第77号 - 種苗管理センター

種苗管理センターニュース
No.77
平 成 27年
1月
種苗管理センターニュース
第77号(平成27年1月)
独立行政法人
種苗管理センター
National Center for Seeds and Seedlings
Incorporated Administrative Agency
年頭のご挨拶
独立行政法人種苗管理センター
理 事 長
竹 森
三 治
明けましておめでとうございます。
昨年は、春先の関東・甲信越地方などでの大雪、夏の西日本な
どでの記録的な降雨、秋の大型台風の上陸などにより、各地で気
象による多くの被害がもたらされました。一方で、景気の緩やか
な 回 復 、 雇 用 状 況 の 改 善 、 更 に は 2020年 オ リ ン ピ ッ ク の 東 京 開 催
の決定など、明るい兆しも見られるようになりました。
農 業 関 係 で は 、 昨 年 6 月 に は 「 日 本 再 興 戦 略 2014」 に お い て 、 農 業 の 成 長 産 業 化 に 向 け た
体 系 的 な 改 革 が 打 ち 出 さ れ 、そ の 前 年 末 に 策 定 さ れ た「 農 林 水 産 業 ・ 地 域 の 活 力 創 造 プ ラ ン 」
と併せて、農林水産業を成長産業化し農業・農村の所得倍増を目指すとともに、美しく伝統
のある農山漁村の継承と食糧自給率・自給力の維持向上に資するための、新たな施策が進め
られています。
種苗管理センターにおきましても、昨年は関係方面からの要望に応えるべく、依頼検査で
は果実汚斑細菌病(BFB)の対象植物を拡大したことや、栽培試験の実施期間の短縮や対
象植物の拡大、更には一昨年に一部ばれいしょ原原種で発生した不萌芽の再発防止の徹底な
ど 、業 務 の 質 の 向 上 や 効 率 化 に 取 り 組 み ま し た 。ま た 、本 所 の 総 合 種 苗 検 査 棟 の 立 ち 上 げ や 、
沖縄農場のさとうきび原原種ほ場の防風柵の設置など、業務を着実に推進するために必要な
施設整備も進めました。一方で、ばれいしょ原原種における黒あし病の発生により、原種生
産者の皆様には多大な御迷惑をおかけいたしました。今年は関係者の皆様の御協力を得なが
ら 再 発 防 止 に 取 り 組 ん で ま い り ま す 。 ま た 、 今 年 は 第 3 期 中 期 計 画 ( 平 成 23年 度 ~ 27年 度 )
の最終年度に当たることから、各業務においての5年間の目標・計画を全て達成できるよう
全力で取り組む所存です。
さ ら に 現 在 、 平 成 28年 4 月 の 農 研 機 構 、 農 業 生 物 資 源 研 究 所 、 農 業 環 境 技 術 研 究 所 と の 統
合 に 向 け た 準 備 を 進 め て い る と こ ろ で す が 、 こ の 年 は 種 苗 管 理 セ ン タ ー が 発 足 し た 昭 和 61年
か ら ち ょ う ど 30年 目 の 節 目 と な る 年 で も あ り ま す 。統 合 後 も 種 苗 管 理 セ ン タ ー の 名 称 を 残 し 、
研究開発成果をより一層活用しながら、これまで行ってきた種苗関連業務が更に着実に実施
で き る 体 制 づ く り に 取 り 組 ん で ま い り ま す 。 そ し て 、「 攻 め の 農 業 」 に 引 き 続 き 貢 献 し て い
くなど国民の皆様の御期待に応えるべく努めてまいりますので、関係者の皆様におかれまし
ては御指導、御鞭撻の程をよろしくお願いいたします。
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種 苗管理 セン ター ニュー ス
No.77
平成27年
1月
国際的な活動への取組
U P O V の 第 14回 生 化 学 及 び 分 子 技 術 作
業部会(BMT)等に参加して
品種保護対策課
後藤
洋
2014年 11月 9 日 ~ 13日 の 5 日 間 、 韓 国 の ソ ウ
ルでUPOV(植物新品種保護国際同盟)の
第 14回 B M T (生 化 学 及 び 分 子 技 術 作 業 部 会 )が
開催され、10ヶ国とISTA(国際種子検査協会)
等の国際機関から計52名が参加しました。また、
B M T 終 了 翌 日 の 1 1月 1 4 日 に は 韓 国 主 催 の 「 品
種保護における分子マーカー利用に関するシン
ポジウム」が開催され、韓国内の種苗会社など
を含む総勢約100名が参加しました。いずれも日
本からの参加は私1人でしたが、初めての国際
会議とあって最初は不安と緊張で一杯な出張と
なりました。以下、その概要をご紹介します。
BMTでは、1日目はUPOV事務局から作
業部会についての紹介及びBMTとその役割に
ついての説明がありました。2日目からは栽培
試験に分子マーカーをどのように利用するかが
議題となり、各国の専門家からは分子マーカー
を利用した品種データベースの構築や品種識別
技術等についての発表が行われました。同時に
ISTAなど国際機関を交えたワークショップ
も行われ、分子技術についての情報の共有及び
意見交換が行われました。私からは、品種保護
Gメン業務の紹介と品種類似性試験についての
説明、現在行っているDNA品種識別技術の妥
当性確認や日本が世界に先駆けて実施している
登録品種の標本DNAの保存についての発表を
行いました。他国も侵害案件については興味が
あるようで、野菜の分析は実施していないのか
等の質問を受けました。
また、会議4日目終了後には、青果物、花、
魚を扱う市場を見学しました。中国から輸入し
た野菜や、韓国らしく唐辛子などが流通する様
子がとても印象的でした。
ソウル市内の市場の様子
次に、シンポジウムでは、韓国内の種苗関係
者も集まり、様々な発表が行われました。私か
らはBMTと同様の発表をしましたが、
日本の品種保護GメンとオランダのNaktuinbouw
が行っている権利侵害に係る業務については、
韓国でも興味があるようでした。
今回は初めての国際会議の参加ということも
あり、非常に貴重な経験をさせていただきまし
た。この経験を今後の品種保護対策業務に生か
していきたいと思います。
最後に、このような機会を与えて下さった関
係者の皆様、会議中にフォローして下さったU
POV事務局の小出純様に、この場を借りて厚
くお礼申し上げます。
UPOV事務局の小出氏(左)と筆者
【参考情報】
各国の発表内容等は下記のUPOVのサイト
で確認できます。
http://upov.int/meetings/en/details.jsp?mee
ting_id=34524
下記のサイトに今回のBMTの記事が、日本
語でも掲載されています。
http://japanese.korea.net/NewsFocus/Policie
s/view?articleId=122856
BMTでの発表(右から2人目が筆者)
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種苗 管理 セン ター ニュー ス
No.77
平 成27年
2.国際種子検査協会(ISTA)について
1月
ドブックの編成・出版やワークショップの開催
などの活動もしており、非会員ラボにも広く技
術 の 普 及 を 行 っ て い ま す 。 2014年 11月 に は イ ン
ドネシアで種子病害検査のワークショップが開
催され、種苗管理センターからも講師を派遣し
ました。
病害検査課長
佐藤 仁 敏
(ISTA理事)
国際種子検査協会(ISTA、事務局:スイ
スのチューリッヒ)は、種子の品質を評価する
国際標準種子検査法を策定すること、この評価
法の国際的な利用を促進することを目的として
1924年 に 設 立 さ れ た 国 際 組 織 で す 。 以 下 、 I S
TAの業務運営等の概況についてご紹介したい
と思います。
ISTAでは、主として①種子検査法(以下、
「 検 査 法 」 と い う 。) の 策 定 及 び 国 際 標 準 化 、
②ラボの技能の国際標準化、③種子検査報告書
の国際標準化、④種子科学に関する国際レベル
での情報交換、の活動を行っています。
ISTAの会員は、国あるいは経済地域の政
府機関、公的及び民間の種子検査ラボ(以下、
「 ラ ボ 」 と い う 。 ) で 、 2013年 現 在 、 75ヵ 国 、
212ラボが会員となっています。地域的には種子
検査の歴史が古いヨーロッパに会員が多く、
I S T A 認 証 ( 後 述 ) を 取 得 し て い る 127の ラ
ボをみると、東西ヨーロッパが約6割を占め、
続いて南北アメリカ、アジア及びオセアニアが
それぞれ約1割となっています。
ISTAでは国際標準となる検査法を策定す
る と と も に 、 ISO17025( 試 験 所 ・ 校 正 機 関 の 国
際規格)をもとに種子検査に特化した独自の認
証システムを構築し、ラボの認証を行っていま
す。認証を取得したラボはISTA検査法によ
り出した結果について種子検査報告書(IST
A 証 書 。 以 下 、「 証 書 」 と い う 。) を 発 行 す る こ
とができ、円滑な種子の国際取引に証書が利用
されています。認証を取得するには、検査要領
等をとりまとめた品質保証マニュアルと熟練度
試験と呼ばれる技能試験による評価基準に合格
しなければなりません。さらに、ラボは認証時
及び認証後3年ごとにISTAの現地査察を受
けることとなっており、これによりラボの品質
は国際レベルで維持されています。日本では、
種苗管理センターのほか、家畜改良センター茨
城 牧 場 長 野 支 場 、 タ キ イ 種 苗 (株 )、 (株 )サ カ タ
のタネがラボの認証を取得しており、さらに1
社が取得を予定しています。
ISTAには発芽、含水量等の項目ごとに分
か れ た 18の 技 術 委 員 会 が あ り 、 技 術 委 員 会 は 検
査法の策定を行っています。新検査法や改訂法
が毎年開かれる年次総会に提案され採択されて
います。その他にも検査法の解説書となるハン
ワークショップ参加者との集合写真
ISTAは3年を一期として活動しており、
3年ごとに年次総会に種子シンポジウムを組み
合わせたコングレスと呼ばれれる大きな会議を
開催しています。これには多くの種子検査者や
研究者が会し、様々な分野で研究成果を発表す
るとともに、良い情報交換の場となっています。
同時に、役員の改選が行われ、会長のほか選挙
によって選出された副会長と8名の理事、これ
に 次 期 コ ン グ レ ス 開 催 国 か ら 1 名 加 わ っ た 11名
で新しい理事会がスタートします。理事会にお
いては、ISTA全体の運営や予算、会員から
の提案事項などの協議をはじめ、UPOV、O
ECDやISF(国際種子連盟)などの外部機
関・団体にも参加してもらい連携を深めていま
す。
種 苗 管 理 セ ン タ ー で は 2007年 か ら I S T A に
理事を出しています。アジアの状況や意見を
ISTAにつなげるとともに、アジアの会員の
コミュニケーションが活発に行えるよう、環境
の 整 備 を 行 っ て き ま し た 。 2011年 に は I S T A
総会をつくばで開催する計画でしたが、予期せ
ぬ震災とそれに続く原発事故によって実現する
ことはできませんでした。毎年総会に出席する
たびに日本での開催が熱望されています。
今年2月には定例の理事会がつくばで行われ
ることとなり、我が国のラボや種苗産業の実情
を見ていただく格好の機会であると思っていま
す。こうしたISTAの活動を通じ、アジアに
おける種苗検査分野や種苗産業の発展に、種苗
管理センターが貢献できることが今後とも期待
されています。
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平成27年
センターの業務概要を順次ご紹介します
業 務 紹 介(その2)
栽 培 試 験 業 務
栽培試験課長
佐々木
信秋
種苗は農業生産にとって最も基礎的なもので
あり、品質、収量、耐病性等に優れた多様な品
種の育成は、農業発展のために重要なものです。
わが国は、植物新品種の保護に関する国際条約
(UPOV条約)に加盟し、種苗法に基づく品
種登録制度により、植物の新品種を育成した者
の権利を保護し、植物品種の育成を振興してい
ます。
種苗管理センターでは、この制度の根幹であ
る「出願品種が新品種であるかどうか」を国が
判定するために必要な栽培試験を行っています。
栽培試験では、出願品種をほ場や温室で栽培し、
同一条件下で栽培される既存の品種(最も出願
品 種 と 類 似 し た 品 種 。 以 下 、「 対 照 品 種 」 と い
う 。) と 比 較 し な が ら 、 形 態 的 特 性 ( 大 き さ 、
形、色等)及び生理生態的特性(病害抵抗性等)
を調査し、登録の要件である区別性、均一性、
安定性を評価しています。
栽培試験の実施場所は、現在、本所(茨城県
つくば市)、北海道中央農場(北海道北広島市)、
上 北 農 場 ( 青 森 県 七 戸 町 )、 八 岳 農 場 ( 長 野 県
茅 野 市 )、 西 日 本 農 場 ( 岡 山 県 笠 岡 市 )、 雲 仙 農
場(長崎県雲仙市)であり、植物の適地性を踏
まえ、農場の立地条件、自然条件等を活用し実
施しています。
シクラメンの栽培試験:西日本農場
平 成 25年 度 の 栽 培 試 験 の 実 施 点 数 ( 出 願 品 種
数 ) は 、 本 所 96品 種 、 北 海 道 中 央 農 場 4 品 種 、
上 北 農 場 4 品 種 、 八 岳 農 場 65品 種 、 西 日 本 農 場
518品種、雲仙農場118品種で合計が805品種でし
た。植物の区分で見ると、きく種、カーネーシ
ョン種、ペチュニア属、カリブラコア属等の草
花類が491品種、ばら属、あじさい属等の観賞樹
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1月
が216品種、トマト種、レタス種、いちご属等の
野菜が71品種、稲種、大豆種等の食用作物が
23品 種 、 ア ジ ア わ た 種 等 の 工 芸 作 物 が 2 品 種 、
しば属等の飼料作物が2品種でした。
栽培試験に関連する業務として、出願時に出
願者から提出される種子及びきのこ菌株の保管
業 務 を 行 っ て お り 、 25年 度 末 の 保 存 点 数 は 、 種
子が205種類4,803品種、きのこ菌株が18種類367
品種となりました。
また、栽培試験は植物種類別審査基準に従っ
て実施されますが、審査基準がない新しい種類
の植物が出願された場合は、新たに審査基準を
作成する必要があります。センターでは、農林
水産省の依頼に基づき、審査基準の作成業務も
行っています。
形態的特性の調査風景
さらに、栽培試験を効率的に実施するために
栽培管理方法や特性調査手法等をとりまとめた
「栽培・特性調査マニュアル」及び「特殊検定
マニュアル」の作成、栽培試験に使用する対照
品種等を安定的に供試できるようにするため植
物品種の収集・保存を行っています。
国際対応としては、審査方法の国際統一化に
向けての諸課題について検討するUPOV作業
部会への参加、東アジア植物品種保護フォーラ
ムにおける専門家の派遣・研修生の受け入れ、
JICA研修の実施等を行っています。
栽培試験は、育成者権という知的財産権を育
成者に付与するかどうかを判断するための試験
です。育成者権が育成者に付与されれば、育成
者が独占的にその品種を利用できるようになる
代わりに、育成者以外の者はその品種の利用が
制限されます。このため、公平・公正な立場で
「出願品種が新品種であるかどうか」を判定す
る必要があり、そのためには、審査基準に基づ
いて、植物を適切に栽培し、正確に特性調査を
行うことが重要と考えています。今後とも、植
物品種の育成の振興に貢献できるよう、品種を
利用する一般ユーザー、育成者等のニーズに的
確に対応し、公平・公正な立場で栽培試験を実
施してまいります。
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1月
11の農場の様子を順次ご紹介します
農 場 だ よ り (その2)
鹿児島 農 場 へ よ う こ そ
鹿児島農場長
戸水
久夫
種 子 島 は 鹿 児 島 県 の 大 隅 半 島 南 部 か ら 約 40km
の洋上にあり、古くはポルトガル船が最南端の
門倉岬に漂着し、鉄砲伝来の地として歴史に名
を刻んでいます。また、現在ではロケットを打
ち上げる島ということで、全国から大勢の観光
客や写真愛好家が訪れています。
島 は 南 北 60km、 東 西 に 6 ~ 12kmと 細 長 い 種 子
に似た形をしており、東は太平洋西は東シナ海
に 面 し た 周 囲 166kmの 島 で 、 近 隣 に は 縄 文 杉 等
が有名な世界遺産の屋久島があります。北は西
之表市、南は南種子島町、その中央に中種子町
が あ る 人 口 約 3万 人 の 島 で 、 鹿 児 島 農 場 は こ の
中種子町の市街地から南側約4.5kmの田島地区に
位置しています。
遺伝資源用かんしょ(1,918品種)の収穫
さとうきび原原種
現在、鹿児島県と沖縄県に配布している原原
種 は 18品 種 あ り 、 鹿 児 島 農 場 で は 鹿 児 島 県 内 の
土性や気象条件等に適合している7品種の原原
種を配布しています。その他に、有望視されて
い る 新 品 種 候 補 ( 平 成 26年 12月 現 在 10系 統 ) を
すぐに配布できるよう予備増殖を行っています。
近年では、さとうきびの使用用途の多様化に伴
い、品種改良によってバイオ燃料用や家畜の飼
料用といった品種も多く開発され、数多くの新
品種候補が出番を待っています。
全 職 員 10名 の 小 さ な 農 場 で す が 、 さ と う き び
が バ イ オ技 術 を通 して C O 2 の排 出量 を抑 え地球
温暖化防止に繋がることも期待しながら、地域
からの要望に添えるよう全職員が力を合わせて
頑張っています。
当 農 場 は 昭 和 40年 に 南 西 諸 島 の 畑 作 基 幹 作 物
であるさとうきびの生産向上のため、健全無病
な原原種を安定的に供給することを目的として
設置されました。その後、幾度かの組織改編を
経て、現在はさとうきび原原種の生産・配布と、
植物遺伝資源の保存や増殖を行っています。セ
ンターは新品種の育成素材となる植物遺伝資源
の保存を戦略的に行う「農業生物資源ジーンバン
ク 事業 」のサ ブ バン ク とし て位 置付 けら れてお
り、鹿児島農場ではかんしょ、びわ、かんきつ
等の保存や増殖を行っています。
さとうきびの作型には春植と夏植があり、ま
た、一般栽培では収穫した株から再び出る芽を
栽培管理して3~4年間植え替えを行わない株
出し栽培も行われています。
鹿児島農場の正門
奥は、「ワシントンヤシ」
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種 苗管理 セン ター ニュー ス
No.77
平成27年
イベント・レポート
1.アグリビジネス創出フェア2014
企画管理課
髙田 敬造
平 成 26年 11月 12日 ~ 14日 の 3 日 間 、 東 京 ビ ッ
クサイト西ホールにて「アグリビジネス創出フ
ェア2014」(農林水産省主催)が開催され、種苗
管理センターからも業務紹介等を行う出展をし
ました。
今回は初めての試みとして、「農業生物資源ジ
ーンバンク事業」を行う農業生物資源研究所
(生物研)と植物遺伝資源の分野で共同出展し
ま し た 。 展 示 ブ ー ス で は 、 パ ネ ル の ほ か 、 全 80
品種のばれいしょ原原種や、ジーンバンク事業
で栽培・保存しているかんしょを紹介しました。
来訪者の多くは、ばれいしょ原原種の品種の多
さに驚かれ、どれが一番美味しいのか、どうす
れば手に入るのかなど尋ねられました。また、
植物遺伝資源の栄養体保存植物数、保存点数の
多さにも驚かれていました。
ばれいしょ原原種を配布する種苗生産業務は
センターの重要な業務の一つですが、共同出展
となったジーンバンク事業の遺伝資源の植物種
類及びその保存数も併せて紹介したことで、業
務の意義や重要性をより理解していただくこと
ができたように思います。また、会場に「品種
保護活用相談窓口」を開設し、品種保護Gメン
が植物品種の保護や活用についての相談に対応
しました。
このような形で、フェアの目的である異種産
業の方々のマッチングの場を提供でき、また、
来訪者の方々から様々な要望や情報を得ること
ができたことは私たちにとっても大きな収穫と
なりました。今後ともこうした機会を通じ、広
く一般の方々に当センターの業務をPRしてい
きたいと思います。
種苗管理センターの展示ブース
2.しちのへオータムフェスタ2014
上北農場業務部長
鈴木 一
平 成 26年 10月 25日 ~ 26日 に 開 催 さ れ た 「 し ち
のへオータムフェスタ2014」
(青森県七戸町主催)
に、上北農場からも参加しました。当イベント
は、特産品販売の商工まつり、介護ロボ展示等
の健康まつり、舞台発表と作品展示の文化まつ
り、農林畜産物の共進会や販売の農林畜産まつ
りの4部門と、七戸そば博覧会が共催で開催さ
れたもので、会場内は大変な盛況でした。
上北農場からは、担当業務を紹介するパネル
の展示、ばれいしょの品種紹介及び植物遺伝資
源として保存しているりんごとくるみの展示を
行いました。展示ブースには2日間で延べ190名
に 立ち寄っていただき、来訪の皆様からは、「ば
れ い し ょ の 種 類 は 多 い ん だ ね 」、「 こ の 種 い も が
ほしいんだけど」、
「こんなりんごは初めて見た」
などの感想をいただきました。
次回は試食によるばれいしょ品種の普及も考
えつつ、広報活動の場として積極的に参加した
いと思っています。最後に、イベントへの参加
の機会をいただいた七戸町並びにお立ち寄りい
ただいた皆様に厚くお礼申し上げます。
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1月
イベント会場
上北農場の展示ブース
種苗 管理 セン ター ニュー ス
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平 成27年
27年 秋 植 用 の 種 い も は 原 原 種 と 調 査 用 種 苗 を
合わせると23品種となり、昨年から1品種増え、
品 種 数 は 増 加 傾 向 に あ り ま す 。 27年 秋 植 用 の 生
産目標は、原原種と調査用種苗を合わせて2,828
袋(20kg/袋)です。
種いもの切断作業は、植付ける順番を考慮し
な が ら 作 業 を 進 め 、 26年 内 に 総 量 の 75% 程 度 を
切 断 し ま し た 。 雲 仙 農 場 で は 、 1月 8 日 に 植 付
を開始し栽培管理等で多忙な時期になりますが、
1つ1つの作業を手順に沿って正確に進めてい
きたいと思います。
農場トピックス
1.秋植用種いも植付準備
雲仙農場業務部長
村 上
博 文
雲 仙 農 場 ( 長 崎 県 雲 仙 市 ) で は 、 平 成 27年 秋
植 用 ば れ い し ょ 原 原 種 の 生 産 に 向 け て 、 26年 12
月 15日 か ら 種 い も の 切 断 作 業 を 開 始 し ま し た 。
種 い も の 切 断 作 業 に 当 た っ て は 、 作 業 前 の 12月
8日に貯蔵庫から種いもを移動し、ガラス温室
で低温・強光条件下において芽出しを行いまし
た。
種 い も の 切 断 作 業 は 、 切 断 し た 一 片 が 35g 以
上になるように種いもの大きさに合わせて4分
割、2分割に切断します。小粒の種いもは切断
せずにそのまま使用します。また、病害対策と
して塊茎単位で(同じ種いもの切片は隣接して)
植付を実施している関係から、切断は種いもの
頂芽部を中心として縦に切り始め、切り落とさ
ず基部(お尻)を残して、風通しの良い場所に
静置、保管します。種いもの切断に使用する切
断刀は病気の感染を防ぐために種いもごとに交
換消毒を行います。
種いもの切断作業
2.種子ばれいしょ保管・出荷施設
胆振農場業務部長
鈴木
1月
敦
胆振農場(北海道安平町)では、現在年間約
18,000袋のばれいしょ原原種を出荷しています。
しかし、掘取直後のばれいしょ風乾施設や製袋
した原原種の保管・出荷施設の整備が遅れてお
り、これまでは農機具保管舎等を仮利用しなが
ら何とかしのいできました。
このたび、掘取後のばれいしょ等を総合的に
管理できる「種子ばれいしょ保管・出荷施設」
を新設することとなりました。工事は昨年から
進められています。既存施設の解体から始まり、
基礎工事終了までには、軟弱地盤のためくい打
ち工事が必要になったり、未使用配管などの埋
設物撤去に若干時間を取られながらも、ほぼ予
定 ど お り の 工 程 で 進 ん で い ま す 。 12月 末 現 在 で
基礎・腰壁のコンクリート打設が終了しました。
そして年明けから鉄骨の組上が行われる予定と
なっています。
この施設の新設により、胆振農場の原原種の
収穫から出荷までの一連の作業において、大き
く3点の改善がなされます。まず1点目は、原
原種の品質向上に大きく寄与します。徹底した
風乾処理と適切な保管温度により品質を維持で
- 7 -
きるようになり、かつフォークリフトでの移動
距離短縮や舗装面の走行によりばれいしょへの
ダメージを軽減できます。2点目は、ばれいし
ょの移動の動線が整理されることにより作業効
率が大幅にアップします。3点目は降雨時に積
み込みができることで、いつでも発送の依頼を
受けることができ、計画的な出荷が可能になり
ます。
竣 工 は 3 月 下 旬 の 予 定 で す 。 27年 産 の 収 穫 時
から使用が開始され、原原種の品質向上が期待
されます。
工事現場(平成26年12月撮影)
種 苗管理 セン ター ニュー ス
No.77
平成27年
業
務
推
進
指
1月
針
(センターの使命)
我々は、国から示された中期目標に則し、農業生産の最も基礎的かつ重要な資材である種苗の管理を通
じて、農業の発展ひいては国民生活及び社会経済の安定等に貢献する。
(我々の責務)
我々は、独立行政法人の職員として業務の多くを国民の税金で実施していることを強く自覚し、
常に関係者、国民の理解を得られるよう、公平・公正な立場で効率的かつ効果的に業務を実施する。
(業務の特質)
我々は、センターの業務が、民間にゆだねられず、公共上の見地から確実な実施が求められるも
のであることから独立行政法人で行うこととされていることを認識し、誇りと使命感をもって行動
する。
(高い技術力の保持)
我々は、日々研鑽に励み、種苗に関する我が国最高の技術力を保持しつつ、他の機関ではなし
えない優位性、信頼性をもって業務を実施し、文字通り我が国の種苗に関するセンターとして高い
評価を得るよう努める。
(意識の改革)
我々は、独立行政法人制度の、厳正な評価のもと事前関与・統制を極力廃して自主性を高めた弾
力的な運営を期そうとする趣旨を理解し、自ら考え、変化に柔軟に対応し、種苗に関する業務を総
合的に行うことによる相乗効果(シナジー効果)を活かしつつ、各組織及び個人が相補いながら一
丸となってさらなる発展をめざす。
(編集後記)
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
○国際的な活動として、UPOV(植物新品種保護国際同盟)の技術作業部会の
1つである生化学及び分子技術作業部会(BMT)の様子と、国際種子検査
協会(ISTA)の活動についての記事を掲載しました。
UPOVにはBMTのほか、審査基準の国際標準(テストガイドライン)を
策定する計6つの作業部会があり、種苗管理センターからも毎年職員を派遣し、
検討に参画しています。また、2014年10月に開催されたUPOV理事会では、
各技術作業部会の議長(任期3年)が選出され、日本からは農林水産省の職員
2名が2つの作業部会で議長に選出されています。日本から作業部会の議長が
選出されたのは、これが初めてです。
また、ISTAでは、アジア地域からセンターの病害検査課長が理事に選出され
ています。
○業務紹介では栽培試験業務を紹介しました。植物種類によって栽培期間が様々で
あり、たくさんの既存品種から最も類似したものを選定したり、限られたスペース
で計画的に栽培していく様子などおわかりいただけたでしょうか。
○農場紹介では鹿児島農場を紹介しました。鹿児島農場では、製糖用だけではなく、
バイオ燃料用や家畜の飼料用のさとうきびも栽培しています。さとうきびの多くは
同じ種子島内にある農研機構の九州沖縄農業研究センターの種子島試験地で育成
され、鹿児島県内ではNiF8(農林8号)、Ni22(農林22号)、Ni23(農林23号)と
いった品種が栽培されています。ちなみに、「Ni」は日本を、「F」は台湾に由来
していることを示しています。(M)
独立行政法人種苗管理センター
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