金属資源分野 Our View JOGMECは、 日本の産業界発展に 欠かせない金属資源の安定供給確保を担い、 調査、探鉱、開発、生産、備蓄、 リサイクル、 そして環境保全まで幅広い分野で 貢献していきます 世界で資源獲得競争が加速する中、JOGMECは 源開発の各工程において、技術開発、技術支援を積 資源外交のバックアップや資源国の鉱山会社や外国 極的に展開するほか、 地域偏在性が高いレアメタル 企業等へのアプローチ、 資源国への技術支援など、 の供給障害に備えるための国家備蓄事業も行ってい 資源国との関係強化につながる取り組みを実施して ます。 また、 鉱害防止事業を行う地方公共団体への います。 支援や新たな鉱害防止技術の開発など環境保全に 金属資源の賦存有望地域において地質構造調査 も力を注いでいます。 さらに、 長年にわたり培ってきた の実施・支援を行う一方、 出融資・債務保証を通じて 鉱害防止のノウハウを生かし、 海外での鉱害防止セミ 日本企業による探鉱・開発をバックアップしています。 ナーや専門家派遣等を通じ、 資源国への情報提供、 さらに調査・探鉱・開発・生産・リサイクル等、金属資 技術支援を積極的に行っています。 Key Data 資源の海外依存度 出典:鉱山(2012.12月号) 銅鉱石 亜鉛鉱石 100% 100% JOGMECの事業 地質構造調査 金属開発の 流れ 資源備蓄 海外において金属資 民間企業による探鉱事業 レアメタルの供給不足に備 源の 初期 探 査 活 動 に対しての出融資や開発 えた国家備蓄を行うほか、 レ を行う民間企業に対 時の借り入れに際しての債 アメタル各種についての動 して、積 極 的な支 援 務保証を行うことで円滑な 向調査を実施します。 を実施します。 P04-05 出融資・債務保証 調査 事業推進を支援します。 P06-07〈ⓒ パンパシフィック・カッパー(株) 探鉱 開発 備蓄 生産 P12-13 供給 環境 技術開発・技術活用 情報収集・提供 サイクル技術の開発を行うとと 民間企業の金属資源開発 もに、操業現場ニーズに対する への取り組みを補完・支援 地方公共団体・企業等へ 各種技術支援を実施します。 するために鉱業関連情報 の 技 術・金 融 支 援、情 報 の収集・分析・提供を実施 提 供を通じて、環 境保全 2 P08-11 ⓒ 丸紅(株) 鉱害防止 探査技術や金属回収技術、 リ P18-19 しています。 鉱害防止のための技術開 発や鉱害防止事業を行う P14-17 に努めます。 3 備蓄 調査 探鉱 開発 生産 供給 環境 権益確保支援 地質構造調査 JV(ジョイントベンチャー)調査 JOGMECは、世界 各地で、海 外 の国営 企 日本企業による探鉱・開発事業の 促進を図り、 JOGMECは、 世界各地の初期探鉱プロジェクトに参入し、 鉱床賦存調査を実施しています。 減、日本企業の権益獲得を支援しています。プ 業、非鉄メジャーやジュニアカンパニー等と共 ロジェクトの形成にあたっては、ベースメタル、 同で資源探査活動を積極的に展開していま レアメタル等を対象鉱種とし、地質ポテンシャ す。また、日本企業も共同探査の相手方として ル、鉱業投資環境及び安全面、日本企業の関 います。探 査の結果、有 望と確認されたプロ 心度などを考慮し、戦略的に重点地域を選定 ジェクトについては、JOGMECの権益を日本 しています。 企業に引き継ぐことで初期探査のリスクを軽 JV 調査の実施体制フロー 予算 JOGMEC 経済産業省 共同調査 調査成果獲得 調査実施 非鉄金属は、IT産業や自動車産業等において、日本経済を支える 必要不可欠な基礎素材であり、資源の安定供給確保は国の最重要政策課題です。 安定供給確保には民間企業による自主開発鉱山の権益確保が重要ですが、 近年、新興国の台頭や金属価格の高騰等により資源獲得競争が激化、 開発段階からのプロジェクトへの参入が非常に困難な状況になっています。 そのため、大きな利益を確保できる初期段階からの 探査プロジェクト参入が鍵となりますが、 必ずしも収益に結びつくとは限らない初期探査事業は、 民間企業にとって極めてハイリスクといえます。 JOGMECは、主体的に海外企業等の初期探鉱プロジェクトに参入し、 探査を進め、その成果を日本企業に継承する活動を行っています。 共同調査相手機関 プロジェクト発掘・調査技術協力 調査フィールド提供 引き継ぎ 我が国企業等(海外子会社を含む) 探鉱・開発 ※ JOGMEC権益を引き継ぐ際には入札を 実施。共同調査相手機関が日本企業の 場合は、第一先買権を付与。 生産 我が国への安定供給確保 相手国への経済・技術協力 主な実績 JOGMECは、2004年にチリ・アルゼンチンフロンテラ探鉱案件に参画して以降、ボーリング 調査等を実施した結果、銅鉱量約850万トンの鉱床を発見、2012年、JOGMECの保有する 権益を入札を経て日本企業へ譲渡しました。また、南アフリカ・ウォーターバーグ地域で有望な 白金族鉱床を捕捉。現在まで693tの金属量を確認しており、企業への譲渡に向けて情報を提 供しています。 For Next Generations 金属資源開発 (陸上) の流れ リモート センシング 調査 SADC※諸国とのJV調査を見据えて 地質調査 物理探査 ボーリング 調査 鉱床の評価 開発準備 ボツワナ・地質リモート センシングセンター ※SADC:南部アフリカ開発共同体(南部ア 3~6 年 経過期間 1~10 億円 必要資金 対象範囲 10万㎢程度 1,000㎢程度 ※空中物理探査は10万㎢程度 2~4 年 10~50億円 2~4 年 フリカの15カ国で構成される) 2008年7月、JOGMECはボツワナ 地 質 調査所(ボツワナの鉱山・エネルギー・水資 源省傘下の国家機関)内に「地質リモートセ ンシングセンター」をオープンしました。同セン ターは、JOGMECとボツワナ地質調査所が 共同で実施する地質リモートセンシングプロ ジェクトの活動拠点として機能しています。本 プロジェクトにおいて、現 在JOGMECはリ 200 億円~ モートセンシング技術を活用してボツワナをは 10㎢程度 じめとするSADC諸国での鉱物資源探査事 業と、SADC諸国の技術者への資源探査技 術研修を行っています。レアメタル等のポテン シャルが高いSADC諸国におけるJV調査の 実施を見据え、日本とSADC諸国の鉱業分 野における相互協力関係の構築・強化を推 SADC 諸国地質専門家への研修風景 4 進しています。 5 備蓄 調査 探鉱 開発 生産 供給 探鉱資金出融資・資産買収出資 環境 出融資・債務保証 す。2010年度からは、開発・生産段階の鉱山 リスクの高い金属資源の探鉱事業の一層の 拡大・促進を図るため、JOGMECは必要な資 権益取得を支援する資産買収出資制度も加わ 金を出資または融資という形で提供していま りました。 主な実績 次世代自動車やIT製品等の製造に不可欠なレアメタル資源等の確保に向け、ソロモン・ニッケル 探鉱・開発事業を資金面からもサポート。 金属資源の安定供給に貢献します。 案件や南アフリカ・白金族案件への探鉱出資、ブラジル・ニオブ案件などへの資産買収出資を行っ ています。 区分 金属資源の探鉱事業には高いリスクが伴います。 JOGMECは探鉱事業に必要な資金を出資または融資という形で提供、 日本企業による探鉱活動の拡大・促進を図り、 鉱山開発事業につなげています。 また、 莫大な投資規模となる開発資金調達を円滑に進めるため、 金融機関等からの借入資金に対して、 債務保証による支援を実施しています。 さらに2010年度からは、 鉱山権益取得を支援する出資業務も加わり、 JOGMECが担う金融支援の役割はさらに拡大しています。 探鉱融資 探鉱出資 資産買収出資 対象地域 日本国内 海外全地域 対象企業 金属鉱物産出を目的とする鉱 業権者等であって、資本金1億 円を超え、 かつ常時使用する従 業員が1千人を超える会社 本邦法人又は本邦人若しくは本邦法人が出資によりその経営を実質的に支配している 外国法人(なお、出資の場合、資金提供先は本邦法人が出資により経営参加している 法人に限る) 対象事業 国内における探鉱事業 対象鉱種 銅、鉛、亜鉛、 マンガン、金、 タングステン 限度額 償還期間 海外における探鉱事業 ①レアメタル※1・ウラン ②ベースメタル※2・金・鉄・グラファイト・フッ素・マグネシウム・シリコン ①の鉱種:所要資金の80%以内 ②の鉱種:所要資金の70%以内 所要資金の70%以内 7年以内(うち据置2年以内) 所要資金の 50%以内。 ただし、 機構が単独で最大株主又は最 大出資者とならない範囲(ただ し、大規模共同プロジェクトの 場合は、 所要資金の 50%以内) 所要資金の50%以内。た だし、機構が単独で最大 株主又は最大出資者とな らない範囲(対象案件によ って異なる場合がある) 15年以内(うち据置5年以内) カントリーリスク(高) 金利減免 海外における 開発・生産段階の事業 探鉱失敗時等 は、 以降の金利 を全額免除 カントリーリスク(低) ①の鉱種の探鉱失敗時 等は金利の全額を、② の鉱種の探鉱失敗時等 は金利の半額を免除 貸付金利については、JOGMEC ホームページで最新情報を掲示しています。 海外開発資金債務保証 開発段階における投資規模は、数千万ドルか 業リスク・カントリーリスクをカバーするため、 ら10億ドル超に達する莫大なものになります。開 JOGMECは企業が民間金融機関等から借り入 発資金の円滑化を図り、 プロジェクトが抱える事 れる資金に対して、債務保証を行っています。 主な実績 日本企業が100%権益を確保するチリ・銅開発案や、日本国企業初のアルゼンチン・リチウム開 発案件などに対し債務保証支援を行っています。 金属資源金融支援制度 本邦企業※による 探鉱・開発事業 JOGMEC による 金融支援 海外探鉱 国内探鉱 海外探鉱資金出資・融資 鉱山開発 海外全地域 対象企業 本邦法人又は本邦人若しくは本邦法人が出資によりその経営を実質的に支配している外国法人(なお、出資 の場合、資金提供先は本邦法人が出資により経営参加している法人に限る) 対象事業 海外における鉱山開発事業 生産 海外開発資金債務保証 対象鉱種 限度額 国内探鉱資金融資 資産買収出資 ※本邦企業:本邦企業の海外子会社等を含みます。 6 対象地域 保証料率 ①レアメタル※1・ウラン ②ベースメタル※2・金・鉄・グラファイト・フッ素・マグネシウム・シリコン 保証比率 ①の鉱種:所要資金の各金融機関別債務の90%以内 ②の鉱種:所要資金の各金融機関別債務の80%以内 (1)保証人有りの場合の保証料率は、 一律0.4% (2)保証人無しの場合の保証料率は、 0.4%にカントリーリスク及び事業リスクを勘案して加算 (0.4~1.55%) ※1 レアメタル:マンガン、 ニッケル、 クロム、 タングステン、 モリブデン、 ニオブ、 タンタル、 アンチモン、 リチウム、 ボロン、 チタン、 バナジウム、ストロンチウム、 希土類、 白金族など ※2 ベースメタル:銅、 鉛、 亜鉛、 ボーキサイト、 すず カセロネス鉱山遠景 《出典:パンパシフィック・カッパー(株) 》 7 備蓄 調査 探鉱 開発 生産 供給 環境 技術開発・技術支援 探査から開発、 生産、 リサイクルまで、 多角的な技術開発、 技術支援が金属資源の 安定供給を支えています。 探査地域の奥地化、深部化が進むとともに、 探査活動の効率化がいっそう求められています。 また、鉱石の品位低下や不純物の増加に伴い、 鉱石から効率的に金属を抽出する技術の重要性も増しています。 JOGMECは、探査技術開発や金属抽出技術の向上、 金属資源のリサイクル技術開発で、 日本企業の活動を支えています。 さらに、未来の資源と期待される海洋鉱物資源について、その開発を促進するため、 資源量調査や、採掘・生産に向けた技術開発を行っています。 技術開発 1 探査技術開発 探査の最前線でリモートセンシング技術を活用 リモートセンシングとは人工衛星や航空機等 これまで、光学センサーのデータを用いて熱水変 に搭載したセンサーを用いて、地表面のデータを 質帯を抽出するための技術開発を実施するとと 広範囲かつ迅速に取得する手段で、金属鉱床が もに、合成開口レーダーのデータを利用し植生 分布する可能性がある地域を抽出するために使 地 域の地質判読を実現してきました。今後は、 われます。センサーは、太陽光の地表反射光を 185の観測帯を持つ光学センサー(ハイパースペ 測定する「光学センサー」と、マイクロ波を放射し クトルセンサー)を用いて、レアアース鉱物の識 て地表からの散乱波を受信する「合成開口レー 別など高精度情報の取得に向けた技術開発を ダー」の2種に大きく分けられます。JOGMECは 進めていきます。 チリ・アルゼンチン国境付近の ASTER 画像解析事例 ASTER 可視近赤外画像 高分解能画像 ASTER 短波長赤外画像 変質岩がピンクや緑色で示される ASTER 比演算画像 鉱物が各色で示される 地下深い鉱床を探る SQUITEM 新規鉱床の深部化により、電磁気、重力等の が完成、JOGMECの探鉱プロジェクトなどに活 物理現象を利用して地下の状況を可視化・解析す 用されています。 る物理探査の重要性が増しています。この手法の ひとつに電磁気の性質を利用する「TEM法(時間 領域電磁探査法)」があり、現在、鉱床探査に広く 用いられています。 JOGMECは、 このTEM法に、高温SQUID(超 電導量子干渉素子) という高感度の磁気センサー を用いることで、探査深度と精度が向上する新し いTEM装置「SQUITEM」の研究開発を進めてき ました。現在、小型・軽量で性能が優れた3号機 TEM 法測定装置(SQUITEM)3 号機 2 開発・生産技術開発 バイオリーチング等を活用した湿式製錬技術開発 金属資源の開発フローと関連技術開発 バイオリーチングとは、微生物の生態を利用し JOGMECは、探査からリサイクルまで金属資源開発の各段階において、技術開発事業を推進しています。 て金属イオンの浸出を促進させる技術で、湿式製 学との共同研究により、 さらなる大規模化に向け 錬法の浸出工程に応用されている技術です。低環 たシミュレーションも進めています。 探査 開発 生産 リサイクル 銅鉱石を用いた実証試験を行うとともに、東北大 境負荷、低コスト技術として注目されています。 JOGMECの金属資源技術研究所(秋田県小 坂町)では、 リーチングを促す微生物の探索・評 価や、 さまざまな鉱石試料を対象としたカラム浸 探査技術開発 開発・生産技術開発 海洋鉱物資源調査 8 金属資源 リサイクル 技術開発 出試験を行い、基礎データを蓄積しました。その データを基に、現在、 チリに設置した鉱石処理量 200t規模のパイロットプラントにおいて、現地の チリのパイロットプラント エスペランサ鉱山プラント遠景 《出典:丸紅(株) 》 9 リチウム抽出技術 世界最大の塩湖、ボリビア・ウユニ塩湖の高濃度塩水(かん てもらうことで、ボリビア政府が目指すリチウム産業創出の支 水)には世界のリチウム埋蔵量の約半分が眠っているといわれ 援、および日本・ボリビア間の信頼関係構築を図っていきます。 ています。 しかし不純物が多くて抽出が困難なため、ほとんど手 4 海洋鉱物資源の探査・技術調査 海洋鉱物資源の概要 海洋鉱物資源には、主に海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、およびマンガン団塊などがあり、それぞれ含有する金属、 分布する場所が異なります。 つかずのまま残されてきました。JOGMECは2つの手法によるウ ユニ塩湖からのリチウム等回収技術の確立を目指しています。1 つ目はリチウムだけを選択的に吸着する物質に吸着させて回収 する「吸着法」 、2つ目は、天日濃縮と電気透析を併用する「組み 合わせ法」です。現在、試験・評価を実施中で、2014年以降に 技術提案を行うとともに、技術者を日本に招いて試験に参加し ウユニ塩湖 3 金属資源リサイクル・製錬技術開発 海底熱水鉱床 廃小型電子・電気機器からの レアメタル回収技術開発 銅や亜鉛等のベースメタルや金等の貴金属、タンタルやコバ ルト等のレアメタルが含まれています。JOGMECは廃小型電 子・電気機器の回収試験と実態調査、およびレアメタル回収フ ローの確立に向けた基礎試験に取り組んできました。2012年 を実施しています。 廃小型電子・電気機器(イメージ) 製錬副産物からの アンチモン回収技術開発 銅リサイクルプロセスの 電力使用量削減技術の開発 銅や鉛の製錬所から発生するスラグや煙灰等の副産物には、 資源の有効利用、 自給率向上の観点から、 リサイクルによる銅 アンチモン、 テルル等のレアメタルが含まれています。 JOGMECは 生産の重要性が高まっています。 一方、 リサイクル原料には各種 製錬副産物からアンチモンを効率的に回収する技術の開発を の不純物が含まれているため、 銅精製プロセスでの電力消費量 2013年から開始しました。 が大きくなるという問題 国内で消費されるアンチモ 点があります。JOGMEC ンはほぼ全量を中国から は昨今の厳しい電力事 の輸入に依存しているた 情に対応するため、 銅リ め、 本技術の確立はアン サイクルプロセスの電力 チモンの安定供給に大き 使用量削減技術の開発 く貢献するものと期待され を2013年から実施してい ています。 ます。 アンチモン地金 マンガン団塊 マンガン団塊と類似の鉄・マンガン 水 深4,000 ~ 6,000mの 平坦な 成分が沈殿してできた銅、亜鉛、金、 酸化物で、海山の斜面や頂部の基盤 大 洋 底に半 埋 没している直 径2 ~ 銀等からなる多金属硫化物鉱床でチ 岩をアスファルト上に厚さ数mmから 15cm程度の鉄・マンガン酸化物の塊 ムニーマウンドを形成しています。東 数10cmで覆っています。マンガン団 です。ニッケルや銅、コバルト等の有 太平洋海膨、沖縄諸島、伊豆・小笠原 塊に比べてコバルトの品位が3倍ほど 用金属を含有しています。 諸島などの海底拡大軸や背弧海盆に 高く、微量のプラチナを含むのが特 分布しています。 徴です。 海底面から噴出する熱水から金属 ノートパソコンや携帯電話等の小型電子・電気機器には、 からはタンタルとコバルトを対象としたリサイクル技術の開発 コバルトリッチクラスト ⑴ 海底熱水鉱床調査 1985年度から2003年度に東太平洋海膨、沖縄トラフ海域、伊豆・小笠原海域 において海底熱水鉱床の賦存状況調査を実施、2008年度からは資源量調査を実 施しています。2012年度には沖縄海域の海底熱水鉱床において、最新式の海洋 資源調査船「白嶺」による深部ボーリングを実施し、より深部の新鉱体を発見、将 来、大規模鉱床に発展する可能性を見出しました。また、採掘試験機を用いた世界 初の走行・採掘試験にも成功、実機開発に向けて動き出しています。 海底熱水鉱床調査風景 ⑵ コバルトリッチクラスト調査 ⑶ マンガン団塊調査 太平洋中部から北西部の公海域において、1987年度から 1975年度から1996年度まで資源賦存状況把握や資源量 コバルトリッチクラストの鉱床規模把握や資源量評価のため 調査を実施。調査の結果、1987年12月に国際海洋法条約の の調査を実施してきました。その成果を受け、2012年7月に国 下で、ハワイ南東沖にマンガン団塊鉱区75000㎢を取得しま 際海底機構に探査鉱区を申請、2013年7月に同機構の審査 した。2011年度から当該鉱区において調査を再開しています。 を経て、南鳥島の南東沖600kmの公海域(面積3000km2) の排他的探査権を取得しました。今後、15年間にわたる本格 銅電解精製プロセス 的な調査に着手する予定です。 南鳥島 技術支援 約600km 世界的な金属資源の需要拡大により、原料確保のための 権益獲得の動きが活発化する一方、循環型社会構築や環境 排他的経済水域 保全の貢献が求められるなど、取り巻く環境は大きく変化して います。日本企業の資源開発ターゲットがより技術的リスクの 高い鉱床へと移行する中、精鉱・製錬等の生産技術力向上が 企業競争力を高める鍵となります。そのため、JOGMECは日本 企業が関与する生産現場での生産技術や鉱山開発等の案件 :探査鉱区が設定された海山 を対象に、共同スタディによって技術課題の解決を図っていき 水深(m) ます。この事業により日本企業の競争力を高めることで、将来 的には日本への資源安定供給が期待されています。 10 海洋資源調査船「白嶺」 ポルトガル・パナスケイラ鉱山の坑内採掘現場 コバルトリッチクラスト探査鉱区の位置図 探 査 鉱 区 の 位 置 図 11 備蓄 調査 探鉱 開発 生産 供給 環境 資源備蓄 現代社会に欠かせないレアメタルの 国家備蓄事業を担い、 安定供給の確保に貢献します。 自動車、電気、航空からIT、環境保全まで幅広い分野で利用されているレアメタルは、 日本の産業にとって欠くことのできない重要な資源です。 しかし、地域偏在性の高さや資源国の政情不安、供給構造の寡占化に伴う経済的リスク等、 安定的な資源確保を妨げかねない不安材料が数多く存在しています。 JOGMECはレアメタルの短期的な供給障害に備えることを目的に国家備蓄事業を推進し、 日本経済の安定化をバックアップします。 レアメタル国家備蓄業務 2度にわたる石油危機の経験により資源小国日本の経済基盤の脆弱性が再認識され、資源セ キュリティの確保、経済安全保障の確立という観点から1983年度に官民協力による制度として創設 されたのがレアメタル備蓄制度です。以来、JOGMECはレアメタル国家備蓄業務を担っています。備 蓄物資は、海外からの供給障害や国内需給の逼迫等の状況に応じて売却が検討されます。 最近のレアメタル供給障害及び需給逼迫の例 2010 年 日中摩擦を受け中国からの輸出が 停滞 レアアース 2008 年 南アフリカでの電力不足による生産障害 プラチナ 2012 年 南アフリカ生産者ス トライキによる生産障害 2009~2010 年 カナダ・VALE Inco Sudbury 事業所 ニッケル でのス トライキ長期化による生産障害 2008 年 南アフリカでの電力不足、輸送インフラ トラブルによる クロム 生産障害 2010~2011年 中国生産・輸出規制強化及び世界的 タングステン モリブデン 需要増加による需給逼迫 2008 年 中国輸出規制導入による需給逼迫 (中国が輸出国から輸入国へ) インジウム ビスマス 2010~2011年 中国備蓄検討による品薄傾向 2008 年 中国での大雪の影響を受けた電力不足による 精錬所の稼働率低下 For Next Generations レアメタル備蓄物資を一元保管・管理 国家備蓄倉庫 備蓄物資については、JOGMECが所 有する国家備蓄倉庫で一元的な保管・ 管理を行っています。 国家備蓄倉庫内 レアメタルの需給・価格調査 JOGMECは、機動的な備蓄の積み増しや放出を進 めるため、 備蓄対象鉱種について国内外のレアメタル関 連企業へのヒアリング等調査を実施し、必要と判断され たレアメタルの積み増しを行っています。 また、 レアメタルの最新需給動向や供給確保上の課 題等につき、関連企業からヒアリングを行うとともに、動 レアメタルの鉱石。右上から時計回りに マンガン鉱石、バナジウム鉱石、クロム鉱石、ニッケル鉱石 向に不透明感が強い国については、現地での情報を収 集するなど、需給動向や価格動向等の把握に常に努め ています。 12 13 備蓄 調査 探鉱 開発 供給 生産 環境 鉱害防止 地方公共団体、 企業等の鉱害防止事業を 多方面から支援し、 環境保全に貢献します。 鉱山はさまざまな面で地域社会の振興を促しますが、一方で地域の環境や住民の健康に 大きな影響を与える「鉱害」をもたらすことがあるのも現実です。 かつて有数の鉱山国であった日本には全国に5,000近い休廃止鉱山が存在し、 そのうちの約450カ所で水質汚染等の鉱害が発生したといわれています。 そのためJOGMECは1973年度から、鉱害防止活動に取り組んでいる地方公共団体や企業等に対して、 技術面や情報面、資金面等、 さまざまな方向から支援を行ってきました。 また、 こうして長年培ってきた鉱害防止の経験や技術ノウハウを生かし、近年、海外での鉱害防止セミナーの 開催や専門家の派遣等を通じて、資源保有国への情報提供や技術支援を行い、 環境に配慮した持続可能な鉱山開発の促進、資源国との関係強化にも貢献しています。 JOGMEC 鉱害防止事業の概要 JOGMEC 大規模な 坑廃水処理施設の 運営管理 技術支援 調査事業、受託事業 地方公共団体 ●坑廃水処理 ●鉱害防止工事 義務者不存在鉱山の 鉱害防止事業を実施 補助金交付 全体支援 金融支援 技術支援、技術開発、 情報提供、啓蒙・教育 補助金交付 国 ●坑廃水処理 (自然汚染分・他社汚染分) 鉱害防止積立金、 鉱害防止事業基金 の運用・管理 義務者企業 義務者存在鉱山の 鉱害防止事業を実施 地方公共団体等への技術支援 個別鉱害防止事業の支援 日本の休廃止鉱山の中には、経営企業が現在も管理して鉱害防 止対策を行っているものと経営企業が倒産・消滅して管理義務者 が不在となった鉱山の2種があり、後者の鉱害防止対策は地方公 共団体に任されています。それぞれの休廃止鉱山での鉱害防止 対策を効率的・効果的に実施するために、JOGMECが国や地 方公共団体、企業を技術面で支援するのが個別鉱害防止事 業です。それぞれの状況に合わせて調査指導や受託事業を 行っています。 鉱害防止対策全般の支援 JOGMECでは、地方公共団体や企業等の関係者を 対象に鉱害防止技術についての講演会や基礎技術研 修会等を行い、技術・情報の普及を図るとともに、情 報交換会を開催して知見と情報を交換する場を提供 しています。また、鉱害防止対策に関する技術やノウ ハウをテキスト化・映像化し公開しています。さらに 近隣の学生等を対象にエコツアーを開催、資源開 発と環境保全の重要性について理解してもらう 活動にも努めています。 鉱害環境情報交換会 14 エコツアーの様子 旧松尾鉱山新中和処理施設の全景 15 金属資源保有国政府等への技術支援 金融支援 セミナー等の開催 ペルーへの鉱害政策アドバイザー派遣 鉱害防止分野においても資源国との協力関係をより強固な JOGMECの鉱害防止支援事業への取り組みを高く評価す ものとするために、鉱害防止セミナーの開催や視察団・研修 るペルー政府からの要請を受け、2008年に鉱害政策アドバ 生の受入等、さまざまな形での技術支援を行っています。 イザー派遣に関するMOU (覚書) を締結、2009年度から鉱 鉱害防止セミナー開催実績(2010 年以降) 山環境分野の専門家を同国へ派遣しています。 開催国 ペルー ボリビア チリ ベトナム 年月 参加者 2010.11 55名 エネルギー鉱山省 2011.11 60名 エネルギー鉱山省 2013.2 109名 エネルギー鉱山省 2011.2 2011.11 2010.6 2011.3 256名 鉱工業エネルギー省 鉱物資源総局 2012.2 102名 鉱工業エネルギー省 鉱物資源総局 2011.10 90名 エネルギー鉱山省、 天然資源環境省 2012.9 72名 エネルギー鉱山省、 天然資源環境省 カンボジア ラオス 2013.2 ザンビア 2013.6 区分 採掘権者に対して、長期 かつ低利の融資を提供 対象者 鉱害防止資金 使用済特定施設分 坑廃水処理事業分 鉱害防止事業を行う法人又は個人 鉱害防止事業基金拠出分 同基金に拠出を行う 法人又は個人 地方公共団体が実施する 農用地土壌汚染対策事業 に係る事業者負担金を負 担する法人又は個人 鉱害防止事業基金への 拠出資金 事業者負担金 することにより、鉱害防 止事業の円滑で確実な 貸付対象工事・ 費用 坑口の閉そく工事、 坑廃水処理施設設置、 覆土・植栽等 坑廃水処理施設の 運転管理事業 鉱害負担金資金 融 資のほか、風 水 害や 震災等による集積場等 の緊急時災害復旧事業 ペルーにおける調査指導(OJT) と生活環境の保全に寄 資源保有国との関係強化 融資比率 中小企業者80%以内、 大企業者70%以内。 ただし、緊急時災害復旧 事業については90%以内 償還期間 15年以内 (2年以内) 中小企業者80%以内、 大企業者70%以内 に対しては特別貸 付を 実施。地 域 住民の 健 康 5年以内 (2年以内) 15年以内 (2年以内) 与していきます。 カンボジア、ラオス等と鉱害防止分野におけるMOUを新た に締結するなど、JOGMECの鉱害防止支援は、着実に世界 へと広がっています。 129名 鉱山省 約80名 止事業の実施者である 2種の鉱害防止に関する 天然資源環境省 地質鉱物資源局 81名 JOGMECは、鉱 害 防 実施を支援しています。 65名 チリ地質鉱山局 2011.3 南アフリカ いました。 192名 鉱業冶金省及び地方政府 62名 天然資源環境省 2012.10 転) として実施、 エネルギー鉱山省技術者への技術支援も行 86名 鉱業冶金省 2012.8 ミャンマー また、2012年度からは現地での水系調査等をOJT(技術移 主な参加機関 鉱害防止に関する融資事業 南アフリカ、 ボツワナ、 ジンバブエ、 タンザニア、 モザンビーク、 ナミビア等の政府関係者 93名 エネルギー・水開発省 MOU 締結(ペルー) 鉱害防止積立金・事業基金の管理 鉱害防止積立金制度 鉱害防止事業基金制度 JOGMECは、鉱山の操業中にあらかじめ鉱害防止事業に 閉山後に鉱害防止事業を実施しても、有害物質を含む坑 必要な費用として鉱業権者が積み立てる資金を管理・運用し 廃水が半永続的に流出する場合があります。そのため確実か ています。毎年、利息分を鉱業権者に支払うとともに、鉱山が つ永続的な坑廃水処理が実施されるよう、鉱業権者が拠出 休廃止されて鉱害防止事業が実施される際には元本を払い戻 金を支払うことになっており、その管理・運営をJOGMECが します。 行っています。 技術開発 JOGMECは、すべての休廃止鉱山における鉱害防止対策 以降は坑廃水処理の省力化、省エネルギー化を図る技術開 の効率化・低コスト化等のために必要なエンジニアリング技術 発へと移行、現場ニーズに合わせた技術開発をテーマに取り の開発・実用化を目指し、さまざまな取り組みを行っています。 組んできました。これまで実施してきた技術開発プロジェクト 昭和50年代は堆積場対策や坑道閉そく等、発生源対策等 の中には、実際に効果が認められ、多くの鉱山で適用されてい を中心に、昭和60年代には中和殿物の処分等に関する技術 るものもあり、鉱害防止事業の効率化・コスト削減に大きく貢 開発を行い、成果をまとめた手引や指針を作成しました。平成 献しています。 技術開発事例 パッシブ・トリートメントの調査研究 現行の坑廃水処理(アクティブ・ト しやすい状態に変えたり、植物によって濾 たパッシブ・トリートメント技術に注目、さ リートメント)では薬剤や電力、管理 過・吸収することができます。 まざまな試験を実施して将来的な現場へ 人員を常時必要としていますが、パッ JOGMECは、特に嫌気性微生物を活用し の導入を目指しています。 シブ・トリートメントはこれらを極力、 パッシブ・トリートメントの概念図 必要としないメンテナンスフリーに近 い水処理技術で、この技術を坑廃水 処理に活用することで、処理費用の ブ・トリートメントの特徴は自然の浄 化機能を最大限利用することで、微 生物によって重金属を沈殿させ、除去 16 汚染浸透水 八幡平の水と緑。その景観を守り続ける。 東洋一の硫黄鉱山だった旧松尾鉱 旧松尾鉱山新中和処理施設(岩手県八幡平市) ずつ中和処理し、殿物を分離・堆積して の整備、露天掘り跡地の覆土緑化等を 山。JOGMECは、義務者不存在鉱山 上澄水を放流、同時に鉱害防止に関す 推進して地域景観を回復、維持すること の中で最も処理水量が多い旧松尾鉱 るさまざまな新技術を導入してコストダウ で、30年以上にわたり北上川の清流を 山新中和処理施設の運営・管理業務 ンも図っています。さらに施設の耐震化 守り続けています。 を岩手県から受託、1982年に本格稼 や緊急時対応訓練にも力を注ぎ、災害 また、2012年10月にこうした長年の取 働を開始しました。以来、強酸性で鉄 時でも安全・確実に施設の維持管理が り組みに対し、岩手県知事より感謝状を 分や砒素を多く含む坑廃水を毎分18t 行えるよう努めています。他にも集積場 受領しました。 休廃止 鉱山 集積場 大幅な削減が期待できます。パッシ For Next Generations 透過性 反応壁 不透水層 河川 処理水 坑廃水 河川 処理水 沈殿槽 好気湿地 嫌気湿地 透過性反応壁(Permeable Reactive Barrier) 人工湿地(Wetland) 汚染された松川と北上川の合流点 (松尾鉱山閉山当時) 現在の合流点 岩手県知事からの感謝状 17 備蓄 調査 探鉱 開発 生産 供給 環境 情報収集・提供 目まぐるしく変化する資源情報を的確 かつタイムリーに発信。 情報力で日本企業の金属資源開発を サポートします。 金属需要の拡大や鉱区獲得競争の激化、 環境規制強化等による鉱山経営への影響や 資源メジャー等のM&Aによる市場寡占化の進行等、 金属資源をめぐる世界情勢がこれまでにないほど激しい動きを見せる現在、 情報の価値はますます高まっています。 JOGMECは、世界の鉱業動向に関する情報を収集・調査・分析、 それを各種メディアや講演会、 ウェブサイト等を通じて発信することで、 日本企業の取り組みを積極的に支援していきます。 インターネットによる情報発信 データベース情報サイト「金属資源情報」 本サイ トには金属資源に関するさまざまな情報が掲 載されています。また、これまで掲載された情報をデー タベース化、過去の情報にも簡単にアクセスできます。 JOGMECメール配信サービス ~金属資源関連ニュース~ 金属資源に関する最新情報を毎日、Eメールで配信 しています。登録・配信料は無料です。 レポート・刊行物の発行 「ニュース・フラッシュ」 (毎週水曜発行) 「金属資源レポート」 (奇数月発行) JOGMEC海外事務所による現地最新のニュー JOGMEC金属部門の活動内容、資源国 ス情報をお届け。プロジェクトの動向や資源国の の鉱業情勢・動向、金属資源の需給や技術 鉱業政策の動向をタイムリーにお伝えします。 動向について解説・紹介しています。 「カレント・トピックス」 国際会議の報告、鉱山開発動向や資源国の法 制度など、現地取材を通じた情報を中心にトピッ クスとしてまとめています。 「世界の鉱業の趨勢」 「鉱物資源マテリアルフロー」「メタルマイニング・データブック」 資 源国の毎年の鉱 業 政 策、生 主要鉱物のマテリアルフローを 主要金属の各種データや主要鉱 産、探鉱開発等、鉱業活動の動向 鉱種別に紹介しています。 業国の動向等、世界の金属鉱物資 について国別にまとめています。 源情報を網羅したデータ集です。 情報収集・調査研究対象 探鉱開発動向 生産動向 18 個別プロジェクト、国・地域・世界の探鉱開発動向 鉱山・製錬所の生産動向、国・地域・世界の生産動向 企業動向 企業の事業実績・計画・戦略・投資・合併等 政策動向 鉱業関連政策、鉱業関連法令等の改正動向 需給動向 国・地域・世界の需給・輸出入動向、価格・在庫動向 環境関連 環境政策、環境問題・対策、持続可能な開発・CSR 国際会議 国際銅研究会、国際鉛亜鉛研究会、国際ニッケル研究会、 APEC/ASEAN+3(鉱物・エネルギーの探査と開発に関する専門家グループ ) 等 セミナー・講演会 金属資源情報センター (図書館) 業界の関心が高い話題について、海外の鉱業関係の要人 国内唯一の金属資源に関する専門図書館で、どなたでもご や専門家が解説するセミナーや講演会、またJOGMEC金属 利用いただけます。探鉱・開発に関する技術書や世界各国の 資源分野の事業活動に関する成果発表会を随時開催、タイ 地質・鉱業政策についての資料から鉱業関連の映像資料、国 ムリーな情報提供をしています。 内外の図書・雑誌・報告書まで、幅広く所蔵しています。 19 2016年3月
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