新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山秀昌 (学部2年生講義資料) 2017.1.17, 18 放射線物理学 講義内容 基礎概念 画像検査 画像診断 疾患概念 病態概念 物質の構成 人間 物質 - - - + + + + ++ + + + + - 原子核 核子 電子 Electron - 原子 + 陽子 Proton クォーク等 細胞 分子 (タンパク質等) 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 個人 見て欲しいもの 個人 アーチファクト 正常解剖 物理学的な信号 検査の知識 臨床における物理学の 適応範囲 • 科学、特に物理学は、客観的に捉えうる物 としての対象の間の普遍的な関係を、論 理的・無矛盾に記述することで共有可能な 知識にしている。 • したがって、客観的に捉えることが困難な 状況や、普遍的にはならない関係が混在 する状況では、適応の程度を十分に吟味 する必要がある。 医療面接・触診・視診 知識・思考 判断 錯視 http://www5.dent.niigata-u.ac.jp/~nisiyama/radiation_physics_slide.pdf • 画像診断は、「見たいもの」と「見えているも の」とのギャップを埋めていく作業に相当する。 見えているもの 放射線・エックス線とは? エックス線の発生 エックス線の減弱と線質について 線量の単位と意味 放射能について 線量測定器について 見たいもの • • • • • • 「見たいもの」≠「見えているもの」 中性子 Neutron 1 標準理論での素粒子の分類と複合粒子 質量の大きな素粒子や結合エネルギーの大きな素粒子は取り出しにくく、発見が遅い。 ボーズ粒子 ※1 力の伝播(場の概念) スピンは整数 物質を構成する スピンは半整数 電荷※2 陽子・中性子等 強い相互作用 グルーオン フェルミ粒子 今回の講義で 主に扱う範囲 クォーク g 電磁相互作用 光子 γ u c t +2/3 d s b -1/3 放射線とは? 電磁波 弱い相互作用 ウィーク W± Z0 ボゾン ヒッグス粒子 (重力子他) レプトン(軽粒子) e 電子 νe - ※1実際には「粒子」ではない「場」。光子は「電場・磁場」の振動 μ τ νμ ντ -1 0 ニュートリノ ※2反物質の電荷は±が反転する。 放射線とは(広義) (狭義の)放射線 プリント p.2 分類1(波か粒子か?による分類) 透過する物質を直接あるいは間接に【電離】する(だけのエ ネルギーを有する)能力を有する【電磁波】、【粒子線】 プリント p.2 分類2(電離するかどうか?による分類) • 運動エネルギーを持った【電磁波】・【粒子線】 • 電磁波 (electromagnetic wave) (=電磁放射線、electromagnetic radiation) 電場 • 電波、赤外線、可視光線、紫外線、エックス線、γ線 磁場 進行方向 • 粒子線(particles) (=粒子放射線、corpuscular radiation) • 非荷電粒子線 • 中性子線、ニュートリノ • 荷電粒子線 • 電子線、α線、β線など • 間接電離放射線(indirectly ionizing radiation) • 非荷電粒子線 • 中性子線など • 荷電粒子線 • 電子線、α線、β線 生物内部にて 化学反応を起 • 直接電離放射線(directly ionizing radiation) こしうる • 電離放射線(ionizing radiation) + • 電磁放射線(エネルギーの高いもの) • エックス線、γ線など - • 非電離放射線(non-ionizing radiation) • 電波、赤外線、可視光線、紫外線など • ※紫外線は励起作用があるが、電離作用はない。 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 2 p.3 放射線と原子の相互作用 電磁波としての エネルギー放出 (入射したものと異なる) 光軌道 制動放射線 (入射したものと 異なる) 【励起】** 制動放射 + 散乱放射線 (入射したもの が散乱) + 【電離】 最外殻 軌道電子 反跳電子・二次電子* (入射したものと異な る) 電離・励起が生じると化学的に活性が 高い状態(フリーラジカルと呼ばれる状 態)になる → 化学反応を引き起こす。 *荷電粒子で電離した場合はδ線と呼ぶ 間接電離放射線による電離はこの二次電子による電 離の方が、 直接的な電離よりも電離能力が大きい。 **励起は紫外線でも生じる プリント穴埋めチェック(p.2) • • • • • • • • • • • • 運動エネルギーを持った【電磁波】、【粒子線】 透過する物質を直接あるいは間接に【電離】する能力を有する【電磁 波】、【粒子線】 【電磁】波 (electromagnetic wave) (=【電磁】放射線、electromagnetic radiation) 【粒子】線(particles) (=【粒子】放射線、corpuscular radiation) 荷電【粒子】線(charged particles) 非荷電【粒子】線(uncharged particles) 【電離放射】線(ionizing radiation) 【直接電離放射】線(directly ionizing radiation) 【間接電離放射】線(indirectly ionizing radiation) 【非電離放射】線(non-ionizing radiation) 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 核内からの放射線 放射性同位元素からの放出 • α線(ヘリウム原子核) • β線(電子) • γ線(電磁波) - γ + α β + 放射能(放射する能力)を 有する物質(放射性同位 元素)から出てくるもの。 - + + + + + + + + + + + + ++ ++ + + + 内部被曝の原因にもなる。 放射線の分類 エックス線とは? 電磁波とは? 放射線 直接電離放射線 電離放射線 荷電粒子 (電子線、α線、β線) 粒子線 非荷電粒子 (中性子線) 間接電離放射線 非電離放射線 エネルギーの高い電磁波 (エックス線、γ線) 電磁波 エネルギーの低い電磁波 (電波、赤外線、可視光線、紫外線) 3 可視光線も電波も電磁波(放射線) 電場 アンテナの棒の長さと間隔は 波長と同じか1/2ないし1/4の長さを利用 電磁波とは? • • • • • 電磁波は横波(音波は縦波) 磁場 量子力学的にはボーズ粒子(光子) 電場と磁場が電磁誘導しあいながら伝播していく。 真空中を光速で伝播する。(c≒3.0×108m/sec ) λ:波長と、ν:周波数(Hz)は反比例(c=λ×ν) λ:波長 地上デジタルテレビ 極超短波(UHF) 周波数:470MHz~770MHz 波長:39cm~64cm ν=7.5Hzの時 地上アナログテレビ 超短波(VHF) 周波数: 30M~300M 波長: 1.4m~3.3m 30万km=c×1秒 BS,CS 周波数: 12GHz 波長: 2.5cm c≒3.0×108m/秒なので、例えば. ν=7.5Hz(7.5回/s)のとき λ≒3.0×108/7.5=4.0×107m= 4万キロメートル(地球一周に相当) 光は1秒間に地球7周り半分の距離を進む。 電磁波の量子(光子)としての エネルギーと周波数・波長との関係 • 電子1個を1Vで加速したときに得られ る運動エネルギー • 1.602 × 10-19[C]×1[V] =1.602 × 10-19[J] 電 波 λ c 赤 外 線 波長(長~短) 30 ~ ULF 300 ~ 30 300 3k ~ 可 視 光 線 λ 7 生体での大きさ ないし周波数 eV 10 7 6 -13 ~ 10-13 ~ -12 脳波 自然界での現象、利用目的など シューマン共振 1000km 10 ~ 10 100km 10 6 ~ 10 5 10 -12 ~ 10-11 ※以下の電波の波長はアンテナの大きさとほぼ同じ~4倍以内。 10km 10 5 ~ 10 4 10 -11 ~ 10-10 標準電波、対潜水艦通信(水中での減衰が少ない) 300k 100km ~ 4 3 10 -10 10 1peV -9 50~60Hz:商用周波数 30k ~ 10km ~ 1km 10 ~ 10 中波(MF) 300k ~ 3M 1km ~ 100m 10 3 ~ 10 2 10-9 ~ 10 -8 中波ラジオ(アンテナはコイルを用いるので小さい) 短波(HF) 3M ~ 30M 100m ~ 10m 10 2 ~ 10 10-8 ~ 10 -7 短波ラジオ、アマチュア無線(大きなアンテナ)、 トランシーバー 超短波(VHF) 30M ~ 300M 10m ~ 1m 10 ~ 1 10-7 ~ 10 -6 極超短波(UHF) マ イ センチ波(SHF) ク ロ ミリ波(EHF) 波 サブミリ波 300M ~ 3G 1m ~ 10cm 1~ 10 -1 10-6 ~ 10 -5 3G ~ 30G 30G ~ 300G 300G ~ 3T 遠赤外線 中赤外線 橙 黄 緑 10 15程度 青 近紫外線 10cm ~ 10 15程度 1mm 10-2 ~ 10 -3 10-4 ~ 10 -3 100μm 10-3 ~ 10 -4 10-3 ~ 10 -2 k:キロ、10 3 M:メガ、10 6 G:ギガ、10 9 10-5 ~ 10 -6 10-6 ~ 10 -7 0.77μm ~ 0.64μm 0.64μm ~ 0.59μm 0.59μm ~ 0.55μm 0.55μm ~ 0.49μm 0.49μm ~ 0.43μm 0.43μm ~ 0.38μm 380nm ~ 200nm 10nm 3×10 17 10nm ~ 3×1017 ~ 3×10 18 1nm ~ 3×1018 ~ 3×10 19 1Å ~ 3×1019 ~ 3×10 20 0.1Å ~ 3×1020 ~ 3×10 21 1pm ~ 3×1022 ~ T:テラ、10 12 P:ペタ、10 15 E:エクサ、10 18 3×10 23 10 2.5μm 0.77μm 3×1016 ~ 3×10 ~ 100fm ~ 10fm ~ μ:マイクロ、10 -6 n:ナノ、10 -9 10-7m程度 10-7m程度 10-7 ~ 10 ~ 10 電波天文台 光と電波の中間領域、日本の電波法では3THz以下が電波 レーダー、衛星通信 細胞内小器官 3.2~4.4eV程度 10 ~ 10 2 10-8 ~ 10 -9 10 2 ~ 10 3 10-9 ~ 10-10 10 3 ~ 10 4 10-11 10 4 ~ 10 5 1pm 10 -11 ~ 10-12 10 5 ~ 10 6 100fm 10 -12 ~ 10-13 10 6 ~ 10 7 10 組織 1meV 1.6~3.2eV程度 1Å ~ 衛星テレビ(BS,CS)、無線LAN 赤血球・細胞 1nm 10fm 10 携帯電話、PHS、UHFテレビ、地上デジタルテレビ GPS、電子レンジ、無線LAN 組織、小さな臓器 細胞・毛細血管 10 -8 -14 FMラジオ、地上アナログテレビ, MRIのRFパルス 頭部、大きな臓器(数10cm) 10 -2~1eV 0.1Å 10 -10 ~ -13 電波時計、航空・海上の無線標識局 1μeV 体長(1~2m) -5 15μm ~ 軟エックス線 ~ 10 10 2.5μm ~ 200nm ~ 3×10 15μm -4 ~ 1neV -4 1cm ~ 3×10 16 22 -5 10 1mm ~ 3×1015 ~ 21 -2 ~ 10 遠紫外線 真空紫外線 ク 0.1~0.01Å以下 ス ガ 線 ン マ 線 -1 10 1cm 100μm ~ 3T~3000T 3×10 12~3×1215 近赤外線 ッ 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 c 10 8 ~ 長波(LF) エ ※乾電池1本で電子1個を加速したときの運動 エネルギーが、1μmの電磁波(赤い色程度)と 同じぐらいのエネルギー 1万km 1万km ~ 紫 紫 外 線 30万km ~ 3k 1000km ~ 30k 赤 c 光子エネルギー(弱~強) 指数表記(m) Hz 1~ SLF 超長波(VLF) λ • 波長が長い → 周波数が小さい → エネルギーが小さい • E=hν=h・c/λ =1.99×10-25[J・m]/λ =1.24[eV・μm]/λ • プランク常数:h(6.63×10-34J・sec) • eV:エレクトロンボルト(電子ボルト) 周波数 名称 極超長波(ELF) 携帯電話 周波数: 800MHz~2GHz 波長: 15cm~37cm 7 10 ~ 10 レチナール等を含むロドプシン等の蛋白質の吸収スペクトル 蛋白質の大きさは一桁ほど小さい。 エネルギーとしては、乾電池1本から2本(1.5Vから3V)程度で電子1 個に運動エネルギーを与える程度に相当する。 DNAの吸収スペクトル(250nm付近) 細胞膜,蛋白質 1keV DNA,RNA 原子 診断用のエックス線 1MeV 8 1fm 10 -14 ~ 10-15 1GeV 原子核 10 9 10 8 ~ 1Å=0.1nm=100pm 1eV=0.1602×10-18[J] p:ピコ、10 -12 h=6.626×10 -34[J・s] c=299792458[m/s] f:フェムト、10 -15 電子対生成(>1.022MeV)、光核反応 光核反応(速中性子) 光核反応(中間子発生) Å:オングストローム、10 -10m 4 p.3放射線の種類と遮蔽 物質の大きさと電磁波の波長 物質 新潟~上越 組織が温まる 蛋白質の形を変える →網膜のロドプシン →メラニン色素 DNA2重螺旋 が切断される + + + + ++ + + + + 名称 大きさ・波長 100km ~10m 10m 人体の大きさ程度 ~1m 器官・組織 1m~100μm 細胞・毛細血管 100μm~200nm 細胞内小器官 2.5μm~380nm 蛋白質 380nm~10nm 細胞膜 10nm DNA・RNA ~1nm 原子(1Å程度) 1nm~100pm (1Å=100pm) 100pm~10pm 10pm~10fm 原子核 10fm~1fm 【紙】 超長波 短波 アルミニウムなど (薄い金属板) 鉛・厚い鉄 【水や パラフィン】 超短波 マイクロ波 赤外線 可視光線 紫外線 エックス線 ガンマ線 【α線】 + + 【β線】 - 【γ線 エックス線】 【中性子線】 波長 放射線の種類と遮蔽 水や パラフィン エックス線(歴史学的にはX線) • 歴史 エックス線を透過させ 難い物質とは? γ線 エックス線 発見者 Wilhelm Conrad Röntgen 発見日 1895年11月8日 発見した状態 陰極線研究中Crookes管球(2極の真空 管)から離れた位置にあるシアン化白金バ リウム結晶を塗った紙スクリーンの蛍光に 気づいたことによる。(黒い紙を通過した) 命名理由 「未知の」といういみでの「X」 青柳泰司:「近代科学の扉を開いた人・レントゲ ンとX線の発見」、恒星社厚生閣、(2000/9/1) 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 + - X - 5 年 1895 1896 1897 1898 1899 1900 1904 1905 1908 1909 ~ 1905 ~ 1913 1916 1918 1917 ~ 1918 ~ 1924 1927 1927 1932 1911 1913 1919 1923 1935 1937 1970 年代初頭 人物 レントゲン ベクレル J.J. トムソン マリー&ピエール・キュリー ラザフォード ヴィラード プランク ローレンツ アインシュタイン ガイガー ラザフォード、ガイガー ソディー ボーア クーリッジ アインシュタイン ネーター ラザフォード コンプトン パウリ ハイゼンベルグ スコベルツィン コッククロフト、ウォルトン チャドウィック 湯川秀樹 オット・ハーン、ストラースマン ベーテ、クリッチフィールド セグレ 事項 X線の発見 自然放射性物質の発見(ウランの感光作用) 電子の発見 ポロニウム、ラジウム発見 α線、β線の発見 γ線の発見 黒体輻射の量子化仮説 ローレンツ変換 光量子仮説、ブラウン運動の理論、特殊相対性理論 ガイガー計数管の発明 ラザフォード散乱の実験→有核原子模型提示 同位体の研究 水素原子のバルマー系列を説明 クーリッジ管考案(現在のエックス線管球の原型) 一般相対性理論 ネーターの定理 陽子の発見 コンプトン効果の発見 第4の量子数(スピン)の存在と提案 不確定性原理 宇宙線の発見 加速器での初の核反応 中性子の発見 中間子論の発表 ウラン核分裂の報告 核融合反応を報告 テクネチウム・最初の人工元素の製作 CT,MRIの開発 エックス線の定義および性質(p.6) • 【電磁波】の一種で電離作用を有する。 • 波長:λは10-8から10-14mと短い。 • 10nm以下 • 物理的性質は核内から放出されるγ線と同じ。 • 真空中を【光速】で伝播する。 (3.0×108m/sec) プリント穴埋めチェック(p.6) エックス線の性質および作用(p.6) (試験問題必須) • 電離・励起する。 • 真空中を直進し、(直進 性に関して)電場・磁場の 影響を受けない。 • 波動的性質(反射、屈折、 回折、偏向、干渉など)を もつ。 • 物質を透過する。 • 物質と相互作用し吸収・ 散乱が生じる。 • 化学作用、写真作用(フィ ルムの感光作用)がある。 • 蛍光作用がある • 生物学的作用がある。 • 熱作用がある。(弱い) • 着色作用がある。 基本的性質 物質との相互作用 • • • • • • • • • • • • • • • • • • 【電磁波】の一種で、電離作用を有する。 真空中を【光速】で伝播する。(3.0×108m/sec) 1.原子と相互作用し【電離・励起】する。 2.真空中を直進し、(直進性に関して)【電場・磁場】の影響を受けない。 電磁波であるが、【電場・磁場】を通るときに曲がらない。 4.物質を【透過】する。 5.物質と相互作用し【吸収】(減弱)・【散乱】が生じる。 【吸収】(減弱):診断用エックス線において、画像形成に関与する。 【散乱線】:診断用エックス線において、画質を低下させる。 6.【化学】作用、写真作用がある。 【化学】作用:酸化・還元など 7.【蛍光】作用がある 【蛍光】物質(シアン化白金バリウム結晶など)などを発光させる。 増感紙(【蛍光】物質を塗った紙)を発光させる。 8.【生物学】的作用がある。 9.【熱】作用がある。 10.【着色】作用がある。 【着色】する。 基本的性質からの派生 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 6 エックス線の基本的性質 物質との相互作用 真空中を直進し、直進性に関して 磁場・電場から影響を受けない N X S エックス線 + 吸収 減弱 - 透過 電離(・励起)する 波の性質を持つ 散乱 口内法エックス線撮影装置 (デジタル撮影装置使用) エックス線の発生 アーム コリメータ と フィルタ 開始予定:2限目 ヘッド 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 コーン 7 エックス線管球(クーリッジ管) 新潟大学旭町学術資料展示館(あさひまち展示館) エックス線の発生 交流 100V 60-70kV 6-7万ボルト 変圧器 (トランス) エックス線管 (ガラス容器) 整流 陰極 交流 ↓ 脈流 直流 焦点 陽極(+) 濾過板 (フィルタ) ターゲット 真空 - 熱電子 フィラメント 油(冷却・絶縁) 照射筒 (コーン) 絞り (コリメータ) 陰極(-) 整流回路と変圧器 単相100V + 参考・蛍光灯 • 内部は真空に近く、ガス状態の水銀が 含まれている。 • 両端にあるフィラメントに電流が流れる 。 • 両端のフィラメント間に高電圧がかけら れる。 • 電子が飛び、水銀原子にぶつかって、 紫外線が発生する。 • 紫外線が、ガラス管に塗られた蛍光物 質に当たって、発光する。 Hg - - Hg Ain, Vin - Hg - Hg 三相200V + - 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 自己整流・単相半波整流 Hg Aout, Vout 変圧器: 巻数の比が Nの時 Aout=Ain/N Vout=Vin×N 単相全波整流 3相全波整流 8 エックス線の発生 エックス線の発生 陽極(+) 陽極(+) エックス線管 (ガラス容器) エックス線管 (ガラス容器) ターゲット ターゲット 真空 真空 - 熱電子 1.フィラメントに電流が流れる。 2.熱電子が生じる。 フィラメント フィラメント 陰極(-) 陰極(-) エックス線の発生 エックス線の発生 陽極(+) 陽極(+) エックス線管 (ガラス容器) ターゲット エックス線管 (ガラス容器) ターゲット エックス線 真空 - 真空 熱電子 フィラメント 陰極(-) - 1.フィラメントに電流が流れる。 2.熱電子が生じる。 3.高電圧がかかる。 4.熱電子が飛んでいく。 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 熱電子 フィラメント 陰極(-) 1.フィラメントに電流が流れる。 2.熱電子が生じる。 3.高電圧がかかる。 4.電子が飛んでいく。 5.ターゲットにあたる。 6.エックス線が放出される。 9 固定陽極(口内法) 回転陽極(口外法) 陽極(+) タングステン(74W) 実効焦点 ターゲット - 熱電子 実焦点 フィラメント 実焦点 回転陽極(+) 利用線束の取り 出し方向 真空 真空のガラス容器内 実効焦点 陰極(-) - フィラメント 電磁石で回転 陰極(-) 電子線の入射方向 焦点の大きさと半影との関係 焦点 焦点が小さいと、半影が小さく、像の 暈ける程度が小さい。 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 エックス線 焦点の大きさと半影との関係 焦点 焦点が大きくなると、半影が大きくな り、像がぼやける。 10 プリント穴埋めチェック(p.8) 制動(連続)エックス線の分布 • 1.【熱電子】、2.【高電圧】、3.【真空】、 4.【ターゲット】、 • I:【管電流】、V:【管電圧】 • 99%以上は【熱】となる。 • 【回転陽極】エックス線管(口外法用) • 【総濾過】:固有濾過(1mmAl程度)+付加濾過 • 管電圧70kV以下で【総濾過】1.5mmAl以上(医 療法施行規則) • 皮膚表面で直径【6cm】以内(医療法施行規則) • タイマーは【デッドマン】タイプが用いられる。 西臺武弘:「放射線医学物理学」、文光堂(1991/3) 電子と原子の相互作用 連続エックス線の発生 タングステン(74W) - 熱電子にてエックス線 はどうして発生するの か? 制動放射線 阻止エックス線 連続エックス線 白色エックス線 h E max keV 制動放射 + + + + + + + + + + + + + + + + - エックス線 - 熱電子 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 ※タングステン(74W)など - - 散乱放射線 電子の運動エネルギーが全 て電磁波になったときが最大 11 特性エックス線 (K殻、L殻) Kα、Kβ、Lα 電子と原子の相互作用 特性エックス線の発生 電離(励起を含む) - M殻 フィルタを 通過する前 - L殻 エックス線のスペクトル - - K殻 真空 - 電離した 軌道電子 フィルタを 通過した後 ターゲット 熱電子 フィルタ フィラメント + + + + + + + + + + + + + + + + 散乱放射線 - ※タングステン(74W)など Kα:L殻→K殻(57~59keV) Kβ:M殻→K殻(67~69.5keV) Lα:M殻→L殻(8~10keV) ※Lαは通常フィルタで吸収される 臨床で利用するエックス線について • 連続エックス線と特性エックス線の混合 • 連続エックス線 • 管電圧で規定される最短波長よりも長い波長のエックス線が 含まれる。 • ただし、濾過されているため、波長の長い(エネルギーの低 い)エックス線は除去されている。 Duane-Huntの法則 λmin×Vmax=12.4 λmin:Å、Vmax:kV 参考資料:西臺武弘:「放射線医学物理学」、文光堂(1991/3) プリント穴埋めチェック(p.10 ) • 【特性(示性)】エックス線 • 【連続(阻止、白色)】エックス線 • 特性エックス線 • 管電圧が60kVでは、Kα:L殻→K殻(57~59keV)の特性エッ クス線を含んでいる。 • 管電圧が70kV以上では、 Kα とKβ:M殻→K殻(67~ 69.5keV)の両方の特性エックス線を含んでいる。 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 12 物質との相互作用 プリント穴埋めチェック(p.11 ) エックス線 吸収 透過 減弱 • • • • 【光電】効果(50keV以下) 【コンプトン】散乱(非干渉性散乱) 【電子対】生成 【散乱(エックス・光子)】線 散乱 エックス線と原子の相互作用 光電効果 光電効果 特定波長 の電磁波 特定波長 の電磁波 - - - - - - + 電子対生成 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + - + コンプトン散乱 - 陽電子 反跳電子・二次電子* - 軌道電子 散乱放射線 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 + 吸収端:エックス線のエネルギーを 徐々に上げていったとき、内殻軌 道(K殻等)の電子での光電効果を 生じるエネルギーレベルにて、突 然吸収率が増加する現象。 ※光電効果 光が電子に変わる現象 入射エックス線が電子に全エネルギーを渡した状態 自身は消滅=「吸収された」と同義 13 コンプトン散乱 エネルギー: E (mc 2 ) 2 cp 2 mc 2 1 mv 2 +++ + +++ + + ++ + 入射光子 エネルギー:hν0=hc/λ0 運 動 量:hν0/c 2 + + + + 運 動 量: P 軌道電子 E0=mc2 - mv 1 2 mv、 v c エックス線の減弱と 線質について 反跳電子 φ - θ λ0 開始予定: 3限目 散乱光子 λ 入射光子が電子にぶつかって弾き飛ばす とき、エネルギーを失って、波長が長くなり (周波数が小さくなり)、散乱する。波長の 差は散乱角度によって求めることができる。 エネルギー:hν=hc/λ 運動量:hν/c 0 h 1 cos mc 最大:0.024Å エックス線の減弱(p.13 ) 距離による減弱 逆自乗の法則 • 距離による減弱 • 【逆自乗】の法則 • 物質との相互作用(吸収・透過・散乱)による減弱 • I=I0 • I0:入射エックス線強度、I:透過エックス線強度 • d:厚さ、μ:線減弱係数、Z:原子番号、λ:波長、ρ:密度 • μ/ρ:質量減弱係数 • 減弱が大きくなるのは、物質が【厚い】、原子番号が【大き い】、密度が【高い】、波長が【長い】場合。 • シュートしたときゴールする可能性が高いのは? • • • • • e-μd、μ=kZ3λ3ρ(光電効果主体の場合の式) ゴールまでの距離が短い(厚さに相当) 相手選手の守備範囲(原子番号に相当) 相手選手の数(密度に相当) ボールを蹴る強さ(光子エネルギー:波長の逆数に相当) 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 • • 焦点から放出されるエックス線の単 位面積当たりの強度は距離の自乗 に反比例して減弱する。 例えば、距離:L0のときの照射野が S0で、通過する単位面積当たりの エックス線強度をI0とすると、S0を通 過する全エックス線強度はI0S0 距離:Lでの単位面積当たりのエック ス線強度をIとし、面積をSとすれば、 • IS=I0S0であり、 • S=S0×(L/L0)2なので • I=I0/(L/L0)2 L L0 S0 S L2=L0×2 S2=S0×22 村田 次郎 :「余剰次元」と逆二乗則の破れ (ブルーバックス)、 講談社、 (2011/2/22) ---次元との関係についての参考図書としてお勧め。 14 物質との相互作用による減弱 物質との相互作用による減弱 管電圧(光子エネルギー、波長) 物質との相互作用による減弱 原子番号(原子の大きさ、電子の数) 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 物質との相互作用による減弱 物質の密度 15 物質との相互作用による減弱 減弱係数について :線源弱係数(linear attenuation coefficient) :質量減弱係数( mass attenuation coefficient) coh c coh:干渉性散乱( coherent scattering)、古典散乱、トムソ ン レイリー散乱 --- 低エネル ギーで生じ診断用のエ ックス線では重要では ない。 coh Z 2 h :光電効果(protoelectric effect) K吸収端よりも光子エネ ルギーが大きく、生体 の原子・分子が対象の とき 3 Z h :コンプトン散乱( Compton scattering) c 30keVから30MeVの光子エネルギー範囲 で主体となる 0.5 Z c h σcは物質の電子密度に比 例 A h :電子対生成(pair production) エックス線診断 の範囲では無視してい い 物質の厚さ エックス線との相互作用に関与する実効原子番号 物質 実効原子番号 密度[g/cm3] 主たる成分 空気 7.64 0.00129 N,O,C 脂肪 5.9~6.5 0.91 C,H,O 水 7.42 1 H,O 筋肉 7.4~7.6 1 H,O,C 骨 12.3~13.8 1.85 O,C,Ca 象牙質 13.5 2.4 O,C,Ca エナメル質 15.5 2.9 O,C,Ca アルミニウム 13 2.7 Al チタン 22 4.5 Ti 鉛 82 11.34 Pb ※成分の順は重量比の順 生体を構成する主たる元素:C,H,O,N,Mg,Ca,K,S,P,Fe 実効原子番号(Zeff)は次式で求められる その他成分 N,S N,S,K,P,Na,Mg,Ca H,P,N,S,Mg H,P,N,S,Mg H,P,N,S,Mg Z eff 2.94 f i ( Z i ) 2.94 i f:電子数の比率、総和 =1 i Zi :構成原子番号 水の場合 元素記号 原子番号 H 1 He 2 Li 3 Be 4 B 5 C 6 N 7 O 8 F 9 Ne 10 Na 11 Mg 12 Al 13 Si 14 P 15 S 16 Cl 17 Ar 18 K 19 Ca 20 シンチグラフィ ーで用いられる( ) h [MeV] 1.02 Z 電磁波(エックス線・γ線)と 物質との相互作用の発生頻度 参考:Evans, 1955 (Attix, F.H. and Roesch, W.C., eds.:Radiation Dosimetry. Vol. I : Fundamentals. Academic Press Inc., New York, 1968.) ※下記図は上記を引用している図書(「放射線基礎医学」、尾内能夫・坂 本澄彦、日本出版サービス等)の図をトレースするように、下記の理論 式を少し変え用いてエクセルシートで計算しグラフ化したものです。 使用した式はσc=τ: Z=125*E3/2-3、σc=κ: Z=1900/(E2-1.02E+6)+2です。 σc=τとなる線はZ≒aE3/2 σc=κとなる線はZ≒b/(E2-1.02E) σc=τ σc=κ Z eff H 2 O 2.94 0.2 1 2.94 0.8 8 2.94 7.42 上記は主として光電効果が成立する場合のMayeredの式であるが、最近では 2.94の代わりに3.45が用いられているとのこと。 尾内能夫・坂本澄彦:「新訂・放射線基礎医学」、日本出版サービス、(2007/02) 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 16 一定の光子エネルギーでは、質量減弱係数としてのコンプトン散乱の程度は一定であるが、光電効果 は実効原子番号(Zeff)の3乗に比例して大きくなる。したがってZeffが7程度の軟組織に対し、14程度 の硬組織では、コンプトン散乱に対する光電効果の比率は約8倍になる。 c a、 bZ 一定の光子エネルギーでは、 コンプトン散乱に対する光電効果の割合をf(Z)とすると f Z b f (14) 14 3 Z 3 なので 3 23 8 c a f (7) 7 20 ※注意:下記図は理論式に基づいたものであ り、概略の説明である点に注意してください。 口内法エックス線撮影 管電圧:60kV~70kV Zeff 管電圧(光子エネルギー)と コントラスト 3 管電圧が上昇するにつれ、 光電効果よりもコンプトン散 乱が主体へと変化する。この ため、組織間のコントラスト がつきにくくなる。 σc=τ 発生率 Zeff 20 光電効果主体 硬組織 14程度 10 軟組織 7程度 コンプトン散乱主体 0 0.01 0 0.05 0.1 [MeV] 西臺武弘:「放射線医学物理学」、文光堂(1991/3) 半価層 物質の厚さによる減弱を指標にした線質の表現 片対数グラフ I/I0 理想的には直線 I I 0 e d log(I ) log(I 0 ) d 1 log(I / I 0 ) d 0.5 人体ファントム 10MeV, X線 人体ファントム 80kV, 250mA, 0.08秒 西臺武弘:「放射線医学物理学」、文光堂(1991/3) 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 実際はすそ野が長い曲線 単一エネルギーではない。 幅を持っている。 0.25 D1 D2 d(厚さ) 17 p.15 【半価】層 • 第1【半価】層(D1):ナロービーム条件で、 厚さD1のフィルタによって線量の値が半分 になるときの厚さ。 • 第2 【半価】層(D2):D1にD2の厚さのフィ ルターを加え線量が元の値の1/4となると きの増分。 • 均等度:Hc=D2/D1(通常、Hc>1) 強度(発生時):光子エネルギー×光子数 D:単位時間あたりの発生強度 定義です D=kZIV2 質×量 ⇒ 量 k:定数、Z:ターゲットの原子番号 参考) V × A = W I:管電流、V:管電圧 影響を与える 管電圧 低い 高い 因子 管電流 少ない 多い 電流を流し 短い 長い 続ける時間 弱い 強い エックス線強度 発生効率 η≒D/(IV)=kZV IV:管電流×管電圧 =エックス線管球中の電子線の全エネルギー 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 エックス線の線質と強度 線質 エックス線の透過力を表す 影響を与える 管電圧 低い 因子 ろ過の厚さ 薄い エックス線の 低い 平均エネルギー 線質 柔らかい 透過率 低い 半価層 薄い エックス線 増加 コントラスト 高い 厚い 高い 硬い 高い 厚い 低下 物質との相互作用にて減弱したエックス線をフィルム等の受光 系にて濃淡画像へと変換し、観察する エックス線透過性低い → 白い エックス線透過性高い → 黒い 18 エックス線、散乱(エックス)線 グリッドの関係 平行なエックス線での模式図 実際には焦点からの エックス線入射角度 の考慮がなされる。 焦点 線量の単位と意味 開始予定: 4限目 グリッド 散乱線 補遺:「カーマ」 kinetic energy related in material X 照射された エネルギー相当 電磁波の空気中 での電離能力 照射線量 exposure, X 単位:[C/kg]、X=dQ/dm dQ:質量dmの空気中で光子(エッ クス線、γ線)によって放出された 全ての電子が空気中で完全に止 まったときに、空気中で発生した 一方の符号(プラスないしマイナ ス)のイオンの全電荷の総和の絶 対値。 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 • 単位質量あたりの、非荷電粒子(エックス線、γ線、 中性子線)によって遊離した、すべての荷電電離 粒子の初期運動エネルギーの総和。 • 物質が空気の場合、「空気カーマ」と呼ばれる。 • 診断領域において、荷電粒子平衡成立時 Kair = Dair = 33.97X[J/Kg] + + Kair: 空気カーマ Dair: 空気吸収線量 X: 照射線量 - - 19 D 吸収線量 absorbed dose, D 単位:Gy(グレイ)、[J/kg] D=de/dm de:電離放射線によって質 量dmの物質に付与された平 均エネルギー。 吸収された エネルギー量 実効線量 Effective Dose, E 単位:Sv(シーベルト)、[J/kg] E=ΣwT・HT X D wT:組織加重係数、全身に均等 照射された 吸収された 被曝されたと仮定した場合に生じ エネルギー相当 エネルギー量 る損害の総計に対するその組織・ 電磁波の空気中 での電離能力 臓器の相対的割合。 等価線量 equivalent dose, HT 単位:Sv(シーベルト)、[J/kg] HT=ΣwR・DT,R DT,R:組織・臓器Tについて平均化さ れた、放射線Rに起因する吸収線量。 wR:放射線加重係数、放射線Rの 種類とエネルギーによって決められ る値。 HTは、組織に照射された全てのR においてのwR・DT,Rの総和。 HT E X 線質による荷重 係数をかける エックス線=1 確率的影響 組織荷重係数を掛 けて、全身均等被 曝と等価として計算 照射された エネルギー相当 電磁波の空気中 での電離能力 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 D 吸収された エネルギー量 HT D(吸収線量)に 線質による荷重 係数をかける エックス線=1 加重係数:wR エックス線=1 電子=1 α線=20 中性子=5~20 HT E 線質による荷重 係数をかける エックス線=1 確率的影響 組織荷重係数を掛 けて、全身均等被 曝と等価として計算 20 医療で用いられる放射線の単位 光では 明るさに相当 X 暖かさに相当 D HT 危険度 (日焼けに相当) E A 線量 照射線量 exposure 単位 - [C/kg] 旧:R 適応 X, γ線 空気 1R=2.58x10-4C/kg 吸収線量 Gy [J/kg] すべての放射線 absorbed dose 旧:rad すべての物質 等価線量 Sv [J/kg] すべての放射線 equivalent dose 旧:rem 組織(すべての生物) 確定的影響の指標 HT=∑wR・DT・R エックス線ではD=HT wR : 放射線加重係数※ 実効線量 Sv [J/kg] すべての放射線 effective dose 旧:rem 組織(すべての生物) E=∑wT・HT 確率的影響の指標 wT : 組織加重係数 ガンなどの発生する確率 放射能 activity 1Sv=100rem、1Gy=100rad ※ エックス線ではWR=1 Bq [回/秒] 旧:Ci プリント穴埋めチェックp.16 • • • • 【照射】線量 exposure, X 【吸収】線量 absorbed dose, D 【等価】線量 equivalent dose, HT 【実効】線量 Effective Dose, E 放射性同位元素 同位元素(同位体) 安定同位元素と放射性同位元素 電荷 質量数 放射能について 元素記号 原子番号 中性子数 同位体(Isotope) 質量数が異なるが原 子番号が同じ元素。 同重体(Isobar) 原子番号が異なるが 質量数が同じ元素。 14 7 N7 15 7 N8 13 7 N6 16 7 N9 17 7 N 10 西臺武弘:「放射線医学物理学」、文光堂(1991/3) 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 21 (物理学的)半減期 放射性同位元素 主たるRIの崩壊様式 1秒当たりの崩壊数=放射能の強さ:A α崩壊、β崩壊、γ崩壊 dN N A dt 放射能とは 従来は、放射性同位元素が放射線(α線、β線、γ線など)をだす能力(性質)。 現在では「放射能の強さ」を単に「放射能」と呼ぶ場合が多い。 放射能の強さ(A):単位時間(dt)における自然核変換(dN)の数:-dN/dt N N 0 e t N N 0 e t A0 単位:Bq(ベクレル)、[1/sec] 例:5000個の核種が2秒後に3000個になった場合 A=-(3000-5000)/2=1000Bq 半減期の定義から、両辺のlogをとり、λを計算 log e 1 2 T 放射能の強さの時間変化は A A0 e t N 0 2 N 0 e T λ A0/2 A A0 e - t A0 e log e 1 2 t T t A0 1 2 T N : t時間後の放射性核種の数 A N 0 : t 0での放射性核種の数 : 崩壊定数(壊変定数) 安斉育郎:「図解雑学・放射線と放射能」、ナツメ社、(2007/2/14) α崩壊 放射性崩壊の種類 • アルファ崩壊(α) T : 半減期 t T http://www.atomin.go.jp/website/support/jintai/radium01.html • α粒子を放出する崩壊 • 比較的大きな原子核にて生じる • アルファ粒子を放出する • ベータ崩壊(β) • 原子番号:Z→Z-2 • 質量数:A→A-4 • ベータ・マイナス崩壊(β-) • 電子を放出する • ベータ・プラス崩壊(β+) • 陽電子を放出する • 電子捕獲(EC: Electron Capture) 226 222 218 214 U 230 90Th 88 Ra 86 Rn 84 Po 82 Pb 234 92 • 電子を取り込む • 核異性体転移(IT: Isomeric Transition) • 自発核分裂(SF: Spontaneous Fission) 安斉育郎:「図解雑学・放射線と放射能」、ナツメ社、(2007/2/14) 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 安斉育郎:「図解雑学・放射線と放射能」、ナツメ社、(2007/2/14) 22 β崩壊(1) β崩壊(2) • 電子や陽電子が出入りする崩壊 電子捕獲 n p e e • 質量数:Aは変化しない • 電子が放出される(β-崩壊) 60 27 • 原子番号:Z→Z+1 • β-崩壊 p e n e 60 Co33 28 Ni32 e νe 軌道電子 β+崩壊 陽電子が放出される(β+崩壊) p n e e --- ※ • 原子番号:Z→Z-1 22 11 • 電子が取り込まれる(電子捕獲) • 原子番号:Z→Z-1 22 Na11 10 Ne12 e e ※p energy p e e p e e n e e 最内殻の軌道電子が取り込まれ、 空いた軌道に外側から電子が遷 移するときに特性エックス線が出 る。もしくは特性エックス線のエネ ルギーで外側の軌道電子が放出 される(オージェ電子)。 安斉育郎:「図解雑学・放射線と放射能」、ナツメ社、(2007/2/14) 核異性体転移 IT: isomeric transition • 余分なエネルギーをγ線として放出する。 • 質量数:Aは変化しない。 • 原子番号:Zも変化しない。 • 場合によっては内部転換(IC: Internal Conversion)が生じる。 • 余分なエネルギーが核外軌道電子に与えられて飛び出す。 • 空いた軌道に電子が遷移すれば、特性エックス線やオージェ電子 が飛び出す。 137 55 Tc 99 43Tc 99 m 43 Cs β-崩壊(93.5%) 137 m 56 β-崩壊(6.5%) 137 56 Ba Ba 137 m 56 Ba137 56 Ba 核異性体転移(γ線:0.662MeV) 安斉育郎:「図解雑学・放射線と放射能」、ナツメ社、(2007/2/14) 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 安斉育郎:「図解雑学・放射線と放射能」、ナツメ社、(2007/2/14) 放射性同位元素と物理学的半減期 核種 3 崩壊 H β14 C β22 Na β+ 40 + K β 、β60 Co β67 γ(電子捕獲崩壊) Ga 99m γ(異性体転移) Tc 131 I β137 Cs β201 γ、X(電子捕獲崩壊) TI 222 α Rn 226 α Ra 235 α U 238 α U 半減期 12.33 5730 2.603 12.7 5.26 3.3 6.02 8.02 30.07 73 3.82 1620 7.04 44.7 年 年 年 億年 年 日 時間 日 年 時間 日 年 億年 億年 23 生物学的半減期と実効半減期 • 物理学的半減期:Tp • 生物学的半減期:Tb 線量測定器について • 代謝や排泄によって体内での放射能が半分 になる時間。(同一の放射性核種であっても、 化学的な状態等によって異なる) • 実効半減期:Teff 1 1 1 Teff T p Tb Teff T p Tb T p Tb 線量測定器 (内部被曝は直接計測できない) • 電離作用を利用 • 気体の電離を利用 • 電離箱式サーベイメータ • GM管式サーベイメータ • 固体の電離を利用 • 半導体式ポケット線量計 • 蛍光作用を利用 • シンチレーション計数器 • 熱蛍光線量計(TLD) • 蛍光ガラス線量計(ガラ スバッチ) • 光刺激ルミネッセンス線 量計 • 写真作用を利用 http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-01-05-03 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 24 気体の電離を利用した測定器 電離箱の原理図 • 電離箱式サーベイメータ • 環境・個人モニタリング • 感度低いがエネルギー依存性小さく、X線・γ 線の正確な線量測定が可能。 • GM管式サーベイメータ • 環境モニタリング • バックグラウンドレベルまで計測可能だが、エ ネルギー依存性が高く、線量を正確に測定で きない。β線の計数率に適する。 古本啓一、岡野友宏、小林 馨(編):「歯科放射線」第5版、医歯薬出版、(2013/9) GM管の原理図 http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-01-05-03 固体の電離を利用した測定器 • 半導体検出器 • 半導体式ポケット線量計 • 個人モニタリング http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-01-05-03 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 http://www.hitachi-aloka.co.jp/products/data/radiation-003-PDM 25 半導体検出器の原理図 光を利用した測定器(1) • シンチレーション計数器 • 環境モニタリング • バックグラウンドレベルまで計測可能だが、エネル ギー依存性が高く、線量を正確に測定できない。γ線 の計数率に適する。 http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-01-05-03 NaI(TI)検出器の原理図 古本啓一、岡野友宏、小林 馨(編):「歯科放射線」第4版、医歯薬出版、(2006/5) 光を利用した測定器(2) • 熱蛍光線量計(TLD) • 個人モニタリング • 蛍光ガラス線量計(ガラスバッチ) • 個人モニタリング • 光刺激ルミネッセンス線量計(ルクセルバッチ) • 個人モニタリング http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-01-05-03 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 http://www.atom-moc.pref.fukushima.jp/netsukeikou.html http://senkei.c-technol.co.jp/src/manual/monitors/1-1spec.html 古本啓一、岡野友宏、小林 馨(編):「歯科放射線」第4版、医歯薬出版、(2006/5) 26 TLD原理の簡易図 TLD原理図 蛍光 電子が蓄え られる場所 - 電離 - + http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-01-05-03 ガラスバッジの構成 http://senkei.c-technol.co.jp/src/manual/monitors/1-1spec.html 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 - + エックス線 + 熱 光刺激ルミネッセンス線量計 ルクセルバッチ http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-04-03-03 27 写真乳剤を利用する測定器 • 写真乳剤を利用する測定器 • フィルムバッジ • 個人モニタリング 参考図書 • 西臺武弘:「放射線医学物理学」、文光堂(1991/3) • 尾内能夫、坂本澄彦:「新訂・放射線基礎医学」、日本出 版サービス、(2007/2) • 稲邑 清也 、立入 弘(監修), 山下 一也, 速水 昭宗 (編 集):診療放射線技術〈上巻〉、南江堂; 改訂第11版 (2004/10) • 代居 敬:「歯科放射線学サイドリーダー第2版」、学建書 院 • 古本啓一、岡野友宏、小林 馨(編):「歯科放射線」第5 版、医歯薬出版、(2013/9) • 新津 守(監訳):「はじめての放射線物理」、メディカル・ サイエンス・インターナショナル、(2008/9) • 青柳泰司:「近代科学の扉を開いた人・レントゲンとX線 の発見」、恒星社厚生閣、(2000/9/1) http://www.nisa.meti.go.jp/word/index.html ネット上で参考になるサイト(一部) ネット上には多くの情報があふれかえっています。少なくとも、出典の明らかな資料を参照 し、食い違う見解については、背景事情を吟味するようにしましょう。 • • • • • • • • • http://www.jrias.or.jp/books/cat/sub1-01/101-14.html ICRP勧告 日本語版シリーズ PDF無償公開のお知らせ http://www.icrp.org/publications.asp ICRPサイトからも、各国誤訳(日本語訳を含む)のPDFが入手可能となっています。 http://www.rerf.jp/general/whatis/index.html 公益財団法人放射線影響研究所 放射線てなんだろう? http://www2.kek.jp/kids 大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構(KEK) キッズサイエンティスト http://www.rist.or.jp/atomica 原子力百科事典(ATOMICA) (財)高度情報科学技術研究機構(RIST) http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/attach/1313004.htm 文部科学省 放射線等に関する副読本掲載データ http://eman-physics.net/ EMANの物理学 ← 特殊相対性理論や、電磁気関係が分かりやすいです。 http://www.jira-net.or.jp/vm/top-page.html 社団法人 日本画像医療システム工業会(JIRA)医用画像電子博物館 http://radphys4.c.u-tokyo.ac.jp/~torii/lecture/radiolect14W.html 東京大学教養学部前期課程:2014年度 冬学期 主題科目テーマ講義「放射線を科学的に理解する」 新潟大・歯・顎顔面放射線学分野 西山 講義資料 28
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