1 【研究概要】 日本食には加工技術(微生物発酵処理)を施した食 べ物が多い。すなわち日本食には生体内物質と同一 の構造、または機能的な状態となっている成分が豊 富に含まれているので、その成分は腸で吸収後、速 やかに且つ効果的に生体機能に影響を与え得る。 このような機能をもつ日本食を長期的・持続的に摂 取することにより、病的老化から自然老化へと導く 可能性が高いと考えられる。 我々はこの科学的エビデンスを提示するために、認 知症で特に問題となっている脳内免疫応答の混乱、 エピジェネティクスの異常、シナプス可塑性の障害 における日本食の効果を検討する。 網羅的エピゲノム解析技術を最大限に活用し、 日本食に含まれる機能性ペプチド類がエピゲノ ム修飾に与える影響を重点的に解析し、日本食 に含まれる新しい機能性食品成分の探索も並行 して行う。 さらに日本食成分が神経疾患の患者組織に与え る影響をヒトiPS細胞を用いて直接検討する。 • 2 【研究目的】 ジペプチド及び不飽和脂肪酸が 脳に与える影響を解明 ジペプドおよび不飽 和脂肪酸が脳に与え る影響を解明 疾患脳細胞の同定 ・脳内免疫応答解析 バイオマーカーの探索 ・エピゲノム解析/トランスクリプト解析 日本食の成分が神経疾患の 患者組織に与える影響を解明 ・電気生理学的細胞機能解析 バイオマーカーの探索 ・動物行動学的解析 ・機能性素材のスクリーニング 新規機能性食品成分 の探索 ・ヒト疾患病的組織での解析 うつ・ひきこもりなど心の問題に 対する日本食の効用を探る 3 【研究背景】 病的老化を自然老化へ導く手続き 病的老化 これまでの理解 脳内異常 ↓ 大量の神経細胞死 ↓ 脳機能低下 II 回復不能 自然老化 新たな理解 理想的状態 脳内免疫異常などが引き金 脳内免疫異常の緩和 エピジェネティクス異常の改善 ↓ 神経細胞可塑性低下 エピジェネティック異常 =ゲノムがロックされて読めない状態 ↓ 回復可能 大量の神経細胞死 ↓ 神経細胞可塑性維持 ↓ 脳機能の維持 回復可能な病的老化のポイントが見つかり、自然老化 誘導への道が開かれた! 4 【ロードマップ】 26 年度 27 年度 28 年度 グリア細胞変動遺伝 子の同定 脳内免疫異常のリセット 29 年度以降 1.脳内免疫応答解析 抗炎症作用の解明 2.エピゲノム解析 / トランスクリプト解析 ヒストン修飾解析 網羅的遺伝子発現解析 エピゲノム異常のリセット 3.電気生理学的細胞機能解析 細胞内応答 / 賦活化効果の解析 シナプス可塑性異常の改善 4.日本食に含まれる新しい機能性素材のスクリーニング 新規機能性食品分子の探索 (抗酸化作用 / 体内動態解析) 5.ヒト疾患病的組織での解析 神経保護効果の解析 26 年度 日本食の脳内分子への 影響を解明 ヒト病的組織のレスキュー効果を解明 27 年度 ターゲット遺伝子など の同定 28 年度 免疫 / 神経異常の リセット 神 経 科 学 の 網 羅 的 な 解 析 法 の 確 立 日 本 食 の 新 規 機 能 性 分 子 の 網 羅 的 解 析 が 可 能 外来物質が内在性 シグナルを制御する 仕組みを理解し、脳 機能改善の分子機 構を解明する 科学的根拠に 基づいた日本食 の効果を保証! 【構成員紹介】 氏 名 所属・部署・役職 担当する研究項目 星薬科大学 亀井 淳三 成田 年 葛巻 直子 五十嵐 勝秀 薬物治療学・教授 先端生命科学研究所・生命科学先導研究センター (先導研)センター長 新規機能性食品分子の探索 星薬科大学 グリア細胞の動態解析 薬理学・教授 エピゲノム解析およびトランスクリプト解析 先端生命科学研究所・先端生命科学研究センター (L-staR)センター長 電気生理学的細胞機能解析 新規機能性食品分子の探索 ヒト疾患病的組織での解析 星薬科大学 薬理学・講師 星薬科大学 先端生命科学研究所・(L-staR) 副センター長 特任准教授 ヒト疾患病的組織での解析 活性化型神経細胞の解析 エピゲノム解析およびトランスクリプト解析 活性化型神経細胞の解析 腸管神経系の制御に基づく腸管免疫系の解析 活性化型神経細胞の解析 手塚 裕之 星薬科大学 先端生命科学研究所・(L-staR) 特任准教授 田村 英紀 星薬科大学 先端生命科学研究所・(L-staR) 特任准教授 大塚 まき 星薬科大学 先端生命科学研究所・(L-staR) 特任助教 山本 直樹 星薬科大学 先端生命科学研究所・(L-staR)特任 助教 杉田 和幸 星薬科大学 薬品製造化学・教授 新規機能性食品分子の探索 五十嵐 信智 星薬科大学 薬物動態学・講師 新規機能性食品分子の探索 岩崎 雄介 星薬科大学 総合基礎薬学教育研究部門・講師 新規機能性食品分子の探索 グリア細胞の動態解析 電気生理学的細胞機能解析 活性化型神経細胞の解析 エピゲノム解析およびトランスクリプト解析 活性化型神経細胞の解析 エピゲノム解析およびトランスクリプト解析 活性化型神経細胞の解析 ○井上 啓 金沢大学医学部 医薬保健研究域附属 脳・肝インターフェースメディシン研究センター・教授 新規機能性食品分子の探索 ○植木 暢彦 株式会社鈴廣蒲鉾本店・魚肉たんぱく研究所・所長 機能性食品サンプルの開発 ○河野 光登 不二製油株式会社・健康機能研究室長 機能性食品サンプルの開発 ○柴田 浩志 サントリーウエルネス株式会社・健康科学研究所・所長 機能性食品サンプルの開発 6 研究者紹介 【氏名】亀井 淳三 Junzo Kamei 薬物治療学教室 教授 先端生命科学研究所 生命科学先導研究センター(先導研)センター長 【専門】 応用薬理学・医療系薬学 【本プロジェクトにおける役割】 写 真 研究代表者 新規機能性食品分子の探索 【自己紹介】 大学の薬物治療学教室にて、呼吸器系の疾患ならびに肥満 や糖尿病をはじめとした生活習慣病の成り立ちの理解と治療 法の確立を目指し研究を行っております。 本プロジェクトでは最先端の脳科学技術とエピジェネティ クス解析技術を用い、日本食の優れた効用の科学的根拠を得 て、食べ合せの極意を提案いたします。 皆様の身近にある出汁、納豆、漬物やお茶といった日本食 の特徴である発酵食品の解析は、日本食の機能性の解明に繋 がっていくと考えております。 さらに高齢化社会で問題となっている認知症や若者のう つ・ひきこもりといった心の問題に対する日本食の効用も提 示いたします。 ライフサイエンスの分野から日本食の効用を証明する研究 にご注目いただければと思います。 【論文・著作等】 Click 研究者紹介 【氏名】成田 年 Minoru Narita 薬理学教室 教授 先端生命科学研究所 先端生命科学研究センター(L-StaR)センター長 【専門】疼痛学・麻酔科学・神経科学一般 【本プロジェクトにおける役割】 研究実施責任者 神経細胞解析 新規機能性食品分子の探索 ヒト疾患病的組織での解析 写 真 【自己紹介】 この研究は、食をミクロに科学することを大義としています。 日本食には、素晴らしいアイデアがたくさん詰まっており、それ らの“文化遺産”を食する毎日の中で、我々日本人はいつの間に か、健康で健やかに日々を過ごすことが出来ているわけです。 発酵のような智慧をめぐらせた加工技術は、食品の中にある微 量で有効な成分を、ほどよい形で全身にいきわたらせます。特に これらは、脳機能に直接的あるいは間接的に大きな影響を与え、 「病的老化」を予防しています。こうした食品成分の詳細な作用 機序を、1細胞レベルで徹底的に追及するのが、我々の研究の目 的です。質量分析を応用して食品中の機能分子を抽出し、その作 用を脳内ネットワーク回路網解析システムや次世代型シーケン サーを駆使して、細胞レベルで評価し、これまでにない、食品の 細胞薬理学的効果を実証していきます。 こうした日本食の持つ凄さの細胞科学的実証に望む我々の世界 初のアプローチに、どうか大きな期待を寄せて頂きたいと思いま す。 【論文・著作等】 Click 研究者紹介 【氏名】葛巻 直子 Naoko Kuzumaki 薬理学教室 講師 【専門】神経科学・神経薬理学 【本プロジェクトにおける役割】 ヒト疾患病的組織での解析 写 真 【自己紹介】 パーキンソン病やアルツハイマー病患者の疾患特異的 iPS 細胞を用いた解析技術を応用して、食品中の有効成分が神経 系に与える影響について検討を行います。 こうした技術とエピジェティクス解析との融合により、食 品中有効成分の持つ可能性について、多角的に検討を進めて いきます 【論文・著作等】 Click 研究者紹介 【氏名】五十嵐 勝秀 Katsuhide Igarashi 先端生命科学研究所 先端生命科学研究センター(L-StaR) 副センター長/特任准教授 【専門】エピゲノム解析 【本プロジェクトにおける役割】 エピゲノム解析およびトランスクリプト解析 【自己紹介】 次世代シーケンサー等を用いた網羅的解析を行っています。 和食に含まれる機能成分の体に対する影響をエピゲノムと トランスクリプトームをつなげて解析し、その効能を説明す る科学的知見を得ていきたいと考えています。 【論文・著作等】 Click 研究者紹介 【氏名】手塚 裕之 Hiroyuki Tezuka 先端生命科学研究所 先端生命科学研究センター(L-StaR) 特任准教授 【専門】免疫学 【本プロジェクトにおける役割】 腸管神経系の制御に基づく腸管免疫系の解析 写 真 【自己紹介】 腸管腔内には常時莫大な量の腸内常在菌や食物抗原が存在 しているにもかかわらず、これら抗原に対して免疫系は発動 しません(負の応答) 一方、病原体の感染時では、免疫系は速やかに誘導され,そ れらを積極的に殺滅•排除します(正の応答) この相反する応答は,腸管免疫系に固有の現象であり、なか でも腸管組織の形質細胞の生産するIgA抗体が重要な役割を演 じているものと考えられています。しかしながら、同細胞の 維持機構は不明です。 この点を明らかにする目的で、腸管組織に張り巡らされて いる神経細胞に着目し、同所における形質細胞の維持機構の 解明を目指します。 【論文・著作等】 Click 研究者紹介 【氏名】田村 英紀 Hideki Tamura 先端生命科学研究所 先端生命科学研究センター(L-StaR) 特任准教授 【専門】神経科学 【本プロジェクトにおける役割】 写 真 電気生理学的細胞機能解析 グリア細胞の動態解析 【自己紹介】 食品中の有効成分が特定の神経細胞集団に及ぼす影響を電 気生理学的に解析し、局所回路における細胞の生理特性を明 らかにします。 本研究を通じて、動物行動に起因する神経回路を明確にし、 動的な神経回路の中で個々の神経細胞が果たす役割を理解し たいと思っております。 【論文・著作等】 Click 【氏名】山本 直樹 Naoki Yamamoto 先端生命科学研究所 先端生命科学研究センター(L-StaR) 特任助教 【専門】エピゲノム解析 【本プロジェクトにおける役割】 網羅的データ解析 【自己紹介】 近年注目されている次世代シーケンサーは非常に強力な解 析ツールです。次世代シーケンサーから生み出される膨大な 生体データには網羅的な遺伝子発現情報だけでなく、位置情 報や転写様式などの様々な情報が含まれています。 【論文・著作等】 Click このような膨大な情報を解析することで、食物の変化が生 物に与える影響を注意深く解析していければと思っています。 13 研究者紹介 【氏名】大塚 まき Maki Otsuka 先端生命科学研究所 先端生命科学研究センター(L-StaR) 特任助教 【専門】エピゲノム解析 【本プロジェクトにおける役割】 写 真 エピゲノム解析およびトランスクリプト解析 【自己紹介】 次世代シーケンサーのサンプル調製と運用を行っています。 微量サンプル、究極にはシングルセルに対応し、確実な網 羅的データが得られるよう、最新の情報を取り入れて対応を 図っています。 和食を通して、どのようなエピゲノム変化が生じているの か期待しています 【論文・著作等】 Click 研究者紹介 【氏名】杉田 和幸 Kazuyuki Sugita 薬品製造化学教室 教授 【専門】創薬化学 【本プロジェクトにおける役割】 新規機能性食品分子の探索 【自己紹介】 過去20年以上にわたり、製薬企業で創薬化学研究に従事い たしました。 この経験を活かし、機能性食品分子の探索を化学構造の面 からの考察を行い、ひいては新規医薬品開発への展開の可能 性を見出したいと考えております。 候補オリゴペプチドの化学合成、化学修飾に取り組んでお ります。 座右の銘は、「根性と気合」。 【論文・著作等】 Click 研究者紹介 【氏名】五十嵐 信智 Nobutomo Ikarashi 薬動学教室 講師 【専門】薬理学一般 【本プロジェクトにおける役割】 新規機能性食品分子の探索 【自己紹介】 「患者を助けたい!!」今、医療現場で問題となっているこ とを様々な視点で解析を行い、患者に還元したいと考え、 日々研究活動に励んでいます。 そんな思いを胸に、新規機能性食品分子の新たな可能性を 見出してまいります。 【論文・著作等】 Click 研究者紹介 【氏名】岩崎 雄介 Yusuke Iwasaki 総合基礎薬学教育研究部門 講師 【専門】物理系薬学 【本プロジェクトにおける役割】 新規機能性食品分子の探索 【自己紹介】 食品に含まれている有用性の高い成分を探索し、その評価 方法や生体内の分子を標的としたバイオマーカーに関する分 析方法の開発について研究しています。 本プロジェクトを通じて、星薬科大学発信の新しい研究の 一助となれるようにがんばっていきたいと思います。 【論文・著作等】 Click 17
© Copyright 2024 Paperzz