2001 年度 卒業論文 ハイブリッドロケットの回収方法に関する研究 北海道工業大学工学部 応用電子工学科 6-4-M-98-105 山下 指導教員 慎太郎 佐鳥 6-4-M-98-114 新 助教授 吉田 亮介 目次 第1章 序論 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 はじめに パラシュートとは 観測ロケット 北大のハイブリッドロケット 研究目的 ・・・・・1 ・・・・・1 ・・・・・1 ・・・・・1 ・・・・・1 ・・・・・1 第2章 パラシュート EM 設計 2.1 傘体の設計 2.2 生地の選定 2.3 吊索の選定 2.4 試験用縮小サイズ型フェアリング設計 2.5 フェアリングの製作 ・・・・・1 ・・・・・1 ・・・・・1 ・・・・・1 ・・・・・1 ・・・・・1 第3章 パラシュート PFM 設計 3.1 設計 3.2 パラシュートの素材の選定 3.3 ハイブリッドロケットとの噛み合わせ ・・・・・1 ・・・・・1 ・・・・・1 ・・・・・1 第4章 パラシュートに関する試験結果 4.1 風洞試験 4.2 フェアリング付 EM パラシュート開傘試験 4.3 PFM 開傘試験 4.4 引っ張り試験 ・・・・・1 ・・・・・1 ・・・・・1 ・・・・・1 ・・・・・1 第5章 飛行解析 5.1 概要 5.2 飛行シミュレーション原理 5.3 フォームの外観 5.4 飛行解析の結果 ・・・・・1 ・・・・・1 ・・・・・1 ・・・・・1 ・・・・・1 第6章 本試験 6.1 大樹町での実験詳細 6.2 航空法 6.3 大樹町多目的航空公園について ・・・・・1 ・・・・・1 ・・・・・1 ・・・・・1 第7章 結論 ・・・・・1 参考資料 ・・・・・1 謝辞 ・・・・・1 第1章 序論 第1章 序論 1.1 はじめに ロケットについて考えるとき、たいていの人はスペースシャトルや衛星を地 球の周回軌道に打ち上げる類のものを考えるだろう。スペースシャトルなどの 有人飛行ロケットを除くと、ロケットには目的によって2つの種類に分けられ る。1つは人工衛星や惑星探査機を軌道に乗せるための「衛星打ち上げロケッ ト」(Satellite Launch Vehicles)、もう1つは搭載した観測器等を 50∼450km の高度へ運ぶ「観測ロケット」(Sounding Rockets)がある。 大学や企業の研究者たちが宇宙空間や微重力空間で研究や実験を行うにはど ちらかのロケットに実験機器や観測機器を搭載する方法が考えられるが比較的 安価な観測ロケットの場合にも多額の費用がかかる。現状では、NASA などが 打ち上げる観測用ロケットに頼るしかない。しかし、NASA の観測用ロケット の打ち上げには、500万ドル(各ロケットが宇宙に運ぶことができる小型機 器1つにつき少なくとも20万∼30万ドル)もの費用がかかり、ロケットへ の搭載の順番待ちリストは3年先まで埋まっている。 そこで、次世代型の宇宙輸送システムとして小型完全再使用打ち上げシステ ムの開発を行うことが求められている。 このシステムの開発要素には広範囲な分野の技術が必要なため、国や大学、 企業などが協力して研究開発を行う必要がある。大学では宇宙工学研究や技術 者の育成などが求められている。 北海道工業大学では北海道大学と共同で宇宙開発事業団(NASDA)の委託の もと、ハイブリッドロケットを使った小型再使用型打ち上げシステムの開発を 行っている。開発の要素は、ハイブリッドロケット、GPSを使った機体位置 の補足、それによる誘導・制御技術、有翼飛翔体による滑空・帰還技術、およ びパラフォイルを用いた回収技術である。 今回の研究の目的は、北海道大学が開発したハイブリッドロケットの打ち上 げ実験での回収に使用するパラシュートの製作、また北海道大樹町からのロケ ット打ち上げシステムを構築することである。 1.2 パラシュートとは (1)歴史 パラシュート(parachute)は洋傘状の構造物で、飛行中の機体から物資の投 下あるいは乗員の降下に際し、その速度を小さくするに十分な抵抗を与えるた めのもので、西暦 1800 年ごろ仏人ルノルマン(LENORMAND)、モンゴルフ ィル(MONGOLFIER)等の気球関係の先覚者によって作られたものである。 そしてこの構想は15世紀のはじめイタリアのレオナルド・ダ・ビンチ (LEONARDO da VINCI)の手記の中に書き残されている。また、実際に作っ て利用したのは伊人ファウスト・ベランチオ(FAUST VERANZIO)で方形枠 に帆布を張り四隅から吊索を体に結び塔から飛び降りている。 広く使用されるようになったのは第一次世界大戦中英国が対潜哨戒等の目的 で船舶にとりつけた繋留気球乗員の保安用として利用したのにもとづいている。 わが国では当時英国駐在中の海軍大尉桑原虎雄(後中将)および海谷優両氏が、 大正7年帰朝に際し繋留気球とともに落下傘を譲り受け、横須賀航空隊で実験 を行ったのが始まりで、落下傘をという用語も定めたられた。しかし、一種の 興行としても明治23年に英人スペンサー(SPENCER)が気球を携えて渡来 し、上野公園や横浜で飛揚し、これから落下傘による降下を行っている。 (2)パラシュートの特性 空気抵抗を利用する減速体(パラシュート)には極超音速および超音速を対 象とした高速用のものと、主として亜音速で用いられる低速用のものとがある。 ① 高速減速体 大頂角円錐体、半球体、アポロカプセル状物体、固定あるいは展開フレヤ付 き物体、吸込みないし供給ガスで展張するバルートや展張バック付きエアロセ ルなど、種々のものが開発されている。パラシュートにも超音速用のものがあ り、リボン型やガイドサーフェス型が利用されている。これら高速減速体のマ ッハ数 M の対応した抵抗係数 CDP の変化を図 1.2.1 に示す。ただし、CDP は減 速 体 の 気 流 中 の 最 大 断 面 積 Sp を 基 準 と し た も の で あ る 。 図 1.2.1 高速減速体のマッハ数に対応した抵抗係数 CDP ② 低速減速体 パラシュートが広く利用されており、代表的なものの特性を表 1.2.1 に示す。 CD0 はパラシュート傘体面積 S0を基準とした抗力係数、D0はパラシュート公称 直径で D0=(4S0/π)1/2 (1.2.1) で定義される。 パラシュート開傘時の最大荷重 Fmは Fm=1/2ρV2 CD0 S0CX (1.2.2) ρ:空気密度 V:飛行速度 で評価される。 CX は開傘荷重係数で表1.2.1に示す。 表 1.2.1 代表的なパラシュートの特性 構造形状 形式 平面 断面 DC 開傘 抗力 開傘荷重 安定性 開傘最大 / 形状 係数 係数 CX 横揺振動角 利用速度 D0 D P / D0 CD0 (∞重量) 〔deg〕 〔km/h〕 1.8 ±10∼±40 300∼500 降下 1.8 ±10∼±30 300∼500 降下 1.6 ±10∼±15 300 降下 1.4 ±10∼±15 400∼550 降下 平面 1.00 円形型 適用 0.67∼ 0.93 円錐型 ∼ 0.75 ∼ 0.70 範囲 0.80 0.75 0.70 0.95 ∼ 0.90 0.62 半球型 0.71 0.66 ∼ 0.77 傘縁 0.81 延長型 0.66∼ 0.75 ∼ 0.70 0.90 0.45 ドローグ降 平面円形 1.00 0.67 ∼ 1.05 0∼±3 350∼400 下・航空 リボン型 0.50 0.30 半球 0.62 0.62 0.46 1.00 型 0.67∼ 1.30 0∼±2 1000∼ 超音速 2500 ドローグ 0.56 ∼ 0.70 1.00∼ ∼ リボン型 リングスロット 機減速 航空機減 1.05 0∼±5 300∼400 速・荷物 0.65 引出し 0.75 リングセイル型 1.16 0.69 ∼ 1.10 ±5∼±10 300∼500 降下 1.30 ±10∼±15 1500 降下 0.90 0.52 ディスギャッ 0.73 0.65 ∼ プバンド型 0.58 0.30 超音速 リプレスガイ 0.66 0.63 ∼ ドサーフェス型 0.34 1.40 0∼±3 1000∼ ドローグ・ 2000 ※DP は気流中のパラシュートの最大断面積 Sp より Dp=(4S0/π)1/2で定義される平均的断面直径 パイロット 1.3 観測ロケット 観測ロケットは、宇宙空間に科学観測機器や実験機器を打ち上げて科学観測 や実験を行う簡易的な手段の一つである。現在の宇宙開発の主流である、衛星 打ち上げ用ロケットにより打ち上げられた衛星による観測や実験に比べ、観測 ロケットはロケットの開発史上では初期に手掛けられたものであるが、コスト や開発期間の点などからもその有効性は失われておらず現在も打ち上げられて いる。 1.3.1 システム概要 観測ロケットのシステムは、衛星打ち上げ用ロケットの場合と基本的に違い はないが、機体や地上系設備など、各々のサブシステムが簡素な構成になって いる。ロケット機体構成は主に推進部・姿勢安定部・頭胴部の三つからなる。 このうち推進部は固体ロケットエンジンが主流であり、観測ロケットの場合1 段式または2段式である。姿勢安定部としては、尾翼による空力安定方式が多 く、さらに尾翼の取付角の設定でスピンを併用するというように簡素である。 ロケットの飛翔分散を少なくしたり、観測・実験機器の回収場所をできるだけ 射点の近くにするといった積極的な飛行軌道の制御をすることも行われており、 こうした場合は可動翼などの簡易的な制御装置が用いられている。 頭胴部にはロケットを打ち上げたり、観測・実験を行うのに基本的に必要と なる計器(テレメータ、レーダトランスポンダ、電源、タイマなど)からなる 基本計器部と、実験を行ういくつかのミッション機器からなるペイロード機器 部が搭載される。そのほか頭胴部には、ミッションに対するサービスとして、 ノーズコーンの回答機構や、推進部との切り離し機構、スピン減速機構(ヨー ヨーデスピナなど)がミッションに応じて用意される。また、宇宙空間での観 測や実験において特に姿勢制御が必要となる場合には、ガスジェットなどと姿 勢制御電子機器からなる姿勢制御モジュールが搭載される。さらにパラシュー トなどの回収装置を付加することで、ロケットや実験機器の再利用や実験生成 物の取得、画像記録などデータの回収を行うことができる。 地上設備系には、発射台・発射管制などからなる組立発射設備や、テレメー タ受信・レーダなどからなる追跡計測設備や、指令管制設備がある。これらの 地上系設備はロケット機体構成に合わせて極力簡素化されており、日本では宇 宙開発事業団(NASDA)の種子島、宇宙科学研究所(ISAS)の内之浦のほか に、気象庁の岩手綾里の気象観測ロケット打ち上げ場や極地研究所の南極昭和 基地のロケット打ち上げ場に設置されている。 1.3.2 回収装置を搭載したロケット 回収装置を搭載したロケットの例として、宇宙科学研究所(ISAS)の観測ロケ ットである S-520-22 号機の回収装置について以下に示す。 S-520-22 号機の概要 S-520-22 は中・高層観測シングルロケットで、XUV 多層膜望遠鏡を搭載し、 太陽コロナ高温プラズマを撮像することで、速度場及び温度を観測することを 主目的とした機体である。また、頭胴部に搭載した回収装置により、基本計器 部、及び姿勢制御部を回収する。 ロケットの構成は、上記で述べた頭胴部の他に、モータ部、テレメータ、計 装、レーダトランスポンダ、簡易型コマンドデコーダ、電波高度計、タイマ点 火系、集中電源、計測装置、姿勢制御系、サイドジェット、地磁気姿勢計、XUV ドップラー望遠鏡などからなっている。 (1)諸元 重量、モータ諸元を表に、全体図、頭胴部、モータ部をそれぞれ図に示す。 表 1.3.1 全機重量諸元 燃焼前重量 2353 [kg] 燃焼後重量 750 [kg] 表 1.3.2 頭胴部重量諸元 開頭コーン 30.3 [kg] 観測機器搭載構造 2.5 [kg] モータ接手部 24.5 [kg] 回収装置部全重量 239.9 [kg] 観測計器 64.9 [kg] 分離バンド類 3.5 [kg] 合計 365.6 [kg] 表 1.3.3 回収装置部重量諸元 回収部構造重量 110.2 [kg] パラシュート部合計 53.3 [kg] 気密部搭載計器合計 48.9 [kg] 姿勢制御部重量 27.5 [kg] 回収装置部全重量 239.9 [kg] 表 1.3.4 モータ諸元 全長 6053 [mm] 外径 524 [mm] 薬種 BP−202J 重量 1610 [kg] ノズルプレート径 161 [mm] ノズル開口比 7.00 最大内圧 57.0[kgf/cm2] 最大推力(真空換算) 18.9 [t] 平均推力(真空換算) 14.6 [t] 有効燃焼時間 28.7 [s] 全燃焼時間 35.7 [s] 比推力(真空換算) 264.8 [s] 推進薬 (2)回収部構成 回収装置部は、外径 530 [mm]、全長 1595 [mm]で、基本計器部、姿勢制御 用電源部、エンジン部(CN−SJ)及び浮遊バック、パラシュート収納部より構成 される。 回収装置部の概要を図 1.3.4 に示す。 (3)パイロット・メインシュート パラシュート系は、パイロット(ドローグ)シュートとメインシュートからなっ ている。パイロットシュートは、本体の姿勢を所定の方向に向けるとともに、 メインシュートを引き出す役目を果たす。このシュートは、これが収納されて いる気密容器の 1.6 [km/cm2]に加圧された空気によって約 22 [m/sec]の速度で 放出され 1.3 [kg]のキャップによって引き出される。キャップは、その放出速度 の運動エネルギーによってパイロットシュートから切り離される。 メインシュートは、本格的減速に用いられたパイロットシュートによってメ インシュート収納ケースが取り外された後放出される。パラシュートの開傘衝 撃を出来るだけ下げるため収納ケースとしてスリーブが用いられる。 一度に開傘してしまうと大きな開傘衝撃荷重となるのでリーフィング(口元を ロープで小さく絞る状態)を一段階用いる。リーフィングは、リーフィング時と 開傘時の開傘衝撃が同程度になるように設定される。 パラシュートの諸元、構成を表 1.3.5、図 1.3.5 にそれぞれ示す。 表 1.3.5 パラシュート諸元 メインシュート ドローグシュート 収納袋 形状 リングスロット傘 傘体表面積 45.45 [m] 傘体直径 7.64 [m] ゴア数(傘体布のパーツの数) 28 セクション枚数 8 吊索本数 28 吊索長 7.64 [m] 排気孔径 600 [mm] 排気孔吊索長 550 [mm] 排気孔一辺の幅 67 [mm] 傘線一辺の幅 855 [mm] 傘線円周長 23.94 [m] 主傘連結策長 2.0 [m] 連結策本数 2 リーフィングライン長 4.78 [m] リーフィングカッターポケット数 2 形状 リブレスガイド傘 パネル枚数 8 傘体直径 1.5 [m] 吊索本数 8 吊索長 2.2 [m] ドローグシュート連結策長 2.0 [m] 形状 スリーブ方式 スリーブ長 3.5 [m] 収納袋連結策長 3.0 [m] 1.4 北大のハイブリッドロケット 1.4.1 フライトモデルの概要 図 1.4.1 にフライトモデルの概観および重心位置と空力中心位置を示す。全重 量は現段階で 11.6 [kg]である。当初の予想の 10[ kg]を超える結果になった。エ ンジニアリングモデルの試験結果から、10 [kg]の機体を高度 500[m]まで打ち上 げるのに必要な液体酸素量を 500 [g]と見積もっていたが、フライトモデルでは 1 割増しの 550[g](燃焼時間 3 秒)の液体酸素を充填できるような十分なタンクの 容量を確保した。今後の飛行性能はこの条件で算出されたものである。重心位 置はロケット先端から 962 [mm]、空力中心位置は 1297 [mm]である。CD 値は 90 [m/s]で飛行するときに 0.556 となる。飛行計算では全ての速度領域で CD は この値を用いている。 1599.5 89 962 1339 Center of gravity Center of pressure 11.6 kg 図 1.4.1 ロケットの外観諸元 主要諸元 全長 直径 総重量 平均推力 酸化剤 加圧方式 固体燃料 1599.5[mm] 89[mm] 11.6[kg](当初は 10[kg]) 471[N] 液体酸素 (最大充填量:600[g]) ヘリウムガスを市販の小型ボンベに充填し、ブローダウン方式 で LOX を加圧 PMMA 製円柱ブロックを使用。グレイン形状は図1.4.2に 図示。(ブロック数 8 個 搭載量:435 [g]) PMMA Spacer Copper Tube Injector Exhaust LOx Ablator PMMA Fuel Block Nozzle 図 1.4.2 固体燃料形状概略図 要求事項 フライトモデルの設計において必要となる主な条件を以下に示す。 到達高度 最高到達高度が 600[m]以下となること 回収方法 パラシュート開傘により回収 搭載ペイロード CANSAT 機体形状 今年 3 月に打上げが行なわれた東京都立科学技術大学の 小型ロケットの空力特性を活用するため機体形状を可能な 限り相似形とする。 1.4.2 設計の流れ フライトモデルのエンジン構造は基本的にエンジニアリングモデルと同じで ある。エンジニアリングモデルで必要な項目を試験し、その結果を反映してフ ライトモデルのエンジン設計を行なう。強度計算では安全性と軽量化の両面を 考慮し、安全率を 3(安全性が重視される部分では 3 以上)とする。 1.4.3 エンジン部分の構造概要 エンジンの基本的な構造はエンジニアリングモデルと同じである。燃焼室に は銅、燃焼室を保護するためのアブレーターにはベークライト、ノズルにはグ ラファイト、その他の主要部分はアルミ合金 A2024 を使用している。エンジン に使用するバルブやヘリウムタンク、チューブコネクタ等は市販品を用いる。 燃焼室およびタンク部分の重量は 4.86 [kg](液体酸素充填率 0.7)、ヘリウムガス 供給系の重量は 1.80 [kg]である。フライトモデルのエンジン部の構造概要を図 1.4.3、図 1.4.4、図 1.4.5、図 1.4.6 に示す。 図 1.4.3 液体酸素タンクの構造 図 1.4.5 エンジン全体図 図 1.4.4 液体酸素タンクと燃焼室 およびノズル 図 1.4.6 エンジン断面図 1.4.4 ロケットの強度と設計概念 今回打ち上げ予定のロケットの形状は、2001 年 3 月に東京都立科学技術大学 の湯浅教授のグループが大樹町にて打ち上げた調査ロケットの相似形(3/4 程度) となるようにした。しかしながら搭載するペイロード等の影響により、完全に 相似形にすることができなかった。そのため、ロケットの全長が当初予定して いた 1369[mm]から 1599.5[mm]となっている。液体酸素を加圧するヘリウムの 供給ラインはすべて高圧ガスに対する認定を満たした市販品を用いている。ロ ケットの強度解析には PTC 社製の Pro/ENGINEER を用い、許容応力は耐力の 3 分の 1 程度に定めた。また、材料の降伏条件にはフォンミーゼスの降伏条件を 採用した。強度解析の結果を簡単に図 1.4.7 から示す。図中では部材が大きく変 形して見えるが、これは変形の様子がわかり易くなるよう変形の程度を誇張し て示しているためである.材料は A2024 であり、安全率は 3 以上となるように した。A2024 の機械的性能を表 1.4.1 に示す。 表 1.4.1 A2024 の機械的特性(20℃) ヤング率 [GPa] 72.4 ポアソン比 0.33 耐力 [MPa] 305 以上 引張り強さ [MPa] 410 以上 密度 [g/cm3] 2.77 安 全 率 3 で の 許 容 応 力 101.7 [MPa] (1)エンジン本体 エンジン本体の設計では液 体酸素加圧用ヘリウムタンク の初期圧 (5 [MPa]) がエン ジン内部に作用した場合を想 定した。材料は A2024 を採用 した。 図 7 に強度解析の結果 を 示 す 。 最 大 応 力 は 96.3 [MPa] 、 最 大 変 位 は 0.034 [mm]であり、安全率は約 3.2 である。 図 1.4.7 エンジン本体 (2)ノズルケース ノズルケースの設計では燃 焼室圧力を 4[MPa]と想定し た。材料には A2024 を採用し た。図 1.4.8 に強度解析の結果 を示す。 (色の白っぽいところ に負荷が掛かる。)最大応力は 27.2 [MPa]、最大変位は 0.01 [mm]であり、安全率は約 11.2 である。この部品の安全率を 他の部品に比べ大きく定めて いるのは、万一この部品が高 温の燃焼ガスにさらされた場 合、強度が大きく低下する恐 れがあるためである。 (3)パラシュート接続部 パ ラシュート接続部 の 設計 ではロケットが 50 [m/x]で弾 道飛行しているときにパラシ ュートを開傘する場合を想定 した。材料には A2024 を採用 した。図 1.4.9 に強度解析の結 果を示す。最大応力は 88.4 [MPa]、最大変位は 1.5 [mm] であり安全率は約 3.5 である。 (4)尾翼 尾 翼 の 設計では打ち上げ角 88 [deg]、風速 7 [m/s]の場合 を想定した。材料には A5052 を採用した。図 1.4.10 に強度 解析の結果を示す。最大応力 は 58.7 [MPa]、最大変位は 3 [mm]であり、安全率は約 3 で ある。 図 1.4.8 ノズルケースの強度解析 図 1.4.9 パラシュート接続部の強度解析 図 1.4.10 尾翼の強度解析 (5)フェアリング フェアリングの設計では、 ロケットが 90 [m/s]で飛行し た際の抗力がフェアリングの 先端に分布荷重として作用す る場合を想定した。材料には ABS を採用したが、Pro/E に はこの材料の特性は組み込ま れていないので、強度解析に はこの材料とほぼ同じような 特性を有するポリ塩化ビニル を採用している。図 1.4.11 に 強度解析の結果を示す。最大 応力は 0.2 [kPa]、最大変位は 0.02 [mm]である。 この他に飛行中にフェアリ ングに作用する荷重として揚 力がある.図 1.4.12 に揚力が 作用した場合の強度解析の結 果を示す。最大応力は底部で 3.4 [kPa] 、 最 大 変 位 は 0.6 [mm]である。 図 1.4.11 フェアリングの強度解析(抗力) 図 1.4.12 フェアリングの強度解析(揚力) 解析結果の考察 以上に示したように、何らかの異常が発生しない限り、ロケットのエンジン や翼が破壊することはない。しかしながら、特にエンジンに関しては、燃焼室 内において異常燃焼が発生することにより予想以上の応力が生じ、その結果エ ンジンが破壊するという可能性もある。万一このような破壊が生じても大きな 被害にならないように、ロケットのエンジン部分では半径方向の強度を大きく し,軸方向の強度をそれよりも小さくなるようにしてある。すなわち、エンジ ン内に予想以上の圧力が生じて破壊に至ったとしても、破壊は水平方向に生じ ることはなく上下方向に生じることになる。したがって、打ち上げ時にロケッ トからある程度離れていれば、エンジンが爆発するようなことがあっても特に 被害をこうむることはない。 1.4.5 電源システム概要 図 1.4.13 に電源システムの概要を示す。 回収系 フェアリング パラシュート 放出機構 バッテリー 放出用イグナイタ 放出コマンド 内部シーケンサ回路 ペイロード シーケンサ GPSアンテナ シーケンサ (冗長系) CANSAT バッテリー 地上施設 推進系 加圧用 Heタンク 三方弁駆動用アクチュエータ 三方弁 外部電源 イグナイタ コントロールボックス 打上コマンド 燃焼室 点火コマンド 点火用直流電源 図 1.4.13 電源システム概要 各コンポーネントの詳細 (1) 地上施設 地上施設には三方弁アクチュエータ、コントロールボックス、点火用直流電 源装置の 3 種類の機器に AC 100 V を供給する必要がある。打ち上げ場には電 源を確保できるような施設が存在しないため、小型の発電機を用意する必要が ある。 (2) 推進系 推進系には電源を置く必要がない。エンジン点火用のイグナイタには地上施 設から電源を供給する。三方弁の駆動は、外部(地上施設)のアクチュエータに地 上施設から電源を供給して行なう。 (3)内部シーケンサ回路 内部シーケンサ回路には冗長系を含めて 2 個のシーケンサを組む。内部シー ケンサ回路にはバッテリーを内蔵してあり、2 個のシーケンサで共有する。バッ テリーの電力は内部シーケンサ回路の試験結果に基づいて決定する。 (3) ペイロード ペイロードの cansat はフライトモデルとは完全に独立したものであり、それ 自身が電源を持っている。cansat の製作は東京大学の中須賀研が担っているた め、ここではその詳細には触れない。 (5)回収系 パラシュート放出イグナイタ用の電源を確保する。シーケンサからの放出コ マンドにより放出用イグナイタは作動する。パラシュート放出に必要な火薬の 量や、点火に必要な電力などは実際にフライトモデルが完成したのちの試験に よって決定する。 (6)タイマ機構 パラシュート放出機構のガスジェネレータの点火タイミング制御用にタイマ 機構を搭載する。フライトモデルでは寸法、重量、電力の制約が厳しく、また 加速時に 4G 以上かかることなどから稼動部のないマイコンを用いて制御を行 なう。使用するマイコンとして Microchip 社製の PIC16F84A/10 を用いたシー ケンサを予定。シーケンサからの出力をリレーを解してガスジェネレータのイ グナイタに通電を行いパラシュートの放出を行なう。 1.5 研究目的 この研究では、ハイブリッドロケットの打ち上げに伴う回収用のパラシュー トを製作することが目的である。 パラシュートの製作において、本ハイブリッドロケットに合わせたオリジナ ルのパラシュートを作る必要がある。その条件を以下に記す。 ① ② ③ ④ 重量 10[kg]のハイブリッドロケットを5∼8[m/s]で降下させる。 吊索を含むパラシュートの重量を1[kg]以内にする。 開傘時の速度が 180[km/h]前後での開傘衝撃荷重に耐えられるようにする。 フェアリングに収まるような大きさにする。 以上の点から、パラシュートの設計・製作を行う。 また、製作したパラシュートの機能を実証するための試験等も行う。 図 1.5.1 にハイブリッドロケット打ち上げシステム体制図を、表 1.5.1 にパラ シュート開発 WBS を示す。 パラシュート班 北海道工業大学 パラシュート設計・製作 応用電子工学科佐鳥ゼミ パラシュート開傘試験 応用電子工学科佐鳥ゼミ ハイブリッドロケット 打ち上げシステム ハイブリッドロケット班 北海道大学 飛行解析 応用電子工学科佐鳥ゼミ ペイロード(cansat)班 東京大学中須賀研 図 1.5.1 ハイブリッドロケット打ち上げシステム体制図 風洞試験 機械科豊田ゼミ 表 1.5.1 パラシュート開発 WBS 月 予定 EM 設計・材料の手配 EM 製作 フェアリング開傘試験 PFM 設計・材料の手配 PFM 製作 PFM 開傘試験 引っ張り試験 風洞試験 飛行解析 H13.4 5 6 7 8 9 10 11 12 H14.1 2 3 本試験 第2章 パラシュート EM 設計 パラシュート EM 設計 第2章 2.1 傘体の設計 パラシュート形状は今回の打ち上げの条件から速度が最大でも 180[km/h]と 低速減速に用いることと、製作工程が手製なので製作に簡単な半球型のパラシ ュートを製作することにする。 半球の公称直径(傘体底面の直径)は 1.2 [m]として傘体を 12 枚のパーツ(ゴ ア)に分け縫い合わせる。その縫い目上に細い生地を貼り付けた間に吊索を通 す。吊索は傘体表面の実長よりも 5 [%]短くして傘縁部で縫い付け内部で自由に 動けるようにしておく。パラシュートの表面に沿って対角線上に吊索をまたが らすことにより、吊下荷重は吊索によって支えられることになる。 開傘後のパラシュートを安定させるために頂点に排気孔を作る。排気孔の大 きさは、公称直径の 5 [%]とする。排気孔を大きくすると安定性は増すが抗力係 数が低下し、それに伴い降下速度も低下するため変わりにパラシュート全体を 拡大しなければならなくなる。その場合、収納部分のフェアリングを拡大する 必要性が起きるのでこの値に留める。また、排気孔を大きくすると開傘しにく くなるので、大きさは直径の1/3程度までに留める必要がある。 CD 1 2 0.5 1 v 0 0 0.25 d/D 0.5 0 0 0.25 d/D 0.5 図 2.1.1 孔の大きさと抗力係数 図 2.1.2 孔の大きさと降下速度 ※縦軸はd=0 の時の速度を基準とした値 CD:抗力係数 d:排気孔直径 D:パラシュート直径 v:降下速度 次に、パラシュートのゴアと外観を図 2.1.3 に示す。 図 2.1.3 ゴアの設計図(直径 1.2[m]) ※外側の部分は縫代 図 2.1.4 2.2 パラシュートの外観図(左−側面、右−上図) パラシュートの生地の選定 パラシュートの条件として軽量で強力なものであると同時に通気性があるこ とが必要であると考えられる。そこで、それらを踏まえて 3 種類の生地を選定 した。 それぞれの材料のデータを表 2.2.1、表 2.2.2、表 2.2.3 にそれぞれ示す。 引っ張り試験と以上のデータから、強度、体積、質量の要素から今回使用する 生地は材料 1 のリップストップナイロンを用いることに決定した。 表 2.2.1 パラシュートの大きさに対する材料 1 の重量と体積 半径 面積 重量 体積 r[m] S [㎡] M [g] V [cc] 0.5 1.5315 74.54 38.29 0.55 1.8531 90.20 46.33 0.6 2.2054 107.34 55.13 0.65 2.5883 125.98 64.71 0.7 3.0018 146.10 75.04 0.75 3.4459 167.72 86.15 0.8 3.9207 190.83 98.02 0.85 4.4261 215.43 110.65 0.9 4.9621 241.52 124.05 0.95 5.5288 269.10 138.22 1 6.1261 298.17 153.15 1.05 6.7540 328.74 168.85 1.1 7.4126 360.79 185.31 1.15 8.1018 394.33 202.54 1.2 8.8216 429.37 220.54 1.25 9.5720 465.90 239.30 1.3 10.3531 503.91 258.83 材料 1:リップストップナイロン厚さ 0.025 [mm] 表 2.2.2 パラシュートの大きさに対する材料2の重量と体積 半径 面積 重量 体積 r [m] S [ ㎡] M [g] V [cc] 0.5 1.5708 253.08 392.70 0.55 1.9007 306.22 475.17 0.6 2.2619 364.43 565.49 0.65 2.6546 427.70 663.66 0.7 3.0788 496.03 769.69 0.75 3.5343 569.43 883.57 0.8 4.0212 647.88 1005.31 0.85 4.5396 731.39 1134.90 0.9 5.0894 819.97 1272.34 0.95 5.6706 913.61 1417.64 1 6.2832 1012.31 1570.80 1.05 6.9272 1116.07 1731.80 1.1 7.6027 1224.90 1900.66 1.15 8.3095 1338.78 2077.38 1.2 9.0478 1457.73 2261.95 1.25 9.8175 1581.74 2454.37 1.3 10.6186 1710.81 2654.65 材料2: ナイロン 厚さ 0.25[mm] 表 2.2.3 パラシュートの大きさに対する材料3の重量と体積 半径 面積 重さ 体積 r[m] S[㎡] M [g] V [cc] 0.5 1.5708 110.0 157.1 0.55 1.9007 133.0 190.1 0.6 2.2619 158.3 226.2 0.65 2.6546 185.8 265.5 0.7 3.0788 215.5 307.9 0.75 3.5343 247.4 353.4 0.8 4.0212 281.5 402.1 0.85 4.5396 317.8 454.0 0.9 5.0894 356.3 508.9 0.95 5.6706 396.9 567.1 1 6.2832 439.8 628.3 1.05 6.9272 484.9 692.7 1.1 7.6027 532.2 760.3 1.15 8.3095 581.7 831.0 1.2 9.0478 633.3 904.8 1.25 9.8175 687.2 981.7 1.3 10.6186 743.3 1061.9 材料3: リップストップナイロン 厚さ 0.1[mm] 2.3 吊索の素材の選定 パラシュートの吊索を選ぶ基準として軽量で強度のある素材としてアラミド 繊維が最も適していると考えられる。 アラミド繊維を使用するにあたっていくつかのアラミドを比較した結果、テ イジンの高強力繊維テクノーラの吊索に決定した。これを表 2.3.1 に示す。 表 2.3.1 アラミドの比較 市販品 テクノーラ 外径[m/m] 破断強度[kg] 1.5 148 2 171 2.5 263 3 342 4 627 5 1215 2 230 図 2.3.1 吊索の外観 (左から市販品 1.5、2.0[mm]、テクノーラ(側材コーネックス)2.0[mm]、心材 のみ.2.0[mm]弱) テクノーラの仕様を表 2.3.2 に示す。 表 2.3.2 吊索の仕様 素材名:アラミド 品名:テクノーラ 品番:EBRC202L 製造業者:テイジン 直径2[mm] 破断強度 230[kg] 吊索の長さは、パラシュートの公称直径に等しい長さに設定する。吊索は、 アラミド繊維テクノーラ(直径2[mm])を使用し、本数はゴア数に合わせて 12 本にする。傘体の表面上をまたがらせ、対角線上の反対側の吊索と1本にする。 傘体とのつなぎ目をなくし吊下荷重を吊索にかかるようにする。その際、傘体 表面より5[%]短くして傘縁部で縫い付ける。 表 2.3.3 CD 1.25 1 0.75 0.5 0.25 0 0 EM パラシュート吊索の長さ 吊索の長さ 1.2[m] 傘体部 1.8[m] 対角線上の総延長 4.2[m] v 2 1 L/D 0.5 1 1.5 2 図 2.3.2 吊索の長さと抗力係数 CD:抗力係数 L:吊索の長さ D:パラシュート直径 v:降下速度 0 L/D 0 0.5 1 1.5 2 図 2.3.3.吊索の長さと降下速度 ※ 縦軸は L=1の時の速度を基準とした値 2.4 試験用縮小サイズ型フェアリング設計 パラシュートEMのためのフェアリングを製作する必要がある。そこで、パ ラシュートの大きさに合わせて本番で実際に使用するフェアリング部分の大き さの縮小サイズを設定する。 パラシュートの開口面積の直径が実際に使用する大きさが 2.5[m]で、今回使 用する縮小サイズ型用パラシュートの開口面積の直径が 1.2[m]である。また、 本番で使用するフェアリング部分は、直径 2.5[m]のパラシュートを収納すると きの容積率と同じようにするため、フェアリング部分の1辺の長さをそれぞれ 0.69 倍にする。型の設計図を図 2.4.1 に示す。 350.0mm 67. 4mm 26.6mm 57.5mm 図 2.4.1 フェアリングPMの設計図 2.5 フェアリングの製作 フェアリングの形状を作るためには、そのフェアリングに合った型を作り、 その型からFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を用いてフェアリングを製 作する。また、型の製造を北海道工業大学機械科の吉田先生に依頼した。材質 はフェアリングの製作のし易さから金属であれば良かったので材質を鋳鉄とし た。図 2.5.1 にその完成した鋳鉄の正面図、及び図 2.5.2 に側面図を表す。 図 2.5.1 フェアリングの型(鋳鉄)の正面写真 図 2.5.2 フェアリングの型(鋳鉄)の側面写真 次に、完成した型の表面に、FRPをエポキシ樹脂に染み込ませ形を作る。 今回使用したエポキシ樹脂の仕様については表 2.5.1 に記すものとする。 樹脂の乾燥後、鋳鉄からFRPを丁寧に剥がす。このフェアリングを用いて 今後パラシュートEMでの開傘実験を行うものとする。また、完成したフェア リング部分の図を図 2.5.3 に表す。 図 2.5.3 開傘実験用フェアリング 表 2.5.1 FRPエポキシ樹脂の仕様 配合比 粘度 重量比 主剤/硬化剤=100/30 容量比 主剤/硬化剤=計量カップ(目盛り付き) 液性 cps GM-6600 混合後=685 色調 主剤=無着色透明 硬化剤=淡黄色透明 可使用時間 100g/at25℃ 25∼30 [min] 硬化時間 /at25℃ 時間硬化:10∼12 時間以上 比重 硬化物 1.1 GM-6600 硬化条件 IZOD衝撃値 硬度 常温硬化-7 日硬化(常温=23℃) Kg・cm/cm ショアーD 82 ロックウェルR 122 -5 煎膨張係数 ×10 cm/cm/℃ 熱間たわみ温度 (H.D.T.) ℃(18.5kg/c ㎡) 53 ℃(4.6kg/c ㎡) 53 降伏強さ kg/c ㎡ 1012 破断強さ kg/c ㎡ 744 弾力性 ×104kg/c ㎡ 3.13 たわみ量 m㎡ 11.8 降伏強さ kg/c ㎡ 610 破断強さ kg/c ㎡ 610 伸び率 % 6.6 弾性率 ×104kg/c ㎡ 圧縮強さ kg/c ㎡ 曲げ 引張り 引張リ剪断接着強さ Fe-Fe kg/c ㎡ 148 Al-Al kg/c ㎡ 119 Sus-Sus kg/c ㎡ 149 備考 1.試験方法は JIS K 6911、K 6850 に準拠 2.引張リ剪断接着強さ測定の、被着体は Fe=SPCC Al=1050 Sus=304 3.収縮率の測定は、100mm×120mm×5mm のテストピース製作に依る 第3章 パラシュート PFM 設計 第3章 パラシュート PFM 設計 3.1 設計 ここでは、ハイブリットロケットの回収で実際に用いることを想定したパラ シュートの設計、製作を行う。 パラシュートの設計にはいくつかの条件がある。それを以下に示す。 ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ 重量 10kg のハイブリットロケットを5∼8[m/s]で降下させる。 吊索を含むパラシュートの重量を1[kg]以内にする。 開傘時の速度が 50[m/s]の時の開傘衝撃荷重に耐えられるようにする。 フェアリングに収まる大きさにする。 形状は、EM と同様に半球型パラシュートとし、以下の式によってパラシュ ートの大きさを求める。 F=1/2ρv2 CDS0 F=mg (3.1.1) (3.1.2) 開傘荷重 F[N] パラシュートの開口面積 S0[㎡] 降下速度 v[m/s] 吊下荷重 m=10[kg] 抗力係数 CD0 流体密度 ρ=1.291 [kg/㎥] (1 気圧、0℃の場合) 2 重力加速度 g=9.80665 [m/s ] 抗力係数は、風洞実験より 0.95 として考える。また、空気密度は打ち上げ高 度が 600[m]以下と低いので 1 気圧とした。 上の 2 つの式からパラシュートの面積を求める式は、 S0=2mg/v2ρCD (3.1.3) となる。降下速度を1∼10[m/s]においてのパラシュートの大きさを表 (3.1.1)に示す。 表 3.1.1 パラシュートの降下速度に対する大きさ。 降下速度v(m/s) 半径 r(m) 面積 S(㎡) 1 7.134696 159.9193 2 3.567348 39.97982 3 2.378232 17.76881 4 1.783674 9.994955 5 1.426939 6.396771 6 1.189116 4.442202 7 1.019242 3.263659 8 0.891837 2.498739 9 0.792744 1.974312 10 0.71347 1.599193 ロケットの地面への着陸時の衝撃によって内部機器が破損しないように安全 性を考え、降下速度を 5 [m/s]前後にする。また、パラシュート収納部の大きさ の制限からパラシュートの半径 1.25[m]として設計する。 PFM の形状は半球型で EM と同じく 12 枚のゴアに分け縫い合わせる。排気 孔の大きさも同じように直径の 5[%]とする。ゴアを図 3.1.1 に示す。 3.2 パラシュートの素材の選定 PFM に使用する生地は、リップストップナイロン、吊索はテクノーラを使用 する。 吊索は、引っ張り試験から破断強度が 150 [kg]となった。これを、開傘時の 荷重を破断強度で割った数を吊索の必要最低本数とする。これを、表 3.2.2 に示 す。開傘時の速度は、最悪値 180[km/h]前後、搭載重量や吊索の本数のバラン スを考え 12 本と決定する。吊索の長は、直径と同じ長さにする。 表 3.2.1 吊索の長さ 吊索の長さ 2.5[m] 傘体部 3.7[m] 対角線上の総延長 8.7[m] ※ 半径 1.25 のパラシュート ※ 表 3.1.3 半径 1.25[m]のパラシュートの開傘時速度に対する負荷、及び吊索本数 開傘時速度 V(km/h) (m/s) F(N) F/g(kg) F/g/破断強度 吊索本数 10 2.78 37.16 3.79 0.03 1 20 5.56 148.65 15.16 0.10 1 30 8.33 334.46 34.11 0.23 1 40 11.11 594.60 60.63 0.40 1 50 13.89 929.06 94.74 0.63 1 60 16.67 1337.85 136.42 0.91 1 70 19.44 1820.96 185.69 1.24 1 80 22.22 2378.40 242.53 1.62 2 90 25.00 3010.16 306.95 2.05 2 100 27.78 3716.25 378.95 2.53 3 110 30.56 4496.66 458.53 3.06 3 120 33.33 5351.40 545.69 3.64 4 130 36.11 6280.46 640.43 4.27 4 140 38.89 7283.85 742.75 4.95 5 150 41.67 8361.56 852.64 5.68 6 160 44.44 9513.60 970.12 6.47 6 170 47.22 10739.96 1095.17 7.30 7 180 50.00 12040.64 1227.80 8.19 8 190 52.78 13415.66 1368.02 9.12 9 200 55.56 14864.99 1515.81 10.11 10 210 58.33 16388.66 1671.18 11.14 11 220 61.11 17986.64 1834.13 12.23 12 230 63.89 19658.95 2004.66 13.36 13 240 66.67 21405.59 2182.76 14.55 15 250 69.44 23226.55 2368.45 15.79 16 260 72.22 25121.84 2561.71 17.08 17 270 75.00 27091.45 2762.56 18.42 18 280 77.78 29135.39 2970.98 19.81 20 290 80.56 31253.65 3186.99 21.25 21 300 83.33 33446.24 3410.57 22.74 23 図 3.1.1 ゴアの設計図(直径 2.5[m])※外側の部分は縫代 3.3 ハイブリットロケットとの噛み合わせ パラシュートのロケット本体への取り付け方法は、図 1.4.9 に示す金具によっ て本体内部の cansat の側面に取り付けられる。吊索の先端を折り返したところ で輪を作り余った部分で 2 本の吊索を縫い合わせる。そして、12 本の吊索を 6 本ずつ 2 箇所で取り付ける。 図 3.1.2 図 3.1.3 吊索の先端部 吊索取り付け部 図 3.1.4 図 3.1.5 吊索取り付け部上図 フェアリングに収納したパラシュート 図 3.1.6 フェアリング部 図 4.3 FM の外 第4章 パラシュートに関する試験結果 第4章 パラシュートに関する試験結果 4.1 風洞試験 4.1.1 目的 パラシュートを製作するにあたり風洞試験機を使用して抗力係数 CD を求める。 4.1.2 概要 この風洞試験は、直径 24 [cm]の風洞試験用パラシュートを製作し、機械工学 科豊田ゼミの修士1年芝邦明、大学4年下岡彩子氏によって行われた。風洞に より流速を一定にし、そのときの抗力 D を測定し CD 値を求める実験である。 今回は、流速を 10 [m/s]の場合で実験を行う。ここで使用したパラシュートは、 EM と同様の素材を用いて縮小したものであり具体的な設計については省略す る。 4.1.3 実験装置 ひずみゲージ(KYOWA)を図 4.1.1、軟鋼丸棒を図 4.1.2 に示す。 図 4.1.1 ひずみゲージ 図 4.1.2 軟鋼丸棒 ブリッジボックス(KYOWA)を図 4.1.3 に示す。 図 4.1.3 ブリッジボックス ひずみゲージアンプ(KYOWA)を図 4.1.4 に示す。 図 4.1.4 ひずみゲージアンプ FFTアナライザ(ONO SOKKI)を図 4.1.5 に示す。 図 4.1.5 FFT アナライザ 風洞試験用パラシュートを図 4.1.6 に示す。 図 4.1.6 風洞試験用パラシュート 風洞出口を図 4.1.7 に示す。 図 4.1.7 風洞出口 4.1.4 ひずみゲージの動作検定 今回の実験で使用するひずみゲージの動作確認をするために、おもりによるひずみ 測定実験を行った。 実験は、ひずみゲージを取り付けた丸棒の先端に質量既知のおもりを下げ、ひずみ ゲージアンプの出力電圧からひずみを算出する方法で行った。実験結果を図 4.1.9 に示す。 図 4.1.9 の縦軸はひずみ、横軸はおもりの質量を表しており、ピンクのラインが実験 値、青のラインが理論的な計算値を示している。 ひずみゲージ (K・μ・ε) 実験値 理論値 0.2 0.15 40 0.1 0.05 0 10 20 図 4.1.9 30 質量 (g) 40 50 ひずみゲージ検定線図 実験値がやや高めに出ているものの、以降の実験には支障のない誤差範囲内で あると判断した。 4.1.5 実験方法 ひずみゲージを用いて、抗力係数を測定する。概要図を以下に示す。 ひずみゲージ D 図 4.1.10 ひずみゲージを用いた風洞試験の概要図 実験は、測定部断面が 0.4 [m]×0.4 [m]の風洞に表 4.1.1 のパラシュートを設置し て、風速 V=10[m/s]で行った。 表 4.1.1 風洞試験用パラシュートの仕様 パラシュート形状 半球型 直径 24[cm] ゴア数 12 吊索 24[cm]×12[本] 素材 リップストップナイロン パラシュートは、風洞中央に設置した長さ 0.2 [m]、 直径 3 [mm]の軟鋼丸棒の先 端に固定する。この棒の固定端にひずみゲージを取り付け、抗力を測定した。測定値 はFFTアナライザを使用して記録した。 図 4.1.11 風洞試験の概略図 4.1.6 実験結果 (1) 抗力係数 風速 10 [m/s]の測定結果を図 4.1.12 に示す。 10.0 荷重 (N) 8.0 6.0 4.0 2.0 0.0 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 時間 (sec) 図 4.1.12 パラシュートの抗力 0.3 [s]で開傘時荷重が記録され、その後はパラシュートの揺れによる変動波形となっ ている。抗力係数 CD は、開傘後の平均荷重(定常荷重)D を用いて次式で求めた。 CD = 2D ρV 2S (1) 表 4.1.2 測定結果および CD 開傘時荷重 平均荷重 抗力係数C D値 9.5N 6.5N 2.13 4.1.6 閉塞効果修正 本実験では閉塞比が約 28%と比較的大きいため,閉塞効果修正を行う必要が ある.閉塞効果とは,固定壁風洞の測定部内で模型実験を行う際に,模型断面 積の分だけ空気の流れる測定部断面積が減少し,固定壁と模型に挟まれた模型 周りの風速が増加することをいう.閉塞効果修正は式(2)によって行った. ここで,q は動圧,添え字 u は実測値,係数 KM はパラシュートの場合,1.85 となる.式(2)によって修正した抗力係数を表 4.1.3 に示す. q qu =1+ KM CDCSu 表 4.1.3 V m /s 5 10 (2) 修正前後の CD 値の比 修正前 2.43 2.13 修正後 0.96 0.95 4.1.7 考察 この風洞試験では、流速 10[m/s]の場合で CD 値が 0.66 となった。実際にこの 値を基に PFM パラシュートの設計を行う。 今回の実験で使用したパラシュートは直径 24 [cm]と小型なので、この結果を もとに設計・製作を行った PFM パラシュートを風洞により試験を行いたいが、 パラシュートのサイズに合う風洞が用意できないため、PFM パラシュートを実 際に降下させ、降下速度を求め CD 値を求める実験を行うことにする。 4.2 フェアリング付 EM パラシュート開傘試験 4.2.1 目的 今回の打ち上げでは、パラシュートの開傘によりハイブリットロケットを回 収する。その際、完全回収を目指すためにはフェアリングも同時に回収しなけ ればならない。 パラシュート(EM)の開傘試験の目的は、パラシュートがどのようなタイミ ング(時間)で開傘するのかを検討し、フェアリングを付けて開傘した場合パ ラシュートの開傘時、開傘後に影響しないかを調べることである。 4.2.2 概要 今回の開傘試験では、直径 1.2[m]、吊索 1.2[m]のパラシュート EM を使用す る。フェアリングは本試験に使用するフェアリングをパラシュート EM に合わ せて縮小したものを製作し使用する。この試験によってパラシュートの開傘に 伴うフェアリングの影響がわかると同時に、開傘に掛かる時間がわかる。しか し、この実験では自由落下であり、本試験では開傘時の速度は頂点付近に合わ せて開いたとしても横方向の速度成分があるので自由落下と同様にはならない。 また、開傘速度の最悪値は 50[m/s]となるのでこの点でも比較にはならない。よ ってこの試験では、フェアリングの開傘時、開傘後の影響を見る事が主目的で、 開傘時間に付いては、自由落下での場合としてデータを取得するものである。 フェアリングと本体の接続には、吊索と同じテクノーラを使用し 1.2[m]、 0.8[m]、0.6[m]と長さを変えて試験を行う。 4.2.3 装置構成 パラシュート開傘試験の装置構成図は図 1.1 のように、フェアリング、パラ シュート(吊索含む) 、重りによって構成される。映像を記録するためにビデオ カメラでの撮影を行い記録する。 パラシュート本体 フェアリング おもり 図 4.2.1 パラシュートの開傘装置構成 4.2.4 試験手順 パラシュート開傘試験の手順を以下に示す。 試験1.開傘試験(フェアリングの紐の長さ 1.2 [m]) <1−1> 試験装置の確認 フェアリングの紐の長さを 1.2[m]に設定し重りに取り付ける。 パラシュートを折りたたみフェアリングに収納する。 <1−2> 試験場所の確認 パラシュートを投下する人が4階に待機し、それを下から観 測する人が落下地点付近に待機する。観測者はビデオカメラを 設置する。この際、映像の中に高さを測定するための目印にな るものを入れるようにする。このとき、観測者は落下地点周辺 の安全を十分確認し投下の合図を投下する人に送る。 <1−3> 試験開始 投下する人は安全を確認した後、カウントダウンにより投下 を開始する。観測者は、カウントダウン開始と同時に撮影を始 める。 <1−4> 投下後の処置 観測者はパラシュートの着地を確認した後、撮影を終了しパ ラシュートの回収に向かう。フェアリングの状況をチェックし パラシュートや本体などに絡まっていないかを見る。投下した 人も同様に、着地確認後パラシュートの回収を行う。 <1−5> 映像の確認 パラシュートの回収後、ビデオで撮影した映像を確認する。 試験2、試験3、では、紐の長さを 0.8[m]、0.6[m]と短くし、試験1と同様 の手順で試験を行う。 4.2.6 試験後のデータ解析 試験により撮影した映像からも、フェアリングの状態を確認する。また、開 傘までの時間、その後の降下時間を撮影した映像から測定する。 試験装置の確認 パラシュートの収納 試験場所の 安全確認 OK カウントダウン STOP GO 状態チェックリスト ・吊索、傘体の破損 ・フェアリング、重り の破損 ・試験場の状況 投下開始 撮影 着地確認 パラシュート回収 パラシュートの確認 異常なし 映像の確認 開傘失敗 墜落 修理後、試験再開 パラシュート破損 異常発生 繰り返し 試験終了 試験予定終了 データ解析 図 4.2.2 試験中止 フェアリング付 EM パラシュート開傘試験フローチャート 4.2.7 試験結果 試験結果を以下の表に示す。 表 4.2.1 フェアリングの紐 1.2[m]の時の開傘結果 回数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 平均 開傘状況 成功 失敗 成功 成功 成功 失敗 成功 成功 成功 成功 フェアリングの絡み なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし 開傘時間[t] 開傘後の降下時間[t] トータル時間[t] 表 4.2.2 2.78 0.2 2.98 2.26 2.32 2.06 2.28 0.81 1.8 1.48 0.18 1.32 1.52 1.09 3.07 3.72 3.86 3.76 2.98 3.68 3.72 3.47 1.4 2.8 2.36 2.2 2.38 フェアリングの紐 0.8[m]の時の開傘結果 回数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 平均 開傘状況 成功 成功 成功 成功 成功 成功 失敗 成功 成功 成功 フェアリングの絡み なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし 開傘時間[t] 2.82 2.13 2.04 開傘後の降下時間[t] 0.18 1.78 1.89 1.75 トータル時間[t] 表 4.2.3 2.1 2.53 2.32 2.02 2.64 2.2 2.31 1.1 1.32 1.92 0.97 1.8 1.41 3 3.91 3.93 3.85 3.63 3.64 3.94 3.61 4 3.72 フェアリングの紐 0.8[m]の時の開傘結果 回数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 開傘状況 成功 失敗 成功 成功 成功 成功 成功 成功 成功 成功 フェアリングの絡み なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし 2.8 2.98 2.2 2.43 2.04 平均 開傘時間[t] 2.09 2.84 2.56 2.5 2.49 開傘後の降下時間[t] 1.84 0.98 1.28 1.04 トータル時間[t] 3.93 3.82 3.84 3.84 3.78 3.98 3.69 3.86 3.76 3.83 0.8 1.78 1.26 1.82 1.26 1.34 4.2.8 考察 試験の結果からフェアリングが開傘に与える影響はないと言える。また、フ ェアリングと本体を結ぶ紐の長さが開傘に与える影響も見られなかった。この 紐の長さは、降下時にフェアリングと本体が接触しない程度の長さに設定する と本体に与える影響もなくすことが出来るであろう。 試験の結果に開傘に失敗した場合があるがこれは、開傘時にパラシュートが フェアリングの上に乗り空気抵抗を受けにくくしていたためである。本試験で は、開傘時の速度も高く横方向に移動しているため問題はないと言える。 図 4.2.3 にフェアリング付パラシュートの開傘の変化を示す。 図 フェアリング付開傘試験 4.3 PFM 開傘試験 4.3.1 目的 PFM パラシュートのデータの取得、及び吊索の長さを短くした場合の抗力係 数の変化を調べる。 4.3.2 概要 風洞の試験により抗力係数 CD の値が 0.95 となった。PFM パラシュートを風 洞に使用することが不可能なので、今回の試験では PFM パラシュートを実際に 降下させることによりデータを取得してみることにした。開傘時の衝撃荷重を 下げるための方法として吊索を短くすることが考えられる。その場合の抗力係 数の変化を調べることも並行して行う。また、PFM パラシュートが正常に降下 することを確認することも含まれた実験となる。 4.3.3 開傘試験の装置構成 試験は、G 棟の 4 階から 1 階までの吹抜けを利用して行った。直径 2.5[m]の PFM パラシュートを使用し傘下重量は2[kg]の重りを吊るす。降下速度を測定 するために、ビデオカメラを一階付近に固定して設置し撮影を行う。その後に、 画像から落下距離とその区間の降下時間を測定し計算によりパラシュートの降 下速度を求める。 4.3.4 開傘試験の手順 試験1.直径:吊索=1:1での開傘試験 <1−1> 試験装置の確認 吊索の長さを直径(2.5[m])と同様に 2.5[m]に設定し重りに取 り付ける。 <1−2> 試験場所の確認 パラシュートを投下する人が4階に待機し、それを下から観 測する人が落下地点付近に待機する。観測者はビデオカメラを 設置する。この際、映像の中に高さを測定するための目印にな るものを入れるようにする。このとき、観測者は落下地点周辺 の安全を十分確認し投下の合図を投下する人に送る。 <1−3> 試験開始 投下する人は安全を確認した後、カウントダウンにより投下 を開始する。観測者は、カウントダウン開始と同時に撮影を始 める。 <1−4> 投下後の処置 観測者はパラシュートの着地を確認した後、撮影を終了しパ ラシュートの回収に向かう。投下した人も同様に、着地確認後 パラシュートの回収を行う。 <1−5> 映像の確認 パラシュートの回収後、ビデオで撮影した映像を確認する。 以上の、項目を繰り返し行う。映像を確認しながら行い、10 回分の映像を撮 影する。パラシュートの開傘の状態によりデータ取得が不可能な場合は、余分 に撮影を行う。 試験2、試験3、試験4は、吊索の長さを2/3、1/2、1/3と短くし、 試験1と同様の手順で試験を行う。 4.3.5 試験後のデータ解析 試験により撮影した映像から、パラシュートの降下速度を求める。映像から 撮影した際の落下距離を測定し、その区間の通過時間をビデオカメラの時間表 示から測定する。 測定した降下時間から、CD 値もあわせて計算する。 試験装置の確認 試験準備 試験場所の 安全確認 OK カウントダウン STOP GO 状態チェックリスト ・吊索、傘体の破損 ・重りの破損 ・試験場の状況 投下開始 撮影 着地確認 パラシュート回収 パラシュートの確認 異常なし 映像の確認 開傘失敗 墜落 修理後、試験再開 パラシュート破損 異常発生 繰り返し 試験終了 試験予定終了 データ解析 図 4.3.1 試験中止 PFM パラシュート開傘試験フローチャート 4.3.6 試験結果 開傘試験の結果をそれぞれ表に示す。 表 4.3.1 直径:吊索=1:1の試験結果 回数 時間[s] 高さ[m] 降下速度[m/s] CD 1 1.3 2.45 1.88 1.09 2 0.35 0.65 1.86 1.12 3 1.7 3.1 1.82 1.16 4 1.67 3.1 1.86 1.12 5 1.63 3.1 1.90 1.07 6 1.07 2.11 1.97 0.99 7 1.7 3.1 1.82 1.16 8 1.3 2.4 1.85 1.14 9 1.69 3.1 1.83 1.15 10 0.9 1.7 1.89 1.08 1.87 1.11 平均 表 4.3.2 直径:吊索=1:2/3の試験結果 回数 時間[s] 高さ[m] 降下速度[m/s] CD 1 1.5 3.1 2.07 0.91 2 0.77 1.5 1.95 1.02 3 1.43 3.1 2.17 0.82 4 0.87 1.85 2.13 0.86 5 1.47 3.1 2.11 0.87 6 1.53 3.1 2.03 0.94 7 1.51 3.1 2.05 0.92 8 0.97 2.1 2.16 0.83 9 1.42 3.1 2.18 0.81 10 1.44 3.1 2.15 0.83 2.10 0.88 平均 表 4.3.3 直径:吊索=1:1/2の試験結果 回数 時間[s] 高さ[m] 降下速度[m/s] CD 1 1.37 3.1 2.26 0.76 2 1.4 3.1 2.21 0.79 3 1.4 3.1 2.21 0.79 4 1.33 3.1 2.33 0.71 5 1.43 3.1 2.17 0.82 6 1.41 3.1 2.20 0.80 7 1.35 3.1 2.30 0.73 8 1.39 3.1 2.23 0.78 9 1.45 3.1 2.14 0.85 10 1.35 3.1 2.30 0.73 2.23 0.77 平均 表 4.3.4 直径:吊索=1:1/3の試験結果 回数 時間[s] 高さ[m] 降下速度[m/s] CD 1 0.9 3.1 3.44 0.33 2 0.87 3.1 3.56 0.30 3 0.94 3.1 3.30 0.36 4 0.85 3.1 3.65 0.29 5 0.91 3.1 3.41 0.33 6 0.89 3.1 3.48 0.32 7 0.87 3.1 3.56 0.30 8 0.92 3.1 3.37 0.34 9 0.9 3.1 3.44 0.33 10 0.88 3.1 3.52 0.31 3.47 0.32 平均 ※高さの基準は 3.1[m]で測定したが、それ以外の値をとっているものはパラ シュート降下が安定してからの区間を記録したためである。 次に、吊索を短くした場合の CD 値の変化を表に示す。 表 4.3.4 吊索長と CD 値の特性 吊索 1 2/3 1/2 1/3 CD 1.11 0.88 0.77 0.32 1を基準とした時の差[%] 100 79.2 69.9 28.9 4.3.7 考察 この試験により直径:吊索=1:1の基本となる CD 値は 1.11 と風洞試験と比 べ大きな値になった。これは、出来るだけ無風状態で試験を行うため G 棟の吹 抜けを利用して行ったが、完全に無風ではなかったためだと考えられる。 また、試験の結果から吊索を短くして行くと降下速度が下がり、CD 値が減少 することが証明された。CD 値自体は、前述した通り誤差があると思われるが、 CD 値の変化率は実際に吊索を短くする場合の変化として考えることができる。 1/3の場合については極端に CD 値低下しているが、これは開傘後のパラシュ ートが降下時に安定せずパラシュート傘体が開いたり閉じたりと振動していた ためだと考えられる。よって、降下時のパラシュートの安定性を考えた場合、 吊索を1/3まで短くすることは避けるべきだと考えられる。吊索を短くした場 合、開傘は速まったがその後の安定性を考えると吊索は 1/2 程度を限界と考え るべきである。 表 4.3.4 風洞試験との誤差 風洞試験 CD 値 0.95 PFM 開傘試験 CD 値 1.11 誤差 16.8[%] 図 4.3.2 に PFM パラシュートの開傘の変化を示す。 図 4.3.2 PFM 開傘試験画像 4.4 引っ張り試験 4.4.1 目的 パラシュートに用いる吊索(テクノーラ)の強度を測定する。 4.4.2 概要 テクノーラ(アラミド繊維)の破断強度を引っ張り試験機を使って測定し 理論値と比較してみる。開傘時の衝撃荷重を吊索の破断強度で割、本数を決 定するための試験となる。実際に本数を決定するときには安全率を3程度と って本数を 3 倍にして設定する。 4.4.3 試験装置構成 材料科学第一実験室にある引っ張り試験機を図 4.4.1 に示す。 名称 型名 図 4.4.1 引っ張り試験機 UNIVERSAL TESTING MACHINE RH-30 T.V 4.4.4 (1) (2) (3) (4) 試験手順 吊索をループ状し重なったところを 20[cm]縫い合わせ一つの輪にしたも のを用意する。 図左の試験機に(1)に固定棒を通して固定する。 試験機を動作させ測定を開始する。 吊索が破断したのを確認し、強度を記録する。 試験には、テクーラとテクノーラを側材(コーネックス)で包んだものと二 種類の測定を行う。 4.4.5 試験結果 試験結果を表 4.4.1 に示す。 表 4.4.1 引っ張り試験結果 吊索 強度 テクノーラ 337 [kg] テクノーラ(側材付) 327.5 [kg] 4.4.6 考察 吊索は、ループ状にして試験を行ったので一本あたりの破断強度は、測定値 の半分になる。 試験結果では、側材がある方が強度が低い結果になった。これは、側材があ る方に比べ、テクノーラのみの方は縫い糸がテクノーラの網目に入り込み縫い 目の強度が高くなったためだと言える。一方、側材はテクノーラに比べ、硬く 縫い糸との摩擦により破断してしまったためと思われる。また、どちらも縫い 目から破断していたので、理論値に比べ破談強度が小さくなったと言える。 表 4.4.2 理論値との比較 強度 測定値 心材のみ 168.5 [kg] 側材付 163.75 [kg] 理論値 230 [kg] 試験の結果、理論値より低い値を示したので子の数値により強度の計算を行 い、吊索の本数を設定することにする。また、吊索には強度にほとんど違いが ないことと、軽量であることから心材のみの方を使用する。 第5章 飛行解析 第5章 飛行解析 5.1 概要 ハイブリッドロケットの本試験を行う前にロケット打ち上げから、回収装置 であるパラシュートによる地上への降下までをコンピューター上でシミュレー ションを繰り返し行うことによって、本試験においての発射地点、打ち上げ角 度、方角、また落下地点の範囲などいくつかの要素をシミュレーションを基に 決めることができると考えられる。 特に、落下地点の予測範囲の検討は今回のシミュレーションの中で最も重要 な検討内容である。その理由としてパラシュートでの降下時において、風の影 響がロケット打ち上げ時に比べて大きいことである。ロケットを打ち上げる最 適の場所は完全にフラットな位置で、どの方向(少なくとも風下)に何キロも 障害のない場所である。実際、打ち上げにはそういった場所が選定されるので あるが、現在の日本ではそのような条件が整った場所の確保はほとんど不可能 である。したがって打ち上げ場所の最低限必要な要素を挙げてみる。 表5.1 ロケット打ち上げ場所の必要な要素 要素1 打上げ高殿 4 分の 1 直径の円内に樹、家、その他の障害物(人 も含む)が一切ないこと。 要素2 風下に高圧線や電柱・交通の頻繁な道路などがないこと。 要素3 風上に高い建物や山・木などがないこと。 要素4 風下に池や川など水面がないこと。 上記から要素 1、要素2の条件は必須条件である。また、要素3はウインドシ ャドウの影響で自由大気の風速を察知できず、上空で思わぬ風に流されてしま うことがあるからである。最後の要素4については、安全上は問題ないが、水 面に着水したものは通常回収が困難であり、ロケット機体及び機材の修復が難 しいものとなる。また水面上空には下降気流があって着水しやすいのである。 これらの要素から風の影響がパラシュートで降下するにあたって落下地点を 予測するのに欠かすことのできない重要な要素であるため、飛行シミュレーシ ョンプログラムの中でパラシュートによる降下部分での風の影響を計算に入れ て行っていかなければならない。 5.2飛行シミュレーション原理 今回、飛行シミュレーション用のプログラムを作成するソフトウェアとして、 Microsoft Visual Basic6.0 を使用している。 ロケットの飛行シミュレーションを行うにあたって以下のような仮定を置い た。 表 5.2 飛行シミュレーションを行うにあたっての仮定 仮定1 飛行経路は鉛直面内の 2 次元運動に限定する。 仮定 2 推進薬の減少に伴う重心の移動は無視する。 仮定 3 機体の旋転はしないものとする。 仮定 4 高度の変化に伴う大気圧の変化が推力に及ぼす影響は無視す る。 仮定 5 ランチャーは打ち上げ角 90 [deg]のときを除いて風上に向ける。 仮定 6 常に地面に平行な向い風であり,飛行中に風速は変化しない ものとする。 表 5.2 の仮定に従い、図 5.2.1 に 2 次元運動で飛翔するロケットに作用する空 気力および座標系の説明を示す.X 軸は地面に対して水平方向を,Y 軸は垂直方 向を表している。 Y α T v 飛行経路 L D γ C.G. C.P. M M rg 0 θ Z X 図 5.2.1 空気力と座標系の説明 以上の仮定と図 5.2.1 に従い、X 軸方向と Y 軸方向の運動方程式をたて、それ らを 0 [秒]から任意の時間までを逐次計算法により解いた。解は時間の刻み幅を 0.1 [秒]として求められている。以下にロケットの飛行について,通常飛行時、 そしてパラシュート開傘時の2段階に分けて,逐次計算法で用いた式を示す。 また、式中に使用している推力、抗力及び重力損失は一定として計算を行うも のとする。 ① 通常飛翔時 ・推進薬の減少量 Mp [kg] & (iP −1)∆t M (iP) = M (iP −1) + m (5.2.0) & P : 推進薬流率 [kg/s] m ・ロケットの重量 Mr [kg] (i) M (i) r = M r,i − M P (5.2.1) Mr,i : ロケットの初期重量 = 10.17 [kg] ・加速度 a [m/s2] T(i ) cosθ(i−1) − D(i−1) cosγ(i−1) − L(i−1) sinγ(i−1) a = M(ri ) (i ) X (i ) Y a = (5.2.2) ( ) T(i ) sinθ(i−1) − D(i−1) sinγ(i−1) + L(i−1) cosγ(i−1) − M(ri ) − m(pi ) g0 T : 推力 [N] D : 抗力 [N] L : 揚力 [N] g0 : 重力加速度 = 9.80665[m/s2] M(ri ) (5.2.3) ・速度 v [m/s] v (Xi ) = v (Xi −1 ) + a (Xi −1 ) ∆ t (5.2.4) v (Yi ) = v (Yi −1 ) + a (Yi −1 ) ∆ t (5.2.5) Δt : 時間の刻み幅 = 0.01 [s] ・移動距離 d [m] (i ) X ( i −1) X v(Xi−1) + v(Xi ) + ∆t 2 (5.2.6) (i ) Y ( i −1) Y v(Yi−1) + v(Yi ) ∆t + 2 (5.2.7) d =d d =d ・見かけの速度 vap [m/s] ( ) ( ) 2 v(api ) = v(Xi ) − vW + v(Yi ) 2 (5.28) vw : 風速 [m/s] ・経路角 γ (i ) γ [rad] v (Xi ) − v W = cos v (api ) −1 (5.2.9) ・姿勢角 θ [rad] θ(i ) = θ(i −1) + θ& (i−1)∆t (5.3.0) ・迎角 α [rad] α(i ) = θ(i ) − γ (i ) (5.3.1) ・復元モーメント M [N・m] ( ) 2 1 M(i ) = CMαα(i )ρ(ai ) v(api ) ArLr 2 (5.3.2) Ar : 胴体の断面積 = 6.2×10-3[m2] Lr : 全長 = 1599.5×10-3 [m] ρa : 大気密度 [kg/m3] CMa :縦揺れモーメント傾斜 = -3.859 [1/rad] ・ピッチ角速度 θ& [rad/s] M ( i −1 ) θ& ( i ) = θ& ( i −1 ) + ∆t IZ (5.3.3) Iz : Z 軸回りの慣性モーメント = 1.469 [kg・m2] ・抗力 D [N] ( ) 2 1 D( i ) = CDρ(ai ) v (api ) A r 2 (5.3.4) CD : 抗力係数 ・揚力 L [N] L( i ) = ( ) 2 1 CLα α ( i ) ρ(ai ) v (api ) A r 2 CLa : 揚力傾斜 = 22.748 [1/rad] (5.3.5) ・大気密度 ρa [kg/m3] ρ (i) a − g 0 d (i) 0.101325 × 10 6 Y exp = R 0 T0 R T 0 0 (5.3.6) T0 : 標準温度 = 273.15 [K] R0 : 標準温度での空気の気体定数 = 287.06 [J/kg・K] ② パラシュート開傘時 ・パラシュート開傘後の減速方程式 dv 1 2 = Mg − C D C X ρ (i) a v S dt 2 M (5.3.7) (5.37) 式から、 dv 1 C D C X ρ (i) 2 Mg (i) 2 a S = g− C D C X ρ a S⋅ v = − (v 2 − ) dt 2M 2M C D C X ρ (i) a S (5.3.8) (5.38) 式で、それぞれ ρ α = v ∞ (i) a C D C 2 M = ρ (i) a X S 2 Mg C DC (5.3.9) X S (5.4.0) とおく。 これらをまとめると X 成分 Y 成分の速度は V0 VX = V 0 αt + 1 v0− v0+ v − 1− 0 v0+ 1+ vY = v∞ v ∞ − 2 αv ∞ t e v∞ v ∞ − 2 αv ∞ t e v∞ (5.4.0) (5.4.1) V0:開傘時初速度 [m/s] CDp : パラシュートの抗力係数 Cx:パラシュートの開傘荷重係数 S : パラシュートの投影面積 [m2] となる。これらの各式を用いてシミュレーションをするが、重力損失について、 人工衛星などの打上げでは、ロケットは地上から打ち上げられ、地球を周回す る十分な軌道速度になるまでに重力による速度損失を受けている。重力(地球 引力)は、地球の中心部から離れるにしたがって小さくなる。その割合は距離 の 2 倍に反比例する。地球表面での重力を 1 [G]とすると、地上から地球半径分 の高度(約 6400 [km]上空)では 4 分の 1 になり、地球直径分(約 12800 [km] 上空)では 9 分の 1 になる。ただし、今回、北大で打ち上げるロケットの最高 到達距離が数百メートルの高さまでとなっているので上昇する範囲は、地球半 径から比較するとわずかなものであるから高度による重力加速度の変化を無視 しても差し支えない。そのため、この部分の影響を考慮する必要はないと判断 した。 5.3 フォームの外観 5.3.1 メインフォーム 図 5.3.1 シミュレーションプログラムメインフォーム このプログラムのメインフォームは図 5.3.1 である。また、各部の役割を説明 する。 ① 設定値ウインドウ 機体設定や環境設定でセットした各値を表示するウインドウ。(機体 設定、環境設定については 5.3.2 節、5.3.3 節を参照。) ② コマンドボタン コマンドボタンには、発射準備ボタン・グラフ表示ボタン・打ち上げ ボタン・クリアボタンがあり、各機能を使うためのスイッチである。 ③ グラフ表示ウインドウ 計算した結果をもとに折れ線グラフを表示するウインドウ。 ④ 出力データウインドウ 演算結果から、最高獲得速度、最高到達高度、移動距離、開傘荷重な ど重要な値を表示するウインドウ。 ⑤ 出力データグリッド 単位時間毎の時間、加速度、速度、高度、移動距離の値をデータグリ ッドに表示するウインドウ。 ⑥ メニューバー 出力データの保存や機体設定などを行うためのメニューバー。メニュ ーバーについては 5.3.4 節を参照。 5.3.2 オプションフォーム1 図 5.3.2 機体データ入力画面 図 5.3.2 は演算処理を行うために必要なロケット及びパラシュートの初期デ ータ入力する機体設定のフォームである。各部の役割を説明する。 ① パラシュート入力データ パラシュートの各パラメータを入力する。 ② ロケットオプション入力データ ロケットの各パラメータを入力する。 ③ [OK]・[キャンセル]ボタン ①、②、③で設定した値を認識及びキャンセルさせるためのコマンド ボタン 5.3.3 オプションフォーム2 図 5.3.3 風速の設定 図 5.3.3 は主に風速の初期設定を行うための環境設定フォームである。次に、 役割について説明する。 ① 環境1ウインドウ 無風から最大風速 20 [m/s]までの風の強さを調節できる。スライダ式 を使用し、風速1 [m/s]毎に値を調節することができる。 ② 測定レンジウインドウ 測定レンジの設定を1、0.1、0,01、0.05 [sec]から選択することがで きる。 ③ 環境2ウインドウ 気温の設定及び、重力係数の設定ウインドウ。重力係数の値を設定で きるが、前節で重力係数について述べたように、今回に限ってはこの値 を変更する必要がないので入力を受け付けないように設定した。 ④ [OK]・[キャンセル]ボタン ①、②、③で設定した値を認識及びキャンセルさせるためのコマンド ボタン 5.3.4 ツールバーメニュー 5.3.2 節で述べたツールバーメニューの中には、[ファイル]、[設定]、[ヘルプ] の 3 つのメニューが有り、さらに各メニューのプルダウンメニュー項目が有る。 内容は、以下に説明する。 図 5.3.4 [ファイル]プルダウンメニュー 図 5.3.4 の[ファイル]プルダウンメニュー項目について説明する。 名前を付けて保存:出力結果をテキストファイルに保存する機能。 終了:プログラムを終了する機能。 図 5.3.5 [設定]プルダウンメニュー 次に、図 5.3.5 [設定]プルダウンメニュー項目について説明する。 環境設定:5.3.3 節の環境設定画面を起動させる機能。ここから、環境設定を行 うことができる。 機体設定:5.3.2 節の機体設定画面を起動させる機能。ここから、機体設定を行 うことができる。 図 5.3.6 [ヘルプ]プルダウンメニュー 最後に図 5.3.6 [ヘルプ]プルダウンメニュー項目については[バージョン情 報]があるが、製作段階において区別するための物なので特に演算に関して機能 はない。 但し、プログラムのソースについては付録に詳細する。 5.4 飛行解析の結果 ・飛行経路 図 5.4.1 から図 5.4.15 までの各グラフに計算結果として打ち上げ角度と高度 の関係を示す。 飛行特性はポジティブであるため、風見効果によって、何らかの要因で発生 した迎角を減少させる復元力がロケットに対して働く。この場合、向い風が迎 角を増加させる要因となるため、ロケットは迎角を減少させようと風上に向か って飛翔することになる。打ち上げ角が 90 [deg]で無風の条件でロケットの到達 高度は最大となり,飛翔開始から 12.8 [sec]の時点で高度約 620 [m]に到達する と予測できる。 また、パラシュートの開傘後において、開傘が高度の高い点で行われる程、 編流する距離が長くなる。 ・打ち上げ角度 図 5.4.1 から図 5.4.15 まで示した結果をもとに、打ち上げ当日の気象条件や、 打ち上げ場周辺の地理的条件に応じて打ち上げ角を決定する必要がある。 ・ フェアリングおよび尾翼に作用する揚力 ロケットの最高速度は 100 [m/s] 程度になるため、機体には大きな空力が作 用する。飛翔中にフェアリングや尾翼といった低強度の要素が破損しないよう に、これらに作用する揚力をできるだけ小さくする必要がある。飛翔中にフェ アリングや尾翼が破損すると、ロケットの飛行経路が大きくずれる恐れがある。 ・ 最高高度付近での速度 パラシュートは最高高度付近で開傘するが、そのときの速度が 50 [m/s] 以上 になると開傘時の衝撃にパラシュートやその取り付け部分が耐えられなくなる。 また、ロケットの分散の影響により最高高度付近の速度が予想と大きく異なる 可能性もある。従って,最大高度付近の速度は開傘限界速度の半分程度になる ようにすることがふさわしい。パラシュートが破損すると、ロケットは弾道飛 行をして地上に激突するため、再利用できなくなる恐れがある。 ・ 無推力で飛翔するときの安定性 無推力で飛翔するときは復元モーメントが働きにくいため迎角が大きくなり、 通常飛行時に比べて不安定になる。この傾向は、経路角が小さくなって重力が 軸方向に作用しなくなったり、風速が大きいときに顕著に現れる。このような 現象が生じるとロケットの飛行経路が大きくずれる恐れがある。 ・ ロケットの落下地点 打ち上げ場周辺の地理的条件より、飛行許容範囲は高度 1 [km] 以内、発射地 点から半径 1 [km] 以内に設定されている。ロケットが飛行許容範囲内において 打ち上げ地点からできるだけ離れた地点に落下するときが最も安全である。落 下予想地点については、図 5.4.16 の円で囲った部分で表している。 以上の項目を考慮すると、打ち上げ角は表 5.4.1 のように決定される。風速が 大きいときほど打ち上げ角を大きくすれば良いことがわかる。風速が 0 [m/s] か ら 2 [m/s] のときは、打ち上げ角は 86 [deg]と 88 deg]のいずれでも良いが飛行 安定性を考えると、風速が 5 [m/s] よりも大きいときは打ち上げを実施しない方 が無難である。ただし、日程の都合上、どうしても強風下で打ち上げを実施し なければならないときは、打ち上げ角を 90 [deg]に設定するのが望ましい。 表 5.4.1 風速と打ち上げ角の関 風速 打ち上げ角 [deg] 0 [m/s] ∼ 3 [m/s]未満 84 3 [m/s] ∼ 4 [m/s]未満 86(88) 4 [m/s] ∼ 5 [m/s]以下 88(86) 5 [m/s] ∼ 6 [m/s]程度まで 90 ・飛翔中の機体の状態とランディングまでの流れ ここで,打ち上げ当日の気象条件を、風速 2 [m/s] と想定し、表 5.4.1 に従っ て打ち上げを実施した場合のロケットの飛翔性能について説明する。打ち上げ 角度は 84 deg である。この条件では、ロケットは 12.13 [sec] で最高高度 619 [m] に到達する。最高高度到達後はパラシュートが開傘するため、ロケットが最高 高度に到達する 12.13 [sec]までを飛翔性能を評価する範囲とする。燃焼開始後、 打ち上がったロケットはピッチング振動しながら飛翔し、徐々に迎角の触れ幅 が小さくなり、安定化に向う。無推力で飛翔するようになり、経路角が小さく なってくると、ロケットに作用する復元モーメントが小さくなるため、ロケッ トの姿勢は徐々に不安定になり、迎角の触れ幅は大きくなる。ランチャー離脱 直後が見かけの迎角が最も大きくなる。飛行解析では迎角が十分に小さいこと が前提となっているため、このような領域では飛行解析の精度が低下すること になる。 表 5.4.2 に飛翔の流れを示す。速度と加速度は成分を合成したものである。燃 焼開始から 12.13 [sec]で最高高度に到達し、その後はパラシュートにより 8.1 [m/s]の速度で落下する。燃焼開始から 82.7 [sec]後にランディングし、回収され る。 表 5.4.2 飛翔の流れ 時間 t [s] 加速度 a 速度 v [m/s] 高度 dY [m] [m/s2] 燃焼開始 0.0 38.1 0.0 0.0 ランチャー離 脱 0.4 44.4 15.4 3.7 最高速度 3.0 13.1 102.0 150.9 最高高度 12.1 9.8 4.6 619.1 ランディング 82.7 0.0 8.7 0.0 84[deg] wind0[m/s] 700 600 height[m] 500 400 300 200 100 0 -100 0 5 10 15 20 25 30 35 40 distance[m] 図 5.4.1 84[deg] wind 0[m/s] の飛行経路 84[deg] wind2[m/s] 700 600 500 height[m] 400 300 200 100 -120 -100 -80 -60 -40 -20 0 -100 0 20 40 60 distance[m] 図 5.4.2 84[deg] wind 2[m/s] の飛行経路 84[deg] wind 4[m/s] 700 600 500 height[m] 400 300 200 100 -300 -250 -200 -150 -100 -50 distance[m] 図 5.4.3 84[deg] wind 4[m/s] の飛行経路 0 -100 0 50 84[deg] wind 6[m/s] 700 600 500 height[m] 400 300 200 100 -450 -400 -350 -300 -250 -200 -150 0 -50 -100 0 -100 50 100 distance[m] 図 5.4.4 84[deg] wind 6[m/s] の飛行経路 84[deg] wind 8[m/s] 700 600 500 height[m] 400 300 200 100 -600 -500 -400 -300 -200 -100 0 -100 0 100 25 30 distance[m] 図 5.4.5 84[deg] wind 8[m/s] の飛行経路 height[m] 86[deg] wind 0[m/s] 700 600 500 400 300 200 100 0 -100 0 5 10 15 20 distance[m] 図 5.4.6 86[deg] wind 0[m/s] の飛行経路 86[deg] wind 2[m/s] 700 600 500 height[m] 400 300 200 100 -140 -120 -100 -80 -60 -40 -20 0 -100 0 20 40 distance[m] 図 5.4.7 86[deg] wind 2[m/s] の飛行経路 86[deg] wind 4[m/s] height[m] 700 600 500 400 300 200 100 0 -100 0 -300 -250 -200 -150 -100 distance[m] -50 50 図 5.4.8 86[deg] wind 4[m/s] の飛行経路 height[m] 86[deg] wind 6[m/s] -450 -400 -350 -300 -250 -200 distance[m] -150 -100 -50 図 5.4.9 86[deg] wind 6[m/s] の飛行経路 700 600 500 400 300 200 100 0 -100 0 50 height[m] 86[deg] wind 8[m/s] -600 -500 -400 -300 -200 distance[m] -100 700 600 500 400 300 200 100 0 -100 0 100 図 5.4.10 86[deg] wind 8[m/s] の飛行経路 height[m] 88[deg] wind 0[m/s] 700 600 500 400 300 200 100 0 -100 0 2 4 6 8 10 12 14 distance[m] 図 5.4.11 88[deg] wind 0[m/s] の飛行経路 height[m] 88[deg] wind 2[m/s] -140 -120 -100 -80 -60 distance[m] -40 -20 図 5.4.12 88[deg] wind 2[m/s] の飛行経路 700 600 500 400 300 200 100 0 -100 0 20 88[deg] wind 4[m/s] height[m] 700 600 500 400 300 200 100 0 -100 0 -300 -250 -200 -150 -100 distance[m] -50 50 図 5.4.13 88[deg] wind 4[m/s] の飛行経路 height[m] 88[deg] wind 6[m/s] -450 -400 -350 -300 -250 -200 distance[m] -150 -100 -50 700 600 500 400 300 200 100 0 -100 0 50 図 5.4.14 88[deg] wind 6[m/s] の飛行経路 height[m] 88[deg] wind 8[m/s] -600 -500 -400 -300 -200 -100 distance[m] 図 5.4.15 88[deg] wind 8[m/s] の飛行経路 700 600 500 400 300 200 100 0 -100 0 100 図 5.4.16 ロケット降下予測範囲(半径 500 [m]) 第6章 本試験 第6章 本試験 6.1 大樹町での実験詳細 6.1.1 実験概要 簡易型ロケットシステム技術の研究の一環として、2002 年 3 月に大樹町にて 小型ハイブリッドロケットの打ち上げ実験を行うことを目標としている。 実験の目的は,これまで北海道大学で開発してきた衝突噴流式ハイブリッド ロケットエンジンが,微小重力環境利用および高層大気観測等の用途を想定し た完全再使用型ロケットのエンジンとして機能することを実証することである。 ロケットの到達高度は 500[m]程度であり、PFM パラシュートによる回収を 予定している。ロケットを回収した後、エンジンに目立った損傷が見受けられ なければ、デモンストレーションとして推力を絞った地上燃焼試験を行うこと も検討している。 6.1.2 打ち上げ手順 当日の打ち上げ手順は以下に示す通りである. (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) 打ち上げ台を設置する. 打ち上げ台にロケットを設置する. ロケットに Cansat とパラシュートを搭載する. 液体酸素が充填されやすいよう,液体窒素でエンジン部分を予冷する. 液体酸素を充填する. 液体酸素供給用のアクチュエーターを設置する. 打ち上げコマンドを送り,打ち上げる. Cansat に搭載された GPS データをもとに,ロケットを回収する. 6.1.3 大樹町での打ち上げに関する保安事項 今回の打ち上げは発射地点 周辺の地理的条件より、飛行許容範囲は高度 1[km]以内、発射地点から半径 1[km]以内に設定されている。今回の打ち上げ試 験では念のためこの条件の半分の高度 500[m]以内,発射地点から半径 500 [m] 以内を飛行許容範囲に設定した。また、この他に以下のような条件も設定した。 (1) パラシュートが開傘しているときはロケットの降下速度は 5∼8 [m/s]と小 さいので,ロケットの落下地点は発射地点から最低 50 [m]離れていれば十分 である. (2) パラシュートが開傘せずに弾道飛行した場合,ロケットの落下速度は極めて 大きくなり危険であるため,ロケットの落下地点は発射地点から 400 [m]以 上離れていることが望ましい. 以上のような条件で打ち上げが行われる。 今回の打ち上げでは、打ち上げ場付近に降下し安全上問題はない。しかし、 高度が高くなり海上へ降下させ回収する場合や航空機などの飛行に影響を及ぼ すおそれがある場合などは、航空法により各関係機関への連絡が必要となって くる。大樹町上空の航空路に関して、国土交通省札幌航空交通管制部に問い合 わせたところ、大樹町上空には定期航空路はないことがわかった。また、大樹 町沖合の定期航路について、第一管区海上保安庁に問い合わせたところ、大樹 町沖合には定期航路はないことがわかった。 ロケット海上に降下させる場合、大樹町周辺には定期航路はないが漁船等が 航行しているため十勝港にある第一管区海上保安部の釧路海上保安部又は広尾 町海上保安署への連絡が必要である。 図 6.1.1 大樹町上空の航空路 6.2 航空法 ロケットの打ち上げにおいて航空機に影響を及ぼすおそれのある場合、航空 法によって取り扱いが決められている。ロケットの関する条文を以下に示す。 主旨 ロケットを空に打ち上げるときには、その上を飛行する航空機の安全を確保 しなければならない。 航空法より抜粋 (飛行に影響を及ぼす恐れのある行為) 第九十九条の二 何人も、航空交通管制圏、高度変更禁止空域または航空交通管制区域内の特別 管制空域内における航空機の飛行に及ぼすおそれのある、ロケットの打上げそ の他の行為(物件の設置及び植栽を除く)で国土交通省令で定めるものをして はならない。ただし、国土交通省大臣が、当該行為について、航空機の飛行に 影響の及ぼすおそれがないものであると認め、又は公益上必要やむを得ず、か つ、一時的なものであると認めて許可をした場合、この限りでない。 2 前項の空域以外の空域における航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある 行為(物件の設置及び植栽を除く)で国土交通省令で定めるものをしようとす る者は、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ、その旨を国土交通 省大臣に通報しなければならない。 航空法志向規則より抜粋 第二百九条の三 法第九十九条の二第一項の航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為で国 土交通省令で定めるものは、次の各号に上げる行為とする。 一 ロケット、花火、ロックーンその他の物件を法第九十九条の二第一項の 空域(当該空域が管制圏である場合にあっては、地表または水面から百 五十メートル以上の高さの空域及び進入表面、転移表面若しくは水平表 面または法第五十六条の二第一項の規定により国土交通省大臣が指定し た延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域に限る。) に打ち上げること。 二 気球(玩具用のもの及びこれに類する構造のもの除く。)を前号の空域に 放し、または浮揚させること。 三 模型飛行機を第一号の空域で飛行させること。 四 航空機の集団飛行を第一号の空域で行うこと。 五 2 ハンググライダー又はパラグライダーの飛行を第一号空域で行うこと。 法第九十九条の二第一項ただし書の許可を受けようとする者は、次掲げる 事項を記載した申請書を国土交通省大臣に提出しなければならない。 一 氏名、住所及び連絡場所 二 当該行為を行う目的 三 当該行為の内容並びに当該行為を行う日時及び場所 四 その他参考となる事項 第二百九条の四 法第九十九条の二第二項の航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為で 国土交通省令で定めるものは、次の各号に掲げる行為とする。 一 ロケット、花火、ロクーンその他の物件を法第九十九条の二第二項の空 域のうち次に掲げる空域に打ち上げること。 イ 進入表面、転移表面若しくは水平表面又は法第九十九条の二第一項の規 定により国土交通省大臣が指定した延長進入表面、円錐表面若しくは外 側水平表面の上空の空域。 ロ 航空路内の表面又は水面から百五十メートル以上の高さの空域 ハ 地表面又は水面から二百五十メートル以上の高さの空域 二 気球(玩具用のもの及びこれに類する構造のものを除く。)を前号の空域 に放し、又は浮遊させること。 三 模型航空機を第一号の空域で飛行させること。 四 航空機の集団飛行を第一号の空域で行うこと。 五 ハンググライダー又はパラグライダーの飛行を第一号イの空域で行うこ と。 2 前号の行為を行おうとする者は、あらかじめ、前条第二項第一号、第三号 及び第四号に掲げる事項を国土交通省大臣に通報しなければならない。 6.3 大樹町多目的航空公園について 図 6.3.1 大樹町多目的航空公園の位置 施設の概要 図 6.3.2 図 6.3.3 施設の概要 滑走路 図 6.3.4 標準断面図 図 6.3.5 縦断図 位 置 住 所 大樹町字美成 169 番地 北緯 方 位 標 高 東経 143° 26' 44" 50 フィート 北緯 滑走路磁方位 図 6.3.6 42° 29' 50" 82° 14' 42" 東経 262° 14' 42" 航空公園位置 大樹町の気象 大樹町は晴天が多い、雪が少ない、風が弱い等、気象的に優れた条件を有し ている。また、平均気温が低く、ロケットの内燃機関にとって望ましい条件を 満たしている。 図 6.3.7 風向・風速の季節変動 《1999 年(毎時・日中)大樹町美成》 月別気象データ 図 6.3.8 図 6.3.10 月別平均気温 日最大瞬間風速 10[m/s]の出現回数 図 6.3.9 月別降水量 図 6.3.11 日照時間 第7章 結論 第7章 結論 風洞実験の再試験の結果及び、PFM パラシュート開傘試験の結果から得られ た抗力係数、吊索を短くした場合の抗力係数の変化率を元に本試験に PFM パラ シュートと同仕様のパラシュートを用いた場合の再評価を行った結果を表 7.1 に示す。開傘時の速度は最悪値 180[km/h]で計算し、吊索の必要最低本数と安 全率を 3 と 6 の時の本数も示す。また、ロケットの設計に変更が起きたため、 最終的な総重量は 10.17 [kg]となった。開傘時には、燃焼後のため燃料分を引 きパラシュートの重量を引いた、9.075 [kg]で計算する。風洞試験の結果の CD 値は 0.95、PFM 開傘試験結果の CD 値は 11.1 で計算しそれぞれの値で吊索を短 くした場合の値も示す。吊索の長さは直径と同じ長さにした値を基本として評 価する。 表 7.1 PFM パラシュートの再評価(開傘時速度 180[km]の場合) 降下速度[m/s] F [N] CD 0.95 風洞再試験結果 G 3 本数 6 5.44 12034.54 135.23 8 25 49 吊索 2/3 0.7524 6.11 9531.36 107.10 6 19 39 吊索 1/2 0.66405 6.51 8412.14 94.52 6 17 34 開傘試験結果 1.11 5.03 14061.41 158.00 10 29 57 吊索 2/3 0.88 5.65 11147.79 125.26 8 23 45 吊索 1/2 0.77 6.04 7 20 40 9754.31 109.60 CD 値が 1.11 で考えた場合、開傘時の負荷は当初に比べ上昇してしまう。開傘 時の衝撃を吊索 12 本で補うことが出来る値ではあるが、内部機器や開傘時の安 全性を考えた場合 PFM パラシュートの設計値で本試験に使用することは出来 ない。対処法としては、開傘のタイミングを調節して 180[km/h]以下にする方 法が考えられる。吊索を 2/3 にした上で、130[km/h]前後で開傘出来れば安全率 3 を取ることができる。表 7.2 にその評価を示す。 表 7.2 試験結果による再評価(開傘時速度 130[km]の場合) 降下速度[m/s] F[N] CD G 3 本数 6 0.95 5.44 6277.28 70.53 4 13 26 0.7524 6.11 4971.60 55.86 3 10 20 開傘試験結果 1.11 5.03 7334.50 82.41 5 15 30 吊索 2/3 0.88 5.65 5814.74 65.34 4 12 24 風洞再試験結果 吊索 2/3 吊索を短くする方法以外に、通気孔を拡大して抗力を下げる方法が考えられ る。しかし、PFM パラシュートを改良して通気孔を拡大すると、パラシュート の強度が落ちる恐れがあるので、この方法は除外せざるを得ない。 以上の結果から、新たにパラシュートを設計・製作を行う必要があると考え られる。抗力係数は、0.95 と 1.11 の場合療法で再設計・製作した場合を考える。 総重量 9.075 [kg]のロケットを 8 [m/s]前後で降下させるためのパラシュートの パラメータは直径 1.6 [m]で表 7.3 のようになる。 表 7.3 直径 1.6 [m]のパラシュートのパラメータ(開傘時速度 180 [km/h]) CD 降下速度[m/s] F [N] G 本数 風洞再試験結果 0.95 8.50 4929.35 55.39 3 10 20 吊索 2/3 0.7524 9.55 3904.04 43.87 3 8 16 吊索 1/2 0.66405 10.16 3445.61 38.72 2 7 14 開傘試験結果 1.11 7.86 5759.55 64.72 4 12 23 吊索 2/3 0.88 8.83 4566.13 51.31 3 9 19 吊索 1/2 0.77 9.44 3995.37 44.89 3 8 16 3 6 直径 1.6 [m]で設計した場合、CD 値が 1.11 で開傘時の速度が最悪値の 180 [km/h]の場合でも吊索本数の安全率 3 を満たすことができる。また、パラシュ ートが小さくなることにより収納部であるフェアリングも縮小することができ ると予想される。 ハイブリッドロケットを安全に回収するためには、今後の課題は、次のよう になる。 ○ PFM パラシュートをそのまま利用する場合、吊索を短くした上で開傘のタ イミングを合わせることを検討する。 ○ また、その他の方法でパラシュートの抗力を下げる方法を検討する。 ○ パラシュートを再設計し本試験までに FM を製作する。 等が考えられる。 謝辞 本研究を行うに当り、指導教員の佐鳥新助教授には理論、実験に終始、御助 言と適切な御指導をいただき、深く感謝いたします。 また、研究全般にわたり、修士2年の高田強氏に御指導、御協力いただきま した。心より御礼申し上げます。 北海道大学宇宙環境システム研究室の永田晴紀助教授、博士 1 年渡辺三樹生 氏、修士2年中山久広氏には、共同研究として参加させていただき、心より御 礼申し上げます。 同大学機械工学科の大滝誠一教授と修士 1 年の芝邦明氏、学部生 4 年の下岡 彩子氏には、共同研究としてパラシュートの設計、フェアリングの製作、風洞 試験等、御協力いただきました。心より感謝の意を表します。 パラシュートの製作には、対馬由美子氏に御協力いただきました。心より感 謝の意を表します。 最後に、本研究を行うにあたり、御協力いただいた皆様に厚く御礼申し上げ ます。 参考文献 林晴比古新 「Visual Basic 入門 シニア編」ソフトバンク パブリッシング株 式会社 山住富也、森博、 小池愼一「理系のための Visual Basic6.0 実践入門」株 式会社技術評論社 久下洋一 「アマチュア・ロケッティアのための手作りロケット完全マニュア ル」 中村龍輔 「パラシュート」航空学会誌 第 14 巻 第 146 号 「S-520-22 号機 飛翔実験計画書」宇宙科学研究所 SES データセンター 「航空宇宙工学便覧/日本航空宇宙学会編」
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