全球降水観測計画(GPM)

全球降水観測計画(GPM)主衛星搭載
二周波降水レーダ(DPR)とその利用
2012年2月9日
宇宙航空研究開発機構
宇宙利用ミッション本部
GPM/DPRプロジェクトマネージャ
小嶋正弘
全球降水観測計画(GPM; Global Precipitation Measurement)
全球降水観測計画とは、二周波降水レーダ(DPR)及びマイクロ波放射計(GMI)を搭載したGPM主衛星と、マイクロ波放
射計またはマイクロ波サウンダを搭載した複数のGPM衛星群により、気候変動・水循環変動の解明のため、全球降水の
高精度・高頻度観測を行う国際協力ミッション
GPM:Global Precipitation Measurement
DPR: Dual-frequency Precipitation Radar
GMI: GPM Microwave Imager
地球全体の降水観測
P2
地球観測衛星長期計画
~2005
(~H17)
打上げ年度(目標)
[光学放射計]
MOS-1, ADEOS
(87~95) (96~97)
災害監視 &
資源管理
[光学センサ, 合成開口
レーダー]
JERS-1 (92~98)
気候変動 &
水循環観測
水循環
[降雨レーダ]
PR (97~)
[マイクロ波
放射計]
MOS-1(87~95)
ADEOS2/AMSR(2003
2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018
(H18) (H19) (H20) (H21) (H22) (H23) (H24) (H25) (H26) (H27) (H28) (H29) (H30)
ALOS-2 レーダ
[国土・災害モニタリング]
ALOS/PALSAR
ALOS 「だいち」
ALOS/PRISM AVNIR2
TRMM
ALOS-3 光学
TRMM/PR
GPM/DPR
[降水]
Aqua
Aqua/AMSR-E
[風, 水温 , 水蒸気]
GCOM-W1「しずく」/ AMSR2
[植生, エアロゾル, 雲, 水温, 海色]
気候変動
[光学放射計]
MOS-1, ADEOS
(87~95) (96~97)
ADEOS2/GLI
GCOM-C1/ SGLI
250m, 二方向, 偏光
[雲・エアロゾル 3D構造]
EarthCARE/CPR
[雲レーダ]
温室効果ガス
開発運用段階
GOSAT 「いぶき」
[CO2, メタン]
[分光計]
ADEOS/ILAS
(96~97)
ADEOS2/ILAS2
運用中
[CO2, メタン]
GOSAT-2
フェーズB~
フェーズA
運用期間延長
GPM主衛星の概要と開発分担
GPM主衛星は宇宙航空研究開発機構(JAXA)と米国航空宇宙局(NASA)の共同開発であり、JAXAは情報通信研究
機構(NICT)と協力してDPRの開発を行う
GPM主衛星
GMI : NASAの開発するマイクロ波放射計
GPM全体計画における各国・機関の担当
KaPR:Ka帯降水レーダ
KuPR:Ku帯降水レーダ
DPR:二周波降水レーダ
P4
GPM衛星群(GPM計画に参加する国際協力パートナー)
衛星名
開発国
開発機関
ステータス
熱帯降雨観測衛星
(TRMM)
米国
NASA
日本
NASDA
全球降水観測計画
主衛星(GPM)
米国
NASA
日本
JAXA
メガトロピーク衛星
(Megha-Tropique)
インド
ISRO
フランス
CNES
DMSP衛星
米国
DOD
運用中。2012年、2014年
に後継機打上げ予定。
GCOM-W
日本
JAXA
2012年打上げ
MetOp衛星
欧州
EUMETSAT
NOAA衛星
米国
NOAA
運用中
2014年始め打上げ予定
運用中
METOP A運用中。Bは
2012年5月打上げ予定。
運用中。
NASA
NPP衛星
米国
NOAA
運用中
DOD
JPSS衛星
米国
NASA
NOAA
開発中。2016年に初号
機打上げ予定。
P5
雨の観測に特化した衛星~TRMMからGPMへ~
熱帯降雨観測衛星(TRMM) 搭載 降水レーダ(PR)の成果( 1997年打上げ、現在も運用中)
3D観測
降雨レーダによる月積算降水量
エルニーニョ 1998年1月
2005年8月、ハリケーン カトリーナの観測事例
ラニーニャ 1999年1月
 世界で初めての宇宙からの高精度レーダ観測により、降水システムの三次元構造、
エルニーニョ等を解析。
 熱帯・亜熱帯地域における降水分布の均質で正確な観測(14年超のデータ蓄積)
 洪水予測、数値天気予報、台風経路予測等への利用が拡大
TRMMからGPMへ
 降水レーダ(PR) から 二周波降水レーダ(DPR)
・より弱い雨まで観測可能(0.7mm → 0.2mm の大幅な感度向上)
・二つの周波数を用いることで精度を向上、さらに雨雪を識別可能
 熱帯降雨観測衛星(TRMM) から 全球降水観測計画(GPM)
・観測範囲を、熱帯・亜熱帯地域から 高緯度地域まで拡大し、
GPM主衛星により全球の降水観測が可能。
・GPM衛星群を導入することで、地球全体を短い時間で観測(約3時間)
・精度の高いDPRを基準として、GPM衛星群の精度を向上
高精度・高頻度の
全球降水観測を実現
これまでよりさらに高精度な
全球降水マップを提供
P6
GPM計画におけるDPRの役割・重要性
DPRによる高精度・高感度・3次元的な降水観測
→GPM主衛星のみならず、GPM衛星群からの降水量の推定精度を向上させる。
 DPRは降水観測に関する世界中の衛星(GPM衛星群)の基準になる
 TRMM搭載の降雨レーダ(PR)は「空飛ぶ雨量計(Flying Rain Gauge)」と言われており、
DPRは、それをさらに高度化した「次世代の空飛ぶ雨量計」となる
P7
DPRの概要
Ku帯降水レーダ:KuPR
周波数:13.6GHz(波長2.2cm)
寸法:2470 x 2425 x 637 mm
重量:約403kg
Ka帯降水レーダ:KaPR
周波数:35.55GHz(波長
8.4mm)
寸法:1440 x 1185 x 802 mm
重量:約302kg
↑地球方向↑
KuPRとKaPRの組み合わせ試験
宇宙用降雨レーダ技術はTRMM搭載降雨レーダ(PR)で培った日本独自の技術
DPRはTRMMのレーダを更に高度化した世界で唯一(one and only)
P8
DPRの観測と特徴
感度:0.2mm/h(TRMM降雨レーダの
0/7mm/hから大幅に向上)
地表面空間分解能:5km
•
アンテナから電波を照射して、雨から反射される電波
の強さを図ることで、降雨を直接的に観測。
•
電波のビームを電気的に走査し、電波が雨から反射
され戻ってくる時間を測ることで、雨を3次元で観測。
•
KaPRにより高い感度で雨を観測感度が高いので緯
度の高い地域の弱い雨の観測や雨と雪の識別が可
能となる。
•
KuPRにより熱帯・亜熱帯で降る強い雨を観測
•
KuPRとKaPRの組合せにより熱帯の強い雨から高緯
度帯の弱い雨までを高感度で観測。
•
KuPRとKaPRの電波ビームの照射方向を合わせるこ
とにより、同じ雨を2つの周波数で同時に観測。情報
量が増えることにより雨の推定精度が大幅に向上す
る。
観測幅:245km(KuPR)
125km(KaPR)
氷晶
雪
融解層
雨
P9
DPRの軌道上観測
動画
P10
開発スケジュール
FY14 FY15 FY16 FY17 FY18 FY19 FY20 FY21 FY22 FY23 FY24 FY25 FY26 FY27 FY28
年度
主要マイルストーン
SAC評価 プロジェクト
(開発研究)移行前審査
研究開発フェーズ
研究
1.GPM/DPRプロジェクト
システム設計
概念設計
予備設計
確認会
SAC評
(開発)
予備設計
PQR/
PSR
CDR
開発研究
詳細設計
維持設計
EM
STM
PFM
KaPR
STM
初期運用
EM (NICT)
2.ミッション運用系
概念設計
3.利用研究系
システム設計・製作・試験
システム検討
システム試作
4.利用推進
インテグ・
MST
運用訓練
システム開発
アルゴリズム改良・検証・利用研究
PDR
概念設計
予備設計
利用推進
初期検討
SDR
基本設計
打上げサービス調達
CDR
詳細設計
定常運用
試験運
用
予備調査
5.打上げ
6.衛星バス(NASA)
衛星システム試験
PFM
BBM (NICT)
定常運
終了審
開発
打上げ
完了審査
定常運用移行審査
開発
基本設計
BBM
KuPR
PDR
FM製作・試験
PQR/PSR
衛星システム試験
 本年3月末に米国でDPRをNASAへ引渡し予定
 GPM主衛星は2014年はじめに打上げ可能なようにNASAで開発中
P11
複数の衛星による全球降水観測
動画
P12
GPMデータの現業利用・応用利用

水資源管理・風水害防災
⁃

天気予報精度や台風進路予測精度向上
⁃

準リアルタイムでの数値予報モデル利用
地球温暖化、気候変動の研究
⁃

洪水予測、河川管理、ダム貯水量の調節、農業用水の
確保
気候変動に伴う降水量、雨域の変動のモニタリング、気
候モデルの検証
世界的の自然災害の3分の2が洪水/豪雨災害
農業生産性予測
(利用例)国際洪水ネットワーク(IFNet)開発による
全球洪水予警報システム (GFAS)
GPM全球降水マップ
国際洪水ネットワーク(IFNet)
洪水となりうる降水量である可能性
の推定
現在の降水量
> 洪水可能性の推定
食は生活の基本
E-mail
各国の防災機関
台風の予測精度精度向上
P13
地上雨量計の分布
地上雨量観測網が不十分な発展途上国
雨量計の無い海上や砂漠、人の殆どいない未開地域
GPMによる
降水観測データが有効
P14
2011年タイ洪水に関連する衛星降雨観測例
昨年、タイのチャオプラヤ川流域で、
大洪水が発生し、タイ国や日本企業
も多大な影響を受けた。
2011/10/1~9の東南アジアの衛
星降雨観測(全球降水マップ)
国土交通省 平成23年10月21日の
報道発表「タイにおける洪水の状況
について」において全球降水マップ降
雨データも利用された。
全球降水マッ
プでの降水分
布(2011年6
月から9月ま
での積算)
2011年と2010年
の比較:
赤:2011年の方が
多い地域
青:2010年の方が
多い地域
P15