平成14年度 事業報告書

1−3
平成14年度
独立行政法人国立美術館
東京国立近代美術館フィルムセンター
事業報告書
1
(フィルムセンター)
目 次
フィルムセンターの概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅰ 業務運営の効率化に関する目標を達成するためにとるべき措置・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅱ 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成するためにとるべき措
置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.収集保管・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1)美術作品の収集(購入・寄贈・寄託)の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2)保管の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(3)修理の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.公衆への観覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1)展覧会・企画上映の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「所蔵外国映画選集:追憶のスター女優たち」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「日本映画の発見Ⅶ:1970年代(1)」、「日本映画の発見Ⅶ:1970年代(2)」・・
「こども映画館:2002年の夏休み」、「こども映画館:2003年の春休み」・・・・・
「韓国映画−栄光の1960年代」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「シネマの冒険:闇と音楽 2003」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「逝ける映画人を偲んで 1998−2001(1)」・・・・・・・・・・・・・・・・・
「資料で見る日本映画史:みそのコレクションより」展・・・・・・・・・・・・・・・・・
「展覧会 映画遺産−東京国立近代美術館フィルムセンター・コレクションより」展・・・・
「優秀映画鑑賞推進事業」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「映画文化に関する国際交流」(国際映画祭出品協力事業)・・・・・・・・・・・・・・・
(2)貸与・特別観覧の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3.調査研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.教育普及・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1)−1 資料の収集及び公開(閲覧)の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1)−2 広報活動の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1)−3 デジタル化の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2)−1 児童生徒を対象とした事業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2)−2 講演会等の事業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(3)−1 研修の取組・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(3)−2 大学等との連携・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(3)−3 ボランティアの活用状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(4) 渉外活動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5.その他の入館者サービス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
(フィルムセンター)
フィルムセンターの概要
1.目的
フィルムセンターは、昭和27年の近代美術館開館当初にフィルム・ライブラリーとして発足した。その
文化的、芸術的、歴史的価値に鑑みて、映画についても美術館の対象領域と位置付けられたものである。
フィルムセンターは、同種の施設が皆無であることもあり、映画に関する総合的な歴史博物館として映
画フィルムや映画の関連資料を可能なかぎり網羅的に収集、保管、公開し、わが国の映画文化全般にわた
って中枢的な研究・普及機関としての役割を担っている。
発足した当時は、美術展に関連した美術映画を週1、2回程度上映するとともに主に劇映画フィルムの
収集を行っていた。昭和37年にフランスとの交換映画祭を開催したことを契機に、以後諸外国との交換
映画祭が活発に開催されるようになり、上映活動も1日1回程度に拡充された。また、同時に諸外国で開
催される映画祭での日本映画上映のためにフィルム収集が活発に行われるようになった。
その後、昭和42年から3年間、戦後GHQに接収された可燃性の日本映画の返還が行われ、これの不
燃化作業が実施されることで、所蔵映画フィルムの充実が図られた。昭和44年の美術館の移転に伴い、
昭和45年にはフィルム・ライブラリー業務の拡充と上映施設及び映画に関する展示室が整備されてフィ
ルムセンターとして開館した。昭和61年に映画フィルム専用の保存施設が神奈川県相模原市に設置され
た。平成7年には旧施設の全面改築によって施設規模も拡充し、収集・保存・上映事業も充実して、今日
に至っている。
2.土地・建物
(1)フィルムセンター
建面積
727㎡
延べ面積
6,912㎡
展示面積
343㎡
収蔵庫面積
341㎡
(2)フィルムセンター相模原分館
建面積
1,311㎡
延べ面積
4,344㎡
保存庫面積
2,022㎡
3.定員
11人
4.予算
567,511,489円
3
(フィルムセンター)
Ⅰ 業務運営の効率化に関する目標を達成するためにとるべき措置
中期計画
1 職員の意識改革を図るとともに、収蔵品の安全性の確保及び入館者へのサービスの向上を考慮しつつ、運営費交
付金を充当して行う事業については、国において実施されている行政コストの効率化を踏まえ、業務の効率化を進
め、中期目標の期間中、毎事業年度につき新規に追加される業務、拡充業務分等を除き1%の業務の効率化を図る。
(1) 各美術館の共通的な事務の一元化による業務の効率化
(2) 省エネルギー、廃棄物減量化、リサイクルの推進、ペーパレス化の推進
(3) 講堂・セミナー室等を積極的に活用するなど施設の有効利用の推進
(4) 外部委託の推進
(5) 事務のOA化の推進
(6) 連絡システムの構築等による事務の効率化
(7) 積極的な一般競争入札を導入
2 外部有識者も含めた事業評価の在り方について適宜、検討を行いつつ、年1回程度事業評価を実施し、その結果
は組織、事務、事業等の改善に反映させる。また、研修等を通じて職員の理解促進、意識や取り組みの改善を図っ
ていく。
○実 績
1.業務の一元化
本部において、これまで行っている一元化に加え、情報公開制度の共通的な事務を一元化した。
2.省エネルギー等(リサイクル)
(1)光熱水量
① フィルムセンター
光熱水量(料)の節約・効率化の推進を行っているが、平成13年度9月までフィルムセンター内に本館の
事務所が設置されていたこともあり、使用量の指標となる数値の設定が困難であったが、電気設備の改善
により基本料金の削減により、節約を図った。
ア.電気 使用量 924,224kwh(前年度比 95.35%) 料金 20,044,758円(前年度比 85.38%)
イ.水道 使用量 3,274 m3(前年度比 88.65%) 料金 1,921,171円(前年度比 85.70%)
② 相模原分館
適用料金が低廉な電力供給契約への見直しにより、電気料金の低減を図った。
ア.電気 使用量 962,600kwh(前年度比 90.60%) 料金 13,567,984円(前年度比 69.88%)
冷温水タンクの清掃作業により前年度より増加した。
26,388円(前年度比 114.26%)
イ.水道 使用量
139 m3(前年度比 106.92%) 料金
(2)廃棄物処理量
① フィルムセンター
産業廃棄物の経費が増となったのは、新たにフィルムの廃棄処理(破砕処理)を行ったためである。
ア.一般廃棄物 4,110Kg(前年度比 59.74%) 料金 149,310円(前年度比 75.80%)
イ.産業廃棄物 4,030Kg(前年度比 69.48%) 料金 638,910円(前年度比 317.92%)
②相模原分館
ア.一般廃棄物
− Kg(前年度比 − %) 料金
− 円(前年度比
− %)
イ.産業廃棄物
− Kg(前年度比 − %) 料金
− 円(前年度比 − %)
(3)その他 古紙の再利用、OA機器用のトナーカートリッジのリサイクルによる再生使用。
3.施設の有効利用
小ホールの利用率 11.23% (41日/365日)
相模原分館映写ホールの利用率 2.47% (9日/365日)
4.外部委託
1 清掃業務 4 大ホールの映写業務
2 機械設備等維持及び運転管理業務 5 夜間及び休館日の機械警備業務
3 受付、出札、警備等の会場管理業務 6 その他、設備関係のメンテナンス業務
5.OA化
館内LANの整備状況
4
(フィルムセンター)
フィルムセンター事務室、映写室、図書室、収蔵庫等の館内LAN及び相模原分館とのISDN回線を利
用した通信が整備されており、職員へパソコンを各1台配置し、館内、相模原分館及び本館等に電子メール
による事務連絡等を行った。
・紙の使用量 A4判 162,500枚(前年度比135%)
B4判
17,500枚(前年度比140%)
6.一般競争入札
映画フィルムの購入契約は、著作権者との契約による購入となるため、競争入札では入手できない。
そのほかは東京国立近代美術館に含まれる。
7.評議員会,外部評価委員会
(1)評議員会
①開催回数 1回
②議事内容 平成13年度事業報告及び平成14年度事業計画
8.特記事項
研修等を通じて職員の理解促進、意識や取り組みの改善については、放送大学通信教育の簿記入門の受講し、
職員資質の向上を図った。
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
光熱水量等数値的には増減があるが全般的に年度計画に沿った効率化を達成できた。
【見直し又は改善を要する点】
小ホールについては、入場者数とホールの収容可能人数の関係から、企画上映での使用が困難であり、また、相模
原分館ホールについては、限られた人員での運営のため、積極的な活用が推進できておらず、今後、外部との連携を
含めた活用方法等について検討を重ねる必要があると考える。
紙の使用量については、新たなこども映画館の事前広報(申込案内)として各校へ配布したこと、また、講演会で
の講演資料の印刷が増えたことによる。
【計画を達成するため障害となっている点】
入場者数や、季節の寒暖によって、光熱水量が増減することとなり、それを正確に把握することは困難である。
Ⅱ 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成す
るためにとるべき措置
1.収集・保管
5
(フィルムセンター)
(1)美術作品の収集(購入・寄贈・寄託)の状況
中期計画
(1)-1 体系的・通史的にバランスのとれた収蔵品の蓄積を図る観点から、次に掲げる各館の収集方針に沿って、外部
有識者の意見等を踏まえ、適時適切な収集を図る。また、そのための情報収集を行う。
(東京国立近代美術館)
近・現代の絵画・水彩・素描、版画、彫刻、写真等の作品、工芸作品、デザイン作品、映画フィルム等を収集する。
美術・工芸に関してはコレクションにより近代美術全般の歴史的な常設展示が可能となるように、歴史的価値を有
する作品・資料を収集する。
また、映画フィルム等については、残存するフィルムを可能な限り収集するとともに積極的に復元を図る。
(1)-2 収蔵品の体系的・通史的なバランスの観点から欠けている分野を中心に、寄贈・寄託品の受け入れを推進する
とともに、その積極的活用を図る。
○実 績
1.購入
208件
2.寄贈 6,124件
3.寄託
−件
4.陳列品購入費 予算額 115,708,000円
決算額 91,688,754円
5.特記事項
寄付・寄贈の有効な収集方法の検討については、現在文化庁が設置した「映画振興に関する懇談会」で検討さ
れている「法定納付制度」の導入に関する提言を踏まえ、文化庁と協議の上、今後も継続的に検討して行く。
○自己点検評価
当フィルムセンターにおける映画フィルムの収集状況は,平成14年度末現在、日本映画27,652本、外国映
画7,002本である。これらの映画は、
〈劇〉
〈文化・記録〉
〈ニュース〉
〈アニメーション〉
〈テレビ〉といった分
野別に収集されている。いずれの場合も全製作本数自体の正確な数が不明であるため、その収集率を示すことはでき
ないが、日本劇映画を例にとると、これまでの製作本数を戦前13,000作品、戦後15,000作品とした場合
のフィルムセンターの収集率は全体で14%程度と推定される。
【良かった点、特色ある取組み】
美術作品と異なり、映画フィルムは複製物という物理的な特質から、本来は残存している全ての映画フィルムを収
集することが可能であるが、限られた予算の範囲で収集を行うことから、散逸又は劣化が懸念されるものの購入や不
燃化を優先的に行いながら、映画芸術的に優れた作品,映画史的に重要な作品及びフィルムセンターの事業を実施す
る上で必要な作品等を収集するという基本的方針に基づいて収集を行っている。
また、上映や複製等の権利は、全て著作権者に帰属していることから、著作権保護期間にある映画フィルムの収集
は、製作会社等の著作権者から入手することが殆どであり、著作権保護期間が満了しているものや製作会社が既に解
散され著作権継承者が不明なものについては、個人コレクター等から収集することが多い。
平成14年度は、
企画上映および収蔵作品の充実のため日本映画各社の劇映画を中心とした作品を購入するととも
に、日本映画新社等の文化・記録映画、岡本忠成の人形アニメーションの購入を行った。また、平成8年及び平成1
0年に調査・確認されたロシア所在の戦前日本劇映画および文化・記録映画の購入も前年に引き続き行った。
映画フィルムの寄贈に関して、日本劇映画については個人コレクターより『斬人斬馬剣』など貴重な作品の寄贈を
受けるとともに、これまでと同様、文化庁優秀映画受賞作品の一部である4作品について寄贈を受けた。また、FI
AF会員であるジョージ・イーストマン・ハウスとの交換寄贈を行うとともに、ワーナー・ブラザース社より外国劇
映画152作品の大量の永久貸与を受けた。
社団法人映像文化製作者連盟を通した呼びかけに応じて平成13年度より始まった、戦後製作された日本文化・記
録映画などの原版フィルムの寄贈は、平成14年度において飛躍的に増大し、9社から2、223作品(4、785
本)にのぼる大量の寄贈を受けた。日本文化・記録映画の散逸を防ぎ、映像文化・映像資料として将来の活用に備え
ることを目指して始まった今回の事業を、今後とも着実に進展させていきたい。
【見直し又は改善を要する点】
今年度受け入れた映画フィルム数は、通常年間に受け入れる作品数の5∼6倍になる膨大なものであり、これらを
分類・収納するためのフィルム編集機の整備や要員の確保が必要である。
図書と逐次刊行物を除く映画関係資料の収集について、平成14年度は先駆的ニュース映画キャメラマン、白井茂
6
(フィルムセンター)
のプライヴェート・アルバム54冊など6件の寄贈手続きを終えているが、
これらは新規収蔵資料のごく一部である。
映画人の遺品「一式」やコレクターの収集品「一式」
、映画会社が手放した機材「一式」など、大型の寄贈が相次
いでいるため、整理作業、目録化の作業が遅れ気味である。国内に同種機関が少ないこともあり、フィルムセンター
の知名度の向上とともに寄贈の申し込みは増加の一途をたどっており、
スムーズな受け入れや公開を行うための環境
づくりが今後の課題となる。
【計画を達成するために障害となっている点】
製作者が所有しているフィルム以外で残存する映画フィルムについて、
新たなる発見を積極的に実施していくため
には、この分野における国内での情報ネットワークの構築が必要なことが上げられる。
* 添付資料
収集した美術作品件数の推移(定量的数値推移一覧表 p.1)
7
(フィルムセンター)
(2)保管の状況
中期計画
(2)-1 国民共有の貴重な財産である文化財を永く後世へ伝えるとともに、
展示等の美術館活動の充実を図る観点から、
収蔵品を適切な環境で管理・保存する。また、保存体制の整備・充実を図る。
(2)-2 環境整備及び管理技術の向上に努めるとともに、展示作品の防災対策の推進・充実を図る。
○実 績
1.温湿度
(1)フィルムセンター
①展覧会場
空調実施時間
9:30∼18:00
温度 22℃±2℃(ただし、夏季は24℃±2℃) 湿度 50%±5%
*原則として設定された温・湿度で管理を行っているが、外気温度との差により入館者のために最高25℃ま
でを許容温度としている。
*24時間空調が望ましいが、経費等を考慮して入館時間のみの運転時間としている。
②収蔵庫(24時間空調か否か)
空調実施時間 10:00∼20:00(ただし、土・日・月曜日は10:00∼18:00)
温度 23℃±2℃ 湿度 55%±5%
*設備管理要員がいる間のみの運転としているが、地下3階に位置し、収蔵庫に出入りがない場合は、殆ど温・
湿度に変化が生じない。
(2)相模原分館
①収蔵庫(24時間空調か否か)
空調実施時間 24時間
(地下1階保存庫)温度10℃±2℃ 湿度40%±5%
(地下2階保存庫)温度 5℃±2℃ 湿度40%±5%
(特別保存庫)
温度 2℃±2℃ 湿度35%±5%
2.照明
フィルムセンター7階展示室内のポスター、スチル写真等は100ルックスを上限とするとともに入館者の有無
を自動的に感知して照明の起動が行われるように設定し、作品への影響の低減化及び省エネルギー化を行ってい
る。
3.空気汚染
空調熱源に関しては、全て電気で賄っているため、施設設備からの空気汚染は発生していない。
4.防災
(1)フィルムセンター収蔵庫の消火設備は二酸化炭素消火設備を設置
(2)相模原分館保存庫の消火設備はハロゲンガス消火設備を設置
5.防犯
(1)フィルムセンターは,各階毎の機械警備(昼夜)の導入により、防犯を実施。
(2)相模原分館は,各棟毎に機械警備(昼夜)の導入により、防犯を実施。
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
映画フィルムは化学的に脆弱なため、専用の保存庫を備えるフィルムセンター相模原分館において24時間体制で
保存している。具体的にはモノクロ・フィルムは室温摂氏10℃±2℃、湿度40%±5%に設定し、カラー・フ
ィルム及びネガティヴ・フィルムは室温摂氏5℃±2℃、湿度40%±5%に設定して保存している。また、アセ
テート・ベースのフィルムに顕著な劣化現象である「ビネガー・シンドローム」に冒されたフィルムについては、独
立の空調設備を備え、室温摂氏2℃±2℃、湿度35%±5%に設定された専用室において保存をしているため、
135
(フィルムセンター)
フィルム素材の所蔵品については、問題ないと考えている。
また、相模原分館からのフィルムの出入庫に関しては、外気温度との関係で結露等を防止するため、ならし室で2
∼4日程度(季節により所要日数が変化する。
)ならした上で搬出している。フィルムセンターと相模原分館との間
のフィルム運送については、湿度管理が可能な専用のキャスター付フィルム保管庫(1台当たり2,000フィート
缶40缶収納)を美術品専用車両で運搬している。
【見直し又は改善を要する点】
映画フィルムの保存状況については万全を期しているが、ここ数年の寄贈映画フィルムの新収集数が膨大となって
いるため、既に収納されているフィルムの保存調査が殆ど行えない状況となっているため、今後この点に関して整備
をする必要がある。
映画関係資料の保存及び展示においては経費及び管理体制の面から24時間空調になっていない。現在のところ保
存上の問題は生じていないが、映画関係資料は、カメラ・映写機・ポスター・スチル写真・パンフレット・セル画等
の様々な材質のものがあり、今後とも作品への影響を考慮に入れ、適正な保存環境の調査・検討を行っていく。
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(フィルムセンター)
(3)修理の状況
中期計画
(3)-1 修理、保存処理を要する収蔵品等については、保存科学の専門家等との連携の下、修理、保存処理計画をたて、
各館の修理施設等において以下のとおり実施する。
① 緊急に修理を必要とする収蔵品のうち、緊急性の高いものから各分野ごとに計画的に修理を実施。
② 伝統的な修理技術とともに科学的な保存技術を取り入れて実施。
(3)-2 国内外の博物館等の修理、保存処理の充実に寄与する。
○実 績
1.映画フィルム洗浄
22作品(所要経費:1,342,791円)
映画フィルムデジタル復元
1作品(所要経費:5,481,600円)
2.修理の記録
洗浄を実施した映画フィルムに関しては、所蔵作品データベース上へ記録を行っている。
3.修理費
予算額 11,835,000円
決算額 6,824,391円
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
フィルムセンターにおいて「収蔵品の修復」とは、映画フィルムの「修復・復元」を意味する。これは、1本しか
所蔵していないプリント、
もしくは状態の不安定なプリントからネガティヴ、
マスター等の保存用フィルムを作製し、
そこから上映用プリントを複製するものであり、現像会社の技術者との緊密な協力の下に、フィルムの化学的な側面
と映画作品の内容的な側面を精査しつつ行っている。
平成14年度は、昨年度に引き続いて、これまでロシアから収集した国内に存在が確認できていない戦前期の日本
映画のうち、14作品について保存用ネガフィルムを作製し、保存用プリントとともに収蔵することができた。
また、初期の特殊なカラー技術を復元する試みとして、
「海辺の風景」
「菅原伝授手習鑑」
「一谷嫩軍記」の復元を
行い、フィルム復元の範囲を広げることができたほか、関東大震災関連の映像として、
「大震災と三井」ほか3本の
復元・保存を行い、記録映像のコレクションの充実を図った。
フィルムの洗浄作業は、既に所蔵している映画フィルムを対象として上映事業への利用に合わせて行い、今年度は
22作品の洗浄となった。
デジタル技術による復元については、平成15年度に予算が認められたが、試験的に9.5mmフィルムの「斬人
斬馬剣」から35mmフィルムへのデジタル復元を行い、従来のアナログ技術での復元では困難な点も克服できるこ
とが判明した。
【見直し又は改善を要する点】
映画フィルムの洗浄(クリーニング)については、定期的且つ計画的に実施できることが望ましいが、
「保管の状
況」における「自己点検評価」と同様な理由から、既に収納されているフィルムの保存調査が殆ど行えない状況とな
っていることや経費的な面を含めて検討をする必要がある。
デジタル技術を活用した修復・復元技術については、まだ実験的な点が多く、今後とも調査検討を重ねる必要があ
るが、併せてデジタル媒体での保存についても調査することが重要となる。
【計画を達成するために障害となっている点】
フィルムとデジタルの両方の技術を有している国内大手の現像所であっても、デジタルによる修復や復元と言った
面に関する実績や部署がないため、現在のところ海外の現像所等に頼らざるを得ない状況となっている。
* 添付資料
修理した美術作品の点数 (定量的数値推移一覧 p.3)
137
(フィルムセンター)
2.公衆への観覧
(1)展覧会・企画上映等の状況
中期計画
(1)-1 国民のニーズ、学術的動向等を踏まえ、各館において魅力ある質の高い常設展・企画展や企画上映を実施する。
(1)-2 常設展においては、国立美術館の各館の特色を十分に発揮したものとするとともに、最新の研究結果を基に、
美術に関する理解の促進に寄与する展示を実施する。
(1)-3 企画展等においては、積年の研究成果の発表や時機に合わせた展示を企画し、学術水準の向上に寄与するとと
もに、国民のニーズに対応した展示を実施する。企画展等の開催回数は概ね以下のとおりとする。なお、実施にあ
たっては、国内外の美術館及びその他の関連施設と連携を図るとともに、国際文化交流の推進に配慮する。
(東京国立近代美術館)
フィルムセンター 年5∼6番組程度
(1)-4 展覧会を開催するにあたっては、開催目的、期待する成果、学術的意義を明確にし、専門家等からの意見を聞
くとともに、入館者に対するアンケート調査を実施、そのニーズや満足度を分析し、それらを展覧会に反映させる
ことにより、常に魅力あるものとなるよう努力する。
(1)-5 各館の連携による共同企画展、巡回展等の実施について検討し推進する。
(1)-6 収蔵品の効果的活用、地方における鑑賞機会の充実を図る観点から、全国の公私立美術館等と連携協力して、
地方巡回展を実施する。
なお、中期目標の期間中毎年度平均で平成12年度の実績以上の入館者数となるよう努める。
また、公立文化施設等と連携協力して、収蔵映画による優秀映画鑑賞会を実施する。
(2) 収蔵品については、その保存状況を勘案しつつ、国内外の美術館・博物館その他これに類する施設に対し、貸与
等を積極的に推進する。
(3) 入館者数については、各館で行う展覧会ごとに、その開催目的、想定する対象層、実施内容、学術的意義、良好
な観覧環境、広報活動、過去の入館者数の状況等を踏まえて目標を設定し、その達成に努める。
○実
績(総括表)
1.企画上映等 8番組(中期計画記載回数:年5∼6番組)
①「所蔵外国映画選集:追憶のスター女優たち」
②「日本映画の発見Ⅶ:1970年代(1)」
③「日本映画の発見Ⅶ:1970年代(2)」
④「こども映画館:2002年の夏休み」
⑤「こども映画館:2003年の春休み」
⑥「韓国映画―栄光の1960年代」
⑦「シネマの冒険:闇と音楽 2003」
⑧「逝ける映画人を偲んで 1998−2001(1)」
2.展覧会
①「資料で見る日本映画史:みそのコレクションより」展
②「展覧会 映画遺産―東京国立近代美術館フィルムセンター・コレクションより」展
3.入館者数
①企画上映等 78,568人(目標入場者数 87,500人)
(平成13年度実績/入場者数:99,886人,上映日数:273日,上映回数:543回)
※目標入場者数は、過去に行った同種企画上映の1回あたりの平均入場者数を参考として開催回数を乗じて
算出している。
②展覧会(「みそのコレクション」展) 3,962人(目標入場者数 2,500人)
③展覧会(「映画遺産」展) 3,156人
※「映画遺産」展については、本館リニューアル後、7階展示室が映画部門専有となったことにより、
「映画
関連資料の展示に関する整備構想委員会」にてその利用方法が検討された。この会議での意見をもとに計画さ
れたこの展覧会は、平成14年度年度計画策定後の企画であり、目標入場者数の設定はしていない。
4.優秀映画鑑賞推進事業
139
(フィルムセンター)
163会場
5.映画文化に関する国際交流事業(国際映画祭出品協力事業)
11作品
6.上映会開催経費 予算額 56,808,000円
決算額 73,465,107円
7.特記事項
企画上映について、文化・記録映画あるいは、外国映画のうち欧米の映画以外のアジア映画を中心とした作
品による特集ついても検討し、定期的に実施する。
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
平成14年度も、日本映画と外国映画、無声映画と戦後映画など、いわゆる“古今東西”のバランスをよく勘案し
た多彩な上映番組を企画し、開催することができた。とりわけ、日韓国民交流年事業の一環ではあったが、28作品
の韓国映画の連続上映は、フィルムセンターでも初めてのことであり、極めて重要な企画となった。これまで、アジ
アについては、中国映画の回顧上映に力を注いできたが、今回そうした事業が確実に韓国映画にまで広がったことは
将来のさらなるアジア映画上映に向けての重要な布石となると考える。
テレビ/ビデオ/デジタル技術等の急速な進歩によって、映画が日を追って家庭内視聴の対象になりつつあるとい
う世界的な傾向の中で、映画館・劇場でしか得られない真正な映画体験とは何かの模索が、世界のフィルム・アーカ
イヴなどで続いているが、人気の高かった「シネマの冒険 闇と音楽」のような生演奏付無声映画上映は、そうした
ものの内でももっとも重要な、そしてフィルム・アーカイヴらしい形式の一つとして定着していくものと考える。
なお、今年度から平日夜の回の上映を、午後6時30分開始から午後7時開始へと変更した。これは仕事を終えた
勤労者等がより多く、夜の回に間にあって来館できるように配慮したもので、おおむね好評であった(常連観客の一
部に反対意見あり)。
【見直し又は改善を要する点】
企画内容の面では、外国から借用する作品については、上映回数、入場料金、座席数等の収入面や経費負担も考慮
に入れ、これまで著作権者と協議し、原則として上映権利料を無償で実施してきたため、著作権者の制約の上に上映
作品の選定をしなければならないという現象が生じることもあり、今後、上映作品の著作権者の許可等に囚われず企
画を実施するための一つの方策として、権利料の有償について検討をする必要がある。
入場者数の点では、企画上映等の総観客数は目標入場者数に達することができなかった。特に「韓国映画――栄光
の1960年代」と夏休み・春休みの「こども映画館」については、他企画以上の広報活動を行なったにもかかわら
ず、目標を大きく下回った。「韓国」特集については、過去に、我が国に紹介されていない国の作品を上映した場合
にも同様の事例があり、普及広報体制に検討が必要と思われる。又、「こども映画館」については、今後、企画の内
容にあわせたきめ細かな広報の工夫とその内容の見直しの必要があると考える。
【計画を達成するために障害となっている点】
フィルムセンターが所蔵している映画フィルムは、著作権者等から入手する際の条件として、フィルムセンター内
における上映に限定して承諾を受けている。企画上映を実施する場合、日本映画について問題とはなっていないが、
外国映画については、著作権者がその後権利の全て或いは一部を第三者(業者)に譲渡することがある。今年度に実
施した「所蔵外国映画選集:追憶のスター女優たち」に関して、一部の作品の著作権が配給業者に譲渡されていたた
め、協議の上、一般的な料金より低廉な上映権料を支払うことで決着した。
また、「韓国映画―栄光の1960年代」においては、年度計画の段階では、30作品を各3回上映し、1日2回
上映の45日間・90回での実施となっていたが、2作品について著作権者の了解が得られなかったため、27作品
については3回上映、1作品のみ4回上映の計85回となった。
これらについては、美術品と異なり原作品の所有者による展示が認められていないことによるものであるため、作
品に囚われずに企画を構築する上で、今後とも障害となる点であると考える。
展覧会の場合は、1日で全展示作品を見ることが可能であることに対して、映画の場合は一つの企画を評価するた
めには、上映する全作品を見なければならないという時間的制約があり、上映会に関する新聞記事等は紹介記事が殆
どであり、企画に対する展評が行われ難い。
* 添付資料
① 入館者数の推移 (定量的数値推移一覧 p.4)
② 入場料収入の推移 (定量的数値推移一覧 p.7)
140
(フィルムセンター)
企画上映「所蔵外国映画選集:追憶のスター女優たち」
○方 針
映画という文化の特徴の一つと言ってもよい「スター女優」という存在にスポットを当てた企画で、フィルムセン
ターが所蔵する外国映画のプリントから、主に欧米の大スターや名女優が主演する秀作を34本選び、2か月間にわ
141
(フィルムセンター)
たって上映するものである。
フィルムセンターの上映企画は、監督=作家主義を重んじ、年代別、国別、ジャンル別といった切り口も重視して
いるが、「田中絹代特集」「山田五十鈴特集」「長谷川一夫特集」といった形の、俳優やスターから映画を見直して
みるという視点も尊重してきている。
選ばれた往年の大スターたち30余人の代表作を通して、それぞれの作品とスターとを懐かしむ高年齢層の映画フ
ァンに楽しんでいただくとともに、
若い世代にも今日には稀な華やかな映画の魅力を発見していただきたいと考えた
番組である。
○実 績
1.開催期間
平成14年4月2日∼平成14年5月26日(48日間/96回)
2.会
場
2階大ホール
3.上映作品数
34作品(1作品2∼3回上映):延96作品上映
4.入館者数
17,428人(目標入場者数 15,000人)
5.入場料金
一般500円,高校・大学生300円,小・中学生100円
6.入場料収入 6,850,600円(目標入場料収入 4,406,000円)
7.講演会等 なし
8.広報
・印刷物(NFCカレンダー40,000枚)の生涯学習施設等への配布、プレスリリースの発送による新聞・
雑誌等への働きかけ。
・ホームページ
9.上映会関連新聞・雑誌記事等
なし
10.アンケート調査
①調査期間
平成14年5月21日∼平成14年5月26日(6日間)
②調査方法
入場者にアンケート用紙を配布し,記入後回収。
③アンケート回収数 105件
④アンケート結果 ・良い84.8%(89件)・普通12.3%(13件)・悪い2.9%(3件)
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
無声時代の大スター、ジャネット・ゲイナー、トーキー初期のマレーネ・ディートリッヒらから現在も活躍中のナ
スターシャ・キンスキーらに到るまで映画史の縦軸を広げる一方で、東欧やインドの大女優らにも目を向けて多彩で
幅のある番組作りを行った。様々な視点や切り口を持つ企画の可能性を考えて行ったものであったが、入館者の評価
もおおむね良いものがあった。
【見直し又は改善を要する点】
番組発表の後、選んだ1作について国内劇場上映権を保持する会社の存在が判明し、協議の後、上映は中止せず、
必要な権利料を支払うことで決着した。フィルム・アーカイヴ/シネマテークにおける上映の権利問題は年々複雑化
する傾向にあり、今後もさらにこれを調査対応していく必要があると考える。
142
(フィルムセンター)
企画上映「日本映画の発見Ⅶ:1970年代(1)」、「日本映画の発見Ⅶ:1970年代(2)」
○方 針
日本映画史を1910年代から現代まで、現存する作品で、総合的、網羅的に辿ろうとする長期企画「日本映画の
発見」シリーズが、その最終章ともいうべき第7期に入り、1970年代の作家、作品を最良の所蔵プリントで回顧
しようとするものである。2期に分かれる大型企画で、70年代前半を扱う1期では、2か月間に34本の作品を上
映し、2期では1970年代後半に製作された日本映画44本を上映する。
○実 績
1.開催期間
1期 平成14年6月4日∼平成14年8月2日(52日間/100回)
2期 平成14年8月13日∼平成14年10月27日(66日間/132回)
2.会
場
2階大ホール
3.上映作品数
1期 34作品(1作品2∼3回上映):延100作品上映
2期 44作品(1作品3回上映):延132作品上映
4.入館者数
1期 15,186人(目標入場者数 18,500人)
2期 20,115人(目標入場者数 24,500人)
5.入場料金
一般500円,高校・大学生300円,小・中学生100円
6.入場料収入
14,445,600円(目標入場料収入12,744,600円)
(1期 6,260,900円(目標入場料収入5,500,000円)、2期8,184,700円(目標入場料収入7,244,600円))
7.講演会等 なし
8.広報
・印刷物(1期、2期ともNFCカレンダー各40,000枚)の生涯学習施設等への配布、プレスリリースの
発送による新聞・雑誌等への働きかけ。
・ホームページ
9.上映会関連新聞・雑誌記事等
1期 赤旗 平成14年6月7日、朝日新聞 平成14年7月11日(夕刊)
2期 東京新聞 平成14年7月23日(夕刊)、赤旗 平成14年8月9日
10.アンケート調査
①調査期間
平成14年7月23日∼7月28日(6日間)、平成14年10月22日∼10月27日(6日間)
②調査方法
入場者にアンケート用紙を配布し,記入後回収。
③アンケート回収数
43件、22件
④アンケート結果 1期 ・良い67.4%(29件)・普通25.6%(11件)・悪い7.0%(3件)
2期 ・良い63.6%(14件)・普通27.3%(6件)・悪い9.1%(2件)
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
フィルムセンター新館開館の翌年1996年から今年度まで7期にわたって続いたこの長期企画「日本映画の発
見」は、日本映画を時代順に傑作・名作からヒット作、重要作まで、現存する作品で網羅的・系統的に回顧するきわ
めて貴重な機会であった。7年間で、総計411番組・445作品が所蔵フィルムにより上映され、知りうる限り国
内史上最長・最大規模の日本映画連続上映となった。それは日本映画史の研究にとって重要であるのみならず、日本
における映画保存(フィルム・アーカイヴィング)の実情と達成とをそのまま反映するものでもあった。
この時代の映画が、ほとんどの場合レンタル・ビデオや衛星放送といった縮小・代替メディアによってテレビ・モ
ニター上でのみ視聴されている現状の中で、
こうした35mmフィルムの上映会による公開当時と変わらぬ映画体験
の提供は、とりわけ若い世代の人々に「本物の映画とは何か」を伝え続ける意味でも、今後も継続される必要がある
143
(フィルムセンター)
と考える。
【見直し又は改善を要する点】
「日本映画の発見Ⅶ:1970年代(1)」と同様に入場目標数に達することが出来なかったが、アンケートによ
ると今回の企画による作品の殆どが現在、映画館上映が行われていない作品上映であり、今後もこのような企画の継
続を望む意見が多く、このような企画についての目標入場者数の設定にあたっては、広報を充実するとともに、実績
を踏まえた調整値を勘案して策定することが必要である。
144
(フィルムセンター)
企画上映「こども映画館:2002年の夏休み」、「こども映画館:2003年の春休み」
○方 針
将来の映画観客となる小中学生を主たる観客に想定して、こどもたちに映画の面白さ、とりわけ日本映画の素晴ら
しさを知ってもらい、同時に映像に対する理解力を高め、情操教育にも資するよう企画する上映会で、夏休みと春休
みにそれぞれ6日間行った。こどもと保護者・引率者に入場を限定して開催する。なお、「2003年の春休み」で
は、「2002年の夏休み」同様、上映回数は6日間・12回だが、1作品2回上映を1回上映とすることにより、
上映作品数及び番組数を2倍にして児童・生徒の年齢層に合わせた映画の選択肢を広げた。また、「2003年の春
休み」では、「2002年の夏休み」のアンケートを参考に保護者・引率者にとっての時間の自由度を考慮して、開
始時間を午前11時および午後1時30分に変更する。
○実 績
1.開催期間
①夏休み 平成14年7月30日∼平成14年8月4日(6日間/12回)
②春休み 平成15年3月25日∼平成15年3月30日(6日間/12回)
2.会
場
2階大ホール
3.上映作品数
①夏休み
6作品(1作品2回上映):延12作品上映
②春休み 21作品(12プログラム)(1作品1回上映):延21作品上映
4.入館者数
①夏休み 447人(目標入場者数 1,500人)
②春休み 512人(目標入場者数 1,500人)
5.入場料金
一般500円,高校・大学生300円,小・中学生100円
6.入場料収入 226,800円(目標入場者数470,000円)
(①103,500円(目標入場料収入 235,000円)②123,300円(目標入場料収入 235,000円))
7.講演会等
各上映開始前(24回)に研究官によるこども向けトークを実施
8.広報
・印刷物(チラシ100,000枚(夏)65,000枚(春))の生涯学習施設等への配布、プレスリリース
の発送による新聞・雑誌等への働きかけ。
・ホームページ
9.上映会関連新聞・雑誌記事等
①夏休み 東京新聞 平成14年7月9日(夕刊)
②春休み 朝日新聞 平成15年3月15日、赤旗 平成15年3月21日
10.アンケート調査
①調査期間 平成14年7月30日∼8月4日(6日間)、平成15年3月25日∼3月30日(6日間)
②調査方法
入場者にアンケート用紙を配布し,記入後回収。
③アンケート回収数 267件、308件
④アンケート結果 ①夏休み ・良い85.4%(228件)・普通12.7%(34件)・悪い1.9%(5件)
②春休み ・良い80.5%(248件)・普通15.3%(47件)・悪い4.2%(13件)
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
夏休みでは、名作文学の分かりやすい映画化作品、痛快な娯楽時代劇、アニメーション、伝奇・怪談、特撮ものな
ど、こどもたちの興味を惹くと思われる作品で編成した番組により実施し、春休みでは、怪獣映画、アニメーション
を増やし、「帝都物語」のような“スリル”、“SF的”、“恐さ”などのある異色作を加えたり、新しい紙幣に登
場する人物に関する作品を選んだりと工夫を凝らした。
広報は都内の全小中学校を中心に、通常のNFCカレンダーとは別仕様のチラシ(文章をこども用に執筆し、読み
145
(フィルムセンター)
仮名を振った)を作成・送付するなどした。
子どもを対象とした事業であることを考え、夏休みでは、午後1時と4時の上映開始(平日夜7時からは通常の一
般客用上映を継続した)とした。集客に関して参考となる意見・アンケート結果等を踏まえ、春休みは、午前11時
と午後1時の上映開始とした。その結果、鑑賞した児童・生徒、また保護者・引率者の満足度は高く、夏休みに比べ
て観客数も漸増した。
また、各上映の前には研究員が、こどもたちの理解を深めるため、映画に関するさまざまな話をした。
【見直し又は改善を要する点】
目標入場者数の設定に当たって最近の参考となるデータがないため,過去(昭和56年∼昭和59年)の同種企画
上映の実績(1回平均125人)により,目標入場者数を算出したが,都市のドーナツ化現象や少子化等の状況によ
り目標数値を下回ったものと思われる。春休み期間における会期は、3月25日が都内の学校で卒業式と重なったこ
とも入場者数低下の要因の一つと考えられるので、今後は、当該事業の実施については、学校の一般的な行事を踏ま
えることなどにより、来館しやすい期間の設定を行うこととした。
また、当該事業は、入場対象者をこどもと保護者・引率者に限定しているものであり、平成15年度からは、上映
作品や上映時間等により多様性を持たせ、また様々な需要を喚起するため、教育普及事業として児童生徒を対象とし
た事業とする。
146
(フィルムセンター)
共催企画上映「韓国映画―栄光の1960年代」
○方 針
日韓国民交流年記念事業の一つとして、韓国の優れた劇映画を可能な限り多数上映する。近年、日本で、また、国
際的にも、高い評価と人気を誇る韓国映画であるが、ごく一部の例外を除けば、1960年代の作品は、ほとんど知
られていない。一方、10年間に1,500本以上の映画が製作された60年代こそが、韓国における映画の第1期
黄金時代であるとの評価もあり、この時代の未知の映画遺産や作家たちの調査を行い、優秀作に日本語字幕を付して
連続上映する。
○実 績
1.開催期間
平成14年11月6日∼平成14年12月25日(43日間/85回)
2.会
場
2階大ホール
3.上映作品数
28作品(1作品3∼4回上映):延85作品上映
4.入館者数
5,880人(目標入場者数
9,500人)
5.入場料金
一般1,000円,高校・大学生800円,小・中学生600円
6.入場料収入 5,217,200円(目標入場料収入 2,809,000円)
7.講演会等
1回 参加人数 86人(詳細は「教育普及」講演会等欄へ)
8.広報
・印刷物(NFCカレンダー50,000枚)の生涯学習施設等への配布、交通広告(営団地下鉄及び都営地下
鉄の駅へのポスターの掲出),プレスリリースの発送による新聞・雑誌等への働きかけ。
・ホームページ
9.上映会関連新聞・雑誌記事等
・東洋経済日報 平成14年11月1日
・朝日新聞 平成14年11月1日(夕刊)
・日本経済新聞 平成14年11月4日
・赤旗 平成14年12月6日
・東京新聞 平成14年12月18日
10.アンケート調査
①調査期間 平成14年12月17日∼平成14年12月25日(6日間)
②調査方法
入場者にアンケート用紙を配布し,記入後回収。
③アンケート回収数 13件
④アンケート結果 ・良い100.0%(13件)・普通0.0%(0件)・悪い0.0%(0件)
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
本企画は、韓国映像資料院での調査・研究から作品選択、輸送、字幕作成、解説書作成、上映にいたるまで、通常
より長い準備期間を要したものとなった。上映した28本の内27本が日本初公開であり、世界でも上映されたこと
のあるものは少なく、近年は韓国内でもほとんど上映の機会がなかったものばかりであった。結果として、韓国映画
の黄金時代の第1期は、多様なジャンルの娯楽映画が大スターを擁して作られていた1960年代にあったこと、そ
の作品群は芸術的にも高度なものであったことが明らかになった。こうした意味で、本企画は映画史的視点からも、
国際交流事業の成果としても、意義があったと思われる。
【見直し又は改善を要する点】
目標入場者数の設定に当たって参考となるデータがないため,平成13年度に実施した企画上映「中国映画史の流
れ」を参考に日韓国民交流年であることを考慮して、一割の増加を見込んで目標入場者数を算出したが,1960年
代の韓国映画への日本国内での認知度が思ったより低かったため,目標数値を下回ったものと思われる。
147
(フィルムセンター)
本企画は、韓国文化院などの全面協力を得て、広報に力をつくしたが、残念ながら多くの観客を集めるには至らな
かった。こうした事態は、書物や言説によって評価が定まっていない作品の上映では、しばしば起こることとはいえ、
今後、内容に即した適切な広報や周知の方法論等についてのさらなる努力を行いたいと考えている。
148
(フィルムセンター)
特別企画上映「シネマの冒険:闇と音楽 2003」
○方 針
無声映画をピアノ等の伴奏付で上映する「シネマの冒険 闇と音楽」は、毎年恒例の企画として定着した感がある
が、今回は“アメリカン・フィルム・マスター”と呼ばれるパイオニア、D.W.グリフィスの初期作品など30篇を
12の番組に構成する。
ニューヨーク近代美術館等からすでに入手しているフィルムセンターのコレクションに日本
語字幕を付したプリントを用い、ピアニストは広く国内から新たな人材を求める。
○実 績
1.開催期間
平成15年1月7日∼平成15年1月19日(12日間/24回)
2.会
場
2階大ホール
3.上映作品数
30作品(12プログラム)(1作品2回上映):延60作品上映
4.入館者数
3,441人(目標入場者数
1,500人)
5.入場料金
一般1,000円,高校・大学生800円,小・中学生600円
6.入場料収入 2,910,800円(目標入場料収入 623,200円)
7.講演会等 なし
8.広報
・印刷物(NFCカレンダー20,000枚)の生涯学習施設等への配布、プレスリリースの発送による新聞・
雑誌等への働きかけ。
・ホームページ
9.上映会関連新聞・雑誌記事等
・公明新聞 平成14年12月27日
・読売新聞 平成15年1月8日(夕刊)
・産経新聞 平成15年1月9日
10.アンケート調査
①調査期間 平成15年1月14日∼平成15年1月19日(6日間)
②調査方法
入場者にアンケート用紙を配布し,記入後回収。
③アンケート回収数 17件
④アンケート結果 ・良い88.2%(15件)・普通0.0%(0件)・悪い11.8%(2件)
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
目標入場者数の設定に当たって過去のデータにより目標入場者数を算出したが,国内で知名度の高い若手のピアノ
奏者を起用したことにより,目標数値を上回ったものと思われる。
グリフィスの上映プリントは、35mmで所蔵するものも多く、これまでも上映を行なっていたが、ピアノの伴奏
を付しての連続上映はフィルムセンターにとって初めてである。
今回新たな人材としてこの企画に参加してくれた9
名のピアニストおよび作曲家は、そのほとんどが無声映画の伴奏は未経験であったが、グリフィスの無声映画がスク
リーンから発するさまざまな情感を正確に捉え、それらを(即興を含む)高度な技術でみずからの音楽にまとめ上げ、
個性溢れる優れた演奏を行い、観客からは好評であった。
【見直し又は改善を要する点】
アンケートで当該事業について悪いという意見(2件)は、無声映画は、あくまでも無音で鑑賞するものであると
いう意見であり、今後とも当該事業の趣旨を理解して貰う努力を重ねていきたいと考える。
149
(フィルムセンター)
企画上映「逝ける映画人を偲んで 1998−2001(1)」
○方 針
日本映画界にそれぞれの足跡を残し逝去した映画関係者の業績を代表作品で偲び、回顧する恒例企画である。今回
は1998年1月1日から2001年12月31日までの期間に亡くなった監督、俳優、技術スタッフなどが対象と
なる。4年半ぶりの開催となったため、市川右太衛門、高田浩吉、新珠三千代、吉村公三郎、宮川一夫の各氏をはじ
め、90名以上の映画人を94作品・86番組で追悼する大型企画となる。この内、後半の第2期は、平成15年度
に実施される。
○実 績
1.開催期間
平成15年1月28日∼平成15年3月28日(52日間/100回)
2.会
場
2階大ホール
3.上映作品数
50作品(1作品2回上映):延100作品上映
4.入館者数
15,559人(目標入場者数 15,500人)
5.入場料金
一般500円,高校・大学生300円,小・中学生100円
6.入場料収入 6,071,400円(目標入場料収入 4,583,200円)
7.講演会等 なし
8.広報
・印刷物(NFCカレンダー42,000枚)の生涯学習施設等への配布、プレスリリースの発送による新聞・
雑誌等への働きかけ。
・ホームページ
9.上映会関連新聞・雑誌記事等
・赤旗 平成15年1月24日
・産経新聞 平成15年1月30日
・公明新聞 平成15年2月14日
10.アンケート調査
①調査期間 平成15年3月22日∼平成15年3月28日(6日間)
②調査方法
入場者にアンケート用紙を配布し,記入後回収。
③アンケート回収数 18件
④アンケート結果 ・良い77.8%(14件)・普通22.2%(4件)・悪い0.0%(0件)
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
平成14年度末に終了した第1期では、50番組が上映されたが、フィルムセンターで上映の機会が少ないものや
初めて上映するものも数多く含まれており、予想どおりの堅調な観客動員を記録した。
【見直し又は改善を要する点】
本企画は、往年のスターや監督、裏方として映画を支えた技術スタッフ、短篇・文化・記録映画のような、劇映画
ほどの衆目を集めない分野で業績を残した映画人等の顕彰や再評価のためにも、今後も継続して開催する必要があ
る。また、この企画を通してフィルムセンターの収蔵コレクションを、美学的、歴史的、技術的な観点から再査定す
る良い機会であると考える。
150
(フィルムセンター)
「資料で見る日本映画史:みそのコレクションより」展
○方 針
ポスター類は1995年の新館オープンを機にフィルムセンターに寄贈され、我が国の映画史をひもとく貴重な文
化遺産となっているもので、当展示室でも映画生誕百年を記念した「ポスターでみる日本映画史」以来、さまざまな
展示で活用している。本展は同氏の死後、遺族から新たに寄贈されたスチル写真、プログラム、雑誌などのコレクシ
ョンを加えた1,
000点近い展示物を通して、
よりトータルに我が国の日本映画史をたどろうとするものである
(平
成13年度より継続)。
○実 績
1.開催期間
平成14年3月5日∼平成14年5月26日(66日間,内平成14年度48日間)
2.会
場 フィルムセンター7階展示室
3.出品点数 275件
4.2,655人(目標 2,000人)
(3,962人(目標 2,500人))
5.入場料金 無料
6.入場料収入
− 円(目標入場料収入
− 円)
7.担当した研究員数 4人
8.展覧会の内容
御園京平(本名・月村吉治)氏が生涯をかけて収集した膨大な映画資料は,とくにポスター,スチル写真,プ
ログラム(チラシ,パンフレット)の三分野で他を圧倒する質と量を誇り,「みそのコレクション」の通称で広
く知られている。偉大なコレクターであるとともに,無声映画時代を知る優れた映画史の語り部であり,また資
料調査に精緻を極める映画史家でもあった御園氏を偲び,
その業績をたどりながらその全域を浮かび上がらせる
内容となっている。
9.講演会等 なし
10.広報
・印刷物(チラシ30,000枚)の生涯学習施設等への配布、プレスリリースの発送による新聞・雑誌等への
働きかけ。
・ホームページ
11.上映会関連新聞・雑誌記事等
・東京新聞 平成14年3月5日(夕刊)
・朝日新聞 平成14年4月11日
12.アンケート調査
①調査期間
平成14年5月21日∼平成14年5月26日(6日間)
②調査方法
入場者にアンケート用紙を配布し,記入後回収。
③アンケート回収数 60件
④アンケート結果 ・良い86.7%(52件)・普通13.3%(8件)・悪い0.0%(0件)
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
1,000点近くにのぼる出品数はこれまでにフィルムセンターが開催した展覧会でも例がなく、手のひらサイズ
の引き札から2メートル近い大ポスターまで、
とくにグラフィックな資料の豊富さで知られる
「みそのコレクション」
の魅力とそのボリュームを余すことなく伝えることができたものと考える。
御園京平氏の業績と映画史の両面に照明を当てながら、キャプションや説明等に御園氏自身の発言からの引用を含
めた解説を多数加えたこと、また出品されたスチル写真のキャプション全てに俳優名を加えたことも好評であった。
とくに文字情報との相乗効果により、会場を長時間かけて展示品を丁寧に見てまわる観覧者が多く見られたことは、
今回の展覧会の大きな成果であった。
【見直し又は改善を要する点】
映画関連資料の展示に関する整備構想委員会の報告を基に、今後は、常設展示化を目指し、作品の長期展示の可能
性とともに、映画関係資料の展示作品及び展示方法等の充実を図っていきたいと考えている。
151
(フィルムセンター)
「展覧会 映画遺産―東京国立近代美術館フィルムセンター・コレクションより」展
○方 針
フィルムセンターの半世紀に亘る活動の中で収集された資料を「日本映画の草創期」から「戦後の黄金期」まで5
つの時代に分け、これらを映画保存史の観点から眺めるとともに、《各時代の中から》散逸を免れて現存する映画遺
産を紹介する。また、これまでにフィルムセンターが行ってきた映画の発見・復元の成果を紹介しながら、我が国に
おける映画遺産の散逸の歴史と映画保存運動の軌跡をたどる。
○実 績
1.開催期間 平成14年11月26日∼平成15年3月30日(153日間)
2.会
場 フィルムセンター7階展示室
3.出品点数 363件
4.入館者数 3,156人(目標入場者数
− 人)
5.入場料金 一般200円,大学・高校生100円,小・中学生無料
6.入場料収入 402,550円(目標入場料収入
− 円)
7.担当した研究員数 6人
8.展覧会の内容
映画部門専用となったフィルムセンター展示室の開幕企画となった本展は、フィルムセンターの前身であるフ
ィルム・ライブラリー時代から50年の間に収集した膨大な映画資料の中から,映画人の遺品や初期の映画機材
など,特に公開の機会が限られていた珍しいコレクション360点あまりを集めて展示する。
9.講演会等 なし
10.広報
・印刷物(ポスター1,000枚,チラシ40,000枚)の生涯学習施設等への配布、プレスリリースの発送
による新聞・雑誌等への働きかけ。
・ホームページ
11.上映会関連新聞・雑誌記事等
・公明新聞 平成14年11月29日
・産経新聞 平成14年12月2日
・日本経済新聞 平成14年12月5日
・朝日新聞 平成14年12月11日
・赤旗 平成15年1月5日
12.アンケート調査
①調査期間
平成15年1月14日∼平成15年1月19日(6日間)
平成15年3月22日∼平成15年3月28日(6日間)
②調査方法
入場者にアンケート用紙を配布し,記入後回収。
③アンケート回収数 14件
④アンケート結果 ・良い71.4%(10件)・普通14.3%(2件)・悪い14.3%(2件)
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
欧米に見られるような映画博物館が確立していない我が国で、フィルムセンターが1984年の火災以来ふたたび
専用の展示スペースを得たことの意義は大きく、特に展示による公開形式に適している博物資料、実物資料を広く公
開することが可能となった。
反面、既にこの間にも撮影所の閉鎖等により、様々な大道具や小道具などの多くの映画資料が散逸していることが
痛感された。なお、展覧会の準備と平行して進められた調査からは、現存している最古の和製映写機など戦前の映画
展覧会以来となる映画資料の発見も生まれ、これらについては借用の上、期間限定での公開も実現した。
大小のコーナー解説のほか、360点におよぶ展示物のほとんど全てに解説を加えることとし、専門的な内容もで
きる限り平易な表現で提示することに努めたが、
とくに技術的な関心に偏らない機材類の解説はこれまでに例の無い
ものと考えている。
30台のビデオ・モニターや16mm映写機を使った映像展示の導入もあったため、本展は、
「資料でみる日本映
画史 みそのコレクションより」のときにも増して時間をかけて会場をまわる観覧者が多かったように思われる。6
時間も場内にとどまっていた観覧者もいるほどで、
本来地味な展示物の多い展覧会に付加価値を付けることには成果
を上げることができたものと思われる。
(フィルムセンター)
152
【見直し又は改善を要する点】
短期的な企画展と異なり、広報に戸惑った点も多く、今後は「企画」ではなく「場」としての注目を集めるような
広報の展開を考える必要がある。
さらに部分的な展示替えや常設展と企画展の両立などの検討課題も残されているた
め、常設展示化と合わせ、作品の長期展示を目指すと共に、より一層の内容と展示作品の充実を図るための検討を行
う。また、展示資料数が膨大なために入館者から出品目録以外に解説書の必要性が求められており、カタログの作成
を検討したいと考えている。
153
(フィルムセンター)
優秀映画鑑賞推進事業
○方 針
「優秀映画鑑賞推進事業」は、文化庁とフィルムセンターが日本映画製作者連盟、全国興行環境衛生同業組合連合
会などの協力のもと、全国各地の公立文化施設などと共同して、優れた日本映画の良質な35mmプリントを提供す
る巡回上映事業のプログラムである。今年度の上映作品は4作品を1プログラムとし、20プログラムでの実施とな
っている。また、平成14年度から、これまで実施していたアンケートとは別に親子プログラム鑑賞者用(児童と引
率者別々)のアンケートを実施しており、今後のプログラムの充実に役立たせていきたい。
○実 績
1.開催期間
平成14年7月6日から平成15年3月16日までの間
2.会
場
長崎県を除く全国46都道府県の163会場
3.主
催
文化庁、東京国立近代美術館フィルムセンター
協
力
(社)日本映画製作者連盟、全国興行生活衛生同業組合連合会
その他
各開催会場において協力等の団体あり
4.出品点数
80件
5.入館者数 入場者数計:77,165人(目標66,637人以上)
6.入場料金
500円以内
7.入場料収入
− 円
8.担当した研究員数
2人
9.展覧会の内容
10.講演会等 なし
11.広報
各実施会場で実施
12.アンケート調査
①調査期間
平成14年7月6日∼平成15年3月16日(299日間)
②調査方法
アンケート用紙を配布し、集計されたものを各会場より回収する
③アンケート回収数
13,683件(4月15日までに集計の報告のあった135会場の総数による)
④アンケート結果 ・良い91%(12,420件)・普通6%(854件)・悪い3%(383件)
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
14回目となる平成14年度は、昨年度開催のなかった栃木、埼玉、福井の3県を加えた46都道府県、9会場増
の全国163会場で実施した。期間中の入場者数は総計で72,508人にのぼった。世代的には中高年が多く、内
容的には映画館などで見る機会の少ない、日本映画の名作や大ヒット作品が観賞作品として選ばれる傾向が強い。た
だし、近年各地で催される映画祭や定期的な上映活動の一環として特色ある作品を選び、上映するといった例も増え
ている。親子プログラムに対しては、スクリーンで映画を見る楽しさを実感したという感想が、多く寄せられた。
【見直し又は改善を要する点】
当該事業は、平均すると1都道府県4会場弱の実績となっているが、実施会場数が年々増加の傾向にあるため、予
算上これ以上の会場の増加への対応は困難であり、既に定着して毎年継続して実施している会場より、新規に実施希
望の会場を優先せざるを得ないなどの事態が起こることも考えられるため、当該事業の見直しを含め、今後プログラ
ムの変更や実施方法の検討を行う。
154
(フィルムセンター)
映画文化に関する国際交流(国際映画祭出品協力事業)
○方 針
本事業は、世界に日本映画を紹介し、映画芸術の向上と発展に資するために、海外で開催される国際映画祭のコン
ペティション部門に選定された長編映画(1時間以上の作品)を映画団体及び製作者の協力を得て出品する事業であ
る。作品には外国語字幕を付し、正式招待されたコンペティション部門において上映される。作品は、その後2年間、
各地で開かれる国際映画祭の要請によって出品され、
事業終了後はフィルムセンター内での企画上映や海外での上映
等に活用される。
○実 績
1.出品作品名:
「棒 BASTONI」
,監督名:中村和彦
映画祭名称:フィラデルフィアフェステバル(アメリカ)
,期間:2002. 4. 4∼ 2002. 4.15
2.出品作品名:
「いたいふたり」
,監督名:斎藤久志
映画祭名称:全州国際映画祭(韓国)
,期間:2002. 4.26∼ 2002. 5. 2
3.出品作品名:
「b l u e」
,監督名:安藤尋
映画祭名称:24回モスクワ国際映画祭,期間:2002. 6.21∼ 2002. 6.30
4.出品作品名:
「DOG STAR」
,監督名:瀬々敬久
映画祭名称:アジア太平洋映画(韓国)
,期間:2002.10. 1∼ 2002.10. 4
5.出品作品名:
「海は見ていた」
,監督名:熊井啓
映画祭名称:サンセバスチャン国際映画祭(スペイン)
,期間:2002. 9.19∼ 2002. 9.28
6.出品作品名:
「BORDER LINE」
,監督名:李相日
映画祭名称:バンクーバー国際映画祭(カナダ)
,期間:2002. 9.26∼ 2002.10.11
7.出品作品名:
「グローウィン グローウィン」
,監督名:堀江慶
映画祭名称:第51回マンハイム&ハイデルベルグ国際映画祭(ドイツ)
,期間:2002.11. 7∼ 2002.11.16
8.出品作品名:
「さざなみ」
,監督名:長尾直樹
映画祭名称:サンパウロ国際映画祭(ブラジル)
,期間:2002.10.18∼2002.10.31
9.出品作品名:
「アレクセイと泉」
,監督名:本橋成一
映画祭名称:エコメディア国際映画祭(ドイツ)
,期間:2002.10.23∼2002.10.27
10.出品作品名:
「白い船」
,監督名:錦織良成
映画祭名称:第2回カラチ国際映画祭(パキスタン)
,期間:2002.12.15∼2002.12.22
11.出品作品名:
「小川プロ訪問記」
,監督名:大重潤一郎
映画祭名称:ベルリン国際映画祭(ドイツ)
,期間:2003. 2. 7∼2003. 2.16
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
平成14年度は、あわせて11作品を出品した。「blue」は上記映画祭で最優秀女優賞の栄誉に輝いた。また、
「BORDER LINE」は上記映画祭においてアジア太平洋地域の若手監督に贈られるドラゴンズ・アンド・タ
イガーズ・アワードで優秀作(スペシャル・メンション)となった。
【見直し又は改善を要する点】
予算的には、毎年6作品程度が出品できる経費で当該事業を行っているが、ここ数年は、10作品前後の出品で経
費増となっており、平成15年度の文化庁予算で国際映画祭出品支援事業費が計上されているため、今後は文化庁と
調整しながら実施する必要がある。
また、国際映画祭によっては、フィルムが損傷して戻ってくるなどの事例が増加しており、これまで保険での対応
を行ってきたが、当該事業への保険の付保ができないこととなり、何らかの基準作りが必要となっている。
155
(フィルムセンター)
(2)貸与・特別観覧の状況
中期計画
(2) 収蔵品については、その保存状況を勘案しつつ、国内外の博物館・美術館その他これに類する施設に対し、貸与
及び特別観覧を積極的に推進する。
○実 績
1.貸与・特別観覧の件数
①映画フィルム
貸
与
21件(75本)
特別映写
59件(186本)
複製利用
21件(42本)
②映画資料
貸
与
18件(48本)
特別観覧
20件(44点)
2.特記事項
映画フィルムの貸与については、著作権者の権利保護を踏まえながら、できうる限りの便宜を図ることに努め
た。
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
① 映画フィルムの貸出ついては、第15回東京国際映画祭をはじめ、全国各地で行われている実績ある映画祭や、
公共施設等で行われた特色豊かな企画上映に対し、日本および外国劇映画の出品並びに貸与を行なった。海外へ
は、アメリカのパシフィック・フィルム・アーカイヴに11本、フランスのラ・ロシェル国際映画祭に7本の無
声映画を貸与した。これは、平成13年度に世界で唯一の無声映画祭であるポルデノーネ無声映画祭に出品した
ことで、日本映画への評価が反映されたものと思われる。また、プサン、ロンドン、スペインなど、国際的にも
知名度の高い国際映画祭の回顧上映に対して、所蔵している日本映画の出品を行った。また、共催事業として福
岡市総合図書館との「30年代 輝ける上海映画」
(13本)
、国際交流基金と韓国(ソウル)で行った「日本映
画回顧展」
(15本)及び中国(北京)での「日本映画回顧展」
(4本)などにも貸出を行った。特に韓国で実施
した特集上映は反響が多く、今後の日韓間の映画による文化交流の一助となったと考える。
② フィルムの複製利用については、主に著作権者である製作会社の依頼によるプリントの作製に協力した。この中
には、例えば、読売新聞関西支社が主催した「日中国交正常化30周年記念回顧展 梅屋庄吉と孫文」の展示映
像およびテレビ番組のために、我が国映画界草創期の製作者である梅屋庄吉製作による「日本南極探検」他2作
品の部分映像が複製利用によって上映され好評を博したものや、NHK番組「新藤兼人の世界」に伊藤大輔の「忠
次旅日記」の一部が使用されたものが含まれている。
③ 映画関係資料の貸出では、川崎市岡本太郎美術館(
「ゴジラの時代」展)や姫路文学館(
「お夏清十郎ものがたり」
展)
、印刷博物館(
「1960年代グラフィズム」展)
、北海道夕張市(郷愁の丘「シネマのバラード」館内企画
展示室)にポスターなどの映画資料の貸出を行った。とくに北海道夕張市への貸出は新たな映画資料館のオープ
ンを記念して、フィルムセンター主催「資料でみる日本映画史 みそのコレクションより」の1コーナー(25
0点のペーパー・コレクション)を提供したものであり、映画資料の重要性が認知されたものと評価したい。
このほかに、
出版物やテレビ番組への図版提供も20件に上り、
うち2件は映画雑誌の復刻への原本提供となり、
資料の公開はいよいよ本格化しつつある。
【見直し又は改善を要する点】
上記のうち映画フィルムの場合は、著作権者の許諾を受けて行っているが、著作権者の不明等によりその許諾に時
間を要するため、貸出等の業務の円滑な遂行に支障をきたすことがあった。これは、一方に著作権者の権利保護の問
題が生じることから回避できない点であるが、今後の迅速な貸出等業務を進める上で大きな課題だと考えている。
映画関係資料の場合は、担当窓口(情報・資料係)を設置して、特に申請の多いスチル写真など既存コレクション
の登録、登録番号の付与などの環境整備を進めているが、貸出の迅速化や資料のデータベース化等について更なる充
実を図る必要があると考えられる。
*添付資料
①貸与件数の推移 (定量的数値推移一覧 p.8)
②特別観覧件数の推移 (定量的数値推移一覧 p.9)
156
(フィルムセンター)
3.調査研究
中期計画
(1)-1 調査研究が、収集・保管・修理・展示、教育普及その他の美術館活動の推進に寄与するものであることを踏ま
え、国内外の美術館・博物館その他これに類する施設及び研究機関とも連携等を図りつつ、次に掲げる調査研究を
積極的に実施する。
<1> 収蔵品に関する調査研究
<2> 美術作品に関する調査研究
<3> 収集・保管・展示に関する調査研究
<4> 美術史、美術動向、作者に関する調査研究
<5> 世界の映画作品や映画史に関する調査研究等
(1)-2 国内外の美術館・博物館その他これに類する施設の職員を、客員研究員等の制度を活用し招聘し、研究交流を
積極的に推進する。
(2) 調査研究の成果については、展覧会、美術作品の収集等の美術館業務に確実に反映させるとともに、研究紀要、
学術雑誌、学会及びインターネットを活用して広く情報を発信し、美術館に関連する研究の振興に供する。また、
各種セミナー・シンポジウムを開催する。
○実 績
1.調査研究
(1)収蔵品の調査研究
・「みそのコレクション」についての調査研究
(2)展覧会のための調査研究
・「所蔵外国映画選集」についての調査研究
・1960年代の韓国映画についての調査研究
・「フィルムで見る20世紀の日本」についての調査研究
(3)保存・修理に関する調査研究
・ドイツにおける映画保存についての調査研究
・インドネシアにおける映画保存についての調査研究
(4)映画関係資料に関する調査研究
撮影監督協会や映画テレビ技術協会の協力を受け、継続して映画機材の調査を行った。
(5)研究活動の活用等
当センターの調査研究の成果は、隔月で発行している「NFCニューズレター」に掲載した。NFCニューズ
レターは、大学等の研究機関、図書館等の団体と映画研究者や評論家等の約700件に配布し、研究者等の参考
に資している。
(6)特別映写等による外部への研究協力
大学等の映画に関する研究・教育等及び映画製作等の製作のための調査への協力の一つとして特別映写の機会
を提供している。この制度を活用して、平成14年度は,撮影監督協会、シナリオ作家協会、NPO法人日本映
画映像文化振興センターの研修等に協力した。
2.客員研究員等の招聘実績(年度計画記載人数:3人)
①所蔵映画フィルムの総合的なデータ分析とカタログ及び目録作成
客員研究員氏名:栩木 章(目白大学他 非常勤講師 )
研究内容:戦前期の所蔵日本ニュース映画の目録作成のために、各プリント内容の調査研究、データの集
積及び必要に応じて不足分データの補充と、データベースとして全体の統一を図るための調査
研究。
②所蔵映画関連資料に関するデータ構築と総合的な研究調査及び書誌作成
客員研究員氏名:安澤秀太(フリー編集者、翻訳者)
研究内容:平成10年度にNHK放送文化研究所より寄贈された「反町茂雄コレクション」
(映画監督・衣
笠貞之助の生涯資料ならびに映画会社・大映の内部資料)の整理・特定・分類調査、ならびに
登録・データベースの構築(継続)
。
③所蔵映画フィルムの科学的側面からの保存・復元研究
客員研究員氏名:栩木 章
(フィルムセンター)
157
研究内容:内外の各種専門機関・現像所等の研究成果に基づき、所蔵映画フィルムに適応した保存・復元
についての調査研究(継続)
。
④映画保存に関する国内外文献の比較調査研究
客員研究員氏名:堀ひかり(学習院大学非常勤講師)
研究内容:平成12年度開催の国際映画シンポジウム「フィルム・アーカイヴの仕事を再定義するシンポ
ジウム」に関する内容についての比較調査。
⑤外国映画に関する事業・企画の共同研究
客員研究員氏名:溝口彰子(フリー翻訳者)
研究内容:平成15年度以降に実施を検討している上映事業にかかわる調査、及びFIAF加盟の同種機
関との映画史的、アーカイヴ的な事例に関する調査等。
3.調査研究費
予算額 11,221,000円
決算額 44,551,343円
4.特記事項
「韓国映画―栄光の1960年代」の実施にあたっては、韓国映像資料院と共同で実施できたことや講演会に
おける講師については、「文化庁外国人芸術家・文化財専門家招へい事業」により招へいすることができた。
また、研究成果は、継続して調査研究を行っているもの以外は、フィルムセンターが発行している「NFCニ
ューズレター」へ発表することができた。
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
国内の大学や諸団体の映画に関する研究のためにフィルムセンターの特別映写観覧を利用することが多く、この制
度が活用されることにより、様々な映画に関する情報の交換や交流が研究に役立っている。
【見直し又は改善を要する点】
フィルム・アーカイブとしての調査研究は、国内に同種機関がないため、その殆どが国際フィルム・アーカイブ連
盟加盟の諸外国の同種機関からの情報の提供により進められていることが多く、このため、これらのフィルムの保存
研究に関して、国内の大学や民間との連携により、より一層充実させることを検討していく。
158
(フィルムセンター)
4.教育普及
中期計画
(1)-1 美術史その他の関連諸学に関する基礎資料及び国内外の美術館・博物館に関する情報及び資料について広く収
集し、蓄積を図るとともに、レファレンス機能の充実を図る。
(1)-2 収蔵品等の美術作品その他関連する資料の情報について、長く後世に記録を残すために、デジタル化を推進す
る。
(1)-3 国内外の美術館等との連携を強化するとともに、資料室等の整備・充実を図る。
(2) 新学習指導要領、完全学校週5日制の実施等を踏まえ、学校、社会教育関係団体と連携協力しながら、児童生
徒を対象とした美術品解説資料等の刊行物の作成、講座、ワークショップ等を実施することにより、美術作品等
への理解の促進、学習意欲の向上等を促し、心の教育に寄与するような教育普及事業を推進する。
また、児童生徒を対象とした事業について、中期目標の期間中毎年度平均で平成12年度の実績以上の参加
者数の確保に努める。
(3) 美術作品に関し、その理解を深めるような講演会、講座、スライドトーク及びギャラリートーク等を実施する
等、生涯学習の推進に寄与する事業を行う。
それらの事業について、中期目標の期間中毎年度平均で平成12年度の実績以上の参加者数の確保に努める。
また、その参加者に対しアンケートを行い、回答数の80%以上から、その事業が有意義であったと回答さ
れるよう内容について検討し、さらに充実を図る。
(4)-1 美術館・博物館関係者等を対象とした研修プログラムについて検討、実施する。
(4)-2 全国の公私立美術館等の学芸担当職員(キューレーター)の資質を向上し、専門性を高めるための研修を実施
し、人材養成を推進する。
(4)-3 公私立美術館・博物館等の展覧会の企画に対する援助・助言を推進する。
(4)-4 公私立美術館・博物館等が実施する研修会への協力・支援を行うとともに、情報交換、人的ネットワークの形
成に努める。
(5)-1 収集、保管、修理、展示、教育普及、調査研究その他の事業について、要覧、年報、展覧会図録、研究論文、
調査報告書等の刊行物、ホームページ、またはマスメディアを利用して広く国民に積極的に広報活動を展開する
とともに、国立美術館への理解の促進を図る。
また、その内容について充実を図るよう努力するとともに、4館共同による広報体制の在り方について検討
を行う。
(5)-2 国内外に広く情報を提供することができるホームページについては、教育普及など多様な活用ができるようコ
ンテンツを工夫し、中期目標の期間中毎年度平均で平成12年度のアクセス件数以上となるよう努力する。
(5)-3 デジタル化した収蔵品等の情報について、美術情報システム等により広く積極的に公開するとともに、その利
用方法について検討する。 また、デジタル情報の有料提供についての方策を検討する。
(6)-1 ボランティア等や支援団体を育成し、ボランティア等と連携協力して展覧会での解説など国立美術館が提供す
るサービスの充実を図る。
(6)-2 企業との連携等、国立美術館の業務がより充実するよう今後の渉外活動の方針について検討を行う。
○方 針
1.資料収集及びレファレンス機能の充実
図書室においてはわが国で刊行された映画関係の図書をできる限り収集し、閉架式閲覧サービスを行うととも
にコピーサービスを実施する。新刊雑誌や利用度の高い基礎文献・雑誌については開架で閲覧できるスペースを
整備する。
2.映画鑑賞を通じてこどもたちの幅広い人間形成に資することに努める。
3.講演会の実施
平成14年度は、日韓国民交流年を記念した企画上映に合わせた講演会を実施し、映画による韓国文化の理解
を目指す。
4.映画製作専門家養成講座の開催
この講座は、映画、テレビ、ビデオ製作など、映像製作の諸分野で助手等の現場経験を有する人や映画・映像
に関する専門学校などで実習経験を有する人を対象とし、日本映画の優れた伝統を継承し、次世代の映画製作現
場を担うことのできる豊かな人材を育成することを目的とする。
162
(フィルムセンター)
5.博物館学実習を行うことにより、将来の映画研究者等を育成する。
6.次の発行事業を実施し、広報活動の充実を図る。
・企画上映に伴う図録の発行 1冊
・
「優秀映画鑑賞推進事業」鑑賞の手引きの発行
・展示室での展示作品の出品リスト
・
「NFCニューズレター」の発行 隔月刊 6冊
・企画上映のための「NFCカレンダー」を発行 企画毎発行
7.ホームページを活用し、フィルムセンターの概要、企画上映を含む活動一般などの情報の公開に努めるほか、職
員募集などの事務的な活動にも積極的に活用して広く公衆への普及及び広報を行う。
また、ホームページで発信できる情報についての検討を行い、できるものから順次更新作業を行う。
○実 績(総括表)
(1)−1 資料の収集及び公開
①収集件数 1,125冊(平成14年度間)
②公開場所 フィルムセンター図書室
③利用者数 3,326人
(1)−2 広報活動の状況
①刊行物による広報活動
2種 14冊
②ホームページよる広報活動
③マスメディアの利用による広報活動
(1)−3 デジタル化の状況
所蔵映画フィルムについてのデータベース構築のための作品タイトル及び監督等のスタッフ、
出演者等のキャ
ストやフィルムの長さ等のデータ等を文字情報としてデジタル化を実施。
(2)−1 児童生徒を対象とした事業
①相模原分館における児童生徒を対象とした上映会 5回 401人
②企画上映「こども映画館」におけるトーク 24回 959人
(2)−2 講演会等の事業 ・講演会 1回 86人
(3)−1 研修の取組
映画製作専門家養成講座の実施。
(3)−2 大学等との連携
美術館本館の増改築工事が完了し,本部及び本館機能が美術館本館(竹橋)へ移転したことに伴い,休止して
いた博物館学実習生の受入を平成14年度から再開。
(3)−3 ボランティアの活用状況
7階展示室の映画部門専有化に伴う映画の歴史等の解説やこども向け上映会での解説へのボランティア等と
の連携協力を検討する。
(4) 渉外活動
平成14年度は「こども映画館」へ参加したこどもたちへの記念品の提供について企業から協力を受けて実施
した。また,映画部門の展示に関して展示映像への著作権者として映画製作者からの協力を受けた。今後は,よ
り積極的に企業との連携を行い業務の充実を目指す。
(5) 教育普及経費
予算額 5,118,000円
決算額 6,267,365円
(6) 特記事項
「こども映画館」の実施に際して、各作品の上映前に研究官が子供たちの映画に関する理解を深めることを目
的としたトークの実施、企業からの記念品の提供、博物館学実習生の受入の再開等の教育普及事業を実施した。
今後ともフィルムセンターの活動に関する理解を深めるため、
インターネット等を活用したより積極的な広報
活動を実施する。
また、美術館及び工芸館でのボランティアの活動状況を踏まえて、7階展示室での解説や「こども映画館」で
の解説についてボランティア等の導入の検討を行う。
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
「こども映画館」に企業の協力が得られたことは、今後の同事業展開に対して有力な方法であったと思われる。
【見直し又は改善を要する点】
(フィルムセンター)
163
韓国文化院や国際交流基金の協力のもとに広報活動を実施した「韓国映画−栄光の1960年代」にあわせた講演
会や、都内の小・中学校の全てと東京区部に接している小・中学校へ案内チラシを送付した「こども映画館」が、目
標入館者数に達することができなかったことについて、
今後は子ども及び保護者並びに学校関係者等からの意見聴取
や広報活動のあり方など、より一層の検討を行う必要があると考える。
また、ボランティアの導入についての検討や電子メールを利用したダイレクトメールの導入など、広報媒体につい
ての工夫と検討を行うことが今後の課題である。
*添付資料 教育普及一覧 (定量的数値推移一覧 p.12)
(1)−1 資料の収集及び公開(閲覧)の状況
中期計画
(1)-1 美術史その他の関連諸学に関する基礎資料及び国内外の美術館・博物館に関する情報及び資料について広く
収集し、蓄積を図るとともに、レファレンス機能の充実を図る。
164
(フィルムセンター)
○実 績
1.収集
①件数 1,125件(目標 − 件)
2.公 開
①公開場所
フィルムセンター図書室(4階)
②公開日数
182日間
③公開件数等
・利用者数
3,326人
・公開資料数
21,382件
・閉架利用件数
1,047件
・複写利用数
1,364件(18,108枚)
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
・資料収集及びレファレンス機能の充実
図書室は、フィルムセンターのみが有する映画関係図書を含め、これまで日本で刊行された映画文献の7割を
所蔵しており、研究者をはじめ広く一般の方々に活用されている。
平成14年度は、新刊図書の収集、整理、公開に加え、新たに「映画撮影」や「映画テレビ技術」のバックナ
ンバー、国立近代美術館フィルム・ライブラリー(現フィルムセンター)時代の「上映作品解説」の合冊製本な
どを進め、閲覧図書のより一層の充実に努めた。また、1月10日以降は図書検索システム(OPAC)をホー
ムページ上に公開してアクセスの利便性を向上させた。
【見直し又は改善を要する点】
図書室の利用方法に関しては、利用者からはおおむね賛同を得ているが、今後とも質の保持及び経費的な面を視野
に入れながら、土曜日の開室についての検討をしていきたいと考えている。
165
(フィルムセンター)
(1)−2 広報活動の状況
中期計画
(5)-1 収集、保管、修理、展示、教育普及、調査研究その他の事業について、要覧、年報、展覧会図録、研究論文、
調査報告書等の刊行物、ホームページ、またはマスメディアを利用して広く国民に積極的に広報活動を展開す
るとともに、国立美術館への理解の促進を図る。
また、その内容について充実を図るよう努力するとともに、4館共同による広報体制の在り方について検討を行う。
○実 績
1.広報誌名
(1)NFCニューズレター
①発行年月日
偶数月発行(発行回数6回、発行部数6冊)(年度計画記載発行回数6回)
②料金
1部300円
③配布先 会場での販売,各都道府県の中央図書館,大学等
(2)カレンダー(上映会予定表)
①発行年月日
企画番組毎1回発行(発行回数6回)(年度計画記載発行回数6回)
②料金
無償
③配布先 会場内配布,都区内生涯学習施設,大学等
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
企画の広報活動としては、上映企画ごとの「NFCカレンダー」を中心に「展覧会 映画遺産」「こども映画館」
「扈賢贊講演会」のチラシを作成し、それらの情報をホームページでも公開した。特に共催上映である「韓国映画
―栄光の1960年代」についてはカタログを、「展覧会 映画遺産」については出品リストも刊行している。
平成14年度は、マスコミ向けに送られる「NFCカレンダー」にプレスリリースを同封し、企画の効果的な紹
介に努めた。
また、フィルムセンターの広報紙として隔月に刊行している「NFCニューズレター」では、企画関連の記事か
ら映画保存の最新情報までの幅広いテーマを扱い、映画関係者、研究者などに広く配布されている。
ホームページについては、13年度にフィルムセンターの事業を総合的に紹介する構成に大幅拡充したが、これ
に続き14年度は図書室の図書検索OPACの公開、フィルムセンターの最新ニュース、販売中の刊行物一覧など
も掲載するようにし、さらなるコンテンツの充実に努めた。
【見直し又は改善を要する点】
今後もホームページ上での情報提供の充実を図るとともに、広報活動に対する一般利用者側の意見等の収集に努
め、広報活動の一層の充実に努めたい。
166
(フィルムセンター)
(1)−3 デジタル化の状況
中期計画
(1)-2 収蔵品等の美術作品その他関連する資料の情報について、長く後世に記録を残すために、デジタル化を推進
する。
(5)-2 国内外に広く情報を提供することができるホームページについては、教育普及など多様な活用ができるよう
コンテンツを工夫し、中期目標の期間中毎年度平均で平成12年度のアクセス件数以上となるよう努力する。
(5)-3 デジタル化した収蔵品等の情報について、美術情報システム等により広く積極的に公開するとともに、その
利用方法について検討する。
また、デジタル情報の有料提供についての方策を検討する。
○実 績
1.所蔵作品のデジタル化
所蔵映画フィルムについてのデータベース構築のための文字情報のデジタル化を実施。
①今年度にデジタル化したデータ件数 6,341件(目標 − 件)
②平成14年度末収蔵作品数
34,561件
③平成14年度末デジタル化作品数 34,561件
④今後のデジタル化の対応
毎年収集した映画フィルム数をデジタル化予定
2.ホームページのアクセス件数(目標 件)(平成12年度アクセス件数
回)
3.デジタル化した情報の公開
なし
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
現在、蓄積されているNFCDのデータベース(所蔵映画フィルム材質や長さ等の物理的データ及び題名、監督、
出演者等の内容的データ)を基に所蔵映画フィルムの文字情報公開システムの構築は、平成15年度の予算において
経費が認められたため、平成15年度中に実施の予定である。
整備の進んでいる図書データベース(LIMEDIO)については、既に1月10日より検索システム(OPAC)
のホームページでの公開を始めたところである。
【見直し又は改善を要する点】
フィルムセンターでは、映画フィルムならびに映画関係資料の所蔵情報を内部の管理用システムであるコンピュー
タ・データベース(NFCD)上に構築しつつあるが、所蔵作品情報のインターネット環境における公開については、
現行のデータベースから新規システムへの移行が必要であると同時に、
画像情報の公開について今後の検討課題であ
ると考える。
167
(フィルムセンター)
(2)−1 児童生徒を対象とした事業
中期計画
(2) 新学習指導要領、完全学校週5日制の実施等を踏まえ、学校、社会教育関係団体と連携協力しながら、児童生
徒を対象とした美術品解説資料等の刊行物の作成、講座、ワークショップ等を実施することにより、美術作品等
への理解の促進、学習意欲の向上等を促し、心の教育に寄与するような教育普及事業を推進する。
また、児童生徒を対象とした事業について、中期目標の期間中毎年度平均で平成12年度の実績以上の参加者
数の確保に努める。
○実 績
1.相模原分館における小・中学校の児童生徒を対象とした上映会
①実施回数 5回(平成13年度実績5回)
②参加者数 401人(平成13年度実績 518人)
③担当した研究員数 1人
④事業内容
・平成14年 6 月25日,相模原市立青葉小学校6年生(上映作品「イーハトーブの赤い屋根」)
・平成14年10月22日,相模原市立青葉小学校2年生(上映作品「龍の子太郎」)
・平成15年 2 月14日,相模原市立青葉小学校5年生(上映作品「夏の庭 The Friends」)
・平成15年 3 月20日,相模原市立由野台中学校2年生(上映作品「夏の庭 The Friends」)
・平成15年 3 月20日,相模原市立由野台中学校1年生(上映作品「夏の庭 The Friends」)
2.企画上映「こども映画館」におけるトーク
①24回
②参加者数 959人
③担当した研究員数 6人
④各回の上映会の前に映画に関する理解を深めるため、研究員によるトークを実施した。
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
相模原分館におけるこども向け上映会は、学校主導で実施されるため、相模原市教育委員会を窓口として実施して
いる。市内全域の小・中学校への周知は行われているが、相模原分館近隣の小・中学校からの依頼が顕著である。
【見直し又は改善を要する点】
「こども映画館」については、広報活動にも力を入れて実施し、トークを含め上映作品も好評であったが、なかな
か集客に結びつかない結果となった。今後は、集客力を考慮に入れた番組編成や広報、上映開始時間などの実施方法
について、保護者や学校関係者等から意見を聴取するなど一層の検討をしていく必要がある。
168
(フィルムセンター)
(2)−2 講演会等の事業
中期計画
(3) 美術作品に関し、その理解を深めるような講演会、講座、スライドトーク及びギャラリートーク等を実施する
等、生涯学習の推進に寄与する事業を行う。
それらの事業について、中期目標の期間中毎年度平均で平成12年度の実績以上の参加者数の確保に努める。
また、その参加者に対しアンケートを行い、回答数の80%以上から、その事業が有意義であったと回答され
るよう内容について検討し、さらに充実を図る。
○実 績
1.開催日時:平成14年11月6日(水)午後7時から午後8時
2.講
師:ホ・ヒョンチャン(元韓国映像資料院理事長・映画評論家)
3.テ ー マ:
「1960年代の韓国映画」
4.参加人数:86名
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
海外及び国内から専門家を招いて行う国際映画シンポジウムは、平成元年度から実施されているが、これまで世界
の映画をめぐる様々な課題を取り上げることで、映画史研究に新しい視点を提供し、また日本のフィルム・アーカイ
ヴ活動に大きな影響を及ぼしてきた。
平成14年度は、上映企画「韓国映画―栄光の1960年代」の開催にあわせて実施した。今回は、本企画の共催
機関である韓国映像資料院の元理事長でもある扈賢贊(ホ・ヒョンチャン)氏を招聘し、韓国映画最初の黄金時代と
呼ばれた1960年代の映画状況についての講演会を行った。元映画プロデューサーで、
「わがシネマの旅 韓国映画
を振りかえる」の著者としても知られる扈氏は、戦後韓国映画史の生き証人でもあり、今回上映された作品の背景や
当時の映画界の状況を流暢な日本語で解説した。これまで日本における韓国映画の紹介は、1980年代に活躍した
監督を中心とするいわゆる「ニュー・ウェイブ」世代と、1990年代後半から現在まで隆盛を見せている現役世代
が中心になっており、その土台となった1960年代の秀作群にはなかなか触れられることがなかった。朝鮮戦争や
1960年の「四月革命」が映画にあたえた影響、女性向けのメロドラマや若年層向けの青春映画が大流行した背景、
韓国映画が危機に瀕したときに必ずヒットをもたらしてくれる物語「春香伝」の役割など、講演内容も、従来日本で
知られてきた韓国映画史の記述を大幅に補うもので、
並行開催の上映企画を立体化して捉えるためにも絶好の機会と
なった。
【見直し又は改善を要する点】
本事業は、映画保存の動向、映画史的な研究など、年によってテーマが異なるものの、様々な画像を使った講演の
希望が出ており、これらに対応していくための投影機材や機能を充実することが必要と考えている。また映画保存に
関するシンポジウムには、文化財関係者、映像や写真に関する各学会員、デジタル技術者など、映画関係者にとどま
らぬ多方面の関係者の参加が重要であり、そのための広報・集客活動を再考する必要がある。
169
(フィルムセンター)
(3)−1 研修の取組
中期計画
(4)-1 美術館・博物館関係者等を対象とした研修プログラムについて検討、実施する。
(4)-2 全国の公私立美術館等の学芸担当職員(キューレーター)の資質を向上し、専門性を高めるための研修を実
施し、人材養成を推進する。
(4)-3 公私立美術館・博物館等の展覧会の企画に対する援助・助言を推進する。
(4)-4 公私立美術館・博物館等が実施する研修会への協力・支援を行うとともに、情報交換、人的ネットワークの
形成に努める。
○実 績
1.映画製作専門家養成講座
①研修期間
4日間
②開催場所
フィルムセンター
③参加者数 115人(内修了者数62人)(平成12年度実績118人)
④担当した研究員数 4人
⑤事業内容
平成14年度で第6回を数える映画製作専門家養成講座は、平成9年度の第1回より日本映画の黄金時代
(1950年代)を築き上げた数々の映画人を講師に迎え、映画をめぐる技と匠を次世代の映画人に継承すべ
く実施されてきた。第3回までは映画作りの部門別に講座を開催してきたが、第4回からは映画芸術に多大な
功績を残した人物の業績をたどりつつ、受講生が映画製作を学べる場を提供している。
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
平成14年度は、戦前の1940年にデビューして以来長年にわたって活躍し、今も現役の撮影監督である岡崎宏
三氏を総合プロデューサーとして迎え、各日のゲスト講師とともに、
「師・青島順一郎と戦前の撮影術」
「新しい技術
への挑戦」
「巨匠たちとともに」
「海外ロケーション・合作の実際」という4つのテーマに沿って講義を実施した。撮
影所における伝統的な映画作りばかりでなく、記録映画、低予算の映画作り、外国の監督との仕事など、幅広い撮影
環境に適応してきた岡崎氏の講義は、ユーモアあふれるよどみない語り口とともに、日本映画史を技術面から縦断す
る絶好の機会になった。映画のカラー化や大型化、新型カメラの導入といった技術革新の問題、川島雄三・豊田四郎
など巨匠の演出作法における撮影監督の役割、海外ロケーションにおける意思疎通の問題といった多様なテーマは、
これから映画製作を目指す受講者に少なからぬインパクトを与えるとともに、
現代の映像作りが伝統的な映画製作と
どのように接し、どのように今後の映画製作に活かせるかが浮き彫りになったと思われる。
【見直し又は改善を要する点】
今後の課題としては、低予算化・脱スタジオ化が進む現代の映画製作への対応と、大予算・撮影所内使用の「黄金
時代」
(1950年代)に行われていた人材育成システムなどの流儀を、当該講座のカリキュラムで実行上できてい
ない実技部分とあわせて、具体的にどのように組み込むかを検討する必要がある。また、それと関連して、現在映画
製作の教育に携わっている各種団体など、外部機関との緊密な連携がますます必要になっていくものと思われる。
170
(フィルムセンター)
(3)−2 大学等との連携
○実 績
1.博物館実習生の受け入れ
①受入期間 平成14年7月23日∼平成14年7月27日(5日間)
②開催場所 フィルムセンター及び相模原分館
③参加者数 9人(平成12年度実績 − 人)
④担当した研究員数
6人
⑤事業内容
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
改築中であった美術館本館の事務室がフィルムセンターに一時移転していたため、
受け入れスペース等の問題に
より平成11年度から13年度まで休止していた博物館学実習を、平成14年度より再開することとした。今年
度は7大学より9名の実習生を受け入れ、フィルムセンターの歴史と運営、フィルム・アーカイヴの理念、各部
門の仕事、相模原分館におけるフィルム保存の実際、フィルムの取り扱いなどを講義するとともに、アーカイヴ
資料の整理の実習としてスチル写真の整理作業に当たらせた。網羅的な映画の収集・保存・復元を行うフィルム・
アーカイヴ活動の重要性も伝えるため、前半は講義を中心とし、その理念への理解を踏まえて実習に移行するよ
うカリキュラムを作成した。これにより、実習生に対して、映画を扱うという珍しさばかりではない新鮮な刺激
を与えることができたと考える。
【見直し又は改善を要する点】
今後は、実際の映画作品そのものに関する分析調査や分類整理など、フィルム・アーカイヴの他の基本業務に
ついても実習で扱いたいと考える。
171
(フィルムセンター)
(3)−3 ボランティアの活用状況
中期計画
(6)-1 ボランティア等や支援団体を育成し、ボランティア等と連携協力して展覧会での解説など国立美術館が提
供するサービスの充実を図る。
○実 績
1.登録人数
なし
2.活動内容
なし
3.今後の取り組み
7階展示室の映画部門専有化に伴う映画の歴史等の解説や、
「こども映画館」における上映前トークなどを行
うボランティアの導入について検討する。
○自己点検評価
美術館及び工芸館での活動状況を踏まえて、7階展示室での解説や「こども映画館」での解説ボランティア等導
入の検討を行っていきたいと考えているが、フィルムセンターの場合は、大衆芸術である映画(娯楽)を取り扱
っているため、本館・工芸館と異なり、一般的な作品の解説ボランティアは馴染み難く、この点を考慮に入れた
導入方法を今後検討していきたい。
(4)渉外活動
172
(フィルムセンター)
中期計画
(6)-2 企業との連携等、国立美術館の業務がより充実するよう今後の渉外活動の方針について検討を行う。
○実 績
「こども映画館」を実施するにあたり、企業の協力により記念品の提供を行った。
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
なし
【見直し又は改善を要する点】
事業運営、広報、サービスを充実するため、企画上映及び展覧会への新聞社、企業、メセナ財団の協力や支援を
得る方策の検討を行う必要がある。
173
(フィルムセンター)
5.その他の入館者サービス
中期計画
(1)-1 高齢者、身体障害者等の利用にも配慮した快適な観覧環境を提供するため、各館の方針に従って展示方法、表
示、動線、施設設備の工夫、整備に努める。
(1)-2 入館者サービスの充実を図るため、観覧環境の整備プログラム等を策定し、計画的な整備を行う。
(1)-3 一般入館者を対象とする満足度調査及び専門家からの批評聴取等を定期的に実施し、調査結果を展示等に反映
させるとともに、必要なサービスの向上に努める。
(1)-4 展示解説の内容を充実させるとともに、見やすさにも配慮する。また、音声ガイドやハイビジョン等を活用し
た情報提供を積極的に推進し、入館者に対するサービスの向上を図る。
(2) 入館者のニーズを把握、分析し、夜間開館の実施等開館時間の弾力化や小中学生の入場料の低廉化など、入館者
へのサービスを心がけた柔軟な美術館展示活動等を行い、気軽に利用でき、親しまれる美術館となるよう努力す
る。
(3) ミュージアムショップやレストラン等の施設を充実させるなど、入館者にとって快適な空間となるよう館内環境
を工夫する。
○実 績
1.高齢者・身体障害者のための施設整備等 (1)-1
①障害者トイレ
1個所(1階1個所)
②障害者エレベータ
2基
③段差解消(スロープ)
1個所(正面玄関)
④貸出用車椅子
2台(1階)
⑤自動ドア
1箇所(正面玄関)
2.観覧環境の充実 (1)-2、(1)-4
7階展示室での映像モニターの導入により、わかりやすい展示環境を整備した。
3.夜間開館等の実施状況 (1)-3
(1)上映開始時間の変更
平日夜の回の上映開始時間を30分繰り下げ、午後7時からとした。
(2)小中学生の入場料の低廉化
展示室の小中学生料金を無料とした。
(3)(2)以外の入場者料金の取り組み方
ア.学生料金を大学生料金と高校生料金に分け,高校生料金を現行の学生料金の低廉化を図る。
イ.江戸開府400年記念事業参加に伴う減額。
(4)その他の入館者サービス
ア.館内での案内情報の充実
・1階受付カウンターで館内の案内情報の提供を行っている。
・1階、2階、4階及び7階の来館者が利用できるフロアにパンフレット台を設置し、上映プログラムや展
覧会等のチラシを配布している。
イ.65歳以上の入館者に対する入館料の学生料金の適用としている。
ウ.上映会観覧当日に限り、展示室観覧料を団体料金の適用としている。
4.アンケート調査(1)-3
①調査期間
企画上映アンケート調査の際に実施
②調査方法
入場者にアンケート用紙を配布し,記入後回収。
③アンケート回収数 793件(未回答を含む)
④アンケート結果 ・良い82.85%(570件)・普通13.66%(94件)・悪い3.49%(24件)
5.一般入館者等の要望の反映 (2)
開場前に並んでいる入場者の便宜を図るため2階エレベータ前ホールへ18席の椅子及び上映会場入口へ通
じる階段部の踊り場への椅子の設置している。
6.レストラン・ミュージアムショップの充実 (3)
レストランは火曜日から金曜日は午前10時30分から午後8時30分、土曜日及び日曜日は午前10時30
分から午後6時まで営業し、入館者へのサービスに努めた。
174
(フィルムセンター)
フィルムセンターにおいては、施設規模の面からミュージアムショップ等のスペース確保が難しいが、会場入
口の受付において出版物等の販売を行い、来館者へのサービスに努めた。
7.特記事項
今後ともアンケート調査等により、入館者のニーズを把握・分析し、上映開始時間の見直しや展示室、図書室
その他の利用者に対するきめ細かいサービスを実施する。
○自己点検評価
【良かった点、特色ある取組み】
上映時間を30分繰り下げたことで、一般の方々からの利用しやすくなったとの意見が多く寄せられたが、反面、
少数ではあるが、遠方の方から帰宅が遅くなるとの声も寄せられた。
【見直し又は改善を要する点】
前記のことでも言えるように、開かれた施設を目指し、全員が満足できる入館者サービスを実施するには、施設面
や人員・経費的面で対応できない困難が伴うが、今後も入館者の要請に答えられるようきめ細かいサービスの確保、
提供ができるように努めることは重要と考える。
175
(フィルムセンター)
修復・復元した美術作品の一覧(平成14年度)
(洗浄)
種別
外国劇映画
外国劇映画
外国劇映画
日本劇映画
日本劇映画
日本劇映画
日本劇映画
日本劇映画
日本劇映画
日本劇映画
日本劇映画
日本劇映画
日本劇映画
日本劇映画
日本劇映画
日本劇映画
日本劇映画
日本劇映画
日本劇映画
日本劇映画
日本劇映画
日本劇映画
(デジタル復元)
日本劇映画
館名:東京国立近代美術館フィルムセンター
監督名
クロード・オータン=ララ
イエジー・カヴァレロヴィッチ
ピーター・ブルック
小津安二郎
黒木和雄
松本俊夫
吉田喜重
篠田正浩
熊井啓
降旗康男
神代辰巳
溝口健二
小林正樹
市川崑
新藤兼人
溝口健二
河崎義祐
馬場康夫
佐藤純彌
仁科紀彦
大島渚
大島渚
作品名
可愛い悪魔
夜行列車
雨のしのび逢い
晩春
竜馬暗殺
修羅
エロス+虐殺
はなれ瞽女おりん
サンダカン八番娼館 望郷
冬の華
遠い明日
近松物語
あなた買います
プーサン
愛妻物語
西鶴一代女
青春グラフィティ スニーカーぶるーす
私をスキーに連れてって
敦煌
江戸の朝霧
絞死刑
東京戦争戦後秘話
伊藤大輔
斬人斬馬剣
備考
調査研究一覧
名称
研究者名
「デジタル時代の 岡島尚志
フィルム・アーカイ
ヴを考える」(論
文)
岡島尚志
「Film
Preservation in
Japan: Difficulties
and Hopes」(講
演・研究発表)
「フィルム・アーカ 岡島尚志
イヴと映像教育」
(講演・研究発
表)
「映画/フィルム 岡島尚志
/シネマを考え
る」(講演)
館名:
東京国立近代美術館フィルムセンター
外部研究者との 研究成果の公開(図録・研究紀要・
セミナー・シンポジウム)
交流実績
フィルム・アーキヴィス
日本写真学会発行の
トの視点から標記の
「日本写真学会誌 65巻2号」
テーマに関する世界
に掲載された。
の議論などを紹介し
つつ、問題点を整理・
考察するもの。4月25
日発行。
第58回FIAFソウル会 約30名の講演 当該シンポジウムの後、他の講
議で開催されたアジア 者等が4月22
演者の講演録と共に韓国にて
映画の保存をめぐる 日・23日両日の 英語・韓国語にて活字化された
シンポジウムにて、日 シンポジウムで (「Asian Cinema ‐ Yesterday,
本の映画保存につい プレゼンテー
Today and Tomorrow」所収)。
て講演(英語)。講演 ションを行なっ
が行なわれたのは4 た。
月23日。
日本映像学会・早稲 水越伸、 斉 公開シンポジウムであり、映像
田大学大会で行なわ 藤綾子、 長 学会会員以外の学生・研究者も
れたシンポジウム「映 谷正人ほかが 聴講した。
像と教育」にてパネリ 本シンポジウム
のパネリストと
ストを務め、標記の
テーマについて発表 なった。
を行なった。6月1日に
発表。
立教大学文学部特別 立教大学文学 公開講義であり、広く立教大学
講義として、標題につ 部上田信教授、 の学生・教員が出席した。
いて講演を行なった。 同・藤井仁子助
手らと意見交換
9月18日。
を行なった。
内容
備考
場所はソウル
の世宗文化セ
ンター。
場所は早稲田
大学。
場所は立教大
学文学部。
「フィルム・アーカ 岡島尚志
イヴとデジタル技
術」(講演・研究
発表)
日本写真学会秋季大
会特別フォーラムにて
標題について講演。
11月19日。
日本写真学会 学会の公開講座として、多くの 場所は京都大
学内、京大会
会員の研究者 研究者が聴講した。
館。
多数と意見交換
を行なった。
「日本における韓 岡島尚志
国映画上映、韓
国における日本
映画上映」(論
文)
岡田秀則
「日本のナイト
レート・フィルム製
造:初期の事情」
(論文)
「菊地周 ジャワ時 岡田秀則
代を語る」(インタ
ビュー)
標題について紹介し、
両国の文化交流につ
いて考察する。3月10
日発行。
韓国文化院発行の「韓国文化」
(2003年3月号)に寄稿したも
の。
日本の初期の映画
フィルム製造に関する
研究。
要約を『シネマどんどん』第1号
(日本映画史研究会)に掲載。
日本占領期インドネシ
アの映画作りに関す
るインタビュー。
『菊地周の記録』(菊地周を偲ぶ
会)
「記録映画史の 岡田秀則
空白を探る 日本
映画社ジャカルタ
製作所の興亡」
(論文)
「Hollywood
岡田秀則
Flatlands」(書評)
日本占領期インドネシ
アの映画作りに関す
る文章。
『Documentary Box』20号(山形
国際ドキュメンタリー映画祭実
行委員会、翻訳された英語版も
発行)
アニメーション関連書
籍(英語)の書評。
『学鎧』2002年11月号(丸善)
「Une generation 岡田秀則
muette? Non!(沈
黙の世代?ノ
ン!)」(論文)
外国人向けの日本映
画史の解説文。
『Panorama du cinema japonais
des annees 80 et 90(1980-90
年代日本映画パノラマ)』カタロ
グ(パリ日本文化会館、日本語
原文を執筆)
「ナイトレート返還 常石史子
/変換始末」(論
文)
「糸を張る─フレ 常石史子
デリック・ワイズマ
ン『霊長類』を中
心に」(論文)
「描かれた窓の奥 常石史子
から」(論文)
「文明の未来─ 常石史子
混成か、純化か」
(シンポジウム)
可燃性フィルムの不
燃化等にまつわる問
題を考察。
フレデリック・ワイズマ
ン監督のドキュメンタ
リー作品に関する考
察。
エリック・ロメール監督
『グレースと公爵』に
関する考察。
人形浄瑠璃および日
本の初期映画に関す
る考察。
『文化資源学会ニューズレター』
2号
「第11回中世の里なみおか映画
祭」カタログ
『ユリイカ』2002年11月号
一橋大学言語社会研究科主催
国際シンポジウム「文明の未来
─混成か、純化か」