CQ ham radio 1991 年 7 月号 400~404 頁 面白い移動無線用各種 IC 面白い移動無線用各種 IC 今年も年度版で発行されている CQ 出版社の「最新・高周波デバ イス規格表」のデータを更新する 時期を迎え、しばらくは各社のデ ータブックとにらめっこという毎 日でした。そんな中で気がついた のは、特定小電力をはじめコード レス電話、各種トランシーバー用 といった移動無線用の各種 IC が たくさん登場してきたということ です。 その中で私たちの役に立ちそう なものをひろってみると、交信用 では従来からある狭帯域 FM IF システムのほか狭帯域 FM 受信シ ステム、また送信用では FM 送信 システムやマイクアンプ・システ 400 ムといったものがあります。 というわけで、さっそく、東京 秋葉原に出かけて行き、これらの 中からモトローラの狭帯域 FM レ シーバーMC3362 と FM トランス ミッター・システム 2833 を買っ てきました。今月はこの中の MC3362 を使って、表題のような FM 受信機を作ってみたいと思い ます。 MC3362 という IC MC3362(写真 1)は、一口で いえばワンチップ FM 受信機(た だし、AF パワーアンプは内蔵し ていない)用の IC ということが できます。 MC3362 の最大定格や電気的 特性、応用回路については 1991 年度版の「高周波デバイス規格表」 を見ていただくとして、ピン配置 と機能ブロックは第 1 図のように なっています。 第 1 図を見ると、MC3362 の中 には第 1 周波数変換(第 1 ミキサ ーと第 1LO)、第 2 周波数変換(第 CQ ham radio 2 ミキサーと第 2LO)、IF 増幅/ リミッター、 それに FM 検波器(ク ワドラチャ検波)が入っているの がわかります。これで、第 1IF が 10.7MHz、第 2IF が 455kHz のダ ブルスーパー方式の FM 受信機が 作れます。 なお、MC3362 の仲間には、RF 増幅用のトランジスタを持った MC3363 があります。この IC も 使ってみたいと思います。 MC3362 の中には、そのほかに メーター・ドライブ/キャリア検出 回路、それにコンパレーターが入 っており、キャリア検出はスケル チに利用できます。また、コンパ レーターは FSK 検波のためのも ので、最近のこの種の IC はすべ てコンパレーターが入っていてデ ィジタル通信に対応できるように なっています。 し、体験することを目的にして、 失敗の少ない 50MHz の FM 受信 機を作ってみることにしました。 さて、新しいデバイスを初めて 使うときに参考になるのはデータ ブックに示された応用回路例です が、使用する周波数が違っていた り、あるいは応用回路とは違った 使い方をしようとするときには、 “あたり”をつける! あらかじめうまく働くかどうか製 この MC3362 を目の前にして、 作にとりかかる前に確認をする、 何を作ろうかとまず思案しました。 すなわち“あたり”をつけておか MC3362 には第 1 図でわかるよ なければなりません。 うに第 1 局発のところにバリキャ 実は、選局のための第 1 局発の ップ(ピン 23)が入っており、ピ 可変を内蔵バリキャップでやって ン 20 には第 1 局発の出力も出て みようと思ったのですが、これは いて PLL への対応が可能です。 あたりをつけておく必要がありま また、データブックを見ると第 1 す。また、キャリア検波を使って ミキサーは内部局発を使ったとき うまくスケルチが作れるかどうか、 200MHz 、 外 部 局 発 に す れ ば これもあたりをつけておく必要が 450MHz まで動作すると書かれ あります。 ており、144MHz の FM 受信機も このあたりをつける作業は、何 作れそうです。 もデータがなければ自分で実験を でも、MC3362 を使ってみるの してみるしかないのですが、今回 は初めてなので、その動作を確認 July 1991 はいい手本がみつかりました。 実は、ミニコミ誌の「The ほう むめいど」No.54 に MC3362 の使 用例が紹介されており、あたりを つけるのにピッタリです。 第 2 図は、あたりをつけるため にバリキャップ同調とスケルチ・ コントロールの部分を書き出した もので、なかなかうまい設計にな っています。ちなみに、R1~R3、 R7~R10 といったところの抵抗値 を決めるのは、けっこうやっかい な作業です。 「The ほうむめいど」 に敬意を表して、これらの値を参 考にさせてもらうことにしました。 なお、「The ほうむめいど」を 見ると、MC3362 のピン 10 を GND に落とすと壊れると書いて ありましたが、10μF のケミコン をつないだだけで 1 個オシャカに してしまいました。ピン 10 の箇 所は第 2 図(b)のようになって おり、トランジスタのべース・エ ミッタ間が壊れるのでしょう。 401 50MHz FM 受信機の作り方 第 3 図が、50MHz シンプル FM 受信機の回路です。オーディオ・ アンプには、もうすっかりおなじ みの TA7368P を使いました。 電源は、MC3362 と TA7368P ともに 2V から働くので電池式と してもよかったのですが、バリキ ャップ同調とする関係で 8~10V とすることにし、MC3362 には 3 端子レギュレーター(78L05)で 安定化した 5V を供給することに しました。 受信周波数は 51~52MHz とす ることにして、バリキャップ同調 の第 1 局発は 40.3~41.3MHz を カバーするように R1 を選びまし た。もしカバー範囲がズレるよう なら、この R1 をカット&トライし ます。 第 3 図を見ると VC という端子 402 がありますが、これは同調をバリ コンで行う場合に使うものです。 もしバリキャップ同調がうまくい かなかった(十分な周波数安定度 が得られなかった)らと思ってこ の端子を用意したのですが、使わ ずにすみました。 MC3362 のピン 20 は第 1 局発 出力となっており、周波数チェッ ク用のテスト・ポイント(TP1) として使えます。なおピン 20 は エミッタ出力となっているので、 負荷抵抗(3.3kΩ)をつながない と動きません。 第 2 局発は水晶発振の 10.245MHz で、ピン 2(TP2) で 周波数のチェックができます。 ピン 10 と 11 のスケルチ・コン トロールの部分は第 2 図(b)の R7~R10 はぴったりだったのです が、第 3 図の製作例では R10 の 100kΩを 68kΩに変える必要が ありました。このあたりも、カッ ト&トライが必要なところといえ るでしょう。 なお、ピン 10 はプラス側につ なぐぶんには安全ですが、マイナ ス(GND)側につなぐと確実に IC が壊れる(もっとも、スケルチ が効かなくなるだけであとは、完 全に働く)のでご用心!。 ついでに、TA7368P にスケルチ をかける方法について説明してお きましょう。 TA7368P を使ってスケルチを CQ ham radio かける方法については、本誌 1989 年 1 月号でそのやり方を考案しま したが、第 3 図の Tr が電子スイ ッチとなっています。この電子ス イッチが ON になると TA7368P の動作が止まり、スケルチが ON となります。 このスケルチ回路では MC3362 のピン 10 につながって いる 1μF やピン 11 から Tr の間 につながっているダイオード(D)、 それに 100μF のコンデンサーが ないと、スケルチの ON/OFF 時 にクリックが出たり動作が不安定 になったりします。 では、第 3 図の回路をそっくり プリント板の上に作ることにして 部品を集めましょう。 第 1 表が、50MHz シンプル FM 受信機のプリント板の組み立てに 必要な部品の一覧です。 本器の主役である MC3362 は 亜土電子と若松通商で求めました July 1991 が、 「トランジスタ技術」誌の広告 欄を見ると通販の中にもあります。 10.245MHz の水晶発振子も、特 別に注文しなくても既製のものの 中にあります。 フィルターとコイル(写真 2) については、たまたま本器の製作 中に発売された「トランジスタ技 術」誌の 1991 年 5 月号 660 ペー ジの亜土電子の広告にずらっと並 んでいます。 なお、CF2 の 455kHz のセラミ ック・フィルターは MC3362 の応 用回路例では CFU455D を使うよ うになっていますが、亜土電子の 広告には CFU455E と 455F しか ありません。このうちで使うとす れば CFU455E なのですが、㈲シ ーアール(電話 03-3251-9755)で CFU455D を入手できたので、こ ちらを使いました。 部品が揃ったら、プリント板を 作りましょう。第 4 図が、50MHz FM 受信機のプリント・パターン です。この中で、TP1 は抵抗器の リード線で兼用することにしまし たが、TP2 はピンを立てるように 403 してあります。 プリント板の加工が終わったら、 部品を取り付けて組み立てましょ う( 写真 3)。なお、本機では 455kHz と 10.7MHz の二つのセ ラミック・フィルターを使います が、ピンの接続は第 5 図のように なります。 働いたらケースに入れる プリント板の組み立てが終わっ たところで、TUNE や SQ、VR のボリューム、それにスピーカー を仮につないで働かしてみます。 うまく働いたら、まず最初にし なければならないのが、第 1 と第 2 の二つの局発の調整です。 第 6 図はそのやり方を示したも ので、 (a)の第 2 局発の調整から 行います。図のように TP2 に周波 数カウンターをつなぐと発振周波 数を表示しますから、もし大きく 周波数がズレているようなら Cを 加減して周波数を合わせます。 第 2 局発がうまくいったら、今 404 度は第 1 局発です。今度は(b) のように TP1 に周波数カウンター をつなぎますが、いきなりつなぐ と周波数が数十 kHz ほどズレま す。そこで TP1 と周波数カウンタ ーの間に 1pF(Cc)を写真 4 のよ うにつないでみたら、周波数のカ ウントもちゃんと行い、ズレもほ とんどなくなりました。 うまくいったら TUNE 用の VR をアース側いっぱいに回し、発振 周波数が 40.2~40.3MHz になる ように L2 のコアを調整します。こ れで、VR をプラス側にいっぱい に回したとき、41.3~41.4MHz になっていれば OK です。 ここまで調整が終わったところ でアンテナをつないでみたら、 50MHz FM が受信できました。 そこで、 ケースに入れてみました。 使ったケースはリードの PK-5 で、大きさは幅 120×高さ 55×奥 行 110mm というものでなかなか がっちりしたケースなので受信機 を組み込むにはピッタリです。 第 7 図は、ケースに入れるとき のつなぎ方を示したものです。 TUNE と SQ で使う可変抵抗器は どちらも B10kΩですが、TUNE のほうは 30φの大型のがっちり したものを使い、ツマミも 35φの 大きいものとしました。 できあがった結果は、こんな簡 単なものですからイメージ混信な どスプリアス特性はあまり良くあ りません。それと、第 2 局発の 10.245MHz の 5 倍の 51.225MHz もやはり受信できてしまいます。 でも、第 1 局発の安定度はとりあ えず FM 用と しては十分 で、 50MHz FM の SWL 用としては実 用になるものができました。 CQ ham radio
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