第 116 回 - 加藤内科クリニック

+高砂報第 194 号
日
第 116
平成 20 年 5 月 29
“葛飾高砂会”
回“葛飾高砂会”報告
加藤内科クリニック
糖尿病勉強会
真砂慶一郎・井出 正・大越松司担当
加藤院長・加藤管理栄養士校正
平成 20 年 5 月 29 日(木)午後 1 時から同 2 時 30 分まで、クリニックB1集会室に
て開かれました。
1.「タバコはどうして悪いのか:喫煙と糖尿病」
加藤光敏 院長
皆さんの中で喫煙を続けている人は殆どいないと思いますが、今日の話をもと
に、禁煙の伝道者になっていただきたいと思います。つまり、
「タバコはこうや
って止めるのです」とか、
「タバコは、こういう害があります」という話をして
頂きたいのです。そのことにより肺癌だけでなく、肺気腫や心臓病など、また
糖尿病への悪影響も防ぎ、その人の将来の命を救うことにつながります。
先日門脇教授が会長の日本糖尿病学会年次集会で、私が5月23日と24日の2
回座長をしたうち、23日はイブニングセミナーで、テーマは「禁煙」でした。
演者は佐々木温子医師でしたが、慈恵医大 6 年間一緒に学んだ同級生です。座
長と演者別々に依頼されたのですが、偶然級友でした!本日の講話は佐々木先
生、またファイザー社を通じて愛媛大学檜垣先生からも喫煙の害に関して資料
をいただきました。感謝申し上げます。
○ニューズウィーク(News Week)「タバコが犯罪になる日」という本を、かなり
前のある日曜日、慈恵医大の図書館でちょうど見つけました。檜垣先生もそ
の記事のことを取り上げていらっしゃいますが、その中に次のようなことが
書かれていました。
「タバコは人類の敵である。
天然痘の次に、
地球上から根絶すべきものである。
」
○檜垣先生からの資料に「NO MORE Killing」という言葉があります。
「もうこれ
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以上殺さないで」というような意味です。先生は禁煙治療による生命リスク
のグローバルコントロールが必要であると訴えています。
○年代別喫煙率の推移
男性は各世代で少しずつ減ってきています。ところが、女性は 20 歳代、30
歳代の若い人の喫煙が増えています。
○喫煙による健康被害
循環器疾患---動脈硬化、突然死、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、腹部大動脈瘤、
閉塞性動脈硬化症、ビュルガー病、腎血管性高血圧、急速進行性高血圧
がん---肺がん、白血病、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、胃がん、膵臓がん、
腎臓がん、膀胱がん、子宮頸がん。肺癌だけでは無いのです!!
呼吸器疾患---慢性閉塞性肺疾患、肺炎、喘息、
生殖---低出生体重、妊娠合併症、不妊、乳幼児突然死症候群
その他---手術結果/治療不良、股関節部骨折、骨粗鬆症、白内障、胃潰瘍
タバコは体内に毒素をまきちらします。
今吸っている人が、
禁煙しても 15 年、
20 年後頃が恐ろしいのです。アメリカでは、昔喫煙して今止めた人が、どんど
ん慢性閉塞性呼吸器疾患(肺気腫など)になっています。日本もこれから 10 年、
20 年後に呼吸器疾患が増えると思います。喫煙している二十歳そこそこの方々
を見ると、将来を考えて哀れに思えてしまいます。
○タバコに含まれる有害物質
ニトロソアミンという言葉を知っていますか?魚やご飯の焦げたものの中
には、発がん物質のニトロソアミンが含まれています。これがタバコに含ま
れる他、タバコには何百種もの有害物質が含まれています。
○喫煙者と非喫煙者の生存率
英国人男性医師 34,439 名、50 年間の追跡調査で、喫煙する人は寿命が 10
年も短いことが分かりました。糖尿病で寿命が短くなって、その上にタバコ
を吸うとダブルパンチになります。90 歳余りで「煙草が趣味」と言っている
高齢者がテレビに出ていましたが、煙草の害で死亡しなかった一握りの幸運
者なのです。
○受動喫煙
受動喫煙とは、同じ部屋の中などで、他人が吸ったタバコの煙を吸ってしま
うことです。喫煙者は知らないうちに、他人や家族を傷つけています。例え
ば、誰かが隣の部屋でタバコを吸うと、子供・乳児は将来その影響で呼吸機能
低下、急性気管支炎、喘息、喘息様気管支炎、髄膜炎、肺炎、乳幼児突然死
症候群、中耳炎等になる恐れがあります。
気がつかないうちに子供を含め、
家族、
その他の周りの人を傷つけています。
傷つけていることが見えていないからです。
○タバコの煙は、副流煙の方が有害
ある測定結果では、ジメチルニトロソアミン(発癌物質)が主流煙で1とする
と、副流煙では 19~129 倍になります。ホルムアルデヒドは 6~121 倍、アン
モニアでは 46 倍になります。奈良の先生が新幹線の中で調査した結果、喫煙
車両と離れた禁煙車両にも副流煙が流れ、特に排気口のある下は一番良く流
れることが分かったそうです。また、ドアの開閉時にも流れてきます。これ
が全面禁煙になった理由です。
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私が外食をあまり好まない理由の一つは隣の方が許可も無く煙草を吸い始
めるからです。カナダから来てしばらく行動を共にしたブリティッシュ・コロ
ンビア大学の教授が、日本のレストランの喫煙状況をカナダでは考えられな
いことだと言っていました。日本は喫煙に対して甘すぎるのです。
ついでに言えば「警察が犯人逮捕に至ったポイントをテレビで解説している
のを聞いて、次の同様の事件では犯人は賢くなり被害者が今回のようには助
からない。警察はなぜあのような重要な情報を漏らすのか?」カナダの警察
は被害者の不利になる余計なことは話さない。と言っていました。
○職場での受動喫煙は糖尿病発症リスクを高める
日本人男女 6,498 人を対象に調べた結果、受動喫煙が全くない人に対し、受
動喫煙 1.81 倍、能動喫煙 1.99 倍と、糖尿病発症のリスクが高くなっていま
す。
○ニコチンサイクル
タバコは嗜好品ではありません。タバコは薬物依存の中毒、すなわちニコチ
ン中毒です。タバコを吸うとニコチンが入り、落ち着いた気がします。とこ
ろが、20 分経過すると血中のニコチン濃度が低下し、また、吸いたくなりま
す。その結果、30 分後に喫煙欲求が始まり、40 分後には不快感になりイライ
ラしたあげく、50 分後には強烈な渇望感が起こります。
○喫煙は糖尿病の引き金になる
喫煙はヘモグロビンA1cを増加させます。つまり、糖尿病を悪化させます。
活性酸素消去のつもりでコエンザイムQ10や他の活性酸素消去するサプリメ
ントなどを飲んでも、効き目は帳消しです。喫煙のおかげで糖尿病に対する
日々の努力が報われないのです。
○先進国における死亡の危険因子
高血圧、喫煙、脂質異常(コレステロール)が問題です。つまり、内臓脂肪か
らインスリンの働きを悪くする物質が出てきます。タバコも同様に、インス
リンの効き目を悪くする物質が出てきます。
○喫煙によって脳機能は低下する
タバコを吸うと、すっきりして良い考えが出るように感じますが、脳は実は
虚血状態になり、血が足りなくなります。その結果、脳の機能は低下します。
○高血圧と喫煙
タバコを吸うと一過性の血圧上昇になります。日本人の心臓血管死の 90%
が高血圧と喫煙が関係しています。ニコチンが血圧を上げるときは心拍量、
すなわち心臓が収縮するときに出る血液の量、そこに末梢血管が狭いと血圧
が上がりやすくなります。ニコチンは交感神経活性亢進(ドキドキ神経)があ
り、心臓の収縮を多くし血圧を上げます。血圧の薬を何種類も飲んでいて喫
煙者はタバコを止めれば薬の数も減ると思われます。
○チェーンスモーカーは、ずっと緊張、高血圧
タバコを繰り返し吸うため、常に血圧が高く、夜中には一旦下がっても、タ
バコを吸い始めると再び上がります。
○子宮内環境
胎児に与える影響。小さい体重で生まれた子供は、将来、糖尿病になりやす
いのです。
「小さく産んで大きく育てる」というのは間違いです。小さい状態
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で生まれた子供は膵臓も小さいため、インスリンの出る量も少ないのです。
そこで早めに大きくなるようにと、どんどん食べさせたりすると、逆に将来
糖尿病になってしまいます。
タバコを吸っているお母さんから生まれた子供は胎内で小さいが、その後肥
満になる子どもが非常に多いということが、データから分かります。喫煙す
る母親の胎児は、悪い環境を察知し身構えて小さく育ちます。低出生体重児
として生まれ、その後、母親が人に追い付くように大きく育てるため、どん
どん食べさせる一方で、運動もさせず勉強ばかりさせていると、糖尿病にな
りやすくなります。
○妊娠中の喫煙は 4 歳児の肥満に関係する
出生時の体重 3,000 グラム以下、4,000 グラム以上の生後 5 ヵ月間の体重増
加を非喫煙妊婦と喫煙妊婦の子を比べると、喫煙妊婦の子は体重増加傾向が
あり、4 歳児の肥満は、母親がタバコを吸っていると体重が増え肥満になりま
す。
○ 妊娠中の喫煙は、子供(16 歳、33 歳)の肥満リスクを高める
非喫煙妊婦の子に対して、喫煙妊婦の子が 16 歳、33 歳になったときに肥満と
なっている割合が多いことが分かっています。データとしてみると、タバコを吸
うお母さんから生まれた子は、肥満になりやすいことが、このデータでも分かり
ます。
○喫煙と低体重児出生の関係
低体重児の危険は、妊婦も夫も吸わない場合を1とすると、夫だけが吸う場
合は 1.2 倍に、妊婦も夫も吸う場合は 2.8 倍になります。
○血中アディポネクチン濃度と喫煙
動脈硬化を防ぐ大事な因子がアディポネクチンです。喫煙するとせっかくの
大切なアディポネクチンを下げてしまいます。
○ニコチン代替療法
•
ニコチンガムやニコチンパッチ(貼り薬)があります。その他、ニコチンを
含まない「バレニクリン(商品名チャンピックス)
」という薬が発売されまし
た。これは、最初に少ない量から飲み始め、だんだんと量を増やしていきま
す。急に飲むと目まい、ふらつきが起こりますので、医師の指導のもと禁煙
して下さい。実際使用した複数の方から「不思議と吸いたくなくなった」と
の話を聞くことができました。ニコチンはα4β2 ニコチン受容体に付き、ドパ
ミン(ここでは快楽物質として麻薬のように働く)を出しますが、このチャ
ンピックスはそれをブロックします。しかし少しだけドパミンをだすので、
ニコチンの禁断症状が出にくく、煙草をやめる大きな助けになるのです。医
師の指導のもと使用する薬です。保険診療は登録してある限られた医療機関
ですが、できるようになりました。
○喫煙習慣の本質はニコチン依存症という病気です。
5 月 31 日は世界禁煙デーです。当クリニックのスタッフも禁煙を支援してい
ますので、ぜひ、タバコの害から身を守ってください。
2.あなたの足を守るフットケア
水谷 百合子 看護師
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フットケアという言葉をご存じでしょうか。フットケアは、足の外観のチェッ
クと足にできた病変を処置・治療することです。なぜ、足を診なければならな
いかというと、糖尿病で高血圧になると、合併症として末梢神経障害がおこり
ます。その結果、足に病変が起こりやすくなり、それを放置することで病変が
進行し、歩行困難になり日常生活に支障をきたします。
それを防ぐため、定期的な足のチェックをし、早めに足の病変を見つける目的
で行うのがフットケアです。
今、
世界で 30 秒に1人の方が足を切断しています。
これは早めに病変を見つけられず、どんどん病変が進行していった結果です。
実は、足の病変は発見が難しく、タコや潰瘍ができていても神経障害によって
痛みを感じません。また、高齢者は視力が衰え体が硬くなることで、足の裏を
見る機会が少なくなり病変の発見が遅くなったりします。それを予防するのが
フットケアです。
○糖尿病性神経障害
高血糖が長期にわたって続くと、末梢神経の働きが低下します。
「少ししびれ
るだけ」と、放っておかないようにしましょう。自覚症状としては足に違和感(し
びれ、紙を貼ったような感覚)や痛みがある、足の感覚が弱い、足にタコができ
る、よく傷ができる。
○糖尿病性神経障害 + 血流障害
高血糖が続くと、動脈硬化が進み、足の先の血流が悪くなります。自覚症状と
しては、足が冷える。長く歩くと足が痛み、休むと治ることがあります。足に
タコが繰り返しできる。皮膚が乾燥し、ひび割れができる。
○糖尿病性神経障害 + 血流障害 + 易感染症(感染症にかかり易い)
高血糖が続くと、細菌などへの抵抗力が低下するため、感染が起きやすくなり
ます。自覚症状としては、タコを放っておくと中に空洞ができ、化膿すること
があります。
爪周囲が赤く腫れる。足や、足の指の間の水虫が進む。
○糖尿病性神経障害 + 血流障害 + 易感染症 + 放置・打撲・外傷など
小さな打撲などをきっかけに感染が起こり、急に潰瘍・壊疽(えそ)になる可能
性があります。自覚症状としては、タコや水虫も、放置や外傷をきっかけに潰
瘍や壊疽になることがあります。腫れや皮膚の色の急な変化や膿に気づくこと
もあります。
足の爪は自分で切れますか?足の爪は無理に切らないことです。やすりで削っ
ても良いです。自分の足の先が見えない場合は、看護師に相談してください。
○フットケア
◉足を毎日よく見て清潔にしましょう。
タコはありませんか?靴ずれ、水ぶくれ、傷、ひび割れなどありませんか?
足や指の間に水虫はありませんか?入浴時は足や足の指の間を清潔にしまし
ょう。タコは最初は小さくても、放っておくとだんだん大きくなります。そ
うなると痛みが出てきて、歩きにくくなり、外出をしなくなりますので、ご
相談ください。
◉タコは自分で削らないようにしましょう。
削りすぎて傷つけることがあります。その傷から感染をすることがあります。
◉爪は慎重に切りましょう。
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まっすぐに切りましょう。丸く切ると爪の端の方に圧がかかり、そこから赤く
はれてしまいます。まっすぐに切ると、圧が分散されます。厚く切りにくい
爪は、医師や看護師に削ったり、切ってもらいましょう。
◉合った靴を履きましょう。
靴を選ぶときは、少し歩いて痛みがないことを確かめましょう。ヒールの高い
靴は避けましょう。靴は夕方に選びましょう。
◉やけどに気をつけましょう。
足が冷えても暖房器具は離して使いましょう。入浴時には、お湯の温度を確か
めましょう。冬は湯たんぽのやけどが多く、その原因は神経障害のため、熱
をあまり感じません。電気毛布も朝までつけていると、皮膚が乾燥します。
糖尿病の患者さんは上半身が汗をかいても、足はカサカサになるので、クリ
ームをつけた方が良いでしょう。
◉靴を履くときは、中の小石がないか注意しましょう。血がにじんだことが分か
るように、できるだけ白っぽい靴下をはきましょう。
◉爪が白く厚くなっているのは、爪白癬です。これは爪を薄く削って薬を浸透さ
せればよくなりますが、飲み薬が必要な場合もあります。
(加藤内科クリニック 不許転載・患者会使用可)
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