しずしん中小企業景況レポート 〈No.8〉

お取引先様(創業者)のご紹介
~素材を活かした「食べるジャム」が人気~
しろくまジャム
武馬 千恵
人とひと、もの、ばしょを繋ぐ、静岡県中山間地の情報を発信するお店をオープン
(平成 27 年 6 月開業)
1. 店舗概要
~地産地消にこだわり食品を提供~
「しろくまジャム」は、平成 27 年 6 月にオープンした
ばかりの新しいお店です。静岡県産の旬な果物や食材を使
ったジャムを作り、販売しています。また、県内中山間地
で調理された加工食品も併せて提供。更に、地元食材にこ
だわったランチやスイーツ、味わい深いコーヒーを店内で
お楽しみいただくことができます。
「地産地消」をキーワードに、静岡の魅力が詰まった食
品を日々提供しております。
2. 人生の転機
親しみとぬくもりを感じさせる店舗
~海外旅行、そして青年海外協力隊への参加~
幼少の頃から母親の料理を手伝う機会が多く、自然と将来は食に関連した仕事に就きたいと思うよ
うになりました。調理学校に進み、就職先として飲食業界を選択。当初はレストランの料理人として
厨房の業務に従事していましたが、現場の仕事は想像以上に厳しく、体調を崩し退職。その後、カフ
ェに再就職し、接客から店舗の運営管理までを担当、充実した日々を送っていました。
カフェで働いていた時に長期休暇を頂き、1 人でインドを訪れました。これが初めての海外旅行で
あり、人生の大きな転機となりました。今まで触れたことがない異国の住民や文化、食材に魅せられ、
その後ヨーロッパとモロッコにも訪問。もっと長く海外で生活してみたい、自分の好きな料理を介し
て現地の人達とコミュニケーションを図りたい、そういった思いが日増しに強くなっていきました。
そこで、思い切って国際協力機構(通称:JICA)*1 青年海外協力隊に応募。村落開発普及員として、
カリブ海に浮かぶセントビンセント及びグレナディーン諸島への派遣が決まり、長期滞在する機会を
得ました。
派遣の前に村落開発について学ぶため、群馬県で開催された研修に参加。農家の家庭を巡回する中、
ある農業従事者から日本の農業の実態と過疎化について伺いました。そこで聞いた「日本の農業はも
う限界だ…」という言葉が心に引っかかりました。
セントビンセント及びグレナディーン諸島には 2 年間滞在。物やお金は決して充分ではないが、
人とひとの繋がりが非常に強く、心が豊かな人達が多い国と感じました。現地では、主婦に料理を教
える活動に従事。まずは地元の味を覚えるために、ホームステイ先のホストマザーから料理を教わり
ました。そこで教わった様々なおふくろの味の中で一番印象深かったのは「ジャム」でした。季節の
果実を使ったジャムから、たくさんの元気をもらいました。
帰国後、青年海外協力隊の経験を活かし国際協力で地域を盛り上げたいと考え、JICA 静岡県国際
協力推進員として JICA 事業の普及促進に携わってきました。しかし、派遣前にお会いした農業従事
者の言葉が頭から離れず、セントビンセント及びグレナディーン諸島の住民同士の繋がりのように、
過疎化の進む地域の農家と街に住む人達が交流を深められる活動ができないかと思案。派遣先のホス
トマザーから教わったジャムが頭に浮かび、静岡県産の果物を使ったジャムを通じて農業に関心を持
ってもらおうと考え、ジャムを製造・販売したり、様々な食べ方を提案するカフェを開業する決意を
固めました。
*1…日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を実施する機関。青年
海外協力隊の派遣も JICA 国際協力事業の 1 つ。
友人や知人の協力で完成した白壁が
明るく開放的な雰囲気を演出
3. 開業までの道のり
左:静岡県の季節の果物を使った「食べるジャム」
右:パフェを始め、ジャムを楽しむメニューが充実している
~たくさんの人達に感謝~
JICA 静岡県国際協力推進員として勤務した 3 年間、地域イベントの開催や JICA 事業の案内、青
年海外協力隊員募集などに従事してきましたが、この仕事を通じ多くの人と出会い、たくさんの人と
知り合うことができました。開業する際、改めてこの人とひととの繋がりの大切さを実感。お店の内
装工事の際には約 20 名の友人・知人が壁の塗装を手伝ってくれました。こうしてできた手塗りの白
壁は、しろくまジャムの象徴となっています。
JICA の推進員として活動していた頃、しずおか信用金庫の方と知り合い、開業場所の選定や商圏
の調査、業者の紹介など様々な面でお手伝いいただきました。事業計画の作成についてもアドバイス
いただき、今までの経歴、開業を決めた経緯や理由、目標とする将来の姿を客観的に見つめる機会と
なり、具体的な収支計画を立てた際には、開業に対する意識が高まりました。平成 26 年には、しず
おか信用金庫主催の「しずしん創業スクール」に参加。研修を経て、事業計画をより細かく明確な内
容にブラッシュアップすることができました。この事業計画を作成した経験が功を奏し、第 13 回
SOHO しずおか*2 ビジネスプランコンテスト*3 で奨励賞を受賞、平成 27 年度地域密着ビジネス新
事業助成事業*4 に採択されるなど、ビジネスモデルに対し高い評価を頂くことに繋がりました。
*2…静岡市が主に運営にあたる、公的創業・産業支援組織。施設内にはレンタルオフィスが設置されている。
*3…静岡の産業の活性化、起業家精神の高揚と次世代の産業を担う人材発掘を目的とした、新規事業コンテスト。
*4…静岡県内の中小企業者が行う地域産業の振興を図るため、新製品等の販路開拓を行う事業者に対し、その経費の
一部を助成する制度。公益財団法人静岡県産業振興財団が所管。
4. 今後の展開
~静岡県中山間地の情報発信スペースとして静岡の魅力をアピールします~
開業後 2 カ月程経過しましたが、その間たくさんの人達にご来店いただき、感謝の気持ちでいっ
ぱいです。また、仕入先である静岡県内の農家の皆さんにも温かく見守っていただき、多くの人に支
えられていると強く感じています。もっと静岡の農業について多くの人に知ってもらうために、地元
食材を使った食品の提供以外に中山間地に関する様々なイベントを企画、実施する予定です。
これからも街の人達と農家、地元の食材、中山間地、即ち、人とひと、もの、ばしょを繋げる情報
発信スペースとして、静岡の魅力を積極的にアピールしていきます。
~「しろくまジャム」の由来~
「しろくまジャム」の店名は、絵本作家「わかやま けん」氏による「しろくまちゃんのほっとけーき」から
来ています。この絵本は、自分にとって初めてのレシピブックです。ホットケーキのように思わずほっこりする
料理を作っていこう、初心をいつまでも忘れずにいよう、こういった思いが店名に込められています。
【Company Data】
店舗名
しろくまジャム
代表者
武馬 千恵
所在地(本社) 〒425-0839
創業
主な事業内容
静岡市葵区鷹匠 1-2-5-1F
平成 27 年(2015 年)6 月
・地元果物を使用したジャムや静岡県山間部の食品販売
・地元食材を使用したマフィンやランチ、コーヒーの提供
お問い合わせ
TEL&FAX:054-266-7626
ホームページ
http: //www.shirokumajam.com
しろくまジャム
代表 武馬 千恵