NTN TECHNICAL REVIEW No.83(2015) [ 商品紹介 ] 次世代ドライブシャフト『ADSモジュール』 Next-generation Driveshaft “ADS Module” 大 杉 真 史* 杉 山 達 朗* Masafumi OOSUGI Tatsuro SUGIYAMA 近年,自動車業界では世界的に車両の低燃費化,軽量化が重要な課題である.また,自動車構成部品の共通化による開発工 数の削減,開発スピードアップも重要な課題である.これらの要求に応えるため,自動車の駆動系に用いられる等速ジョイ ントやハブベアリングを新たなコンセプトと高度な製造技術によりモジュール化した『Advanced Drive Shaft Module』 (アドバンスド ドライブシャフト モジュール)を世界の自動車メーカに提案する. Recently, low-fuel consumption and weight reduction are important problems worldwide in the automotive industry. And, development speed-up and development man-hour reduction according to standardization of a car component are also important problems. Responding to these problems, NTN proposes to worldwide automobile manufacturers the ADS module (Advanced Drive Shaft module) which modularized the constant velocity joint (CVJ) and hub-bearing (H/B) for drivetrain with a new concept and high manufacturing technology. 1. まえがき 2. 構造と特長 エンジンからの動力は,変速機,ディファレンシャル ADSモジュールでは,タイヤ側は,要求トルクご ギヤ(差動歯車装置,以下,デフ)を経てドライブシャ とに標準・共通化したCVJとH/Bを「プレスコネク フトによりタイヤに伝達される.ドライブシャフトは, ト方式」で接合し,一方デフ側は,同じく要求トルク 入力軸であるデフ軸とタイヤを支持するハブベアリン ごとに標準・共通化したCVJと個々に設計するステム グ(以下,H/B)軸が角度を変えながら回転するため, 部を電子ビーム溶接で高精度に接合した,後述する 等速ジョイント(以下,CVJ)を用いることで,常に 「EBWドライブシャフト」を組み合わせる. 同じ回転速度で滑らかなトルク伝達が可能となる. 2. 1 共通仕様 車両により自動車のデフ,H/Bの仕様及び車両の要 求トルクなどの要求仕様は異なる.従来のドライブシ CVJを構成する内輪,ケージ,ボール等の内部部 ャフトは,要求仕様に合わせ個別に設計したCVJやシ 品,及び,ブーツはすでに仕様が共通化されている. ャフトを組み合わせ,試作と評価を繰り返す必要があ ADSモジュールでは,新たにタイヤ側CVJ及びデフ り,開発リードタイムが長くなるという課題があった. 側 CVJの カ ッ プ を 共 通 仕 様 と す る . H/B, デ フ 側 NTNは,H/BとCVJの世界トップクラスの販売規 CVJのステム,タイヤ側CVJとデフ側CVJの間に嵌合 するシャフトは車両により個別仕様とする(図1,2). 模を背景に,長年の研究開発で培った技術に加え,後 述する「プレスコネクト方式」による接合及び電子ビ 2. 2 PCS-H/Jの特長 ーム溶接など最先端の製造技術を保有している1).こ れらの技術を活用し,シャフトの長さや形状など車種 接合には,H/B内径に外輪ステムスプラインより歯 ごとに異なる部品と,要求トルク等に応じて共通設計 幅の小さいスプライン(プレスプライン)をあらかじ 化したCVJ部品を組み合わせた,次世代のドライブシ め形成し,さらにステム歯先とH/B側の歯底に空隙を ャフト「アドバンスドドライブシャフト(以下, 設けることにより,結合に必要な荷重を低減し両者の ADSモジュール)」を提案する. ボルト締結を可能とした.本接合方式をプレスコネク *自動車事業本部 ドライブシャフト技術部 -40- 次世代ドライブシャフト『ADSモジュール』 PCS-H/J EBW ドライブシャフト プレスコネクト接合 車両別仕様 共通仕様 電子ビーム溶接接合 車両別仕様 図1 ADSモジュール構造 Structure of ADS module 図2 ADSモジュール構造(写真) Structure of ADS module ト方式(以下,PCS)とする.これにより,自動車 ハブベアリング メーカ車両組立ラインで,組立工程を変更することな 等速ジョイント く,PCS-H/Jの組付けを可能とした(図3). 本方式による接合の特長は,大幅な軽量化及びスプ ライン嵌合部の遊びをなくしたことにある.本方式は, 従来のスプライン嵌合に対して嵌合部に隙間がなく, 入力トルクを円周方向全域で均一に受けることができ る.その結果,CVJステム長さの約65%短縮を実現 した.また,ハブ輪内径部の肉抜き,及びナットのボ ルト化などにより0.94kg/台(従来品比約12%:C セグメント適用の場合)の軽量効果を実現した. プレスコネクト接合部 締結用ボルト 図3 PCS-H/J構造 Structure of PCS-H/J -41- NTN TECHNICAL REVIEW No.83(2015) 2. 3 EBWドライブシャフトの特長 3. あとがき EBWドライブシャフトは,共通カップ(外輪)と ス テ ム ( 軸 ) の 接 合 に 電 子 ビ ー ム 溶 接 ( Electric ADSモジュールにより,ドライブシャフトの開発 Beam Welding,以下,EBM)を採用する(図4). リードタイムを短縮するとともに,モジュール商品と ロングステムタイプは,摩擦圧接で接合する従来品に して小型・軽量化を図り,自動車の乗り心地や燃費向 比べて,EBWドライブシャフトでは,よりカップ側 上にも貢献する. 近傍で両者を接合することができ,EBWはカップの 今後,ADSモジュールを自動車メーカに積極的に 共通化に適した接合方法である. 提案していく. ショートステムタイプは,従来,カップ一体型であ るが,車両仕様毎に形状が異なるステムを切り離すこ とでカップの共通化を可能とした. 溶接品質に関しても,真空中で溶接するため,他の 溶接方法に比べて溶接欠陥が少なく,要求強度が十分 に得られている. また,摩擦圧接のように接合部にフラッシュが発生 しないため,接合後の旋削工程をなくすことが可能で ある. 図5 適用箇所 Application 参考文献 1)乗松孝幸,永田勉,PCS-H/J(プレスコネクトスプラ イン ハブジョイント),NTN TECHNICAL REVIEW No.81, (2013)58-63 電子ビーム溶接接合部断面 図4 EBWドライブシャフト構造 Structure of EBW driveshaft 執筆者近影 大杉 真史 杉山 達朗 自動車事業本部 ドライブシャフト技術部 自動車事業本部 ドライブシャフト技術部 -42-
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