【全訳】 夢を形作る3Dプリンター 「世界に一つ」を簡単に 壊れた部品再現 3Dプリンターは、データをもとに様々な立体物を作り出すことができることで知ら れている。ほとんどどんなものでも作れると注目を集めており、工業や研究開発の分野 で活用が進んでいる。 だが、最近では会社員や主婦までもがさまざまな目的に利用しているようだ。 「便座の洗浄ノズルの歯車が壊れた」 「高圧洗浄ホースの引き金が壊れたので直したい」 東京都中野区にある「あッ3Dプリンター屋だッ!!」には、連日このような相談が寄 せられている。 江東区のマンション管理人の女性も顧客の一人だ。エレベーターの操作ボタンの枠が 古くなり、割れてしまったという。 エレベーターのメーカーに連絡して修理を依頼したが、必要な部品が在庫切れ。操作 板を丸ごと交換すると 30 万円以上かかる。100 円ショップでプラスチック粘土などを 買って修理を試みたがうまくいかなかった。インターネットで3Dプリンターショップ を見つけるまでは、彼女は困り果てていた。 中野の同店を訪れると、 「3Dプリンターで簡単に作れますよ」と 35 歳の店員が言っ た。 寸法を測ってデータを入力すると、部品が次々にプリントアウトされた。費用は総額 で 4000 円だった。 「修理後の使い勝手も完璧です」と管理人の女性は語る。 「こんなに簡単に解決するな んて、信じられません」 昨年 8 月に、3Dプリンター活用のアイデアを競う初のコンペが都内で行われた。 目黒区在住の 40 代半ばの主婦は、我が子専用の哺乳瓶用オリジナル乳首を考案し、 イベントに参加した。乳児が哺乳瓶を嫌がったり、哺乳瓶に慣れすぎて母乳を飲まなか ったりする「乳頭混乱」の対策として、母親の乳首を3Dカメラでデータ化した。 ゴム質の柔らかい素材でこのオリジナル乳首をプリントアウトし、哺乳瓶に取り付け るというものだ。 彼女は 3 児の母である。「赤ちゃんは母親の乳首を形で認識しています。それで、本 物も人工のものも同じ形をしていれば混乱しないはずだと思いつきました」と話した。 コンペで最優秀賞に選ばれたのは、東京医療保健大学の山下和彦教授が応募した、子 供の足部発達支援プロジェクトだった。足の骨の変形は、子供の頃に歩き方を改善する 靴の中敷を使えば矯正できる。3Dプリンターで子供の足に合った形の中敷を作るのが ねらいだ。 山下教授のプロジェクトには、コンペの協賛企業から 100 万円の出資があり、実用化 に向けた開発が進められている。 (2)目黒区の主婦も企業の支援を受け、現在は乳幼児にとって安全な素材を模索中だ。 3Dプリンターを趣味で活用している人もいる。中野区在住の 36 歳の会社員は、ブ ロック玩具で車や建物を作って楽しんでいる。彼はただ完成品を飾って満足するだけで なく、走らせたり光らせたりしたいと思っていた。 そのために、彼は純正品のブロックと電子回路をつなげるオリジナルの部品を作った。 ブロック製なのにピカピカ光る灯台や、ラジコンのように動かせる車を完成させた。 「世界で一つのものができました」と彼は話した。 「記者さんも試しに何か作ってみた ら?」と言われ、良いアイデアが思い浮かばず迷ったが、趣味でやっている剣道の竹刀 につける鍔(つば)を作ることにした。 座右の銘である「克己心」という漢字のロゴを鍔に刻むことにした。データの作成も 簡単で、2 時間ほどで鍔が完成。簡単な作品ではあるが、オリジナルだと思うと何だか 嬉しくなった。 中野区産業振興推進機構のアドバイザーである山田真次郎さん(66)によると、3Dプ リンターの関連特許が来年期限切れするという。そのため、続々と新機種が発売される ことになる。 3Dプリンターは過去に銃の密造などで悪用されたこともあったが、正しく使えばい ろいろな恩恵があることが分かった。 いつか人工知能を組み合わせた立体物を作る技術が生まれたら、いつも家にいないと 怒っている妻のために私の分身を作るのもいいかもしれない。
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