SAP ERP ではマスターデータ管理できない 5 つの理由

ホワイトペーパー
SAP ERP ではマスターデータ
管理できない 5 つの理由
本文書には Informatica Corporation (Informatica) の機密情報、専有情報および企業秘密情報 (以後、
「機密情報」とします) が含まれており、Informatica による事前の書面による承認を得ることなく、い
かなる手段においても、本文書をコピー、配布、複製、複写することを禁止します。
本文書の情報が正確かつ完全であるようにあらゆる試みを行っていますが、誤植または技術的に不正
確な部分が存在する可能性があります。Informatica は、本文書に含まれる情報の使用から生じるい
かなる損失に対して一切の責任を負いません。本文書に含まれる情報は、予告なく変更されることが
あります。
こうした資料で検討している製品特性を Informatica ソフトウェア製品のリリースやアップグレード
へ採用することは、リリースやアップグレードの時期と同様に、Informatica が独自に決定します。
以下の米国特許の 1 つまたは複数の特許によって保護されています : 6,032,158; 5,794,246;
6,014,670; 6,339,775; 6,044,374; 6,208,990; 6,208,990; 6,850,947; 6,895,471;または以下の
申請中の米国特許: 09/644,280; 10/966,046; 10/727,700。
2013 年 6 月発行
ホワイトペーパー
目次
概要 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2
SAP の ERP がマスターデータ管理に適さない理由. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3
ERP に依存しない MDM ハブをお勧めする理由 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4
柔軟な MDM テクノロジーへ投資するのが賢い選択 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6
まとめ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7
SAP ERP ではマスターデータ管理できない 5 つの理由
1
概要
過去 2 年間、景気の低迷にもかかわらず、マスターデータ管理 (MDM) への需要は堅調に推移しました。企
業内のさまざまな領域において、ビジネスプロセスを非常に短期間で改善できる IT イニシアチブの 1 つ
が、効果的な MDM の導入であることを考えれば、当然の結果でしょう。そこで問題なのは、マスター
データに関わる課題に最も適した MDM ソリューションとそのメソドロジは何かということです。広範囲
に SAP を実装している多くの大企業にとって、今ある SAP エンタープライズ リソース プランニング (ERP)
アプリケーションを MDM イニシアチブの中心に据えるのも 1 つの手です。既存の IT インフラストラク
チャや投資、知識を有効利用できると考えれば、魅力的なアイデアのように思えます。しかし、そもそも
SAP の ERP システムは、マスターデータ管理に特化して設計されたものではありません。
2
SAP の ERP がマスターデータ管理に適さない理由
MDM は、多様な業界の多くの企業にメリットを提供できることは明らかですが、 そこで問題なのは、長
期的に価値があり、ビジネスイニシアチブを推進できる MDM ソリューションをどうすれば手に入れられ
るかです。過去数年間に多くの MDM プロジェクトを見てきた経験から、次の 4 つの主要な領域をどこま
で実現できるかによって、プロジェクトの成功が左右されることがわかりました:
• データモデリング
• データのクレンジング、マッチング、エンリッチ化
• 複数ソースからのデータ連結
• 複雑な組織構造や製品階層の管理
MDM プロジェクトは、重複レコードを自動的にマージし、データ属性のサバイバーシップ (最適な生き残
りデータの生成) を経て、1 つの「ゴールデンレコード (高品質な唯一無比のレコード)」を生成するのが通
常のミッションです。そのハブには、プロジェクト完了後も引き続きデータのクレンジングが可能なデータ
品質機能が必要です。また、ハブベンダーは、たとえば顧客データや製品データのみではなく、複数領域の
データ処理が可能な製品とその実現例を示せる能力が必要です。将来的には、当初のプロジェクト範囲を超
えた業務課題を解決するためにハブを拡張する必要性が必ず出てきます。それには、複数のデータタイプに
対応できる機能が不可欠です。
SAP の ERP を MDM の基盤技術として使用するには問題があります。ERP としては多くの利点があって
も、SAP システムは柔軟性に欠けていることが多いからです。SAP の ERP は、今日の複雑な組織構成に求
められるようなマスターデータ管理ツールを提供していません。また、トランザクション処理には長けてい
ますが、そもそもマスターデータ管理を目的として設計されたものではありません。特に、SAP のデータ
マッチング機能は、非常に基本的なレベルです。検索機能は「完全一致」が可能ですが、微細な相違から重
複エントリを検出できるような「ファジー検索」からは程遠いレベルです。このような理由から、 SAP
ユーザーは、重複する顧客レコードを頻繁に作成するケースが見られます。またマスターデータから信頼で
きる高品質なデータの「ゴールデンコピー」を作成して複数の異種環境システムで使用したり、サバイバー
シップ ルールをかけて、複数システムから収集した重複データから最適なデータを抽出することもできま
せん。
こうした問題は、SAP インスタンスが複数ある場合や異なる ERP システムが混在するような環境では、さ
らに悪化します。これは、合併と買収を経て成長した大企業でよく見られる問題です。複数の ERP インス
タンスがなくても、全国規模で事業展開する中・大規模のほとんどの企業は、数多くの異種システムから
データを取り込んでいます。実際、ソースシステムが 10 ~ 30 あるような異種環境は、もはや珍しくあり
ません。顧客対応データと製品データ、資産データが別々のシステムにあるというようなサイロ化された
データ管理では、プロセス、データ、ワークフローの統合が非常に複雑になります。以上のような理由で、
ポイントツーポイント開発した結果としての「スパゲティ状に絡まった理解不能なコード」が数多く存在し
ています。
SAP ERP ではマスターデータ管理できない 5 つの理由
3
ERP に依存しない MDM ハブをお勧めする理由
MDM 管理に特化した MDM ハブには、SAP ERP のマスターデータ管理では実現できない数多くの利点があ
ります。まず、MDM に特化したシステムは、ERP テクノロジースタック内に限定されず、企業全体のマス
ターデータ管理を最大限可能にします。高品質なエンタープライズグレードの MDM ハブが目的とするの
は、マスターデータを適正に管理することであり、製品や顧客を明確に区別し、重複のない信頼できるデー
タソースを作成することだけです。ERP に依存しない MDM ハブなら、データガバナンスだけでなく、堅牢
なデータ品質とマッチング機能を備えたハブ テクノロジーを活用して、正確、完全、タイムリーで一貫性
のあるマスターデータを維持できるということです。
こうした MDM システムを導入した企業は、トランザクションシステムと分析システムの間に MDM ハブ
を導入して、そこでマスターデータの管理責任を果たすことが非常に重要であることにすぐに気づきます。
MDM ハブでデータを「1 度修正」すれば、バックオフィスシステムでも、データウェアハウスでも、分析
システムでも、データを必要とする下流システムならどこでも正しいデータを使用することができます。
さらに、ERP に依存せずに運用できる MDM ハブなら、主要な社内システム同士を、お金をかけてポイント
ツーポイントで接続する (N2 インテグレーションの問題) 必要がなくなります。図 1 を参照してくださ
い。MDM ハブなら、インターフェイスを開発しなくても、エンタープライズ サービス バスに接続すれば
よいだけです。従来のポイントツーポイント開発にかかる初期コストは、それを長期的に維持するためにか
かるトータルコストのわずか 8 分の 1 です。その全てが必要なくなるのは、非常に大きなコスト削減余地
です。
MDM ハブと SAP ERP の MDM の利点と欠点を挙げてきましたが、これらは互いに排他的なテクノロジー
というわけではありません。MDM と ERP は共存することが必要です。一方が他方に取って代わることはで
きません。投資の観点から言えば、データ品質、ETL、データ統合ツール、ミドルウェア、ビジネスプロセ
ス管理、ワークフローなどの既存のテクノロジーを活用することも重要です。
4
Analytical
Operational
SD
MM
PP
F1
R/3
QM
PM
HR
mySAP
mySAP
CO
TR
PS
WF
IS
CRM
ERP
FICO
SAP
Reporting
BI
Manufacturing
Applications
NetWeaver
Exchange
Infrastructure
Publish master
reference data and
related transactions
Connect to SAP apps in
real-time using Enterprise
Services (SOA)
MDM HUB
BW ETL
NetWeaver
Portal
Invoke Business
Processes
NetWeaver
BI
Feed master reference
data to Business
Warehouse dimensions
NetWeaver
BPM
Connect to
sources in batch
or real-time
Data Sources
SD
MM
PP
F1
R/3
QM
PM
HR
CO
TR
PS
WF
IS
mySAP
mySAP
SD
MM
PP
F1
R/3
QM
PM
HR
CO
TR
PS
WF
IS
SD
MM
PP
F1
R/3
QM
PM
HR
CO
TR
PS
WF
IS
図 1: MDM ハブは、トランザクションシステムと分析システムの間に立って、マスターデータを継続的に
管理し、データ管理責任の中心となるものです。MDM でデータを「1 度修正」するだけで、バックオフィ
スシステムでも、データウェアハウスでも、分析システムでも、データを必要とする下流システムならどこ
でも、正しいデータを使用できるようになります。
SAP ERP ではマスターデータ管理できない 5 つの理由
5
柔軟な MDM テクノロジーへ投資するのが賢い選択
SAP ERP ではマスターデータ管理できない 5 つの理由をまとめてみましょう:
1. SAP ERP は柔軟性に欠ける。
2. マスターデータは特別なデータであり、SAP ERP システム内だけでプロアクティブに管理することはでき
ない。
3. SAP の ERP 製品は、マスターデータ管理に特化した設計にはなっていない。
4. 複数のインスタンス (または、異なる ERP システム) が存在する場合、ERP 内にマスターデータ管理を限
定するのはさらに難しい。
5. MDM ハブなら、トランザクションシステムと分析システムの間に立って、一度データを修正すれば、
その他のバックオフィスシステムやデータウェアハウスで正しいデータを使用することができる。
SAP は、自社のテクノロジースタックを第一とし、 SAP で固めようとする「モノリシック」な傾向があ
り、 SAP 以外の一般的によく利用されているテクノロジーに対応するのが苦手です。SAP に非常に忠実
で、SAP のアプリケーションしか購入しないユーザーもいます。こうしたユーザーは、現在の SAP MDM
製品はまだ機能的に足りていないが、とりあえず入手可能なものを導入しておいて、後で状況が改善される
のを待っています。しかし、そんなのんびりした戦略では、今日のビジネス環境で競争力を失い、コストの
増大を招くことは間違いありません。
一方で、SAP のエンタープライズ テクノロジー ロードマップに囚われることを良しとせず、スタンドア
ローン型の MDM ハブの導入に前向きな SAP ユーザーも少なくありません。1 つの SAP ERP インスタンス
内にマスターデータ管理を導入すれば、短期的にはそれなりの利点を得られるかもしれません。しかし、
マスターデータ管理が持つべき完全な機能、利点、価値を実現するには、MDM に特化したシステムがベス
トな選択肢です。いずれにしても、今日の複雑な IT 環境において、コアプロセスの整流化、簡素化、自動
化を実現するために MDM は不可欠な役割を担います。MDM の必要性を考えれば、短期的にも長期的に
も、IT やビジネスの観点からも、よりメリットが大きい方法を選択すべきではないでしょうか。我々はそ
のように考えます。賢明な意思決定者は、すでにマスターデータ管理の要件を定義し、自社のビジネスに最
適な MDM 特化型ハブを選定し始めています。
6
まとめ
SAP ERP システムは、マスターデータ管理に特化した設計にはなっていません。つまり、
真のマスターデータ管理とは言えないのです。ERP は多くの利点がある一方で、一般的に
柔軟性に欠けます。SAP の ERP は、今日の複雑な組織構成に求められるようなマスター
データ管理ツールを提供していません。また、トランザクション処理には長けています
が、マスターデータ管理に特化した設計ではありません。SAP ユーザーは、頻繁に顧客
レコードを重複して作成してしまう傾向があります。また、マスターデータから信頼でき
る高品質なデータの「ゴールデンコピー」を作成して複数の異種環境システムで使用した
り、サバイバーシップ ルールをかけて、複数システムから収集した重複データから最適
なデータを抽出することもできません。データのマスター管理には、MDM に特化したシ
ステムがベストな選択肢です。
インフォマティカについて
Informatica Corporation
(NASDAQ: INFA) はデータイン
テグレーションソフトウェア
およびサービスにおける世界
No.1 独立系プロバイダーの 1
社です。インフォマティカのソ
リューションによって、世界中
の企業がデータへの投資から最
大限の効果を手にし、最も重要
なビジネスニーズを満たしてい
ます。現在、世界 5,800 社を超
える企業が、企業内ならびにク
ラウドやソーシャルネットワー
ク等の企業外に保有する既存の
情報資産から最大限の価値を引
き出し、活用することに成功し
ています。インフォマティカに
関する詳細は、インフォマティ
カ・ジャパン株式会社 ( 代表 :
03-5229-7211) までお問い合わ
せいただくか、弊社 Web サイト
http://www.informatica.com/jp/
をご覧ください。
SAP ERP ではマスターデータ管理できない 5 つの理由
7
8
SAP ERP ではマスターデータ管理できない 5 つの理由
9
〒162-0845 東京都新宿区市谷本村町 1-1 住友市ヶ谷ビル 13 階 電話: 03-5229-7211 (代表) FAX: 03-5229-7623
www.informatica.com/jp linkedin.com/company/informatica twitter.com/InformaticaCorp
© 2015 Informatica Corporation. All rights reserved. Informatica® および Put potential to work™ は、米国およびその他の国における
Informatica Corporation の商標または登録商標です。その他すべての企業名および製品名は、各社が所有する商号または商標です。
IN09_0611_01590_0613