、不安に対する配慮は術後も必要であることが示唆さ
れた。一方、うつは増加しており、抑うつのある患者は術後リハ
ビリ期間が延長する傾向が見られたため、うつの悪化はリハビリ
の阻害因子となる可能性が考えられた。今後は術後の心理面につ
いて具体的に聴取し、身体機能評価と比較し、要因の追求と対応
が必要であると推察された。
196
O105-3
O105-4
○重村祐介(作業療法士)
,田口潤智,堤万佐子,中谷知生,
福島典子,田中秀和,與 祥子,池田 翼,江里口恵子,
長曽我部綾乃
○大井美緒(理学療法士),粕谷有美,井上弘子
医療法人尚和会 宝塚リハビリテーション病院
医療法人健和会 柳原リハビリテーション病院
脳卒中患者とセラピストの、機能・ADL・APDL別
予後予測の比較
A氏が自分らしく生活するためには
〜自己と向き合う時間と母としての存在〜
【はじめに】今回、自殺企図により重度脊髄損傷を受傷したA氏を
担当する機会を得た。ふたたびA氏が自分らしくいきいきと暮ら
すための支援の経過を報告する。[症例紹介]30代女性(二児の母)、
頸髄損傷(C6A1 完全損傷)マンション4階より飛び降り受傷、
受傷より約8か月後当院障害者病棟に入院。入院時は仙骨部に巨
大褥瘡あり。残存機能の廃用が著明、起立性低血圧あり。ADLす
べてに介助を要す。
【経過】当院入院時は自宅退院のイメージはなく施設入所となる
不安あり。自宅が都営住宅であり十分車いす生活を送れること、
微力ではあるが家族の協力が得られることなどから自宅退院を目
指す。初回入院より約1年が経過、自宅生活と入院での在宅調整
を繰り返しながら生活中。現在は電動車いすの作成にとりかかっ
ている。 往診、訪問看護、訪問介護、訪問リハビリ、保健師、精神
科フォローなど多岐にわたり在宅生活を支援中。仙骨部の褥瘡は
ほぼ完治。
【考察】重度障害を受傷した若年者が再びいきいきと生活するため
に必要な支援方法を模索しながら介入を継続している。その中で
A氏の場合は身体的に役割を担うことは困難であるが、母としての
存在がA氏の役割であり自宅へ帰る目的であると考えた。また、約
1年の経過の中で自己と向き合う時間を提供することで僅かではあ
るが前向きに前進できていると考えている。今後、自身の障害と
向き合う場の提供や社会参加を通じ更なる生活の安定を図りたい。
【はじめに】回復期病棟入院中の脳卒中片麻痺患者において、現状
の機能からは遂行困難と思われるADL動作を、退院後に遂行可能
であると捉えている患者を多く経験する。このことは自宅退院後
に精神面の苦痛や転倒リスクを高める要因になると考えられる。
【目的】当院回復期病棟入院中の片麻痺患者と担当セラピスト(以
下,Th)の考える退院後の予後予測を比較し、特に楽観視されやす
い機能・動作項目を明らかにすることを目的とする。
【対象】初発の脳卒中にて平成27年4月6日から5月27日に当院か
ら自宅退院する。
「ここはどこか」
「なぜ病院にいるか」が正確に
答えられる。FIM理解・表出が5以上である。以上の3条件を満た
す者を対象とした。
【方法】先行研究の評価スケールを参考に機能・ADL・APDL項目
の一部を使用した。患者に対し、退院前日に自身の予後予測を項
目毎に回答してもらい、後に担当Thにも客観的評価として回答さ
せた。機能・ADL・APDL項目別に予後予測の一致、不一致の割
合を算出した。
【結果】有効回答13名で一致の割合は機能項目で
65%、ADL項目で71%、APDL項目で31%であった。また、不一
致項目は全て患者の方が良好な予後予測であった。
【考察】機能、ADL項目は入院中、患者がリハビリテーションの
中で経験しやすいため、比較的Thと一致しやすかったと考える。
APDL項目は外泊や、屋外でのリハビリテーションによりAPDL
動作を経験することで適切な予後予測を促せると考える。
O105-5
O105-6
○富樫順子(理学療法士)
,高橋里佳
○山谷友範(作業療法士)
SEIQoL-DWによる評価・アプローチを行った末期
腎がんの一症例
〜もう一度さくらんぼ畑に立ちたい〜
セルフヘルプの支援によりQOLの向上が認められ
た事例〜個人・環境因子の異なる在宅神経難病患者
2症例の検討〜
山形徳洲会病院 リハビリテーション科
株式会社アール・ケア 訪問看護ステーション ママック
【はじめに】がん患者のリハビリテーション(以下リハ)は、低下す
るADLの中でQOLを向上させていくという難しさをもつ。QOL
向上の為にはその時点における患者の希望実現が目標とされる
が、病状の進行により患者自身も日常生活に不安を覚え、希望を
持つことが困難になることが多い。今回個別的なQOL評価に有
効とされるSEIQoL-DWを用いてアプローチを行った結果、精神
的安定や生活状況の変化を認めQOLが向上した症例を経験した
ので報告する。
【症例】60代男性。腎がん末期。多発骨転移認め告知時は対麻痺
状態であった。入院半年経過する頃には歩行能力の改善がみられ
たが、同時に落ち込みやイライラした様子がみられた。本人の希
望に沿ったリハが行えているか確認する必要性を感じ、SEIQoLDWを用いた評価を行い『さくらんぼ畑を自分の目で確認したい』
という本人のHopeを目標としアプローチした結果、家族や友人
からの協力も得られ、外出し目標を達成することができた。
【考察】がんのリハは変化する病状に合わせてその目標も変化する
が、どの病期においてもQOLは常に向上を目標に据えられる。し
かし、病状が進行し原疾患の治癒が困難な状況になると、患者の
多くが日常に希望や目標を見出すことが困難となる。本症例では
SEIQoL-DWを用いて患者自身の重要項目を明らかにすることで、
リハ目標が明確となり、それを家族・医療スタッフが共有しアプ
ローチしたことでQOL向上させることができたと考えられた。
【はじめに】今回在宅神経難病患者2症例を担当する機会を得た。
2症例は身体機能面においては類似しているが、疾患や将来に対
しての考え方、屋内・外の活動に対しての意欲に大きな違いがあっ
た。2症例にお互いの生活状況、心境などについて話す場を設け
ることによりQOLの向上が認められたため報告する。
【対象・方法】症例1(女性50歳代)
:脊髄小脳変性症、
「できる間
に何でもやっておきたい」という前向きな考え方。症例2(女性60
歳代)
:オリーブ・橋・小脳萎縮症、「やってもどうせうまくいか
ないからやる気が起こらない」という後ろ向きな考え方。食事会
の場を設定し、ご家族と共に参加を促した。自己紹介・連絡先の
交換以外は自由に話す場とした。
【結果】実施前後の2症例のQOL評価(SEIQoL-DW)において点数
の向上、特に症例2の外出や交流に対する心情変化が認められた。
その後も連絡を取り合い、相談し合う関係性を構築した。
【考察】身体機能の低下による不安感、あきらめにより出来ないと
いう自己決定をしてしまう症例2は前向きな症例1と接すること
によりさらに自身を消極的にしてしまう可能性があったため、傾
聴・共感による結論を出さないスタンスで関わりを持った。その
結果、症例2は自己否定に陥ることなく思考を良い方向へ変化さ
せることができた。身体機能面に向上が認められずともQOLは
変化する可能性があることを示唆することができた。
197
O106-1
O106-2
○田中一成(理学療法士)1),村田元徳2),前田 實2)
○鶴巻恵理子(作業療法士),北村礼子
1)医療法人三九会 三九朗病院
2)医療法人三九会 三九朗病院
楽いちデイサービス
ふたたび自分らしく暮らせるために
〜ホームワークという取り組みから見えたこと〜
活動機会が減少した重度要介護者に対し、機能を活
かした活動を提供した症例について
昨年、当デイサービスでは、活動時間の充実に向けて提供する活
動内容を見直し、絵手紙とステンシル、染め物、陶芸の3種類のグ
ループでの作業活動に取り組んだ。中等度・重度要介護者は参加
が少なく、難易度が高い活動であったと思われた。中等度・重度
要介護者にも障害の程度に応じた活動の提供が必要と思われる。
今回、重度要介護者一症例に対し、本人の興味のあるパソコンを
用いて環境整備をし活動機会を増やすことを目的に介入した。
47歳、男性、要介護5、脊髄小脳変性症、Alexander病、四肢麻痺、
右手指のつまみ動作が軽度可能、ADL全介助、自宅では、右手指
でリフトやテレビのリモコン操作を行っている。趣味はゲーム、
外出である。以前は、デイサービス利用時に電動車椅子の操作や
ネット手芸を行っていたが、電動車椅子のスティックを操作する
ことや、針を母指と示指でつまむことが出来ず落とすようになり
作業をすることが困難になった。ホールでテレビ鑑賞をして過ご
す時間が長くなり、他者と会話する機会が減少した。その中で、
本人の興味のあるパソコンを使用し、環境設定し自分でも取り組
めるよう工夫した結果を報告する。重度要介護者は、グループで
の作業活動では行う内容により介助が必要となる。機能を活かせ
るよう環境を設定し作業活動を提供することで、活動の幅が広が
ると考える。
【はじめに】高齢化がピークを迎える「 2025年問題」を控え、当デ
イサービスでは、
「主体性の発揮」
「役割の創出」を意識した取り
組みを提供している。その一環として、自宅や地域において活躍
を目指したプログラムであるホームワークに力を入れている。今
回、当デイサービスにおけるホームワークの取り組みと利用者・
家族の変化について報告する。
【方法】ホームワークの進め方は、まず、セラピストが利用者の
生活場面でのニーズの把握と心身機能、ADL等を評価する。次
に、評価結果をもとに、身体機能面に対するホームワークとADL、
IADL場面でのホームワークを設定、ホームワークの内容とカレ
ンダーを一緒にした用紙を作成。そのカレンダーに利用者自身が
当日の運動を振り返り5段階で記入していただく。デイサービス
利用時にスタッフから実施状況の確認、アドバイスをするという
流れで進めている。
【結果・考察】ホームワークの継続した実施により、運動習慣構築
につながったケースが多くみられた。地域や家庭の中での役割や
居場所、IADLへの働きかけを意識したホームワークを行った結
果、2年ぶりに自治会の集まりに参加出来たケースや、1年9ヶ月
ぶりに車の運転を再開できたケースがあった。ホームワークとい
う取り組みは利用者自身が日々の生活を送る主体であることを自
覚させ、利用者のエンパワメントを引き出すきっかけとなり、そ
の結果、良好なQOL達成につながったと考える。
O106-3
O106-4
○瀬戸勇介(理学療法士)
○下地裕子(介護福祉士・ヘルパー)
みどり明星クリニック 通所リハビリテーション事業所
医療法人 デイサービスあわせ
その人らしい在宅生活の在り方を目指して
脳トレを用いた認知面に対するデイサービスでの取
り組み〜生きる意欲と充実した毎日を過ごす為に〜
【はじめに】いかに在宅生活を継続させることができるかが重要
視されている中、過疎化の進む地域において、利用者様の在宅生
活を支える大きな柱のひとつとして通所リハビリテーションを展
開している。今回、介護報酬改定における生活行為向上リハビリ
テーション加算の新設に伴い、どうすればその人らしい在宅生活
を支援できるかを踏まえ取り組んだ経過を交え報告する。取り組
み 利用者様の生活環境に沿ったリハビリテーションを実施する
ため、余暇活動・社会復帰を視野に入れた訓練、自由度の高い生
活行為向上リハビリテーションを導入した。一般住宅を改修した
施設でリハビリテーションを実施し、より再現性の高い動作訓練
を行った。生活行為向上リハビリテーションに伴い、リハビリマ
ネジメント2を取得し、リハビリにおけるSPDCAを実現でき、他
部署との情報共有の強化、利用者様との目標の明確化が図れ、個々
の利用者様にあった質の高いリハビリテーションの提供が可能に
なった。
【今後の課題】まだ生活行為向上リハビリテーションのプロセスを
形成しただけに他ならず、課題はたくさんある。今後、多くの社
会復帰の形を我々リハビリスタッフが経験していくことで、その
人らしさを追求した、様々な生活場面に即したリハビリテーショ
ンアプローチを実施していかなければならない。
【はじめに】デイサービスあわせ(以下「デイあわせ」と略)では余
暇活動・認知症予防として脳トレ(キャップパズル・日本地図パ
ズル等)を実施している。脳トレによる利用者様の認知面の効果
について検討し、有効な提供に向けて取り組んだ内容を報告する。
【対象】利用者様4人
【方法】(1).利用者様を選定し長谷川式、N式で知能検査を実施、
脳トレのタイムを測定する。(2).週2回脳トレを実施する。(3).10
回脳トレを施行後に知能検査再検する。(4).脳トレによる評価を
行う。
【結果】1.脳トレによる長谷川式、N式への影響は僅かだった。2.脳
トレのタイムは若干短くなった。3.脳トレによって利用者様の意
欲向上と精神面での安定がみられた。
【考察】脳トレを継続して観察する事で僅かながら認知面での変
化が読み取れた。個々の利用者様に合った活動プログラムを作成・
提供する事で意欲向上と精神面での安定に繋がったと考える。
【まとめ】利用者様が“笑顔で毎日を過ごす為に”
「 デイあわせ」だ
からできる事を職員1人1人が考え、協力しながら更に良いサービ
スを提供していきたい。 198
O106-5
O106-6
○志慶真裕也(介護福祉士・ヘルパー)1),山城みよ子1),
西平利美子1),城間清美1),比嘉 淳2),又吉 達1),宮里好一2)
○陣内達也(理学療法士)1,2),井口 茂2)
1)医療法人タピック 介護老人保健施設亀の里通所リハビリテーション
2)医療法人タピック 沖縄リハビリテーションセンター病院
1)医療法人伴帥会 介護老人保健施設 ガイアの里
2)長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科
トイレで排泄ができるようになりたい〜リハビリ
テーションカンファレンスを通しての取り組み〜
通所リハビリ新規利用者の身体機能と認知機能の関
係
【はじめに】尿、
便意が曖昧で、
常時尿失禁状態である利用者へ、
「ト
イレで排泄ができるようになりたい」という本人の要望に対して、
チームアプローチを行った結果、排泄介助量を軽減できた症例を
報告する。
【事例紹介】70代男性 要介護度4 認知症なし疾患名:頸髄損傷 四肢不全麻痺排泄:日中リハビリパンツ(尿とりパット併用)毎回多
量失禁あり。夜間オムツ立ち上がり困難でトイレ二人介助(重介助)
【取り組み】1)リハビリテーションカンファレンスにて、本人の目
標と進行状況を確認した。2) 個別リハビリでトイレ動作に関す
る訓練を行った。3)生活リハビリとして、介護とリハビリスタッ
フが連携しトイレ介助を行った。
【結果】1)本人の意識が高まり、尿、便意が出てきた。2)本人の訴
えでトイレ誘導を行い、一人介助で排泄ができ、介助量が減った。
3)失禁が減りリハビリパンツ、パットの使用量が減った。
【考察】3ヵ月毎にリハビリテーションカンファレンス(本人、家族、
ケアマネージャー、介護、理学療法士参加)を行い、本人の目標を
確認し、目標に向かってチームアプローチを行う事で、本人の意
欲向上につながり、良い方向へ向かった結果トイレでの排泄介助
量の軽減ができた。利用者一人一人の病態を職員がしっかり把握
し、具体的に目標を定め、定期的に進行状況を確認しながら、能
力を見極め、目標を達成できるように支援していくことが大切だ
と感じた。
【はじめに】現在日本では認知症患者や軽度認知障害を有する高
齢者が増加している。また、認知機能低下と身体機能低下には関
連があると報告されているため、通所リハビリテーション(以下、
通所リハビリ)利用者においても身体機能低下と認知機能低下の
両方を呈した利用者が増えてくるものと考えられる。そこで今回、
通所リハビリ新規利用者を対象とし、身体機能と認知機能の関係
について把握することを目的とした。
【方法と対象】平成26年1月〜平成26年9月に通所リハビリの利用
を開始した60名を対象とした。利用開始時に身体機能評価とし
てTimed Up & Go、椅子起立テスト、5m歩行、認知機能評価と
してMMSE、数唱、Trail making Test、うつ評価としてGDS-15、
活動範囲評価としてLife space assessment(以下、LSA)を実施し、
それぞれの相関関係を調査した。
【結果】身体機能と認知機能の評価結果において相関関係を認め
た。また、身体機能及び認知機能とLSA、身体機能とGDS-15につ
いても相関関係を認めた。
【考察】身体機能と認知機能に相関関係を認め、LSAやGDS-15と
も相関関係を認めた。このことから通所リハビリの利用者に対し
ては、身体と認知機能の両方を考慮した取り組みを行う必要があ
ると考えられた。実際には個別的な運動だけではなく集団での運
動や活動量を向上させる取り組みを多職種共同で行っていくこと
で多角的なアプローチができると考えられる。
O107-1
O107-2
○井口哲弘(医師)1,2),武居光雄1),田代桂一1),新舎規由1),
三澤一登1),高木憲司1),東江浩美1),山鹿眞紀夫1)
○武居光雄(医師)1,2),井口哲弘1),田代桂一1),新舎規由1),
三澤一登1),高木憲司1),東江浩美1),山鹿眞紀夫1)
1)日本リハビリテーション病院・施設協会 障害児・者リハビリテーションのあり方検討委員会
2)兵庫県立リハビリテーション中央病院
1)日本リハビリテーション病院・施設協会 障害児・者リハのあり方検討委員会
2)医療法人光心会 諏訪の杜病院
【目的】日本リハビリテーション病院・施設協会で行った脊髄損傷
(以下脊損)患者のアンケート調査から患者受入れ状況について報
告する。【対象と方法】H26年2〜3月に会員施設に脊損患者の治
療・リハ・生活上の問題点(職員個人アンケート)と患者受入調
査(施設アンケート)を行い、169施設、200名より回答を得た(回
答率25.4%)。そのうちH24年1年間で入院を受入れた施設数、患
者数、受入れ率と職員数との関係、医師の中でも特に泌尿器科医
と精神科医勤務の影響について調査した。
【結果】1年間の受入れ施設および患者総数は122施設、1401名で、
頸髄損傷では完全麻痺177、不全麻痺815名、胸腰髄損傷では完全
92、不全317名であった。頚損では年間1-5名を受入れた施設が
52と最も多く、胸腰損でも5名以下の施設が多かった。医師数は
平均28.3人(中央値16人)で、そのうち非常勤は平均6.1人(中央
値3人)であった。受入れ件数と医師数、リハスタッフ数の関連は
認めなかった。泌尿器科医の有無は受入れ率と差がなかったが、
精神科医が勤務することで受入れ率が上昇し、頚損では有・無群
間で有意差を認めた。
【考察・結論】医師数の分析から患者受入れの中心施設は回復期
病棟であることが示唆された。協会会員施設は1年間で1401名の
患者を受け入れており(労災病院データベースでは1997-2007年
で2515例の報告)、脊損治療に大きな貢献をしていることがうか
がわれた。
【目的】日本リハビリテーション病院・施設協会で行った脊髄損
傷(以下脊損)患者のアンケート調査結果について報告する。
【対象と方法】H26年2〜3月、会員に脊損患者の治療・リハ・生
活上の問題点(個人アンケート)と患者受入調査(施設アンケー
ト)を行い、169施設、200名より回答を得た(回答率25.4%)。個
人アンケートは脊損治療を経験した施設内部門長に回答を依頼し
た。アンケート項目は、予備調査で行った急性期、回復期、在宅
復帰・地域生活、就労・就学についての結果を、各分野毎に10項
目程度に抽出しまとめた。1位から5位まで重要と思う順に選択
してもらい、順位毎に点数化し重みづけを行い検討した。
【結果】回答者は回復期病棟勤務者が45%と最も多く、職種別では
療法士が55%を占めていた。急性期では、総点数で「治療の困難
さゆえに診療報酬の要件除外」が1位で、
「専門病院の増加」が2位
であったが、1位選択者数は「専門病院の増加」のほうが多かった。
回復期では同様に「専門施設の増加」を希望する声が高く、回復期
のマルメの撤廃が2位であった。在宅・地域生活では退院・退所
後の継続的ケアを担当する人材不足を重要視するのが1位で、就
労・就学分野でもそれを支援するコーディネイターの必要性が最
重要点であった。
【考察・結論】従来、脊損患者の治療上の問題点を時間を追って網
羅的に検討した報告はなく、今回の調査結果は今後の脊損治療の
改善に役立つと考える。
脊髄損傷患者の入院受入れに関する日本リハビリ
テーション病院・施設協会のアンケート分析
脊髄損傷患者の急性期から回復期、生活期に至る治
療上問題点の重要度調査
199
O107-3
O107-4
○島崎功一(理学療法士)
,平山大輔,山戸隆二,吉村日沙,
松田俊之,久保宏記
○藤野文崇(理学療法士),岡田恭子,津野光昭,藤田将敬,
櫛谷昭一
長崎労災病院 中央リハビリテーション部
地方独立行政法人 りんくう総合医療センター
地域包括ケア病棟を退院した高齢整形外科患者の生
活範囲と健康関連QOLに関する調査
当院における周術がん患者に対するリハビリテー
ションの現状
【はじめに】本研究は地域包括ケア病棟(包括病棟)から自宅退院し
た高齢整形外科患者の生活範囲、健康関連QOL(HRQOL)を明ら
かにする。また、入院期間中の機能評価、ADL能力との関連性も
検討した。
【方法】対象は2014年10月から2015年2月までに当院整形外科に
入院、加療し、包括病棟に14日以上在室後、直接自宅退院した65
歳以上の患者(男性11名、女性29名、平均74.0±7.8歳)で、本研究
に同意が得られた40名を対象とした。入院中の測定項目は、年
齢、退院時左右平均膝伸展筋力、ファンクショナルリーチテス
ト、10m歩行時間、運動項目FIM、入院前の生活範囲(LSA)とし
た。退院後HRQOL、生活範囲の評価については、それぞれ、SF36、LSAとし、退院2か月後にアンケート用紙を郵送し、回収した。
SF-36からは身体的健康サマリースコア(PCS)、精神的健康サマ
リースコア(MCS)を算出した。
【結果】アンケート結果は平均でPCSが30.6±11.1、MCSが55.7±
6.6、LSAが77.6±22.0で、LSAは入院前後で有意に改善されていた。
入院時基本情報との関連性ではPCS 、MCSに有意な相関関係は認
められなかったが、LSAは膝伸展筋力と有意な相関関係を認めた。
【考察】包括病棟を退院された高齢整形外科患者においては、入院
前と比較すると生活範囲の拡大が図られ、その因子として下肢筋
力が挙げられた。また、MCSは国民標準値なみに至ったが、PCS
に関しては国民標準には至らなかった。 【はじめに】消化管のがん患者における周術期のリハビリテーショ
ンでは廃用症候群の予防、動作能力の向上を目的とした介入を中
心に実施している。今回は介入により歩行動作能力、バランス能
力、下肢筋力の維持・改善が出来ているかを検討した。
【対象】当院で腹腔鏡により下部消化管のがんを切除し、同意の得
た患者23名(年齢:68.6±10.5歳、性別:男性14名、女性9名)を
対象とした。
【方法】手術前日に6分間歩行距離( 6MWD)
、片脚立位時間、10秒
間椅子立ち上がりテスト(CS-10)を計測した。術後リハビリテー
ションは手術翌日より歩行、ストレッチ、筋力増強、階段昇降を
疼痛、炎症所見に応じ実施した。退院前日に6MWD、片脚立位時
間、CS-10を再度計測した。
【結果】6MWDは術前356±135.2m、術後370±116.4mであった。
CS-10は術前、術後とも5±1.6回、片脚立位は術前では右下肢14±
12秒、左下肢16±13秒、術後では右下肢17±13秒、左下肢17±14
秒であり全項目において有意差は認めなかった。
【考察】全項目において有意差を認めなかったことから廃用症候
群の予防やADLの維持はできたが向上は認められなかった。がん
患者の治療継続のためにはADLの維持向上、動作能力は非常に重
要であるためリハビリテーションを通して身体機能が向上できる
プログラムを検討していきたい。
O107-5
O107-6
○小泉龍一(医師)
○塚本美月(理学療法士),渡井陽子,伊藤沙夜香,矢部広樹
IHI 播磨病院
偕行会 名古屋共立病院 リハビリテーション科
Dupuytren拘縮に対する開放療法の症例
周術期消化器癌患者の体重と体力の低下に影響する
要因;形態測定による検討
Dupuytren拘縮に対する手術療法は、軽症例であればZ形成など
の延長で対処できるが、高度拘縮例では充分な延長ができなかっ
たり、皮膚壊死、再拘縮など、術後のリハビリに難渋することが
多い。今回、高度拘縮の症例に対して開放療法を行い、良好な結
果を得たので報告する。患者は53歳男性。右小指の伸展制限を
主訴に来院、高度拘縮をきたしていた。病的腱膜を切除後、横切
開を開放創とした。術後オスバン温浴下に可動域訓練を行い、創
の閉鎖を見た。術後の疼痛がほとんどなく、かつ充分に伸展が可
能となり、患者の満足度は非常に高かった。Dupuytren拘縮に対
する開放療法は有用な治療法と考える。
【緒言】:消化器癌患者の体重と体力は術後に低下するが、その要
因は十分に検討されていない。術後の絶食や蛋白異化は、筋量や
脂肪量の減少を通じ体重と体力低下に影響すると考えられ、それ
らは身体の形態的な変化により評価できる可能性がある。本研究
の目的は外科術後の形態的な変化を測定し、体重と体力の低下に
影響する要因を検討することで、効果的なリハビリ内容を考察す
ることである。
【方法】
:対象は当院消化器外科にて手術を実施し
た65名。術前と術後10日目に、体重、6分間歩行距離(6MD)、上腕
周径、大腿周径、下腿周径、上腕皮脂厚を測定した。統計学的検
討として術前後の各測定項目の比較に対応のあるt検定を行った。
また、各項目の術前後の変化について、形態測定に関する項目の
変化と体重および6MDの変化との関係をPersonの相関係数にて
検討した。有意水準は全て危険率5%未満とした。
【結果】:体重、
6MD、上腕周径、大腿周径、下腿周径は術前後で有意な低下を認
めた(p<0.05)
。Personの相関係数は体重の変化率と大腿周径の
変化率(r=0.59)、6MDの変化量と大腿周径の変化率(r=0.35)の間
で有意であった(p<0.05)。
【結語】
:大腿周径の変化が体重減少
と体力に影響していることが示された。これは、術後の蛋白異化
に、身体活動量の低下が加わったことが原因として考えられる。
以上より、周術期のリハビリテーションでは下肢に重点を置いた
トレーニングが有用であることが示唆された。
200
O108-1
O108-2
○入江暢幸(医師)1),田原雅子2),中村 亮2)
○矢野高正(作業療法士),那須 綾,中原 忍,高田浩美,
加嶋律子
回復期病棟退院後の新規経口抗凝固薬NOACの服
薬状況に関する調査
回復期リハビリテーション病棟における随意運動介
助型電気刺激を用いた短期集中的な作業療法に関す
る効果の検討
1)福岡リハビリテーション病院 脳神経外科
2)福岡リハビリテーション病院 薬剤部
社会福祉法人 農協共済別府リハビリテーションセンター
【目的】回復期脳卒中患者への随意運動介助型電気刺激(以下、
IVES)を用いた短期集中的な作業療法について即時的効果と持続
的効果を検証し、回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リ
ハ病棟)における効果的なIVES使用について考察する。
【対象】回復期リハ病棟に入院しIVES用いた課題指向型訓練を3週
間実施した脳卒中患者の内、開始時は非麻痺手片手動作であった
11名。
【方法】比較は1)開始時と終了時、2)開始時と退院時、3)終了時
と 退 院 時 と し、Fugl-Meyer Assessment(以 下、FMA)、Motor
Activity Log(以下、MAL)を指標とした。分析はFriedman検定と
し、Tuky法で多重比較した(有意水準5% )。
【結果】平均指数を開始時→終了時→退院時の順で示す。FMA:
43.1点→47.3点→49.5点、MALはAOU:1.5→2.1→2.5、QOM:
1.4→2.0→2.4で、1)はFMAで 有 意 差 が あ り、2)はFMA、MALと
も有意差があった。3)はFMA、MALとも改善傾向を示したが、有
意差はなかった。
【考察】運動機能では即時的効果と持続的効果が得られ、使用度で
は、即時的効果はなかったが、長期的に好影響をもたらす傾向に
あった。従って、回復期における短期集中的なIVES使用は、作業
療法での継続的な麻痺手使用訓練と併用することで効果的な手法
になると思われた。
【初めに】NOAC(Novel Oral Anticoagulant)は非弁膜症性心房細
動を原因とする心原性脳塞栓症患者に対して従来のワルファリン
にかわる薬剤として普及しつつある。一方で薬価が高いこともあ
り維持期で継続処方がされていないケースが少なくないと思われ
る。当院回復期病棟でNOACを服用していた患者の退院後の服薬
状況について調査したので報告する。
【方法】平成23年4月1日〜平成27年3月31日当院回復期病棟を退
院した心原性脳塞栓症患者のうちNOACを服用していた患者46
例を対象とした。退院後のNOACの服用状況について診療録もし
くは電話にて調査した。
【結果】NOACの内訳はリバロキサバン32例、アピキサバン7例、
ダビガトラン6例、
エドキサバン1例であった。退院先は在宅30例、
介護施設12例、療養型病院4例であった。退院後もNOACが継続
されていたのは在宅群で30/30例( 100%)であった。介護施設あ
るいは療養型病院退院群では7/16例( 43.8%)であり、7例はワル
ファリンに変更になっており、抗血小板剤に変更もしくは中止に
なったものが各々1例ずつであった。
【まとめ】NOACの処方例は年々増加しており、その有効性と安
全性の面からワルファリンに変わりうる抗凝固薬となりつつあ
る。一方、ワルファリンに比べて約20倍の薬価であるため、包括
医療である維持期医療の中ではほとんど継続されていない実態が
浮き彫りになった。
O108-3
O108-4
○西堀陽輔(作業療法士)
,高橋里佳
○西村翔太(作業療法士),梅田 顕,坂本成美,谷村睦美
促通反復療法により短期間に上肢手指機能が向上し
た頚髄梗塞
回復期リハビリテーション病棟における病棟リハ型
CI療法の実施可能性の検討
−看護師へのアンケート調査からの一考察−
医療法人徳洲会 山形徳洲会病院 リハビリテーション科
医療法人社団順心会 順心リハビリテーション病院
【はじめに】従来脊髄の可塑性はないと考えられてきたが、近年の
研究ではある程度の学習あるいは適応能力があることが示されて
いる。今回手指の巧緻性低下が認められた頸髄梗塞症例に対し、
促通反復療法を行った結果短期間で改善が認められ、脊髄に生じ
る可塑的変化が示されたため報告する。
【症例】60歳代女性。特に誘因なく両下肢脱力出現し救急病院へ
搬送。頸髄梗塞(C4/5)と診断され、2か月間入院加療。その後2
か月間入院リハビリテーションを施行され、当院転院となる。
【初期評価】FIMは123点。両上下肢手指の随意性は保たれてい
るが、左上肢手指の異常感覚と痙性が著明。左示指と母指、小指
と母指のつまみ動作は可能であるが努力を要し巧緻性の低下が認
められた。簡易上肢機能検査(以下STEF)右98点、左68点であっ
た。
【経過】入院リハビリテーションは1回40分、5回/週を3週間行っ
た。促通反復療法は肩関節屈曲、伸展、1〜5指の伸展、手指対立
動作各20〜30回程度行った。リハビリテーション開始から1か月
後STEF右97点、左96点に向上した。特にSTEF検査項目8〜10の
改善が著明であった。異常感覚は残存した。
【考察】頸髄梗塞症例に対し促通反復療法を施行した結果、上肢手
指機能が改善した。これは促通刺激を用いての反復運動によって
脊髄神経回路のみならず、下行性神経回路の再組織化が生じた可
能性が示唆された。
【目的】現在、A回復期リハビリテーション病棟では、看護師の管
理下で行う10週間の病棟リハ型CI療法を実践している。そこで、
看護師を対象としたアンケート調査により、本プロトコルが病棟
業務で継続可能かを検討する。
【方法】A病棟に所属する看護師10名を対象とした。配布・回収
期間は平成27年2月23日から3月8日。アンケートは、a) 患者の上
肢機能に効果があったか、b) 上肢自主訓練は業務に負担があった
か、c) 今後も継続することに賛同するか、d) 意見等の自由記載の
4項目とした。a〜 cは、リッカート尺度に基づく5段階評価を設
定した。
【結果】9名の回答が得られた(回収率90%)
。設問aは、著しく効
果あり2名、効果あり6名、どちらともいえない1名で、8名が効果
ありと答えた。bは、負担なし2名、どちらともいえない5名、負担
あり2名。cは、強く賛同2名、賛同5名、どちらともいえない2名で、
7名が賛同と答えた。dでは、スケジュール管理が複雑、訓練課題
に楽しさがない、など複数の意見が得られた。
【考察】病棟リハ型CI療法は、看護師に効果があると受けとめられ
ながらも、時間の調整面で負担が発生しており、継続には業務負
担の軽減への工夫が必要である。
201
O108-5
O108-6
○雑喉洋平(作業療法士)
,喜田直樹
○白瀧敦子(理学療法士)1),入江暢幸2),津本 要1)
医療法人明倫会 本山リハビリテーション病院
1)福岡リハビリテーション病院 リハビリテーション部
2)福岡リハビリテーション病院 脳神経外科
当院におけるrTMS治療の実績
当院におけるボツリヌス療法
−セラピストの役割を考える−
【はじめに】rTMS治療とは脳に磁気刺激を与える事で脳の可塑性
を高め、その間に集中的な作業療法を行う事で上肢機能を向上さ
せるものである。当院では平成26年6月よりrTMS治療を導入し
てきた。今回は介入結果について報告する。
【対象】2014年6月〜2015年4月で当院へrTMS治療目的で2週間
入院された11名の患者。
【方法】2週間の治療前後でFugl-Meyer Assessment(以下FMA)・
Motor Activulity Log
( 以 下MAL)
、簡 易 上 肢 機 能 検 査( 以 下
STEF)等6項目の評価結果について比較しpaired t-testで統計学
的検討を行った(p<0.05)
。
【結果】治療結果はFMA,MAL
( 使用頻度)
・MAL
( 動作の質)で有
意差を認め、その他の評価バッテリーでは有意差を認めなかった。
また、臨床的な効果としては、
「字が書けるようになった」
「水の
入ったコップが持てるようになった」等の訴えが聞かれた。
【考察】今回の治療結果から、上肢機能は改善しADLにも汎化され
てはいるが、よりレベルの高い巧緻動作や物品操作能力の向上に
おいては改善が不十分であった事が分かった。その為STEF等で
有意差を認めるに至らなかったと考えられる。今後は、手指巧緻
性や物品操作能力を向上させるプログラムを今まで以上に導入す
る事で、より高い治療効果を得られるのではないかと考えられる。
【はじめに】当院では脳卒中後の痙縮に対する治療として、平成26
年5月よりボツリヌス療法を導入している。当院におけるこれま
での実績及び経過と、セラピストとして役割について考察する。
【当院ボツリヌス療法の流れと評価内容】医師の診察で施注が決
定→施注前に評価→打合せ→施注(筋同定をサポート)→施注後評
価(1W・1M・2M・3M後まで)評価はセラピストが行い、評価内
容はMAS、ROM、Br.Stage、FIM、10m歩行(歩数・秒)、疼痛、満
足度の7項目とし、出来る限りビデオ撮影を実施。
【当院実績及び経過】平成26年5月〜平成27年5月までの施注件数
85件。施注患者数45名。4回施注者3名、3回施9名存在。1回で終
了者4名で、終了の理由は期待以下・疼痛の増強・肢位の変化へ
の戸惑い、であった。施注部位は肘関節関与が最も多かった。傾
向として、MASでは全体的に施注後1週で最も効果があり、徐々
に効果は減弱。関節別では手関節が最も効果を維持。重症度別に
みると中等度程度の緊張状態の方が最も効果的。BRSとFIMはほ
ぼ変化はなかった。
【考察】ボツリヌス療法の効果を少しでも維持するためにリハビ
リのメニューを検討し客観的に分析することはセラピストとして
重要な役割であり、筋の同定をサポートすることは正確な施注に
寄与できる。また施注の目的、目標をしっかりと確認しその後の
効果を確実にフードバックすること、更に患者のQOLの向上に如
何に繋げるかがこの治療の醍醐味であると考える。
O109-1
O109-2
○佐藤雅晃(作業療法士)
,長谷川好子,高尾 恵,岩崎彩芽,
羽生樹理,小原えり ○森脇昌也(理学療法士)
医療法人社団永生会 南多摩病院 リハビリテーション科
社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院
急性期における院内デイケアの効果
脊髄損傷患者に対する当院の取り組み
〜脊損教室について〜
【はじめに】急性期においては治療の妨げとならないよう切迫的
に行動制限を余儀なくされるケースも少なくない。そこで当院で
は2013年度より院内デイケアを実施している。
【取り組み】目的は、行動制限に伴う廃用症候群の予防、ADLの改
善である。内科病棟にて12時45分から45分間、車いす離床が可
能となった患者様を対象に、体操や作品制作を中心に活動してい
る。
【対象と方法】2013年4月からの1年間に内科病棟に入院しリハビ
リテーションが処方された236名の内、肺炎関連疾患により廃用
症候群の診断のついた67名を対象に院内デイケアに参加した群
39名と参加しなかった群28名にて離床時間の改善時間とBIの改
善点を比較検討した。検定には、Mann-WhitneyのU検定を用い
た。
【結果】2群間にて離床時間の改善時間(p<0.05)にて有意差が認
められた。BIの改善点では有意差は認められなかった。
【考察】今回の結果から院内デイケアが離床時間を改善させる役
割の一端を担っている可能性が示唆された。しかし、ADLの改善
につながる結果は得られなかった。島田らの調査では「長時間の
離床と良好な日常生活動作能力とは密接に関連している」、上田
は「高齢者の全身的な廃用症候群を防ぐには活動時間を4時間以
上とる必要がある」と述べている。今後も離床時間の拡大を図り
廃用症候群の予防、ADLの改善のために調査をすすめていく。
脊髄損傷におけるリハビリテーションの目標は社会的に自立
し、かつその生活を維持することにある。そのためには患者自身
の自己管理が重要であり、社会生活を阻害する最大の原因は褥瘡・
尿路感染症をはじめとする合併症である。よって、入院中に確実
なセルフケア手技と合併症予防についての正しい知識の獲得が必
要である。当院では患者教育や各種情報提供は主治医および担
当の看護師やセラピスト、MSWが患者ごとに個別対応していた。
平成23年に病院の新築移転と障害者病棟が新設されたのを機に、
脊髄損傷患者の増加がみられはじめたが、個別対応のため資料も
統一されたものがなく、スタッフ間の知識や経験の差が患者への
情報提供量の差につながるおそれがあった。
そこで平成24年5月より脊損教室の開催を開始した。30分講義
で月2回実施、年2クールとし、資料作成や講師は講義内容に合わ
せて各部署が担当した。講義は一方的とならない様、患者(およ
び家族)参加型で双方向性のある進行を心がけた。高位頸髄損傷
患者にはPCで資料閲覧ができる様、DVDやデータで資料配布を
している。各クールでピアサポートを1回ずつ設け、患者同士の
交流の場を提供している。また若手看護師やセラピストにも参加
させ,卒後教育にも役立てている。その他、脊損教室を開始してか
らこれまで行ってきた取り組みについて報告する。
202
O109-3
O109-4
○南 好江(看護師)
,塩月由起子
○武藤廣徳(作業療法士),中島寛子,藤木 卓,光野敬彦,
吉村愛美,吉原正博
医療法人社団甲友会 西宮協立リハビリテーション病院
医療法人智仁会 佐賀リハビリテーション病院
回復期病院における懇談会の現状と課題
〜懇談会中の語りとアンケート調査からの検討〜
当院における患者会の取り組み
〜おしゃべりステーション〜
当院は、全体の82.5%を脳血管疾患、17.5%を運動器疾患が占め
る(H26.9時点)3病棟120床の回復期リハビリテーション病院(平
均在院日数は約85日)である。入院期間の中で患者・家族は体力
的、運動・認知機能の問題に向き合い、改善に取り組み、退院を
迎えることとなる。しかし、発症による様々な障がいは、その後
の人生も続く永続的なものが大半である。患者本人のみならず、
家族もその障がいを受け入れ、向き合いながら介護生活を継続す
ることが必要となる。しかし、近隣でのサポート団体は少数であ
り、西宮市では認知症の家族会、高齢介護者の集いなど3団体が存
在しているが、17919人の要介護者認定者数(H26.10時点)を充
分にサポートできる状況とは現実的に言い難い。当院は、2012年
より、退院後に介護指導が役に立っているかを目的とした懇談会
を介護士主体で開催していた。2013年秋からは他職種が協働し
て定期的に開催している。懇談会では、
『困ったことやがんばっ
ていること』などをグループで自由に語る時間、作業療法士によ
る転倒予防体操、認定看護師によるワンポイントアドバイス等を
実施し、終了後にはアンケート調査も実施している。その内容を
振り返り、様々な不満や悩みが抽出されたので今後の課題と共に
報告する。
【はじめに】近年、脳卒中患者数は増え続け、後遺症として麻痺を
中心とした障害、健康上の不安を抱えながら生活を送る脳卒中患
者も増加している。それに伴い、患者会のニーズも高まっている。
当院では外来患者からの希望により、患者会「おしゃべりステー
ション」を発足した。会の活動経過と今後の展望について報告す
る。
【対象者、内容】当院利用中、又は利用歴のある者とその家族で自
己来院が可能なことを条件とし、月に1度、フリートーク、情報提
供、作業活動や屋外活動など要望に応じ実施している。
【経過】発足当時、障害のことや悩みなど悲観的な会話が多く、会
の内容もスタッフに一任する形であったが、参加者同士の交流も
深まり、前向きな内容の会話が増えている。外出など、要望も聞
かれるようになり、活動の幅も広がっている。
【展望】現在、運営の中心はスタッフで、少しずつではあるが、参
加者も運営に加わっている。今後、参加者それぞれが役割を持ち、
主体的に活動できる場として運営していきたい。
【終わりに】入院やサービスを受ける在宅生活により、脳卒中患者
は支援を必要とする受動的な生活を送りやすい環境にある。参加
者が生活においても主体的に活動でき、自らの力を実感できるこ
とを期待し活動を続ける。
O109-5
O110-1
○中村隼平(理学療法士)
,尾口さゆり,吉村智子,土川さとみ,
藤原和志,江口勇也,吉田隆徳,廣田洋一,
三角幸子,若林修子
○田代厚美(看護師),西山里花,東川真哉,折田直子,本田 茜
医療法人共和会 小倉リハビリテーション病院
訪問リハビリテーション
福岡リハビリテーション病院 看護部
当事業所利用終了者の社会的交流状況の現状調査
混合病棟を退職した看護師の離職に対する思い
【目的】当事業所の社会参加支援の課題を整理するにあたり、利
用終了者の社会的交流状況を調査し、その特徴を明らかにするこ
とを目的とした。
【対象】平成26年4月〜平成27年3月に利用終了
した96名の内、入院・入所・死亡を除く65名とした。
【方法】診
療録より性別、年齢等の属性項目と交流状況を抽出し、属性ごと
に交流状況を分析した。なお本研究における社会的交流とは、受
診や介護サービス利用時に関わるスタッフ、家族を除く第三者
との対面接触とした。
【結果】対象者の内訳は男性25名・女性40
名、平均年齢73.2±9.8歳で、交流有り38名・無し27名であった。
交流内容では性別で有意差を認めたが、それ以外の項目では各
属性において有意差を認めなかった。交流内容の内訳は「歓談」
68.4%、
「茶話会」
・
「趣味作業活動」
・
「その他」が各15.8%、「仕
事」
・
「地域行事」が各5.3%であった。また、男女共に最も高かっ
たのは「歓談」で、
男性66.7%、
女性69.6%であり、
次いで男性は「趣
味作業活動」
33.3%、
女性は「茶話会」
26.1%であった。
【考察】今回、
男女間で交流内容に差を認めた。その要因として前田は、高齢者
の友人付き合いには男女間で特徴があるとしており、今回の結果
もそれに類似するものであった。したがって、社会参加支援を実
施する上では、心身機能・活動のみならず性差等の個人因子も考
慮する必要性があると考えられた。また、交流に結びついていな
い利用者の特徴を明らかにすることも肝要であると考える。
【はじめに】2014年度A病棟の離職率は16.6%で全国平均を上回
る離職者だった。そこで離職に至った看護師の思いや理由を明ら
かにしたので報告する。
【対象と方法】2014年4-9月までに離職を決めた常勤看護師5人。半
構成的面接法で研究参加者の同意を得て録音し、逐語録を作成した
【結果】22個のサブカテゴリーから6個のカテゴリーが抽出され
た。カテゴリー:3年を目処にキャリアアップを考えていた・業
務が繁雑で忙しくなった・体制の変化についていけない・役割が
負担・自分の生活・プライベートを大切にしたい・上司との信頼
関係が保てなくなった。
【考察】離職した5名に離職に対する思いを調査した。その結果、
キャリア重視の肯定的な思いと、職場環境に対する否定的な思い
のそれぞれに考察する事ができた。離職を決めた看護師5人中一
人は明確なキャリアアップの方向性があり、離職することを積極
的に選択したと考えられる。また、その他に聴取できた思いとし
て、
「体制の変化についていけない」
「上司との信頼関係が保てな
い」
「併設している特別養護老人福祉施設の対応がきつい」等と述
べており、そのことが離職に繋がったと推測する。何れも共通し
た意見として、プライベートを充実したいという思いや、職場環
境に対する否定的な思いがあった。離職防止への取り組みとして、
ワークライフバランスを充実させる事やチームで業務改善へ取り
組むことの必要性が示唆された。
203
O110-2
O110-3
○南河大輔(理学療法士)
,山下大輝,南田史子
○牧山大輔(作業療法士),田中秀和,鈴木 暁,刑部義宏
大阪リハビリテーション病院 リハビリテーション療法部
横浜新都市脳神経外科病院
回復期病棟における日常生活動作表の効果
−患者アンケートより−
当院におけるSCUでのFIMの有効について
〜くも膜下出血患者の転帰として〜
【目的】患者の日常生活動作(以下ADL)の自立度を、色別に示した
表を導入し、その効果を患者アンケートより検証する。
【方法】当
院回復期病棟(48床)全患者のベッドサイドにADL表を提示した。
ADL表はホワイトボードに、移乗・移動・トイレ付き添い・リス
ク・ベッド柵の項目を設け、自立度を青(自立)・黄(見守り)・赤(介助)
のカラーマグネットで示した。患者30名を対象に、ADL表の認知
度と見る頻度 (単一回答)、見る項目(複数回答) 、意見 (自由回答)
について、聞き取り調査を行った。対象者には、本研究の目的と
方法を説明し、同意を得た。
【結果】対象者の内、ADL表を知って
いるのは、27名(90%)だった。見る頻度は、毎日;7名(23%)、3日
に一度;2名(7%)、週に一度;9名(30%)、見ていない;12名(40%)だっ
た。見る項目は、移乗;7名(23%)、移動;14名(40%)、トイレ付き添
い;5名(17%)、リスク;7名(23%)、ベッド柵;2名(8%)だった。意見
は、見たらわかる;10名(33%)、自分の状態がわかる;7名(23%)、早
く青(自立)になろうと思う;3名(10%)、良くなったのがわかる;2名
(7%)、職員が介助方法をわかってくれる;2名(7%)だった。【考察】
ADL表の認知度が高く、わかり易かった要因として、ベッドサイド
に提示したことや、青・黄・赤のカラーマグネットが注意を引き、
自立度の意味を想起させたことが挙げられる。ADL表の効果として、
患者が統一された介助を受けられることや、患者自身がADL自立度
とその変化を理解し、自立への意識を高めることが考えられる。
【はじめに】当院では脳卒中ケアユニット(以下SCU)から早期離
床、早期退院を目指しリハビリテーションを行っている。作業療
法(以下OT)ではSCUから機能自立度評価法(以下FIM)を用い、
日常生活動作を評価している。SCU患者の中でくも膜下出血(以
下SAH)はスパズム期などのリスク管理に注意が必要なため入院
期間が延長する場合がある。入院期間が短縮する指標としてFIM
が有効なのかを今回検討していきたい。
【対象者】平成24年1月から12月までSAHにてSCUに入院した患者
は52名でOTが介入した44名を対象としFIMの傾向を調査する。
【結果】転帰は急性期自宅退院24名(うち23名が自立)、回復期病
棟入棟11名、施設・転院6名( 1名内科転院)
、死亡3名だった。急
性期を自立退院した23名の入院7日目FIM合計は平均89.7(±22)
点だった。その中で50点台の患者も自宅復帰され、その患者は初
回介入FIM認知項目が30点以上であった。回復期病棟や施設・転
院となった患者は初回FIM認知項目が30点以下、7日目でFIM合
計が70点以下だった。
【結論】SAH患者が急性期自宅退院できるとして初回FIM認知項
目が30点以上、7日目でFIM合計が70点以上必要だった。また7
日目FIM合計が50点台でも初回FIM認知項目が30点以上あれば退
院できることが分かった。このようにFIMで評価することは転帰
先を早期に決定するのに有効な指標であると考えられた。FIMを
チームの共有のものとして使用し早期退院につなげていきたい。
O110-4
O110-5
当病棟整形疾患におけるリハ単位数とFIMの推移
「回復期リハビリテーション病棟の10項目宣言」に
基づくケアの質の評価 ○平尾佳代(理学療法士)
○池平菜緒(看護師),綱村麻岐,藤本京子,中山直樹,
児島久美子
香川医療生活協同組合 高松協同病院
医療法人協和会 協和会病院
【 は じ め に 】昨 今、整 形 疾 患 患 者 や 高 齢 者 へ の 単 位 数 削 減 が
提 唱 さ れ は じ め て い る 中、当 院 で の リ ハ 単 位 とFunctional
Independence Measure
(以下、FIM)の向上をみていくことで妥
当性を検証していく。
【対象・方法】2011年、2014年の4月1日〜3月31日に退院した骨
折疾患患者(急変転院除く)38名と77名を調査対象とした。調査
項目は発症から当院入棟までの期間、年齢、在棟日数、入・退棟
時のFIM運動項目の合計得点、FIM認知項目合計得点、FIM利得、
FIM効率、自宅復帰率(準自宅も自宅とみなす)など。分析方法は
対応のないt検定、Mann-WhitneyU検定を使用した。情報収集
は院内の規定に則り個人情報保護に配慮した上で行った。
【結果】2014年が年齢は平均6歳高く(p<0.004)
、1患者あたり
の平均リハ単位は6.66単位から7.88単位と増加して有意差あり
(p<0.0001)
。FIM利得・FIM効率に関しては各々平均で5.51点
(p<0.0062)
、0.1点(p<0.0032)高く有意差あり。自宅復帰率
は100%と92.9%(施設退院6名)
。その他の項目は有意差なし。
【結論】高齢で入棟時のFIMが低い患者でも平均7単位以上のリハ
を提供することで在棟日数を延ばすことなくFIM利得・FIM効率
の向上がみられ、退院時のADL介助量が軽減する可能性が示唆さ
れた。
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟に勤務する看護師は
「ケアの10項目宣言」に基づいた基本的ケアの充実を図り、良い
質、高い成果が求められている。そこで実際に当病棟でどの程度、
ケアの10項目が実践できているのかを見るため、ケアの質の評価
を行った。
【方法】看護師14名を対象に「ケア10項目宣言」に基づくケアの質
に関する評価表を用い評価した。
【結果】
「ケアの10項目宣言」の総合平均点は2.81点であった。今
回、最も低い得点の「洗面・口腔ケア」2.46点を焦点に評価を行っ
た。
「洗面・口腔ケア」の評価小項目(1〜12)で低かった項目は、
「2)
洗面・口腔ケアに関する基準・手順があり、定期的に見直してい
る」と「12)洗面・口腔ケアの質の評価をするためのデータを集積
している」であった。
【考察】
「洗面・口腔ケア」に関して「2)洗面・口腔ケアに関する基
準・手順があり、定期的に見直している」に関しては手順書の見
直しが必要であることが明確となった。
「 12)洗面・口腔ケアの
質の評価をするためのデータを集積している」に関しては改善の
ためのデータ収集が不足していることがわかった。今後は、日々
のカンファレンスや、よりFIMを活用した情報共有を行い、見直
しに継げていく流れを明確にし、スタッフ間で統一して、さらな
る質の向上に継げていきたい。
204
O110-6
O111-1
○田中秀和(作業療法士)
,牧山大輔,刑部義宏,杉山 瞬,
関澤沙織,山岡丈士,増田理恵,磯野裕美,有田健吾,高橋宏明,
山本 恵,鈴木 暁
○久貝明人(作業療法士),兼城賢也,小渡美和,小波本奈々,
崎原尚子,湧上 聖
横浜新都市脳神経外科病院
医療法人緑水会 宜野湾記念病院
急性期脳血管障害患者の傾向と退院時の予後予測
回復期リハビリテーション病棟運営の取り組みにつ
いて
【はじめに】病院の機能分化が進み、入院患者の今後の方向性の決
定は重要である。急性期病棟では、より早期から今後の方向性を
示すことがリハ職種に求められる。予後予測を考えることは、早
期からの方向性を考える上でとても重要である。
【方法】平成26年4月1日〜平成26年12月31日の間に当院SCUに入
院し退院した、くも膜下出血を除く患者。対象者に対して、年齢・
入院7日目FIM・退院時FIM・在院日数・転帰先・FIM利得につ
いて入院時7日目FIMをもとに3群に分類し調査した。
【結果】1群:FIM50以下 2群:FIM50〜90 3群 90以上
( 1)年齢 1群:83.1 2群75.7 3群68.4( 2)7日目FIM 1群:
25.2 2群71.9 3群112.8( 3)退 院 時FIM 1群32.9 2群92.3 3群:119.1( 4)FIM利 得 1群:7.7 2群20.4 3群:6.2( 5)
在院日数:1群65.4 2群63.3 3群:23.1( 6)転帰 1群:自宅
15%施設51%転院34% 2群:自宅59%施設30%転院11% 3
群:自宅97%施設2%転院1%
【考察】1群はFIM利得および自宅退院率も低いことから、早期の
転院先の選定が必要になる。3群は多くの症例が自宅退院可能な
ことから、自宅退院に向けた支援が必要となる。2群に関しては、
FIM利得が優位に高く、退院先もさまざまであることから、状況
に応じた支援が必要となり、リハ職種の関わりが重要であると考
える。今後は、群内での転帰先・FIM利得に対する運動・認知な
ど下位項目の因子の検討が必要であると考える。
【はじめに】当院は、回復期リハビリテーション病棟を2病棟( 32
床・37床)有している。昨年度までは、それぞれの病棟にリハビ
リスタッフのリーダー(病棟リーダー)を配置し、基本的な運営
を病棟師長と病棟リーダーで行っていた。今年度より、病棟リー
ダーに加え、2病棟のリハビリスタッフをまとめる役割(リハ部主
任)を配置し、より円滑な病棟運営になるよう取り組みを始めて
いる。
【取り組み】毎朝、病棟師長・病棟リーダーと密に意見交換する時
間を設け、問題に対しては、
「病棟リーダーで判断できること」
「リ
ハ部主任まで上げないと判断できない事」
「リハ部長以上の役職
に上げないと判断できない事」にレベル分けし、解決までの時間
短縮を図っている。また、病棟回診には、病棟リーダーとリハ部
主任が同行し、患者様の状態や情報の共有ができるような体制を
とっている。
【結果と考察】病棟師長からは、「取り組みが早くなった」等の意
見も聞かれており、レベル分けした事による効率化も見え始めて
いる。また、1日のリハビリ提供時間も向上しており、業務の効率
化が影響していると思われる。今後は、スケジュール管理等、よ
り患者様の自立へ向けた関わりが持てる時間提供ができるよう、
病棟と協力して円滑な病棟運営を進めていきたい。
O111-2
O111-3
○古椎久美(看護師)
,松尾明美,福田小智美,荻本照子,
中川 宏季
○工藤 慎(社会福祉士),佐藤芽以,土岐敏子,岩田 学
独立行政法人地域医療機能推進機構 湯布院病院
一般財団法人黎明郷 弘前脳卒中・リハビリテーションセンター
地域包括ケア病棟における看護・介護職の役割
当院における専従社会福祉士の現状と今後の展望
【目的】当病棟は、急性期病院からの患者の受け入れ、在宅・生活
復帰支援、地域からの緊急時の受け入れなど地域包括ケアシス
テムを支える要となるために1年前に地域包括ケア病棟を開設し
た。地域包括ケア病棟では、患者の状態にあった医療提供と早期
退院を目指すための質の高いケアの提供が求められる。患者を中
心に看護・介護職が急性期、介護施設、在宅との継続看護・介護
の実践、併せて地域生活を支えるケアマネージャーとの連携強化
が重要である。しかし、新設された地域包括ケア病棟の看護・介
護職の役割は明確になっていなかった。そこで、今回、地域包括
ケアを推進するための看護・介護職の役割を明確にしたので報告
する。
【対象と方法】当病棟の看護24名・介護スタッフ10名を対象に病
棟の現状、業務上の問題点を抽出した。その結果から業務全体を
見直し、地域包括ケア病棟における看護・介護職の役割を整理す
る。
【結果・考察】医療と介護の連携を強化するためにスタッフ全員
で病棟の現状、業務上の問題点を抽出し、スタッフ参加型で業務
を見直した。問題点の抽出から退院支援向けた関わりが不十分な
事、ケアマネージャーや施設との連携不足があげられた。そこで
看護・介護職の業務全体を見直し、整理することで地域包括ケア
病棟での看護・介護職の役割を明確にすることができた。
【はじめに】当院はベッド総数248床のうち回復期3病棟、169床を
有している。平成26年度診療報酬改定を踏まえ、当院では平成26
年8月より体制強化加算を算定している。今回は回復期病棟に専
従社会福祉士を配置することにより生じたメリット、デメリット
を中心に、医療ソーシャルワーカーの視点から専従社会福祉士の
現状と今後の展望について報告する。
【メリット】病棟における
滞在時間の増加が挙げられる。結果、患者・家族と会う機会が増え、
タイムリーな支援が可能となった。また医師を含んだ他職種との
連携が密になり、問題解決に要する時間が短縮された。【デメリッ
ト】一般病棟への転棟の場合は担当を変更しなければならず、一
貫した支援の継続が難しいこと、信頼関係の構築のしづらさが挙
げられる。【まとめ】当院専従社会福祉士の現状としてはデメリッ
トを感じつつもメリットの割合が大きく、診療報酬面やチーム医
療の観点から職場内での貢献度が明確となり、やりがいを感じ業
務を行うことが出来ている。課題もあり担当変更に伴っての患者・
家族との信頼関係をどのように構築し、退院支援を行うか対策を
講じる必要がある。【考察】専従社会福祉士の役割を意識すること
で、患者・家族に対し質の高い支援を提供し納得される退院援助
に努め、他職種との連携を強化しタイムリーなソーシャルワーク
を展開することで専従社会福祉士の存在価値が高まると考える。
205
O111-4
O111-5
○松本倫明(介護支援専門員)
,古城哲也
○大村正澄(看護師),片岡紳一郎,舟橋紀子,池田友紀,
山本直子
医療法人社団紺整会 介護老人保健施設 フェルマータ船橋
西宮敬愛会病院
リハコーディネーターの役割と効果
回復期リハビリテーション病棟における多職種の
チームワーク力の分析
【はじめに】当施設は平成10年の開設当初より在宅復帰・在宅支
援に力を入れており、平成23年9月より「在宅強化型」を取得した
老健施設である。利用者に対し質の高いリハビリテーションを提
供していく為に、リハの事務的な管理業務を一括して行なうリハ
コーディネーター(以下RC)を平成24年4月より配置している。
RCの役割はリハ提供回数の管理やセラピストのスケジュール管
理、請求業務や売り上げ管理などを担う。配置から3年が経過す
るが、他施設の状況も調査した上でその効果を検証してみる。
【対象と方法】船橋市内にある老健施設(13施設中当施設を除く12
施設)を対象とした。方法は質問紙法による選択式と自由回答を
用いたアンケート調査を行ない、当施設との違いを含めて比較し
効果について検証した。
【結果】アンケートより他施設ではリハの事務作業はセラピスト
が中心的に行ない、その作業を負担と感じている施設が多いとい
う結果であった。
【考察】リハの事務作業が負担でありRCの役割に必要性を感じて
いるにも関わらず、人経費等の問題から配置をすることができて
いない。それは施設それぞれの置かれる状況は違うも、RCの役
割に一定の効果があるものと考察できる。今後もRCの配置を継
続し、充実したリハを提供していきたい。
【目的】回復期リハビリテーション病棟では、効果的なチームアプ
ローチを行うために、多職種間のチームワーク力が必要となる。
今回、チームワーク測定尺度を用いて、現在のチームワーク力の
特性と今後の課題を明らかにした。
【方法】対象者:A病棟に勤務している理学療法士・作業療法士・
言語聴覚士・看護師・介護職の計61名。分析方法:多職種混合
のグループでポジショニングの研修会を実施。チームワーク測定
尺度で研修会前後のチームワーク力を測定し、測定尺度を点数化
し、職種別の平均値の差異をみる。
【結果】多職種が共通の目的・目標を持った活動を行うことにより、
全職種においてチーム志向性、チーム・リーダーシップ、チーム・プ
ロセスの点数は上昇した。チームワーク力の特性は職種により異なる。
【考察】チーム志向性では、共通の目的を明確化した研修を行うこ
とで平均値が上昇したと考える。今後は臨床における患者への医
療提供だけでなく、組織分析や組織目標を共有し、チームアプロー
チを機能させることが課題である。チーム・リーダーシップでは、
全員が意見を述べ合いディスカッションできるようにファシリ
テートした。これにより個々のスタッフがリーダーシップを発揮
できたと考える。チーム・プロセスでは、研修会において、発言
のしやすい雰囲気づくりを行ったために、平均値が上昇したと考
える。それぞれの項目における各職種の分析については、発表に
て報告する。
O111-6
O112-1
○大儀律子(看護師)
○小野寺恭一(作業療法士),伊東貴広,小野寺泰弘,小関雄太,
小柳拓也
医療法人社団 西宮回生病院 看護部
医療法人社団健育会 石巻健育会病院
看護管理者からみた看護と介護の協働
当院回復期リハビリテーション病棟における疾患別
重症患者の特徴 −日常生活機能評価との関連−
【目的】本研究の目的は、看護職と介護職の協働が困難な実態を、
慢性期病床の看護管理者の視点で明確にすることである。
【方法】慢性期病床で勤務する、同意を得られた看護管理職30名に
質問紙調査を行い、統計学的手法を用いて2つの仮説検証を行っ
た。
【結果】分析の結果、各成分間の相関係数が有意な相関を示し、成
分と属性間でも有意な相関を示していた。これより、看護職と介
護職の人員配置について環境の影響を受けていることが示唆され
た。これは両職が互いの専門性に対して不理解であることや教育
体制の違いが、協働を阻む要因になっていることが示唆された。
また、看護管理者の各主成分の一要因分散分析より看護職と介護
職を抱える看護管理者は管理能力が高いとは認められなかった。
【考察】協働が困難な要因は、看護職介護職が両者の役割を理解し
ていないことから生じている可能性が高い。この根底には看護お
よび介護の教育制度の違いがあり、生活の場である慢性期病床で
の看護の特性を理解していないことや看護職と介護職の専門職の
歴史の相違から互いが協働して専門職性を発揮するには課題が多
いことである。
【結論】病棟管理者は看護職と介護職の人員配置について環境か
らの影響を受けていた。また、看護職と介護職を抱える職場の病
棟管理者は管理能力が高いわけではなかった。
【目的】当院回復期リハビリテーション病棟における重症患者の特
徴について、疾患別(脳血管・運動器・廃用)に日常生活機能評価(以
下、B項目)との改善率に関連の強い項目を検証。
【方法】平成24年9月〜平成27年3月までに入院した重症患者170
名(男性76名、女性94名)、平均81±11歳(36〜100歳)の1。患者全
体と疾患別での全体像把握(入院時B項目の合計点ごとの・人数・
年齢・在院日数・退院時B項目合計・B項目4点以上改善した人数
等)と2。退院時B項目の4点以上改善に関連の強い項目の抽出(退
院時B項目合計点において、4点以上改善の有無を従属変数、年齢・
13項目それぞれを独立変数としLogistic回帰分析を実施)。
【結果】1。B項目4点以上の改善率は、全体で12−13点を境に50%
以上、脳血管で11−12点、運動器と廃用は13−14点を境に50%以
上の改善率となった。2。全体では起き上がり、座位保持、移乗、
口腔清潔、食事、診療・療養上の指示が通じる、の6項目で有意な
偏りを認めた(P<0.05)。脳血管では3項目、運動器では8項目、廃
用では4項目で有意な偏りを認めた(P<0.05)。
【考察】運動器や廃用による重症患者は脳血管と比べ重症度が高
くても改善率が高く、B項目が改善しやすい事が考えられる。ま
た、4点以上改善に関連の強い疾患共通の項目は3項目(起き上が
り、移乗、口腔清潔)が挙げられ、これら関しては有意に改善しや
すい事が考えられる。
206
O112-2
O112-3
○中島龍星(理学療法士)
,藤本剛丈,山下真由子,岡崎裕香,
小川さつき,永江和美,岩永チヨミ,前田睦美,井手安澄,
中村真弥子,西村真理,本田憲一,島谷和洋
○宮里宗忠(理学療法士),山城貴大,真栄城省吾,比屋根友恵,
栗林 環,濱崎直人,宮里好一
回復期リハビリテーション病棟退院後のフォロー
アップの現状と課題
〜患者情報の確認状況に着目して〜
当院回復期リハビリテーション病棟における職業性
腰痛の実態調査
医療法人タピック 沖縄リハビリテーションセンター病院
1)一般社団法人是真会 長崎リハビリテーション病院
2)一般社団法人是真会 在宅支援リハビリテーションセンター
【はじめに】当院勤労者において、腰痛を理由に休職する者や業務
に支障をきたす者もいるが実態について調査されていない。今回、
職業性腰痛の実態を調査し「動作要因」と「心理社会的要因」に着
目し腰痛予防策について検討したので報告する。
【対象】当院回
復期病棟勤労者56名(看護師19名、介護士7名、PT12名、OT11名、
ST7名)
。
【方法】独自で作成した自記式調査票を用いて腰痛歴・
時期・負担動作等を調査した。心理・社会的要因は、厚生労働省
の職業性ストレス簡易調査票を用いた。【結果】腰痛歴ありの割合
は全体の82%。そのうち現職から発生が69%、入職後3年以内が
多数を占めた。腰痛により仕事の支障有り53%、支障無し44%、
休職歴ありが3%であった。負担動作は移乗が55%、ベッド上で
の上方移動が40%、オムツ交換が27%であった。心理社会的要
因として、仕事を負担と感じる者、コントロール出来ていない者
が腰痛歴の有無にかかわらず多数を占め、また職場のサポートや
人間関係等が問題と答えたものは少なかったが、いずれも腰痛と
の関連は認められなかった。
【考察】腰痛の動作要因は持ち上げ
動作や前かがみ動作が頻繁な作業に関わっていることが挙げられ
た。姿勢と動作の指導や福祉用具の活用により腰への負担を減ら
す事、腰痛予防体操やストレッチなどの対策が必要であると考え
る。心理社会的要因の対策として、業務効率や人員配置等、詳細
を検討していく必要があると考える。
【はじめに】退院後の生活状況を十分に視野に入れた支援をする
ことは回復期病棟の重要な役割である。しかし、実際の退院後の
生活状況に関する分析は十分にできていない現状もある。そこで
今回、当法人の退院患者の状況について調査・検討した。
【対象・方法】対象は2014年7月〜2015年3月の退院患者297名(急
性転化・死亡は除外)とし、転帰、退院後の当法人在宅サービス(病
院外来、介護保険サービスとして訪問リハ・通所リハ・居宅介護
支援)利用の有無、当在宅サービスを利用しない患者は退院後の確
認状況を調査(2015年4月末現在)。なお、情報確認は法人内の情
報交換会や同行訪問及び電子カルテの活用等で行い、当在宅サー
ビスを利用しない場合は退院一ヶ月以降に電話等で確認した。
【結果】退院患者297名の転帰は自宅230名、福祉系施設47名、老
健施設5名、医療機関15名であった。退院後に当在宅サービス利
用が226名(内訳:外来183名、訪問リハ50名、通所リハ34名、居
宅介護支援31名)。一方、利用なしは71名、内61名は退院一ヶ月
以降に電話や訪問で確認ができた。退院後に確認できた患者は合
計287/297名(97% )であった。
【考察】退院患者の多くは何らかの情報を確認できる状況にあっ
た。退院後の状況把握を定期的に行いながら、入院中の支援の在
り方を深めていく必要性をさらに感じた。今後は、医療と介護と
の連携を推し進めていく観点からも分析を進めていく。
O112-4
O112-5
○斎藤美紗(看護師)
,立花智子,佐々木瑞穂
○篠澤毅泰(理学療法士),堀内健太郎,館岡周平
円滑な退院支援のためのオリエンテーションの再考
回復期リハビリテーション病院リハビリ部門におけ
る残業内容と残業に関する認識、個々の働く姿勢・
意識の調査
公益財団法人シルバーリハビリテーション協会
メディカルコート八戸西病院
河北リハビリテーション病院
【はじめに】当院では、回復期病棟への直接入院ではなく、今後の
リハビリテーションの充実、回復に繋げるため、一般病棟に先ず
入院し、全身検査を行い状態を整えてから回復期病棟へ転棟して
いる。在宅復帰を目指す回復期病棟では常に早期からの退院支援
の重要性が数多くの研究により示されており、そのひとつの手段
としてオリエンテーションの実施があげられる。しかし、転棟す
る際に御家族とコンタクトがとれない場合も多く、早期から退院
支援といった点では十分なオリエンテーションとは言えない。円
滑な退院支援のためのオリエンテーションについて再考した結果
を報告する。
【対象と方法】アンケート対象者:当院の回復期リハビリテーショ
ン病棟勤務の看護師22名、入院中の患者の御家族4名の合計26名。
【結果】調査の結果、オリエンテーションの実施は約45%だった。
オリエンテーション内容について50%の看護師は不十分である
と感じており、約95%の看護師は入院期間や施設申し込みについ
て追加説明をしていた。御家族からの結果では、病棟の流れ、担
当者、介護保険申請方法について知りたいとの意見があった。オ
リエンテーションを受ける時期としては、半数が一般病棟にいる
時と転棟時の実施を希望している。
【考察】入院期間や介護保険の申請についてなどオリエンテーショ
ンの内容を追加し、実施時期を定め、説明を統一することで円滑
な退院支援の充実を図る必要があると考える。
【背景】従来から看護職者と超過勤務に関する研究は数多く行わ
れており、看護職の疲労の背景に「超過勤務」などの勤務条件によ
る負担に加え、多忙な職務への「不満足感」などによるストレス
が、「労働意欲」や「退職願望」に影響を及ぼしていると報告され
ている(佐藤、2000)。このような研究はリハビリ業界では少ない。
当院は東京都杉並区に位置する135床の回復期リハビリテーショ
ン病院で、職員総数は240名、そのうちPT、OT、STからなるセラ
ピー部は103名( 2015年5月1日現在)。今回は残業内容と残業に
関する認識、個々の働く姿勢・意識を調査した。
【方法】当院セラピー部常勤100名(PT62名、OT30名、ST8名、男
性43名、女性57名、平均経験年数4.6±3.6年)に対してアンケー
トを実施し、比較検討した。アンケート内容は1)残業の内容と必
要な時間、2)残業に関する認識と改善点、3)委員会活動に関する
認識と改善点とし、また4)業務内容の問題点と改善点について自
由記載とした。
【結果・考察】アンケート配布数100名、回収数84名。結果は、
50%以上のスタッフ( 1年目を除く)が4〜5日/週残業すると回答
しており、内容は記録・資料作成等に多くの時間を費やしていた。
残業に関する認識は、経験年数との関係性がみられた。今回把握
できたこれらの結果に関して、今後は課題整理を行うとともに対
策検討を進めていく。
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