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大英博物館は、1753年に医者で自然科学者だったサー・ハンス・スローンが

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2005.3.16
英国の公的機関による芸術助成のあり方は、政府に大半を頼るヨーロッパ大
陸諸国、民間に資金の多くを依存する米国との中間的な立場を取っているこ
ウェストミンスター・シティ・カウンシル
とに特徴がある。
その主な理由は、歴史に由来する。英国では世界に先駆けて、市民が自由と
平等の思想に導かれて、政治を自分たちの手に移す市民革命が17世紀に始
まった。その後、産業革命が起こり、いち早く近代国家が築かれた。そのた
め英国の芸術文化は、王侯貴族や教会に庇護されたヨーロッパ大陸諸国とは
異なり、豊かな新興中産階級にある程度支えられてきたという歴史的背景が
あるからだ。
政府主導型ではない公的補助
大英博物館は、1753年に医者で自然科学者だったサー・ハンス・スローンが、自分
のコレクションを国に寄贈したためつくられた博物館だ。公営宝くじによる資金集
めが行われ、1759年に世界初の一般市民に公開された法人組織の博物館として開館
した。
テムズ川の北岸にあるテート美術館は、砂糖貿易で巨大な富を築いたサー・ヘン
リー・テートが、「政府が場所を提供すれば、現代美術の個人コレクションと建設
資金8万ポンドを寄付する」という条件を出して、1897年に開館した現代美術館だ。
現在も興行が続けられているロンドン中心部、ウェストエンドにある40余りの劇場
の多くは、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、民間人が建設した商業劇場であ
る。
基本的には、英国の芸術への公的補助は、政府主導型ではない。各芸術団体が毎年
文化企画を作成し、その内容が妥当だと認められると、ある程度公的援助が行われ
るという形式がとられている。
英国アーツ・カウンシルの歴史
英国でザ・アーツ・カウンシル・オブ・グレート・ブリテン(ACGB)という政府
から独立した立場の全国的な芸術援助組織が設立されたのは、1946年のことだ。こ
れは40年に設立され、政府機関と非営利団体が財政援助を行っていたザ・カウンシ
ル・フォー・ザ・エンカレッジメント・オブ・ミュージック・アンド・アート
(CEMA)が発展したもので、ACGB設立以来、英国の芸術団体は、より安定した
活動が行えるようになった。
ACGBは比較的寛大な公的援助を行っていた時代もあったが、80年代後半にサッ
チャー前首相が、芸術文化費の予算拡大を停止し、実質的に公的補助を削減する政
策を打ち出した。そのため90年代には各芸術団体は、企業や個人からの寄付集めに
力を入れることを余儀なくされた。
さらに94年には、170年ぶりに公営宝くじが復活し、宝くじの売り上げの28%が、
国の税金で賄い切れない文化やスポーツの助成に使われるようになった。その結
果、ACEが95年3月から99年6月の間に、10億ポンドを主要な組織の改装、再開
発、建設費用として分配し、ロイヤル・オペラ・ハウス、テート・バンクサイド美
術館、大英博物館などで大掛かりな工事が完了または進行中だ。
芸術援助のあり方の見直し
英国では90年代以降、各所で芸術援助のあり方、組織のあり方などの「見直し」
が、現在も盛んに行われている。
ACGBが設立から半世紀が過ぎ、システムが時代遅れになっているという批判が
あったことが見直しがなされるようになった一つの理由だ。
ほかには、80年代半ばから起きている中央政府から地方への権限委譲という政治的
動きと関連している。英国とひと口に言っても、アングロサクソンが主流のイング
ランドと、ケルト人が主流のスコットランド、ウェールズ、北アイルランドとは、
歴史、宗教、文化的背景を大きく異にする。後者の間では英国政府から政治的に独
立し、自治を行いたいという機運が近年、ことに高まってきている。
このような動きを受けて、94年ACGBは、アーツ・カウンシル・オブ・イングラン
ド(ACE)、スコティッシュ・アーツ・カウンシル(SAC)、アーツ・カウンシ
ル・オブ・ウェールズ(ACW)、アーツ・カウンシル・オブ・北アイルランド
(ACNI)の4組織に分割された。
それまでは、ACGBが文化省から一括して援助金を貰い、各地域に援助金を分配す
るというやり方をしていたが、各地域のアーツ・カウンシルがそれぞれの地元の統
治組織から直接芸術援助金を貰うという形式に変化した。
また、97年5月に発足したブレア政権は、一方で中央政府の統御力を強めながら、
地方に実務を大幅に委任するという方針をとっており、この影響が芸術の公的援助
にも表れてきている。一番大きく変わったのは、ACEの役割は、イングランド全体
の芸術への公的援助の全体的な方針をつくって主導することが中心となり、組織自
体がスリム化に向かっている点だ。それに代わって、資金振り分けなどの実務は、
イングランドを10地域に分割するリジョナル・アーツ・ボード(RAB)に委託する
方向にあり、今後はRABが芸術助成により大きな役割を担っていくものと思われ
る。
これらの動きは、アーティストや芸術団体、観客により近接した地域の組織が資金
分割を行ったほうが、より実際に即した無駄のない業務が行えるという考え方に基
づいている。
英国の芸術援助システム:主な組織間の関係図
ロンドンのケース
それでは、ACE、RAB、地方自治体が、どのような政策、方針の下に実際にどのよ
うな活動を行っているのか、ロンドンを例にとって見てみよう。
ACE(アーツ・カウンシル・オブ・イングランド)
ACEは、政府とは若干距離をおいて活動している独立した非政治的な組織。中央政
府からの公的基金と公営宝くじからの収益の分配をイングランド全体に行うことに
より、芸術を発展、維持、奨励し、国民が芸術を楽しめるように運営されている。
ロイヤル・チャーター(特許状)によって定められたACEの役割は、次の3点だ。
(1)知識や理解を発展改善し、芸術の実践を理解する。(2)一般市民が芸術によ
り近づきやすいようにする。(3)政府、地方自治体、ACW、SAC、ACNIや関連
団体と先の目的を直接的、非直接的に協力して行ったり、アドバイスする。
ACEの芸術部は、ダンス、演劇、文学、音楽、ヴィジュアル・アート、地方公演、
観客開発、放送・ニューメディアの8部門に分かれており、各部門の専門家が働い
ている。委員会の中にも彫刻家や作家など現場のアーティストが含まれ、芸術家と
自由な討論を重ねながら、よりよい形で資金配分が行われるようになっている。
ACEから援助金を貰っている団体には、ロイヤル・シェイクスピア劇団、ロイヤ
ル・オペラ・ハウス、サウスバンク・センターなどがあり、ACE予算の30%がRAB
に配分されている。文化省から貰った99年度予算は、約2億2,700万ポンド。
ロンドン・アーツ・ボード(LAB)
91年にACGBの分科委員会として出発し、92年から全国を10地域に分割し発足した
RABの一組織。LABは、ロンドンとその周辺の芸術助成を行っているエージェン
シーで、ロンドンでの芸術のインフラストラクチャーをつくり、芸術活動を発展さ
せ、奨励するのが主な仕事だ。
芸術部門には、演劇、複合芸術、ヴィジュアル・アート、文学、ダンス、音楽の専
門家を含む18人が働いているが、今後ACEからより多くの責任や業務を引き受ける
ため、4月からは芸術部門だけでも31人に職員を増やす予定。委員会には、芸術、
経済、放送、教育、運営管理など現場で活躍する人たちが含まれている。
資金は主としてACEとクラフト・カウンシルから貰っており、99年度予算は1,574
万ポンド。1組織への年間助成金は、5,000ポンドから5万ポンドで、現在は128の
芸術組織やアーティストを助成し、その成果をモニターしている。ACEと比較する
と、中・小規模の芸術団体の助成やコミュニティベースの芸術活動のサポートをし
ている。
ウェストミンスター・シティ・カウンシル(WCC)
ロンドンとその周辺に34ある区の中でも芸術団体がたくさん集まっている市内中心
部を管轄とする地方自治団体。
86年まではロンドン市内の芸術助成は、ロンドンとその周辺全体を統括する地方自
治体、グレーター・ロンドン・カウンシル(GLC)とその関連組織であるグレー
ター・ロンドン・アーツ(GLA)やインナー・ロンドン・エデュケーション・オー
ソリティ(ILEA)が行っていた。ところが、サッチャー前首相は、GLCが左翼的で
何かというと政府の政策に楯突くので、86年にGLC自体を全面的に廃止してしまっ
た。そのため、ロンドンとその周辺の地方自治体は、急遽これまでGLAやILEAが
行ってきた芸術助成の一部を肩代わりして行わなければならなくなり、今日に至っ
ている。
WCCの芸術課は教育部の中にあり、13年前は1人で業務を担当していたが、現在は
2人に増員されている。
WCCはロンドンの中心部を管轄としているため、全国レベルの大規模な芸術団体が
たくさんある上に、ロンドンのみの芸術団体、WCC地区のみのコミュニティ団体も
存在するという特殊な立場にある。そのため、WCCでは、地域住民のためだけでな
く、ロンドンを訪れる来訪者も含めて考慮し、芸術援助を行っている。
WCCに拠点を置く組織、プロジェクトやイベント、アーティスト・イン・レジデン
スなど教育関係、新しいアイディアを発展させるイニシアチブ基金などに対して援
助が行われている。
99年度の年間予算は120万ポンドで、芸術予算はロンドンの中でも多いほうだ。そ
れは伝統的にWCCが芸術を大切だと考えていることと、芸術の発展が観光など地元
の就業活性化に役立つという利点もあるからだ。
芸術援助を行うかどうかは、その組織やプロジェクトが地元の地域社会に関係ある
か、その活動をしてほしいという要求があるかなどによって判定している。芸術援
助の募集は、図書館などに張り紙を出し、年に4∼5回異なった時期に、それから2
∼3カ月後の援助を求める団体やプロジェクトを募っている。
WCCでユニークなのは、地元住民で芸術文化に関心のある人に、外部のカード会社
を使ってレス・カードという特別な住民用カードを発行していることだ。例えば、
WCC地区のレス・カード・システムに加入している美術館や劇場で、このカードを
見せれば、10∼50%の割引が受けられ、割り引き分を美術館や劇場が後でWCCに
請求し、芸術援助金から支払われるというシステムだ。現在地元住民の4分の1がこ
のカードを所有していて、大変評判がよいという。
アーツ・カウンシル・オブ・イングランド参考資料
1979年度以降の政府からACGB/ACEへの芸術助成金
1979/80
63,125,000 ポンド
1980/81
70,970,000
1981/82
80,450,000
1982/83
91,300,000
1983/84
96,080,000
1984/85
101,900,000
1985/86
106,050,000
1986/87
135,600,000
1987/88
139,300,000
1988/89
152,411,000
1989/90
155,500,000
1990/91
175,792,000
1991/92
205,000,000
1992/93
221,200,000
1993/94
225,830,000
1994/95
185,990,000
1995/96
191,100,000
1996/97
186,100,000
1997/98
186,100,000
1998/99
189,600,000
1999/2000
227,300,000
2000/2001
237,300,000
2001/2002
252,300,000
ACGB
ACEに
公的援助の具体的な例
それでは具体的に芸術組織の例を見ながら、大中小の各団体に対してどのような
公的援助が行われているか見てみよう(図「援助金歳入の内訳例」参照)。
例1は、ロンドンにある英国を代表するオペラ・カンパニーの一つ、イングリッ
■参考ウェブ・サイト
シュ・ナショナル・オペラ(ENO)の歳入の内訳だ。ENOは全国的に重要な団体
英国文化省
なので、ACEが必要な資金の約半分を援助している。また、ENOはWCCの管轄す
http://www.culture.gov.uk
る地区にあるので、WCCもレスカード使用者にチケット代の1割を負担するな
アーツ・カウンシル・オブ・イングランド
http://www.artscouncil.org
ど、わずかに援助しているが、ENOの残りの収入の大半はチケット収入に頼って
スコティッシュ・アート・カウンシル いることがわかる。
http://www.scottisharts.org.uk
ナショナル・ロッタリー(公営宝くじ) 例2は、非営利団体が運営するロンドンで一番重要な写真専門ギャラリー、フォト
http://www.lottery.culture.gov.uk
グラファーズ・ギャラリーの場合だ。歳入の半分以上は、ロンドンの重要な芸術
ロンドン・アーツ・ボード
団体を助けるLABの援助によるが、地元のWCCも歳入の5%に当たる援助を行って
http://www.arts.org.uk
ブリティッシュ・フィルム・インスティ
いる。
テュート
例3は、WCC地区にあるユース・ダンスグループ、ウエストミンスター・ユー
http://www.bfi.org.uk
ス・ダンス・シーンの場合だ。この団体は、地元の青少年コミュニティのための
クラフツ・カウンシル
http://www.craftscouncil.org.uk
活動を行っているので、WCCが歳入の70%近くを援助している。
ブリティッシュ・カウンシル
18年間続いた保守政権がやっと終わり、97年に労働党のブレア政権に交代してか
http://www.britcoun.org
ウエストミンスター・シティ・カウンシル
http://www.westminster.gov.uk
らの新予算では、芸術援助金は以前より増え、英国の芸術団体にとっての冬の時
代は、やっと過ぎようとしている。
しかし、ACEのスリム化は期待されたほど進まず、今後より多くの責任や業務を
引き受けるRABは職員を増大しなくてはならないのに予算が思うように増えてい
ないという問題も抱えている。
(初出:2000年3月「地域創造」Vol.8)
援助金歳入の内訳例
「Annual Review of Westminster's Support for Arts 1999」より
ACE:アーツ・カウンシル・オブ・イングランド
LAB:ロンドン・アーツ・ボード
WCC:ウエストミンスター・シティ・カウンシル
Earned:チケット売上げ、ワークショップなどからの収入
Trusts:その組織が非営利団体の場合、寄付や財源からの利子など
Commercial:本屋、カフェ、レストラン・バーなどからの収益
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