石上 貴一 - 映像情報インダストリアル

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石上 貴一
98年のインフォコムは、テキサス州ダラスのコ
あってか、特に目についた(写真2)
。またプラズ
ンベンションセンターで、6月11日∼13日の3日間
マディスプレイは、三菱、エプソン、パナソニッ
で行われた。開催前日までの台風かと思われるよ
ク、パイオニアなど国産メーカの展示が目を引い
うな悪天候とはがらっと様相を変え、当日は見事
な日本晴れならぬアメリカ晴れとなった。
会場スペースは前年度ロサンゼルスで行われた
ものと同程度だが、初日からの来場者数は前年を
大きく上回っているように感じられた。日本でい
うところの幕張メッセをいくつか連結したとでも
言ったらよいのだろうか、巨大な空間に各社のブ
ースが立ち並んでいる。
アメリカでの映像機器中心の展示会であるにも
かかわらず、とにかく日本の企業のロゴマークが
目を引く。日本企業のパワーを感じずにはいられ
ない。ブース展開のサイズからいえば、ソニー、
パナソニック、サンヨー、東芝、パイオニア、
NEC、三菱、エプソン、エイキなど日本での展示
会と同等と言ってよいくらいの力の入れようであ
る(写真1)
。一方海外メーカでは、地元のテキサ
ス・インスツルメンツ、アンプロ、そしてカナダ
のエレクトロホーム、ベルギーのバルコが元気な
ブース展開をしていた。中でもバルコUSAのブー
スは、ソニー、パナソニックと同等のサイズで、
プロジェクタ専門メーカに相応しい力の入ったも
のだった。
製品展示の流れから見て大きく去年から変わっ
てきたのは、DLPプロジェクタとプラズマディス
プレイの台頭である。DLPについては開発元のデ
キサス・インスツルメンツの本拠地ということも
62 ︱eizojoho industrial
上/写真1 下/写真2
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た。しかしシミュレーション、3Dディスプレイの
類は、CGなどを駆使したシミュレーションだけの
展示会が存在しているのか、ほとんど目につかな
かった。
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それでは主なメーカのブースを個々に取り上げ
て、その主力商品をいくつかピックアップしてみ
たい。
まずは出展社中1番大きなブースを構えていたソ
ニー。CRTプロジェクタG70 3台による180°スク
写真3
リーンへの投写、DLP、それに超小型ながら
500ANSIルーメンの光出力を持つビジネスプレゼ
ンテーション用新型LCD、VPL-SC50Uフラット
CRT搭載のTVをはじめとするモニタディスプレイ
と、技術とパワーを感じるレイアウトであった。
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海外のメーカでは、バルコのブースがレイアウ
トもすっきりしていて、見やすくかつインパクト
NECは、プラズマディスプレイに、国内では余
があった。特に、大型液晶のREALITY9200にホワ
り見かけないCRTシリーズ。それに最近始めた
イトバランスとガンマカーブを改善するユニット
DLP Hivid3500を縦置きにし、ミラーで反射させて
TCRを加えた300インチでのデモは圧倒的。また、
投写デモを行っていた。インパクトの強いプラズ
12インチCRTを使用し、光出力500ANSIルーメン
マやDLPはさておいて、CRTプロジェクタのクォ
のREATLITY812、DLPによるマルチスクリーンと
リティが素晴しく印象的だった。これは昨年も同
いった専業メーカらしい新製品が目を引いた。
様で、次第に他の投写方式にとってかわられつつ
一方、DLP方式を全面に出したメーカはなんと
あるブラウン管をデバイスに使ったプロジェクタ
いってもデジタルプロジェクション社。解像度
の作り込みは、かなりのものと言っていいと思う。
1,024×768ドットのDMDを使ったPower7gv(写真4)
基礎技術の高さを感じさせるものであった。
は、キセノンランプを使った優れた色再現性を持
三菱は、プラズマおよびリアプロジェクション
システムを、パイオニアはキューブ構造のディス
ち、その明るさとともにひときわ注目度の高い製
品だ。同社の新製品の発表サイクルを見ると、
プレイウォール(写真3)と、やはりプラズマディ
スプレイ。シャープは小型高性能の液晶を中心に、
ビジネスプレゼンテーションでの提案をしていた。
国産の大型プロジェクタと言えばILA。D-ILAも
人気があったがILA-100MGをニューモデルとして
アピールしていた。大画面再生においては解像度
もさることながら、色の再現性には絶対的に有利
なILA方式の良さが200インチスクリーンでよく表
現されていた。ただ大きく重い点がネックだった
だけに、D-ILA 10Gの注目度は高かった。日本国
内でも、インダストリ、コンシューマ両マーケッ
トで高い評価を受けているが、アメリカでも同様
であることは間違いない。
写真4
August 1998︱ 63
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DMDデバイスが日進月歩で解像度の高いものへと
開発が進められているのがわかる。これは数年前
のLCDパネルの開発になぞらえてみるとよくわか
る。つまりデバイスとしては、現在1番勢いのある
マテリアルなのである。逆に信頼性という点から
は、すでに実績のあるLCDに軍配があがるのは言
うまでもない。
この他、DLP関係の展示ブースは、アンプロ
(写真5)
、エレクトロホーム、本家本元のテキサス
インスツルメンツなど。
写真7
個人的に懐かしさがあったのは、1930年代にラ
ジオを製造販売していた老舗のゼニスがCRTプロ
しかし、インフォコムの目玉はなんといっても
ジェクタを出品していたこと(写真6)
。昔ながら
シューティングである。これは、解像度別に並べ
のメーカ名を見るとなぜかほっとする。
られたプロジェクタに同一信号を同一条件で入力
して見比べようとするもので、エントリしなけれ
ば製品に自信がないことになるし、エントリして
も開催してから終わるまで、一切調整に手を加え
写真5s
ることはできない。つまり壊れてしまったらその
ままで展示会を終えなくてはならないものなのだ。
写す内容は、CG画像、24ビットフォト、テストパ
ターン、アニメーション、映画といったもので、
タイプの異なるプロジェクタを色々な側面でチェ
ックすることができる。
プロジェクタの数は、LCDタイプの小型のもの
が多いが、大型CRT、DMD、LCD、ILAも併設会
場で見ることができる。今年は、日本メーカが圧
倒的に多かった去年と違い、海外ブランドが少し
巻き返しをしたように思う。それは、去年よりも
シューティング会場での製品が少し増えているか
らだ。特に、1,600×1,200の解像度のコーナや、
LARGE VENUE(大画面投写コーナ)といった大
型になってくるとJVCのILAを除くと純国産の製品
はほとんどなく、ソニーのDLPVPDS1800QとNEC
▲写真6
のHivid3500を数えるくらいで、バルコ、デジタル
プロジェクション、エレクトロホームなどがぐっ
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この展示会は、上記のようなプロジェクタばか
と台頭してくる。
シュートアウト全体は、解像度別に8段階に分か
れる。640×480&800×600、800×600&1,024×768、
りでなく、シーリングシステムや、床置き台スク
1,024×768&1,280×1,024、1,280×1,024&1,600×
リーンから、マイク、サウンドシステムなどまで
1,200、LARGE VENUE800×600&1,024×768 Super
かなり幅広い製品群にお目にかかることができる
DATA/Video/HDTV、LARGE VENUE1,024×
(写真7)
。
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LARGE VENUEの各カテゴリは、JVCのILA、バ
ルコのLCD、デジタルプロジェクションなどの
DLPこの3種に要約される。色のノリは、ILAに多
少の良さがあるものの、調整の具合か、フォーカ
スが今ひとつ良くなかった。ここに開催後調整不
可というシューティングの面白さと難しさがある。
潜在能力を残し
つつも、ここは
やはりバルコの
REALITY9200と
デジタルプロジ
768&1,280×1,024Super
ェクションの
DATA/Video/HDTV、
Power7gv、エレ
そしてリアプロジェク
クトロホーム
タを含むモニタ群であ
Vista Graph X5000
る。全部で合計107台も
がクォリティを
の製品が一堂に会され
競い合っていた。
ている。
新技術TCRの導
入で液晶タイプ
まず、640×480から
1,024×768ドットまでの解像度のカテゴリでは、
にありがちな色の偏りもなく、コンピュータ画像、
CRTは62台中わずか6台。D-ILA 2台、DLP 6台、あ
映画などの動画再生ともバルコのREALITY9200が
と残りの48台はLCDタイプでソニー、サンヨー、
一歩先を行っている感がある。しかしDLP方式も
パイオニア、三菱といった日本の製品の印象が良
急速なクォリティアップがされていることは間違
く、海外製品を一歩リードしているといった感が
いなく、LCDの次の世代の方式であろうことは十
ある。このクラスのDLPもエレクトロホーム、ア
分に予見できる。
スクなどから出ているが、勢いはまだまだLCDに
最後のモニタのコーナでは、数社からプラズマ
は及ばない。CRTは7インチではバルコ、ゼニス、
ディスプレイが出品されていたが、個々のブース
SIMの3種。ここではバルコの新製品
展示とは、やや印象が違い、リアプロジェクショ
VISION708MMが優れていた。このコーナで注目
ンやCRTモニタに比較するとまだもう少し追いつ
度の高い製品は、ソニーのVPL-SC50Uとビクター
くまでに時間がかかるかなと思った。構造的に薄
のD-ILA G10U(日本の型番とは違う)
。ともにパ
いのはよいとしても、明るさや画像の切れが今ひ
フォーマンス、サイズで注目度が高かった。
とつ中途半端な感じだったからである。
8インチでもバルコ、エレクトロホーム、アンプ
シューティング会場ではこのようなプロジェク
ロがあるが、バルコのGRAPHICS808sとエレクト
タ、モニタ系の他、ラインダブラ、クアドラプラ
ロホームのマーキー8110がいい勝負。1,280×
の比較もできるようになっていた。ここでは、ソ
1,024&1,600×1,200のカテゴリでは全6機種中4台が
ニーのVPH-G70QJを1台リファレンスとしてスル
CRT。このクラスの解像度に対応するプロジェク
ーのNTSC信号の映像を流し、残る10台のG70QJに
タでは、まだまだCRT健在というところだろうか。
各々の機器を接続して見比べるものである。日本
バルコの9インチ、ソニー、NECの8インチともに
で評価が高く、かつ地元のファロージャがなぜか
素晴しいパフォーマンスであった。周囲を暗くで
エントリしていなかったのが不思議だった。
きるならば、色再現性、動画はCRTに限ると言っ
てもよいくらいきれいだ。
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August 1998︱ 65
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このように、屋内外のディスプレイに非常に関
来年は再び西海岸での開催になるそうであるが、
心が高まっている時期ということもあり、出展側、
特に、シュートアウトで発表された新製品は、2ヶ
来場者側ともに熱気のある展示会であったと思う。
月以内にリリースされるというのが条件なので、
印象的なのは、日本メーカの海外での頑張りで、
こけおどしのプロトタイプがなく、各社ともにそ
これだけは現地へ行ってみないとわからない。ア
のままにデリバリできるもののみを出品してくる。
メリカ現地のメーカも力が入っていたが、プロジ
したがって、情報発信という意味でも重要な展示
ェクタ開発の草分けであるバルコも世界各地から
会で、技術革新の一端をのぞいたような気持ちに
人を動員していた。
なった。こうした大規模の、映像を中心とした展
示会が日本でも早く行われないものかと思いつつ
会場を後にした。
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