航空機設計書

平成 23 年度 航空機設計特論 レポート
航空機設計書
メンバー
取りまとめ: 饗場洋介
(飛行力学研究室)
金澤拓海
(誘導制御工学研究室)
藤井勇太 (宇宙輸送システム工学研究室)
濱崎浩佑 (宇宙輸送システム工学研究室)
目次
本設計書の目次,項目ごとの担当者を示す.
1. コンセプト・設計要求(全員)
2. 他機例調査(濱崎・藤井)
3. 重量推算(濱崎・藤井)
4. 機体規模策定(饗場)
5. 各部位重量決定(濱崎)
6. 重心位置決定(濱崎)
7. 翼型選定(濱崎)
8. タイヤ選定(藤井)
9. 主翼デザイン(藤井)
10. 性能推算(饗場)
11. デザイン決定(金澤)
12. 感想
1. コンセプト(全員)
“大は小を兼ねる”
乗客人数が 4 ケタ越えを目指す.今回のコンセプトとして決定した.
今回,設計コンセプトを決定する際,わかりやすい目標を模索した.現在,世に出てい
る機体を参考にしたところ,今までにない機体という論点で話を進めた.結果,わかりや
すいものとして,乗客人数を指標とすることが一番わかりやすいものであるとの結論に至
った.現行の航空機の中で最大の収容人数を誇る A380 機,この能力を超えるという明確な
目標のもと,設計を進めることとした.
この機体を使う具体的なイメージは,学校全体での日本―アメリカ間の修学旅行をする
こと.その中で,想定しうる範囲で使うことのできる航空機にすることをコンセプトとす
る.
設計要求
設計要求として以下の項目を設定した.
飛行速度
M=0.85
飛行高度
10~20[km]
収容人数
1000 人越
その他性能
使える航空機に
表 1-1. 設計要求
収容人数は 1000 人を超えさせ,他の性能に関しては,使用・運用可能な性能に収める
事を設計項目に置いた.具体的な目標としては,2つ.
・日本・アメリカ間を成田空港や羽田空港に離着陸可能にすること
・A380 の性能と同等もしくはそれ以上とする
以上の事を目標として設計を行った.
他機例調査(濱崎・藤井)
前述の航空機を設計するにあたって参考にした航空機について記述する。ボーイング、エ
アバス、イリューシンが製造している旅客機と、アントノフが製造している輸送機のデー
タを集めた。データを集めたすべての機体の W/S と P/W をプロットしたグラフを示す。ま
た、その中から B747、B777、A380、An225 の 4 つの主な諸元を示す。
B747
A380
B777
An225
表 2-1 諸元
A380
B777-300
B747-400
An-225
T-O Weight [kg]
560000
299370
362875
600000
T-O Thrust [kN]
1360
802
1008
1377
Wing Span [m]
79.8
60.93
64.44
88.4
Wing Chord at Root [m]
17.7
12.8
14.63
Tailplane Span [m]
30.37
21.52
22.17
Length Overall [m]
72.8
73.86
70.67
84
Height Overall [m]
24.1
18.49
19.51
18.2
S_Wing [m2]
845
427.8
541.16
905
122.3
53.23
77.11
141.7
S_Tailplane [m2]
-
101.26
136.57
265.5
S_Ailerons [m2]
-
7.11
20.9
-
S_Rudder [m2]
-
18.16
21.37
-
S_Elevators [m2]
-
25.48
30.38
-
7.536142
8.678039
7.673356
8.634873
14816
14195
11473
4500
Passenger_max
853
550
-
-
Mach
0.82
0.84
0.85
-
-
-
-
850
S_Fin [m2]
AR
Range [km]
Speed [km/h]
初期重量推算(濱崎・藤井)
航空機を設計するにあたり、初期重量推算を行う。
離陸重量を 4 つの構成要素に区分する。
乗員、ペイロードは要求から設定されるため、残りの「空虚重量」と「燃料重量」を決定
する必要がある。これを重量比の形で表現する。
空虚重量比の統計データを定式化すると、
ブレゲーの式の航続距離の式より
また、航続時間の式より
Aspect Ratio は
である。Wetted Area Ratio は Fig.3.5 より
である。
よって、Wetted Aspect Ratio は、
次に、Fig.3.6 より、Wetted Aspect Ratio が 1.11 で CIVIL JETS の点を読むと、L/Dmax
は、
よって、
、
これから、各段階での重量の計算を行う。
1)Warmup and takeoff
W1 W0  0.97
2)Climb
W2 W1  0.985
3)Cruise
R  5399nm  3.28  10 7 ft
C  0.5 hr  1.39  10 4 s
V  0.8M  300 m s 0.3048 m ft  787 ft s
(Table3.2)
(Table3.2)
L D  14.5
W3 W2  e RC VL D   0.670
4)Loiter
E  1.0hr  3600s
C  0.4 hr  1.11 10 4 s
L D  16.7
W4 W3  e EC  L D   0.976
5)Land
W5 W4  0.995
(Table3.2)
表 3-1. 重量推算のフェーズ
Empty weight fraction は Table3.1 の General aviation-single engine より、
、
乗員とペイロードの重量は、
燃料重量比は、
空虚重量比は、
以上より、離陸重量は以下の式で
Excel のゴールシークを用いて収束計算を行うと、離陸重量
となる。
、燃料重量
は、
機体規模策定(饗場)
統計値から,機体規模を策定する.策定するパラメータは T/W,W/S である.
指標となる飛行性能は離陸距離,着陸距離,上昇時間である.更に,巡航速度も項目に加
え,T/W,W/S を決定する.
T/W,W/S を変化させて,指定した指標パラメータとなる等高線を引き,設計点を決定する.
離陸距離
W/S,T/W のデータから,TOP 値を算出した後,TOP と離陸距離の関係図(図 4-1)から線
形となる線を読み取り,着陸距離を算出する.
T .O.P 
W /S
  CL,takeoff  T / W

106.4
 236.7
1  1.322 0.34
図 4-1:TOP と離陸距離の関係図
これから,
STO,range  10300/ 300 T .O.P
として線形近似し,離陸距離を推算する.
離陸距離
Slanding  80(
W
1
)(
)  Sa
S   CL,max
上式より,離陸距離は W/S の関数であるため,CLmax を変化させた等高線を引く.
上昇時間
上昇する時間を 18[min]とし,ジェット機の最良上昇率となる飛行速度を算出した後,上昇
量 Vy を算出し,それを巡航高度 16000[m]まで上昇する時間を算出し,等高線を引く.
最良上昇率となる飛行速度の式は,W/S,T/W の関数となっているため,データに値する上
昇時間の等高線を引く.
VV  V
3
T D
T V CD,0 2 K
V


(W / S )
W
W
2(W / S ) V
2
VV
T 3V CD,0
2K
0


(W / S )
V
W
2(W / S )
V 2
V 
W /S T
[  (T / W )2  12CD,0 K
3CD,0 W
となり,先に V を計算した後,VV を算出し,
t  H / VV
以上より上昇時間 t が求まる.(H:巡航高度,VV:上昇速度)
以上より,指標となる値を次の表 4-1 のように決定し,等高線を引く.
離陸距離[m]
2000
着陸距離[m]
1500
上昇時間[min]
18
表 4-1:指標となるパラメータ
規模を策定した図を図 4-2 に示す.
機体規模策定図
0.5
4921.2598
4921.2598
4921.2598
0.55
4921.2598
0.6
0.45
8
79
.6
61
65
4921.2598
4921.2598
0.3
設計点
4921.2598
0.35
4921.2598
T/W
0.4
98
.67
61
65
0.25
8
79
0.2
.6
61
65
0.15
0.1
50
100
150
200
250
W/S
図 4-2:機体規模策定図
青の点を設計点とし,T/W=0.33,W/S=105 と決定した.
更に,巡航速度のラインを引くと,高度 16000[m]の時の巡航速度は,図 4-3 となる.
4921.2598
250
350
4921.2598
200
300
4921.2598
4921.2598
100
4921.2598
150
0.55
250
機体規模策定図
0.6
0.5
0.45
300
350
0.3
4921.2598
200
4921.2598
設計点
4921.2598
150
0.35
100
0.25
250
0.15
50
350
200
100
0.1
300
0.2
150
T/W
0.4
100
150
200
W/S
図 4-3:巡航速度を含めた機体規模策定図
250
このように,巡航速度を 240[m/s]と設定でき,適切な策定ができていることが分かる.
5. 各部位重量決定(濱崎)
機体の重量推算を、DANIEL P. RAYMER 著 Aircraft Design: A Conceptual Approach の
Cargo/Transport Weight の式を用いて行った。用いた式を以下に示す。
上記の式から導き出された機体のそれぞれの部分の重量を表 5-1 に示す。
表 5-1
Wwing
78026.84 lb
Whorizontal tail
7666.251 lb
Wvertical tail
9075.89 lb
Wfuselage
50243.71 lb
Wmain landing gear
23150.6 lb
Wnose landing gear
4639.789 lb
Wnacelle group
9991.695 lb
Wengine control
180 lb
Wstarter
431.4991 lb
Wfuel system
1527.896 lb
Wflight controls
17020.99 lb
WAPU installed
330 lb
Winstruments
1464.547 lb
Whydraulics
392.4157 lb
Welectrical
1205.799 lb
Wavionics
1538.318 lb
Wfurnishings
9219.94 lb
Wair conditioning
13200.16 lb
Wanti ice
2303.842 lb
Whandling gear
345.5763 lb
TOTAL
231955.7 lb(=105215.1 kg)
表 5-1 の重量にペイロード、燃料、エンジンの重量がさらに足される。ペイロード、燃料、
エンジンの重量を表 5-2 に示す。
表 5-2
Wpyaload
222663.1 lb
Wfuel
548925.7 lb
Wengine
55368 lb
すべての重量を合計すると、Wtotal=1058913 lb(=483182 kg)となり、3 章の初期の重量推算
の値より小さい値となり設計要求を満たしていることがわかる。
6. 重心位置計算(濱崎)
上記の重量推算から重心位置の推算を行った。それぞれの部分の位置を与え、仮想重心ま
わりでのモーメントが 0 になるようにゴールシークを用いて計算した。結果を表 6-1 に示
す。
表 6-1
x 方向
z 方向
燃料 100%・ペイロード 100%
158.4 ft
-6.6 ft
燃料 0%・ペイロード 100%
146.0 ft
-5.0 ft
燃料 100%・ペイロード 0%
171.3 ft
-6.2 ft
燃料 0%・ペイロード 0%
173.9 ft
-2.7 ft
7. 翼型選定(濱崎)
航空機の翼型の選定を行う。DATCOM を用いて設計要求を満たす最適な翼型を決定した。
結果を表 7-1 に示す。
表 7-1
図 7-1 翼特性
主翼
NACA 64-210
カナード翼
NACA 64-210
垂直尾翼
NACA 0012
8. タイヤの選定(藤井)
参考資料 講義資料 CD201011_LandingGearandSubsystem
脚配置
機体コンセプトより,重量が大きな旅客機のため,分担荷重を軽減するよう主脚にボギ
ーを使用した.また主翼が大きく,滑走時の水平方向の安定を得るため,脚配置は図
8-3 の Tricycle と Multi Boggy を合わせたものとした.
図 8-1 Tricycle
図 8-3
図 8-2
使用する脚配置
Multi Boggy
図 8-4
Overturn angle
このとき,ボギーのタイヤ数を考慮し,重心を中心としてモーメントを計算することに
より,主脚のタイヤへの荷重がそれぞれ等しくなるように配置した.
また重心の位置より計算し,overturn angle は 35.5deg (≦63deg)となり,横転を防ぐ
には十分であると考えられる.
タイヤサイズ推算
機体重量より,前脚が 10%,主脚が 90%の荷重を受けるとし,それぞれのタイヤの直
径,幅を表 8-1 から推算した.そのためにまず WW を算出した.
表 8-1
タイヤサイズ推算式
まず,前脚と主脚の位置を決め,燃料が満タン時の重心と空のときの重心からそれぞれ
にかかる静荷重・動荷重を計算した.このとき,機体先端位置を 0.0ft とし,それぞれ
の位置は,前脚 15.0ft,主脚 170.5ft,燃料が満タン時の重心 158.4ft,空のときの重心
146.0ft である.
※ 前述したが,主脚は4つのボギーからなるため,重心を中心としたそれぞれのモー
メントを足し合わせると,170.5ft の位置に主軸のすべてのタイヤを集めたのに相当
するよう配置している.
計算した全荷重をそれぞれの脚のタイヤ数で割り,WW を求めた.
計算した結果を以下にまとめる.
表 8-2
Max Static Load
Dynamic Braking
Load
WW
タイヤ毎にかかる荷重
前脚
主脚
取付位置
15.0
170.5
ft
重心からの距離
143.4
12.1
ft
166838.4
976515.3
lb
15.8
92.2
%
静荷重
動荷重
21179.6
lb
タイヤ
4
24
個
静荷重/タイヤ
41709.6
40688.1
lb/個
動荷重/タイヤ
5294.9
荷重/タイヤ
47004.5
40688.1
lb/個
安全性を加味した荷重
61105.9
52894.6
lb/個
lb/個
このとき
Ma /B = 0.0778 > 0.05
Mf /B = 0.1576 < 0.2
となる.
また安全性を加味して WW を 1.3 倍し,これを耐荷重として表 8-4 からタイヤを選定した.
表 8-1 より AWWB を計算し,おおよそのタイヤの直径・幅を求めた.このとき前脚にかか
る荷重が大きいため,前脚は小さくせず主脚の大きさと同じにした.
表 8-3
AWWB
タイヤサイズ推算結果
前脚
主脚
直径
48.3
46.1
in
幅
18.2
17.0
in
このときタイヤ数を変えて耐荷重を見ながら,前脚に 2×2 タイヤ 4 つのものを 1 つ,主脚
は前脚と同じものを翼の根元に 1 つずつ胴体に 2×4 のボギーを 2 つのタイヤ数 28 にした.
以上で計算した耐荷重を満たし,求めた AWWB に近いサイズのタイヤを表 8-4 より選定し
た.
表 8-4 タイヤデータ
9.主翼デザイン(藤井)
翼型を NACA64-210 に変更(浜崎)
エンジンの取付
翼面積やテーパ比などはそのままにし,胴体着陸の際にエンジンが擦らないよう翼の取付
位置を 5ft 上にした.
図 9.1
主翼取付位置
元の取付位置から(つまり,厚さ 5ft から)翼がだんだん薄くなるように,取付位置を厚くし
た.このとき,主脚の格納も考慮して機体底面を四角に膨らませている.エンジンの取付
位置は A380 を参考にした( 機体軸より±44, 75ft ).
主翼取付角
旅客機は巡航時に,機体が迎角 0.0deg,かつ経済性を考え航続距離が最大になる CL,CD
をとることが望ましい.ジェット機は√CL/CD が最大となるとき航続距離が最大になるので,
datcom で計算した主翼の取付角が 0.0deg のデータを参考にし,√CL/CD の大きな迎角の値
を取付角とした.
巡航時 M0.85,高度 52500ft で飛行するとしており,取付角を 0.0deg としたときの datcom
データを以下に示す.
表 9-1
取付角 0.0deg datcom 計算結果
a
CD
CL
CM
√CL/CD
L [lbf]
D [lbf]
0
0.023
0.564
-0.308
32.65
655322.1
26724.1
1
0.020
0.673
-0.339
41.02
781971.2
23238.4
2
0.025
0.776
-0.368
35.24
901648.9
29048.0
3
0.031
0.872
-0.395
30.12
1013193.0
36019.5
4
0.045
0.953
-0.415
21.69
1107308.4
52286.3
5
0.059
1.015
-0.426
17.08
1179347.4
68553.2
6
0.074
1.063
-0.431
13.93
1235119.5
85982.0
7
0.090
1.094
-0.429
11.62
1271139.0
104572.7
8
0.106
1.108
-0.419
9.93
1287405.8
123163.4
9
0.121
1.15
-0.420
8.86
1336206.4
140592.2
このとき揚力が設計する航空機の重量とほぼ釣り合い,またより√CL/CD が大きくなる迎角
は迎角 3.0deg であるので,主翼の取付角を 3.0deg とした.
主翼の取付角を入力して得られた datcom データが以下のようになる.
表 9-2
取付角 3.0deg datcom 計算結果
a
CD
CL
CM
√CL/CD
L [lbf]
D [lbf]
0
0.026
0.831
-0.486
35.06
965554.4
30209.9
1
0.041
0.913
-0.500
23.31
1060831.7
47638.7
2
0.056
0.982
-0.508
17.70
1141004.1
65067.4
3
0.071
1.035
-0.507
14.33
1202585.8
82496.2
4
0.087
1.072
-0.498
11.90
1245576.8
101086.9
5
0.102
1.091
-0.482
10.24
1267653.2
118515.7
6
0.116
1.123
-0.476
9.14
1304834.6
134782.6
7
0.127
1.183
-0.492
8.56
1374549.7
147563.7
8
0.136
1.244
-0.511
8.20
1445426.8
158020.9
9
0.142
1.303
-0.521
8.04
1513980.0
164992.4
このとき迎角 0.0deg で√CL/CD は最大となり,迎角 0.0〜1.0deg において揚力 L は旅客機の
重量とほぼ一致している.よって巡航時にほぼ迎角がない状態で飛行することが可能であ
り,旅客機として妥当であると言える.よって取付角を 3.0deg に決定した.
また表 9-2 において抗力 D について着目し,静止推力の 40〜60%で巡航することが可能で
あるエンジン Trent 972 を選定した.以下にその諸元を示す.
表 9-3 Trent 972 諸元
静止推力
76752
lbf
重量
13842
lb
推力重量比
5.5
-
全長
179
in
ファン直径
116
in
10. 性能推算(饗場)
失速速度
力の釣り合いの式により
W g 
1
V 2 stallSCL, stall
2
ここで,フラップを採用すると,CLmax=1.6となるので,海面上,巡航時の失速速度,また,
巡航速度を計算すると次のようになる.
海面上,失速速度
Vstall 
483182[kg] 9.8[m / s ^ 2]
 70.1[m / s]
1
 1.225 982.4[m^ 2]  1.6
2
Wg

1
 sLSC L max
2
巡航時,失速速度
Vstall,cruise 
Wg

1
criuseSC L max
2
483182[kg] 9.8[m / s ^ 2]
 190.9[m / s]
1
 0.1654 982.4[m^ 2]  1.6
2
巡航速度
現在,決定しているパラメータを使って,最適巡航速度を求める.
K
Vbest, rangee 
W
1
criuseS
2
1
Ae
3K

CD ,0

1
  7  0.8
 0.056841
483182[kg]
3  0.056841
 238.7[m / s]
1
0.02
 0.1654 982.4[m^ 2]
2
音速は高度16000[m]時に295.0748[m/s]であるので,マッハ0.81で巡航することになる.
離陸距離
主翼面積S=982.43[m^2]=10574.8[ft^2],全備重量W=510500[kg]= 1125439.16[lb],T/W=0.33より,
T .O.P 
W /S
  CL,takeoff  T / W

100.7
 224.1
1  1.322 0.34
図10-1:TOPと離陸距離の関係図
導いたTOPの値を図:TOPと離陸距離の関係図(図10-1)から読み取ると,
離陸距離 8000[ ft]  2440[m]
となる.
着陸距離
燃料をほぼなくした重量をとするとWとすると,着陸距離は,
Slanding  80(
 80(
W
1
)(
)  Sa
S   CL,max
509986 1
)(
)  1000
10575 1  1.6
 3411[ft] 1040[m]
11. 機体デザイン決定(金澤)
機体概要
1,000 人乗りの機体を実現するにあたって,抗力の低減を期待できるカナード翼機を採用
する.主翼は従来の旅客機と同様に低翼配置とし,カナード翼は後流の主翼・エンジンへ
の影響を避けるために高翼配置とする.また胴体は大型旅客機である A380 に倣い総 2 階建
てとし,エンジンも同じ 4 発である.図 11-1~4 に三面図を示す.それぞれ側面図(外観)
,
側面図(内部)
,正面図,平面図である.表 11-1 に形状に関わる諸元を示す.
表 11-1
機体諸元
全長
287.0 ft
全高
76.8 ft
全幅
272.0 ft
胴体
胴体については,先に「1 階客室を 1 列あたり 12 席 3 通路確保する」という要求があり,
これを満たすだけの幅(342 in)を選択した.
高さは同じ総 2 階建て機である A380 に倣い 332
in である.前面形状は B747 を参考にして設計しているが,カナードの wing box が客室と
干渉しないように上面にやや膨らみをもたせている.後胴は離陸・着陸時に尻餅をつかず,
また気流を大きく乱さないように 15 度程度跳ね上げた.表 11-2 に諸元を示す.
表 11-2
胴体諸元
長さ
269.3 ft
高さ
27.7 ft
幅
28.5 ft
客室
図 5 に座席配置図を,また図 11.6 に胴体最大断面積部分の断面図示す.
前述のとおり 1 階は 12 席 3 通路を基本に構成されており,9・10 列ごとに出入口・トイ
レスペースを設けている(図 11-5 中の点線枠).トイレは 1 つのスペースに 2 つ設置でき
るので,60 人に 1 つはトイレを用意できる寸法である.2 階は断面形状から 1 列あたり 9
席 2 通路とし,12・13 列ごとに出入口・トイレスペースを用意する.1 階・2 階とも胴体
の尻すぼみにより最後尾では用意できる座席数が減るが,1 階最前部に座席を配置し,ちょ
うど 1,000 席を確保した.
客室の細かな寸法は図 11-6 に示すとおりである.座席や通路の幅は「エコノミークラス
としては余裕がある」というのを 1 つの妥協点とした.
Aisle height および head room は,1 階では 90 in / 67 in と余裕がある.額面上は 2 階も
同じ天井高だが,
楕円形断面のために 2 階の通路はやや天井が低くなっている.ただし head
room はぎりぎり typical data の値を確保した.また 2 階席はこの天井高の問題から上に十
分な荷物スペースを用意できないと考え,窓側座席の外側床上のデッドスペースを新たな
荷物の収納場所とする.1 階と 2 階をつなぐ階段は無理のないよう角度 35 度で設計した.
最後に,客室の諸元を表 11-3 に示す.
表 11-3
客室諸元
1階
2階
客室長さ
2624 in
2417 in
客室幅(最大)
314.1 in
246.5 in
客室高さ(最大)
90.0 in
87.8 in
通路高さ(最大)
81.0 in
90.0 in
通路高さ(最小)
Head room(最小)
73.0 in
67.0 in
65.0 in
出入口スペース長さ
120 in
シートピッチ
34 in
座席幅
21 in
通路幅
20 in
座席基本配置
2/4/4/2
2/5/2
総座席数
564
436
コンテナ
コンテナは従来の旅客機と同じく客室下部に収容する.乗客 1 人あたりの荷物の体積を
12 ft3 と仮定し,これを LD-8 コンテナ(容積 245 ft3)50 個でまかなう.胴体が完全な楕
円断面では搭載できないことがわかったため,胴体下部を膨らませることで収容可能にし
た(図 11-6)
.コンテナ室の諸元を表 11-4 に示す.
表 11-4
コンテナ室諸元
長さ
1,560 in
高さ
74.0 in
幅(最大)
301.3 in
主翼
主翼はスパンやアスペクト比,取付け角(3 度)
,翼面積(全必要翼面積の 90%)の要求
があり自由度が低く,平面形に関しては前縁後退角とテーパ比のみを決定した.衝撃波の
発生を遅らせるために前縁後退角は 30 度とし,
テーパ比は典型的な値として 0.3 を選んだ.
安定性のために上反角は翼根で 7 度とし,構造的な観点から翼端に向かってこれを減尐
させる.また 3 度の捩り下げをもたせ翼端失速を遅らせる.翼端形状は一般的な Hoerner
wing tip を採用した.エンジンは地上走行中の翼への負荷を軽減させるため A380 よりやや
内側に配置し,また着陸時に機体が 5 度傾いても地面と接触しないだけのクリアランスを
確保している.
舵はエルロンとフラップ,スポイラを装備する.エルロンとフラップの舵面翼弦長はそ
れぞれ 20%翼弦長,15%翼弦長である.スポイラは 8.3×12.5 ft のものを左右 5 枚ずつ,
フラップの前方に配置する.主翼の諸元とエルロン・フラップの諸元をそれぞれ表 11-5・
11-6 に示す.
表 11-5
主翼諸元
翼型
NACA 64-210
スパン
272.0 ft
翼面積
9,565 ft2
アスペクト比
7.0
テーパ比
0.3
前縁後退角
30 deg
取付け角
3 deg
捩り下げ
3 deg
上反角(翼根)
7 deg
上反角(翼端)
0 deg
翼根翼弦長
64.0 ft
翼端翼弦長
19.2 ft
内側エンジン位置
44 ft
外側エンジン位置
75 ft
表 11-6
エルロン・フラップ諸元
エルロン
フラップ
内側位置
73.0 ft
20.3 ft
スパン
24.4 ft
93.4 ft
舵面翼弦長(内側)
6.25 ft
8.60 ft
舵面翼弦長(外側)
4.64 ft
4.99 ft
カナード翼
カナード翼はアスペクト比,取付け角,前縁後退角,テーパ比を主翼と合わせ,要求さ
れる翼面積(全必要翼面積の 10%)から形状を決定した.舵やスポイラは一切配置しない.
諸元を表 11-7 に示す.
垂直尾翼
まず翼面積だが,カナード翼機では垂直尾翼容積係数とアーム長から求める手法が取れ
ないため,統計値を外挿した値をとる.テーパ比は大きめにとり,高迎角時にカナード翼
の後流がかかっても安定性・操舵性を損なわないよう配慮した.前縁後退角は主翼から 5
度増して 35 度とし,ラダーの舵面翼弦長は 30%翼弦長とする.諸元を表 11-8 に示す.
ランディング・ギア
ランディング・ギアについてはタイヤと取付け位置・各取付け位置のタイヤ必要数が与
えられたので,収納方法のみを考えた.タイヤ(図 11-7)の諸元を表 11-9 に示す.
表 11-7
カナード翼諸元
翼型
NACA 64-210
スパン
86.4 ft
翼面積
1,065 ft2
アスペクト比
7.0
テーパ比
0.3
前縁後退角
30 deg
取付け角
3 deg
上反角
7 deg
翼根翼弦長
19.0 ft
翼端翼弦長
5.7 ft
表 11-8
垂直尾翼諸元
翼型
NACA 0012
高さ
44.6 ft
翼面積
1,438 ft2
テーパ比
0.7
前縁後退角
30 deg
翼根翼弦長
38.0 ft
翼端翼弦長
26.6 ft
ラダー翼根翼弦長
11.4 ft
ラダー翼端翼弦長
8.0 ft
表 11-9
タイヤ諸元
直径
52.0 in
幅
23.0 in
Rolling radius
21.3 in
内圧
195 psi
ギアはノーズ,胴体下部,主翼下部の 3 ヶ所である.いずれもタイヤは 2 列の配置で,
オレオの長さはストローク長を考慮しつつなるべく短く設計した.ここでは詳細な説明は
せず,諸元(表 11-10)と図面を載せるにとどめる.図 11-8,11-9,11-10 がそれぞれノー
ズ,胴体下部,主翼下部のギアの側面図と正面図である.
表 11-10
ギア諸元
ノーズギア
胴体下部
主翼下部
機軸方向位置
15.0 ft
165.0 ft
181.5 ft
横方向位置
0.0 ft
±7.5 ft
±20 ft
荷重
170,806 lbs
462,600 lbs
231,300 lbs
タイヤ個数
4
8
4
荷重(タイヤ 1 個当たり)
62,878 lbs
57,825 lbs
57,825 lbs
オレオ直径
14.3 in
23.5 in
16.6 in
オレオ長さ(※)
65.0 in
77.1 in
99.0 in
※ ギア全体の回転軸から車軸までの長さ
図 11-1
側面図(外観)
図 11-2
側面図(内部)
図 11-3
平面図
図 11-4
正面図
図 11-5
座席配置図
314.1
246.5
73
81
65
155
65
45
20
21
0
21.5
67
90
eye clearance
-45
-57
52
23
図 11-7
LD - 8
LD - 8
-131
301.3
図 11-6
断面座席配置図(胴体最大断面積部)
タイヤ
航空機設計特論 設計書
図 11-8
図 11-9
ノーズギア
胴体下部ギア
航空機設計特論 設計書
図 11-10
主翼下部ギア
航空機設計特論 設計書
感想
饗場
今回,航空機設計をするに当たり,取りまとめという形で動きました.要素要素で,皆
さんが動いてくれたおかげで,なんとか形はまとめる事が出来ました.特に,機体のレイ
アウト等に関して,金澤君に大変な負担をかけてもらい,設計にこぎつくことができまし
た.感謝するばかりです.
金澤
今回は機体のデザインという重要な部分を担当させてもらった.空力等の複雑な計算こ
そないものの,感覚的な作業が多く客席の配置には随分悩まされた.しかし初期の機体サ
イジングが優秀であったためか,ほぼ過不足ない形で必要な座席数を確保することができ
た.
今回の作業で学んだのは何より共同作業のやり方である.研究なら何でも自分でやるの
も悪くないが,このようなプロジェクトになるとすべてを一人でこなすことは容易でない.
そして,共同でやる以上は意見の交換や要求の擦り合わせが必要不可欠となる.この課題
を通してその重要性を理解できた.
最後に,こちらの度重なる設計変更に対し一々性能確認をし,また必要な情報を絶えず
あげてくれたメンバー一同に感謝申し上げる.
濱崎
今回の設計を通して、1 つのものを複数の人で設計することの難しさを感じた。作業を
分担することでそれぞれの負担は軽減するが、1 人でもかけてしまうと次の段階に行くこと
ができないため、それぞれがしっかりと自分の役割を果たし、うまくコミュニケーション
をとりながら進めることが重要であると改めて思った。
藤井
私は航空に来てからの設計は初めてやったのですが,この講義は大変勉強になり良い経
験となりました.まだまだ飛行機を作る上での常識を知らない私にとってチームの方々や
先生の意見はとても参考になりました.私は足を引っ張ってしまいがちでしたが,無事設
計を終わらせることができ,みなさんには大変感謝しております.