☆ ト ピ ッ ク ス① 世界的に需要が拡大する農薬関連企業に注目 作成者 1. ◎ 農薬を用いることで、労働時間の短縮や安定した収穫が見込まれる ◎ 新興国を中心に、農薬の需要は増加傾向 ◎ 日本の農薬関連企業はニッチ分野に強み 柳葉夕佳 農薬の有用性 「農薬」とは、一般に農作物を害する菌や害虫の防除に使用される薬剤を指し、代表的なものに殺虫剤、 殺菌剤、除草剤などがある。人体に悪影響があるというイメージを持たれがちだが、医薬品のように厳し い審査が行われ、新規化合物の発見から上市まで 10 年以上の年月と 40~50 億円の開発費が必要となる。 農薬は少ない労力で安定した収穫を得るために農業に欠かせないものとなっており、日本植物防疫協会の 調査では、農薬を使用しない場合の稲・大豆の収穫量は農薬を使用した場合に比べ約▲30%、きゅうり・ キャベツは約▲60%、りんごなどの果樹に至っては、収穫量は更に減少する結果が示された。また、労働 時間に関しては、1949 年に 10 アール当たり 50.6 時間かかっていた水田の除草作業は、2004 年には約 1.6 時間まで短縮されるなど、労働時間の短縮に貢献している。 2. 世界の農薬需要は増加傾向 <図表 1>世界の農薬市場の地域別売上推 2011 農薬年度(2010 年 10 月~2011 年 9 月)の日本の農薬市場規模は約 3,300 億円で、農家の高齢化や安価な 外国産農産物の流入などによる農業生 産額の減少から、横ばい~漸減傾向に ある。しかし世界に目を向けると、2012 年の世界農薬市場規模は約 472.6 億ド ル(80 円/ドル換算で約 3.8 兆円)で、 需要は増加傾向にある<図表 1>。特 に人口増加が著しいアジアや中南米を はじめとした新興国での需要は旺盛 で、所得向上により農薬の使用量を増 やしていると考えられる。 農作物は食糧としてだけではなく、 肥料やバイオ燃料、食生活向上で肉食 が好まれるようになると飼料としての 需要もある。農業生産額の増加に付随 して農薬にも中長期的な需要拡大が見 込まれることから、国内農薬関連企業 はグローバル化を推進している。 百万ドル 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 2004 2005 2006 北米 2007 中南米 2008 2009 欧州 2010 アジア 2011 2012 年 他 (出所) アグロ カネショウ決算説明資料より当社作成 このレポートは投資の判断となる情報の提供を目的としたものです。銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身の判断でなさるようにお願い致し ます。なお、株式は値動きのある商品であるため、元本を保証するものではありません。 ☆ ト ピ ッ ク ス① 3.日本の農薬関連企業と得意分野 世界の農薬関連企業は大規模化が進んでおり、日本最大の農薬企業である住友化学(4005)でも健康・農 業関連事業の売上高は 2,626 億円(前 13/3 期)と、売上高 1 兆円を超えるスイス・シンジェンタなど外資系 企業には及ばない。農薬市場内で規模の大きなトウモロコシ、麦、大豆用農薬は大規模な外資系企業が占 めているため、日本の農薬関連企業は水稲、野菜、果樹用などの比較的ニッチな領域に注力している。野 菜・果樹用農薬は品種ごとに申請・登録が必要で個々の売上規模も小さいため、外資系企業は積極的に参 入していない。また、日本が得意とする水稲用農薬は稲作文化のあるアジア圏で好評である。 日本の農薬関連企業は<図表 2>に示したように、出資関係や取引関係で得意分野、不得意分野を補完し あって棲み分けを行っているのが現状である。新規化合物の複雑化、審査の厳格化による創薬難度の上昇 や海外展開などを考えると、今後は再編の必要性も意識されよう。 6 月に発表された国連の世界人口展望によると、現在約 70 億人の世界人口は、2050 年に 96 億人、2100 年には 109 億人に達すると予想されている。だがFAO(国際連合食糧農業機関)が調べた世界の耕地面積 は、2000 年 15.2 億 ha、2009 年 15.3 億 ha とほとんど変化していない。耕地面積の大幅な増加が見込めな いなか、増加する人口により効率よく安定的に食糧を供給するため、農薬需要は今後も拡大しよう。世界 的な農薬需要増加を取り込んだ成長が期待される農薬関連企業に注目したい。 <図表 2>日本の主な農薬関連企業と出資関係 アグロ カネショウ 矢印は出資関係、サンケイ化学は日証金信用新規売り停止措置 4955 銘柄 日産化学工業 日本曹達 日本農薬 サンケイ化学 4021 4041 4997 福4995 大塚化学 SDSバイオテック 石原産業 4578・大塚HD 4952 4028 住化武田農薬 住友化学 4005 三井化学アグロ 三井 クロップライフ 三共アグロ 住友化学グルー プ 三井化学 4183 三井化学グループ 協友アグリ BASFアグロ 外資系 デュポン ジャパン バイエルクロップ サイエンス ダウアグロ サイエンス シンジェンタ ジャパン 北興化学工業 クミアイ化学工業 4992 4996 系統(JA)主体 全農 (出所) 日本農薬会社案内資料を参考に当社作成 <参考銘柄> 株価(7/18) 住友化学(4005) 350 円 日産化学工業 (4021) 1500 円 日本曹達(4041) 593 円 日本農薬(4997) 1061 円 コメント 石油化学メーカー。健康・農業関連事業の売上高構成比は約 13%。販売網を活かし、海外で除草剤など出荷伸ばす。 日本初の化学肥料製造会社。農薬化学品部門の売上高構成比は 約 19%。水稲用除草剤「アルテア」、殺ダニ剤「スターマイト」 に注力。 クロールアルカリなど化成品に強い。農薬化学品事業の売上高 構成比は約 30%。殺菌剤「トップジンM」がロングセラー。 農薬専業。園芸用殺虫剤「フェニックス」、水稲用殺菌剤「ブイ ゲット」が主力。海外展開に注力、100 カ国以上で販売する。 このレポートは投資の判断となる情報の提供を目的としたものです。銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身の判断でなさるようにお願い致し ます。なお、株式は値動きのある商品であるため、元本を保証するものではありません。
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