ITサービス産業における日・比間国際分業 株式会社アストラ 代表取締役 川村慶 2005年5月27日 http://www.astra.co.jp 1 アストラ会社概要とフィリピン進出経緯 2 株式会社アストラ 会社概要 アストラ 骨太システム開発 アストラフィリピン ● オフショア開発拠点 ● 企業内基幹システム ● ネットワークアプリケーション アストラザスタジオ アストラザスタジオ ● 3Dエンジニアリング ● eラーニングシステム ● 物流システム ● WEB コミュニケーション開発 ● アミューズメントシステム ソリューション ● マルチメディア ● ウェブサイト ネットワーク&サポート事業 ● グラフィックデザイン ● 法人向けSI ● 個人向け「パソコン救助隊」 3 株式会社アストラ 沿革 1977年 東京電子設計を創立。 (現キヤノンアイテック株式会社) 1982年 株式会社として法人登記する。 1991年 比国マニラ市に100%海外子会社Topmax Philippinesを設立。 (現CANON INFORMATION TECHNOLOGIES PHILIPPINES, INC.) 1998年 キヤノン株式会社にに株式100%売却。 同時に東京電子設計の子会社を買収し、株式会社アストラへ社名変更。 2002年 比国メトロマニラ ケソン市に海外子会社Astra (Philippines) Inc.を設立。 4 何故フィリピンなのか 5 理由①「人材」 1.トップの大学からIT専攻の技術者の採用が可能 TOP3(フィリピン大学、デ・ラ・サール大学、アテネオ大学)の Computer Science、 Computer Engineering卒業の即戦力 2.公用語としている英語力 欧米からの最新技術、ソフトの取り入れにタイムラグが発生しない 3.フィリピーノ・ホスピタリティ 協調性、柔軟性に富んだ国民性 ⇒ 一緒に業務を遂行する上でストレスフリー 6 フィリピン IT教育 高等教育委員会(CHED)によると、2002 年のフィリピンのIT 関 連学科卒業生は約35,000 名である。 IT関連コースのある大学および専門学校 ◇公立大学88校 ◇私立大学555校 ◇専門学校521校 比のIT 関連学科卒業生数 の推移(千人単位) 7 フィリピン基本データ 人口: 7,650万人(2000年5月国勢調査値) 言語: 国語はフィリピノ(タガログ)語 公用語はフィリピノ語と英語 英語の人口理解率80.03% (タガログ語の理解率49.96%) 識字率:92.2%(2000年調査) 大学進学率:約30% (職業訓練専門学校レベルのものを含む) 宗教: 国民の83%がカトリック、その他のキリスト教が10%、 イスラム教は5%。 8 理由②「政府のIT支援政策」 1994年 NITP2000 (National Information Technology Plan) 発表 NITC (National Information Technology Council) 設立 1998年 長期プラン 「IT21」 公表 2000年 「Prof. IT’S Hub Program」発表 E-commerce法制定 GIPS (Government Information System Plan)大統領令で承認 ITECC (Information Technology and Electronic Commerce Council) 設置 2003年 「 ITECC Strategic Roadmap 2003」公表 9 フィリピン メディア普及率 携帯電話利用者数(100人あたり) インターネット利用者数(1000人あたり) 日本 日本 4 4 8 .8 6 中国 中国 4 6 .0 1 ベトナム シンガポール マレーシア 0 .1 マレーシア 3 1 9 .6 9 3 7 .6 8 ラオス 2 .7 1 100 1 インドネシア 3 7 .7 2 0 1 9 .1 3 ミャンマー 0 .5 1 インドネシア 7 9 .5 6 フィリピン 4 4 .0 4 ラオス 2 6 .0 4 シンガポール 5 0 4 .3 6 ミャンマー 2 .3 4 タイ 7 7 .5 6 フィリピン 1 6 .0 9 ベトナム 1 8 .4 6 タイ 6 3 .6 5 200 300 人 400 500 600 5 .5 2 0 20 40 60 80 100 人 出所:World Development Indicators 2004 (The World Bank) ビジネスへの普及率に関する統計はないが、外資系および大手企業は ほぼ100%普及、ブロードバンド化が進行していると思われる。 (「JETRO月刊IT事情No.1」より) 10 e-service 重点5分野 ◆ソフトウェア開発 ◆コールセンター(Contact Center) ◆医療情報データ処理 (Medical Transcription) ◆BPO(Business Process Outsourcing) ◆CG、アニメーション 11 IT関連企業への投資優遇措置 フィリピンにおける投資優遇政策のうち、IT関連企業に関連する主要なものは、投資委 員会(BOI)に登録された企業向け、及びフィリピン経済区丁(PEZA)に登録された企業 向けの優遇措置である。 優遇措置例) ・4~8年の法人税免除 ・輸入資本設備の免税 ・従業員教育費用の50%控除 etc IT関連事業でBOIの2004年投資優先計画に含まれる分野は、下記の通りである。 ① ITサービス:ソフトウェア開発、アニメーション、コンピューターグラフィック ② IT活用サービス:コールセンター、コンタクトセンター、メディカル/リーガルトランスク リプション、エンジニアリングデザイン、BPO ③ IT支援事業: R&Dセンター、インキュベーションセンター、教育機関、低開発地域で のコミュニティアクセス施設(インターネットサービスプロバイダー(ISP)を除く) 12 フィリピン大学ITトレーニングセンター(UP-ITTC) JICA の支援により、ケソン市にある国立フィリピン大学のディ リマンキャンパス内に高度IT研修センターを開設し、IT 関連 学科卒業生やIT技術者を対象に、現実のIT業界ニーズに即 した研修プログラムを提供する。 これは、日本政府の「アジアITイニシアティブ」(AITI) の下で 日比両国政府が今年5 月に合意した主要事業の中でも中核 となるIT人材育成プロジェクトである。 3つの専門コース ◆アプリケーション開発 ◆組込系システム ◆ネットワークシステム 13 理由③「為替動向」 フィリピンペソの為替動向(対円) 7 6 円 5 4 3 2 1 19 90 年 19 91 年 19 92 年 19 93 年 19 94 年 19 95 年 19 96 年 19 97 年 19 98 年 19 99 年 20 00 年 20 01 年 0 出所:総務庁統計局「世界の統計」 フィリピン経済の脆弱性を示した為替推移と考えられるが、人 件費の上昇、インフレなどが相殺できる。 14 IT技術者賃金比較 マーサー社による各国のIT 企業従業員年収調査2004 年(米ドル) 出所:JETRO月刊IT事情No.1 15 評価すべき点と課題 出所:未来経営No.11「フィリピンIT企業の躍進」手嶋彩子 <評価すべき点> ①教育水準・ポテンシャルの高さ ②実践的なIT技術水準の高さ ③協調性、メンタリティ ④向上心のある就業意識 16 <課題> ①政治情勢・治安に対する不安 ②通信インフラ (電話普及率、携帯電話普及率、 インターネット普及率の低さ) ③日本におけるフィリピンIT事情に関する 情報の少なさ フィリピン 2000 2001 2002 2003 インド 中国 日経4紙 雑誌 日経4紙 雑誌 日経4紙 雑誌 95 147 80 39 23 29 11 8 575 598 318 175 159 154 101 78 1351 1981 1642 1201 209 317 315 228 注1)雑誌は、毎日エコノミスト、 東洋経済、日経ビジネス 注2)2003は8月31日まで 出所:未来経営No.11「フィリピンIT企業の躍進」手嶋彩子 17 オフショア企業の目的と成功のポイント 18 AJ:アストラジャパン オフショアビジネス形態 ① API:アストラフィリピン 顧客はAJと契約。 AJからAPIへプロジェクトの全部あるいは1部をオフショア。 日本 フィリピン 顧客 AJ API 顧客サイド ◆特にオフショアを意識する必要がない。 ・契約関連 ・作業の切り出し(丸投げ可能) ・コミュニケーション、ドキュメント類のやりとりetc ◆コストダウン幅はそこそこ。 19 オフショアビジネス形態 ② 顧客は直接APIと契約。 AJを全く通さずスルー。 日本 フィリピン 顧客 API 顧客サイド ◆オフショアノウハウがある程度必要。 ・契約関連 ・作業の切り出し、作業指示、進捗確認、品質管理 ・コミュニケーション、ドキュメント類のやりとりetc ◆大幅なコストダウン。 20 オフショアビジネス形態 ③ 顧客がフィリピンに支社設立、もしくはブリッジSE常駐。 ただし、技術者は多く雇用せずフィリピン国内でアウトソーシング。 日本 フィリピン 顧客 顧客P API 顧客サイド ◆より確実、より効率的なオフショア開発を遂行できる。 ⇒ 現地で直接プロジェクト管理 ◆海外進出のリスク。 21 オフショアビジネス形態 ④ 顧客は直接APIと契約。 ただし、プロジェクト単位の契約でなく、常時固定の現地技術者を 貸し出す形式。 業務指揮・管理は顧客。 日本 フィリピン 顧客 API 顧客サイド ◆会社設立の手間、リスクなく、現地支社と同様のオフショアが実現で きる。 ◆機密情報を含み、持ち出しが困難な案件に対応可能。 22 オフショア開発におけるフェーズ分業:中国・日本の事例 中国 要求分析 基本設計 /定義 機能設計 詳細設計 プログラム構造設計 モジュール設計 テスト コーディング 単体 結合 機能 システム 運用/ 保守 日・中 Bridge SE 日本 各色の●点・・・・・フェーズ単位で共同打ち合わせ 各色の⇔矢印・・・・・・実作業 出所:ネットウェア株式会社太田様「海外アウトソーシング(オフショア開発)発注工程について) 2 23 オフショア開発拠点設立の目的 <大手企業にとっては‥> 「コスト削減」 ⇒ 低コストのコーディング要員 (上流工程はすべて日本で、もしくは現地の日 本人で) <中小・ベンチャー企業にとっては‥ > 「コスト削減」 + 「人材確保」 ⇒ *激しい低価格競争の渦 *日本、海外を問わず優秀な技術者の確保 (能力さえあれば上流工程から任せたい) 24 開発工程とエンジニアスキル 開発工程 要件定義 オフショア技術者の 分岐点 構想設計 詳細設計 コーディング テスト エンジニアスキル、キャリア 25 オフショア技術者の分岐点における現象 <企業の選択> A : より高い報酬で、より上流工程を任せる B : 報酬も開発工程もここを限界点とする (このレベル以上の技術者は必要としない) ⇒ 低コストの技術者を回転させる <技術者の選択> X : 継続して同じ会社に勤務する Y : よりいい条件の会社へ転職する 26 オフショア企業経営成功のポイント① 「コストメリット」より 「スキル・テクノロジーメリット」 ◇低コストだけの売り文句では低価格競争の渦に飲 み込まれるだけ。 ◇常駐(オンサイト)ビジネス = 人貸し ノウハウが蓄積 されない。 ◇ 「安い人」を求められるのではなく、「スキル・テクノ ロジー」を求められる企業たるべし。 27 オフショア企業経営成功のポイント② 企業目的の明確化と、 目的達成のための適確な労務管理 ◇開発会社の命は人材。 必要とする人材の流出をいかに防ぐか。 ◇離職率が低いからよい、高いから悪い、ではない。 大事なのは必要な人材が離職しないこと。 ◇ 技術者のモチベーションを維持、向上させる、社内 システム、社内文化の確立と管理。 28
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