第 4 期シカ保護管理計画 (案) 平成24年3月 兵 庫 県 目 次 1 保護管理すべき鳥獣の種類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2 計画の期間・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 3 計画の対象区域 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 4 計画策定の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 5 これまでの経過と現状 (1) これまでの取り組み ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ (2) 第3期シカ保護管理計画の評価 (3) 現状 ・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1 1 2 6 保護管理の基本的な考え方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 7 保護管理の目標・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・ 3 目標達成のための方策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (1) 個体数管理・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (2) 被害防除・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (3) 生息環境管理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (4) その他保護管理を推進するために必要な事項・・・・・・・・・ 3 3 4 5 5 8 9 モニタリング等調査研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (1) 生息状況調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (2) 被害調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (3) 生息環境調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 5 6 6 資 料 編 1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 これまでの経過と現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 (1) これまでの取り組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (2) 防護柵の設置状況 (3) 防護柵の効果 8 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 (4) 捕獲数の推移 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 (5) 分布の変化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 (6) 密度指標の変化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 ① 目撃効率の年次推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 ② 糞塊密度の年次推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 (7) 妊娠率の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 (8) 食性の変化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 (9) シカの一般特性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 (10) 農林業被害の推移 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 (11) 農業被害の状況(農会アンケート結果) ・・・・・・・・・・・・・ 14 ① 被害の分布・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 ② 被害の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 (12) 下層植生被害の推定分布・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 (13) 2 災害に強い森づくりの実施状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 保護管理の目標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (1) 免許種別狩猟者の推移 (2) 年代別狩猟者の推移 17 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 3 計画の実施体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 4 被害防止パンフレット・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 1 保護管理すべき鳥獣の種類 ニホンジカ(以下「シカ」という。) 2 計画の期間 平成 24 年 4 月 1 日∼平成 29 年 3 月 31 日 3 4 計画の対象区域 兵庫県全域 計画策定の目的 (1) 農林業被害等の軽減及び被害地域の拡大抑制 (2) 森林生態系への被害抑制 (3) 地域個体群*1の健全な維持 *1 地域個体群:ある生物種の地域的な集まり。獣類では大きな河川や市街地、道路等で分断されることが 多く、分断が長く続くとその地域特異の遺伝的形質を持つようになる。本県の場合、本州部と淡路島、二 つの地域個体群に分かれると考えられる。 5 これまでの経過と現状 (1) これまでの取り組み 昭和 50 年代から急増したシカによる農林業被害に対応するため、平成 6 年 度、全国に先駆けてメスジカの狩猟獣化に踏み切った。 さらに、平成 12 年度からは、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の改 正に伴い創設された、特定鳥獣保護管理計画制度に取り組み、これまで3期に わたりシカ保護管理計画を策定してきた。この計画に基づき、被害の低減を目 標とした頭数管理の考え方を導入し、メスジカの狩猟獣化に加え、狩猟期間の 延長、捕獲頭数制限の撤廃等の規制緩和、さらに地域ごとの生息密度に応じた 捕獲目標頭数の設定と目標達成のための捕獲支援策を実施するとともに(資料 P8.表-1)、被害対策としての防護柵の設置の推進(資料 P9.表-2)、集落環境 整備など集落ぐるみの対策の推進、生息状況に関する諸調査等、総合的な対策 を実施してきた。 (2) 第3期シカ保護管理計画の評価 平成 19 年4月に開設した兵庫県森林動物研究センター*2 における調査研究に より、シカの生息密度と農業被害及び森林下層植生被害の関係から、目撃効率* 3 が 1.0 以下の生息密度になると、農業被害、森林被害ともに軽微となることが 明らかになったことから、平成 21 年3月に第3期シカ保護管理計画を変更し、 県 下 全 市 町 に お い て 目 撃 効 率 を 1.0 以 下 と す る こ と を 目 標 と し て き た 。 (P3.8(1)個体数管理を参照) 保護管理計画の下位計画として、平成 22 年度から策定している年度毎の事業 実施計画において、平成 28 年度末までにこの目標を達成するために最低限必要 な捕獲目標を年間 30,000 頭とし、捕獲拡大対策に取り組んできた。これまでは 年間捕獲目標を達成しているが(資料 P10.図-2)、県下全市町での目撃効率 1.0 以下を達成するためには継続した取り組みが必要である。 -1- *2 兵庫県森林動物研究センター:野生動物の生息地管理・個体数管理・被害管理を科学的、計画的に進 める「野生動物の保護管理(ワイルドライフ・マネジメント)」に取り組むため、兵庫県が丹波市青垣 町に開設した施設 *3 (3) 目撃効率:1人の狩猟者が1日に目撃したシカの頭数の平均値 現状 ① 分布域 ・ 本州部では、瀬戸内海沿岸の都市部を除く県下の広範な地域に生息し、京 都府・大阪部・岡山県・鳥取県とも連続している。 分布の中心は南但馬地域及び西播磨地域にあるが、近年の人里周辺の環 境変化や積雪量の減少、個体数増大等様々な要因により、南北に拡大してい る。 ・ 淡路地域では、主に、南部の地域(論鶴羽山系)を中心に生息し、南北に 拡大している。(資料 P11.図-4、-5 参照) ② 生息状況 第3期シカ保護管理計画第2次変更(平成 22 年 9 月)時の推定生息数(平 成 20 年度猟期前)は下表のとおりであり、平成 22 年度までの、シカの密度 指標(資料 P11∼.図-6、-7)は依然として横ばいで顕著な減少傾向を示して いない。 区 分 目撃効率 糞塊密度 推定自然増加頭数 (90%信頼限界) 推定自然増加率 (90%信頼限界) 推定個体数 (90%信頼限界) 本州部地域 1.76 19.3 21,507頭 (16,682∼36,288 頭) 15.0% (8.5∼26.9%) 143,812頭 (63,063∼414,707 頭) 淡路地域 1.55 36.0 541頭 (233∼1,726 頭) 12.8% (5.5∼26.4%) 4,209頭 (1,690∼15,688 頭) ※ MCMC 法によるベイズ推定を実施。(平成 12 年度から 20 年度までの捕獲頭数、 糞塊密度、目撃効率のデータを統計処理することにより推定) ※ 平成 22 年度より年間捕獲目標3万頭とし、36,774 頭捕獲した実績は平成 24 年度に検証する。 ③ 被害状況 平成 22 年度では、野生鳥獣全体の被害金額約9億7千万円のうち、シカによる ものが最多の約4億7千万円で全体の 48%を占めている。近年、農林業被害金額 は一旦減少傾向を示していたが、再び増加傾向に転じており、高齢化の進行によ る中山間地域での耕作放棄地の増加がシカ被害を助長している側面がある。(資 料 P14∼.図-10∼-12) また、最近5年間の森林の下層植生の衰退度の変化を見ると、目撃効率が高 く、高い密度でシカが生息していると考えられる南但馬西部と、シカ密度が高 まりつつある西播磨北部において、衰退レベルが2ランク以上深刻化した森林 が多く見受けられる。(資料 P15∼.図-13∼-15) さらに、シカが自動車や列車と衝突する等の事故や、庭木を食害するなどの 生活被害も増加している。 -2- 6 保護管理の基本的な考え方 県下のシカの生息数と被害状況を踏まえ、年度ごとに個体数管理や被害対策への 取り組みを検討する順応的管理を行う。 具体的には、次の手順で行う。 ① モニタリング調査結果に基づき現状を把握し、被害の軽減と個体群保全の両面 から妥当な被害水準(被害の深刻な集落の割合、自然植生の衰退度)と生息密度 指標(目撃効率)の目標値を設定する。 ② 毎年、シカの生息状況により指標の将来予測を行い、上記目標の達成に向けた 年間捕獲目標を設定する。 ③ この年間捕獲目標や達成するための施策、被害軽減に必要な防護柵の設置、生 息環境の管理等の対策等を示した「年度別事業実施計画」*4 を策定し実行する。 *4 7 年度別事業実施計画は、「野生動物保護管理運営協議会」において、検討・協議した上で、県が作成し 公表する。 保護管理の目標 下記を達成するために必要な生息密度に誘導する (1) 農業被害の「深刻」*5 な集落の割合3%以下、「大きい」*5 集落の割合8% 以下 (2) 「下層植生衰退度3以上」*6 の森林の割合15%以下 ※ 農業被害、下層植生衰退度の目標は現状の半減とする。 ・ 農業被害の現状(平成20∼22年度農会アンケート結果の有効回答数に よる。)は、「深刻」な集落6.9%、「大きい」集落16.6%。 ・ 下層植生衰退度の現状(平成18年度、22年度下層植生衰退度調査によ る。)は、「衰退度3以上」の森林の割合34.5% *5 森林動物研究センターが毎年実施している農業被害状況アンケート調査において、「深刻」「大きい」 「軽微」「ほとんどない」「いない」の5段階に区分している被害程度の内、「深刻」は生産量の30 %を超える被害が出ている集落、「大きい」は30%未満の被害が出ている集落。 *6 森林動物研究センターが5年に1回実施している下層植生衰退度調査において、「衰退度0」から「衰 退度5」までの6段階に区分している被害程度の内、「衰退度3」は半数以上の森林で高木の後継樹が 消失、傾斜地では約10%の森林で強度の土壌浸食が発生する衰退の程度。 8 目標達成のための方策 (1) 個体数管理 目撃効率1.0以下になるよう個体数管理を行う。 この水準になると、農業被害の「深刻」な集落、「大きい」集落の割合は、そ れぞれ5.4%以下、15.8%以下、「下層植生衰退度3以上」の森林が5. 1%以下となることが見込まれる。 農業被害については、個体数管理とあわせて被害防除対策を総合的に実施する ことにより、保護管理の目標の達成を目指す。 【方 策】 年間捕獲目標を設定して、適切な個体数管理を実施する。 ・ 年間捕獲目標は、生息状況に応じて事業実施計画により市町毎に設定す る。 ・ 年間捕獲目標を達成するため、年度毎に実施する狩猟規制の緩和措置や支 援施策については事業実施計画で定める。 -3- 【個体数管理の考え方】 研究センターにおける調査研究により、シカの生息密度と農業被害及び森林下層 植生被害の関係から、目撃効率が1.0以下となるような生息密度になると、農業 被害、森林被害ともに軽微となることが明らかとなったことから、目撃効率を基準 とする個体数管理を行う。 図−1 100% 90% 図−2 目撃効率と農業被害の関係 100% 5.4% 10.9% 14.3% 20.6% 15.8% 80% 90% 31.3% 22.7% 70% 32.4% 60% 50% 1.0% 3.1% 3.8% 13.8% 8.8% 15.6% 16.7% 80% 28.7% 70% 目撃効率と下層植生衰退度の関係 0.0% 1.3% 3.8% 38.5% 31.3% 60% 36.0% 50% 36.6% 40% 40% 39.5% 30% 20% 35.7% 42.3% 10% 12.3% 0% いない 0-1.0 ほとんどない 軽微 1.0-2.0 52.6% 11.0% 4.0% 5.7% 5.7% 2.0-3.0 3.0-12.0 大きい(生産量の30%未満) 深刻(生産量の30%以上) 10% 目標 18.4% 18.4% 9.4% 0% 0.0-1.0 衰退度0 衰退度1 1.0-2.0 衰退度2 1.8% 2.0-3.0 衰退度3 平成22年度調査 平成20∼22年度の3年間平均 (2) 39.6% 20% 11.6% 目標 30% (衰退度0∼衰退度2) 9.5% 大 半 の 森 林 に 高 木 の 後 継樹が存在 強度の土壌浸食はほと んど発生しない。 28.6% (衰退度3) 半数以上の森林で高木 の後継樹が消失 傾斜地では約10%の森 林で強度の土壌浸食が 33.3% 発生 (衰退度4、5) ほぼ全ての森林で高木の 後継樹が消失・樹皮剥ぎ 14.3% 被害も深刻化 傾斜地では約30%の森林 で強度(地表面積の50% 14.3% 以上)の土壌浸食が発生 0.0% 3.0衰退度4 衰退度5 (森林動物研究センター調査) 被害防除 農業被害の「深刻な集落の割合を3%以下」「大きい集落の割合8%以下」 に抑えるためには、目撃効率を1.0以下とする個体数管理だけでは達成でき ないため、地域住民の主体的な被害対策への取り組みを進めることとし、県や 市町、関係団体はこうした取り組みを積極的に支援する。 【方 策】 ① 防護柵の設置・点検・改善 ・ 各種事業を活用し、周辺集落とも連携した農地を効率的に防護する形 態の防護柵の設置を進める。 ・ 設置した防護柵による防除効果を高めるため、設置者による定期点検 の実施への支援を進める。 ・ ② 地形に応じた高さアップや耐久性強化など防護柵の機能向上に関する 支援を進める。 シカを引き寄せない集落づくりの普及指導 シカの集落への出没を防ぐための効果的な対策を普及する。 -4- (3) 生息環境管理 落葉広葉樹の保全・復元、及び針葉樹人工林の広葉樹林や針広混交林への誘 導など、野生鳥獣の生息環境に必要な多様な森林整備を図るため、県民緑税を 活用して、「野生動物育成林整備*7」や「針葉樹林と広葉樹林の混交林整備*8 」 を進める。また、獣害対策にも繋げることをねらいとして、地域住民が行う 「住民参画型森林整備*9」を支援する。 *7 野生動物育成林整備:県民緑税を活用した「災害に強い森づくり」のひとつ。野生動物と人とのあつれ きが生じている地域において、人と野生動物との棲み分けのゾーンを設けるとともに、森林の奥地に広葉 樹林を整備するもの。 *8 針葉樹林と広葉樹林の混交林整備:県民緑税を活用した「災害に強い森づくり」のひとつ。手入れ不足 の高齢人工林を部分伐採し、跡地に広葉樹を植栽して多様な混交林に誘導するもの。 *9 住民参画型森林整備:県民緑税を活用した「災害に強い森づくり」のひとつ。地域住民やボランティア 等による自発的な「災害に強い森づくり」整備活動に対し、資機材等を支援するもの。 災害に強い森づくり(第2期分:平成 23∼27 年度)実施計画量 単位:ha 針葉樹林と広葉樹 住民参画型森 野生動物育成林整備 林整備 バッファーゾーン整備 広葉樹林整備 林の混交林整備 箇所数 70 40 50 60 面積(ha) 1,400 400 1,000 120 ※ 面積は、区域面積を記載 (4) その他保護管理を推進するために必要な事項 本県のシカの保護管理を進めるにあたって、現時点では増えすぎた個体数を いかに調整するかが最も重要な課題であるため、下記の取り組みに努める。 ① 狩猟者の確保 ② 捕獲効率を高めるための捕獲方法の開発と普及 ③ 各地域において、市町と狩猟者団体などが連携して、より効果的に捕獲を進 めることが可能な体制づくり 9 ④ シカの資源としての有効利用 ⑤ 捕獲個体の効率的な処理 モニタリング等調査研究 以下の項目のモニタリングを行う。 (1) 生息状況調査 ① 出猟カレンダー・有害捕獲カレンダー調査 メッシュ別の性別捕獲数・出猟日・目撃情報を収集し、地域別の目撃効率 や捕獲効率の変化を把握する。 ② 糞塊密度調査 毎年、秋季に同一箇所の糞塊の密度を調査し、生息密度の経年変化を推定 する。 ③ 捕獲個体調査 捕獲個体を調査し、性別構成・齢構成・妊娠率・栄養状態などを把握す る。 -5- (2) 被害調査 ① 地区レベルの農業被害状況把握 農業センサス *10 データにおける集落単位で、被害状況のアンケート調査を 行い、農業被害の発生状況とその変化をモニタリングする。 *10 農業センサス:すべての農家を対象に調査票により、その農家の農業について調査を行う、国勢調査 の農業版。 ② 野生鳥獣による農林業被害調査 毎年、市町毎に被害作物や被害金額等の内容を調査する。 (3) 生息環境調査 ① 下層植生の衰退度調査 シカの食害による森林の下層植生の衰退状況を、県内 300 箇所で5年に1 回調査する。 ② 野生動物育成林整備の効果検証 事業により実施した森林整備、バッファゾーン、植生保護柵等の効果につ いて、事業実施後に検証を行う。 -6- 資 料 -7- 編 1 (1) これまでの経過と現状 これまでの取り組み(表―1) 年 度 平成 6 年度 平成 10 年度 平成 12 年度 平成 13 年度 平成 14 年度 平成 15 年度 平成 16 年度 平成 17 年度 平成 18 年度 平成 19 年度 平成 20 年度 平成 21 年度 平成 22 年度 内 容 捕獲目標 本州部 40(現 15)市町でメスジカ狩猟獣化 狩猟期間延長(12/1∼1/31→11/15∼2/15):環境省 第1期シカ保護管理計画策定 8,000 本州部 63(現 26)市町)でのメスジカ狩猟獣化 個体群管理事業の開始 第2期シカ保護管理計画策定 12,000 県単独での防護柵設置への助成開始 本州部 63(現 26)市町での 狩猟期間の延長(11/15∼2/15→11/15∼2 末) 1日当たりの捕獲制限緩和(1 頭→2 頭) 本州部 63(現 26)市町)と淡路島 6(現 3)市町での メスジカ狩猟獣化 第3期シカ保護管理計画策定 4月 兵庫県森林動物研究センター開設 県下全域での 狩猟期間の延長(11/15∼2/15→11/15∼2/末) メスジカ狩猟獣化 第3期シカ保護管理計画第1次変更 本州部での 狩猟期間の延長(11/15∼2/末→11/15∼3/15) 捕獲制限撤廃(1 人 2 頭→無制限) 地域別捕獲目標の設定 淡路島での 捕獲制限緩和(1 人 1 頭→2 頭) 直径 12cm 以上のくくりわな解禁 県下全域での わな猟捕獲促進、新型捕獲方式の開発/普及 第3期シカ保護管理計画第2次変更 本州部での地域別捕獲目標の増 淡路島での 捕獲制限撤廃(1 人 2 頭→無制限) 地域別捕獲目標の設定 県下全域での 個体数調整事業の拡充 わな猟による捕獲促進 新型捕獲方式の開発・普及 -8- 捕獲実績 5,755 8,985 9,923 11,246 12,035 13,447 14,000 14,000 13,190 15,078 15,575 16,000 16,241 18,000 19,744 20,000 30,000 20,106 36,774 (2) 防護柵の設置状況 農林地への侵入を物理的に防止するため、西播磨、但馬南部地域を中心に、各 種補助制度を活用した防護柵の設置が進んでおり、平成 22 年度までに累計で約 4,090km が設置されている。 国庫 県単独 県民局 神戸 10 0 阪神北 101 0 東播磨 0 0 北播磨 65 66 中播磨 西播磨 但馬 丹波 淡路 県計 57 229 212 297 96 1,067 173 476 196 105 34 1,050 表−2 (3) 自治振 市町単 その他 小計 0 6 0 68 0 21 0 22 0 0 0 0 10 128 0 221 113 253 430 30 145 1,045 32 121 376 98 126 796 0 124 4 4 0 132 375 1,203 1,218 534 401 4,090 防護柵の設置状況 防護柵の効果 農会アンケート調査の結果によれば、防護柵の効果は多くの集落で認められて いるが、年を追う毎にその効果が減少している傾向があり、設置後の維持管理 の重要性を普及していく必要がある。 100% 90% 4.9% 8.7% 6.3% 10.8% 13.9% 15.8% 18.0% 10.7% 10.8% 7.8% 80% 70% 60% なし 不明 あり 50% 40% 86.4% 85.9% 71.3% 75.4% 73.4% H20 H21 H22 30% 20% 10% 0% H18 H19 図−1 農会アンケート結果 -9- (4) 捕獲数の推移 狩猟による捕獲数は、昭和 31 年度では 421 頭であったものが、30 年後の昭 和 61 年度には 3,324 頭と、右肩上がりで増加したが、それ以後ほぼ横ばい傾向 であった。 しかし、県内の 40 市町でメスジカの狩猟を可能とした平成 6 年度には、4,728 頭、全国的に猟期が1ヵ月延長された平成 10 年度には 7,212 頭、メスジカの狩 猟可能を 63 市町に拡大した平成 12 年度には 7,435 頭、さらなる猟期延長(2月 末まで)とメスジカ狩猟可能区域を 69 市町に拡大した平成 15 年度には 9,475 頭 と順次増加し、平成 17 年度以降は1万頭前後で推移していた。平成 22 年度に は、年度事業実施計画において捕獲目標を3万頭に設定し、種々の方策を実施 した結果、狩猟による捕獲数は 19,950 頭となった。(市町数は当時の数で記載) 一方、有害鳥獣捕獲*11 による捕獲数は、昭和 51 年度では 55 頭であったが、 農林業被害の拡大とともに増加し、平成 13 年度以降は有害捕獲を支援する個体 群管理事業による捕獲も含め、最近は 7,000∼9,000 頭で推移していた。さら に、年間捕獲目標3万頭に設定した平成 22 年度には 17,000 頭に迫る頭数を捕獲 し、狩猟と有害鳥獣捕獲を合わせた総捕獲数は、36,774 頭となっている。 40,000 35,000 捕 獲 数 30,000 有害 25,000 狩猟 20,000 15,000 10,000 5,000 0 S37 S39 S41 S43 S45 S47 S49 S51 S53 S55 S57 S59 S61 S63 年度 図−2 H2 H4 H6 H8 H10 H12 H14 H16 H18 H20 H22 捕獲数の推移(有害・狩猟別) 40,000 35,000 30,000 捕 獲 数 不明 メス オス 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0 S37 S40 S43 S46 S49 S52 S55 S58 S61 H1 H4 年度 図−3 捕獲数の推移(雌雄別) - 10 - H7 H10 H13 H16 H19 H22 (5) 分布の変化 明石海峡により、分布は大きく本州部地域と淡路地域に分かれている。 図―4 シカ目撃効率(H22 年度) 図−5 シカ目撃効率の変化(H18→22 年度) (6) 密度指標の変化 密度指標として、狩猟者による目撃効率と糞塊密度を、毎年調査している。 過去10年間の推移を見ると、本州部では、目撃効率は横ばい、糞塊密度は 増加傾向である。淡路地域では、近年はどちらの指標も減少傾向を示していた が、最新の調査結果では増加に転じている。 ① 目撃効率の年次推移(図−6) 目撃効率 3 2.5 1人の狩猟 者が1回 の出猟で 目撃したシカの頭数 2 1.5 1 0.5 本州 淡路 0 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 - 11 - ② 糞塊密度の年次推移(図−7) 糞塊密度 80.00 70.00 1キロメートル当たりに落ちて いたシカの糞塊の数 60.00 50.00 40.00 本州 淡路 30.00 20.00 10.00 0.00 H8 (7) H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 妊娠率の推移 捕獲個体調査の結果によれば、2歳以上のメスジカは、本州部では9割以上、 淡路島では約7割が毎年妊娠しており、繁殖力は高い。 100 90 80 本州部 70 淡路 60 50 本州部 淡路 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 74.1 90.9 91 71.4 88.2 100 100 89.3 66.7 90.4 91.2 図−8 成獣妊娠率の推移 - 12 - (8) 食性の変化 本県のシカは、アセビやネジキなどごく一部を除いて、ほぼすべての植物を食 べることが知られている。1980 年代冬期の胃内容分析調査では、スギ・ヒノキの 幼木を採食したと考えられる内容物(スギ・ヒノキの葉部及び樹皮・枝)が多く 検出されていたが、2000 年代の同調査では、これらの割合が減り、広葉樹の葉 部、果実・堅果類や農作物などの採食メニューが増加していることが報告されて いる。シカの生息する森林では下層植生の衰退が顕著であるが、環境の変化に応 じて食性を柔軟に変更することで、良好な栄養状態や高い妊娠率を維持している と考えられる。 昭和63年 平成15年 図−9 (9) 食性の変化 シカの一般特性 ・ ・ 里山など明るい開けた森林や林縁を主な生活場所にしている。 食性は、木本・草本の葉、樹皮までその幅は広く、好む植物はあるが、あ らゆる植物を食べることができる。 ・ 秋に妊娠し、初夏に毎年通常1子出産する。 ・ 餌条件により 1 歳で発情・妊娠が可能、満 2 歳で成獣の体格になる。 ・ 地域により栄養特性が異なる。また、同一地域でも、環境に応じて体のコ ンディションを変える柔軟な生理・生態を持つ。 - 13 - (10) 農林業被害の推移 農林業被害全体で見ると、平成 22 年度では、野生鳥獣全体の被害金額約9億 7千万円のうち、シカによるものが最多の4億7千万円(48%)を占めている。 近年の農林業被害金額は漸減傾向にあったが、平成 19 年以降再び増加に転じ ており、農業者の営農意欲の減退や耕作放棄が懸念されている。 8 7 林業被害金額 農業被害金額 6 金 額 5 [ 4 億 円 3 ] 2 1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 図−10 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 年次 農林業被害金額の推移 (11) 農業被害の状況(農会アンケート結果) ① 被害の分布 分布の中心となる南但馬地 域及び西播磨地域のほか、県 南西部や南東部でも大きな被 害が発生している。 個体数の調整とともに、適 切な被害管理が被害の軽減の ために重要であると考えられ る。 図−11 - 14 - 農業被害の分布(H22 年度) ② 被害の推移 シカ分布域の拡大とともに、被害も深刻化する傾向にある。 100% 5.0% 6.1% 17.0% 16.7% 9.5% 15.9% 80% 23.6% 22.1% 9.0% 9.5% 10.8% 45.3% 45.5% 43.5% H20 H21 H22 20.3% 60% 40% 20% 深刻 大きい 軽微 ほとんどない ない 0% 図−12 農業被害の推移 (12) 下層植生被害の推定分布 最近5年間の森林の下層植生の衰退度の変化を見ると、目撃効率が高く、高い 密度でシカが生息していると考えられる但馬中西部と、シカ密度が高まりつつ ある播磨南西部において、衰退レベルが2ランク以上深刻化した森林が多く見 受けられる。 図−13 下層植生衰退の状況(H22 年度) - 15 - 改 深刻化↓ 衰退度0 衰退度1 衰退度2 衰退度3 衰退度4 衰退度5 善 悪 化 図−14 衰退の変化(H18→22 年度) 100% 90% 5.8% 1.7% 11.0% 80% 70% 20.7% 18.0% 60% 50% 4.0% 9.8% 衰退度5 衰退度4 衰退度3 衰退度2 衰退度1 衰退度0 17.4% 35.9% 40% 30.8% 30% 20% 10% 27.5% 17.4% 0% H18 図−15 H22 下層植生衰退度の推移 (13) 災害に強い森づくりの実施状況 平成 18 年度から 23 年度にかけて、災害に強い森づくり(第1期)に取り組 み、野生動物育成林整備を 18 市町 34 箇所で 1,067ha、針葉樹と広葉樹林の混交 林整備を 12 市町 36 箇所で 994ha 実施している。 表ー3 災害に強い森づくり実績(第1期分 平成 18∼23 年度) 市町 野生動物育成林整備 針葉樹と広葉樹林 の混交林整備 箇所数 面積(ha) 箇所数 面積(ha) 猪名川町 1 29 西脇市 1 多可町 1 30 4 姫路市 1 30 市川町 1 34 1 神河町 1 35 4 相生市 2 57 赤穂市 2 56 宍粟市 1 28 7 たつの市 1 24 1 上郡町 1 31 豊岡市 3 95 2 香美町 3 102 3 新温泉町 3 96 養父市 4 119 5 朝来市 3 101 3 篠山市 3 98 3 丹波市 2 70 2 洲本市 1 32 合計 34 1067 36 ※ 面積は区域面積で、実施見込み分を含む。 - 16 - 30 111 33 122 211 32 33 65 147 85 91 34 994 2 保護管理の目標 (1) 免許種別狩猟者の推移 狩猟免許所持者数は、昭和 59 年には1万人近くであったものが年々減少 し、近年は約 6,000 人で推移している。 平成 19 年度に、網わな免許が網免許、わな免許に分割され、網わな免許所 持者が網免許とわな免許の 2 種類の免許所持者と位置づけられたため、見かけ 上狩猟者数は増加しているが、実質は引き続き減少傾向にある。 免許種類別狩猟者数の推移 9,000 8,000 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 H1 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10H11H12H13H14H15H16H17H18H19H20H21H22 網・ワナ 網(特区含む) 図−16 (2) ワナ(特区含む) 第1種 第2種 免許種別狩猟者数の推移 年代別狩猟者の推移 年代別に見ても、50 才以上が 85%を占め、高齢化が進んでいる。 兵庫県における年代別狩猟者数の推移 9,000 8,000 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 H1 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 20代 図−17 30代 40代 50代 60代以上 年代別狩猟者数の推移 - 17 - 3 計画の実施体制 検討結果 野生動物保護管理運営協議会 ・計画内容の検討 兵庫県自然環境課野生鳥獣係 ・鳥獣保護事業計画策定 検討依頼 ・モニタリング結果の検討 ・事業実施計画の策定 ・野生鳥獣関連施策の企画立案 他 情報提供・連携 他研究機関 情報共有 森林動物研究センター 連携 (研究員、森林動物専門員) ・生息動態等モニタリング調査 ・農林業被害防除技術の開発普及 情報共有 他府県 ・獣害対策人材育成 ・獣害に強い地域づくり支援 県レベル 連携 報告 指導 相談 他 地域レベル 県民局 指導・連携 農林(水産)振興事務所 ・森林動物指導員 ・農業普及指導員 土地改良事務所 報告・相談 他 参画・指導 報告・連携 地域鳥獣害対策支援チーム 市町 参画・指導 助言・情報提供 参画・指導 JA 地域鳥獣害対策協議会 参画 実施支援 実施支援 実施支援 参画 参画 県、市町、森林組合 生息地管理 被害住民、集落組 織、営農組合等 被害管理 - 18 - 猟友会支部 個体数管理 他 4 被害防止パンフレット - 19 - - 20 - - 21 - - 22 -
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