Waters 品質管理用標準(QCRM)を使用したシステム性能評価による データ品質の確保 Kenneth D. Berthelette, Mia Summers, and Kenneth J. Fountain Waters Corporation, 34 Maple St., Milford, MA, USA アプリケーションの利点 ■■ ■■ 厳格な管理下で製造され品質証明されたス 分野に係わらずクロマトグラフィー担当者にとって、分析システムの性能と タンダードにより分析システムの性能を確 データの信頼性は、最大の重要事項です。システム性能が低下し始めると、そこ 実に評価 で取得されるデータの信頼性と正確さは疑問です。さらに、システム性能が シ ス テム性能のモ ニターにより不正 確な データ取得を阻止 ■■ はじめに あまりにも大幅に減少すると、システムの修理が必要になるかもしれません。 そうなると装置のダウンタイムが増加しラボの生産性が低下します。しかしな がら、システム性能を日常的にモニターすることによって性能低下を早期に発 システムの問題を事前に発見し、 ダウンタイム 見することができ、的確な対処をすることが可能になり、ダウンタイムを削減し、 を削減 データの誤りを防ぐことができます。システム性能をモニターする 1 つの方法は、 システム適合性スタンダードを用いたシステム評価試験です。そして、試験結 果を経時的に比較することによりシステムが確実に稼動していることを確認で きます。 Waters ® 品質管理用標準(QCRM )に追加された中性化合物適合性スタンダード は、理想的なシステム評価標準となる 3 つの中性化合物を混合したものです。 中性化合物を使用することにより移動相 pH の影響を受けずに、緩衝液の使用 の有無や、塩基性または酸性の移動相においても同様の評価を行うことが可能 です。したがって、本スタンダードは多くの異なる HPLC と UHPLC で、異なる カラムケミストリーや移動相で使用することができます。Waters QCRM の高度 に制御された製造プロセスは、高品質と信頼性を確実にし、長期に渡り一貫し ウォーターズのソリューション Waters 中性化合物適合性スタンダード ACQUITY UPLC ® H-Class システム た結果を提供します。本アプリケーションノートでは、Waters QCRM 中性化合 物適合性スタンダードがどのように長期に渡りシステム性能評価とモニターに 使用できるかに焦点をあてて解説します。QCRM をシステム性能評価に使用す ることで、データの整合性のモニターと保証が可能になります。 ACQUITY UPLC BEH C18 カラム Empower ® 3 クロマトグラフィーデータシステム[CDS ] LCGC 品質証明バイアル キーワード ACQUITY UPLC H-Class 、分析スタンダード&試薬、 品質管理用標準[QCRM ]、Waters 中性化合物適 合性スタンダード、ACQUITY UPLC BEH カラム 1 実験方法 結果および考察 LC 条件 システム性能とデータ信頼性は、あらゆるクロマトグラフィー担当者が意識し なければいけない事項です。高品質なデータを取得するために最適なレベルで 連続的に稼動することを確実にするには、システムを常にモニターする必要が システム: ACQUITY UPLC H-Class 移動相: アセトニトリル / 水 50:50 送液方法: アイソクラティック 検出: UV 254 nm で時間を経てもシステムが良好に稼動していることを確認することができます。 カラム: ACQUITY UPLC BEH C18 Waters QC RM に追加された中性化合物適合性スタンダードは中性化合物∼アセ 2.1 × 50 mm、1.7 µm トン、ナフタレン、アセナフテン∼の混合溶液です。これらの化合物の分離は よる評価を経時的に実施し、その結果を分析開始当初のデータと比較すること 十分な有機溶媒混合比の一般的な移動相で達成できます。Figure 1 は本スタン 30 ℃ ニードル洗浄液:アセトニトリル / 水 50:50 水溶液によるアイソクラティック送液により分離した例です。 アセトニトリル / 水 50:50 シール洗浄液: メタノール / 水 50:50 注入容量: 1 µL データ管理: Empower 3 CDS 0.020 0.010 Acenaphthene 0.6 mL/min AU 流速: 0.030 Naphthalene パージ溶媒: ダードを ACQUITY UPLC BEH C18 2.1 × 50 mm 1.7 µm で 50% アセトニトリル Acetone カラム温度: あります。システム性能を評価する最も簡単な方法は、Waters QC RM を使って システムが最適に動いていることを日常的にモニターすることです。QC RM に サンプル調製: Waters 中性化合物適合性スタン ダード(製品番号 186006360) のアンプルを開け、LCGC 品質証明 0.000 0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 min 4.00 バイアルへ移す Figure 1. ACQUITY UPLC BEH C 18 , 2.1 × 50 mm 1.7 µm カラムによる中性化合物適合性スタンダード クロマトグラム例 このアプリケーションでは、PDA 検出器を搭載した ACQUITY UPLC H-Class シ ステムの性能を 5 日間(120 時間)に渡って評価するために本スタンダードを 使用しています。初めの実験をする前に、システムは本来の性能を発揮するよ うにメインテナンスおよび較正されました。最適に機能していないシステムの 評価結果は、ばらつきが大きく信頼できないものになります。中性化合物適合性 スタンダードを 5 日間に渡り、1 日 3 度、ACQUITY UPLC BEH C18 、2.1 × 50 mm、 1.7 µm カラムに 3 回インジェクションしました。一般的な 8 時間勤務の初回、 中間と終了時の分析を再現するために、毎日の初回の分析は朝に行われ、2 度 目の分析は昼に、3 度目の分析は午後に行われました。計 45 回の分析が 5 日 間(120 時間)に渡って実施され、保持時間、USP(米国薬局方)テーリングファ クター、システム圧がモニターされました。これらは深刻なシステムの問題を 知るためにモニターされる典型的なパラメーターです。例えば保持時間が顕著 に変化した場合はポンプの不具合や移動相調製の誤りを示唆し、USP テーリン グファクターの増加はカラムまたはカラムフィッティングが正しく接続されて いないことを示唆します。 1 Waters 品質管理用標準(QCRM)を使用したシステム性能評価によるデータ品質の確保 2 平均保持時間 (分) 保持時間相対標準偏差 (% RSD) Acetone 0.323 0.69 Naphthalene 1.633 0.44 Acenaphthene 2.893 0.44 Table 1. 中性化合物適合性スタンダードによるシステム性能評価例、5 日間(120 時間)に渡って 相対標準偏差(n=45)が低く高再現性の保持時間を示している Retention Time Acetone Retention Time (min) 0.45 0.4 0.35 0.3 0.25 0.2 0 20 40 60 80 100 Retention Time Acenaphthene 2.2 2 1.8 1.6 1.4 1.2 0 20 40 60 80 100 hours Retention Time (min) Retention Time (min) Retention Time Naphthalene 1 hours 120 120 3.4 3.2 3 2.8 2.6 2.4 2.2 0 20 40 60 80 100 hours Figure 2. 中性化合物適合性スタンダードの 5 日間(120 時間)に渡る保持時間分析結果 USP Tailing Acetone USP Tailing Factor 1.50 1.40 1.30 1.20 1.10 1.00 0.90 0 20 40 60 80 1.30 1.30 1.20 1.10 1.00 0 20 40 60 80 100 hours 120 USP Tailing Factor USP Tailing Factor 120 USP Tailing of Acenaphthene USP Tailing of Naphthalene 1.40 0.90 hours 100 1.20 1.10 1.00 0.90 0 20 40 60 80 100 hours 120 Figure 3. 中性化合物適合性スタンダードの 5 日間(120 時間)に渡る US P テーリングファクター分析結果 Waters 品質管理用標準(QCRM)を使用したシステム性能評価によるデータ品質の確保 3 Pressure Pressure (psi) 7900 7400 6900 6400 5900 5400 4900 0 20 40 60 80 100 hours 120 Figure 4. 中性化合物適合性スタンダード分析時のシステム圧プロット 以上のデータは中性化合物適合性スタンダードがシステム性能の評価に有用なツールであることを示して います。Table 1 の保持時間試験結果は分析全体に渡り、本スタンダード中の全ての成分について %RSD < 0.7 の良好な再現性を示しています。USP テーリングファクターは全ての分析にわたって非常に小さな偏差で あり、各ピークにおいて変化が無い事を示しています。 システム圧データも非常に小さな偏差であり、本実 験の全ての分析に渡って安定した圧力であったことを示しています。本実験∼保持時間、USP テーリングファ クターとシステム圧のモニター∼はとても重要で、これらのパラメーターのどれかひとつでも変化した 場合は分析装置またはカラムに問題が起こったことを示唆し、それを知ることによって分析時に起こるデータ の誤りを見つけ出すことができる可能性を示しています。 加えて、システム性能をモニターすることより、分析開始時の評価結果との変化を知ることもできます。 本スタンダードによる評価結果を収集した後に、それを基にシステム性能モニターのための規格を作成す ることができます。2 このような品質規格を作成した後に、本スタンダードを定期的に分析することにより、 規格と照合してシステムが最適に稼動しているかどうかを知ることが可能です。もしも分析結果が規格を 外れた場合はシステムの修理が必要かもしれません。システム修理の後に再度中性化合物適合性スタンダー ドにより評価を行い、システムが良好に動いているかどうかを確認することができます。 1 Waters 品質管理用標準(QCRM)を使用したシステム性能評価によるデータ品質の確保 4 結論 参考文献 システム性能のモニターは、高品質なデータ取得に向けて液体ク ロマトグラフィーが毎日正しく稼動していることを確認するため に重要です。良く特性化されコントロールされたスタンダード を使用したシステムの日常的モニタリングは、システムの異常 を早期に発見し、システムダウンタイムの削減を可能にします。 1. Berthelette KD, Summers M, Fountain KJ. Troubleshooting Common System Problems using Waters Neutrals QC Reference Material. Waters Application Note 2. Quality Control Reference Material and Benchmarking Instrument Performance. Waters White Paper. Waters QC RM はシステム機能の最適化の評価に理想的です。新た に追加された中性化合物適合性スタンダードは 3 種の中性化合 物の混合溶液で、幅広いカラムケミストリーと移動相で使用でき、 ほとんどの分析メソッドとラボワークに適応します。システムが 一度評価されると、 QC RM を分析し結果を比較することで、分析 者は定期的にシステムが最適に動いていることを確認することが できます。もしもシステムが規格を外れた場合には、誤ったデー タを取得する、またはシステムが機能しなくなる前に、補修作業 を行うことができます。 システム性能を評価するために Waters QC RM を使用することによりシステムダウンタイムを削減し、信 頼性の高いデータを効率的に取得することが可能になり、ラボの かなりの時間と資源を節約することができます。 日本ウォーターズ株式会社 www.waters.com 東京本社 〒140-0001 東京都品川区北品川 1-3-12 第 5 小池ビル TEL 03-3471-7191 FAX 03-3471-7118 大阪支社 〒532-0011 大阪市淀川区西中島 5 -14 -10 サムティ新大阪フロントビル 11F TEL 06-6304-8888 FAX 06-6300-1734 ショールーム 東京 大阪 テクニカルセンター 東京 大阪 名古屋 福岡 札幌 Waters、Empower および ACQUITY UPLC は Waters Corporation の登録商標です。 The Science of What ’s Possible は Waters Corporation の商標です。 その他すべての登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。 ©2013 Waters Corporation. Printed in Japan. 2013 年5月 720004622JA PDF
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