楽 Knee! 楽 Knee! ヘルプ Knee!! -膝関節撮影補助具の作製-

楽 Knee! 楽 Knee! ヘルプ Knee!!
-膝関節撮影補助具の作製-
広 尾
病 院
広尾病院
テーマ名
テーマ名
楽 Knee! 楽 Knee! ヘルプ Knee!!
楽 Knee! 楽 Knee! ヘルプ Knee!!
サークル名
サークル名
メンバー名
メンバー名
膝関節撮影補助具の作製
膝関節撮影補助具の作製
妖怪ラクニー族
妖怪ラクニー族
診療放射線科 ◎小林 剛 野口法子
診療放射線科 ◎小林
剛 小野宏樹
野口法子
高藤優輝
高藤優輝 小野宏樹
宮倉英彰
宮倉英彰
山入端立博
山入端立博
1 テーマ選定理由
1 X線撮影において,
テーマ選定理由 多くの画像情報を得るためにはよいポジショニングが重要であり,体位・X線入射点・
膝関節撮影は、若年から老年まで多様な疾患の患者さんが対象となり、件数の多い検査である。近年、正
角度・カセッテ配置などの正確性が求められる。当院ではX線撮影システム更新に伴い,B4
サイズカセッテ
面、側面、スカイラインの
3 方向撮影がルーチン化されている。撮影は体位変換が多く、患者さんにとって
の重量は約 1kg から約 2kg になり,患者さん自身にカセッテを支持していただく撮影では負担が大きくなっ
は苦痛・負担の大きい検査である。さらに、X線撮影システム更新に伴い、B4
サイズカセッテの重量が約
た。結果として画像ブレなどが生じ,再撮影となるケースが増え,対策が必要となっていた。
今回私たちは,
2kg
になり、患者さん自身にカセッテを支持していただくスカイライン撮影はより一層負担が大きくなった。
①患者サービス向上「負担軽減」
,②精度向上「正確性・再現性のある画像」
,③業務改善「検査時間の短縮」
固定し切れず画像ブレなどが生じ、再撮影となるケースが増え、対策が必要となっていた。今回私たちは、
の観点から,膝関節撮影補助具の作製を試みた。
①患者サービス向上「負担軽減・安全性の向上」
、②業務改善「撮影情況と検査時間の短縮」の観点から、
2 現状と問題点
膝関節3方向撮影法を考案した。
膝関節軸方向撮影スカイラインポジションでは,患者さん自身がカセッテを保持して撮影
2
現状と問題点
①カセッテが重い(約
2kg)ため落下の危険性がある。②落下した場合,負傷の危険性の他,FPD カセッテ
現在の膝関節撮影では、以下のような問題点がある。
(定価:約 500 万円)が破損する可能性がある。③カセッテ保持状態が不安定なため,正確なポジショニン
①痛みのため、標準撮影法の体位がとれず、負担を強いる。
グがとれない場合がある。④撮影ポジショニングの再現性に問題があり,比較読影が難しい場合がある。
3 ②痛みと重さのため、軸方向撮影ではカセッテ保持が不安定になり、正確なポジショニングがとれない場
改善策
合と落下の危険性。
1)膝関節軸方向撮影スカイラインポジション補助具「ヘルプ
Knee(膝)
」の作製
③担当技師がカセッテ保持をする場合があり、無用な被ばくをすることになる。
撮影補助具を使用することにより,患者さん自身が重いカセッテを保持する必要がなくなり,負担が軽減
3
改善策
した。また,患者さんの保持では安定しなかったX線方向とカセッテの位置配置の精度が向上し,正確な画
1)膝関節側方向撮影補助具「楽
Knee(膝)
」の改良
像取得が可能となった。
「楽 Knee(膝)
」は側方向クロステーブル撮影補助具として作製・利用してきたが、さらに効果的な利用
2)膝関節側方向撮影補助具「楽
Knee(膝)
」と組み合わせ,さらに楽で正確な撮影を可能に
を考案し、改良型を作製した。
従来から使用している自科製膝関節側方向撮影補助具「楽 Knee(膝)」と組み合わせることによって,側
2)膝関節軸方向撮影スカイラインポジション補助具「ヘルプ
Knee(膝)
」の作製
方向・軸方向撮影を一連の流れで撮影できるようになった。この改善により,膝関節の基本3方向撮影に要
軸方向撮影時に、患者さん自身あるいは担当技師がカセッテを保持しなくて済むように、補助具「ヘルプ
する時間は短縮し,負担軽減とともに再現性のよい撮影が可能となった。
Knee(膝)
」を考案し、作製した。
3)サイズアップアタッチメント「ヘルプ
Knee(膝)プラス」により,外国人へも対応可能に
3)
「楽
Knee(膝)
」と「ヘルプ
Knee(膝)
」を組み合わせ、楽な撮影を可能に
当院は外国人患者も多いが,アタッチメントを使用することにより,日本人に較べ下肢が長い外国人患者
患者さんは仰臥位で寝たまま、膝関節3方向撮影を一連の流れで撮影できる方法を考案した。負担軽減と
に対する調整が可能となり,オリンピック病院としての対策にもつながった.
フィルム固定の確実性、所要時間の短縮を図った。
4 今後の取組(結果)
4 今回作製した「ヘルプ
今後の取組(結果) Knee(膝)
」を使用することにより
「楽
Knee(膝)
」と「ヘルプ
Knee(膝)
」を組み合わせて使用することにより
①患者サービス向上:重いカセッテの保持が無くなり,落下等の危険性を排除でき,負担の軽減と安全性が
①患者サービス向上:仰臥位で寝たまま、膝関節3方向撮影が可能となり、患者さんの体位変換の負担が軽
向上した。②精度向上:X線管とカセッテの平行性が保たれることと,カセッテのブレが無くなり,画質と
減した。②重いカセッテの保持が無くなり、落下等の危険性を排除でき、安全性が向上した。③業務改善:
再現性が向上した。③業務改善:体位変換が最小限で済むことになり,撮影に要する時間が短縮した。
体位変換が最小限で済むことになり、撮影に要する時間が半減した。④担当技師の無用な被ばくがなくなっ
今回の取り組みにより膝関節撮影に関するサービス向上と精度向上を図ることができた。今後も撮影補助
た。⑤外国人など意思疎通が図れない場合にも、寝たままで済む。
具の開発・改良と積極的な活用により,一層の患者サービス向上に努めていきたい。
今回の取り組みにより、膝関節撮影に関するサービス向上と業務改善を図ることができた。今後も撮影補
助具の開発・改良と積極的な活用により、一層の患者サービス向上に努めていきたい。
広尾病院
テーマ名
テーマ名
楽Knee!
Knee! 楽
楽Knee!
Knee! ヘルプ
ヘルプKnee!!
Knee!! 膝関節撮影補助具の作製
膝関節撮影補助具の作製
楽
サークル名 妖怪ラクニー族
妖怪ラクニー族
サークル名
メンバー名 診療放射線科
診療放射線科 ◎小林
◎小林 剛剛 野口法子
野口法子 宮倉英彰
宮倉英彰
メンバー名
高藤優輝 小野宏樹
小野宏樹 山入端立博
山入端立博
高藤優輝
テーマ選定理由
11 テーマ選定理由
X線撮影において、多くの画像情報を得るためにはよいポジショニングが重要であり、体位・X線入射
膝関節撮影は、若年から老年まで多様な疾患の患者さんが対象となり、整形外科領域の撮影では、腰椎
点・角度・カセッテ配置などの正確性が求められる。それらを達成させるためには患者さんの協力が不可
と並び件数の多い検査である。従来、膝関節撮影は前後方向・側方向の2方向が基本であったが、近年で
欠であるが、痛みなどの状態によって適正なポジショニングがとれないことがある。診療放射線科では、
は軸方向(スカイラインヴュー)を加えた3方向がルーチン化されている。その撮影は体位変換が多く、
平成 26 年 3 月に一般撮影装置・システムが、CR(Computed Radiography)から DR(Digital Radiography)
患者さんにとっては苦痛・負担の大きい検査となっている。
に更新された。それに併せ四肢骨・関節やストレッチャー撮影などで使用するカセッテも更新された。新
従来、膝関節撮影負担軽減の取組みとして、自家作製補助具「楽 Knee(膝)
」(以下「楽 Knee」
(資料写
真システムは従来と比較して、画質向上、被ばく低減、画像表示時間の短縮などの改善が図れた。しかし、
4)
)を使用し、側臥位になることが難しい患者さんには、クロステーブル側方向撮影を行ってきた。し
従来の CR カセッテは輝尽性発光プレートのケースの役割で B4 サイズ=約 1kg であったが、DR カセッテは
かし、この補助具は側方向用に考案・作製したものであるため、軸方向撮影には仕様が合わず、軸方向撮
FPD(Flat Panel Detector)を持ち、画像データを送信する回路も組み込まれているため、B4 サイズ=約
影は補助具なしの基準撮影法で行われている。撮影時は、痛みによる苦痛の中、屈曲座位でカセッテ保持
2kg と2倍の重量となった(資料写真 1)。
してもらわなければならず、かなり負担が大きい検査になっている。
膝関節軸方向撮影では患者さん自身にカセッテを支持していただくことになるが、その負担が大きくな
平成
26 年 3 月に一般撮影装置・システムが、CR(Computed Radiography)から DR(Digital Radiography)
った。実際に患者さんから『以前より重くなった』との意見が寄せられていた。また、重さのため支持し
に更新され、それに併ないカセッテも更新された(資料写真
3-a.b)
。新システムは従来と比較して、画質
ていただいたカセッテが安定せず、画像ブレや欠損が生じ、再撮影となるケースが増え、対策が必要とな
向上、被ばく低減、画像表示時間の短縮など大きく業務改善された。しかし一方では、膝関節軸方向撮影
っていた。
は、カセッテ重量が増したことにより、その負担がさらに大きくなった。実際に患者さんから『以前より
今回私たちは、下記に示す3つの観点から、膝関節撮影補助具の作製を試みた。
重くなった』
『こんなの持っていられない』などの意見が寄せられていた。痛みと重さのためカセッテが安
① 患者サービス向上「負担軽減」
定せず、画像ブレや欠損が生じ、再撮影となるケースが増加した。そのため担当する技師が検査室内に入
② 精度向上「正確性・再現性のある画像」
り、代わりにカセッテを保持して撮影することが多くなり、対策が必要となっていた。
③
業務改善「検査時間の短縮」
今回私たちは、
下記の2つの観点から、膝関節 3 方向撮影法の考案をした。
① 患者サービス向上「患者さんの痛みや負担軽減・安全性の向上」
2 業務改善「待ち時間の短縮・技師の被ばく防止」
現状と問題点
②
私たちは、膝関節の基本3方向撮影について患者サービス向上と精度向上を主に検討した。
2 膝関節3方向(正面像・側面像・軸位像)撮影について下記に示す。
現状と問題点
1)撮影用寝台に背臥位に寝て、あるいは座っていただく。
私たちは、膝関節の基本3方向撮影について、患者サービス向上と業務改善を主に検討した。
2)膝蓋骨が真上となるようにポジションをとり膝関節正面像の撮影を行う。
膝関節3方向(前後方向[正面]
・側方向[側面]・軸方向[スカイライン])撮影について下記に示す。
3)検側が下になるように側臥位ポジションをとり膝関節側面像の撮影を行う(資料写真 2-a)
。
1)撮影用寝台に背臥位に寝て、あるいは座っていただく。
4)背臥位に戻り、検側の膝関節を屈曲位のポジションをとり、X線管角度を膝蓋骨 大腿骨遠位端腔の角
2)膝蓋骨が真上となるようにポジションをとり膝関節正面像の撮影を行う。
度に合わせる。大腿骨中央部付近でX線管と平行となるようにカセッテを患者さん自身で保持していただ
3)検側が下に、非検側が重ならないように側臥位ポジションをとり、膝関節側面像の撮影を行う(資料写
2-b)。両側の場合は1) 4)を繰返すことになる。
真き軸位スカイライン像の撮影を行う(資料写真
1-a)
。
痛みが強い患者さんの場合、撮影時の負担は少なくない。特に膝関節軸方向撮影スカイラインポジション
4)背臥位に戻り、検側の膝関節を屈曲位のポジションをとり、X線管角度を膝蓋骨
大腿骨遠位端腔の角
では、患者さん自身がカセッテを保持して撮影が行われており以下の問題点がある。
度に合わせる。大腿骨中央部付近でX線管と平行となるようにカセッテを患者さん自身で保持していただ
き軸位スカイライン像の撮影を行う(資料写真 2-a)。両側の場合は1) 4)を繰返すことになる。
痛みが強い患者さんの場合、撮影時の負担は大きく、特に膝関節軸方向撮影スカイラインポジションでは、
患者さん自身がカセッテを保持して撮影を行うため、次のような問題点がある。
① 痛みのため、標準撮影法の体位がとれない。
② 痛みと重さのため、軸方向撮影ではカセッテ保持が不安定になり、正確なポジショニングがとれない場
合や落下の危険性がある。
側方向撮影では「楽 Knee」を使用し、側臥位をとることが難しい患者さんには、クロステーブル法で撮影
を行ってきた。しかし、軸方向撮影では、屈曲座位をとること自体難しい患者さんも少なくない。自身でカセ
ッテを保持させて無理に撮影を行った場合には、カセッテを落下させて患者さんが負傷してしまう可能性や、
DR カセッテ(定価:約 500 万円)が破損する可能性がある。そのようなリスクを排除するため、担当技師が
X線防護衣を着用した上でカセッテを保持して撮影を行うことが多くなった。このことにより、患者さんの負
傷とカセッテ破損の危険性は回避できるが、担当技師のカセッテを保持する手指は直接X線が照射され、無用
な被ばくが増大するという問題点が新たに出現する。
膝関節撮影は通常でも、他部位と比較して負担の大きいポジショニングが必要とされるため、撮影に要する
時間は長い。患者さんの症状や病態によっては、特殊撮影が追加されることも少なくなく、さらに所要時間は
長くなる傾向にある。検査時間が長くなることは待ち時間も延長することにつながり、患者サービスの低下を
招いてしまう。
3 活動内容と改善策
膝関節のポジショニングは、痛みへの配慮が過ぎると正確なポジショニングがとれず、診断情報の乏しい画
像となってしまう。この問題点を改善するため、患者さんをできるだけ動かさずに撮影する方法を検討した。
1)膝関節側方向撮影補助具「楽 Knee」の改良
「楽 Knee」は側方向クロステーブル撮影補助具として作製・利用してきたが、さらに効果的な利用を考
案し、改良型を作製した(資料写真 5-a.b.c)
。
① 膝を乗せる部分をスカイラインポジションの角度に調整した。
② カセッテを固定する溝が中央のみであったものを両サイドに設置し、インサイド・アウトサイド両
方向からの撮影を可能とした。
③ 発砲スチロールむき出しで徐々に崩れてしまう表面にビニールコーティングを施して耐久性・質感
および衛生面を高めた。
④ 木製の土台を設置し、安定性を高めた。
2)膝関節軸方向撮影スカイラインポジション補助具「ヘルプ Knee(膝)
」の作製
軸方向撮影において、患者さん自身あるいは担当技師がカセッテを保持しなくて済むように、補助具「ヘ
ルプ Knee(膝)
」(以下「ヘルプ Knee」)を考案し、作製した(資料写真 6-a.b)。
① 膝関節軸方向に適したX線入射角度に合わせるために、カセッテ支持台の土台部分に強化発砲スチロ
ールを加工し添付した。
② カセッテ支持部の長さが足りないため、銅板を加工し支持部を延ばした。カセッテ重量=約 2kg に耐
えられる構造となるように調整を行った。
③ カセッテ支持部の高さを「楽 Knee」に膝を乗せたときと一致するように調整して固定した。
3)「楽 Knee」と「ヘルプ knee」を組み合せ、背臥位のまま体位変換なく膝関節撮影ができる方法の検討
① 「楽 Knee」と「ヘルプ knee」を組み合わせて使用できるように、
「楽 Knee」の底面にヒール部分
を設置し、
「ヘルプ Knee」を填め込めるように工夫した(資料写真 7)。
② X線照射をしない、様々な体型の科内ボランティアによる模擬撮影を行い、「楽 Knee」と「ヘルプ
knee」の調整を行い、仰臥位のまま撮影できる方法を検討した。
なお、
「楽 Knee」と「ヘルプ knee」はすべて科内の廃品を利用しているため、作製にかかる材料費は0円
であった。
表1.
「ヘルプ Knee(膝)
」と市販品カセッテホルダーの比較表
補助具
ヘルプ Knee(膝)
市販品カセッテホルダー
今回
0 円
50,000 円
新規
材料費のみ
50,000 円
カセッテ支持部の長さ
38 cm
15 cm
カセッテ支持
支持部が長いため,多少カセッテが左右にずれ
た場合でも,しっかりと保持できる
支持部が短いため,カセッテを中央に配置し
ないと落下の危険性がある
側方向
「楽 Knee」と組み合わせることで撮影可能
可能
軸方向
可能(どのような体格でも使用可能)
一部のみ可能(かなり細い体格であれば使用
可能であるが,ほとんどの体格で使用不可)
汎用性
なし(膝関節軸方向撮影専用)
あり(膝関節以外の部位にも使用可能)
支柱
2本固定(安定性はよい)
1本フレキシブル(不安定な場合がある)
価格
膝関節撮影
4
結果と考察
「楽 Knee」と「ヘルプ knee」の2つの補助具を組み合わせた、膝関節3方向撮影方法を下記に示す。
1)撮影用寝台に背臥位に寝ていただく。
2)膝蓋骨が真上となるようにポジションをとり膝関節正面像の撮影を行う。
3)「楽 Knee」と「ヘルプ knee」を組み合わせる。組み合わせた補助具を検側の膝関節下に配置する。内
外旋がないように注意する。カセッテを「楽 Knee」に設置し、クロステーブル方法で膝関節側面像の撮
影を行う(資料写真 1-b)
。
4)X線管角度を膝蓋骨 大腿骨遠位端腔の角度に合わせ入射点を定める。カセッテを「ヘルプ knee」に設
置し、膝関節軸位像の撮影を行う(資料写真 2-b)
。
① 膝関節撮影補助具「楽 Knee」の改良による撮影の効率化
「楽 Knee」の改良により、クロステーブル側方向撮影はインサイド・アウトサイド両方向からのX線
照射が可能になった。また、膝を乗せる台の角度をスカイラインポジションに合うようになったため、
「楽 Knee」は側方向と軸方向撮影への使用が可能となった。
② 膝関節軸方向撮影補助具「ヘルプ Knee」による患者の負担軽減
「ヘルプ Knee」の使用により、患者さん自身が重いカセッテを保持する必要がなくなり、負担が軽
減した。
③
患者さんの保持では安定しないことがあったX線束とカセッテの角度の平行配置の精度が向上
④ 「楽 Knee」+「ヘルプ Knee」により、効率のよく楽な撮影が可能に
「楽 Knee」と「ヘルプ Knee」を組み合わせることによって、側方向・軸方向撮影を一連の流れで
負担なく撮影できるようになり、膝関節3方向撮影は、仰臥位に寝た姿勢ですべての撮影が可能とな
った。これにより、体位変換による苦痛軽減と撮影に要する時間が 7 分~8 分程度に短縮した。
⑤ 意思疎通が難しい患者さんや言葉の通じない外国人の患者さんの楽な撮影が可能に
仰臥位に寝ていていただくだけで3方向の撮影が可能となったことで、さまざまな言葉の通じない
患者さんの撮影が楽に行えるようになった。
5 効果と今後の課題
今回作製した「楽 Knee」「ヘルプ Knee」を使用した撮影法により
① 患者サービス向上
寝台に仰臥位で寝たまま体位変換をせずに、膝関節3方向撮影が可能になり、患者さんの負担を軽減す
ることができた。痛みを伴う患者さんに重いカセッテを保持してもらうことが無くなったため、落下の危
険性を排除することができ、安全性も向上した。患者さんからは『寝ているだけで楽だった』
『重いのを持
たずに助かった』との意見があった。
② 業務改善
体位変換がなくなったことによって撮影に要する時間が 15 分程度から 8 分程度に半減した。撮影時間の
短縮は待ち時間の短縮にもつながり、業務効率が向上した。また、担当技師が撮影室内に入ってカセッテ
を保持する必要がなくなり、無用な被ばくを無くすことができた。
今回の取り組みにより膝関節撮影に関するサービス向上および業務改善を図ることができた。
膝関節撮影では、立位の指示がある場合も少なくない。立位撮影では、患者さんの安定性を高めることが
より難しくなる.立位撮影に関する改善を今後の課題としたい。
他部位も含め、今後も撮影補助具の開発・改良と積極的な活用により、一層の患者サービス向上と業務改
善に努めていきたい。
資料1 標準的撮影法と「楽 Knee(膝)
」+「ヘルプ Knee(膝)
」使用撮影法
写真 1-a.膝関節側面撮影(右側)
写真 2-a.膝関節スカイライン撮影(右側)
写真 1-b.補助具使用クロステーブル側面撮影
写真 2-b.補助具使用スカイライン撮影
【標準的撮影法】
・ 側方向撮影では,検側を下にした側臥位となり,さらに両下肢を重ならないように体位をとる必要がある。
・ 軸方向撮影では,システム更新によりカセッテ重量が 2kg と重く,その保持は安定しないことがある。
【「楽 Knee(膝)
」+「ヘルプ Knee(膝)
」使用撮影法】
・ 体位変換やカセッテ保持をすることがなくなり,負担が軽減した。
・ 担当技師がカセッテを保持することがなくなり,無用な被ばくがなくなった。
・ 検査時間の短縮が図れ,待ち時間短縮にもつながった。
・ 仰臥位に寝ていただいているだけですべての撮影が行えるため,言葉が通じない外国人や意思疎通の難
しい患者さんに対しても,楽に膝関節3方向撮影が行えるようになった。
資料2 新旧カセッテ
写真 3-a.旧システム CR カセッテ(約 1kg)
写真 3-b.新システム DR カセッテ(約 2kg)
・DR カセッテはX線を電気信号に変換する回路などが組み込まれているため従来と比較して重量が倍増した。
資料2 膝関節撮影補助具「楽 Knee(膝)」開発型と改良型
写真 4.
「楽 Knee(膝)
」開発型
写真 5-b.
「楽 Knee(膝)
」正面像
写真 5-a.
「楽 Knee(膝)
」改良型
写真 5-c.
「楽 Knee(膝)
」側面像
・ ベースとなる発砲スチロールを硬質なタイプに変更し,ビニールコーティングした。
・ 膝を乗せる部分を軸位撮影に最適な角度に調整した。
・ カセッテ保持部を両サイドに設置し,両方向からの撮影を可能にした。
資料3 膝関節撮影補助具「ヘルプ Knee(膝)」
写真 6-a.
「ヘルプ Knee(膝)」正面像
写真 6-b.
「ヘルプ Knee(膝)」側面像
・ ホルダーを軸方向撮影時にカセッテを保持できるように銅板を加工して延長した。
・ 支柱を木材で補強し,ベースに重りを付けることで安定性を向上させた。
・ 硬質発泡スチロールを添付して,ベース部分の角度をスカイライン入射角度に一致するように調整した。
資料4 膝関節撮影補助具「楽 Knee」+「ヘルプ Knee」
写真 7.
「楽 Knee(膝)
」底面にヒール設置
写真 8.「楽 Knee(膝)
」+「ヘルプ Knee(膝)
」
・ 「楽 Knee(膝)
」の底面にヒールを設置し,
「ヘルプ Knee(膝)」と組み合わせて使用できるようした。