家計生産の派生需要としての食材需要関数の計測

家計生産の派生需要としての食材需要関数の計測
草苅 仁
(神戸大学農学部)
Estimation of Food Demand Function Derived from Home Cooking(Hitoshi Kusakari)
1.はじめに
エンゲル係数(家計の消費支出に占める飲食費の割合)が家計所得の増加にともなって減少していく
ことは「エンゲルの法則」として知られている.日本においても,エンゲル係数は 1975 年から 2000
年の間に 30%から 22%へ減少している.そのなかで,調理食品費と外食費の合計が飲食費に占める割合
は 13%から 28%へ増加し,食事の外部依存を表す「食の外部化」が進行していることは周知のとおり
である.食の外部化は,調理済み食品(そうざいや持ち帰り弁当など)や外食が,家庭内調理による食
事(内食)に代替することを意味するが,それは買い物,調理,食事の後かたづけなどの一部または全
部が市場のサービスへ置き換わることでもある.したがって,食の外部化は家計の時間配分(家事労働,
雇用労働,余暇への配分)の変化をともなう,市場財(サービス)への代替プロセスである.
このように,食の外部化は家計生産物である内食に必要な生産コストが上昇し,相対的に高価となっ
た内食を節約することで市場財への代替が進むことであると考えられる.その際,内食の生産コストを
上昇させる主な要因としては,賃金率の上昇と世帯規模の縮小があげられる(註 1)
.さらに,食の外部
化は食事を通じた家族の共有時間が減少した結果でもあり,家族機能の弱体化がその誘因であるとも考
えられる(註 2)
.食の外部化は家事サービスが市場で提供されるサービスへ代替したことを意味するが,
その結果,家族団らんの場が縮小して個食化が進むなど,家計において食事の重要性が低下したことな
どが指摘される(註 3)
.
本稿の課題は次の 2 点である.
(1)
内食の食材需要関数が満たすべき特徴を考慮した枠組みを提示し,
食材需要関数を定式化すること.
(2)定式化した食材需要関数を推計して,計測結果からモデルの有効
性を確認すること.その際,食材需要関数の特徴として考慮すべき事項は,以下の 4 点である.①家計
生産物である内食生産の派生需要として定義されること,②一般に家計生産物としての内食は非市場財
であること,③家計の所得変数が内生化されること,④派生需要量は,家計内の公共資源である家計内
公共財の賦存状態に影響されること.本稿で提示する内食の食材需要関数は,以上の点で通常の消費者
需要理論から導出される消費者の需要関数と異なっている(註 4)
.
2.分析の枠組み
1)内食食材需要関数の導出
(1) 家計生産関数
家計の生産関数を(1)式で定義する(註 5)
.
X H = g (Z, K (n, t ) ) = g ( X F , TH , K (n, t ) )
(1)
家計が生産する内食数量( X H )は,内食材料購入数量( X F ),家事労働時間( TH ),調理器具や家電
製品などからなる資本財( K (n, t ) )の関数であるとする.このとき, t は調理器具や家電製品の性能を表
す技術指数を, n は世帯規模を,それぞれ表す.したがって,所与の技術指数( t )のもとで,資本財
( K (n, t ) )は世帯規模( n )が一定であれば不変である.これは,世帯規模が資本財のサイズを決めるこ
とを意味している.家計生産においては,資本財の提供するサービスが生産に供されるので,K (n, t ) は
準固定財である.
(2) 家計効用関数
次に,家計の効用関数を(2)式で定義する(註 6)
.
U = u ( Y ) = u ( X H , X M , TL )
(2)
家計の効用は,内食数量( X H ),その他の市場購入財数量( X M ),家計の余暇時間( T L )の関数であ
るとする.
(3) 制約式
家計は効用を最大化するように財を需要するが,そのときの需要には「余暇時間を過ごすこと」も含
まれる.ここで,家計が余暇にどれだけの時間を充てるかということは,家計の時間配分を決定するこ
とでもある.
利用可能時間( T )として,あらかじめ家計に与えられている時間の賦存量は一定であるから,余
暇時間( TL )の増加は他に振り向ける時間が減少することを意味する.例えば,余暇時間( TL )の
増加によって雇用労働時間( TE )が減少すれば,内食材料支出( pF X F )やその他の市場購入財支出
( pM X M )に充てられる雇用所得( wTE )も減少する.その場合,余暇時間( TL )の対価は賃金率
( w )である.また,上記の効用関数には内食数量( X H )も含まれるが,家計生産のためには家事
,
労働時間( TH )が必要となる.したがって,家計の利用可能時間( T )は,雇用労働時間( TE )
家事労働時間( TH )
,余暇時間( TL )の3つに配分される.
このとき,家事労働の生産性は時間配分に影響するであろうし,配分のされ方によって雇用所得
( wTE )も変化する.資産所得など,家計の不労所得を A とすると,家計の効用を最大化するために
家計が直面する制約は,次の3つである.
• 時間制約: TE + TH + TL = T
• 予算制約: pF X F + pM X M ≤ w TE + A
• 技術制約: g ( TH , X F , K ( n , t ) ) ≤ X H
(3)
(4)
(5)
このとき,(3)式と(4)式から(6)式の制約式が導出される.
p F X F + p M X M + wTH + wTL ≤ wT + A = I
(6)
家計の生産活動を含む本節の枠組みでは, T と A のみが所与となっており, TE , TH , TL の配
分は内生化されている.したがって,雇用所得( wTE )と不労所得( A )の合計は内食材料費( p F X
F
)
とその他の市場購入財費( p M X M )を賄うための源泉となる.(6)式の予算制約式は,これらの支出
額に家事労働の機会費用( wTH )と余暇の機会費用( wTL )とを加えた総支出額(左辺)と,稼得可
能額(右辺: wT + A = I )の関係を表している.
(4) 最適化
(1)~(6)式の内点解は,(7)式で与えられる(註 7)
.
e(p Y , u ) = e( pH , pM , w, u ) = I + π ( pH , p Z , K (n, t ) ) = I + π ( pH , pF , w, K (n, t ) )
ここで, e(p Y , u ) =
min p Y Y t , π ( pH , p Z , K (n, t ) ) =
Y:u ( Y )≥U
max
Z:g ( Z , K )≥ X H
(7)
pH X H − p Z Zt ,
Y = ( X H , X M , TL ) , Z = ( X F , TH ) である.
*
いま,内食( X H )の需給均衡価格を pH = pH とすると,(7)式から,内食の需給均衡量( X H
)と pH
との関係は(8)式で示される.
∂e(•) ∂pH
pH = pH
= ∂π (•) ∂pH
pH = pH
= X H*
(8)
このとき,V ( p Y , I ) = maxt u ( Y ) とおくと,需給均衡価格( pH )は,
Y:p Y Y ≤ I
pH = pH ( p Z , pM , K (n, t ) , V (p Y , I ) ) = pH ( p Z , pM , I , K (n, t ) )
(9)
また(7)式より,
∂e(•) ∂pF
pH = pH
= X F* + ∂π (•) ∂pF p = p = 0
H
H
(10)
したがって,(9)式と(10)式から内食材料の派生需要関数は(11)式で示される.
− ∂π (•) ∂pF
p H = pH
= X F* = X F ( pH , p Z , K ( n, t ) ) = X F ( p Z , pM , I , n, t )
(11)
2)規模財と家族財
家計が消費する財(サービスを含む)には,個人が占有する財と共同で利用する財がある.このうち,
世帯構成員にとって非排他的かつ非競合的であるような属性を有する財のことを家計内公共財とよぶ.
ここでは家計内公共財を「規模財」と「家族財」に分類する.規模財は規模の経済が期待される財であ
り,住居,家電製品,自家用車など耐久消費財がもたらすサービスなどが該当する.一方,家族財は家
族の価値や厚生の増加が期待される財であり,子どもや団らんなどが該当する(註 8)
.
3.実証分析
(11)式に示される内食材料( X F )の派生需要関数を(12)式のように定式化する.
ln X F = α 0 + α t ln t + α F ln p F + α M ln p M
*
+ α w ln w + α I ln I + α q ln q + α n ln n
(12)
ここで, q と n は家計内公共財の変数であり,それぞれ家族財と規模財の数量を表す.
データは,総務省統計局『家計調査』品目分類(全国勤労者世帯)
,総務省統計局『消費者物価指数』
中分類(全国勤労者世帯)
,厚生労働省統計情報部『毎月勤労統計調査』
(産業計・事業規模 30 人以上・
男女平均・月平均値)
,
『人口動態調査』である.データの制約上,内食材料の購入数量が不明なため,
『家計調査』の支出金額を,対応する『消費者物価指数』の価格指数で割ったものを購入数量指数とし
た.1975 年から 2004 年の 30 年間について,最小二乗法により(13)式の需要関数を計測する.
ln X F = α 0 + α t ln t + α F ln( p F / cpi ) + α w ln( w / cpi )
*
+ α I ln( I / cpi ) + α q ln q + α n ln n + ε
(13)
ここで, X F は内食材料購入数量, t はタイム・トレンド, pF は内食材料価格, w は賃金率, I は
稼得可能額, q は婚姻率から離婚率を差し引いた家族財数量であり,家族機能を代理している(註 9)
.
また, n は世帯人員数, cpi は消費者物価指数(総合)であり,他の市場購入財価格( pM )の代理変
数とする. ε は誤差項を表す.
期待される理論的符号条件は,α F と α w が負,α q , α n が正である.このうち,α F は内食材料とそ
の他の市場購入財との相対価格の係数であるから,内食材料がギッフェン財でない限り,負である.ま
た, α I は所得(支出)弾力性に該当し,内食材料が下級財でない限り,非負である.
計測データは『家計調査』
,
『消費者物価指数』
,
『毎月勤労統計調査』の各データを次のように加工し
たものである.内食材料価格( pF )は,消費者物価指数の食料中分類のうち,酒類,調理食品,菓子
類,飲料,外食を除いた各指数について,数量ウエイトで加重した価格指数である.内食材料購入数量
( X F )は,食料消費支出から,酒類,調理食品,菓子類,飲料,外食を除いた支出金額の合計を内食
材料価格( pF )で割って求めた.賃金率( w )は「決まって支給される給与」を「総実労働時間」で
割って求めたものである.
家計の稼得可能額( I = wT + A )は,1人あたり利用可能時間(24 時間×30 日)に被扶養者を除く
世帯人員(世帯の有業人員)数を乗じて家計の利用可能時間とし,それに賃金率( w )を乗じて求めた.
したがって,被扶養者については時間の機会費用がゼロであることを仮定している(註 10)
.
4.計測結果
(13)式の計測に先立ち,計測式の各変数につい
て 拡 張 デ ィ ッ キ ー ・ フ ラ ー ( Augmented
Dickey-Fuller)検定による単位根の検定を行った
(註 11)
.検定式は①ドリフトとトレンド付き,②
ドリフト付きトレンドなし,③ドリフトとトレンド
なしの順に計測し,定数項とトレンド項の有意性を
みて選択した.また,①から③のそれぞれについて,
ラグの最大次数を 5 として,赤池情報基準(AIC)
が最小となる次数を選択した.検定の最終結果は第
1 表に示すとおりである.第 1 表の各変数について,
上記の方法で選択された検定統計量は,τ CT が①,
τ C が②,τ が③に,それぞれ対応している.検定の
結果,賃金率( ln( w cpi ) )は 12%水準で,その他
の変数については 5%水準で,単位根を持つという
帰無仮説が棄却された.これより計測データは定常
系列であると判断して,
(13)式を計測した.
(13)式の計測結果は第 2 表に示すとおりである.
自由度修正済み決定係数は 0.981 であり,ダービ
ン・ワトソン統計量は 1.524 であった(註 12)
.第
2 表に示す計測結果から次の点が明らかになった.
第 1 表 単位根検定結果
変数
ラグ
ln X F
0
τ
ln t
0
τC
1
τ
-2.205
ln( w cpi )
0
τ
-1.503
ln( I cpi )
0
τ
-2.282
ln q
0
τ
-3.676
ln n
0
τ
-2.741
ln( pF cpi )
検定統計量
-5.629
-12.179
第 2 表 内食食材需要関数の計測結果
推定係数
推定値
t値
α0
2.707
4.846*
左辺の内食材料購入数量( X F )に対する自己価格
αt
0.043
1.843*
弾力性( α F )は-0.414 であり,理論的符号条件を満た
αF
-0.414
-1.821*
している.また,同次制約から算出した市場財価格
αM
0.847**
率弾力性( α w )は-0.758 であり,賃金率の上昇が食
αw
-0.758
-1.974*
材需要の減少を通じて食の外部化を促進させる関係
αI
0.325
1.446
αq
0.358
4.906*
αn
2.129
4.612*
( pM )の交差価格弾力性( α M )は 0.847 である.賃金
が示されている.次に,内食材料購入数量( X F )に
対する家族財数量( q )の弾力性( α q )は 0.358 であっ
た.家族財( q )の減少は家族機能の弱体化を意味す
るので,家族財の数量弾力性( α q )が正であることか
ら,家族機能の弱体化は食の外部化を促進する関係
が示されている.さらに,内食材料購入数量( X F )
に対する規模財数量( n )の弾力性( α n )は 2.129 であ
った.規模財数量( n )の弾力性( α n )が正かつ1より
も大きいことから,世帯規模の縮小はそれ以上に内
3.209*
自由度修正済み決定係数
0.981
ダービン・ワトソン統計量
1.524
*10%水準でゼロと有意差をもつ.
**同次性制約から事後的に算出した.
食消費を減少させること,すなわち,世帯による規模効果が明らかとなった.最後に,内食材料購入数
量( X F )の所得変数( I )に対する弾力性は 0.325 であり,内食材料は必需財であることが示されてい
る.
5.結 論
本稿では,
(1)内食の食材需要関数が体現すべき特徴を考慮した枠組みを提示して,食材需要関数を
定式化し,
(2)定式化した食材需要関数を推計して,計測結果からモデルの有効性を確認することが課
題であった.その際,通常の消費者需要理論から導出される消費者の需要関数との相違点として,①家
計生産物である内食生産の派生需要として定義されること,②一般に家計生産物としての内食は非市場
財であること,③家計の所得変数が内生化されること,④派生需要量は,家計内の公共資源である家計
内公共財の賦存状態に影響されることの 4 点をモデルに組み込んだ.
その上で内食の食材需要関数を推計したが,計測結果はすべての推定係数が理論的符号条件を満たし,
ほぼ統計的に有意な推定係数が得られた.内食材料購入数量( X F )に対する自己価格弾力性( α F )は
-0.414 であり,非弾力的ではあるが,食材需要はその程度に自己価格に反応していること,賃金率弾力
性( α w )は-0.758 であり,賃金率の上昇が食の外部化を促進させること,内食材料購入数量( X F )に対す
る規模財数量( n )の弾力性( α n )は 2.129 であり,世帯による規模効果が観察されること,内食材料購入
数量( X F )の所得変数( I )に対する弾力性は 0.325 であり,内食材料は必需財であることが明らかと
なった.
また,高賃金経済のもとで,食の外部化という家計による経済合理的な調整は,一方で家族の共有時
間が減少した結果でもあり,その背景に家族機能の弱体化が指摘されてきた.そのため,ここでは家族
財を導入することで,この問題に対処した.内食材料購入数量( X F )に対する家族財数量( q )の弾力性
( α q )は 0.358 であった.家族財( q )の減少は家族機能の弱体化を意味するので,家族財の数量弾力性
( α q )が正であることから,家族機能の弱体化は食の外部化を促進する関係が示された.もとより家族財
の変数は,それを直接に数量として観察できないため,関連性が高いと考えられる変数で代理せざるを
得ないが,食材需要関数を導出する枠組みの中で,一定の成果が得られたと考えられる.以上,計測結
果からここで提示したモデルの有効性を確認できたと考えられる.
(註 1)
「賃金率の上昇と世帯規模の縮小が食の外部化を促進する」という仮説は柿野・草苅によって日本家政学会
家庭経済部会 1997 年度夏期セミナー(1997 年 8 月)で初めて報告された.内容は柿野・草苅〔7〕
,草苅〔8〕
,
草苅・柿野〔9〕を参照されたい.また,論点を整理したものに Kusakari〔11〕がある.
(註 2)マクロ経済学の景気循環論と経済成長論の関係のように,家族機能を分析対象に含む家族社会学では,家
族の変化を,①構成員の加齢にともなうライフ・サイクル的変化(循環的変化)と,②世代にわたる歴史的変化
(傾向的変化)に区分して,①を家族周期の問題,②を家族変動の問題とみる(森岡〔14〕
)
.ここで対象とす
る家族機能の変容(弱体化)は,社会の時系列変化に家族が対応した結果であり,②に属する問題である.
(註 3)草苅〔10〕は「食の外部化は家事サービスが市場で提供されるサービスへ代替したことを意味するが,そ
の結果,家庭団らんの場が失われて個食化が進むなど,家族の疎外化につながる弊害も生じた.このことは,市
場サービスで代替できたのは食事という行為までであり,内食がもたらす外部効果までは代替できなかったこと
を示している」と指摘している.岩村〔6〕
,草苅〔12〕も併せて参照のこと.
(註 4)第 2 節に示すように,食材需要関数の導出にあたり,双対関数を用いて最適化問題を解く.その際,②の
非市場財条件は,自給自足によって需給均衡が達成されることで表現される.この点は,貿易理論における自給
自足経済モデルと同様である.双対関数で自給自足経済を表現したモデルは,Dixit and Norman〔5〕
,Wong
〔16〕などで与えられているが,財市場の問題を目的として展開されている点で,本稿のモデルと異なってい
る.また,Asano〔1〕は双対関数による家計モデルを念頭に,AIDS を特定化して消費財と余暇との弱分離可
能性をチェックしたが,同様に財市場の問題を目的として展開されている点で,本稿のモデルと異なる.Asano
〔1〕と同様のモデルから家事労働の外部化が食料消費に及ぼす影響を分析した研究として,茂野〔15〕があげ
られる.なお,食材需要関数の特徴として④に示した家計内公共財については,Bergstrom〔2〕などを参照さ
れたい.
(註 5)
(1)式の家計生産関数は凹かつ強準凹関数であり,説明変数に対して増加関数である.
(註 6)
(2)式の家計効用関数は強準凹関数であり,説明変数に対して増加関数である.
(註 7)太字の記号は列ベクトルを,右肩の
t はベクトルの転置を,それぞれ表す.(7)式は,余暇,雇用労働,
家事労働からなる時間変数が,共通の対価(賃金率)を有することの帰結と解釈することもできる.
(註 8)家計内公共財と家計の食料消費の関係については,Deaton and Paxson〔3〕が住居費にみられる規模効果
が食料消費に与える影響を考察している.また,属性の相違に着目して,家計内公共財を規模財と家族財に分割
して計測に用いたのは草苅〔13〕である.
(註 9)家族機能の弱体化を代理する変数を婚姻率と離婚率との差と定義したのは,未婚率の上昇がもたらすバイ
アスを回避するためである.弱体化に対して負の効果が期待されるが,婚姻率も離婚率も所得変数と高い相関を
有する可能性がある.計測に際しては,多重共線関係による有意性の低下に注意する必要がある.
(註 10)1 人 1 日あたり利用可能時間は,24 時間から睡眠時間を除いて 16 時間とする場合も見られる.定数であ
るため,計測結果には影響しない.
)
.
(註 11)小数サンプルに対する単位根検定については,その有効性を疑問視する見解もある(DeJong, et al.,〔4〕
(註 12)最尤法で誤差項について 1 階の系列相関(今期と前期の誤差項が 1 階の自己回帰過程にある場合)をチェ
ックした.自己相関係数の推計値は 0.211( t 値:0.999)であり,30%水準で有意ではなかった.
引用文献
〔1〕Asano, S., “Joint Allocation of Leisure and Consumption Commodities: A Japanese Extended Consumer
Demand System 1979-90,” Japanese Economic Review, Vol. 48, No. 1, 1997, pp. 65~80.
〔2〕Bergstrom, T., “A Survey of Theories of the Family,” M. R. Rosenzweig et al. eds., Handbook of Population
and Family Economics, Vol. 1A, North-Holland, 1997, pp. 21~79.
〔3〕Deaton, A. and C. Paxson, “Economics of Scale, Household Size, and the Demand for food,” Journal of
Political Economy, Vol. 106, No. 5, 1998, pp. 897~930.
〔4〕DeJong, D. N., J. C. Nankervis, N. E. Savin, and C. H. Whiteman, “The power problems of unit root test in
time series with autoregressive errors,” Journal of Econometrics, Vol. 53, Issues 1-3, 1992, pp. 323~343.
〔5〕Dixit, A. K. and V. Norman, Theory of International Trade, Cambridge Univ. Press, 1980.
〔6〕岩村暢子『変わる家族 変わる食卓』勁草書房, 2003.
〔7〕柿野成美・草苅 仁「世帯規模の縮小と食料消費」
『家庭経済研究』No.11, 1998, pp. 46~51.
〔8〕草苅 仁「
「家計」の変容とコメ消費」
『米の流通・消費の変貌(平成 9 年度秋季特別研究会記録)
』農業総合
研究所, 1998, pp. 4~34.
〔9〕草苅 仁・柿野成美「
「家計」の変容とコメ消費」
『1998 年度日本農業経済学会論文集』1998, pp. 97~99.
〔10〕草苅 仁「需要理論と生産理論の連関による消費問題」宇都宮大学農学部農業経済学科教室研究会資料, 2001.
〔11〕Kusakari, H., “Wage Rate, Family Size, and Food Consumption of Household,”『神戸大学農業経済』36
号, 2003, pp. 9~17.
〔12〕草苅 仁「食料消費と家族形態」清水昂一・小林弘明・金田憲和編『コメ経済と国際環境』東京農大出版会, 2005,
pp. 97~112.
〔13〕草苅 仁「食の外部化と家族機能」
『2005 年度日本農業経済学会論文集』2006, pp. 271~275.
〔14〕森岡清美『現代家族変動論』ミネルヴァ書房, 1993.
〔15〕茂野隆一「食料消費における家事の外部化」
『生活経済学研究』19巻, 2004, pp. 147~158.
〔16〕Wong, K., International Trade in Goods and Factor Mobility, MIT Press, 1995.