豊かな風土を後世へ(錦江湾重富干潟)

平 成 2 4 年 度 「 手 づ く り 郷 土 賞」 ( 一 般 部 門 ) 応 募 用 紙 (1)
応募案件名
①応募者
地域活動
団 体
※社会資
本
管理団体
豊かな風土を後世へ(錦江湾重富干潟)
ふりがな
とくていひえいりかつどうほうじん くすのきしぜんかん
特定非営利活動法人くすの木自然館
ふりがな
※地域活動団体が単体で応募される場合は、社会資本管理団体の記載は不要です。
②関連団体からのコメント (鹿児島県 伊佐・姶良振興局)
「くすの木自然館」は、環境教育を通して豊かな郷土の風土を後世によい状態で継承していくための環境保全・風土継承
活動を進めています。(会員数143名)。鹿児島湾最大の重富干潟をフィールドに地域や幼~大学等での講演や環境講
座、野生生物調査、生態系調査を実施し、分析研究することにより私たちの生活環境を紐解き理解していただきます。ま
た、2000年当時は荒廃しきった状況だった干潟を地域の住民との協働で外来種駆除、干潟周辺の海岸清掃を行い、現
在では、海岸を訪れる人は20倍に増え、活動を通じて地域にぎわいをつくり、活性化することに寄与しています。また、鹿
児島県(環境保全課)は、干潟の生物調査を委託するほか、鹿児島県環境審議会,鹿児島県観光審議会等の委員とし
て、貴重な施策提言をいただいています。
③応募案件の概要
③-Ⅰ 今回対象としている社会資本について
施設名
ていぼうおよびごがんこう(しゃろこう)
所在地
かごしまけん あいらし おおあざひらまつちない
(供用年度)
H21
堤防及び護岸工(斜路工)
鹿児島県 姶良市 大字平松地内
整備・管理
主 体
(連絡先)
TEL: 0995-63-8367/8368
FAX:
0995-63-8345
かごしまけん あいら・いさちいきしんこうきょく けんせつぶ
鹿児島県 姶良・伊佐地域振興局 建設部
かせんこうわんか
部署・担当者
河川港湾課
「日本の重要湿地500」にも選ばれ,また国立公園の指定を受けた鹿児島湾奥の重富干潟は,NP
O法人や地域住民等が一体となった環境美化活動が実施され,行政や大学・企業等が連携した環境
当該社会資本 学習の場としても活用されている。しかしながら,背後地から干潟までアクセスする施設がなく,
の魅力
高齢者・身障者は水辺に下りることが困難であり,さらに既設護岸は老朽化も進み高低差もあるこ
とから,スロープの整備を行い利便性を向上させることにより憩いの場・環境学習等の場としての
一層の活用促進を図る。(錦江湾クリーンアップ作戦等)
社会資本の
位置図
重富干潟(東餅田海岸)
③-Ⅱ 社会資本の整備にかかる特筆すべき功労者について(該当者がいる場合のみ記載。複数名記載可。)
功労者
ふりがな
所 属
ふりがな
(特筆すべき点)
1
平 成 2 4 年 度 「 手 づ く り 郷 土 賞」 ( 一 般 部 門 ) 応 募 用 紙 (2)
③応募案件の概要
③-Ⅲ 応募対象としている地域活動について
活動団体名
ふりがな
くすのきしぜんかん
特定非営利活動法人くすの木自然館
活動の概要
活動期間:通年
活動スタッフ:常勤職員11名、非常勤職員15名、ボランティア
活動内容:
環境教育や自然体験活動を通して、鹿児島を愛する人々を育て、豊かな郷土の風土(自然・文
化・生活)を後世に良い状態で継承していくための環境保全・風土継承活動を進めています。ま
た、環境調査の生きたデーターをもとに、環境教育を進める調査・研究・環境教育・環境保全を
行う専門機関として、昭和62年より活動しています。
1 環境教育…学校等の教育機関、企業、行政等、わかりやすい環境教育プログラムの
提供から、専門的な情報や講演等の提供
2 自然体験…楽しく安全に、ふるさとの原体験・原風景づくりを支援
3 自然環境調査…野鳥・哺乳動物・植物・底生生物等を中心に自然環境の生態調査
4 環境保全/景観保全…希少生物をはじめとする生態と環境の保全や外来種駆除
5 政策提言/委員派遣…環境省や農水省、鹿児島県、各市町村等の各種委員に派
6 国際理解教育/国際協力…JICAを通じて青年研修等の研修受入やエコツアーを企画
7 福祉支援…障がいの皆さんと自然を楽しみ自然に学ぶ支援や技術を提供
8 共生協働地域づくり…協働や活性化をテーマに地域でのワークショップ支援
9 人材育成…環境教育指導者や自然体験・観光・グリンツーリズム等のガイドや
指導者等の企画やリスクマネージメント等の指導
10 NPO等の中間支援…NPO相互の情報交換、キャパシティービルディング(組織強化)、
企業のCSR支援等
11 エコツーリズム推進…地域資源を活用した持続可能な観光の推進
※多数の業務や関与があげられるため、詳細は省略
【委託業務】専門技術を活かし、業務を受託している
活動における行政の関 【講師派遣/各種委員派遣】による協力関係
【協働事業】役割分担を明確にした景観維持や保全活動
与
【国立公園の指定】当館設置管理運営の重富干潟小さな博物館は環境省により霧
島錦江湾国立公園の展示施設として指定を受けている
③-Ⅳ 地域活動にかかる特筆すべき功労者について(該当者がいる場合のみ記載。複数名記載可。)
功労者
ふりがな
所 属
ふりがな
(特筆すべき点)
④過去の類似表彰の受賞歴 (※ある場合のみ) ※受賞内容の分かる参考資料を添付すること。
表彰名(受賞年度)
表彰主催者
MBC賞
南日本放送
鹿児島県 県民表彰
鹿児島県
鹿児島景観賞 奨励賞
鹿児島県
⑤同時期に他の表彰制度への応募(予定含む)状況 (※ある場合のみ)
表彰名
表彰主催者
2
結果公表時期
平 成 2 4 年 度 「 手 づ く り 郷 土 賞」 ( 一 般 部 門 ) 応 募 用 紙 (3)
⑥PR項目
■ 社会資本の整備・維持管理・利活用にあたっての創意・工夫について
2000年当時、管理が行き届かない海岸及び駐車場は、環境としても利用者意識としても荒廃しきった状況で
あった。(状況はエピソードにて後述)
干潟の生物の激減、汚く危険で海岸利用者がいない状況から、美しく豊かな山野浜をめざして活動を始めま
した。
ストーリビジョン
【NPOの活動→きれいになっていく→お散歩が増える→子どもの協力→地域の管理】
同時に行政のバックアップ
上記のストーリーを実現するために様々な取組みを行った。
① 景観復興及び維持活動
② 意識啓発活動
③ 地域活性化
④ 障がい者にやさしい環境作り
⑤ 地域づくり
⑥ 希少生物の保全
⑦ 様々な協働とコンソーシアム
⑧ 国立公園化
※具体的には以下に記述
【住民の心を里浜と紡ぎ直す】(景観を楽しみ憩いの場の再構築)
荒廃し、散歩すらしなくなった地域住民の心を取り戻すため、クリンアップや干潟の重要性の情報発信をし、
自然と海岸に足を運ぶ意識づくり(里海との紡ぎ直し)を行った。
今では、朝晩多くの散歩や夕涼み、釣り等でにぎわう里浜に変わった。
【観光地の復活】【エコツーリズム拠点整備】
マスコミや姶良市・姶良市観光協会等との連携により情報発信を進め、海水浴場のにぎわいの再興とレ
ジャー(釣り)の活用が広がってきており、錦江湾のエコツーリズムの発信拠点としてもにぎわうようになって
きている。干潟の観察からウェダーウォーク、バードウォッチング、カヤック、クラフト等多彩にプログラムを提
供している。
【錦江湾と重富干潟の環境教育拠点 重富干潟小さな博物館】
錦江湾と干潟の魅力や仕組みを伝えるための環境教育拠点として2006年10月にオープンさせた手作り博物
館。解説展示をガイドが解説し、目の前の干潟の現場で観察を体験できる。干潟の重要性や仕組み等が体
験できるワークショップが人気がある。
また、調査研究の要であり、クリンアップ等海岸のプロジェクトはすべてここから発信される。
平成24年3月16日霧島錦江湾国立公園が誕生し、重富干潟を含む錦江湾、松林が国立公園に編入され、重
富干潟小さな博物館は展示施設として指定を受けている。
【干潟のシンポジウム】(普及啓発のために)
専門的情報をよりわかりやすく伝え、積極的参加を促すワークショップ型シンポジウムを定期的に開催した。
3
■ 地域活動における創意・工夫、取組の独創性について
【戦略的クリンアップ】
○ゴミ拾いとデーター化で戦略的ゴミ減量
海岸のゴミをゼロにした翌日から、毎日ゴミ拾いと同時にすべてのゴミの種類と量と場所情報をデーター化。
開始当初、40Lのゴミ袋が毎日2〜3袋でていました。何が多いのかを明らかにするための記録だったのです
が、明らかに弁当がらが多い。そこで、ゴミを減らそう、そのために何をしたらいいかを考えました。朝7時、昼
2時、夕方5時にゴミを拾って時間特定をしてみると昼食の弁当がらである事が判明。そこで、昼食を終え立ち
上がる1時の15分ぐらい前からゴミ袋を持って遠巻きに姿を見せながらゴミ拾いを行いました。すると2週間
経つとゴミは激減。その後もデーターを分析しながらゴミ対策を進め、今ではタバコ数本しか見つけることが
できない日もあるほど美しく変わってきました。
○松葉かき
松林内でどこにゴミが落ちているかはデーターから分析できます。一番はベンチ周辺でした。そこで落としに
くい工夫として、毎朝ベンチ5m周辺を箒の目を立てることにしました。次第に手の加わったゴミのない状況で
はゴミは減少していきました。
【山野浜ワークショップ】
重富海水浴場は昔から「山野浜(さんやはま)」と地元の皆様からは親しまれてきましたが、後述のとおり荒
れ果てており、クリンアップで変わりつつあるものの根本解決に至らない状況でした。そこで、ステークホル
ダー(利害関係者)によるワークショップをコーディネートしました。住民から自治会長、SAP(山野自治会安
全パトロール隊)、ご近所の方、町職員3つの担当部署、消防、警察、漁協、NPO等の多様な主体で集まり、
現在の状況と問題点を明らかにし、誰がいつどう対応するかの役割分担明確にします。定期的に実施。毎回
作業したワークショップの結果はわかりやすく共有化し対応しました。その結果、駐車場対策(暴走族対策)、
花火対策、クリンアップ等等解決が図られていきました。
【バリアフリー】
車いす、松葉杖等を利用される高齢者や障がい者、ベビーカー利用者層の拡大にともない、スロープ設置や
砂浜用車いすの設置等を進め、障がいをお持ちの方も水辺の活動ができるようにバリアフリー化を進めてい
る。
■ 地域づくりの成果及び波及効果について
【毎日クリンアップからの広がり】
前述、後述にもありますが、ゴールは地域財産を地域で守る管理する。目標達成のために、NPOがきっかけ
を作り、今は地域住民や行政の協働のもと維持管理が進んでいる広がりが見られます。また、最も重要な事
はゴミを出さない出させない仕組み。ゴミが常にない状況、誰かの手や目が行き届いている状況を作る事に
よりゴミがでない状況を生み出しています。
【浜辺のベンチコミュニティ形成へ】
近隣の高齢者が朝夕お散歩や夕涼みで毎日ベンチコミュニティが発生する。毎日世間話をしながら体調確
認や心配事の共有等が進んでいく中、数日見ない方の安否確認をしたりと、小さなコミュニティが数カ所で発
生してきた。利用が増えるとベンチが足りなくなる。行政との連携によりベンチを増やし対応している。
【錦江湾クリンアップ】
行政主体で従来進めてきたクリンアップは毎年800人程度参加するが、資金不足と参加者減少が懸念され、
当館に協力要請があった。
企業との連携、住民との連携、NPOとの連携に始まり、参加したくなる仕組みづくりをコーディネートし、1,800
人の参加をいただいた。日常的に利用している方の参加を多くいただき、いつものお礼にクリンアップに参加
しましたと声をおかけいただいた。
【自治会活動の活発化と利用促進】
子供会のお月見会、相撲取り大会、高齢者の「いきいきサロン」等、それまで廃れていた地域行事が復活し、
松林と海岸のにぎわいが広がり、地域に定着が進んできた事が伺える。
【エコ・ウォーター錦江湾による住民の環境意識啓発】
錦江湾、干潟のダメージの一因は私たち地域住民の生活排水である事も排除できない。(合併浄化槽普及
率30%程度)そこで微生物で水質改善を図るための「エコ・ウォーター錦江湾」を作成し、思川水系周辺複数
の自治会で過程散布に取り組んでいます。これは、気勢物による河川の浄化機能を高めるものでもあります
が、過程からの排水についての意識啓発を即す取組みでもあります。廃水を流すとき、錦江湾の水とつな
がっている事を意識した住民活動です。協力者は年々広がっています。
4
■ 今後の活動の継続性・発展性について
【住民主体の景観維持意識と声かけの広がり】
お散歩の住民がゴミを拾って届けていただいたり、自主的にクリンアップをしていただいたりと継続的広がり
が進んでいる事。協力参加自治会の環の広がりが見られる事等、継続的に主体的に取り組み仕組みが構
築できている。
【希少生物との共存と自治会の取組みの広がり】
「飛来する希少生物保全のために、自治会として取り組むべき事」として勉強会の要請をいただき、解説講演
をさせていただいた。一帯の海岸線を利用する希少生物を指標として、今後積極的な浜辺に対する自治会
活動が広がりつつある。
【地域活性化の動き】
姶良市及び姶良市観光協会を中心に「あいら浜まつり」等の活性化イベントの開催
(実質の管理運営サポートを行っている)
■ 他の参考となるような先進性・先導性について
【海辺でマルシェ(Umibe de Marche)】
浜辺及び松林を使って実施するマルシェ。姶良市内の質の高いこだわりのお店に出店いただき開催。20代
後半〜50代をターゲットに、浜辺でゆっくり過ごす休日をテーマに2000人以上の皆さんにご来場いただいて
いる。出展者、来場者、関係者からの評価も高いマルシェ。
地域自治会出店もある。
【地球でここだけエコツアー】
○希少生物のエコツアー
クロツラヘラサギ、ハクセンシオマネキ、ミサゴ、その他の希少生物や渡り鳥を観察するエコツアーが人気
である。
○ゴカイの観察会
3月の大潮時に生殖群泳のために集まる姿を解説員とともに観察する大人気の観察会。地域住民はもとよ
り、研究者や東京近辺からもツアーを組んで実施される。
○周辺の歴史街道白銀坂や文化遺産等へのツアー及びフットパス整備
地域を知るためのエコツアーを海岸を拠点にして開催している
【Café Lactea Lactea(らくてあ らくてあ)】
学ぶ、保全するだけではなく、楽しむためのカフェを準備している。涼やかな松蔭、穏やかな錦江湾、勇壮な
桜島という贅沢で美しい風景を、のんびりと感じていただける空間演出。姶良市及び錦江湾の情報も提供さ
れる。
■ その他(上記以外の特に優れた内容)について
【国立公園の指定】
国立公園指定に向けた錦江湾の関係者の調整をさせていただいた。また、前述のとおり、当海岸及び重富
干潟小さな博物館が国立公園として指定を受けている。
【漁協との連携】
資源復元のため錦海漁協・姶良市と協働で、「あいら藻場・干潟再生協議会」を発足させ、アマモの定植、
アサリの増殖、エイ駆除、モニタリング等を行っている。成果が見え始めアサリの成長が確認され始めてい
る。
【マスコミとの連携】
多くの取材等も積極的に受けるとともに、本年度は「ダッシュ海岸」にて、重富海岸の取材・放映をいただい
ている。今後も続けていきたいと要請をいただいている。
5
⑦取組に関するエピソード等
■取組に関するエピソード等
【プロジェクトのきっかけ】
干潟の生き物の減少
すべてのきっかけは。2000年に事務所を移設し、それまで私たちは自然観察を中心に環境教育プログラム
の提供や講演、自然学校、野鳥調査等を行ってきた。
主には参加者主体の地域でのプログラムを多くこなしていた。
この地に事務所を構えた当初。目の前の干潟の観察会をしようとスコップで掘ると、人すくいで20個体の
様々な生き物達が観察できた。次の年、同じように掘ってみると8個体、さらに翌年2個体と激減していった。
干潟の底生生物は海の浄化機能の要を担う生物である。激減するという事は錦江湾の汚染に発射をかけ
る事につながる。私たちが今できる事は、自然観察をとおして危機的状況を伝え、生活排水の改善等を訴え
る事。大学と連携し定期的な底生生物の定量調査を行う事であった。
これがきっかけとなり、「潟守」の育成や様々な保全活動、博物館の設置等につながっていく。
「あそこん海岸は(あそこの海岸は)」から、「うちの浜は」へ(地域住民の意識の変化)
事務所を近くに構えた私たちは、近所の高齢の男性とよくお会いした。釣りをよくされると聞き、山野海岸は
何が釣れるのかを尋ねると「あそこん海岸はきっさねでや(汚いからな)」とここでは釣りはしないと言われま
した。すぐそこに住んでいる皆さんもあきらめている、汚く危険な海岸。なんとか地域の皆さんが美しく故郷が
自慢できる海岸に取り戻すことができないか。
この「あそこん海岸」の一言が私たちがクリンアップをはじめたきっかけである。
当時は、駐車場は葦が生い茂り不法投棄車両が十数台、暴走族が毎晩集結し爆音と気勢、火柱の様な花
火、海岸は弁当がら、ビールビン、花火、犬の糞、バーベキュー跡等
NPOスタッフで1日かけ、海岸中のゴミを回収し、軽トラ1台分のゴミを回収した翌日スタートを切った。
ゴミを拾い、データー化し、戦略的にゴミを減らしきれいになった海岸へは、近所の方がお散歩し、憩い、遠く
からも散歩や写真撮りにこられます。
ある日、いつものおじいちゃんと話しをしていると観光客が、「ここは何が釣れますか?」のといに「うちの浜
はね・・・」と。
この一言が、私たちの毎日のクリンアップによる「住民と里浜の紡ぎ直し」の成果であり、それからの活動の
よりどころの一言です。
障がい者の利用とスロープ設置(変化してきた利用者の質の変化)
美しく生まれ変わり始めた海岸には、だんだんとご近所の方が朝夕お散歩に利用されるようになってきまし
た。ゴミ袋を持つ私たちに声をかけていただけるようになり、「ゴミが散れていたから集めておいたよ」と美しく
ありたいという環が広がっていきました。その中には松葉杖の高齢者の方や障がいをお持ちの方もちらほら
いらっしゃいました。そんな中、入口のスロープの上で、うろうろと半日過ごす車いすの方を頻繁にお見受け
する姿を目にしました。夏休みの出会いでその原因が分かったのですが、入り口付近にあるスロープが急す
ぎて入れなかったのです。夏休み、事務所からはきれいになった駐車場から海岸の入口一帯が見ることがで
きるのですが、当初は車いすで入口スロープをあがられていきましたが、下りのスロープが急すぎて下れず、
30分スロープ上でかつの枝から見え隠れする浜辺を見下ろしてはため息をみなでついて帰られていらっしゃ
いました。数日後、あきらめていらっしゃった車から直接車いすに乗っていらっしゃった20代後半の肢体不自
由の娘さんを、お母様とおばあさまが抱えて松林までお釣れになり。持参したござの上で毎日午前10時から
午後3時ぐらいまでゆっくりしていらっしゃいました。
ある日、飲み物がなくなったので娘に何か飲み物をとカフェに起こしいただきましたが、あいにくゴミ対策の為
テイクアウトはご用意しておりませんでしたが、ゆっくりされていらっしゃるところに器のままお持ちすることに
しました。それがご縁で、毎日お届けすることになったのですが、お話をうかがう中でスロープが急すぎて下
りることができない、下りたら帰れないと伺いました。車いすの皆さんが坂の上でため息をツ入れいらっしゃっ
たのはこれかと気づきました。夏が終わり、利用者の現状を市町村や県の関係者にお話しして回ると、予算
処置をいただき松林までだけではなく海辺へ下りれるスロープを整備していただきました。合わせて私どもは
福祉助成を活用し、悪路使用の太いタイヤの車いすを3台整備させていただきました。
翌年の夏、あの女性がいらっしゃる事を心待ちにしていたのですが、残念ながらあの女性の方は冬に体調を
崩し、また松林に降り立つ事はかないませんでした。後日お母様がお礼にと足をお運びいただき、スロープ
を見て、「私の娘は肢体不自由で何もできなかったけれど、このスロープを作るという社会への役目を持って
いたのかもね」と涙されていらっしゃいました。
このスロープはその後毎日車いすの方、松葉杖の方、ベビーカーの幼児連れの方にご利用いただいていま
す。
6
松ぼっくりロード
私たちの博物館とカフェは松林の奥にひっそりとある海の家を利用した施設です。入口からは見えないた
め、落ちている松葉を掻いて道を造っていましたが、松葉かきをするとなかなか目につきません。そこで目印
代わりに落ちている松ぼっくりを10個30cmおきに並べてみました。かわいいという環が次第に通行する子ど
もたちや大人の手でつながり、次第に入口までの松ぼっくりの小道が出来上がっていきました。並んでいる
松ぼっくりの小道を歩くカップルや子どもたちは微笑ましく、時々転んでいるともとに戻してくれます。そんな心
やさしい空間を作る事が、実はこの海岸を美しく維持している機能になっている事に最近気づかされていま
す。
終の心のよりどころの浜へ
美しく変化してきた浜辺に、小雨が落ちる秋の昼下がり、杖をつきながらやっと歩かれるお年を召した女性を
娘さんが支え傘をさしながら海岸を歩かれていらっしゃいました。時々立ち止まっては景色を噛み締めるよう
に、小さくうなづくように風景を楽しまれていらっしゃいました。小半時歩かれ、当方のカフェに起こしいただき
コーヒーを注文いただきました。「ここの海岸はきれいね」「あの松ぼっくりはかわいいわね」と松ぼっくりの小
道のお話をきいていただきました。ゆっくりと小雨の落ちる松林をまた帰っていかれましたがすぐ娘さんが
帰ってこられました。娘さんは、「実は明日お母様は老人ホームに入所され、でてこれらることはないであろ
う」。お母様は「若い頃美しい海岸で遊んでいたのできたかった」といわれるのであるが、2000年頃こられてい
た娘さんは「あそこの海岸は汚く危ないので、美しいと思っているお母さんには見せたくない」と市内を回った
が「やっぱりどうしても重富海岸に行きたい」といわれるので、いやいやながらおつれしたが、海岸がきれい
になってびっくりした。と、涙ながらにお話をいただきました。「最後に見たい風景」そんな、終の心のよりどこ
ろになる様な浜にこれからもしていきたいと心に誓う出会いでした。
「故郷の海は僕たちの手で守りたい」(子どもたちの参加)
手作り博物館がオープンし、水槽が設置されたゴールデンウィーク。浜辺では見る事のなかった子どもたち
が遊びにきて、干潟で見つけた生き物を水槽や図鑑と見比べては、スタッフに生物名を尋ねたり感想を言い
合ったりと活気づいてきました。しかし、4時半にはスタッフはゴミ袋を持って博物館を閉めてしまいます。ゴミ
袋絵を持ったスタッフを見て、何をしているのかと尋ねられ、「イルカや亀がレジ袋をクラゲと間違って食べて
しまい、餓死するんだ」ときいた子ども5人は、その日から手伝ってくれるようになりました。毎日毎日放課後
に走って駆けつけ、ゴミ袋とデーター記入表を持てゴミ拾い。だんだんと友達の輪が広がり現在登録児童生
徒数は150人を超えます。その輪は大人にも波及し、前述の協働でのクリンアップへと拡大していきました。
協働やクリンアップの取材を受けるとき自治会長や子どもたちにも取材を受けてもらいます。「なぜ、ゴミ拾い
をしているの?」ときかれたレンズの向こうの子どもは、「故郷の海は僕たちの手で守りたいから」と胸を張っ
て答えていた。
7
平 成 2 4 年 度 「 手 づ く り 郷 土 賞」 ( 一 般 部 門 ) 応 募 用 紙 (4)
⑧活動状況、社会資本の状況がわかる写真 (※写真に枚数制限はありません。必要に応じ応募用紙をコピーし使用ください。)
写
写 真
重富干潟(山野浜)は53hの錦江湾奥最大の干潟。
真
国立公園展示施設指定を受けた重富干潟小さな博物館とマツボックリ
ロード
写
写 真
真
磯や干潟の観察会
干潟で生き物とであった後は、ワークショップで学ぶ
砂浜でも使用可能な車いす
スロープを設置してある
学ぶためのオリジナル教材も多彩に用意
漁協と一緒に干潟の耕運で生き物を増やす努力
8
人気のゴカイの観察会
復活した地元の季節行事
浜辺のベンチコミュニティで、世代間交流が進む
様々な楽しいエコツアーを用意
写真はウェダーウォーク
行政との協働企画やマスコミを介した情報発信も盛んに行う
にぎわう「海辺でマルシェ」
毎日行われるクリンアップ
地域に広がるクリンアップの輪
9
錦江湾クリンアップ
確認されたウミガメの卵
錦江湾で初めて確認されたウミガメの足跡
エコウォーター錦江湾の住民説明会
山野浜ワークショップは多様な主体が参加する
アカウミガメやクロツラヘラサギ等の希少生物保護に対応
浜辺の生物等の国際シンポジウム等を企画
※その他、応募要領 3.選定についてに記載している「選定のポイント」の参考となる資料があれば、様式自由にて提出ください。
(その場合は、原則1項目につきA4用紙1枚としてください。)
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