中小商業における新たなチャレンジ によるビジネスモデルの調査研究Ⅲ

平成23年度
「中小商業における新たなチャレンジ
によるビジネスモデルの調査研究Ⅲ」
平成24年3月
協同組合 全国共同店舗連盟
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目
次
中小商業におけるビジネスモデル先進事例
Ⅰ.有限会社宅配のめがねやさん(神奈川県)
Ⅱ.株式会社旅のお手伝い楽楽(京都府)
Ⅲ.有限会社今仲酒店(大阪府)
Ⅳ.ドギースマイル(愛媛県)
Ⅴ.クイックウォッシュ株式会社(福岡県)
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中小商業におけるビジネスモデル先進事例
Ⅰ.有限会社 宅配のめがねやさん
1.企業概要
企業名
有限会社
宅配のめがねやさん
代表者
重宗忠明
所在地
〒252-0206
TEL
042-751-6610
創業年月
1997 年
設立年月
2000 年
資本金
500 万円
従業員数
4 名(社長・社長夫人含む)、パート 3 名
取引先
仕入先:約 10 社
取扱品目
釣用サングラス、メガネ、その他メガネ用品
事業内容
メガネの加工卸・小売販売
神奈川県相模原市中央区淵野辺 4-28-14
FAX
042-758-1561
販売先:全国(北海道除く)約 250 店
日本では、視力矯正をしている人
が比較的多く、眼鏡小売市場の規模
も大きいとされてきましたが、近年
安価なコンタクトレンズ(以下 CL)
や手術により視力を回復させるレ
ーシックが登場し、眼鏡小売市場は
大きく構造変化が起こっています。
特に使い捨て CL の市場への拡大は
急速に進み、減少傾向にあるメガネ
の販売高に対して、CL の販売高は
増加傾向にあります。
メガネは、視力の弱い人にとって
は、日常生活をする上で必需品とされており、商業統計での時計・眼鏡・光学機器小売業の年間
販売高は、平成 11 年から減少傾向にあるものの平成9年と平成 19 の年間販売高を比較すると
1.2%の減少で、小売業全体が 8.8%の減少となっていることに比べると減少幅は小さく、眼鏡小
売市場は比較的安定していることがいえます。また店舗数については H9年と H19 年の比較では
1.4%の減少に止まっており、小売業全体の 19.9%の減少に比べると減少幅はかなり小さいとい
えますが、その内容は、個人店舗が 22.9%の減少、反対に法人店舗が 21.1%の増加となっており、
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更に売場面積では 13.9%増加しており、時計・眼鏡・光学機器小売業界でも店舗の大型化とチェ
ーン店の進出がめざましいことが伺えます。特に、2001 年頃よりスリープライスショップ、ツー
プライスショップといった低価格の均一ショップが出現、大手メガネ専門チェーンも即反応し、
各チェーンは低価格均一ショップの新業態店を開発し、出店を行った結果であると考えられます。
しかし近年、低価格均一ショップにも大きな変化が見られるようになり、安さだけでなく、ブ
ランド品や高機能レンズ等の付加価値を狙った商品を販売し、客単価の向上を図かったり、レン
ズとフレームの選択幅を広げ、組み合わせ自由にしたワンプライス店等、当初に比べ変化してき
ています。
当社は、厳しい経営環境に置かれている眼鏡小売業界の中にあって、経営資源も少ない個人店
舗が大手チェーン店や競合店と差別化を図り生き残るため、企業や個人宅へ赴きその場で視力検
査とフレーム選びを行うメガネの宅配事業を始め成功ののち、宅配事業から更に競合店の参入を
難しくするために「釣りを趣味とする人」をターゲットとして、取扱商品を釣り専用サングラス
(TALEX 社偏光レンズ)に絞り込み、販売方法も店頭売りの待ちの商売だけでなく、全国各地
の釣具店へ赴いて商品説明を加えながら販売するという攻めの商売も行い年々業績を伸ばしてい
る企業です。
時計・眼鏡・光学機器小売業の増減率推移
平成9年
店
舗
数
平成11年
平成14年
平成16年
平成19年
小売業全体
平成9年-19年対比
平成9年-19年対比
法人
10,096
11,070
11,841
12,246
12,227
21.1%
-3.5%
個人
10,613
10,578
9,470
9,159
8,183
-22.9%
-31.4%
計
20,709
21,648
21,311
21,405
20,410
-1.4%
-19.9%
66,133
73,399
75,939
74,134
72,634
9.8%
3.1%
984,936
1,066,442
1,027,851
1,011,996
972,650
-1.2%
-8.8%
1,301,693
1,413,110
1,509,557
1,523,941
1,482,040
従業員数 (人)
販売額 (百万円)
売場面積 (㎡)
13.9%
(出典:商業統計)
16.8%
2.特筆すべき事業内容
①事業に至った背景・目的
社長である重宗忠明氏は、平成元年大学卒業後大手住宅メーカーに就職、その後コンタクト
レンズのメーカー、メガネ小売店を経て平成9年にメガネ小売店を創業。当初は、社長とスタ
ッフ1名だけで店舗を持たず、主にメガネ店の店内ディスプレイ等の仕事を行っていました。
その後、ワゴン車に視力検査機器とレンズ、フレームの在庫を載せて宅配事業をスタート、は
じめは、飛び込み営業で、住宅地等を回りなかなか売れずにいましたが、購入した顧客の口コ
ミや知人の紹介等により企業を訪問し展示販売ができるようになりました。その結果1年後に
は月商 200 万円までになりましたが、同じように宅配事業をする同業者が現れたり、大手メガ
ネチェーンなどの低価格でセット販売するメガネ店の出店も激しさを増し、売上が伸び悩み始
めたため、今後個店で生き残るために何か特徴を出し他店との差別化を図りたいと考え、社長
の趣味である釣りの愛好者が使用している TALEX 偏光レンズを扱い始めました。取扱い始め
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の頃は、馴染であった釣具店からお客様を紹介してもらい販売するうちに口コミ等で徐々に人
気、知名度が高まり、売上の増加と共に取引して頂ける釣具店も増えてきました。そこで、平
成 12 年5月に JR 横浜線淵野辺駅前にメガネの小売店舗を開業、同年有限会社「宅配のめがね
やさん」を設立しました。
開店当初の品揃えは、メガネ中心のごく普通のメガネ小売店で来店客も少なく、店頭販売の
売上は伸び悩みました。その後、当社の生き残りを掛け、顧客ターゲットを「釣りを趣味とす
る人」に絞り込み、品揃えも釣り専用サングラス(特に TALEX 偏光サングラス)に特化した
品揃えに大胆な路線変更を行い、店頭販売と並行して全国の釣具店での TALEX 偏光サングラ
ス受注会を戦略的に開拓することとなりました。
②事業の内容
(1)宅配による販売
1997 年独立創業時、当店は店舗を持たず、
重宗社長は、それまで勤めていたメガネ販
売店の部下で、共に退職したスタッフ 1 名
とワゴン車に視力検査機器とメガネフレー
ムとレンズを積み、高齢者の多い山間地域
や住宅地域の顧客の自宅や会社の会議室、
食堂等へ赴き、そこで商品を陳列、検眼、
加工までをその場所で行い販売するという
新しいビジネススタイルを確立しました。
(2)釣具店を思わせるお店づくり
会社設立当初の固定店舗は、淵野辺駅前に店舗を構えていましたが、2006 年 11 月に現所
在地へ店舗移転しました。ターゲットとする顧客が「釣りを趣味とする人」であるため、店
内に入るとまず目を引くのが、正面の壁面に並べられた数々の釣り竿で、更に左右の壁面に
はルアーや魚拓、魚の置物などおよそメガネ販売店とは思われない品々が飾られ、来店した
顧客の心をくすぐり、まずは釣り談議から入り込める様な雰囲気を作り出しています。入口
左の壁面に商品が陳列されており、ほとんどが釣り専用サングラスで、一番顧客が目を留め
る位置に陳列されており、一般的なメガネフレームは、最下段の棚に陳列されています。入
口右側はカウンターになっており、いくつかの椅子が用意されています。カウンター内はフ
レームやレンズ等の加工機器が並べられ店長は、顧客との会話をしながら加工作業ができる
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ようになっています。
(3)イベント受注会
宅配事業をきっかけに考えられた事業がイベント受注会で、北海道を除く、全国各地の釣
具店の店頭イベントとして、社長自らが赴き、釣り専用サングラスの受注会を開催、そこで
レンズやフレームを展示し注文を受けるもので、度付きレンズの購入顧客に対しては、イベ
ント開催店まで宅配便で送った検眼器によりその場で視力検査を行い受注します。イベント
で受注したものについては、受注表を持ち帰り、店長が加工、検品したのち、顧客ごとに発
送します。受注から発送までは、約2週間から3週間の時間を予定しています。
イベントは主に木曜日から日曜日かけて行われ、事前に店頭用イベントポスターと釣具店
への来店客用手配りチラシを開催店へ送付し、釣具店の顧客に対してイベントの開催を告知
しています。
現在平均客単価は、20,000 円台で度付きの偏光サングラスについては、40,000 円から
50,000 円となっています。
このイベント受注会は、釣具店にとっても集客力が向上するイベントとして評価が高く、
また釣具店の顧客にとっても釣り専門の偏光サングラスの品揃えが充実したイベント受注会
として、釣り愛好家等のブログなどで評判となり、開催場所である全国の釣具店や釣り愛好
家からイベント受注会の開催を望む声が寄せられ、イベント受注会の開催地域は徐々に広が
り、それと共に顧客数も増加傾向にあります。
(4)インターネット通販
インターネットによる通販事業は、2000 年にメガネ販売店舗を開設したのと同じ頃より開
始。当店のホームページでは、偏光サングラスの商品紹介をはじめ、偏光サングラスを使用
している釣りのプロからのアドバイスの他、社長の釣りに関するブログなど釣りをキーワー
ドにした内容となっています。
インターネット通販での売上高は、全体の売上高の約 10%となっており、通常メガネを作
る場合、視力検査やフィッティングなど顧客が店舗まで訪れなければ作れないこと多く、イ
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ンターネット通販には不向きとされますが、当店のインターネット通販での品揃えは釣り専
用サングラスに絞り込んでいるため、度なしサングラスがほとんどで、度付サングラスを求
める顧客に対しては、様々な釣りに応じた視力調整が必要なため、処方箋や現在使用してい
るメガネの度数で作ることを勧めずにイベント先への来店を勧めています。
偏光サングラスの場合、
「歪み」によって、水中の見え方や目の疲れに大きく影響してくる
ためその加工調整には技術力が求められます。
③経営課題
(1)利益の増加
当社は、採算に合わないモノづくりからの脱却を図りたいと考えてはいますが、それとは
反対にコストパフォーマンスの良さを最優先したモノづくりを徹底していることから、業界
内での絶対的な技術力の高さと認知度を得ることはできましたが、利益があがらないという
収益性の低さを課題として挙げています。
(2)人材育成について
釣具店でのイベント受注会では、釣りの知識、釣りバカぶり、その他様々な事柄により同
じ釣り仲間という信頼感と共有感があって初めて話がはずみ、顧客と同じ趣味を共有する仲
間として認めてもらった上で、値引きが一切できない高額商品を購入して頂くことに繋がる
ため、にわか仕込みの知識や経験だけでは、すぐに顧客に見切られてしまいます。当社でも
過去何度か人材の育成には挑戦はしたものの、顧客とのコミュニケーションが取れずに自信
喪失に陥り、皆辞めてしまいました。
また、顧客側も希望の商品が手に入るならどこで良いというわけではなく、
「宅配のめがね
やさん」の社長から説明受けて、
「宅配のめがねやさん」の店長の加工した偏光サングラスを
掛けるという事が、顧客にとってのステータスにもなっているため、社長が来るイベント受
注会を楽しみに待っていてくれる顧客も多く、代理の人間を送るわけにはいかないとして、
社長自らが全国各地のイベント受注会に赴くこととなっています。社長に代わる人材の育成
も将来的な課題として考えてはいるものの、非常に限られた範囲のターゲット層で、かつ嗜
好性の強い商品を販売しているため、マニュアル化は困難で長期的な視点での人材育成は考
えられるが、現状での育成は困難であるとの考えです。
④今後の事業展開
当社では、対面販売を最優先と考えており、イベント受注会、店頭販売を重要視しています。
これは、顧客とのコミュニケーションを大切にしながら固定客を少しずつ増やし、育てること
が、経営資源の少ない中小企業が生き残る術と考えているところからきています。したがって、
インターネット通販も行ってはいるものの当社の知名度向上と商品カタログといった広告塔の
意味合いが強く、インターネット通販での販売力強化などはあまり考えられていません。
店頭販売については、口コミや雑誌、インターネット等を通じて、当社の知名度も徐々に広
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がり、イベント受注会が開催されていない遠方の釣り愛好家が当店まで訪れるようになりまし
た。しかし、駐車スペースも少なく、且つ店舗と検品、発送が別々になっているため、今後は
駐車場が広いところへ店舗移転し、全国各地の顧客が、店舗にも快く出掛けて頂ける新しい店
舗を創り、店頭販売についても強化を図っていきたいと考えています。
また前記した通り、当社では極限られた顧客をターゲットとしており、更にその販売スタイ
ルもコミュニケーションを充分に図った上で、購買に繋げていくビジネススタイルのため多店
舗展開については考えられていません。
以上のことから今後も1店舗での店頭販売と全国の釣具店でのイベント受注販売を拡充して
いくことに重点を置き営業していく方針です。
⑤まとめ
当社は、社名の通り宅配のめがねやさんとして、約 15 年前から当時としては珍しい宅配に
よるメガネ販売を始めており、宅配によるメガネ販売の先駆者といえます。しかし、近年同じ
ように訪問販売する同業者が増え先行きに不安を持った社長が、いち早く宅配事業を縮小し、
誰にも真似ができない趣味と実益を兼ねた釣り専用サングラスに特化した販売に路線変更し、
その業績を伸ばしているという企業の事例です。釣り愛好者というかなり狭い範囲にターゲッ
トを絞り込み、更に偏光サングラスという一般的なメガネ店ではあまり販売されていない高級
サングラスを扱い、偏光サングラスのトップメーカーである TALEX 社の販売では、8 年連続
国内トップとなり販売力を絶対的なものにしていますが、当社の成功の秘訣として考えられる
こととして、ひとつは、釣り愛好者という客層をターゲットとして、潜在的に少ない客層であ
るため自店まで足を運んでもらうことは難しいため、釣り愛好者が集まる各地の釣具店と連携
してイベント受注会を開催し、積極的に販売活動を行ったこと。ひとつは、釣りを趣味とする
社長が、共通の趣味を持った人でないと共感されない話題を通して、偏光サングラスの機能や
品質を説明することで、顧客に充分理解してもらい、比較的高価格な偏光サングラスを販売で
きることが、他店でマネをしようとしても出来ない最大の強みであると考えます。
しかし、これは最大の強みである反面、社長にしかできない属人的な面もあり、社長に代わ
る人材育成が難しく、事業の拡大には限りがあることとなってしまい、人材の育成は当社にと
って最大の課題ともいえます。
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Ⅱ.株式会社 旅のお手伝い楽楽
1. 企業概要
企業名
株式会社 旅のお手伝い楽楽
代表者
佐野恵一
所在地
京都府京都市中京区烏丸通四条上る笋町 688
TEL
075-708-2430
創業年月
2006 年 2 月
設立年月
2008 年 2 月
資本金
700 万円
従業員数
30 名(プランナー2 名、事務 7 名、介護士・看護師・ヘルパー等 21 名登録)
FAX
第 15 長谷ビル8階
075-708-2431
・旅行業法に基づく旅行業
事業内容
・バリアフリー旅行の企画・実施
・バリアフリー観光案内所の運営
・高齢者に関する調査・研究
当社の佐野恵一社長が、学生時代に車椅子生
活を送っている祖母との温泉旅行によって、要
介護者が外出する際、いかに不自由なものであ
るかを実体験として感じました。そしてその不
自由さは施設などのハード的なバリアよりも、
要介護者に対する人の心の中のバリアが大きく
影響しており、それによって要介護者が気軽に
外出することが妨げられていることに気付き、
学生でありながら要介護者の旅行サポートサービスという新たなビジネスモデルをひとりで立ち
上げ、その後事業の拡充を図るため現会社を設立しました。会社の理念に「誰もが気軽に外出で
きる社会をつくる」ことを掲げ、要介護者の旅行のプランづくりから旅行時の介助サービス、観
光施設のバリアフリー情報の提供等、年々その事業の幅を広げています。
Ⅱ.特筆すべき事業内容
1.事業に至った背景・目的
社長である佐野恵一氏は、大学1年生の時、高齢で車椅子生活を送っていた祖母、両親と共
に温泉旅行へ出掛けました。宿泊先でのトイレや入浴施設等はバリアフリーとして整ってはい
ましたが、それを利用する際、宿泊施設には介助する人は無く、結局は日頃から介助している
母親が介助し、せっかく祖母や母親の体を休めに来た温泉旅行であったのに、逆に疲れてしま
い要介護者の旅行がいかに難しいかを初めて知りました。
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当社が所在する京都市は、年間 5000 万人が訪れる世界有数の国際観光都市で、市内にある様々
な観光施設や宿泊施設等でバリアフリーの整備は進められています。しかし、実際にそれを利
用する要介護者から、少しだけ介助を求められた時に、ほんの少し手助けしてあげられる心や
自然に手助けしあえるといった人の心の中にバリアがあり、要介護者にとってとても親切な施
設であるにもかかわらず、利用しきれていない現状があり、ハード面のバリアフリーの整備と
同時に、施設を利用する要介護者に対して、気軽に手助けしてあげることができる心のバリア
フリー整備も重要であることに気付きました。
大学2年生の時、
「起業家養成講座」を1年間受講し、祖母との温泉旅行をきっかけに、予て
から考えていた「要介護者の旅行サポートサービス」の事業計画書を作成し、同志社大学ビジ
ネスプランコンテスト最優秀賞を受賞。平成 18 年、大学3年生の時にひとりで「要介護者の
旅行サポートサービス」を創業しました。
創業当初は、京都の旅館を中心に特別養護老人ホーム等、関西地方の様々な施設へ行き、そ
のサービスの目的と内容を詳細に説明しましたが、若い学生がひとりで何ができるのかと言っ
たように相手にされないことも多くありました。しかし、このサービスの利用者から諦めてい
た旅行ができた喜びと感謝の手紙を頂き、そこから口コミによる評判が徐々に広がり、翌年
NHK ニュースで、学生が始めたニュービジネスとして紹介され、これにより広く認知される
ようになり、その後数々のマスコミにも取り上げられ業績も伸び始めました。
平成 20 年、それまでひとりで要介護者の旅行サポートサービスを行ってきましたが、事業
の充実、拡大をめざし「株式会社旅のお手伝い楽楽」を設立。同年キャンパスベンチャーグラ
ンプリ(CVG)全国大会で経済産業大臣賞を受賞し、事業内容に対する社会的評価も高まりま
した。
現在、当社が行っている介助サービスに対しては、介護保険の適用はありません。しかし、
要介護者が観光旅行や温泉旅行に行くことを目標に、辛いがそれに向って楽しくリハビリを行
いその結果、歩行困難であった人が、杖を突きながらでも歩くことができるようになったとい
う事例もあることから、要介護者の旅行もリハビリの一端であると考え、将来的には、介護保
険の適用がされるように制度の改正等にも働きかけをしていきたいとし、更にハード的なバリ
アフリーだけでなく、人の心もバリアフリーにして、要介護者に対して、誰もが気負いなく自
然に手助けできる社会づくりを目指したいとしています。
2.事業の内容
(1)旅行事業
要介護者とその家族が気軽に旅行を楽し
んでもらえるように、自宅を出発する時か
ら帰宅するまで同行して、旅行中の観光案
内から宿泊施設での入浴や食事等必要に応
じて様々な手助けを行うサービスです。同
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行する介助者は、看護師、准看護師、社会福祉士、介護福祉士、ヘルパー1級・2級、ケアマ
ネージャー等で、現在約 30 名が登録されています。当社に登録できる介助者は、ただ単に要
介護者の介助をするだけでなく、観光地でのバリアフリーになっている施設の情報をはじめ、
観光の知識、要介護者やその家族への心遣い等、細かなところまで配慮できることが絶対的な
条件となっています。
介助サービスに対する料金は、介護保険制度に係る費用を基本に考えられており、図表1通
りとなっています。
【図表1】
この事業は、介助サービスだけでなく、バリアフリーの対応がなされている観光施設やト
イレ、要介助者の受入れ可能な観光施設や宿泊施設の開拓と情報収集等も含まれており、創
業当初より社長をはじめ、スタッフが調査を行い、要介護者の受入れ要請等を現地へ赴いて
行っています。文化財保護などの理由によりバリアフリーとしての施設整備は不可能であっ
たり、人手不足を理由に車椅子での見学や受入れはできないという観光施設や宿泊施設も多
くあり、前記した人の心のバリアなどに阻まれることもしばしばありますが、社長やスタッ
フの根気強い説得に応じて、少しずつ要介護者の受入れ可能な施設も増え、観光プランの幅
も広がっています。
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(2)バリアフリー旅行の企画
当社の旅行企画は、要介護者を対象とし
ているため、その対象者ひとりひとりが症
状も違い、介護を要する度合いも変わるた
め、基本的に全て申込者との打ち合わせに
よってプランを立てるオーダーメイド企画
となっています。申込者の多くは要介護者
の家族で、その家族との打合せを重ねて旅
行計画を立てます。旅行プランナーは、打
合せにおいてまず、家族とのコミュニケー
ションをとり、旅行の目的、要介護者の生い立ちや病歴、家族との関係など打合せを重ねな
がら把握し、その状況に応じて内容も変え、最終的に要介護者とその家族の旅行に対する思
い入れ等の心理状況までを読みとって、要介護者にとってもその家族にとっても想い出深い
楽しい旅行となるようプランを立てています。
プランを立てる上で注意している点は、健常者に比べ、事故の起こる可能性が高いため、
事故が起こった時を想定しながら家族や要介護者との打合せを充分に行い、どの場所では、
どのような介助やサービスが必要であるかを漏れなくプランに含めることを重要としていま
す。これは、社長の経験によりサービスの質を向上させることが事故を回避することに繋が
るとの考えからきており、事前打ち合わせは約5回から 10 回程時間を費やすことから、旅
行プランは事前の打合せでほとんど決まってしまいます。
従って、当社のプランナーとなる条件は、申込者と充分コミュニケーションを図り細かい
配慮ができること、バリアフリー施設のある観光地や宿泊施設を把握していること、介護に
対する知識が充分に備わっていること等が挙げられ、その条件は厳しく現在は、社長とスタ
ッフ 1 名の2名がプランナーとなっています。
(3)バリアフリー観光案内所の運営
京都市は、国際観光都市として国内外の
多くの観光客を受け入れてきましたが、要
介護者に対するサポート体制は不十分で、
細かな情報提供や介助者を提供する機関等
はなく、利用者は様々な機関に連絡を取り、
ようやく当社へ辿りつくことが現状として
ありました。また当社が、テレビや新聞等
で取り上げられるようになったことで、京
都府外のお客様からも京都のバリアフリー
情報を教えて頂きたいとの問合せも相次い
だため、京都府に対して、京都のバリアフ
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リー情報を気軽に問い合わせでき、介助者の提供できる機関の設置を働きかけ、平成 20 年
度京都府ビジネスモデル創出事業、きょうと元気な地域づくり応援ファンド採択事業の認定
を受け、情報サイト「京都バリアフリー観光案内所」を京都府と共同で立ち上げ、当社が運
営しています。
このサイトのサービス内容は、当社の
スタッフが調査収集した観光名所、宿泊
施設、食事処のバリアフリー情報の提供
と要介護者に対する介助スタッフの提
供、宿泊施設や食事処の紹介・手配等の
内容となっています。
同様に現在、京都以外に5つの都県の
行政と共同して、平成 24 年3月まで期
間限定で試験的にバリアフリー観光案
内所を開設し、行政職員やボランティア
によって集められた各地のバリアフリ
ー情報等を提供・運営しています。
(4)高齢者に対する調査・研究
当社のサービスを利用された顧客から、バリアフリーに対する利用情報等をまとめ、観光
施設や行政と共に研究するというものです。
③今後の事業展開
(1)バリアフリー観光案内所のソーシャル・ネットワーキング・サイトの開設
現在インターネットを利用したバリアフリーに関する情報サイト「京都バリアフリー観光
案内所」を運営していますが、もっと幅広く手軽に利用でき、更に多くの観光地のバリアフ
リーの情報が得られる情報交換の場として、携帯電話やスマートフォンを活用したコミュニ
ティ型の会員制のサービスサイトを平成 24 年3月に開設します。
このサイトは、アプリケーション・ソフトを携帯電話やスマートフォンへ落とし込み、登
録した会員に対して、情報提供だけでなく、全国各地の観光名所、宿泊施設、食事処、交通
機関等様々なバリアフリーに関する情報提供をして頂くほか、利用のしやすさや感想等の会
員同士の情報交換もできるソーシャル・ネットワーキング・サービスです。
またこのサービスは、サイトを通じて集まった各種の情報を当社の課題となっている登録
介助者に必要な介護の知識の他、観光の知識やバリアフリーに関する知識等を補う情報とし
て役立てることも目的としています。
(2)ユニバーサルサービス検定
当社では、施設や設備などのハード面だけでなく、社会生活を送る中で、誰もが要介護者
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に対して自然に手を差しのべられるような人的なバリアフリー化の向上を目的として平成
24 年3月にユニバーサルサービス検定とヘルパー育成学校を開校する予定です。
ユニバーサル検定の内容については、1 級・2級・3級のように等級が設けられ、例えば
3級であれば座学による講習を3~4時間受けるだけで付与、2級の場合は座学と実習を一
定時間以上受け付与される等の内容になっています。この検定資格を全国に広め、例えば各
地の鉄道やバス・航空等の交通会社や商店街、商業施設、観光施設、宿泊施設などの従業員
等に講習を受けて頂き、相応の資格認定証を付与し、資格認定証を身に着ることで、高齢者
や要介護者が介助を必要とする時、気軽に声をかけられ、更に一定の知識と経験を持ってい
る介助者ということの安心感を与えることができます。将来的には小学校や中学校等の授業
の中で、介助に対する知識を学び、小学生の頃から要介護者に対する介助の気持ちを持って
もらい、構える介助ではなく、自然に介助する行動や思いを表わすことのできる人を育てた
いと考えています。その結果、介助することが日常生活に溶け込み日本各地どこへ行っても
自然に介助が受けられる、そんな社会づくりをしていくことが、当社の最終的な目標とされ
ています。現在、このユニバーサルサービス検定の実施に向け、関係官庁や団体、企業等と
の連携を深め計画づくりが進んでいます。
4.まとめ
当社を利用した介護を必要とする高齢者や障害者の顧客から旅行を終えた後、当社に寄せら
れる感謝の手紙はあとを絶たず、その内容は、
「体の自由が利かなくなり旅行をすることはもう
無理だと諦めてしまっていた旅行ができ夢のようだ」、「また旅行に行ける楽しみができ人生が
楽しくなった」等々です。
国の施策等により介護保険等、要介護者に対する制度をはじめ、介護施設、駅や公共施設等
バリアフリーとして、ハード、ソフト両面の整備が進められています。しかし、どんなに施設
が整い使いやすくなったとしても要介護者にとって、外出するということは、健常者にとって
理解できないほど肉体的、精神的に苦痛を強いられると言われます。
そんな要介護者が気軽に旅行に行けるようになれればとの想いで始めた当社の事業も5年が
過ぎ、外出時の介助の方法、要介護者の心理やその家族の想い等、数多くの経験を経て、様々
な状況での介助ノウハウが蓄積されました。これは一般的な介護ノウハウではなく、外出した
時、例えば砂利道や砂道での車椅子の介助の方法等、当社ならではの蓄積されたノウハウを一
般社会の人々にも理解して頂けるようにとの想いから、現在準備を進めているヘルパー育成学
校やユニバーサル検定の新たな事業へ繋がっています。
今後、益々高齢者が増える中、介助を必要とする人は確実に増え、商店街やショッピングセ
ンター、電車、バス、観光施設など、社会生活を送る様々な場面で、要介護者に介助が必要な
時、また介助を求められた時に介護に対する知識が少しでもあれば、気軽に介助することがで
き、また要介護者も気軽に助けてもらえることの安心感が生まれるものと思われます。したが
って、当社が行っている事業や今後展開しようとしている事業は、確実に高齢化社会の中で求
められるものであると考え、当社の事業の更なる発展が期待されるところであると考えます。
14
Ⅲ.有限会社 今仲酒店
1.企業概要
企業名
有限会社
代表者
今仲章人
所在地
大阪府池田市古江町 131-1
TEL
072-751-2302
創業年月
1826 年(屋号 吉野屋半蔵として創業)
設立年月
2006 年4月
資本金
300 万円
従業員数
酒販事業:事務4名、営業6名
取引先
主に飲食店
取扱品目
酒類全般
事業内容
今仲酒店
FAX
072-752-2188
飲食店事業:6名
・酒類販売
・飲食店
平成 10 年度から段階的に始まった
酒類免許の規制緩和策は、平成 15 年
9月をもって完全自由化され、それに
伴いディスカウント店、量販店、食品
スーパー、コンビニエンス・ストア、
ホームセンター等の異業種が新たに
酒類販売に参入してきたことで競争
が激化し、既存の酒類販売店が急激に
減少しました。
商業統計の平成 9 年と平成 19 年との比較では、店舗数で 56.9%、従業員数が 55.2%、販売
額では 45.2%と大きく減少しています。
商業統計(酒小売業)
平成9年
平成11年
平成14年
平成16年
平成19年
9年-19年対比
事業所数(店)
83,770
77,668
65,097
60,191
47,696
56.9%
従業員数(人)
248,242
253,238
193,771
177,264
137,143
55.2%
5,492,605
5,195,756
3,783,784
3,329,477
2,489,602
45.3%
販売額(百万円)
(平成19年商業統計)
一般酒類販売店が減少した原因には、売場面積が 20 坪前後のお店が多く、品揃えすること
15
に限界があること、ディスカウント店、量販店、食品スーパー、ドラッグストア、コンビニエ
ンス・ストア、ホームセンターなど大型店やチェーン店での低価格、大量販売、長時間営業に
よる販売など競争環境が変化したこと、売上構成比の高いビール、発泡酒での激しい価格競争
が始まり全体的な利益の低下を招いてしまったこと、更には、若年層を中心とした成人一人当
たりの飲酒量の減少や周辺住民の高齢化したことなどが挙げられています。またこれに小売業
全体の衰退の原因とされている後継者不足や店舗の老朽化等も加わり、一般酒類販売店は減少
の原因とされています。
この様な厳しい経営環境におかれている一般酒類販売業の中で、当店は売上構成比の高いビ
ールや発泡酒の取扱いを縮小し、仲卸業者との取引もせず、焼酎、日本酒を中心に経営者自ら
が全国の酒造元に赴き、味や品質はもとより、流通過程での管理をチェックし、酒に対する姿
勢がしっかりしている酒造元だけと直接取引を行い、全国の隠れた銘酒だけを集めたお店づく
りをして成功している酒類販売店です。
2.特筆すべき事業内容
①事業に至った背景・目的
当店の歴史は古く、1826 年屋号を吉野屋半蔵として酒屋を創業、1903 年に屋号を今仲酒店
に変更、2006 年有限会社今仲酒店を設立しました。
現社長である今仲章人氏は、15 年前 23 歳で父親から今仲酒店を承継しました。
承継当時、当店の事業はスナックやレストラン等の飲食店への業務用卸が中心で、売上構成の
約 70%がビールで占められ、20%がウィスキーやブランデー等の洋酒、残り 10%が日本酒、
焼酎となっていました。
事業承継間もない頃、酒類ディスカウント店の進出や新たな居酒屋チェーン店の進出等の影
響もあり、飲食店間の競争が激しさを増し取引先である飲食店から取引価格の値下げ要求が相
次ぎ、ただでさえ利益率の低い酒類であり、将来的に経営が厳しくなることが予測され危機感
を募らせました。
そこで、価格競争に巻き込まれないで、酒類販売ができる方法がないかという事を思案続け、
その結果、
「取引先の飲食店が繁盛するようになれば取引も増え、取引先の飲食店が繁盛するよ
うになれば値引き要求もなくなるのでは」という考えに至り、この「取引先の飲食店が繁盛す
るようになれば」をキーワードに今までの取引先であった飲食店を見直し、価格競争の激しい
ビール販売からも撤退することとなりました。
しかし、それまで売上構成が 70%あったビールの販売を止め、それまでの取引先の見直しを
行うことについては、かなりのリスクを伴うことになるため、ビールの売上をカバーできる商
品で、且つ価格競争に巻き込まれない商売の方法により店づくりを目指すことが必須であると
の考えから、ナショナルブランドではない、全国各地の隠れた銘酒を探し出し、品揃えし、取
引価格の値下げ等の取引条件を言わずに当店の営業スタイルを理解して取引をして頂ける新た
な飲食店を開拓することとなりました。
16
②事業の内容
(1)業務用卸事業
①取引内容
当店における現在の販売先は約 600 件で、大阪市、神戸市を中心とした地域で、居酒屋、
日本料理店をはじめとする飲食店となっています。
販売先については、過去取引していたお店に対しては、社長自らが新たな営業スタイルを
説明し、その営業スタイルに理解を示し、特に取引価格の値下げ等の条件を言わない取引先
と賛同して頂けなかった取引先とを選別すると共に、社長自ら営業活動を行い新たに取引を
開始した飲食店となっています。
仕入先については、現在約 100 件あり、北海道を除く全国各地の酒造元となっています。
仕入先の選択については、細心の注意を払い、製造から保存までの品質管理、流通過程での
管理を適切に行っているか否かのほか、特に酒造元の人柄というビジネスだけの関係でなく
人間性がしっかりしていて信頼できることを重要視しているため、社長が全国各地を訪ね1
軒1軒丁寧に歩き、酒造元の経営者と会話し今仲社長の考えに賛同して頂けるところを開拓
しています。
仕入取引に対する条件は、酒造元によって様々だが、ほとんどの取引において最低年間仕
入高や最低年間仕入本数等の条件が付けられ仕入取引を行っています。
②品揃え
新たな品揃えについては、まず焼酎の品揃えの幅を広げ、その後日本酒、梅酒等のリキュ
ール類、ワインと徐々に品揃えを充実し、現在では 3000 アイテムまでになっています。
品揃えは、価格競争が激しく酒類販売の中で最も構成比の高いビール、発泡酒の取扱いを
行っていないため、これをカバーするだけの商品力と品揃え、更に他店が競争できない絶対
的優位性を持つことが必要であることから、焼酎と日本酒を中心に仲卸業者が扱っていない
全国の隠れた銘酒を探し出し独自に取引し、他店との差別化を図った品揃えを行っています。
したがって、製造本数が少なく流通市場には出ず酒造元に行かなければ手に入らないといっ
た希少価値のある商品や酒造元が自信を持っ
て製造している逸品等が品揃えされており、販
売先である飲食店の舌の肥えた顧客から喜ば
れ、取引先からも好評を得ています。
現在の商品分類別売上構成比は、焼酎 45%、
日本酒 27~8%、
リキュール 20%、
ワイン 5%、
その他 2~3%となっています。また、店全体
の取引別売上構成比は、業務用卸が
80%、店
頭販売が 10%、インターネット通販が
10%
となっています。
17
③店づくり
平成 18 年 12 月には、お酒の品揃えだけでなく酒器にもこだわったギャラリー的店舗をオ
ープン。従来の酒類販売店というイメージからかけ離れたお店づくりを行って注目されてい
ます。
店内には、数多くの銘酒の他、こだわりのある酒器も陳列され、店舗を訪れる顧客の目を
楽しませています。また、顧客にあったお酒を見つけて頂くため、テイスティングバーも設
けられています。
在庫商品については、温度管理された2つの大型冷蔵庫により商品を保管し品質の劣化を
防いでいます。
④取引先へのサービス
当店では、
「取引先である飲食店が繁盛すれば」、更にはその飲食店の顧客に喜んで欲しい
という考えのもと、飲食店で使われる POP やメニューもサービスとして作成しています。
(2)インターネット通販事業
当店では、2003 年頃からインターネットを通じて、全国の酒愛好家に当店で取扱っている
全国の隠れた銘酒を1品 1 品細かく紹介すると共に販売も行っています。
ホームページの開設当初2年間は、ホームページ作成会社に外注していましたが、作成コ
ストの問題やリアルタイムでの更新ができずに顧客に迷惑がかかることがあったため、現在
では、自店でデザイナーを雇入れ自社で作成・更新を行っています。
デザイナーについては、現在2名おり、ホームページの
作成・更新の他、取引先の飲食店で使われる POP やメニュ
ー等の作成も手掛けています。
(3)イベント事業
今仲酒店が主催となり全国の銘酒の飲み比べ会を開催、
今仲酒店の顧客だけでなく、多くの酒愛好家に隠れた銘酒
を見つけて頂くイベント「銘酒探求 2011」を開催していま
す。このイベントは、入場料 2,000 円(当日券 2,500 円)
を支払い、出店している全国の酒造元の銘酒を飲み比べら
18
れるというもので、出店した酒造元は、当店の仕入先で 30 軒の酒造元が参加し、自慢の銘
酒を入場者に飲んで頂き、その感想を直接入場者から聞けることもあり、酒を造る側と買う
側それぞれ新たな発見等があり好評を得ています。
(4)飲食事業
お酒だけでなく酒器や料理の器にもこだわり、顧
客にあったお酒の提案や料理に合わせたお酒提案が
できるよう数多くのお酒を取り揃え、食材も厳選し
たものだけを使い、顧客の五感に響くおもてなしの
心で顧客とのご縁を大切にしたいとの思いのこもっ
た創作料理店「心響彩酒ごえん」を平成 20 年 8 月
に開店。お酒や料理にこだわりのある顧客に高く評
価
されています。
③今後の事業展開
(1)販売先の拡大とインターネット通販の拡大
当店の経営理念は、「新しいビジネス
スタイルで、今までにない酒屋づくりを
行い、次世代の目標となるようなお店に
なる」ことを掲げ、減少傾向にある酒類
販売業種は、儲かる商売で魅力ある業種
であることを広く認知して頂けるよう
心掛け経営を行っています。そのため、
販売先である飲食店数の拡大を図ると
共にホームページの充実を図りインタ
ーネット通販での販売を拡大させ、その
結果、給与が 1,000 万円を超える社員を
増し経営目標とする魅力ある酒店を目
指したいとしています。
(2)酒に関連する食材の開発事業
当店の経営する創作料理店をベースに、お酒に合う料理をはじめ、おつまみや惣菜等お酒
に関連した食材の開発を行い、取引先の飲食店へ販売していくことも現在検討されています。
(3)飲食店のリテイルサポートシステムの構築
当店が、現在のビジネススタイルになるきっかけとなった「取引先である飲食店が繁栄す
19
れば、当店も繁栄する」という考えに基づき、現在もメニューの作成や POP の作成サービ
スを行っていますが、更なるサービスの向上を図るため、飲食店のメニュー提案や料理と食
器などのコーディネートからお店づくりまでができる体制を整え、取引先をリテイルサポー
トする構想があり実現化に向け検討されています。
④まとめ
厳しい経営環境に置かれている一般酒類販売店では、酒のディスカウント店や大型量販店、
スーパー、コンビニエンス・ストア等との競争を避け、全国の地酒や焼酎だけに特化したお店
や試飲させながら商品説明を行うお店など、今までになかった品揃えや販売形態に転換した酒
類販売店も少なくありません。中でも当店は、通常売上構成比が一番高いとされるビール・発
泡酒の取扱いを一切止め、仲卸業者との取引も止め、販売先の大幅な見直しを行うという、大
きなリスクを伴う大転換を行い成功しました。しかしその成功の陰には、日々、社長自ら全国
の酒造元を訪ね、酒造元の人柄と酒を造る熱意等を重視して、取引先の選定基準を満たした酒
造元とだけ直取引を行い、決して価格を安くするという事をせず、酒造元が大切に造り上げた
お酒を適正な価格で販売することで、造る側と売る側の信頼関係を築く努力を続け、更に主な
販売先である飲食店へは、
「飲食店が繁盛すれば当店も繁盛する」と言う考えの基に一般的には
知られていない地方の銘酒を提供することで、その飲食店の顧客に来店する楽しみを与えると
共に品揃えしている地方の銘酒ファンを作り、他の飲食店との差別化を図ることで、販売先の
飲食店を繁盛店へ導き、仕入先、販売先それぞれに取引のメリットを与え信頼関係を築き上げ
る努力を続けていることが成功へ繋がっていることと考えます。
20
Ⅳ.ドギースマイル
Ⅰ.会社の概要
店
名
ドギースマイル
住
所
〒791-0114
者
塩崎 瑞穂
創
業
平成 18 年8月
特
徴
移動車による犬のトリミングサロン
代
表
愛媛県松山市南白水1-6-12
Ⅱ.特質すべき事業内容
1.事業化に至った背景・目的
ペットと共に生活する社会が定着しつつあります。社団法人ペットフーヅ協会の平成 23 年
度調べでは、犬の飼育世帯数は全世帯の 17.7%、飼育頭数は 11,936 千頭、飼育1世帯当たり
1.26 頭を飼育している結果になっています。
種 類
<犬>
世帯数
飼育世帯率 飼育世帯数 平均飼育 飼育頭数
( 単 位 : 千 )
( 単 位 : 千 )頭数
( 単 位 : 千 )
53,549
17.70%
9,473
1.26
11,936
<猫>
53,549
10.30%
5,521
1.74
9,606
ペットを飼育している世帯の年代別の特徴は、50 歳代での飼育率が最も高く、次いで 60 歳
代、40 歳代の順で飼育率が高く、高年齢層でのペットのニーズの強さが伺え、子育て世代の 30
歳代での飼育率が低い結果にな
っています。
飼育されている犬の年齢構成
は、1~6歳の成年期の犬が最
も多く 43.7%を占めていますが、
ペットの飼育率(平成23年度)
2 5 .00%
2 0 .00%
1 5 .00%
1 0 .00%
7歳以上の高齢期に入っている
5 .00%
割合は 51.4%と過半数を超えて
0 .00%
おり、健康管理や衛生面の気遣
全年代
20代
30代
40代
犬
いをする世帯が増加しています。
50代
60代
猫
飼育している犬の年齢(平成23年度)
飼育されている犬種は、室内
で買い易いこともあり圧倒的に
45.9
50.0
45.0
40.0
35.1
35.0
小型犬が多く、プードル、チワ
30.0
ワ、ダックスフンドの3犬種で
20.0
6割近くを占めています。
10.0
25.1
25.0
24.6
18.9
15.3 15.4
15.0
9.0
3.5
5.0
3.1
0.0
0歳
21
1~6歳
7~9歳
純血
10~12歳
雑種
13歳以上
犬はペットの代表として高齢
犬
者ばかりではなく、年齢層の若い
71, 163
チ ワワ
癒す存在として年代が高くなる
45, 430
ダッ ク ス フンド
15, 904
ポメラニア ン
14, 929
ヨーク シ ャー・テリア
12, 095
柴
るものと思われます。
ペットフード,動物病院代,
「他
の愛がん動物・同用品」を合わせ
92, 622
プードル
世帯にも飼われていますが、心を
ほど犬に多くの費用をかけてい
種
シ ー・ ズー
9, 513
マルチ ーズ
8, 771
フレンチ ・ブルドッグ
8, 297
パ ピヨン
7, 913
たペット関連費についてみると,
0
2 0 ,000
4 0 ,000
6 0 ,000
8 0 ,000
1 0 0,000
世帯主が 50 歳代の世帯で最も支
出金額が多く,ペット関連費への
支出が最も少ない 30 歳未満の世
帯と比べると,7.3 倍になってい
ます。
また,消費支出に占めるペット関
連費の割合も,50 歳代の世帯が最
も高くなっています。
加えて、単身世帯の1世帯当た
り年間支出金額を男女別にみる
と、女性(平均 12,508 円)は男
性(平均 2,983 円)の4倍以上と
なっています。さらに、年齢階級
別にみると、女性の 35~59 歳の
世帯で 20,752 円と最も多くなっ
ています
ドギースマイルは、犬のトリミ
ングを移動車で訪問して行う、出
張型のトータルヘルスケアの業態です。
ドギースマイルのオーナーは大の動物好き。トリマーという職業があることは高校生の頃か
ら知っていて、当時から興味がありました。でも、ごく普通に大学に進学し、松山に帰郷してか
らは大手スーパーに就職しましたが、どうしても夢をあきらめきれず、スーパーを退職し、トリ
ミングの専門学校に進みました。卒業後は、ペットショップのトリマーとして勤務したり、トリ
ミングスクールの講師をしたりと動物関係の仕事に就いていました。
22
町中にはトリミングの店舗は多いものの、道具と技術があれば開業できる職種でしたので、
平成 18 年8月に一念発起して開業しま
した。すでにトリマーとして店舗での
従事経験があり、店舗を経営する課題
を熟知していたため、同様な形態では
競争が激化すると判断していました。
若い犬にはお金をかける傾向にあり、
着るものとかのファッション品がある
店舗に行く傾向にあります。
通常は飼い主が犬を店舗につれてい
きますが、飼い主の高齢化と共に犬も
高齢化するので、預けることに不安があるあるいはゲージにいれることに抵抗感があるなど、
長年犬と向き合うと飼い主の意識は大きく変化することに気付きました。
そこで、店舗を持たない軽四を改造した“移動トリミングカー”により、飼い主さんの自宅
前まで車で行き、その車のなかで犬の健康状態をチェックしカルテにしてから、シャンプー・
カット・マッサージなどをする営業形態を採ることにしました。
2.当事例のポイント
(1)事業の特徴
オーナーの瑞穂さんは、JKC公認A級トリマーの資格を取得し、一般的なカットなどのト
リミングの施術に加え、日本トータルヘルスケア協会認定ドッグアロマセラピスト、愛玩動物
飼育管理士及びJAHA認定動物看護士の資格も取得され、
物言わぬ命を預かる業種である視点から細心の注意を払っています。
ドギースマイルのイメージ戦略は、“出張ドッグサロン”。トリミングにアロマテラピーを
組み合わせているところが最大の特徴になっています。シャンプー・カットだけの犬の移動ト
リミングカーは四国にもありますが、アロマを使い、マッサージもしてもらえる出張サービス
は四国初で、全国的にも珍しいものです。
“アロマ”とは芳香のことで、地球上には 2,000~3,000 種類もの芳香植物が存在して、その
うちエッセンシャルオイルとして成分抽出できたものが約 300 種あり、それぞれ吸入するとリ
ラックスできるとか、体調が良くなるとかの効果があります。
人間だけでなく犬やネコにも同じように作用しますので、例えば、神経質な犬には鎮静効果
のあるアロマ(ラベンダーオイルなど)を使用したり、皮膚が弱い犬にはシャンプーの中に皮膚
を強くするオイル(ティーツリーオイルなど)を混ぜたり、ニオイのきつい犬には消臭効果のあ
るアロマ(ローズウッドオイルなど)で臭いを抑えることなどを行っています。
23
ドギースマイルが事業を進めるうえで留意しているのは健康状態のチェックで、動物看護士
としてトータルヘルスケア点にあります。マッサージすることにより、凝りをほぐしたり、リ
ンパの流れを良くする効
犬種
果があり、犬もマッサージ
してくれると気持ちが良
チ ワ ワ ・ダックス
A
くなっているようです。
B
とか、耳ダレが出ているな
とか、お腹を痛がっている
だん気づかないような細
かいことを発見すること
3, 000円
(尻程度)
5, 000円
マル チ ーズ
5, 500円
シーズー
5, 500円
ポメ・パ グ ・パ ピヨン
プードル ・Mシュ ナ ウ ザ ー
C
コ ーギー・キ ャバ リア ・
柴・フレンチ ブル
E
F
シェ ル ティ・ボーダー
ラブ・ダル (短毛)など
ゴール デン(長毛)など
2, 000円
6, 000円
4, 500円
A コ ッカ ー
D
③ア ロマケ ア
コ ース
4, 000円
・ウ エスティ
なとか、乳腺に腫瘍ができ
ているなとか、飼い主がふ
②トリミング
コ ース
3, 800円
ヨーキ ー
犬の身体を触ることで、
目がちょっとおかしいな
①シャンプー
コ ース
7, 000円
5, 000円
3, 000円
6, 500円
(尻程度)
7, 000円
8, 000円
4, 000円
になります。
出張サービスによる事
業のメリットは、以下の評価に繋がっています。
●家の近くで作業するので犬が安心する
●他の犬との接触がないので伝染病などの心配がない
●車酔いする犬もストレスなく利用できる
●車を運転できない高齢者の飼い主さんでも利用できる
●迎え、預けという作業がないので時間を有効に使える
(2)事業の展開
ドギースマイルを利用していただいているお客様は、主婦、高齢の女性、自営業の
性の順番になっています。
一日にお伺いすることができる件数は、平均し
て3件程度になります。開業時にはメディアに取
り上げられましたので、一定の反響がありました。
移動車の外装の印象はかなりのインパクトはあ
るものと思われますが、その後の依頼に繋がるこ
とは少なく、ペット仲間のご紹介という口コミが
利用者確保の中心になっています。開業して6年
を迎え、利用者の第二位にあるように高齢の主婦
のパートナー犬が他界する割合が多く、利用者の
維持拡大が課題になりつつあります。
24
男
ドギースマイルの運営方針は犬のトータルヘルスケアにあり、1~1か月半に1回の訪問によ
り、コミュニケーションアニマルとしての犬の健康維持にあります。
しかし、犬の健康状態は飼い主の健康状態の鏡でもあり、アロマテラピーがドギースマイル
の違いを主張する要因とすれば、飼い主がアロマ効果を実感していないと、大事なパートナー
にも必要性を感じないことになります。
そのため、オーナーによるペットへのアロママッサーを施術できるように心がけているとの
ことです。
少子高齢化や核家族化の進展に伴い、ペット飼育の必要性についての報告があります。
・ペットとして動物を飼うことについて、よいと思うことはどのようなことか聞いたところ、
「生活に潤いや安らぎが生まれる」を挙げた者の割合が 51.2%と最も高く、以下、「家庭がな
ごやかになる」(42.5%)、「子どもたちが心豊かに育つ」(40.6%)、「防犯や留守番に役立つ」
(28.1%),「育てることが楽しい」(24.7%)などの順となっています。
・今後、少子高齢化や核家族化が進む中で、人とペットの関係はどのようになっていくと思う
か聞いたところ、「家族の一員同様に共に生活する世帯が増える」を挙げた者の割合が 43.3%と
最も高く、以下, 「老後のパートナーとし
少子高齢化・核家族化の進展とペット飼育
てのペットの重要性が増す」(39.8%)、
「高齢者が病気などにより飼育できなく
なるペットが増える」(31.8%)などの順
43.3
家族の一員同様に共に生活する世帯が増える
となっています。
・性別に見ますと、「老後のパートナーと
してのペットの重要性が増す」を挙げた
者の割合は、女性で高くなっています。
・年齢別に見ると、「家族の一員同様に共
に生活する世帯が増える」を挙げた者の
割合は、20 歳代、30 歳代で、「老後のパ
39.8
老後のパートナーとしてのペットの重要性が増す
高齢者が病気などにより飼育できなくなるペットが増え
る
31.8
福祉施設や老人施設などでペットが飼われるケースが
増える
26.8
子供の情操教育などの目的でペット飼育の重要性が
増す
23.6
ートナーとしてのペットの重要性が増
す」を挙げた者の割合は、40 歳代で、「高
しつけられたペットが増え、ペットを連れて自由に公共
施設や交通機関などを利用できるようになる
齢者が病気などにより飼育できなくなる
15.7
0
ペットが増える」を挙げた者の割合は、60
5 10 15 20 25 30 35 40 45
歳代で、それぞれ高くなっています。
・世帯構成別に見ると、「家族の一員同様に共に生活する世帯が増える」、「老後のパートナーと
してのペットの重要性が増す」を挙げた者の割合は、2世代世帯で、それぞれ高くなっています。
ドギースマイルの経営理念はトータルヘルスケアにありますので、いわゆる犬の美容院とし
ての機能は飼い主との定期的な交流の場づくりですので、飼い主の都合にあわせて、パートナ
ーの健康を確保する業務が求められることになります。
そのため、新たなサービス分野として、“ペット・シッター”も視野に入れることができま
25
す。これは、飼い主さんが旅行など長期留守の間、ご自宅に出張して犬やネコの世話をする事
業で。ペットホテルに預けるのと違って、環境が変わらないのでパートナーにストレスがかか
らないため、下痢をしたり、毛が抜けたり、かきむしったりということがなくなります。
ペット・シッターを軌道に乗せるには、自宅を訪問しペットを介して生まれる信頼信用関係
が不可欠となりますが、オーナー一人での市場の拡大は厳しいものがあるため、ハウスクリー
ニング及びホームセキュリティ関連の事業者との連携による普及を図ることも視野にいれてお
く必要があるものと思料されます。
課題は、現在は自分一人の経営であり、学校(学校法人川原学園非常勤講師)が2日間、4日
間営業となりますので、実現に向けての人員の確保にあります。
何時が空いていますかと必ず聞かれるので、お客様を待たせている状況にあるので、経営者
としてのマネジメントが要求されているものと思われます。
また、ドッグアロママッサージの講師としての活動にも積極的だ。最近、増えてきたドッグ
カフェのようなところで、飼い主さんを対象に、自宅でも簡単にできるアロマテラピーの知識
を広める活動も行っています。
また、現在は8匹の犬を飼い、モデル犬として学校などに持ち込んだり、品評会へ参加して
技術の向上と勉強する姿勢をもち続けているので、移動車をもつことは自ら顧客に働きかける
商売を指向している初心に立ち返り、事業拡大を指向する時期にきていると思われます。
26
Ⅴ.クイックウォッシュ株式会社
1.企業概要
企業名
クイックウォッシュ株式会社
代表者
高武純一
所在地
福岡県福岡市博多区住吉2丁目 16-1-205
TEL
092-273-1919
創業年月
平成 20 年8月
設立年月
平成 20 年8月
資本金
従業員数
店舗数
FAX
092-273-1920
7,300 万円
15 名
直営店
1店
代理店 9 店
・洗車サービス事業
事業内容
・洗車サービス FC 展開事業
・カー用品販売
当社は、福岡市に隣接する志免町に平成 20
年8月に設立されたばかりの若い企業で、
「人々の困ったことを解消することで、社会
に愛され、世界に必要とされる企業づくり」
を理念とし、
「世界的な企業となり、世界的に
貢献することで、世界的歴史に残る企業とな
る」ことをビジョンとして、今までにない新
たな事業を展開し、設立して間もない企業に
も関わらず多くのマスコミにも取り上げられ、
平成 23 年6月には、九州アントレプレナー
大賞(九州ニュービジネス協議会)
、同年 11 月には、ニッポン新事業創出・アントレプレナー部
門最優秀賞(社団法人 日本ニュービジネス協議会連合会)を受賞しています。
平成 22 年7月には本社を福岡市の中心である博多区に移転し、業績の拡大を図っています
2.特筆すべき事業内容
①事業に至った背景・目的
高武社長は、鹿児島の大学を中退後、自分が甘いもの好きであった事と母親も甘いものを作
ることが好きであったため、母親とともにスイーツのお店を開業、またたく間に人気が上昇、
繁盛店となりました。しかし1年程で経営を母親に任せ、父親の経営する水道工事会社を手伝
うこととなりました。
この会社では、営業を担当し福岡県内での受注件数 NO1 を目指し活躍、ライバル企業との
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差別化を図るために 24 時間体制でメンテナンス対応することをアピールし、
その実績を積み、
その後、水道に限らず電気や空調設備工事等にも対応できる会社となりました。その結果、当
初5名だった従業員数も8年後には 40 名まで増えピーク時には、受注が月に 200 件を超える
までに成長させました。
しかし、こうした状態がいつまでも続くわけではないという思いが、常に頭の隅にありまし
た。次の事業展開を考えるため、世界各国を回り見聞する中で、東南アジアの水環境の劣悪さ
を目の当たりにして、水環境の重要性を思い知らされました。そこで、人間が生きていく上で
一番重要なライフラインである水をキーワードに次の事業展開を考え始めることとなり、以前
アメリカの郊外で見た洗車専門店を思い出し、洗車サービスの会社を始めることとなりました。
当初は、郊外型の洗車専門店で開業しましたが、洗車時に使われる大量の水が無駄だと気付
き、少量の水で洗車することができて、自然環境にも優しい新たな洗車溶剤の開発が必要であ
ると考え、様々な溶剤開発を手掛けてきた元大学教授と共に半年程研究を重ね、2リットルの
水で洗車ができる 100%植物系原料からなる洗車溶剤の開発に成功。これまでの洗車では考え
られなかった2リットルの水だけで、且つ水を使わないことにより狭いスペースでの洗車が可
能となり、洗車時間も短くて済むという洗車サービスを開発。現在、九州を中心に事業展開を
進めています。
②事業の内容
(1)新たな洗車溶剤の開発により広がる事業展開
新たな洗車溶剤の開発より、これまで洗車する場合大量の水を必要としていましたが、2
リットルの水だけで洗車でき、水の飛散もないため大きな洗車スペースや排水溝なども必要
なくなり、これまでの洗車の常識を覆すものとなりました。そのためこの溶剤を使った洗車
サービスの事業展開に広がりができ、従業員と共にその展開方法を検討し、その中で、まず
ターゲットを検討、
「洗車に手間暇をあまり掛けたくない、時間を有効に使いたい人」、
「日頃
洗車をあまりしない女性や主婦」に絞り、更に展開する場所については、このターゲットを
含め、多くの人が集まる場所を検討した結果、ショッピングセンターの駐車場が挙げられ、
そこで展開を進めていくこととなりました。出店の足掛かりとして、まずイオン九州との直
接交渉により、九州に展開しているイオンのショッピングセンターを中心に事業展開するこ
ととなり、更に平成 22 年 10 月には、関東進出の1号店として、埼玉県のイオンモール川口
店へ出店しました。当初、全店直営店と
していましたが、平成 23 年5月より九
州地区に代理店を置き、九州地区の直営
店全てを九州地区総代理店のフランチャ
イズ店(以下 FC 店)として契約し、現
在、直営店1店(イオンモール川口店)
と FC 店9店となっています。
また、開発された溶剤の他、狭いスペ
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ースで他の車に当たらないで洗車するための身のこなし方をマニュアル化した洗車方法やこ
の溶剤を使った洗車サービスシステムについて、現在特許申請を行っています。
(2)特殊な洗車方法
現在、直営店と FC 店合わせて 10 店
舗を展開、各店の営業時間はそれぞれ
のショッピングセンターの営業時間に
合わせているため異なっていますが、
おおよそ 10 時から 20 時で、平日の従
業員数は2~3名で平均洗車数は約 20
台、休日は4~5名体制で平均洗車数
は約 40 台となっています。料金設定に
ついては、約 200 箇所のガソリンスタ
ンドの洗車料金を調査して、その中で
人気店の料金の8割に設定して割安感
を出しています。
(料金表については別
表のとおり)ワックス掛けなどのオプ
ションメニューを利用される顧客も多
く平均客単価は、約 2,500 円となって
おり、川口店はこれよりやや高めの客
単価になっています。また、洗車1台
当り 10 円の収益をアフガニスタンの
水環境改善基金団体に協力金として募
金をしており、社会貢献にも繋げてい
ます。
洗車の流れは、顧客が駐車場入口や
駐車場内にある看板やポスター、チラ
シ等の連絡先へ電話し、駐車場所を連
絡。洗車スタッフが洗車用具の入った
カートと共に駐車場所へ駆けつけ、そ
こで受付と代金支払をします。受付後、
まず車体のキズをチェックし、その後
特殊溶剤を噴霧器により車体全体へ吹
きかけ、数分間汚れを浮かせた後、溶
剤を薄めた水を含ませた拭きあげ用の
布で軽く拭きあげて終了。作業終了後
にもう一度キズのチェックを行い全て
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終了となります。作業の前後に車体のキズを
料金案内
チェックすることで、顧客に対して、丁寧な
◆CARクリーニングメニュー
作業と車を預かることへの安心感を与えてお
り、開業以来1件のクレームもありません。
1台の洗車時間は、大きさにより異なりま
すが、普通車でおよそ 20 分です。使用され
る水の量は、溶剤と浮かんだ汚れを拭きとる
時に使う少量の水だけで、洗車した車の周り
は一切濡らさず済ませられます。希望される
顧客に対しては、洗車終了の連絡をスタッフ
からするサービスも行っており、また車内清
掃などのスペースを必要とするオプションに
ついては、駐車場内のスタッフが常駐するス
ペースまで顧客が車を持って行き、そこで作
<サイズ>
Sサイズ(軽・コンパクトカー)
Mサイズ(普通車)
Lサイズ(RV・1BOX)
LLサイズ(特大車)
<価格>
990円
1,490円
1,990円
2,990円
<時間>
約15分
約25分
約35分
約45分
◆ワックスコーティング
<サイズ>
Sサイズ(軽・コンパクトカー)
Mサイズ(普通車)
Lサイズ(RV・1BOX)
LLサイズ(特大車)
<価格>
500円
800円
1,200円
1,500円
◆ポリマーコーティング
<サイズ>
Sサイズ(軽・コンパクトカー)
Mサイズ(普通車)
Lサイズ(RV・1BOX)
LLサイズ(特大車)
<価格>
2,000円
3,000円
4,000円
5,000円
◆足廻り
<メニュー>
ホイール洗浄
タイヤワックス
<価格>
500円
300円
◆その他
業を行います。
<メニュー>
虫取り
ガラスコート(フロントorリア)
ガラスコート(全面)
<価格>
900円
1,000円
3,000円
※店舗により価格が異なります。 【当社HPより】
(3)フランチャイズ契約の内容
当社に加盟するには、個人・法人問わず、いずれでも加盟契約はでき、経験等も一切問い
ません。契約にはショッピングセンター等の駐車場で洗車サービスを行うショップフランチ
ャイズシステム契約と自前の車やバイクを使用し、顧客の自宅や会社の駐車場まで出張し洗
車サービスをするデリバリーフランチャイズシステム契約の2種類があり加盟契約にあたっ
ては、加盟料、保証金、技術研修費、資材一式費用が開業費用として掛かり、その後の月々
の費用として、ロイヤリティー、QMS(溶剤)使用料、クレームコンサル費が掛かります。
費用の詳細は次の通りです。
ショップフランチャイズシステム(SFC)開業資金
1カート
2カート
加盟料
200,000
400,000
保証金
100,000
150,000
技術研修費
250,000
500,000
資材一式
388,232
1,354,615
ロイヤリティー
33,000
50,000
QMS使用料
12,000
12,000
クレームコンサル費
3,000
3,000
合計
986,232
2,469,615
3カート
600,000
250,000
500,000
1,591,947
67,000
12,000
3,000
3,023,947
4カート
800,000
300,000
500,000
1,840,679
85,000
12,000
3,000
3,540,679
※カートとは、洗車用具一式入ったカートをいう
デリバリーフランチャイズシステム開業資金
加盟料
200,000
保証金
100,000
技術研修費
250,000
資材一式
700,000
合計
1,250,000
30
5カート
1,000,000
350,000 開業時のみ費用
500,000
2,089,411
104,000
月々の費用
12,000
3,000
4,058,411
契約時の加盟審査は、決算書等の書類審査
と面接審査を行い、特に面接による審査を重
視しており、当社の企業理念に賛同し、やる
気の有無などを判断しています。契約期間は、
1年間で以降、自動更新となります。
契約後、洗車方法が特殊なため、本社で座
学と実地の研修が約2週間行われ、未経験者
であっても安心して開業ができるシステム
となっています。また、契約に反する行為を
した場合のペナルティについては、規定はあ
【洗車カート】
りますが過去に適用例は有りません。
③今後の事業展開
(1)加盟店の拡大
当社の創業時の経営目標として、創業後5年以内に加盟店 1,000 店舗を掲げ、それに向け
努力しているものの社長自らが営業と開発も行っているため、計画通りの加盟店拡大に繋が
っていないことが課題とされており、社長に代わる営業と開発のできる人材の確保が急務と
なっています。
また、加盟店の拡大を進める上で、契約前にマーケティング調査を行い調査結果をもとに
出店の提案を行うなど加盟店拡大に向け、その営業方法も変え今後は、出店する対象もショ
ッピングセンターの駐車場だけでなく、中古車センターや大型パーキング、社用車を多く抱
える企業などにも広げていく考えです。
(2)海外進出
最近は、中国、韓国等海外からの引き合いも増加しており、今後海外への展開も視野に店
舗展開を考えています。
④まとめ
高武社長は、海外視察する中で、日本では水道水がそのまま飲める生活が当たり前となって
いるが、海外に行けば、まだまだ当たり前でない国も多く有ることに気付き、改めて水環境の
大切さを知り、その環境保全をキーワードに新たな洗車溶剤の開発に成功。水を使わずに洗車
ができる溶剤の開発によって、水の飛散がなくなり、今までは考えられなかったショッピング
センターやスーパーの駐車場、コイン駐車場などでも洗車ができるようになったことから、洗
車場などの広いスペースの確保や洗車用の特別な設備も必要なくなり、少ない資金で開業でき
るなど多くのメリットが生まれ、事業展開する幅が広くなったことが成功の要因と考えられま
す。
また、商品化すればヒット商品となることは間違いないと考えられる洗車溶剤ですが、洗車
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サービスとしてのフランチャイズチェーンの全国展開を進める上で、その妨げとならないよう
に一般小売用としての商品化は行わず、あくまでもチェーン展開を重視し無理をせず着実に事
業展開を進めて行こうとする姿勢が見られます。
海外においても、この溶剤の評価が広まり、その問い合わせも増加傾向にあることから、海
外への展開も期待でき、今までの洗車に対する概念を変えると共に、水環境の改善に大きく繋
がることと考えます。
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