独立行政法人産業技術総合研究所 計測標準研究部門 野里英明 衝撃加速度校正装置の開発経過 2006 / 12 / 1 (金) 第3回振動計測クラブ 産業技術総合研究所 計測標準研究部門 野里英明 発表の流れ 1. 衝撃加速度校正の必要性と装置概念 2. 空気軸受内の圧力分布評価 3. 剛体衝突の運動シミュレーション 4. 初期実験結果 5. 総括 第3回振動計測クラブ 2006年12月1日(金) 独立行政法人産業技術総合研究所 計測標準研究部門 野里英明 衝撃加速度校正の必要性 •現在、NMIJの振動校正による加速度上限は100 m/s2であるが、 産業界では数百-数千 m/s2の加速度校正が求められている。 1. 自動車の衝突安全基準 2. 頭部損傷基準(Head Injury Criteria) 50 km/hで硬い壁に衝突させた時、 胸部加速度が60 G (588 m/s2)以下 脳に深刻なダメージがないとされる目安 HIC<1000, Gmax<200 G (1960 m/s2) アメリカ:FMVSS208項 日本:JNCAP ⎡ ⎛ 1 HIC = ⎢(t 2 − t1 )⎜⎜ ⎢⎣ ⎝ t 2 − t1 ∫ t2 t1 ⎞ αdt ⎟⎟ ⎠ α:加速度、 t2, t1:時間変数 2.5 ⎤ ⎥ ⎥⎦ max 第3回振動計測クラブ 2006年12月1日(金) 独立行政法人産業技術総合研究所 計測標準研究部門 野里英明 産業界における校正ニーズ 106 メーカ(電気) 自動車用民生機器 メーカ(機器試験) 自動車用機器の試験 10 2 加速度 (m/s ) メーカ(自動車) 自動車衝突用機材 5 数百~数千 m/s2 ニーズが集中 対人安全面からも重要な領域 104 3 10 目標スペック (200-5000 m/s2) 102 メーカ(計測機器) 高回転エンジンのモニタ用 101 公的機関 潜水艦 衝撃波測定用 100 -1 10 100 HIC=1000 (半波正弦波で近似算出) 101 102 103 周波数 (Hz) 104 105 第3回振動計測クラブ 2006年12月1日(金) 独立行政法人産業技術総合研究所 計測標準研究部門 野里英明 海外のNMIでは・・・ CMC*登録は、PTB(ドイツ)のみ [NIST(アメリカ)は依頼校正で対応] *calibration and measurement capabilities of NMIs PTBの衝撃加速度校正装置 剛体衝突による加速度運動 振り子 スプリングユニット ハンマ 加振器 スプリングユニット ピーク加速度 100~5000 m/s2 時間応答 50 Hz~1 kHz 不確かさ 2 %以内 測定系 レーザ干渉計 加速度計、レーザ干渉計 第3回振動計測クラブ 2006年12月1日(金) 独立行政法人産業技術総合研究所 計測標準研究部門 野里英明 校正装置の概念 空気銃とエアベアリングの 採用により、再現性の良い 衝撃加速度運動を実現する。 電磁バルブ デジタイザ(12bit, 100MS/s) 第3回振動計測クラブ 2006年12月1日(金) 独立行政法人産業技術総合研究所 計測標準研究部門 野里英明 空気軸受の圧力分布評価法 エアベアリング ハンマ及びアンビル ハンマ、アンビルは 2個のエアベアリングで支持 h 30 mm 供給チューブからの圧縮空気流入 r1 P(x) X=0(エアベアリング中央) 4π (r1 + h) Lsυu1 = πr22u2 1 2 1 ρu1 + P1 = ρu22 + P2 2 2 (体積流量)=u1・sυ・2π(r1+h)・2L ~大気開放流量 ← カタログ値を参照 Gin(質量流量)=(体積流量)/(すきまの体積)・ρ (すきまの体積)= 2πr1h・2L u1, u2: チューブ内及びベアリング出口での流速 P1, P2: 上述のu1, u2に該当する所での静圧力 s: 一つあたりのオリフィス面積 υ: 単位面積あたりのオリフィス数 r1,r2 :シリンダ半径及びチューブ内径 h: 軸受すきま 第3回振動計測クラブ 2006年12月1日(金) 独立行政法人産業技術総合研究所 計測標準研究部門 野里英明 空気軸受内の圧力分布計算結果 連続の式 ∂ (ρu ) + ∂ (ρw) = Gin ∂x ∂z h 2 ∂P u=− 12μ ∂x u, w: x, θ方向の流速 ρ: 空気密度 Air pressure (Pa) エアベアリング h r1 ハンマ θ 2.0 10 5 1.5 10 5 1.0 10 5 5.0 10 w エアベアリング内の圧力分布 境界条件 dP(x=0)/dx=0 4 P(x=0.015)=1×105 0.0 10 0 0 z=(r+h)θ ∂ = 0 (軸対称と仮定) ∂θ 0.005 0.01 length (m) X軸 0.015 第3回振動計測クラブ 2006年12月1日(金) 独立行政法人産業技術総合研究所 計測標準研究部門 野里英明 剛体衝突の運動シミュレーション A B ゴム Xa Xb X=0 ∂ Xa ∂Xa ∂Xb ( ) γ ( ) = − − − − k Xa Xb 2 ∂t ∂t ∂t ∂ 2 Xb ∂Xa ∂Xb ) − mb 2 = k ( Xa − Xb) + γ ( ∂t ∂t ∂t 2 2500 0.004 2000 G(横弾性率)=7.45×Hs(硬度)/(100-Hs) (kgf/cm2) ε(ひずみ)=σ(応力)/E(縦弾性率) E=2G(1+ν(ポアソン比0.5)) σS(ゴム断面積)=k(ΔL/L(ゴム厚)) ↓ k=2.19×106×Hs×S/L/(100-Hs) (N/m) γ=0として試算(ゴムの粘性を無視) 変位 (m) 2 0.005 加速度 (m/s ) 硬度70, ゴム厚4 mmの場合 速度v=3 m/s, 加速度a=0 m/s2 ma 0.003 1500 変位A (m) 変位B (m) 0.002 1000 2 加速度B (m/s ) 0.001 500 0 0 0 0.001 0.002 0.003 0.004 0.005 時間 (s) 第3回振動計測クラブ 2006年12月1日(金) 独立行政法人産業技術総合研究所 計測標準研究部門 野里英明 緩衝材及び衝突時加速度の影響 1950.0 ピーク加速度 (m/s 2) 加速度 (m/s2) 4000 硬度70, t=4mm 硬度70, t=2mm 硬度90, t=4mm 3000 2000 1000 0 0 0.001 0.002 0.003 0.004 0.005 時間 (s) 1949.8 ゴム厚=4 mm, 硬度=70 1949.6 1949.4 1949.2 1949.0 -600 -400 -200 0 200 400 衝突時加速度 (m/s2) 600 2 ピーク加速度 (m/s ) 4000 ピーク加速度は、バネ定数に強く依存する。 k=2.19×106×Hs×S/L/(100-Hs) (N/m) 面積に比例、長さに反比例 ゴム厚=4 mm 3000 2000 衝突時に等速運動でなくても、 ピーク加速度の変化は無視できる。 (再現性には影響小) 1000 0 0 20 40 60 硬度 80 100 第3回振動計測クラブ 2006年12月1日(金) 独立行政法人産業技術総合研究所 計測標準研究部門 野里英明 初期実験の概要 初期実験用装置の写真 LDVと加速度計から加振器の評価を行う (厚み4 mm, 硬度70の緩衝材(ゴム)を使用) LDV (レーザドップラ振動計) 2気圧、80 msにおける速度及び加速度波形 0.6 600 電磁バルブ 速度 (m/s) 加速度計 400 -9.4 m/s2 LDV 0.3 300 0.2 200 0.1 100 0 2 0.4 500 加速度 (m/s ) 加速度計 0.5 0 1.4 ms -0.1 -100 0.00875 0.01 0.0112 0.0125 時間 (s) 第3回振動計測クラブ 2006年12月1日(金) 独立行政法人産業技術総合研究所 計測標準研究部門 野里英明 初期実験結果 ゴム硬度95との比較計算結果 2.0 1.0 1500 1000 -24.84 m/s2 0.5 500 0.0 0 dv = −24.397 × vmax dt -5 加速度 (m/s2) Exp. Cal. 6気圧 60 ms 硬度70 0 加速度 (m/s2) 速度 (m/s) 1.5 2000 -10 -15 -20 -25 -30 0.008 0.009 0.01 0.011 0.012 0.013 時間 (s) ゴム硬度94で実験と計算が良い一致 ・使用しているゴムの粘弾性を評価すべき ・重畳する高周波加速度の消去 0 0.2 0.4 0.6 0.8 最高速度 (m/s) 1.0 1.2 最高速度後の加速度は、 速度に比例している。 第3回振動計測クラブ 2006年12月1日(金) 独立行政法人産業技術総合研究所 計測標準研究部門 野里英明 初期実験における加速度レベル 加速度の空気圧及びバルブ開時間依存性 2500 2500 2atm 4atm 6atm 高周波加速度、 観測されない 2000 2 加速度 (m/s ) 加速度 (m/s2) 2000 1500 1000 500 1500 1000 観測される 500 0 0 20 40 60 80 100 バルブ開時間 (ms) 発生可能な加速度範囲 100-2000 m/s2 ・上限加速度の拡大(-5000 m/s2) 120 0 200 250 300 350 400 周波数 (Hz) 450 500 赤色の境界線を境にして、 高周波加速度の有無が観測された →ゴムの衝撃吸収性に依存するだろう 第3回振動計測クラブ 2006年12月1日(金) 独立行政法人産業技術総合研究所 計測標準研究部門 野里英明 加速度レベル パワースペクトル結果 10 9 10 7 10 5 10 3 ・11.3 kHzの共振現象を観測 11.3 kHz 200 mmステンレス棒の固有振動数 1 f = 2L 101 10-1 10 -3 10 -5 2atm 80ms 6atm 60ms 2 10 3 10 10 周波数 (Hz) E ρ 固有振動数=12.3 kHz 4 10 5 対策:アンビルの縦振動を緩和する為に、 やわらかい緩衝ゴムを使用すべき 第3回振動計測クラブ 2006年12月1日(金) 独立行政法人産業技術総合研究所 計測標準研究部門 野里英明 加速度運動の再現性 同一条件で10回実験を行い、ピーク加速度を標本とする。 実験条件: 空気圧力=4 atm, バルブ開時間=40 ms 回数 ピーク加速度 ・平均値 742.9273 m/s2 1 738.2813 2 748.4375 1 n x = ∑ xi n i =1 3 747.3984 4 746.0938 5 739.5859 6 746.0938 7 742.1875 8 736.9766 9 738.2813 10 735.9375 ・標準偏差 4.4672 m/s2 1 n 2 ( ) σ= x − x ∑ i n i =1 ・相対標準偏差 0.6021 % 第3回振動計測クラブ 2006年12月1日(金) 独立行政法人産業技術総合研究所 計測標準研究部門 野里英明 総括 • 200-5000 m/s2を目標とする衝撃加速度校正装置の開発 • 緩衝材(ゴム)の弾性を考慮した加速度波形の試算 • 発生可能なピーク加速度(ゴム厚み 4 mm, 硬度70) 100-2000 m/s2 空気銃の改良により上限拡充を検討 • 棒の縦振動が加速度波形に重畳 緩衝材の特性及び材質を変えることで対応 • ピーク加速度750 m/s2における再現性 相対標準偏差 0.60 %程度 第3回振動計測クラブ 2006年12月1日(金)
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