訪日外国人旅行の増加で成長期待が高まる観光産業

☆ トピックス
訪日外国人旅行の増加で成長期待が高まる観光産業
投資情報部
石松由布子
◆訪日外国人客数は増加傾向
図 1:国際観光客数の推移
(100 万人)
図 2:訪日外国人客数の推移
(万人)
1200
2013 年 に
1,000 万人
達成!
1100
1000
900
800
700
600
500
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
400
出所:UNWTO より投資情報部作成
出所:JNTO より投資情報部作成
観光産業は、旅行業や宿泊業に加え、飛行機や鉄道などの運輸業、飲食業、小売業など裾野が極めて広
い産業です。経済や雇用への効果も大きく、各国でも国・地域にとって重要な産業と捉えられています。
国際観光客数は増加しており世界の観光市場は今後も拡大が見込まれていることから、政府は 2003 年か
ら『ビジット・ジャパン・キャンペーン』を開始。①アジア地域の中間所得層の増加
にしたビザ発給要件緩和や免除措置
③為替の円安基調
④LCCの就航
②同地域を対象
などを背景に日本を訪れる
外国人も増えつつあります(図 1、2)
。
◆訪日外国人旅行の経済波及効果に期待
億円
図 3:訪日外国人の旅行消費額
万人
16000
30.6%増
14000
12000
旅行消費額(左軸)
11,490
14,167
10,846
10000
8000
1400
約 30 万人の雇用を生み出したとの試算をまとめ
1200
ました。
1,036
800
861
6000
4000
人を超えた 2013 年の経済波及効果は 3.3 兆円で、
1000
8,135
836
622
24%増
訪日外国人客数(右軸)
2000
0
2011
2012
2013
2013 年は、訪日外国人客数の伸びが前年比 24%
だったのに対し、旅行消費額は同 30.6%増(図 3)。
また、足元の 2014 年 1-3 月期の訪日外国人 1 人
600
あたりの旅行支出は 149,523 円で、前年同期比
400
16.5%増となりました。
200
2014 年 10 月からは免税対象品目が全品目に拡大
0
2010
観光庁は、訪日外国人客数が政府目標の 1,000 万
1600
されるため、今後は幅広い業種で支出拡大が期待
されます。
出所:観光庁より投資情報部作成
このレポートは投資の判断となる情報の提供を目的としたものです。銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身の判断でなさるようにお願い致し
ます。なお、株式は値動きのある商品であるため、元本を保証するものではありません。
☆ トピックス
◆経済効果の大きいMICE(マイス)にも注力
訪日外国人旅行を促進する手段として、MICEが注目されています。MICEとは
Meeting
(企業会議・研修)
、Incentive(報奨・招待旅行)、Convention(国際会議・学会)、
Event/Exhibition(イベント・展示会・見本市)の頭文字をとったものです。
国際会議や学会、国際イベントの開催は、①国内外からたくさんの人が集まる ②会議開催、宿泊、飲
食など消費の裾野が広い
③観光旅行に比べて滞在期間が長いため消費額が増える
など地域への経済
波及効果の大きさが特徴で、一般観光の 7 倍の効果があるとも言われています。
観光庁は 2010 年を「MICE元年」と位置づけ、誘致を積極的に推進。2013 年 6 月にはグローバルMI
CE戦略都市として東京都、横浜市、京都市、神戸市、福岡市の 5 自治体、強化都市として大阪市、名
古屋市の 2 自治体を選定し支援するなど、さまざまな取り組みが進んでいます。
◆観光立国実現に向けた具体的な計画が決定
政府は 6 月 17 日に観光立国推進閣僚会議を開き、東京オリンピックが開催される 2020 年に向けて訪日
外国人客数を 2,000 万人に増やすための行動計画を改定しました。
『2020 年に訪日外国人客数 2,000 万人達成』に向けた行動計画(一部要約)
・現在、短期滞在の訪日ビザを免除している国・地域は66か国・地域。
2014年以降、インドネシア、フィリピン、ベトナムも免除を検討
入国し やすく
・2016年度までに空港での入国審査にかかる待ち時間を20分以下に短縮
することを目指す
・2015年度に、成田・関西空港で出入国手続きを迅速にする優先レーン
設置を目指す
・成田空港―羽田空港間の移動をスムーズにする「都心直結線」を新設
空港のアクセ
・羽田空港の国際線発着枠の拡大計画を踏まえ、羽田への「新空港線」
ス改善
の新設を検討
・無料公衆無線LAN環境の整備促進など、外国人旅行者向け通信環境
の改善
滞在しやすく
・外国人富裕層を対象に観光目的で最長1年程度滞在できる制度を創設
・分かりやすい地図や案内標識、公共施設内での外国語案内を拡充
消費を促す
・2020年に向けて免税店を全国で10,000店規模へ倍増
・海外クレジットカードで利用できるATMの設置を促進
M I C E の 誘 ・日本をMICE適地として優位性を海外に発信
致 ・ 開 催 の 促 ・グローバルMICE戦略・強化都市の7都市への支援を深化
進
・ *ユニークベニューの活用を含むMICEの受入環境を整備
*ユニークベニューとは、特別な会場のこと。歴史的建造物、文化施設や公的空間などで会議やレセプションを開催すること
により特別感や地域特性を演出できる。
東京オリンピック開催に向けたインフラ投資も加速する中、訪日外国人客を増やすためのさまざまな取
り組みが国を挙げて進んでいます。恩恵を受ける企業や業界の動向が注目されます。
このレポートは投資の判断となる情報の提供を目的としたものです。銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身の判断でなさるようにお願い致し
ます。なお、株式は値動きのある商品であるため、元本を保証するものではありません。