Web 評価グリッド法を用いたデジカメの価値構造把握

Web 評価グリッド法を用いたデジカメの価値構造把握
○山川義介 、佐藤俊雄
株式会社インタースコープ
1.はじめに
店頭には多くの機種が並び、消費者の選択の幅
評価グリッド法は、Kelly のレパートリーグリ
は非常に広い。このような市場において、消費
ッド法を 1 つの端緒とし、またラダリング法を
者は商品のどこにどのような価値を感じている
導入し、1986 年に讃井ら
1)
によって開発された。 のだろうか。
評価グリッド法は、消費者による商品の価値構
本研究では、消費者のデジカメに対する価値
造を明らかにする上で、非常に有効な手法の 1
構造を、評価グリッド法を用いて明らかにする
つであるが、対面式のインタビューで行なわれ
事を目的とする。
ることが多いため、地理的、時間的な制約が大
3.調査方法
きかった。これに対し、本研究で用いた Web 評
メーカー
品名
価格.com
平均価格
IXY DIGITAL 500
\41,792
問画面を構成することで、対面式のインタビュ Canon
SONY
Cyber-shot DSC-W1
\39,390
EXILIM ZOOM EX-Z40
\37,339
ーに依らず評価グリッド法を用いる試みである。 Casio
Nikon
D70
\106,176
本研究ではデジタルカメラ(以下デジカメ)の Canon
IXY DIGITAL L
\26,943
COOLPIX 5200
\41,884
価値構造の解明をテーマとし、インターネット Nikon
FUJI FILM Fine Pix F710
\41,173
調査において Web の質問画面上に代表的デジカ Panasonic LUMIX DMC-FZ10
\54,669
Cyber-shot DSC-T1
\45,415
メ 10 機種を呈示し、購入したい機種ベスト 5 を SONY
PENTAX
オプティオS4i
\36,436
価グリッド法は、Web 上でインタラクティブな質
答えさせた。次に、異なる順位の機種をペアで
呈示し、自由記述回答により、評価理由を抽出
した。ここで得られた評価理由を Web 上の質問
表 1 呈示機種一覧
3.1
サンプルは株式会社インタースコープが保有
画面上に代入表示し、ラダリングを行なった。
するインターネットリサーチモニター組織「ス
2.目的
コープ Net」から抽出し、全国 20~49 歳の男性
2003 年 6 月~2004 年 5 月のデジカメ国内出荷
台数は、ほぼ毎月 50 万~100 万台の水準で推移
している。
「価格.com」のランキングベストから選んだ、
デジカメ 10 機種を呈示した。呈示機種は表 1 の
通りである。
1,200,000
1,000,000
800,000
600,000
400,000
200,000
0
図2
20
03
年
20 6月
03
年
20 7月
03
年
20 8月
03
20 年9
03 月
年
20 10
03 月
年
20 11
03 月
年
20 12月
04
年
20 1月
04
年
20 2月
04
年
20 3月
04
年
20 4月
04
年
5月
台
700 名に、インターネット上の価格比較サイト、
Canon IXY DIGITAL 500
図 1 デジタルスチルカメラ国内出荷実績
カメラ映像機器工業会
3.2 評価対象商品の抽出
被験者に対して、
表 1 の 10 機種を提示し、
「購
入したいデジカメベスト 5」の商品写真をマウス
でリストから下の順位ボックスにドラッグする
ことで、順位づけしてもらった。
3.3 インタビュー(オリジナル評価項目抽出)
評価グリッド法によるインタビューは、動画
良い点があるのですか」とより上位概念を抽出
(ラダーアップ)する。下位概念を抽出(ラダ
付き IP 電話(テレビ電話)を用いて行なった。 ーダウン)する場合は、
「脂肪を燃焼させてくれ
(図 5、6)
るためには、具体的に何がどうであればよいの
ですか」と質問する。ラダーリングは、必要に
応じて得られた項目をさらに上位、下位にアッ
プ、ダウンして行く。
4.結果と考察
ある被験者の個人評価構造モデルの一例とし
図 5. テレビカメラ
図 6. インタビューの様子
て、調査結果を図 7 の様にまとめた。この被験
者の場合の最上位概念は、「健康」「自己満足」
図 4 を例にとると、まず「1 位のヴァームが 2 位
のアミノダイエットよりダイエットに効きそう
だと判断された理由をどんな事でもかまいませ
んのでお知らせください」と聞く。これを 2 位
であった。下位概念としては、脂肪を燃焼させ
る効果のあるカテキンやアミノ酸などが含まれ
ている事と同時に、専門性をアピールするパッ
ケージ等商品イメージの重要性も確認できた。
対 3 位以降についても続けて聞いて行く。
3.4 インタビュー(ラダーリング)2)
一連の質問が終了したら、次に 3.3 で抽出され
た被験者自身の言葉による評価項目に対して、
関連評価項目の誘導を行なう。たとえば、「ボコ
よりへルシアの方が脂肪を燃焼してくれそうだ
から」という回答があったとすれば、
「では脂肪
を燃焼させてくれると、あなたにとってどんな
5.おわりに
評価グリッド法は、リアルな調査としては確
立された手法だが、インターネットを利用した
テレビ電話システムでも、遠隔地の被験者と臨
場感溢れる調査を行なう事ができ、ダイエット
飲料の価値構造が明らかになった。しかし現段
階では対象者が限定される事、画質や音質の問
題も残っており、今後のさらなるインフラ整備
に期待したい。
参考文献
1) 讃井,
:レパートリーグリッド発展手法に
よる住環境評価構造の抽出;認知心理学に
基づく住環境評価に関する研究(1),日本建
築学会論文報告集,No.367,1986,
2) 日本建築学会編:よりよい環境創造のため
の環境心理調査手法入門