ネオフロン ETFE EP

G-23e
(EP-600 系)
1. はじめに
ネオフロン ETFE EP-600 系は、テトラフルオロエチレ
ンとエチレンの共重合体で、従来のネオフロン ETFE
EP-500 系に比べ、極めて容易な成形加工性と柔軟性が
あリ、電気的、化学的性質も同様に優れています。
容易な成形加工性のため従来の EP-500 系より低温で
射出・押出・ブロー成形が出来ます。
特に機械的強靱さ(屈曲寿命)に加え、化学的、熟的、
電気的特性に優れているため、さまざまな環境で使用
することが出来ます。
2. 特長
ネオフロン ETFE EP-500 系に比べて、特に次の点に優
れています。
その他 EP-500 系と同様、下記の特長も併せて持って
います。
(1) 優れた成形加工性
(4) 優れた耐食性
融点が 225℃で熱分解温度が 350℃のため、幅広
い温度での成形ができます。そのため成形機も耐
腐食性の材質であれば、工ンプラ用の成形機で対
応可能です。
(2) 優れた柔軟性
従来の ETFE の長所であり、短所でもあった硬さ
と曲げ弾性を改良。柔軟性はネオフロン PFA と同
等で、特に曲げ寿命が従来の ETFE の約 10 倍と優
れているため、くり返し屈曲する箇所での用途に
も適しています。また電線の高速押出しも容易と
なります。薄肉成形品の加工にも適しています。
(3) 優れた難燃性
酸素濃度限界指数は 50%です。(EP-500 系は 31%
です。)
とは、当社で製造
販売中のフッ素樹脂の登録商標です。
強い酸化性薬品を除いてほとんどの薬品に侵さ
れません。
(5) 優れた電気特性
誘電率と誘電正接が広い温度と広い周波数領域
で小さく、高い絶縁耐力を示します。
(6) 優れた耐熱性
連続使用最高温度は 150℃です。
3. ネオフロン ETFE ぺレットの品種
第 1 表 ネオフロン ETFE の品種と性状
項目
ペレット
の形状
色
見掛け比重
メルトフローレイト
(g/10min)
EP-610
円柱状
半透明乳白色
0.8∼1.2
25∼35
電線・チューブ
EP-620
円柱状
半透明乳白色
0.8∼1.2
9∼18
フィルム・シート
電線・ケーブル
品種
特
長
※ 温度 297℃、荷重 49N
4. 性質
第2表
性
比
吸
水
物理的性質
成 形 収
接
触
熱 的 性 質
ASTM
質
試験法
重
率
縮
角
D792
D570
熱 伝 導 率
C177
線膨張係数
融
点
メルトフローレイト
D696
ネオフロン ETFE 物性一覧表
測定条件
24h 8.5mmt
対水
23∼60℃
297℃
連 続最 高使 用温 度
単
位
%
cm/cm
度
W/(m・k)
℃/㎝
1/℃
℃
g/10min
℃
ネオフロン ETFE
EP-610,EP-620 EP-521,EP-541
ネオフロン PFA ネオフロン FEP
AP-210
NP-20
1.83∼1.89 1.72∼1.76 2.12∼2.17 2.12∼2.17
<0.1
<0.1
<0.01
<0.01
0.03∼0.04 0.03∼0.04
0.03∼0.06
0.04
96
96
114
115
0.24
0.24
5∼10×10-5
5∼9×10-5
218∼228
9∼35
150
260∼270
4∼16
150
12×10-5 (8∼15)×10 -5
302∼310 265∼275
*
(10∼18) *(4.5∼8.5)
260
200
28∼33
350∼430
39∼47
350∼450
25∼30
350∼450
20∼34
300∼400
―
4.3∼5.4×102
0.26
0.25
引 張 強 さ
D638
23℃
伸
び
機械的性質 引 張 弾 性 率
D638
23℃
MPa
%
D638
25℃
MPa
2.9∼3.9×102 5.9∼6.9×102
曲げ弾性率
D790
23℃
MPa
―
6.9∼8.8×102 8.8∼12.7×102 5.9∼6.9×102 5.4∼6.4×102
0.05
0.06
0.05
0.05
静摩擦係数
誘
電
誘
電
誘 電 正
電気的性質
誘 電 正
率
率
接
接
絶縁破 壊強度
体 積 固 有抵 抗
燃
焼
性
(酸素濃度限界指数)
*測定温度:372℃
2
対磨き鋼
D150
D150
D150
D150
D149
D257
D2863
103Hz
lO6Hz
lO3Hz
lO6Hz
3.2mm
MV/m
Ω-cm
2.6∼2.8
2.6∼2.8
8×10-4
5×10-3
16
5∼6×1017
2.6∼2.8
2.6∼2.8
8×10-4
5×10-3
16
7.8×1017
2.1
2.1
1×10-5
3×10-4
20
>1018
2.1
2.1
6×10-5
5×10-4
20∼24
>1018
%
50
31
95<
95<
4-1 機械的性質
第1図
温度と引張強さの関係
第2図
第3図
温度と伸びの関係
温度と曲げ弾性率の関係
3
4-2 曲げ寿命(MIT)
曲げ寿命のメルトフローレイトとフィルムの厚みと
の関係を示します。
第4図
メルトフローレイトと曲げ寿命の関係
第5図
フィルム厚みと曲げ寿命の関係
4-3 燃焼性
EP-600 系は難燃性で、EP-500 系よりも高い限界酸素
指数を示します。
第 3 表 ネオフロン ETFE の燃焼性
限界酸素指数(Vol%)
4
EP-600 系
50
EP-500 系
31
ネオフロン FEP
95<
ネオフロン PFA
95<
4-4 熱的性質
第 4 表 ネオフロン ETFE の熱分解開始温度(℃)
空気中
N2 中
EP-600 系
360∼370
380∼390
EP-500 系
340∼350
400∼410
第 6 図に EP-600 系の熱重量分析(TGA)の結果をネオフ
ロン ETFE(EP-500 系)、ネオフロン FEP、ネオフロン
PVDF と比較して示します。
第 6 図 ネオフロン ETFE の熱分解挙動(空気中)
5
4-5 耐薬品性
第 5 表 ネオフロン ETFE の薬品浸漬質量変化
耐薬品性
質量変化
薬
品
質量変化(%)
浸漬温度
(℃)
名
ネオフロン ETFE
EP-610,EP-620
EP-521,EP-541
0
0
ネオフロン FEP
塩
酸(35%)
80
硫
酸(95%)
80
0
0
0
硝
酸(60%)
80
+0.2
+0.2
0
酸 (50%)
25
0
0
0
フ
ッ
酢
0
酸(50%)
80
0
0
0
水 酸 化 ナ ト リ ウ ム
80
0
0
0
ア ン モ ニ ア 水(28%)
25
+0.1
+0.1
0
メ チ ル ア ル コ ー ル
60
+0.3
+0.3
0
エ チ ル ア ル コ ー ル
80
+0.7
+0.7
0
ア
ン
60
+3.0
+3.0
+0.2
素
80
+6.0
+6.0
+2.2
ム
60
+4.0
+4.0
+0.6
セ
四
ク
塩
ト
ロ
化
ロ
炭
ホ
ル
ト
ル
エ
ン
80
+2.8
+2.8
+0.6
キ
シ
レ
ン
80
+2.2
+2.2
+0.3
ベ
ン
80
+3.4
+3.4
+0.4
ン
80
+1.1
+1.1
+0.4
メ チ ル エ チ ル ケ ト ン
80
+3.7
+3.7
+0.3
ア
ン
80
+0.6
+0.6
0
ル
80
+4.0
+4.0
+0.3
ン
60
+4.3
+2.0
+0.6
ル
80
+0.4
+0.4
0
酸
80
+3.7
+3.3
+0.1
ン
80
+7.3
+7.0
+0.3
n
ン
−
キ
ニ
酢
ジ
ゼ
ヘ
酸
リ
エ
エ
チ
フ
エ
ル
チ
ア
ミ
ノ
無
水
ジ
サ
オ
ー
酢
キ
サ
浸漬条件 75∼85℃7 日間。但しフッ酸、アンモニア水は室温
比率で示す。
引張特性変化はブランクを 100 とし、それに対する
第 6 表 ネオフロン ETFE の薬品浸漬による引張強さ・伸びの保持率
薬
品
浸漬温度
(℃)
名
硝
ク
酸(60%)
ロ
ロ
EP-521,EP-541
95
92
82
ネオフロン ETFE
EP-610,EP-620 EP-521,EP-541
109
104
ネオフロン FEP
95
60
71
85
90
109
100
100
25
101
100
101
103
100
102
ア
ン
60
65
81
101
119
101
104
ン
80
74
83
88
105
107
101
ン
60
75
91
―
100
106
―
メ チ ル ア ル コ ー ル
60
90
94
―
107
102
―
無
酸
80
70
87
―
119
104
―
ン
80
64
79
―
108
99
―
ト
ジ
6
EP-610,EP-620
ネオフロン FEP
ム
セ
ト
ル
エ
チ
エ
ル
水
オ
ル
ネオフロン ETFE
伸び保持率(%)
ア ン モ ニ ア 水(28%)
ジ
ホ
80
引張強さ保持率(%)
ア
ミ
酢
キ
サ
4-6 電気性質
① 比誘電率
ネオフロン ETFE の比誘電率と誘電正接の温度に
よる変化を第 8 図に示します。
第 8 図 ネオフロン ETFE の比誘電率の温度による変化
② 誘電正接
ネオフロン ETFE の誘電正接の温度による変化を
第 9 図に示します。
第 9 図 ネオフロン ETFE の誘電正接の温度による変化
7
③ 体積抵抗率
温度と体積抵抗率の関係を第 10 図に示します。
第 10 図
ネオフロン ETFE の温度と体積抵抗率の関係
④ 絶縁破壊電圧
膜厚と絶縁破壊電圧の関係を第 11 図に示します。
第 11 図
8
ネオフロン ETFE の膜厚と絶縁破壊抵抗との関係
4-7 耐熱老化性
1mm 圧縮シートを 200℃で暴露した時の引張特性を次
に示します。
第 12 図
高温暴露による引張強さの変化
第 13 図
高温暴露による伸びの変化
4-8 耐放射線性
ネオフロン ETFE は PTFE,FEP に比べ耐放射線性に優
れています。
Co60 で照射したときの引張強さ・伸びの変化を第 14
図・第 15 図に示します。
第 14 図
放射線量と引張強さ残留率との関係
第 15 図
放射線量と伸び残留率の関係
9
5. 成形加工性
第 16 図
温度とメルトフローレイトの関係
成形は PFA や FEP と同様に押出・射出・ブロー成形な
どの方法で成形できます。特に薄肉で複雑な形状のも
のが成形できます。
EP-600 系の成形温度は 260∼330℃の範囲にあり、
350℃以上になると熱分解を生じるため 350℃以下の
温度で成形しなければなりません。
押出成形においては、臨界剪断速度及び応力以下で成
形しなければ成形品の表面に肌あれを生じます。
第 17 図にネオフロン FEP と比較して剪断応力と剪断
速度の関係を示します。
成形機を使用するにあたって、特に押出成形機・射出
成形機・ブロー成形機など使用するときは、溶融樹脂
の接触する部分に耐食性の優れた材質を選ぶ必要が
あります。たとえばシリンダーには、X-alloy、H-alloy、
スクリューには、ハステロイ等の高ニッケル合金の材
質が必要です。
第 17 図
剪断応力と剪断速度
5-1 押出成形
押出成形では電線、パイプ、チューブ・フィルム、モ
ノフィラメントなどが成形できます。ネオフロン FEP、
PFA などに比べ成形し易く、特に高速押出が可能です。
10
押出機のシリンダー径は通常 30∼65mm のものが多く、
スクリュー形状は L/D:20∼24、圧縮比:2.5∼3.0 の
ものが用いられます。チューブと電線被覆成形条件の
一例を第 7 表に示します。
第7表
成
押
形
品
出
機
シ リ ン ダ ー 径(mm)
ス ク リ ュ ー L/D
ス ク リ ュ ー 圧 縮 比
ス ク リ ュ ー タ イ プ
ダ
イ(ダイ径/チップ径)
温
度
シ リ
シ リ
シ リ
ダ
イ
チ
ス ク リ ュ
D
引 取 り
条
件(℃ )
ダ ー (後 部 )
ダ ー (中 部 )
ダ ー (前 部 )
ヘ
ッ
ド
ッ
プ
ー 回 転 数(r.p.m.)
D
R
速 度 (m/min)
ン
ン
ン
押出成形条件
電線被覆
チューブ
EP-620
EP-610
EP-620
チューブ内径 4.2mm
チューブ外径 6.Omm
肉厚 0.9mm
芯線:軟銅線
O.7/0.4
被覆厚み:0.15mm
芯線:軟銅線
2.4/1.4
被覆厚み:0.5mm
25
20
2.8
緩圧縮
17/13
30
22
2.8
急圧縮
7/4
30
22
2.8
急圧縮
16/10
230
250
260
250
―
8.8
2.72
0.76
250
270
290
300
300
10
100
110
250
260
280
290
290
20
100
16
5-2 射出成形
EP-600 系は、通常のインラインスクリュー式成形機で
各種容器・器具・電気・電子部品など容易に成形する
ことができます。
射出成形機のシリンダー温度は 350℃、金型は 150℃
まで加熱可能なものが必要です。
スクリュー、シリンダーの材質はハステロイ、X-alloy
等の耐食材料を使用、金型は合金工具鋼又は炭素工具
鋼でクロムメッキを施したものを使用します。金型の
第8表
温
度
リ
リ
リ
リ
条
ダ
ダ
ダ
ダ
件 (℃ )
シ
ン
ー(後部)
シ
ン
ー(中部)
シ
ン
ー(前部)
シ
ン
ー(ノズル)
金
型
ス ク リ ュ ー 回 転 数(r.p.m.)
射
出
圧
力 ( M Pa )
保
持
圧
力 ( M Pa )
保
圧
時
間 (s )
射 出 速 度 (フリコン目盛)
冷
却
時
間 (s )
成形サイクル(s/cycle)
射出成形機:日本製鋼(株)製 N-65
ゲート構造は製品の厚みなどに応じた選択が必要で
す。たとえばダイレクトゲート、エッジゲート、ディ
スクゲート、フィルムゲート、センターゲート等用い
ることができますが、ゲートはできるだけ大きく、又
ランナも円形で、できるだけ短く設計する必要があり
ます。
第 8 表に射出成形条件の一例を示します。
射出成形条件
袋ナット(径 18mm)
平板(30L×100L×2t)
250
280
305
305
100
180
93
44
20
1.0
60
120
250
280
300
300
100
180
93
44
20
1.0
60
120
3 オンス
シリンダーC 型
スクリユー
42mmφ
42mmφ
11
6.用途
第9表
応用例
成形品
応用例
電線、ケーブル
機器配線用電線、耐熱電線
フラットケーブル、同軸ケーブルのジャケット
電子・電気部品
コネクター、ソケット
容器、器具
化学・医療実験器具
タワーパッキン、薬品用バルブ
パイプ、チューブ、収縮チューブ
フレキシブルチューブ、ベロー、膨脹継手
熱交換器用チューブ
ライニング
バルブ・パイプ・継手類のライニング
ポンプ・タンクのライニング
フィルム、シート
プリント基板、コンデンサー用フィルム
ガスサンプリングバッグ
鋼板・建材ラミネート用フィルム
離型フィルム
フィラメント
スクリーン、フィルター、デミスター
7.ネオフロン ETFE の種類と包装単位
色及び包装単位
色の種類
包装単位
半透明乳白色
50kg
白,黒
10kg
赤,橙,黄,緑,青,紫,茶,灰
5kg
種類
EP-610,EP-620
EP-521,EP-541
カラーペレット
8.取扱い上の注意
ご使用前には、必ず製品安全データシート(MSDS)をお
読み下さい。
ネオフロン ETFE の焼成中あるいは樹脂温度が高温
(150℃)になる場所では必ず局所排気装置を設置し排
気や換気を十分に行い、分解ガスを吸わないようにし
て下さい。更に高温(310℃)になると熱分解が多くな
り、フッ化水素等が生成する可能性が高くなります。
燃焼したときに生じるヒュームを吸入すると、流感に
似た症状のポリマーヒューム熱を生じる恐れがあり
ます。
なお、スクラップを燃やすと有毒ガスが発生しますの
で絶対に燃やさないで下さい。廃棄する場合は、埋め
立て処理しますが、その際、産業廃棄物処理業者に委
託して下さい。(詳しくは、
「ふっ素樹脂取り扱い手引
書」(日本ふっ素樹脂工業会編)をご参照下さい。)
● 当社は、フッ素化学製品を製造する国内工場で環境マネジメントシステムに関する国際規格 ISO 14001*1 の認証と、品質マネジメン
トシステムに関する ISO 9001*2 の認証を取得しています。
*1 ISO 14001 とは、ISO(国際標準化機構)が制定した、環境保全活動に適用される規格です。当社は、国際的に認定された認証
機関によって、環境に配慮した活動、製品及びサービスの提供を行っていることが認められました。
*2 ISO 9001 とは、ISO が制定している品質マネジメントシステムに適用される規格です。当事業部は国際的に認定された認証機関
によって、顧客要求事項および適用される規格要求事項を満たした製品を一貫して提供する能力を持つことを認証されました。
● 当資料に記載した商品は、一般産業用途向けに供給しているものであり、特に医療用途に適するように設計、製造しておらず、医療
用途への適性や安全性についての試験を行っておりません。従いまして、医療用途の原料としての適性や安全性につきまして何ら保
証できかねますので、医療用途へのご使用についてはお客様自らの試験、医療専門家の見解や当局の法的規制等に基づき、お客様に
ご判断頂かなければなりません。また、当該用途に使用される場合、弊社が提示する条件・内容の契約に合意いただける場合にのみ、
本商品を提供させていただきます。
● 当資料に記載したデータは実測値の一例であり、また、記載の用途例は本商品の当該用途への適用結果を保証するものではありませ
ん。
化学事業部
本
社 〒530-8323
東 京 支 社 〒108-0075
国内化学品営業部
名古屋営業課 〒461-0011
[ホームページアドレス]
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化. Mar. 2003 G-23e AK