平成17年度ロケット設計作品例

第13回衛星設計コンテスト
参加者情報
(本ページは開示制限とします。
)
1.応募区分
:□設計の部
☑アイデアの部
2.作品情報・応募者情報
*作品名(漢字・かな・英数字合計20文字以内):
2010年宇宙の旅
*作品名
副題:(これは公式文書では省略する場合があります)
民間による宇宙旅行ビジネスモデルの提案
*代表者(正):臼田 武史
・氏名(フリガナ):ウスダ
タケシ
・所属(所属学校<大学>等、学部、学科、研究室、学年
:東京工業大学大学院 機械物理工学専攻 遠藤・高原研究室 修士1年
・電話:03-5734-2805 ・FAX:03-5734-2805 可能なら携帯電話:090-9765-5243
・E-mail:[email protected]
・郵便物郵送先
学校<大学> ・ 自宅
(↑あてはまるものに○をして下さい。大学宛の場合は学科まで記入のこと)
:〒152-8552
東京都目黒区大岡山 2-12-1 石川台1号館 3階 357号室
・審査結果の通知を上記以外で受信したい場合の通知先/手段/メールアドレス、等。
*代表者(副):正の方に連絡が取れない場合は代表者(副)の方に行います。
・氏名(フリガナ):
・所属(所属学校<大学>等、学部、学科、研究室、学年
:
・電話:
・FAX:
可能なら携帯電話:
・E-mail:
・郵便物郵送先
学校<大学> ・ 自宅
(↑あてはまるものに○をして下さい。大学宛の場合は学科まで記入のこと)
:〒
・審査結果の通知を上記以外で受信したい場合の通知先/手段/メールアドレス、等。
氏 名(フリガナ)
代表者(正) 臼田 武史(ウスダ タケシ)
代表者(副) 津留 太良(ツル タロウ)
メンバ1
メンバ2
メンバ3
メンバ4
大越
増成
藤原
前佛
直博(オオコシ ナオヒロ)
伸一(マスナリ シンイチ)
謙(フジワラ ケン)
信也(ゼンブツ シンヤ)
メンバ5
メンバ6
メンバ7
メンバ8
何 文奇()
桝本 晋嗣(マスモト シンジ)
南 那由多(ミナミ ナユタ)
Thomas Iljic()
所属学校<大学>等、学部、学科(研究室)
東京工業大学大学院 機械物理工学専攻
東京工業大学大学院 創造エネルギー専攻
学年
修士 1 年
〃
東京工業大学 機械宇宙学科
東京工業大学大学院 機械宇宙システム専攻
〃
〃
学部4年
修士 1 年
〃
〃
〃
〃
東京工業大学大学院 機械制御システム専攻
東京工業大学大学院 機械宇宙システム専攻
(注:「所属学校<大学>等」は代表者と同じ場合は省略可とします。
)
〃
〃
〃
〃
事務局使用欄
受付番号
2005年
第13回衛星設計コンテスト
月
日
ミッション概要説明書
1.応募区分
□設計の部
☑アイデアの部
2.作品情報・応募者情報
作品名(漢字・かな・英数字合計20文字以内)
2010年宇宙の旅
作品名
副題(これは公式文書では省略する場合があります)
民間による宇宙旅行ビジネスモデルの提案
氏 名(フリガナ)
代表者(正)臼田 武史(ウスダ タケシ)
代表者(副)津留 太良(ツル タロウ)
所属学校<大学>等、学部、学科(研究室)
東京工業大学大学院 機械物理工学専攻
東京工業大学大学院 創造エネルギー専攻
学年
修士 1 年
〃
メンバ1
メンバ2
メンバ3
メンバ4
大越
増成
藤原
前佛
東京工業大学 機械宇宙学科
東京工業大学大学院 機械宇宙システム専攻
〃
〃
学部4年
修士 1 年
〃
〃
メンバ5
メンバ6
メンバ7
何 文奇()
桝本 晋嗣(マスモト シンジ)
南 那由多(ミナミ ナユタ)
〃
〃
東京工業大学大学院 機械制御システム専攻
〃
〃
〃
メンバ8
Thomas Iljic()
東京工業大学大学院 機械宇宙システム専攻
〃
直博(オオコシ ナオヒロ)
伸一(マスナリ シンイチ)
謙(フジワラ ケン)
信也(ゼンブツ シンヤ)
3.ミッションの概要(プレスリリース等で使用するので、200 字程度でわかり易く表現して下さい。)
「2010 年宇宙の旅」は 2010 年の営業開始を目標として,飛行機により高空でロケットを打ち出すと
いう低コストな打上げシステムを実現し,民間による宇宙旅行ビジネスモデルを提案する.まずは,
搭乗員 5 名(乗員 2 名,乗客 3 名)を乗せたカプセルを ISS と同じ高度 400km の周回軌道に到達させる
ことからスタートし,今後拡大していくであろう宇宙旅行産業の先駆けとなるものである.
4.目的と意義(目的・重要性・技術的意義等)
(a)目的
民間による最初の有人弾道飛行を成功した SpaceShipOne に代表される様に,近年,ビジネスとして
の宇宙旅行の実現が近づきつつある.しかしながら,実際には,打上ロケットに求められる高信頼性や
ロケット自体の規模の大きさから,必要コストは国家レベルの大きさになり,採算が採れないのが現状
である.そこで,本ミッションでは,飛行機によって高空でロケットを打ち出す方式を採用し,高コス
トのロケット部を小型化,また,可能な限り再利用することによって,従来よりも低コストで軌道への
人員輸送システムを確立し,ビジネスとしての宇宙旅行を提案する.
(b)重要性・技術的意義等
1957 年に世界初の人工衛星スプートニクが打ち上げられてから現在まで,宇宙への輸送物資はます
ます増加し,輸送手段としてのロケットの需要も高まる一方である.しかしながら,政府予算の限界や
相次ぐ事故などにより,輸送手段が慢性的に足りていない状況にある.このなかで,民間による人員輸
送システムが実現されることは,この状況の打開につながるものであるし,さらに宇宙旅行ビジネスと
して成立させることは,技術だけでなく,経済的にも大きな役目を果たすと考えられる.
5.ミッションの方法
(a) 本ミッションで提案する宇宙旅行
・搭乗員5名(乗員2名,乗客3名)を乗せたカプセルを高度 400km の周回軌道にのせ,軌道を数周する
間,無重力の体感や地球の観察など,宇宙を体験してもらう.
(b)ミッションシーケンス
(1)飛行機内にロケットを格納し,高度 13km まで上昇
(2)ロケットを放出し,ロケット燃焼開始
(3)高度 400km の周回軌道に投入
(4)軌道を数周し,離脱,大気圏へ突入
(5)出発地点に着陸
(c)システム構成
(1)飛行機
エアバス社製ジャンボジェット機 A380(全長 73m,最大搭載量 150ton)を,ロケットの格納,放出がで
きる様に改造し使用する.
(2)ロケット
2段式とする.燃料を LOX/LH2 とし,1段目のエンジンは LE-7A,2段目のエンジンは LE-5B を使用
する.全長は約 40m,質量は 77ton
(3)帰還カプセル
搭乗員を安全に帰還させる役目を果たす.軌道離脱後,大気圏に突入し,空気抵抗により減速する.
その後,パラシュートを2段階に分けて展開し,十分減速させ,着地の瞬間に逆噴射ロケットを噴射す
ることで,軟着陸する.質量は 6ton
(4)機体回収システム
機体を再利用するために,1 段目と2段目を回収する.両方とも,地表付近でパラグライダーにより
滑空状態にし,ヘリコプターを用いて空中で捕獲する.その後静かに輸送船へ下し損傷や腐食を避ける.
(d)旅行プラン
(1)基本プラン ~地球7周の旅~ 料金(1人):\500,000,000
・地球を7周(約半日)周回することで,出発地点に上空に戻る.
スケジュール
L-30day
旅行申込み
必要書類提出
代金振込
L+20min ~ 0.5 day ~ R-10min
地球を観察
無重力を体感
宇宙食を味わう
写真,ビデオ撮影
地上の人と電話 etc.
L-7day
送迎
基礎的訓練開始
L-1day
出発前ガイダンス
L-30min
搭乗開始
L+0
離陸
L+20min
高度 400km 到着
ベルト解除
R-10min
ベルト装着
R +0
軌道離脱
R+10min
大気圏突入
R+1hr
出発地付近に着地
L+1day
健康診断
送迎
(2)結婚式プラン 料金:\2000,000,000
・新郎,新婦,牧師の3人を乗客とし,軌道上で結婚式を行う.その模様は地上へリアルタイムに送信
される.
6.社会的効果
(1)宇宙旅行産業への寄与
・世界初の民間宇宙旅行企業として,宇宙旅行の実現性を実証し,産業の拡大に貢献
(2)経済面
・数千億円規模の巨大事業であることによる新たな雇用の産出と関連産業の活性化
・日本の独自産業として,世界各国に提供
(3)技術面
・有人宇宙飛行技術の研究・開発によって,高信頼性技術の発展
・JAXA と技術協力関係を結び,日本の航空宇宙技術をより一層活発化
(4)日本国民への影響
・より手軽な宇宙旅行の可能性を示すことで,将来の宇宙旅行に対する希望を与える.
・若い世代の宇宙への興味,夢を喚起し,日本の未来を明るくする.
7.主張したい独創性
この宇宙旅行システムの特徴は,
『飛行機によりロケットを高空で打ち出す』という打上方式にある.
この方式自体は,以前から実行されてきた(SpaceShipOne など) 方式であるが,宇宙旅行というビジネ
スに採用したことで,ロケットを大幅に軽量,小型にできるのに加えて, 気象条件に影響されない安定
した打ち上げを実現できるというメリットがある.
さらにもう一つの特徴は,乗員を含まない機体の回収にヘリコプターを用いたことである.従来のパ
ラシュートによる洋上回収では着水時の衝撃で変形し,さらに海水に触れることで腐食が起きてしま
う.今回提案するシステムでは空中で打ち出すので既存のロケットより大幅に軽量で,ヘリコプターに
より空中でソフトに捕獲することができるようになった.それにより問題点を一挙に解決し,より複雑,
高価なエンジンの回収も可能とした.
8.具体的な実現方法(システムを打上げ,実験を行うことを想定)
,製作する範囲並びに費用
ロケットの開発費は全備質量が増す程高く,また使い切りのものよりも再利用型の方が高くなる傾向
にある.今回設計したロケットは,全備質量が H-II の約 1/3,エンジンは既存のものをそのまま利用す
るということを考慮すると,H-II ロケットの開発費(約 2700 億円)を参考にして,約 900 億円と見積も
ることができる.他には,ロケットを上空へ運ぶ飛行機の購入費用,管制局の整備費用が運用前に必要
になると考えられる.運用時には燃料,機体回収,整備などの費用が打ち上げの度に必要なる.1回に
3人,年間 50 回の打ち上げを想定すると,1人当たり 5 億円の料金を取れば 2 年で回収できる金額で
ある.
必要経費見積もり
ロケット開
燃料/ 機体回収/ 整備/
飛行機購入 管制局整備
計
発
回
回
回
コスト(億
900
100
5
0.5
2
1
1008.5
円)
9.開発・製造・打上スケジュール
開発・製造・打上スケジュール
2010 年の営業開始を目標とする.
以上
1.緒言
~宇宙旅行の歴史~
2001 年 4 月 28 日,アメリカの大富豪 デニス・チ
トー氏がロシアの宇宙船ソユーズに搭乗し,国際宇
宙ステーション(ISS)に2週間滞在した.
民間人の全
額負担(この時は 2000 万㌦)による世界初の宇宙旅
行である.翌年には,南アフリカの実業家であるマ
イク・シャトルワール氏も同じ宇宙旅行を体験した.
た所で,分離・発射される.高度 12km という高空か
らの発射により,大気の影響が小さく,ロケットが
比較的小型になるというメリットがある.また,巨
大な発射塔が不要であることや地上設備の規模を小
さくできるというのも利点である.
長期間の連続運用が可能な飛行機を0段目に用
いることで,ロケットを小型化し,同時に高信頼性
部品の使用量も減少させることにより,低コスト化
を実現したロケットといえる.
Fig.1-1 地上からのインタビューに応えるチトー氏
これらはいずれも,3人乗りのソユーズに1人便乗
するという形であったが,2004 年 10 月 4 日,アメ
リカの民間企業 Scaled Composites 社が開発した
SpaceShipOne が2度目の有人弾道宇宙飛行を成功
し,ANSARI X Prize の賞金 1000 万㌦を獲得した.
(ANSARI X Prize とは,民間による最初の有人弾道
宇宙飛行を競うコンテストで,賞金を獲得するには
3 人乗りの状態で,
2 週間以内に 2 回の飛行を成功さ
せなければならない.) 民間による商業宇宙旅行の
実現に大きく前進した瞬間であった.
Fig.1-3 Pegasus Rocket
Fig.1-4 飛行機に搭載される Pegasus Rocket
Fig.1-2 SpaceShipOne
~飛行機によるロケットの空中発射~
ロケットのコストを高くしている要因としては,
・生産数の少なさ・使い捨て
・高いリスクに対応して高信頼性部品の多用
・ロケットの大きさ
が挙げられる.アメリカ民間企業のオービタルサイ
エンシズ社は,衛星打ち上げ用ロケットとして
Pegasus Rocketを開発し,
1990年の初打ち上げ以来,
数十機の衛星を打ち上げている.このロケットは,
飛行機の翼下に搭載され,
高度 12km 前後まで上昇し
~本ミッションの目的・重要性~
本ミッションでは,有人ロケットを飛行機によっ
て高空で打ち出すことにより,人員輸送システムの
低コスト化を実現し,民間による商業宇宙旅行のビ
ジネスモデルを提案することを目的とする.
民間による商業宇宙旅行の実現は,広い分野に渡
って,新しいニーズと可能性をもたらすと予想され
る.年間数百億という巨大事業の誕生は,新たな雇
用を生み,関連産業を活性化させ,大きな経済効果
を与えるだろう.また,宇宙産業への民間の参入は
JAXA との協力のもと,宇宙研究・開発を活発化させ
ると期待される.また,これら技術面・経済面の利
益とは別に,宇宙旅行はそもそも,人々の宇宙への
夢・希望を湧き立たせるものであり,その実現は社
会を明るくするであろう.
2.ミッション概要
搭乗員を5名(乗員2名,乗客3名)とし,5名を
乗せたカプセルを国際宇宙ステーションの高度と同
じ 400km の周回軌道に投入し,軌道を数周した後,
安全に出発地点に帰還させることを目的とする.
(c)軌道離脱,大気圏突入
・2段目エンジンを逆噴射し,軌道を離脱
・カプセルと2段目を分離
・大気圏へ突入,減速
2.1 ミッションシーケンス
(a)飛行機で離陸,ロケット放出,1段エンジン燃焼
・ロケットを飛行機の機体内に格納し,離陸・
上昇する.
・高度 13km 地点まで到達して,巡航速度 M(マッ
ハ)0.8 で飛行しながら,後部ハッチよりロケッ
ト放出.
・ロケットの1段エンジン燃焼開始.
Fig.2-3 軌道離脱,大気圏突入
(d)帰還,2段目回収
~帰還カプセル~
・ 高度 10km において減速用パラシュートを開
傘し,減速
2
・ 高度 5km において 1000(m)の大パラシュート
を開傘し,さらに減速
・ 着地直前に小型ロケットで逆噴射し,軟着陸
Fig.2-1 飛行機で離陸,ロケット放出
(b)軌道投入,1段目回収
・ 高度 200km において1・2段目分離.
・ 2段エンジン燃焼し,高度 400km に到達
・ 1段目は空気抵抗により減速し降下.
・ 高度 10km において減速用パラシュートでさ
らに減速
・ 高度 5km においてパラグライダー開傘,滑空
状態へ
・ ヘリコプターにより捕獲,そのまま輸送船へ
Fig.2-4 帰還,2段目回収
~2段目回収~
・ 高度 10km において減速用パラシュートを開
傘し,減速
・ 高度 5km においてパラグライダー開傘,滑空
状態へ
・ ヘリコプターにより捕獲,そのまま輸送船へ
Fig.2-2 軌道投入,1段目回収
2.2 ロケットの設計
2.2.1 エンジンの選定
エンジンの決定には,既存のエンジンの中から選
定を行った.そのエンジンの選定は,ロケットのサ
イジング,全備質量,必要増速量など,さまざまな
要素を用いて決定することができる.その中でも今
回は,商業有人宇宙旅行をすることが目的であるた
め低コストに抑える必要がある.そのため,燃費の
バロメータである比推力が大きなものを用いること
にした.その結果,使用燃料を 1 段目,2 段目とも
液体水素/液体酸素を用いた.この燃料は液体であ
るため,タンクの中での蒸発量を考慮しなければな
らないが,それも計算した結果,燃焼時間に生じる
蒸発量は全燃料に対してほとんど無視できる程度で
あった.計算結果については推進剤の蒸発量で述べ
ることにする.
Table.2-1
1 段目
エンジン名
LE-7A
使用燃料
LOX/LH2
推力(VAC)
1097.6[kN]
比推力
422[s]
排気速度
4132.1[m/s]
質量
1.8[ton]
直径×長さ
2.5[m]×3.4[m]
使用ロケット
H-ⅡA 1 段目
Table.2-2
2 段目
エンジン名
使用燃料
推力(VAC)
比推力
排気速度
質量
直径×長さ
使用ロケット
Fig.2-5 LE-7A
LE-5B
LOX/LH2
137.2[kN]
447[s]
4380.6[m/s]
0.291[ton]
1.6[m]×2.6[m]
H-ⅡA 2 段目
抗や重力による速度損失、および初速度を考慮して
もとめる.
速度増分を計算する上で,高空で飛行機によりロ
ケットを打ち出すことの利点は二つある.一つ目は,
大気密度が地上の 16 %と大幅に薄く,空気抵抗によ
る速度損失を大幅に減らすことができること.二つ
目は,M0.85 という大きな初速度を得られること.
地上から打ち上げた場合, 9.6 km/s 程度必要であ
るが、上記の利点 1 項目につきおよそ 1 km/s,利点
2項目で合計2 km/s程削減できるという計算になる.
そのため飛行機により打ち出す時に必要な増速量は
7.57 km/s となった.
2.2.3 ロケットのサイジング
構成は 2 段式ロケットとし,
必要増速量 7.57 km/s
が得られるようにサイジングを行った.
まず,1 段目,2 段目の構造比と質量比の関係から,
全体質量が一番小さくなる組み合わせを計算で求め
た.ただし,このときに実現可能な構造比であるか,
最大加速度が有人ミッションにおける許容加速度 3
G 以下である組み合わせかという2点を考慮した.
その結果,
ロケットの質量構成は Fig.2-9 に示すと
おりになり,その全体質量は 77 ton となった.
・まとめ
既存のロケットに用いられている地上打ち上げ方
式では,衛星を軌道に投入するためには 9.6 km/s
程度の速度が必要である.そのために H-ⅡA ロケッ
トでは 117 ton もの液体推進剤(+16 ton の機体質
量)が必要となっている上,その巨体を持ち上げる
ために,1 本 76 ton もの重い固体ロケットブースタ
ーを 2 本(152 ton)も用いなければならない.他の多
くのロケットも同様におおよそ 300 ton 弱~500 ton
程度の規模である.
今回提案する飛行機により打ち出す方式では次項
で述べるとおり 7.57 km/s 程度の増速量で軌道に投
入できる。このわずか 2 km/s の削減により、必要な
液体推進剤は117 tonから60 ton弱まで削減できた。
そのため,ブースターを使う必要もなく,全備質量
が 77 ton(ペイロードも含む)と既存のロケット質
量に比べ約 1/3 まで大幅に減らすことができた.
さらに,大幅な小型化により回収や補修も容易に
なり,コストも削減でき繰り返し使用が十分可能で
ある.
Fig.2-6 LE-5B
2.2.2 必要増速量の見積もり
必要な増速量はホーマン型軌道移行を仮定して求
めた速度増分に,地球の自転による周速度,空気抵
2.2.4 推進剤タンク
推進剤タンクの構造設計はロケットの加速度最大
のときを圧縮加重最大として,強度検討を行った.
すなわち各段エンジンの燃焼終了直前時点の圧縮荷
重を制限加重にして,
それに安全率 1.50 をかけたも
のを許容応力としてタンクのサイズ,構造を決定し
た.1,2 段共タンク材質は軽量で,タンクの材質と
して一般的な Al-Cu 合金の 2219 を使用,
構造はワッ
フル構造にして軽量かつ強度を持たせた.
(補強材
も 2219 を使用)なお,タンク外観は半球ドーム,円
筒タンクを組み合わせた(共に半径 1.5 m)薄肉タ
ンクである.Fig.2-7,Table.2-3 にタンクの構造,
サイズ等を示す.
Fig.2-8 フェアリング概観
以上の結果から,ロケットのサイズと質量構成が
Fig.2-9 の様にまとめられる.
Fig.2-7 推進剤タンク
Table.2-3
推進剤タンク(1段目)
直径
板厚
補強材間隔 b
円筒長さ
質量
座屈応力
3 m
3 mm
300 mm
15.7 m
1.22 ton
49.3 MPa
推進剤タンク(2 段目)
直径
板厚
補強材間隔 b
円筒長さ
質量
座屈応力
3 m
0.7 mm
300 mm
7.75 m
0.30 ton
41.6 MPa
2.2.5 フェアリングの設計
大気中上昇時に空気流や空力加熱からペイロード
を保護するために,フェアリングを装着させる.こ
のフェアリングは大気層を通り抜けた後,廃棄する
ための分割・分離装置を有している.軽量を
主として考え,材質は Al-Cu 合金 2219(厚さ 3mm)で
ある.構造は左右2つの部分に分割してつくられ,
クラムシェル開頭方式を採用.また,空力加熱を考
慮してフェアリング表面全体には,使用温度域 649
~1260℃の高温用シリカタイル HRSI(8.02kg/m2)を
コーティングし熱対策を行う.
(フェアリング総質
量 455.6 kg(2219: 454.33 kg,HRSI:1.28 kg))
Fig.2-8 にフェアリング概観を示す.
Fig.2-9 ロケットサイズ(メートル)&質量(ton)
2.3 飛行機の設計
飛行機からロケットを打ち出すことを考えた場合,
その飛行機に要求されることは,まず積載能力であ
る.現在,世界最大のジェット機は 2006 年就航予定
のエアバス社(仏)の A380 である.A380 は全長 73 m
×直径 7.14 m,最大ペイロード 150 ton であり,今
回設計したロケットのサイズおよび総質量が 39.35
m×直径 3 m,77.01 tons を打ち出すのに適当な機体
であると考えられる.
具体的に,ロケットを A380 で打ち上げる場合,離
陸時にロケットをその機内に格納し,高度 13 km で
A380 機体後部のハッチを開きロケットを打ち出す.
したがって,A380 の機体に対して内部にロケット格
納スペースを設け,打ち出しをスムーズに行える機
構を加える必要がある.飛行機の離陸地点は,ロケ
ットの打ち上げ,製造,メンテナンス,輸送等のコ
ストを考えた場合,赤道付近かつ宇宙基地に近い場
所が適当であるので,ブラジルのアルカンタラ、も
しくはパプアニューギニアのバイアク島付近から離
陸するのが有利である.また,打ち出し後のロケッ
トのテレメトリーデーターの中継を打ち出した飛行
機が担うこともできる。飛行機に関するデータを
Table.2-4 にまとめる.ロケットに使用するエンジ
ンは 1,2 段共に LOX/LH2 であるので,ロケット打ち
上げまでの燃料の蒸発も考慮した.
Table.2-4
離陸地点:赤道上
(アルカンタラ,
バイアク島付近)
経路角 7 度 迎角 3 度
離陸時推力 :
343×4 [kN](エンジン GP7277(4 機))
上昇定常飛行推力
191×4 [kN]
高度 13100m 到達時間 557 [s] (M=0.85)
飛行機燃料 9.05 ton(SFC 0.557 [lb/lb/hr])
ロケット燃料蒸発量 0.17 [ton](556 s)
2.4 カプセルの地上着陸
カプセルの帰還着陸方法はパラシュートと滑空に
よるものが主であるが,帰還機体を有翼にすると打
ち上げ飛行時に抵抗となり翼の強度等の問題があり
不利である.したがって,カプセルの着陸方法は比
較的単純なパラシュートを用い以下の手順で行う.
なお,着地ポイントは輸送等のコストを考え離陸し
た時と同じ飛行場を想定している.高度 10 km で,
パラシュートの展開が始まる.2つのパイロットパ
ラシュートが展開.
降下速度が~80 m/s 程度に減速。
続いてドラッグシュートが切り離される.そして,
メインシュートが(1000 m2)が展開.パラシュー
トの終端速度の計算より,速度が更に 7.4 m/s へ減
速.
地上 2m 程度で逆噴射ロケットにより軟着陸を行
う.カプセルの動き,場所は常にモニターされ着陸
後速やかに回収される.以下にメインパラシュート
の終端速度の計算を示す.
v=
2Mg
CρA
M = 7000[kg], C[−]× ρ = 2.48[kg / m3 ]
A = 1000[m2 ]* C ≈ 6.2 − 2.1, ρ ≈ 0.4 −1.2[kg / m3 ]
2.4 帰還カプセルの設計
カプセルの設計にあたって再突入時の空力加熱の
問題を考慮した上,軽量かつ耐熱性に優れ再使用可
能なカプセルの構造を検討した.カプセルの大気圏
突入速度はおよそ,マッハ数 M~25 に相当するので
超音速流下で空力加熱を受ける.帰還カプセルはソ
ユーズ(ロシア製)型カプセルを参考にし,日本で
開発中の HOPE-X の大気圏再突入軌道に沿った曲率
半径 1 m 換算の壁面の放射平衡温度 Twe を参考に Tw
∝(曲率半径)-1/8 の関係からカプセルの許容温度を
求めた.なお,HOPE-X の最高放射平衡温度 Twe は高
度 80-60 kmの 1500 K であるので,それを採用し
た.
T w = 1500 × (
r0
r0 HOPE
) −1 / 8 = 1380 [ K ]
r0 = 3[ m ], r0 HOPE = 1[ m ]
以上の計算から,帰還カプセルのサイズと耐熱剤
等の検討を行った.カプセルの主構造剤は Al-Cu 合
金の 2219 を使用し,
カプセル底部のキャップ部分に
は再使用可能な耐熱断熱材で使用温度域 1260~
1593℃の RCC(C/C 複合材)を,
それ以外の胴部等は使
用温度域 1260~1593℃の HRSI(高温用シリカタイ
ル)を使い分け,Al 合金材の温度が強度上の許容温
度約 150℃以下になるように熱絶縁する.カプセル
のサイジングの概要を Fig.2-10 に示す.
Fig.2-10 カプセルのサイジング
2.5 1段目の回収
1 段目を回収し,再使用すれば高価なエンジン等
を新たに購入、または製造する必要がなく経済的で
ある.しかし,パラシュートのみの回収では着地時
の衝撃が無視できず再使用することが厳しくなる.
そこで,着地時の衝撃をなくすために1段目を空中
にて回収することを考えた.1段目の回収方法とし
て軽量でコンパクトなパラグライダーを用い,適度
な速度での滑空時に 1 段目を追跡するヘリにて回収
する.具体的に,1 段目切り離し後,高度 10 km で 1
段目に搭載した補助パラシュート展開.速度減速.
高度 5 km でパラグライダー展開.回収時の1段目の
飛行速度を以下の計算より求める.
wmin =
4
3πAR
2W
≅ 0.76U(L/D)max
ρC L ,Wmin S
ρ = 0.8[kg / m 3 ],W = 9920 × 9.8[ N ]
C L ,Wmin = 1.0, S = 30[m 2 ], AR = 6.0[−], L / D = 10
wmin = 6.36[m / s ] ,
U(L/D)max = 8.38[m / s ]
上記の,沈下速度 w,水平飛行速度 U の飛翔体をヘ
リにて回収.
2.6 緊急脱出方法
旅行者の安全確保のために緊急脱出方法は重要で
あるが,現在,宇宙飛行において緊急時の脱出は成
功しているとは言えない.今回,脱出方法として
RRSS 社〈ドイツ〉の IRDT(innovative inflatable
Re-entry and Descent Technology)を参考に新しい
脱出方法を検討した.緊急時に窒素等タンクのガス
を使用し,カプセルと 2 段目を切り離す.高度 10 km
でもしパラシュートが開かない場合,帰還用カプセ
ル搭載の膨張式の機体モジュール(IRDT 参考)でカ
プセルより脱出.この緊急時用のモジュールはタフ
で柔軟なポリマー製で軽量化(130 kg 程度)をはか
り,エアバック式にパウダーから窒素ガスを精製し
膨張する.また,機体表面に耐熱コーティングを施
せば,再突入も可能である.したがって,このモジ
ュールを用いれば,周回軌道航行時の緊急脱出等へ
の応用もはかれ有用な緊急脱出手段であると考えら
れる.
3.1 コスト
ロケットの開発費は全備質量が増す程高く,また
使い切りのものよりも再利用型の方が高くなる傾向
にある.今回設計したロケットは,全備質量が H-II
の約 1/3,エンジンは既存のものをそのまま利用す
るということを考慮すると,H-II ロケットの開発費
(約 2700 億円)を参考にして,
約 900 億円と見積もる
ことができる.他には,ロケットを上空へ運ぶ飛行
機の購入費用,管制局の整備費用が運用前に必要に
なると考えられる.運用時には燃料,機体回収,整
備などの費用が打ち上げの度に必要なる.1回に3
人,年間 50 回の打ち上げを想定すると,1人当たり
5 億円の料金を取れば 2 年で回収できる金額である.
Table.3-1 必要経費見積もり
コスト(億円)
ロケット開発
900
飛行機購入
100
管制局整備
5
燃料/回
0.5
機体回収/回
2
整備/回
1
計
1008.5
3.2 提供サービス
我々の提供できるサービスについてまとめる.基本
的には生命維持装置,放射線対策,デブリ対策の簡
略化のため長時間滞在はしない.基本プランのスケ
ジュールを Table.3-2 に示す.
Table.3-2
L(Launch)-30day
L-7day
L-1day
L-30min
L+0
L+20min
L+20min ~ 0.5 day ~
R(Reentry)-10min
R-10min
R +0
Fig.2-11 緊急脱出用モジュール
旅行申込み
代金振込
送迎
出発前ガイダンス
搭乗開始
離陸
高度 400km 到着
必要書類提出
基礎的訓練開始
ベルト解除
地球を観察
無重力を体感
宇宙食を味わう
写真,ビデオ撮影
地上の人と電話 etc.
ベルト装着
軌道離脱
R+10min
大気圏突入
R+1hr
出発地付近に着地
L+1day
健康診断
送迎
その他にも以下のサービスも提供可能である.
・宇宙結婚式
新郎と新婦と神父の 3 人で宇宙空間での結婚式.
・素材提供
素材としての宇宙画像や映像などの提供や,映
画の撮影等々.
・衛星の軌道投入
低軌道への衛星投入.
3.3 開発・製造・打上・運用スケジュール
2010 年,第一号機打ち上げ,営業開始を目標とすると,開発・製造スケジュールは Table.3-3 の様に
なる.
Table.3-3 開発・製造スケジュール
また,将来的には1機について1週間に1回の打ち上げ頻度で運用を行う.また,2012 年には,2 号
機ロケットを製造し,2機あわせて3日に1回の打ち上げ頻度で運用を行う.さらに,2015 年末までに,
高度 400km に宇宙ホテルを建設し,宇宙での長期滞在,旅行サービスの向上を目指す.
Table.3-4 打ち上げ・運用スケジュール・開発計画
4. 結言
本稿では,民間による商業有人宇宙旅行のビジネスモデルを提案した.ロケットを打ち上げるのに,
飛行機を用いて高空で打ち出す方式を採用することで,低コスト化が可能であることを確認し,実際に
5 名の搭乗員で商業宇宙旅行を行うことは,技術的にもコスト的にも実現し得ることを示した.このミ
ッションが実現すれば,将来巨大な市場になると予想される有人宇宙旅行産業の先駆けとなり,技術的
にも経済的にも大きな効果を与えると考えられる.
参考文献
[1]A380 :http://www.airbus.com/
[2]GP7277:http://www.enginealliance.com/
[3]Soyuz:http://www.russianspaceweb.com/soyuz.htm
[4]RRSS 社:http://www.2r2s.com/
[5]ロケット工学 松尾弘毅 監修 (コロナ社)
[6]宇宙工学概論 小林繁夫 著 (丸善株式会社)
[7]応用空気力学 相原康彦 著 東京大学出版会)
[8]ロケット工学基礎講義 富田信之 (コロナ社)
[9]航空工学Ⅲ 東 昭 著 (裳華房)