CQ ham radio 1993 年 5 月号 291~295 頁 dBASE の本 dBASE の本 この連載では 1990 年 12 月号か ら 1991 年 3 月号にかけて、また 1991 年 10 月号で、 「ハムのトラン ジスタ活用」 (CQ 出版社刊)に出 てくる設計のためのプログラムを、 データベース操作用のソフトウェ アである dBASE のアプリケーシ ョン開発言語を使って開発し、紹 介しました。 その内訳は、 ①RF-PA の入出力回路の設計 ②トランジスタの放熱設計 ③T 型フィルターの設計 ④LC 共振回路の設計/L や C のリ アクタンスの計算 ⑤コアを使ったコイルの設計 となっています。 当時、何人かの方がこれらのプ ログラムに興味を示されましたが、 今度「技術者のための dBASE 活用 法」 (CQ 出版社刊)という本を一 冊書きました。 当時、プログラム・リストを見 ても何だかさっぱりわからなかっ た方で、今でも関心をお持ちの方 がありましたら、この本を参考に May 1993 していただければと思います。 今月はトランシーバー側の 今月はトランシーバー側の 受信機を作ってみます 受信機を作ってみます 先月号ではトランシーバーのリ モコンを本格的にやってみるため の計画(4 月号の第 1 図)をたて、 そのうちのリモート側を作ってみ ました。このリモート側は、かつ て大活躍した 144MHz のハンディ トランシーバー IC-2N に TRX ア ダプター(50MHz 用のクリコン) を付けるという形、まとめました。 そこで今月は、第 1 図に示した トランシーバー側の RX(受信機) を作ってみようと思います。 この計画ではリモート側の TX には IC-2N にダミーロードを付け たものを使うので、トランシーバ ー側の受信機は 144MHz の FM 電 波を受信することになります。4 月号で紹介した計画では周波数は 144.00MHz となっていますが、こ の周波数は流動的で、このあとの 製作によっては変更することもあ ります。 というわけで、トランシーバー 側の受信機は 144MHz の FM 受信 291 機でよいのですが、トランシーバ ーの送受信を切り替えるためのス タンバイ(STD-BY)操作の機能 を FM 受信機に用意しておく必要 があります。 トランシーバー側 トランシーバー側 受信機の計画 受信機の計画 「高周波デバイス規格表」(CQ 出版社刊)を見ると、144MHz 帯 の FM 受信機を作る場合に使える IC がいくつもみつかります。それ は、たとえば狭帯域 FM IF システ ムであったり、狭帯域 FM レシー バーであったりします。特に、狭 帯域 FM レシーバーのほうは、IC 1 個で FM 受信機ができ上がってし まいます。 今までにも 144MHz の FM 受信 292 機は何回か作りましたが、1991 年 7 月号で紹介した “50MHz シンプ ル FM 受信機” で使った MC3362 は狭帯域 FM レシーバー用の IC で、 この IC のおかげで本当に簡単に VHF の FM 受信機を作ることがで きました。 このときには MC3662 を初めて 使ってみるということもあって 50MHz でやってみましたが、その ときの成功に味をしめて、今回は MC3362 を 144MHz で使ってみよ うと思います。 MC3362 の詳細は「高周波デバ イス規格表」を見てください。中 身は第 1 IF が 10.7MHz、第 2 1F が 455kHz のダブルコンバージョ ン方式の FM 受信機になっていま す。第 1 局発は PLL 対応となって おり、これで 200MHz まで働きま すが、第 1 局発を外部に用意する と 450MHz まで使えます。 と、これくらいの予備知識をも とに 144MHz の FM 受信機を計画 してみたのが第 2 図です。 まず、RF 増幅はなくても、 MC3362 だけでも FM 受信機は作 れます。でも、リモート側の微弱 な電波を受信する関係で感度は良 いにこしたことはなく、そこで RF 増幅を 1 段設けることにしました。 次に、今回の受信機は 1 つの周 波数だけを受信できればよいので 第 1 局発を PLL にする必要はあり ません。そこで、第 1 局発は外部 から供給することにしました。 この FM 受信機の受信周波数は 第 1 局発の周波数で決まりますが、 X1 の水晶発振子に 3 倍オーバート ーンのものを使うとすると、その 周波数 fx1 は第 2 図に示したように なります。 今回は三器電子工業で入手でき たのがたまたま 44.447MHz のも のだったので受信周波数は 144.04MHz ということになります。 とりあえず、この水晶発振子を使 ってテストをしてみることにしま す。 第 2 MIX 以降は、すでに 50MHz シンプル FM 受信機で体験済みな ので、そのときにうまくいった回 路をそのまま使います。 CQ ham radio トランシーバーのスタンバイ操 作はトランジスタによる電子スイ ッチを使う方法もありますが、ト ランシーバーによってはうまくい かないかもしれません。ここでは すべての場合にうまくいくよう、 リレーを使うことにしました。 FM 受信機の音声出力は送信時 にトランシーバーのマイク端子に 加えますが、FM 受信機がうまく 働いているかどうかを確認するの にモニターできると便利なので、 モニター用としてライン・レベル の出力(約 0.5V)を持った OUT1 を設けました。なお、トランシー バーのマイク・レベルはライン・ レベルよりも 20~30dB 低いので、 トランシーバー用の OUT2 には 20dB(10 分の 1)のアッテネータ ー(ATT)とレベル調整用の VR を入れることにします。 トランシーバー側 トランシーバー側 受信機の作り方 受信機の作り方 では、第 2 図の計画にしたがっ てリモコン用 144MHz FM 受信機 May 1993 を作ってみることにしましょう。 第 3 図が全体の回路で、FET1 が RF 増幅、FET2 が第 1 局発です。 第 1 局発は、1 個の FET で 3 倍オ ーバートーン発振と 3 逓倍を同時 に行っています。 VR1 はスケルチ調整用で、前に 50MHz シンプル FM 受信機を作っ たときにはうまくいったのですが、 再現性の面ではいちばん心配なと ころです。結果は前と同じやり方 でとてもうまくいきました。 スケルチの出力は MC3362 のピ ン 11 から取り出しますが、 この出 力でトランジスタの 2SA1015 の電 子スイッチを ON/OFF し、リレー を働かせます。その動作は、電波 が入るか VR1 を調整することによ ってスケルチが開くと、リレーが 働きます。 ついでに、リレーのあいている 接点を使って、スケルチが閉じて いるときに OUT1 の出力を止める ようにしました。これで、無信号 時の雑音はカットされます。 電源は 12V で供給することにし たのですが、MC3362 の動作可能 な電源電圧の範囲は 2~7V で、標 準は 5V となっています。そこで、 5V の 3 端子レギュレーターを用 意しました。なお、最も電流を消 費するのはリレー(約 40mA)で すが、リレーの動作時でも全体の 電源電流は 50mA ほどですから、3 端子レギュレーターは 78L05 で十 分に使えます。 では、第 3 図に示した回路をそ っくりプリント板の上に作ること にして部品を集めましょう。 第 1 表がトランシーバー側受信 機の組み立てに必要な部品の一覧 です。MC3362 や 2 個のセラミッ ク・フィルターは、50MHz シンプ ル受信機を作ったときのものが余 っていたのでそのまま使いました。 水晶発振子は 2 個とも三器電子 工業で求めましたが、リモコンの システム全体をまとめるときには X1 のほうは指定の周波数のもの を作らなければならないかもしれ ません。今月のところは、受信周 波数は 144.04MHz ということで 293 テストを済ませることにします。 組み立てに必要な部品が揃った ら、プリント板を作ります。第 4 図にプリント・パターンを示して おきます。 プリント板の加工が終わったら、 部品を取り付けて組み立てます。 写真 1 に組み立てを終わったプリ ント板の全体の様子を、また写真 2 と写真 3 にそれぞれの部分の拡 大したものを示しておきます。 プリント板の組み立てが終わっ たら、VR1 を時計方向に一杯に回 してスケルチを閉じ、OUT1 にモ ニターとして1991年6月号で作っ た「万能オーディオ・アンプ」を つないで働かせてみました。 このときの電源電流は 15mA ほ どですが、VR1 を反時計方向に回 していくとスケルチが開いてリレ ーがカチンと働き(電源電流は 50 ~60mA)、モニターのスピーカー からは FM 特有のあのザーっとい 294 う雑音が聞こえてきました。この 雑音が出れば、まずはひと安心で す。 うまくいったら、ここで 2 つの 局発の調整をします。第 5 図はそ のやり方を示したもので、まず TP1 に周波数カウンターをつなぎ、 発振周波数を測りながら L4 や C3、 C4 を加減して第 1 局発を安定に発 振させます。そして、注入電圧が 最大になるように L5 を調整しま す。これで、第 1 局発の注入電圧 は 0.7~0.8V となりました。 3 倍オーバートーン発振の場合、 L4 や C1、C2 を調整してもあまり周 波数は変わりません。もし発振周 波数が希望する値からズレるよう なら、発振回路を指定して水晶発 振子 X1 を作る必要があります。 第 1 局発の調整が終わったら、 次は第 2 局発の調整です。実はモ トローラのデータブックに示され CQ ham radio た応用回路では C3 は 50pF、C4 は 120pF が指定されていたのですが、 周波数カウンターを TP2 につない で発振周波数を測ってみたら 800Hz ほど低くなりました。そこ で、C3 と C4 を調整して周波数を 合わせたみた結果が第 3 図に示し たものです。もし発振周波数がズ レるようなら、C3 と C4 を加減し てやります。でも、数百 Hz 程度 のズレなら、さほど気にすること はありません。 局発の調整が済んだところでア ンテナ端子(A)に 50cm ほどのビ ニール線を付け、IC-2N からの電 波を受信してみました。電波が受 信できたところで L1~L6 のコイル を調整しましたが、VR1 を回すと スケルチもうまく働き、144MHz FM 受信機はどうやらうまくでき May 1993 たようです。 * 来月は、第 1 図のトランシーバ ー側 TX を作り、トランシーバー のリモコン装置を完成させること にします。 295
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