4. プレス加工 - 素形材センター

プレス加 工
プレス加工
4.
4. 1 産業動向
4. 1. 1 金属プレス加工品
う駆け込み需要の反動減、国内自動車市場の趨勢的な
金属プレス加工品の平成 27 年(2015 年)の販売総額
ことから生産調整の長期化と減産で国内生産は低調に
は 8,099 億円で前年から 1,524 億円減少した。消費税増
推移している。なお、北米市場の好調と円安の定着に
税後の個人消費、設備投資など内需回復の遅れや中国
より輸出需要が増加しており、特にスポーツ用多目的
など新興国の景気減速の影響を受けて、国内生産は自
車(SUV)を生産する地域では堅調に推移している。
動車、機械、電子・デバイスの減産などにより在庫調
電気機器・通信機器用は、前年から 88 億円(23.1%)
整も長期化した。金属プレス業界の企業はユーザー産
減の 293 億円となった。スマートフォン向けでは、一
業の海外生産シフト化の影響等もあり、素形材産業の
部メーカーのモデルチェンジにより好調だった 2014 年
中では最も海外展開が進んでいる。こうした背景から
年末をピークに減少傾向で推移し、主要エレクトロニ
グローバル最適生産体制が進展している PC・家電など
クス製品の需要も普及による一服感と中国経済減速の
の電気機器では、製品の差別化で競争優位性を獲得す
影響を受けて需要が減少し、受注は引き続き低調となっ
ることは難しい状況にある。
ている。今後は、自動車の電装化により、民生用電子
用途別年間販売額は表 4. 1. 1. 1 のとおり。
機器向けの電子部品については、新たな市場展開が期
自動車用の販売額は前年比 1,208 億円(15.3 %)減の
待される。
6,665 億で 3 年連続の減少となった。全体に占める比率
産業機械器具用は、国内自動車生産の低迷や中国経
は 82.3 % となり金属プレス加工品の自動車への依存に
済の減速による工作機械や産業機械関連の生産低迷の
は変化がない。
影響により設備投資の動きが弱かったほか、年後半に
海外市場で売り上げを伸ばしている自動車メーカー
は省エネルギー設備導入補助金制度による受注の押上
が好調である一方、2015 年 4 月の軽自動車税増税に伴
げ効果が薄れた影響を受け、年間販売額は 272 億円で
需要減少が影響して完成車在庫が高水準な状況にある
前年から 70 億円(20.5%)減少した。
事務用機械器具用は、前年の消費増税需要の
表 4.1.1.1 金属プレス加工品用途別・販売額
平成 26 年
(2014)
用途別
自
動
車
用
反動により複写機・複合機は減少傾向にあるも
平成 27 年
(2015)
販売額
(億円)
販売額
(億円)
7,873
6,665
構成比
(%)
82.3
前年比
(%)
のの、マイナンバー制度の導入による需要と円
安の継続が影響し、前年比 5 億円(16.1%)増の
84.7
36 億円となった。
厨暖房機器用は、外食産業や病院・福祉施設
電 気 機 器・通 信 機 器 用
381
293
3.6
76.9
産 業 機 械 器 具 用
342
272
3.4
79.5
事務用機械器具用
31
36
0.5
116.1
厨 暖 房 機 器 用
378
375
4.6
99.2
60
67
0.8
111.7
などの業務用厨房機器市場が好調に推移したが、
空調設備などの暖房機器市場では暖冬の影響に
より国内市場が低迷したことを受けて年間販売
精
密
機
器
用
家
具・ 建
築
用
99
88
1.1
88.9
額は 375 億円で前年から 3 億円(0.8%)減少した。
農業用機械器具用
87
82
1.0
94.3
372
221
2.7
59.4
測量機器や光学機器等の精密機器用は、産業
9,623
8,099
100.0
84.2
そ
の
他
合計
用
出所:金属加工統計 金属プレス加工月報
用レンズは高付加価値プロジェクタが好調に推
移し、計器関連では、産業用機械向けなどが堅
Vol.57(2016)No.5
SOKEIZAI
49
平成 27 年の素形材産業年報
調であることに加え、為替の影響も後押しとなり、前
減)
・159 億円(同 16.1%減)
、⑤表面処理鋼板等その他
年比 7 億円(11.7%)増の 67 億円となった。
が 513,590 トン(同 11.1%減)
・578 億円(同 14.8%減)
家具・建築用では、前年比 11 億円(11.1%)減の 88
となっている。
億円となった。建設資材需要は底堅く推移しているが、
(小林範子)
震災以降の需給逼迫による受注の先送りが起因し、こ
4. 1. 2 鍛圧機械需要動向
こにきて一服感がみられる。
農業用機械器具用は、国内では排出ガス規制前の駆
け込み需要があったものの、その後の生産調整や米価
鍛圧機械とは、金属塑性加工機械を総称し、少・中
低迷と TPP 大筋合意に対する設備投資意欲の減退が
品種多量生産の金属成形を得意とするプレス系機械と
影響したが、北米、ASEAN 向けが好調であったため、
多品種少量生産、シート材の切断 ・ 成形を得意とする板
前年比 5 億円減の 82 億となった。
金系機械に大別される。
一方、プレス加工品生産に使用する原材料は、年間
2015(平成 27)年の鍛圧機械の総受注金額は、3,397
購入量が合計 1,667,979 トンで前年から 6.7%減少した。
億円、前年比 3.6 % 増、機種合計の受注金額は、2,682 億
金額では 2,008 億円で対前年比 9.9 % の減少。なお、原
円で前年比 1.9 % の増加となった。国内向けは 1,603 億
材料の集計には自動車用業界で多い需要先メーカー調
円で 18.4 % 増、輸出向は 1,080 億円で 15.5 % の減少、輸
達の支給材が含まれている。
出比率は 40.2 % となり、前年より 8.4 ポイント低下した。
内訳は、①普通鋼熱間圧延鋼材が 661,086 トン(対前
国 内 を 産 業 別 に 見 る と、2014 年 に は 国 内 全 体 の
年比 4.1%減)
・616 億円(6.9%減)、②普通冷間仕上鋼
29.5 % を占めていた金属製品製造業が前年比 32.1 % 増
材が 408,585 トン(同 4.0%減)・437 億円(同 5.0%減)
、
で構成比 33.0 % に上昇、自動車産業向は 9.3 % の増加に
③ステンレス鋼板が 64,815 トン(同 6.5%減)
・218 億円
留まり、構成比も 24.4 % に低下するも、全体の受注金
(同 8.9%減)
、④非鉄金属板が 19,903 トン(同 23.8%
額を押し上げる主要因となった。一般機械向は 15.2 %
114.2
7,000
%
プレス比率 (%)
67.9 74.9 71.6 74.4 70.6 65.9
66.2 68.4 69.0
63.6 59.9
64.9
57.1 59.1 55.8
55.2 55.0 55.0 53.0 57.2 54.7 56.4 61.8 54.5 57.6 51.5 60.5 58.9 61.6
40.5 40.6 輸出比率 (%)
45.7
43.8
31.5
27.9 30.1 22.7
24.2 23.8
61.3 60.5 57.3
19.8 18.3
6,000
49.9 48.6
42.1
48.5
44.3 44.3
41.5
40.2
37.7
37.2
37.6
35.3
35.2
34.3
34.3
34.2
34.1
30.6 25.7 23.0
26.0
21.5
17.7
15.8
億円
9.7
8.5
7.9
3.7 8.8
3.6
3.4 3.4
2.2
2.3
-1.6
-7.9
-10.3
-10.3
-16.7
-22.1
4,907
対前年伸率 (%)
-30.5 -26.0
4,802
5,000
-34.0
3,951
4,000
960
981
818
790
3,000
4,088
2,842
1,728 1,767
2,686
1,538 568
1,416
782
618
2,482
2,283
946
974
421
2,325
2,201 2,282
2,104
457
2,000
2,922
667
629
589
961
1,133
1,125
496
440
456
1,934
387
763
796
854
721
816
595
2,114 2,159
1,000
1,745
1,733
1,367 1,412
-67.4
3,596
3,716
1,300
1,554
1,348
907
1,104 1,170
356
465
0
-50
-150
3,279
769
3,397
-200
3,034 3,104
689
2,785 647
2,408
874 1,050
492
664
540
715
-250
593
576
789
779
1,075 1,186
948
466
-300
-350
648
1,124
457
2,140 2,099 2,025
1,394
953
736
3,843
967
1,781
1,537
921 1,031
584
719
743
50
-100
3,447
3,337
3,143 3,092
2,947
537
部品・金型・サービス
板金系機械
プレス系機械
輸出比率
プレス系比率
前年同期伸率
プレス系機械とは機械プレス+液圧プレス+鍛造
機+自動化装置,
板金系機械とは、パンチングプレス+プレスブレー
キ・シヤ+レーザ・プラズマ+その他機械
100
1,674
-400
1,791 402
393
967
1,705 1,731
1,268
1,261
1,556 1,496
-450
330
0
図 4.1.2.1 鍛圧機械 受注金額 暦年推移グラフ(一般社団法人 日本鍛圧機械工業会調べ)
50
SOKEIZAI
Vol.57(2017)No.5
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
1990年
1989年
1988年
1987年
1986年
-500
プレス加 工
増、電気・情報通信製造業向が 16.2 % 増、鉄鋼・非鉄
安全装置は 32.1 % 増となった。板金系機械は、1,186 億
金属向も 24.3 % 増となり金額全産業で増加を記録した。
円で 10.3 % 増、2003 年来の最高を更新した。パンチン
輸出の仕向地別では、2014 年には、輸出の 36.8 % を
グが 14.0 % 増、レーザ加工機は 2.5 % 増、プレスブレー
占めていた北米向が 19.1 % の減少、中国向も 10.5 % 減、
キも 15.2 % の増加となった。
東南アジア向が 29.3 % 減、欧州向も 23.8 % 減だが、韓国・
国内向け受注は投資促進税制及び補助金効果も一巡
台湾向は 4.8 % 増、インド向が 2.9 倍増になるも主要国
し、2016 年は不透明感が漂い、新たな刺激策に期待。
の減少を補うには至らなかった。
輸出向は、北米、中国向の大型投資は見込みにくいが、
機種系列別に見ると、プレス系機械は 1,496 億円で
新規合理化設備への投資及びインド市場の成長に期待
3.8 % 減少した。機械プレスは全体で 1.1 % 増、液圧プ
する。
(楠田冨士盛)
レスは 10.6 % 減、フォーミングは 32.9 % 減だが、自動化・
4. 2 技術・研究動向
4. 2. 1 MF-Tokyo2015 ( プ レ ス ・ 板 金 ・
フォーミング展) に見る技術動向
究成果を発表する場となっていた。大学研究室らしく、
出展説明は学生が行っているところがほとんどであり、
学生の勉強になると共に、フレッシュな雰囲気の展示
MF-Tokyo2015(プレス・板金・フォーミング展)は、
となっていた。
7 月 15 日~ 18 日の会期で東京ビッグサイトにおいて開
催された(隔年開催であり、今回で 4 回目になる)
。出
展者数は 223 社、小間数は 1,304 小間、来場者数は 3 万
4. 2. 2 国の補助金に見る技術開発動向
人強であり、今回は過去最大規模となった。プレス機
ものづくりの基盤技術に対する国の補助事業の一つ
械やレーザ加工機などの技術の進化に対する関心が高
である「戦略的基盤技術高度化支援事業」において、
いことが伺える。
平成 27 年に新規に採択されたテーマの中から、金属プ
併設のシンポジウムのテーマは、「サーボプレスの最
レス加工に関連の深い課題を数件取り上げて、技術開
新技術動向」
、
「鍛造プレスの最新技術動向」、「ファイ
発動向を探ってみたい。主として、自動車用電子・電
バーレーザ加工機の最新技術動向」および「パンチン
グ金型の最新技術動向」である。サーボプレス機械は、
特に、自動車の構造部材の軽量化に対応し、高強度鋼
板のプレス加工への要求が高く、形状凍結性を向上さ
せるための、機械プレスや油圧プレスでは達成できな
気部品や医療用部品の製造技術が採択されている。
(1)
「車載 LED ヘッドランプ用ヒートシンクの工法転換
を実現する精密プレス鍛造複合加工技術の開発」
(実施者:公益財団法人群馬県産業支援機構株式会社、
豊田技研(群馬県)
)
い、サーボプレス機械の複雑なモーションコントロー
車載ヘッドランプの LED 化が急速に拡大している
ルへの注目が高まっている。一方、高プレス能力化へ
が、LED 素子の熱対策を担うヒートシンクは、現状、
の技術開発も進められている。サーボプレス機械の高
その製造法がアルミダイキャストのために、製造コス
プレス能力化は、サーボモータの高トルク化に対する
ト低減と量産への対応が難しい。そのため、生産性に
技術開発が主となる。
優れた新工法への転換が模索されている。申請研究開
ファイバーレーザは従来の CO2 レーザに無い特徴を
発では、申請者の独自のプレス加工技術を高度化する
有する。エネルギーコストが低く、レーザガスが不要
ことにより、ヒートシンクのフィン形状などの複雑な
となり、レンズやミラーが少ないなどの設備面でのメ
材料変形に対応できるように、プレス鍛造複合技術を
リットが多く、同加工機による切断特性などが研究さ
開発する。その結果、プレス機械1台において月産 40
れてきた。レーザ発振器の高出力化や低コスト化が進
万個の連続生産を実現させるとしている。
み需要が拡大されつつある。
MF-Tokyo2015 では、日本塑性加工学会が特別協賛
(2)
「精 密医療機器用チタン系部品加工のための高強
度、高靱性、耐熱性のある金型材料の開発」
として参加し、24 大学の塑性加工関連研究室が、研究
(実施者:タマティーエルオー株式会社、
成果などを展示した。会期中、展示会場の一角で「大
金属技研株式会社(神奈川県)
)
学研究室発表会」が開催され、展示と共に日ごろの研
医療における低侵襲治療の進歩に伴い、その器具と
Vol.57(2016)No.5
SOKEIZAI
51
平成 27 年の素形材産業年報
なる難加工材であるチタン系合金材料の成形加工部品
の「複合金型システム」を構築することで、耐圧・耐
の需要が増加している。申請事業では、それらの部品
食性に優れ高付加価値なステンレス製の高圧燃料ホー
を成形するための金型の素材として高靭性で高耐久性
ス継手のプレス加工技術を確立する。
を有する合金素材を開発する。すなわち、グラフェン
(5)「厚板小物高精度絞り部品の製造を可能とする工程
複合材を用いて新機能合金の技術開発を行い、同材料
独立式可変速押し込み複動機構を用いた押し込
の金型に耐熱性、離型性および摺動性に優れた硬質皮
み絞りプレス加工技術の確立」
膜であるボロンナイトライド成膜のプロセス技術を開
(実施者:公益財団法人滋賀県産業支援プラザ、
発する。難加工チタン系素材のプレス加工における金
日伸工業株式会社(滋賀県)
)
型への焼付き防止と長寿命化の実現を図る。
(3)「業界初、テーラードブランクの対向液圧によるプ
レス深絞りの開発」
次世代自動車の開発が進む中、自動運転搭載車両に
おいて重要な位置付けとなる ABS 装置に使用される部
品に対して、軽量化・低コスト化のニーズが高まって
(実施者:公益財団法人にいがた産業創造機構、
いる。申請研究開発では、従来、切削加工により生産
フジイコーポレーション株式会社(新潟県)
)
していたそれらの製品を、工程独立式可変速押し込み
テーラードブランク(以後 TB)の対向液圧プレスに
複動機構を用いた押し込み絞りプレス加工という新し
よるプレス深絞り技術に関して研究する。この技術は
い技術を開発することで、同部品製造のプレス加工化
プレス業界初の加工技術となる。自動車製造において
を実現する。この研究成果を活用して、ABS 装置用部
は、TB のプレス部品は採用されているが、TB の深絞
品の軽量化・低コスト化を実現する。また、研究成果
りプレス部品はまだ実用化されていない。この課題を、
は順次事業化される予定であるとしている。
対向液圧プレス技術と、接合部の脆弱性を抑えるレー
ザ溶接技術との複合した研究開発で解決する。この技
(6)
「高アスペクト比ステンレス薄肉缶、トランスファ
高速・高効率温間絞り工法の開発」
術が実用化されることにより、日本が国際競争力にお
(実施者:一般財団法人大阪科学技術センター、
いて比較優位を占めている、安全性と省エネルギー化
石崎プレス工業株式会社(兵庫県)
)
へのさらなる向上に寄与するとしている。
世界的市場拡大が確実視されている車載システム用
(4)「深絞り製品に対して、バルジ成形技術、増肉成形
電池ケースに、高強度、高アスペクト比、薄肉仕様が
技術の一体化を実現する複合金型システムの研
要求されている。ケースの材質としては、オーステナ
究開発」
イト系ステンレスが有力であるが、この材料は、従来
(実施者:株式会社加藤製作所、
国立大学法人岐阜大学(岐阜県)
)
のプレス加工技術では、破断が発生しやすく、低生産・
低効率であり、前述の加工の実現が困難である。申請
自動車産業においては、電気自動車や燃料電池自動
研究では、革新的な材料加熱と、その温度分布コント
車の開発に伴って、低排出ガス、低燃費エンジンの改
ロール技術の開発により、従来の問題点を解決し、自
良が加速している。申請事業では、「直噴エンジン用高
動車用電池ケースの高速トランスファプレスによる生
圧燃料ホース継手」の効率的加工技術を提案し、自動
産を実現するとしている。
(神 雅彦)
車分野における高度化目標(複雑三次元形状の一体加
工技術)に対応しようとしている。具体的には、標記
4. 3 学会・業界活動
一般社団法人 日本塑性加工学会
工技術に大きく貢献する技術開発と言える。技術内容
の詳細は、塑性と加工(日本塑性加工学会誌)56-659
1.学会賞の受賞動向
52
(2015)に掲載されている。
日本塑性加工学会では、毎年 6 月に優秀な技術開発
学会大賞授賞概要:動的変形補正機能を有する高精度
や研究に対して学会賞を贈賞している。最優秀賞に相
厚板レベラの開発:阿部敬三・青山亨・草薙豊・吉村
当する学会大賞には、プレス加工に不可欠なレベラの
信幸・森下素司(スチールプランテック ㈱ )
開発のテーマが選定された。これは、厚板のプレス加
プレス加工などに用いられる板材は、一般的に、コ
SOKEIZAI
Vol.57(2017)No.5
プレス加 工
イル時のそりなどをレベラによって矯正された後にプ
層との関係などが明らかにされた。
レス加工に用いられる。しかしながら、厚板(t = 30 mm
(5)村 上智広・楊明・來住裕:ねじ駆動サーボプレス
程度)の高強度鋼鈑などは矯正が極めて困難である。授
における打抜き破断振動の増大現象のメカニズム
賞技術開発では、従来のロールやレベラ構造による剛
解明,56 - 651,pp. 47 ~ 52.
性に依存した矯正方式ではなく、たわみセンサとロー
ボールねじ駆動式のサーボプレスにおける打抜き加
ル状に多数配置したクラウニング用シリンダによりア
工時の騒音と振動に関して検討された。破断振動が増
クティブにクラウニングをコントロールする方式を開
大する現象の発生要因が、計画降下量、破断荷重によ
発した(これを第 4 世代たわみ矯正技術と称している)。
る降下量、位置偏差解消モータによる降下量に起因す
種々の構造の改善、矯正制御方法の最適化などを行い、
ることが明らかにされた。
厚板の高精度レベラの開発に至っている。
(6)石 渡亮伸・平本治郎・占部俊明・桑原利彦:曲が
りハット材の捩れスプリングバック予測に及ぼす
2.研究論文の動向
金型・プレス機弾性体モデル化範囲の影響-金型
日本塑性加工学会誌「塑性と加工」に掲載された金
弾性変形考慮によるスプリングバック予測の高精
属プレス関連の研究論文を以下に列記する。近年の難
度化 第 1 報-,56 - 651,pp. 53 ~ 58.
加工性板材、難加工成形などに関する研究が多い状況
曲がりハット成形における捩れスプリングバックの
は変わらないが、2015 年では、特に、精密な穴抜き加
予測法に関して検討された。プレス成形における金型
工に関する研究が多い。従来のプレス穴あけに比べて、
の弾性変形の測定と、金型の弾性変形を考慮した FEM
もう一段高い精度の穴あけが要求されている背景があ
による板の変形計算を行ってスプリングバックを予測
るものと思われる。
している。金型弾性変形によるスプリングバック発生
(1)松野崇・佐藤浩一・上西朗弘・樋口成起・増田哲也・
清水崇行:穴広げ率と切り口の疲労特性に及ぼす穴
抜きパンチコーティングの影響,56 - 649,pp. 43 ~
48.
高張力鋼鈑の需要は高まっているが、同鋼鈑の穴抜
要因を実験で明らかにし、それと FEM 解析結果との
相関が明らかにされた。
(7)七 海元紀・水島大介・安原鋭幸・大竹尚登:金属
薄板のメカノメタラジカル接合法の開発と接合機
構の解明,56 - 654,pp. 51 ~ 57.
き加工における、パンチに TiN コーティングを施した
アルミニウム板と SPCC 板の重ね合わせ接合に対し
場合の穴抜き特性に関して検討された。検討対象と効
て、超音波溶接法が検討された。超音波の印加方式は
果に関しては、次のようになることが報告されている。
従来の方式とは異なり、振動応力を付加する方法によっ
かじりは、コーティングにより低減することができる。
た。そのときの接合現象が断面の組織観察により調べ
穴広げ率に関しては、優劣無しないしはマイナスで
られた。
ある。疲労特性は、コーティングにより改善される。
(2)中 野禅・鈴木洋平・粟飯原拓也・白鳥智美:微細
穴あけ金型の可視化技術とナノ精度位置調整金型
の開発,56 - 650,pp. 51 ~ 56.
(8)四 宮徳章・白川信彦:スライドモーション制御に
よる角筒インパクト成形の高精度化,56 - 654,pp.
58 ~ 62.
アルミニウム角筒のインパクト成形において、パン
(3)白 鳥智美・鈴木洋平・中野禅・加藤正仁・楊明・
チのひずみ計測と高速度カメラによる撮影により、不
小松隆史:微細穴あけ加工における結晶粒径の切
良発生原因を明らかにした。その上で、サーボプレス
り口面への影響,56 - 652,pp. 57 ~ 62.
のモーション制御により、それらを解決する方法を提
(4)白鳥智美・中野禅・鈴木洋平・加藤正仁・佐藤直子・
案した。
小松隆史・楊明:オーステナイト系ステンレス鋼
(9)加藤浩三・近藤一義・中村悟・柿田亨・余郷時康:
SUS304 の微細穴あけ加工における加工影響層への
簡易対向ダイスせん断法を適用した下穴せん断条
結晶粒径の影響,56 - 657,pp. 63 ~ 68.
件が穴広げ性に及ぼす影響,56 - 656,pp. 58 ~ 62.
板厚 100 µm の SUS304 薄板に対する直径 80 µm の
車両ホイールディスクの穴広げ加工における穴広げ
マイクロパンチによる穴あけ特性に関して検討された。
性を向上させるために、下穴抜きに簡易的な対向ダイ
ナノステージを組み込んでパンチとダイ間のクリアラ
スせん断法を利用した場合の効果に関して検討された。
ンス誤差を調整可能な金型の開発、素材の結晶粒径と
加工条件と穴広げ性との関係が明らかにされた。
パンチ荷重や切り口面性状との関係、および加工影響
Vol.57(2016)No.5
SOKEIZAI
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平成 27 年の素形材産業年報
(10)掛川泰・清水徹英・鷺坂芳弘・楊明:マイクロ金
一般社団法人 日本金属プレス工業協会
型の表面テクスチャリングとそのドライ摩擦・摩
耗挙動のその場観察,56 - 657,pp. 69 ~ 74.
平成 27 年度の本協会の主な活動は次のとおり。
数十 µm ~ 1 mm 程度のマイクロ製品のプレス加工
のための金型構造に関して検討された。特に、ドライ
1.人材教育・技術向上活動
加工時の金型表面特性に関して注目し、表面に DLC に
①金属プレス加工技術に関連した研究会の開催
よるマイクロテクスチャを形成した場合の摩耗粉の挙
・プレス加工・基礎講座
動やテクスチャの耐久性などに関して調べられた。耐
・「ファインブランキング専業メーカーの進化する
久性を向上させるテクスチャ構造などが提案された。
(11)平本治郎・卜部正樹・石渡亮伸・占部俊明・吉田総仁:
スプリングバック駆動応力の特定によるハイテン
成形部品の寸法精度向上,56-658,pp. 43 ~ 48.
成形技術」
・
「プレス加工の「見える化」
・
「測れる化」
」
・ハ イテン材の技術動向と冷間金型・表面処理の
諸特性
980 MPa 級高強度鋼板の自動車骨格部品などのプレ
・自動車軽量化の柱・ハイテンを学ぶ(実習)
ス加工におけるスプリングバックの発生状況について
・千葉:新日鐵住金 ㈱ 君津製鐵所 工場見学会
応力差を利用して要因分析し、スプリングバックを抑
②
(独法)高齢・障害・求職者雇用支援機構 高度ポリ
制する方法が検討された。従来の下死点応力を用いる
テクセンターとの共催で技術改善セミナーの開催。
方法に比べ、分析精度が向上することなどが明らかに
③研究部会の開催
された。
・
「ホ ットスタンピング研究部会」
( 平成 25 ~ 27 年
(12)安 部 洋 平・ 森 謙 一 郎・ 畑 下 文 裕・ 柴 孝 志・
度の 3 年間)
Witthaya Daodon:潤滑剤ポケットを有するダイ
を用いたステンレス鋼容器のしごき加工におけ
2.技術開発活動
る 耐焼付き性の向上-潤滑剤ポケットを有する
サポーティングインダストリー事業
サーメットダイを用いたしごき加工 第 1 報-,
・「高張力鋼板によるモジュール部品軽量化を実現さ
せるプレス加工・ハイブリット溶接複合プロセス
56 - 658,pp. 60 ~ 66.
電気自動車用などのステンレス深絞り容器のプレス
の構築」
(平成 26 ~ 28 年度の 3 年間)
加工の際のダイ焼きつきを防止する方法として、TiCN
サーメットダイの利用とその表面にショットピーニン
3.環境・安全・品質向上活動
グとラッピングを施して、潤滑剤ポケットを形成する
① ISO14001 認証取得支援事業
方法が検討された。焼きつきが防止できることが、各
・金 属プレス企業をはじめ、鋳造、鍛造、ダイカ
スト業界など、現在 65 社が参加。
種の実験により明らかにされた。
(13)岩田隆道・岩田徳利・堀田昇次・鈴木智博・鈴木
克幸・栗山幸久:ひずみ速度を考慮した加工硬化
・環 境管理責任者や内部監査員のサポート研修会
等を年に 2 回開催している。
則に関する考察と薄鋼板のスライドモーション加
② ISO9001 認証取得支援事業
工の解析,56 - 658,pp. 81 ~ 86.
・18 社が参加。
サーボプレスによるスライドモーションプレス加工
③シンポジウムの開催
における成形解析において、ひずみ速度を考慮した加
・安 全・環境シンポジウム「防災対策から事業継
工硬化則を用いる方法が検討された。解析結果と実験
続へ」を愛知県名古屋市にて 2 月に開催。
結果との比較が行われ、そのシミュレーション精度な
4.広報・交流活動
どが議論された。
(神 雅彦)
参考文献
・「金 属プレス加工技術展 2015」を東京ビックサ
1 )日 本金属プレス工業協会:ジャムサニュースレター,
90 ~ 93(2015).
2 )日本鍛圧機械工業会:会報 METAL FORM,53 - 56
(2015)
3 )日本塑性加工学会:塑性と加工,56,648 ~ 659(2015).
4 )日刊工業新聞社:プレス技術,53,1 - 12(2015).
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SOKEIZAI
①展示会開催
Vol.57(2017)No.5
イトにて開催。
・関連業種を含め 43 社が参加。
・併 設セミナーの特別講演会「自動車用プレス成
形技術の将来を探る」では延べ 400 名が参加。
プレス加 工
②広報活動
2.プレス特定自主検査(MF スーパー特定自主検査)
・機関誌「ニュースレター」を年 4 回発刊。
2015 年 1 月 1 日よりスタートした MF スーパー特自
③国際交流事業
検は、厚生労働省で定められた動力プレス機械の定期
・国際シートメタル協議会(日、米、英、仏、独、
自主検査指針を基本とし、独自の検査項目を加えると
蘭、中の 7 カ国)による代表者議がフランス・シャ
ともに労働安全衛生規則に基づく機械の安全や管理体
ンティイで開催
制の項目を加えたもので、作業者の安全と機械の保全
を図るものである。
一般社団法人 日本鍛圧機械工業会
高い技能を持つ鍛圧機械製造会員メーカーのサービ
ス員により実施することで、より安定した機械の稼働
平成 27 年度の主な活動は次のとおり
や安全な作業環境を目指し、機械危険情報の通知後の
労働災害の低減を狙うことを目的として、厚生省労働
1.MF-Tokyo2015 プレス・板金フォーミング展
基準局ならびに中央労働災害防止協会のご支援ご協力
MF-Tokyo2015 は 7 月 15 日より 18 日までの 4 日間
で進めている。
東京ビッグサイトで開催され、出展社数 223 社団体、
小間数 1,304 小間と過去最大規模で行われ、来場者も
3.MF 技術大賞
30,461 人と来場者数で初の 3 万人越えとなった。
MF 技術大賞は鍛圧機械を使った鍛圧塑性加工技術
講演会・セミナも前回同様日本塑性加工学会教授陣、
の実力を高め、Metal Forming に不可欠な鍛圧機械、
レーザ加工学会教授陣、ねじ・ばね工業会各教授陣、
製品加工、金型、システム、素材、組立、研究の 7 要
日本鍛圧機械工業会会員の技術陣のご支援によって開
素を組合せた「ものづくり総合力」を顕彰し、鍛圧機
催された。また、日本塑性加工学会研究室は展示と併
械の良さを最終製品の良さで証明するためメーカーと
せ研究発表会も実施された。
ユーザーなどの連合体を表彰している。
協賛団体ブースとして、日本工作機械工業会、日本
今回は 2016 年 1 月 1 日より 7 月 31 日まで募集し、大
ロボット工業会も新たに加わり、鍛圧関係以外の多く
賞、技術優秀賞、新たに奨励賞を新設し、多くの応募
の来場者が各ブースに立ち寄った。
を期待している。
鍛圧機械(レーザ加工機、プラズマ加工機含む)を使
用した鍛圧塑性加工技術の集大成として、MF 技術大
賞は鍛圧機械の世界最高級の大賞と考えている。
Vol.57(2016)No.5
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