オンラインゲーム依存に関連する個人特性の探索

オンラインゲーム依存に関連する個人特性の探索
賞賛獲得欲求と自己愛傾向との関連について
野村
竜也
(龍谷大学理工学部 情報メディア学科)
キーワード:オンラインゲーム依存、賞賛獲得欲求、自己愛
Exploration of Personal Traits Related to Online Gaming Addiction
Tatsuya Nomura
(Department of Media Informatics, Faculty of Science and Technology, Ryukoku University)
Key Words: Online gaming addiction, Praise seeking need, Narcissism
目 的
インターネット依存症が 90 年代から問題化する中、近年特
にオンラインゲーム依存が問題化していることを背景として、
その臨床的扱いや予測要因としての個人特性の探索が行われ
ている(平井・葛西, 2006; 野村・後藤, 2011)
。一方、Social
Network Service (SNS) への依存については、既に賞賛獲得
欲求や自己愛傾向との関連が報告されており、この関連につ
いての性差も見いだされている(Carpenter, 2012; 吉野,
2008)
。
これを踏まえ、本研究では、オンラインゲーム依存に関連
する個人特性の探索の一環として、賞賛獲得欲求および自己
愛傾向と依存傾向との関連についての調査を行った。
方 法
被調査者 調査会社の応募に応じた 638 名(男性 323 名、
女性 315 名、平均年齢 34.1 (SD = 8.3))
。
調査時期 2013 年 11 月。
調査票 平井・葛西(2006)から抜粋、野村・後藤(2011)
によって精選されたオンラインゲーム依存尺度の下位尺度
「ゲームによる生活への浸食度」7 項目と「ゲームへの感情
的依存」7 項目(5 件法)
、藤・湯川(2005)の「満たされな
い自己尺度」の下位尺度「目標喪失感・停滞感」8 項目と「自
己愛傾向」4 項目(5 件法)
、小島・太田・菅原(2003)の「賞
賛獲得欲求・拒否回避欲求尺度」18 項目 5 件法(2 因子:賞
賛獲得欲求 9 項目、拒否回避欲求 9 項目)
。なお、フェイスシ
ートにおいてオンラインゲームの利用状況および熱中の程度
を訊ねた。
手続き 調査会社の登録者から無作為抽出されたモニター
約 1 万人に対して、電子メールにより調査への回答依頼が行
われた。回答は WEB ページを介して行われた。
利用度が高い群ほど得点が有意に高いことが認められた。
男女ごとに尺度得点間の相関係数を求めたところ、自己愛
傾向と「ゲームによる生活への浸食度」の間に男女とも中程
度の正の相関が認められた。自己愛傾向と「ゲームへの感情
的依存」の間の相関については、同等性の検定により男女間
で有意傾向の差が認められ(Z = 1.721, p < .1)
、男性では
低い正の相関(r = .173)、女性では中程度の正の相関(r = .302)
となった。承認獲得欲求と「ゲームによる生活への浸食度」
の間の相関についても同等性の検定により男女間で有意差が
認められ(Z = 2.189, p < .05)
、男性では無相関(r = .097)
、
女性では中程度の正の相関(r = .265)となった。
考 察
オンラインゲームの依存傾向そのものは女性よりも男性が
高い傾向にあるものの、賞賛獲得欲求や自己愛傾向との関連
については、男性よりも女性が強い傾向が示唆された。この
ことは、オンラインゲーム依存の予測要因として個人特性を
考える場合、男女によって対象となる特性が異なることを含
意している。一方、重回帰分析を行った結果、決定係数から、
これらの個人特性だけではオンラインゲーム依存を説明する
には不十分であることが示唆されており、より広い特性の探
索が必要であると考えられる。
謝辞
本研究は、平成 25 年度龍谷大学理工学部卒業研究「オンラ
インゲーム依存に関連する個人特性の探索」
(吉田尚人)にお
ける調査データを基に実施された。
引用文献
Carpenter., C. J. (2012). Narcissism on Facebook:
Self-promotional and anti-social behavior. Personality
結 果
and Individual Differences, 52, 482–486.
被調査者のオンラインゲームの利用状況は、
「利用している」 藤桂・湯川進太郎. (2005). 満たされない自己が敵意的認知
が 340 名、
「過去利用していたが、今はしていない」が 137 名、
と怒り感情に及ぼす影響. カウンセリング研究, 38,
「ほとんど利用したことはない」が 161 名であり、男女比率
22-32.
に偏りは認められなかった(χ2(2) = 1.884, n.s.)
。調査票
平井大祐・葛西真記子. (2006). オンラインゲームへの依存
における下位尺度の信頼性係数αは、全ての場合において.8
傾向が引き起こす心理臨床的課題: 潜在的不登校・ひきこ
を超えるものとなり、十分な内的整合性が認められた。
もり心性との関連性. 心理臨床学研究, 24, 430-441.
これら尺度得点を従属変数、性別と上記のオンラインゲー
小島弥生・太田恵子・菅原健介. (2003). 賞賛獲得欲求・拒
ム利用状況を独立変数とした分散分析を実施したところ、自
否回避欲求尺度作成の試み. 性格心理学研究, 11, 86-98.
己愛傾向と賞賛獲得欲求は女性よりも男性が有意に高いこと
野村竜也・後藤祐馬. (2011). オンラインゲーム依存尺度の
(F = 9.378 , p < .01 および F = 5.636 , p < .05)
、拒否
作成と妥当性の検討. 日本パーソナリティ心理学会大会発
回避欲求は男性よりも女性が有意に高いこと(F = 4.749 , p
表論文集, 16.
< .05)が認められた。これらの尺度得点においては、オンラ
吉野岳. (2008). SNS のアクセスを高める要因としての賞賛
インゲームの利用度の影響は認められなかった。また、オン
獲得欲求・拒否回避欲求の検討. 日本青年心理学会大会発
ラインゲーム依存の 2 尺度においても男性が女性より有意に
表論文集, 34-35.
高く(F = 8.465 , p < .01 および F = 12.892 , p < .001)
、