平成 14 年度 - NPO法人HANDS(ハンズ)

外務省委託調査
平成 14 年度
HIV/AIDS 予防ケアの基礎となる VCT 活動の
アフリカにおける現状調査と今後の我が国の支援に関する提言
2003 年 3 月
特定非営利活動法人
Health and Development Service (HANDS)
はしがき
本報告書は、平成 14 年度に外務省より委託を受け、我が国のアフリカにおける HIV/AIDS 対策支
援強化の一環として、HIV/AIDS 対策の中でも最も重要な介入のひとつである VCT(Voluntary
Counseling and Testing:自発的なカウンセリングと検査)サービス支援に関する基礎資料の整備
と、我が国の支援戦略の方向性を提言する目的で、特定非営利活動法人 HANDS が財団法人ジョイセ
フ(家族計画国際協力財団)の協力を得て実施した調査結果を取りまとめたものである。
近年、アフリカにおける HIV/AIDS 問題はその深刻さを増しており、国や地域の経済、社会、政
治など多方面に大きな影響を及ぼしている。このように拡大する問題への対策も、従来 HIV/AIDS
対策の中心であった HIV 感染予防のための啓発活動に加え、感染者やその家族及びコミュニティに
対するケアと支援、さらにはエイズ遺児やその支援を行うコミュニティに対する社会的、精神的、
経済的な支援など、多様かつ複雑なニーズに応えることが求められている。VCT サービスは、この
ように多様化する HIV/AIDS に関連する人々のニーズと、それらに対応すべく提供されるサービス
を有機的かつ効果的に結ぶ要として期待されている。
このような観点に立ち、本調査では VCT サービスを HIV/AIDS 対策という、より大きな枠組みの
中で分析することを心がけた。また、HIV/AIDS という緊急の課題に機動的に対処するために、既存
の援助スキームをどのように活用することができるか、現実的な視点で具体的な提言を示した。本
報告書が、今後我が国のアフリカにおける HIV/AIDS 対策支援のなかで VCT サービス強化を包括的
に理解し、効果的な支援を提供することに寄与することを願っている。
多様化する HIV/AIDS に関連するニーズに効果的に対応するには、当該政府の関連省庁、援助機
関、現地及び国際 NGO、コミュニティ組織、民間セクターなど、社会のすべての構成員が役割を果
たすことが求められる。我が国のアフリカにおける HIV/AIDS 対策支援もこの点を重視し、現地及
び本邦 NGO を通じた支援を強化する方針をすでに表明している。このような要請と期待を受けて、
本調査は GII/IDI(「地球規模問題イニシアティブ」および「沖縄感染症対策イニシアティブ」)に
関連する NGO 諸団体の多大な協力を得て実施された。この他にも、本調査の実施にあたっては、調
査対象国の在外大使館、JICA 本部及び調査対象国 JICA 事務所、また現地調査対象国の NGO、政府
関係者、国連機関、二国間援助機関など国内外の多くの関係者、及び HIV/AIDS 対策関係者の皆様
より多大なご協力をいただいた。ここに、深く御礼申し上る次第である。
最後に、本報告書は当 NPO 法人の責任において取りまとめたものであり、日本政府あるいは外務
省の見解や政策を反映するものではないことを付記する。
2003 年 3 月
特定非営利活動法人 HANDS
(Health and Development Service)
事務局長 藤崎
智子
アフリカ調査調査対象国
ガーナ
ウガンダ
ケニア
タンザニア
ザンビア
南アフリカ
ザンビア: NEW START プログラムのVCTセンター
(街のスーパーマーケットに隣接している)
ウガンダ: NGOによるVCTセンター
(エイズ・インフォーメーション・センター)
ウガンダ: VCTセンター
カウンセリング・ルームの様子
南アフリカ: NGOによるVCTセンター
データマネージメント室の様子
南アフリカ: NGOのVCT活動支援青少年スタッフ
(オアシス・ローバー・クリュー・プロジェクト)
ガーナ: HIV検査の品質チェック
(国立公衆衛生リファレンスラボ)
外務省委託調査
HIV/AIDS 予防ケアの基礎となる VCT 活動の
アフリカにおける現状調査と今後の我が国の支援に関する提言
要
約
1章. 調査の概要
サハラ以南アフリカ(以下、断りのない場合には「アフリカ」はサハラ以南のアフリカを指す)
における HIV/AIDS の問題は、いぜん非常に厳しい状況にある。2002 年 12 月現在、世界ではおよ
そ 4,200 万人が HIV/AIDS に感染、もしくは発病しており、その 70%にあたる 2,940 万人がアフリ
カ地域に居住している。このような HIV/AIDS 問題による状況を改善するために、世界中の保健医
療関係者のみならず様々な分野の人々が、より効果的な HIV/AIDS 対策を実施すべく、日々努力を
重ねている。この度、本調査で取り上げた「Voluntary Counseling and Testing (以下、「VCT」
と標記する)」は、そのような長年にわたる HIV/AIDS 対策の努力の中から生まれた活動の一つで
ある。
VCT 活動とは、「十分な情報に基づく個人の自主的な決断による HIV 検査の実施を中核とし、その
前後にカウンセリングを統合することによって、人々が HIV/AIDS に関わる予防とケアのために必
要で、適切なサービスを享受することを支援する活動」と言える。本調査は、特に HIV/AIDS の問
題が深刻なアフリカ地域における VCT 活動に関する情報を収集・整理・分析し、我が国の ODA に
よるアフリカにおける HIV/AIDS 対策に対する支援戦略の効果的な実施に寄与することを目的とし
て、2002 年 12 月から 2003 年 3 月にわたって実施された。HIV の感染率が高いアフリカ地域のう
ち、VCT に関わる活動がある程度実施されて情報収集が可能な 6 カ国(ウガンダ、ガーナ、南アフ
リカ、ザンビア、ケニア、タンザニア)を調査対象国とし、関係者インタビュー、2 次資料調査、
観察調査によりデータを収集した。
2章. サハラ以南のアフリカにおける HIV/AIDS 対策の概観
本調査の中心テーマである VCT 活動は重要な役割を果たすとはいえ、HIV/AIDS 対策全体から見れ
ばその一部分を構成するにすぎない。VCT 活動を考える上で HIV/AIDS 対策の概要を理解すること
が非常に重要となる。
(1)
アフリカ地域 HIV 感染の特徴
アフリカ地域における HIV/AIDS 感染拡大の特徴として、以下のような共通性があげられる。
•
•
•
•
異性間性交渉が主な感染経路である
女性、特に 15 歳から 24 歳までの若い女性と中高年男性における感染率が高い
若者における感染率が高く、新たな感染者の増加も他の年齢層に比較して急速に進んでいる
「モーバイルグループ(Mobile Group)」と呼ばれる単身長距離移動者における感染率が高い
i
•
•
(2)
貧困層における HIV 感染が比較的高い
紛争・内戦地域での感染率が比較的高い
HIV/AIDS 対策の枠組み
現在、HIV/AIDS 問題に対する国際的な取り組みの戦略的な中核は、2001 年 6 月に開かれた HIV/AIDS
に関する国連特別総会において採択された”Declaration of Commitment on HIV/AIDS” である。
日本を含む世界各国の政府が、HIV/AIDS 対策に関して、歴史上初めて時間的枠組みを伴う目標を
定めたこの宣言を採択したことの重要性はきわめて高い。こうした国際的な経済・政治会議にお
いて HIV/AIDS が議題として取り上げられる状況は、世界的な規模で HIV/AIDS 問題の深刻な影響
が広範囲に及び、国際社会が「HIV/AIDS は保健医療を超えた開発、特に人間の安全保障(Human
Security)に関わる課題である」という明確な認識を共有していることを反映している。
WHO や UNAIDS は HIV/AIDS 対策を次の3つの分野に分類し、各分野について具体的な戦略及び活動
を計画、実施している。
•
•
•
(3)
HIV 感染予防 (Prevention)
HIV 感染者、AIDS 患者へのケア、サポート(Care and Support)の提供
HIV 感染者及び AIDS 患者を取り巻く、家族、遺児、コミュニティ、さらにケアやカウンセ
リングを実際に提供する人々の負担の緩和 (Mitigation)
アフリカ地域における HIV/AIDS 対策の成功要因
アフリカにおける様々な経験を通じて、HIV/AIDS 対策の成功に必要な要因として一般的に認識さ
れているものには以下のような条件がある。
•
•
•
•
•
安全かつ責任ある性行動の促進(例:コンドーム使用の増加、性行動開始時期の遅延、一人
あたりの性的パートナーの減少、HIV を含む性感染症の検査・治療を受ける人の増加)
高いレベルの政治的支援(大統領などによる HIV/AIDS 対策への強い支持の表明など)
マルチセクター・アプローチによる官民、分野を越えた包括的な HIV/AIDS 対策の実施
PLWHA(HIV/AIDS と共に生きる人々)自身の対策活動への実質的参加とオーナーシップ
ジェンダー及び貧困問題対策と連動した HIV/AIDS 対策
3章. VCT プログラムの運営
(1)
VCT とは
UNAIDS による VCT の定義は、「Voluntary Counseling and Testing とは、当事者(個人、もしく
はカップル)がカウンセリングを通じて、HIV 抗体検査を受けるか否かに関する正確な情報に基づ
いて、自主的に判断できることを支援するプロセスである」となっている。従来の HIV 検査と VCT
サービスの違いは、VCT においては、HIV 検査、HIV 検査結果の読み取り、検査結果の告知という
これまでの一連の検査の過程にカウンセリングが加わり、それら全体を1つのプロセスとしてと
らえられる点である。なお、一般的な VCT サービスの中核となる活動は以下のとおりである。詳
しくは本文 p.3-2、図 3-1 を参照されたい。
•
•
•
HIV 検査前カウンセリング
HIV 検査
HIV 検査結果の読み取り
ii
•
•
•
検査結果告知前カウンセリング
HIV 検査結果の告知
HIV 検査後カウンセリング
VCT サービスは、人々が HIV に感染しているかを知るための手段であるというだけでなく、サービ
スを利用した人々が感染していない場合は、引き続き感染を予防するための行動を促進する一方
で、感染が判明した場合は、感染者が必要なケアや支援活動にアクセスすることを支援するなど、
人々と HIV/AIDS に関する一連のプログラムを結ぶ入り口として期待されている。VCT 戦略導入の
背景には、過去に HIV 検査を受ける個人のプライバシーや人権が無視される事例が多く存在した
と同時に、検査後の照会やフォローアップが不足していたために、検査が人々の HIV 感染防止や、
必要なケアと支援を受けることに十分に結びつかなかったという反省がある。また、10∼30 分と
いう短時間で HIV 検査結果が判明する簡易迅速検査法の普及が、VCT サービスへのニーズに対応で
きるようになったことも、近年 VCT が注目されている要因である。
(2)
VCT サービス提供の留意点
VCT サービスを計画する際、その地域において誰が主な利用者のグループ(例えば、若者、学生、
勤労者、妊産婦、農村居住者、性産業従事者、性暴力被害者、国内避難民、難民、トラックドラ
イバーなど)となるかを十分に検討し、それぞれの生活スタイルとニーズを十分に把握した上で、
それに対応する実施方法(例えば、VCT サービスの料金、VCT サイトの場所、VCT サービスの提供
日と時間帯)を設定することが重要である。
VCT サービスを提供する拠点(VCT サイト)は、利用者にとって便利な場所にあることが望ましい。
また、効果的な VCT を実施するためには、スタッフ、スペースとその管理において、必要最低限
の条件を満たしていなくてはならない。人々が VCT サービスを正しく理解したうえで HIV 検査を
受けるためには、まず HIV/AIDS と感染予防の方法、および HIV 検査についての基礎知識を得る必
要がある。守秘義務やインフォームド・コンセント、他の関連する疾病と HIV/AIDS の関係につい
ても、この第一段階で情報提供がなされなくてはならない。利用者が第一段階の情報セッション
の後、HIV 検査に関心を示した場合には、個人別による検査前カウンセリングへと進む。カウンセ
ラーは利用者が HIV 検査を希望する動機を理解した上で、どのように検査が行われるかなど HIV
検査の技術的側面についての説明と、HIV 感染陽性、又は陰性の結果が出た場合の様々な影響につ
いて説明する。HIV 検査では、カウンセリング、検査、そして結果の開示が同じ日に可能であるよ
う、基本的に HIV 簡易迅速検査法が奨励される。
VCT サービスを提供するために、最低限必要とされる施設やリソースは次の通りである:VCT サー
ビスを提供する拠点、HIV 抗体検査室、カウンセラー、HIV 検査技師、VCT に直接かかわる保健医
療機材、その他の保健医療機材、その他の備品である。VCT プログラム・マネジャーが、VCT サー
ビスに関する十分な知識を持っていることは、前提条件として必須であることは言うまでもない
が、さらに関連する政策やガイドラインなどにも精通していることが求められる。VCT サイトでは
常に十分な必要機材の在庫を確保していることが求められる。また、HIV 検査キットを含む消耗品
や機材の品質管理のプロトコールと、在庫を定期的にチェックする体制が確立されていなくては
iii
ならない。VCT サービスの成果に対するモニタリング・評価に関しては、現時点ではいくつかの評
価手法を組み合わせ、その有用性の検証が行われている。
4章. サハラ以南アフリカにおける VCT 活動の現状と課題
(1)
調査対象国の HIV/AIDS 対策および VCT 活動
調査対象 6 カ国における HIV/AIDS 及び VCT 活動に関する調査結果概要は、
次項表のとおりである。
(2)
アフリカにおける VCT 活動のケース分析
VCT 活動を効果的・効率的に実施するための特に重要な以下4つの課題について、本調査対象国の
実際のケースを参考に分析した。
①
ケース分析1: VCT プログラム・ガイドラインとサービス提供の実情との比較
VCT プログラムを実施している国々において、VCT プログラム実施のための政策ガイドラインが存
在することは、プログラム成功のための重要な要因である。しかし、ガイドラインは存在してい
るだけでは不完全であり、これらガイドラインは実際に適用されて初めてその意義を持つ。2001
年にケニア全国 252 ヶ所の保健医療施設を対象に行われた調査によると、
ケニアでは 2001 年に VCT
ガイドラインが策定され、これを受けて各 VCT サイトも、より質の高い VCT サービスを実施する
べく努力していることが明らかになった。しかしながら、資金等の不足から、利用者に対する守
秘義務や匿名性の確保が不十分であったり、HIV や VCT サービスについての教育資材が不十分であ
るなど、依然、改善されるべき点が多い。今後、援助国が VCT 活動を支援していく際、このよう
なガイドラインと現実のギャップが大きい点に注目した支援が効果的と考えられる。
②
ケース分析2: VCT サイト開設に必要なリソースの配備状況
VCT サイト開設に最低限必要なリソースの実際の配備状況について、ケース分析1と同様、ケニア
全国の VCT サイトを対象に行った現状調査を分析した。その結果、調査対象となった VCT サイト
の多くは、施設・資機材や人材といったリソースの面で、まだ十分な状態にないことが判明した。
我が国が VCT 活動支援を実施する際には、これら不足しているリソースのうち、優先順位が高い
ものから順次支援を実施していくと効果的であろう。また、ケニアにおける VCT 活動の情報シス
テムについてはほとんど機能しておらず、将来より良い VCT サービスを提供するためには、早急
な対策が必要とされている。
③
ケース分析3: VCT プログラムにおける必須消耗品の安定供給
HIV 検査キット等、VCT サイトにおいて必須な消耗品が安定して供給されていない現状が明らかに
なっている。VCT プログラムを計画し、VCT サイトを設置し、必要な設備を整えても、必要な消耗
品が安定して供給されなければサービスは提供できず、VCT サービスの実施に対して様々のネガテ
ィブな影響を引き起こす。必須消耗品の安定供給は「選定」
「必要量予測」「調達」「配給」「使用」
という一連のシステムが全て適切に機能して初めて達成される。ザンビアの HIV 検査キットを例
に取ると、キット選定に関わる調整が取られていなかったり、またキットの必要量予測や配給に
iv
関しても、VCT サイトから請求があった時点で配給するシステムから、四半期ごとへの配給システ
ムと変更されたことで,正確な予測に混乱をきたしたことなどが明らかになっている。このよう
な課題に対処するためには、ドナー側でも必須消耗品の安定供給を可能にするシステム強化が重
要である。
④
ケース分析4: VCT サイトの利用状況
VCT サービスのプロモーションを含む広報教育活動と VCT サイトの利用状況は密接な関係にある
ことが、ザンビアのケースから明らかになっている。VCT サービスの提供には、VCT サイトの設置
と、質の高いカウンセリングと検査は大前提であるが、それだけでは不十分で、VCT プロモーショ
ンを含む広報教育活動(継続的で一貫した VCT プロモーション・メッセージの伝達、PLWHA からの
メッセージ及び経験伝達などによる偏見・差別の緩和)と、VCT サイトにおける環境配慮(HIV 検
査に来ているということがわからないような環境または雑踏、VCT への地理的心理的アクセスのよ
さ、個人情報が漏洩しないという確信)
、VCT 後のケア及び支援活動(PLWHA へのケアや支援の存
在の明示)も非常に重要であるということが判明した。
v
HIV/AIDS 及び VCT に関する調査対象国概要比較
国
ザンビア
ウガンダ
ガーナ
南アフリカ
タンザニア
ケニア
成人 HIV
感染率
(2001 年末)
HIV/AIDS
戦略計画
VCT
ガイドライン
VCT
サービス現状
VCT サービス
提供範囲
VCT に関わる
主要機関
21.5%
国家
HIV/AIDS/ST
D/TB委員会、
戦略フレームワ
ーク
(2001-2003)
「HIV/AIDS のマネージ
メントとケアに関するガ
イドライン」中の第 2 章
に「VCT」という項で、大
雑把なポリシーが記載
されている。
1992 年カラ・カウンセリング・
アンド・トレーニング・トラスト
により開始される。1999 年
NORAD 支援により 22 箇所
の VCT サイトを設置。
2002 年 末 時 点 で 全 国
101 箇所にサイト拡大。
(2002 年 6 月時点での 50
箇所からの急増で、一
時、HIV 検査キット不足
に陥る。)
国家 HIV/AIDS/STD/TB
委員会の VCT とケアテクニ
カル・ワーキング・グルー
プ、所属 NGO,保健省、及
びザンビア VCT サービス
が中心的な役割。
5.0%
国家
HIV/AIDS 活
動のための国
家戦略フレー
ムワーク
(2000-2005)
保健省によるガイドライ
ンは、現在準備中。
1990 年「エイズ・インフォメー
ション・センター(AIC)」により
開始される。現在は AIC が
保健省と協力して VCT サイト
を拡大中。
全国 56 県の内、27 県地
区の 70 箇所に VCT サイ
トが存在する。今後 3 年
間で 8 つの県へも拡大展
開する予定、
・ VCT サイト不足
AIC と保健省及びウガン ・ VCT サイトの設備不足
ダ ・ エ イ ズ ・ コ ミ ッ シ ョ ン ・ 検査施設の不足
(UAC)が中心的役割。
・ VCT サービス運営のためのデータ・マネージメント・システム
の不備
VCT の国家レベルでの
ガイドラインは存在しな
い。FHI がガイドライン
ドラフトを作成中。
VCT サービスは限られてい
る。
即日 VCT サービスを提
供しているサイトは現時
点で 4 箇所程度。2004 年
までに全国 16 州に 1 箇
所ずつ設置する予定。
・
・
ガーナエイズ委員会、保健 ・
省、中央ラボ、野口研、及 ・
び FHI が中心的役割。
・
・
・
保健省による VCT サイ
ト運営マニュアル
一般企業を含めた様々な場
で VCT が提供されている
が、全体的な実態はつかめ
ていない。
VCT サービス提供範囲
に関する正確な実態は
つかめていない。
・ カウンセラー、VCT プログラム・マネージャー等の、VCT サー
ビス策定・実施に関わる人材不足
保健省 VCT ユニットが中 ・ VCT 活動で成果をあげている NGO・CBO のネットワーキング
心的役割。
と能力強化
・ VCT サービスの強化と拡大
・ VCT サービスのモニタリング評価
VCT ガイドラインはな
い。
1995 年 DANIDA の支援によ
り、即日 VCT 開始。公的機
関・NGO、民間機関が VCT
サイト運営。実施形態は
様々。
全国約 200 箇所の VCT
サイトが存在。2005 年ま
でに、全国 121 県の各県
に最低 6 箇所の VCT サ
イト設置予定。
・
・
・
保健省・NGO が中心的役
・
割。
・
・
・
政府系、ミッション系、及び
民間による保健医療施設で
VCT サイトを設けている
全国約 150 箇所の VCT
サイトが存在。今後2年間
で 210 箇所のサイトを増
設予定。
・ 若者に対するサービス強化
・ ハイリスク・グループに対する VCT サービスへのアクセスの拡
保健省、国家エイズコント
大
ロール委員会が中心的役 ・ 日和見感染症のサービスの拡大
割。
・ 抗エイズ薬へのアクセスの拡大
・ VCT ガイドラインの印刷・配布
・ 消耗品の安定供給
3.0%
国家
HIV/AIDS 戦
略枠組み
(2001-2005)
20.1%
国家
HIV/AIDS/ST
D 戦略計画
(2000-2005)
7.8%
HIV/AIDS に
関する国家政
策指針
15.0%
国家
HIV/AIDS 活
動のための国
家戦略フレー
ムワーク
(2000-2005)
国家 VCT ガイドライン
vi
VCT サービスの課題
・
・
・
・
・
・
VCT サービス推進のための広報教育とアドボカシー活動
国家 VCT ガイドラインの策定
カウンセラーの管理
検査キットの安定供給
VCT サービスのモニタリング評価
若者に対するサービス強化
VCT サービスを宣伝するための活動の不足
VCT サービス推進のためのリーダーシップの不足
VCT サービスの現状把握
VCTサイトの不足
VCT ガイドラインの欠如
委員会における専任カウンセラーの欠如
検査キット選定の不透明性
VCT サービスの広報宣伝
VCT サービスの実態把握
VCT サービスの強化と拡大
ART 導入体制の確立
VCT ガイドラインの策定
HIV 検査キット評価システムの強化
HIV 検査キットの安定供給
(3)
アフリカにおける VCT 活動の課題
①
VCT 推進のための広報教育とアドボカシー活動に関わる課題:
自己の HIV 感染の有無を確認することのメリットを理解してもらうと共に、PLWHA に対する偏
見・差別をなくしていくための VCT プログラム広報教育活動は、まだ十分とはいえない。VCT
サービスは単独では成り立たず、広報教育活動によるプロモーションと VCT 後のケア及び支援
活動が平行して実施されて、初めて本来の効果を発揮できる。
②
VCT サイトにおける活動に関わる課題:
VCT サービスへの人々のアクセスを改善するためには、まず、VCT サイトを増やす必要がある。
また VCT サイトの設備面の課題としては、利用者のプライバシーを確保するために必要なカウ
ンセリング・スペースの不足、検査室スペースの不足、及び検査キット保存のための医療資機
材の不足などが挙げられる。消耗品としては、検査キットと抗エイズ薬、日和見感染症対策及
び性感染症対策、家族計画などの関連サービス実施のための薬剤及び物品の不足がある。カウ
ンセラー、VCT プログラム・マネジャーを含む VCT プログラムの計画、実施に関わる人材の不
足も重要な課題として挙げられる。
③
VCT 検査後のケアと支援に関わる課題
PLWHA のニーズにあった活動を、彼らの主体的な参加を得て実施していくことが大切である。
比較的低費用で実施できる日和見感染症治療を、更に安価に又は無料で、より多くの感染者に
供給できるよう、保健省及び関連 NGO 等へ支援を行うことが求められる。その他、日和見感染
症の治療のための人材養成、および薬品と消耗品の補給とそのためのシステム強化、結核予防
策強化、母子感染予防、性感染症コントロール・プログラム、及び青少年リプロダクティブ・
ヘルス・プログラム、コミュニティの啓発活動、PLWHA のポジティブ・リビング支援、及び増
加するエイズ遺児に対する支援など、総合的な取り組みの強化が必要である。
④
VCT プログラム運営能力強化に関わる課題
VCT プログラムが広がりつつある国においては、各 VCT サイトの所在地を確認し、設備・機材・
消耗品・人材リソースの実態、利用者数などの実態とニーズの把握に基づいて、国全体での VCT
活動の強化を図ることが望まれる。VCT サイトの現場では、スタッフ不足などにより、利用者
が長蛇の列をなすといったケースも報告されている。このような現実の中で、カウンセリング
実施する保健医療従事者の負担は相当なものとなる。財政的問題により、カウンセラーの数を
増やすことが困難である以上、ボランティアのカウンセラーを養成するなどのオプションも検
討されなければならない。HIV 検査キットは VCT サービスの要となる消耗品であり、検査キッ
トなしに VCT サービスは成り立たないが、現実には検査キットの在庫切れという問題は存在す
る。この背景には資金不足の問題があるのはもちろんであるが、それ以外に、消耗品安定供給
のための、選択・需要予測・調達・配給・使用という一連のシステムが適切に機能していない
ことも安定供給を妨げる結果を招いている。検査キットの在庫確保のためには、システム確
立・強化のための資金・技術援助が必要である。
vii
5章. HIV/AIDS 対策と VCT 活動支援における日本の取り組み
(1)
アフリカにおける日本の HIV/AIDS 対策分野協力の現状分析
ザンビア: ザンビアにおいては、JICA による HIV/AIDS 対策支援が VCT 関連活動への協力を核
にして拡がりを見せているといえる。「エイズ結核対策プロジェクト」におけるザンビア大学
付属教育病院検査室を核とした検査体制強化と、「エイズ対策・血液検査特別機材供与」を通
じた HIV 簡易迅速検査キットの供与は有機的に関連しており、検査キットの配給システムや情
報管理システムのアセスメントもこの中で効果的に行われている。課題として、セクター・ワ
イド・アプローチ(Sector Wide Approaches: SWAPs)やコモン・ファンド (Common Fund)の流
れの中で、ザンビア政府の SWAPs 政策に沿った形で、日本政府によるどのような技術支援が可
能かを見出していくことが緊急に求められている。
ウガンダ: 現在、日本の ODA は、ウガンダにおいて HIV/AIDS および VCT 分野に対する支援を
特に実施していない。大使館および青年海外協力隊事務所の両方において人員に限界があり、
HIV/AIDS 支援に取り組みたくともできないのが現状のようである。ウガンダは新規 HIV 感染率
の低下に成功しているエイズ対策の模範国であり、この国にエイズ対策企画専門家の派遣を行
って何らかの支援をしつつ、ウガンダのノウハウを学んで、これを日本による他国でのエイズ
支援へ応用していくという戦略は検討に値する。
ガーナ: ガーナにおける日本の ODA による HIV/AIDS 分野支援は、これまで野口記念医学研究
所(以下野口研と略)への支援を中心に行われてきている。ガーナ政府保健省は今後、グロー
バルファンドからの資金を使い、野口研や米国系 NGO である FHI とともに抗エイズ薬1による治
療を導入しようとしている。野口研は薬剤感受性試験、免疫学的なモニタリング、薬剤耐性サ
ーベイランスなどの重要な役割を担っていこうとしており、ラボベースの日本の技術協力は今
後も重要となるであろう。ガーナの保健分野においてはセクター・ワイド・アプローチが進行
しており、コモン・ファンドへの資金提供の圧力が強まる中で、技術協力プロジェクト的援助
が難しい状況が進んでいる。日本が、今後どのような支援を行うことが可能であるのか、引き
続きガーナ政府と検討する必要がある。
南アフリカ:
日本の ODA による保健分野の支援としては、HIV 感染率が全国一の州であるクワ
ズールー・ナタールにおいて医療機器提供と関連施設の建設を行っており、今後このような支
援を同様に貧しい州である東ケープ州とリンポポ州にも拡大する予定となっている。HIV/AIDS
分野ではこれまでのところ、草の根無償を通したハード面での支援を行ってきている。その内
容は、ホスピスの建設、広報教育教材の印刷、車両の提供、ワークショップや研修開催などで
ある。JOCV との連携もすでに行われている。JICA 開発福祉支援を通じて、教会系 NGO による
1
ここではヒト免疫不全ウィルスの増殖を抑制する抗レトロウィルス剤(逆転者酵素阻害剤、プロテアーゼイ
ンヒビター)を指す。前者 2 剤、後者 1 剤による混合投与(3 剤併用療法)の有効性は高い。
viii
青少年の広報教育活動支援、エイズ関連機関への視聴覚機材供与、訪問ケアに関わる機材供与
なども行われている。
ケニア:
日本はこれまで長年にわたりケニア中央医学研究所(KEMRI)に対して支援を行って
きており、感染症対策もその中の重要な活動として継続的に支援してきた。B 型肝炎診断用の
検査キットや HIV 検査キットの開発もその一環として実施された。エイズ分野の援助において
は日米コモンアジェンダのもとに連携が進められており、その最初の案件が 2000 年に草の根
無償資金協力により行われたケニヤッタ国立病院エイズ総合対策サイトの設置であった。米国
系 NGO である FHI がソフト面の支援を、
日本はハード面の支援を受け持った。ナクール
(Nakuru)
では地方レベルの VCT サイトを草の根無償で建設することを予定しており、ここでも同様の日
米連携が検討されている。
タンザニア: 日本政府は、対タンザニア援助の重点分野として「基礎的保健医療サービスの向
上」を掲げ、この下に「人口エイズ対策プログラム」を策定して支援を実施してきた。エイズ
対策・血液検査特別機材供与枠を使った HIV 検査用ラボ機材、検査キット、輸血にかかわる使
い捨て医療機器、データ管理用パソコン、性感染症対策試薬および治療薬などの供与も、他国
に先駆けて行われ、1997 年度より 2002 年度まで継続されてきた。2001 年 1 月に、日米合同の
プロジェクト形成調査が実施され、タンザニア政府との協議を通じ、日米で協力してエイズ問
題に取り組むことで合意し、覚え書きを交わした。これを受けて、JICA は HIV/AIDS 分野にお
いては、VCT サイトへの支援拡充、行動変容につながるエイズ啓発活動の強化支援、輸血によ
る HIV 感染予防支援、性感染症症候診断および治療支援などを行うことを決めた。
(2)
日本の ODA スキームの課題
本調査を通じて明らかになった、アフリカの HIV/AIDS 分野および VCT 活動支援に関わる日本
の ODA スキームの今後の主な課題は以下のとおりである。
広域エイズ企画調査員への期待: 現在、エイズ関連プロジェクトを発掘・形成する目的で、南
アフリカに南部アフリカ地域担当の、ケニアに東部アフリカ地域担当の、企画調査員が配置さ
れている。このようなエイズの専門家が在外公館や JICA 在外事務所を巡回して意見交換が活
発に行われることにより、他国における例などを参考にエイズ関連支援の具体的な方策に関す
る新たなアイディアが生まれる可能性が大きくなる。また、リアルタイムで的確な情報が収集
されるという点からも、これらエイズ企画調査員に対する期待は大きいといえる。
青年海外協力隊エイズ対策隊員派遣: 青年海外協力隊の派遣は、アフリカの HIV/AIDS 分野支
援と、日本における HIV/AIDS 分野人材育成という二つの目的を達成することができ、非常に
画期的な計画であると思われる。その実施に際しては、具体的な受け入れ先のニーズを優先し
て行われることが望ましい。青年協力隊という、比較的経験が少ない若者が行える貢献には限
界があるため、受け入れ機関と十分な事前協議を行い、仕事内容等や条件を明確化することが
ix
必要となる。
迅速性: HIV/AIDS 対策は緊急の課題で、迅速な対応が求められている。しかしながら、要望
調査から案件の実施まで、1年以上を要することも多い現在の日本の ODA 案件決定システムの
問題は、しばしば指摘されている。HIV/AIDS 対策は、他ドナーとの調整や連携が強く求められ
ている分野であり、このような視点からも他の主なドナーと同程度の迅速意思決定が望まれる。
現地 NGO への支援: アフリカの HIV/AIDS 対策及び VCT 活動に関して、現地 NGO は先駆的な
役割を果たしており、非常に重要な存在であると言える。それゆえ、今回の調査対象国では、
現地 NGO の活動を支援するような日本の ODA スキームの充実を望む声が聞かれた。
経理管理の煩雑さの改善: アフリカの現地 NGO は、日本の ODA による事業運営方法に慣れてい
ない団体が多い。効率的な支援実施のためには、アカウンタビリティーを保ちつつ、経理管理
をより簡略化するような対応がとられることが望ましい。
本邦 NGO への支援: アフリカにおける HIV/AIDS 対策の分野で、本邦 NGO を対象とした ODA
スキームを通じて財源を獲得し、現地でプロジェクトを展開している団体も少なくない。しか
しながら、本邦 NGO を対象とした ODA スキームで認められる日本の NGO 職員に対する人件費や
出張日当は、他の日本の ODA による国際協力分野で活躍する、例えば JICA 職員との間で大き
な差が存在する。また、本邦 NGO を対象とした ODA スキームでは、事務所経費などの間接費が
まだ十分認められないため、NGO の財政状況をひっ迫させている。今後国際協力の分野で、日
本の NGO が質の高い活動を展開するためには、JICA 職員と同程度の待遇を保証し、また事務所
経費などの間接費を適切に保証することが必要である、それがない限り、質の高い NGO 職員を
長期間にわたり雇用することができず、日本の NGO による質の高い国際協力を実現することは
困難になるだろう。
(3)
HIV/AIDS 分野への日本の支援の可能性
アフリカに対する HIV/AIDS 分野での日本の技術協力は、現在のところまだ限られた規模に留
まっている。HIV 感染者が現在のところそれほど多くない日本では、大規模なエイズ予防対策
がとられていないこともあり、他分野に較べると日本の比較優位性は高いとはいえない。しか
し限られた規模ながら、これまでに実施されてきた日本による HIV/AIDS 支援の蓄積や、日本
の得意とする分野を生かしつつ、以下に列記した戦略1から8(詳細については本文 p.5-10
∼5-12 参照)を有機的に関連づけながら支援計画を立てることで、より効果的で総合的な
HIV/AIDS 対策に貢献できるだろう。そのためには、他ドナーとの調整やセクター・ワイド・ア
プローチの進行をにらみつつ、被援助国及び関係機関との地道な協議が必要となるのは言うま
でもない。また、積極的な情報発信もこれまで日本が不得意としてきた分野であり、当該国の
みならず、サハラ以南地域的、また国際的にも日本の総合的な取り組みと成果をアピールして
いくべきであろう。
x
•
•
•
•
•
•
•
•
戦略1:
戦略2:
戦略3:
戦略4:
戦略5:
戦略6:
戦略7:
戦略8:
KEMRI、野口研、ザンビア UTH に対する HIV/AIDS に集中した技術支援
HIV 検査体制強化
HIV 簡易迅速検査キットの全国レベルでの継続的供与
カウンセラー養成への支援
地方における VCT 強化のモデル作り
青年海外協力隊の派遣
サハラ以南アフリカにおける地域的な展開
日本国内外での広報活動や活動報告の活発化
6章. アフリカにおける HIV/AIDS 分野の協力と VCT 活動の展開
(1)
アフリカにおける VCT 活動支援に関するニーズ
アフリカにおいて VCT 活動を支援していく際のニーズについて、VCT 活動主要コンポーネント
ごとに以下のような枠組みに基づいて分析した。次に、アフリカにおいて VCT 活動を支援する
際に検討すべき横断的な課題(以下表参照)について提言を行った。詳細は、本文 p.6-8∼6-11
の各表を参照されたい。
アフリカにおけるVCT活動支援に関するニーズ
VCT 活動主要コンポーネント
人的
ニーズ
技術・運営
ニーズ
設備・資機材
ニーズ
財政的
ニーズ
コミュニティ啓発と政策提言
VCT サイトにおける活動
テスト後のケアとサポート
VCT プログラム運営能力強化
(2)
我が国の援助スキームを利用した VCT 活動支援の可能性と課題
我が国の援助スキーム利用したアフリカにおける VCT 活動支援の可能性を、以下表のとおり、
日本の援助スキーム枠組みの中で検討した。詳細は、本文 p.6-15 の表を参照されたい。
xi
我が国の援助スキームを利用したアフリカにおけるVCT活動支援の可能性
VCT 活動主要コンポーネント
支援
の
種類
我が国による
援助スキーム
プロジェクト
実施型
資機材
設備
供与型
人材
派遣型
コミュニティ啓
発と
政策提言
VCT サイトに
おける活動
テスト後の
ケアと
サポート
VCT
プログラム
運営能力強化
NGO 支援無償
草の根協力
プロジェクト
技術協力
プロジェクト
無償資金
協力事業
特別機材供与
専門家派遣
海外青年協力隊
現地国内研修
研修型
第三国研修
一般特設
調査型
開発調査
特定テーマ評価
(3)
我が国の援助スキームを利用した VCT 活動支援の計画枠組み
これまで述べてきた VCT 活動支援を実施するにあたっての計画枠組みについて、日本の ODA 案
件の計画・運営・評価に現在使用されているプロジェクト・デザイン・マトリックス(Project
Design Matrix: 以下、「PDM」と表記する)の枠組を使用し、以下二つの視点から、VCT 活動案
件計画を検討した。詳細は、本文 p.6-17∼6-18 の表を参照されたい。
①
②
ODA スキーム別 VCT 活動支援案件 PDM 例
非 HIV/AIDS 分野案件への VCT 活動統合型案件 PDM 例
① 我が国の援助スキームによるVCT活動支援案件PDM
プロジェクト
実施型
最終受益者
上位目標
プロジェクト目標
成果
活動
xii
資機材・
設備
供与型
人材
派遣型
研修型
② 非HIV/AIDS案件へのVCT活動統合型案件PDM
他の保健
医療案件
教育案件
緊急援助
案件
村落開発
案件
最終受益者
上位目標
プロジェクト目標
成果
活動
(4)
国際協力のパラダイム転換と HIV/AIDS 及び VCT 活動支援に関する今後の課題
本報告書の最後に、今後の我が国による VCT 活動支援を考える際に検討されるべき、国際協力
のパラダイム転換に関わる重要な課題について議論した。HIV/AIDS 及び VCT 活動は、途上国援
助の分野の中では比較的新しいものであるため、他分野に比べれば、援助手法がまだ十分確立
されていない。それゆえ、昨今の国際協力の中で挙げられている以下ふたつの重要な課題に関
しては、取り組みやすい状況にあると言える。今後、このふたつのパラダイム転換を十分考慮
しながら我が国による当該分野の支援計画を立てていく必要がある。
①
②
「プロジェクト」から「プログラム」へ
「技術移転」から「技術獲得」へ
xiii
目
次
はしがき
地図
写真
要約
目次
略語表
本編
第1章
1.1
1.2
1.3
1.4
1.5
1.6
1.7
1.8
1.9
調査概要
はじめに ----------------------------------------------------------------------------------調査の背景 ---------------------------------------------------------------------------------調査の目的 ---------------------------------------------------------------------------------調査対象地域 -------------------------------------------------------------------------------調査団の構成 -------------------------------------------------------------------------------調査期間と作業工程--------------------------------------------------------------------------調査の基本方針
-------------------------------------------------------------------------調査実施の方法
-------------------------------------------------------------------------分析及び提言抽出の方法 ---------------------------------------------------------------------
第2章
2.1
2.2
2.3
2.4
2.5
2.6
2.7
サハラ以南のアフリカにおける HIV/AIDS 対策の概観
本章のねらい -------------------------------------------------------------------------------- 2-1
サハラ以南のアフリカにおける HIV 感染状況とその特徴 ------------------------------------------ 2-1
主要な HIV/AIDS 対策政策の枠組み ------------------------------------------------------------- 2-5
HIV/AIDS 対策実施における3つの柱 ------------------------------------------------------------ 2-6
国家レベルにおける HIV/AIDS 対策実施モデル --------------------------------------------------- 2-10
HIV/AIDS 対策における成功の要因分析 ---------------------------------------------------------- 2-15
HIV/AIDS 対策重点項目 ------------------------------------------------------------------------ 2-17
第3章
3.1
3.2
3.3
3.4
3.5
3.6
3.7
3.8
VCT 活動の運営
VCT の定義 ----------------------------------------------------------------------------------- 3-1
VCT サービスのプロセスと導入の背景 ----------------------------------------------------------- 3-1
効果的な VCT サービス実施に不可欠なコンポーネント -------------------------------------------- 3-5
各コンポーネントにおける要点と注意点 -------------------------------------------------------- 3-5
VCT プログラムを成功させる前提条件 ----------------------------------------------------------- 3-11
VCT サービス提供にかかわるリソース ----------------------------------------------------------- 3-13
VCT プログラム運営における要点と注意点 ------------------------------------------------------- 3-13
VCT 活動の成果に対するモニタリング・評価 ----------------------------------------------------- 3-15
1-1
1-1
1-2
1-2
1-3
1-3
1-3
1-5
1-7
第4章 アフリカにおける VCT 活動
4.1 アフリカの調査対象国における HIV/AIDS および VCT 活動概要 ------------------------------------- 4-1
4.2 調査対象国における HIV/AIDS 及び VCT 活動概要 ------------------------------------------------- 4-1
4.2.1 ザンビア ------------------------------------------------------------------------ 4-3
4.2.2 ウガンダ ------------------------------------------------------------------------ 4-16
4.2.3 ガーナ -------------------------------------------------------------------------- 4-28
4.2.4 南アフリカ ---------------------------------------------------------------------- 4-41
4.2.5 タンザニア ---------------------------------------------------------------------- 4-54
4.2.6 ケニア -------------------------------------------------------------------------- 4-64
4.3 アフリカにおける VCT 活動のケース分析 -------------------------------------------------------- 4-74
4.3.1 ケース分析 1:VCT ガイドラインと実際のサービス提供状況との比較 ------------------- 4-75
4.3.2 ケース分析 2:VCT センター設立に必要なリソース------------------------------------ 4-79
4.3.3 ケース分析 3:VCT プログラムにおける必須消耗品の供給 ----------------------------- 4-83
4.3.4 ケース分析 4:センター利用を促進する要因 ----------------------------------------- 4-90
4.4 アフリカにおける VCT 活動の課題 -------------------------------------------------------------- 4-96
4.4.1 VCT 推進のための広報教育とアドボカシー活動にかかわる課題 ------------------------- 4-96
4.4.2 VCT サイトにおける活動にかかわる課題 --------------------------------------------- 4-96
4.4.3 VCT 検査後のケアとサポートにかかわる課題 ----------------------------------------- 4-97
4.4.4 VCT プログラム運営能力強化にかかわる課題 ----------------------------------------- 4-97
4.4.5 セクター横断的な課題 ----------------------------------------------------------- 4-100
第5章 HIV/AIDS と VCT サービス支援における日本の取り組み
5.1 アフリカにおける日本の HIV/AIDS 対策分野協力の現状分析 --------------------------------------- 5-1
5.2 日本の ODA スキームの活用と課題 -------------------------------------------------------------- 5-6
5.3 日本のアフリカにおける HIV/AIDS 分野と VCT サービス支援の有機的な戦略の実践例 ----------------- 5-10
第6章
6.1
6.2
6.3
6.4
アフリカにおける HIV/AIDS 分野の協力と VCT 活動の展開
アフリカにおける VCT 活動のニーズに対する提言 -----------------------------------------------我が国の援助スキームを利用した VCT 活動支援に関する提言 -------------------------------------我が国の援助スキームを利用した VCT 活動支援案件の計画枠組みに関する提言 ---------------------国際協力のパラダイム転換と HIV/AIDS 及び VCT 活動支援に関する今後の課題 -----------------------
巻末添付資料集
添付資料 1.
添付資料 2.
添付資料 3.
添付資料 4.
添付資料 5.
添付資料 6.
添付資料 7.
各団員の調査業務日程
調査対象国訪問組織及び国内訪問組織リスト(連絡先情報及び HIV/AIDS 活動概要)
聞き取り調査質問リスト
参考資料リスト
VCT サービス計画実施マニュアルの参考例
HIV/AIDS 分野で活動する GII/IDI メンバーNGO リスト
HII/IDI メンバーとのワークショップ記録要約
6-1
6-13
6-15
6-18
図 表 目 次
第1章
調査概要
図 1-1
調査の流れ ...........................................................................1-5
表 1-1
表 1-2
表 1-3
表 1-4
表 1-5
表 1-6
表 1-7
表 1-8
表 1-9
表 1-10
表 1-11
UNAIDS による VCT の定義 ...............................................................1-2
調査対象国 ...........................................................................1-3
団員リスト ...........................................................................1-3
調査の基本方針 .......................................................................1-3
調査報告書の主たる対象読者と VCT 活動展開に必要な情報 .................................1-4
調査方法ごとのサンプル数 .............................................................1-5
アフリカにおける VCT 活動支援に関するニーズ分析の枠組み ...............................1-7
我が国による VCT サービス支援に関するセクター横断的ニーズ .............................1-8
我が国の援助スキームを利用したアフリカにおける VCT 活動支援の可能性分析の枠組み .......1-8
我が国の援助スキームによる VCT サービス支援案件 PDM 枠組み .............................1-9
非 HIV/AIDS 案件への VCT サービス統合型案件 PDM 枠組み ..................................1-9
第2章
サハラ以南のアフリカにおける HIV/AIDS 対策の概観
図 2-1
図 2-2
図 2-3
サハラ以南のアフリカにおける HIV 感染率上位4カ国 .....................................2-4
一般的な国家 HIV/AIDS 対策の政策枠組み ...............................................2-10
国内における HIV/AIDS 関連の調整メカニズム(ケニアの例) .............................2-12
表 2-1
表 2-2
2002 年末時点における世界の HIV 感染状況 ...............................................2-2
国内における主要機関の役割 ..........................................................2-11
第3章
VCT 活動の運営
図 3-1
典型的な VCT サービスの流れ ...........................................................3-2
表 3-1
表 3-2
UNAIDS による VCT の定義 ...............................................................3-1
南アフリカで使用されている VCT サービス・モニタリング用チェックリスト ................3-17
第4章
サハラ以南アフリカにおける VCT 活動の現状と課題
図 4-1
図 4-2
図 4-3
図 4-4
図 4-5
図 4-6
図 4-7
図 4-8
図 4-9
図 4-10
ZVCT の推薦する検査キットの種類とアルゴリズム ........................................4-11
ガーナ HIV 検査キットの種類とアルゴリズム ............................................4-34
南アフリカにおける妊産婦 HIV 感染率 ..................................................4-42
妊産婦における年齢別 HIV 感染率 ......................................................4-43
タンザニア ムベヤ州における妊産婦の HIV 感染率の変化 .................................4-59
医薬品とその他保健サービスに必要な消耗品の安定供給システム ..........................4-85
SFH の New Start プロジェクトにおける利用者数の推移 ...................................4-90
PPAZ のルサカ・リプロダクティブヘルス・センターにおける検査実績推移 ..................4-91
チパタ・クリニックにおける検査実績の推移 ............................................4-93
チェルストン・クリニックにおける検査実績の推移 ......................................4-94
表 4-1
表 4-2
表 4-3
表 4-4
表 4-5
HIV/AIDS 及び VCT に関する調査対象国概要比較 ...........................................4-2
ザンビアに関する一般情報 .............................................................4-3
ザンビアのリプロダクティブヘルス指標 .................................................4-4
ザンビアにおける HIV/AIDS 概況 ........................................................4-5
ザンビア国内の HIV/AIDS 対策における主要関連機関の役割 ................................4-8
表 4-6
表 4-7
表 4-8
表 4-9
表 4-10
表 4-11
表 4-12
表 4-13
表 4-14
表 4-15
表 4-16
表 4-17
表 4-18
表 4-19
表 4-20
表 4-21
表 4-22
表 4-23
表 4-24
表 4-25
表 4-26
表 4-27
表 4-28
表 4-29
表 4-30
表 4-31
表 4-32
表 4-33
表 4-34
表 4-35
表 4-36
表 4-37
表 4-38
表 4-39
表 4-40
表 4-41
表 4-42
表 4-43
表 4-44
表 4-45
表 4-46
表 4-47
表 4-48
ザンビア国内の VCT に関わる主要機関とその役割 ........................................4-11
ウガンダに関する一般情報 ............................................................4-16
ウガンダのリプロダクティブヘルス指標 ................................................4-16
ウガンダ HIV/AIDS 概況 ...............................................................4-17
ウガンダにおける HIV/AIDS 対策及び VCT に関連する政策・戦略・ガイドライン .............4-18
ウガンダ国内における主要ステークホルダーの役割 ......................................4-19
ウガンダにおける HIV/AIDS 対策のこれまでの主な成果 ...................................4-21
ウガンダ AIC による VCT サービス実施要綱 ..............................................4-23
ウガンダの VCT に関する主要機関とその役割 ............................................4-23
ガーナに関する一般情報 ..............................................................4-29
ガーナのリプロダクティブヘルス指標 ..................................................4-29
ガーナにおける HIV/AIDS 概況 .........................................................4-30
ガーナの HIV/AIDS 対策における主要関連機関の役割 .....................................4-33
ガーナの VCT に関する主要機関とその役割 ..............................................4-36
南アフリカに関する一般情報 ..........................................................4-41
南アフリカのリプロダクティブヘルス指標 ..............................................4-42
南アフリカ HIV/AIDS 概況 .............................................................4-43
南アフリカにおける HIV/AIDS 対策及び VCT に関連する政策・戦略・ガイドライン ...........4-44
南アフリカ国内における主要ステークホルダーの役割 ....................................4-45
南アフリカにおける HIV/AIDS 対策の課題と重点分野 .....................................4-46
タンザニアに関する一般情報 ..........................................................4-55
タンザニアのリプロダクティブヘルス指標 ..............................................4-55
タンザニアにおける HIV/AIDS 概況 .....................................................4-56
タンザニアの HIV/AIDS 対策における主要関連機関の役割 .................................4-58
1998 年 1 年間の全国 VCT サービス実績 ..................................................4-60
ケニアに関する一般情報 ..............................................................4-64
ケニアのリプロダクティブヘルス指標 ..................................................4-65
ケニアにおける HIV/AIDS 概況 .........................................................4-65
ケニアにおける HIV/AIDS 対策及び VCT に関連する政策・戦略・ガイドライン ...............4-67
ケニア国内における主要ステークホルダーの役割 ........................................4-67
ケニアにおける HIV/AIDS 対策のこれまでの主な成果 .....................................4-68
ケニアにおける VCT に関連する政策・戦略・ガイドライン ................................4-69
ケニア国内の VCT に関する主要機関とその役割 ..........................................4-70
調査対象となったケニアの 73 ヶ所 VCT サイトの属性 .....................................4-75
ケニアの 73 ヶ所の VCT サイトにおける基本的施設設置状況 ...............................4-79
ケニアの 73 ヶ所の VCT サイトにおける基本的機材配備状況 ...............................4-79
ケニアの 73 ヶ所の VCT サイトにおける基本的消耗材配備状況 .............................4-80
ケニアの 73 ヶ所の VCT サイトにおける基本的人材配置状況 ...............................4-80
ケニア VCT ガイドラインによる VCT 情報システムに関する主な規定 ........................4-81
HIV 検査方法決定の際に検討すべき要因 .................................................4-86
ドナーの VCT 消耗品供与が被援助側に大きなコスト負担を強いる例 ........................4-87
SFH と PPAZ の VCT サービスの比較 ......................................................4-92
チパタ・クリニックとチェルストン・クリニックの VCT サービスの比較 ....................4-94
第5章
HIV/AIDS と VCT 活動支援に関わる日本の取り組み
表 5-1
表 5-2
HIV/AIDS および VCT サービス支援と関連する日本の主な二国間援助スキーム .................5-7
調査対象国における日本政府による HIV/AIDS 支援実績一覧表 .............................5-13
第6章
日本による HIV/AIDS 分野協力と VCT 活動支援についての提言
表 6-1
表 6-2
表 6-3
表 6-4
表 6-5
表 6-6
表 6-7
表 6-8
表 6-9
HIV/AIDS 問題による影響から貧困削減開発目標を守るための対策例 .........................6-8
アフリカにおける VCT 活動支援に関するニーズ 1 .........................................6-9
アフリカにおける VCT 活動支援に関するニーズ 2 ........................................6-10
アフリカにおける VCT 活動支援に関するニーズ 3 ........................................6-11
アフリカにおける VCT 活動支援に関するニーズ 4 ........................................6-12
我が国の援助スキームを利用したアフリカにおける VCT 活動支援の可能性 ..................6-14
ODA スキーム別 VCT 活動支援案件 PDM 例 .................................................6-16
非 HIV/AIDS 案件への VCT 活動統合型案件 PDM 例 .........................................6-17
UNDP が提示した新たな開発のパラダイム ................................................6-20
Box
Box
Box
Box
Box
Box
Box
Box
Box
Box
Box
Box
Box
Box
若者に焦点をあてた HIV 予防活動 .......................................................2-8
緊急援助における HIV/AIDS 対策 .......................................................2-13
ジェンダーのメインストリーム化と HIV/AIDS 対策 .......................................2-18
HIV 簡易迅速検査法 ....................................................................3-8
VCT カウンセラー アリスの仕事 .......................................................3-10
HIV/AIDS 対策における国際 NGO の役割 ..................................................4-20
<VCT サービス成功例> ウガンダ AIDS Information Centre: AIC ........................4-22
カウンセラーという仕事 ..............................................................4-24
タウンシップ・エイズ・プロジェクト−VCT プログラム成功例 .............................4-48
オアシス・ローバー・クルー・プロジェクト−草の根 NGO の試練 ..........................4-51
VCT サイトで必要とされる資機材・消耗品など ...........................................4-83
HIV 検査キットの選定 .................................................................4-86
HIV 検査キットの必要量予測 ...........................................................4-86
HIV 検査キットの配給システム .........................................................4-88
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
10.
11.
12.
13.
14.
略 語 表
全章共通
BCC
Behavioral Change Communication
行動変容のためのコミュニケーション
CBO
Community Based Organizations
コミュニティに根ざした組織
CCM
Country Coordinating Mechanism
国家調整機構
CDC
Centers for Disease Control and Prevention
(米国)疾病管理予防センター
CSW
Commercial Sex Worker
性産業従事者
DANIDA
Danish International Development Assistance
デンマーク国際開発援助庁
Dfid
Department for International Development
イギリス政府開発省
GFATM
Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria
世界エイズ結核マラリア対策基金
GTZ
Deutsche Gesellschaft fur Technische Zusammenarbeit
ドイツ技術協力公社
HAART
Highly-Active Anti-retroviral Therapy
抗レトロウィルス薬を使っての治療
IEC
Information, Education, and Communication
情報・教育・コミュニケーション
MIS
Management Information System
情報管理システム
NORAD
Norwegian Agency for Development Cooperation
ノルウェイ開発援助庁
O.I.
Opportunistic Infection
日和見感染症
PDM
Project Design Matrix
プロジェクト・デザイン・マトリックス
PLWHA
People Who Live With HIV/AIDS
HIV/AIDS とともに生きる人々
PMTCT
Prevention of Mother to Child Transmission
母子感染予防
RH
Reproductive Health
SFH
Society for Family Health
家族健康協会
UNAIDS
Joint United Nations Programme on HIV/AIDS
国連エイズ合同プログラム
UNHCR
United Nations High Commissioner for Refugees
国連難民高等弁務官事務所
UNICEF
United Nations Children’s Fund
国連児童基金
USAID
The United States Agency for International
Development
World Health Organization
米国国際開発庁
WHO
リプロダクティブ・ヘルス
(性と生殖に関する健康・権利)
世界保健機関
第 4 章 (調査対象国固有の略語)
ザンビア
CboH
Central Board of Health
中央保健局
KCTT
Kara Counseling and Training Trust
ザンビアにおける NGO
MTP I
First Medium Term Plan
第 1 次中期計画
MTP II
Second Medium Term Plan
第 2 次中期計画
NAC
National HIV/AIDS/STD/TB Council
国家エイズ・性感染症・結核協議会
NACP
National AIDS Prevention and Control Programme
国家エイズ予防・対策プログラム
NZP+
Network for Zambian People Living with HIV/AIDS
ザンビア PLWHA ネットワーク
PPAZ
Planned Parenthood Association of Zambia
ザンビア家族計画協会
UTH
University Teaching Hospital
(ザンビア)大学付属教育病院
ZAMBART
Zambia AIDS Related TB
ZCC
Zambia Counseling Council
ザンビア・カウンセリング協議会
ZVCT
Zambia VCT Service
ザンビア VCT サービス
ザンビアエイズ関連結核(プロジェク
ト)
ウガンダ
AIC
AIDS Information Centre
エイズ情報センター
DRC
The Democratic Republic of the Congo
コンゴ民主共和国
UAC
Uganda AIDS Commission
ウガンダ・エイズ委員会
CHAG
Christian Health Association of Ghana
ガーナ・クリスチャン保健協会
DRI
District Response Initiative
県エイズ対策イニシアチブ
FHI
Family Health International
(米国の国際保健協力 NGO)
GAC
Ghana AIDS Commission
ガーナ・エイズ委員会
GARFUND
Ghana AIDS Response Fund
ガーナ・エイズ対策基金
IPAA
International Partnership Against AIDS in Africa
NACP
National AIDS Control Programme
国家エイズ対策プログラム
NMIMR
Noguchi Memorial Institute for Medical Research
野口記念医学研究所(野口研)
NPHRL
National Public Health Reference Laboratory
国立公衆衛生リファレンスラボ
PPAG
Planned Parenthood Association of Ghana
ガーナ家族計画協会
NACOSA
National AIDS Coordinating Committee of South Africa
南アフリカ国家エイズ調整委員会
NICD
National Institute of Communicable Diseases
国立伝染病研究所
SANAC
South Africa National AIDS Council
南アフリカ国家エイズ協議会
TAP
Township AIDS Project
タウンシップ・エイズ・プロジェクト
AMREF
African Medical and Research Foundation
アフリカ医療研究財団
NACP
National HIV/AIDS Control Programme
国家 HIV/AIDS 対策プログラム
MTP-1
First Medium Term Plan
第 1 次中期計画
MTP-2
Second Medium Term Plan
第 2 次中期計画
MTP-3
Third Medium Term Plan
第 3 次中期計画
TACAIDS
Tanzania Commission for AIDS
タンザニア・エイズ委員会
TAPAC
Tanzania Parliamentarian’s AIDS Coalition
ガーナ
アフリカにおけるエイズ対策国際
パートナーシップ
南アフリカ共和国
タンザニア
エイズ問題に取り組むタンザニア国会
議員連合
ケニア
NACC
National AIDS Control Council
国家エイズ対策協議会
NASCOP
National AIDS and STD Control Programme
国家エイズ性感染症対策プログラム
第1章
1.1
調査の概要
はじめに
本報告書は、外務省の委託により実施された「平成 14 年度 HIV/AIDS 予防ケアの基礎
となる VCT サービスのアフリカにおける現状調査と今後の我が国の支援に関する提言」
に係る調査結果を示すものである。
1.2
調査の背景
サハラ以南アフリカ(以下、断りの無い場合には「アフリカ」はサハラ以南のアフリカ
を指す)におけるエイズ渦は、依然非常に厳しい状況にある。2002 年 12 月現在、世界
ではおよそ 4,200 万人が HIV/AIDS に感染、発病しており、その 70%にあたる 2,940 万
人がアフリカ地域に居住している1。 HIV への感染及び AIDS 発症により、患者は様々な
日和見感染症等の身体的苦痛を被るほか、心理的・社会的にも、外部からの偏見、就職
機会を失うなどの苦痛を被る。また、HIV は性行為によっても感染することから、社会
的立場の弱い女性や、HIV 感染予防に対してより無防備な若者が、また母子感染によっ
て胎児さえも HIV 感染の危機にさらされていることも深刻な問題となっている。さらに、
親が AIDS によって亡くなった AIDS 遺児の増加問題など、次の世代にも深刻な負の影響
を及ぼしている。国家レベルでは、HIV 感染者や AIDS 患者の増加によって、死亡や療
養に伴う労働力の減少、患者本人や家族に対する医療費及び福祉的サポートのための社
会保障費の増加を招き、もともと厳しい状況にある途上国国家財政をさらにひっ迫させ
ている。
このような HIV/AIDS 問題による状況を改善するために、保健医療関係者のみならず
様々な分野の人々が世界中で、より効果的な HIV/AIDS 対策を実施すべく、日々努力を
重ねている。この度、本調査で取り上げた「Voluntary Counselling and Testing (以
下、「VCT」と標記する)」は、そのような長年に渡る HIV/AIDS 対策の努力の中から生
まれた活動の一つである。VCT サービスを一言で表現するなら、「患者の自主的決断に
よる HIV 検査実施と、その前後のカウンセリング・サービスがセットになったサービス」
ということになる。(VCT サービスの詳細については、本報告書第3章を参照された
い。)
国連エイズ合同プログラム(以下、「UNAIDS」と標記する)によると、VCT の定義は次
頁表 1-1 のとおりになっている。VCT サービスは、「非常に効果的な、HIV/AIDS 感染予
1
AIDS Epidemic Update, UNAIDS/WHO, 2002
1-1
防とケアへの入り口」として、近年その効果が世界的に認められ、各国で検討・実施が
始まっており、途上国や欧米の NGO、援助機関、政府機関などが活動を展開している。
わが国でも、途上国における HIV/AIDS 対策支援の一環として VCT サービスを実施し始
めている。しかしながら、VCT サービスは、HIV/AIDS 対策の中では比較的新しい活動で
あり、いくつかの成功例は集積されつつあるものの、各国・各組織による VCT プログラ
ムの経験が十分に整理されるには至っていない。
表1-1:UNAIDSによるVoluntary Counseling and Testing (VCT) の定義
Voluntary Counselling and Testing とは、当事者(個人、もしくはカップル)がカウンセリ
ングを通じて、HIV 抗体検査を受けるか否かに関する正確な情報に基づいて、自主的に判断で
きることを支援するプロセスである。
(原文:Voluntary HIV counselling and testing (VCT) is the process by which an individual
undergoes counselling enabling him or her to make an informed choice about being tested
for HIV. This decision must be entirely the choice of the individual and he or she
must be assured that the process will be confidential.)
1.3
調査の目的
本調査では、特にエイズ渦が深刻なアフリカ地域における VCT サービスに関わる情報を
収集・整理・分析し、以下3つの目的を達成することにより、我が国のアフリカにおけ
る HIV/AIDS 対策の戦略実施に寄与する。
①
HIV/AIDS 分野支援強化のための VCT サービスに関する基礎資料の作成
②
我が国の ODA スキームを活用して VCT サービスを活発に展開する方策につい
ての提言
③
VCT サービスの展開に関わる本邦及び現地 NGO と我が国の連携・協力を拡大す
る方策の提言
1.4
調査対象地域
HIV の感染率が最も高いアフリカ地域のうち、VCT に関わる活動がある程度実施されて
おり、情報収集が可能な以下 6 カ国を調査対象とした。以下 6 カ国のうち、ウガンダ、
ガーナ、南アフリカ、ザンビアにおいては現地調査を実施したが、ケニア、タンザニア
については、調査期間の制限により、二次資料及び電話等による関係者インタビューに
よりデータを収集した。
1-2
表1-2:調査対象国
1.
2.
3.
4.
5.
6.
1.5
担当
ウガンダ
ザンビア
南アフリカ
ガーナ
タンザニア
ケニア
調査方法
現地・国内調査
現地・国内調査
現地・国内調査
現地・国内調査
国内調査
国内調査
調査団の構成
本調査は次の 4 名で実施した。
表1-3:団員リスト
1.
2.
3.
4.
1.6
担当
総括(政策提言)
研究員(HIV/AIDS)
研究員(ODA/NGO 連携)
研究助手(国内調査)
氏名
和田 知代
井田 暁子
角井 信弘
秋吉 恵
所属
HANDS
HANDS
ジョイセフ
HANDS
調査期間と作業工程2
本調査は、2002 年 12 月∼2003 年 3 月に実施され、作業工程は以下のとおりであった。
1.7
① 国内準備期間
2002 年 12 月∼2003 年 1 月
② 現地調査期間
2003 年1日∼2 月
③ 国内整理期間
2003 年 2 月∼3 月
調査実施の基本方針
本評価調査は表 1-4 に示した 4 つの基本方針の下に実施された。
表1-4:調査の基本方針
①
VCT サービスを HIV/AIDS 対策全体とのかかわりの中で分析・検証する。
②
これまでに蓄積された VCT に関する経験を包括的に俯瞰し、科学的根拠に基づいて
検証することにより、導き出される成果や課題を我が国の HIV/AIDS 戦略の策定と
実現に効果的に生かすことを目指す。
③
アフリカにおける VCT サービスの特徴や特殊性についての理解を深め、我が国の本
分野における支援の実効性を高めるための基礎的な情報ベースを構築する。
④
想定される本調査報告書の対象読者グループごとの異なるニーズを認識し、それに
合致する明確な成果物を提示する。
2
現地調査日程表は添付資料集1を参照されたい。
1-3
① HIV/AIDS 対策と VCT サービス
VCT サービスは、HIV/AIDS 対策の中で、「予防」と「ケア」という二つの大きなニーズ
に応え、またこの二つの活動を繋ぐ役割も果たすと期待されている。VCT は HIV/AIDS
に関係する人々やコミュニティに対して、様々な予防とケアに関わるサービスを提供す
る重要な入り口として位置づけることができる。このようなことから、本調査では VCT
サービスを独立した活動として取り扱うのではなく、HIV/AIDS 対策全体の中において
理解、分析する方針をとる。
② VCT サービスの包括的検証
本調査では、アフリカ地域のエイズ問題と VCT サービスに焦点を当てている。しかしな
がら、エイズ問題は全世界共通の問題であり、VCT サービスも、日本を含む先進国及び
アフリカ以外の途上国においても展開されており、これまでに様々な経験が蓄積されて
きている。それゆえ、本調査においては、関係者インタビューや二次資料を通じて調査
対象であるアフリカ地域以外での VCT サービスに関するデータを収集し、より包括的な
VCT サービスの検証につとめる。
③ VCT に関する基礎的情報データベースの構築
本調査は、アフリカ地域を中心とした VCT サービスにかかわる情報を可能な限り収集・
分析し、本地域において我が国が支援するにあたっての有用なデータベースを整備する
方針である。
④ 調査報告書の主たる読者グループのニーズを意識した調査結果の提示
VCT サービスを含む HIV/AIDS 対策を展開するためには、多くのステークホルダーが効
果的に連携することが不可欠である。このようなステークホルダーの多様なニーズを認
識した上で、特に本調査結果を直接的に活用することが期待される、以下3つのグルー
プのニーズを念頭におき、実用的かつ具体的な成果物を提示する。
表1-5:調査報告書の主たる対象読者とVCTサービス展開に必要な情報
主たる対象読者
外務省本省
JICA 本部
在外公館
JICA 現地事務所
本邦 NGO
上記三者共通
VCT サービス支援に必要な情報
・ アフリカ地域における我が国の HIV/AIDS 戦略と VCT サービスのあり
方
・ 我が国 NGO による VCT サービス支援案件実施の可能性
・ JOCV 等の VCT サービスへの活用の可能性
・ 我が国の ODA スキームによる VCT サービス支援に関わる本邦/現地
NGO、現地地方政府、及び研究機関との連携の可能性
・ 本邦/現地 NGO による HIV/AIDS 分野草の根案件の可能性
・ アフリカにおける VCT サービス支援の実施可能性
・ アフリカにおいて VCT サービス支援を実施する際の情報入手
・ 我が国の ODA スキームを活用して、本邦 NGO がアフリカ地域におい
て VCT サービスを展開することを促進する方策
1-4
1.8
調査実施の方法
基本的な調査の流れは次頁の図 1-1 に示すとおりである。なお、調査方法としては、文
献やウェブサイトなどからの文献資料調査、国内外の関係者を対象としたインタビュー
調査(セミストラクチャード・インタビュー:Semi-structured Interview)3、現地におけ
る VCT サイトなどでの直接観察調査を採用した。各調査手法によるサンプル数は、表
1-6 のとおりである。
図1-1:調査の流れ
第2章:
第3章:
サハラ以南アフリカにおける
HIV/AIDS対策
VCT サービスの運営
第4章:
第5章:
サハラ以南アフリカにおける
VCT サービスの現状と課題
HIV/AIDS 対策と VCT サービス支
援にかかわる日本の取り組み
第6章:
アフリカにおける HIV/AIDS 分野の協力と
VCT サービス支援策に関する提言
表1-6:調査方法ごとのサンプル数
調査方法
収集データの種類
・ VCT ガイドライン/ポリシー
・ VCT サービスマニュアル
文献資料調査
・ VCT サービス成功例
・ VCT サービスのための広報教材、など
・ 調査対象国政府機関
・ 調査対象国 NGO
・ 在調査対象国国際機関
インタビュー調査
・ 在調査対象国国際 NGO
(Semi-structured interview)
・ 在外日本大使館
・ JICA 本部、JICA 在外事務所
・ 国内 NGO
・ VCT サイト
直接観察調査
・ 血液検査レファレンス・ラボ、など
3
サンプル数
167
52
18
カギとなる質問項目のみをあらかじめ用意し、インタビューの過程で気が付いた点があれば、その点をさら
に掘り下げて質問していくインタビュー方法。Yes/No 形式のもの(ストラクチャード・インタビュー)と違い、
質問者側が認識していない点を引き出すことができるなど定性的な情報収集が可能となる。
1-5
【1】
第2章: サハラ以南のアフリカにおけるHIV/AIDS対策の現状
HIV/AIDS 対策の要として認識されはじめている VCT サービスについて調査・分析す
るにあたり、まず、今回の調査対象地域であるアフリカにおける HIV の感染状況と大
枠としての HIV/AIDS 対策の現状を調査した。調査方法としては、各種文献やウェブサ
イトなどの資料を使っての文献資料調査を採用した4。
【2】
第3章: VCTサービスの運営
VCT サービスが HIV/AIDS 対策の要として認識され始めたのは比較的最近のことである。
それゆえ、VCT サービスの基本的定義や考え方は UNAIDS などによって規定されている
ものの、具体的内容については各国・各組織で様々である。よって、本調査の導入部分
において、VCT サービスについての国際的な共通認識について確認するとともに、VCT
サービスの一般的な成果や課題について検証を行った。調査方法としては、各種文献や
ウェブサイト等からの資料を使っての文献資料調査を採用した5。
【3】
第4章: サハラ以南アフリカにおけるVCTサービスの現状と課題
アフリカにおける VCT サービスの現状と課題を検証するため、ザンビア、ウガンダ、ガ
ーナ及び南アフリカにおいて現地調査を実施し、政府機関、国連機関、国際 NGO、現地
NGO、日本大使館、JICA 事務所などにおいて、関係者に対するセミストラクチャード・
インタビュー調査、及び文献資料調査を実施した6。また、実際にいくつかの VCT サイ
トを訪問し、VCT サイトでの活動状況について直接観察調査を行った。さらに現地調査
以外に、タンザニア及びケニアについても、文献資料調査、及び日本大使館、JICA 事
務所、JICA 本部の関係者に対し、電話によるセミストラクチャード・インタビュー調
査を実施した。
【4】
第5章: HIV/AIDS対策とVCTサービス支援にかかわる日本の取り組み
VCT サービス支援にかかわる日本の取り組みについて文献資料調査をするとともに、外
務省本省、JICA 本部、調査対象国の日本大使館、JICA 事務所、及び本邦 NGO 関係者に
対し、HIV/AIDS 対策と VCT サービス支援にかかわる日本の取り組みの現状と課題につ
いてのセミストラクチャード・インタビュー調査を実施した7。さらに、本邦 NGO の参
加を得て「HIV/AIDS 対策と VCT サービスに関する NGO ワークショップ」を開催し、
本邦 NGO による同分野へのかかわりについても情報収集を行った。8
4
5
6
7
8
収集した二次資料については、巻末の添付資料を参照されたい。
収集した二次資料については、巻末の添付資料を参照されたい。
インタビューに使用された質問項目については、巻末の添付資料を参照されたい。
インタビューに使用された質問項目については、巻末の添付資料を参照されたい。
本ワークショップの記録については、巻末の添付資料を参照されたい。
1-6
第6章: アフリカにおけるHIV/AIDS分野の協力とVCTサービス支援策に関する提言
上記【1】から【4】で収集したデータをもとに、今後の我が国によるアフリカ地域に
おける HIV/AIDS 分野の協力と VCT サービス支援策について以下4つの視点から分析し、
提言を導きだした。
①
アフリカにおける VCT サービス支援に関するニーズ
②
我が国の援助スキームを利用した VCT サービス支援の可能性
③
我が国の援助スキームを利用した VCT サービス支援の計画枠組み
④
国際協力のパラダイム転換と HIV/AIDS 及び VCT サービス支援に関する今後の
課題
1.9
分析および提言抽出の方法
前述の調査で得たデータを基に、以下【1】∼【3】のような視点から、今後の我が国
によるアフリカ地域における HIV/AIDS 分野の協力と VCT 支援活動に関する提言を導き
だした。
【1】
アフリカにおけるVCTサービス支援に関するニーズ
アフリカにおける VCT サービスの推進に必要なニーズに関して、VCT サービスの主要コ
ンポーネントごとに、以下のような枠組みに基づいて分析した。
表1-7: アフリカにおけるVCTサービス支援に関するニーズ分析の枠組み
VCT サービス主要コンポーネント
人的
ニーズ
技術・運営
ニーズ
設備・資機材
ニーズ
財政的
ニーズ
コミュニティ啓発と政策提言
VCT サイトにおける活動
テスト後のケアとサポート
VCT プログラム運営能力強化
さらに、アフリカにおいて VCT サービスを支援する際に検討すべき横断的な課題を表
1-7 に挙げ、提言を行った。
1-7
表1-8: 我が国によるVCTサービス支援に関するセクター横断的ニーズ
①
青少年、生産業従事者、及びその他ハイリスクな社会的弱者に焦点を当てた VCT
サービス
【2】
②
HIV/AIDS 対策と VCT サービスにおけるジェンダー・メインストリーミング
③
他セクターにおける HIV/AIDS 配慮と VCT プログラムの成否
④
HIV/AIDS と貧困対策
我が国の援助スキームを利用したVCTサービス支援の可能性と課題
次に、我が国の援助スキーム利用したアフリカにおける VCT サービス支援の可能性を、
表 1-8 に示す援助スキーム枠組みの中で検討した。
表1-9: 我が国の援助スキームを利用したアフリカにおけるVCTサービス支援の可能性分析の枠組み
VCT サービス主要コンポーネント
支援
の
種類
我が国による
援助スキーム
プロジェクト
実施型
資機材・設備
供与型
人材
派遣型
コミュニティ啓
発と
政策提言
VCT サイト
における
活動
テスト後の
ケアと
サポート
VCT
プログラム
運営能力強化
NGO 支援無償
草の根協力
プロジェクト
技術協力
プロジェクト
無償資金
協力事業
特別機材供与
専門家派遣
海外青年協力隊
現地国内研修
研修型
第三国研修
一般特設
調査型
開発調査
特定テーマ評価
【3】
我が国の援助スキームを利用したVCTサービス支援の計画枠組み
次に、上記のような VCT サービス支援を実施するにあたっての計画枠組みについて、日
本の ODA 案件の計画・運営・評価に現在使用されているプロジェクト・デザイン・マト
リックス(Project Design Matrix: 以下、「PDM」と表記する)の枠組を使って、以下二
つの視点から、VCT サービス案件計画を検討した。
①
ODA スキーム別(表 1-10)
②
非 HIV/AIDS 分野案件への VCT サービス統合(表 1-11)
1-8
表1-10: 我が国の援助スキームによるVCTサービス支援案件PDM枠組み
プロジェクト
実施型
資機材・
設備
供与型
人材
派遣型
研修型
最終受益者
(ターゲット・グループ)
上位目標
プロジェクト目標
成果
活動
表1-11: 非HIV/AIDS案件へのVCTサービス統合型案件PDM枠組み
他の保健・医療
分野案件
教育案件
緊急支援案件
村落開発
案件
最終受益者
(ターゲット・グループ)
上位目標
プロジェクト目標
成果
活動
【4】
HIV/AIDS国際協力のパラダイム転換とHIV/AIDS及びVCT活動支援に関する今後の課題
本報告書の最後に、今後の我が国による VCT 活動支援を考える際に検討されるべき、国
際協力のパラダイム転換に関わる重要な課題について議論した。HIV/AIDS 及び VCT 活
動は、途上国援助の分野の中では比較的新しいものであるため、他分野と比較すれば、
援助手法がまだ十分に確立されていない。それゆえ、昨今の国際協力の中で挙げられて
いる以下ふたつの重要な課題に対し、より取り組みやすい状況にあるといえる。今後、
この二つのパラダイム転換を十分考慮しながら我が国による当該分野の支援計画を立
てていく必要がある。
①
「プロジェクト」から「プログラム」へ
②
「技術移転」から「技術獲得」へ
1-9
第2章 サハラ以南のアフリカにおけるHIV/AIDS対策の概観
2.1
本章のねらい
本調査の中心テーマであるVCT(Voluntary Counseling and Testing)サービスは
HIV/AIDS対策において重要な役割を果たすとはいえ、対策全体から見ればその一部分
を構成するにすぎない。VCTサービスの重要性は、このサービスがHIV感染予防と感染
者へのケア・サポートの入り口となりうる点にある。こうした性格上、VCTサービスの
成果は、実施されているHIV/AIDS対策全体の充実度、特にHIV感染者へのケア・サポー
ト体制の整備状況によって大きく左右されると言える。HIV検査の精度はもとより、HIV
感染者を受け入れ、支援できるコミュニティの環境づくり、HIV陽性と判明した人たち
とその家族への医療及び精神的ケアの提供、HIV陰性と判明した人たちを対象とする啓
発活動、安全な性行動の奨励やコンドームの配布などが連動して実施されることによ
って、VCTサービスは初めてその目的を達成するからである。このようなことから、VCT
サービスを考える上でまずHIV/AIDS対策の概要を理解することが非常に重要となる。
特に、サハラ以南のアフリカにおけるHIV感染の拡大傾向と実施されているHIV/AIDS
対策は、アジアや中南米地域のそれと異なる部分も多く、アフリカにおけるVCTサービ
スを考えるにあたってこのような差異を認識することは重要である。
そこで本章では、サハラ以南のアフリカにおけるHIV/AIDS対策について、以下の点を
中心に概観した。
2.2
①
サハラ以南のアフリカにおけるHIV感染状況とその特徴
②
アフリカ地域レベルにおける主要なHIV/AIDS対策政策の枠組み
③
HIV/AIDS対策実施における3本柱
④
国家レベルにおけるHIV/AIDS対策実施モデル
⑤
HIV/AIDS対策における成功の要因分析
⑥
HIV/AIDS対策重点項目
サハラ以南のアフリカにおけるHIV感染状況とその特徴
2002年12月現在、全世界で約4,200万人がHIVに感染もしくはAIDSを発病しており、そ
の70%にあたる2,940万人がサハラ以南のアフリカ地域に居住している1。2002年に新
たに感染した500万人のうち、およそ350万人がサハラ以南のアフリカにおける感染で
1
以下、断りの無い場合には「アフリカ」はサハラ以南のアフリカを指す。
2-1
あるといわれている2。
表2-1が示すように、アフリカにおけるHIV感染状況は他の地域に比べて非常に深刻で
ある3。現時点におけるHIV感染者数に加え、新たな感染者数が示す感染の広がりの速
度も依然衰えていないことがわかる。
表2-1:2002年末時点における世界のHIV感染状況4
感染
開始時期
地域
全世界
【1】
HIV/AIDS
感染・発
病者数
2002年の
新 た な HIV
感染者数
4,200万
500万
成人HIV
感染率
(15-49歳)
HIV 感 染
者のうち
女性が占
める割合
成人感染・
発病者における
主な感染経路
サハラ以南の
アフリカ
70年代後半
2,940万
350万
8.8%
58%
異性間性交渉
南部・東南アジア
80年代後半
600万
70万
0.6%
36%
異性間性交渉
麻薬注射
東アジア・
太平洋地域
80年代後半
120万
27万
0.1%
24%
麻薬注射
異性間性交渉
男性間性交渉
感染パターンとハイ・リスク・グループ
多様なアフリカ全体をひとまとめに論ずるのは難しいが、この地域におけるHIV/AIDS
感染拡大の特徴として、以下のような共通性があげられる。
・
異性間性交渉が主な感染経路である。
・
女性、特に15歳から24歳までの若い女性5と中高年男性における感染率が高い6
・
若者における感染率が高く、新たな感染者の増加も他の年齢層に比較して急速
に進んでいる。
・
「モーバイル・グループ(Mobile Group)」と呼ばれる単身長距離移動者(例:
兵士、難民、国内避難民、長距離トラック運転手、船乗り、出稼ぎ炭鉱労働
者など)における感染率が高く、移動先の地域における感染源となっている。
・
貧困層におけるHIV感染率が比較的高い。7
2
AIDS Epidemic Update, UNAIDS/WHO, 2002
ただし、大きな人口を抱える中国やインドにおいては、HIV感染率が低いにもかかわらず、絶対的な数とし
ては多くのHIV感染者が存在する。現在、世界最大数のHIV感染者を抱える南アフリカについで多数の感染者
をかかえるのはインドである。
4
AIDS Epidemic Update, UNAIDS/WHO, 2002
5
世界保健機関の定義によると、15歳から24歳までの年齢層を「若者」(young people)と呼ぶ。15歳から19歳
までの年齢層については、「青年」(adolescent)の語を用いる。
6
例えば、1997年のケニヤ、キスム県におけるデータでは、20-24歳の女性と30-39歳の男性において最も高い
HIV感染率が記録されている(WHO, 1997)。ただし、実際の感染時年齢は報告より前であった可能性も高い。
7
例えば、貧富の格差が極端に激しい南部アフリカ諸国においては、貧困層を中心に高いHIV感染率が見られ
る。若い男女における感染率が高い傾向にあることは、これらの年齢層が基礎教育などを受けられるだけの収
入を必要としているにもかかわらず、収入源が極めて限られており、失業率が高いことにも関係していると考
えられる。
3
2-2
・
紛争・内戦地域での感染率が比較的高い。8
若い女性と中高年男性にHIV感染率が高いことは、HIV感染にジェンダーと年齢に関す
る社会的な要因が深くかかわっており、このような視点を取り入れたHIV/AIDS対策が
必要であることを示唆する。アフリカの多くの社会において、未婚の女性は社会的及
び経済的に最も弱い立場にあり、貧困の問題と共に、若い女性がHIV感染から自分を守
ることを難しくしている。一方、中高年男性は社会の中でも比較的富裕な層であり、
若い女性はHIVに感染していないという迷信をもとに買春を行うケースが多い9。近年
は比較的貧しい若い男性の買春が新たな問題として指摘されており、若い男女および
中高年層を視野に入れた対応が望まれている。また、若者全体においてもHIV感染率は
高く、HIV感染者の3人に1人以上(34%)が15歳から24歳の若者(特に若い女性)であ
る。また、感染者の10人に1人以上が15歳以下の子供である。
このようなHIV感染パターンを持つアフリカにおける対策としては以下のような取り
組みの組み合わせが効果的であると考えられる。
・ 全ての人々を対象とするジェンダー教育・啓発活動10
・ 安全かつ責任ある性行動を促すための行動変容11
・ 若者や貧困層の経済的自立を助けるための職業訓練や所得創出
【2】
地域別感染パターン
サハラ以南のアフリカ地域のなかでもHIV感染率が特に高いのが南部アフリカの国々
である(図2-1参照)。これら南部アフリカ諸国におけるHIV感染率は3人に1人を越えて
いる12。現在、世界最大のHIV感染者数を抱えるのも南アフリカである。
8
紛争時には兵士や他の難民・国内避難民による男女への性暴力が増加する傾向にあることと、人の移動が増
えることに起因すると考えられる。
9
サハラ以南のアフリカ、特に南部アフリカ諸国の一部においては、若い女性と性交渉を持つとエイズが治る、
という迷信が広く出回っており、近年は幼児を含めたレイプ事件が後を絶たない。この問題に関しては、ナミ
ビアや南アを初めいくつかの国々がメディア・キャンペーンなどを通じて一般市民への啓発と若年層の保護を
強化するよう努力を始めており、HIV感染及び望まない妊娠防止を視野に入れた性暴力発生時の迅速かつ的確
な対応の整備の必要性が認識されつつある。実際のシステマティックな対応体制の整備はこれからである。
10
しかし、活動の実施に関してはターゲットごとに絞った教育活動が効果的であることが多い。ウガンダ、ジ
ンバブエ、ナミビアを含む多くのアフリカ諸国においては、男性を対象とする性教育プロジェクトが実績をあ
げている。女性の地位向上を実現するためには、政府という高次なレベルから村レベルまで一貫し、かつ息の
長いアドボカシー活動が必要である。
11
ライフ・スキルなど若者や女性が自分の意志表示を明確にして危険な性交渉から身を守る技術の伝達などを
含む。
12
貧富の格差が激しいこれらの南部アフリカ諸国においては、明確な統計資料は無いものの、黒人貧困層にお
ける感染率は全国の感染率を大きく上回るとみられる。
2-3
図2-1:サハラ以南のアフリカにおけるHIV感染率上位4カ国
(UNAIDS/WHO AIDS Update, 2002)
8.8%
アフリカ
38.8%
ボツワナ
ジンバブエ
33.7%
スワジランド
33.4%
31%
レソト
0
5
10
15
20
25
感染率(%)
30
35
40
このようにHIV/AIDS感染が拡大している南部アフリカでは、国内の社会・経済的な機
能にも深刻な影響が出ている。例えば、2002年に南部アフリカ諸国を襲った食糧危機
の際は、この地域における高いHIV/AIDS感染率とその影響によって社会的セーフティ
ー・ネットが脆弱化していたことで、従来であれば対応可能な程度の食糧不足がより
深刻な食糧危機にまで発展してしまったと見られている13。特にレソト、マラウイ、
モザンビーク、スワジランド、ザンビア、ジンバブエの6カ国は過去数十年間で最悪の
食料危機となり、1,440万人が飢餓の危険にさらされているとみられる。逆にこうした
食糧危機はもともと深刻なHIV/AIDSの感染状況をさらに悪化させるという悪循環を生
んでいる14。
一方、ウガンダ、ザンビアといったアフリカ東南部の国々においては、近年HIV感染率
の低下が複数の研究・調査によって確認されており、HIV/AIDS対策の成功例と考えら
れている。しかし、これらの国々においてもHIV/AIDS課題が完全に解消したわけでは
ない。
セネガル、マリ、といった西部アフリカの国々においては現在のところ1∼1.7%とい
う比較的低いHIV感染率が報告されている。中西部アフリカ地域において5%以上の感
染率が報告されているのは中央アフリカ共和国(12.9%)、カメルーン(11.8%)、コ
13
本来農作業の中心となるべき年齢層がHIV/AIDSに罹患又は死亡したため、各世帯の労働力及び収入が激減す
る一方、そうした欠落を補うための蓄えが底をついたことが食糧不足に対応できなかった原因の一つであると
見られている。その他にも経済政策の失敗などが原因の一部であるとみられている。
14
国連食糧農業機関(FAO)は2002年南部アフリカ諸国におけるHIV/AIDSと食糧危機間における双方向の悪影
響を確認する調査結果を発表している。国連機関はこうした事態の打開に向け、これらの国々に向けた
US$600,000,000以上の資金獲得を目標に共同アピールを発表した。
2-4
ート・ジボワール(9.7%)
、ナイジェリア(5.8%)である。特に、カメルーンは1998
年以来、急激なHIV感染の拡大が指摘されている。
さらに、アフリカの多くの国や国境沿いでは依然として紛争や内戦が続いているが、
このような社会の不安定な状況はHIV/AIDS感染拡大の温床と見られている。紛争状況
においては性暴力が増加し、基本的な保健医療サービスの提供システムが破綻し、全
般的な貧困も急速に増加する一方で、兵士や難民・国内避難民の移動が増加すること
が重なりHIV/AIDS感染が拡大すると考えられている15。これは、サハラ以南のアフリ
カ地域における難民・国内避難民への緊急援助、食糧援助、また貧困撲滅への支援に
おいてHIV/AIDS対策と連携した対策が必要となっていることを例証している。
2.3
主要なHIV/AIDS対策政策の枠組み
【1】
国際的な枠組み
2001年6月に開かれたHIV/AIDSに関する国連特別総会において採択された「HIV/エイズ
に関するコミットメント宣言(Declaration of Commitment on HIV/AIDS )
」が、現在
の国際的なHIV/AIDS対策に関する基本的な枠組みとなっている16。日本を含む世界各
国の政府がHIV/AIDS対策に関して、史上初の時間的枠組みを伴う目標を定めたこの宣
言を採択したことは、極めて重要である。例えば、HIV感染予防に関して以下のような
数値目標が掲げられている。
•
最も感染が深刻な国々においては2005年までに、世界的には2010年までに、
15才から24才の若年人口におけるHIV感染率を25%減少させる
•
HIV母子感染を2005年までに20%、2010年までに50%減少させる
若者のHIV感染予防に関する指標は、2000年に採択された国連ミレニアム開発目標
(Millennium Development Goal)の指標にも含まれており、2003年の3月には各国が
進捗状況を報告することになっている。アフリカ各国もこの報告に向けた準備が進め
られている。
【2】
地域および国レベルの枠組み
サハラ以南のアフリカにおいては、現在40カ国が国家レベルのHIV/AIDS対策の枠組み
である国家戦略を有しており、このうち19ヶ国が国家HIV/AIDS調整機関(National
15
こうした見解は広くHIV/AIDS及び緊急援助に関わる国際機関に支持されている。比較的閉鎖的な難民キャン
プなどにおいては、的確なHIV/AIDS対策によって、周辺コミュニティーよりも低い感染率にとどめることに成
功している例もある。
16
Implementation of the Declaration of Commitment on HIV/AIDS: Core Indicators(http://www.unaids.org)
には、国際レベル、および国家レベルにおけるDeclaration達成の目安となる目標が簡潔にまとめられている。
2-5
HIV/AIDS Coordination Committee)を設置している。こうした国家的な枠組みの確立
は、ここ2年ほどの間に大きく飛躍した17。また、アフリカ地域を統括するさまざま
な機関もHIV/AIDS対策への取り組みに力を入れている。アフリカ経済委員会(Economic
Commission for Africa)、アフリカ・ユニオン(Africa Union)及び南部アフリカ開
発コミュニティ(Southern African Development Community)などは、それぞれ開発
課題のひとつとしてHIV/AIDSへの関わりを強めている。2002年5月には、サハラ以南の
アフリカにおける多くの国が加盟する英連邦(The Commonwealth)もHIV/AIDS感染に
対する地域緊急対策プログラム(Regional Programme of Urgent Response to the
HIV/AIDS Epidemic)を作成した。
こうした国際的な経済・政治会議においてHIV/AIDSが議題として取り上げられる背景
には、HIV/AIDS問題の影響が多岐に及んでいる現実を前に、HIV/AIDSは保健医療を越
えた開発、特に人間の安全保障(Human Security)に関わる課題であるという認識が
受け入れられつつあり、HIV/AIDS対策に対する各国政府の関心がある。
但し、HIV/AIDS対策実施の進捗状況は、実際のところ国によって大きな差がみられる。
特にアフリカは多様な社会経済・歴史的背景を有する多数の国々を抱えており、この
ことを常に念頭においてこの地域におけるHIV/AIDS対策に取り組むことが必要とされ
る。
2.4
HIV/AIDS対策の3つの柱
WHOやUNAIDSをはじめ主なHIV/AIDS対策機関では、一般に、HIV/AIDS対策を次の3つに
分類し、各分野について具体的な戦略及び活動を計画・実施している。
•
HIV感染予防 (Prevention)
•
HIV感染者、AIDS患者へのケアとサポート(Care and Support)
•
HIV感染者、AIDS患者を取り巻く家族、遺児、コミュニティ、さらにケアやカ
ウンセリングを実際に提供する人々の負担の緩和 (Mitigation)
次に、これら3分野における活動について概略を述べる。
【1】
HIV感染予防 (Prevention)
HIV感染予防はHIV非感染者・感染者の両方を対象とする。性行動を行っている人々に
対しては、主に次のような予防活動を行う。
17
AIDS Epidemic Update, UNAIDS/WHO, 2002
2-6
•
HIV及びその他の性感染症の感染防止に関する正確な情報の提供
•
行動変容を促す活動(Behavioral Change Communication)を通じて、安全かつ
責任ある性行動の推進(例えば、性交渉の相手と対等な立場でコミュニケーシ
ョンできる交渉力を高める18、コンドームの使用、禁欲、性感染症の早期発見と
治療の促進など)
•
若者や女性を含む幅広い層の人びとの利用しやすさに配慮した、コンドームの
配布、性感染症治療、カウンセリング、VCTなどのサービスを提供する
•
HIV/AIDS、性感染症、そのほか性に関する事柄についてオープンに話し合うこ
とができ、子供、青少年及び女性の性と生殖に関する権利を含む人権を尊重す
るコミュニティの環境作り
性的に活発でない若年層(さまざまな国における若者の性行動の開始時期に関する調
査結果に基づき、一般的には14歳以下と想定されることが多い)に対しては、情報提
供や安全かつ責任ある性行動を促す、行動変容を目的とした活動が行われている。
また、貧困によって社会的弱者である若者などに対する性的搾取が助長されるため、
特に若い女性を中心に、学校教育の継続に対する支援や所得創出を目的とする活動を
平行して実施することが重要であると言われている。
18
性に関する問題については社会的タブーなどを背景に夫婦間やパートナー間でも話し合うことが難しいこ
とが多く、コンドーム使用などの重要事項については、男性主導で意思決定がなされることが多い。ライフ・
スキルなどの強化によって、男性・女性の両方がお互いを尊重しつつ、性についてコミュニケーションをはか
ることを推進するプロジェクトが各国保健省、ジェンダー省を通じてUNFPAやUNICEFの支援で進められている。
2-7
Box 1 : 若者に焦点をあてた HIV 予防活動
若者は HIV 感染のリスクが高く、各国とも若者に焦点をあてたHIV 感染予防プログラムを実
施しさまざまな成果をあげている。若者が性行動を開始する前に、正確で実用的な性に関す
る知識とコミュニケーション技術を習得することにより HIV から守ることができると考えら
れている。また、性的に活発である若者も、他の年齢層に比べ安全かつ責任ある性行動の受
け入れが比較的容易である。
「結婚前の若者は性交渉を持つべきではない」という考えが根強い多くの国々では、従来若
者には性や生殖に関する正確な情報及び必要なサービス(コンドームの配布、その他の家族
計画サービスや母性保護サービスの提供等)が提供されてこなかった。その一方で、若者が
性的活動を始める年齢は低くなる傾向にあり、貧困の増加と共に比較的裕福な中高年層によ
る性的搾取の対象にされる事例も増加し、若年層における HIV/AIDS を含む性感染症の感染率
も増加傾向をたどっている。その結果、若年層における HIV/AIDS を含む性感染症や望まない
妊娠に対する対策の必要性が認識され、若者が安心して利用できる性と生殖に関する情報及
びサービスを提供する場を作ることの重要性が認識されてきている。
若者を対象とする HIV 予防プログラムは主に正確で実用的な情報・コミュニケーション技術
を提供することにより個々人が HIV/AIDS から自分を守る力を高めるほか、周囲の大人(親、
教師、医療従事者、政治家、首長、宗教関係者等)が、そうした若者達をサポートする社会
環境を作ることに焦点を置いている。(例えば、ウガンダ・ジェンダー省が実施している PEARL
プロジェクトは、学校に行かない若者とその親を対象に、コミュニティセンターを核とした
ピア・エデュケーション、及び保健省と連携した若者向け性感染症検査を実施しており、成
果をあげている。)
こうした努力の結果、南アフリカにおける 19 歳以下の妊娠している女性の間での HIV 感染率
が 1998 年の 21%から 2001 年には 15.4%まで下がった。また、エチオピアのアジス・アベバ
中心部においては産前クリニックを訪問した 15 歳から 24 歳にかけての女性の間での HIV 感
染率が 1995 年の 24.2%から 2001 年には 15.1%まで下がったことが記録されている。ウガン
ダにおいては HIV 感染率の下降と平行して、15 歳-19 歳における妊婦感染率が下降の一途を
辿り、15 歳から 24 歳にかけての若者によるコンドーム使用率が 1995 年から 2000 年の間に 2
倍に増えたのに加え、より多くの若い女性達が性活動の開始を遅らせたり禁欲していること
が報告されている。
さらに、HIV感染予防に関する分野として清潔な輸血供給体制の確立とHIVワクチン開
発への努力が付け加えられる。
【2】
HIV感染者・AIDS患者へのケア及び支援(Care and Support)
HIV感染者及びAIDS患者に対しては、医療ニーズだけではなく精神面も含むさまざまな
ニーズに対して可能な限りのケアと支援の提供が求められる。この分野においては、
コミュニティにねざしたNGOやCommunity-based Organizations(CBO)の役割と貢献が
特に重要である。
2-8
•
保健医療分野におけるケア
現代医療と伝統医療の両方を組み合わせて、日和見感染症の防止と治療、家族
計画、栄養指導などを通じて、HIV感染者やAIDS患者の症状の進行を遅らせるな
ど、日々の生活の質を維持することを目標にした在宅ケアを保健医療面から支
援。抗エイズ薬による治療の導入も現実の課題となりつつある。
•
心理・精神的サポート
HIV感染者・非感染者によるサポートグループ、ソーシャルワーカーおよび宗教
者によるカウンセリングなどを通じてHIV感染者やAIDS患者を精神面から支援
する。
•
社会的サポート
HIV感染者やAIDS患者とその家族への経済的・物質的な支援活動、マルチメディ
アやコミュニティを対象とした会議などを通じて、AIDSと共に生きる人々
(People Living With HIV/AIDS - PLWHA)への偏見・差別をなくす啓発活動や
法的な支援(例えば、PLWHAの権利保護に関する法律と政策の制定及びその適切
な執行の監督、不当な解雇や保険金未払いなどに対する弁護士によるサポート、
死亡後に備えた遺言の作成、残される家族へのサポートの準備)を行う。
【3】
HIV感染者及びAIDS患者を取り巻く人々の負担の緩和 (Mitigation)
HIV/AIDSは感染者・患者本人だけではなく、その家族、コミュニティ、さらにはケア
やカウンセリングを提供する人々にも多大な経済的、社会的、精神的負担をもたらす。
これら周囲の人々の負担を少しでも緩和するためには様々な支援が必要とされている。
例えば、HIV/AIDSによって親を失い遺児となった子供の面倒を見る親戚に対して、遺
児の学校教育を継続できるよう行政やNGOが支援をするといったケースが挙げられる。
また、HIV感染者及びAIDS患者に対するケアやカウンセリングを行う家族やケア・プロ
バイダーを支援する目的で、専門家が定期的に訪問したり、研修・訓練の機会の提供、
必要備品の供給などが行われることもある。このように、感染者を取り巻く人々が過
重な負担に押し潰されることなく継続的にケアが提供できることを目指す支援も重要
となっている。
以上、HIV/AIDS対策の3つの柱について概略を述べた。これらの活動を効果的に実施す
るためには、官民のセクターを越えた関連機関・団体の運営管理能力の強化、必要な
資金の確保、活動のモニタリングや評価、また啓発活動といった各分野に共通するマ
ネジメント分野の強化が必要となる。
2-9
2.5
国家レベルにおけるHIV/AIDS対策実施モデル
一般に、国家的なHIV/AIDS対策に関する政策的な枠組は、以下のような過程を経て形
成される。
図2-2:一般的な国家HIV/AIDS対策の政策枠組み
問題の認識
HIV/AIDSを保健医療の問題としてだけではなく、国政全分野に関わる開発及
び人間の安全保障に関わる課題として認識(通常公的政府声明などに記載)
機関の設置
全セクター(関連省庁及び官民)において整合性のあるHIV/AIDS対策を調整
するために、独立機関を設置(全省庁から独立している場合と保健省内にある
場合がある)
戦略の策定と実施
政府各省庁、研究機関、NGO、地方自治体、医療従事者、商工会議所、ドナーに
よる共同の国家HIV/AIDS対策戦略の策定と実施(通常、実施期間、目標指標及
び各責任者等が限定・記載されている)
行動計画の
策定と実施
国家戦略に基づいて各セクター関連省庁(教育、防衛など.)、及び関連するス
テークホルダーによる エイズ行動計画の策定と実施(それぞれのステークホル
ダーに責任と対策実施を分担)
調整会議の開催
地方自治体レベルでのエイズ対策調整機関の設置と関連ステークホルダーによ
る定期調整会議の開催(中央・地方調整のため、首都のエイズ対策調整機関へ
の議事録の報告がなされる)
活動の実施
各機関・団体による国家戦略・セクター行動計画に基づいたHIV/AIDS対策活
動の全国実施
モニタリング
全国・全セクター共同のHIV/AIDS対策活動結果の定期モニタリング・監督と
戦略・行動計画の修正
2-10
【1】
国内における主要機関の役割
各国によって違いはあるが、HIV/AIDS対策に関連する国内の主要機関は以下の表2-2
の様な組織上の役割分担がなされていることが多い。
表2-2:国内における主要機関の役割
役割
主要機関
National AIDS Council
(又はCommission)
官民を横断する全セクターにおけるHIV/AIDS対策の推進・調整機関。National
Strategic Planなどの主要政策作成の中心となる。中立を守るため、保健省ではなく
大統領府下に置かれることが多い。
NGO、各省庁、国会議員、PLWHA、宗教団体、伝統的首長、伝統的治療者、青年・
女性団体、企業、労働組合など全セクターにわたる代表者をとりまとめる。
セクターをまたがって実施されるHIV/AIDS対策に関する援助・支援の窓口。
Ministry of Health (保健省)
HIV/AIDS/STDs Control
Program
保健医療分野におけるHIV/AIDS対策に関する政策・指針作り、及び調査・研究活
動の調整と実施。
HIV/AIDSは性感染症の一部であるので、性感染症とHIV/AIDSは概して同一プログ
ラムの中で扱われる。
地方政府レベルでの関連政策・指針の実施状況の監督指導。保健医療サービスの
提供と使用に関するモニタリングシステムの管理。
保健医療機器及び薬剤については、保健省を通して地方政府管轄下の病院・クリ
ニック・ディスペンサリーに供給するシステムをとっている国が多い。
NGOや企業・個人による病院・クリニックにおいて提供されている保健医療サービス
の質を監督する権限を有している場合と有していない場合がある。
National Medical Store
保健省下に国内に流通する薬剤を管理する責任を与えられた機関が置かれている
ことがある。保健省への薬剤供与に関する支援を行う場合、こうした機関の利用を
考慮する必要がある。
しかし、国によってはその管理体制や地方政府へのタイムリーな薬剤の供給体制
が整っていないこともあり、機関が存在する場合でも、その利用度は異なる。
地方政府やNGOへの薬剤供与に関しては、こうした機関を通さずに直接供与されて
いる場合も多い。各国での確認が必要である。
その他の省庁
Provincial/District
Directorates of Health (又
はHIV/AIDS/STDsなど)
管轄セクターにおけるHIV/AIDS対策に関する政策・指針作りとその執行
通常HIV/AIDS担当官が任命されている。
管轄地域におけるHIV/AIDS対策活動の調整・監督・実施
国によっては、保健省が定めたガイドラインを基に地方政府独自のガイドラインを作
成、実施することがある。
国が定めたガイドラインを一律に使用する場合には、その実施の監督とともに、保
健省への報告も行う。
NGOs・CBOs、PLWHA、企
業、宗教団体、労働組合等
の市民団体
The National Institute of
Virology/Blood Bank
ドナー(国際NGOを含む)
該当分野におけるHIV/AIDS対策活動の執行、政府による政策・指針づくりへの技
術的貢献と政策提言
血液検査の実施と管理
国内に流通する血液製プロダクトなどの管理
国内カウンター・パートへの資金・技術援助、政策・指針作りへの技術的支援と政策
提言
2-11
【2】
国内におけるエイズ対策調整のメカニズム
一般的に国内におけるエイズ対策調整メカニズムは、以下図2-2のケニアにおける例のように
なっている。
図2-3: 国内におけるHIV/AIDS関連の調整メカニズム(ケニアの例)
大統領室
Office of the President
国家AIDSコントロール評議委員会
National AIDS Control Council
保健省HIV/AIDS/STDs
コントロールプログラム
州AIDSコントロール委員会
Provincial AIDS Control Committees
市民社会
Civil Society
各省庁HIV/AIDS
ユニット
県AIDSコントロール委員会
Provincial AIDS Control Committees
NGOs
宗教団体
コミュニティ
【3】
マルチセクター・アプローチとHIV/AIDS対策の主流化
国家レベルでHIV/AIDS対策を実施する上で要となるのがマルチセクター・アプローチ
である。ウガンダ、ザンビアなどにおけるHIV/AIDS対策の成功は、こうしたマルチセ
クター・アプローチに早くから取り組み、それを制度的・政策的に確立したことも大
きく寄与したと考えられており、UNAIDSなどによるHIV/AIDSに関する政策提言の中で
も強調されているポイントである。以下にマルチセクター・アプローチの要点をまと
める。
サハラ以南のアフリカ諸国においては、HIV/AIDSが社会のすべての分野に深刻な影響
を及ぼしていることから、HIV/AIDSを保健医療分野だけでなく、開発、さらには国家
防衛の課題としてとらえる考え方が普及している。このようなマルチセクター・アプ
ローチの考え方は、HIV/AIDS対策の策定と実施においても反映されている。各省庁お
よび地方政府代表19、NGOやCBO、研究機関、民間企業代表者などが共同してHIV/AIDS
19
地方分権化が進みつつある国々では、特に地方政府の代表を主要な政策決定の場に招くことが恒常化してい
る。
2-12
企業
対策を実施するため、全セクターにわたる対策活動を調整する政府機関が設立され、
各分野におけるHIV/AIDS対策の実施を支援している。全セクターにおける対策の柱と
なる国家HIV/AIDS対策戦略は、関連する主要なステークホルダーが参加する会議によ
って決定され、それにもとづいたセクター別HIV/AIDS対策行動計画がセクター内で策
定・実施されることが多い。こうした状況を踏まえ、援助国側も保健医療以外の分野
におけるHIV/AIDS対策を統合し、さらにはHIV/AIDS対策を主流化することを支援する
ことが求められている。
以下、緊急援助の例をとって保健医療以外の分野におけるHIV/AIDS対策の統合の事例
について簡単に述べる。
Box 2 : 緊急援助における HIV/AIDS 対策
紛争や内戦状況下で HIV/AIDS に関する状況が著しく悪化することは広く指摘されている。紛争時
には一般市民が巻き込まれることが多く、貧困の増大、社会構造の破壊、性暴力の増加、強制移
動、法的支配の破壊、そして保健医療システムの崩壊など、全ての要因が HIV の感染拡大、及び
感染者に対するケアの欠如を増長する。ルワンダにおいては、1994 年の大虐殺を機に、農村地域
での HIV 感染率が1%から 11%に跳ね上がったとされている。また、虐殺発生時に強姦された女
性のうちの 17%が HIV に感染していた。家族から離れ移動することの多い兵士もまた、HIV 感染
の標的である。ウガンダにおいては 1997 年の一般成人の HIV 感染率が 9.5%に対し、兵士は 27%
の感染率を記録した。これは、コンゴ民主共和国との国境で紛争が続いていた時期と重なってい
る。内戦が続くスーダンの一部地域では、生存のために性を売ることを余儀なくされているシン
グル・マザー達のケースが報告されている。
こうした状況を踏まえ、緊急援助に HIV/AIDS 関連の情報及びサービスを効果的に組み込むことは
非常に重要になってきている。UNHCR、WHO、および UNAIDS は近年難民や国内避難民を対象とする
緊急援助に際しての HIV/AIDS 対策実施の指針として、「初期段階における基本的なサービス・パ
ッケージ」(Minimal Initial Services Package)をまとめた。このパッケージには、HIV/AIDS
に関する情報、コンドームへのアクセス、性暴力被害者への 72 時間以内における緊急避妊薬の配
布と紛争状況において必要とされる最小限の保健医療サービスの内容等が記されている。また、
「緊急時における HIV 対策の指針」(Guidelines on HIV Interventions in Emergency Settings)
も現在改訂中であり、将来の紛争分野での HIV/AIDS 対策強化のツールとして期待される。実際の
サービス・デリバリーにおいては、NGO を中心とする多数の機関の連携が必要となるため、状況
が変化する中での迅速な調整活動も鍵となる。
このようにHIV/AIDS対策におけるマルチセクター・アプローチの重要性はアフリカ地
域諸国でも認知されており、さまざまな試みが行われている。しかし、多くの中央省
庁や関係する団体が関与することから、効果的な実施のためには明確な責任分担に関
する合意が形成されている必要がある。特に、国家AIDSコントロール評議委員会のよ
うな省庁の枠組みを越えて国家レベルでHIV/AIDS対策を進める目的で設置された機関
と、保健医療全般について責任を負う保健省との関係が明確に整理されていない場合、
両者の方針やHIV/AIDSプログラムの連携が失われるケースなども見られ、注意が必要
である。
2-13
【4】
地方分権化におけるHIV/AIDS対策
近年、多くのアフリカ諸国において地方分権化が急速に進んでいる。このような地域
では、HIV/AIDS対策活動の策定、実施、調整に関しても地方政府が最終的な決定権を
持っている場合が多い。地方分権化が進んだ場合、HIV/AIDS対策における保健省をは
じめとする関連中央省庁の役割は、政策やガイドラインなどを策定することと地方政
府に対する技術支援を行うことに重点が置かれることが多いが、この点も国により大
きく異なる。例えば、ウガンダでは地方政府は該当地域におけるHIV/AIDS対策活動の
調整、地方政府以下のレベルにおける対策活動の監督、中央省庁への監督結果報告が
その中心的な役割となっている。しかし南アフリカにおいては各郡が国のガイドライ
ンをもとに地域のニーズと政策にあった独自のガイドラインを策定し、プログラムの
策定から実施、監督、調整などすべてにおいて指揮をとっている。中央政府は郡政府
が必要とする資金、物資、技術の提供と人的支援や調整を行う役にとどまる。
どのような形態をとるにせよ、地方分権化が進行する中でのHIV/AIDS対策にとっての
緊急の課題は、地方政府とそれ以下のレベルにおける政府やNGO・CBOの全般的な能力
強化である。アフリカ地域におけるHIV/AIDS問題の深刻さに対応すべく中央政府やド
ナー機関などが強力なリーダーシップを発揮して、HIV/AIDS対策に関連する政策決定
が先行する傾向にあるが、地方レベルではこのような政策を実施するために必要な訓
練を受けた人材が非常に不足しているという現実がある。また、計画されたHIV/AIDS
対策活動を行うのに必要な基本的インフラストラクチャーが確立していないことも多
い。関連中央省庁と連携した既成の政策やガイドラインにある優先事項の執行を目指
した地方レベルでの能力強化にたいする支援が望まれる。
【5】
NGOと政府機関
アフリカにおけるHIV/AIDS対策においては、志のある市民やNGO(医師団体、各種宗教
組織、CBOなど)が先駆けて対策活動を行い、HIV感染の低下に貢献した部分が極めて
大きい。この点はVCTについても同様であり、ほとんどの国においてVCTは現地のNGO
によって手探りで始められ、その成功がモデル化された後で保健省による活動地域の
拡大やガイドラインの設定などへと至った。保健省が初めて本格的にVCTに着手するの
は、保健省が従来提供する母子保健サービスに、VCTなどHIV/AIDS関連のサービスを組
み合わせたHIV母子感染予防プログラムが導入される時期であることがしばしば見ら
れる。
その一方、政府からの支援を受けられないローカルNGOは、資金繰りに苦労する例が多
い。コミュニティが必要とするサービスを提供し実質的な効果をあげているローカル
NGOは多く存在するが、一部のドナーを除き小規模なローカルNGOへの直接的な支援は
これまで重点分野とはみなされてこなかった。援助がなされる場合でも小額であるこ
とが多く、複数のドナーに対し違った書式の経理報告書を四半期ごとに提出する事務
処理に多くの時間が費やされる結果となることも多く、必ずしも使い勝手の良い支援
2-14
ではない。
こうした課題に対する取り組みとして、現地NGOが自らのネットワーク化を促進し、こ
れを通じて所属各NGOのマネジメント能力の強化やその他必要な支援を提供すること
が考えられる。いくつかの国にはすでにHIV/AIDS関連団体のネットワークが存在し、
そうしたネットワークを通じ特定分野で活動している現地NGOとコンタクトをとるこ
とが容易になってきている20。ドナー機関にとっては、多くの団体の中から適切な支
援対象ローカルNGOを選ぶ力が必要とされることは言うまでもない。ローカルNGOに対
する支援はその国全体のHIV/AIDS関連サービスの向上とそれを支えている団体及び個
人にとって非常に有効な投資となり、こうしたサービスが継続的に提供されることを
可能にする重要な役割を持つと考えられる。
2.6
HIV/AIDS対策における成功の要因分析
【1】
HIV/AIDS対策における成功の要因
HIV/AIDS対策の成功の要因は、そのモデルとされるウガンダなどの国々においても科
学的に解明されているとは言い難く、今後の詳細な研究を待つ必要がある。HIV/AIDS
対策の成功要因を特定し実際に指標を使ってそれらを測ることが難しいのは、「成功
の結果」がHIV感染率の低下や新たなHIV感染者の減少など、数値で示すことができる
のに対し、このような結果を生み出す背景には、社会、経済、政治といった、数字で
は計測しがたい質的な「成功の要因」が折り重なっているからである。しかし現実の
プログラム実施には、こうした要因をある程度理解する必要がある。以下は、HIV/AIDS
対策の成功に必要な要因として一般的に認識されている主なものである。
•
安全かつ責任ある性行動の促進(コンドーム使用の増加、性行動開始時期の遅延、
一人あたりの性的パートナーの減少、HIVを含む性感染症の検査・治療を受ける
人の増加)
•
高いレベルの政治的支援(大統領などによるHIV/AIDS対策への強い支持の表明
など)
•
マルチセクター・アプローチによる官民、分野を越えた包括的なHIV/AIDS対策
の実施
•
PLWHA自身の対策活動への実質的参加とオーナーシップ
•
主要機関における対策実施に必要な能力と透明性の存在
•
実施機関の能力を育成し対策活動を実施してゆくに十分な資金と技術的支援
•
ジェンダー及び貧困と連動したHIV/AIDS対策
20
例えば、南アフリカやナミビアでは、こうしたHIV/AIDS関連団体のディレクトリーを保健省またはNGO団体
が発行しており、ウガンダにおいても、こうしたネットワーク団体が存在する。
2-15
一方、安全かつ責任ある性行動の促進を達成するために、どのような活動をいつ実施
すべきなのかについてはいまだに議論が多数あり、情報提供や知識の習得を越えた行
動の変革(Behavioral Change)を促すBehavioral Change Communication (BCC) 21が
その期待を担い、現在試行錯誤が続けられている。
【2】
HIV/AIDS対策における成功の指標
何をもってHIV/AIDS対策の成功、または失敗、問題点などを判断するかは依然として
大きな課題であり、モニタリング・評価の重要性が増す中で、緊急に合意されなけれ
ばならない問題のひとつである。HIV感染率を下げることに成功したとされている国々
では、主に次の指標が成功の目安と考えられている22。
①
量的指標:
•
保健医療施設を訪れた妊産婦におけるHIV感染率の低下
•
新たなHIV感染者の減少
•
10−24歳におけるHIV感染率の低下23
•
10−24歳における新たなHIV感染者の減少
②
行動変容に関する指標:
•
初めて性交渉をもった年齢の上昇
•
非定期的な性的パートナーとの性的関係の減少24
•
コンドームの使用の増加
•
初婚年齢の上昇
また、成功事例の基準は、おおまかには次のように考えられている。これらの基準は、
HIV/AIDSに関するプログラムやプロジェクトを評価する際にも有用であると考えられ
る。
•
どの施策がHIV感染率の低下にどのように貢献したかが明らかである
•
効率性
•
効果
•
各レベルの関与とオーナーシップ、技術的専門性、技術・資金・人的資源面に
おける持続性が維持できるシステムが存在する
•
人権の尊重(HIV検査におけるインフォームド・コンセントやプライバシーの保
21
ライフ・スキルや政策提言などを含むより広い概念で、従来のInformation Education Communication (IEC)
から派生した経緯があり、現状では様々なモデルが試行されている。
22
“A Measure of Success in Uganda: the Value of Monitoring Both HIV Prevalence and Sexual Behaviour”
(UNAIDS, 1998)
23
この年齢層は概して、全人口のHIV感染率・新感染者の増加を比較的よく反映すると考えられている。
24
定期的な性的パートナーとは、1年以上性的関係が続いているパートナーを指す。
2-16
護、PLWHAの人権擁護など)が保障されている
•
当該プロジェクト、プログラムの実施から得られた経験や教訓が、他の状況に
適用できるレベルまで分析されている
2.7
HIV/AIDS対策重点項目
HIV感染予防のための行動変容, 感染者へのケア、その家族・コミュニティへの支援な
ど、全ての分野が更なる強化を必要としているが、以下の分野は特にその重要性が大
きな重点項目と言える。
•
HIV感染者へのケア、およびその遺児を含めた家族・コミュニティへの支援の
強化
•
社会的な弱者(難民、国内避難民、若者男女、性産業従事者、Mobile Groups
など)に焦点をあてた対策の強化
•
HIV感染者と社会的な弱者自身のHIV/AIDS対策の策定・実施過程への積極的な
参加
•
HIV感染者に対する偏見・差別削減への努力
•
地方レベルにおける対策実施機関の能力強化
•
政策決定に必要な基本データを正確かつ効率的に収集・共有し、政策に効果
的かつタイムリーに利用するためのモニタリング・評価体制の確立(特に地
方政府レベルにおいて緊急の課題)
•
成功事例の効率的な分析、記録と共有
•
貧困削減やジェンダーのメインストリーム化を組み合わせた総合的なアプロ
ーチ
•
対策活動及びそれらへの支援の調整強化
2-17
Box 3 : ジェンダーのメインストリーム化とHIV/AIDS対策
サハラ以南のアフリカにおいて若者の HIV 感染が深刻な問題であることはすでに述べた。
中でも、若い女性への感染率は平均で若い男性の感染率の 2 倍を上回る。2001 年現在、
6-11%の若い女性たちが HIV に感染していたのに対し、若い男性の感染率は 3-6%にとど
まった。これは、HIV 感染において社会的な性差が大きく関係していることを端的に示し
ている。
一般的に女性たちは、性交渉に際してパートナーである男性に対し HIV 感染防止の唯一の
手段である男性用コンドームの使用を交渉することが非常に困難である。(他の社会同様、
サハラ以南のアフリカ社会においても、同性愛者は多数存在する。しかし、当該地域にお
ける主な HIV 感染経路が異性間性交渉であることから、ここでは異性間性交渉を中心に述
べる。) 夫婦間においては多産が奨励される社会が大多数である環境に加え、コンドーム
は性産業従事者との性交渉に使うものという偏見や、コンドームの使用は快楽を半減させ
るとの思い込みが広く普及しているため、これまでは一般的にコンドームを使いたがる男
性が少なかった。(現在では HIV/AIDS への理解が高まり、コンドームの使用も増加傾向に
あるといえる。しかし、高まる需要に対して多くの国ではコンドーム等の安定した供給が
行われていないのが現実である。)
女性達は一般的に教育、就職、土地やその他の資産の所有、融資や保健医療サービスの享
受等、全ての分野において男性に比べ不利な立場に置かれており、結婚や他の性的関係は
しばしばそうしたリソースにアクセスするための唯一の手段となってきた。貧困が氾濫す
る社会においては、若い女性が中高年の比較的裕福な男性から経済的・社会的便宜と引き
換えに性交渉を持つケースが多く、「シュガリー・ダディー現象(sugary daddy syndrome)」
として政策担当者に警笛を鳴らしてきた。(現在では裕福な中高年女性が若い男性の性を
買う「シュガリー・マミー現象(sugary mammy syndrome)」も都市部を中心に問題化して
いる。年齢が性と経済関係における力関係に結びつくことを端的に示している。) こうし
た状況においては、女性がコンドームの使用を男性に要求することは非常に困難であり、
結果として、より多くのパートナーをもつ傾向にある男性から HIV に感染するケースが多
い。(精力は男性性と強く結び付けられる傾向にあり、男性はより多くの性的パートナー
を持つ傾向にあることが多くの研究によって報告されている。)
こうした事態に対処するため、HIV/AIDS 対策の一貫として、様々な取り組みがなされてい
る。若い女性・男性の両方を対象とするコミュニケーション・スキルの向上及び男性に焦
点を当てた性教育・啓発活動、ジェンダーにおける力関係に根ざす HIV 感染の実態につい
てのデータの収集・公開、政府高官からコミュニティに至る全レベルにおける課題の重要
性への理解の向上を目指す政策提言活動の実施、両性の平等とアファーマティブ・アクシ
ョン(Affirmative Action)を促す政策・法律の制定、現存する差別的政策や法律の改正・
廃止、などがあげられる。
実際の HIV/AIDS 対策プログラムの実施においては、男女別の基礎データ収集に始まり、若
い女性における HIV 感染率の低下、申告される性暴力の数、中等教育に進む女性の割合、
パートナーと性及び家族計画について話し合うことのできる男性の割合等、具体的な関連
指標を定め、対策プログラムの効果を測ることが第一歩となる。(近年の若者を対象とす
る HIV 予防プログラムの成功の背景には、こうした性差に基づく力関係をオープンに話し
合い、是正を促す方向性が強く反していることが考えられる。近年、サハラ以南のアフリ
カの多くの国において、男性に焦点をあてた性と生殖に関する理解、及びパートナーとの
コミュニケーションを向上させるためのプログラムが施行されている。また、女性、特に
若い女性への支援を推進する政策提言活動も盛んである。) 特に、保健医療セクター全体
の強化と貧困削減、女性の地位向上といった HIV 感染の社会経済的背景となっている要因
への対策を同時に視野に入れたアプローチが望まれている。
2-18
第3章
3.1
VCTプログラムの運営
VCTの定義
UNAIDSは、VCTを次のように定義している1。
表3-1: UNAIDSによるVoluntary Counseling and Testing(VCT)の定義
Voluntary Counseling and Testing とは、当事者(個人、もしくはカップル)がカウンセリン
グを通じて、HIV抗体検査を受けるか否かに関する正確な情報に基づいて、自主的に判断できる
ことを支援するプロセスである。
Voluntary HIV counseling and testing (VCT) is the process by which an individual undergoes
counseling enabling him or her to make an informed choice about being tested for HIV.
This decision must be entirely the choice of the individual and he or she must be assured
that the process will be confidential.
3.2
VCTサービスのプロセスと導入の背景
【1】
VCTサービスの流れ
従来のHIV検査とVCTサービスの違いは、VCTにおいては、HIV検査、HIV検査結果の読み
取り、検査結果の告知というこれまでの一連の検査プロセスにカウンセリングが加わ
り、全体が1つのプロセスとしてとらえられる点である。以下は、一般的なVCTサービ
スの中核となる活動である。
・ HIV検査前カウンセリング
・ HIV検査
・ HIV検査結果の読み取り
・ 検査結果告知前カウンセリング
・ HIV検査結果の告知
・ HIV検査後カウンセリング
1
UNAIDS, 2000
3-1
VCTに関する一般的な流れは以下の図に示すことをできる。
図3-1:典型的なVCTサービスの流れ
コミュニティの啓発
HIV/AIDS、その予防方法、PLWHAの人権、VCT、PLWHAが受けられるケア・サポート等に関する
コミュニティ啓発活動
利用者がVCTセンターを訪問
性感染症検査・治療、家族計画、青少年のためのリプロダクティブヘルス・プログラム、母性保護、結
核検査・治療などVCTサービスを取り入れた他のプログラムへの訪問の場合を含む
HIV検査前カウンセリング
HIV/AIDSに関する一般的な情報、VCTの実施方法、その結果が意味すること、HIVに感染していた場
合その後起こりうること、感染者が受けられるケア・サポート等。グループで行われることもある。
HIV検査を受けることを決断
HIV検査を受けないと決断
HIV検査前カウンセリング
インフォームド・コンセントを得る
HIV検査実施、検査結果の読み取り
HIV検査結果告知前カウンセリング (任意)
告知:HIV陽性
告知:HIV陰性
HIV検査後カウンセリング
ケア・サポートの提供、又は照会
HIV感染防止のためのBCC活動、他の関連サ
ービス及び情報の提供、又は照会
‐保健医療ケア
‐精神・心理的ケア
‐社会的支援
‐ポジティブ・リビング指導
‐法的サポート、など
性感染症検査・治療、家族計画、青少年のた
めのリプロダクティブヘルス・プログラムな
ど
カウンセリングとコミュニティへの啓発活動の継続
3-2
【2】
VCTサービス導入の背景と期待される成果
VCTサービスは人々がHIVに感染しているかを知るための手段であるだけではない。サ
ービスを通じて感染していなかった場合には引き続き感染を予防するための行動を促
進する一方、感染が判明した場合には感染者が必要とするケアや支援活動にアクセス
することを助けるなど、人々とHIV/AIDSに関する一連のプログラムを結ぶ入り口とし
て期待されている。
VCT戦略導入の背景には、HIV検査を受ける個人のプライバシーや人権が無視される事
例が多く存在した一方2、検査後の照会やフォローアップが不足していたために、検査
が人々のHIV感染防止や、必要なケアと支援を受けることに十分に結びつかなかったと
いう反省がある。また、10-30分という短時間でHIV検査結果が判明する簡易迅速検査
法の普及によりVCTサービスへのニーズに対応できるようになったことも、近年VCTが
注目されている背景にある。
一般に、VCTサービスを実施することにより次のような成果があると考えられる。
・ VCTサービスを通じて、人々により安全かつ責任ある性行動を促し、また薬物依存
によるHIV感染を防止するため注射器のまわし打ちなど感染の危険が高い行動を
やめるよう促すことなどにより、新たなHIV感染を予防できる
・ HIV感染者の早期発見により、栄養や生活指導、日和見感染症予防・治療、抗エイ
ズ薬を含む薬物治療など、感染者の健康を維持するために必要なサービスに早い
段階からアクセスすることを可能にする
・ HIV感染者やその家族が、精神的・心理的支援及びケアを利用するよう促し、HIV
感染者のポジティブ・リビングに結びつけていく
・ 妊娠や出産、育児などにおいて、より安全なオプションを選択できるようにする
複数の研究3によると、一部の国においてはVCTサービスを導入することにより、コン
ドーム使用、禁欲の増加、危険な性行動の減少(特に性産業従事者や一時的パートナ
ーとの性交渉におけるコンドーム使用の飛躍的増加)が報告されている。また、カッ
プル間でのHIV感染の減少も見られ、特にカップルでVCTを受けた場合は性行動変化へ
の効果が高いという研究結果が発表されている。
2
就職や保険加入時の強制検査などの事例が報告されている。HIV感染者に対する就職や保険加入における差
別は、現在でも大きな社会問題である。
3
“The Impact of Voluntary Counseling and Testing: A global review of the benefits and challenges” (UNAIDS, 2001)は
そうした近年の研究結果を簡潔にまとめている。
3-3
【3】
VCTの限界と課題
一方で、以下のようなVCTサービス導入によるマイナスのインパクトも報告されている。
・ 結婚関係の解消
・ 関係放棄、虐待
・ 差別
・ 心理的苦痛、ストレス、うつ
こうしたHIV感染に関する差別の被害者のほとんどが女性である。こうした結果を招か
ないために、VCTサービスの導入には、家庭やコミュニティを巻き込んだHIV感染者を
受け入れる態勢や環境の確立が不可欠であると言える。
一方、VCTサービスの導入により、カウンセラーは各利用者に対して最低2回のカウン
セリング・セッションを行うことになる。その結果、カウンセラーの身体的・精神的
負担が増えるとともに、一人のカウンセラーが対応できる利用者の数が限られるとい
う問題が生まれている。このようなHIV/AIDSに関するケアや支援を提供する人たち自
身へのケア4という課題は、VCTサービスの拡大に伴い今後ますます重要性が高まる問
題である。
【4】
VCTサービスとHIV感染予防のための行動変容
VCT戦略の主な目的の一つがHIV感染予防の促進であることはすでに述べたが、VCTサー
ビスを通じて利用者がHIV感染やその予防に関する知識や行動変容へのモチベーショ
ンを得たとしても、必ずしも実際の行動変容に結びつかないことがある。このような
問題の背景には、次のような障害要因が存在する場合がある。
・ 社会・文化的に性に関することを話し合うことがタブーであることが多く、パー
トナーと性行動の改善(コンドームの使用など)について話し合うことが困難で
ある。特に女性は、男性に対してコンドームの使用を要求することが社会的文化
的力関係の格差(ジェンダー問題)のために困難であることが多い5。
・ 経済的困難。
・ HIV感染に対する偏見と社会的圧力(HIV感染は神による処罰であり、コンドーム
の使用は不貞のあかしである、など)。
4
参考資料として“Caring for Carers: Managing Stress in Those Who Care for People with HIV and AIDS” (UNAIDS,
2000)などを参照されたい。
5
こうした見地から、女性がイニシアティブを取ることのできる女性用コンドームの普及の必要性が広く認識
されつつある。しかし、女性用コンドームを扱う業者が少ないために男性用に比べ比較的価格が高い点が、今
後普及を進める上で問題点となっている。現時点では、例えばナミビアにおいては、保健省・女性省を通じ女
性コンドームの無料配布と普及活動を進める一方、都市部の中産階級女性をターゲットにソーシャル・マーケ
ティングによる普及活動が行われており、成果を出している。今後、貧困層の女性によるアクセスの拡大が課
題となる。
3-4
・ 子供が欲しい場合6
VCTをHIV感染予防に有効に結びつけるためには、こうした障害となる要因への対策も
同時に実施することが重要である。
3.3
効果的なVCTサービス実施に不可欠なコンポーネント
VCTを実施するにあたり画一的なモデルは存在しない。しかし、効果的なVCTサービス
には、一般に以下のようなコンポーネントが基礎となる7。ただし、特定の国や地域で
政府などがVCTサービスに関するガイドラインを設定している場合には、それを参照す
る。
・ VCTサイト
・ カウンセラー
・ カウンセリング(1)情報セッション
・ カウンセリング(2)検査前セッション
・ HIV検査
・ カウンセリング(3)検査後セッション
・ カウンセリング(4)継続セッション
・ 記録の整備・保存
3.4
各コンポーネントにおける要点と注意点
VCT サービスを計画する際、その地域における主な利用者のグループ(例えば、若者、
学生、勤労者、妊産婦、農村居住者、性産業従事者、性暴力被害者、国内避難民、難民、
トラックドライバーなど)について十分に検討し、それぞれの生活スタイルとニーズを
十分に把握した上で、それに対応する実施方法(例:VCT サービスの料金設定、VCT サ
イトの場所、VCT サービス提供日と時間帯)を設定することが重要である。
【1】
VCTサイト
VCTサービスを提供する場所(VCTサイト)は、利用者が利用しやすい場でなくてはな
らず、効果的なVCTを実施するためには、スタッフ、スペースとその管理において以下
のような必要最低条件を満たしていなくてはならない。
・ サービスの対象となる人々にとって立地や時間の面で利用しやすい
・ プライバシーと守秘義務が十分に守られている(例:利用者がVCTサービスを
6
子供を産むことに関する意志決定は個人及び夫婦の権利であり、尊重されなくてはならない。ただし、HIV
に感染した女性が子供を産む場合には母子感染防止への対策が十分にとられる必要がある。また、両パートナ
ーが性行動に関する意志決定を互いを尊重する形で行うことができる必要がある。
7
通常、保健省などから各国の状況に合わせた独自のガイドラインの形で示される。多少の差はあれ、基本的
には大差は無い。
3-5
受けに来たことが外部者には判明しない工夫)
・ 検査キットなど必要な資器材を適切に保存できる施設と検査キットの品質管
理体制が整っている
・ カウンセリングを行うための適切な施設が存在する
・ 必要な訓練を受けたカウンセラーが配置されている
・ VCT後に必要に応じて利用者を他の機関へ紹介するための情報が整備されて
いる
ポイント(1) VCTサービスと既存の保健医療システム
VCT サービスは HIV/AIDS 対策の一部であり、さらに HIV/AIDS 対策は保健医療及び他の
関連セクターの一部分でもある。したがって、VCT サービスの実施に際しては、基本的な
保健医療システムが機能していることが前提となる。例えば、必要な訓練を受けた保健医
療従事者、薬剤を含む基本的医療備品と機器、保健医療サービスの質を維持するための
管理とモニタリングシステム、保健医療情報システムなどがこれにあたる。こうした基盤が不
十分である場合には、VCT サービス導入と共にこれらの基盤強化を平行して行う必要が生
じる。
【2】
カウンセラー
カウンセラーは通常それぞれの国のガイドラインなどで定められた最低限の訓練を修
了していなくてはならない8。HIV/AIDSについて必要十分な知識を持つと共に、利用者
に対して敬意を持って接し、相手の話をきちんと聞くことができなくてはならない。
VCT導入と拡大において、カウンセラーの能力維持と過重な身体的・精神的ストレスに
よるバーンアウト(燃え尽き状態)を防止するための対策は重要課題である。カウン
セラーの定期的な再訓練とメンター・システムを導入している国もある9。
ポイント(2) カウンセラー不足への対応
カウンセラー不足は多くの国が VCT サービス実施において抱える大きな問題の一つであ
る。しかし、カウンセラー不足の原因は、必ずしも訓練・研修機会の不足だけではない。
むしろ、人件費にあてる財源の不足が大きな問題であることが多い。保健省がカウンセラ
ーとなる新たな人員を雇うことができないため、既存の保健医療従事者を再訓練してカウ
ンセラーの業務を通常業務に上乗せする、又は準カウンセラーと呼ばれるボランティア・
カウンセラーを育成し、プロのカウンセラーの代わりに配置するなどの対応が取られてい
る。しかし長期的には、VCT プログラム実施機関が必要な数のカウンセラーを配置すると
いうコミットメントが必要となる。
8
最低でも2-3週間が標準である。
メンター・システムとはベテランのカウンセラーを「メンター」と認定し、比較的経験の浅いカウンセラー
の指導に当たるシステム。カウンセラー達の日々の相談にも乗る。南アフリカで導入中である。
9
3-6
【3】
カウンセリング(1)情報セッション
人々がVCTサービスを正しく理解したうえでHIV検査を受けるためには、まずHIV/AIDS
と感染予防の方法、およびHIV検査についての基礎知識を得る必要がある。守秘義務や
インフォームド・コンセント、他の関連する疾病(日和見感染症、性感染症等)と
HIV/AISDの関係についても、この第一段階で情報提供がなされなくてはならない。こ
の段階では、カウンセラーの数に対しクライアントの数が膨大である場合は特に、
15-20人までのグループによるカウンセリングも可能である。
【4】
カウンセリング(2)検査前セッション
利用者が第一段階の情報セッションの後、HIV検査に関心を示した場合には、個人別に
よる検査前カウンセリングへと進む。カウンセラーは利用者がなぜHIV検査を受けたい
か動機を理解した上で、どのように検査が行われるかなどHIV検査の技術的側面につい
ての説明と、HIV感染陽性、又は陰性の結果が出た場合の様々な影響について説明する。
HIV検査後の影響には個人的、保健医療的、精神的、法律的、道徳的なものが含まれる。
インフォームド・コンセントは、検査前セッションの根幹をなす。国によっては、VCT
サービスを自分の意志で受けることができる年齢が設定されている場合もある。カウ
ンセラーは利用者にHIV検査に関する十分な情報(特に、プライバシーの保護などにつ
いてのクライアントの権利)を提供し、利用者は検査がどういうものなのか、それが
自分自身とパートナー及び家族にとってどのような意味をもつのかを理解することが
重要である。カウンセラーは、利用者がHIV検査を強制されない法的権利を持っている
ことを理解してもらう義務があり、強制的に又は偽りの情報によってHIV検査に同意さ
せてはならない。
【5】
HIV検査
検査前カウンセリング、検査、そして結果が同日に開示できるよう、基本的にHIV簡易
迅速検査法が奨励される。特にVCTサイトを訪れることが比較的困難である農村地域に
おいては、HIV簡易迅速検査法が適切である。国によってはカウンセラーではなく検査
技師が検査を行い、その結果を解説するように定められていることもある10。陽性反応
が出た場合には、別の簡易迅速検査キットを使って確認検査が行われる。2回の検査
結果が違っている場合には、ELISA法など更に別の検査方法を使って確認が行われる。
この場合には、結果は2週間ほど後になる。
HIV検査の精度の保障は効果的なVCTサービスの基礎をなす。検査結果に対する疑いが
生じれば、人々のVCTサービス自体への信頼は崩れ、その回復は非常に困難である。HIV
検査キットの選定と使用は、通常国の医療研究機関または国家リファレンス・ラボが
10
ケニヤ・南アフリカでは、この点をめぐり法律的な議論が進行中である。特定資格を持つHIV検査技師にの
みHIV検査結果の読み取りを許可することが義務づけられれば、現在のカウンセラー中心によるVCT実施の形
態は変更を迫られる。
3-7
検査キットの評価を行い、一定の基準を満たしていることを承認していることが前提
となる。承認された検査キットは、適切な場所に保管されなくてはならない。また、
一定割合の検体を指定機関に提出し確認検査による検査結果との照合を行う、といっ
た検査キットの定期的な品質検査も必要である。
近年自宅でHIV検査が行える「自宅用HIV検査キット」も一部で汎用化されているが、
カウンセリングが伴わない上、検査結果の読み取りにおける誤差が生じる可能性があ
ることを考え合わせ、承認されていない。
Box 4 : HIV簡易迅速検査(HIV Simple and Rapid Assays)
(1) HIV抗体検査の変遷と種類
HIV感染の診断のためにこれまで広く用いられてきている方法は、HIV抗体スクリーニング検
査である。HIVに対して体内免疫が作り出す抗体を検出することによりHIV感染を判定するも
ので、これまでELISA法(Enzyme Linked Immunosorbent Assays)と呼ばれる酵素抗体法が世
界で最も広く採用されてきた。ELISA法は96∼100の検体をまとめて検査するシステムになっ
ており、疫学調査や大量の輸血用血液のスクリーニング検査として適している11。ただし、これ
は検体数がある程度揃うまで待たねばならないということをも意味する。また、高度な機械と操
作技術と安定した電気供給が必要となる。よって、途上国での導入には限界があった。
上記のような欠点を補うために、簡易迅速検査法(Simple and Rapid Assays)と呼ばれる検査
法が開発され、現在までに異なる4つの原理にもとづいた簡易迅速検査法があり、多くの商品
が市場に出ている。検査キットというコンパクトな形になっており、他の試薬や機材を必要とし
ない。検査手順も簡単でエラーが少なく、精度も高いため、検査技師の資格が無い医療スタッ
フでも実行可能な検査である。検査結果は長くとも30分以内に判明し、結果の判定も容易で、
いくつかの異なるタイプの検査を組み合わせれば同日のうちに正確な診断が可能となる。冷
蔵保存が必要な商品もあるが、室温保存(2∼30℃)ができるものもあり、途上国の現状に合っ
た検査キットの開発が進んできている。
(2) HIV簡易迅速検査の有用性
簡易迅速検査導入によって、ほとんどの人が即日に検査結果を知ることが可能となる12。マラ
ウイで行われた調査によると、迅速検査の導入によって、HIV検査を受ける利用者の割合が
69%から99.7%にまで上昇したという結果が出ている13。このように、結果が短時間の内に出る
ことによって、自己のHIV感染状況を知る人が多くなる。簡易迅速検査は高度な検査機材や
検査技術を必要とせず、全国どこでもVCTの要望がある病院やマタニティクリニックなどでの
実施が可能になり、母子感染予防プログラムなどの拡大要望にも応えていく事が可能となる14。
信頼性の高い簡易迅速検査の導入は、安全な輸血血液の供給という点でも有効である。ただ
し、擬陽性出現の可能性があるので、陽性結果が出た場合は必ず確認検査が必要となる。
11
World Health Organization (WHO). Weekly Epidemiological Record, 1998, 73: pp321-328.
Center for Disease Control & Prevention (CDC). HIV Counseling with Rapid Tests, 2002, Atlanta, USA.
13
The United States Agency for International Development (USAID). Voluntary HIV/AIDS Counseling and Testing Many Africans Do Want to Know, USAID Fact Sheet, Press Release, 2000:
<http://www.usaid.gov/press/releases/2000/fs000712_2.html>
14
World Health Organization (WHO). Weekly Epidemiological Record, 1998, 73: pp321-328.
12
3-8
(3) HIV簡易迅速検査キットの評価と検査精度保証プログラム
WHO は、ELISA法および簡易迅速法を使った検査キットの評価を行い、その報告書をシリ
ーズで公開している15。評価結果によると、簡易迅速検査はELISA検査と同等またはそれ以
上に正確な結果を出すと示されている。1検体当りの検査費用は、簡易迅速検査法の場合、
1.2∼4米ドルぐらいで、ELISA検査法のほうが安くなるが、ELISA検査の場合常に96または
100検体を入れて検査しているわけではないので、実質は簡易迅速検査の方が費用対効果
が高いと言える。各国において蔓延しているHIVタイプおよびサブタイプが違うため、感受性
や特異性などを独自に評価していく必要がある。また、各国の検査体制に応じた検査キット
を選択していく必要性がある。評価とともに重要なことは、検査結果をランダムにモニターし、
その精度をチェックしていくシステムの構築である。そのためのガイドラインをWHOが示して
いる16。
【6】
検査後カウンセリング
検査結果を伝えたあと、再度カウンセラーとのセッションを持つ。感染が陽性と判明
した場合には、カウンセラーは利用者が検査結果を受け入れることを助け、また今後
の生活において安全かつ責任ある性行動をとることを促すとともに、パートナー、家
族など大切な近親者にHIVに感染していることを伝えることなどについて話しあう。さ
らに、利用できる保健医療ケアやその他のサポートシステムなどを紹介することも重
要なポイントである。また、カウンセリングは継続して利用できることについても伝
え、今後の方針なども相談する。
【7】
継続カウンセリング
HIV感染者が、治療方法の確立されていない死の病としてのHIV/AIDSに罹患していると
いう事実を受け入れ、これまで通り暮らしていくためには、感染者がストレスやトラ
ウマに対処することを支えるカウンセラーの役割が重要である。感染者への支援の性
格は、無症状期、症状期、AIDS発症後と、段階を追って変化する。
【8】
記録の保存と活用
各利用者に対して的確な対応を行うため、カウンセリング・セッションに関する最小
限の情報(日付や本人の名前、本人が抱える問題、どのような対処がなされたか、今
後の方針など)について記禄し、カウンセリングの継続性維持のために活用する。一
定の記録フォームを作成し、一貫して使用することが運営上望ましい。
15
WHOが発行している「Operational Characteristics of Commercially Available Assays to Determine Antibodies to
HIV-1 and/or HIV-2 in Human Sera」という報告書で年々開発が進む商品に対応してシリーズとなっている。
WHOのBlood Safety Unitより入手可能。Webにても公開。
16
World Health Organization (WHO). Guidelines for Organizing National External Quality Assessment Scheme for HIV
Serological Testing, 1996.
3-9
Box 5 : VCTカウンセラー アリスの仕事20
アリスは、ウガンダのVCTサイト、「エイズ・インフォーメーション・センター(AIC)」で働く女性。彼女は元々
マケレレ大学で働く看護婦だった。AICの他のカウンセラーの経歴は様々で、教師だったり、ソーシャルワ
ーカーだったりする。アリスは、個人、グループ、そしてカップルに対するカウンセリング技術を持っている。
通常は5人程のグループに対してカウンセリングを行う。アリスはVCT利用者に対し、次のようなサポートを
提供する。
・HIV検査について説明し、検査を受けるかどうか決心する手助け。
・HIV検査結果、感染リスク、感染リスクを減らすため方法について理解する手助け。
1. 検査を受けることについての決心の手助け (5分−15分)
アリスの一日は、AICの待合室へ行き、最初の利用者グループをカウンセリング・ルームへと誘導すること
から始まる。アリスは自己紹介をした後、利用者に対してグループ・カウンセリングを受けることについての
意思を確認する。同時にアリスは、カウンセリングの一部はマンツーマンで行うことを説明する。またAICの
ポリシーや守秘義務、料金制度、そして、テスト結果については何の記録物も利用者に渡されないことを
説明する。検査結果は、採血してから約1時間30分後に知らされる旨を告げる。アリスは利用者グループ
に対し、「どうしてここへ来たのですか?検査結果を知る心の準備はできていますか?」と尋ねる。 また、
AICでは、HIVと共に、梅毒の検査、性病治療、家族計画サービス、ポスト・テスト・クラブなども提供して
いる旨説明する。
その後利用者は、アリスと一対一になり、検査カードを記入する作業に入る。カードには、その利用者の
性行動に関する質問も含まれている。カードの質問の答は、アリスに、その患者のHIVリスクがどの程度か
を知らせる役割を果たす。カップルの利用者に対しては、必ず二人で検査結果を聞くよう、また一人で来
ている利用者には、パートナーなどの第三者と一緒に結果を聞いてもらうこともできることを説明する。最
後に利用者が検査同意書にサインし終わると、アリスは尋ねる。「その他、何かまだお聞きになりたいこと
はありますか?」
2. 採血 (5分)
それから、利用者は採血担当者に料金を支払い、採血してもらう。利用者は、採血サンプルに記載してあ
る番号と、自分のコード番号が同じであることを確認する。
3. 予防カウンセリング (45分)
採血後アリスは再びグループを集めて、HIV/AIDSについての情報提供とディスカッションを行う。彼女は
利用者に対し、感染には「ウィンドウ ピリオド21」があるために、陰性結果が出てもそれが100%正しいわけ
ではないことを告げる。それから彼女は、HIV陽性及び陰性の意味やAICが提供する家族計画サービス
やSTD治療とポスト・テスト・クラブ、そして結核サービスへの患者紹介などについて説明する。
アリスは次のような質問をして、利用者のディスカッションへの参加を促す。
『HIVとAIDSの違いは何だと思いますか?』
『どうしたらHIVに感染すると思いますか?』
『どうして性感染症を放っておくと、よりHIVに感染しやすくなると思いますか?』
『あながた最近予防しないでセックスした場合、再びHIV検査を受けた方がいい理由は何ですか?』
『もしあなたがHIV陽性だったら誰にそれを告げますか?それはあなにとって何を意味しますか?どうした
らあなたの余命をより長くできますか?どうしたら他の人に感染させないで済むと思いますか?』
アリスは利用者に新しいコンドームを渡し、傷がないか保証期限を過ぎていないかチェックする
方法を教える。その後木型を使って正しい使用法を説明し、利用者一人一人にも練習を促す。こ
の間、ラボでは検査が続けられている。HIV検査結果への不安から、この予防セッションをいや
がる利用者も一部いるが、大多数の利用者は積極的に参加してくれるとアリスは言う。このセッ
ションが終わるとアリスは利用者に部屋の外へ出てもらって、検査結果を知らせる準備をする。
4. テスト結果カウンセリング(5-15分)
アリスは利用者を一人ずつ部屋に呼んで、検査結果を知らせる。結果を知らせる時は、
「お気の毒
ですが・・」とか「良かったですね!」などの感情を現すことなく、あくまでプロとして冷静な
態度で接する。アリスはシンプルに、「AIDSを発症させるウィルスが、あなたの血液の中に発見
されました(されませんでした。)」と告げる。もし利用者が陰性であった場合、今回の検査結果
は利用者が過去6ヶ月の間ハイリスクな行動(予防なしのセックス、不潔な注射針の使用、検査
していない血液の輸血等)をしていないという前提においてのみ正確である旨告げる。そして、
6ヶ月後に、再び検査を受けるよう、またコンドームを使った安全なセックスをするよう薦める。
20
UNAIDS, Knowledge is power: Voluntary HIV counseling and testing in Uganda, June 1999.
HIV抗体は感染後すぐには作られず、感染機会があってから3週間から8週間ほどの時間がかかる。この期間
を「ウインドウ ピリオド」といい、この期間に検査をしても抗体を発見できない。
21
3-10
3.5
VCTプログラムを成功させる前提条件
効果的なVCTプログラムを実施するためには、上記に挙げたカウンセリングやHIV検査
といったVCTサービスに直接関わる主要コンポーネントに加え、以下のような活動が平
行して実施される必要がある。
・ VCT導入時のコミュニティにおける啓発活動
・ フォローアップ・サービスとの連携づくり
・ ワン・ストップ・クリニック確立のための工夫
【1】
コミュニティにおける啓発活動
コミュニティの人々のHIV/AIDS対策及びPLWHAに対する理解と支援は、VCTプログラ
ムの成否に大きな影響をもたらす。HIV/AIDSやPLWHAへの偏見と差別が強い社会環境
においては、人々は自分がHIVに感染しているかを積極的に知りたいとは思わないか
らである。また、VCTサービスがHIV/AIDS対策への入り口として位置づけられること
から、HIV/AIDS対策自体がコミュニティに受け入れられ、活発に実施されているこ
とは、効果的なVCTプログラム実施の前提条件となる。さらに、VCTサービス導入時
には、サービスの存在とその効用を効果的にコミュニティの成員に伝えることが必
要となる。逆にコミュニティにおける啓発活動が盛んに行われることにより人々の
HIV/AIDS及びVCTサービスに関する正確な知識が向上し、HIV検査前のHIV/AIDS全般
に関する情報セッションを簡略化できるというメリットもある22。
コミュニティにおける啓発活動の例としては、HIV感染者、関連する地方政府高官、
地元の伝統的リーダーや政治家、宗教関係者、弁護士、教師、保健医療従事者、青
少年の保護者、青年・女性団体、NGO・CBO等、関連するすべてのステークホルダー
との会合を実施することが挙げられる。このような会合では、HIV/AIDS対策及びVCT
サービス実施に関する主旨と運営手法・責任者を説明し、効果的な実施方法につい
て話し合うことが目的となる。このようなコミュニティの人々と直接対話する方法
に加え、ピア・エデュケーション、ラジオ番組、パンフレットやポスターなどの印
刷物、イベントなど、様々なメディアを通じた活動が展開されている。対象グルー
プを特定し、伝えたいメッセージを明確にした上で、最も効果的な手法を選択する
ことがこうした啓発活動成功への鍵である。
すべてのVCTサービス実施機関がこのような啓発活動を十分に実施できる能力を備
えているわけではないので、実績のある他の機関・団体と連携して啓発活動を実施
することも選択肢として考えられる。
22
VCT実施モデルを始めて確立したウガンダのNGO、AIDS Information Centre では、コミュニティにおける啓
発活動に力を入れることによりHIV検査前のカウンセリングへの負担を減らすことに成功している。
3-11
【2】
フォローアップ・サービスとの連携づくり
HIV検査、検査後のカウンセリングを行った後、各利用者が必要とする適切なフォロー
アップがなされてはじめて、VCTサービスはその意味を持つ。HIV感染者にはその状態
に合ったケアや支援サービスを提供する機関への照会し、HIV非感染者には引き続き
HIV感染を防止するために、安全かつ責任ある性行動を促し、支える関連サービスや情
報の提供である。主なフォローアップ・サービスには以下のような例が挙げられる。
・ 医学的なケア(日和見感染症対策、性感染症対策および抗エイズ薬治療等へ
のアクセス)
・ 在宅ケア(HIV感染者を看護する家族等への訓練・支援を含む)
・ ポスト・テスト・クラブ等を通じたVCT体験者の自主サポート・グループ活動
(精神的サポート、ポジティブ・リビングの学習、時にHIV感染者のための収
入活動、HIV感染者の権利を守るための運動活動等を含む)
・ コンドームの配布
・ 法的サポート(遺言の作成や、残される家族のための準備等)
VCTサービス実施機関がこれらの活動を直接行うこともあるが、各分野とも専門性が高
いため、実際にはそれぞれ別の団体が実施していることが多い。VCTプログラム担当者
は、どのような機関・団体がどんな内容のサービスを提供しているかを常に把握し、
これらの機関と良好な連携関係を維持することが必要である。
性暴力被害者や、誤ってHIVに感染した血液や体液に触れてしまった医療従事者への緊
急対応として、緊急避妊薬や抗エイズ薬が迅速に無料配布されるシステムも、一部の
国では整備されつつある。人道上の措置として、このようなシステムの確立も実施に
向けた検討が必要である。
【3】
ワン・ストップ・クリニック確立のための工夫
途上国においては、地理的、時間的、金銭的及びジェンダーの要因などから、人々が
何度も保健医療施設に足を運ぶことが困難である場合が多い23。このような事情に配慮
しながら、より多くの人がVCTサービスを利用することを可能にするには、既存の保健
医療プログラム(例えば、性感染症、母子保健、結核、家族計画、思春期保健など)
の一貫としてVCTサービスを提供するか、もしくはVCTプログラムにこれらのサービス
を加えることが効果的である場合が多い。
直接VCTサービスを提供しない保健医療施設においても、VCTプログラムの実施場所や
利用時間などに関する情報や啓発用のIEC教材、コンドームなどを配布し、保健医療施
23
例えば、ウガンダの農村部においては、大部分の夫が第一子の誕生時には妻がクリニックで診察を受けるこ
とを許可するにもかかわらず、第二子の出産時や妻自身の疾病時には許可及び必要な金銭的支援を行わないこ
とが多い。
3-12
設を利用する人々に対するVCTサービスについての情報提供を行うことが可能である。
逆に、VCTサイトにおいて関連する他の保健医療サービスに関するIEC教材等を配布す
ることも効果的である。
3.6
VCTサービス提供に関わるリソース
VCT サービスを提供するために、最低限必要とされる施設やリソースは次の通りである。
・ VCTサービスを提供する拠点−既存の保健省クリニック、VCTセンター、出張
サービスなど様々な形態をとる。個人のプライバシーを確保できる、快適な
スペースが必要
・ HIV抗体検査室
・ カウンセラー−保健医療従事者が兼ねる場合と、VCT専門のカウンセラーが配
置される場合がある。カウンセラーの配置は、これらの人員に支払う給料と
定期的な訓練や監督、燃え尽き症候群対策に一環として支援の提供も意味す
る
・ HIV検査技師
・ VCTに直接かかわる保健医療機材−HIV検査キットなど
・ その他の保健医療機材−最低限の関連保健医療サービスを行うための機材、
消耗品、及び医薬品。ワン・ストップ・クリニックの場合、関連する性感染
症や日和見感染症対策、抗エイズ薬治療、家族計画なども実施するので、こ
れらに必要な機材も含まれる
・ その他の備品−カウンセリング・ルームに配置する机と椅子、記録用のフォ
ームと文房具類、それらを保存する鍵付きのキャビネット、コンドーム、パ
ンフレット等
3.7
VCTプログラム運営における要点と注意点
【1】
VCTプログラム・マネジャーの仕事
VCTプログラム・マネジャーは、VCTサービスに関する十分な知識を持っていることは
前提条件として言うまでもないが、さらに関連する政策やガイドラインなどにも精通
していることが求められる。その上で、前項で述べたようなカウンセラーを含む全ス
タッフがVCTサービス提供を行う上で必要とされるリソースやカウンセリングに当て
る時間などを整えることもその重要な役割である。
また、VCTプログラム・マネジャーはカウンセラーが身体的・精神的なストレスに対処
するためのメンターシップ・プログラムを確立し、保健省などと定期的に連絡をとっ
て最新の関連情報がスタッフに行き渡るよう努力しなくてはならない。また、プログ
ラム評価のために必要な、VCTサービスの利用状況に関する記録を定期的に整理するこ
とも大変重要である。
3-13
VCTプログラム・マネジャーは次の点について、全プログラムスタッフが十分に理解す
るようつとめる義務がある。
・ VCTとは何か、その目的、利点と不利な点
・ VCTと他の関連する保健医療サービスのかかわり(性感染症マネジメント、母
性保護、HIV母子感染防止、青少年の性とリプロヘルス、結核など)
・ 該当地域におけるすべての照会可能なサービス
・ VCTサイトで使用されるHIV検査の種類、カウンセリングの手法
・ 種類別カウンセリングの手法(フォローアップ・カウンセリング、夫婦でのカ
ウンセリング、家族カウンセリングなど)
・ スタッフ自らがVCTを体験する機会をもうける
・ HIV検査時における準カウンセラーへの補助義務
・ すべての過程において守秘義務を守る重要性
【2】
カウンセラーの配置計画
VCTプログラム・マネジャーは該当地域におけるHIV感染率を分析した上で、VCTサービ
スの利用者数を概算し、これに基づいて必要なカウンセラーの数を設定する。カウン
セラーは過重なストレスを避けるためには、1日1人あたり6-8人以下の利用者に応対す
ることが望ましい。
【3】
在庫管理
VCTサイトは常に十分な必要機材のストックを保管していることを求められる。また、
HIV検査キットを含む消耗品や機材の品質管理のプロトコールと、事前に在庫を定期的
にチェックする体制が確立されていなくてはならない。HIV検査キットが在庫切れのた
めに検査を行うことができず、利用者を帰すようなことは決して許されない。検査キ
ットは適当な温度に保たれた厳重な鍵のかかる施設に保管し、保管管理者を明確にし
て責任の所在を明らかにする必要がある。
VCT実施全般に関する主要参考文献
・ How to Establish VCT Services (National Health Department, Government of South Africa)(添付資料)
・ Guidelines for Pre-test, Post-test and Ongoing Counseling and Group Information Session (National
Health Department, Government of South Africa)
・ Report: Technical Consultation on Voluntary Counseling and Testing: Models for Implementation and
Strategies for Scaling of VCT Services (WHO/UNAIDS, 2001)
・ Tools for evaluating HIV Voluntary Counseling and Testing (UNAIDS, 2000)
3-14
3.8
VCT活動の成果に対するモニタリング・評価
【1】
VCT活動成果に対するモニタリング・評価の限界
VCTサービスの成果を測ることは、次のような要因によって必ずしも容易ではない。
・ VCTサービスの提供形態、目的、対象グループ及びサービスが提供される社会、経
済、地理的な背景が多様であり、同一の基準でその成果を測ることが困難
・ VCTサービスはHIV/AIDS対策全体の一部であり、評価可能な成果は複数のHIV/AIDS
対策や活動、および社会的な環境などが複雑に交錯することによって生じている
可能性が高く、VCTサービスのみによってもたらされた成果を特定することが難し
い
・ VCTモデルに基づいたサービスの提供およびそれに関する調査研究の歴史が比較
的新しいため、データや経験の蓄積が浅い。
しかし、もちろんVCTサービスの成果を評価することが不可能というわけではなく、実
施可能な手法も存在する。現時点ではいくつかの評価手法を組み合わせ、その効果を
検証することが行われており、今後はこれらの経験に基づいて評価手法を改善し、そ
の知見を共有してゆく必要がある。
【2】
モニタリング
VCTサービスのモニタリングにおいて、注目すべき点は以下のとおりである24。
・ 施設のレイアウトも含めて、守秘義務や利用者のプライバシーが十分に保障
できる体制が確立されているか?
・ VCTサービスが提供されていることがコミュニティの人々に十分理解されて
いるか?特に、VCT が他のサービスと組み合わせて提供されている場合、当
該施設でVCTサービスが利用できることが伝わりにくい可能性がある
・ 対象人口におけるHIV感染状況やガイドラインに沿った適切なHIV検査キッ
トが常時十分に確保され、適切に保管管理されているか?
・ トレーニングを受けたカウンセラーが、VCTサービスを希望する人々に対応
できるよう確保されているか?
・ HIV検査に必要な訓練を受けた保健医療従事者・検査技師などが、必要人数
配置されているか。
・ HIV検査キットの適切な使用方法を含む、検査プロトコールに沿った正しい
HIV検査が行われているか?使用後の検査キットが適切に廃棄処理されてい
るか?
・ 検査結果とカウンセリング内容がきちんと記録されているか?
24
参考:”How to Establish VCT Services: Voluntary Counseling and Testing Guidelines” (National Health Dept., RSA)
3-15
このような項目に関するモニタリングを漏れなく効果的に行うためには、チェックリ
ストの作成が効果的である。様々な国において、そうしたリストが作成されつつある
が 、 次 頁 に 示 す 南 ア フ リ カ 政 府 保 健 省 に よ る ”How to Establish VCT Services:
Voluntary Counseling and Testing Guidelines” (p. 25, APPENDIX E “VCT Checklist”)
はこれらの中でも、質の高い参考例といえる(本資料については、添付資料5も参照
されたい)。
【3】
評価
UNAIDSは、VCTサービスの評価項目として以下のようなポイントを挙げている25。
・ VCTプログラムに対する国レベルの取り組み
・ VCTサイトの運営とサービス提供
・ カウンセラーのニーズに対する対応と満足度
・ カウンセリングの内容と質
・ 特殊なニーズに対するカウンセリング
・ グループ・カウンセリングとグループ対象の啓発・教育活動
・ 利用者の満足度
・ VCTサービスのコスト
実際に、これらの評価に利用できる具体的な調査票の例については、“Tools for
Evaluating HIV Voluntary Counseling and Testing” (UNAIDS, 2000)に詳しく紹介さ
れており、評価を計画する際の有用な参考になるだろう。しかし、紹介されている調
査ツールはあくまでも一般的な例であり、実際に評価を実施する場合は、事前にテス
トを行い、評価が行われる対象や地域(または場所)の特殊性を考慮し、必要な改善
を加えなければならない。また、VCTプログラムの担当者自身が、評価プロセスのマネ
ジメントに参加することは、質の高い評価につながる。また、評価で得られた情報を
集計・分析し、現場のVCTサービス運営の向上へつなげてゆくシステムが確立されてい
なければ、実際のVCTサービスに関わる人々にとって、評価活動の意義が理解されなく
なる。最後に、モニタリング、評価の過程においても、VCTサービス利用者のインフォ
ームド・コンセントを得ることと、守秘義務の遵守が最優先であることは言うまでも
ない。
25
“Tools for Evaluating HIV Voluntary Counseling and Testing” (UNAIDS, 2000)
3-16
表3-2: 南アフリカで使用されているVCTサービス・モニタリング用チェックリスト
1.
Is the counseling room strategically situated to ensure privacy?
Yes
No
2.
In the waiting area well placed to ensure privacy and reduce discrimination
?
Yes
No
3.
Are there posters that advertise and promote Voluntary Counseling and
Testing on the walls of the facility?
Yes
No
4.
Are staff members i.e. clerks, porters and others aware of the VCT services
in the facility?
Yes
No
5.
Are health talks that promote and highlight the availability of VCT services
done daily at facility?
Yes
No
6.
Is there proper storage space for rapid kits?
Yes
No
7.
Is testing done in area that ensures privacy?
Yes
No
8.
Is counseling done in an area that ensure privacy?
9.
Are trained counselors available in ratio with the number of clients requesting
testing?
Yes
No
10.
Are rapid test readily available when needed?
Yes
No
11.
Is the rapid test register kept in appropriate place that ensures confidentially?
Yes
No
12.
Is the rapid test register correctly completed?
Yes
No
13.
Is trained health worker available to perform rapid test whenever there is a
client to be tested?
Yes
No
14.
Is laboratory staff involved in the VCT Program?
Yes
No
15.
Is the counseling register appropriately kept to ensure confidentiality
?
Yes
No
16.
Is the counseling register appropriately completed?
Yes
No
17.
Are universal precautions being adhered to?
Yes
No
18.
Is the connect sequence followed in performing tests, i.e. screening followed
by confirmatory tests?
Yes
No
19.
Are the connect volumes of blood used for each test?
Yes
No
20.
Is time duration before reading the test recorded?
Yes
No
21.
Are test results correctly interpreted?
Yes
No
22.
Are tests appropriately disposed of?
Yes
No
23.
Are test results given by the some counselors who did pre-test counseling
?
Yes
No
24.
Is the stock control procedure testing followed in line with rapid testing
protocols?
Yes
No
25.
Are test kits stored property?
Yes
No
26.
Are tests used before expiry date?
Yes
No
Total Score:
/26 (Yes=1; No=0)
3-17
【4】
今後の課題
VCTサービスに限らず、HIV/AIDS対策全般に関するモニタリングと評価の強化は、サハ
ラ以南のアフリカ諸国のステークホルダーと援助機関が共通して認識する緊急の課題
である。しかし、実際にHIV/AIDS対策の現状を理解し、改善するために有用な情報をも
たらすようなモニタリングや評価を計画・運営するには、どのような条件が必要なのか、
明らかになっていない部分が多い。また、モニタリング、評価のシステムやツールが確
立されている場合であっても、それらが十分に実施、機能していない場合も多い。たび
たび述べているように、VCTサービスはHIV/AIDS対策全体と密接につながっており、そ
の効果的な実施を実現するためには、現在実施されているVCTプログラムとHIV/ADS対策
の双方を客観的に評価し、更なる改善に結びつけてゆくことが望まれる。
3-18
第4章 アフリカにおけるVCT活動の現状と課題
4.1
調査の概要
アフリカにおける VCT 活動の現状と課題を検証するため、ウガンダ、ザンビア、南
アフリカ、及びガーナにおいて現地調査を実施し、政府機関、国連機関、国際 NGO、
現地 NGO、日本大使館、JICA 事務所などにおいて、関係者に対するセミ・ストラク
チャード・インタビュー調査1、及び文献資料調査を実施した2。また、実際にいく
つかの VCT サイトを訪問し、VCT サイトでの活動状況について、直接観察調査を行
った。また、調査の時間的・予算的制約から現地調査は実施できなかったものの、
ケニア及びタンザニアについても、文献資料調査、及び日本大使館、JICA 事務所、
JICA 本部の関係者に対する、電話によるセミ・ストラクチャード・インタビュー調
査を実施した。調査対象国として選ばれた国は、本調査の対象地域であるアフリカ
において、なんらかの形で VCT プログラムが実施されており、ある程度の情報収集
が可能であると予想された国々である。
なお、現地調査を実施した4カ国と、実施しなかった2カ国については、収集でき
た情報量に差が生じていることをあらかじめご了承願いたい。また、抽出した 6 カ
国の事例を基にしてできる限りサハラ以南のアフリカ全般に当てはまる教訓を提示
することに努めたが、アフリカ内における多様性から、こうした努力にも限界があ
ることをあらかじめ記しておく。
上記対象国について収集したデータを、以下の視点から分析した。
4.2
•
国の概要
•
HIV/AIDS の概況
•
HIV/AIDS 対策
•
VCT プログラムの現状
•
VCT プログラムの課題
•
日本に対する要望
調査対象国における HIV/AIDS 及び VCT 活動概要
対象となった 6 カ国の調査結果概要を比較すると、次項表 4-1 のようになった。
1
Semi-structured interview(半構造化されたインタビュー):インタビュー調査の一種。おおまかな質
問項目は決まっているが、必要に応じて詳細な質問や質問内容を追加しながら柔軟にインタビューを行う
方法。
2
インタビューに使用された質問項目については、巻末の添付資料3を参照されたい。
4-1
表 4-1:HIV/AIDS 及び VCT サービスに関する調査対象国概要比較
国
ザンビア
ウガンダ
ガーナ
南アフリカ
タンザニア
ケニア
成人 HIV
感染率
(2001 末)
HIV/AIDS
戦略計画
VCT
ガイドライン
VCT
サービス現状
VCT サービス
提供範囲
VCT に関わる
主要機関
21.5%
国家
HIV/AIDS/STD
/TB委員会、戦
略フレームワー
ク(2001-2003)
「HIV/AIDS のマネー
ジメントとケアに関する
ガイドライン」中の第 2
章 に 「 VCT 」 と い う 項
で、大雑把なポリシー
が記載されている。
1992 年カラ・カウンセリン
グ・アンド・トレーニング・ト
ラストにより開始される。
1999 年 NORAD 支援によ
り 22 箇所の VCT サイトを
設置。
2002 年末時点で全国
101 箇 所 に サ イ ト 拡
大。(2002 年 6 月時点
での 50 箇所からの急
増で、一時、HIV 検査
キット不足に陥る。)
国家 HIV/AIDS/STD/TB
委員会の VCT とケアテク
ニカル・ワーキング・グル
ープ、所属 NGO、保健
省、及びザンビア VCT サ
ービスが中心的な役割。
5.0%
国家 HIV/AIDS
活動のための国
家戦略フレーム
ワーク
(2000-2005)
保健省によるガイドラ
インは、現在準備中。
1990 年「エイズ・インフォ
メーション・センター
(AIC)」により開始される。
現在は AIC が保健省と協
力して VCT サイトを拡大
中。
全国 56 県の内、27 県
地区の 70 箇所に VCT
サイトが存在する。今
後 3 年間で 8 つの県へ
も拡大展開する予定、
・ VCT サイト不足
AIC と保健省及びウガン ・ VCT サイトの設備不測
ダ ・ エ イ ズ ・ コ ミ ッ シ ョ ン ・ 検査施設の不足
(UAC)が中心的役割。
・ VCT サービス運営のためのデータ・マネージメント・システムの不
備
3.0%
国家 HIV/AIDS
戦略枠組み
(2001-2005)
VCT の国家レベルで
のガイドラインは存在
しない。FHI がガイドラ
インドラフトを作成中。
VCT サービスは限られて
いる。
即日 VCT サービスを
提供しているサイトは
現時点で 4 箇所程度。
2004 年までに全国 16
州に一箇所ずつ設置
する予定。
・
・
ガーナエイズ委員会、保 ・
健省、中央ラボ、野口研、 ・
及び FHI が中心的役割。 ・
・
・
20.1%
国家
HIV/AIDS/STD
戦略計画
(2000-2005)
保健省による VCT サ
イト運営マニュアル
一般企業を含めた様々な
場で VCT が提供されて
いるが、全体的な実態は
つかめていない。
VCT サービス提供範
囲に関する正確な実
態はつかめていない。
・ カウンセラー、VCT プログラム・マネージャー等の、VCT サービス
策定・実施に関わる人材不足
保健省 VCT ユニットが中 ・ VCT 活動で成果をあげている NGO・CBO のネットワーキングと能
心的役割。
力強化
・ VCT サービスの強化と拡大。
・ VCT サービスのモニタリング評価
VCT ガイドラインはな
い。
1995 年 DANIDA の支援
により、即日 VCT 開始。
公的機関・NGO、民間機
関が VCT サイト運営。実
施形態は様々。
全 国 約 200 箇 所 の
VCT サ イ ト が 存 在 。
2005 年までに、全国
121 県の各県に最低 6
箇所の VCT サイト設
置予定。
・
・
・
保健省・NGO が中心的
・
役割。
・
・
・
国家 VCT ガイドライン
政府系、ミッション系、及
び民間による保健医療施
設で VCT サイトを設けて
いる
全 国 約 150 箇 所 の
VCT サイトが存在。今
後2年間で 210 箇所の
サイトを増設予定。
・ 若者に対するサービス強化
・ ハイリスク・グループに対する VCT サービスへのアクセスの拡大
保健省、国家エイズコント
・ 日和見感染症のサービスの拡大
ロール委員会が中心的
・ 抗エイズ薬へのアクセスの拡大
役割。
・ VCT ガイドラインの印刷・配布
・ 消耗品の安定供給
7.8%
HIV/AIDS に関
する国家政策指
針
15.0%
国家 HIV/AIDS
活動のための国
家戦略フレーム
ワーク
(2000-2005)
4- 2
VCT サービスの課題
・
・
・
・
・
・
VCT サービス推進のための広報教育とアドボカシー活動
国家 VCT ガイドラインの策定。
カウンセラーの管理
検査キットの安定供給
VCT サービスのモニタリング評価
若者に対するサービス強化
VCT サービスを宣伝するための活動の不足
VCT サービス推進のためのリーダーシップの不足
VCT サービスの現状把握
VCTサイトの不足
VCT ガイドラインの欠如
委員会における専任カウンセラーの欠如
検査キット選定の不透明性
VCT サービスの広報宣伝
VCT サービスの実態把握
VCT サービスの強化と拡大
ART 導入体制の確立
VCT ガイドラインの策定
HIV 検査キット評価システムの強化
HIV 検査キットの安定供給
4.2.1
ザンビア
4.2.1.1
国の概要
ザンビアの人口は、2002 年の推計で 1,090 万人、国土面積は 75.2 万平方キロメートル
で、日本と比較すると人口は 12 分の 1、面積は約 2 倍となる。ザンビアは平坦な地形
で平均標高 1,130mの高原である。気候は熱帯気候で雨季と乾季に分かれるが、雨季か
ら乾季への移行期は涼しく乾燥した気候となる。
ザンビアの公用語は英語である。民族語学的には 73 の民族グループが存在し、その中
でもベンバ、ニャンザ、トンガ、ロズィが主だったグループであり、これらの言語も
主要言語といえる。ザンビアは行政的には 9 つの州(Province)、62 の郡(District)
に分けられているが、伝統的首長が治めている領域も併存し、これら領域は行政の区
分とは一致していない。伝統的首長は今でも民衆に対して強い影響力を保っており、
彼らの統治下における活動については、彼らの理解を得ることは重要な戦略の一部と
なる。
国連人口基金(UNFPA)の 2002 年世界人口白書によると、ザンビアの合計特殊出生率
推計値は 5.66、人口の年平均増加率は 2.1%となっており、2050 年の人口は現在の 2
倍以上の 2,930 万人と推計されている。一方、乳児死亡率及び 5 歳未満児の死亡率は、
出生 1,000 に対してそれぞれ 80、143∼144 となっており、多産多死の傾向が強い。近
代的避妊法の実行率は 15∼49 歳の女性の 14%と依然低く、妊産婦死亡率は出生 10 万
に対して 870 と高い数値を示している。また、都市人口の割合が 40%と高いことも特
徴のひとつである。
表4-2: ザンビアに関する一般情報
名称
首都
国土面積 *1
人口(2002 年推計)*2
言語
ザンビア共和国(Republic of Zambia)
ルサカ(Lusaka)
75.2 万 km2(日本の約 2 倍)*1
1,090 万人
英語(公用語)。ベンバ、ニャンザ、トンガな
どの民族語
多くはキリスト教、その他伝統宗教
Levy Mwanawasa 大統領
750
42.6/41.7
14/26
64
宗教
大統領
国民一人当たりの GNI(米ドル)*2
出生時平均余命(歳)(男/女)*2
15 歳以上非識字率(%)(男/女)*2
安全な水へのアクセス率(%)*2
出典:
*1 外務省ホームページ
*2 国連人口基金、
「世界人口白書 2002」(日本語版)
4-3
表4-3: ザンビアのリプロダクティブヘルス指標
乳児死亡率(出生 1,000 対)
妊産婦死亡率(出生 10 万対)
5 歳未満児死亡率(出生 1,000 対)
(男児/女児)
近代的避妊実行率(%)
合計特殊出生率推計値(2000 年∼2005 年)
専門技能者の立会いのもとでの出産(%)
80
870
143/144
14
5.66
47
出典:国連人口基金、
「世界人口白書 2002」(日本語版)
4.2.1.2
ザンビアにおける HIV/AIDS の概況
ザンビアは、世界で最も HIV 感染率の高い国の 1 つである。1984 年に最初のエイズ患
者が報告されて以来その数は増え続け、2002 年の国連エイズ合同計画の発表1によると、
HIV 感染者数は AIDS 発症者も含め 120 万人で、成人(15-49 歳)人口の 21.5%が HIV
に感染していると報告されている。成人女性の占める割合が 59%と高いのが特徴であ
る。2001 年の 1 年間にエイズを発症して死亡した人は 12 万人にも上り、エイズによっ
て片親または両親を亡くした 15 歳未満の子供たちは、現在 57 万人とされている。ル
サカとンドラの 2 つの主要都市における妊産婦の HIV 感染率は、1985 年の 5%から 1992
年の 27%に急増し、その後 1998 年までは増減があまりみられなかったが、20 歳未満
の妊婦においては、HIV 感染率が 1993 年の 27%から 1998 年の 17%へと激減している。
これは、これまでの対策の成果であると言われている。
保健省によるとザンビアにおける主なる HIV 感染経路は異性間性交渉と母子感染であ
る2。異性間性交渉による HIV 感染が拡大した要因として、次のようなものがあげられ
ている。①性感染症の罹患率の高さ、②不特定多数の人とのセックスの多さ、③コン
ドームの使用率の低さ、④男子割礼率の低さ、⑤貧困とそれからくる健康水準の低さ、
⑥女性の社会経済的地位の低さ、⑦社会的経済的状況の悪さ、⑧都市人口の多さと移
動人口の高さ、⑨早い年齢からのセックス、⑩一夫多妻やドライセックス3やセクシャ
ルクレンジング4などの習慣などである。成人女性の感染率の高さにはジェンダーや貧
困の問題が複雑に絡んでいる。性感染症の罹患率の高さについては、公的医療施設に
おける外来患者の 10%が性感染症治療患者とされており、1981 年には 19 万件、1992
年には 30 万件以上の性感染症が報告されている。1995 年の世界保健機構(WHO)の推
計5はさらに上回り 1 年間に 107 万 9 千件としている。
1
Joint United Nations Programme on HIV/AIDS (UNAIDS). Epidemiological Fact Sheets on HIV/AIDS and STIs
- Zambia, 2002 Update, 2002: p2.
2
Ministry of Health and Central Board of Health. HIV/AIDS in Zambia, 1999: p5, pp21-23.
3
ドライセックス(dry sex)とは、膣内の粘液を布状のもので拭き取るなどして乾燥させた後に行う性行為。
膣内が乾燥状態のほうが男性への刺激が高まるという理由。
4
セクシュアルクレンジング(sexual cleansing)とは、妻・夫を亡くした人が再婚する際、前のパートナー
の霊を体から消すために行われる性的浄化のための儀式。具体的には親戚一同が認めた異性との儀式的セック
スのことである。
5
National HIV/AIDS/STD/TB Council. HIV/AIDS/STD/TB Strategic Framework 2001-2003, 2000: p3.
4-4
2001 年の妊婦検診クリニックにおける定点観測(Sentinel Surveillance)結果は 2002
年中に公表されるはずであったが、データの不備が発見され、検体の再検査が行われ
たため発表が遅れている。今回の定点観測では、前回の調査で出た 20 歳未満の妊婦の
感染率減少傾向が継続して起こっているかどうか注目されている。
表4-4: ザンビアにおけるHIV/AIDS概況
HIV 感染者数推計
成人(15‐49 歳)
1,000,000(内女性 590,000)人
子ども(15 歳以下)
150,000 人
HIV 感染率推計
成人(15‐49 歳)
21.5%
エイズ患者報告件数累計
44,942 件
エイズによる死亡者数推計(2001 年)
120,000 人
エイズによって片親または両親を亡くした遺児 570,000 人
(15 歳以下)数推計
出典:Joint United Nations Programme on HIV/AIDS and World Health Organization,
Epidemiological Fact Sheets on HIV/AIDS and STIs - Zambia, 2002 Update
4.2.1.3
ザンビアにおける HIV/AIDS 対策
【1】
HIV/AIDS 対策の変遷
国家エイズ・性感染症・結核審議会(National HIV/AIDS/STD/TB Council)によると6、
ザンビアの HIV/AIDS 対策は次のように移り変わってきている。
政府は、1986 年、HIV/AIDS 問題に
対処するため、国家エイズ対策プロ
ザンビアエイズ対策の概要
グラム(National AIDS Prevention
1984
1986
and Control Programme)を立ち上
1987
げた。また、1987 年には安全な輸血
血液及び血液製剤の確保を目指し、
緊急短期計画が起こされた。第 1 次
1988-1992
1994-1998
2000
中期計画 1988-1992 年(The First
Medium Term Plan: MTPI ) で は 、
2002
最初のエイズ患者報告
国家エイズ対策プログラム立ち
上げ
安全な血液供給のための短期計
画発足
第 1 期中期計画
第 2 期中期計画
国家エイズ・性感染症・結核審議
会の設立とエイズ・性感染症・結
核対策戦略的枠組(2001∼2003)
策定
グローバルファンド申請書承認
HIV/AIDS はあくまで保健課題とし
ての扱いであったが、第 2 次中期計画 1994-1998 年(The Second Medium Term Plan:
MTPII)にセクターを超えた対応の必要性を政府が認識し、2000 年になってそれがよう
やく実現した。国家全体で HIV/AIDS 問題と取り組むために 14 の省庁による閣僚委員
会と国家エイズ・性感染症・結核審議会(National HIV/AIDS/STD/TB Council、以下審
議会と略)が設置された。そして、国家エイズ・性感染症・結核対策戦略的枠組 2001-2003
(HIV/AIDS/STD/TB Strategic Framework 2001-2003)が打ち出された。
2001∼2003 年の戦略的枠組をみると、HIV 感染率の高い地域、グループ、介入方法(活
6
National HIV/AIDS/STD/TB Council. HIV/AIDS/STD/TB Strategic Framework 2001-2003, 2000: p15.
4-5
動)を定め、これまで効果を上げてきている国や NGO の活動やプロジェクトを全国展
開していくための環境を整えていくというのが基本的な方針である。活動としては、
性行動変容の促進、性感染症対策、感染が起こりやすくなるような性習慣の排除、偏
見差別の緩和、VCT サービスの推進、母子感染予防、HIV 感染者・エイズ患者(People
Living with HIV/AIDS、以下 PLWHA と略)に対する在宅ケアとサポート、エイズ遺児
及び感染の危険にさらされている子どもへの支援、エイズ・性感染症・結核治療薬の
供給、病院でのケアの改善が優先活動として列挙されている。これらの活動を実施し
ていくための経費試算によると7、3 年間の合計で約 6 億米ドルが必要で、その内 4 億
1,500 万米ドルを外部援助に頼らねばならないことになっており、現実とのギャップは
大きい。
しかし、2001 年に世界エイズ結核マラリア対策基金(以下グローバルファンドと略)
が開設され、ギャップを埋めることへの希望が持てるようになった。ザンビア政府は、
これを機に、2002 年 3 月に 5 年計画(2002 年∼2006 年)の事業申請書を提出した。エ
イズ分野の申請額は年間 1300∼2200 万米ドルであり、2002 年の申請額約 2000 万米ド
ルについてはそのまま承認され、資金の流れやモニタリングなどに関する事務的打ち
合わせが 2003 年 1 月に行われた。当申請書8には様々な活動が包括的に盛り込まれてお
り、予防対策に 1000 万米ドル、PLWHA に対するケア・サポートなどの対策(Mitigation)
分野に 700 万米ドル、その他モニタリングや評価、調整などに 300 万米ドルという配
分になっている。予防対策の中には、性感染症対策、行動変容を促す広報教育活動、
無料コンドーム配布、ハイリスクグループ対象プログラムの拡大、安全な輸血血液供
給、VCT サービスの向上・拡大、母子感染予防プログラムの向上・拡大が含まれており、
戦略的枠組に沿った活動内容となっている。ケア・サポート分野では、無症候性 HIV
感染者に対するサポート、在宅ケア、エイズ遺児のサポートの他、抗エイズ薬による
治療を含む PLWHA の生活の質の向上も含まれている。
パイロットベースでの抗エイズ薬治療はすでに 2002 年 10 月より政府主導でルサカ市
とンドラ市の 2 箇所で始まっている。ルサカ市ではザンビア大学付属教育病院
(University Teaching Hospital、以下 UTH と略)が、ンドラ市ではンドラ中央病院
(Ndola Central Hospital)と熱帯病研究センター(Tropical Diseases Research Center、
以下 TDRC と略)とが共同で、合計 136 人を対象に有料で9実施している。グローバルフ
ァンドによる抗エイズ薬治療本格実施に向けて経験を積み上げ、体制を整えようとし
ている。
グローバルファンドの執行には、国家調整機構(Country Coordinating Mechanism: 以
下 CCM と略)を組織し、運営・管理・調整することとなっている。ザンビアの CCM は、
7
National HIV/AIDS/STD/TB Council. Costing the Zambia HIV/AIDS Strategic Framework 2001-2003, 2001:
p48.
8
Zambia Country Coordinating Mechanism. Zambia’s Proposal to the Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis
and Malaria, March 2002:
9
毎月の治療参加費として 40,000∼50,000 クワチャを徴収し薬剤を渡すとともに、臨床的なモニタリングを行って
いる。追加的検査にかかる費用もある程度の負担をしてもらっている。CD4 カウントによるモニタリングも行
う予定。
4-6
保健省の事務次官(Permanent Secretary)を座長として、政府機関、学識者、企業、
NGO、伝統的治療師(Traditional Healer)、メディア、宗教団体、ドナー、PLWHA の代
表者をメンバーとして、エイズ結核分野とマラリア分野のそれぞれに事務局が設立さ
れた。エイズ結核分野の事務局は国家エイズ・性感染症・結核審議会事務局となってい
る。ちなみに、NGO の代表には、Family Health Trust と Youth Forum と Community Based
Tuberculosis Organisation の 3 団体の事務局長が、ドナーの代表には、世界銀行と
UNAIDS と USAID がメンバーとなっている。
グローバルファンドの政府機関、民間機関への活動資金の振り分けは、ほぼ半々とな
っている。グローバルファンド事務局からの送金は四半期ごとに行なわれる予定で、
執行に問題がある場合、事務局は送金を停止すると警告しており、事業を実施してい
くための CCM の管理調整能力が試されようとしている。
HIV/AIDS 対策のかかわる主要な国家政策・戦略ペーパー
•
•
•
•
•
【2】
National HIV/AIDS/STD/TB Council. Strategic Framework 2001-2003, October 2000.
National HIV/AIDS/STD/TB Council. National Guidelines on Management and Care
for HIV/AIDS, 2002.
National HIV/AIDS/STD/TB Council. Costing Zambia National HIV/AIDS Strategic
Framework, October 2001.
Ministry of Health. National HIV/AIDS/STI/TB Policy, February 2002.
Ministry of Finance and National Planning. Zambia Poverty Reduction Strategic
Paper 2002-2004, 2002
HIV/AIDS 対策調整メカニズム
国家エイズ・性感染症・結核審議会は、国家のエイズ、性感染症、結核対策における最
高諮問機関であり、政策、中長期的目標、及び戦略を立て、資金や人材を確保し、エ
イズ・性感染症・結核対策全般を調整、監督、評価していくことがその役割となって
いる。審議会には事務局(National HIV/AIDS/STD/TB Secretariat)が置かれ、審議
会の実働部隊となっている。また、審議会にはテーマごとに 9 つの専門グループ
(Technical Working Group)が存在している。9 つのグループのテーマは、母子感染、
ワクチン開発と治療、結核、VCT とケア、広報教育活動(Information, Education, and
Communication、以下 IEC と略)
、遺児及び感染の危険にさらされている子ども、性感
染症、資源開発と資金調達、モニタリングと評価である。それぞれの専門グループは、
政府、市民団体、民間セクターなど、これまでその分野で活動を行い、専門知識や経
験を持った団体がメンバーとなっている。
4-7
表4-5: ザンビア国内のHIV/AIDS対策における主要関連機関の役割
主要関連機関
役割
National
HIV/AIDS/STD/TB
Council(NAC)
Central Board of Health(CBoH),
Ministry of Health
その他省庁
国の HIV/AIDS/STD/TB 対策にかかわる最高機関で、国家政策
や指針作り、セクター横断的対策の調整などを行う。
国の HIV/AIDS 対策の中の医療ケア・サポート、母子感染予
防、抗エイズ薬治療など医療分野における対策を調整する。
NAC のメンバーとして国家政策や指針作りに参加するととも
に、各省庁においては HIV 感染予防対策をメインストリーム
化する。
HIV/AIDS 対策を実践する。
ウィルス性疾患の国家リファレンスラボとして NAC と協力し
つつ、HIV タイプ/サブタイプの研究を行ったり、母子感染予
防プログラムや抗エイズ薬治療プログラムを技術的にサポ
ートしたり、疫学調査の検体検査の中心となったりしてい
る。
NAC の Technical Working Group のメンバーとして国家政策
や指針作りに貢献するとともに、HIV/AIDS にかかわる様々な
実践や人材養成、ネットワーク作りを行っている。
Network for Zambian People Living with HIV/AIDS (NZP+)
という全国規模の PLWHA のネットワークを構築し、国家政策
や指針作りに参加しつつ、自助グループの組織化を行った
り、人材育成や資金調達を行ったりしている。
国のエイズ対策におけるアドバイザーであり、国連機関やド
ナーに対しても情報提供を行っている。
HIV/AIDS の様々なプログラムのサポートを行っている。
HIV/AIDS を思春期保健の一環として NGO と連携しながらカン
トリープログラムを実施している。
NAC、CBoH、UTH、NGO などの活動を直接サポートしたり、保
健セクターのコモンバスケットに投資している。
District
University Teaching Hospital
(UTH) Laboratory 及び Tropical
Diseases
Research
Centre
(TDRC)
NGOs, CBOs, and Private Sector
PLWHA
UNAIDS
UNICEF
UNFPA
ドナー
4.2.1.4
ザンビアにおける VCT サービス
【1】
VCT サービスの変遷
HIV 検査体制の整備についてみると、1987 年に安全な輸血血液供給のためのプログラ
ムが立ち上がったのに伴って、ルサカ市の UTH 検査室とンドラ市の TDRC が HIV の国家
レファレンスラボとして検査体制を整えた。そして全国 33 の医療施設を皮切りに HIV
検査が全国すべての病院で行われ、安全な輸血血液供給が可能になるよう機材の設置、
検査試薬の配給、検査技師のトレーニングが行われた。また、輸血のためのガイドラ
イン(National Guidelines for Blood Transfusion)も整い、すべての輸血用血液に
対して HIV 及び梅毒のスクリーニングが行われることとなっていった10。
ザンビアで最初に VCT サービスに取り組んだのは、Kara Counseling and Training Trust
(KCTT)で、1992 年のことであった11。その後、1999 年に、ノルウェー開発協力庁(NORAD)
の支援で、VCT パイロットプロジェクトが中央保健局(Central Board of Health: 以
10
11
National HIV/AIDS/STD/TB Council. HIV/AIDS/STD/TB Strategic Framework 2001-2003, 2000: p17
National HIV/AIDS/STD/TB Council. HIV/AIDS/STD/TB Strategic Framework 2001-2003, 2000: p29
4-8
下 CBoH と略)の監督のもと、全国で 22 箇所のクリニックが VCT サイトとなり、HIV 簡
易迅速検査(Simple/Rapid HIV-1&2 Assay)を使って試験的に開始された。実施委託
機関として Zambia VCT Service(以下 ZVCT と略)が設置され、UTH 検査室の一角に事
務所を構え調整業務を行ってきた。検査キットの配布、検査結果の取りまとめとモニ
タリングなどが主なる業務で、検査技師のトレーニング、確認検査や検査キットの品
質管理のためのサンプル検査は UTH 検査室及び TDRC が受け持った。
カウンセラーの養成は、国家エイズ対策プログラムの下で、保健省カウンセリングサ
ービス課(Counselling Service Unit)が Zambia Counselling Council (ZCC) の協力
を得ながら HIV/AIDS カウンセリングトレーニングマニュアルを作成し、トレーニング
の調整や管理を行ってきた。KCTT や Chikankata Mission Hospital などの民間機関も
カウンセラーの養成に大きく貢献してきた。2000 年末時点、全国で 3000 人以上のカウ
ンセラーがヘルスセンターレベルで存在しているとされている12。
NORAD 支援の VCT プロジェクトは、2001 年に第 1 フェーズが終了した。支援内容は、
①HIV 簡易迅速検査キットの供与、②リサーチ、③NGO によるカウンセリング養成であ
った。また、ZVCT の運営管理費(CBoH よりカウンセリング専門職員が出向しており、
この職員及び事務員の給料や事務経費など)も NORAD が負担した。2002 年に ZVCT から
NORAD に対して継続支援申請がなされ承認されている。ただし、HIV 簡易迅速検査キッ
トに関しては、JICA が NORAD と調整の上、2001 年度より 4 年間の予定で年間約 2000
∼3000 万円を投入しザンビア国政府に供与することになった。ZVCT を中心に拡大して
きた政府及び民間の VCT サイトに JICA 支援の簡易迅速検査キットが行き渡るようにな
っている。
全国における VCT サイトは、2002 年 6 月時点で 50 個所であったが、2002 年 12 月末ま
でに 101 箇所に増加させた13。半年あまりで倍増させたことになる。この無計画とも思
える VCT サイトの急増により、2002 年後半、一時的に検査キットが不足するという事
態に陥り、NORAD からの緊急支援によりなんとか賄ったというエピソードもある。
【2】
VCT サービスにかかわるポリシーまたはガイドライン
2001∼2003 年の戦略的枠組の中において、VCT サービス拡大は優先活動として位置づ
けられており、グローバルファンドでの活動の重要な一部ともなっている。
国家エイズ審議会が 2002 年に出している「HIV/AIDS のマネージメントとケアに関する
ガイドライン(National Guidelines on Management and Care for HIV/AIDS)」の中
の第 2 章に「Voluntary Counselling and Testing」という章があり、簡単なガイドラ
12
13
National HIV/AIDS/STD/TB Council. HIV/AIDS/STD/TB Strategic Framework 2001-2003, 2000: p17
2003 年 1 月に ZVCT より入手した全国の VCT サイトのリストによる。
4-9
インが存在している。この中に、国家的なポリシーに相当する以下のような記述があ
る。
•
VCT サービスはすべての郡のすべてのコミュニティにおいてアクセスが可能とな
らなければならない。
•
必須保健サービスの一部とならなければならない。
•
VCT サービスがより効率よく効果的に利用されるように保健サービス提供者はコ
ミュニティとの間に強いパートナーシップを構築しなければならない。
•
強力なリファーラルシステムを構築し、持続させねばならない。
•
カウンセリングに関しては、「HIV/AIDS のカウンセリングに関するガイドライン
(Guidelines on HIV/AIDS Counselling in Zambia)」に従わねばならない。
このガイドラインの VCT サービスに関する部分は全体的に非常に大雑把で、これだけ
では VCT サービスにかかわるすべての事項を網羅しているとは言い難い。例えば、ク
ライエントの適性年齢や親権者の同意、及び個人情報の守秘義務についてなどの記述
はない。
HIV 簡易迅速検査に関しては、ZVCT が UTH と JICA の協力を得て作成した「HIV 簡易迅
速検査キットとデータマネージメントマニュアル(HIV Laboratory Manual for the
Processing of Samples Use of HIV Test Kits and Data Management)」が存在してい
る。このマニュアルは、検査技師のトレーニング用に作られたもので、検査にかかわ
る詳細が記されている。ただし、国家ガイドラインとして書かれたものではなく、VCT
サービスの全体像を網羅した詳細なガイドラインにあたるものは現在のところ存在し
ない。国家エイズ審議会 VCT テクニカルワーキンググループ関係者の話によると、現
在ワーキンググループを中心にして作成中ということであった。現地 JICA 事務所はこ
の部分の支援も表明している。
【3】
簡易迅速検査
ZVCT の「HIV 簡易迅速検査キットとデータマネージメントマニュアル」には、検査キ
ットの種類とアルゴリズムが次項図4−1の様に記されている。
ちなみに、JICA が 2001 年度より調達している HIV 簡易迅速検査キットは、イニシャル・
テストで使用する Determine HIV-1/2、セカンド・テストで使用する Bionor HIV-1/2、
Genie II HIV-1/2 の 3 種類である。検査キットの配給は、2001 年までは ZVCT が NORAD
とのプロジェクトの延長で直接行っていた。つまり、各 VCT サイトが ZVCT と直接在庫
の確認と追加要請を行っていた。2002 年からは、保健中央局(CBoH)の意向で、Medical
Supply という会社に委託している必須薬品配給システムを使っての四半期に 1 回の配
給に変えた。これは、配給の透明性と効率性を高めることと、今後の VCT サービス全
国展開を考慮してのことのということである。ただし、この配給システムの変化は各
VCT サイトや郡保健局に徹底周知されなかったため、2002 年 4 月頃から混乱が生じた。
4-10
この状況改善のため、JICA ザンビア事務所は JICA エイズ結核対策プロジェクト事務所
を通して現状調査を開始し、現地コンサルタントを雇ってアセスメントを行った。ア
セスメント報告書は、2003 年 1 月の本調査時点で、まだ草稿の状態であったため、こ
こにその内容を引用することはできない14。アセスメント実施に当たっては、JICA、CBoH、
UTH、ZVCT の各機関からの代表も参加し、配給システムのみならず、検査結果報告や検
査キット品質管理における情報管理システム、検査キットの種類やアルゴリズムにつ
いてもアセスメントを行っている。
図4-1: ZVCTの推薦する検査キットの種類とアルゴリズム
①
Determine HIV-1/2(米国 Abbott Diagnostics 製)をイニシャル・テストとする。
②
Bionor HIV-1&2(ノルウェイ Bionor 製)、Genie II HIV-1/2(米国 BioRad Laboratories
製)、Capillus HIV-1/2(アイルランド Trinity Biotech 製)、Hema-Strip HIV-1/2(米
国 Chembio Diagnostic System 製)、Uni-Gold HIV-1/2(アイルランド Trinity Biotech
製)のいずれかをセカンド・テストとする。
③
判定方法は下図のとおり。
リファレンスラボ
−
HIV 陰性
イニシャルテスト
+
【4】
−
判定不能
+
HIV 陽性
セカンドテスト
VCT サービス全国展開にかかわる主要機関とその役割
VCT サービス全国展開にかかわる主要機関とその役割をまとめると以下のようになる。
表4-6: ザンビア国内のVCTサービスにかかわる主要機関とその役割
主要関連機関
National
HIV/AIDS/STD/TB
Council ( NAC ) VCT and Care
Technical Working Group
Central Board of Health(CBoH),
Ministry of Health
Zambia VCT Service
University Teaching Hospital
(UTH) Laboratory 及び Tropical
Diseases
Research
Centre
(TDRC)
District
役割
VCT サービス全国展開のための指針作りや調整を行う。
VCT サービスの管理、評価などを行う。検査キットの調達、
管理、分配の責任を担う。
VCT 全国展開のための調整を行っている。
CBoH の委託を受け、
VCT サービスのモニタリングを行う。
HIV 確認検査、検査精度の保障、検査キットの評価、検査キ
ットの品質管理、検査データの管理と分析、検査技師のトレ
ーニングなどを行う。
クリニックにおける VCT サービス統合を行う。検査キットの
分配を行う。
14
JICA HIV/AIDS and TB Control Project. Report on the Assessment of the Distribution of HIV Testing
Kits and the Information Systems of Voluntary Counselling and Testing Centres, 2003.
4-11
NGOs, CBOs, and Private Sector
PLWHA
UNAIDS
ドナー
NAC の VCT & Care の Technical Working Group のメンバーと
して国家政策や指針作りに貢献するとともに、VCT サービス
の実践や人材養成を行っている。
カミングアウトしている PLWHA が VCT サービスのプロモーシ
ョンを行っている。
VCT サービス拡大にかかわる諸々のアドバイスを行ってい
る。
NAC、CBoH、UTH、NGO などの活動を直接サポートしたり、保
健セクターのコモンバスケットに投資している。
4.2.1.5
ザンビアにおける VCT サービスの課題
【1】
VCT サービス推進のための広報教育とアドボカシー活動及び検査後のケアとサポートに
かかわる課題
VCT サイトを設置してカウンセリング検査体制を整えるだけではサービスの活用は進
まない。VCT プロモーションを含む広報教育活動と VCT サービス後のケア・サポート活
動が一体になって初めて利用が促進される。すでに、ザンビアでは、いくつかの NGO
は都市部において VCT サービスを入り口としてサポートやケアにつなげている。
また、
ソーシャル・マーケティング手法15を用いた VCT サービスのプロモーションも行なわれ
ている。ただし、そのような総合的な取り組みは一民間団体が広範囲にできるもので
はない。これまで NGO が積み上げてきたノウハウを、政府機関が積極的に学び取り入
れていくか、NGO とパートナーとなることによってサービスの拡大が可能となる。それ
ぞれの組織が得意とするサービスや専門性をパズルのように組み合わせながら人々に
提供していくことが今求められている。
【2】
VCT サービスプログラム運営能力強化にかかわる課題
① 国家 VCT サービスガイドラインの欠如
「HIV/AIDS のマネージメントとケアに関するガイドライン」の第 2 章の「VCT」の部分
では説明が荒く、VCT サービス全体を詳細に網羅していない。カウンセリングに関して
は ZCC のガイドライン、検査に関しては ZVCT の検査マニュアルがあるが、国家ガイド
ラインが存在しないことで、VCT サービスが不統一なものになっている。提供するに当
たっての最低必要条件、検査アルゴリズム、検査キットの品質管理、必要な消耗品の
種類や適正な数量、検査キットや消耗品供給システム、クライエントの適正年齢や親
権者の同意の必要性、データ管理、カウンセリングサービスの質管理、検査前及び検
査後カウンセリングで押さえておく必要性のある情報、個人情報守秘義務、関係各機
関の役割分担、トレーニングの種類と内容、モニタリング及び評価など VCT サービス
全体を網羅するガイドラインの整備が急務である。
15
ソーシャル・マーケティング(Social Marketing)とは、マーケティングを単に企業(この場合は営利企業)
の生産や販売、サービスに限定せずに、社会的な様々な要因にまで広げて考えようとする概念。例えば、営利
組織(企業)で実践されているマーケティング・コンセプト、マーケティング技法を非営利組織(例えば、政
府・地方自治体、学校、病院、寺院・教会、博物館・美術館、社会組織など)の効率的な運営のために取り入
れようとすること。
4-12
②
カウンセリングの質の管理
これまでに養成されたカウンセラーの数は 3,000 人以上と言われているが、そのすべ
ての人が VCT サービス提供にかかわっているわけではない。トレーニングも HIV/AIDS
カウンセラーとしての初級のトレーニングしか受けていない人、心理社会カウンセラ
ーとしてトレーニングを受けた人、医療のバックグランドがある人とない人、大学で
心理学などを専攻しカウンセラーとなった人など千差万別である。VCT サービスを拡大
するに当って質の高いカウンセリングを提供していくことは前提条件となるが、質に
ついての管理はできておらずそのシステムがない。
③
カウンセラーの過重負担
郡の保健センターなどの医療現場では、医療スタッフの不足により、外来患者が長蛇
の列をなしているといったことがしばしば見受けられる。このような現実の中で、VCT
サービスを必須保健サービスの一部としていくことは、現スタッフ体制では困難なこ
ととなる。カウンセラーとしてトレーニングを受けているスタッフは看護師や助産師
である場合が多く、彼女たちが他のクライエントを待たせて HIV/AIDS のカウンセリン
グを行うことは、双方の負担が増すことになる。HIV 母子感染予防研究プロジェクトな
ど、ドナー支援の特別なプロジェクトが動いている場合は、カウンセリング専門のス
タッフを配置することができるが、それ以外は現スタッフ体制で負担を担っていく以
外ない。ボランティアのカウンセラーを養成し、VCT サイトに配置していくという方法
もあるが、カウンセラーの精神的負担、クライエントのプライバシーの確保など課題
も多い。
④
HIV 検査キットの配給システムの脆弱さ
2002 年からの必須薬品配給システムの導入時には、ZVCT が直接 HIV 検査キットを各 VCT
サイトに配達するというシステムから、保健省が医薬品や消耗品などの配給を一括委
託しているメディカルストア(Medical Stores Limited)の配給システムに乗せるこ
とへの変更が、現場には的確に伝わっていなかった。現場では誰に供給依頼をして、
誰からキットを受け取って、誰に結果報告すればよいかという基本的なところが知ら
されていなかったため混乱したようだ。また、この医薬品配給のシステムは、通常四
半期に 1 回の配給システムであるため、これまでのように「必要時に必要量分を要請
する」という配給システムに慣れていた現場では、要請を上げたのに検査キットが届
かないという事態が生じたわけである。今後、各 VCT サイトの検査キット在庫管理は、
四半期に 1 回というタイミングを考えて、需要を予測し、数か月分の配給要請を出さ
ねばならないことになる。
HIV 検査キットが無ければ、ようやく VCT サイトに足を運んだクライエントの決心を挫
くことになりかねない。また、検査キットが不足している場合、アルゴリズムを勝手
に変えて、有り合わせの検査キットで検査を行う場合も予想され、診断結果の正確さ
が確保できなくなる。逆に、需要以上の検査キットを頼むと、品質保証期限が切れた
4-13
ものは使用できなくなり無駄になってしまう。的確な需要の予測と安定した供給、更
にスムーズな情報の流れを確保しなければならない。
⑤
モニタリング・評価システムの脆弱さ
ZVCT が直接検査キットを配給していた頃は、データの受領と現場のモニタリングも兼
ねて行っていたが、現在その役割は基本的に各郡が担うことになっている。もちろん
ZVCT によるモニタリングも行うようだが、各 VCT サイトの検査アルゴリズムの不統一
さをみると、その機能は脆弱であると言わざるを得ない。ソフト、ハード両面でモニ
タリング及び評価を行えるような仕組みづくりと人材養成が必要であろう。
【3】
セクター横断的な課題
若者に対する取り組みの脆弱さ
若者に対するエイズ教育は学校や NGO などが様々な形で行っている。若者に対する HIV
感染予防のためのメッセージは、それぞれの団体の宗教的背景により多少異なり、「禁
欲のみが有効である型(Abstinence Only)」と「禁欲を奨励するが、不可能な場合は
他の選択肢を提案する型(Abstinence-based)」に分けられる。VCT サービス推進メッ
セージは、それぞれの思春期保健教育全般の中の一部となっているが、継続的で積極
的な推進メッセージの発信にはなっていないようである。
若者に対する VCT サービス推進でもう一つ障害となっていることは、「親権者による同
意が必要な年齢(Age of Consent)」である。16 歳以下の少年少女は、保護者または親
権者が同伴し承諾しなければ HIV 検査が受けられないということである。保護者の承
諾なしで検査をした場合は、訴えられる可能性もある。ところが、現実的には、15 歳
以下で性行動は開始されており16、また 15 歳で母親となっている少女も多数おり、現
状にあってない。16 歳という年齢制限の法的根拠は、
「公的に結婚できる年齢」という
ところにある。法的には 16 歳未満の少女と性交渉をした場合は起訴されることになる。
16 歳という年齢制限が現場のニーズに対応していないと判断された場合は、その年齢
について法律の専門家も交えて検討する必要があろう。HIV 検査の陽性告知をする場合
は特に、結果を適切に理解して受け入れられるのは何歳かという問題はあるが、同時
に、現場のニーズにあった柔軟な対応が出来るようにすることも必要であろう。
16
ルサカ市内において Population Service International が 1998 年に行った調査では、13 歳∼18 歳までの
就学者のうち男性 73%女性 46%、非就学者のうち男性 88%女性 82%がセックスを体験しているという結果が
でている。
4-14
4.2.1.6
ザンビアの VCT 関係者による我が国への要望
現地調査の際、日本に対する期待を尋ねたところ、以下のような事柄が要望として挙
げられた。
•
コミュニティにおける広報教育活動強化に対する支援
•
PLWHA のケアサポートのための施設、人材養成、薬品などの供給
•
VCT サービス普及のためのニーズアセスメント(拡大がニーズにあった形で進んで
いるか、カウンセラーの質やパフォーマンスはどうかなど)
•
若者に対する HIV/AIDS 関連サービスの強化に対する支援
•
地方への VCT サイト設置のための施設整備に対する支援(カウンセリング室、検
査室、コールドチェーンなど)
4-15
4.2.2
ウガンダ
4.2.2.1
国の概要
ウガンダはアフリカ中東部に位置する内陸国家である。ヴィクトリア湖をたたえ、ケニア、
スーダン、DRC(民主コンゴ共和国)
、ルワンダと国境を接する。植民地時代は英国領とな
ったが、内陸国であったため到達する英国人の数は限られ、ウガンダ人主体の国家形成は
ある程度守られたとされる。恐怖政治を敷き多くの市民を虐殺したアミン政権崩壊後、過
去 20 年ほどはムセベ二大統領を中心に比較的安定した経済成長を続けている。しかしス
ーダンとの国境において反政府活動グループによる拉致・略奪行為が繰り返されており、
現在も国内避難民として生活する人々が多数存在する。また、スーダンや DRC での内紛の
ため、国境を越えて流れ込む難民は多く、国境に配備される兵士の移動とも伴い、紛争下
での性的暴力・搾取、そして HIV 感染が問題となっている。保健医療全般においては近年
前進がみられるものの、妊婦死亡率においてはサハラ以南のアフリカでも最も高い国の一
つである。
表4-7: ウガンダに関する一般情報
名称
首都
国土面積*1
人口*1
住民*1
言語*1
宗教*1
ウガンダ共和国(The Republic of Uganda)
カンパラ
24.1 万 Km2
24,800,000
パガンダ族、ランゴ族、アチョリ族など
英語、ブガンダ語、スワヒリ語
キリスト教(6 割)、伝統宗教(3 割)、イスラム教
(1 割)
共和制
ヨウェリ・ムセベニ
1,210
45.3/46.8
21/41
50%
政体*1
大統領*1
国民一人当たりの GNI (米ドル) *2
出生時の平均余命 (歳) (男/女) *2
15 歳以上の非識字率 (%) (男/女) *2
安全な水へのアクセス率 (%)*2
出展:
*1 外務省ホームページ
*2 国連人口基金、「世界人口白書 2002」
表4-8: ウガンダのリプロダクティブヘルス指標
乳児死亡率 (出産 1,000 件対)
妊婦死亡率 (出生 10 万件対))
5 歳以下の子供の死亡率 (出産 1,000 件対)
(男児/女児)
近代的避妊実行率 (%)
合計特殊出生率推計値 (2000 年から 2005
年)
専門技能者の立会いのもとでの出産 (%)
94
1,100
167/151
18
7.1
74%
出展:国連人口基金、「世界人口白書 2002」
4-16
4.2.2.2
ウガンダにおける HIV/AIDS の概況
ウガンダにおける成人 HIV 感染率は 1995 年の 18.6%から 2001 年末には 5.0%にまで下が
り(表 4‐9 参照)、ほかの調査結果でも、社会の各セクターにおける感染率の低下が裏付
けられている。その一方で、感染率は過去数年間に渡り低下から停滞傾向に変化しつつあ
り、新たな感染を防ぎ現存する多数の感染者とその家族・コミュニティへの支援を強化す
る必要性が強調されている。
表4-9: ウガンダにおけるHIV/AIDS概況
HIV 感染者数推計
成人(15−49 歳)
子ども(15 歳以下)
HIV 感染率推計
成人(15-49 歳)
エイズ患者報告件数累計 (2000 年 6 月)
エイズによる死亡者数推計 (2001 年)
エイズによって片親または両親を亡くした遺
児(15 歳以下)推計
出 典 : Joint United Nations Programme
Epidemiological Fact Sheets on HIV/AIDS
4.2.2.3
ウガンダにおける HIV/AIDS 対策
【1】
HIV/AIDS 対策の変遷
510,000(内女性 280,000)人
110,000 人
5.0%
55861 件
84,000 人
880,000 人
on HIV/AIDS and World Health Organization,
and STIs ‐ Uganda, 2002 Update
ウガンダにおいては 1982 年に最初の HIV 感染者が確認されて以来、市民・政官の全セク
ターにおいて様々な努力がなされ、実を結んできた。80 年代から 90 年代にかけては
HIV/AIDS 問題に対応する必要を認めた医療従事者ら有志を中心とする NGO・CBO が設立さ
れ、コミュニティでのニーズと状況に直接応えるための実践的活動が精力的に行われた結
果、後の政府を中心とする国家 HIV/AIDS 対策政策設立の基礎を形成するに至った。医療
以外の分野においても、HIV/AIDS に対する偏見と差別を乗り越えて早期から活動を行っ
てきた非政府組織の貢献は政府を始め支援機関にも広く認知されている1。
国家としての HIV/AIDS 対策の始まりは 1986 年に保健省内にエイズ・コントロール・プロ
グラムが設置されたことによる2。後の 1992 年には HIV/AIDS が保健医療を超えた課題で
あることを認める国会の法令に基づき、全セクターにわたる HIV/AIDS 対策を調整するた
めの Uganda AIDS Commission (UAC) が大統領府下に設立された。1993 年には「エイズ・
コントロールに対するマルチ・セクトラル・アプローチ」(the ”Multisectoral Approach
to the Control of AIDS”)が国家政策およびストラテジーとして承認され、すべての国
1
HIV/AIDS 対策における現地 NGO・CBO が担う役割は極めて大きいにもかかわらず、政府からの資金援助も限ら
れており、財政面で大きな課題を抱えていることが多い。
2
The National Strategic Framework for HIV/AIDS Activities in Uganda: 2000/1-2005/6, Uganda AIDS
Commission, March 2000.
4-17
民および組織が HIV/AIDS に対し、それぞれの能力と責任において取り組むことを求めた。
ウガンダの国家としての取り組みは、必要な HIV/AIDS 対策関連政策やストラテジー、ガ
イドラインの設立にも顕著である。
こうした政策レベルでの早急な対応と、
HIV/AIDS 対策への政府としての公式的実
ウガンダ HIV/AIDS 対策の変遷
質的取り組みの背景には、政府最高レベル
1982
1986
における HIV/AIDS 対策へのオープンかつ
強い支援があった。国家首長であるムセベ
ニ大統領は早くから HIV/AIDS 課題の重要
1992
1993
性を認め、国家としての有効な対応を促す
と同時に HIV/AIDS の被害と影響を受ける
患者とその家族への偏見を軽減するため
の発言を多くの公式の場で積極的に行っ
た。1980 年代には強い偏見とタブーによっ
2000
2001
最初のエイズ患者報告
エイズ・コントロールプログラムの
設置
ウガンダ・エイズ・コミッション設
立
エイズ・コントロールに対するマル
チ・セクトラル・アプローチの承認
/国家エイズコントロール政策発
令
国家 HIV/AIDS 活動戦略フレーム
ワーク(2000-2005)
HIV/AIDS 感染・発症乳幼児のため
の栄養ポリシーガイドライン公布
て隠蔽されてきた HIV/AIDS とその被害者
について、1990 年代後半には一般市民が日常的に議論できる社会・コミュニティ環境を
形成するに至ったことへのムセベニ大統領の貢献は、今日 HIV/AIDS に対する偏見により
その対策が膠着状態にあるほかの国々の例と比較すると、非常に多大なものであったとい
える3。
表4-10: ウガンダにおけるHIV/AIDS対策及びVCTサービスに関連する政策・戦略・ガイドライン
主要な政策・戦略など
・ National Strategic Framework for HIV/AIDS Activities in Uganda: 2000/1-2005/6 (2000)
・ National AIDS Control Policy Proposals (1993, revised in 2002)
・ Poverty Eradication Action Plan (PEAP) and the Uganda Vision 2025
・ National Health Policy
・ Local Governments Act of 1997(地方分権化に関する法令)
・ Multi-sectoral AIDS Control Approach (MACA)(1993)
主要なガイドライン
・ Policy Guidelines on Feeding of Infants and Young Children in the Context of HIV/AIDS
(MOH, 2001)
・ VCT Policy Guidelines (Draft)
【2】
HIV/AIDS 対策調整メカニズム
現在ウガンダでは、大統領府直轄下にある4 UAC が国内における HIV/AIDS 対策全般の調
整を行っている。2001 年の UAC による、より体系的な調整活動を確立するための提言に
3
しかし 2000 年の大統領選において、対立候補が HIV 感染者であるとして攻撃を行ったムセベニ大統領の一貫
性については、疑問の声があることも否定できない。
4
HIV/AIDS は保健医療を超えた開発・安全保障問題である、との認識から、保健省を離れ総理府下に設置され
ている。
4-18
基づき、2002 年半ばに官・民・開発パートナーを幅広く含み HIV/AIDS 対策におけるすべ
てのステークホルダーが参加した「パートナーシップ・フォーラム」が設立された。フォ
ーラムの目的は、すべてのステークホルダーが参加して効率的に調整活動を行うことであ
る。ウガンダ・エイズ・コミッションがフォーラム全体の運営を行ない、UNAIDS やほか
の主な開発パートナーがフォーラムの枠組み内でのドナー間の調整にイニシアティブを
発揮している。フォーラム内には各ステークホルダーごと(例:伝統的医療従事者グルー
プ、ドナーグループ、国際 NGO グループ)に委員会が設置されており、一般市民を含むす
べてのステークホルダーが効率的に直接・間接に政策決定に参加すると共に、国内調整役
の UAC における運営負担を軽減することが期待されている。例えば、ウガンダ国内での
HIV/AIDS 対策を支援している国際 NGO はフォーラム内での国際 NGO 群(International NGO
Constituency)を構成し、群内での調整を通じて出された国際 NGO としての共通認識を国
レベルでのフォーラム会合において提出している。ドナー間における情報交換や、ドナー
全体で連携した戦略的な支援の推進にも役割を発揮することが期待されている。現在 VCT
サービスに関連するプログラムに直接実質的な支援を行っているドナーは、Dfid、USAID・
CDC、世界銀行、NORAD、UNICEF、Elizabeth Gretchen Fund である。これらのドナーは AIC
及び保健省をつうじて VCT プログラムへの支援を行っている。
表4-11: ウガンダ国内における主要ステークホルダーの役割
ステークホルダー
Uganda AIDS Commission
Ministry of Health
(AIDS/STD Control Programme)
そのほかの省庁
NGOs・CBOs
UNAIDS
ドナー
役割
国内における全セクターに渡る HIV/AIDS 対策活動の調整、全
セクターを統括する政策・指針作りとその執行
保健医療分野における HIV/AIDS 対策に関する政策・指針作り
とその執行
該当分野における HIV/AIDS 対策に関する政策・指針作りとそ
の執行
該当分野における HIV/AIDS 対策活動の執行、政策・指針づく
りへの貢献
UN 機関及び二国間援助国が戦略的に国家 HIV/AIDS 対策全体
を支援してゆくための調整活動
国内カウンター・パートへの資金・技術援助、政策・指針作
りへの貢献
4-19
Box 6 : HIV/AIDS 対策における国際 NGO の役割
アイルランド系 NGO GOAL の HIV/AIDS 担当官クリステン・ミッチェルさんは現在ウガンダ
HIV/AIDS パートナーシップ・フォーラムの国際 NGO 群議長とまとめ役をつとめる。彼女のオ
フィスは、町の中心部から幾分離れた舗装されていない細道の先にある。1979 年からウガン
ダで活動を続ける GOAL が本格的に HIV/AIDS 対策にかかわり始めたのはこの 2 年ほど。もと
もとはストリート・チルドレンへのサポート活動を中心に行っていたが、2000 年に援助関連
組織を対象に幅広いインタビュー調査を実施し、GOAL が取り組める範囲での新たなニーズと
支援の手法を時間をかけて探った結果、現在の HIV/AIDS 分野での現地 NGO のネットワーク作
りとキャパシティー・ビルディングなどに取り組むことを決定。現地 NGO 及び地方政府を通
じた VCT サービス提供も積極的に支援しており、その活動への国内での評価は高い。
アフリカでこれから VCT サービスや HIV/AIDS 分野にかかわってゆこうとしている日本の NGO
に対するアドバイスを尋ねると、「ウガンダでの HIV/AIDS 対策は、ウガンダ人主体の、長期
的な継続性のあるものでなくてはなりません。私達は、こちらの NGO と地方政府が一緒に的
確に HIV/AIDS 対策に取り組めるようにカタリスト(catalyst)として支援をするだけ。この
点が明確でないと失敗するし、ウガンダからも受け入れられないでしょうね。」という応え
が即座に返ってきた。
GOAL は HIV/AIDS 対策が遅れているブジリ県にターゲットを絞り、既に県内で活動を行って
きた複数の現地 NGO が VCT サービスを含めた HIV/AIDS 活動を更に効果的に行うためのマネジ
メントに関する研修を実施、NGO 同士の連携を促し、ブジリ県の地方政府とこれら NGO が連
携を強化するために技術面・資金面での支援を行っている。特に現地 NGO と地方政府の連携
強化は、NGO が行っている VCT 活動を県の活動として所有・拡大してゆくために大きな役割
を持つ。実際の VCT サービスや HIV/AIDS 活動実施はすべて現地 NGO や地方政府が行ない、GOAL
自身はそのための黒子的な支援に徹する。
「GOAL のインターナショナルポストは徐々にウガンダ人ポストに移行しています。ウガンダ
の主体性尊重と、自立発展性確保のためです。この国では HIV/AIDS 対策を担ってゆける人材
が十分育ってきています。私はこの仕事が好きだけど、私もあと半年でウガンダ人の同僚に
ポストを譲ってこのオフィスを去ります。ここでの経験を生かしてほかの場所で仕事を始め
るつもりです。」満足そうな笑顔で語るクリステンさんに、GOAL が目指す「ウガンダへの貢
献」が着実に現実の形になりつつあることを感じた。
【2】
ウガンダにおけるこれまでの HIV/AIDS 対策全般の成果と今後の課題
ウガンダは、アジアのタイと並び、HIV/AIDS 対策による目に見える成果があったとして
知られている。以下表 4-12 のような具体的な成果が、The National Strategic Framework
for HIV/AIDS Activities in Uganda: 2000/1 2005/6 (NSF)において認識されている。
4-20
表4-12: ウガンダにおけるHIV/AIDS対策のこれまでの主な成果
HIV 感染の予防
・
全般的な HIV 感染率の低下
・
HIV/AIDS に関する知識の向上(少なくとも 3 人に 2 人が少なくとも 2 種類の HIV 感
染防止方法を挙げることができる)
・
HIV 感染防止に効果のある性行動の変化(性的に活発な層のうち、多くの人々がコ
ンドームを使用したり性的パートナーの数を減らしたほか、初めて性交渉を行う平
均年齢が上昇した)
・
VCT サービスの拡大と district(地方政府)レベルでの保健医療サービスへの統合が
進んだ
・
安全な血液の提供が 98%にまで達した
・
性感染症への対処に関するガイドラインの作成、保健医療従事者への研修の実施、
性感染症に関するサービスの Primary Health Care (PHC), Maternal/Child Health
(M/CH)及び家族計画サービスへの統合
・
母性保護における必須アイテムを含んだ「母子パッケージ」の導入と母子感染予防
のための抗エイズ薬を含む母子のための包括的パッケージを含むプロジェクトの始
動
・
HIV ワクチン開発と試験への参加
HIV/AIDS の影響の緩和
・
政府及び NGO による保健医療施設への日和見感染治療のための医薬品及び在宅ケア
キットの配布
・
在宅ケアとコミュニティへの出張サービスを通じた PLWHA へのより質の高い保健医
療サービスの提供と、それによる PLWHA の生活の質の向上
・
保健医療従事者へのトレーニング
・
PLWHA に対する偏見と差別の軽減
・
親類や拡大家族システムによる AIDS 遺児の吸収と、UPE を通じた遺児に対する教育
ニーズを取り上げたこと
制度上におけるキャパシティー・ビルディングと資金調達
・
マルチ・セクトラル・アプローチに基づく政策と戦略の作成と政府による承認、及
び UAC を通じた調整枠組みの確立
・
各省庁における AIDS Control Program の設立
・
HIV/AIDS に感染またはその影響を被っている人々へのケアと支援の提供を行ってい
る非政府セクターにおける重要なレベルでの mobilization
・
National AIDS Documentation and Information Centre の設立
・
保健省における epidemiological system の設立
・
共同臨床研究協議会(Joint Clinical Research Council: JCRC)といった HIV/AIDS
研究を行う機関の設立と、社会・科学の両方の分野における HIV/AIDS 研究の実施
・
国家及び地域レベルでの HIV/AIDS 関連活動のためのネットワークの確立(例:Great
Lakes Initiative on AIDS:GLIA)
以上のような成果を踏まえ、今後、National Strategic Plan を通して取り組むべきウガ
ンダの HIV/AIDS 対策の課題としては、以下のものが合意されている。
①
1996 年以来 HIV 感染率が 10%という高レベル周辺に留まっている状況の改善。
②
様々な人口カテゴリの中で、HIV/AIDS に対する意識の高まりがポジティブな性
行動の変化に結びついていない状況の改善。
③
約 200 万人に上る PLWHA の存在により、全人口の生活の質、特に労働力の健康面
で不利益な影響が出ていることへの対策。
④
政府内での全セクター・部課における事業計画と予算計画への HIV/AIDS 活動の
すべてのレベルにおけるインテグレーションの促進。
4-21
⑤
エイズ遺児をはじめとする HIV/AIDS の与える社会・経済的影響の緩和。
⑥
国家中央、地方政府及び下位レベルでの統一した HIV/AIDS 対策の調整強化。
4.2.2.4
ウガンダにおける VCT サービス
【1】
VCT サービスの現状
ウガンダにおいては 1990 年に AIDS Information Centre(AIC)が初めて VCT サービスを
スタートさせ、現在 56 あるうちの 27 の県(District)で VCT サービスを実施している。
今後 3 年間のうちに更に 8 つの県へサービスを拡大する予定である。AIC の成功と VCT サ
ービスへの国民からの強い要望を前に、1998 年以降ウガンダ政府は保健省を通じて AIC
の VCT サービスモデルを AIC が活動していない県へ拡大する努力につとめ、現在 AIC が活
動していない 12 の県で活動中・または活動準備中である。AIC はその経験と蓄積に基づ
き、保健省による VCT プログラムに対しても常に必要な技術要員などを提供、VCT サービ
ス導入前のコミュニティにおける啓発活動及びカウンセラーの研修などを実質的に担当
している。一方で、保健省を中心に AIC の蓄積を基にした VCT サービスのガイドラインが
現在準備されつつある。
Box 7 : <VCT サービス成功例> ウガンダ AIDS Information Centre: AIC
AIDS Information Centre (AIC)はウガンダ国内、そしてサハラ以南のアフリカにおいて初
めて VCT サービスの提供を体系的に確立、実施してきた NGO として世界に知られている。昨
今の WHO による VCT サービスに関するガイドラインの作成においても、AIC は大きな貢献を
果たしている。ウガンダにおける HIV/AIDS 対策の成功は HIV/AIDS 課題に直面する必要から
直接生まれた AIC のような NGO に大きく負うことは政府機関やドナーを含め広く認識されて
AIC
いる。NGO による活動が成功を収めた後、そうした功績と役割が政府及び大統領をはじめと
するハイレベルの政治家に認識・支援されるに至った。ウガンダの場合は、次第に保健省な
どの関連政府機関が NGO 同様のサービスや活動を模倣しつつ、関連する政策やガイドライン
を設定し、HIV/AIDS 対策全体を活性化することに努めている。AIC は、VCT サービスの普及
及び VCT カウンセラーの訓練やコミュニティにおける啓発活動のほか、HIV/AIDS 関連データ
の確立にも大きく貢献している。1989 年から保健省が毎年行っている HIV センチネル・サー
ベイ(HIV Sentinel Survey:国内に設置された幾つかの保健医療機関にて出産前ケアに訪れ
た妊婦を無作為に選んで行った HIV 検査)にも主要なデータを提供している。
すべての県において VCT サービスが実施されているとは言いがたいものの、近年行われた
アセスメントによると、出張サービスなどを含め全く VCT サービスが提供されていない県
は 2 つだけにとどまった。とはいえ、実際は各県に 1-3 つの VCT サービス実施サイトがあ
るに留まることが多く、出張活動もある程度限られるため、区域内の住民が VCT サービス
を十分に利用できるとは言い難い。AIC は今日までに少なくとも 800,000 名の利用者に対
し HIV 検査を提供しており、年間約 100,000 名への検査を行っている。
サービス開始から 10 年以上たつ今でも VCT サービスへの要望は増えつづけており、時に
4-22
特別の祭典などで行われる無料の VCT サービスには収容できない人数の人々が 1 日中列を
作ることが多い。AIC を通じた VCT サービス利用者の 35%が青少年であり、AIC はセンタ
ー内に若者のための Youth Corner を設置するなどして青少年が親しみやすいサービスの
提供に努力している。
【2】
VCT サービスにかかわるポリシー/ガイドライン
現在保健省を中心に VCT サービス政策ガイドラインを準備中であるため、国内で公式に統
一された VCT サービスのコンテンツは定まっていない。しかし、AIC は独自のガイドライ
ン及び以下表 4-13 のようなプロトコールを設定しており、ウガンダ国内における VCT サ
ービスは一般にこれに沿うものとなっている。
表4-13: ウガンダAICによるVCTサービス実施要綱
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
コミュニティが VCT サービスに理解を深め、サービスを受け入れるためのコミュニティ啓
発活動
カウンセリング(HIV/AIDS と性感染症、家族計画に関する基礎情報、HIV 検査と守秘義務、
HIV 陽性患者の権利とフォローアップ、ほかのリプロダクティブヘルスに関するサービス
について。5 人ほどまでのグループ、または夫婦で行われることが多い。通常 5 分ほど。)
HIV 検査及び梅毒検査への同意(どちらか一方のみも可)
HIV と梅毒の検査(USD1-2 程度の料金)
検査結果の開示前カウンセリング(15 分)
検査結果開示とカウンセリング(5-10 分ほど)
ポスト・テスト・クラブを通じた継続的なカウンセリングの実施、日和見感染と性感染症
への対応を含む保健医療サービスの提供、家族計画の提供、カップルへのピア・エデュケ
ーション、在宅ケアやスピリチュアル・ケアなどを行うほかの機関への紹介
AIC は性感染症対策と家族計画などを含む関連する保健医療サービスを、VCT サービスと
共に1度の診療で提供しており、遠方から出向くことの多い利用者の機会費用低下を心が
けている。保健省は VCT サービスを様々な関連保健医療プログラムの一部として推進して
いる。VCT プログラム、PMTCT プログラム、抗エイズ薬プログラム、日和見感染症対策プ
ログラム、在宅ケア・プログラムなどがその例である。
【3】
VCT サービスにかかわるステークホルダーとその役割
先に述べた HIV/AIDS 対策全般における主要ステークホルダーの役割に加え、VCT サービ
ス分野では次の機関が中心的役割を担っている(表 4-14 参照)。
表4-14: ウガンダのVCTサービスに関する主要機関とその役割
ステークホルダー
Uganda AIDS Commission
Ministry of Health
(AIDS/STD Control Programme)
AIDS Information Centre(AIC)
役割
・
・
・
・
・
・
・
保健医療セクターを越えた VCT 活動に関する調整
保健医療セクター内における VCT 活動の調整
関連する政策・ガイドラインの作成と執行に関するモニタ
リング
関連する全国的な調査活動の調整と実施
一部の政府系病院・クリニックにおける VCT 活動の実施
AIC サイトにおける VCT 実施
保健省による政策・ガイドライン作成、及び VCT プロジェ
4-23
・
・
クト実施に関する実質的な技術的支援
AIC サイトにおけるデータ収集、及び保健省による調査へ
の協力
該当地域における保健医療活動の調整
HIV 検査キットの品質検査
・
・
VCT サービス実施機関への資金・機材・技術協力
ベスト・プラクティスの文書化支援
・
District (Local Government)
Uganda
Virus
Research
Institute
主なドナー(Dfid, CDC, NORAD,
UNICEF, World Bank, UNFPA,
Elizabeth Gretzen Fund)
HIV 検査キット及び関連する薬品・コンドームなどの消耗品については、保健省・AIC
から直接、自らの担当するサイトに別々に供給している。但し、AIC が保健省管轄下の
病院・クリニック内にサイトを開設している際には、この限りではない。
Box 8 : カウンセラーという仕事
ジュリエット(仮名)は AIDS Information Centre (AIC) のカンパラ事務所で VCT カウ
ンセラーを始めて数年になる。以前は保健省のクリニックで働いていた。朝 8 時 30 分か
ら 5 時まで、センターを訪れる様々な人たちと向かい合う。一人一人のカウンセリングに
十分な時間を取るためには日に 9 人程度の利用者と会うのが理想的だが、毎日だいたい
15 人くらいの人たちを見なくてはならない。もっとカウンセラーがいればいいのだけれ
ど、とジュリエットは小声でつぶやく。
AIC では検査前カウンセリングは、夫婦の場合は 2 人で、それ以外の場合には 4-5 人のグ
ループで実施することが多い。カウンセラー不足を補い、利用者の待ち時間を短縮するた
めのアイデアである。どうしてこの仕事を選んだのですか?という問いに、急に真剣な顔
になってジュリエットは言った。「HIV/AIDS はウガンダにとって深刻な問題だから。利
用者達が自分で HIV の感染状況を知ることについて決めたり、HIV に罹った人たちがポジ
ティブな生活を送れるように支援できるこの仕事にとてもやりがいを感じるから。気難し
い人や急いでいる利用者がやってくると少し疲れることもあるけど、利用者を前向きな気
持ちで送り出すことができた時は、ほんとうに良い気分になるわ。」仕事の後は、インタ
ーネットをするのが楽しみ。燃え尽き症候群対策にも友人とのメールは欠かせないらし
い。
【4】
VCT 検査体制
HIV 検査に関しては、AIC は全ネガティブ・サンプルの 5%と全ポジティブ・サンプルの
10%を四半期ごとに国の指定照会ラボラトリーである Blood Bank Uganda と Virus
Research Institute にて再鑑定し、検査の質を確認している。
現在 HIV 検査キットについてはスタンダード・プロトコールが定められていないため、各
機関及び団体がそれぞれ違った検査キットを使用しているのが現状である。AIC は現在指
先から血液を採取する手法とキットについて研究中であり、これらのキットは冷蔵が不要
であることから、冷蔵器具が不足している農村地域での実用化を検討している。
4-24
4.2.2.5
ウガンダにおける VCT サービス強化にかかわる課題
HIV/AIDS 対策における模範国と目されるウガンダは、サハラ以南のアフリカにおける他
国と比較しても HIV/AIDS 対策を主体的に実行できる人的・組織的体制が比較的整ってい
るため、支援が効果的に実施されやすい5。しかしながら、現在行われている活動を強化
し、より多くの国民が利益を享受できるように広げてゆくために、各関連分野においてま
だまだ多くの支援が必要とされている。ウガンダにおける VCT 活動の今後の課題としては、
以下のような事柄が挙げられる。
【1】
VCTサイトにおける活動にかかわる課題
人々が VCT サービスを利用する際の問題として、VCT サイト不足が挙げられる。既述のと
おり、ウガンダにおいては AIC が中心となって、VCT サイトの拡充に努力しているが、ま
だその数において、十分な人口をカバーしているとはいえない。また、主要な町から離れ
た農村部住民がサービスを利用するには、VCT アウトリーチ・サービス用車両が不可欠で
あるが、これも大きく不足していることが明らかになっている。
VCT サイトの設備の問題としては、利用者の守秘を確保するためのカウンセリングスペー
スの不足、検査室スペースの不足、及び HIV 検査キット保存のための医療資機材の不足な
どが挙げられた。また、HIV 検査キットの質を検査するための検査施設が Uganda Virus
Research Institute に限られるため、11 ある地方政府病院の品質検査ユニットの強化が
なされれば、HIV 検査キットに対する検査がもっと簡略化できる。
また HIV 検査キットや抗エイズ薬、日和見感染症対策及び性感染症対策、家族計画などの
関連サービス実施のための薬剤及び使い捨て物資といった消耗品も不足している。
【2】
VCTプログラム運営能力強化にかかわる課題
VCT プログラム運営能力関連の課題としては、各 VCT サイトで提供される各サービスを数
値化し、プログラムの計画・実施向上に役立てるためのデータ・マネジメント・システム
及び VCT サービスのモニタリング・評価の強化などが挙げられる。
さらに、マルチメディアを使った VCT サービスの成功例を情報として蓄積する活動(文書
化など)、VCT を含めた HIV/AIDS 対策活動の適度な IT 化、及び VCT サービス提供に必要
な関連機材のメンテナンスを行える現地の人材の養成なども、主要な課題として挙がって
いる。
5
このためウガンダは過去 20 年ほどにおいて、他国に比べてもより多くの支援を受け取ることに成功しており、
こうした支援国による十分な資金の供給も当国家の HIV/AIDS 対策成功の要因と考えられている。一方で、
HIV/AIDS 対策を立案・実施する運営能力に極めて乏しい国々は、実質的にはこうした成功を収めている国々よ
りももっと重点的な支援を必要としている反面、予算の期限内未消化やアカウンタビリティーの不足から支援
国側に敬遠される傾向にあり、こうした課題を乗り越える必要性は今後の支援国選定の場面における認識を要
する。
4-25
抗エイズ薬については、現在 10,000 名ほどの HIV 感染者が投与を受けているが、GFATM
によるグラントでさらに 100-200,000 人の HIV 感染者が新たに抗エイズ薬の服用が可能に
なると期待されている。しかし、100 万人を超える感染者が存在する中、唯一の存命策で
ある抗エイズ薬の供給は慢性的に不足しており、新たに得られる抗エイズ薬をどのような
基準で誰に配布するのか、現在議論されている。
【3】
セクター横断的な課題
① 継続性と相手国の主体性の尊重
ウガンダのように 1980 年代からの HIV/AIDS 対策における経験と蓄積を持ち、かつ各方面
における優れた人材を有する国にあっては、国際 NGO を含む外国援助組織の役割は極めて
限られている。現在外国援助組織に活動が認められる分野においても、短・中期的に地元
NGO 及び政府関係機関に主体的役割を委譲することを、計画段階から想定することが必要
である。また、自らの役割が完結したと認められた場合には、勇気を持って時間を待たず
に撤退することが求められる。
例えば、GOAL においては、直接に HIV/AIDS 対策活動の実施を行うことはせず、一定の基
準を満たした有望かつ支援を必要とする地元 NGO に対し、キャパシティー・ビルディング
とネットワーキング分野での支援を行っている。地域的には HIV/AIDS 対策が比較的遅れ
ているブジリ県に焦点をしぼり、現地で活動する NGO と地方政府を対象に活動を行ってい
る。支援分野の継続性と現地の人たちの主体性を重視するアプローチの一貫として、また
現時点で優れた人材が国内に存在する状況を踏まえて、組織内の主だったポストは徐々に
現地ポストに移行しつつある。開発支援が支援受入国による自立した国家改善努力を原則
におくことを考えると、こうしたアプローチは一考の価値があるといえる。
② ほかのステークホルダーとの情報交換と調整活動
ウガンダを始めとする HIV/AIDS 対策の盛んな開発途上国にあっては、国内外の様々な機
関・団体が多様な分野において支援を行っている。それ故、このような状況の中に入って
新たな支援活動を行おうとする外国の NGO や公的援助組織は、まず誰がどのような分野で
誰とどのような支援活動を行っているのか、そして現在支援が比較的手薄で、かつ自分達
の組織に最も適した支援分野は何かを、現実的に判断・決定することが重要な第一歩であ
ると考えられる。具体的には、パートナーシップ・フォーラムなどの調整会議に積極的に
参加し、主なステークホルダーへの状況調査を実施することが勧められる。
4.2.2.6
ウガンダ VCT サービス活動関係者による我が国に対する要望
我が国によるウガンダにおける VCT 活動支援状況については本報告書第5章で詳しく述
べるが、ここでは今回インタビュー調査に協力していただいた、ウガンダ側関係者(カウ
ンター・パート及びドナー)による我が国による HIV/AIDS 対策及び VCT 活動支援につい
4-26
ての意見をまとめる。
ウガンダにおける、我が国による HIV/AIDS 対策関連分野への支援は、数としてはまだ多
くはないものの、カウンター・パートからは次の貢献に対して評価する意見が聞かれた。
・AIC におけるポスト・テスト・クラブ活動場所の建設
・UAC への視聴覚機材及び車両などの供与
・UAC への視聴覚機材担当 JOCV の派遣
今後の我が国に対する期待としては、VCT サービス強化のためのより強い支援、日本側に
提出するプロポーザル処理にかかる時間の短縮、日本の援助スキームに関する更なる情報
公開が挙げられた。さらに、エイズ対策について多くの経験を持つアフリカ諸国による、
我が国の HIV/AIDS 対策強化のための協力(人材育成など)の可能性についても幾つかの
打診があった。
4-27
4.2.3
ガーナ
4.2.3.1
国の概要
ガーナの人口は、2002 年の推計では 2,020 万人1、国土面積は 23.9 万平方キロメートル
で、日本と比較すると人口は約 6 分の 1、面積は 3 分の 2 となる。公用語は英語である
が、トゥイ語やファンティ語などその他多くの民族語が混在している(表 4-15 参照)。
ガーナには 10 州(Regions)110 県(Districts)の行政区分が存在する。政府中央レベ
ルでは国家政策や戦略づくりが行われ、州レベルではそれら政策や戦略を州レベル以下
に落として県の活動を監督調整し、県レベルでは政策や戦略などを実践に移す作業が行
われる。県には、県議会(District Assemblies)があり、政治行政上の決定権を持っ
ており、地方レベルの各省庁の活動を調整している。例えば、保健省の活動であるポリ
オ根絶のための全国予防接種デーにおいては、それぞれの県議会が実施計画を予算化し
ている。
ガーナには、90 以上の民族グループが存在し、多様な文化的価値観を包含している。例
えば、南部地方を中心とした母系文化圏と北部及びボルタ州の一部(Volta Region)を
中心とした父系文化圏とが存在する。行政とは別に伝統的チーフ制度が存在し、それぞ
れのチーフダム(チーフの管轄地域)においては今も民衆に対して強い影響力を保持し
ており、開発事業を展開する場合も彼らの理解を得ることは重要な戦略の一部となる。
国連人口基金の 2002 年人口白書によると、ガーナの 2002 年推定人口は 2,020 万人で、
2000 年∼2005 年の平均人口増加率推定値は 2.2%、2050 年には人口が倍増し、4,010 万
人になるとされ、社会経済開発への大きな課題となっている(表 4-15 参照)。
また合計特殊出生率2は、1988 年の 6.4 から 1993 年の 5.5、1998 年の 4.6、そして 2002
年の推計が 4.22 へと減少傾向にあるものの、近代的避妊実行率は 13%と依然低い(表
4-16 参照)
。1998 年に、12 歳から 24 歳の 5,640 人の若者を対象に行われたある調査3に
よると、男が 17.3 歳、女が 16.8 歳となっており、男の 8.2%と女 11.0%は 10∼14 歳
でセックスを経験している。
乳児死亡率は出生 1,000 に対して 62.5 歳未満児死亡率は男児 106 女児 93、妊産婦死亡
率は出生 10 万に対して 590 となっており、どのリプロダクティブヘルス指標もサハラ
以南アフリカ諸国の中では比較的良い数値となっているものの、世界の中ではまだまだ
高い数値となっている。
1
国連人口基金. 世界人口白書 2002, 2002: 巻末指標.
15∼49 歳の女性人口が、ある年次の年齢別出生率を一定と仮定した場合、生涯に一人当たり平均何人の子ど
もを生むかを示した数。
3
Ghana Social Marketing Foundation. Ghana Youth Reproductive Health Survey Report, December 2000: p25.
2
4-28
保健医療施設へのアクセスは依然として悪く、医療従事者介助による出産は 44%と低い。
女性の非識字率の高さも問題である。また、近年、紛争の多い近隣諸国からの難民も多
く保健衛生上の問題も抱え込んでいる。
表4-15: ガーナに関する一般情報
名称
首都
国土面積 *1
人口(2002 年推計)*2
言語
ガーナ共和国(Republic of Ghana)
アクラ(Accra)
238,537km2(日本の約 3 分の 2)*1
2,020 万人
英語(公用語)、トゥイ語やファンティ語などの民族
語
国民の約半数がキリスト教徒、イスラム教約
15%、その他伝統的宗教
John Agyekum Kufuor 大統領(2001 年 1 月 7 日就
任、任期 4 年)
1,910
56.0/58.5
18/34
64
宗教
大統領
国民一人当たりの GNI(米ドル)*2
出生時平均余命(歳)(男/女)*2
15 歳以上非識字率(%)(男/女)*2
安全な水へのアクセス率(%)*2
出展:
*1 外務省ホームページ
*2 国連人口基金、
「世界人口白書 2002」(日本語版)
表4-16: ガーナのリプロダクティブヘルス指標
乳児死亡率(出生 1,000 対)
妊産婦死亡率(出生 10 万対)
5 歳未満児死亡率(出生 1,000 対)(男児/女児)
近代的避妊実行率(%)
合計特殊出生率推計値(2000 年∼2005 年)
専門技能者の立会いのもとでの出産(%)
62
590
106/93
13
4.22
44
出展:国連人口基金、「世界人口白書 2002」(日本語版)
4.2.3.2
ガーナにおける HIV/AIDS の概況
ガーナにおいて最初のエイズ患者が報告されたのは 1986 年で、その年 42 人であったエ
イズ患者数は増え続け、2002 年の国連エイズ合同計画の発表4によると、2001 年 5 月末
までのエイズ患者報告件数累計は 47,444 件となっている。このうち女性は 29,249 人で
61.6%を占めている(表 4-17 参照)
。年齢層を見てみると、女性では 25∼29 歳、男性
では 30∼34 歳にピークがある。5∼14 歳の年齢層のエイズ患者累計報告件数が極めて少
ないことから、エイズ禍から免れている唯一の年齢層で「Window of Hope」と呼ばれ、
この年齢層をいかに HIV 感染から守っていけるかがこの国の HIV/AIDS 危機の行末を決
めていく。
感染経路に着目すると、75∼80%が異性間性交渉による感染で、母子感染が 15%、血液
による感染が 5%となっている。ただし、これは報告件数であり、同報告書によると HIV
4
Joint United Nations Programme on HIV/AIDS and World Health Organization. Epidemiological Fact Sheets
on HIV/AIDS and STIs - Ghana, 2002 Update, 2002: p6.
4-29
感染者数は AIDS 発症者も含め推定で 36 万人、15-49 歳人口の 3.0%が HIV に感染して
いるとされている。このうち、女性は 17 万人とされ、約半数は女性感染者である。2001
年 1 年間にエイズを発症して死亡した人は 2.8 万人で、エイズによって片親または両親
を亡くした 15 歳未満の子供たちは、現在 20 万人いるとされている。
1998 年の定点観測(Sentinel Surveillance)によると、性感染症治療に訪れた患者の
うち 17%が、輸血血液提供者の 4%が HIV に感染していた。また、アクラ及びクマシ
(Kumasi)の性産業従事者の HIV 感染率は、それぞれ 75.8%と 82.0%で極めて高率と
なっている5。性感染症の罹患率も高いという報告6も出ており、また、コンドームの使
用率も低い7ことから、今後さらに感染が拡大する可能性をはらんでいる。国家エイズ対
策プログラム(National AIDS Control Programme: NACP)の試算では、2004 年には大
人(15∼49 歳)の HIV 感染率は 6.4%に、2009 年には 8.2%になるとされる8。また、ガ
ーナエイズコミッション(Ghana AIDS Commission: GAC)の 2001 年年次報告書9による
と、最も成人感染率の高い州は、Eastern 州で 5.3%、
次が Volta 州 4.6%、そして Greater
Accra と Western の 3.1%と続く。
ガーナにおける HIV の特色として、HIV タイプ 1(HIV-1)とタイプ 2(HIV-2)の両方の
存在があげられる。その割合は、HIV-1 が 91.5%、HIV-2 が 1.3%、HIV-1 と 2 の重感染
が 7.2%となっている10。HIV-1 のサブタイプについては A と D が感染の中心となってい
る11。
表4-17: ガーナにおけるHIV/AIDS概況
HIV 感染者数推計
成人(15‐49 歳)
330,000(内女性 170,000)人
子ども(15 歳以下)
34,000 人
HIV 感染率推計
成人(15‐49 歳)
3.0%
エイズ患者報告件数累計
47,444(内女性 29,249)件
エイズによる死亡者数推計(2001 年 10 月)
28,000 人
エイズによって片親または両親を亡くした遺児(15
歳以下)数推計
200,000 人
出 展 : Joint United Nations Programme on HIV/AIDS and World Health Organization,
Epidemiological Fact Sheets on HIV/AIDS and STIs - Ghana, 2002 Update
5
Ghana AIDS Commission, Ghana HIV/AIDS Strategic Framework 2001-2005: p6.
National AIDS Control Programme. National HIV/AIDS and STI Policy, 2000: p2.
7
Joint United Nations Programme on HIV/AIDS (UNAIDS). The Report on the Global HIV/AIDS Epidemic 2002,
2002: p193
8
Ghana AIDS Commission, Ghana HIV/AIDS Strategic Framework 2001-2005: p6.
9
Ghana AIDS Commission, Annual Report 2001, 2002: pp1-2.
10
National AIDS Control Programme. HIV Sentinel Surveillance 2001, 2002: p10.
11
Ghana AIDS Commission. Ghana HIV/AIDS Strategic Framework 2001-2005: p6
6
4-30
4.2.3.3
ガーナにおける HIV/AIDS 対策
【1】
HIV/AIDS 対策の変遷
ガーナ国の HIV/AIDS に対する取り組みは、1985 年にエイズに関する国家技術委員会
(National Technical Committee on AIDS)が設置されたことに端を発する。1987 年に
は保健省が国家エイズ対策プログラム(NACP)を立ち上げた。その後、1987 年から 1988
年にかけての短期計画(Short Term Plan)が、1989 年から 1993 年にかけての第 1 次中
期計画(Medium Term Plan 1)が、続いて 1996 年には第 2 次中期計画(Medium Term Plan
2)が立てられた。第1次中期計画までは、エイズ問題はあくまで医療問題として捉え
られ、開発全般にかかわる問題としての捉えられ方はされていなかった。したがって、
保健省(MoH)管轄の医療中心の対策であった12。第 2 次中期計画策定においては、エイ
ズ問題は国家の開発にとっての
チャレンジであるという認識が
ガーナエイズ対策の概要
1985
現れ、
複数の省庁や民間からの協
力も始まった13。
1986
1987
マルチセクターでしかも総合的
なエイズ対策の必要性が高まる
中、1998 年に政府、UNDP、USAID
1989-1993
1996-2000
1999
その他の開発パートナーが合同
で国家エイズ対策についての話
2000
し合いが行われ、国家レベルのエ
イズに関する諮問調整機関の設
置が奨励された。それに続き、
2001
2002
エイズに関する国家技術委員会
(National Technical Committee on
AIDS)設置
最初のエイズ患者報告
国家エイズ対策プログラム(NACP)立
ち上げ
短期計画 1987∼1988 年発足
第 1 次中期計画
第 2 次中期計画
IPAA 派遣団とガーナ政府との共同声
明。エイズ諮問調整機関設置が唱えら
れる。
国家 HIV/AIDS 性感染症対策ポリシー
ドラフト(MoH)
ガーナエイズ委員会(GAC)発足
ガ ー ナ HIV/AIDS 戦 略 的 枠 組
2001-2005
グローバルファンド申請書承認
1999 年にアフリカにおけるエイ
ズ対策のための国際パートナーシップ(International Partnership Against AIDS in
Africa: IPAA)がガーナにチームを派遣し、大統領及び閣僚その他関係諸機関との話し
合いを行い、政府との合同声明を発表した。省庁を超えたセクター横断的な諮問調整機
関の設置はその中で唱えられた。これを受け、2000 年にガーナエイズ委員会(Ghana AIDS
Commission: GAC)を大統領直轄機関として設置することが閣議決定され、同年 9 月に
GAC 発足、2001 年に法的にもその存在が正式に位置付けられた14。
2001 年 に は ガ ー ナ HIV/AIDS 戦 略 的 枠 組 ( Ghana HIV/AIDS Strategic Framework
2001-2005)が策定され、鍵となる活動及び 2005 年に向けての目標が設定された。鍵と
なる活動は、①新規 HIV 感染の予防、②PLWHA のケアとサポート、③国家エイズ対策の
12
13
14
Ghana AIDS Commission, Ghana HIV/AIDS Strategic Framework 2001-2005: p9.
National AIDS Control Programme. Draft National HIV/AIDS and STI Policy, August 2000: p5
Ghana AIDS Commission, Annual Report 2001, 2002: pp3-4.
4-31
ための法的・倫理的・政治的環境改善、④地方自治体によるエイズ対策実施とその組織
体制強化、⑤調査研究・モニタリング・評価の 5 つである。主たる目標として、成人(15
∼49 歳)の新規 HIV 感染を 30%減少させること、サービスが利用され易いように改善
し HIV/AIDS の影響を緩和すること、個人的にまたは社会的に HIV に感染しやすいよう
な状況を改善することなどを掲げている。
地方におけるエイズ対策強化においては、1997 年より 10 県で実験的に行われてきた県
HIV 対策イニシアチブ(District Response Initiative: DRI)を拡大していこうとして
い る 。 こ れ は 、 地 方 政 府 地 方 開 発 省 ( Ministry of Local Government and Rural
Development)が世話役を務め、県においてマルチセクターから成るエイズ委員会を組
織し、県政府、NGO、コミュニティが対話できる場を提供し、それぞれの県に合った戦
略作りを進め、活動を展開していくとともに、資料センターを設置し情報を一箇所に集
約するというものである15。2001 年末までには全国 110 県のうち 45 県が DRI の体制を整
えている16。
GAC 設 立 に 当 っ て 、 ガ ー ナ 政 府 は 国 際 開 発 協 会 ( International Development
Association)から 2500 万米ドルの支援を受け、ガーナエイズ対策基金(Ghana AIDS
Response Fund: GARFUND)を設置し、市民団体や NGO、民間企業や専門機関、PLWHA の
グループや MoH を除く省庁の各種活動の資金、及び事務局経費にあてている。
また、MoH は、2002 年にグローバルファンドに対して 2 年間 400 万米ドルのエイズ対策
支援申請を行って承認され、2002 年 12 月には第 1 回の送金がされており、VCT サービ
ス拡大、母子感染予防対策拡大、PLWHA に対する治療ケア、在宅ケアサービスなどの拡
大など、治療ケアサポートを中心とした活動が盛り込まれている。
【2】
HIV/AIDS 対策調整メカニズム
ガーナエイズ委員会(Ghana AIDS Commission: GAC)は、大統領直轄のエイズ問題にか
かわるセクター横断的な諮問調整機関として設置された。GAC は大統領を委員長として
ほか 46 名の委員からなるセクター横断的組織である。15 名が各省の大臣または副大臣
で、ほかは、市民団体、宗教組織、民間機関、PLWHA の代表からなる。GAC の下には、
運営委員会、プロジェクト評価委員会、法律と倫理委員会、予防と政策提言委員会、ケ
ア・サポート委員会、資金調達委員会、資源調達委員会、調査研究・モニタリング・評
価委員会の 7 つの委員会と事務局が存在している。
15
Ministry of Manpower Development and Employment. The Ghana HIV/AIDS District Response Initiative
(DRI), Brochure.
4-32
表4-18: ガーナのHIV/AIDS対策における主要関連機関の役割
主要関連機関
Ghana AIDS Commission(GAC)
National
AIDS
Programme (NACP),
Ministry of Health
その他省庁
Control
県(District)
野口記念医学研究所
NGOs, CBOs, and Private Sector
PLWHA
宗教団体
UNAIDS
UNICEF
UNFPA
ドナー
4.2.3.4
ガーナにおける VCT サービス
【1】
HIV 検査体制
役割
国の HIV/AIDS 対策にかかわる最高機関で、国家政策や指針
作り、セクター横断的対策の調整などを行う。
国の HIV/AIDS 対策の中の医療ケア・サポート、母子感染予
防など医療分野における対策を実施する。
GAC のメンバーとして国家政策や指針作りに参加するととも
に、各省庁においては HIV 感染予防対策をメインストリーム
化する。
HIV/AIDS に対する District Response Initiative(DRI)を
実践している。
NACP と協力しつつ、HIV の分子生物学的研究を行ったり、母
子感染予防プログラムをサポートしたり、薬剤耐性を調査し
たりしている。
GAC のメンバーとして国家政策や指針作りに参加するととも
に、HIV/AIDS にかかわる様々な実践やネットワーク作りを行
っている。
GAC のメンバーとして国家政策や指針作りに参加しつつ、
PLWHA のネットワーク作りと自助グループの組織化を行って
いる。
GAC のメンバーとして国家政策や指針作りに参加している。
国のエイズ対策におけるアドバイザーであり、国連機関やド
ナーに対しても情報提供を行っている。
HIV/AIDS を母子保健の観点でとらえ、様々なプログラムのサ
ポートを行っている。
HIV/AIDS を思春期保健としてとらえ、様々なプログラムのサ
ポートを行っている。
GAC、NACP、野口研、NGO などの活動を直接サポートしたり、
保健セクターのコモンバスケットに投資している。
検査施設は全国の州レベル、県レベルの病院ですでに整っている。10 箇所の州病院と 3
箇所の公衆衛生ラボでは ELISA17検査が可能となっている。各県における群レベルの病院
では HIV 簡易迅速検査が可能となっている。国立公衆衛生リファレンスラボ(National
Public Health Reference Laboratory: NPHRL)では Line Immuno Assay(gold standard)
を使っての検査が可能である。
検査については NPHRL が検査キットの評価と選定、調達及び配給、確認検査実施、定点
観測における HIV 陽性確認検査と検査結果管理及び分析、母子感染予防プログラムにお
けるスクリーニング検査(野口研が母親のウィルス負荷や CD4 カウント、こどもに対す
る PCR 検査を担当)など中心的な役割を担っている。検査キットは NPHRL より四半期に
16
17
Ghana AIDS Commission, Annual Report 2001, 2002: p22.
Enzyme-linked immunosorbent assays の略。世界で最も広く使われている HIV 抗体検査法。
4-33
1 度各検査施設に配給される仕組みとなっている18。
HIV 定点観測システムが保健省疾病対策局国家エイズ性感染症プログラムのもとで始動
したのは 1990 年のことであった。それまでは、エイズ発症ケース報告によるエイズ疫
学統計であったが、報告数が限られており、現実を反映していないことから、このシス
テムが導入された。ただし、最初は、観測定点はアクラの 2∼3 箇所にすぎなかった。
1994 年に 10 州全てをカバーすべく 20 箇所の観測定点が設置された。1999 年にはアク
ラ・テマの人口をカバーするために 2 箇所追加され、2001 年にはナブロンゴ(Navrongo)
にも 1 箇所追加され、23 箇所の観測定点(マタニティクリニック)となっている。一定
の調査期間内に初めて訪れた妊婦を対象者に無記名での HIV 抗体検査が行われている19。
輸血用血液検査、定点観測用検査、個人の HIV 感染診断用検査、それぞれの検査キット
の種類とアルゴリズムは以下の通りである20。
図4-2: ガーナHIV検査キットの種類とアルゴリズム
① 輸血用血液検査
県病院は簡易迅速検査(Determine HIV-1/2)を、州病院は ELISA(Innotest HIV-1/2)を使用。陽性
の場合は新鮮な検体で再検査。陰性の場合のみ輸血用として使用。
② 定点観測用検査
県病院は簡易迅速検査(Determine HIV-1/2)を、州病院は ELISA(Innotest)を使用。陽性の場合は
全て国立公衆衛生リファレンスラボへ検体移送し、確認検査(Inolia)を実施。
③ 個人の HIV 感染診断用検査
県病院では、イニシャルテストとして簡易迅速検査(Determine HIV-1/2)を、州病院では ELISA
(Innotest)を使用。陽性の場合は確認テストとして簡易迅速検査(RapiTest)を使用。結果が一致
しない場合はリファレンスラボへ検体移送し、確認検査(Inolia)を実施。
−
イニシャルテスト
+
【2】
リファレンスラボ
本人通知
−
判定不能
+
本人告知
セカンドテスト
VCT サービスの現状
VCT サービスは、HIV/AIDS 対策の重要な戦略とされながらも、現在、そのサービスは非
常に限られている。現在存在する VCT サービスは、検査前後のカウンセリングを行う施
設と検査を行う施設が離れている場合が多い。そのため、政府や民間のクリニックが、
検査前のカウンセリングを行い、採血した検体を検査室に送り、数日後に戻ってきた検
査結果を見ながら検査後カウンセリングを行うことになり、利用者は後日検査結果を聞
きに来なければならない。ガーナにおいては、簡易迅速検査法を使っての即日 VCT サー
ビスは 2000 年までは存在しなかった。現在即日 VCT サービスを提供している保健医療
18
19
Mrs. Veronica Bekoe, Director, National Public Health Reference Laboratory とのインタヴューより。
National AIDS Control Programme. HIV Sentinel Surveillance 2001, 2002: p4.
4-34
機関は、全国で 4 箇所ぐらいであろうといわれている。
NACP では 1991 年より UNDP の協力で保健医療従事者に対するエイズカウンセリングの技
術研修を実施しており、米国系 NGO である Family Health International(FHI)は民間
の専門機関として HIV/AIDS カウンセラーの養成に深くかかわってきている。これまで
に訓練を受けた保健医療従事者数は把握できていないが、相当数に上るはずである。し
かし残念ながら、訓練されたカウンセラーがカウンセリングに打ち込めるような体制に
はなっていない。
FHI は、NACP、野口記念医学研究所(Noguchi Memorial Institute for Medical Research、
以下野口研と略)、NPHRL や Christian Health Association of Ghana (CHAG)と協力し
ながら、2002 年からイースターン州(Eastern Region)マニアクロボ県(Manya Krobo
District)の 2 つの病院において START プロジェクトを開始し、VCT サービスと HIV 母
子感染予防とをつなげている。また、今後は PLWHA の総合的なケア・サポートを行うと
ともに、抗エイズ薬による治療も導入しようとしている。保健省は VCT サービスを単独
で捉えずに、あくまで他の対策(母子感染予防や抗エイズ薬による治療)との抱き合わ
せで拡大しようとしている。
野口研は、また、現地 NGO である Planned Parenthood Association of Ghana(PPAG)
と協力して、Health Awareness Project というパイロットプロジェクトを 2001 年に実
施した。これは、PPAG が JICA 開発福祉支援事業で行っていたビリムノース県(Birim
North District)におけるインテグレーションプロジェクト(家族計画、栄養改善、寄
生虫予防の包括的プロジェクト)のプロジェクト地区において、PPAG が HIV 抗体検査の
有用性を含めた HIV/AIDS 教育を行った後で、
野口研が特別に整備した車両を乗り付け、
HIV/AIDS・性感染症についてのカウンセリング及び検査、その他一般臨床検査などを出
張サービスで行うものであった。このサービスにより HIV 検査を受けた人の数は 825 人
に上った21。
【3】
VCT サービスにかかわるポリシー/ガイドライン
国家 HIV/AIDS・性感染症対策ポリシードラフト22をみると、HIV 検査は輸血用血液の検
査またはエイズ発症が疑われる患者に対して以外は検査項目としてはならないとして
おり、任意検査が基本となっている。また、任意検査においても偏見差別の無い環境で
実施されるべきとしている。また、HIV に感染しやすい状況にいる人々に対してはカウ
ンセリングを通じて定期的検査を受けるよう促すべきとしている。VCT サービスに関し
ては、適正なサービスが全国いたるところで提供されるべきとしている。
20
Mrs. Veronica Bekoe, Director, National Public Health Reference Laboratory とのインタヴューより。
International Planned Parenthood Federation. Annual Programme Review 2001-2002, 2002: p119.
22
National AIDS/STIs Control Programme, Ministry of Health. Draft National HIV/AIDS and STI Policy
Document, 2000: pp19-20.
21
4-35
VCT サービスはガーナ HIV/AIDS 戦略的枠組の中でも、新規感染予防のための重要な活動
の一つとして位置付けられており、2005 年までには全国展開され、国民に広く利用され
るようになることが目標となっている23。また、保健セクター5 カ年計画(2002∼2006
年)においても、HIV/AIDS 対策の 7 つの戦略のうちの一つとして VCT サービス拡大が掲
げられている24。同様に保健省が行うグローバルファンド支援の活動においても主なる 5
つの目標のうちの一つになっており、2004 年までに VCT サイトを 16 州に 1 箇所ずつ設
置し、若者や妊婦の少なくとも 20%に利用されるようになることを目標としている25。
VCT サービスに関する国家ガイドラインはまだ存在していない。FHI が現在ガイドライ
ンのドラフトを作成しており、4 月までには関係者回覧を終え、訂正後にガーナの国家
ガイドラインとして発行したいという話であった。
ガーナの VCT にかかわる戦略またはポリシーペーパー
•
Ghana AIDS Commission. Ghana HIV/AIDS Strategic Framework 2001-2005, 2001.
•
Ministry of Health. 5-Year Programme of Work 2002-2006, 2002.
•
National AIDS/STIs Control Programme, Ministry of Health. Draft National HIV/AIDS and
STI Policy Document, 2000.
【4】
VCT サービスにかかわる主要機関とその役割
VCT サービスにかかわる主要機関とその役割をまとめると以下のようになる。
表4-19: ガーナのVCTサービスにかかわる主要機関とその役割
主要関連機関
Ghana AIDS Commission(GAC)
National
AIDS
Control
Programme(NACP), Ministry of
Health
Public
Health
Reference
Laboratory(PHRL)
野口記念医学研究所
Family
(FHI)
Health
International
Christian Health Association
of Ghana (CHAG)
役割
VCT サービス拡大のための指針作りや調整、資金調達を行う。
VCT サービスと母子感染予防プログラムや抗エイズ薬治療と
を結びつけた対策を実践、そのための資金調達も行ってい
る。GAC に対して技術的なサポートを行う。
国家リファレンスラボとして、VCT の検査サービスの質を管
理している。
NACP や PHRL、FHI と協力しつつ、VCT サービスと母子感染予
防プログラムや抗エイズ薬治療とを結びつけた対策に対し
て技術的にサポートしている。
HIV/AIDS カウンセラー養成に貢献してきた。NACP、PHRL、野
口研などと協力しながら、VCT サービスと母子感染予防プロ
グラムや抗エイズ薬治療とを結びつけた対策に対して技術
的にサポートしている。
ミッション病院において、NACP、PHRL、野口研、FHI などと
協力しながら、VCT サービスと母子感染予防プログラムや抗
エイズ薬治療とを結びつけた対策を実践してきている。
23
Ghana AIDS Commission. Ghana HIV/AIDS Strategic Framework 2001-2005, 2001: pp19-28.
Ministry of Health. 5-Year Programme of Work 2002-2006, 2002: p16.
25
The Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria and the Ministry of Health of the Republic
of Ghana. Program Implementation Abstract, Program Grant Agreement between The Global Fund to Fight
AIDS, Tuberculosis and Malaria and the Ministry of Health of the Republic of Ghana, Annex A, 2002.
24
4-36
その他 NGO や民間組織(病院やク
リニックも含む)
UNAIDS
ドナー
VCT サービスの実践機関である。
アドバイザーとしての役割を果たしている。
GAC、NACP、野口研、NGO などの活動を直接サポートしたり、
保健セクターのコモンバスケットに投資している。
4.2.3.5
ガーナにおける VCT サービスの課題
【1】
VCT サービスのためのコミュニティにおける広報教育活動とアドボカシー、そして検査後の
ケアとサポートにかかわる課題
まずは、VCT サービスをプロモーションする活動が欠けている点が挙げられる。自己の
HIV 感染の有無を確認することのメリットを理解してもらったり、PLWHA に対する偏見
差別を無くしていくための広報教育活動に加え、VCT 後のケア・サポート活動も脆弱で
ある。VCT サービスは単独では成り立たない。広報教育活動によるプロモーションと VCT
後のケア・サポート活動とがセットになって初めて本来の効果を発揮できる。それには、
現在ばらばらに行われている活動を調整し、組み合わせていくことが必要である。
そのためには、NGO や民間機関との連携も含めて中央、州、県各レベルにおける調整と
リーダーシップが欠かせない。ケア・サポート活動では PLWHA のニーズにあった活動を
彼らの参加を得ながら実施していくことが大切である。医療ケアにおいては、日和見感
染症の治療のための人材養成及び薬品と消耗品の補給とそのためのシステム強化、結核
予防策強化、母子感染予防にかかわる専門的カウンセリングやコミュニティの啓発活動、
PLWHA の組織化支援、PLWHA の人権にかかわる法律相談システム整備、収入創出活動支
援を含めた PLWHA のポジティブリビング支援など総合的な取り組みが必要である。
【2】
VCT サイトにおける活動にかかわる課題
① VCT サイトの現状把握
プライバシーを確保できるカウンセリング室、検査室及び冷蔵庫などの施設設備、電気
供給状況など現場の状況が把握できてない。また、カウンセリングサービスの質、カウ
ンセラーの勤務状況や報酬についても把握できていない。GAC によると、各 VCT サイト
におけるカウンセラーの数、検査実績などの基礎情報の把握もしっかり出来てないので、
現在、その情報については収拾中とのことであった。
② VCT サイトの不足
母子感染予防のための VCT サービスだけでなく、一般の医療サービスに統合された形で
の VCT サービスの提供や VCT 専門サービスがあってもよい。また若者を対象にしたサー
ビスの提供も必要である。サービス形態を多様化して利用し易くすることが重要である。
ただし、この場合もケア・サポート体制を整えていくことは必須である。
4-37
【3】
VCT プログラム運営能力強化にかかわる課題
① VCT サービスガイドライン
国家としてのガイドラインが存在していない。VCT サイトとして最低限の必要条件は何
か、認定制度などカウンセリングや検査の質を確保するためのシステムをどうするか、
検査の QA26をどうするかなど、VCT サービス全般にわたるガイドラインが必要である。
現在、FHI がエチオピアとケニアでの経験をもとにガイドラインのドラフトを作成し、
関係者に回覧中。4 月末を目標にガーナの VCT サービスガイドラインとなるように運ぶ
予定である。
②
カウンセラー
カウンセラーとしてトレーニングを受けた人は、公的医療機関に勤務する医療系の人た
ちがほとんどであるが、現在のシステムの中では、カウンセラーがカウンセリングのみ
に専従できるような体制にはなっていない。HIV/AIDS カウンセリングは時間とエネルギ
ーのいる仕事であり、ほかの多くの医療業務を抱えながらのカウンセリングには限界が
ある。かといってスタッフを増やすだけの財政的余裕はないので、仕事の整理をするか、
時間外労働をしてもらうか、さもなければ医療関係者以外の例えば教員やソーシャルワ
ーカーなどをカウンセラーとして養成するしか方法はない。時間外労働をした場合はそ
の手当てをどうするか、シフト体制をどう組めばサービスの継続性と質を保てるかなど
の問題も出てくる。退職看護師や教員などの人材をトレーニングしてボランティアとし
てカウンセリングを行ってもらうという案もあるが、ここでもやはりカウンセリングの
質や利用者から得た情報の機密保持をどこまで確保できるか、責任体制はどうなるのか
などクリアしなければならない課題が多く存在する。
③ HIV 検査キットの選定
どの検査キットがガーナに適しているか、検査キットの選定過程が不透明である。国立
公衆衛生リファレンスラボは、検査キットの評価を行っているという見解を示している
が、VCT サービスを民間専門機関として推進してきている FHI やほかの HIV/AIDS 対策プ
ログラム関係者と情報の共有が出来ていないことになる。
検査キット選定に当っては、各国のリファレンスラボが検査キットの評価を行っている
かどうかを確認する必要がある。その国に感染が拡大している HIV タイプ/サブタイプ
や環境に適した検査キットを調達することが検査の質を保つためにも重要である。評価
が行われていない場合、WHO の行った評価結果27を参考にすることが勧められる。また、
評価を自国で実施するための技術的財政的支援も必要となる。その場合、WHO と UNAIDS
26
Quality Assurance (QA): ある検査室で行われる HIV 検査の最終結果ができるかぎり真の結果になるための
プロセス管理。
27
UNAIDS と WHO が”Operational Characteristics of Commercially Available Assays to Determine
Antibodies HIV-1 and/or HIV-2 in Human Sera”という題のレポートをシリーズで出しており、そのいくつ
かは WHO の Web よりダウンロードできる。
4-38
が発行している検査キット評価のガイドライン28は参考になる。検査キット調達に当っ
てドナー側の国益に関する主張が通ってはならない。
④
検査試薬や検査キットの安定した供給確保
検査試薬や検査キットの持続的な供給が確保できていないことも問題である。今回
NPHRL を訪問した時も、簡易迅速検査キット(Determine)の在庫が極めて少ない状況で
あった。財政的な問題か、在庫管理の問題であるとおもわれるが、一方で GAC が DANIDA
から 15 万検査キットを 2002 年に受け取っているという状況を NPHRL 側は把握しておら
ず、ここでも情報の共有が出来てないことが露呈している。それだけでなく、NPHRL に
相談のないまま検査キットが調達され提供されたということも問題である。
⑤
モニタリング・評価システム
カウンセリングや検査の質をチェックしたり、さらなるニーズを把握しサービスを向上
させていくためのモニタリング・評価システムが整っていない。
【4】
機関横断的な課題
VCT サービス拡大に向けての各関連機関の役割と責任が明確になっていない。このこと
が機関間での緊張を高めている。GAC によると、VCT サービス拡大は GAC の管轄で、治
療ケア関連や定点監視調査などが保健省の管轄であるとのことであった。ただし、VCT
サービスの技術的な事柄は保健省 NACP のアドバイスが必要であるという。
VCT サービス拡大計画において、GAC は 1 県に 1 箇所の VCT サイトを設置する、つまり
110 箇所の VCT サイト設置を 2005 年までの目標としている。そのための費用をグローバ
ルファンドで賄うとしている29。この点 NACP 側の見解と相違している。グローバルファ
ンド支援の活動の中には、VCT サービスの拡大が活動の一つの柱となっているが、VCT
をほかのサービスと切り離した形での拡大を NACP は考えていないようだ。母子感染予
防や抗エイズ薬治療をセットにして VCT サービスの拡大を図ろうとしており、2 年間で
20 箇所の追加計画となっている。保健省側は、この計画は、2002 年∼2006 年の保健省
保健プログラム 5 カ年計画の一部として捉えられている。
4.2.3.6
ガーナ VCT サービス関係者による日本への要望
現地調査の際、日本に対する期待を尋ねたところ、以下のような事柄が要望として挙げ
られた。
・ VCT サービスに関する総合的状況調査(Situation Analysis)の実施支援(技術的、
28
UNAIDS and WHO. Guidelines for Organizing National External Quality Assessment Schemes for HIV
Serological Testing, January 1996.
4-39
財政的)
・ カウンセラーの養成支援(技術的、財政的)
・ 検査試薬、検査キット、その他消耗品の供給支援
・ VCT サイトの機材施設整備支援
・ VCT サービスのマッピング、サービス向上のための活動計画策定、モニタリング、
評価、政策提言ができるような専門家派遣(GAC に対して)
・ エイズ電話相談の設立支援(技術的、財政的)
・ 他ドナーとの連携
29
Professor S.A. Amoa, Director-General, Ghana AIDS Commission とのインタビューより。
4-40
4.2.4
南アフリカ
4.2.4.1.
国の概要
1994 年のアパルトヘイト政権崩壊と民主的国家体制への移行に伴い、近年南アフリカ
(以下、南ア)は様々な社会変革への挑戦を行ってきた。サハラ以南のアフリカにおい
て、南アの経済力と整備された社会基盤は他国の追随を見ない。しかし他の南部アフリ
カ諸国同様、社会内部における富の分配の不平等は現在でも世界最悪と言われるグルー
プに属し、貧困層における HIV/AIDS 感染は他の層に比べ深刻である1。南アはサハラ以
南のアフリカにおいて最大数の HIV 感染者を抱えており、HIV 感染率は妊産婦のほぼ4
人に1人と、他のサハラ以南のアフリカ諸国と比較しても、国全体の恵まれた社会・医
療環境からは想像できない高さにある上、人口全体の感染率は年々上昇を続けている2。
その一方で、青少年に焦点を絞った HIV/AIDS・BCC 啓発活動が実りを見せ始め、この年
齢層における HIV 感染率は下がりつつあると言われている。
HIV/AIDS はしばしば政治的な議論の対象とされる傾向にもあり、近年の抗エイズ薬導
入が辿った道筋も平坦ではなかった。しかし南アは政府機関とともに、実行力・マネジ
メント能力共に優秀な現地 NGO・CBO の宝庫であり、
権利意識の高い国民と共に HIV/AIDS
対策が成功する下地を形成している。
表4-20: 南アフリカに関する一般情報
名称
南アフリカ共和国 (The Republic of South Africa)
首都
プレトリア
国土面積
1,219,912km2
人口*2
44,200,000
人種構成
黒人 75%、白人 13%、混血 8%、その他 3%
言語
11 の公用語;英語、アフリカーンス語、バンツー諸語他
宗教
キリスト教(80%)、ヒンドゥー教、イスラム教
大統領
ターボ・ムベキ
国民一人当たりの GNI (米ドル) *2 9,160
出生時平均寿命 (歳) (男/女)*2
46.5/48.3
15 歳以上の非識字率(%)(男/女) *2
13/15
安全な水へのアクセス率(%)*2
86
出展:
*1 外務省ホームページ
*2 国連人口基金、「世界人口白書 2002」
1
しかし、非白人・白人間における富の分配に関する課題は複雑であり、慎重な分析を要する。各企業におけ
る一定割合の非白人の雇用を義務付けた法律の施行後、高資格を持つにもかかわらず失業する白人が続出し、
そうした失業白人層への対策が十分になされない中、「プア・ホワイト」と呼ばれる白人貧困層の存在が社会
問題化している。
2
2000 年 10 月現在、国全体における妊婦 HIV 感染率は 24.5%と推定され、1999 年の 22.4%を更に上回った
(National HIV and Syphilis Sero-Prevalence Survey of Women Attending Public Antenatal Clinics in South
Africa 2000, Ministry of Health, RSA)。
4-41
表4-21: 南アフリカのリプロダクティブヘルス指標
乳児死亡率(出産 1,000 件対)
妊婦死亡率(出生 10 万件対)
5 歳未満時死亡率(出生 1,000 対)
(男児/女児)
近代的避妊実行率(%)
59
340
107/95
55
合計特殊出生率推計値(2000 年∼2005 年)
専門技能者の立会いのもとでの出産(%)
2.85
84
出典:国連人口基金「世界人口基金 2002」
4.2.4.2
南アフリカにおけるHIV/AIDSの概況
HIV 高感染率国が集中する南部アフリカにあって、南アフリカは全人口における成人
HIV 感染率は 2000 年には 11%と推定され、その推定の基となる妊産婦 HIV 感染率は近
年増加傾向にある(2000 年は 24.5%。以下図 4-3 を参照)
。地方行政区域によって妊産
婦 HIV 感染率には大きなばらつきがみられ、KwaZulu-Natal 州の 36.2%(2000)を筆頭
に, Mpumalanga が 29.7%, Gauteng 29.4%と高感染率を記録する一方、Western Cape で
は 8.7%にとどまっている。
図4-3: 南アフリカにおける妊産婦HIV感染率3
24.5
24
23.5
HIV Prevalence
Rates among
Pregnant Women
Presented at Public
Health Facilities (%)
23
22.5
22
21.5
21
1998
1999
2000
年齢別ではこの過去数年にわたり 20 代女性が、常に最高の HIV 感染率を記録しており、
成人 HIV 感染者のほぼ半数以上を占め続けている(図 4-4 参照)
。感染時と感染発見時
期が必ずしも一致しないため、これらの女性達が 20 代以前に HIV に感染していた可能
性も高い。
3
“National HIV and Syphilis Sero-Prevalence Survey of Women Attending Public Antenatal Clinics in
South Africa, 2000” (Ministry of Health, RSA)
4-42
図4-4: 妊産婦における年齢別HIV感染率(%)
35
30
25
20
HIV Prevalence
Rates among ANC
Attendees in South
Africa in 2000
15
10
5
0
<20
20-24
25-29
30-34
35-39
40-44
45-49
唯一の福音といえるのは、過去3年間において 10 代の女性における HIV 感染率の低下
が複数の研究・調査により確認されている点である。保健省は、これを 10 代の若者に
フォーカスを当てた BCC 活動、及び HIV 感染防止への意識向上活動が功を奏した結果、
同年齢層が安全かつ責任ある性行動を取るようになったためと分析している4。1998 年
の South Africa Demographic and Health Survey においても、この年齢層の女性にお
けるコンドームの使用率が他のグループより高いことがわかっており、今後これらの若
い非感染者達が、その非感染の状態をいかに維持できるかに、国全体の HIV 感染率を下
げることができるかどうかがかかっているといえる。
表4-22: 南アフリカにおけるHIV/AIDS概況
HIV 感染者数推計
成人(15-49 歳)
子ども(15 歳以下)
HIV 感染率推計
成人(15-49 歳)
エイズ患者報告件数累計(1996 年 10 月)
エイズによる死亡者数推計(2001 年)
エイズによって片親または両親を亡くし
た遺児(15 歳以下)推計
4,700,000(内女性 2,700,000)人
250,000 人
20.1%
12,825 件
360,000 人
660,000 人
出展:Joint Unitited Nations Programme on HIV/AIDS and World Health Organization, Epidemiological
Fact Sheets on HIV/AIDS and STIs ‐ South Africa, 2002 Update
4
例えば、後に紹介する NGO、Township AIDS Project(TAP)は、ジョハネスバーグ最大の旧黒人居住区ソゥエト
を中心とした若い男女への HIV 感染予防のためのピア・エデュケーション等を精力的に推進している。また全
国的なメディア・キャンペーン「Love Life」を成功させた Planned Parenthood Association South Africa
は、若者をターゲットにした若者によるポップな性教育プログラムと若者に優しいリプロダクティブ・ヘルス
及び VCT サービスの普及につとめ、大きな効果を上げている。
4-43
4.2.4.3
南アにおけるHIV/AIDS対策:成果と課題
【1】
HIV/AIDS対策の変遷
南アフリカにおける国家としてのエイズ対策は、アパルトヘイト撤廃以前の 1992 年に
おける National AIDS Co-ordinating Committee of South Africa(NACOSA)の設立に
はじまる。NACOSA が中心となり HIV/AIDS に関する国家戦略が作成され、1994 年の閣議
で承認された。1997 年にはこの戦略のレビューが行われ、その中で明らかとなった課
題を克服するべく、HIV/AIDS and STD Strategic Plan for South Africa 2000-2005
作成への道筋が作られた。
1999 年にはムベキ大統領が全セクターを横断する HIV/AIDS 対策(マルチ・セクトラル・
アプローチ)実施の必要性を強くアピールし、保健省を中心に、全省庁、NGO・CBO、宗
教関係機関、企業関係者、労働団体、青少年や女性団体の代表などすべてのセクターを
巻き込む形で HIV/AIDS and STD Strategic Plan for South Africa 2000-2005 の作成
が始められた。このプロセスの中で、HIV/AIDS 対策における国内の意思決定及び対策
活動実施のための各組織の役割と責任も明確化された。これに続き、近年においては国
家・地方政府の両レベルで実用的かつ質の高い政策とガイドラインが設定・出版され、
官民の枠を越えて質の高い HIV/AIDS 対策実施に貢献している(以下、表 4-23「南アに
おける HIV/AIDS 及び VCT に関する主要政策・戦略・ガイドライン」を参照)。
表 4-23: 南アフリカにおける HIV/AIDS 対策及び VCT に関連する政策・戦略・ガイドライン
主要な政策・戦略等
・ HIV/AIDS and STD Strategic Plan for South Africa 2000-2005 (2000)
・ National Health Policy
・ VCT Strategy (draft)
主要なガイドライン
・ Guidelines for Pre-test, Post-test and Ongoing Counselling and Group Information
Session (National Health Department)
・ Rapid HIV Testing (2000)
・ Minimum Standards for Counselling and Training
・ How to Establish VCT Services(National Health Department)
・ HIV/AIDS Counselling Service Directory 2001/2002 (2002)
地方政府から発行されている関連ガイドラインの例(Gauteng Health Department)
・ Clinical Guidelines for Managing HIV/AIDS in Primary Care (2001)
・ Clinical Guidelines for Managing HIV/AIDS Infection in Adults at Hospitals (2001)
【2】
HIV/AIDS対策調整メカニズム
現在南アの HIV/AIDS 対策政策決定における最高意思決定機関は内閣であるが、
HIV/AIDS 対策は恒常的な議題ではないため、副大統領が議長をつとめる National AIDS
Council (SANAC)が実質的な最高意思決定機関としての役割を負っている(以下、表 4-23
4-44
「国内における主要ステークホルダーの役割」を参照)。テクニカル・レベルでの政策
運営に関しては、保健省管轄の The National Department of Health
HIV/AIDS/STDs
Directorate が国家レベルでの責任を持ち、実質的には地方政府下における Provincial
Directorates of HIV/STDs が実際に管轄地域で施行されるガイドラインの作成、及び
HIV/AIDS 対策プログラムの実施とモニタリング・評価を実施している。
VCT 分野では、National Department of Health HIV/AIDS/STDs Directorate 内に置か
れている VCT ユニットを中心に VCT 戦略実施に必要なガイドライン及びトレーニング・
スタンダードが既に発行・配布されており、これらの文書の質は非常に高い。地方分権
化にある中、地方政府がこれら国のガイドラインを目安に該当地域内の特色課題を念頭
に置き地方政府独自のガイドラインを制定・実施することになっている。地方政府レベ
ルでのガイドライン作りの動きもすでに始まっている。
表4-24: 南アフリカ国内における主要ステークホルダーの役割
ステークホルダー
役割
National AIDS Council (SANAC)
The National Department
Health
HIV/AIDS/STDs Directorate
of
その他の省庁
Provincial Directorates of
HIV/STDs
NGOs・CBOs、PLWHA、企業、宗
教団体、労働組合などの市民団体
The National Institute of
Virology
ドナー
HIV/AIDS 政策における国の最高機関。副大統領が議長をつ
とめ、各大臣、PLWHA、企業、NGO、宗教団体、労働組合な
ど全セクターにわたる代表者がメンバーを構成する。
マルチ・セクトラル・アプローチに基づいた HIV/AIDS 対策
に関する政策について政府に提言する。
SANAC を始めとする上位政府機関が HIV/AIDS に関する政策
決定を行うためのブリーフィング・ドキュメントの作成
保健医療分野における HIV/AIDS 対策に関する政策・指針作
りと、その執行に関する地方政府への指導
該当分野における HIV/AIDS 対策に関する政策・指針作りと
その執行
該当地域での HIV/AIDS 対策ガイドラインの策定及び実施
該当地域での HIV/AIDS 対策プログラムの実施
該当分野における HIV/AIDS 対策活動の執行、政策・指針づ
くりへの貢献
VCT の品質管理を担当
国内カウンター・パートへの資金・技術援助、政策・指針
作りへの貢献
ドナー間の調整活動は他国に比べるとさほど活発ではない。その一因には、他のサハラ
以南のアフリカと違い、ある程度の規模の政府予算を持つ南アフリカは、他国ほどドナ
ーに国家予算を依存していないことが挙げられる。しかしそうした予算の恩恵を直接受
けない NGO・CBOs が多数存在するほか、国内の極端な貧富の差により、国際的な支援が
必要とされている状況と分野が、現実に存在する。結果として多数のドナーが様々な分
野で多様な機関・団体に対して支援を行っており、調整活動の重要性は増している。政
府による調整活動に加え、今後 UNAIDS がこうした活動を活発化させたい意向を示して
いる。
4-45
【3】
南アフリカにおけるこれまでのHIV/AIDS対策全般の成果と今後の課題
先にも挙げられた VCT を含む HIV/AIDS 対策各分野における質の高いガイドライン及び
トレーニングマニュアルが、国家及び地方政府レベルの両方で作成・実用化されている
ことは、大きな成果であり、他のアフリカ諸国が HIV/AIDS 対策を進める上での手本と
もなるものである。又、10 代の若者における HIV 感染率の低下につながった BCC 活動
も、近年の大きな成果の一つといえる。
しかし、官民問わず様々な機関・団体が、各レベルでの HIV/AIDS 対策活動で成果をあ
げている一方で、その成果が必ずしも記録されておらず、またモニタリング・評価を実
施するためのシステムが確立していない。従って、国家としての HIV/AIDS 対策の成果
を明確にすることは今の時点では難しい。モニタリング・評価を実施するためのシステ
ム作りとその運営、および成功事例を効率的に記録することが今後の課題の一つとなっ
ている。HIV/AIDS and STD Strategic Plan for South Africa 2000-2005 の一貫とし
て、2000 年から 2005 年にかけては、次の重点分野が定められている。
表4-25: 南アフリカにおけるHIV/AIDS対策の課題と重点分野
優先エリア1.HIV 感染予防
安全かつ健康的な性行動の推進
輸血及び HIV に関する課題を取り上げる
尖ったものによる外傷や性暴力による HIV へのイクスポージャー後に適切なサービス
を提供する
VCT へのアクセスを向上させる
優先エリア2.トリートメント、ケアとサポート
保健医療施設においてトリートメント、ケア及びサポートサービスを提供する
コミュニティーにおいて適切なトリートメント、ケア及びサポートサービスを提供する
子供及び孤児へのケア提供を始動・拡大する
優先エリア3.調査研究、モニタリング及びサーベイランス
エイズ・ワクチンの開発を確立する
トリートメント及びケアに関する選択肢(抗エイズ薬、伝統的医学等を含む)を検討す
る
HIV/AIDS 政策に関する調査研究を行う
定期的な HIV/AIDS 及び性感染症に関するサーベイランスを行う
優先エリア4.ヒューマン・ライツ
PLWHA への適切な社会環境をつくる
HIV/AIDS、就職、性産業従事者、性暴力に関する適切な法的・政策的環境を整備する
戦略計画の特色として、PLWHA の全政策過程への参加促進、PLWHA への偏見と差別を軽
減する努力を強く打ち出していることが挙げられる。女性への差別的取り扱いが存在す
る現状を認識し、その克服および性暴力への対策もまた中心課題の一つとして取り上げ
られている。加えて、若者は優先ターゲット・グループとして認識されている。NGO と
の連携、性感染症を HIV/AIDS 対策の中心に据えることも明言されている。
VCT サービスに関しては、HIV/AIDS and STD Strategic Plan 2000-2005 における重点
4-46
課題の一つとしての HIV 感染予防における優先項目の 1 つとしてとらえられている。
戦略の具体的な実施においては、次の分野がセクター共通の課題分野としてとらえられ
ている。
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
⑫
⑬
⑭
HIV/AIDS 対策のための行動変容及び政策提言を促すためのコミュニケーション活
動(Information, Education and Communication, コミュニティ参加型、メディア
など幅広いアプローチを含む)
青少年、特に 10 代から 20 代の若者を対象とした、娯楽的要素を含んだ教育活動
(Edutainment)を通じた行動変容の促進と HIV 感染予防
HIV 感染者への在宅ケア及びコミュニティをベースにしたケア
HIV/AIDS 及び性感染症に関する医学的・行動学的調査
結核対策
HIV/AIDS 対策プログラムに関するモニタリングと評価
HIV 感染者への偏見と差別削減活動
職場における勤労者を対象とする HIV/AIDS 教育
VCT サービスの拡大のためのキャパシティー・ビルディングと研修
HIV/AIDS に関する罹病・死亡を取り込んだ人口動態モデルの確立
セクターごとの HIV/AIDS 影響調査
HIV 母子感染予防
感染症対策のためのキャパシティー・ビルディングと研修
南部アフリカ開発コミュニティ(SADC)内での HIV/AIDS 及び性感染症の監視
4.2.4.4
南アフリカにおけるVCTサービス
【1】
VCTサービスの現状
現在すべての州において、なんらかの形の VCT サービスが提供されているといわれるが、
一般企業を含めた様々な形態の VCT サイトの実数や、実際のサービス提供状況などにつ
いては、正確に把握されていない。将来の VCT サービス提供拡大に関する目標を定めた
VCT 戦略が現在準備されつつあるものの、こうした基礎データの不足のために具体的な
意思決定に支障が出ているのが現状である。南ア各州における VCT サービスには、州ご
とでその内容に差があるといわれる。これは様々な州の状況を鑑み、国による VCT 実施
要綱の州レベルでの適応に、ある程度の柔軟性を認めている結果である。現在保健省と
地方政府を中心に、質、内容ともに実施要領に沿った形での VCT 普及が推進されている。
【2】
VCTにかかわるポリシー/ガイドライン
VCT ガイドラインとしては、保健省と CDC により作成された「How to establish VCT
SERVICES」という VCT サイト設立・運営にかかわる基本的事項を網羅したものが存在し、
使用されている。
【3】
VCTに関るステークホルダーとその役割
保健省 VCT ユニットを中心に、4 半期ごとに VCT 運営委員会が開かれている。この委員
4-47
会では全国の州における VCT コーディネーターが一同に集まり、該当する期間における
各州の VCT プログラムのパフォーマンス及び課題の報告を行う。地方分権化により保健
省 VCT ユニットの役割はガイドラインの発行およびプログラム実行の方向性を指導す
るに留まっており、地方政府は国のガイドラインを該当地域の状況に当てはまる形に改
訂して使用している。
【4】
VCT検査体制
HIV 検査キットとその質管理に関しては、全国的に HIV 簡易迅速検査が奨励・使用され
ており、それに応じた検査キットが汎用されている。VCT、PMTCT 及び結核プログラム
を通して使用されている HIV 検査キットは、WHO の実施要領にのっとり、National
Institute of Communicable Diseases (NICD)での承認を受けたものに限り、National
State Tender Board を通じて一般病院・クリニックなどに供給されている。
現在保健省を通じて使用されている HIV 検査キットは以下の通りである。
・ Screening Test:
Determine (ABBOT LABORATORIES 社製)
・ Confirmatory Test:
Efoora (EDISON HEALTH 製)
・ 両検査結果が食い違う場合: ELISA Testing
しかし、保健省管轄以外の VCT サイトにおいては、別の種類のキットが使用されている
可能性もある。
【5】
VCTプロジェクトの事例
南アでは、様々な形態で VCT サービスが実施されている。政府系の病院・クリニックは
もちろん、NGO・CBO、教会、学校、企業や労働組合などにおいて、プログラムやあるい
はアウトレット・サービスとしても広く行われている。ただ、南アにおける VCT サービ
スの全体像の実態はまだ把握されていない。そこで、ここでは、個別の事例について紹
介する。一つは、タウンシップ・エイズ・プロジェクト(Township AIDS Project)で、
もう一つはオアシス・ローバー・クリュー・プロジェクト(Oasis Rover Crew Project)
である。双方とも、全く異なるケースであるが、共に南アにおける VCT サービスの現状
の一端を物語るものである。
Box 9 : タウンシップ・エイズ・プロジェクト (Township AIDS Project) ‐ VCT プログラムの成功例
①
活動と成果
ジョハネスバーグ市最大の旧黒人居住地域ソウェトに位置するタウンシップ・エイズ・
プロジェクト(Township AIDS Project、以下 TAP)は、1990 年以来その青少年向け HIV
感染予防のための思春期教育の成功でアフリカのエイズ・サークルにおいて広く知られ
ている。ソーシャル・フランチャイジング5というコンセプトを用い、ソウェト内で少年
サッカー・グループなどの既存の青少年グループに HIV/AIDS 啓発活動とピア・エデュケ
ーションを実施するための研修訓練と必要備品の提供を行ない、その活動を広げてきた。
5
ビジネスで使われるフランチャイズの手法を、社会的サービス提供に応用したもの
4-48
TAP がカウンセリングに力を入れ始めたのは 1997 年以降、本格的に VCT に取り組み始め
たのは 2000 年以降である。それは、TAP 事務局長のエネア・モタウングさんが 2000 年
にウガンダで行われた HIV/AIDS に関する研修に参加した際、偶然 AIC による VCT サイト
を見学し、そこからインスピレーションを得たためである。ウガンダの農村部に比べ、
南ア旧黒人居住区でのインフラストラクチャーはずっと整っている。それにも関わらず、
コミュニティによる HIV/AIDS 対策の核となる VCT はそれまでほとんど存在していなかっ
た。ウガンダの農村でできることがソウェトでできないはずはない、というモタウング
さんの主導の下、TAP での VCT サービス提供が始まった。
現在1つの VCT センターとモーバイル・ユニットと呼ばれる移動式 VCT サイトを通じて
VCT サービスの提供を行っている。月曜日から金曜日までの日中のサービス時間に VCT
センターを訪れる利用者は週に 50 人ほど。プロと準プロ合わせて 6 人のカウンセラーが
応対にあたる。日に 4 人から 12 人を 1 人のカウンセラーが見る計算である。ほとんどの
利用者が 20 から 28 歳までの若者である。若者が気軽に入れるよう、カウンセラーも若
者・ベテランの両方を揃え、美しく明るいピンク色に塗られたセンターで応対している。
内部には HIV/AIDS について自由に学べる図書コーナーもある。現在、仕事帰りの人々が
気軽に立ち寄れるよう、夕方や週末にも対応できる VCT サービス・サイトの設置を考慮
中である。今日 VCT サービスが行なわれているのは 37 の旧黒人居住区、13 の個人クリ
ニック、30 の地方政府管轄下にあるクリニックである。2001 年から地方政府と連携し、
保健医療従事者の出向を受けている。
VCT サービス導入にあたり、また HIV/AIDS 対策全体における要として、コミュニティの
啓発活動に大きな力を注いでいる。現在はコミュニティ構成員への HIV/AIDS 研修が中心
であるが、若者を対象としたリプロ・ヘルスに関するウェブ・サイトの作成プロジェク
トも始動しつつある。ケア・サポート・グループの育成も盛んで、コミュニティを対象
にソーシャル・フランチャイジング手法によるサポート・グループメンバー育成研修を
行っている。
主なドナーはドイツ、CDC、CEDPA などであるが、一見多数の機関から支援を受けている
ように見えても、各機関は比較的少額かつ限られた期間のみ特定活動への支援を行うに
留まっており、事務局長であるミセス・モンタウングは常に次の支援機関を探し続ける
必要に迫られる。TAP が網羅している地域・対象グループの大きさ・活動の幅広さ、そ
して何よりコミュニティの若者達が TAP から受けている貢献を考えると、より多くの安
定した支援が必要とされていることは明確である。TAP は日本大使館へも現在支援を申
請中である。
TAP での質の高いサービスを支えるのは、やる気と、良い意味でのプロ意識に満ちた若
者達である。「今年から、今までより責任のある仕事を任されることになったんだ。」自
信に満ちた表情で、スタッフが話しかけてくる。ミセス・モンタウングの手腕の証明で
もある。
②
TAP 成功の要因分析
TAP は現在その活動を成功事例として記録を作成しているが、以下の点がその成功にか
かわっていると考えられる。
‹
成功要因1 【全レベルの人材における質の高さ】
: 組織の方針として、マネジ
メント・スタッフからボランティアに至るまで、必要なレベルもしくはそれ以上
訓練と研修への機会を最大限与えている。カウンセリングの研修については、実
績のある南ア大学に委託している。事務局長自身、現在 MPH コースに在籍中であ
4-49
り、あと数人のコアスタッフにも仕事との両立を条件に同様の機会を与えること
を計画している。アフリカ地域内や欧米で行われる様々な研修活動・国際会議な
どに若いスタッフを送ることで、組織全体のレベルアップをはかっている。こう
した機会への参加は、当然必要資金の支援を受けることができるかどうかにかか
っている。退職した元看護婦を雇用したり、地方政府から保健医療従事者の出向
を受け入れたり、近隣の研究機関に定期的に HIV 検査キットの品質検査を委託す
るなど、専門性を持った人材の登用・連携を進めている。
‹
成功要因2 【ボランティア要因への密なフォローアップ】: 他の NGO・CBO 同
様、TAP の活動はその大部分がボランティアに支えられている(50 人のスタッフ
のうち、34 人が常駐のボランティアである)。こうしたボランティアへの謝金は
限られているものの、定期的な研修訓練、必要な機材の時期を得た配布、双方向
のコミュニケーションと定期的な支援を行うための密な連絡体制がシステムとし
て確立、実施されている。
‹
成功要因3 【実証済みセオリーに則った総合的プログラム運営】: ソーシャ
ル・フランチャイジングという概念や、AIC モデルなど、既に効果が実証されて
いるアプローチをうまく取り入れ、活動現場の状況にも柔軟に対応することを基
礎にプログラムの運営を行っている。コミュニティへの啓発に始まり、ピア・エ
デュケーションによる行動変容促進、それを VCT サービスへと繋げていく総合的
なアプローチが成功している。
‹
成功要因4 【コミュニティに根付いた活動】: 10 年以上同地域で活動を行っ
ているため、コミュニティからの信頼も厚く、活動効果があがりやすい。
‹
成功要因5 【快適で開放的、かつプライバシーを守る VCT センター】
: TAP の
VCT センターはカラフルな色に塗られた美しい建物で、訪れた人たちが快適に過
ごせるように、配慮がなされている。
‹
成功要因6 【資金援助】
: 欧米の援助機関から得られた資金により、現在の規
模でのプログラム運営をかろうじて続けることができている。申請書を書くこと
のできる能力をもつ人材が存在するおかげである。
‹
成功要因7 【成功事例の記録化と一般への公開】: 成功した事例については、
文書やビデオを用いた記録化を行っており、一般に広く公開する予定である。コ
ミュニティや政府・ドナーなど様々なステーク・ホルダーが TAP の活動を理解す
る機会を得るのと同時に、TAP のプログラム自体を概観することにもつながり、
記録の公開は必要資金確保の強力な機会となる。
‹
成功要因8 【ネットワーキング】
: 地方政府を始め国境を越え他の NGO や開発
パートナーと広くネットワーキングを行っている。ウェブ・サイトの存在も、そ
れを促進している。
③
•
•
•
•
•
•
•
課題
VCT 導入及び HIV/AIDS への偏見と差別を軽減するための更なるコミュニティへの
啓発活動の強化。特に、総合的な IEC パッケージの実施。
VCT 出張サービスを行うにあたっての車両など移動手段の不足
プログラムにおけるモニタリング・評価の強化
VCT 後に HIV 感染者に投与する抗エイズ薬の入手
無料で VCT を行っているため、プログラム全体を維持・充実させるためのまとま
った資金援助の必要性
スタッフへのプログラム・マネジメントに関する更なる訓練・研修
VCT 活動を行っている他の NGO との連携と、経験を分け合う形でのキャパシティ・
ビルディング(VCT プログラム・マネジメントに関する研修訓練)
4-50
Box 10 : オアシス・ローバー・クループロジェクト (Oasis Rover Crew Project) ‐草の根 NGO の試練
ジョハネスバーグ市の中心部から車で走ること 1 時間以上。ごく当たり前の旧黒人居住区の
一角に、小さな Oasis Rover Crew Project の事務所はあった。10 年以上地元で VCT 活動を
続ける老舗の CBO だが、
総勢 15 人ほどのスタッフの大多数が 10 代から 30 代前半までの若者
である。その笑顔と、好奇心に輝くたくさんの瞳に圧倒される。6つの小さな部屋からなる
事務所は、最近になってやっと地方政府から譲り受けたものだ。マネジメント・スタッフが
全ての事務をこなす小さな机1つと、訪れる利用者が待つための数個の椅子しかない待合室
を抜けると、HIV 感染者のための食事を作る簡単な台所、そしてカウンセリング・ルームが
ある。ここは椅子が2つあるのみだ。隣は簡単な HIV 検査室。ゴミ箱から拾い上げた使用済
み HIV 検査キットはどちらも陽性だ。そしてその隣は地域の人たちへの啓発活動を行う小さ
な研修スペース。大きな赤いリボンのマークと、エイズで亡くなった地元の人たちの写真が
無造作に掲げてある。
「ここのコミュニティでエイズで亡くなった人たちを忘れないための形見なんだ」、
と代表役のワンディルがつぶやく。
VCT サービスに訪れる人たちの数は日に 25 人ほど。2 人のカウンセラーたちが常駐する。コ
ンピューターも車も持たないこの団体が、Greater Springs と呼ばれる膨大な地域で、スラ
ムを中心とする在宅訪問、30 以上の教会と 42 以上の学校、そして警察署や大学における
HIV/AIDS 啓発活動とカウンセリング、VCT サービス、HIV 感染者及びエイズ遺児達へのケア
と支援を 10 年にわたって行ってきた事実を、
そしてこのように明らかな実績とコミュニティ
からの支援を築いてきた CBO が実質的に誰の支援も受けずにこのような難しい体制で活動を
行わなくてはならなかったこと、そして彼らがそれでも活動を続けていることを、私たちは
どのように理解すべきなのだろう。Oasis Rover Crew Project の財政状態が決して楽ではな
いことは明白である。
「でも、みんなが僕たちのことを必要としてくれているから。やめられないんだ。」
南アフリカでは、NGO 及び CBO は政府の資金援助を事実上受けていない。ごく少数の団体が
限られた支援を受けているのみである。その一方で、大多数のコミュニティ、特に人口の大
部分を占める貧困黒人層は、これらの NGO・CBO に、彼らが最も必要とするサービスを頼って
いる。黒人貧困層が HIV/AIDS により一番強い打撃を受けている一方で、彼らには基本的な公
共サービスが届いていないのである。
南アの NGO・CBO がそのスタッフを、主として若者に依存している理由は、若者層における高
い失業率と、ほとんど給料を払うことができない NGO・CBO 側の財政難にある。
「NGO は職業って言うにはほど遠いよ。」
隣にいる中央政府の担当官が私にそっと小さい声でつぶやく。NGO の給料では、とても普通
には生活できない。遠く離れた自宅から職場へ向かう乗り合いタクシーに毎日乗るにも足り
ない額である。
「今組織にとって一番必要だと思うことは何?」という問いに、
「もう少し資金があれば、スタッフの数を増やして今あるサービスを充実させることができ
る。一人一人のカウンセラーが少数の利用者と向き合うことができる。僕たちの活動を待っ
ているコミュニティに、ボランティア達が VCT サービスに関する情報を持って活動に行くこ
とができる。HIV 検査キットを含む保健医療関連備品が恒常的に不足している。それに車が
あれば、遠くに住む人たちにも出張サービスができるようになる。」
プログラム運営全体を実質的に強化・効率化するためのオフィス環境の整備も必要であろう。
質の高い活動を献身的に行おうとしている若者達と、彼らを待っているコミュニティがある。
若くて優秀なスタッフ達の気力が枯渇する前に、彼らの活動を支えるための根本的な施策が
必要とされている。
4-51
4.2.4.5
南アフリカにおけるVCT強化にかかわる課題
以上の課題に加えて、VCT にかかわる複数の現地・国際機関・団体より得た情報を総合
すると、以下の課題への対応が南アにおける VCT 強化の鍵であると考えられる。
【1】
VCTサイトにおける活動にかかわる課題
まず、カウンセラー・VCT プログラムのマネジャーを含む VCT プログラムの策定・実施
にかかわる人材の不足が課題として挙げられる。解決のためには、現地政府に対し、必
要な人材への人件費確保を優先課題とするよう働きかけ、それに必要な経費に見合う形
で、VCT プログラムにおける別の分野での援助を行うことを併せて提案すべきである。
NGO における人材不足については、成果を上げている NGO への全般的支援を強化し、収
入向上活動やコスト・シェアリングの可能性を探る。また政府に対しては保健省下の人
材を可能な限り出向させることを促す。NGO と関連研究機関の連携を高め、NGO への継
続的な資金・技術的支援の基盤づくりとキャパシティ・ビルディングを支援する。
2番目の課題としては、NGO/CBO のキャパシティ不足及び連携の不足が挙げられる。解
決のためには、現地に密着し、成果を上げている現地 NGO/CBO(保健省によるダイレク
トリーにはすべての団体がまとめられている)の連携を促す。NGO/CBO 内でのキャパシ
ティ・ビルディング(関連訓練・研修の実施)と実質的な物質的・財政的支援を長期的
視野に立って行う。団体によっては、基本的なスペースすら確保できていないため、簡
単なニーズに関する調査を行うことも有用であろう。他のドナーと連携し、安定した支
援体制確立を進める。また、守秘義務確保のためのカウンセリング・スペースの不足も
課題として挙げられる。
【2】
VCT検査後のケアとサポートにかかわる課題
VCT 関連プログラム(性感染症コントロール・プログラム、青少年リプロダクティブ・
ヘルス・プログラム、PMTCT など)の強化と拡大が挙げられる。そのために、VCT 関連
プログラムにおける支援を VCT サービス支援と連携する形で進める。
【3】
VCTプログラム運営能力強化にかかわる課題
まず、モニタリング・評価・システムが確立されていないことが挙げられる。解決のた
めには、モニタリング・評価の重要性を政府及び関連ステークホルダーと再確認し、官
民両セクターにおける VCT サイトを含むモニタリング・評価システムとそのツールの開
発、関連する研修の実施、監督・報告システムの確立を支援すべきである。そうしたシ
ステムの確立においては、既存のモニタリング評価システムなどへの VCT サービスの統
合を優先し、事務的負担を最小限にする努力を行う必要があろう。
次に必要となるのは、地方政府及び地方 NGO/CBO のキャパシティ強化である。保健省と
4-52
連携し、マネジメント全般における訓練・研修及び基盤強化、評価モニタリング及び消
耗品管理供給システムの強化において支援を行う必要がある。
最後に、HIV/AIDS 対策に関する調整活動の強化も課題の一つである。解決のためには
SANAC を中心とする国家及び地方レベルでの調整機関へのキャパシティ強化への支援や、
調整活動の定期的開催を支援し、ドナー間における連携を促進する必要があるだろう。
4.2.2.6
南アフリカによる他のアフリカ諸国への潜在的貢献分野
南アフリカは他国に比べ、VCT を含めた HIV/AIDS 対策分野全般における政策及びガイ
ドライン作りにおいて極めて進んでいる。これら政策・ガイドラインの地方政府レベル
での執行は始まったばかりではあるが、それぞれの HIV 感染拡大状況に合わせた地方政
府レベルにおけるガイドラインの作成・使用も進んでおり、地方分権が急速に進む他の
サハラ以南のアフリカ諸国が学ぶことのできる事項は多いと思われる。
南アフリカにおいては多数の NGO・CBO が精力的に VCT 及び他分野における HIV/AIDS 対
策にかかわっており、マネジメント能力においても卓越した団体が多い。本報告書で取
り上げた Township AIDS Project をはじめ、核となりうる NGO・CBO を中心に、いくつ
かの潜在的 NGO・CBO をまとめる形で、NGO 間の連携やキャパシティ・ビルディング支
援を行っていくことが有効であると考えられる。
成功している VCT および HIV/AIDS 対策に関するプロジェクトを記録に残し、近隣諸国
と共有することは、アフリカ全体の連携と HIV/AIDS 対策の質向上に貢献すると考えら
れる。インターネットの普及を念頭に、マルチメディアを活用した連携及び情報交換促
進も重要であろう。
4-53
4.2.5
タンザニア
本調査の時間的・予算的限界により、タンザニアにおいて現地調査は実施していな
い。したがって、ほかの現地調査実施国(ザンビア、ウガンダ、ガーナ、及び南ア)
に比較すると、収集できたデータの質・量とも差があり、VCT サービス最新状況の詳細
を掴みきれていないことを最初にお断りしておく。
4.2.5.1
国の概要
タンザニアは、本土タンザニアとザンジバルの連合国で、東はインド洋に面し、陸で
は 8 カ国と国境を接する東アフリカの国である。肥沃な海岸地帯から標高 5,895 メー
トルのキリマンジャロ山と、豊かな自然と多種類の動植物に恵まれた国である。
タンザニアの人口は、2002 年の推計では 3,680 万人、国土面積は 94.5 万平方キロメー
トルで、日本と比較すると人口は約 30%、面積は約 2.5 倍となる。公用語はスワヒリ
語で、各地の様々な言語とともに広く一般的に使われている。小学校における教育は
スワヒリ語で行われている。英語は第二公用語で、ビジネス用言語でもある。また、
ザンジバルを始め沿岸部ではアラビア語も話されている。人口の 95%がバンツー系が
占めている。そのほかは、アジア系、アラブ系、アフロ-アラブ系、ヨーロッパ系であ
る。最大のアフリカ系グループはスクマ、そのほかマサイ、ゴゴ、ニャムェジ、チャ
ッガなどがいる。
全体で 27 の行政区分があり、本土に 20 州(Region)、ザンジバルが 3 つ、ペンバ島が
2 つに分かれて存在している。州の下には県(District)が存在しており、その数は全
国で 121 となっている。ガーナやザンビアなどのような伝統的首長制度は一部の部族
を除いてほとんど残っていない。
国連人口基金の 2002 年人口白書1によると、タンザニアの 2002 年推計人口は 3,680 万
人で、2000 年∼2005 年の平均人口増加率推定値は 2.3%、2050 年には人口が倍増し、
8,270 万人になるとされ、社会経済開発の大きな課題となっている。合計特殊出生率は
5.03 と高く、近代的避妊実行率は 17%と依然低い。また、46%の女性が 18 歳までに
妊娠または出産を経験しており2、トレーニングを受けた医療従事者立会いによる出産
も 36%と低く、若年層の出産の多さ、出産間隔の短さ、出産数の多さと合わせて、妊
産婦死亡率の高さの要因となっている。妊産婦死亡率は、出生 10 万対 1,100、乳児死
亡率は出生 1,000 対 73、5 歳未満児死亡率は男児 122 女児 111 といずれも高い。貧困
問題が社会の根底にあるのはいうまでもなく、一人当たりの国民総所得(GNI)は、520
1
2
国連人口基金(UNFPA). 世界人口白書 2002, 2002: 巻末指標.
Tanzania National Bureau of Statistics. Tanzania Reproductive and Child Health Survey (TRCHS), 1999.
4-54
米ドルにすぎず、世界最貧国のうちの一つである。貧困からくる栄養不良、女性の非
識字率の高さは、上記リプロダクティブ・ヘルス指標の悪さに結びつき、それがまた
多産という結果を生んでいるという悪循環を構成している。
表4-26: タンザニアに関する一般情報
タンザニア連合共和国(United Republic of
Tanzania)
ダルエス・サラーム(Dar es Salaam)
94.5 万 km2(日本の約 2.5 倍)
3,680 万人
スワヒリ語(国語)、英語(公用語)
国民のイスラム教徒約 31%、キリスト教徒
25%、そのほか伝統的宗教 44%
Benjamin William Mkapa 大統領(2000 年 11 月
9 日就任、任期 5 年)
520
50.1/52.0
15/31
54
名称
首都
国土面積 *1
人口(2002 年推計)*2
言語
宗教 *1
大統領 *1
国民一人当たりの GNI(米ドル)*2
出生時平均余命(歳)(男/女)*2
15 歳以上非識字率(%)(男/女)*2
安全な水へのアクセス率(%)*2
出典:
*1 外務省ホームページ
*2 国連人口基金、
「世界人口白書 2002」(日本語版)
表4-27: タンザニアのリプロダクティブヘルス指標
乳児死亡率(出生 1,000 対)
妊産婦死亡率(出生 10 万対)
5 歳未満児死亡率(出生 1,000 対)(男児/女児)
近代的避妊実行率(%)
合計特殊出生率推計値(2000 年∼2005 年)
専門技能者の立会いのもとでの出産(%)
73
1,100
122/111
17
5.03
36
出典:国連人口基金、
「世界人口白書 2002」(日本語版)
4.2.5.2
タンザニアにおける HIV/AIDS の概況
1983 年にタンザニア国カゲラ州において最初のエイズ患者が報告され、1986 年には本
土タンザニア全州においてエイズ患者が報告された3。2000 年末までの累計ではエイズ
患者は 132,606 人となっている4。このうち男性は 51,595 人、女性は 51,892 人で、残
り 29,119 人は性別不明5である。性別不明を除けば、男女比はほぼ 1 対 1、年齢層別で
は、男性は 30∼34 歳がピークで、女性は 25∼29 歳がピークとなっている。ただし、
35,789 人のデータは年齢不明である。1998 年の定点観測報告書6によると、1998 年 1
3
Ministry of Health, Tanzania Mainland. National AIDS Control Programme HIV/AIDS/STD Surveillanve,
Report No. 13, 1998: p8.
4
Joint United Nations Programme on HIV/AIDS and World Health Organization. Epidemiological Fact Sheets
on HIV/AIDS and STIs - Tanzania, 2002 Update, 2002: p6.
5
「Epidemiological Fact Sheets on HIV/AIDS and STIs - Tanzania, 2002 Update」によると、1997 年以前
のデータに性別不明のデータが多く、27,141 件にのぼる。
6
Ministry of Health, Tanzania Mainland. National AIDS Control Programme HIV/AIDS/STD Surveillanve,
Report No. 13, December 1998: p8.
4-55
年間の若年層のエイズ患者報告件数は、女性のほうが圧倒的に多く、15 歳から 22 歳の
年齢層では女性は男性の 4 倍の件数となっている。
1992 年から 1998 年における地域別エイズ患者報告件数人口比をみると、最も高いのが
ムベヤ州(Mbeya Region)で人口 10 万に対し 989 件、次がダルエスサラーム市で 674
件、コースト州(Coast Region)の 543 件、キリマンジャロ州の 536 件と続いている。
ダルエスサラーム市では、大人(15∼59 歳)の死亡原因の第 1 位は男女とも群を抜い
てエイズとなっており 35%以上を占めている7。
2002 年の UNAIDS の発表8によると、タンザニアの HIV 感染者数は AIDS 発症者も含め推
定で 150 万人、このうち、大人(15-49 歳)の HIV 感染者・患者は 130 万人で、大人の
7.8%が HIV に感染しているとされている。このうち、女性は 75 万人とされ、約半数
は女性感染者である。2001 年の間にエイズを発症して死亡した人は 14 万人と推定され、
エイズによって片親または両親を亡くした 15 歳未満の子供たちは、現在 81 万人とさ
れている。このような状況下でも、HIV/AIDS 啓発教育はまだまだ立ち遅れており、
「健
常者と見えても HIV 感染者である可能性がある」ということを知らない若者(15∼24
歳)の割合が 33%を占めている9。
1999 年に実施された調査によると調査対象女性(15∼49 歳の 4,029 人)の 64%は HIV
検査を受けたいと思っており、HIV に感染しているか否か知りたいと思っている。しか
し、実際には 7%の人しか過去に検査を受けていない10。HIV に感染している人の 90%
は自分の感染を知らないといわれている。
表4-28: タンザニアにおけるHIV/AIDS概況
HIV 感染者数推計
大人(15‐49 歳)
子ども(15 歳以下)
HIV 感染率推計
大人(15‐49 歳)
エイズ患者報告件数累計
エイズによる死亡者数推計(2001 年)
エイズによって片親または両親を亡くした遺児
(15 歳以下)数推計
1,300,000(内女性 750,000)人
170,000 人
7.8%
132,606(内女性 51,89211)件
140,000 人
810,000 人
出典:Joint United Nations Programme on HIV/AIDS and World Health Organization,
Epidemiological Fact Sheets on HIV/AIDS and STIs - Tanzania, 2002 Update
7
Ministry of Health, Tanzania Mainland. National AIDS Control Programme HIV/AIDS/STD Surveillance,
Report No. 13, December 1998: p12.
8
Joint United Nations Programme on HIV/AIDS and World Health Organization. Epidemiological Fact Sheets
on HIV/AIDS and STIs - Tanzania, 2002 Update, 2002: p2.
9
Joint United Nations Programme on HIV/AIDS (UNAIDS). The Report on the Global HIV/AIDS Epidemic 2002,
2002: p193
10
National Bureau of Statistics. Tanzania Reproductive and Child Health Survey (TRCHS) Key Findings
Report, 1999: p11.
11
報告書では、男性 51,595 件、女性 51,892 件、不明 29,119 件となっている。
4-56
4.2.5.3
タンザニアにおける HIV/AIDS 対策
【1】
HIV/AIDS 対策の変遷
タンザニアの国家としてのエイズへの取り組みは、国家 HIV/AIDS 対策プログラム
(National HIV/AIDS Control Programme: NACP)の設立と NACP による短期計画策定
(Short Term Plan 1985 – 1986)に始まる。NACP は、WHO のエイズグローバルプログ
ラム(WHO Global Programme on AIDS)の指導のもと保健省に設立された。その後、
第 1 次中期計画(MTP-1、1987∼1991 年)、第 2 次中期計画(MTP-2、1992∼1996 年)、
第 3 次中期計画(MTP-3、1998∼2002 年)の 3 つの中期計画が策定され、保健省 NACP
が中心となり HIV/AIDS 対策を担ってきた。当初より、エイズ問題は保健問題としての
捉え方しかされず、キャンペーン活動も保健省中心の保健セクターに限られたもので
あった。第 3 次中期計画は、すべての公的機関、NGO や宗教団体、そして民間セクター
などが参加し策定された12。しかし、これら国家対策は、人員及び資金不足、そして調
整機能の欠落と政治的なリーダーシップ不足によりはかばかしい効果が上がらなかっ
た13。そして HIV 感染率は上昇し続けた14。
このような中、ムパカ大統領が 2000 年年頭メッセージとして、エイズ問題が国家的危
機(National Crisis)であ
ることを宣言し、開発の最優
先課題であることが確認さ
タンザニアエイズ対策の変遷
1983
1985
れた。そして、同年 12 月 1
日の世界エイズデーには、大
統領声明が出され、エイズに
対するセクター横断型の取
り組みを国家として強化す
1987-1991
1992-1996
1998-2002
2000
2001
ること、そのためのリーダー
シップと調整を図る機関と
してタンザニアエイズ委員
2002
会(Tanzania Commission for
最初のエイズ患者の報告
国家 HIV/AIDS 対策プログラム
(NACP)の設立と短期計画(1985
∼1986 年)策定
第 1 次中期計画
第 2 次中期計画
第 3 次中期計画
大統領年頭メッセージを発表、エイ
ズを国家的危機として認知。
タンザニアエイズ委員会
(TACAIDS)発足。
HIV/AIDS に関する国家政策指針承
認。
国家エイズマルチセクター戦略策定
作業中。
AIDS: TACAIDS)を新設する
ことが宣言された15。2001 年 11 月にはまた、HIV/AIDS に関する国家政策指針(National
Policy on HIV/AIDS)も承認された。この政策指針は、多セクターにまたがる総合的
な国家対策、政治的コミットメントとリーダーシップ、予防のための個人とコミュニ
12
National AIDS Control Programme. National AIDS Control Programme Strategy under MTP III 1998 ‐ 2002,
1998.
13
Prime Minister’s Office, The United Republic of Tanzania. National Policy on HIV/AIDS. September
2001: p3.
14
1998 年のサーベイランスレポート(National AIDS Control Programme HIV/AIDS/STD Surveillanve, Report
No. 13, December 1998)によると、輸血用血液提供者の HIV 感染率は 1991 年では男性 5.8%女性 7.2%であ
ったが、その後漸増し 1998 年には男性 8.3%女性 11.8%となっている。
15
国際協力事業団. タンザニア連合国日米合同プロジェクト形成調査報告書, 2001: p78
4-57
ティの責任、PLWHA の人権の保護、コミュニティにおける総合的なアプローチ、偏見差
別への対応、性感染症や日和見感染症の治療へのアクセス、HIV 検査におけるインフォ
ームドコンセントと個人情報の保護、抗 HIV 剤療法におけるユーザーによる費用一部
負担など 17 項目を基本原則としている16。
この政策指針に沿って、2002 年には国家エイズマルチセクター戦略(National
Multisectoral Strategic Framework)の策定作業が進んでいる(ドラフト完了段階)。
この戦略的枠組には、2003 年∼2007 年までの戦略、活動計画、目標などが記述されて
いる。
【2】
HIV/AIDS 対策調整メカニズム
タンザニアエイズ委員会(Tanzania Commission for AIDS: TACAIDS)が、HIV/AIDS 問
題における国の最高機関であり、セクター横断型の取り組みを国家として強化してい
くことを目的とし、そのためのリーダーシップをとっている。国家としての方針や戦
略形成、政策決定者に対するアドボカシー、省庁や市民団体、民間セクター間での活
動の調整及びモニタリングや評価、広報や出版、また国内外からの資金調達やドナー
との調整を行っている。これにより、保健省 NACP が策定した第 3 次中期計画(MTP-3)
が強化されることとなった。タンザニア国会議員で構成するエイズに対する連合組織
である Tanzania Parliamentarian’s AIDS Coalition (TAPAC)も形成されている。
表4-29: タンザニアのHIV/AIDS対策における主要関連機関の役割
主要関連機関
Tanzania Commission for AIDS
(TACAIDS)
Tanzania Parliamentarian’s
AIDS Coalition (TAPAC)
National AIDS Control
Programme, Ministry of Health
そのほか省庁
District
NGOs, CBOs, and Private Sector
PLWHA
UNAIDS
ドナー
役割
国の HIV/AIDS 対策にかかわる最高機関で、国家政策や指針
作り、セクター横断的対策の調整などを行う。
TACAIDS の活動を政策的に支援。
国の HIV/AIDS 対策をテクニカルにサポートまたは実践す
る。
国家政策や指針作りに参加するとともに、各省庁において
は HIV 感染予防対策をメインストリーム化する。
HIV/AIDS 対策を実践する。
国家政策や指針作りに貢献するとともに、HIV/AIDS にかか
わる様々な実践や人材養成、ネットワーク作りを行ってい
る。
PLWHA のネットワークを構築し、国家政策や指針作りに参加
しつつ、自助グループの組織化を行ったり、人材育成や資
金調達を行ったりしている。
国のエイズ対策におけるアドバイザーであり、国連機関や
ドナーに対しても情報提供を行っている。
TACAIDS、NACP、Muhimbili 大学、NGO などの活動を直接サ
ポートしたり、保健セクターのコモンバスケットに投資し
ている。
16
Prime Minister’s Office, The United Republic of Tanzania. National Policy on HIV/AIDS. November 2001:
pp3-6.
4-58
【3】
ムベヤ州の成功事例17
ムベヤ州においては、1988 年より 2002 年までドイツ技術協力公社(GTZ)がミュンヘ
ン大学の協力を得てエイズ対策プログラムへの支援が行われてきており、同州では総
合的なエイズ対策が施されてきた。第 1 フェーズである 1988 年∼1991 年には、ラボ機
能の信頼性を徹底的に高め、安全な輸血血液を供給、疫学的監視のための定点調査シ
ステムの設置と広報教育活動に絞った支援が行われた。1991 年から 1998 年までの第
2、第 3 フェーズではより総合的なエイズ対策となるよう支援が行われた。一般、若者、
女性、性産業従事者を対象とした感染予防のための性行動の推進活動の実施、コンド
ームのソーシャルマーケティ
ング、エイズ性感染症のカウ
図4-5: タンザニア ムベヤ州における妊婦(15∼24歳)の
HIV感染率(%)の変化
ンセリングと性感染症治療、
在宅カウンセリングとケア、
25
安全な輸血血液供給システム
の設立、PLWHA に対する偏見差
20
別緩和のための活動、オペレ
ーショナル・リサーチ、疫学
15
観察定点調査、州や県の政治
家に対するアドボカシー、保
10
健のみならず他省庁の州や県
民間セクター間の調整などが
行われた。1998 年から 2002 年
5
0
19
88
19
89
19
90
19
91
19
92
19
93
19
94
19
95
19
96
19
97
19
98
19
99
レベルの機関、そして NGO や
の第 4 フェーズでは、各県が
責任を持って総合的エイズ対
策を推進していけるように支援していった。
その結果、ムベヤ州の疫学定点観測の定点であるマタニティクリニックに訪れた妊婦
の HIV 感染率は、1994 年に 20%であったものが、1999 年には 15%に減少、梅毒感染
率も 1989 年に 15%であったものが 1999 年には 4%に激減した(図 4-5)
。1999 年 1 年
間で 8,600 人もの人が VCT サービスを受けている。
このムベヤ州におけるエイズ対策は、タンザニアにおける成功事例としてモデルとな
っており、政府はこの経験を全国展開したいと考えている。この事例では、プロジェ
クトを開始して 7 年目の 1995 年にしてようやく成果が見え始め、15 歳∼24 歳の妊婦
の HIV 感染率が下降し始めており、人間の性行動を変えるということはそれだけの時
間と地道な努力が必要だということを物語っている。日本をはじめとする主なドナー
17
Ministry of Health, United Republic of Tanzania and Deutsche Gesellschaft fur Technische
Zusammenarbeit (GTZ). Hope for Tanzania: AIDS Control and Prevention in Mbeya Tanzania, 2000: pp4-7.
4-59
の支援形態が、5 年未満、3 年未満、短いものは 1 年未満のプロジェクト実施という現
状の中、是非とも参考にしたい成功事例であるといえる。
4.2.5.4
タンザニアにおける VCT サービス
【1】
VCT サービスの現状
VCT については、1995 年、NACP はデンマーク国際開発援助庁(DANIDA)の支援の下、
HIV 迅速検査を使った同日その場でのカウンセリングと検査の実施をいくつかの公的
保健医療施設にてパイロットプロジェクトとして開始し、カウンセラーのトレーニン
グが行われた。
1998 年のサーベイランス報告書18によると、1998 年までにトレーニングされた公的機
関のカウンセラー数は全国 19 州で 71 人となり、1998 年 12 月には新たに 91 人のカウ
ンセラーが養成され、162 人となった。1998 年の全国における VCT サービスの実績は、
表のようになる。1998 年 1 年間に公的機関で HIV 検査を受けたクライエントの数は、
2,570 人でその内 65.6%が HIV 陽性と判定されている。ただし、ここではムベヤ州の
実績は入っていない。この陽性率の高さから判断すると、何かしらの自覚症状がすで
にあって検査を受けにきた利用者が多いということであろう。いずれにしても、全国
で 1 年間に 5,843 人の利用者が少なくともカウンセリングサービスを受けた。これは、
カウンセラー1人当たり1ヶ月 6.86 人平均の利用者利用者のカウンセリングを行った
ことになり、これは決して多い数字ではない。
表4-30: 1998年1年間の全国VCTサービス実績(ムベヤ州は含まない)
内容
カウンセリングを受けた利用者
新規利用者
HIV 検査を受けた利用者
HIV 抗体陽性者数
数
5,843
3,620
2,570
1,687
出典: Ministry of Health, Tanzania Mainland. National AIDS Control Programme
HIV/AIDS/STD Surveillanve, Report No. 13, December 1998
VCT サービスは公的機関のほか、NGO や民間機関でも実施されてきているが、実施形態
やサービスの質、技術レベルはかなりの幅があるようである。2000 年ぐらいまで最も
多い形態は、検査前後のカウンセリングを行い、検査そのものは検体を近隣のラボに
送るという形態であったが、最近の簡易迅速検査を使った VCT サービスの拡大により、
現在、全国約 200 箇所におよぶ VCT サイトが存在している19。この拡大は、NACP が African
18
Ministry of Health, Tanzania Mainland. National AIDS Control Programme HIV/AIDS/STD Surveillanve,
Report No. 13, December 1998: p29.
19
Mliga, G. National Plan for Care and Treatment for People Living with HIV/AIDS: Presentation material
at the Regional and Asia-Africa Cooperation Seminar on HIV/AIDS in Tokyo in March 2003.
4-60
Medical and Research Foundation(AMREF)の協力を得て行ってきており、ANGAZA(ス
ワヒリ語で enlightening という意味)と呼ばれるプロジェクトの下、都市部を中心に
VCT サービスのソーシャルマーケティングやモーバイル VCT サービスの提供なども実施
されている。カウンセラーの養成も進行しており、トレーニングを受けた医療従事者
は現在 300 人に達している。検査技師のトレーニングも同時進行している。政府は 2005
年までには 121 県の各県に少なくとも 6 箇所の VCT サイトを設立し、各センターに少
なくとも 2 人のカウンセラーを配置しようとしている20。そのための資金源をグローバ
ルファンドやほかの米国系基金に求める予定である。
検査体制については、情報不足で把握できていないが、全国 182 箇所ある輸血可能な
医療施設のうち、安全な血液供給が可能な施設は 4 つの国立病院と 17 の州病院であ
り、残りの施設は機材や試薬、技術的に欠落が見られという記述が第 3 次中期計画の
資料に見られることから、少なくとも 1998 年末時点では全国レベルで検査体制が整っ
ていらとは思えない。
「1998 年、HIV 定点は全国 24 箇所のマタニティクリニックにお
いて行われているが、ムベヤ(Mbeya)とキリマンジャロ(Kilimanjaro)州の 2 州に
おける 10 箇所のみが活発にデータ収集を行った」という記述があり、その予想を裏付
けている。国連エイズ行動計画発表の HIV/AIDS と性感染症疫学ファクトシートを見て
も、1988 年以降継続的に定点調査疫学データが出ているのは、ダルエスサラーム市と
ムベヤ州のみとなっている。カゲラ(Kagera)州ブコバ(Bukoba)とキリマンジャロ
州、そして 1995 年まではムワンザ州も比較的データがそろっているが、残りの州はデ
ータの表記がほとんどない状態である。ここ 1∼2 年の簡易迅速検査法の急速な普及に
より、かなり改善されてきていると考えられるが、その検査体制やデータ管理も含め
た検査サービスの質の状況は、情報不足により把握できていない。
【2】
VCT サービスにかかわるポリシー/ガイドライン
HIV/AIDS に関する国家政策をみると、HIV/AIDS 政策の目標として、HIV 感染の早期診
断を VCT によって推進するとあり、現在 HIV に感染していない 85∼90%の人々に対し
て予防行動の促進をはかり、感染者に対してはケアサポートを授け延命をはかってい
くことを目指している。また、カウンセリング実施規定に基づいたカウンセリングサ
ービスの提供のため、カウンセリングトレーニングやトレーニングプログラムの認定
制度を推し進めていくとある21。さらに、HIV 検査は検査前後のカウンセリングの実施、
通知のあり方、輸血血液などのスクリーニングにおける検査のあり方、個人情報の保
護、インフォームドコンセント、意図的に HIV 感染を行った場合の犯罪としての取り
扱い、HIV 疫学調査、VCT サービスの費用負担などにかかわる記述がある。
20
Mliga, G. National Plan for Care and Treatment for People Living with HIV/AIDS: Presentation material
at the Regional and Asia-Africa Cooperation Seminar on HIV/AIDS in Tokyo in March 2003.
21
Prime Minister’s Office, The United Republic of Tanzania. National Policy on HIV/AIDS. November 2001:
p10.
4-61
また、第 3 次中期計画のなかには 9 つの重要な戦略が掲げられており、VCT サービスは
その一つとして強調されている。
【3】
NGO との連携
NGO である AMREF は、1980 年代後半より HIV/AIDS 問題に取り組んでおり、プロジェク
トのモニタリングや評価、そして研究活動22も活発に行ってきている団体であるが、近
年国連機関や USAID からの資金協力を得て、HIV 簡易迅速検査法を使った VCT サービス
研修を開催してきている。AMREF は半年に一度の米国 CDC の検査精度管理チェックを受
けている、質の高いラボを擁している。ムヒンビリ大学にある国家リファレンスラボ
とも協力体制をとっており、保健省 NACP のパートナーとして VCT サービスの拡充に貢
献してきている。2001 年に行われた日米合同プロジェクト形成調査においても、その
活動を評価し、日米が連携して AMREF を支援し、地方レベルでの VCT サービス強化拡
大、検査キットの需要予測と供給状況モニタリング、検査機器・試薬類の供与とそれ
にかかわる技術支援、検査キットの発注・配送にかかわる技術支援をしていくことで
合意されている23。
4.2.1.5
タンザニアにおける VCT サービスの課題
本調査により入手したデータから、以下のような課題が明らかになった。
【1】
VCT サービス推進のためのコミュニティにおける広報教育活動とアドボカシー活動にかかわ
る課題
VCT サービスのプロモーションは 2002 年より本格的に始まったという感がある。コミ
ュニティにおける広報教育活動のさらなる強化が必要であろう。
【2】
VCT サービスサイトにおける課題
全国における VCT サービスの実態が掴めていないと考えられる。マッピングとそれぞ
れの VCT サイトにおけるサービス形態、カウンセラーの数、勤務体制、利用者数、カ
ウンセラーの経験やカウンセリング技術のレベル、個人情報の保護体制、検査キット
の在庫管理、アルゴリズムなどの実態を把握し、現場のニーズを掴むことが急務とな
ろう。
【3】
VCT 検査後のケアとサポートにかかわる課題
VCT サービスからほかの対策に繋げていくという活動もこれからの課題である。日和見
感染症の治療は現在無料という方針になっているが、治療のための薬剤の確保をどう
するかが問題になっている。また、地方の臨床現場において、エイズ患者の日和見感
22
1995 年 LANCET の第 346 巻 8 月 26 日号に掲載された研究論文である「Impact of improved treatment of
sexually transmitted diseases on HIV infection in rural Tanzania: randomized controlled trial」は
有名である。
23
国際協力事業団. タンザニア連合国日米合同プロジェクト形成調査報告書, 2001: p7
4-62
染症対策や母子感染予防対策などを行っていくことができる医療従事者の数が極めて
少ない24。HIV/AIDS のケアサポートのための国家ガイドラインが策定されているので、
それに沿った現場での活動が展開できるよう人材の養成が急務である。政府は 1 万人
を対象に抗エイズ薬治療を始める計画を作っており、グローバルファンドや米国系基
金に申請中である。抗エイズ薬治療が導入された時の臨床及び検査体制作りも急務で
あろう。
【4】
VCT プログラム運営能力強化にかかわる課題
① 国家 VCT サービスガイドラインの制定
VCT サービスの認定制度導入によってサービスの質の維持・向上を図ることができる。
そのためには、VCT サービスを標準化しなければならず、ガイドラインが必要となる。
②
簡易迅速検査キット評価システムの強化
国家リファレンスラボ及び AMREF は、自国の HIV 感染株及び検査施設の状況に対して
適切な検査キットを選定するための評価システムが機能しているかどうかチェックし、
そのシステムを強化することが必要であろう。
③ HIV 検査体制強化と検査キットの供給
疫学定点観測のデータの不揃い具合やデータの不備状況をみると、各検査施設の実務
能力に不安を抱かざるを得ない。GTZ の技術協力が入ったムベヤのデータのみが揃って
いるようでは、VCT サービスを全国展開しても、そこから得られるデータの質には不安
が残る。早急に全国の検査施設の HIV 診断検査、輸血用血液のスクリーニング検査、
定点観測の場合の検査体制を標準化し強化していく必要がある。また、安定した検査
キットの供給が確保できるように資金調達やドナー調整が必要となる。
④
ムベヤ州のモデルの全国展開
ムベヤ州でのモデルを全国レベルで展開していくための予算の確保、人材養成を具体
的に計画に落としていくことが必要である。この時、ドナーの援助協調が大切となる。
24
Mliga, G. National Plan for Care and Treatment for People Living with HIV/AIDS: Presentation material
at the Regional and Asia-Africa Cooperation Seminar on HIV/AIDS in Tokyo in March 2003.
4-63
4.2.6
ケニア
本調査の時間的・予算的限界により、タンザニア同様、ケニアにおいても現地調査
は実施していない。したがって、他の現地調査実施国(ザンビア、ウガンダ、ガー
ナ、及び南ア)と比較すると、収集できたデータの質・量とも差があり、VCT サービ
ス最新状況の詳細を掴みきれていないことを最初にお断りしておく。
4.2.6.1
国の概要
2002 年になって初めて、それまで 20 年以上続いたモイ政権の交代が行われたケニア
に対しては、今後新政権による国家運営手法の刷新に期待が高まっている。特に前
政権時代においてケニア国民と国際社会による強い批判が相次いだ汚職体質の是正
は今後も優先課題の一つであり、各国も援助に対するアカウンタビリティーを厳し
く注視している。その地理的位置及び歴史的、政治的影響力により、周辺アフリカ
諸国はもちろん、アラブ諸国やヨーロッパ諸国との間でも人と物の流れは大変盛ん
であり、本国経済の活性化に貢献している。
貧困にあえぐ人々が大多数を占める一方で、政府機関、主要民間企業や NGO におい
ては高い教育訓練を受けた優秀な人材を多数擁しており、健全な国家発展に向けて
いかにそうした人材の士気を高め政策を実施して行くかが、貧困削減や HIV/AIDS 対
策といった重要課題への取り組みにおいて重要であると思われる。
表4-31: ケニアに関する一般情報
名称
首都
国土面積*1
人口
住民*1
ケニア共和国(Republic of Kenya)
ナイロビ
58.3 万 km2
31,900,000
キクユ人、ルヒヤ人、カレンジン人、ルオ
人等
英語を公用語とし、スワヒリ語等が一般に
話される。
キリスト教、イスラム教、伝統宗教
ムワイ・キバキ
1,010
48.7/49.9
10/21
49%
言語*1
宗教*1
大統領*1
国民一人当たりの GNI(米ドル)*2
出生時の平均余命 (歳) (男/女) *2
15 歳以上の非識字率 (%) (男/女) *2
安全な水へのアクセス率 (%)*2
出展:*1 外務省ホームページ
*2 国連人口基金、「世界人口白書 2002」
4-64
表4-32: ケニアのリプロダクティブヘルス指標
乳児死亡率 (出産 1,000 件対)
妊婦死亡率 (出生 10 万件対))
5 歳以下の子供の死亡率 (出産 1,000 件対)
(男児/女児)
近代的避妊実行率 (%)
合計特殊出生率推計値 (2000 年から 2005 年)
専門技能者の立会いのもとでの出産 (%)
59
1,300
109/98
32
4.15
44
出展:国連人口基金、
「世界人口白書 2002」
4.2.6.2
ケニアにおける HIV/AIDS の概況
2000 年におけるケニアの成人 HIV 感染率は 13.5%とされる。ケニア国内においては、
その HIV 感染率に大きなばらつきがある。保健医療施設を訪れた妊産婦における HIV
感染率が 20-35%を記録する高感染率地域(Busia, Chulaimbo, Kisumu, Mbale, Meru,
Nakuru Thika)は主にケニアの中西部に位置し、10-19%、また 4-9%を記録する地
域がまばらにある。中でも、Kisumu は 2000 年に高 35.4%の感染率を記録している。
近年の感染率の増減については、比較的安定している地域と、増加傾向にある地域
に分かれる。しかし、安定していると見られる地域においても新たな感染者数がエ
イズ死亡者数により相殺されている可能性がある。全体的には 1980 年代以降ケニア
における HIV 感染率は増加傾向にある。都市部における一般成人感染率は平均
17-18%とみられており、農村部では 12-13%と推定される。但し、農村部における
感染率の増加は高まっており、ケニアにおける全人口の 80%と現 HIV 感染者の 72%
が農村部に在住していることを考え合わせると、農村部における HIV/AIDS 対策の重
要性は極めて高い。
高感染グループは若年層の女性と中高年層の男性に集中しており、社会的・経済的
に不利な立場にある若い女性に対する中高年男性による性的搾取のあらわれとみら
れる。
表4-33: ケニアにおけるHIV/AIDS概況(2002年UNAIDS報告)
HIV 感染者数推計 成人(15‐49 歳)
2,300,000(内女性
1,400,000)人
220,000 人
15.0%
81,492 件
190,000 人
890,000 人
子ども(15 歳以下)
HIV 感染率推計 成人(15‐49 歳)
エイズ患者報告件数累計(1998 年 9 月)
エイズによる死亡者数推計(2001 年)
エイズによって片親または両親を亡くした遺児(15
歳以下)数推計
出 典 : Joint United Nations Programme on HIV/AIDS and World Health Organization,
Epidemiological Fact Sheets on HIV/AIDS and STIs –Kenya, 2002 Update
4-65
4.2.6.3
ケニアにおける HIV/AIDS 対策
【1】
HIV/AIDS 対策の変遷
ケニアにおいては、HIV 感染の広がりと HIV/AIDS による社会的コストの高まりが認
識されるに至り、1996 年に National HIV/AIDS Policy の作成が始められた。この政
策は 1997 年に国会で Sessional Paper No. 4 of 1997 on AIDS in Kenya として承
認された。Sessional Paper No. 4 は以後 15 年間における HIV/AIDS 対策への政策枠
組みを与えるものであり、HIV/AIDS を全セクターにまたがる課題として捉えるマル
チ・セクトラル・アプローチを前面に打ち出している。
1999 年には大統領令に基づき
National AIDS Control Council
ケニア HIV/AIDS 対策の変遷
(NACC)が設立され、政策面及び必
1984
1996
1999
要財源の確保において、国家レベ
ルにおけるマルチセクトラル・ア
プローチに基づいた HIV/AIDS 対策
1999
の調整・牽引役を担うこととなっ
1992
た。NACC は関連ステークホルダー
と共に早速 Kenya National
最初のエイズ患者報告
National HIV/AIDS Policy
National AIDS Control Council
(NACC) 設立
Kenya National HIV/AIDS Strategic
Plan 2000 –2005 (NACC, 2000)
National AIDS and STD Control
Programme による National
HIV/AIDS & STD Programme
(NASCOP , 1999-2994)
HIV/AIDS Strategic Plan 2000 ‐
2005 の作成と承認に着手しており、現在ケニアにおける HIV/AIDS 対策の要となって
いる。
NACC 設立の一方で、保健分野における HIV/AIDS 対策を指揮・調整し、ガイドライン
を策定する役割を担う保健省下 National AIDS and STD Control Programme (NASCOP)
は Strategic Plan for the Kenya National HIV/AIDS & STDs Control Programme for
1999-2004 を策定しており、NACC と NASCOP 主導による両戦略の関係は分析を要する。
HIV/AIDS 対策に関しては、主要な政策・戦略・ガイドラインが既に整備されており、
今後はそれらの実施と実施状況のモニタリング・評価が中心になるとみられる。
4-66
表4-34:ケニアにおけるHIV/AIDS対策及びVCTに関連する政策・戦略・ガイドライン
主要な政策・戦略等
・
Kenya National HIV/AIDS Strategic Plan 2000 ‐ 2005 (NACC, 2000)
・
Strategic Plan for the Kenya National HIV/AIDS & STDs Control Programme
for 1999-2004 (MOH, 1999)
・
National Development Plan 2000-2005
・
National Poverty Eradication Plan 1999 - 2015
・
Sessional Paper No. 4 of 1997 on AIDS in Kenya
・
State Corporations Act in Legal Notice No. 170
・
National Condom Policy and Strategy (MOH, 2001)
・
Mainstreaming Gender into the Kenya National HIV/AIDS Strategic plan
2000-2005(NACC, 2002)
・
Implementation of the New Blood Safety Policy (2002)
主要なガイドライン
・
National Guidelines for Voluntary Counselling and Testing (MOH,2001)
・
Guidelines to Antiretroviral Drug Therapy in Kenya (MOH, 2001)
・
National Home-Based Care and Programme and Service Guidelines (NASCO,
2002)
・
Policy Guidelines on Blood Transfusion in Kenya (MOH, 2001)
【2】
HIV/AIDS 対策調整メカニズム
ケニアにおける HIV/AIDS 対策の調整メカニズムは以下表のとおりになっている。
表4-35: ケニア国内における主要ステークホルダーの役割
National AIDS Control Council
(NACC)
National AIDS and STDs Control
Programme (NASCOP)
AIDS Control Units(その他の省
庁)
Provincial AIDS Control
Committees (PACCs), District
AIDS Control Committees
(DACCs), Constituency AIDS
Control Committees(CACCs)
NGOs・CBOs
University of Nairobi, Kenya
Medical Research Institute
(KEMRI)
ドナー
マルチ・セクトラル・アプローチに基づき、国内の全セクタ
ーに渡る HIV/AIDS 対策活動の調整、及び HIV/AIDS 対策全般
における資金調達とその分配の調整を統括する政策・戦略枠
組み作り
保健医療分野における HIV/AIDS 対策に関する政策・指針作
りとその執行に関する監督、定点観測調査実施機関
該当省庁所管の分野において HIV/AIDS Strategic Plan が実
施され、NACC が打ち出す HIV/AIDS 対策の重点分野が各分野
において十分に内面化・実施されるよう調整。該当分野にお
ける HIV/AIDS 対策に関する政策・指針作りとその執行
該当地域・レベルにおいて HIV/AIDS Strategic Plan に定め
られた課題に関する活動実施のための調整、監督、支援を行
う。
該当分野における HIV/AIDS 対策活動の執行、政策・指針づ
くりへの貢献
NASCOP による Sentinel surveillance のサポート機関
国内カウンター・パートへの資金・技術援助、政策・指針作
りへの貢献。USAID は HIV/AIDS 対策における援助全体の7割
までを拠出。UNICEF, Dfid, World Bank, GTZ, UNDP 等も拠
出す。WHO は HIV 感染率調査を支援。
4-67
【3】
ケニアにおけるこれまでの HIV/AIDS 対策全般の成果と今後の課題
保健省発行による AIDS in Kenya(2001)によると、2001 年以前の 15 年間に、ケニア
において次の成果が見られた。
表4-36: ケニアにおけるHIV/AIDS対策のこれまでの主な成果
・
コンドームの普及と使用の増加
政府によるコンドームの配布数は 1991 年の 1800 万個から 2000 年には 6 億個に増加、
ソーシャル・マーケティングによるコンドームの販売数も年 1300 万個以上に増加し
た。1998 年の DHS によると、40%以上の男性が前回の妻以外の人との性交渉において
コンドームを使用したと答えている。
・
性感染症治療
保健省によると、2001 年現在、月 5 万件以上の性感染症ケースが治療されている。
・
ターゲットを絞ったプログラムの成果
ナイロビにおける性産業従事者のための性感染症治療・コンドーム使用の推進・ピア
カウンセリングの合同プログラムは功を奏し、ナイロビの性産業従事者間における
HIV 感染率を 1980 年代後半の 45%から 1990 年代には 10%まで低下させることに成功
している。HIV 感染の減少に合わせ、性感染症の減少も記録されている。
・
コミュニティーに根差したプログラム
ナイロビ及びナクルにおいてコミュニティーに根差した総合プログラム(ピア・エデ
ュケーション、コンドーム使用の推進、性感染症治療の向上)が実施され、1993 年と
1998 年の間に淋病等の性感染症の減少、および若い女性における HIV 感染率の減少が
見られた。
以上のような成果を踏まえ、ケニアにおける HIV/AIDS 対策として達成すべき課題と
して、Kenya National HIV/AIDS Strategic Plan 2000 ‐ 2005 は、以下を挙げてい
る。
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
⑫
⑬
⑭
2005 年までに HIV 感染率を 20-30%削減する
HIV/AIDS によって感染またはその影響を受けている人々によるケアとサポー
トへのアクセスを向上させる
全てのレベルにおいて制度的・組織的キャパシティーと調整活動を強化する
高い政治的コミットメントの維持
HIV/AIDS 対策におけるマルチ・セクトラル・アプローチの実施
VCT サービスの供給
母子感染予防の為のサービス提供
性感染症治療の強化
学校におけるエイズ教育の強化
ストラテジック・プランの実施
ホーム・ベースト・ケアの強化
PLWHA のネットワーク強化
HIV/AIDS 及び PLWHA への偏見をなくす
HIV/AIDS 対策調整メカニズムの強化
4-68
4.2.6.4
ケニアにおける VCT
【1】
VCT サービスの現状
VCT プログラム全体の調整及び関連ガイドラインの策定は、NASCOP を中心に行われ
ている。ケニアにおける VCT センターは、ナクル、キタレ、ニェリ、キツイ、及び
ケニヤッタ国立病院において開始された。現在は、全国に現在 150 カ所程の VCT セ
ンターが存在し、保健省、NGO、ミッション系病院、私立病院、及び国際 NGO により
運営されている。保健省は今後 2 年間のうちに 210 カ所の VCT センターを増設する
ことを政策目標に掲げており、USAID が実質的な支援を表明している。しかし、カウ
ンセラーへの人件費の不足が、センター設立の大きな障害となっている。VCT は比較
的都市において広がりを見せているが、農村部では、未だアクセスが極めて限られ
ている。ケニアにおける HIV/AIDS 対策において、VCT は政策上も重点項目のひとつ
とみなされ、今後 2 年間における大幅なサービス拠点拡大が保健省によって明言さ
れている。VCT の目的については、「HIV 感染防止効果」により焦点をあてている。
【2】
VCT に関わるポリシー/ガイドライン
ケニアにおいては、以下のようなガイドラインが NASCOP により制定されており、一
般的な過程(本報告書第3章参照)をたどることが推奨されている。
表4-37: ケニアにおけるVCTに関連する政策・戦略・ガイドライン
主要な政策・戦略等
・
National Guidelines for Voluntary Counselling and Testing (2001)
主要なマニュアル
・
Nenyan National Manual for Training Voluntary Conselling and Testing
(VCT) Consellors
ケニアにおける VCT の特徴として、以下を挙げることができる。
①
②
③
④
⑤
カウンセリングによる HIV 感染防止の強調
カップルでのカウンセリング
全クライアントに対し二つの異なるタイプの検査の実施と、それらのクロス
チェックの奨励
検査技師による検査を推奨する一方で、条件付きでカウンセラーによる HIV
簡易迅速検査を認めている。
17 歳以下の青少年に対しては、自由なVCTへのアクセスを認めていない。
15 歳から 17 歳のグループについては、カウンセラーが判断を下すこととし、
それ以下の年齢については、両親の承諾を必要とする。
4-69
特に上記⑤の政策は、HIV 感染が深刻なケニアにおいて、現実のニーズにそぐわない
と思われる。
【3】
VCT に関わるステークホルダーとその役割
先に述べた HIV/AIDS 対策全般における主要ステークホルダーの役割に加え、VCT 分
野では次の機関が中心的役割を担っている。
表4-38: ケニアにおけるVCTに関する主要機関とその役割
ステークホルダー
役割
Ministry of Health AIDS Control Unit
(MOH/ACU)
National AIDS Control Council (NACC)
・
・
・
・
National Public Health Laboratory
(NPHLS)
Kenya Medical Supplies Agency
(KEMSA)
Director or Medical Services (DMS)
民間組織 (主なもの:Liberppol VCT
project, The Centre for Disease
Control and Prevention, Family
Health
International,
Kenya
Association
of
Professional
Counsellors, Kenya Institute of
Professional
Consellors,
Amani
Counseling Centre)
Provinces:
Provincial Health Management Team
(PHMT) / Provincial General Hospital
District:
District Health Management Team
(DHMT)、
主なドナー(Dfid, CDC, NORAD, UNICEF,
World Bank, UNFPA, Elizabeth Gretzen
Fund)
4-70
・
・
・
・
・
・
・
・
ガイドラインの策定と保健省下のクリニックや病
院における VCT 実施の監督
VCT に関わる研修等
マルチ・セクトラル・アプローチの一貫としての
保健省及び他のセクター間の調整
MOH/ACU による評価レポートの各セクターへの
配布
HIV 検査キットの品質検査
HIV 検査の品質管理
HIV 検査キットの調達
全ての政府系病院と NPHLS に対する HIV 検査キ
ットの調達、貯蔵、配布
VCT サイトにおける NASCOP と ACU により推奨
された HIV 検査キットの使用許可証の発行
VCT サイト設立・運営支援
VCT サイト直接的運営
VCT サービスに関するトレーニング
・
Province レベルにおける VCT 活動の調整、品質管
理等
・
District レベルにおける VCT 活動の調整、VCT コ
ーディネーターの任命
・
・
VCT 実施機関への資金・機材・技術協力
ベスト・プラクティスの文書化支援
【4】
VCT 検査体制
HIV 検査には、unigold 及び determine といった HIV 簡易迅速検査キットが主に使用
されている。VCTガイドラインによると、県レベル病院は品質保証のために、3%
から 5%のサンプルを provincial Hospital に提出し再検査を受けることになってい
る。
【5】
VCT 検査後のフォローアップ
現在 HIV 感染者による医療的ケア(日和見感染症の治療および抗エイズ薬治療を含
む)へのアクセスは極めて限られている。原因は、これらのサービスが一般の人々
にとってあまりに高価である点にある。日和見感染症治療に関しては、1980 年代に
導入されたコストシェアリング政策(利用者によるコスト負担政策)により、患者
の治療費用の一部負担が義務付けられているほか、抗エイズ薬に関しては月約
11,000 シリング(約 US145 ドル)もかかるため、これらは一般市民の手の届かない
ものである。医療的ケアへのアクセスが困難であれば、HIV 感染者及びその家族に対
する苦痛となるだけでなく、HIV 検査を受けることの意義自体に疑問を投げかける要
因となっている。
4.2.6.5
ケニアにおける VCT サービス強化に関わる課題
ケニアでは、他のサハラ以南アフリカ諸国に先駆けて VCT サービス・ガイドライン
を作成するなど、活発な対策と努力が行われている。しかしながら、より多くの国
民が VCT の恩恵を享受するためには、現在行われている活動を強化し、各関連分野
においてまだまだ多くの支援が必要とされている。今回の調査では、VCT 活動を実施
している NGO・政府機関・ドナーの間で、以下のような課題があることが明らかにな
った。
【1】
VCT のためのコミュニティ広報教育活動とアドボカシー活動に関わる課題
特に感染の危険に晒されている恐れのある 18 歳以下の青少年が、政策上VCTサー
ビスへの自由なアクセスを阻まれていることは、大きな課題である(他のドナーと
連携し、保健省に対し政策提言を行う必要がある)
。性に関する事項がタブー視され
る社会文化的背景により、青少年に正確な HIV 感染防止のための知識を広め、ライ
フ・スキルの習得を促す BBC の実施や、コンドームの配布も実質的に難しい状況に
ある。そのため、コミュニティ、政治家、教師、両親、宗教関係者等、青少年問題
に関わる主な成人グループに対して、青少年の HIV 感染を防止するのための BCC 推
進の重要性について、早急に啓発活動を行う必要性がある。
4-71
【2】
VCT サイトにおける活動に関わる課題
ケニアでは VCT サイト拡大の努力が行われているが、まだ全ての VCT サービスを必
要とする人口をカバーするには至っていない。特に農村部等における VCT サービス
へのアクセスは、さらに改善される必要があるといえる。また、VCT サービスを必要
とするいくつかのターゲットグループのうち、特に青少年や性産業従事者、移動人
口へのサービス供給が他のグループに比べても不足している。今後は、これらグル
ープへのサービス提供がさらに強化される必要がある。
さらに、適切な VCT サービスが提供できるカウンセラーの数は、絶対的に不足して
いる。カウンセラーの量的な充足と共に、カウンセリングの質の向上、そしてそれ
を維持するための活動も強化されなくてはならない。
VCT サイトにおける施設・機材の充実も重要な課題である。十分なレセプション・エ
リアやカウンセリング・ルーム、及び教育用教材やその他消耗品等、さらに改善さ
れるべき点などまだ多いといえる。
【3】
VCT 検査後のケアとサポートに関わる課題
HIV 感染者による日和見感染症及び抗エイズ薬治療を考えると、次の二点が重要な課
題として挙げられる。
短期的には、比較的安価で実施できる日和見感染症治療を、より多くの感染者に供
給するために、更に低コスト又は無料で行い、保健省及び関連 NGO 等へ支援を行う
ことが考えられる。コストシェアリング政策についても、現在ケニア政府が貧困政
策に力を入れていることを考えると、こうした治療費に関して貧困層の優遇措置の
検討を政策提言することは難しくないと思われる。
長期的には、現在高価である抗エイズ薬治療が少しでも HIV 患者の手に届くよう、
ケニア政府及び他の主要ドナーと調整の上支援を行う必要がある。ブラジル及びイ
ンド産の低価格抗エイズ薬の導入や、WHO/UNAIDS を通した抗エイズ薬価格交渉に応
じている製薬会社との提携が考えられる。さらに、増加するエイズ遺児への支援も、
重要な課題である。
上記に加え、教会などによる HIV 感染者への精神的サポート体制も強化される必要
がある。
4-72
【4】
VCT プログラム運営能力強化に関わる課題
ケニアでは VCT ガイドラインが作成されたが、資金不足により、これを必要とする
全国全ての保健医療施設に行き届いていないといわれている。ガイドラインの徹底
なしに適切な VCT サービスは提供されないため、ガイドラインの十分な部数の印刷
と配布は緊急に実施されなければならない。
また、VCT サイトで必要とされる、HIV 検査キット等の消耗品の調達、流通、及び消
耗品必要量データのフィードバックシステムがまだ十分確立・調整されておらず、
VCT サービスの安定した供給を妨げていると言われている。また、これら消耗品流通
に重要な車両が絶対的に不足しているという問題も無視できない。これらについて
も、早急な対応が必要である。
さらに、HIV/AIDS 対策全般における評価モニタリングの確立と強化も今後の重要な
課題である。
(現時点では、事実上 VCT サービスの利用やカウンセリングの質、その
インパクトに関するデータは体系的に収集されてはいない)
。
【5】
セクター横断的な課題
HIV 感染と貧困は、ケニアにおいても相関関係にある。貧困によって、成人男性に体
を売る少女たちの間での HIV 感染率が高い事実などからも、HIV/AIDS 対策には、セ
クターを越えた対策が必要とされている。
4-73
4.3
アフリカにおける VCT 活動のケース分析
4.2 では、VCT 活動の現状と課題について、6つの調査対象国ごとに概観した。ここで
は、VCT 活動を効果的・効率的に実施にするための、特に重要な以下4つの課題につい
て、本調査対象国の実際のケースを参考に検討を試みた。
・
ケース分析1:VCT ガイドラインと実際のサービス提供状況との比較
・
ケース分析2:VCT サイト設立に必要なリソースの配備状況
・
ケース分析3:VCT サイトにおける必須消耗品の供給
・
ケース分析4:VCT サイト利用を促進する要因
基本的なガイドラインが存在することは、VCT サービスを始めるにあたっての、最も重
要なファーストステップであるといえる。さらに、このガイドラインは、実際に適用
されて初めて意義を達成する。よって、ケース分析1では、VCT プログラム・ガイドラ
インの実際のサービス提供状況について、ケニアを例にとって検証した。
ガイドライン策定・適用後は、実際に VCT サイトを設立するステップへと進む。ケース
分析2では、VCT サイト設立に必要なリソースについて、同じくケニアの例を参考にそ
の現状を検証した。
必要なリソースが整えられ、VCT サイトが設立されると、いよいよ VCT サービスの提供
が始まる。そして、サービスの継続的提供のためには、サイトに HIV 検査キットを始
めとする必要消耗材が常備されていることが大原則となる。そこで、ケース分析3では、
VCT サイトにおける必要消耗材の継続的配給に関わる課題を、ザンビアの例を参考に検
討した。
ガイドラインが実際に適用され、VCT サイトも設立され、必要消耗材の常備が確保され
るというサービス供給側の体制が整うと、最後に残る重要な課題は、サービス利用側
の住民に積極的に VCT サイトを利用してもらうにはどうすべきか、という点である。
そこで、ケース分析4では、ザンビアの例を参考に、住民の VCT サイト利用を促進する
要因について検証した。
4-74
4.3.1
ケース分析1: VCT プログラム・ガイドラインと実際のサービス提供状況との比較
VCT プログラムを実施している国々において、VCT プログラム実施のための政策ガイド
ラインが存在することは、プログラム成功のための重要な要因である。しかしながら、
ガイドラインは存在しているだけでは不完全であり、これらガイドラインは実際に適
用されて初めてその意義を完結する。ここでは、ケニアにおける VCT プログラム・ガ
イドラインの実際の適用状況について、2001 年にケニア全国 252 ヶ所の保健医療施設
を対象に行った現状調査 1 「ケニアにおける輸血システム:VCT サービス(Blood
Transfusion System in Kenya:Part II Voluntary Counseling and Testing)
」
(以降、
「現状調査」として表記する)をケースとして取り上げ、同国 VCT プログラムのガイ
ドラインと実際の適用状況を比較検討した。なお、調査対象となった全国 252 の保健
医療施設のうち、VCT サービスを提供していたのは、73 施設(28.9%)であった。こ
れら 73 の VCT サイトの属性による内訳は以下のとおりである。
表4-39: 調査対象となったケニアの73ヶ所VCTサイトの属性
4.3.1.1
【1】
属
性
政府系保健医療施設
ミッション系保健医療施設
民間保健医療施設
数
43
14
16
合計
73
VCT プログラムのガイドラインと実際のサービスとの比較
VCT サイトにおける利用者登録と、VCT 教育サービス
ガイドラインによれば、VCT サイトに到着した利用者は、まず受付で VCT サービスの流
れについて説明を受けることになっている。そして、彼らがカウンセラーに会うまで
の待ち時間に、ポスター、パンフレット、ビデオなどによる VCT や HIV/AIDS について
の教育が提供されなければならないことになっている。しかしながら、現状調査結果
によると、現実はまだそのような状況にない。調査対象となった VCT サイトのうち、
38.6%において受付のための場所がなく、また多くのサイトは、資金不足からビデオや
パンフレットといった教材も持ち合わせていないことが明らかになっている。
【2】
利用者待ち時間
ガイドラインでは、即日、それもできるだけ短時間内に、利用者に対して HIV 検査結
果を渡すことが推奨されている。しかしながら現状調査によると HIV 検査は、サイト
ではなくラボラトリー(General Laboratory)において実施されることもあり、この
ALMACO Management Consultants, Blood Transfusion System in Kenya “A Study by JICA in collaboration
with the Ministry of Health,” Kenya, January, 200.
1
4-75
事実は、利用者の待ち時間を長引かせるという結果をもたらしている。
【3】
検査前カウンセリング
利用者は、HIV 検査前に「検査前カウンセリング」を受け、その中で HIV 検査の説明を
受けて十分に理解・納得しなければならない旨がガイドラインに記述されている。現
状調査結果によると、調査対象となった VCT サイトのうち、59.1%が検査前カウンセ
リングのガイドラインを所有しこれに従っている。また、検査前カウンセリングに含
まれるべき、利用者に対する HIV 検査に関しての「インフォームド・コンセント」に
ついては、VCT サイトのうち、57.5%において「インフォームド・コンセントのための
ガイドライン」が存在し、適用されていることが明らかになっている。しかしながら、
これら HIV 検査前の説明に対し、利用者が十分理解納得した上で検査実施にサインす
るような類の書類は存在していない。
【4】
守秘義務と匿名性
ガイドラインにおいて、VCT サービスを効果的に実施するための守秘義務とプライバシ
ー保護は徹底されなければならないとされている。利用者は、守秘義務と匿名性保護
が確保されて初めて、積極的に VCT サービスを利用するようになる。守秘義務には利
用者に関する記録と検査結果に対するアクセスが厳しくコントロールされていること
も含む。利用者の本名でなくコードを適用することで、匿名性を確保することも大切
である。また、待合室や患者が VCT サービスを受けるサイトもまたサービスの一環と
して捉え、守秘義務と匿名性確保に十分配慮しなければならない。現状調査結果によ
ると、65.2%の VCT サイトにおいて、守秘義務に関するガイドラインが存在し実際に適
用されていることが明らかになっている。しかしながら、HIV 検査結果は、カウンセラ
ー、医師、臨床検査技師、看護婦など、様々な人々から利用者へと伝えられており、
そこに守秘義務が十分に確保されているとは言えない。ハード的側面から見ても、利
用者に対する守秘義務を十分に保障できるような受付、カウンセリング・エリア、検
査室が、多くの VCT サイトにおいて確保されていないことも明らかになっている。
【5】
VCT 検査結果
ガイドラインでは、VCT 検査結果は、利用者本人が他者に伝えることを許可しない限り
は、原則として利用者本人のみに伝えられることになっている。また、結果は口頭で
のみ伝えられ、文書では伝えてはならないことになっている。現状調査結果によると、
80.87%の VCT サイトにおいて、VCT 検査結果を伝える手順に関するガイドラインが存在
していないことがわかった。また検査結果を伝えたスタッフは、以下のとおりであっ
た(複数回答可)
:カウンセラー(Counselors: 75%)
、医師(Medical Officer: 32.9%)、
臨床検査技師(Laboratory Technologists:8.2%)、検査技師(Laboratory Technicians:
6.8%)、正看護婦(Registered Nurse: 23.3%)、及び准看護婦(Enrolled Nurses)。ま
た利用者以外の第三者に結果を伝える際には、VCT サイトスタッフは必ず本人の許可を
得ているとのことであった。
4-76
【6】
検査後カウンセリング
検査後のカウンセリングも、VCT サービスにおいて必須の要素である。ガイドラインで
は、特に HIV 陽性の結果が出た利用者に対し、HIV とともに生きていく上での様々な課
題や、感染を防ぐための対策、ウィンドウ・ピリオド(Window Period)や継続的カウ
ンセリングとパートナーへの告知などについての相談にのることを義務づけている。
現状調査によると、59.1%の VCT サイトが検査後カウンセリングのガイドラインを所
有し、これに従っていることが明らかになった。
【7】
VCT サービスについての啓発活動
HIV/AIDS を地域の問題として意識化させ、VCT サービスを住民によって積極的に利用
してもらうためには、様々な活動を通じての HIV/AIDS 及び VCT サービスに関する啓発
活動が不可欠とされている。言い換えれば、地域が HIV/AIDS の問題を十分認識し、HIV
感染者に対する偏見などをなくすることなしに、VCT サービスは成り立たないといえる。
一般保健医療施設や、妊婦クリニックなどにおける健康教育、あるいは学校やコミュ
ニティなどでの啓発活動は、HIV/AIDS や VCT サービスについての情報を正確に伝える
ために実施されるべきである。現状調査によると、VCT に関する啓発活動についてのガ
イドラインは 42.2%の VCT サイトで使用されており、また、以下のような関係者により
啓発活動が実施されている(複数回答):カウンセラー(Counselor: 60.3%)、保健婦
(Community Nurse: 47.9%)
、正看護婦(Registered Nurse: 47.9%)、准看護婦(Enrolled
Nurse:39.7%)。
【8】
HIV 検査結果の再検査
ガイドラインでは、全ての HIV 検査陽性ケースについて、別の HIV 簡易迅速検査によ
って再検査されることが推奨されている。現状調査によると、調査対象となった VCT
サイトの 30.1%が同じ施設で再検査を実施している一方で、50.7%のサイトでは再検査
のために外部の地区病院(District Hospital)を利用している。その他の VCT サイト
では、KEMRI、KNH、及びナイロビ病院を利用している。
【9】
品質保証と品質コントロール
ガイドラインは、VCT サイトや地区病院で検査されたもののうち 3%から 5%の検査サン
プルを、品質コントロールのために県病院(Provincial Hospital)へ送ることを奨励
している。現状調査によると、52.1%の VCT サイトは、品質コントロールに関するガイ
ドラインを所持し、このガイドラインを遵守している。
【10】
HIV テスト・キット
ガイドラインでは、HIV 簡易迅速検査はできれば全血を用いた、30 分以内で結果が判
明するものを奨励している。また政府が認可する検査キットとは、使いやすく、電気
を必要としない、全血を使用するものでなくてはならない。現状調査によると、半数
以上の VCT サイトがこのきまりを遵守している。また、ガイドラインには、HIV 検査は
4-77
臨床検査技師から訓練を受けたカウンセラー又は看護婦により実施されるべき、と記
述されている。現状調査によると 55.2%の VCT サイトがこの基準を認識し、これを遵守
して検査を実施している。
【11】
その他
① 結婚前カウンセリング
ガイドラインは、結婚前のカウンセリングを奨励しているが、強制ではなく、自主的
選択によらなければならないとしている。現状調査によると、VCT サイトのうち 65.8%
が、「結婚前カウンセリングは利用者が VCT サイトを利用する主な理由のひとつであ
る」と回答している。
② 青少年カウンセリング
VCT サイトは、青少年の利用者に対して、フレンドリーで、理解ある態度をとることが
重要であるとされている。また、VCT サイトは、学校やコミュニティなどと連携を取り、
アウトリーチプログラムを実施して、青少年に対し HIV/AIDS と VCT サイトについての
啓発活動を展開することが奨励されている。現状調査によると、79.5%の VCT サイトに
おいて、青少年が主な利用者であると回答している。
③ 家族計画サービス
VCT ガイドラインの中で、家族計画に関する基本的情報は、母子感染の危険性とともに、
VCT カウンセリングの中に含まれるべきものとされている。また、コンドーム等の避妊
具も、感染予防と避妊という二つの目的から VCT サイトで配布されるべきとされてい
る。現状調査によると、VCT サイトのうち、69.9%がコンドームを配布していることが
明らかになっている。
4.3.1.2
VCT ガイドラインに関わる今後の課題
ケニアでは 2001 年に VCT ガイドラインが策定され、これを受けて各 VCT サイトも、よ
り質の高い VCT サービスを実施するべく努力していることがこのケーススタディから
理解できる。しかしながら、資金等の不足から、患者に対する守秘義務や匿名性確保
が不十分であったり、HIV/AIDS や VCT サービスについての教育資材が不十分であるな
ど、まだまだ改善されるべき点が多いことも明らかになっている。今後援助国として
VCT 活動を支援していく際、このようなガイドラインと実情とのギャップに焦点を当て
た支援が実施されることが望まれる。
4-78
4.3.2
ケース分析2: VCT サイト設立に必要なリソース
VCT サイト設立に最低限必要なリソースの実際の配備状況について、ケース分析1と同
様、ケニア全国 73 ヶ所の VCT サイトを対象に行った現状調査2「ケニアにおける輸血シ
ステム:VCT サービス(Blood Transfusion System in Kenya:Part II Voluntary
Counseling and Testing)」
(以降、「現状調査」として表記する)をケースとして取り
上げ検討した。
4.3.2.1
施設、機材、消耗材
【1】
施設
現状調査の結果、VCT サービス提供に最低限必要な施設として一般的に挙げられるもの
の設置状況は以下表 4-40 のとおりであった。このような結果から、一部の VCT サイト
では、カウンセリング室が、他の機能(受付エリア、検査室等)も果たしていること
が推察できる。
表4-40: ケニアの73ヶ所VCTサイトにおける基本的施設設置状況
VCT サービス提供のための基本施設
受付エリア
カウンセリング室
検査室
ラボ・ユニット
スタッフ・オフィス
倉庫
記録書類保管室
【2】
設置状況
61.4%
91.1%
48.1%
52.8%
35.2%
41.2%
44.2%
機材
現状調査の結果、VCT サービス提供に最低限必要な機材として一般的に挙げられるもの
の配備状況は以下表 4-41 のとおりであった。この結果から、基本的機材をおおよそ配
備しているのは、全体の 50%以下であることが推察される。
表4-41: ケニアの73ヶ所VCTサイトにおける基本的機材配備状況
VCT サービス提供のための基本的機材
冷蔵庫
Elisa machine
熱量計(Calorimeter)
分光計(Spectrometer)
Kahn Shakers
血圧測定器
配備状況
50.0%
35.3%
40.0%
31.0%
35.5%
44.1%
ALMACO Management Consultants, Blood Transfusion System in Kenya “A Study by JICA in collaboration
with the Ministry of Health,” Kenya, January, 200.
2
4-79
【3】
消耗材
現状調査の結果、VCT サービス提供に最低限必要な消耗財として一般的に挙げられるも
のの常備状況は以下表 4-42 のとおりであった。以下表から、HIV 検査キットと注射針
及び注射器を常備している VCT サイトが半数に満たない状況にあることがわかる。こ
れら検査のために必要な消耗材なしに、VCT サービスは成り立たたないため、継続的供
給のための早急な対策が必要とされている。なお、消耗品の継続的供給については、
「4.3.3 ケース分析3:VCT サイトにおける消耗材の供給」においてさらに深く検討す
る。
表4-42: ケニアの73ヶ所VCTサイトにおける基本的消耗材配備状況
VCT サービス提供のための基本的消耗材
HIV 検査キット
注射器と注射針
コンドーム
4.3.2.2
人材
【1】
スタッフ配置状況
常備している
47.4%
43.6%
70.0%
常備状況
時々ない
32.0%
39.7%
16.2%
ない
21.1%
20.5%
13.5%
VCT サービス提供には、マルチ・セクトラルなスタッフが必要とされる。このチームに
は、マネージャー、カウンセラー、検査技師、受付担当、ボランティア、及び可能な
らば HIV/AIDS と共に生きている人々が含まれていることが望ましい。現状調査結果に
よると、各スタッフの配置状況は以下表 4-43 のとおりである。なお、この結果は、施
設の数でなく、スタッフの実数でしか出ていないため、これらスタッフを抱える施設
が全体の何%あるのかという実態については不明である。
表4-43: ケニアの73ヶ所VCTサイトにおける基本的人材配置状況
VCT サービス提供のためのスタッフ
配置数(実数)
Medical Officers
48
Clinical Officers
23
保健士(Community Nurses)
72
正看護士(Registered Nurses)
59
准看護士(Enrolled Nurses)
75
臨床検査技師(Laboratory Technologists)
48
検査技師(Laboratory Technicians)
18
カウンセラー(Counsellors)
76
【2】
スタッフトレーニング
ケニアにおいて、VCT に関わる人材トレーニングのガイドライン策定は現在ドラフト段
階にある。これまでのところ、以下のようなトレーニングが実施されている。
・Liverpool プロジェクトにより 50 名以上の VCT カウンセラーを対象とした 3 週
間のトレーニングが実施された。
4-80
・CDC により、100 名以上の VCT カウンセラーを対象とした一週間のトレーニング
が実施された。
・60 名のカウンセラーと検査技師が全血を使用した簡易迅速検査実施に関するト
レーニングを受けた。
4.3.2.3
情報システム
【1】
ガイドラインによる VCT 情報システムの主な規定
ケニアにおける VCT ガイドラインによると、VCT サービスにおけるインフォメーショ
ン・システムの主な規定は以下のようになっている。
表4-44: ケニアVCTガイドラインによるVCT情報システムに関する主な規定
項
目
データ収集システム
データ収集のツール
データ記録
コード化
記録の保存
データ入力
データ送付
データ分析と報告
トレーニング
【2】
規
定
保健省による既存の保健情報システムに準じる。
政府系、ミッション系、及び民間を問わず、VCT に関するデータは
全て同じフォームにより行われる。
カウンセラーが VCT フォームを記入(複写)する。
VCT 利用者の実名は VCT フォームに記入せず、代りにコードを用い
る。コードは NASCOP から入手可能である。
VCT フ ォ ー ム に 記 入 さ れ た デ ー タ は 、 地 区 保 健 情 報 オ フ ィ ス
(District Health Information Office)に提出される。フォーム
のオリジナルは VCT サイトで保存する。
データ入力は、地区保健情報オフィスにより実施される。VCT サイ
トでコンピューターを所有している場合は、サイトによりデータ入
力が行われる。VCT サイトから地区保健情報オフィスへのデータ提
出は、毎週行われることが望ましい。
地区保健情報オフィスでは、VCT サービス月報サマリーを作成し、
保健省 NASCOP/ACU へオリジナルを提出する。地区保健情報オフィ
スでまとめられたデータは、県保健情報オフィスへも転送されるこ
とが望ましい。
VCT データは、VCT の需要と利用を理解し、よりよい VCT サービス
提供のために利用される。データは、VCT サイト、地区保健情報オ
フィス、県保健情報オフィス、保健省 NASCOP/ACU、及び NACC の各
レベルでまとめられる。国レベルでまとめられたデータは、それぞ
れのレベルにフィードバックされ、公開される。
VCT 記録に関わるスタッフ(カウンセラー、医療記録官、及び検査
技師)は、データ記録に関するトレーニングを保健省により受ける。
VCT 情報システムの実施状況
現状調査によると、VCT 情報システム実施の現状は、まだ多くの改善を要すると言える。
ガイドラインが規定するような VCT 情報システムについて認識しその規定に沿ってい
る VCT サイトが 50%程度であること、また調査対象となった 73VCT サイトのうち、過
去一年間の利用者数に関する情報を提示できたのは、わずか 20 サイトであったという
現状調査結果からも、現実の VCT 情報システムはまだ徹底されていないことがわかる。
4.3.2.4
資金
VCT サービス提供には、当然資金が必要である。施設の設立・維持・管理、資機材の購
入・維持・管理、スタッフの給与やトレーニング、及びアウトリーチ等のために、十
4-81
分な資金が必要となる。ケニアの VCT ガイドラインでは、VCT サイト利用者に対して、
支払い可能な費用をチャージすることが奨励されている。経済的に困窮している利用
者については、費用を減額あるいは免除することとしている。現在、いずれの VCT サ
イトにおいても、利用者による支払いだけでサイトを自主運営することは困難な財政
状況にある。現状調査対象となった 73VCT サイトのうち、53.4%がケニア政府により、
16.4%が NGO により、6.8%がドナーにより財政支援を受けている。
4.3.2.5
VCT サイト設立に必要なリソースについての課題
調査対象となった VCT サイトの多くは、施設・資機材や人材といったリソースの面で、
まだ十分な状態にない。我が国が VCT 活動支援を実施する際には、これら必要なリソ
ースのうち、優先順位の高いものから順次支援を実施していく必要がある。また、VCT
活動の情報システムについては、まだほとんど機能していない状態にあり、将来より
よい VCT 活動を実施していくために、早急な対策が必要とされる。
4-82
4.3.3
ケース分析3: VCT プログラムにおける必要消耗品の供給
4.2 のザンビアのケースや、4.3.2 のケニアのケース等から、HIV 検査キット等の VCT
サイトにおいて必須な消耗材が安定して供給されていない現状が明らかとなった。
HIV/AIDS 分野に限らず、必要消耗品の安定供給に関する問題は、途上国保健医療セク
ターにおいて、以前から重要な問題として指摘されてきた。その典型的な例が必須医
薬品である。途上国において我が国を含む多くのドナーが保健医療従事者能力向上の
ために多くの投資をしてきたが、ドナー支援によりせっかく能力が向上した保健医療
従事者の手元に、日々の業務に必要な医薬品が安定して供給されないために、結局適
切な保健サービスが提供できない、という例は枚挙にいとまがない。それにも関わら
ず、医薬品を含む消耗品の安定供給に関しては、
「途上国側の内部的問題であり、外部
者は手を出せない」と半ばあきらめられてきた。しかしながら、近年では、主として
欧米のドナーや NGO を中心に、この医薬品をはじめとする保健サービス提供に必要な
消耗品安定供給(Commodity Management)の課題に対し、システマティックな取り組
みが行われてきている。この必要消耗品の安定供給という課題に取り組むことなしに、
VCT サービスの成功は成し得ないと言える。
Box 11 : VCT サイトで必要とされる資機材・消耗品など
日本語
HIV 検査キット
英語
HIV test kits
Automated analyzers, such as enzyme linked
ELIZA テストのための分析機器
immunoassay (ELISA) readers
ELIZA テストのための試薬や標準品(適切 Reagents and controls for ELISA testing, if
な品質保証ストラテジー存在時)
appropriate to the Quality Assurance strategy
遠心分離機
Centrifuges
冷蔵庫
Refrigerators
試験管ラック
Test tube racks
タイマー
Timers
消耗品(ピペット、ピペットチップ、検体 Consumables, such as pipettes, pipette tips and
用試験管)
specimen tubes
検査サンプル採取のための用具(外科刀、 Supplies to collect specimens, such as lancets,
針、注射器、プラスター)
needles, syringes and plasters
医療用手袋
Disposable gloves
消毒用消耗品
Disinfectants and cleaning supplies
注射針やメス刃など鋭利な医療用廃棄物処
Sharps disposal bins for needles and lancet
理箱
Waste disposal (biohazard) bags for blood
非鋭利な血液付着医療用廃棄物処理袋(ガ
contaminated non-sharps, such as gauze, swabs,
ーゼ、綿棒、手袋、試験カードなど)
gloves and testing cards
Male and female condoms and water-based
男性用・女性用コンドームと水性潤滑油
lubricants
ティッシュ
Tissues
安全な飲み水とコップ
Safe drinking water and cups
TV/video equipment and Health Education
テレビ・ビデオ装置と教育用ビデオ
Videos
HIV/AIDS についての情報パンフレット
Information leaflets
4-83
4.3.3.1
必要消耗品の不安定な供給が VCT サービスに及ぼす重大な影響
必要消耗品の安定供給は、VCT サービス提供のための最も重要な要素の一つである。こ
の安定供給が実現されないと、以下のようなネガティブな影響を引き起こす。
【1】
利用者のモチベーションを低下させる
利用者が VCT サービスについて、
「HIV 感染予防とケア・サポートの入り口であり、そ
こには必要な HIV 検査キットや薬があって利用者がアクセスすることができる」と理
解し、また信頼していると、より積極的に VCT サービスを利用する。しかし、HIV/AIDS
に対する偏見と恐れを乗り越えて、意を決して初めて VCT サイトを訪問した利用者、
あるいは遠方から相当の時間とお金を使って訪問した利用者に対し、それを迎える VCT
サイトに VCT 検査キットや、採血のための注射針や注射器が品切れであった場合、利
用者はまた別の日に出直すか、あるいは別のクリニックに行かなければならない。最
悪の場合、落胆した利用者はもう二度と VCT サイトを利用しなくなる。このような状
況が続けば、悪い評判が広まり、せっかくそこにトレーニングを受けたスタッフがい
ても、結局 VCT サイトは利用されなくなってしまう。
【2】
保健医療サービス従事者のモチベーションを低下させる
VCT サイトでのサービス提供に必要な消耗品が安定供給されない場合、保健医療スタッ
フの利用者に対する態度とサービスも悪影響を受ける。HIV 検査キットなどが無いため
にサービスが提供できず、利用者に対して「また今度来て欲しい」と何度も告げなけ
ればならないようであると、スタッフのモチベーションは下がる。あるいはスタッフ
の安全を守るための医療用手袋が品切れであるような場合、スタッフは HIV 感染に対
して恐怖心を抱き、これが利用者に対する差別的態度を生みかねない。
VCT カウンセラーが HIV 感染者に対するケアとサポートについて紹介する時、例えば日
和見感染症予防のケアなどの場合、カウンセラーが紹介するケアやサービスを提供す
る場に感染症予防薬が常備されていなければ、カウンセラーは自信を持って HIV 感染
者を紹介できず、このような事態が続くとカウンセラーのモチベーションと熱意に悪
影響を及ぼす。
4.3.3.2
必要消耗品安定供給システム
保健セクターにおける医薬品等の必要消耗品の安定供給は次項図 4-6 のような枠組み
が確立されることで、適切な実施が可能となる。ここでは、ザンビアにおけるケース
を例に取り上げ、消耗品安定供給に関わる現状と課題について概観する。
4-84
図4-6: 医薬品とその他保健サービスに必要な消耗品の安定供給システム3
【1】 選
【5】 使
定
用
【2】 必要量予測
VCT プログラム
必須消耗品の
安定供給システム
【4】 配
給
【3】 調
【1】
達
選定
VCT プログラムを計画運営する者は、最初に、VCT プログラムの中でどのようなサービ
スを提供し、そのためにどのような消耗品が必要となるのか見極めなければならない。
また、VCT サイトにおいて HIV 検査を実施する場合は、国レベルで検査のためのガイド
ラインが存在し、また試薬や必須医薬品に関する最新の情報を持っていることが重要
となる。そのような規定と現場の VCT プログラムのニーズに基づき、検査キットなど
の必要消耗品の選定を行わなければならない。
たとえば、HIV 検査キットの選定の際には、各国のリファレンスラボが検査キットの精
度や簡便さなどについて評価を行い、その結果に基づいた決定がなされることが望ま
しい。その国の HIV タイプ/サブタイプや実際に検査が実施される環境に適した検査キ
ットを調達することは検査の質を保つためにも重要である。評価が行われていない場
合、WHO の行った評価結果4を参考にすることが勧められる。また、評価を自国で実施
するための技術的、財政的支援も必要となる。その場合、WHO と UNAIDS が発行してい
る検査キット評価のガイドライン5は参考になる。また、援助機関が検査キットを供与
するなどの支援を行う際に、検査キット調達にあたってドナー側の国益に関する主張
が優先されることがないよう、またキットが供与先の国のガイドラインと一致してい
ることを確認する必要がある。
3
Helena Walkowiak & Michael Gabra, Commodity Management in VCT programs, December 2002, USAID, MSH,
and FHI を参考にした
4
UNAIDS と WHO が”Operational Characteristics of Commercially Available Assays to Determine Antibodies
HIV-1 and/or HIV-2 in Human Sera”という題のレポートをシリーズで出しており、そのいくつかは WHO の Web
よりダウンロードできる。
5
UNAIDS and WHO. Guidelines for Organizing National External Quality Assessment Schemes for HIV
Serological Testing, January 1996.
4-85
表4-45: HIV検査方法決定の際検討すべき要因6
・
・
・
・
・
・
・
HIV 感染率
検査施設の設備状況
利用者の流れ
電気と冷蔵庫の整備状況
VCT サービス実施状況(同日結果渡し VS. 後日結果渡し)
費用
使用される環境における検査キットの有効性・適性
Box 12 : HIV 検査キットの選定
ザンビアでは、2000 年の時点において、ドナーや保健医療施設間での調整不足により、
6つの異なった HIV 検査キットが使われていた。そのうちいくつかのドナー供与による
検査キットの中には、ザンビアの国家 HIV 検査実施ガイドラインに含まれていないもの
があったり、また実際にキットが使用される現場の状況に適していない検査キットなどが
あった。このため、徹底した文献レビューと、検査キットの利用者や地域の検査技師との
間で検討を重ねた結果、HIV 検査実施ガイドラインが整備され、ザンビア国中でこのガイ
ドラインが徹底された。
【2】
必要量予測
VCT サイトにおける必要消耗品が決定された後は、必要な量を予測するステップへと進
む。必要量を予測する手法は、過去に実際に消費された量に基づいて予測計算される
手法(Consumption/usage method)と、予想される利用者数や疾病の罹患状況に基づ
いて予測計算される手法(Morbidity method)、及び他の保健医療施設におけるデータ
を参考に予測計算する手法(Adjusted consumption/adjusted usage method)などが
ある。これらの予測計算方法を2つ以上組み合わせて、必要量を予測することが望ま
しいとされている。また、これら必要量予測を可能にするには、スタッフに適切なト
レーニングを行い、実際の使用量に関するデータが適切な形で記録保存されるような
情報システムを確立することが重要である。
Box 13 : HIV 検査キットの必要量予測
ザンビアにおいて新たに設立された VCT センターは、必要量を予測する記録が何も存在
しない中で、ザンビア VCT センターのサービス内容と、対象地域の人口及び疫学データ
に基づいて必要量予測を行った。各 VCT センターでの必要消耗品の管理に関わる情報シ
ステムは、今後も継続的に強化されていく必要がある。必要量予測をより正確なものにす
るための訓練が、現在進行している。
必要量予測に関する現在の課題は、消耗品配給システムが変わったことに適応していくこ
とである。これまでザンビア VCT センターが、各 VCT サイトから請求があった時点で求
められる数量の HIV 検査キットを配給してきたため、必要量予測もこのシステムに基づ
いて行われてきた。しかし最近、VCT 消耗品の配給が VCT センターの手から離れ、保健
省による四半期に一回の医薬品配給システムと統合されたため、必要量予測も四半期に一
度の配給のタイミングを考慮して実施しなればならなくなった。VCT 消耗品の配給シス
テムが既存の医薬品配給システムへと統合されたことは良いことであるが、それに伴う新
たな必要量予測技術のトレーニングが、各 VCT サイトで必要とされている。
6
Ibid.
4-86
【3】
調達
消耗品調達に際しては、信用ある供給業者から調達すべきであることは言うまでもな
い。また、競争入札導入によって価格を下げることで、経費節約を心がけることも重
要である。HIV 検査キットのように製造されてから品質保証期限が来るまでの期間が短
い製品の場合は、それを十分考慮して余裕を持った調達スケジュールが立てられなけ
ればならない。
ドナーによる HIV 検査キット等の VCT プログラム用消耗品の供与は、資金の乏しいプ
ログラムにとって大きな助けとなる。しかし、このような供与が、適切なコントロー
ルのもとに実施されなかった場合、あるいはドナーが被援助国やプログラムのニーズ
を的確に把握しなかった場合、予想しなかった負の影響をもたらすこともある。例え
ば、多くの HIV 検査キットの品質保証期限は短いため、供与が正確なニーズに基づい
て実施されなかった場合には、VCT サイトは期限切れの大量の検査キットを抱えてその
処理に業務時間の多くを割かなければならないような事態になってしまうこともある。
また、HIV 検査キットを供与するドナー側の調達ルールが、被援助国の現場のニーズや
能力に合致せず、問題を生んでしまうような事例も報告されている。例えばドナー機
関が検査キットを直接調達して被援助国に供与する場合、必要量予測や供与時期を年
間幾度かに分割することができず、一年間の必要量を一度に調達・供与せざるを得な
いような場合である。このような時、先にも述べたように、限られた被援助国の保管・
配送能力では、同時期に品質保証期限が切れる大量の検査キットを迅速に対処できず、
現場の VCT サイトに配給された時点では期限切れが間近に迫って無駄になってしまう
か、中央倉庫で保管中に期限切れをむかえ、廃棄せざるを得ないといった事態が発生
する。以下表 4-46 は、ドナーによる消耗品供与によって引き起こされる、被援助側の
コスト負担増加問題の典型的な例である。
表4-46: ドナーのVCT消耗品供与が被援助側に大きなコスト負担を強いる例7
7
・
供与された医薬品や消耗品を国家調整機関に科される登録料
・
関税
・
保管と配給のコスト
・
現地語にラベルを張り替えるコスト
・
新しい供与品の使用についてスタッフを再トレーニングすることにかかるコスト
・
供与品を使用するために必要な、高価な試薬や資材を購入するコスト
・
期限切れや過重な量の供与品を処理するためのコスト
・
修理やメンテナンスが困難な供与品
Ibid.
4-87
【4】
配給
VCT プログラム消耗品の適切な在庫管理は、安定供給の実現に欠かせない要素である。
倉庫における製品の品質管理や台帳の記録など、整備されるべき課題は多い。また、
VCT プログラムのための消耗品を保管・配送するコストは大きく、これをいかに負担す
るかということも重要な課題である。対策としては、保健省などがすでに確立してい
る既存の配給システムを利用したり、民間企業の物流システムに委託するなどのオプ
ションがある。ドナーによる供与の場合も、ドナーによるサポートがいずれ終了する
ことを見込んで、可能な限り既存の配給・物流システムを利用することが望まれる。
Box 14 : HIV 検査キットの配給システム
ザンビア VCT センターは、ザンビアにおける VCT 消耗品の配給を保健省より委託されて
いたが、ザンビア VCT センターに配送のための運搬手段がないことから、実際には地方
の各 VCT サイトのマネージャーが、必要な消耗品を自分で取りに行かなければならない
状況にあった。このような状況を改善するために、ザンビアでは、VCT 消耗品のロジス
ティクスを、国家の「医薬品と消耗品供給システム」の中に統合させることが提案された。
その結果、保健省の医薬品や消耗品などを一括委託しているメディカルストア有限会社
(Medical Store Limited)による配給システムに統合することになった。しかし、この変更
が、地方の VCT センターに的確に伝わっていなかったため、現場では誰に供給依頼をし
て誰からキットを受け取り、誰に結果を報告すればよいかという基本的な事項に関する混
乱が発生した。
【5】
使用
選定、必要量予測、調達、配給という過程を経て、各 VCT サイトに必要消耗品が届け
られ、実際に使用される。この場合、例えば HIV 検査キットでは、正しい検査のアル
ゴリズムについてのガイドラインが全ての VCT サイトに存在して、これに沿った検査
が実施されていること、また VCT サービスに必要なその他の医薬品や消耗品の正しい
処方・使用法についてのガイドラインが現場に存在し、それがスタッフと利用者の間
で徹底されていることなどが非常に重要な前提条件となる。なぜならば、現場で使用
された消耗品のデータは、消耗品の安定供給サイクルの中で、新たな消耗品選択、及
び必要量予測へと反映されるからである。それゆえ、現場において、HIV 検査キットや
関連医薬品・その他消耗品が適切に使用されないと、将来の適切な消耗品選択及び必
要量予測にネガティブな影響を及ぼす。
4.3.3.3
VCT プログラムにおける必要消耗品の安定供給に関するドナーの課題
以上、消耗品安定供給システムにおける「選択」「必要量予測」「調達」
「配給」
「使用」
という、5つの重要な要素について概観した。最後に、VCT プログラムに必要な消耗品
の安定供給に関するドナーの役割についての課題を簡単に述べる。
4-88
【1】
課題1: 消耗品安定供給に対する支援
これまで我が国は、医薬品を含む消耗品の安定供給に関して、「途上国側の内部的問題
であり、外部者は手を出せない」と理解し、積極的な介入を躊躇してきた。しかしな
がら、VCT プログラムにおいて、HIV 検査キットなどの消耗品なしにサービスを成立さ
せることは不可能である。今後は欧米のドナーや NGO の経験から、消耗品安定供給の
方法論を積極的に学び、我が国としても、消耗品マネージメントに対し、財政的、技
術的サポートの確立に向けた支援を行うべき時にきているといえる。
【2】
課題2: VCT プログラムのガイドラインに対する支援
VCT プログラムの必須消耗品の安定供給にはガイドラインが存在し、これが遵守される
ことが基本的条件となる。しかしながら、HIV 感染率の高い国々において、まだガイド
ラインが存在しない国もあり、また存在しても遵守されていなかったり、あるいは資
金不足のためにすべての VCT サイトで必要とされる部数が印刷できない等の問題が存
在している。このような問題に対しても、ドナーとして積極的にサポートしていく必
要がある。
【3】
課題3: VCT プログラム用消耗品の適正供与
ドナーが HIV 検査キットなどの消耗品を供与する場合、被援助国のガイドラインと調
和しているかどうか十分検討する必要がある。またドナーは、消耗品供与の際、発生
しうる被援助国側のコスト負担についても配慮し、供与が逆に被援助国を苦しめるよ
うな負の結果を招かないよう、十分な事前の検討を行うべきである。
【4】
課題4: 既存の供給システムの利用
ドナーは、VCT プログラム消耗品の配給に関して、可能な限り既存の配給・物流システ
ムを利用すべきである。もし短期的にドナー独自の配給システムを確立した場合でも、
最終的にはそれが既存の供給システムに統合されるような働きかけをするべきである。
4-89
4.3.4
ケース分析4: VCT サイト利用状況
VCT プログラムを策定し、VCT サイトを設置し、必要な設備を整え、検査に必要な資材
が継続的に配給される体制を整えても、サイトが活発に利用されるとは限らない。こ
こでは、ザンビアのケースを取り上げ、VCT サイトがより効果的に利用される要因につ
いて分析する。
4.3.4.1
VCT のプロモーションを含む広報教育活動と VCT サイト利用状況の関係
以下図 4-7 は、Society for Family Health (SFH)が 2002 年 3 月より開始した New
Start というプロジェクトにおける VCT 利用者数の推移を月ごとに示している。
図4-7: SFHのNew Startプロジェクトにおける利用者数の推移
1200
利用者数
1000
800
カウンセリング
のみ
検査実績
600
400
200
0
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
2002年
ここからは、始めて間もない時期にもかかわらず、1 ヶ月の利用者数が 900 を超えてい
る月がほとんどである。ただし、全ての利用者が検査を受けているわけではなく、検
査前カウンセリングを受けても検査を受けずに帰る人もいる。カウンセリングのみの
利用者数は検査実績と分けて表示してある。New Start では、ソーシャル・マーケティ
ング手法を用い、有料 VCT サービスを提供している。1 回の VCT サービスが 1,000 クワ
チャ(約 30 円)である8。VCT サイトはルサカ市の中心街にあるショップライトという
大規模なスーパーマーケットに隣接した建物の 2 階にある。外からの入り口には、昇
る朝日をデザインした大変象徴的で明るいイメージのロゴ(写真参照)があり、入り
8
HIV 迅速検査キット一回分は、ブランドによって異なり、約 1.5∼4 米ドルである。仮に 4 ドルとすると、キ
ットの値段の 1/16 ぐらいしか回収できないことになる。当然カウンセラーの人件費や広告費、その他間接費
などもかかっているので、1,000 クワチャではビジネスとしては成り立たない。これはあくまでソーシャル・
マーケティングであるので、商業的マーケティングの手法を使いつつも価格は低く押さえ、人々にサービスを
利用してもらうことに主眼が置かれている。ちなみに、ここで使っている HIV 迅速検査キットは自主調達した
もので、JICA の支援物資ではない。
4-90
口が分かりやすいようにしてある。テレビやラジオなどのマスメディアで頻繁に広告
を流し、VCT の意義と New Start VCT サイトの存在をアピールしている。広告のメッセ
ージは 20 代の若者たちを意識した内容になっている。検査は匿名で実施しており、基
本的にコード番号を使い検査結果を照合するが、番号をなくしてしまう人のために仮
名(自分が覚え易ければ本人の自由としている)を記録しておく。カウンセラーは 12
名専属で 8∼16 時と 11∼19 時の 2 シフト体制を組みながら配置し、VCT サービスに特
化したサイトとなっている。また、検査を受けた人なら誰でも加入できるポスト・テ
スト・クラブ(PTC)を組織し(ただし、実質は感染者がほとんど)、土曜日の午後は
クラブメンバーにサイトを開放している。ここでフォローアップカウンセリングを行
ったり、メンバー同士の交流・情報交換の場としている。カウンセリングの質の管理
には注意を払っており、カウンセラーのバーンアウトを防ぐための勉強会を定期的に
行っているだけでなく、クライエントへのアンケート調査やミステリー・クライアン
ト(あらかじめ調査項目を知らせた調査のための利用者をカウンセリングに送り込む
という手法)を行ったりしている。
一方、以下図 4-8
は同じくルサカ市内にある Planned Parenthood Association of
Zambia (PPAZ)の Reproductive Health (RH) Centre における検査実績9の推移である。
図4-8: PPAZのルサカ・リプロダクティブヘルス・センターにおける検査実績の推移
100
検査実績
80
60
40
20
0
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
2001年∼2002年
このサイトはもともとリプロダクティブ・ヘルスの総合的なサービスを売り物にして
いる。サイトは閑静なホテル街の一角にあり、塀で囲まれた比較的広い敷地の中に位
置している。検査室も整っており、各種性感染症の検査や妊娠検査もここで実施でき
る。VCT については、訓練された医療スタッフがカウンセリングを行い、検査は外注し
てきていたが、2001 年 9 月より JICA の支援によって、HIV 簡易迅速検査を施設内で実
施できるようになり、無料で VCT サービスを提供している。ここでの検査は匿名では
9
ここでは、VCT 利用者数ではなく HIV 抗体検査実施数を示している。
4-91
なく、クライエントは検査前カウンセリングを受ける時に名前を言う必要がある。た
だし、専用のカウンセリング室を使っており、採血した血液はコード番号のみをつけ
られ検査室に回されるため、個人情報はカウンセリング室の外に出ることはない10。
このサイトを拠点として思春期リプロダクティブ・ヘルス推進活動が行われ、若者に
対するピア・エデュケーションやアウトリーチ活動が活発に展開されている。水曜日
と土曜日の午前は若者の時間として特定されており、若者に対するリプロダクティ
ブ・ヘルス・サービスが提供されたり、ピアによるセッションが行われたりしている。
その一環として、時折 VCT をテーマにしたディスカッションが行われてはいるが、VCT
のプロモーション活動を特別行っているわけではない。VCT サービスの存在も、外部か
らはほとんど分からない。また、結果が陽性と出たクライエントに対するケアサポー
ト体制またはリファーラル体制も整っていない。
両サイトとも同じようにトレーニングを受けたカウンセラーと検査技師が配置されて
いても、利用者数の違いは歴然としている。両者の VCT を比較したのが表 4-47 である。
New Start は広告代理店を使ってマーケティングを行っており、都会の雑踏をうまく利
用しながら、クライエントのニーズにうまく応えている。ただし、この方法は他の立
地条件では成立しにくいと考えられる。またカウンセリングの質の管理にも気を配り、
カウンセラーのための勉強会を定期的に行ったり、出口調査やミステリー・クライエ
ントを送り込んでの調査などを行ってサービス向上に役立てている。
表4-47: SFHとPPAZのVCTサービスの比較
SFH(New Start)
VCT サービスの位置付け
VCT サービス専門
カウンセラー
ルサカ市中心街スーパーマー
ケットに隣接
テレビ、ラジオなどのマスメデ
ィアを通しての積極的に広告
宣伝
カウンセリング・検査こみで
1,000 クワチャ(約 30 円)
Determine と Uni-Gold
Genie II
カウンセリング専属
個人情報機密保持
匿名カウンセリング匿名検査
VCT 後のケアサポート
医療ケアはなし。心理的ケアの
提供とポスト・テスト・クラブ
の活動。
立地条件
プロモーション活動
サービス料金
簡易迅速検査キット種類と順序
10
PPAZ
リプロダクティブ・ヘルス・
サービスの一環
閑静なホテル街
思春期リプロダクティブ・ヘ
ルス教育の一部として時折デ
ィスカッション
無料
Determine
Genie II または Bionor
カウンセリングも仕事の一部
カウンセラーに対してのみ個
人情報伝達
特になし。
ザンビアではこれと同じ方式を取っているところがほとんどで、Confidential Test と称している。カウン
セラーには当然ながら個人情報の守秘義務がある。VCT サービスは無料であるところが多く、SFH のように有
料で Anonymous Test(匿名検査)を実施しているところは他にはない。
4-92
4.3.4.2
VCT 後のアフタケア活動と VCT サイト利用状況の関係
図 4-9 は、ルサカ市郊外の政府のクリニックであるチパタ・クリニック(Chipata
Clinic)における検査実績を月ごとに表したものである。
図4-9: チパタ・クリニックにおける検査実績の推移
140
120
(+) cases
(-) cases
検査実績
100
80
60
40
20
0
9月 10月 11月 12月 1月 2月
2001年∼2002年
3月
4月
5月
2002 年 1 月∼2 月にかけての検査実績数急増に注目していただきたい。実は、2001 年
12 月中旬から Network for Zambian People Living with HIV/AIDS (NZP+)11という
NGO がクリニックを拠点とした活動を開始した。NZP+は、PLWHA が組織する NGO で、チ
パタ・クリニックを活動拠点とした PTC が組織された。カミングアウトしている人々
が中心となり、クリニックやコミュニティで自分たちの経験談を含む健康教育活動を
始め、また、近隣地域に対する戸別訪問活動も開始した。その直後の月から検査実績
数が急増している。
この増加傾向は NZP+の活動の行われていない他のルサカ市近郊の政府クリニックであ
るチェルストン・クリニック(Chelston Clinic)には見られない(図 4-10)。ただし、
チェルストンにおける VCT サービスは 2002 年 4 月に開始されたばかりであり、
チパタ・
クリニックで見られた急増期での比較はできない。
11
NZP+は 1,000 人以上の会員数を抱える全国的組織であり、HIV/AIDS Strategic Framework 2001 - 2003 も
その働きに触れている。PLWHA の声を HIV/AIDS 関連政策やプログラムに反映させためのアドボカシーを行った
り、PLWHA の QOL 向上のため、また人権擁護のためのサポートを行ったりしている。ルサカでは Chipata Clinic
PTC と Kanyama Clinic PTC が NZP+のもと組織されている。Chipata Clinic PTC は調査時点で 75 名のメンバー
がいて、20 名ぐらいが積極的に活動に参加している。20 名の中には 25 歳以下の若者もいる。
4-93
図4-10: チェルストン・クリニックにおける検査実績の推移
140
120
検査実績
100
80
(+) cases
(-) cases
60
40
20
0
3月
4月
5月
6月
2002年
チパタとチェルストンの VCT の比較をしたのが表 4-48 である。
チパタにおいては、2001
年 12 月までの実績をみてもチェルストンよりも多いことがわかる。これは、カウンセ
リング専属スタッフの有無、Zambia AIDS Related TB(ZAMBART)というエイズ関連結
核についての活動をしている NGO の働きやその他の IEC 活動による影響、そして地理
的な影響、周辺住民の経済状況の影響などが考えられる。しかし、1 月∼2 月にかけて
の検査実績の急増は、NZP+の活動の成果であろうと考えられる。
表4-48: チパタ・クリニックとチェルストン・クリニックのVCTサービスの比較
チパタ・クリニック
VCT サービスの位置付け
立地条件
プロモーション活動
サービス料金
HIV/AIDS 関連プロジェクト
カウンセラー
個人情報機密保持
VCT 後のケアサポート
保健サービスの一部
ルサカ市郊外(中心からは遠
い)
「NZP+」所属の PLWHA によ
る健康教育活動
無料
チェルストン・クリニック
保健サービスの一部
ルサカ市中心から比較的近い
特になし
無料
母子感染予防研究プロジェク
ト(Horizon Project)
エイズ関連結核プロジェクト
(ZAMBART)
母子感染予防プロジェクト専
属カウンセラー
カウンセラーに対してのみ個
人情報開示
母子感染予防
エイズ関連結核対策
NZP+によるポスト・テスト・
クラブの活動
4-94
母子感染予防プロジェクト
他の仕事も兼務する
カウンセラーに対してのみ個
人情報開示
母子感染予防
4.3.4.3
VCT サイト利用へと人々の行動変容をするための課題
上記4つの VCT サイトのケーススタディからは、VCT サービス提供には、VCT サイトの
設置と質の高いカウンセリングと検査が大前提であるものの、それだけでは不十分で
あることが明らかになった。VCT サービスをより効果的に利用してもらうためには、以
下のような VCT プロモーションを含む広報教育活動と、VCT 後のケアサポート活動も非
常に重要である。
・
継続的で一貫した VCT プロモーション・メッセージの伝達
・
PLWHA からのメッセージおよび経験伝達などによる偏見や差別の緩和
・
PLWHA へのケアサポートの存在の明示
・
HIV 検査に来ているということが分からないような環境または雑踏
・
VCT への地理的心理的アクセスの良さ
・
個人情報が漏洩しないという確信
人々が VCT サービスを受ける行動を促進するきっかけは、コミュニティに対する
HIV/AIDS 啓発・教育活動である。これにより知識を得て、その知識を自分に関係する
ものとして受け止め、自分の感染リスクを自己評価することで、不安で相談したい人
や確認したい人が出現し、VCT サービスに結び付いていく。
自発的に VCT を受けにやってきた人に対して質の高い検査前カウンセリングを実施す
る。その人の同意を得て HIV 抗体検査を実施し、検査結果を伝えるとともに、検査後
カウンセリングを実施する。陽性という結果になった場合はサポート・ケアへとつな
げる。保健医療サポートの中には、基本的なヘルスケアや栄養についてのアドバイス、
日和見感染症の治療、在宅ケア、母子感染予防、抗ウィルス薬治療があげられる。こ
れらの保健医療サポート以外にも、社会・心理的サポート、法的サポート、経済的サ
ポート、スピリチャルサポートなどが必要であろう。これらサポート・ケアにより、
PLWHA がコミュニティの中でポジティブ・リビング(Positive Living)を目指し、彼
らの中から、カミングアウトしてコミュニティに対する啓発・教育活動を行っていく
人たちが出現し、偏見や差別が和らぎ、また、彼らの影響を受けて行動変容を起こす
人たちが出てくるという流れを構築する。
検査で陰性と出た人に対するフォローアップも重要である。彼らが元の行動に逆戻り
しないよう、予防行動を維持できるよう励ましていくようなカウンセリングおよび教
育活動が必要となる。予防行動を維持できている人たちから、コミュニティにアドボ
カシーを行い、影響を与えていく人たちが現れ、VCT 利用への流れが強化されるといえ
る。
4-95
4.4
アフリカにおける VCT 活動の課題
4 章の最後に、本調査対象となったアフリカにおける VCT 活動に関わる課題について
まとめる。
4.4.1
VCT 推進のための広報教育とアドボカシー活動に関わる課題
自己の HIV 感染の有無を確認することのメリットを理解してもらうと共に、PLWHA に
対する偏見差別を無くしていくための、VCT プログラム広報教育活動はまだ十分とは
いえない。VCT サービスは単独では成り立たず、広報教育活動によるプロモーション
と VCT 後のケア・サポート活動とがセットになって初めて本来の効果を発揮できる。
それには、現在ばらばらに行われている活動(広報教育、検査、ケアとサポート)を
調整し、組み合わせることが重要で、NGO や民間機関との連携も含めて中央、州、県
各レベルにおける調整とリーダーシップが欠かせない。また国によっては、感染の危
険に曝されるおそれの高い 18 歳以下の青少年が VCT サービスへの自由なアクセスを
阻まれるような政策が存在する場合があり、柔軟な対応が求められる。コミュニティ、
政治家、教師、両親、宗教関係者等、青少年問題に関わる主な成人グループに対して、
青少年への HIV 感染防止のための BCC 推進の重要性についての啓発活動がさらに強化
される必要がある。
4.4.2
【1】
VCT サイトにおける活動に関わる課題
VCT サービスへのアクセス改善
VCT サービスへの人々のアクセスを改善するためには、まず VCT サイトを増やす必要
がある。HIV/ AIDS の問題と戦う各国では、VCT サイトの拡充に努力しているが、ま
だその数において、十分な人口をカバーしているとはいえない。また、主要な町から
離れた農村部住民がサービスにアクセスするには、VCT アウトリーチ・サービス用車
両が不可欠であるが、これも大きく不足している。さらに、VCT サービスを必要とす
るいくつかのターゲット・グループのうち、特に青少年や性産業従事者、長距離トラ
ック運転手などの移動人口に対するアクセスも、さらに改善される必要がある。
【2】
VCT サイトの設備・消耗品の充実
VCT サイトの設備の課題としては、利用者のプライバシーを確保するためのカウンセ
リングスペースの不足、検査室スペースの不足、及び検査キット保存のための医療資
機材の不足などが挙げられた。また、HIV 検査キットの質を管理するための検査施設
がさらに拡充されると、HIV 検査結果の精度をより確実にモニターできる。
消耗品としては、検査キットと抗エイズ薬、日和見感染症対策及び性感染症対策、家
4-96
族計画などの関連サービス実施のための薬剤及び使い捨て物資の不足がある。
【3】
人材の充実
カウンセラー・VCT プログラムのマネジャーを含む VCT プログラムの策定・実施に関
わる人材の不足が課題として挙げられる。解決のためには、現地政府に対し、必要な
人材への人件費確保を優先課題とするよう働きかけ、それに必要な経費に見合う形で、
VCT における別の分野での援助を行うことを合わせて提案すべきである。NGO に対し
ては、特に成果を上げている NGO への全般的支援を強化し、NGO への継続的な資金・
技術的支援の基盤づくりとキャパシティ・ビルディングを支援する。
4.4.3
VCT 検査後のケアとサポートに関わる課題
PLWHA のニーズにあった活動を、彼らの参加を得ながら実施していくことが大切であ
る。比較的低費用で実施できる日和見感染症治療を、更にコストを下げた形又は無料
でより多くの感染者に供給できるよう、保健省及び関連 NGO 等へ支援を行うことが考
えられる。その他、日和見感染症の治療のための人材養成および薬品と消耗品の補給
とそのためのシステム強化、結核予防策強化、母子感染予防、性感染症コントロール・
プログラム、及び青少年リプロダクティブ・ヘルス・プログラムに関わる専門的カウ
ンセリングやコミュニティの啓発活動、PLWHA の組織化支援、PLWHA の人権に関わる
法律相談システム整備、所得創出活動支援を含めた PLWHA のポジティブリビング支援、
及び増加するエイズ孤児に対する支援など、総合的な取り組みに対する強化が必要で
ある。
また、現在高価である抗エイズ薬治療が少しでも PLWHA の手に届くよう、政府及び他
の主要ドナーと調整の上支援を行う必要がある。ブラジル及びインド産の低価格抗エ
イズ薬の導入や、WHO/UNAIDS を通した抗エイズ薬価格交渉に応じている製薬会社と
の提携が考えられる。
これら VCT 検査後のケアとサポートについても、持続発展性を高めるためのコストシ
ェアリングの課題が検討されるべきである。
4.4.4
VCT プログラム運営能力強化に関わる課題
【1】
VCT サービスの実態把握
VCT プログラムの歴史はまだ浅いため、VCT を実施している国々において、VCT サー
ビス提供の実態が掴めていないことが多い。ある VCT プログラムがひろがりつつある
国においては、各 VCT サイトのマッピングや、設備・機材・消耗品・人材リソースの
実態、利用者数、などの実態とニーズを把握し、国全体での VCT 活動の強化を図るこ
4-97
とが望まれる。この点において、JICA の協力によりケニアにおいて実施された、全
国 VCT サイトの現状調査 1 「ケニアにおける輸血システム:VCT サービス(Blood
Transfusion System in Kenya:Part II Voluntary Counseling and Testing)」は、
参考になる。
【2】
国家 VCT ガイドラインの制定と適用
VCT プログラムを実施する国々において、まだ VCT サービスに関するガイドラインが
存在しないところもあり、存在しても、内容的に不十分な場合などもある。サービス
を提供するにあたっての最低必要条件、検査アルゴリズム、検査キットの品質管理、
必要な消耗品の種類や適正な数量、検査キットや消耗品供給システム、クライエント
の適正年齢や親権者の同意の必要性、データ管理、カウンセリングサービスの質管理、
検査前および検査後カウンセリングで押さえておく必要のある情報、個人情報守秘義
務、関係各機関の役割分担、トレーニングの種類と内容、モニタリングおよび評価方
法など、VCT サービス全体を網羅したガイドラインの整備が急務である。
【3】
カウンセラーのマネージメント
トレーニングを受けて養成された VCT カウンセラーの数は各国で増加傾向にあるが、
そのすべての人が VCT サービス提供にかかわっているわけではない。トレーニング内
容も様々で、トレーニングを受けた人々のバックグランドや学歴も千差万別である。
VCT を拡大するに当って質の高いカウンセリングを提供していくことは前提条件で
あり、質の管理システムを確立することが急務とされている。
またこれまでのところ、各国で VCT カウンセラーとしてトレーニングを受けた人は、
公的医療機関に勤務する医療系の人たちがほとんどであるが、現在のシステムの中で
は、カウンセラーがカウンセリングのみに専従できるような体制にはなっていない。
HIV/AIDS カウンセリングは時間とエネルギーのいる仕事であり、他の多くの医療業
務を抱えながらのカウンセリングには限界があるが、スタッフを増やすだけの財政的
余裕はないので、現在の仕事を整理したり、時間外労働を検討するなどの調整が必要
となる。
VCT サイトの現場では、スタッフの不足などにより、外来患者が長蛇の列をなしてい
るといったことがしばしば見受けられる。このような現実の中で、カウンセリングを
実施する保健医療従事者の負担は相当なものとなる。財政的問題により、カウンセラ
ーの数を増やすことが困難である以上、ボランティアのカウンセラーを養成する等の
オプションも検討されなければならない。
ALMACO Management Consultants, “Blood Transfusion System in Kenya: A Study by JICA in collaboration
with the Ministry of Health” Kenya, January, 2002.
1
4-98
【4】
HIV 検査キット等消耗品の選定と安定供給
HIV 検査キットは VCT サービスのかなめとなる消耗品であり、これなしに VCT サービ
スは成り立たないが、現実には検査キットが常備されていない問題は存在する。これ
には、資金不足という問題があるのは勿論であるが、それ以外に、消耗品安定供給の
ための選択・需要予測・調達・配給・使用という一連のシステムが適切に機能してい
ないことも安定供給を妨げる結果を招いている。この改善のために、システム確立・
強化のための資金・技術援助が必要である。HIV 検査キットの選定の際には、その国
の HIV タイプ/サブタイプや環境に適した検査キットを選定することが重要である。
評価が行われていない場合、WHO の行った評価結果2を参考にすることが勧められる。
VCT サービスの消耗品の安定供給についての参考文献は非常に少ないが、その中でも
「Commodity Management in VCT programs」3が参考資料として活用できる。
【5】
モニタリング・評価システムの確立強化
VCT プログラムのニーズ把握しサービスを向上させていくためには、モニタリング・
評価システムを整えていくことが必要となる。現状では、モニタリング・評価システ
ムが確立されて機能している VCT 施設、地域、国などは少ない。現在 UNAIDS から VCT
プ ロ グ ラ ム 評 価 モ ニ タ リ ン グ の た め の 「 Tools for evaluating HIV voluntary
counseling and testing」4が出されている。モニタリング・評価システムの確立に
あたっては、できる限り既存のモニタリング・評価システムや保健情報マネージメン
トシステム(HIMS)などを利用・統合することが望ましい。
【6】
抗エイズ薬処方体制
抗レトロウィルス剤(Antiretroviral Drugs: ARVs)の登場により、HIV 感染者がエ
イズ発症を遅らせることができるようになり、これは特に先進国において、エイズに
よる死亡を低減させる効果をもたらしている。途上国においても徐々に ARVs は入手
可能になり、途上国の一部の富裕層が使用を始めている。しかしながら、途上国の大
多数の HIV 感染者にとっては、高価な ARVs には手が届かない。UNDP の報告によると、
アフリカにおいては、すべての PLWHA のうち、わずか 0.1%以下の人口が現在 ARVs に
アクセスしている報告もある。途上国の普通の人々の ARVs に対するアクセスは、当
然緊急に改善されるべきであるが、これは同時に、国家の全体的な予算にも大きく影
響を及ぼすものであるため、慎重な検討を要する。また、ARVs が、適切なガイドラ
インと患者監督システムがない中で処方されているケースが多い現実に対し、薬剤耐
性問題が懸念され、これについても早急な対策が必要とされている。
2
UNAIDS と WHO が”Operational Characteristics of Commercially Available Assays to Determine
Antibodies HIV-1 and/or HIV-2 in Human Sera”という題のレポートをシリーズで出しており、そのいくつ
かは WHO の Web よりダウンロードできる。
3
USAID, MSH, FHI, Commodity Management in VCT programs, December 2002.
4
UNAIDS, Tools for evaluating HIV voluntary counseling and testing, May 2000
4-99
4.4.5
【1】
セクター横断的な課題
若者に対する取り組み
世界の新たな HIV 感染者のうち 50%近くが 15 歳から 24 歳までの若者であるという
現実がある中、若者に対するエイズ教育は非常に重要な意味を持つ。国連によるミレ
ニアム開発目標(Millennium Development Goal: MDG)においても、「15 歳から 24
歳の若者の HIV 感染率を 2005 年までに 25%低下させる」ことが、重要な目標として
掲げられている。しかしながら、特に結婚前の若者に対して、HIV/AIDS 予防教育を
含むリプロダクティブ・ヘルスサービスや情報を提供することに対し、宗教関係者を
含む社会的な抵抗が強く、これが若者に対する取り組みの大きな障害となっている。
VCT サイトにおける若者に対するサービス提供についてみても、国によっては「16
歳以下の少年少女は、保護者または親権者が同伴し承諾しなければ HIV 検査が受けら
れない」などの規制がある。しかし現実的には、15 歳以下で性行動は開始されてお
り5、また 15 歳で母親となっている少女も多数いることから、現状に合っていないこ
とが問題視されている。年齢制限の法的根拠は、公的に結婚できる年齢であるという
点にあるようである。法的には 16 歳未満の少女と性交渉をした場合は起訴されるこ
とになる。
このように、HIV 感染が深刻な若者が、適切な VCT サービスにアクセスできるように
なるためには、保健医療セクターだけでなく、教育セクター、司法関係者、宗教関係
者等、セクターを越えた取り組みが必要とされている。
【2】
HIV/AIDS と貧困対策
HIV 感染と貧困は、特に途上国において相関関係にあるといわれている。アフリカに
おいて、HIV 感染が広まった初期には、より教育レベルが高く、経済力もある人口が、
より HIV 感染に感染するチャンスの多いグループであった。しかしながら、このグル
ープは、HIV 感染予防についての情報をいったん入手すると、行動を変容させ、ハイ
リスクな行動を控えるようになった。この結果、1990 年代に入って HIV 感染が広ま
っても、これら教育ベルが高く経済力もあるグループの感染率は逆に低下した。一方
で、教育レベルが低い貧困層は、様々な社会経済的要因により、感染予防についての
知識を入手することがより困難であったため、HIV 感染を悪化させる結果を招いた。
現在世界において、異なる社会グループごとの HIV 感染の分布は一定の傾向を示して
しており、非識字で貧しいグループ、中でも特に若く貧しい非識字の女性グループの
感染率が、最も高いと言われている6。このような事実からも、HIV/AIDS 対策には、
5
ルサカ市内において Population Service International が 1998 年に行った調査では、13 歳∼18 歳までの
就学者のうち男性 73%女性 46%、非就学者のうち男性 88%女性 82%がセックスを体験しているという結果
がでている。
6
UNDP, HIV/AIDS and poverty reduction strategies, August 2002
4-100
保健医療セクターだけでなく、セクターを越えた対策が必要とされている。
【3】
他のステークホルダーとの情報交換と調整活動
HIV/AIDS 対策の盛んな開発途上国にあっては、国内外の様々な機関・団体が多様な
分野において支援を行っている。そのような状況の中で新たな支援活動を行う場合は、
まず誰がどのような分野で誰とどのような支援活動を行っているのか、そして現在の
支援が比較的手薄で、かつ当該機関・団体に最も適した分野は何か、などの点を現実
的に判断・決定することが重要な第一歩と考えられる。具体的には、パートナーシッ
プ・フォーラム等の調整会議に積極的に、継続的に参加し、HIV/AIDS 分野に関わる
組織の活動状況について、セクターを越えて把握することが必要である。
【4】
各関連組織における役割分担の明確化
VCT プログラムは比較的新しいものであることや、国によっては政府機関からのトッ
プダウンでなく、NGO からプログラムが始まったという歴史的背景などにより、各関
連機関の役割と責任がまだ十分明確になっていない。そしてこのことが組織間での緊
張を高めている。今後 VCT プログラムが拡大されていくにつれ、セクターを越えた各
関連組織の役割を明確化し、すべての関係者が基本的に同一の認識をもって、VCT プ
ログラムに取り組むことが必要とされている。
4-101
第5章 HIV/AIDSとVCTサービス支援における日本の取り組み
5.1
アフリカにおける日本の HIV/AIDS 対策分野協力の現状分析
ここでは、調査対象国における、我が国による、VCT を含む HIV/AIDS 対策の取り組み
の現状について概観する。なお、本章の最後(p.5-14 以降)に、調査対象各国におけ
る我が国の HIV/AIDS 分野支援の実績を一覧表(日本による HIV/AIDS 支援実績一覧表)
にまとめたので、支援の細かい実績については、この一覧表を参照されたい。
5.1.1
ザンビア
本章最後(p.5-14 以降)の「日本による HIV/AIDS 支援実績一覧表」にもあるとおり、
ザンビアにおいて JICA による HIV/AIDS 対策支援は、VCT を核にして広がりがでている
といえる。「エイズ結核対策プロジェクト」における UTH ラボを核とした検査体制強化
と「エイズ対策・血液検査特別機材供与」での HIV 簡易迅速検査キット供与とは有機
的に関連しており、検査キットの配給システムや情報管理システムのアセスメントも
プロジェクトの中で行っている。今後、技術協力プロジェクトによる「国境における
HIV/AIDS・性感染症予防啓蒙プログラム」にも VCT 活動強化が加わるとすると、前述
の技術支援および機材供与とも連携が生まれる。この「国境における・・・」は日米
連携の NGO プロジェクトでもあり注目される。また、VCT プログラム運営に関する情報
管理システムの改善には USAID が高い関心を抱いており、UTH に協力しようとしている。
UTH に派遣されている日本人長期派遣専門家が、この USAID と UTH との話し合いに参加
しており、ここでも日米連携が進む可能性が高い。
UNDP との連携によるパイロット地域における「VCT サービス実施能力強化プロジェク
ト」が予定通りに立ち上がってくるとすると、ザンビア国の VCT サービス全国展開お
よび VCT を核にした HIV/AIDS 対策に対する日本の貢献度はさらに大きくなる。パイロ
ット地区におけるモデル作りが進めば、そこで得られた経験は、ザンビア政府がグロ
ーバルファンドを使っての VCT サービス全国展開を強化する上で有用な提言を生み出
すことができると推察される。草の根無償によるエイズ遺児支援事業や HIV/AIDS 教育
事業を通しての現地 NGO との連携実績もあり、今後もこのような連携が拡大発展して
いけば、ザンビアの HIV/AIDS 対策分野における日本の存在意義はさらに高まる。
また、グローバルファンド承認に伴い、国家エイズ審議会およびザンビア保健省は
HAART(3 剤併用療法)1を本格的に導入しようとしており、UTH の国家リファレンスラボ
1
Highly-Active Anti-retroviral Therapy の略で、HIV 増殖を抑えこむために効果的な抗エイズ薬(抗レトロ
ウィルス剤)を混合投与する治療のこと。
5-1
としての役割と責任は今後さらに増していく。開発途上国における HARRT 導入は時期
尚早であるという意見も多いが、抗 HIV 薬の途上国向けの価格が劇的に下がり、グロ
ーバルファンド設立でさらに導入の現実性が増し、また実際に導入している国も見ら
れる現状の中で、ラボ機能を強化し、その国の主流 HIV 株に対する薬剤の感受性や耐
性ウィルス出現の監視体制を強化していく方が、現実的でありニーズに合致したもの
となろう。UTH ラボの強化は、本来日本が得意とする分野でもあり、効果的な支援が期
待できる。
ただし、ザンビアではセクター・ワイド・アプローチ(Sector Wide Approaches: SWAPs)2
という「プログラム・アプローチ」的枠組が進行しており、保健省内にはドナー主導
のプロジェクト方式技術協力に否定的な声が上がってきているという事実もある。今
後コモン・ファンド (Common Fund)3
という「一般財政支援型援助」への資金提供依
頼の圧力が強まってくる中で、ザンビア政府の SWAPs 政策に反しない形でどのような
技術支援が可能か見出していくことが緊急に求められている。地方自治体主体の保健
活動が推進される中で、地方自治体主導のマルチ・セクターにまたがる包括的な
HIV/AIDS 対策の管理運営能力を高めていくような技術協力などが適切と考えられるが、
この実現のためには、運営管理費や活動費などの資金提供をどこまでどういう形で行
っていくかという課題を解決していかねばならない。
5.1.2
ウガンダ
現在日本は、ウガンダにおいて HIV/AIDS および VCT 分野での支援は特に実施していな
い。関連があるとすると、人間の安全保障基金によって UNFPA が現地 NGO に委託実施
している国内避難民を対象としたリプロダクティブ・ヘルス・サービス提供への、日
本による支援がある。大使館および青年海外協力隊(以降「JOCV」と表記)事務所の
両方においてマンパワーに限界があり、HIV/AIDS 支援に取り組みたくともできないの
が現状のようである。
このたび広域エイズ企画専門員がケニアに派遣されたのをきっかけに、情報収集を行
い、いろいろな機関とのネットワークを構築し、日本の支援の在り方を探っていくべ
きであろう。ウガンダにおける VCT サービスおよび PLWHA へのサポートは、NGO 主導で
拡大発展してきており、まずは現地 NGO への支援が妥当ではないかと思料される。そ
こに JOCV の派遣を付随させても良い。ウガンダは新規 HIV 感染率低下に成功している
エイズ対策模範国であり、この国にエイズ対策企画専門家派遣を行い、何らかの支援
をしつつ、ウガンダのノウハウを学んで、日本による他国でのエイズ支援へ応用して
いくという戦略は検討に値する。
2
3
相手国政府が作成したプログラムの枠内で、各ドナーが相互に調整しながら進める援助。
各ドナーからの援助資金を、被援助国の一般財政に投入する援助。ドナーは個々の活動には直接関与しない。
5-2
5.1.3
ガーナ
ガーナにおける日本による HIV/AIDS 分野支援は、これまで野口記念医学研究所(以下
野口研と略)への支援を中心に行われてきている。ガーナ政府保健省は今後、グロー
バルファンドからの資金を使い、野口研や米国系 NGO である FHI とともに HARRT(3 剤
併用療法)を導入しようとしており、野口研においては、薬剤感受性試験、免疫学的
なモニタリング、薬剤耐性サーベイランスなど重要な役割を担っていこうとしており、
ラボをベースとした日本の技術協力は今後も重要となろう。これまでも国家エイズ対
策プログラム、野口研、UNICEF、国立公衆衛生リファレンスラボなどが共同で、母子
感染予防プログラムを特定の病院でパイロット的に導入してきたが、その拡大と HAART
を抱き合わせで行おうという計画である。HIV の分子レベルの研究成果が、臨床現場へ
の提言に結びついていくと、日本の貢献がさらに見え易くなるといえよう。
野口研が現地 NGO である Planned Parenthood Association of Ghana (PPAG)の協力を
得ながら行った、モバイル検診車での「血液検査出張サービス」は大変ユニークな取
り組みで、多くの住民が検査に訪れて好評であった。しかし、草の根無償資金協力と
いう 1 年のみのファンドであり、更にスキームの制約から運営管理費がほぼ出ないこ
ともあって、ファンドの終了とともに、活動も修了してしまった。持続発展性という
視点からみると限界があるプロジェクトであったが、地方の農村においても草の根の
NGO と質の高い VCT サービスとの組み合わせでサービス利用率が上がる、という成果を
示すことができたことは、今後の同分野支援において、貴重な教訓を残したといえよ
う。今後は、活動の持続性を考慮しつつ、地方自治体とコミュニティレベルで活動し
ている NGO との連携を支援し、VCT を絡めた効果的な HIV/AIDS 対策が実施されていく
ことが望ましい。
ガーナでは、保健分野におけるセクター・ワイド・アプローチが進行しており、コモ
ンファンドへの資金提供の圧力が強まる中、技術協力プロジェクト的援助がしにくい
状況になってきている。このような状況の中で、日本がどのような支援を行っていく
のかについて、ガーナ政府と共に詰めていく必要がある。コモンファンドやガーナ・
エイズ対策基金(GARFUND)などのプール金にはこれまで資金を提供してこなかった日
本であるが、この方針を変更するかどうかの判断を迫られている。ただし、コモンフ
ァンドやセクター・ワイド・アプローチについては、保健省中央レベルの意向と地方
自治体の要望とはギャップがある様子であり、そのため現場レベルのニーズの把握が
必要とされる。またガーナ側は、日本に支援を期待する分野として、VCT サービス改善
のためのモニタリングや評価の指導を行ってくれる専門家、HIV/AIDS 電話相談の設置
を指導してくれる専門家などを求めているとのことであった。
5-3
5.1.4
南アフリカ
保健分野の支援としては、HIV 感染率が全国一の州であるクワズールー・ナタールにお
いて医療機器提供と関連施設の建設を行っており、貧困州である東ケープとリンポポ
州に広げる予定となっている。HIV/AIDS 分野ではこれまでのところ、草の根無償を通
したハード面での支援を行っている。ホスピスの建設、広報教育教材の印刷、車両の
提供、ワークショップや研修開催の支援などである。JOCV との連携もすでに行ってい
る。しかし、草の根無償資金協力案件全体の中では HIV/AIDS に関する案件はそれほど
多くない。JICA 開発福祉支援の一貫として教会系 NGO による青少年の広報教育活動支
援、エイズ関連機関への視聴覚機材供与、訪問ケアに関わる機材供与などを行ってい
る。
南アフリカ保健省からは資金よりも技術移転と人的協力を求められており、ニーズと
しては、結核等の日和見感染症への対応や医療従事者不足への対応があがっている。
地方の貧困黒人層向けの保健医療全般における強化が必要であり、貧困対策との連携
が重要となる。
今後は、地方を対象とした長期的な支援を行えるように戦略を整えることが望まれる。
レベルの高い南アフリカの研究機関と同レベルで交流できるような日本の専門研究機
関が、長期に渡ってプロジェクトへのバックアップを行うようにできると良い。
5.1.5
ケニア
エイズ分野の援助においては日米コモンアジェンダのもとに連携が進められており、
その最初の案件が 2000 年に草の根無償資金協力により行われたケニヤッタ国立病院エ
イズ総合対策センター設置であった。米国系 NGO である FHI がソフト面の支援を、日
本はハード面の支援を受け持った。ナクール(Nakuru)では地方レベルの VCT センタ
ーの草の根無償での建設を予定しており、ここでも同様の日米連携を図ろうとしてい
る(日本はハード、アメリカはソフト面を担当)。移動式 VCT サービスの実施も計画中
であり、草の根無償での支援を検討中である。
日本はこれまで長年にわたりケニア中央医学研究所(KEMRI)に対して支援を行ってき
ており、感染症対策もその中の重要な活動として継続して行われてきた。B 型肝炎診断
用の検査キットや HIV 検査キットの開発もその一環として行われた。開発された HIV
検査キットは、ケニアに蔓延している HIV-1 のサブタイプに対する感受性が高く、し
かも冷蔵保存も不要という利点もあるが、HIV-2 に適応してないため保健省の推奨は得
られていない。この事業における目的を早急に明確にし、今後の支援の方向性を決め
る必要がある。現地の検査キット開発能力を高め、現地産業育成という観点で検査キ
ット開発と販売戦略を支援していくことが目的であれば、HIV-2 への適応を急ぐ必要が
あり、かつケニア国内におけるマーケティングを技術的に支援していく必要がある。
5-4
この場合、国内ですでに使用されている欧米からの HIV-1/2 簡易迅速検査キットに対
抗した自国商品として、必要な情報を開示し、保健省認可を得、マーケティングして
いくことが可能かどうかの検討を要する。さらに検査キットの品質管理や検査実施上
のモニタリング、在庫管理、収益管理などの分野にも技術協力が必要となってくるも
のと考えられる。
ケニア医療技術訓練センター(KMTC)において始まった HIV/AIDS カウンセリング指導
者コースへの支援は、KMTC における JICA プロジェクトによる協力がより明確になって
くると貢献度がさらに見え易くなるといえる。KMTC は地方レベルで働く医療従事者の
中央訓練機関であることを考えると、このような支援は裨益度が高い。またトレーニ
ングを実施するのみならず、中央で行ったトレーニングが現場で十分活用されるよう、
VCT 拡充に向けて VCT サービス・モニタリングの仕組みづくりと評価方法確立への技術
協力も必要であろう。
USAID が HIV/AIDS 分野には大量の資金を投入しており、この分野で日本の独自性を出
せるとすると、やはり KEMRI と KMTC を核にした取り組みを軸に発展させていくことが
現実的であると思われる。KEMRI においては、政府が HAART や母子感染予防プログラム
を拡大したときに、ラボ機能がしっかりと対応できるように技術強化していく。HIV 疫
学調査や実験室診断、HIV 株の解析、抗 HIV 剤感受性試験、HIV 感染免疫応答調査、デ
ータ管理と分析などの機能を強化し、臨床現場への提言をまとめていく。一方、KMTC
は VCT サービスの質向上を目指してのトレーニング、モニタリング、評価などの活動
支援のため、日本の技術協力や無償資金協力を入れていくことが望ましい。
西部地区における保健施設整備も日本が無償資金協力で行っており、この地区での VCT
サービス強化を日米連携で行っていくことも考えられる。住民への啓発教育活動や若
者を対象としたエイズ教育支援もこの地区で行うことにより、プロジェクトとの関連
性がでてくる。USAID に関しては、昨今のブッシュ政権の動きをみると、リプロダクテ
ィブ・ヘルスおよび家族計画サービスに対してかなり否定的な見方をしており、
HIV/AIDS 対策に資金提供は惜しまないものの、リプロダクティブ・ヘルスや家族計画
サービスと切り離して実施することを条件付ける傾向にある。若者へのメッセージも
「禁欲のみが HIV 感染予防法」というものに変わってきており、USAID の HIV/AIDS 対
策支援内容は今後かなり限られた形で行われると予想される。この場合、USAID ができ
ないことを日本が支援していくという連携の形態が現場のニーズを満たしていくこと
になると思われる。
5-5
5.1.6
タンザニア
日本は、対タンザニア援助の重点分野として「基礎的保健医療サービスの向上」を掲
げ、この下に「人口エイズ対策プログラム」を策定して対応してきている。エイズ対
策・血液検査特別機材供与枠を使った HIV 検査用ラボ機材、検査キット、輸血にかか
わる使い捨て医療機器、データ管理用パソコン、性感染症対策試薬および治療薬など
の供与も、他国に先駆けて行われ、1997 年度より 2002 年度まで継続されてきた。
2001 年 1 月に、日米合同のプロジェクト形成調査が実施され、タンザニア政府との協
議を通じ、日米で協力してエイズ問題に取り組んでいくことを覚え書きにした。その
結果、JICA は HIV/AIDS 分野においては、VCT センター支援拡充、行動変容につながる
エイズ啓発活動強化支援、輸血による HIV 感染予防支援、性感染症症候診断および治
療支援などを行うことが決められた4。
国立ムヒンビリ病院の「保健情報センターの VCT 活動に対する支援」、
「Walio katika
Mapambano na AIDS Tanzania (WAMATA)5のコミュニティにおける HIV/AIDS 対策への支
援」はこの方針に沿ったものとなっている。ムヒンビリ病院保健情報センターは、米
国の支援を受けている AMREF 実施による全国規模 VCT サービス拡大計画に参画してお
り、AMREF とは確認検査および検査品質維持において協力体制にある。今後は、AMREF
を中心に進められている VCT サービス拡大とコミュニティにおける予防のための啓発
活動や PLWHA のケア・サポート活動がセットになるように他の NGO の活動を有機的に
関連付けていくような支援が望まれる。
タンザニアにおいては、ドイツ技術協力公社(GTZ)がムベヤ州(Mbeya Region)にお
いて実施したエイズ対策プロジェクトがモデルケースとなっている。ムベヤでは地方
政府が NGO と連携した幅広い広報教育活動や PLWHA に対するサポート、そして性感染
症の検査と治療、輸血血液の安全性の確保などを行い成果を上げた。政府はムベヤで
の経験を全国展開しようと考えており、その線に沿った支援が求められている。ただ
し、タンザニアにおいてもガーナやザンビア同様セクター・ワイド・アプローチと地
方分権化が進められており、プロジェクト方式による技術援助の方向性とコモンファ
ンドへの資金提供に対してどう対処していくか見極めていく必要がある。
5.2
日本の ODA スキームの活用と課題
5.2.1
日本の ODA スキーム
日本による二国間援助スキームで HIV/AIDS 分野と VCT 活動支援に関連するものとして、
次項表 5-1 のようなものが挙げられる。
4
国際協力事業団.タンザニア連合共和国日米合同プロジェクト形成調査報告書,2001: pp1-5.
People in Struggle against AIDS in Tanzania の意味。1989 年に組織された NGO で PLWHA へのサポートと
ケアを主な活動としている。
5
5-6
表5-1: HIV/AIDSおよびVCTサービス支援と関連する日本の主な二国間援助スキーム
形態
無償資金
協力
一般無償
名称
概要
一般プロジェ
クト無償援助
ノン・プロジ
ェクト無償援
助
草の根無償資
金協力
幅広い分野におけるプロジェクト型の無償資金協力
を行うもの
個々の事業ではなく途上国の経済改革計画あるいは
特定の分野の開発計画全体を支援する。
日本 NGO 支援
無償資金協力
研修員受入
専門家派遣
機材供与
プロジェクト
方式技術協力
草の根技術協
力事業
技術協力
技術協力
プロジェ
クト
プロポーザル
型技術協力
開発調査
民間提案型プロジェクト
形成調査
青年海外協力隊派遣
現地地方自治体、教育・医療機関、NGO といった草の
根レベルの活動を支援する。1 件あたりの援助額は原
則 1,000 万円以内。
日本の NGO が開発途上国・地域で実施する経済・社
会開発及び緊急人道支援プロジェクトに対し資金協
力を行う。
途上国の研修員を日本あるいは第三国で受け入れ、
多岐にわたる分野の専門知識、技術の移転を行う。
日本の専門家を途上国に派遣し、主に政府機関にお
いて技術指導を中心とした技術協力を行う。
開発途上国からの要請を受け、重要度が高い機材を
JICA が調達し供与する。
研修員受け入れ、専門家派遣、機材供与という技術
協力の基本的な形態を総合的に組み合わせた協力。
草 の 根 協 力 JICA が日本の NGO、大学、地方自治体、
支援型
公益法人等の団体と、開発途上地域の
生活向上を促す目的で共同事業とし
て実施。国際協力の経験が少ない比較
的小規模な団体向け。3 年以内 1000
万円以下。
草 の 根 パ ー JICA が日本の NGO、大学、地方自治体、
トナー型
公益法人等の団体と、開発途上地域の
生活向上を促す目的で共同事業とし
て実施。途上国支援の実績が一定程度
ある団体向け。3 年以内 5000 万円以
下。
地域提案型
地方自治体の事業提案による現地で
の技術指導や途上国からの研修員の
受け入れ。
タイプ A
JICA が開発途上国で実施している技
術協力プロジェクトにおいて、民間の
活力、創意、ノウハウを活かすために、
技術協力プロジェクトの形成または
準備段階から NGO 等民間が参加、プロ
ジェクトの実施を一括して委託。
開発途上国からの要請に基づく案件
検討・採択の後、実施条件公示および
プロポーザル受付。
タイプ B
開発途上国のニーズに基づく援助重
点分野の開発課題の検討の後、実施条
件公示およびプロポーザル受付。
途上国の開発ニーズを開発プロジェクトの形に具体
化したり、開発計画策定のための基礎情報整備など
の役割を果たす。
途上国の多様化するニーズに適格に応えるため、民
間企業や NGO の視点からの着想や創意工夫をプロジ
ェクト(案件)の形成段階に取り入れる制度。
日本の青年男女を派遣するもので、現地の人ととも
に生活しながら専門技術を伝えていくもの。技術移
転と友好親善を増進させる。
5-7
前項表 5-1 からわかるとおり、「技術協力プロジェクト」の中に以前存在した「開発福
祉支援事業(現地 NGO に直接支援するスキーム)」が無くなったが、その代わり、「技
術協力プロジェクト」のスキームを通じて、現地 NGO 等と連携してプロジェクトを進
めるというアプローチへと転換している。アフリカの HIV/AIDS 対策及び VCT 活動は、
NGO を抜きに語ることはできないため、彼らに対する支援が可能となる援助スキームは
非常に重要である。今後とも、日本の援助枠組みの中で、現地 NGO との積極的な連携
が推進されることが望まれる。
5.2.2
日本の ODA スキームの課題
本調査を通じての、調査対象国における VCT 活動関係者とのインタビューなどを通じ
て明らかになった、HIV/AIDS 分野および VCT 活動支援に関わる日本の ODA スキームの
今後の課題は以下のとおりである。
【1】
広域エイズ企画調査員への期待
現在、南アフリカに南部アフリカ地域担当の、ケニアに東部アフリカ地域担当のエイ
ズ関連プロジェクトを企画していくための企画調査員が配置されている。このような
エイズの専門家が、在外公館や JICA 在外事務所を巡回し、意見交換が活発に行われる
と、他国における例なども参考にしながら新たなアイディアが生まれる可能性が大き
くなる。また、リアルタイムで的確な情報が収集されるという点からも、これらエイ
ズ企画調査員に対する期待は大きいといえる。
【2】
青年海外協力隊エイズ隊員派遣
青年海外協力隊協力隊の派遣は、アフリカの HIV/AIDS 分野支援と、日本における
HIV/AIDS 分野人材育成という二つの目的を達成できる計画と思われる。ただし、その
実施に際しては、具体的な受け入れ先のニーズを優先して行われることが望ましい。
青年海外協力隊という、比較的経験が少ない若者が行える貢献には限界があるため、
受け入れ機関と十分な事前協議を行い、仕事内容等や条件を明確化することが必要と
なる。
【3】
迅速性
HIV/AIDS 対策は緊急の課題であり、迅速な対応が求められている。しかしながら、要
望調査から案件の実施まで1年以上かかってしまうことが多い現在の ODA 案件決定シ
ステムでは、後手に回ることが多い。HIV/AIDS 対策は、他ドナーとの調整や連携が強
く求められている分野でもあり、そういう視点からも、他のドナーと同程度の意思決
定の早さが期待されている。そのためには、在外公館や JICA 在外事務所に対し、現地
実施分についての予算権限の委譲を行い、より迅速かつ柔軟な対応ができる体制に変
更することが望まれる。この場合、業務の効率的な執行を図るために、現地スタッフ
も含め人員強化も合わせて行う必要がある。
5-8
【4】
現地 NGO への支援
アフリカの HIV/AIDS 対策及び VCT 活動に関して、現地 NGO は先駆的な役割を果たして
きており、今も非常に重要な存在である。それゆえ、今回の調査対象国のうち、いく
つかでは、彼ら NGO の活動を支援するような日本の ODA スキームの充実を望む声が聞
かれた。前項で述べたように、「開発福祉支援事業」という枠組みは無くなったが、代
わりに「技術協力プロジェクトにおけるローカル NGO 等の活用」という新しい枠組み
に変わってきている。この新たなスキームでは、現地 NGO と協力連携して複数年に渡
るプロジェクトを実施できるようになっており、草の根無償資金協力と組み合わせる
と、かなり充実した支援が可能となる。一方、今回の調査で明らかになった問題とし
ては、ここ数年で日本による NGO 支援スキームが大きく変わってきている中、これら
スキームの変化に関する情報が現場レベルまで的確に伝わっていないケースがあり、
混乱している現場担当者が少なからずいるという点である。今後早急に、現場と現地
NGO に対しても、これらスキームの変化に関する的確な情報が行き渡るように配慮する
必要がある。
【5】
現地 NGO に委託する際の経理管理の簡便化
現地 NGO は JICA の事業運営方法に慣れていない団体が多い。特に経費管理については、
JICA 関連プロジェクトでは、オリジナルの領収書を他の経理処理とは別にして全て揃
えて整理し、会計報告書とともに四半期に 1 度提出しなければならないという煩雑さ
を抱えている。会計監査もプロジェクト用の会計監査が要求されている。会計報告を
的確に行うことは NGO 側のアカウンタビリティーとして当然求められることであるが、
オリジナルの領収書を全て提出し、それを現地事務所がチェックするというやり方は、
双方にとって負担がかかる業務となっている。複数の援助国から支援を受けるにあた
り、多種多様な報告書の書式や財政管理報告の方法に対応するのに苦慮する団体も多
いという現実を前に、ドナー間での了解・合意をとりつけた上での書式と報告形式の
統一化も進んでいる。日本も、アカウンタビリティーを取りつつ、経理管理をより簡
略化するような対応がとられることが望ましい。
機材調達について三社見積りが原則であるが、現地では購入することを前提でしか見
積り書を出してもらえない場合がある。価格の低い機材については三社見積りを免除
し、一定の価格以上のもののみ三社見積りとすると業務の軽減化ができる。プロジェ
クトが草の根思考であればあるほど小規模で価格の安い多様なアイテムを調達しなけ
ればならない場合が多く、その場合、全ての機材について三社見積りをとるのは負担
が大きいだけで得るものは少ないのではないかと思われる。
【6】
本邦 NGO への支援
本邦 NGO の中には、アフリカにおける HIV/AIDS 対策の分野で、本邦 NGO を対象とした
ODA スキームによるファンドを獲得して、現地でプロジェクトを展開している NGO も少
なくない。しかしながら、本邦 NGO を対象とした ODA スキームで認められる、日本の
5-9
NGO 職員に対する人件費や出張日当は、例えば同じ日本の ODA による国際協力分野で活
躍する JICA 職員との間で大きな差が存在する。同等の学歴や専門分野業務経験を有し
ていても、本邦 NGO に対する ODA スキームの中で認められる NGO 職員人件費は、JICA
職員のそれに比べるとはるかに低い。さらに、本邦 NGO を対象とした ODA スキームで
は事務所経費などの間接費がまだ十分認められないため、より一層 NGO の財政状況を
ひっ迫させている。今後国際協力の分野で、日本の NGO が質の高い活動を展開するた
めには、JICA 職員と同程度の待遇を保証し、事務所経費などの間接費も適切に保証し
ない限り、質の高い職員を長い間雇用することができず、それは質の高い国際協力を
実現することができないことを意味する。この点に関しては、欧米の例など参考にし
つつ、さらなる改善が望まれている。
また、NGO を対象にした ODA スキームの中には、在外公館や在外事務所との合意の後、
事業委託契約は本部との契約とし、資金の流れも在外を通さずに直接本邦 NGO に送ら
れるということもよしとしなければ、現地事務所および銀行口座を持たないことで支
援を受けることが出来なくなってしまう。例えば、日本 NGO 支援無償では、現地日本
大使館が日本 NGO との契約を交わし、資金も現地日本大使館を通じて送金するという
規定があるため、現地事務所や、現地の銀行に口座を持たない NGO はこの制度を活用
できない。
5.3
アフリカ HIV/エイズ分野と VCT 活動支援に対する日本による有機的戦略例
アフリカに対する HIV/AIDS 分野での日本の技術協力は、現在のところまだ限られた規
模に留まっている。HIV 感染者が現在のところそれほど多くない日本において、しかも
大規模なエイズ予防対策がとられていないため、他分野に比べると日本の比較優位性
は高いとはいえない。しかし限られた規模ながら、これまでに実施されてきた日本に
よる HIV/AIDS 支援の蓄積を生かし、日本の強い分野を生かしつつ、以下に列記した8
つの戦略を有機的な関連性を持たせながら支援計画を立てることで、より効果的で総
合的な HIV/AIDS 対策への貢献が可能となるであろう。そのためには、他ドナーとの調
整やセクターアプローチの進行をにらみつつ、被援助国及び関係機関との地道な協議
が必要となるのは言うまでもない。また、積極的な情報発信もこれまで日本が弱かっ
た部分であり、当該国のみならずサハラ以南地域的にも、また国際的にも、日本の総
合的な取り組みと成果をアピールしていくべきであろう。
【1】
戦略1 :KEMRI、野口研、ザンビア UTH に対する HIV/AIDS に集中した技術支援
これまでの KEMRI、野口研、ザンビア UTH に対する支援を、HIV/AIDS に集中した技術
支援にしていく。どの国も、今後グローバルファンドからの資金を使っての HAART や
母子感染予防プログラムを導入または拡大しようと計画しており、これにラボ機能が
しっかりと対応していくことが可能なように技術的に強化していく。HIV 疫学調査や実
験室診断、HIV 株の解析、抗 HIV 剤感受性試験、HIV 感染免疫応答調査、データ管理と
5-10
分析などの機能を強化し、政府や臨床現場への提言をまとめていけるように技術的支
援を行っていく。また、臨床現場への情報発信や、薬剤の使用に関する指導者対象の
トレーニングなども行っていけると日本の貢献が見えやすくなる。
【2】
戦略2: HIV 検査体制強化
戦略1の延長として、上記以外の国においては国家リファレンスラボをカウンターパ
ートとして、HIV 検査技術強化、検査キットや試薬その他検査に必要な機材や用具管理
と在庫管理、検査結果データ管理と分析、HIV 検査品質管理、HIV 検査キットの評価6、
検査状況および配給システムのモニタリングなど検査全般に関わる体制強化を実施す
る。これまで保健省や国家リファレンスラボとのつながりが薄く、この戦略を適用で
きない国の場合は、次の戦略3から開始し、その後 VCT の状況調査(またはニーズア
セスメント)の実施を保健省の参加も得ながら行って、戦略2につなげる。
【3】
戦略3: HIV 簡易迅速検査キットの全国レベルでの継続的供与
これまでもいくつかの国で実施されてきているエイズ対策・血液検査特別機材供与を
使って、HIV 簡易迅速検査キットの供与を行う。全国レベルでしかも継続的に供与して
いくことが重要といえる。これによって全国の VCT サイトを網羅でき、かつ地方レベ
ルでの安全な輸血血液供給にも貢献できることとなる。検査キットは、保健省または
国家リファレンスラボが認定しているものを、確認のうえ供与することが非常に重要
である。またその際には、WHO による HIV 検査キット大量調達スキーム7というものが
あり、WHO が行った検査キット評価レポートも出ているので、UNAIDS 事務所に確認す
ることが望ましい。検査キットのみならず検査に必要な他の消耗品も併せて供与でき
ると、より効果的である。戦略その3は戦略その2と有機的に連携していくことにな
る。これら 2 つの戦略が実行に移されると、日本の VCT への貢献度は大きなものとな
るであろう。
【4】
戦略4: カウンセラー養成への支援
上記戦略以外に、カウンセラー養成への支援も欠かせない。この時、現地のカウンセ
ラー養成専門機関(NGO である場合が多い)に事業を委託していく形が適当と考えられ
る。これは、日本には HIV/AIDS のカウンセリングの専門家がいないということではな
く、カウンセリングにおいては現地の文化的宗教的背景を理解できていることが前提
となるため、これまで経験を蓄積してきている現地 NGO を支援していくことがより効
果的・効率的といえるためである。ただし、現場の保健医療機関やカウンセラー養成
専門機関と相談しながら、カウンセリングの質を高めたり、カウンセラーのバーンア
6
数々の市販検査キットの中から、その国に蔓延している HIV 株に対して感受性 99%以上と特異性 95%以上の
もので、しかも貯蔵寿命や貯蔵温度、価格や取り扱い容易度などをチェックし、最も適した検査キットを選択
するためのプロセス
7
World Health Organization. WHO HIV Test Kit Bulk Procurement Scheme: Available at WHO Web Site
<http://www.who.int/bct/Main_areas_of_work/BTS/HIV_Diagnostics/HIV_Test%20Kit_Bulk_Procurement_Sc
heme.htm>
5-11
ウトを防いだりするための仕組みづくり、モニタリングの仕組みづくりや評価方法な
どには、日本人専門家が配置されることが望ましい。
【5】
戦略5: 地方における VCT 強化のモデル作り
戦略その4までが達成されると、次に地方自治体が、HIV/AIDS 啓発活動から VCT、VCT
からケア・サポートへという体制作りを行うことを技術的、財政的に支援することが
重要となる。戦略2∼4が実施できていれば、地方のどこにモデルを作っても戦略2
∼4との連携がとれることになる。コンドーム普及や性感染症対策もここで入れてい
くことになる。このとき、現地 NGO が活動するコミュニティにおけるノウハウを是非
とも活かしていきたい。特に若者に対する HIV/AIDS 教育は、NGO が先駆的な活動を行
っているので、それらの活動を地方自治体の活動の中に組み入れ、広げていくことが
望まれる。また、PLWHA のネットワーク支援も入れるべきであろう。
【6】
戦略6: 青年海外協力隊の派遣
戦略5までが実施されていると隊員の派遣も行いやすいといえる。モデル地区におけ
るコミュニティや学校や職場などでの啓発活動支援、PLWHA への経済活動支援やポジテ
ィブリビング支援、エイズ遺児に対する教育や職業訓練への支援などが考えられる。
モデルプロジェクトの専門家との情報交換を定期的に行い、有機的に連携していくこ
とが重要といえる。
【7】
戦略7: サハラ以南アフリカにおける地域的な展開
各国の VCT 活動に関する経験を学びあうような機会を、年 1 回持ち回りで行う。毎年、
テーマを変えつつ、関連政府機関の代表、JICA プロジェクトのカウンターパートや日
本人長期専門家、在外公館の経済協力担当などを集めたワークショップやセミナーの
開催を行う。大規模なものにせず、活動成果や課題の発表と意見交換が忌憚なく話し
合えるような場としたり、フィールド視察などを盛り込んだりして、学びあう機会と
する。
【8】
戦略8: 日本国内外での広報活動や活動報告の活発化
上記戦略6までの有機的連携が組み立てられれば、活動やその成果を発表する機会、
または分かり易く紹介するような広報活動を活発に行う。
5-12
表5-2: 調査対象国における日本政府によるHIV/AIDS支援実績一覧
(1) ザンビア
事業名
実施機関/
カウンターパート
実施期間
内容
年間予算
協力形態
開発福祉支
援事業
その他特記事項
日米コモンアジェンダによる連携の一環で、米国系
NGO の Family Health International(FHI)と米国系
NGO の Population Service International(PSI)の支
援を受けている Society for Family Health(SFH)と
の連携事業。2003 年 3 月からは地域を拡大しての
実施予定となっている。内容には VCT 強化も加わっ
ている。
1
国 境 に お け る
HIV/AIDS・性感染症予
防啓蒙プログラム
World Vision Zambia
2000 年 3 月∼
2003 年 2 月
国境地域において、長距離トラック運転手と性
産業従事者などのハイリスクグループを対象
とした HIV および性感染症(STI)予防のため
の啓発教育活動と性感染症治療。STI 感染率
の減少とコンドーム使用率の上昇を目指して
いる。プロジェクト地域は 4 箇所。
2
エイ ズ・性感染症地域
啓蒙活動支援計画
Child Assistance,
Development and
Support Organization
(CADSO)
2000 年度
エイズ・性感染症予防のための地域啓蒙活動
(ワークショップ開催やアウトリーチ活動)への
支援。
41.5 万円
草の根無償
資金協力
3
ストリートチルドレンの
ための職業訓練センタ
ー建設支援計画
Anglican Street
Children Project
2000 年度
職業訓練のための教室建設。
168 万円
草の根無償
資金協力
エイズ遺児関連。
プロジェクト
方式技術協
力
2002 年には政府中央保健局(CBoH)と連携をとりな
がら、HIV 迅速簡易検査キットの配給および情報管
理に関するアセスメントを実施。
年間 12∼14
万米ドル
草の根無償
資 金 協 力
(2000 年度)
にて車両供
与を行った。
4
エイズ結核対策プロジ
ェクト
University Teaching
Hospital (UTH)
Laboratory
2001 年 4 月∼
2005 年
HIV の国家リファレンスラボとして、HIV/AIDS
および結核の診断・サーベイランスのための
検査体制の強化。UTH および保健所など末
端の検査室における質の高い検査とデータ収
集を目指して活動が展開されている。また、検
査室で得られた疫学的情報やウィルス学的情
報などが政府機関、国際機関、NGO など他の
HIV/AIDS や結核関連機関に広く利用される
ための広報活動も視野に入れている。
5
HIV 検査のための機材
供与
政府中央保健局
2001 年∼2004
年
VCT サービスに欠かせない HIV 簡易迅速検
査キットとコンドーム、その他関連医療消耗品
の供与を行う。対象は、全国の VCT センタ
ー。現在約 100 箇所に及んでいる。
年間 2000∼
3000 万円
エイズ対策・
血液検査特
別機材供与
ノルウェー開発庁(NORAD)との連携。VCT センター
の急増により 2001 年度購入分が不足し、NORAD が
緊急支援。2002 年度より 3000 万円の支援としてい
る。
6
遺児宿泊施設改築計画
Land of Hope
Orphanage
2001 年度
遺児宿泊施設の改築支援
76 万円
草の根無償
資金協力
エイズ遺児関連。
7
パイロット地域における
VCT サービス実施能力
強化プロジェクト
政府中央保健局/地
方 自 治 体 お よ び
UNDP
2003 年∼予定
地方のパイロット地区における VCT サービス
強化のモデルをつくる。JICA は、検査キット供
与、UTH のプロジェクトからの技術的支援、教
材制作支援、VCT センター整備などを検討
中。
未定
未定
UNDP との連携。上記 UTH との技術協力プロジェク
トとも連携を考えている。
5-13
(2) ガーナ
事業名
1
2
感染症対策プロジェク
ト
HIV 母子感染予防プ
ログラム支援
3
HIV/AIDS 啓 蒙 活 動
用車両および機材供
与計画
4
カレオ・ バプテスト女
性開発計画
5
バウク・イースト女性
開発計画
6
野口記念医学研究所
VCT センター整備計
画
実施機関/カウン
ターパート
野口記念医学研究所
野口記念医学研究所
実施期間
1999 年 1 月∼2003
年 12 月
2001 年∼2002 年
内容
年間予算
HIV のサブタイプについての分子学的・抗
原学的研究の実施および性感染症の易
学的・病理学的研究支援、性感染症の実
験的診断技術の移転、結核検査技術の確
立、保健所や病院の臨床検査技師訓練を
行っている。HIV サブタイプの研究におい
ては、現在先進国で行われている抗 HIV
薬治療がガーナに蔓延している HIV のサ
ブタイプに効果があるかという研究がなさ
れている。
野口研の HIV 母子感染予防(PMTCT)の
調査研究活動への支援。
協力形態
その他特記事項
プロジェクト方式技
術協力
9.5 万米ドル
マルチ・バイ特別機
材供与
UNDP とのマルチ・バイ案件。資金は
WHO を経由して野口研に提供された。
開始時に、現場(Manya-Krobo District)
では、UNICEF の PMTCT も同時に始ま
ろうとし、連立状態を避けるため役割分
担が行われた。
2000 年度
VCT サービスを含む一般血液、生化学検
査の出張サービス用車両を整備し出張サ
ービスを行う。
9.4 万米ドル
草の根無償資金協
力
Planned Parenthood Association of
Ghana (PPAG)と連携し、PPAG が開発
福祉支援事業で行った家族計画・寄生
虫予防・栄養改善統合プロジェクト
(IP-II)のプロジェクト地区である Brim
North District において出張サービスを 1
年間展開。PPAG はコミュニティの広報
教育活動を担った。
2001 年 11 月∼2004
年 10 月
女性のエンパワーメントを主たる目標とし
た活動の運営管理費を支援。活動の中に
は HIV/AIDS 予防教育が含まれている。
年額 300 万円
開発福祉支援事業
青年海外協力隊員の派遣を検討中。
バウク・イースト女性
開発協会
2000 年 11 月∼2003
年 10 月
Upper East 州にて、女性の生活向上を目
的にした NGO 活動を支援。コミュニティの
女性グループに対するエイズ予防教育活
動が含まれている。
年額 300 万円
開発福祉支援事業
野口記念医学研究所
2001 年に合意。
2002 年度より改修
工事開始予定。
野口研の施設の一部を VCT センターとし
て改修。
250,000,000
Cedis (約 3 万米
ドル)
セクター・プログラム
無償(見返り資金)
野口記念医学研究所
5-14
(3) 南アフリカ
事業名
実施機関/カウン
ターパート
ソウル・シティ(現地
NGO)
1
エイズ対策・血液検査
特別機材供与
2
エイズ対策・血液検査
特別機材供与
7 つの州の保健省エ
イズ局
3
青少年のための
HIV/AIDS 教育プロジ
ェクト
4
実施期間
内容
年間予算
協力形態
2000 年度
車両、ビデオ等地域における啓発教育用
機材の供与
1,100 万円
エイズ対策・血液検
査特別機材供与
2001 年度
ビデオ、プロジェクター等 IEC 機材供与
1,440 万円
エイズ対策・血液検
査特別機材供与
National Progressive
Primary Health Care
Network (NPPHCN)
2001 年 3 月∼2004
年3月
教育活動を実施する青少年リーダーの育
成と教会における予防啓発活動。エイズ
患者を家族に持つ青少年や遺児に対する
支援。
(2000 年度)
145 万円
(2001 年度)
974 万円
(2002 年度)
1,645 万円
開発福祉支援事業
ネルソンマンデラ感染
症対策センター施設
建設支援計画
ナタール大学
2001 年
847 万円
草の根無償資金協
力
5
エイズ対策・血液検査
特別機材供与
クワズール(NGO)
2002 年度
ビデオ等 IEC 機材供与
540 万円
エイズ対策・血液検
査特別機材供与
6
ア ル コ パ ネ ン
HIV/AIDS 感 染 者 収
容施設建設プロジェク
ト支援計画
アルコパネン・オレン
ジファーム・プロジェク
ト
2002 年
エイズ患者のホスピスを建設。
309 万円
草の根無償資金協
力
5-15
その他特記事項
(4) タンザニア
事業名
1
エイ ズ対策・血液検査
特別機材供与
実施機関/カウ
ンターパート
保健省国家エイズ
対策プログラム
実施期間
内容
年間予算
協力形態
その他特記事項
エイズ対策・血液検
査特別機材供与
日米コモンアジェンダにより、1996 年の
人口・エイズプロジェクト形成調査団派
遣され形成された案件。当初は 2000 年
までの予定であったが、2002 年まで延
長された。
1997 年∼
2002 年
HIV 検査用ラボ機材、検査キット、輸血にかかわる
使い捨て医療機器、データ管理用パソコン、性感
染症対策試薬および治療薬の供与
1999 年 10 月
∼2002 年 9
月
UMATI のテメケ青少年センターを核とし、地域の青
少年リプロダクティブ・ヘルス向上を目指したプロジ
ェクト。若者のピアや教員による広報教育活動にお
いては HIV/AIDS もトピックとなっており、コンドーム
供与や保健医療施設へのリファーラルなども行っ
た。センター付属のクリニックでは HIV/AIDS や性
感染症に関するカウンセリングや性感染症の治療
が行われている。
393 万円∼673
万円
2001 年 11 月
∼2004 年 10
月
ムヒンビリ健康情報センターが実施する VCT サー
ビスの強化・拡充、検査データの管理および分析
強化、啓発普及活動強化、VCT に関連した他地域
との経験共有、および性感染症対策。
169 万円∼914
万円
開発福祉支援事業
日米合同プロジェクト形成調査団(2001
年 1 月)派遣時の合意に基づき日米協
調案件として立ち上がった。
2002 年度∼
2004 年度
ダルエスサラームとムワンザにおいて、HIV/AIDS
拡大防止および PLWA・遺児への支援を実施。HIV
検査のための検査技師訓練、そして VCT 普及、広
報教育活動、PLWA の在宅ケアが活動の柱となっ
ている。
549 万円∼
1000 万円
技術協力プロジェク
トにおけるローカル
NGO 等の活用
日米合同プロジェクト形成調査団(2001
年 1 月)派遣時の合意に基づき日米協
調案件として立ち上がった。
765 万円
小規模開発パートナ
ー事業
2000∼3000 万
円
開発福祉支援事業
2
青少年のためのファミリ
ーライフ教育
タンザニア家族計画
協会(UMATI)
草の根無償資金協
力(2000 年度)にて
センターの増築を行
う。
青年海外協力隊青
少年活動(2000 年度
より)
VCT および検査センタ
ー支援
ムヒンビリ
(Muhinnbili)国立病
院内ムヒンビリ健康
情報センター
4
コミュニティベース
HIV/AIDS 対策
Walio Katika
Mapambano Na
AIDS Tanzania
(WAMATA)
5
ンゲレンゲレ郡におけ
る HIV/AIDS 対策のた
めのキャパシティビルデ
ィング
World Vision Japan
2002 年 7 月
∼2003 年 6
月
ンゲレンゲレ郡の保健機関による HIV/AIDS 対策
を人的に強化するとともに、住民への広報教育活
動や PLWHA ケア体制を整備することを目標として
いる。ニーズ調査から始まり、トレーニング、広報教
育活動、カウンセリング体制確立、性感染症治療と
予防などの活動を行っている。
6
感染症対策計画
タンザニア政府
2002 年
HIV 対策および予防接種活動の実施に必要な機材
を調達する
3 億 1,400 万円
無償資金協力
7
ストリートチルドレンの
ための多目的訓練セン
ター建設計画
ドゴドゴセンター・ス
トリートチルドレン・ト
ラスト
2002 年
多目的訓練センターの建設。センターでは、エイズ
遺児への自立支援が行われる。
563 万円
草の根無償資金協
力
3
5-16
USAID との連携により、本件計画に関わ
るスタッフの技能の向上も期待されてい
る。
(5) ケニア
事業名
1
ケニヤッタ国立病院エ
イズ総合対策センタ
ー設置計画
実施機関/カウン
ターパート
FHI
ケニヤッタ国立病院
実施期間
内容
2000 年
エイズ総合対策センター(VCT サービス提
供も含む)としてケニヤッタ国立病院敷地
内の施設を改修。機材および車両提供も
行った。FHI がソフト面の技術指導を行っ
ている。
年間予算
72,095 米ドル
協力形態
その他特記事項
草の根無償資金協
力
日米コモンアジェンダとしての最初の日
米連携案件。
2
感染症および寄生虫
症研究対策
ケニア中央医学研究
所(KEMRI)
2001 年 5 月∼2006
年5月
HIV/AIDS を中心とした感染症及び国際寄
生虫対策(橋本イニシアティブ)に関する
研究および人材育成を推進している。
HIV/AIDS 分野では、HIV 感染率や HIV 流
行株のモニタリング、HIV 血液スクリーニン
グキットの開発と現地生産、西ケニアでの
カウンセリング・教育システムの確立、日
和見感染症の予防・治療方針の検討、伝
統薬の日和見感染症に対する効果の検
証などを行っている。
3
HIV/AIDS カウンセリ
ング
ケニア医療技術訓練
センター(KMTC)
2001 年度∼2003 年
度
国内の地域保健に携わる医療従事者に
対する VCT 指導者コース実施を支援して
いる。
4
輸血血液供給計画調
査
保健省
JICA ケニア事務所
2001 年
ケニア全土を対象に 250 以上の主要医療
機関の献血、スクリーニング、輸血の実情
を調査し、今後の感染症対策と政策立案
のための基礎データを作成。
5
西部地域保健セ ンタ
ー整備計画
保健省
2001 年
地域医療体制の向上に資するため、西部
地区で優先度の高い 16 カ所の保健センタ
ーを整備
1 億 3,700 万円
無償資金協力
6
キタレ・エイズ VCT セ
ンター設立計画
ハンディキャップ・イン
ターナショナル
2001 年
キタレ県病院における VCT 用施設の建設
および関連機材供与。
507 万円
草の根無償資金協
力
7
カンゲミ地区エイズ総
合対策センター設立
計画
アナンダマルガ万国
救援隊ケニア事務所
2001 年
ナイロビのスラム街における保健センター
建設。VCT サービス提供予定。
799 万円
草の根無償資金協
力
5-17
プロジェクト方式技
術協力
第三国研修(1999 年
∼2001 年にかけて
「血液スクリーニング
検査セミナー」を実
施)
3,135,450Kshs
(約 500 万円)
2003 年度からは感染症対策と寄生虫対
策を分けて実施予定。
現地国内研修
日米の連携案件。KEMRI との連携も行
っている。KMTC においてはプロジェクト
方式技術協力を実施中(1998 年∼2003
年)
在外開発調査
ALMACO Management Consultants が
調査実施。
EU との連携。
第6章 アフリカにおけるHIV/AIDS分野の協力とVCT活動の展開
本報告書のまとめとして、我が国による今後のアフリカにおける HIV/AIDS 分野の協力
と VCT 活動の展開について、以下 4 つの視点から提言を行う。
6.1
•
アフリカにおける VCT 活動のニーズ対する提言
•
我が国の援助スキームを利用した VCT 活動支援に関する提言
•
我が国による VCT 活動支援案件の計画実施枠組みに関する提言
•
国際協力のパラダイム転換と HIV/AIDS 及び VCT 活動支援に関する今後の課題
アフリカにおけるVCT活動のニーズに対する提言
第 3 章で述べた通り、VCT 戦略は他の HIV/AIDS 対策活動、特に HIV 感染者へのケアの
充実が確立されて、初めてその意味を持つ。多くの人々にとって、不治の病とされる
HIV への自らの感染を知ること自体が既に大きな苦痛である。それに加え HIV 感染が判
明したことによって自らや家族がコミュニティにおいて差別を受けたり、必要な医
療・精神面でのケアを受けることが期待できない状況においては、HIV 検査がカウンセ
リングを伴っていても、事実上人々には意味をなさない。また、ケアとコミュニティ
への啓発活動以外にも、HIV 感染予防への入り口として VCT 活動が役割を果たすために
は、HIV 感染者・非感染者両方を対象とする継続した HIV 感染予防促進のための
Behavioral Change Communication(BCC)活動が必要となる。これらの点から、VCT を
「含めた」関連 HIV/AIDS 対策活動への総合的支援が最も効果的であり、かつ必要とさ
れている。アフリカにおいて VCT 活動を支援していく際のニーズについて、VCT 活動主
要コンポーネントに基づいて分析した。
VCT を始めとする HIV/AIDS 対策については、既に見たとおり、各国によってその重点
分野や対策の進捗状況にある程度のばらつきが見られる。以下では調査対象となった
国々を概観するに当たりほぼ共通して見られたリソース不足分野、及び更なる補強が
必要とされる分野をまとめた。しかし一般論の限界として、ここで述べる潜在的ニー
ズはあくまで概論かつ目安であり、実際に援助案件を企画するにあたっては相手国に
おける HIV/AIDS 対策調整機関、保健省エイズ・コントロール・プログラムなどを含む
政府関連機関、エイズ分野における主要 NGO・CBO、及び HIV/AIDS・VCT 活動に積極
的に支援を行っている他のドナーとの協議の上、施行中の国家 HIV/AIDS 対策戦略にの
っとった形で具体的な支援内容及び方法を決定することが望ましい。
なお、各ニーズの詳細については、p.6-9 ∼ p.6-12 の表 6-2∼6-5 を参考にされたい。
6-1
6.1.1
広報教育活動とアドボカシー活動にかかわるニーズ
VCT サイトが地域において設立されても、HIV 検査を受け、自分の HIV 感染状況を知る
ことの意義が理解できないと人々は、自発的に検査を受けようとは思わない。また、
HIV 検査の結果は自分や自分のパートナー、そして家族の生活に対しても重要な意味を
持ってくるため、コミュニティが HIV 陽性者を受け入れる抱擁力が無いと、人々は
HIV/AIDS に対する差別や偏見への恐れからあえて HIV 検査を受けようとは思わない。
エイズ渦の深刻な南部アフリカにおいて、自分の HIV ステータスを知って生活の将来
設計をしたいと思っている人々は多くいる。ケニア、タンザニア、ジンバブエで行わ
れた調査によると、約 60%の大人は自分の HIV ステータスを知りたいと思っている1。
しかし、プライベートな情報がどこからか漏れ伝わるかもしれないという恐れ、ある
いは HIV 陽性という結果が出た場合の不安、その後の生活に対する不安、HIV 陽性者に
対する社会的差別や偏見への不安などから、結局「知って何になる?」と踏みとどま
ってしまう場合が多い。これが、VCT サービスを提供するための前提条件として、以下
のような住民の行動変容を促すための広報教育活動と、社会一般によるサポートを獲
得するための、政策レベルに対するアドボカシーが必要とされる所以である。詳細は
p.6-9 の表 6-2 を参照されたい。
【1】
マスメディア・キャンペーン
新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、インターネット等を通しての集団に対するメディア・
キャンペーンは、HIV/AIDS に対する人々の関心を高めたり、参加を喚起したりする上
で重要である。ザンビアで行われているような VCT 活動のソーシャルマーケティング
は、広告代理店の力を借りながら大々的に VCT プロモーションを行いつつ、質の高い
VCT サービスを提供していこうという試みで、今後も都市部を中心に拡大していくもの
と考えられる。
【2】
コミュニティリーダーに対するアドボカシー
アフリカにおいてコミュニティレベルの活動を計画する場合、最初にコミュニティリ
ーダーたちの理解を得ることが大変重要である。伝統的チーフ制度が文化的価値観と
ともに根強く残っている国も多く存在し、伝統的チーフが民衆に対して強い影響力を
維持している場合が多い。また、宗教的指導者が強い影響力を持っている場合も多く、
彼らコミュニティリーダーに対する啓発活動、アドボカシー活動を行い、彼らの理解
を得ることは、その後の活動が展開しやすくなり、また、PLWHA への差別偏見を取り
除いていくためにも重要な戦略となる。
【3】
コミュニティ・アウトリーチ活動
マスメディアを使った取り組みとは違い、メッセージの送り手と受け手が顔を合わせ
たコミュニケーションを行うという個人または小グループへのアプローチとなる。活
1
United States Agency for International Development (USAID). Voluntary HIV/AIDS Counseling and Testing
– Many Africans Do Want to Know, Fact Sheet, 2000: Available at Web Site
<http://www.usaid.gov/press/releases/2000/fs00712_2.html>: p1
6-2
動形態としては、以下のようなものが考えられる。
•
ピア・エデュケーション活動: 職場、学校、非就学の若者、性産業従事者、
長距離トラックドライバー、男性同性愛者、親など
•
医療従事者や学校教員による職場や学校を核とした教育およびカウンセリン
グ活動
•
演劇、音楽、踊りなどを使った啓発活動
•
カミングアウトした PLWHA による催し及び啓発活動
•
サッカーなどスポーツイベントに付随させた啓発活動
•
PLWHA 訪問ケアへの参加と参加者による教育活動
どの国も若者へのエイズ対策が緊急課題となっており、若者をターゲットとして若者
に友好的で効果的なアウトリーチ活動が求められている。
【4】
広報・教育・アドボカシーのためのツール制作
対象や目的別にメッセージを組み立て、適切なメディア(チラシ、小冊子、ポスター、
フリップチャート、紙芝居、スライド、ビデオ、パワーポイントプレゼンテーション
等)を選択し、戦略的に活動を行うための効果的なツールを製作していく必要がある。
これまでの教材の中には、対象が定まらないもの、対象者のニーズ把握ができてない
もの、目的がはっきりしないものなどが多く見受けられる。また、ドナー配慮のため
か現地語を使った教材が極めて少ないというのも現実である。理想的には住民参加に
よるツール製作が望ましい。そうすることで住民のオーナーシップが高まり、ツール
も十分に活用されていくことになる。
【5】
HIV/AIDS・性感染症情報センターや思春期教育情報センターの設置
コミュニティごとに情報センターを設置すると、全ての情報を集中させておくとコミ
ュニティの人々が利用しやすいばかりでなく、そこが広報教育およびアドボカシー活
動の拠点となる。
6.1.2
VCT サイトにおける活動にかかわるニーズ
広報・アドボカシー活動により、VCT サービスをサポートするための社会的な条件が整
った後、必要となるのはそのサービスを提供する場すなわち VCT サイトである。VCT サ
イトは利用者が利用しやすい場所であるとともに、効果的な VCT サービスを実施する
ためのスペースやスタッフが整備されていなければならない。VCT サイトにおける活動
に必要な条件を以下のようにまとめた。なお詳細は p.6-10 の表 6-3 を参照されたい。
【1】
施設・資機材・消耗品
最も基本的なこととして、各国において VCT サイトへのアクセスを改善するというニ
ーズが挙げられる。特に農村部などの遠隔地において、VCT サイトやあるいはアウトリ
ーチ・サービスの拡充が望まれている。また施設内において利用者のプライバシーが
十分確保されるような設備や HIV/AIDS 教育のための教育教材も、まだの VCT サイトに
おいて確保されていない。さらに、VCT のかなめと言える HIV 検査キットなどの消耗品
6-3
が安定して供給され続けるための対策も重要な課題である。HIV 検査に直接必要な資機
材(消耗品を含む)については、目安として以下「VCT サイトで必要とされる資機材」
が挙げられる2。しかしながら、各国の保健省が独自のガイドラインなどを定めている
のが普通であり、各 VCT サイトが備えるべき最小備品項目、及び使用すべき機器・器
具の質基準等については事前に十分な調整を行う必要がある。HIV 検査キットについて
は WHO が品質基準に関するプロトコールをまとめており、それに基づいた検査キット
認可基準が保健省により定められているのが普通である。
サイトで必要とされる資機材
日本語
HIV 検査キット
ELIZA テストのための分析機器
ELIZA テストのための試薬や標準品(適
切な品質保証ストラテジー存在時)
遠心分離機
冷蔵庫
試験管ラック
タイマー
消耗品(ピペット、ピペットチップ、検
体用試験管)
検査サンプル採取のための用具(外科刀、
針、注射器、プラスター)
医療用手袋
消毒用消耗品
注射針やメス刃など鋭利な医療用廃棄物
処理箱
非鋭利な血液付着医療用廃棄物処理袋
(ガーゼ、綿棒、手袋、試験カードなど)
男性用・女性用コンドームと水性潤滑油
ティッシュ
安全な飲み水とコップ
テレビ・ビデオ装置と教育用ビデオ
HIV/AIDS についての情報パンフレット
【2】
英語
HIV test kits
Automated analyzers, such as enzyme
linked immunoassay (ELISA) readers
Reagents and controls for ELISA testing, if
appropriate to the Quality Assurance
strategy
Centrifuges
Refrigerators
Test tube racks
Timers
Consumables, such as pipettes, pipette tips
and specimen tubes
Supplies to collect specimens, such as
lancets, needles, syringes and plasters
Disposable gloves
Disinfectants and cleaning supplies
Sharps disposal bins for needles and lancet
Waste disposal (biohazard) bags for blood
contaminated non-sharps, such as gauze,
swabs, gloves and testing cards
Male and female condoms and water-based
lubricants
Tissues
Safe drinking water and cups
TV/video equipment and Health Education
Videos
Information leaflets
サービス提供
VCT サイトで中心となるサービスは、言うまでもなくカウンセリングと検査である。カ
ウンセラーについてみると、まだその数は十分でなく、また質の向上や質の管理につ
いても取り組むべき多くの課題がある。HIV 感染者と向き合うという責任の重い労働で
精神的・肉体的にカウンセラーが疲弊してしまう「バーンアウト(燃え尽き症候群)
問題」により、せっかく養成した優秀なカウンセラーが職を辞してしまうようなこと
2
Helena Walkowiak & Michael Gabra, Commodity Management in VCT programs, December 2002, USAID, MSH,
and FHI
6-4
を防ぐためのケアも重要な課題と言える。また検査については、即日結果を出すため
の検査結果スピード化にかかわる対策、及び検査の精度を高めるための対策が最も重
要といえる。
【3】
プログラム管理
VCT サイトにおいて、VCT プログラムを適切に管理することは、プログラムの持続発展
に不可欠である。将来のサービス改善に反映させるための利用者の情報管理や、サー
ビスのモニタリング評価の課題など、ニーズは多い。
6.1.3
HIV 検査後のケアとサポートにかかわるニーズ
HIV 検査の結果、陽性であるとわかった利用者がより快適な人生をすごすために、ある
いは陰性でるとわかった利用者が陰性であり続けるために、テスト後のケアとサポー
トは VCT サービスにおいて非常に重要な意義を持つ。これらサービスの中には、ポス
ト・テスト・クラブ(VCT サービス体験者の自主サポート・グループ活動)などのよう
に VCT サイトで提供できるものもあるが、多くは、VCT とは別の既存の組織であり、エ
イズに関わる疾患の加療を行うことができる保健医療施設や、患者とその家族が抱え
る多くの問題に対してサポートしてくれるような社会福祉組織、あるいは精神的サポ
ートを提供してくれるような教会などの宗教組織などが中心的役割を果たす。これら、
テスト後のケアとサポート体制は、VCT プログラムの成功に不可欠で、別の言い方をす
れば、これらテスト後のケアとサポート体制の存在が、利用者によりあらかじめ理解
されていないと、誰も VCT プログラムを利用しないといえる。具体的なサービスとし
ては以下が挙げられる。なお、詳細は p.6-11 の表 6-4 を参照されたい。
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
6.1.4
保健医療ケア(日和見感染症対策、性感染症対策および抗エイズ薬治療、HIV 母
子感染防止、家族計画、青少年を対象とするリプロヘルス・サービス
結核検査・治療、性感染症検査・治療
在宅ケア(HIV 感染者を看護する家族等への訓練・支援)
コンドームの配布/家族計画
ポジティブ・リビング促進
栄養指導と栄養食確保
収入確保のための活動
宗教者・カウンセラーなどによる精神的ケア
法律的サポートと HIV 感染者の人権を守るための活動(就職差別や保険加入に
関する差別への対策、遺言の作成や残される家族のための保障準備等)と共に
供給されるべき関連サービス
CSW への自立支援
VCT プログラム運営能力強化にかかわるニーズ
VCT プログラムを長期的に成功させていくためには、政策決定レベルでのプログラム運
営能力強化が必要となる。具体的には、以下のような点を強化するような対策を立て
6-5
る必要があるといえる。なお、詳細は p.6-12 の表 6-5 を参照されたい。
【4】
戦略フレームワーク/ガイドラインの設定
HIV/AIDS 対策の基礎となる、戦略枠組みや、VCT プログラム実施のためのガイドライ
ンの設定と実施への支援が VCT 活動への支援の重要な一歩といえる。カウンセリング
の質を一定基準に保つための項目や HIV 検査キットの選定基準または選定機関等も、
ガイドラインに含められるべきである。このプロセスを進めるためには、政治レベル
でのリーダーシップと、各機関の役割の明確化が前提となる。こうした部分が整って
いない国では、他のドナーと連携してアドボカシーを行い、主要ステーク・ホルダー
によるコンサルテーションと必要な政策文書の策定を促していく必要がある。
【5】
モニタリング・評価機能の強化
VCT プログラムのモニタリング・評価機能は現時点で非常に弱い。VCT プログラム全体
を継続的に改善していくための、モニタリング・評価機能の確立・強化についての対
策(評価モニタリング・ツールの開発とツールを使用するための訓練、VCT プログラム
の現状把握及びニーズアセスメント、情報データ・マネージメント、VCT プログラム・
マネージャーの確立及び実施)が実施される必要がある。
【6】
HIV/AIDS 対策および VCT 活動関連組織間の調整強化
HIV/AIDS 対策及び VCT 活動にかかわる国内の各組織(国家レベル、地方レベル、コミ
ュニティレベル、及びドナー)が、組織間の活動を調整をすることは、HIV/AIDS 対策
のための限られたリソースをより有効に活用することにつながる。国家レベルにおい
ては、国家エイズ対策調整機関の調整役的能力を強化するとともに、地方やコミュニ
ティのレベルでも組織間の調整が行われる必要がある。
【7】
地元 NGO/CBO への組織能力強化
VCT プログラムは、国によっては NGO が先駆者的役割を果たしているなど、NGO/CBO
の存在なしに成り立たない。しかしながら、どこの国でも同様に、NGO/CBO は組織
としての基盤が弱いところが多い。そこで、NGO/CBO の組織としての能力改善のた
めに、物質的、財政的支援を含む長期的な視野に立った支援により、NGO/CBO によ
る安定した VCT 活動を支えていく必要がある。
6.1.5
アフリカにおける VCT 活動支援に関するセクター横断的ニーズ
【1】
青少年、性産業従事者、及びその他のハイリスクな社会的弱者に焦点を当てた VCT 活動
10 代の若者、特に若い女性、難民、国内避難民、性産業従事者、刑務所における服務
者、長距離を単身で移動することの多い職業についている人々(兵士、長距離トラッ
クドライバーなど)は、HIV 感染の危険に最もさらされるグループであるが、その社会
的発言力が弱かったり社会的に見えにくい存在であることも手伝って、HIV/AIDS 対策
に含まれていないことが多い。
6-6
世界の新たな HIV 感染者のうち 50%近くが 15 歳から 24 歳までの若者であるという事
実にも関わらず、ケニアのように政策上 17 歳以下の若者が自分の意思によって VCT サ
ービスを自由に受けることが出来ない国もある。性産業従事者も HIV 感染にハイリス
クなグループでありながら、特に性産業が非合法である国々では、偏見と差別により
これらのグループへの支援が軽視される傾向にある。こうした現状は、特定の社会文
化的通念(結婚前の青少年は性交渉を持つべきではない、性産業従事者のように非合
法な商業活動をした結果 HIV に感染した者に対して、なぜ合法的にサポートする必要
があるのか、など)及び性に関する事項へのタブーに基づいている。しかし、最も優
先すべきは、これらのハイリスクな人々が HIV 感染から身を守るだけでなく、ひいて
は彼ら・彼女らが感染を他の人々へ広めることを防ぐということである。完治させる
治療手段が発見されておらず、また発症を遅らせる抗エイズ薬ですらアクセスが極め
て限られる現状において、HIV 感染から身を守る権利は人権の一部である。この点を念
頭に、他のドナーと連携し、VCT プログラムの評価結果から得られる実際のデータを基
に相手国政府への政策提言を行い、これらのハイリスクな社会的弱者がエイズ政策や
重要な関連文書に含まれるよう働きかけ3、実際のプログラムの対象にも優先的に含ま
れるようにしていくことは大変重要である4。これらハイリスク・グループにターゲッ
トを絞った HIV/AIDS 対策プログラムは、より効果的・効率的である事実はすでに広く
知られている事実である。
【2】
HIV/AIDS 対策と VCT 活動におけるジェンダー・メインストリーミング化
社会的に男性よりも弱い立場にある女性は、HIV/AIDS に関しても不利な状況にある。
HIV 感染率をみても、一般的に、男性よりも女性、特に若い女性が HIV により感染しや
すい傾向にあることがわかっている。これには、健康に有害な女性に対する伝統的行
為(女性性器切除:female mutilation)や、女性が男性よりも社会的に弱い立場にいる
ために望まない性関係を強要されたり、男性パートナーにコンドームを使用してもら
えなかったり、あるいは貧困のために成人男性を相手に売春行為をする(シュガーダ
ディ現象)などが挙げられる。
こういった問題に対しては、政策レベルと、サービス提供レベル双方での対応が必要
となる。政策レベルでは、全ての分野の政策の中で、社会規範や経済的なことに関す
る性差解消を推進する旨を明記する必要がある。サービス提供レベルでは、さらに具
体的な対応として、望まない性行為やコンドーム装着について、女性が男性とネゴシ
エーションできるような能力を身につけるためのサポートが必要となる。また貧困が
理由で売春をしなければならない若い女性が少なくない事実に対しては、彼女らに対
するほかの手段による所得創出機会も検討されなければならない。ジェンダー問題改
善のためには、男性に対しても、女性を尊重することの重要性を認識し、責任ある性
行動へと行動変容を促すような働きかけが必要である。このような行動変容のための
3
こうした政策に関する課題の例として、小中学校におけるエイズを含む性感染症マネジメントの実施、コン
ドーム及び緊急ピルの配布、HIV 感染防止教育プログラム実施を認めるよう教育政策改訂を促すことが挙げら
れる。
4
ウガンダにおける一部教会及びイスラム教団体は、こうした論理に基づいて、HIV 感染から身を守る権利、
すなわちコンドームの使用等を尊重する立場を打ち出し、HIV/AIDS 対策に積極的に取り組んでいる。ウガンダ
ジェンダー省が行っている両親を対象とする青少年のリプロダクティブ・ヘルス・ピア・エデュケーションに
おいても、感染よりは実効性のある予防を、という論理が受け入れられつつある。
6-7
働きかけは、考えが柔軟な若者ほど、より効果的に実施できることが明らかになって
いる。このようなジェンダー問題に関する働きかけは、VCT サイトにおけるカウンセリ
ング時、あるいは学校やコミュニティにおける若者を対象としたリプロダクティブ・
ヘルス教育の機会などを利用しての実施が可能である。
【3】
他セクターにおける HIV/AIDS 配慮と VCT プログラムの成否
HIV/AIDS は、保健セクターだけで解決できる問題ではない。既述のジェンダー問題や
教育、福祉、または農業、工業、商業等の全ての産業にかかわる問題である。特にエ
イズ渦の深刻なサハラ以南アフリカ諸国においては、HIV 感染防止と、PLWHA に対す
る偏見・差別防止のため、すべてのセクターでエイズ配慮がなされる必要がある。例
えば教育セクターにおいては、若者に対する HIV/AIDS 教育の場として、学校は重要な
基地となり、そのためには教師一人一人が HIV/AIDS について偏見のない正しい知識と
態度を身につける必要がある。また、企業においても、AIDS 発症による労働者の大量
喪失は大きな損失であるため、雇用主側は職場において適切な対応をすることが求め
られる。大きな企業であれば、職場において VCT プログラムを提供することも不可能
でない。最近では、働き盛りの労働者をエイズで失うより、雇用者側が投資して労働
者の命を延ばす策を講じる方が、より費用対効果が高いという認識が広まっている。
財政力のある企業の中には、最近の抗エイズ薬の価格低下により、企業で薬を購入し
て労働者やその家族に提供しているところもある5。VCT プログラムの成功は、VCT サイ
トにおけるサービス提供のあり方のみならず、VCT プログラムに対する社会の理解と受
け入れにも大きく関わっている。それが、様々なセクターで HIV/AIDS 配慮がなされ、
HIV/AIDS 対策と VCT プログラムに対する広報宣伝活動やアドボカシー活動が効果的に
実施されることが重要であるとされる所以である。
【4】
HIV/AIDS と貧困対策
HIV/AIDS と貧困が相関関係及び悪循環の関係にあることは4章で既に述べた。
HIV/AIDS の問題は、途上国及び先進国がこれまで多くを投資してきた貧困削減の努力
を無駄にしてしまう危険性をはらんでいる。そのようなことを避けるため、表 6-1 の
ように様々なセクターにおける早急な対応が必要とされている。
表6-1: HIV/AIDS問題による影響から貧困削減開発目標を守るための対策例
貧困削減のため
の開発目標
収入増加
栄養改善
安全な水
初等教育の保障
子供の健康
ジェンダー平等
5
HIV/AIDS 問題による影響から守るための対策
エイズ孤児の雇用サポート等
エイズにより自給農業の主たる生産者を失った家庭に対する食料保障等
エイズにより水汲み労働力を失った家庭に対するサポート
エイズにより亡くなった教師の補充、エイズ遺児に対する教育の保障等
抗エイズ薬による母子感染予防等
女性による HIV/AIDS・VCT サービスへの男性と同様のアクセスの保障等
UNDP, HIV/AIDS Implications for poverty Reduction, June 2001.
6-8
表6-2: アフリカにおけるVCT活動支援に関するニーズ 1
【1】 広報教育活動とアドボカシー活動に関するニーズ
活動内容
1. マスメディア・キ
ャンペーン
人的ニーズ
技術・運営ニーズ
• マスメディア・キャンペーンやソーシャルマー
• マスメディア・キャンペーンやソーシャルマーケ
ケティングを企画、調整、実行する人材の養
成
• HIV/AIDS の諸問題を正しく伝えることが出
来るマスコミ関係者の養成
• マスメディア・キャンペーン用素材制作者の
育成
• アドボカシー活動の企画、運営、モニタリン
グ・評価などを行う人材の育成
2. コミュニティリー
ダーに対するア
ドボカシー
• アドボカシーのための効果的コミュニケーシ
ョンができる人材の養成
• 伝統的チーフや宗教指導者の中からアドボ
カシーができる人材を育成
• アドボカシー用のツール制作者の育成
• コミュニティ・アウトリーチ活動全体の企画、
3. コ ミ ュ ニ テ ィ ・ ア
ウトリーチ活動
4. CSW 、 長 距 離 ト
ラックドライバ
ー、鉱山労働
者、男性同性愛
者などを対象と
する啓発プログ
ラム
運営、モニタリング・評価を行える人材の育
成
• グループ別のピア・エデュケータの養成
• HIV/AIDS の専門カウンセラーの養成
• 演劇、音楽、踊りを使いながらメッセージを
伝えることのできる指導者の育成
• カミングアウトしている PLWHA のコミュニケ
ーション能力向上
• 在宅ケア指導者育成
• アウトリーチを効果的に行うための印刷物や
視聴覚ツール制作者の育成
• ハイリスクグループへのアウトリーチ活動の
企画、運営、モニタリング、評価を行える人
材育成
• グループ別ピア・エデュケータの養成
• アウトリーチを効果的に行うための印刷物や
視聴覚ツール製作者の育成
• CSW に対する収入創出活動の企画、運営、
モニタリング、評価を行える人材育成
ティングの企画、調整、実行、モニタリング・評
価能力強化
• マスコミ関係者や広告宣伝会社との連携
• 有名スポーツ選手や歌手、その他人々特に若
者に影響力を持つ人とのネットワークと連携
• アドボカシー戦略の構築と管理
• アドボカシーの専門家とのネットワークと連携
• 伝統的チーフや宗教指導者とのネットワーク
構築(特に影響力の強い人材の取り込み)
• ツール制作者との連携
• コミュニティ・アウトリーチ活動全体の戦略構
築と管理
• ピア・エデュケータ管理
• コンドームなどの供給管理
• HIV/AIDS の専門カウンセラーとのネットワー
ク構築と連携
• 演劇、音楽、舞踊指導者とのネットワーク構築
と連携
• PLWHA とのネットワーク構築と連携
• 訪問ケア指導者とのネットワーク構築と連携
• 教育教材制作者とのネットワーク構築と連携
• アウトリーチ活動の戦略構築と管理
• CSW に対する収入創出活動支援プログラム
• ピア・エデュケータとの緊密な連携
• ハイリスクグループへリーチするためのポイン
ト(ホテル、ゲストハウス、バーやディスコ、そ
の他の溜まり場)の経営者との情報交換と連
携」
6-9
設備・資機材ニーズ
• マスメディア・プロダクションの
関わる視聴覚機材
• 放送機材の充実
• マスメディア・キャンペーン用印
刷物やビデオなどの視聴覚ツ
ール
• コンピュータ、プリンター、コピ
ー機およびプロジェクターなど
• アドボカシー活動に使用する情
報伝達ツールまたは教材
• 自転車やバイク、車両などの
移動手段とメンテナンス用品
• 視聴覚機材
• 教育活動に使用する教材(印
刷物や視聴覚ツール)
• コンドーム
• アウトリーチ用具一式
• 活動拠点となる情報センターの
設置
• 自転車やバイクなどのアウトリ
ーチ用移動手段
• 視聴覚器材
• 教材
• コンドーム
• 収入創出活動にかかわる資機
材や施設
財政的ニーズ
• 印刷物・ビデオ等制作または再版費
• 新聞・ラジオ・テレビ等のオンエア費
• イベント運営費
• インターネットサーバ運営管理費
• キャンペーン効果のモニタリング・評価に
関わる費用
• (広告代理店などと組んで行う場合は企
画費やキャンペーン全体の運営費なども
含まれる。)
• 人材養成のためのトレーニング費用
• アドボカシーツール制作費
• 印刷物の再版費
• コミュニティリーダーとの会議費
• アドボカシー活動のための人材派遣費
• 人材育成費
• アウトリーチ活動運営費
• 教材制作費と再版費
• 車両燃料費およびメンテナンス費
• アウトリーチ用具購入費
• コンドーム購入費
• 視聴覚機材購入費
• 人材育成費
• アウトリーチ活動運営費
• 視聴覚器材購入費
• 教材制作費または再版費
• 車両メンテナンス経費
• コンドーム購入費
• 収入創出活動支援費
表6-3: アフリカにおけるVCT活動支援に関するニーズ 2
【2】 VCTサイトにおける活動に関するニーズ
活動内容
人的ニーズ
技術・運営ニーズ
• 地方政府レベルおよびそれ以下のレベルにおける
1. VCT サイト数の拡大
2. VCT アウトリーチの
実施拡大
• 地方政府レベルおよびそれ以下の
レベルにおける HIV/AIDS・VCT プロ
グラム・マネジャーの配置
• アウトリーチに関わる人材の確保
3. VCT サイトでのプライ
バシー確保
4. 検査の質向上
5. カウンセラー養成・配
置・再訓練・バーンア
ウト対策
• 検査スペースを管理する検査技師
HIV/AIDS・VCT プログラム・マネジャーのキャパシ
ティー・ビルディング
• VCT サービスと他のケア及び感染予防サービスと
の連携を高めるための調整活動への支援(存在す
る関連サービス提供機関の調査とダイレクトリーの
作成、など)
• 効果的な VCT アウトリーチ・システムの確立
ルーム、ラボ、及び事務備品
• 基本通信機器
• 守秘義務を確保できるカウンセリング・ルーム
• HIV/AIDS ・ VCT
• アウトリーチ・サービス用車両
• VCT Consumables (VCT サービスのページを
• 出張サービスを行う
又はスペースを適切なロケーションにある既
存のクリニック、学校、コミュニティセンター内
に増設、または新たに建設
参照)
• コンドーム、STD 治療薬、家族計画用品、使い
捨て基本医療器具
• プライバシー確保のためのスペース
• 検査の質向上のためのトレーニング
• 検査スペース
• 必要資機材
• 養成訓練の実施、政府に対しより多
くのカウンセラーを配置するよう働き
かけ
• カウンセラーの不足に対応するため
の施策づくりを長期的に支援する
7. 血 液 検 査 施 設 の 地
方への拡大(検査キ
ットの認定の高速化)
• 検査技師の養成
• 地方における検査の質を保つためのモニタリング・
• VCT プログラムマネージャーの配置
• データマネージメント技術に関するト
レーニング
• データマネージメントのための機材
(パソコンなど)管理に関するトレー
ニング
及びそれに関するトレーニング
評価システムの確立
• 検査キットを適切に保管できる施設、設備(冷
蔵庫等)の充実化
• 必要数の HIV 検査キットの確保
• 血液検査施設及び必要資機材・消耗品
• 医療廃棄物の処理システム構築
• 利用者に関する情報記録の管理システムの確立、
守秘義務を守るための厳重な記録管理体制の確
立
• VCT を含む HIV/AIDS・STD など関連サービス使用
状況に関するデータ収集・使用システム(HIS など)
の強化
• VCT プログラム管理のためのモニタリング評価ツ
ール
6-10
医療従事者への手
当て
• 燃料費
• 検査技師の給与
ーに対する給料の財
源確保
ライン作りとその実行を支援する。
• 必要消耗品の必要量予測、調達、配給、適正使用
マネ
ジャー への 給与 ( 本
来相手国政府が保
障すべきである)
•増 加 し た カ ウ ン セ ラ
• カウンセリングの質を維持・向上するためのガイド
• 必要消耗品のマネージャー
財政的ニーズ
• サイト運営に必要な資機材(カウンセリング・
• プライバシー確保に関わるスタッフトレーニン
6. HIV 検査実施・検査
結果の読み取り・消
耗品管理
8. プログラムの管理記
録整備・モニタリン
グ・評価
設備・資機材ニーズ
• (可能であれば)データ管理のためのパソコン
•消 耗 品 購 入 の 財 源
確保
表6-4: アフリカにおけるVCT活動支援に関するニーズ 3
【3】 HIV検査後のケアとサポートに関するニーズ
活動内容
人的ニーズ
1. VCT 体験者の自主サポート・グルー
プであるポスト・テスト・クラブの設置
および運営管理
• ポスト・テスト・クラブの活動を企画運営できる人材
• アドボカシー活動のできる人材
• PLWHA の中でのリーダー
2. 保健医療ケア(日常生活における栄
養指導、リプロダクティブ・ヘルス指
導、結核を含む日和見感染症の予
防および早期治療、母子感染予防、
抗 HIV 剤治療など)
• HIV/AIDS 臨床および PLWHA の人権に関する特別トレ
ーニングを受けた医師、看護、栄養士、薬剤師
• 患者管理のできる人材
• ウィルス負荷検査や CD4 カウントなどを行える検査技師
• 臨床の現場から得られるデータを分析し、治療効果を評
価できる研究者
• HIV/AIDS 臨床および PLWHA の人権に関する特別トレ
3. 在宅ケアの実施
4. ポ ジ テ ィ ブ ・ リ ビ ン グ 促 進 活 動
(PLWHA に対するトレーニングなど)
ーニングを受けた医師、看護師、栄養士、ソーシャルワ
ーカー等
• 医療行為以外のケアや簡単な栄養指導を行える保健ボ
ランティア
• HIV/AIDS および PLWHA の人権に関する特別トレーニン
グを受けたカウンセラー、栄養士、ソーシャルワーカー等
• PLWHA のピア・カウンセラー
• 収入創出活動の企画、運営、管理、マーケティングなど
の技術のある人材
5. 宗教指導者等によるスピリチュアル・
ケア
6. 法律的サポートと HIV 感染者の人権
を守るためのアドボカシー活動
• HIV/AIDS および PLWHA の人権について深く理解のあ
る宗教指導者
• HIV/AIDS および PLWHA の人権について深く理解のあ
る法律専門家(弁護士など)
• PLWHA でアドボカシー活動のできる人材
技術・運営ニーズ
• 活動の企画運営管理技術(収入創出活動を含む)
• 関連諸機関とのネットワーク構築能力および情報収
集能力
• アドボカシーのためのコミュニケーション能力
• 寄附や寄贈物資などの管理能力
• 専門家育成のためのトレーニングコースやセミナー
など人材育成のための活動の企画、運営、モニタリ
ング、評価能力
• 国内外の情報収集能力(治療成果やケアにかかわ
る研究発表など)
• 保健医療以外の問題が発生した場合の対処のため
のネットワーク構築能力
• 活動の運営管理技術
• 人材育成のためのトレーニングやセミナーの企画、
運営、モニタリング、評価能力
• 個々の PLWHA の問題に対処するためのリファーラ
ルネットワーク構築能力
• 患者管理技術
• 活動の運営管理技術
• PLWHA のためのトレーニングやセミナーの企画、運
営、モニタリング、評価能力
• 個々の PLWHA の問題に対処するためのリファーラ
ルネットワーク構築能力
• 宗教指導者に対するアドボカシーや彼らのトレーニ
ングの企画運営評価能力
• 宗教指導者による PLWHA のためのカウンセリングセ
ッション企画運営管理能力
• 人材育成のためのトレーニングやセミナーの企画、
運営、モニタリング、評価能力
• 個々の PLWHA の問題に対処するためのリファーラ
ルネットワーク構築能力
• 国内外の情報収集能力(PLWHA の人権関連情報)
設備・資機材ニーズ
• ポスト・テスト・クラブの活動拠点と
なる場所(VCT サイトまたはその近
隣施設内)
• コンピュータその他
• 電話など通信機材およびインフラ
• 日和見感染症や性感染症治療薬
• 避妊と基本的保健医療サービスに
必要な資機材
• ウィルス負荷検査や CD4 カウント、
薬剤耐性などを調べるために必要
な検査施設及び機材
• 抗エイズ薬、コンドーム
• 基礎的な医薬品
• 家庭訪問のための移動手段(車両
または自転車)
• ピア・カウンセラーに対する活動資
材(文房具など)一式
財政的ニーズ
• 人件費
• 活動運営費
• 機材費
• 活動運営費
• トレーニングやセミナーの
開催費
• 検査機材や試薬、検査キ
ット購入費
• 施設整備費
• 医薬品、コンドーム購入費
• 活動運営費
• 医薬品購入費
• 車両または自転車の購入
費
• 活動運営費
• トレーニングやセミナーの
開催費
• ピア・カウンセラーへの謝
金
• 活動運営費
• トレーニングやセミナーの
開催費
• 活動運営費
• トレーニングやセミナーの
開催費
• PLWHA
• 活動運営費
• トレーニングやセミナーの
• 遺児の基礎教育確保のため、人権確保のためのア
ドボカシー能力
• 遺児収容施設の運営管理能
• 職業訓練の企画運営管理能力
• 遺児収容施設
• 職 業 訓 練 に 必 要な 機 材 ( 木 工 用
企画ができる人材
• 若者に優しい SRH サービス設置の企画、運営、モニタリ
ング、評価を行える人材およびサービス提供者(医療従
事者)の育成
• ピア・カウンセラーの育成
• 若者の SRH 向上のためのアドボカシーを実践できる人
材養成
• 活動運営費
• トレーニングやセミナーの
開催費
• 収容施設建築費
• 職業訓練機材費
• 若者のニーズ把握と企画運営を結びつける能力
• 若者とのコミュニケーション能力
• 若者の SRH ニーズをアドボカシーできる能力
• 個々の問題に対処するためのリファーラルネットワー
• スポーツ道具や施設などを友の合
った青少年 SRH センター
• 医薬品、コンドーム
• SRH 教材
• アドボカシーツール
• 人材育成費
• 活動運営費
• 教材、コンドーム、医薬品
10. 難民・国内避難民への緊急支援
• 難民キャンプスタッフ
• キャンプスタッフに対する HIV/AIDS 指導
11. CSW を対象とした自立支援
• CSW
• CSW とのコミュニケーション能力
• 収入創出活動プロモーションやマーケティング能力
• HIV や性感染症のための資機材
• 適切な言語による教育教材
• 収入創出活動に関わる資機材や
7. PLWHA のケアを行う家族やコミュニ
ティ・メンバーに対する教育訓練
8. エイズ遺児への支援
9. 青少年を対象とするセクシャル&リプ
ロダクティブ・ヘルス(SRH)・サービス
• HIV/AIDS および PLWHA の人権について深く理解のあ
る家族やコミュニティ・メンバーなど
• HIV/AIDS および PLWHA の人権について深く理解のあ
る教員やコミュニティ・メンバー
• アドボカシー活動のできる人材
• 遺児収容施設の運営管理ができる人材
• 遺児たちの経済的自立をめざすための職業訓練などの
に対する収入創出活動の企画、運営、モニタリン
グ、評価を行える人材育成
• 家族やコミュニティ・メンバーの教育訓練の企画運営
管理
ク構築
6-11
や家族に対する食料サポ
ート、基本的医薬品
開催費
具、ミシンなど)
施設
購入費
• 人材育成費
• 教材、コンドーム、医薬品
購入費
• 収入創出活動支援
表6-5: アフリカにおけるVCT活動支援に関するニーズ 4
【4】 VCTプログラム運営能力強化に関するニーズ
活動内容
1. VCT プログラム実施のためのガイドラインの設定と
実施
2. 国内調整活動強化
3. 地元 NGO/CBO に対する組織能力強化のための
支援
4. モニタリング・評価用ツールの開発とツールを使用
するための訓練
人的ニーズ
• 国レベル/地域レベルでガイド
ラインが策定できる知識/技
術を持った人材
• 国内の主な機関(各省庁、地方
政府、ドナー、国際 NGO、現地
NGO など)
• NGO/CBO の組織能力強化に
詳しい人材
• VCT
プログラ ム のモニタリン
グ・評価ができる人材養成
5. ベスト・プラクティス記録化
• 記録化を担当するスタッフ
6. VCT プログラムの現状把握及びニーズアセスメント
• 調査者
7. 情報データ・マネージメント
• VCT
8. HIV 検査キットの選定
プログラムのデータ・マネ
ージメント人材
• 国レベル保健省内検査キット
選定部局
• 地方レベル保健省担当者
• VCT サイトスタッフ(プログラ
ム・マネージャー、検査技師、カ
ウンセラーなど)
技術・運営ニーズ
設備・資機材ニーズ
• 国・地域の現状に合わせたガ
財政的ニーズ
• ガイドラインの大量印刷費
• すべての VCT サイト/関係者
イドライン策定技術
• カウンセリングの質を一定基準
に保つための項目
に対するガイドライン配布にか
かる輸送費
• 地方の VCT 関係者が国レベル
で実施される会議に出席する
際の旅費日当
• 組織間の効果的な連携の確立
• NGO/CBO の組織能力強化
• 評価モニタリング・ツールの開
発とツールを使用するための
訓練
• ベスト・プラクティス記録化のた
めの記録体制強化
• ベスト・プラクティス記録化の必
• 記録物の出版印刷費、配送費
• VCT
• ニーズ・アセスメント・データ分
• アセスメント費用
• IT 化支援と関連する IT 関連技
• データ・マネージメント用パソコ
プログラムニーズアセスメ
ント用ツールの開発
術の移転
• HIV
検査キットに関する選定ガ
イドライン
• VCT サイトの現状に基づいた、
適切な HIV 検査キットの選択知
識・技術
6-12
要機材
析用パソコン、プリンター
ン、プリンターなど
6.2
我が国の援助スキームを利用した VCT 活動支援に関する提言
6.2.1
我が国の援助スキームを利用した VCT 活動
ここでは、我が国の援助スキーム利用したアフリカにおける VCT 活動支援の可能性を、
主な援助スキームの枠組みの中で検討した。詳細については、次項表 6-6 を参照され
たい。スキームの種類とは以下のように分類した。
•
プロジェクト実施型:
技術協力プロジェクト、草の根協力プロジェクト、日
本 NGO 支援無償資金協力
•
資機材設備供与型:
一般/ノンプロジェクト無償援助、その他プロジェクト
関連無償、草の根・人間の安全保障無償資金
6.2.2
•
人材派遣型: 専門家派遣、青年海外協力隊
•
研修型: 現地国内研修、第三国研修、一般特設
•
調査型: 開発調査、プロジェクト形成調査、特定テーマ評価
我が国の援助スキームを利用した VCT 活動支援にかかわる課題
上記のような様々な ODA スキームの中で VCT 活動支援を実施していく際、次のような
検討されるべき課題があり、これらを検討しながら今後の支援計画が立てられること
が望ましい。
最も重要なことは、
国内における HIV/AIDS 対策と途上国に対する HIV/AIDS
支援という問題である。これは、ほかの国における HIV/AIDS 支援よりも、まず自らの
HIV/AIDS 対策をなんとかするべきではないかという議論である。またこの関連で、日
本における HIV/AIDS 対策の人材育成という課題も早急に検討が必要といえる。日本に
おいて、これまでにあまり積極的な国内エイズ対策が取られてこなかったため、国内
に HIV/AIDS の専門的知識・技術を有した専門家が十分育っておらず、これは日本がア
フリカなど途上国において支援を展開する際の障壁のひとつとなっている。
また、昨今のセクター・ワイド・アプローチやコモン・ファンドといった国際的援助
協調の流れの中で、HIV/AIDS 対策における国際的協調と日本のかかわりをどうするの
かといった課題も避けて通れない状況にきている。これについては、本章の最後で詳
細な検討を加えた。さらに、HIV/AIDS 分野においては、NGO が HIV/AIDS 対策におい
て重要な役割を果たしてきているという事実から、HIV/AIDS 対策における日本及び相
手国における官民協力といった課題も浮上してきている。また、実際に HIV/AIDS 対策
支援を計画する際に、HIV/AIDS 対策における選択的プログラム vs.包括的プログラム、
あるいは、非 HIV/AIDS 援助案件への HIV/AIDS コンポーネントの統合といった課題に
ももっと目を向けていく必要があるといえる。最後に、抗エイズ薬による HIV/AIDS 加
療が可能となってきている現在、途上国 HIV/AIDS 治療分野での日本による戦略をどう
するのかについても早急な対応が迫られている。
6-13
表6-6: 我が国の援助スキームを利用したアフリカにおけるVCT活動支援の可能性
支援
の種類
プロジェクト
実施型
資機材・
設備
供与型
日本の
主な援助ス
キーム
•
•
•
•
中央政府
地方自治体
草の根技術
協力プロジ
ェクト
•
•
現地 NGO
地方自治体
日 本 NGO
支援無償資
金協力
一般/ノン
プロジェクト
無償援助
その他プロ
ジェクト関連
無償
草の根・人
間の安全保
障無償資金
協力
•
•
現地 NGO
地方自治体
•
•
中央政府
地方自治体
•
•
中央政府
地方自治体
•
•
現地 NGO
地方自治体
専門家派遣
•
•
中央政府
地方自治体
•
•
•
•
•
青年海外協
力隊
•
•
地方自治体
現地 NGO
•
•
現地
国内研修
•
•
現地 NGO
地方自治体
•
コミュニティ・リーダー研修
第三国研修
•
•
中央政府
地方自治体
•
効果的メディア・キャンペーン技術
一般特設
•
中央政府
開発調査
調査型
コミュニティ啓発と政策提言
技術協力プ
ロジェクト
人材
派遣型
研修型
VCT 活動主要コンポーネン ト
主なカウン
ターパート
プロジェクト
形成調査
特定テーマ
評価
•
•
•
•
•
•
•
•
•
国・地方における VCT サービス啓
発
青少年リプロダクティブヘルス教育
青少年対象 HIV/AIDS リプロダクテ
ィブヘルス教育
VCT マスメディアキャンペーン (メ
ディア作成用視聴覚機)
車両
マスメディア・キャンペーン
印刷物
情報センターの増加
HIV/AIDS 対策ジェンダー・メインス
トリーム化
学校・コミュニティ・ベースにしたラ
イフ・スキル教育
教員(ライフ・スキル教育・リプロ教
育と HIV/AIDS 教育含む)
村落開発(コミュニティ HIV/AIDS 啓
発活動と VCT プログラム支援)
VCT サイトにおける活動
•
•
•
•
•
VCT カウンセラー養成
VCT アウトリーチ・サービ
ス・システムの開発
血液検査施設及び資機材
VCT サイトの活動情報デー
タの整備(IT化支援)
VCT サイトの活動情報デー
タの整備(IT化支援)
VCT サイト施設拡充
•
•
検査技師派遣
HIS
•
•
検査技師派遣
HIS
•
•
•
•
•
•
•
•
VCT プログラム運営のための組織能力強化
VCT プログラムにおける消耗品安定供給
国レベルでのガイドライン作成支援
地方レベルでのガイドライン作成支援
•
地元NGO/CBOに対する組織能力強化
•
IT化支援
•
IT機材
•
ガイドライン・マニュアルの印刷配布
保健医療ケア専門家(医師・看
護婦・臨床検査技師など)
•
•
•
VCT プログラム評価モニタリングアドバイザー
情報データマネジメントアドバイザー
NGO/CBO能力強化
保健医療専門家
青少年活動
保母職業訓練(エイズ遺児支
援)
•
•
HIS
NGO/CBO能力強化
サポートグループなどの施設
エイズ遺児の職業訓練施設
検査技師
HIS
カウンセラー
プログラムマネージャー
VCT サイトにおけるプログラ
ムマネージャー
•
•
•
リファレンスラボ高額検査機材
検査施設の拡充
感染症治療薬の供与
•
•
ポスト・テスト・クラブ施設拡充
エイズ遺児支援施設
•
•
•
•
•
•
•
VCT プログラム運営能力強化
•
•
•
•
保健医療ケア
青少年リプロダクティブヘルス
在宅ケア支援地域保健システ
ム
コミュニティの PLWHA に対する
所得向上プログラム
保健医療ケア・在宅ケア
難民避難民
青少年リプロダクティブヘルス
VCT アウトリーチ・サービス
のための車両
•
•
•
•
•
•
•
テスト後のケアとサポート
•
•
•
家族・コミュニティ
ポジティブ・リビング研修(PHA
グループリーダー)
長距離ドライバー対象啓発プロ
グラム
•
•
•
•
•
VCT プログラムにおける消耗品安定供給
HIV 検査技術向上
ベストプラクティスの共有・ガイドラインの見直
効果的な VCT プログラム運営
ガイドラインの作成
•
VCT サービスの情報システム整備
中央政府
地方政府
•
HIV/AIDS 対策と VCT サービスニーズ
中央政府
地方政府
•
VCT プログラムの形成
中央政府
地方政府
•
各国の VCT サービス事例研究
VCT 検査技術向上
検査技師養成
6-14
6.3
我が国の援助スキームを利用した VCT 活動支援案件の計画枠組みに関する提言
上記のような VCT 活動支援を実施するにあたっての計画枠組みについて、日本の ODA
案件の計画・運営・評価に現在使用されているプロジェクト・デザイン・マトリック
ス(Project Design Matrix: 以下、「PDM」と表記する)の枠組を使って、以下二つの視点
から、VCT 活動案件計画を検討した。詳細については、次頁表 6-7、及び 6-8 を参照さ
れたい。表から明らかなとおり、様々な ODA スキームで VCT 支援を検討していくこと
ができ、また、非 HIV/AIDS 分野案件においても、VCT 支援の活動を統合させて、セク
ターを越えた効果的・効率的支援を進めていくことができる。
•
ODA スキーム別 VCT 活動支援案件 PDM 例
•
非 HIV/AIDS 分野案件への VCT 活動統合型案件 PDM 例
6-15
表6-7: ODAスキーム別VCT活動支援案件PDM例
案件タイプ
プロジェクト実施型
資機材・設備供与型
スキーム
技術協力プロジェクト
人間の安全保障・草の根無償
一般無償
専門家派遣
青年海外協力隊
一般特設研修・現地国内研修など
最終受益者
(ターゲット・
グループ)
VCT サイト及び地域住民
VCT サイトを利用する住民
国家エイズ委員会
現地 NGO 本部
及び VCT センターの利用者
HIV 検査レファレンスラボの
臨床検査技師
上位目標
・ エイズによる死亡率が低下する
・ HIV 感染予防が促進される
・ HIV 感染者が必要な医療ケア・
サポートを早期に受けられる
・ 女性の HIV/AIDS 感染リスクが
低下する
・ VCT サービス利用者が増加する
・ VCT サービスに対する利用者
の信頼が向上し、HIV 感染者が
必要な医療ケア・サポートを早
期に受けられる
プロジェクト
目標
地域人口における HIV 新規感染数
が減少する
当該国の人口のうち VCT サービス
を利用できる割合が増加する
全てのセクターの HIV/AIDS 対策
においてジェンダー配慮がメインス
トリーム化される
VCT サービス提供に関する情報管
理システムが向上する。
当該国の HIV 検査レファレンスラボ
の検査精度が向上する
1.
1.
1.
成果
2.
3.
人々の HIV 感染予防に関す
る知識・態度が改善する。
地域の VCT センター利用者
が増加する
VCT センタースタッフの知
識・技術が向上する
1-1 地域住民の HIV/AIDS に関
するKAP調査を行う
1-2 地 域住 民 の ニ ー ズ に あった
HIV/AIDS 啓発活動を計画・
実施する
活動
2-1 地域 VCT センターの現状に
関する調査を行う
2-2 上記調査に基づき、VCT セン
ター設立/改善を計画・実施
する
3-1 VCT センター・カウンセラーの
トレーニングを実施する
3-2 VCT センター・ロジスティクス
(消耗品供給)担当スタッフの
トレーニングを実施する
3-3 VCT センター検査技師のトレ
ーニングを実施する
VCT サービスの提供拡大に
必要な基盤が整備される
人材派遣型
2.
1-1 VCT サイトを建設する
1-2 既存の VCT サイトの設備を拡
充する
1-3 VCT サイトに必要な資機材を
配備する
女性のライフ・スキル向上の
ための計画が策定される
HIV/AIDS 対策にかかわる地
方政府・医療サービス提供
者を対象とするジェンダー配
慮のための IEC 教材を開発
する
1-1 国家エイズ委員会の中にジェ
ンダー配慮タスクフォース
1-2 女性のライフ・スキル向上に
関するニーズアセスメントを実
施する
1-3 女性のライフスキル向上のた
めのプログラム・モデルを各セ
クターごとに策定する
2-1 HIV/AIDS 対策にかかわる地
方政府・医療サービス提供者
のジェンダーに関する認識・
態度について調査する
2-2 上記調査結果に基づいた、
IEC 教材を開発する
6-16
1.
2.
研修型
利用者の情報が VCT サービ
ス改善に活用される
必須消耗品の安定供給が確
立される
1.
2.
3.
1-1 VCT サイトにおける利用者記
録フォーマットが確立される
1-2 利用者記録フォーマットの使
用に関する研修を行う
1-3 利用者データ管理プログラム
を開発する
1-4 利用者データをサービス改善
に反映させる
2-1 必須消耗品の消費量と在庫
管理記録フォーマットを確立
する
2-2 必須消耗品安定供給と在庫
管理に関する研修を実施する
2-3 必須消耗品の調達と供給の
システムを確立する
2-4 必須消耗品の消費状況と在
庫切れ状況をモニタリングす
る
HIV 関連検査の手技が向上
する
HIV 検査データ・マネージメン
ト技術が向上する
当該国の HIV 検査トレーニン
グの立案・実施能力が向上す
る
<研修内容>
1-1 HIV の生物学的性質、感染と
免疫系に対する影響
1-2 HIV 抗体検査法
1-3 HV 検査に関わる保健医療ス
タッフの安全管理
2-1 セロプレバレンス・サーベイラ
ンスシステムの確立
3-1 検査技術研修計画
3-2 研修手法
3-3 検査技術モニタリング評価
表6-8: 非HIV/AIDS案件へのVCT活動統合型案件PDM例
他の保健・医療案件
教育案件
緊急支援案件
農村貧困対策(村落開発)案件
プロジェクト名
青少年リプロダクティブヘルス(RH)
理数科中等教育教員養成プロジェクト
難民支援プロジェクト
農村生活改善プロジェクト
最終受益者
(ターゲット・グ
ループ)
10-24 歳の青少年
中等教育教員候補者
難民
農村貧困層
上位目標
プロジェクト目標
・ 青少年の妊娠関連死亡率が低下する
・ 青少年の間で HIV 感染率が低下する
青少年のリプロダクティブヘルスが改善する
1.
成果
2.
3.
活動
・ 中等教育就学率が向上する
青少年の RH と HIV/AIDS に関する知
識と態度が改善する
青少年に対する RH と HIV/AIDS サー
ビスが改善する
コ ミ ュ ニ テ ィ が 青 少 年 の RH と
HIV/AIDS 問題を理解・サポートする
ようになる
1-1 青少年の RH と HIV/AIDS に関するK
APサーベイを実施する
1-2 青少年がRHと HIV/AIDS に関する知
識と態度を改善するような対策を計画
する
2-1 地域保健医療施設の青少年に対する
サービスの現状調査を行う
2-2 保 健 医 療 施 設 の 青 少 年 RH と
HIV/AIDS 対策サービスを改善する
(VCT サイトの設立含む)
2-3 青少年の RH と HIV/AIDS 対策を担当
するスタッフ(VCT サイトスタッフ含む)
に対して青少年にフレンドリーな対応
ができるようトレーニングを実施する
3-1 地域青少年の RH と HIV/AIDS 問題の
関連について分析する
3-2 地域が青少年 RH とHIV/HIV/AIDS
問題について理解・サポートしてくれる
ような対策を計画・実施する
3-3 地域が青少年の VCT サイト利用をサ
ポートするような働きかけをする
中等教育に携わる教員の数が増加する
1.
2.
3.
中等教育理数科分野に関する知識が
向上する
中等教育理数科分野に関する教育技
法の知識・技術を習得する
HIV/AIDS に関する適切な知識と教育
技術を習得する
1-1
2-1
2-2
2-1
専門分野の知識を習得する
中等理数科教育技法を教授する
教育実習を実施する
HIV/AIDS に関する基礎知識を習得す
る
2-2 HIV/AIDS に関する教育技術を習得す
る
2-3 VCT サービスについての正確な情報
を提供し、利用を促進する
6-17
・ 難民の生活が改善する
・ 農村貧困層の生活が改善する
難民キャンプにおける基本的な社会サービ
スが保障される
地域貧困層の所得が向上する
1.
2.
3.
基本的保健ニーズが満たされる。
難民の子供達に対する基本的教育が
保障される
難民キャンプ内の社会的弱者(女性・
子供・障害者)
1-1 主な疾病に対する予防サービスを提
供する
1-2 主な疾病に対する治療サービスを提
供する
1-3 HIV/AIDS 予防に関する正確な知識・
技術を提供する
1-4 キャンプ内に VCT サイトを設立する
2-1 キャンプ内で初等教育プログラムを実
施する
2-2 キャンプ内で職業訓練プログラムを実
施する
3-1 社会的弱者のための専門家相談サー
ビスを提供する
3-2 社会的弱者(女性など)の自助グルー
プを立ち上げ、社会的支援とエンパワ
メントを推進する
1.
2.
3.
貧困層の社会経済状況と農業ニーズ
が明らかにされる
貧困層に適した農産物の生産・商品
化・販売技術が普及される
貧困層の生活が改善される
1-1 農村貧困調査を実施する
1-2 貧困層の中でターゲットとするグループ
を特定する
2-1 貧困層に適した農産物栽培・・商品化
技術、及び普及アプローチを検討する
2-2 C/P・普及員に対する普及研修を行う
2-3 貧困層に対して普及活動を行う
2-4 地域農産物市場調査を実施する
2-5 農産物販売促進のために、地域組織
(NGO、行政府、教会等)との連携を検
討する
3-1 貧困層の生活改善ニーズ調査を実施
する
3-2 貧困層の生活改善ニーズに応じて、意
識向上・家族計画等のプログラムを検
討する
3-3 貧困層に対し、HIV/AIDS 予防に関す
る正確な知識・技術を提供する
3-4 村落内に VCT サイトを設立する
3-5 貧困層 HIV 感染者に対し、必要な医
療ケア・サポートを提供する
6.4
国際協力のパラダイム転換と HIV/AIDS 及び VCT 活動支援に関する今後の課題
本報告書の最後に、我が国による今後の VCT 活動支援を考える際に検討されるべき、
国際協力のパラダイム転換にかかわる重要な課題について議論したい。HIV/AIDS 及び
VCT 活動は、途上国援助の分野の中では比較的新しいものであり、それゆえ、既存の援
助手法が確立されていないため、昨今の国際協力の中で挙げられている以下二つの重
要な課題に対し、より取り組み易い状況にあるといえる。今後、この二つのパラダイ
ム転換を十分考慮しながら我が国による当該分野の支援計画を立てていく必要がある。
6.4.1
•
「プロジェクト」から「プログラム」へ
•
「技術移転」から「技術獲得」へ
「プロジェクト」から「プログラム」へ
「プロジェクト型(Project-oriented)/スキーム型(Scheme-oriented)援助」から、
「プログラム型(Program-oriented)援助」へのパラダイム転換
現在、DAC などの国際的な援助の枠組みを形成する場やアフリカなどの国々において
は、セクター・ワイド・アプローチ(Sector Wide Approaches: SWAPs)6という「プログラ
ム・アプローチ」的枠組みや、コモン・ファンド (Common Fund)7
という「一般財政支
援型援助」等が模索されている。これは、各ドナー組織による過去のプロジェクト型
援助に対する疑問8に基づいて提案され始めたものであるため、従来の援助手法を認め
ないという排他的な要素も有している。このような流れの中で、本報告書第 5 章でも
述べたとおり、これまで我が国が実施してきた「技術協力プロジェクト」等も、
「旧弊」
とみなされる傾向にあり9、一部アフリカ諸国の特定セクターにおいて、プロジェクト
型の援助の実施はやりにくい状況になりつつある。
確かに、「プログラム」という全体の「森」を見ずして、「プロジェクト」あるいは「日
本の援助スキーム」という「木」に目を向けていたこれまでの我が国による援助手法
には、効率的、効果的な援助実施という視点からみると、改善されるべき点は多い。
しかしながら、それがすぐに「プロジェクトは不要である」あるいは「プロジェクト
を実施するための個別スキームが不要である」という議論にはつながらない。プロジ
ェクトは、プログラムや政策を実施するための具体的手法や教訓を導き出すなど、良
質なプログラム実施に不可欠な要素をたくさん含むものであるし、スキームの存在も、
6
相手国政府が作成したプログラムの枠内で、各ドナーが相互に調整しながら進める援助。
各ドナーからの援助資金を、被援助国の一般財政に投入する援助。ドナーは個々の活動には直接関与しない。
8
多くの援助が投入されたにもかかわらず、絶対的貧困の削減に対して、期待されたほどの効果が上がってい
ないのではないかという疑問。
9
JICA, Frontier no. 44, 2003 年 3 月
7
6-18
予算的なことのみならず、様々なタイプの活動を整理していく上で役に立つ。
今後は、よりマクロな視点に立っての「プロジェクト」あるいは「スキーム」という
議論を進める必要があるといえる。具体的には、「貧困削減というプログラム枠組みの
中での HIV/AIDS 対策」、あるいは「HIV/AIDS 対策というプログラム枠組みの中での VCT
活動支援」という「プログラム・アプローチ」の視点に立って、個々のプロジェクト
を計画・実施していく必要がある。このためには、すでに我が国により作成されてい
る「国別援助実施計画」や、「開発課題に対する効果的アプローチ」などをベースに、
日本の援助のあり方について対外的な理論武装をしていく時に来ている。
「一般財政支援型援助」に関しては、アフリカの一部の国や特定セクターにおいて、
援助政策がこのような流れになってきていることは事実である。同時に、
「一般財政支
援がはたしてベストな援助政策であるのか」という批判が、ほかの途上国を含む国際
社会において存在することも事実である。こうした状況に対し、ただ黙っているだけ
でなく、我が国によるこれまでの援助の経験と貢献を体系化して、今後の援助政策の
あり方についての国際議論に積極的に参加していく必要がある。
それには、我が国が今後さらにプログラム・アプローチを推進し、個々のプロジェク
トやそれを実現するためのスキームを理論的に体系化することにより、「効果的・効率
的援助政策」について、国内と世界に向けて説明していかなければならない。「VCT 活
動が大切だから VCT 活動支援プロジェクトを行う」や、
「○○援助スキームがあるから、
それを使って VCT 活動支援プロジェクトを行う」という下からの積み上げによる援助
手法は国際社会においては通用しなくなってきている。今後は、
「貧困削減」あるいは
「HIV/AIDS 対策」というより大きな体系的フレームの中で、「貧困削減における
HIV/AIDS 対策」、あるいは「HIV/AIDS 対策における VCT 活動」をとらえるというプロ
グラム・アプローチをより強く進めていく必要がある。
6.4.2
「技術移転」から「技術獲得」へ
「先進国で処方された良い技術の、途上国への移転」から
「先進国や途上国で処方された技術と結合して、地元で内発的に生まれる(獲得される)良い技術」
へのパラダイム転換
2002 年 3 月にメキシコ・モンテレイで開催された「開発資金会議」において、UNDP
は、次頁表のとおり、「能力開発」そのもののパラダイム・シフトが必要であると主張
した。
6-19
表6-9: UNDPが提示した新たなパラダイム10
既存のパラダイム
新たなパラダイム
1.開発の性格
経済社会状況の改善
社会の変革(能力構築を含む)
2.効果的な
開発協力の条件
海外で処方された良い政策
内発的に生まれた良い政策
3.能力開発
4.援助側と非援助側の
力関係の違い
個人、組織、社会の3層の能力
人的資源開発(組織強化を含む) として、総合的に開発すべきも
の
パートナーシップと互恵の精神 精神論は機能しないため、各論
に基づき総論として対処すべき として具体的な対策を講じるべ
もの
き
5.知識の獲得
知識は移転されるもの
知識は獲得されるもの
6.最も重要な
知識の形態
北における知識の開発と南への
輸出
南または北の国々から獲得され
た知識と結合された地元の知識
UNDP が主張するまでもなく、「技術移転:先進国で処方された良い技術の、途上国へ
の移転」という旧来の国際協力の手法は、昨今限界にきており、「技術獲得:先進国や
途上国で処方された良い技術と結合して、地元で内発的に生まれる(獲得される)技
術」というパラダイムに転換されるべき時が来ている。特に HIV/AIDS の場合は、先進
国・途上国双方においてほぼ同時発生的に起こった問題であるため、他の国際協力分
野と異なり、
「先進国がより多くの知識・技術・経験を有している」という法則は必ず
しも成り立たない。事実、我が国による国内 HIV/AIDS 対策は、ある部分では非常に遅
れており、途上国の経験から学ぶべき点も少なくない。そのような状況の中で、国際
協力による HIV/AIDS 対策及び VCT 活動支援を効果的・効率的に進めるために、プロジ
ェクトを通じて「途上国・先進国双方の内発的技術獲得」を模索するアプローチが推
進される必要がある。
10
Ibid.
6-20
添付資料集
添付資料1. 各団員の調査業務日程
添付資料2. 調査対象国訪問組織及び国内訪問組織リスト
(連絡先情報及び HIV/AIDS 活動概要)
添付資料3. 聞き取り調査質問リスト
添付資料4. 参考資料リスト
添付資料5. VCT サービス計画実施マニュアルの参考例
添付資料6. HIV/AIDS 分野で活動する GII/IDI メンバーNGO リスト
添付資料7. GII/IDI メンバーとのワークショップ記録要約
添付資料1
各団員の調査業務日程
添-1
各団員の調査業務日程
週
月/日
和 田
角 井
井 田
秋 吉
1
12/2∼12/30
国内作業
国内作業
国内作業
国内作業
2
12/31∼1/6
3
1/7∼1/13
4
1/14∼1/20
現地調査
・ウガンダ
5
1/21∼1/27
6
1/28∼2/3
7
2/4∼2/10
8
2/11∼2/17
9
2/18∼2/24
10
2/25∼3/3
11
3/4∼3/10
12
3/11∼3/17
13
3/18∼3/24
現地調査
・ザンビア
・ガーナ
・南アフリカ
国内作業
国内作業
添-2
添付資料集2
調査対象国訪問組織及び国内訪問組織リスト
(連絡先情報及び HIV/AIDS 活動概要)
添-3
ザンビア
機関名
大使館
JICA 事務所
面会者
HIV/AIDS 関連活動概要
木村孝司一等書記官
Tel: 260-1-251555
Fax: 260-1-253488
大田孝治次長
座間智子プログラム・オフィサー
Tel: 260-1-291075/294433
Fax: 260-1-292619
草の根無償資金援助のスキームを使ってエイ
ズ関連の草の根の活動を支援している。
現在、エイズ結核対策プロジェクトが UTH ラボ
をカウンターパートに実施されており、HIV 簡易
迅速検査キットも 2001 年∼2004 年の予定で保
健省を通して全国の VCT センターに供与して
いる。
JICA エイズ結核対策プロ
ジェクトオフィス
(University Teaching
Hospital (UTH) Virology
Laboratory)
Zambia VCT Service
【保健省外郭団体 VCT サ
ービスの調整機関】
大泉耕太郎チーフアドバイザー
広田眞美公衆衛生・疫学専門家
横井健二調整員
Tel/Fax: 260-1-253236
University Teaching
Hospital (UTH) Virology
Laboratory
【ウィルス性疾患国家リファ
レンスラボ】
Tropical Diseases
Research Centre
【政府熱帯病研究機関】
Dr. Francis Kasolo, Head of Virology
Tel/Fax: 260-1-254536
Ndola Central Hospital
【ンドラ市中央病院】
Dr. Jabbin L. Kulwanda, Executive Director
Tel: 260-2-611585
Planned Parenthood
Association of Zambia
(PPAZ) Head Office
(Lusaka)
【VCT 関連 NGO】
Ms. Twambo, Ag. Executive Director
Ms. Martina S. Nondo, Ag. Director of Finance
& Administration
Tel: 228178/228198
Fax: 228165
Kara Counselling & Training
Trust
【VCT 関連 NGO】
Mr. John Imbwae, Manager, Jon Hospice
Mr. Stanley Chama, Hope House Programme
Manager
Tel: 260-1-229847
Fax: 260-1-229848
Central Board of Health
(CBoH)
【政府中央保健局】
Dr. Mirriam Chipimo, Reproductive &
Adolescent Health Specialist
Tel: 260-1-253179/80/81
Fax: 260-1-253173
New Start VCT Center
(Society for Family Health)
【VCT 関連 NGO】
Mr. Suzgo Kapanda, Site Manager
Tel: 260-1-292443
Fax: 260-1-292463
UNAIDS
国連エイズ合同プログラム
Dr. Kenneth Ofosu-Barko, Country
Programme Advisor
Tel: 260-1-250233/252645
Mr. Chembo, Coodinator
Zambia VCT Service
University Teaching Hospital (UTH)
Dr. Rosemary Musonda, Deputy Director
Dr. Chilengi
Tel/Fax: 260-2-621112
添-4
2001 年から立ち上がったプロジェクトで UTH ラ
ボをカウンターパートにラボの強化を主なる目
的とし活動が展開されている。
VCT 全国展開のための調整を行っている。
CBoH の委託を受け、VCT サービスのモニタリ
ングを行う。
ウィルス性疾患の国家リファレンスラボとして
NAC と協力しつつ、HIV タイプ/サブタイプの研
究を行ったり、母子感染予防プログラムや抗レ
トロウィルス剤治療プログラムを技術的にサポ
ートしたり、疫学調査の検体検査の中心となっ
たりしている。
熱帯病の研究機関であるが、HIV に関しては、
国家リファレンスラボとして機能しており、NAC
と協力しつつ、母子感染予防プログラムや抗レ
トロウィルス剤治療プログラムを技術的にサポ
ートしたり、疫学調査の検体検査の中心となっ
たりしている。
VCT および母子感染予防プログラムや抗レトロ
ウィルス剤治療などを実践している。
ルサカとキトゥエのリプロダクティブ・ヘルス・セ
ンターにおいて VCT サービスを提供。思春期
保健プログラムの実践に経験豊富で、若者に
対するエイズ教育もその一環として行ってい
る。コンドームのソーシャルマーケティングも行
っている。UNFPA のカントリープログラムの実
践パートナーである。
ザンビアにおいて最初に VCT を実践した
NGO。カウンセラーの養成、PLWHA のトレーニ
ング、エイズホスピスの経営など HIV/AIDS に
総合的に取り組んでいる NGO の一つである。
国の HIV/AIDS 対策の中の医療ケア・サポー
ト、母子感染予防、抗エイズ薬治療など医療分
野における対策を調整する。
2002 年より始まった VCT のソーシャルマーケテ
ィングプロジェクト。これまで SFH はコンドーム
ソーシャルマーケティングを実施してきたが、こ
れはジンバブエでの VCT ソーシャルマーケティ
ングの手法をコピーしたプログラムである。
国のエイズ対策におけるアドバイザーであり、
国連機関やドナーに対しても情報提供を行って
いる。
ウガンダ
機関名
面会者
HIV/AIDS 関連活動概要
大使館
森原書記官
JOCV 事務所
津川智明 JOCV 調整員
橋口 JOCV 調整員
ウガンダエイズ委員会
(Uganda AIDS Commission)
【ウガンダ政府エイズ対策
調整機関】
Dr. David N. Kihumuro Apuuli, Director
General
Dr. Lucy Korukiiko Ndyomugyenyi,
Epidemiologist
Mr. James Kigozi, Communications Officer
Ms. Kindyomunda Rosemary Mwesigwa,
Head of NADIC (Audio visual Unit)
Plot No. 213 Sentema Rd. Mengo, P. O.
Box 10779
Kampala, Uganda
Tel. (256-41) 273538 or Mr. James
(256-77) 423-838
Dr. Elisabeth Madraa, ACP Manager
Dr. Saul Onyango, PMTCT Coordinator
Ms. Vastha Kibirike, VCT Project Manager
Tel. (256-41) 695 109
Fax. (256-41) 231 584
Dr. Jim Arinaitwe (Technical Advisor)
Mr. James Odit (Project Manager)
P.O. Box 7136 Kampala, Uganda
Tel: 041-343-071
Fax: 041-256-374
AIDS/STD Control
Programme
【Ministry of Health】
PEAL Project
【Ministry of Gender, Labour
and Social Development】
AIDS Information Centre
(AIC)
【VCT 関連 NGO】
UNAIDS
UNAIDS HIV/AIDS
Partnership
UNFPA
GOAL Uganda
【International NGO】
Dr. Hitimana-Lukanika Charles, Executive
Director
Mrs. Josephine Kalule, Programme
Manager
Ms. Jane Batte, Public Relations Officer
Musajja Alumbwa Rd., Plot 1321, Block 12,
Mengo-Kisenyi, P.O. Box 10446
Kampala, Uganda
Tel. (256-41) 347603/231528
Fax. (256-41) 270022
Dr. Ruben Delprado, Country Programme
Advisor a.i.
Plot 6, Hannington Road
P.O.Box 24 578
Kampala
Uganda
Tel: 256 41 33 55 12
Ms. Inge Tack, Programme Officer
Tel. 232 316/234 592
Fax. 259 146
Mr. James Kuriah, Representative
Dr. Chris Baryomunsi, National Progarmme
Officer (HIV/AIDS)
Plot 7 Kampala Road
3rd Floor, Commercial Plaza, P.O. Box
7184
Kampala, Uganda
Tel. 257-103 (rep)
345-600, 341-466, 344-871, 325-852,
258-852, 258-816 258-823, 343-568
Fax. 236-645
Ms. Kirsten Mitchell
HIV/AIDS Coordinator
041-266742
077-708-887
077-700-413
添-5
国連による人間の安全保障基金(Human Security
Fund)を通じた現地 NGO への国内避難民を対象
とするリプロ・ヘルス・サービス提供分野での支援
実施。人的資源の限界等により、直接的な HIV/
AIDS 関連分野支援はしていない。
人的資源の限界等により、直接的な HIV/AIDS
関連分野支援はしていない。しかしながらその必
要性は認識しており、将来的に人的資源の提供を
行いたいと考えている。
NGOs と政府機関のコーディネーションを取る役
割を果たしている。
国内における全セクターに渡る HIV/AIDS 対策活
動の調整、全セクターを統括する政策・指針作りと
その執行。
保健医療分野における HIV/AIDS 対策に関する政
策・指針作りとその執行
コミュニティセンターを通じて、HIV に関する IEC と
ピアエデュケーション、若者とその親に対する SRH
実施。保健省との協働により、当該地域における
ユース・フレンドリーSRH サービスを拡張し、資金
の見込みがあれば VCT を導入したい。
若者の SRH 実践に関して実績がある。
VCT サービスの実施。保健省による政策・ガイドラ
イン作成、及び VCT プロジェクト実施に関する実
質的な技術支援
AIC サイトにおけるデータ収集、及び保健省による
調査への協力
2002 年に Partnership Forum を設立
HIV/AIDS 関連の介入や現存するプログラムの拡
大、抗レトロウィルス剤や VCT も含めたケア等の
強化を支援。UN 機関及び二国間援助が戦略的に
国家 HIV/AIDS 対策全体を支援してゆくための調
整活動。
保健省による VCT プロジェクト支援。人間の安全
保障基金による UNFPA を通じたリプロダクティブ・
ヘルス・サービスの提供(緊急時には VCT サービ
スも含まれる)。リプロダクティブ・ヘルス・サービス
計画の一環として HIV/AIDS を捉え、コンドーム促
進による、消耗品の保障、母性の尊重、若者のリ
プロダクティブヘルスなどに関してを政府や NGO
を通じて支援
2000 年から HIV/AIDS 関連の現地 NGO のネット
ワーク作りとキャパシティー・ビルディングを実施。
現地 NGO と地方政府との連携を通じた VCT 提供
も行っている。UNFPA による国内避難民プロジェ
クトでの協働のため、最近ニーズ・アセスメントが
行われた。
南アフリカ
機関名
面会者
HIV/AIDS 関連活動概要
大使館
松井一等書記官
小野専門調査員
JICA 事務所
実川幸司氏
河崎絵里子 南部アフリカ HIV/AIDS 担当
Ms. Milo Zama
VCT focal person
Tel: 27 12 312 0419
Fax: 27 12 326 2891
HIV/AIDS and STDs
Directorate, Department of
Health
【政府
エイズ対策調整機関】
Gauteng Provincial
Government Health Service
Department
【地方政府内のエイズ調
整・実施機関】
Township AIDS Project
(TAP)
【VCT 関連 NGO】
Oasis Rover Crew
【VCT 関連 NGO】
UNAIDS
UNAIDS ICT ESA Office
草の根を通じたハード面での支援や、NGO 等
への教材供与、及び上記支援に関わる
JOCV との連携など。
Mr. Solly Makhubele, Rapid HIV Test
Coordinator
Dr. Marian Ahem, Director
Ms. Lilian Mnisi, Deputy Dir.
Tel. 011-355-3029
・国家エイズ委員会(SANAC)を始めとする上
位政府機関が HIV/AIDS に関する政策決定
を行うためのブリーフィング・ドキュメントの作
成
・保険医療分野における HIV/AIDS 対策に関
する政策・指針作りと、その執行に関する地
方政府への指導
・当該地域での HIV/AIDS 対策ガイドラインの
策定及び実施
・当該地域での HIV/AIDS 対策プログラムの
実施
Ms. Simangele Dlamini, Gauteng Provincial
VCT Coordinator (Tel. 27-11-355-3345)
Dr. Tsholofel Sekete, Gauteng STI Provincial
Coordinator
Ms. Cleopatra Sehloho, Gauteng Provincial
Coordinator for PWLA support and HIV/AIDS
counseling
Ms. Enea Motaung
P.O. Box 4168 Johannesburg 2000
Tel: 011-982-1016/1027
Fax: 011-982-5621
www.tap.org.za
Mr. Thabiso Peo, Director
Mr. Wandile Mazibuko, Deputy Dir.
P.O. Box 3647, Springs, Johannesburg
Tel; 011-736-9002
Fax: 011-737-6751
Dr. Mbulawa Mugabe
Country Programme Advisor
Tel: 27-12-338 5197
Fax: 27 12 338 5193
Dr. Bunmi Makinwa,
(Team Leader)
Tel: 27 12 338 5308
Mobile : 27829014864
Metropark Building
351 Schoeman Street, 5th floor
P.O. Box 6541, Pretoria 0001
South Africa
Central Tel: 27 12 3385313
Fax: 27 12 3385310
Dr. Catherine Sozi
Intercountry Programme Adviser
Tel: 27 12 338 5012
添-6
旧黒人居住地区ソウェトに位置し、1990 年以
来青少年向けの HIV/AIDS 啓蒙活動やピア・
エデュケーションを実施。
2000 年∼移動式 VCT ユニットによる VCT サ
ービスの提供を行っている
ジョハネスバーグ郊外にある老舗の CBO。
スラムへのホームビジット、教会や学校にお
ける HIV/AIDS 啓蒙活動、VCT、PHA やエイ
ズ孤児への支援を10年以上にわたって行っ
ている。
南アフリカ政府の HIV/AIDS 対策を支援する
国連機関の調整
東・南アフリカにおける UNAIDS オフィスの調
整と支援
ガーナ
機関名
大使館
JICA 事務所
Ministry of Health
面会者
窪田博之一等書記官
西岡佐知子専門調査員
Tel: 233-21-765060
Fax: 233-21-765066
木下真里 保健セクター企画調査員
Tel: 233-21-238419/20 Fax: 233-21-238418
Dr. Samuel Akotey Akor, Director, Policy
Planning Monitoring & Evaluation
Tel: 233-21-684298
National AIDS Control
Programme 【政府保健省】
Dr. Kwaku Yeboah, Programme Manager
Tel/Fax: 233-21-667980
Ghana AIDS Commission
【政府 エイズ対策調整機関】
Prof. Sakyi Awuku Amoa, Director-General
Tel: 233-21-782262/63 Fax: 233-21-782264
Public Health Reference
Laboratory 【保健省リファレン
スラボ】
Ms. Veronica Bekoe, Director
Tel: 233-21-661048
Fax: 233-21-500898
Planned Parenthood
Association of Ghana (PPAG)
【エイズ関連 NGO】
Dr. Joana Nerquaye-Tetteh, Executive Director
Tel: 233-21-310369
Fax: 233-21-304567
Wisdom Association
【エイズ関連 NGO】
Ghana HIV/AIDS Network
(GHANET)
【エイズ関連 NGO】
Mr. Brandford Yegoah, President
Tel: 233-024-777565
Family Health International
(FHI)
【エイズ関連 NGO】
Mr. Kwame A. S. Essah, Country Director
Ms. Phyllis Antwi, Project Manager, Start
Programme
Dr. J.M. Tuakli-Ghartey, Deputy Project Manager
& Community Care Advisor, Start Programme
Tel: 233-21-250456
Fax: 233-21-250457
Mr. E.K. Danquah, Administrator
Tel: 233-21-777815
Fax: 233-21-772226
Christian Health Association of
Ghana (CHAG)
【ミッション系病院統括組織】
USAID Ghana
CIDA West Africa Project to
Combat AIDS and STI (CIDA
WAPTCAS) Head Office
UNAIDS Ghana Office
UNICEF Ghana Office
UNFPA Ghana Office
Mr. Anyimadu Amaning, National Coordicator
Tel: 233-21-776678/772439 Fax:
233-21-776725
Mr. Peter Wondergem, HIV/AIDS Team Leader
Mr. Lawrence Aduonum-Darko, Reproductive
Health Specialist
Tel: 233-21-228440
Fax: 233-21-231937
Dr. Khonde Nzambi, National Coordinator
Mrs. Comfort Asamoah-Adu, Deputy Project
Coordinator
Tel: 233-21-241452
Fax: 233-21-233340
Ms. Kristan Schoultz, Country Programme
Adviser
Tel: 233-21-238256 Fax: 233-21-254595
Mr. Andrew Osei, HIV/AIDS Officer
Mr. Moses Mukasa, Representative
Mrs. Mercy Osei-Konadu, Programme Officer
Tel: 233-21-775978 Fax: 233-21-772829
添-7
HIV/AIDS 関連活動概要
草の根無償資金援助のスキームを使っ
てエイズ関連の草の根の活動を支援し
ている。
野口記念医学研究所への支援を中心に
HIV/AIDS 対策に貢献してきている。
国の HIV/AIDS 対策の中の医療ケア・サ
ポート、母子感染予防など医療分野にお
ける対策の方針を立てたり、ガイドライン
を作ったりしている。
国の HIV/AIDS 対策の中の医療ケア・サ
ポート、母子感染予防など医療分野にお
ける対策を実施する。
国の HIV/AIDS 対策に関わる最高機関
で、国家政策や指針作り、セクター横断
的対策の調整などを行う。
国家リファレンスラボとして、疫学調査の
データを収集、分析している。また、検査
キットを調達、分配するのも重要な役割
の一つ。また、VCT の検査サービスの質
を管理している。
コミュニティにおける保健推進活動や思
春期性教育分野に経験を蓄積している
NGO で、野口研に協力しモバイル HIV 検
査も実施した経験がある。
PLWHA が作る組織。
HIV/AIDS に関連する NGO のネットワー
クである。Ghana AIDS Commission から
業務委託を受け、関連 NGO とのネットワ
ークを通して事業を実践している。
HIV/AIDS カウンセラー養成に貢献してき
た。NACP、PHRL、野口研などと協力し
ながら、VCT と母子感染予防プログラム
や抗レトロウィルス剤治療とを結びつけ
た対策を技術的にサポートしている。
ミッション系病院の統括組織で、CHAG
傘下の病院には NACP、PHRL、野口研、
FHI などと協力しながら、VCT と母子感染
予防プログラムや抗レトロウィルス剤治
療とを結びつけた対策を実践してきてい
る病院もある。
エイズ対策プログラム支援に積極的なド
ナーである。これまでも FHI を中心にそ
の活動を支援してきている。
性感染症の治療と予防に焦点を当て、
HIV 蔓延を押さえようとしてきている。
国のエイズ対策におけるアドバイザーで
あり、国連機関やドナーに対しても情報
提供を行っている。
HIV/AIDS を母子保健の観点でとらえ、
様々なプログラムのサポートを行ってい
る。
HIV/AIDS を思春期保健としてとらえ、
様々なプログラムのサポートを行ってい
る。
国内
機関名
外務省経済協力局調査計
画課
JICA アフリカ・中近東・欧
州部アフリカ課
JICA 医療協力部医療協
力第二課
(財)エイズ予防財団
ぷれいす東京
【国内エイズ関連 NGO】
シェア(国際保健協力市民
の会)
【国内エイズ関連 NGO】
面会者
HIV/AIDS 関連活動概要
國井修氏
〒100-8919 東京都港区芝公園 2-11-1
住友不動産芝公園タワー
Tel:03-6402-2112 Fax:03-6402-2111
諸永浩之氏
関 智宏氏
〒151-8558 東京都渋谷区代々木 2-1-1
新宿マインズタワー8F
Tel:03-5352-5174 Fax:03-5352-5114
竹本啓一氏
〒151-8558 東京都渋谷区代々木 2-1-1
新宿マインズタワー8F
Tel:03-5352-5214 Fax:03-5352-5320
沢崎 康氏
〒105-0001 東京都港区虎ノ門 1-23-11 寺
山パシフィック 4 階
Tel:03-3592-111 Fax:03-3592-1182
池上千寿子氏
〒169-0075 東京都新宿区高田馬場
4-22-46 ザ・テラス 304
Tel:03-3361-8964 Fax:03-3361-8835
沢田貴志氏
〒112-0004 東京都文京区後楽 2-20-18
掛川ビル 1F
Tel:03-5800-4778 Fax:03-5800-4779
アフリカにおけるエイズ関連 ODA 案件発掘に
関わる。
JICA のアフリカにおける全ての技術協力案件
および無償案件の調整を行う。
JICA の医療協力関連の技術協力プロジェクト
案件を担当。
国内エイズ感染者相談、エイズカウンセリング
研修、アジア地域エイズ専門家研修など
国内 HIV 感染者や家族のための相談窓口。
HIV/AIDS と共に生きる人たちがありのままに
生きられる環境づくり。感染者によるピア・カウ
ンセリングなど。
アジアの途上国にてエイズを含む保健プロジェ
クトを実施。
【電話インタビュー】
ケニア
機関名
面会者
大使館
間島重路書記官
三尾良子専門調査員
JICA 事務所
下田氏
HIV/AIDS 関連活動概要
日米コモン・アジェンダに沿った日米連携の中
での HIV/AIDS 対策支援→Kenyatta National
Hospital における VCT 施設 5 室を草の根無償
で建設(そのほか計画中案件多数)
添-8
添付資料3
聞き取り調査質問リスト
添-9
1.調査対象国 HIV/AIDS・VCT 関連組織に対する聞き取り調査質問リスト
Policy Survey on Best Practices on HIV/AIDS and VCT in sub-Saharan Africa:
Issues and Potential Areas for Assistance
List of Questions for semi-structured Interview
HIV/AIDS interventions
1) Policies/strategies/action plans/guidelines & laws related to HIV/AIDS and VCT;
2) Research findings related to HIV/AIDS and VCT
3) Modality of coordination and implementation of HIV/AIDS/VCT interventions in the
country;
4) National priority areas in HIV/AIDS interventions
5) Issues in HIV/AIDS interventions
6) Gap and needs in HIV/AIDS interventions (human, policy/institutional, material and
technical resource gaps)
VCT interventions
7) Coverage of VCT services in the country
8) Contents of VCT services
9) Existing follow-up services for VCT
10) Best practices on VCT and contacts of relevant institutions/organizations;
National priority areas in HIV/AIDS and VCT interventions
11) Issues in VCT interventions
12) Gap and needs in VCT interventions (human, policy/institutional, material and technical
resource gaps)
添-10
2.調査対象国在外日本大使館・JICA 事務所に対する聞き取り調査質問リスト
HIV/AIDS 分野における日本の援助に関する質問リスト
(在外大使館、在外 JICA 事務所)
1.
在外日本大使館/在外JICA事務所では、当国 HIV/AIDS 対策の分野で、これまでにど
のような支援を実施されていますか?支援団体、支援内容、規模、期間、スキームの種類
等についての概要をお教えください。
2.
当国の政府機関や NGO 等から、HIV/AIDS 対策のための様々な期待が寄せられている
ことと思います。その主立ったものにはどのようなものがあるか、お聞かせください。
3.
当国における VCT 活動を含む HIV/AIDS 対策支援のために、日本として、どのような形
での協力が可能だと思われますか?
4.
HIV/AIDS 対策に関して、本邦及び現地 NGO との連携について、ご意見がありましたら、
お聞かせください。
5.
我が国による ODA スキームを使って、VCT 活動を含む HIV/AIDS 対策支援を実施する
際、在外日本大使館や、在外 JICA 事務所として、本省(本部)に要望したい点などござ
いましたら、お聞かせください。
添-11
添-12
添付資料4
参考資料リスト
添-13
南アフリカ参考資料
No.
1
タイトル
AIDs Care & Prevention Recommendations of HST
Review (PowerPoint)
出版年・月
組織
2002 年 9 月
2
Clinical guidelines for managing HIV/AIDS infection in
adults at hospitals
2001 年 9 月
Gauteng Health Department
3
Clinical guidelines for managing HIV/AIDS infection in
primary care
2001 年 9 月
Gauteng Health Department
4
Epidemiological Fact Sheets on HIV/AIDS and Sexually
Transmitted Infections −South Africa-
2002 年
UNAIDS, UNICEF, WHO
5
Global AIDS Program Countries: South Africa
Center for Disease Control and
Prevention-South Africa: NATIONAL
CENTER FOR HIV, STD AND TB
PREVENTION
6
Guidelines for Pre-test, Post-test and Ongoing
Counselling and Group Information Session
NATIONAL Department of Health
7
HIV/AIDS & STD STRATEGI PLAN FOR SOUTH
AFRICA 2000-2005
Department of Health, SOUTH AFRICAN
GOVERNMENT
8
HIV/AIDS profile in the provinces of South Africa.
Indicators for 2002
Rob Dorrington, Debbie Bradshaw and Debbie
Budlender, Centre for Actuarial Research,
Medical Research Council and the Actuarial
Society of South Africa
9
HOW TOESTABLISH VCT SERVICES:VOLUNTARY
COUSELLING GUIDELINES
10
Human Development Reports "Human Development
Indicators 2002"
11
Important links to government and other HIV/AIDS
resources
12
Interim Findings on the National PMTCT Pilot Sites
Lessons and Recommendations - February 2002
2002 年 2 月
SOUTH AFRICAN GOVERNMENT
13
Life in South Africa: HIV/AIDS
2002 年 12 月
Oxfam Community Aid Abroad
14
15
2002 年 11 月
Voluntary Counselling and Testing Services
2002 年
UNDP
SOUTH AFRICAN GOVERNMENT
MINIMUM STANDARDS FOR COUSELLING AND
TRAINING
National HIV and Syphilis Sero-Prevalence Survey of
women attending Public Antenatal Clinics in South
Africa 2000
Department of Health, HIV/AIDS Directorate
Department of Health, SOUTH AFRICAN
GOVERNMENT
16
Rapid HIV testing
2000 年 8 月
HIV/AIDS and STD Directorate, Department
of Health, SOUTH AFRICAN GOVERNMENT
17
South Coast Hospice's Community-Based HIV/AIDS
Home-Care Model
1999 年
The Department for International
Development (DFID) - South Africa
18
STATEMENT OF CABINET ON HIV/AIDS
2002 年 4 月
SOUTH AFRICAN GOVERNMENT
19
The Impact of HIV/AIDS on adult mortality in South
Africa
2001 年 9 月
Rob Dorrington, David Bourne, Debbie
Bradshaw, Ria Laubscher and Ian M. Timaeus;
Burden of Disease Research Unit, Medical
Research Council
20
The Integration of HIV/AIDS Care and Support into
Primary Health Care in Gauteng Province.
2002 年 9 月
Dr. Nomonde X…
21
The mission statement of
STD Programme
22
The South African Directory
SOUTH AFRICAN GOVERNMENT
23
Voluntary Counselling and Testing (VCT)
HIV/AIDS and STD Directorate, Department
of Health, SOUTH AFRICAN GOVERNMENT
the National HIV/AIDS and
添-14
South African Department of Health National AIDS Unit, Department of Health
ウガンダ参考資料
No.
タイトル
出版年・月
1
2001-2005 Government of Uganda-UNICEF Country
Programme Progress Report 2001
2
AIDS INFORMATION CENTER General Information
Leaflet
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
AIDS INFORMATION CENTRE, INFORMATION PACK
FOR PROVISION OF QUALITY INTEGRATED VCT,
STD, EP, TB AND PTC/PLI SERVICES
AIDS INFORMATION CENTER PLWHA Leaflet "Improve
Life, Prevent TB: for People Living with HIV"
AIDS INFORMATION CENTRE, VCT Leaflet "Knowledge
is Power: Hold on to it"
Annual REPORT UNICEF Uganda, OPERATIONAL
RESERCH ON NEVIRAPINE January -December 2002
Country Report Presentation: At the African Seminar on
AIDS Development Asean AIDS Workshop Tokyo-Japan
(PowerPoint)
Epidemiological Fact Sheets on HIV/AIDS and Sexually
Transmitted Infections −UgandaGOAL Pamphlet
GOAL UGANDA COUNTRY PROFILE 2002
GOAL UGANDA FIELD TRIP REPORT BUNDIBUGYO
DISTRICT, APRIL 2001 FINAL VERSION: "This is the
end of the world" "All the young people are going to die
of AIDS"-displaced women, Union Camp, Bundibugyo
Town, April 2001.
Government of Uganda-UNICEF Country Programme
ANNUAL REVIEW DRAFT REPORT
Human Development Reports "Human Development
Indicators 2002"
Knowledge is Power: Voluntary HIV counselling and
testing in Uganda
Policy Guidelines for Reduction of the Mother-to-Child
HIV Transmission in UGANDA
Policy Guidelines on Feeding of Infants and Young
Children in the Context of HIV/AIDS
The National Strategic Framework for HIV/AIDS
Activities in Uganda: 2000/1-2005/6
The PREVENTION OF MOTHER TO CHILD HIV
TRANSMISSION (PMTCT) PROGRAMME (Booklet)
The role of Behavior change in the decline in HIV
prevalence in Uganda
2001 年
添-15
UNICEF
AIDS INFROMATION CENTER
2002 年
UNICEF
2003 年 3 月
Prof. OMASWA, Director General Health
Services, Ministry of Health, Uganda
2002 年
UNAIDS, UNICEF, WHO
GOAL
2002 年
GOAL
2001 年 4 月
Mark Adams, Emergency Co-ordinator
200 年 11 月
Government of Uganda, UNICEF
2002 年
UNDP
1999 年 6 月
UNAIDS Case Study
1999 年 10 月
Ministry of Health, The Republic of Uganda
2001 年 9 月
Ministry of Health, The Republic of Uganda
2002 年 10 月
Government of Uganda, Uganda AIDS
Commission
STD/AIDS CONTROL PROGRAMME,
MINISTRY OF HEALTH
Susheela Singh, Jacqueline E. Darroch, and
Akinrinola Bankole, THE ALAN
GUTTMACHER INSTITUTE
UNAIDS
2001 年
UNAIDS
2002 年 11 月
UNDP
2000 年 3 月
2002 年 10 月
The Uganda HIV/AIDS Partnership, Information Booklet
UGANDA AIDS COMMISSION SECRETARIAT
HIV/AIDS RESOURCETRACKING STUDY, 2001
UGANDA HUMAN DEVELOPMENT REPORT 2002
DRAFT
Voluntary testing and counselling services: The AIDS
information Center (AIC), Kampala, Uganda
組織
Care in STD/HIV/AIDS Programs
ケニア参考資料
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
タイトル
出版年・月
AIDS IN KENYA, Background Projections Impact
Interventions Policy, Fifth edition
AIDS IN KENYA, Background Projections Impact
Interventions Policy, Sixth edition
ASSESSING THE HIV/AIDS POLICY
ENVIRONMENT IN KENYA: The 1998 AIDS POLICY
ENVIRONMENT SCORE AND THE 2000 AIDS
PROGRAM EFFORT INDEX
Blood Transfusion System in Kenya; A study by JICA
collaboration with the Ministry of Health
Country Report Presentation-Kenya: At the African
Seminar on AIDS Development Asean AIDS
Workshop Tokyo-Japan(PowerPoint)
Epidemiological Fact Sheets on HIV/AIDS and
Sexually Transmitted Infections −KenyaEstimating National HIV Prevalence in Kenya from
Sentinel Surveillance Date
GTZ intersectoral AIDS activities: The Kenyan
experience
Guideline to Antiretroviral Drug, Therapy in Kenya
1999 年
2001 年
POLICY Project
2002 年 1 月
ALMACO Management Consultants
2003 年 3 月
Kenya Medical Research Institute
2002 年
UNAIDS, UNICEF, WHO
2000 年
NASCOP
KENYA MEDICAL TRAINING COLLEDGE
2002 年
UNDP
2002 年 4 月
Family Health International 2002
2002 年
Control Programme(NASCOP), Ministry of
Health
List of Registered VCT Centers in Kenya
18
19
National Condom Policy and Strategy
2001 年 9 月
20
National Guidelines for Voluntary Counseling and
Testing
2001 年
21
National HIV/AIDS Situation Analysis
1998 年
17
22
23
24
25
26
Ute Schwartz, Consultant GTZ Reproductive
Health Project
National AIDS/STD Control Programme
Ministry of Health
2002 年 3 月
Mainstreaming gender into the Kenya National
HIV/AIDS Strategic Plan 2000-2005
NASCOP Impact Update: Implementing AIDS
Programme and Care Project
National AIDS Control Council (PowerPoint)
16
National Aids/STDs Control Programme,
Ministry of Health
National Aids/STDs Control Programme,
Ministry of Health
2000 年 11 月
2001 年 2 月
HIV/AIDS VOLUNTARY COUNSELLING AND
TESTING AWARENESS COURSE
Impact Update: Implementing AIDS Programme and
Care Project
Human Development Reports "Human Development
Indicators 2002
Implementation of the New Blood Safety Policy:
Proceeding of a consultative technical meeting
Kenyan National Manual for Training Voluntary
Counselling (VCT) Counselors
組織
National AIDS Control Council
Family Health International
National Home Based Care Programme and Service
Guidelines
POLICY GUIDELINES ON BLOOD TRANSFUSION IN
KENYA
Proposal on HIV/AIDS Voluntary Counselling and
Testing (VCT) Courses in 2002
REPORT OF THE 4TH KEMRI/MOH-HIV P.A.
WORKSHOP FOR CENTRAL PROVINCE, HELD
FROM OCTOBER 22ND - 26TH, 2001
Strategic Plan for the Kenyan HIV/AIDS and STDs
Control Program 2000-2005
2002 年 5 月
2001 年 11 月
National AIDS Control Council
Ministry of Health & National AIDS Control
Council
National AIDS/STD Control Programme
Ministry of Health
National AIDS/STD Control Programme
Ministry of Health
THE NATIONAL BLOOD TRANSFUDION
SERVICE OF KENYA
2002 年
JICA
2001 年 10 月
KENYA MEDICAL RESEARCH INSTITUTE
2000 年 11 月
National AIDS Control Council
添-16
27
Tacking the HIV/AIDS Problem
28
The Kenya Demographic and Health Survey 1998
29
30
31
32
33
34
1999 年
The Kenya National HIV/AIDS Strategic Plan
200-2005 Popular Version
TRAINER7S NOTES AND ADMINISTRATION
SCENARIOS AND HANDOUTS
ケニア医療技術教育強化プロジェクト
ケニア感染症および寄生虫症研究対策プロジェクト
ケニアにおける JICA 事業の概要
ケニアにおける JICA 事業の概要
Kazuko KIMURA (JICA Short term expert)
Graduate School of Kanazawa university
National Council for Population and
Development
National AIDS Control Council
Liverpool VCT Project, Kenya
1998 年 1 月
2001 年 4 月
2003 年 2 月
2002 年 10 月
添-17
JICA 医療協力部
JICA 医療協力部
JICA アフリカ・中近東・欧州部
JICA ケニア事務所
ザンビア参考資料
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
タイトル
Costing the Zambia National HIV AIDS Strategic
Framework 2001-2003 Preliminary Report
COUNSELLING POLICY AND PRACTICE
GUIDELINES: Voluntary Counselling and Testing
GUIDELINES FOR TRAINING COUNSELLORS FOR
VCT
出版年・月
2001 年 10 月
National HIV/AIDS/STD/TB Council
2000 年 11 月
KARA COUNSELLING AND TRAINING
CENTIRE
Virology Laboratory, University Teaching
Hospital (UTH); HIV/AIDS&TB Control
Project, JICA
HIV Laboratory Manual for the Processing
Samples, Use of HIV Test Kits and Data Management
HIV/AIDS Guideline for Zambia- Chapter 2;
VOLUNTARY COUNSELLING AND TESTING
HIV/AIDS in ZAMBIA - Background Projections
Impacts Interventions
HIV/AIDS/STD/TB Strategic Framework 2001-2003
Summary
INVENTORY AND APPRAISAL OF COUNCELLORS
IN TWULVE DISTRICT IN ZAMBIA
JICA HIV/AIDS and TB Control Project- SECOND
DRAFT
National Guidelines on Management and Care for
HIV/AIDS
組織
1999 年 9 月
Ministry of Health/ Central Board of Health
2000 年 10 月
National HIV/AIDS/STD/TB Council
2001 年 6 月
The Zambia Counselling Council
2003 年 1 月
2002 年
Japan International Co-operation AgencyJICA(Zambia)
NATIONAL HIV/AIDS COUNCIL, Ministry of
Health
11
NATIONAL HIV/AIDS/STI/TB POLICY
2002 年 2 月
Ministry of Health
12
Strategic Framework
2000 年 10 月
National HIV/AIDS/STD/TB Council
2002 年 4 月
DFID Zambia
14
SUPPORTING ZAMBIA'S MULTISECTRAL
RESPOSE TO HIV/AIDS
Zambia PRSP 2002-2004
15
ZAMBIA VCT SERVICE-CBOH
16
ZAMBIAN HIV SENTINEL SURVEILLANCE- TIME
TRENDS IN THE HIV EPIDEMIC IN THE 1990s
17
ZAMBIA'S COORDINATED PROPOSAL TO
COMBAT HIV/AIDS, TUBERCULOSIS AND
MALARIA: CLARIFICATIONS TO HIV/AIDS,
TUBERCULOSIS AND MALARIA
2002 年 6 月
THE COUTNRY CORDINATING MECHANISM
(CCM), Ministry of Health
18
ZAMBIA'S PROPOSAL TO GFATM
2002 年 3 月
THE GLOBAL FUND - To Fight AIDS,
Tuberculosis and Malaria Interim Secretariat
13
世界銀行
添-18
ガーナ参考資料
No.
1
2
タイトル
5 Year Programme of Work 2002-2006- Partnership
for Health: Bridging the Inequalities Gap
CONSOLIDATING THE GAINS: MANAGING THE
CHALLENGES- 1999 HEALTH SECTOR REVIEW
出版年・月
組織
2002 年 1 月
Ministry of Health
2000 年 4 月
Ministry of Health
3
DRAFT NATIONAL HIV/AIDS AND STI POLICY
2000 年 8 月
National AIDS/STI Control Programme
Disease Control Unit, Ministry of Health Accra
4
DRAFT NATIONAL HIV/AIDS AND STI POLICY
DOCUMENT
2002 年 5 月
NATIONAL AIDS/STDs CONTROL
PROGRAMME, MINISTRY OF HEALTH
5
Estimating National HIV Prevalence in Ghana Using
Sentinel Surveillance Data
2001 年 8 月
National AIDS/STI Control Programme
Disease Control Unit, Ministry of Health Accra
2001 年 12 月
GHANA AIDS COMMISSION
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
Ghana AIDS Commission Annual Report 2001
GHANA HIV/AIDS STRATEGIC FRAMEWORK
2001-2005
GHANA POVERTY REDUCTION STRATEGY
2002-2004-AN AGENDA FOR GROWTH AND
PROSPEREITY - ANALYSIS AND POLICY
STATEMENT
Guidelines for the Development and implementation
of HIV/AIDS Voluntary Counselling and Testing
(VCT) Ghana- DraftHEALTH SECTOR FIVE YEAR PROGRAMME OF
WORK 1997-2001, 1997 REVIEW
HIV/AIDS in Ghana- Background, Projections,
Impacts, Interventions, and Policy
Institutional Reform in the Health Sector
Making Lab Tests More Accurate: Ghanaian Effort
Offers Model Process
National AIDS Control Programme (NACP)- HIV
SENTINEL SURVELANCE 2001
ORGANIZATIONAL MANNUAL OF SECRETARIAT
PROGRAM GRANT AGREEMENT BETWEEN THE
GLOBAL FUND TO FIGHT AIDS, TUBECULOSIS
AND MALARIA AND THE MINISTRY OF HEALTH OF
THE REPUBLIC OF GHANA
Study Shows Voluntary Counselling and Testing
Promotes HIV Prevention
GHANA AIDS COMMISSION
2001 年 11 月
2002 年 9 月
Family Health International/Impact, Ghana
1998 年 3 月
Ministry of Health
2001 年 12 月
National AIDS/STI Control Programme
Disease Control Unit, Ministry of Health Accra
1996 年 12 月
Ministry of Health
1999 年 9 月
IMPACT ON HIV, Family Health International
2002 年 5 月
Disease Control Unit, Ministry of Health
2002 年 12 月
GHANA AIDS COMMISSION
2003 年 6 月
1998 年 10 月
添-19
IMPACT ON HIV, Family Health International
タンザニア参考資料
No.
タイトル
出版年・月
1
Correspondence "Reducing HIV-1 in Kenya and
Tanzania"
2000 年 11 月
The Lancet Vol.356
2
Cost-Effectiveness
of
voluntary
HIV-1
counselling and testing in reducing sexual
transmission of HIV-1 in Kenya and Tanzania
2000 年 7 月
The Lancet Vol.356
2000 年 7 月
The Lancet Vol.356
2000 年 7 月
The Lancet Vol.356
3
4
Efficacy of voluntary HIV-1 counselling and
testing in individuals and couples in Kenya,
Tanzania, and Trinidad: a randomised trial
Efficacy of voluntary HIV-1 counselling and
testing in individuals and couples in Kenya,
Tanzania, and Trinidad: a randomised trial
5
HIV Counseling with Rapid Tests
6
Impact of Improved treatment of sexually
transmitted disease on HIV infection In rural
Tanzania: randomised controlled trial
1995 年 8 月
7
National AIDS Control Programme 1998-2002
2000 年 11 月
8
9
National
AIDS
Control
Programme
HIV/AIDS/STD
Surveillance
ReportNo.13,December,1998
National AIDS Control Programme Strategy
Mainland Tanzania under MTPⅢ1998-2002
組織
Divisions of HIV/AIDS Prevention, CDC
1999 年 10 月
1998 年 12 月
The Lancet Vol.346
Ministry of Health, The United Republic of
Tanzania
National
AIDS
Control
Programme
Secretarial
Prime Minister's Office, The United Republic
of Tanzania
10
National Policy On HIV/AIDS
2001 年 11 月
11
Poverty Reduction Strategy Paper Progress
Report 2000/01
2001 年 8 月
The United Republic of Tanzania?
12
Reason For Hope AIDS : Control and Prevention
in Mbeya, Tanzania
2000 年 7 月
AIDS Control Project in Mbeya Region
Sector Project AIDS Control in Developing
Countries (GTZ)
13
UNAIDS Policy on HIV testing and counselling
1997 年 8 月
UNAIDS Documents
2000 年 7 月
USAID Fact Sheet
1998 年 10 月
WHO
1997 年 3 月
WHO
2002 年
WHO
2001 年 12 月
JICA
2002 年 11 月
JICA タンザニア事務所
2002 年 12 月
JICA タンザニア事務所
2001 年 11 月
JICA
14
15
16
17
18
19
20
21
Voluntary HIV/AIDS Counseling and Testing:
Many Africans Do Want to Know
Weekly Epidemiological Record, 16October
1998,73rd year
Weekly
Epidemiological
Record,
21March1997,72nd year
WHO HIV test kit - bulk Procurement Scheme
"ensuring access to high quality, low cost HIV
test kits"
タンザニア亜連合共和国 日米合同プロジェクト
形成調査報告書(HIV/AIDS・感染症・人口・保
健)
タンザニアにおける JICA の活動
プロジェクト実施計画書:技術協力プロジェクトに
おけるローカル NGO 等の活用
ボランタリーカウンセリング(VCT)、及び検査セン
ター支援」平成 14 年度事業計画概要
添-20
HIV/AIDS 対策・VCT に関するその他の参考資料
No.
タイトル
出版年・月
組織
1
Access to HIV tests
2000 年 5 月
UNAIDS
2
AIDS epidemic update
2002 年 12 月
UNAIDS/WHO
3
Approaches for Systematic Planning of Development
Projects: Anti-HIV/AIDS Measures
2002 年 5 月
Institute for International Cooperation,
Japan
International
Cooperation
Agency
4
Availability of HIV Care in Central America
2001 年 8 月
JAMA
5
Best Practice Digest "Community counselling"
UNAIDS
6
Best Practice Digest "Confidential Approach to AIDS
Prevention"
UNAIDS
7
Best Practice Digest "The Bank of Hours Project"
UNAIDS
8
9
10
11
12
13
Best Practice Digest "ASEAN Campaign against
HIV/AIDS"
Best Practice Digest
"Current Issues in HIV
Counselling and Testing in South and Southeast Asia"
Caring for Cases: managing stress in those who care for
people with HIV and AIDS
Commodity Management in VCT programs; A
PLANNING GUIDS
Community based approarches to Voluntary Counseling
and Testing: Report of the meeting on 12 July 2000
Counselling and voluntary HIV testing for pregnant
women in high HIV prevalence countries; Elements and
Issues
UNAIDS
UNADIS
2000 年 5 月
2002 年 12 月
2000 年 8 月
UNAIDS
Management Science for Health,
Family Health International
Department
for
International
Development, Southern Africa
1999 年 10 月
UNAIDS
14
Frontier
2003 年 4 月
JICA
15
HIV Voluntary Counselling and Testing Among Youth
Ages 14 to 21: Results from an exploratory study in
Nairobi, Kenya, and Kampala and Masaka, Uganda
2001 年
International Center for Research on
Women Population Council
16
HIV/AIDS And Poverty Reduction Strategies
2002 年 8 月
UNDP
17
HIV/AIDS Implications for Poverty Reduction
2001 年 6 月
UNDP
18
How to Conduct Effective Pretests;
Meaningful BCC Messages and Materials
19
MALAWI’s HIV/AIDS “MIMNI-SWAPs”
2002 年 6 月
CIDA
20
Positive and negative life events after counselling and
testing: the Voluntary HIV-1 Counselling and Testing
Efficacy Study
2001 年 2 月
AIDS (Vol.15 No8)
21
State of World Population 2002
2002 年
UNFPA
2001 年 6 月
UNAIDS
2001 年 10 月
UNAIDS
2000 年 5 月
UNAIDS
2002 年
The Synergy Project
22
23
24
25
The AIDS Control and Prevention
Project (AIDSCAP) Behavior Change
Communication Unit
Ensuring
The Impact of Voluntary Counselling and Testing: A
global review of the benefits and challenges
The Impact of Voluntary Counselling and Testing: A
global review of the benefits and challenges
(PowerPoint)
Tools for evaluating HIV voluntary counseling and
testing
USAID
Efforts
to
Prevent
Mother-to-Child
Transmission of HIV/AIDS, An overview of U.S. Agency
for International Development Programs and
Approaches
26
Voluntary Counseling and Testing (VCT)
2000 年 5 月
UNAIDS
27
Voluntary Counseling and Testing for HIV; A strategic
Framework
2001 年 6 月
Family Health International
添-21
28
HIV/AIDS 対策指針
2001 年 6 月
国際協力事業団
29
経済開発とエイズ
1998 年 12 月
東洋経済新報社/喜多悦子・西川潤
30
「東京都内の医療機関に通院する HIV 陽性者の就労と
職場のプライバシーに関する調査」報告書
2001 年 3 月
(特)ぷれいす東京
30
陽性告知についての調査
1996 年
(特)ぷれいす東京
HIV/AIDS 対策・VCT に関するその他の Web サイト
No.
1
2
3
タイトル
日本国内におけるエイズ予防対策の
情報ネットURL
Best Practice Digest
Human Development Indicators 2002
組織
エイズ
予防財団
UNAIDS
UNDP
添-22
URL
http://api-net.jfap.or.jp/siryou/siryou_Frame.htm
http://www.unaids.org/bestpractice/digest/
http://had.undp.org/reports/global/2002/en/indicator/
添付資料5
VCT サービス計画実施マニュアルの参考例
(南アフリカ保健省
添-23
“HOW TO ESTABLISH VCT SERVICES”)
添-46
添付資料6
HIV/AIDS 分野で活動する GII/IDI メンバーNGO リスト
添-47
HIV/AIDS 分野で活動する GII/IDI メンバーNGO リスト
(GII/IDI:「地球規模問題イニシアティブ」及び「沖縄感染症イニシアティブ」
)
団体名
Tel
郵便番号
アフリカ日本協議会
03-3834-6902
03-3834-6903
110-0015
住所
東京都台東区東上野
1-20-6 丸幸ビル3F
東京都新宿区西新宿
6-5-1 新宿アイランド
タワー40F 私書箱 1502
号
東京都文京区後楽
2-20-18 掛川ビル 101
号
活動内容
保健分野 NGO 研究会 アフリ
カからの HIV 感染者招聘、講
演事業、政策提言
自然保護団体:人口問題、環
境問題と HIV/AIDS との関連を
重視し、事業展開予定
コンサベーション・
インターナショナル
03-3344-6627
03-3345-8232
163-0013
シェア=国際保健協
力市民の会
03-5800-4778
03-5800-4779
112-0004
(財)ジョイセフ
03-3268-5875
03-3235-7090
162-0843
東京都新宿区市ヶ谷田
町 1−10 保健会館新館
エイズ&ソサイエテ
ィ 研究会議
03-3275-8702
03-3279-0306
100-8077
東京都千代田区大手町
1-7-2
国内のエイズ問題中心、アジ
ア太平洋エイズ国際会議運営
(財)エイズ予防財団
03-3592-111
03-3592-1182
105-0001
東京都港区虎ノ門
1-23-11 寺山パシフィ
ック 4 階
国内エイズ感染者相談、エイ
ズカウンセリング研修、アジ
ア地域エイズ専門家研修など
(財)オイスカ
03-3322-5161
03-5376-5337
168-0063
東京都杉並区和泉
3-6-12
農村開発、HIV/AIDS 関連の事
業は現在ないが、関心あり
東京都豊島区雑司ヶ谷
2-3-2
東京都千代田区九段北
3-2-4
ヴェトナムの労働者への
HIV/AIDS 対策事業
看護専門職、保健医療分野従
事青年の招聘、研修事業
(財)ケア・ジャパン
(財)国際看護交流協
会
03-5950-1335
03-5950-1375
03-3264-6667
03-5275-3499
171-0032
102-0073
ICA 文化事業部
03-3416-3947
03-3416-0499
157-0066
東京都世田谷区成城
2-38-4-102
日本国際ボランティ
アセンター
03-3834-2388
03-3835-0519
110-0015
東京都台東区東上野 1
−20−6 丸幸ビル6F
HANDS
03-5805-8565
03-5805-8667
113-0033
東京都文京区本郷
3-20-7 山の手ビル
ぷれいす東京
03-3361-8964
03-3361-8835
169-0075
東京都新宿区高田馬場
4-22-46 ザ・テラス 304
ワールド・ビジョン・ 03-3367-7251
ジャパン
03-3367-7623
169-0073
東京都新宿区百人町
1-17-8-3F
添-48
保健医療従事者中心、地域保
健活動、タイ・カンボジアでエ
イズプロジェクト実施
リプロダクティブヘルス向
上、予防教育中心、人づくり
事業を世界各地で実施
コートジボアール:青少年に
対するエイズ予防と保健衛生
教育
アフガニスタンにおける基礎
医療支援、パレスチナ緊急医
療支援とマタニティサポート
活動
HIV/AIDS 分野国際協力(専門
家派遣、プロジェクト形成調
査、VCT サービスに関する調
査、研修実施)
国内 HIV 感染者や家族の相談
窓口、HIV/AIDS と共に生き
る人たちがありのままに生き
られる環境づくり
カンボジア等で HIV 感染者や
家族へのケア、エイズ孤児へ
の支援、感染予防活動、国内
外でエイズに関る啓発活動
添付資料7
GII/IDI メンバーとのワークショップ記録要約
添-49
外務省委託調査
「HIV/AIDS 予防ケアの基礎となる VCT 活動の
アフリカにおける現状調査と今後の我が国による支援に関する提言」
GII/IDI メンバーとの意見交換ワークショップ記録要旨
(GII/IDI:「地球規模問題イニシアティブ」及び「沖縄感染症イニシアティブ」)
1.
日 時: 2003 年 1 月 10 日(金)13:00∼15:45
2.
場 所: 保健会館新館 7 階 ジョイセフセミナー室
3.
参加者: 外務省:3 名、アフリカ日本協議:1 名、エイズ&ソサイエティ研究会議:1 名、
シェア:1 名、JICA 専門家:1 名、コンサベーション・インターナショナル:1 名、
JOICFP:6 名、HANDS:6 名
4.
目 的: 本調査を効果的に実施するために、GII/IDI メンバーと意見交換を行う。
5.
結 果: 意見交換により出された主な意見は以下のとおりである。
(1) 本調査で明らかにすべき点
①
VCT サービスに関する以下のような情報を収集する
・ 参考文献資料
・ 関連組織情報、及びそれら組織とのネットワークつくり
・ 現地 NGO 及びコミュニティの役割
・ プロジェクト成功例
・ アフリカの地域のニーズに合わせた VCT サービスのあり方
②
VCT サービス案件実施のあり方について検討すべき点
・ どのように VCT サービスの「自発的」利用を促すか、あるいはどのように
効果的なカウンセリングと HIV 検査を進めるかについてのノウハウ
・ VCT サービス支援案件を通じて、アフリカ、日本双方の HIV/AIDS 対策強
化に貢献するには?
・ 途上国 NGO と日本の NGO のネットワーキングの構築
(2) 調査の結論として提案すべき提言の方向性
①
アフリカにおける VCT サービス支援実施に関する提言
・ 日本がアフリカにおいて HIV/AIDS 対策及び VCT サービス支援を進めてい
くために、今後より深く検討していくべきポイント
・ アフリカで VCT サービス支援を実施するための具体的アクション
・ HIV/AIDS 対策の入り口として、いかに VCT サービスを効果的に支援して
いくか
・ 協力隊・専門家派遣の可能性
・ 日本の HIV/AIDS 対策を担う人材育成と、アフリカ HIV/AIDS 対策支援をど
のように効率的・効果的にすすめるか
・ HIV/AIDS 以外の分野での、HIV/AIDS 対策をメインストリーム化
②
アフリカにおける VCT サービス支援と日本の ODA スキームに関する提言
・ 日本の ODA スキームに、広い範囲での NGO が参加できるスキームのあり方
・ 官と民がいかに効果的・効率的に連携していくか
・ 組織としてのキャパシティ・ビルディングをするマネージメント型 NGO
を、日本の NGO の中でどのように位置づけていくか
添-50