法政大学政策科学研究所 法政大学大学院政策科学研究科

HPSI Working Paper Series
東京都城西地域におけるアニメ産業集積の今後と
自治体アニメ産業振興支援の現状・課題について
井山
利秋
Working Paper No. 2005-4
HPSI
Hosei University Policy Science Institute
法政大学政策科学研究所
法政大学大学院政策科学研究科
i
法政大学政策科学研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズは、同研究所および法
政大学大学院政策科学研究科メンバー、および外部研究者による暫定的な研究成果を取り
まとめものであり、学界、研究機関、実務者など幅広い層の方々との意見交流をつうじて、
研究の一層の進展を図ることを目的としたものである。論文の内容や意見は、あくまでも
執筆者個人のものであり、政策科学研究所あるいは執筆者の属する機関としての見解を示
すものではない。
なお、本論文に関するコメント、質問等は、直接、執筆者に連絡されたい。
法政大学政策科学研究所連絡先 〒162-0843 東京都新宿区市谷田町 2−15−2
法政大学大学院事務
ii
Tel. 03-5228-0550
2005 年 11 月
東京都城西地域におけるアニメ産業集積の今後と
自治体アニメ産業振興支援の現状・課題について
井山 利秋1
要旨
世界で放映されるアニメーションの約 6 割が日本製といわれている中で、アニメ製作(制
作)会社は、東京都の杉並区と練馬区に事業者数が際立って多く集中している。これに多摩
地域の武蔵野市、三鷹市を含めた東京都城西地域は、アニメ産業の世界最大の集積地とな
っている。また、政府はアニメをはじめとするコンテンツ産業の成長を、日本が誇る産業
として支援し、全国のいくつかの自治体では、アニメ産業を産業振興のひとつとする計画
が検討されている。
本稿では、アニメ産業が東京都城西地域で世界最大の産業集積地となった過程を明らか
にし、同地域のアニメ産業集積の特徴を現場スタジオの聞き取り調査等から検証し、クラ
スターと呼ばれる集積形態となり得ているのかも考察する。そして国や該当自治体の振興
政策を、関係省庁への聞き取り調査等を通じて検証し、行政支援の問題点と課題を明らか
にした。その結果、同地域のアニメ産業集積は、セル画からデジタル作画へ転換済の状況、
グローバル化の適応等から、空洞化するのではなく今後も一定維持するものと結論づけた。
そして、文化芸術と産業の二面性や中小企業問題などの課題が空洞化論に影響しているこ
とを指摘した。さらにクラスターは、研究・教育機関がコア(核)となって、その発展を
支えることが多いのに対して、同地域にはこれに該当するものがないまま集積が進んだに
もかかわらず、最近の教育・研究機関進出計画などの動きを鳥瞰図的に見渡すと、クラス
ター維持機能が働いているかのように見え、産業集積の展望が広がるものと指摘した。
最後は、団塊世代退職後に「富」を生み出す、大都市部住宅地の産業政策の必要性を論
じたうえ、同地域のアニメ産業が人的集積から発展したように、種(シード)は、それぞれ
の都市内にあると考え、それをいかに早く見つけ、選別し、育んでいくことが大切である
とし、これを結論とした。
1
杉並区区民生活部生活経済課長 (法政大学大学院政策科学修士)
e-mail: [email protected]
2 本稿は、法政大学大学院政策科学研究科に提出した修士論文を加筆修正したものである。本稿作成にあ
たり、指導担当教員の間島正秀教授をはじめ、研究アドバイザーの岡本義行教授、拓殖大学の岡田彰教授、
那須大学の原田誠司教授から多くの示唆と指導を受けた。特に間島教授には、課程途中での研究内容変更
にもかかわらず、論文項目作成全般にわたる適切な指導をいただいた。また、諏訪教授及び日本労働研究・
研修機構の勇上研究員には、研究グループに参加させていただき、多くの機会を得ることができた。そし
て、多忙の中、聞き取り調査とその後の校正も協力いただいたアニメ産業関係者の皆様。
これらの方々に対して改めて謝意を述べる次第である。
iii
目
次
はじめに―都の西はアニメの杜
……………………………………………
1
…………………………………………
2
第1章
アニメ産業の構造と特徴
第2章
東京都城西地域への集積過程と現状
……………………………
第3章
アニメ関係事業者への聞き取り調査
…………………………… 26
第1節
聞き取り調査
第2節
聞き取り調査のまとめ
第4章
各セクターのアニメ産業支援
第1節
国のアニメ産業支援
第2節
自治体のアニメ産業支援
第3節
市民セクターの動き
第4節
人材育成・教育分野の動き
第5章
…………………………………… 39
産業集積の今後と支援のあり方
第1節
地域アニメ産業集積の今後
第2節
産業振興政策の課題と提言
9
………………………………… 58
おわりに
……………………………………………………………………… 65
関係年表
……………………………………………………………………… 66
参考文献
……………………………………………………………………… 68
iv
はじめに―都の西はアニメの杜
1.住宅地に形成された世界最大の産業集積地
1999 年の『ポケモン』のアメリカでのフィーバー1から、
『千と千尋の神隠し』のアカデミー
賞アニメーション部門での受賞2や、『イノセンス』のカンヌ映画祭ノミネートなど、日本のア
ニメ3は、クール・ジャパン(Cool Japan) 4と呼ばれる、海外から見た現在日本を象徴するひと
つとなっている。これを支える、アニメ産業であるが、世界で放映されるアニメーションの約
6 割が日本製といわれている中で、日本動画協会の 2002 年の調査(日本動画協会[2003,p3])に
よれば、全国のアニメ製作(制作)5会社数は、約 430 社であり、このうち、359 社、全体の 83%
が東京都に集中している。このうち、杉並区と練馬区はともに事業者数が 70 社を超えて際立っ
て多くなっている。これに多摩地域の武蔵野市、三鷹市を含めた東京都城西地域は、アニメ産
業の世界最大の集積地となっている。しかし、アニメ製作(制作)会社の多くは、一般の住宅街
やオフィスビルの一角に、所在を示す看板も小さく、目立たぬようにひっそりと存立している
ケースが多い。首都圏のなかでも、
「住宅都市」と呼ばれている地域で、なぜ、世界最大の産業
集積地が形成されたのか。また、集積の構造とその特徴はどこにあるのか。
2.アニメ産業振興支援の内容と課題
政府は、内閣府の知的財産戦略会議で、アニメをはじめとするコンテンツ産業を、日本が誇
る産業として支援する方向へ進み、全国のいくつかの自治体では、アニメ産業による地域産業
振興を図る計画が検討されている。その中でも、東京都城西地域の自治体は、独自の産業振興
支援を開始している。行政は、いつからアニメ産業の振興を行い、その支援の内容と今後の課
題はどのようなものだろうか。
本稿では、日本の産業成長の鍵のひとつといわれるアニメ産業が、東京都城西地域で成長し、
世界最大の産業集積地となった過程を明らかにし、その特徴を分析し、クラスターと呼ばれる
集積の形態となり得ているのかを、現場スタジオの聞き取り調査等から検証し、アニメ産業集
積の今後について考察する。また、国や該当自治体の振興支援策を、関係省庁への聞き取り調
査等を通じて検証し、支援の問題点と課題を明らかにする。そして、この地域でのアニメ産業
に関する人材育成・教育の新たな動きを、今後の産業集積の維持発展と関連付けて考察した上
で、最後に、大都市部住宅地での産業振興支援の必要性を提言することを本稿の目的とする。
1
「米国で最も高い興行収入を獲得した日本のアニメ映画は、1999 年に公開された『ポケットモンスター ミ
ューツーの逆襲』です。グロスで 8,574 万ドル(102 億 8,880 万円)、公開劇場数 3,043 館でした。これは『ス
ターウォーズ』や『スパイダーマン』に匹敵する堂々の全米公開です。」(日本貿易振興会[2003,p2])
2
同作品は同年のベルリン国際映画祭では金熊賞(グランプリ)を受賞。
3
「アニメーション」と「アニメ」の本論文における使用区分は、第1章で記述する
4
「クール」は「かっこいい」「いかす」という意で使用される。
5
「製作」と「制作」は、デジタルアニメ製作技術研究会『プロフェッショナルのためのデジタルアニメマニ
ュアル 2002-2003』[2003,p131]の用語区分による。「製作=作品の企画を出し、資金と人材を集めて作品を制
作させ、作品の宣伝・興行・販売を行うこと。プロデュース」「制作=1.作品を作る実作業を行うこと。2.制
作進行担当者のこと。3.制作部署のこと。」「製作会社=作品を製作する会社。作品に関する著作権を持つ。広
告代理店、映画配給会社、出資会社などがなり、実際に作品を制作している会社とは異なることが多い。」「制
作会社=アニメーション作品を、制作会社からの依頼を受けて実際に作る会社、作品に対して出資していない
場合は、作品に関する権利を持つことが少ない。」なお、両方の意味を含む表現が必要な場合は、「アニメ製
作(制作)」のように併記する。
-1-
第1章
アニメ産業の構造と特徴
第 1 章では、はじめに普段使い分けされていない「アニメーション」と「アニメ」の用語の
使用経緯からの定義を行う。次に、アニメ産業の市場規模を概観し作品の制作工程から、労働
集約型産業の性格を明らかにする。そして、産業の裾野の広い周辺効果のある産業であること
を説明する。
1.アニメ(anime)は日本語
1.1 英和辞典にない「anime」
筆者が所持している英和辞典6では、「animation」の意味は、「名詞 1 活発;生気[元気](を与
えること)、2 アニメ製作;アニメーション、アニメ映画」となっている。一方、「anime」の単
語は収録されていない。所持しているもうひとつの日常レベル英和辞典7でも、「animation」の
意味は、ほぼ同様の表現で記載されているが、やはり、「anime」の単語は収録されていない。
ウェブ上の一般的な英和辞典8でも「anime」は「検索結果に該当するものが見当たりません。」
となる。では、「anime」なる英単語はどこで出来上がったのだろうか。
1.2「animation」から「anime」へ
一般的には単純に「アニメーション」の省略形が「アニメ」と思われるが、英語表記の単純
省略では、「ani」、「anim」、「anima」であり、日本語表記では「アニ」、「アニム」、「アニマ」と
なってしまい、「アニメ」にはならない。英語の一般的辞典に記載されていないことを考え合わ
せると、日本語の「アニメーション」を省略した「アニメ」からの転用で、「anime」はできた
と考えるのが一般的と思われる。
それでは、日本ではいつ頃から「アニメーション」だけでなく「アニメ」の用語が使用され
ていたのかを調べてみると、日本のTVアニメ放送が本格的に始まって 3 年目の 1966 年に発行
された『アニメーション入門』(森[1966])によると、本文中では、「アニメーション」を使用
しつつ、単純な省略体として「アニメ」の用語も多く使われている9。この頃には、既に日本語
の「アニメーション」の略語に「アニメ」が使われ、一般的に使用されていたと思われる。
英語圏に限定するが、「アニメ」の英語表記である「anime」は、本来は、言葉として存在し
ない。ところが、米国内での「anime」という単語を知っていますかという調査では、「Yes=19%」
「No=81%」という結果になっている(日本貿易振興会,[2003])。津堅信之によれば、「諸外国で
『anime』という語が一般化したのがいつ頃かははっきりとわからないが、ディズニー映画の一
人舞台であるアメリカでも、遅くとも 1990 年代前半には、ファンの間では一般化していたよう
である。」(津堅[2004,p168])。
日本貿易振興会調査の数値をどう見るかは論が分かれるが、本来母国語に無い単語を 2 割近
くの米国人が知っていることは、既に日本語の「アニメ」が「anime」となって、世界に浸透し
ている状況を示しているものとも考えられるだろう。
1.3「アニメーション」はすべて「アニメ」か
6
小西友七・南出康世[2001],『ジーニアス英和辞典第3版』、大修館書店.
堀内克明・石山宏一[1999],『ポケットプログレッシブ英和・和英辞典』、小学館.
8
「goo 辞書 EXCEED 英和辞典」(http://dictionary.goo.ne.jp/index.html 2004.12.17)
9
本文 343 ページ中「アニメーション」使用は 132 箇所、「アニメ」使用は 169 箇所。(筆者調査)
7
-2-
それでは、単純に「アニメーション」の省略語はすべて「アニメ」となるかといえば、事情
はそう簡単ではない。アニメーション制作に携わる、アニメーター、美術家、研究家など、100
余名の会員が所属している、日本アニメーション協会のウェブ・ページ上10では、「アニメ」の
表記は、わざわざ「いわゆるアニメ/Japanimation」とされ、ほとんど使用されていない。
同様に、同協会も共催した映像芸術系の大学や専門学校が中心となって実施された作品発表
会である、「インター・カレッジ・アニメーション・フェスティバル」のガイドブックでも、原
則「アニメーション」の用語が使われ、「アニメ」は、例外的または意図的に使用11されている
に過ぎない。筆者が接した関係者の中でも、「自分の作品は『アニメーション』であって、『ア
ニメ』でない」との内容の会話を交わした記憶もある。こうした「アニメーション」と「アニ
メ」の使い分けから、ある程度のアウトラインが浮かぶ。
1.4 本稿での定義
本稿では、
「アニメ(anime)」=「日本製の市場流通前提で制作されたアニメーション作品」と
し、これを生産する産業を「アニメ産業」と表記する。これ以外のものを「アニメーション」
の表記で統一する。用語定義では、津堅が比較的体系的に説明している。
筆者は、前項までのなかで、「アニメ」と「アニメーション」という語を両方使っている
が、実はこれらの語を使い分けて書いている。
専門家の間でも、この語の使い分けについては議論されているのだが、おおむね、海外
の作品を含めた全般的な語を「アニメーション」とし、主に『鉄腕アトム』以降で日本の
テレビや映画を媒体として商業ベースで制作された作品を「アニメ」と呼ぶことが多いと
思われる。(津堅[2004,p20])
アニメの呼称では、「ジャパニメーション(Japanimation)」がある。「アニメ」と「ジャパニ
メーション」の違いについて、岡田斗司夫は、日本の作品輸出との関係で、この差異について
論述している。
「ジャパニメーション」と「アニメ」の差は、単に言葉の差というだけではない。この
2つは、もっと根本的に違う物だ。ジャパニメーションと呼ばれていたのは、その頃アメ
リカでずたずたに再編集され、テレビでお子さま向けに放映されていたもののことである。
(岡田[1995,p15])
また、津堅によるアメリカにおける日本アニメの歴史と現状についてのヒアリングによれば、
Japanimation という語は、1991∼92 年頃に生まれた言葉だが、日本のアニメファンの間
から生まれたものではなく、商業サイドの人たちが一般のアメリカ人への説明用に作り出
した語ではないか。現在でも、特に東海岸地域では Japanimation という語は使われている
が、日本アニメファンの間では使われていない。(津堅[2004,p175])
10
11
日本アニメーション協会 (http://www.jaa.gr.jp/j/ 2004.12.17)
本文 60 ページ中「アニメーション」使用は 133 箇所に対し、「アニメ」使用は、固有名詞的使用と「TV ア
ニメ」などのように、意図的に使った部分あわせても 11 箇所である。(筆者調査)
-3-
Japanimation の用語定義は確立されてはいないが、海外、特に米国から見たアニメのひとつ
の見方であるので、本稿では使用しない。
2.アニメ産業の規模
2.1 直接市場規模
アニメ産業の国内市場規模は、1995 年以降、1,600 億円前後で推移していたが、2001 年に 1,860
億円となり、2002 年には 2,135 億円と初めて 2,000 億円を突破した。
図 1-1
国内アニメ市場の推移
アニメ産業の市場規模
( 億円)
2500
2135
2000
1611 1588 1637 1651 1519 1593
1860
1500
1069
1000
500
26
0
46 120
261
1970 1975 1980 1985 1990 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002
( 年)
出典
メディア開発綜研資料をもとに筆者作成
2.2 国内関係市場規模
図 1-1 は、映画、ビデオ、テレビ製作の売り上げのみの金額であり、関連商品を含めた市場
規模に関する正確な統計数値ではない。野村総合研究所によれば、コンテンツに関連する 4 分
野(アニメ、アイドル、コミック、ゲーム)の産業全体の市場規模は約 2 兆 3,000 億円12とし
ている。また、「キャラクターライセンスを与えた製品の総生産額は 2 兆円との説も」(経済産
業省[2003])。さらに、「日本のアニメ産業の国内市場規模は約 2,000 億円である。テレビ局か
らの『製作委託費』、映画興行収入、パッケージのレンタル及び販売額等の総計である。その他
キャラクターグッズ売上額の数%にあたるマーチャンダイジング収入も入っている。この程度の
売上額なら、製造業でいえば中ぐらいの会社の規模であろう。ところが、国内外におけるアニ
メ関連の市場規模の推計は、2∼3 兆にものぼるものともいわれている。」 (山口[2004,p4])。
把握概念の違いもあるが、どれも直接的な市場規模をはるかに超え、おおむね 2 兆円規模を
示している。ちなみに、2 兆円の規模は、日本国内の米生産額13に匹敵する額である。
2.3 米国における市場規模
アニメ産業の規模を示すひとつの見方として、日本貿易振興機構の調査「米国アニメ市場の
実態と展望」によると、米国内のアニメの市場規模は、「米国におけるアニメビジネス市場は小
12
13
野村総合研究所 2004 年 8 月 24 日『NEWS RELEASE』による。
農林水産省統計情報データーベース「年次別農業総産出額及び生産農業所得」によれば、2002 年の米の産
出額は、2 兆 2,284 億円。
-4-
売ベースで推定 5,231 億円(2002 年)」(日本貿易振興会[2003a,p8])となる。これは、米国が
同年に日本から輸入した鉄鋼製品の約 4.1 倍に相当する額14となっている。米国でのアニメ関
連産業の状況を同調査では、「アニメ・イベントは 15 億円市場」(日本貿易振興会[2003a,p9])
であり「全米で毎年多くの『日本のアニメやコミック』にこだわったイベントが開催されてい
る。多くはファンが独自に組織化して開催するもので、日本からパネラーや講師としてプロデ
ューサー、監督、キャラクターデザイナーなどクリエーターが招待されることもよくある。2002
年に開催されたイベント数は 18、そのうち参加者数を公表しているものが 12、そのトータルが
10 万 1400 人。」(日本貿易振興会[2003a,p9])など、米国における人気ぶりの一端が垣間見え
る。
3.アニメ産業の構造
3.1 アニメ制作工程の概要
会社ごとに多少異なる部分もあるが、デジタル工程が導入されている、一般的なアニメ制作
工程の概要15を簡単に記述する。
1)企画
どのようなアニメ作品にするのかから、企画は開始される。人気漫画等からの原作やオリジ
ナルものなど、ジャンルも含めて検討しテーマを決め、あらすじ(シノプシス)を文章化し企画
書を作成する。この段階で、登場する主人公(メインキャラ)や主に使われる背景、乗り物等の
メイン美術の設定も行われることが多い。また、漫画原作のあるものは、主人公の細かな表情
をアニメの動きに合わせたものに一部修正することもある。
2)シナリオ
企画書を基に、脚本家が作品全体の流れやそのテーマを考えて、場面区切りや場面展開ごと
に、セリフや基本的な動きも含め文章を作成する。劇で使われるシナリオと同じで、作品全体
の流れができあがる。
3)絵コンテ
シナリオ文章を各場面(カット)ごとに、時間進行を含めて映像イメージに変える。構図やセ
リフ、効果音も含めて書き込み作成する。これで、視覚的にもアニメ作品のイメージができあ
がる。米国では「ストーリーボード」と呼ばれる。
4)その他のキャラクター設定や美術設定
企画段階で設定された、主人公等以外の登場するキャラクターや乗り物などメカニック部分
や背景等の美術を設定する。
5)「美術ボード」(美術設定)
企画で決められた背景部分などのイメージを統一したうえで作成する。
6)原画
絵コンテや設定されたキャラクターを基に、カットごとにその時間にあわせた動きの中心と
なる部分を正確に描いていく。また、彩色する色指定も行う。
7)動画
14
15
総務省統計研修所『第五十三回 日本統計年鑑 平成16年』15-7 主要国及び主要商品別我が国の輸出額(平
成 14 年)による米国向け鉄鋼輸出額は、1,272 億 1,900 万円
株式会社サンライズ会社概要資料[2004]「Making of Animation」及びデジタルアニメ製作技術研究会[2003]
を参考にした。
-5-
原画と原画をつないで、キャラクターの動きを変化するように作画する。
8)デジタル彩色
原画で指定された色指定書ごとに、コンピューターにより場面ごとに彩色をする。
9)デジタルエフェクト
前工程からのデーターをもとにして、映像的な特殊効果や表現の付加作業を行う。
10)コンポジット
キャラクターの動き部分と美術ボードで設定し作成した背景などのデーターを合成する。
11)ビデオ編集
ここまでの映像部分の動画の動きや特殊効果や背景など編集する。「音の無い」映像部分は、
ここで一応できあがる。
12)アフレコ(After Recording)
声優が、映像に合わせて声を吹き込む作業を行う。
13)ダビング
セリフや効果音、音楽などの音響素材をひとつにまとめる。
14)ビデオフォーマット編集
映像原版と音源版をひとつにし、納品仕様を満たすように編集する。
15)完成
製品としてのアニメ作品はここで一応完成する。
この制作工程を図示すると図 1-2 のような流れになる。
図 1-2
デジタルによるアニメ制作工程例
企
画
原
画
動
メインキャラ設定
メイン美術設定
画
デジタル彩色
デジタルエフェクト
シノプス
背
景
美術ボード
コンポジット
ビデオ編集
シナリオ
アフレコ
絵コンテ
ダビング
ビデオフォーマット編集
ゲストキャラ設定
ゲスト美術設定
完
成
サンライズ会社概要資料[2004]「Making of Animation」をもとに筆者作成
-6-
3.2 労働集約型産業
図 1-2 で見るように、アニメ作品はかなり多くの工程を経て作成されているが、デジタル工
程以前のセル画時代の工程では、更に多くの工程を要していた。
図 1-3 は、デジタル化以前のセル画制作工程の一例である。セル画工程では多くの手間と人
手をかけ動画を一枚一枚手で彩色し、出来上がったセル画を「線画台」と呼ばれる撮影機械で、
背景部分とあわせて一枚一枚撮影する作業があり、現在では、多くがコンピューターの画面上
で行える編集作業も、手作業的な工程で行われていた。
デジタル化では、すでに彩色や編集部分だけでなく、原画や動画部分をデジタル化した作品
も多く制作されている。また、図 1-2 は日本で主流である 2D と呼ばれる平面表現のものだが、
立体的な画像表現を行う 3D アニメは、その工程の多くがデジタル化されている。
アニメ作品は「アニメ製作会社」である元請プロダクションと、動画や作画を中心に行う「ア
ニメ制作会社」の作画プロダクションや背景美術を専門に行う会社、撮影・編集会社、音声制
作プロダクションなど、多くの部門別の分業体制によって作られている。以前に比べると工程
が簡略化されたとはいえ、多くの工程とこれを支える分業体制があり、人手・労働力を多く必
要とする労働集約型産業16の性格は現在でも大きく変わってはいない。
図 1-3
セル画アニメ制作工程例
完成
企画
録音
(ダビング)
脚本
音楽
音響
セリフ
効果
レ
イ
ア
ウ
ト
絵
コ
ン
テ
原
画
背景原画
特殊効果
動
画
ト
レ
ー
プロダクション
デザイン
キャラクター設定
メカニック設定
美術設定
アフレコ
彩
色
検
査
撮
影
編
集
ス
作画
日経 BP 社[2000],『進化するアニメ・ビジネス』をもとに筆者作成
3.3 産業の裾野と周辺効果のある産業
前項では、アニメ制作工程だけを捉えたが、直接的な市場規模から広がる周辺産業との関係
を示したのが図 1-4 である。
16
TVアニメ作品のはじめと終りに流れる、オープニングテロップとエンディングテロップに多くの制作スタ
ッフと、関係会社がいくつも登場するのも、分業体制による労働集約産業であるアニメ産業の性格を象徴し
ている。
-7-
図 1-4
アニメビジネスの広がり
版権ビジネス
作品製作
権利許諾
ビデオ製作会社
玩具会社
放送局又は
美術会社
プロ ダク シ ョン
(企画・脚本・プロジェクトマネージメント等)
作画プロダクション
権 利 管理 窓 口
放 送局
︵地 方局︶
放 送局
︵キ ー 局︶
広告 代理店
ス ポンサー
元請けプロダクション
CS・BS 放送会社
食品会社
権利料収入
衣料会社
撮影・編集会社
ゲームソフト会 社
音声製作プロダクション
経済産業省「アニメーション産業の現状と課題」をもとに筆者作成
図 1-4 の右側は、キャラクター商品などを含む、作品製作工程以外の関係する産業の広がり
である。版権ビジネスと呼ばれる、産業分野の幅広い裾野と周辺効果がうかがわれる。
このほかにも、アニメ専門学校に代表される教育分野もある。直接的なビデオや衛星放送等
の再利用だけでなく、街中にあふれる、玩具やキャラクターグッズ、さらには食品パッケージ
に印刷されるキャラクターなど、日常生活の分野にアニメの主人公は登場している。これらす
べて版権ビジネスの分野となる。こう考えると、「2 兆円産業」も体感的ではあるが「なるほど」
と納得するものもある。
-8-
第2章
東京都城西地域への集積過程と現状
第 2 章は、はじめに研究対象地域範囲の特定とその理由を述べる。次に、アニメ産業の集積
に関する先行研究の紹介を行ったうえで、核となるアニメ製作会社の設立状況や関連事業所集
積の状況とその理由を、当時のセル画を中心とする分業体制と技術的制約から論述する。また、
杉並、練馬の東京商工会議所各支部でそれぞれ行った、地元アニメ事業者の調査を一体化して
分析する。さらに、専門的技術を持つ人的な集積が与えた影響をマーシャルの産業集積の考え
と関係づけ、集積のきっかけやその後の産業集積は、マーシャルの教科書的な古典的産業集積
論そのままの世界が展開されていることを論証する。最後に、最近の産業集積論の中心である
ポーターによるクラスターにふれ、この地域の集積は、アニメ産業クラスターであることも論
述する。
1.研究対象について
1.1「東京都城西地域」
「城西地域(地区)」は、東京都の 23 特別区の地域区分のひとつとして使われている。一般
的には、杉並区、練馬区、中野区と世田谷区を示す概念17である。
先行研究では、アニメ産業が集積している地域の名称を「武蔵野地域」(福川信也[2002,
p41])や「東京西北部」(半澤誠司[2001,p65])としている。しかし、武蔵野地域では、アニ
メ製作(制作)会社が最も集積している杉並区と練馬区を示す概念でなく、また、東京西北部
では、東京都全体を見渡すと多摩地域を示す場合も多い。本稿では、2003 年 3 月に東京都産業
労働局から報告された、「『産業集積の活性化へむけた産業政策のあり方』に関する調査研究報
告書」が、杉並区・武蔵野市・三鷹市を調査対象にして、「城西地域」の名称で報告しているこ
と。また、東京都議会での答弁 18で、アニメ産業に関して「城西地域」と使用していることに
より、対象地域を「城西地域」と表記する。また、全国では城下町の西側を「城西」と称して
いるものがいくつかあるため、「東京都」を加え「東京都城西地域」とする。そして、地区の概
念は比較的区切りの強い表現に対して、地域は対象地域の広がりを示すため「地域」の表現と
する。
1.2.対象地域に、武蔵野市と三鷹市を含める理由
杉並区と練馬区は、アニメ製作(制作)会社数も他の市区と比しても、群を抜いて多く、対象
地域としては異論のないところであるが、武蔵野市と三鷹市は、杉並区と練馬区に隣接してい
るものの、アニメ製作(制作)会社数は、新宿区や国分寺市には劣っている。しかし、行政の動
きを中心とする各自治体内の活動を見ると、武蔵野市は、商工会議所や地域の事業者が中心と
なって、市の中心駅である吉祥寺駅周辺で、アニメフェア 19を積極的に行っていること。三鷹
市には、ジブリ美術館、正式名称「三鷹市立アニメーション美術館」があり、これを核にした
17
特別区協議会調査部[2000],『特別区の産業振興に関する調査報告書―特別区産業振興研究会報告 資料室
調査情報第 28 号』や東京都産業労働局[2003c],『都民の購買動向に関する調査報告書』など、特別区の地
域区分は、都心・副都心・城東・城南・城西・城北と一部例外はあるものの、城西地域は上記の 4 区のケー
スが多い。
18
2004 年 3 月 15 日「平成 16 年度予算特別委員会(第 3 号)有手産業労働局長『東京の産業を支えるものづ
くり産業の主な集積といたしまして、…(中略)…城西地域のアニメ等コンテンツ産業、…(中略)…の集
積などがございます。』」
19
吉祥寺アニメワンダーランド
-9-
地域振興を行い、またコンテンツ・アニメ事業活性化を活動の中心とするNPO法人 20が、市
関連のSOHO事業所に所在し、ここを中心に活動を積極的に行っていること。さらに、この
ような地域での活動を踏まえて、東京都の東京国際アニメフェア実行委員会で行政・地域関係
の委員は、杉並区、練馬区、武蔵野市、三鷹市の 2 区 2 市であること。
上記の理由により、アニメ産業集積の広がりでは、隣接する他の多摩地域や、新宿区・渋谷
区にも多くの製作(制作)会社があるが、杉並区、練馬区に加えて、武蔵野市、三鷹市の 2 区 2
市を本稿の主な対象とし、対象地域全体の総称を「東京都城西地域」と表現する。
2.先行研究
一口に、アニメに関する研究先行や文献といっても、多くの分野に分かれている。アニメの
発達史的なものでは、古くは、『日本アニメーション映画史』(山口旦訓・渡辺泰[1977])や最近
の山口[2004]や津堅[2004]の通史的なものがある。日本だけでなく世界のアニメーション全般
については、森[1966]や『世界アニメーション映画史』(伴野孝司・望月信夫[1986])が詳しい。
また、最近のアニメビジネス論、アニメ作品全般や個々の作品の文化論にいたっては、数多く
出版されているが、アニメ産業集積に関するものや、地域産業の視点での研究はあまり多くな
い。
本稿では、産業集積に関するものとして、アレン J.スコット21(Allen,J.Scott)による 1980
年代のロスアンゼルス・アニメーションスタジオの労働集約型産業研究と、地域産業の視点で
の研究であり、東京都城西地域アニメ産業集積の研究を中心にした先行研究である、福川と半
澤の研究を中心に紹介する。
2.1 スコットによる、ロスアンゼルス・アニメーションスタジオの労働集約型産業研究
1)特定地域への産業集積や労働集約型産業の性格分析
スコットは、「この事例研究は、ロスアンゼルスのアニメ映画労働者の局地的労働市場が持つ
社会空間構造 sociospatial structure に関する経験的調査」(スコット[1996,p166])として、
ロスアンゼルスのアニメーション映画労働者を対象に、労働者の職種類型と居住関係、就業と
失業の相関関係を分析研究した。
1980 年代の調査であるが、現在の日本のアニメ産業や東京都城西地域の集積状況とよく似た、
特定地域への産業集積や労働集約型産業の性格が述べられている。例えば、「アニメ映画産業は、
1920 年代から 1930 年代にかけて合衆国において成長し、第二次世界大戦後まもなくして、ロ
サンゼルスに最終的に集中するようになった。現在、ロサンゼルスには、30 から 40 ものアニ
メ映画スタジオが存在している。残りの地方には、せいぜいひと握りの数のスタジオがあるに
過ぎない。」(スコット[1996,p166])このように、米国でも産業の地域集積を示している。また、
「アニメ映画産業は、非常に労働集約的である。」(スコット[1996,p168])、分業体制での制作
工程に関しても、「これらの専門化したサービスのなかには、自由契約で働く台本作家・カメラ
備品の賃貸サービス・写真術とフィルム現像・作曲・音楽スタジオ賃貸業・ダビング・特殊効
果といった活動が存在する。」(スコット[1996,p169])。さらに、「動画製作におけるかなりの単
位の下請けが外国に発注されており、このことが、局地労働市場に寝こそぎの変化をつくりだ
した近年の重要な変化の一つをなしている。」(スコット[1996,p169])と、海外下請け構造によ
20
21
特定非営利法人コミュニティ・サポーターズ
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)政策学部、地理学部教授
- 10 -
る産業空洞化の変化も述べている。
2)現在へも続く課題の提起
デジタル工程以前のセル画工程時代のものではあるが、当時の産業の中心であった米国にお
けるアニメーション産業集積の状況や、労働集約産業の分析から、海外への労働力流出(流出先
の一つが、当時の日本)や、産業空洞化の指摘、技術革新による就労構造の変化など、現在の日
本で指摘される問題点が、そのまま本論において課題として提起されている。このように、ア
ニメ産業の構造は、日本、特に東京都城西地域が特別なものでなく、20 年以上前の米国におい
ても一足早く指摘されているなど、示唆に富むものが多い。
2.2
福川信也と半澤誠司による、東京都城西地域アニメ産業集積の研究
1)自治体の役割提言と集積の維持
東京都城西地域アニメ産業の集積構造の特徴について、本格的に分析を加えた研究では、福
川信也22と半澤誠司23によって 2001 年にそれぞれ発表されたものがある。
福川は地域開発の視点からアニメ産業の支援体制での自治体の役割について提言している。
こうした取り組みは、「アニメの都」というイメージを PR する手法としてはオーソドッ
クスなものと言える。しかし、冒頭にも述べたようにアニメーション産業は、表向きは華
やかな一面を持つものの、その産業基盤は意外に脆弱である。地方自治体がアニメ産業と
の関係を構築するにあたっては、アニメを一過性のイベントやまちづくりのPR材料とし
て利用するだけでなく、アニメ産業にとって大きな問題点である人材開発に対する支援を
行うことが必要だと思われる。(福川[2002,p116])
このように、今後の自治体支援体制への提言を行ったうえで、アニメ産業の市民セクターの
動きについて、NPOの動きをあげている。
最後に、重要となるであろうアニメ産業支援の担い手としてNPOを挙げておく。宮徹
理事長(元日経BP社記者)が中心となって 99 年に設立・認証された特定非営利活動法人
コミュニティ・サポーターズ(武蔵野市、会員 35 名)は、中央線沿線を活動基盤にアニメ
産業集積の支援活動を行っている。(福川[2002,p119])
一方半澤は、アニメ産業の集積を分析した結果から、東京都城西地域のアニメ産業の将来に
ついて、一般的にいわれているように、同地域の産業が空洞化するのではなく、今後も一定の
維持が継続するものと分析した。
このように、グローバル化とデジタル化の進展は、既存の産業集積を弱め分散を促すよ
うにみえる。しかし、日本のアニメ産業においては、取引先の能力把握と信頼性の構築が
非常に重視され、それを容易にする人的繋がりは東京以外では見出しにくい。したがって、
一部の工程の移転や集積内部の構造変化は進むものの、東京の重要性は大きくは変わらな
22
福川信也[2001],「武蔵野地域におけるアニメ産業集積と自治体の役割」、『産業立地』第 40 巻第 7 号.本論
は研究ノートであるが、福川は翌 2002 年に「都市集積をみせるアニメ産業―武蔵野地域の新たな展開」関満
博・佐藤日出海編『21 世紀型地場産業の発展戦略』、新評論.を発表している。
23
半澤誠司[2001],「東京におけるアニメーション産業集積の構造と変容」、『経済地理学年報』第 47 巻第 4 号.
- 11 -
いものと思われる。加えて、アニメ市場のいっそうの拡大が予想されている。海外との競
争があっても、日本の制作会社数が減少するとは考えにくく、産業集積が解体の方向に向
かうとは考えられない。(半澤[2001p,66])
などと結論づけ、この地域のアニメ産業集積が将来的に維持するとの見解をしめしている。
2)本稿提言につながる評価
両論とも東京都城西地域(福川の「武蔵野地域」、半澤の「東京西北部」)のアニメ産業を産業
集積として認識し、スタジオ聞き取り調査や取引先の分析を行い、集積の過程や労働集約産業
の分析を行っている。福川や半澤以前にも、東京都城西地域のアニメ産業が集積していること
は知られていた 24が、これを産業集積の視点で事業所調査まで含めて系統立て分析したのは、
筆者の知る限り両氏のそれぞれの研究がはじめてである。両論の産業集積の形成のきっかけが
本稿と必ずしも完全には一致しないものの、福川のデジタル化と人材育成対応や半澤の取引関
係の相互関連性による集積維持機能の論証は、本稿研究につながるものとして評価すべきもの
である。
2.3
その他の先行研究
この地域の集積に関するその他の先行研究では、上田祥二25 は、日本で必要とされる地域開
発のあり方について考える際に、現存する日本でのコンテンツ産業の集積地を調査する必要が
あると考え、杉並・武蔵野地区に集積するアニメ産業に関しての調査を行っている。また、藤
川誠心 26は、高知県での産業振興の一つの可能性としてアニメ産業を取り上げるなかで、杉並
区のアニメ産業振興に言及し、ここで、行政主導のブランド戦略とアニメ作品の善し悪しによ
るアニメ産業の評価とのミスマッチによる問題点を指摘している。
3.集積の歴史
アニメ作品やアニメ産業の発達史は、多くの著作物があり出版されているが、本稿では、主
にどこでアニメが製作(制作)されていたかを中心に記述し、世界的なアニメ産業が、なぜ東
京都城西地域に集積したのかを、一般的に集積のはじまりといわれる、東映動画の大泉スタジ
オ設立以前に、同地域に存在したと考えられる人的資源との関係に焦点あて論述する。
3.1 アニメの誕生
アニメの誕生は、山口によれば、「下川凹天、幸内純一、北山清太郎の 3 人が、同じ年にあい
ついでアニメ作品を製作・公開したのである。準備に入ったのも前年の 1916(大正 5)年で同
じ年だ。」である(山口[2004,p44])。
地理的な位置関係を含めた、第二次世界大戦終了時までのアニメ製作(制作)スタジオの歴
史は、三好寛の「日本のアニメーション・スタジオ史」に詳しく述べられている。日本で最初
のアニメスタジオは、「日活向島撮影所考案係の新海文字郎が北山の提案に応え、アニメーショ
ン制作がスタートした。」(三好[2003,p24])、「作画作業は千代田区平河町にあった北山の自
24
1997 年 1 月に発行された「情報メディア白書 1997 年版」でも、西武池袋・新宿線や中央線沿いにスタジオ
が集中していることが報告されている。
25
上田祥二[2002],「コンテンツ産業集積による地域開発の実例と相互比較の研究」早稲田大学大学院国際
情報通信研究科 2002 年度修士論文
26
藤川誠心[2004],「高知の産業振興としてのアニメ産業の可能性」高知工科大学大学院工学研究科 2004 年
度修士論文
- 12 -
宅で、撮影は日活向島撮影所で行われ」(三好[2003,p24])以降、関東大震災の被災により、
一部が京都に移転したものの、東京を中心に「以後も、東京、横浜、京都でアニメーションス
タジオは増え、1937 年(昭和 12)年の日華事変以降は戦争の影響を受けながらも、その制作が
続けられていった。」(三好[2003,p26])。しかし、第二次世界大戦前の東京都城西地域は、こ
の産業(産業と呼べるほどの規模であるかも含めて)に、無縁の地域であったと考えられる。
3.2 集積のきっかけとなる人的資源の集積
第二次世界大戦中とその敗戦の時期に、この地域に注目すべき動きがある。それは、現在の
西武池袋線江古田駅周辺に設立された茂原製作所とその後継の新日本動画社である。
三好によると、茂原製作所は、「1943(昭和 18)年ごろ、茂原英雄が山本漫画社を吸収して
東京・江古田に設立。」(三好[2004,p24])と、初めて現在の東京都城西地域に含まれる、西
武池袋線江古田駅周辺が登場し、この会社が敗戦後解散した直後には、
「茂原製作所解散後、山
本早苗はGHQに映画製作の許可を申請し、これが認められると江古田にアニメーション制作
者たちを集めた。他のスタジオも爆撃で崩壊したり、メンバーが徴兵されたりと活動不能状態
だったが、この呼びかけに、後述する政岡憲三、村田安司、荒井和五郎らが応じ、総勢 100 人
を超えるスタッフが集まったという。1945 年 10 月、山本、村田、政岡らが代表となって新日
本動画社が設立され、11 月に日本漫画映画株式会社に改組した。戦後の日本のアニメーション
制作はこのスタジオを中心に始まる。」(三好[2004,p24])
東京都城西地域の集積の始まりは、一般的には 1957 年の東映動画大泉スタジオの開設に始ま
るとされているが、それ以前に、日本のアニメ史に名を残した人々27を中心に、「戦後まもなく
100 人以上の制作者が集まり、新日本動画社というかつてない大組織が生まれたのは奇跡的と
も言える」(三好[2004,p27])のように当時の日本のアニメ制作技術者の多くが、東京都城西
地域の一角に集い活動を開始していた 28。これはその後の同地域の集積と現在までの発展に大
きく寄与していると考えられる。この後、この会社から去った、山本と政岡は隣接する新宿区
に日本動画のちの日動映画を設立し、これが東映動画、現在の東映アニメーションへのつなが
り、東京都城西地域集積の直接的なはじまりとなる。
3.3 東映動画大泉スタジオ
東京都城西地域で、アニメ製作(製作)会社が本格的に関係するのは、1956 年に東映が日動
映画を買収して設立した東映動画(現東映アニメーション)が、1957 年に、「東京都練馬区の
大泉に、当時としては話題をさらった冷暖房完備の白亜のスタジオも建設した。当時のマスコ
ミは『夢の工場』と報じた。」(山口[2004,p67])ことに始まる。この東映動画は、その後「日
動映画から移った 23 人でスタートした社員も、10 年後には 560 人になり、名実ともにアニメ
界のトップ企業となった。」(山口[2004,p67])と成長を続け、現在でもアニメ業界のリーディ
ング企業29である。
27
山本早苗(1898∼1981)、東映動画で日本初の長編カラーアニメ作品『白蛇伝』(1958)の製作担当。村田安
司(1896∼1966)、戦前の切絵技法のアニメーションで高い評価がある。政岡憲三(1898∼1988)、戦前の名
作といわれる『くもとちゅうりっぷ』(1943)の制作者
28
山口も「GHQの指令によって全国に散らばっていたアニメ関係者が総動員されたわけである。」(山口
[2004,p64])と、当時のアニメ制作技術者が全国から集まったことを述べている。
29
東映アニメーション 2002 年 3 月期の売上は、160 億円 (「情報メディア白書 2003」P67)、業界第 1 位で、
市場の 1 割弱のシェアを占めている。
- 13 -
3.4 手塚治虫と虫プロダクション
手塚治虫も一時期住んでいた、漫画家が集っていた有名な「トキワ荘」は、現在の西武池袋
線椎名町にあった。1953 年に当時の豊島区椎名町にあったトキワ荘に移転した頃は、すでに手
塚は、漫画家としての第一人者の地位を築いていた。手塚のアニメ制作に対する取り組みは、
多くの研究30があり、ここでは省略するが、1961 年に練馬区富士見台に手塚治虫プロダクショ
ン(虫プロ)を設立した。設立された虫プロの富士見台とトキワ荘は同じ沿線で数駅離れている
だけである31。
終戦直後に全国から江古田に結集したアニメ制作技術者達、漫画のトキワ荘と虫プロ、そし
て大泉の東映動画と西武池袋線の沿線に、要町「トキワ荘」、江古田「新日本動画社」、富士見
台「虫プロ」、大泉学園「東映動画」と直線距離で 10 キロ程度の私鉄沿線に、当時のアニメ産
業の発展に関する多くの要素が集まっている。
3.5 東京都城西地域の集積へ
前項までの東映動画も虫プロも練馬区に所在している。ここでは、集積地のもう一つの杉並
区や周辺地域への集積波及について簡単に述べていく。
虫プロから 1964 年に東京ムービーが、当時の杉並区東田町に立地し、手塚治虫の事務所を結
ぶ中杉通りに関連事業所が集まりはじめた。1970 年代には、当時の東映動画や虫プロから、現
在杉並区に所在する製作会社の多く、マッドハウスやサンライズ、葦プロ、ディーンなどが、
製作会社を立ち上げた。さらに、1990 年代にボンズなどがこの地に設立されている。また、東
京都城西地域と周辺地域のひろがりでは、国分寺市には竜の子プロダクションが、1962 年に設
立され、『マッハ GOGOGO』や『忍者戦隊ガッチャマン』など、独自のキャラクターで成長し、
ここからも多くの会社が設立された。こうして、東京都城西地域とその周辺に集積の連続性が
形成された。
3.6 その他の集積要因
本稿では、集積の要因を主にアニメ制作技術者の人的な集積の始まりから述べてきた。産業
集積を促す要因はこのほかにも、この地域はキー局となる東京都心部にある放送局からは、比
較的近い位置にあり、TVアニメ放送のための毎日の作品輸送のやり取りには便利であったこ
と。また、第 1 章の図 1-2 や 1-3 で説明した制作工程は、セル画時代(現在でも)の動画や作
画の制作や、録音作業など、多くが分業体制による各事業者間で行われている。このため、放
送時間が定められ、定期的にそして確実に完成させるための時間的制約が、事業者間の近接に
つながり、集積につながっていった。さらに、当時から地価が都心中央部よりは割安であり、
事務所立地や起業のための資本投資が都心部に比べれば、行いやすかったこともある。
4.マーシャルの産業集積論とアニメ産業
4.1
マーシャルの産業集積論
新 古 典 派 経 済 学 の 代 表 的 学 者 で あ っ た ア ル フ レ ッ ド ・ マ ー シ ャ ル ( Alfred Marshall
1842-1924)は、その著書『経済学原理』で、「ある種の財の生産規模の増大に由来して起こる
経済を二つに区分」(マーシャル [1965,p248])して、その一つ、産業の全般的発展に由来する
30
31
日本アニメの歴史に関する各種著書で、手塚治虫に関する記述のないものを探すのが困難である。
山口もトキワ荘と虫プロダクションの地理的関連については述べている。山口[2004, p71]
- 14 -
ものを外部経済と呼び「ある特定の地区に同種の小企業が多数集積すること、すなわちふつう
産業立地と呼ばれている現象によって確保されることの多いところの、非常に重要な外部経済
の検討にうつっていくことにしよう。」(マーシャル [1965,p249]) 、これを研究対象にしてい
る。また、「ある地域に集積された産業はふつう、たぶん正確な表現とはいえないが、地域特化
産業と呼ばれている。」(マーシャル [1965,p251])と、 地域特化産業の言葉で産業の集積を位
置づけ、産業集積の基本的な考え方やその成立の特徴について述べている。
以下本項では、マーシャルの考えと東京都城西地域アニメ産業の集積を関係づけていく。
4.2 結果としての「支配者による計画的な導入」
敗戦直後の新日本動画社の設立は、マーシャルが、産業集積の成立要因の一つとしてあげて
いる「支配者による計画的な導入」(マーシャル [1965,p253])、「さらに支配者たちが計画的に
遠方から職人を呼びよせ、かれらを特定の町にかたまって住まわせる場合がいっそう多い。」(マ
ーシャル [1965,p253])との比較で考えると、当時絶対的な権限を持っていたであろうGHQの
意向により、江古田に結集したアニメ制作技術者達は、それが集積を目指す意思であるか否か
に関わらず、「ある事件がたまたま起こったために、ある特定の産業がある町に栄えることにな
った場合もあるだろう。」(マーシャル [1965,p253])と、産業集積する要因の一つとなることを
しめしている。
4.3
専門的技術者集団の人的な集積
先行研究で述べたスコットによる、制作技術者の勤務先と居住地との関係32や、1950 年代前
後の交通事情や居住スタイル 33をあわせて考えると、こうして集められた、アニメ制作技術者
たち、つまり当時の日本のアニメ制作技術者の多くは、すでに東京都城西地域の一角を中心と
して、生活していたと考えることが妥当34ではないか。また、当時のアニメ(この場合は「アニ
メーション」といったほうが適切かもしれない)技術は、先端技術かつ職人芸的な要素が強く、
一種門外不出のような雰囲気 35もあった。このような、専門的技術者集団の人的な集積がこの
地域にはあったことは、産業集積の要素である人的資源の集積との関係でも注目すべきことで
あり、専門的技術者集団の人的資源の集積が、その後の東京都城西地域の産業集積の大きな要
素となったと考えることは、自然な流れであろう。
4.4 教科書的な集積
この後の西武池袋線沿線から始まり、さらには杉並区への集積の過程と、一度集積が開始さ
れると、「しかし自由な産業と企業がたとえどのような方法で促進されてきたにせよ、それが成
立するとなると、生活の技法の向上にとって最上の条件がととのったことになるのだ。」(マー
シャル [1965,p254])、「産業がその立地を選択してしまうと、ながくその地にとどまるようで
ある。同じ機能を要する業種に従事する人々がたがいにその近隣のものからうる利便にはたい
32
スコットの調査は、制作技術者の職層別の勤務先と居住地との関係を実証分析している。
当時の東京の一般勤労者のライフスタイルは、自己所有の持ち家でなく、仕事にあわせた賃貸住宅が多かっ
た。「都市化が急激に進んだ戦前の東京、大阪等でも、戸建持家に固執する層は必ずしも多くなかったことが
知られており」国土交通省住宅宅地審議会[1999]「21 世紀の豊かな生活を支える住宅・宅地政策について」
中間報告
34
本稿では、当時のアニメ制作技術者の居住地までは調査できなかったため、実証はされていない。
35
この時代の雰囲気は、山口[2004, p51]が詳しく述べている。
33
- 15 -
へん大きなものがあるからである。」(マーシャル [1965,p255])となり、集積の安定性が維持さ
れる。
このことは、アニメ製作(制作)会社側からだけでなく、アニメ制作技術者にとっても、「地域
特化産業は技能にたいする持続的な市場を提供することからたいへんな利便を得てきている。
使用者は必要とする特殊技能をもった労働者を自由に選択できるような場所をたよりにするで
あろうし、職を求める労働者はかれらのもっているような技能を必要とする使用者が多数おり、
たぶんよい市場が見いだせるような場所へ自然と集まってくるからである。」(マーシャル
[1965,pp255-256])と、人材が需要と供給いずれの側からも集中することを説明する。また、マ
ーシャルは、集積の一方で、「運輸通信手段の改良が産業の地理的分布に及ぼした影 響 」
[1965,p258])では、運輸通信手段の改良により、集積とは相反する他地域への展開状況を生み
出すことも指摘している。これは、スコットが述べた 1980 年代の米国アニメーション産業の海
外展開説明や本稿で述べる産業空洞化論とも関係する。
この数年間の間に、アニメ産業は注目を集めているが、集積のきっかけや、当時のアニメ産
業の技術者水準、東京都城西地域アニメ産業のその後の集積過程は、マーシャルの教科書的な
古典的産業集積論そのままの世界が展開されてきたといえよう。
5.集積の現況
5.1 全国のアニメ製作(制作)会社の現況
全国のアニメ製作(制作)会社数は、定義付けられる産業区分の範囲があいまいなため、調査
実施機関により、ばらつきがある。しかし、どの調査数値を見ても、その多くが東京都、それ
も杉並区・練馬区を中心とした東京都城西地域に集中していることでは一致している。
図 2-1 日本動画協会による東京都アニメ(製作)制作会社分布
出典
日本動画協会「AJA NEWS
- 16 -
Vol3
2003.7」 から転載
1)日本動画協会による調査
日本動画協会による 2002 年の調査36では、全国のアニメ(製作)制作会社は 430 社。このうち、
359 社が東京都に所在。杉並区と練馬区は、ともに事業者数が 70 社を超えている。
2)インターネットタウンページ「アニメ制作会社」
筆者が、インターネットタウンページ「アニメ制作会社」で調べた結果では、全国のアニメ
制作会社は、301 社となっている。このうち東京都は、239 社、79.4%であり、杉並区、練馬区、
武蔵野市、三鷹市の 2 区 2 市で 111 社、全体比率 36.9%、東京都内比で 46.4%になっている。
全国的には、東京都が他の地域のどこよりも圧倒的に集中している。特に、杉並区だけで東
京都を除く全国のアニメ製作(制作)会社の合計数を越えるなど、圧倒的な集積となっている。
杉並区と練馬区は、第 3 位の新宿区、第 4 位の渋谷区の 2 倍から 3 倍の事業所数があるが、新
宿区や渋谷区は、日本を代表する商業都市でもあり、全体の事業所比を考えるとこの地域への
アニメ産業の集積度は、著しいものがあるといえよう。
表 2-1 インターネットタウンページによる全国の「アニメ制作会社」
北海道
東北
東京都
東京都除く関
東
甲信越
東海
近畿(関西)
中国
九州・沖縄
合計
件数(件) 割合(%)
4
1.33%
6
1.99%
239
79.40%
10
3.32%
8
6
17
5
6
301
2.66%
1.99%
5.65%
1.66%
1.99%
100.00%
インターネットタウンページ
杉並区
練馬区
新宿区
渋谷区
西東京市
港区
国分寺市
武蔵野市
豊島区
東久留米市
中野区
小金井市
千代田区
大田区
東村山市
三鷹市
その他
合計
件数(件) 割合(%)
63
26.36%
40
16.74%
21
8.79%
19
7.95%
14
5.86%
9
3.77%
8
3.35%
6
2.51%
6
2.51%
6
2.51%
5
2.09%
5
2.09%
5
2.09%
3
1.26%
3
1.26%
2
0.84%
24
10.04%
239
100.00%
(http://itp.ne.jp/ 2004.11.23) をもとに筆者作成
5.2 日本動画協会加盟東京都城西地域の創業状況
集積の直接的な始まりである東映動画の大泉スタジオ設立から 40 数年間、現在東京都城西地
域に本社や主なスタジオのある日本動画協会加盟の正会員は、29 社中 11 社であるが、これら
の設立時期とその現所在地は表 2-2 一覧のとおりである。
設立は 1970 年代が多く、社歴も 20 年から 30 年を超える会社も多く、比較的長い間この地
域で活動いている。
36
2002 年秋に調査、「アニメは東京の地場産業」 (日本動画協会「AJA NEWS
- 17 -
Vol3
2003.7」) としている。
表 2-2 現在の東京都城西地域の主なスタジオ所在と設立年月
所在区市名 会社名
所在地
杉並区
株式会社サンライズ
杉並区上井草
株式会社マッドハウス
杉並区荻窪
株式会社葦プロダクション
杉並区上荻
株式会社スタジオディーン
杉並区西荻北
有限会社ハルフィルムメーカー
杉並区上荻
株式会社ボンズ
杉並区井草
練馬区
東映アニメーション株式会社
練馬区東大泉
株式会社ぎゃろっぷ
練馬区関町北
株式会社スタジオコメット
練馬区豊玉北
武蔵野市
株式会社ジェー・シー・スタッフ 武蔵野市境
三鷹市
株式会社ぴえろ
三鷹市下連雀
設立年
1972 年
1972 年
1975 年
1975 年
1993 年
1998 年
1948 年
1979 年
1986 年
1986 年
1979 年
日本動画協会ホームページ(http://www.aja.gr.jp/ 2004.12.23)を基に、筆者作成
5.3 杉並区内のアニメ製作(制作)会社集積分布
図 2-2 は、杉並区内のアニメ製作(制作)会社分布である。
杉並区内のスタジオは、中央線駅周辺や西武新宿線など、練馬区と接している杉並区北部に多
く集積している。
図 2-2 杉並区内のアニメ製作(制作)会社
出典
杉並区[2001]『アニメーションフェスティバル 2001』ガイドブックから転載
- 18 -
5.4 東京都城西地域生まれの作品とキャラクター人気
東京都城西地域生まれの作品は、日本で最初の長編カラー作品である『白蛇伝』を東映動画(現
東映アニメーション) が製作したのをはじまり、連続TVシリーズの『鉄腕アトム』は、当時
の虫プロから生み出された。1960 年代から 1970 年代に放映された、スポーツヒーローの『巨
人の星』や『あしたのジョー』や少女向けアニメの『魔法使いサリー』や『アタック№1』も
この地域の作品である。
表 2-3 東京都城西地域の主なスタジオの最近放映されたTV作品例 2004.11 月現在
所在区市名
会社名
作品名
杉並区
株式会社サンライズ
機動戦士ガンダム SEED DESTINY
株式会社マッドハウス
無人惑星サヴァイブ
株式会社葦プロダクション
F-ZEROファルコン伝説
株式会社スタジオディーン
タクティクス
有限会社ハルフィルムメーカー
プリンセス・チュチュ
株式会社ボンズ
鋼の錬金術師
練馬区
東映アニメーション株式会社
ワンピース
株式会社ぎゃろっぷ
こちら葛飾区亀有公園前派出所
株式会社スタジオコメット
マシュマロ通信
武蔵野市
株式会社ジェー・シー・スタッフ 藍より青し
三鷹市
株式会社ぴえろ
NARUTO
各社ホームページ等による筆者調べ
最近のTV作品(TV作品から劇場公開された作品も含み)は、表 2-3 に、一部を記載したが、
日曜日午前中や夕食時の「お子様・家族タイム」から、深夜放送枠向けまで、列挙に暇がない。
一般的には、制作スタジオ数割合で作品数も比例すると考えられるので、全国で放映される
半数近くはこの地域でつくられているのは当然の事となる。
次に、アニメ作品に登場する主人公たち、一般的にはキャラクターと呼ばれる登場人物の人
気度で見ても、この地域、特に杉並区は、キャラクター人気は高い。最も一般的なアニメ雑誌
であり創刊されて 20 年以上たつ『アニメージュ』(徳間書店)2004 年 9 月号での、人気キャラ
クターベスト 30 のうち半数以上が、杉並区生まれ37。過去五年間の同月の人気ランキングでも、
ほぼ同様の数値となっている。これは、比較的青年層が多く講読する雑誌のため、幼児・家族
中心のキャラクターよりも、この傾向が強くでている。アニメ作品に対する文化論は、本稿の
主題でないため、これ以上の詳細分析は行わないが、杉並区のスタジオの作品は、年齢的なタ
ーゲットがやや高めのためこの傾向が出ているものと思われる。しかし、この層が現在のアニ
メ文化を支える中心購買層の一つでもあり、ガンダムクレジットカードの発行 38や日経キャラ
クターズの発刊39など、アニメが「子供の見るもの」からもはや、30 歳代以降の層に対しての
経済効果の波及も無視できないものとなっている。
6.東京商工会議所による事業者調査
東京都城西地域のアニメ製作(制作)会社の実態は、公的な機関での調査はほとんど行われ
37
作品の製作スタジオ及び主な制作スタジオで杉並区内が事業所所在地の数。(筆者調べ)
VISA や JCB では、「ガンダムオフィシャルカード」として、『機動戦士ガンダム』図柄のクレジットカード
がある。
39
30 歳代を主な購読者層にして、2003 年 6 月に創刊。
38
- 19 -
ていなかったが、2001 年に東京商工会議所杉並支部でこの地域のアニメ産業に関係する事業者
の調査40が初めて行われた。これに続き 2003 年には、東京商工会議所練馬支部が杉並支部とほ
ぼ同様の設問項目で調査41を行っている。
以下、この二つの報告書から、主な共通設問項目を中心に、筆者が設問を集計し、この地域
のアニメ製作(制作)会社の概要を分析報告する。
6.1 調査概要
表 2-4
調査概要一覧
杉並区
調査名
平成 13 年度杉並アニメーション事
業実態調査報告書
調査実施機関
東京商工会議所杉並支部
調査対象
杉並区に拠点を持つ約 60 社のアニ
メ関連企業
調査方法
アンケート用紙を郵送し、回答を書
き込んだ後返送してもらう方式
回答状況
35 社
主な調査項目
1.事業概要について
平均従業員数、社歴、事業内容
2.経営について
現在の経営形態、今後の経営形態
現在の経営状況、今後の経営予測
現在の経営上の問題
受注先、発注先企業
アニメ産業の今後、将来の予測
杉並区や商工会議所に支援して
もらいたいこと
調査時期
2001 年 11 月∼12 月
練馬区
練馬区アニメーション産業実態調査
報告書
東京商工会議所練馬支部
練馬区に拠点を持つ 71 社のアニメ
関連企業
郵 送 に よ るア ン ケ ー ト用 紙 の 送 付
(一部訪問や電話ヒアリング含む)
44 社
1.事業概要について
平均従業員数、社歴、事業内容
2.経営について
現在の経営形態、今後の経営形態
現在の経営状況、今後の経営予測
現在の経営上の問題
受注先、発注先企業
アニメ産業の今後、将来の予測
練馬区や商工会議所に支援しても
らいたいこと
2003 年 7 月∼8 月
6.2 調査内容
1)30 人未満が全体の 80%以上(従業員数)
表 2-5 従業員数別の企業数
図 2-3
従業員数別の企業数
杉並区
従業員数別の企業数
従業員数別企業数
練馬区
11
13
50人以上
10∼20
6
14
30∼50
20∼30
12
7
30∼50
2
6
50人以上
3
4
10∼20
未回答
1
0
10人未満
合計
35
44
10 人未満
40
41
杉並区
練馬区
20∼30
0
5
10
15
20
25
会社数(未回答除く)
東京商工会議所杉並支部[2002],『平成 13 年度杉並アニメーション事業実態調査報告書』.
東京商工会議所練馬支部[2003],『練馬区アニメーション産業実態調査報告書』.
- 20 -
従業員別の企業数は、合計では 10 人未満が最も多く、30 人未満で回答企業全体の 80%以上
を占めている。
2)20 年以上の長い活動歴(社歴)
表 2-6
社歴について
図 2-4 社歴について
社歴
社歴について
杉並区
練馬区
20年以上
5 年未満
4
4
5∼10
1
6
10∼15
9
9
15∼20
6
4
10∼15
13
21
5∼10
2
0
20 年以上
未回答
合計
35
44
15∼20
杉並区
練馬区
5年未満
0
5
10
15
20
25
30
35
会社数(未回答除く)
社歴は、両区とも 20 年以上が最も多く、両区あわせて全体の 45%近くとなっている。
3)分業の幅広い事業内容(事業内容)
表 2-7 事業内容について(複数回答)
事業内容について
杉並区
計
練馬区
製作全般
19
22
41
原作・演出・監督
13
16
29
キャラクターデザイン・原画作成
14
25
39
動画作成
11
17
28
仕上げ(デジタル・セル)
5
17
22
特殊効果
6
8
14
13
7
20
撮影
5
13
18
ゲーム・デザイン
5
4
9
(デジタル)編集
4
5
9
美術・背景
事業内容は、製作全般が最も多い。
4)版権を有する主体は少ない(経営形態)
表 2-8 経営形態について(練馬区回答一部重複回答含む)
杉並区
計
練馬区
4
12
16
一部は自家製作している
13
6
19
製作の一部を受注している
18
22
40
他社製品の受注制作
-
19
19
その他
-
1
1
35
60
95
自家製作(版権を有する)主体
合
計
版権を有している主体(自家製作)は、杉並区では 4 社、練馬区でも 12 社と全体の 2 割に達
せず少ない。
- 21 -
5)取引先・資金調達が課題(運営上の問題)
表 2-9 現在の運営上の問題(複数回答)
現在の運営上の問題
杉並区
計
練馬区
取引先との問題
19
8
27
資金調達
15
11
26
経費増や経費負担
12
13
25
収入の減少
12
4
16
製作・製作管理
11
11
22
税金関係
9
10
19
権利問題
9
11
20
労務問題
9
7
16
設備関係の問題
8
11
19
発注先の管理
7
5
13
現在の運営上の問題は、資金調達、経費増や経費負担の問題などは共通して運営上の問題
としている。
6)同じアニメ製作会社が主な受注先(受注先)
表 2-10 受注先について
受注先について
杉並区
図 2-5
練馬区
受注先
アニメ製作会社
31
37
ゲーム関連業者
20
14
海外のアニメ製作会社以外の事業者
テレビ等のメディア
アニメ製作会社以外
の同業者
コマーシャル関連事
業者
海外のアニメ製作会
社
海外のアニメ製作会
社以外の事業者
13
13
海外のアニメ製作会社
12
14
9
6
5
4
1
3
受注先について
杉並区
練馬区
コマーシャル関連事業者
アニメ製作会社以外の同業者
テレビ等のメディア
ゲーム関連業者
アニメ製作会社
0
10
20
30
40
50
60
70
会社数
アニメ製作会社、ゲームやコマーシャルなど関連産業が受注先となっているものも多く、海
外からの発注先は少ない。
7)地域内相互間の発注(発注企業)
表 2-11 発注企業について
図 2-6
発注企業について
発注企業
発注企業について
区外の 日本 国 内の ア
ニメ関連事業者
区内の アニ メ 関連 事
業者
海外の アニ メ 関連 事
業者
国内の アニ メ 事業 者
以外の事業者
その他
杉並区
練馬区
30
30
24
27
11
15
8
5
2
1
その他
杉並区
国内のアニメ事業者以外の事業者
練馬区
海外のアニメ関連事業者
区内のアニメ関連事業者
区外の日本国内のアニメ関連事業者
0
発注先は区外の国内関連事業者が最も高くなっている。
- 22 -
10
20
30
40
50
60
会社数
8)現状維持が中心(アニメ業界の今後)
表 2-12 アニメ業界の今後
アニメ業界の今後に
ついて
飛躍的に良くなる
図 2-7 アニメ業界の今後
アニメ業界の今後
杉並区
練馬区
2
0
かなり悪くなる
やや悪くなる
やや良くなる
5
11
現在と変わらない
10
15
やや悪くなる
14
9
5
5
かなり悪くなる
現在と変わらない
やや良くなる
杉並区
練馬区
飛躍的に良くなる
0
5
10
15
20
25
会社数
アニメ業界の今後について、「現在と変わらない」が両区合わせると最も多いが、杉並区で
はやや悪くなるとの悲観的な見方をしている企業が多いのに対し、練馬区はやや良くなるとの
見方が多い。
6.3 調査結果の分析と考察
先行研究で紹介した福川や半澤の調査をはじめとする、いくつかの研究者による個別の調査
はあるが、杉並や練馬の商工会議所(東京特別区の場合は、東京商工会議所の支部)という、
地域を基盤とする公的な総合経済団体が、地元地域のアニメ産業に対して地場産業という意識
を持って行ったはじめての調査という意味で本調査の意義がある。
1)長い社歴の中小企業群
従業員別の企業数は、合計では 10 人未満が最も多く、30 人未満で回答企業全体の 80%以上
を占めている。また、社歴は、両区とも 20 年以上が最も多く、両区あわせて全体の 45%近く
となっている。社歴 20 年以上は、アニメが世界的な注目を集める以前の 1980 年代より前の設
立であり、比較的長く事業活動していたことがわかる。
2)版権有しない下請けが中心
事業内容は、製作全般が最も多く、キャラクターデザイン・原画作成や原作・演出・監督が
これに続いている。版権を有している主体(自家製作)は、杉並区では 4 社、練馬区でも 12
社と全体の 2 割に達せず少ない。現在の運営上の問題では、杉並区の回答では、取引先との問
題が最も多く、資金調達がこれに続いている。また、収入の減少が、練馬区調査に比べると多
くなり、資金調達、経費増や経費負担の問題などは共通して運営上の問題としているなど、一
般的な中小企業に共通する問題があげられている。
3)分業体制と地域内相互取引を中心とする幅広い取引先
テレビ等のメディアが受注先になっているものが、作品に対して元請の会社と考えられる。
また回答が最も多いアニメ製作会社が受注先では、下請け分業体制がみえる。ゲームやコマー
シャルなど関連産業が受注先となっているものも多く、幅広く裾野のある産業の一環がうかが
われる。一方海外からの発注先は少ない。
発注先は区外の国内関連事業者の割合が最も高いが、「杉並」調査の場合「練馬」は区外扱い
であり、またその逆も同じである。区内のアニメ関連事業者の割合がこれと同じ程度高いこと
を考え併せ、受注先との関係も加えると、東京都城西地域やその周辺地域のアニメ産業集積地
内での相互の仕事のやり取りが多く行われていると考えられる。一方海外への発注も多く、「海
外展開」と見るか「地場産業の空洞化」とするか、またはそのいずれも含むか、日本の産業論
- 23 -
の課題とも共通する。
4)中小企業の厳しい見通し
アニメ業界の今後について、「現在と変わらない」が両区合わせると最も多いが、杉並区で
はやや悪くなるとの悲観的な見方をしている企業が多いのに対し、練馬区はやや良くなるとの
見方が多い。杉並区調査が、行政のアニメ産業支援が始まる頃に調査を行ったのに対して、練
馬区調査は、それから 2 年近くたってから、行政支援が大きく取り上げられている時期であり、
これが多少関係しているかと思われる。
悲観的見方については、事業規模が小さな中小企業が多く、アニメ産業の動向だけでなく、
全体的な景気動向や中小企業の産業構造が背景にあると思われる。筆者は、一般にアニメ産業
の問題といわれている課題の多くは、日本の中小企業問題に起因するものと感じている。
あくまで推測だが、今から 30 年前に同様の調査を行っても、業界の見通しは「厳しい」の方
に振れているのではないだろうか。
7.アニメ産業のクラスター
7.1 クラスター概念
クラスターは、マイケル E.ポーター 42(Michael,E.Porter)提唱の概念である。ポーターに
よるクラスターの概念は、「クラスターとは、特定分野における関連企業、専門性の高い供給業
者、サービス提供者、関連業界に属する企業、関連機関(大学、規格団体、業界団体など)が地
理的に集中し、競争しつつ同時に協力している状態を言う。」(ポーター[1999,p67])また、「あ
る特定の分野に属し、相互に関連した、企業と機関からなる地理的に隣接した集団である。こ
れらの企業と機関は、共通性や補完性によって結ばれている。」(ポーター[1999,p70])とも定
義している。
7.2 クラスターの人的集積優位性
ポーターによるクラスターの考え方は、クラスター概念から始まり、他地域における競争優
位性、クラスター誕生から衰退要因まで述べている。また、「マンハッタン南部のマルチメディ
ア・クラスターは、基本的にはコンテンツの提供者と、出版、放送メディア、グラフィックス
や視覚芸術などの関連産業に属する企業から成り立っている。対照的に、サンフランシスコ・
ベイエリアのマルチメディア・クラスターの場合は、マルチメディアを実現する技術を提供す
る多くのハードウェア産業とソフトウェア産業を含んでいる。」(ポーター[1999,p78])と、コ
ンテンツ産業のクラスターについても述べ、さらに、「専門性が高く経験豊かな従業員という点
でも、クラスターは、まったく同じではないが、同様の優位を与えてくれる。クラスターには、
そのような従業員がたくさん集まっている。そのため、採用のために人材を探し交渉する費用
が安くなり、より効率よく雇用と人材をマッチさせられるようになる。さらに、クラスターは、
転居して来ようとする従業員から見てもチャンスが多く、リスクが低下すると考えられるであ
ろう。」(ポーター[1999,p90])のように、クラスター特徴のうちクラスターの人的集積の優位
性をあげている。
7.3 アニメ産業クラスター
筆者は、東京都城西地域アニメ産業は、マーシャルの産業集積概念では、「教科書的な集積」
42
ハーバード大学経営大学院教授
- 24 -
と位置づけたが、ポーターのクラスター概念との関係は、以下のように整理できる。
①アニメ産業という特定の分野に関して、いったん形成された集積は、技術革新した現在
でも継続していること。
②労働集約要素の強い、従来型の製造業に近いものでありながら、地域内を中心に幅広い
関係企業との分業や取引関係があり、競争と協力関係が垂直・水平にわたっていること。
③他の地域に比べての産業比較優位性があること。
これは、前述したポーターのいう「クラスターとは、特定分野における関連企業、専門性の
高い供給業者、サービス提供者、関連業界に属する企業、関連機関(大学、規格団体、業界団体
など)が地理的に集中し、競争しつつ同時に協力している状態を言う。」(ポーター[1999,p67])
や「ある特定の分野に属し、相互に関連した、企業と機関からなる地理的に隣接した集団であ
る。これらの企業と機関は、共通性や補完性によって結ばれている。」(ポーター[1999,p70])
に該当し、東京都城西地域のアニメ産業は、ポータの定義するクラスターと筆者は考察する。
- 25 -
第3章
アニメ関係事業者への聞き取り調査
東京都城西地域のアニメ産業の現状と課題を明確化するため、関係する当事者への聞き取り
調査を実施した。調査は、東京都城西地域で創業し、現在も所在する大手アニメ製作会社 2 社
と、この地域への人材供給のひとつと考えられる新都心部に開校しているアニメ専門学校及び、
アニメ産業の業界団体である日本動画協会に対して、2004 年秋に日本労働政策研究・研修機構
の研究員とともに行った。調査は会社概要から始まり、比較的多岐にわたったが、本章中の各
項目「聞き取り調査」は、この地域の今後のキーワードと考えられる「人材育成」の課題を中
心に、企業名や事業規模等を一部匿名及び割愛したうえ、筆者が相手方確認のうえ編集したも
のである。また、第 2 節では、今回の聞き取り調査に対するまとめを他の章との関係を念頭に
入れて記述した。なお、同時期に行った行政機関に対する聞き取り調査の概要は、第 4 章で記
述する。
第1節 聞き取り調査
1.アニメ製作会社A社
1.1 会社概要
東京都城西地域の私鉄沿線に本社があるA社は、その名称が固有名詞化されている、SFロ
ボットシリーズが代表作品である。このほかにも、現在も複数のTVシリーズの作品が放映さ
れている。また、本年に劇場公開されたアニメ映画作品も制作するなど、日本を代表するアニ
メ製作会社のひとつとなっている。
A社の事業概要によれば、資本金は約 3,900 万円、従業員数 170 人、テレビアニメーション
映画の制作のほか、CGアニメーション、ビデオシリーズ、劇場用アニメーション映画の製作
などを中心に関連事業を行い、関連企業には、音楽出版やゲーム開発の会社がある。A社の沿
革は、1972 年に現在地近くに有限会社として発足、1977 年株式会社となる。1987 年アニメー
ションの製作会社として現在の社名のA社に継承。1994 年大手玩具メーカーグループの一員と
なる。1996 年に本社を現在の場所に移転した。
A社は、本年初めて専属の作画スタッフとして作画実習生を募集した。これは、専属の作画
スタッフとして、スキルの高い動画・原画アニメーターの人材育成のため、提携する作画プロ
ダクションの協力の下、1 年間の実習を経て、A社専属のアニメーターとなることを目指すと
している。期間は 1 年間、専属実習生として契約し、月額 100,000 円支給、募集人数は 10 名を
予定している。
1.2 聞き取り調査
2004 年 11 月に、A社の本社ビルで、B代表取締役及びC総務部長に対して聞き取り調査を
行った。項目中で、B代表取締役の表示が入っている以外の項目は、C総務部長の聞き取りの
まとめである。なお、A社は杉並区のアニメ戦略会議 43に同社のB代表取締役が委員として参
加し、また、区のアニメ企画展事業にも、展示協力を行うなどしている。
1)設立の経緯
A社は、1972 年に、当時所属していた大手製作会社から 7 人が独立して設立した会社である。
全員を正規社員として抱え込んでいる方式は、社員と仕事のバランス量が崩れ、会社として成
43
杉並区アニメーション振興戦略会議 2004 年 7 月∼9 月
- 26 -
り立たないやり方と考え、経営という立場で独立した会社がA社の前身である。このため、設
立以来、制作部員しか置かない方式で経営し、クリエーターは社員では置かず、外部に発注す
る方式で行っている。アニメ産業は、産業の分業化が進み完成しているが、当時これを先駆的
に考え実行したアニメ製作会社が、現在のA社である。
2)取引関係、協力企業
A社は作品制作で人脈や取引先の会社は多く、メインジャンル物については、強いつながり
のある会社があり、「気心が知れている」「キャパシティがあり仕事量がどれくらいあるかがわ
かる」のは取引先として重要な要素である。一方、新しい分野についての開拓も、オリジナル
を新しく作る会社や新しいキャラクターデザイナーや新たなクリエーターなどは、シナリオや
演出や全パートにわたって必要になる。ライセンサーとして海外販売など、A社自身が、作品
の海外展開も積極的に展開している。現在でも世界 10 カ国以上で、常時数種類の作品が放映さ
れている。
3)人材の確保
A社は、新規採用の 8 割から 9 割が大卒となっている。採用した新人は、事務営業部門及び
企画部でメインは制作部採用となる。新卒者はアニメの経験がない。映像系の大学からも応募
者があるが、経験者とはみなしていない。また、別枠で通年採用も行っている。これは、中途
採用で欠員、増員の必要に応じて行っている。制作系では将来プロデューサーになりたい、演
出家になりたいなどの目標を持って、初めて目標に達成するもので、独立向上心が必要である。
しかし、一般に考えるほど特殊なスキルは求めていない。
4)新卒採用と中途採用
A社は、毎年 10 人前後の新卒採用と随時の中途採用をしている。A社は、説明会などでしっ
かり会社説明、業務説明を行っているので、定着率はよいほうである。契約形態はすべて、一
年ごとの契約社員制度を採用しているが、完璧に離職する人と、同業他社へ転職する人とフリ
ーになる人がある。これらのスタッフは、アニメ業界には残ることになる。少数の社員以外は
すべて契約社員で、一年更新しながらであり、雇用形態は、会社創業の経緯からのポリシーで
あるという。研修は、社会人としての基本的なものは行うが、アニメの実践を兼ねたものは研
修では行っていない。4ヶ月目くらいから、先輩に付いてテレビシリーズを一本任せ、半年か
ら一年くらいでは、単独で何本か担当させるなどしている。
中途採用経験者は、仕事ぶりなど途中採用のリスクはあるが、即戦力として役立つし、人脈
もまとめて持ってくるときもある。他社の癖が出てくることは仕方がないことである。しかし、
未経験の中途採用者は離職率も高く、アニメ業界を離れるケースも多いという。また、仕事量
が多いなど、必要なときには、期間での雇用契約や作品完成までの契約などで不足を補う場合
もある。
5)キャリアプラン
A社の制作部にはかなり明確なキャリアプランがあり、制作進行に 3 年間その後、プロデュ
ーサー系でそのまま会社に残る道では、シナリオ演出となり、工程に分けて配置転換する。設
定制作、設定部門、文芸制作、シナリオ担当などであり、演出助手から演出家、ここでフリー
となる。将来ライター系の場合は、配置換えし、シナリオライターとして、出稿などを行う。
ここで一応雇用関係が終わる。この方向を目指す人は、はじめから目的を持って進んでいる場
合が多くいる。また、開花の早い人と遅い人との差は大きい。A社としても、才能がある良い
人材が欲しい。一方プロデューサーを目指す場合は、会社内に残ることが多い。
6)専属アニメーター募集
- 27 -
B代表取締役によると、A社は、従来基本的には専属の動画部門を直接持たなかったが、10
万円の固定給を出し、一年後には、専属契約とする専属アニメーター実習生制度を本年度はじ
めて募集開始した。コスト全般のことを考えると、実習生に支払う金額以上に、育てるための
講師部分等の経費のほうがより多くかかるが、アニメーター不足もあり、会社としてもスター
級のアニメーターを必要とし、またクリエーターあってのアニメ業界であり、スタークリエー
ターを生み出し育てることを目的にし、副次効果として、原画や動画の人材不足を補うことも
でき、スター級を生めば、会社のみならず、業界全体のプラス財産にもなると考えている。ま
た、現在はアニメーターが育ちにくい環境にあり、才能があっても、どこから入ったらよいの
かわかりにくい業界でもある。経済的な支援がないと育ちにくい現状でもあり、それでだめに
なることもある。文化や芸術の世界では、全般に下積み時期があり、アニメーションも例外で
はない。この世界に入りづらい環境を少しでも緩和できればよいとも考えている。
7)人材教育機関について
B代表取締役によれば、専門学校にはまかせるのでなく、学校は学校であり、実践の中で育
てると考える。専門学校ですぐ使えるのは少ない。志を持っている人たちにとって、何が一番
良いことなのかを考えると、才能が生かせるしくみを考える。絵の世界は、一番は才能であり、
これを開花させる場を作る。一線級アニメーターは成功すれば、収入も多い。サクセスストー
リーを見せてあげたいし、人材を出して行きたい。このための入りやすい間口を広げることが
必要だと考えている。
8)行政に求めるもの
B代表取締役は、杉並区の戦略会議でも提言発言したが、アニメビレッジでも作るくらいの
考えが欲しい。国レベルでは、経済産業省は、流通業界やTV局が強い部分のルールを見直す
など、知的財産保護の動きが出てきている。税制的な支援や人材教育もあるが、総じてあまり
にも放っておいたと考えている。
2.アニメ製作会社D社
2.1 会社概要と事業方針
D社は、1970 年代にスタートしたアニメ製作会社。劇場、TVを中心に数多くのクォリティ
の高い作品を制作している。またその内容もキャラクターものからクールアニメ、日米共同作
品までと幅広いのも特徴である。近年においては海外での評価が高くなっている。
D社は、以前から劇場公開作品を得意分野とするアニメ製作会社として有名であり、日本を
代表するアニメ監督や脚本家等とのつながりも多く、昨年度公開された作品は、一時アカデミ
ー賞のアニメーション部門にノミネートも噂された。D社は、TVシリーズも手がけ、作品は
多く放映されている。D社は、創業以来、いわゆる独立系のアニメ製作会社であったが、2004
年 2 月にITベンチャー企業のグループ企業となり、これを契機に 2004 年の秋には、20 年以
上活動していた本社を同地域内の高層ビル内に移転した。
2.2 聞き取り調査
2004 年 10 月に移転後のD社本社で、E代表取締役に対して聞き取り調査を行った。なお、
E氏は、2004 年 11 月にD社を辞任し、D社と同住所にある関連会社の代表取締役に就任して
いる。
1)会社設立の経緯
D社は、当時大手のアニメ製作会社から独立したアニメ製作会社の関係者で設立した。D社
- 28 -
の事業は、当初はテレビ分野よりも映画中心で、年間制作タイトル数は少なかったが、現在は、
年間 5 から 8 タイトルを制作している。10 年ほど前から、テレビシリーズにも進出し、現在は、
劇場作品も制作しているが売上げでは TV シリーズが中心になっている。
2)取引関係と協力企業
D社の取引先は、最大手のアニメ製作会社以外の大手各社の広範な取引先がある。それは、
設立の経緯とその後の経営方針によるところが大きい。D社は、企業経営というより、スペシ
ャリスト集団として組織であることを志向してきており、良い意味では職人集団が会社組織に
なっており、D社のクォリティに対して広範な取引先からの需要があるためである。
3)制作の海外依存度
D社の海外との作品制作関係では、他社と同様に、動画・仕上げの海外依存度は高い。国内
コストは海外の 10 倍とも言われ、動画・仕上げ工程では、D社に限らず、国内ではごく限られ
た動画検査などの工程を行っているが、90 パーセント程度が海外に依存している。
国内のアニメ制作では、D社に限らず、一般に動画・仕上げコストは海外コストが標準積算
価格となっている。昨今は海外でも中国、更には、ほかのアジアの国々まで流れ、動画・仕上
げ工程はもとより、国際分業は他の制作工程にも及び始めている。D社では、海外スタジオへ
の投資だけでなく、海外資本の受け入れもある。また、海外に制作ウエイトをシフトした作品
も試み始めている。現在D社年間制作の 5∼8 タイトル中、各タイトルの 20%程度は、D社の
海外拠点で制作の一部を依存していると思われる。
4)技術革新
D社は、セルを使用する(アナログ的な)制作は最終的に 2 年前に廃止した。D社のデジタ
ル化対応は、5 年前の撮影部門のデジタル転換から始まったが、現在も、その取り組みは続い
ている。デジタル転換に際しては、アナログ技術をマスターした 40∼50 代の人たちは、月収が
かなり減少するケースもあった。
当初のデジタル化はセルが使用できなくなるなどに対応した技術で、制作や生産性に対して
の合理性や革新性はほとんど無く、また、仮にあっても、デジタル投資に見合うことは無かっ
た。が、ここ数年のデジタル技術は、HDTV 対応などを含めアニメの生産性やクォリティに直結
する技術も見られるようになった。これに伴い2D アニメでも、デジタル制作に適合した作品
も制作されるようになってきた。D社では絵コンテ、原画についても、デジタル化を視野に入
れデジタル領域の拡大を図っている。
5)社員規模と採用
D社では、作品が多様で且つ作品数も多いため、作品ごとにフリーランスを中心に組織して
いくことが多い。常時、制作組織として編成されている制作者は、全制作工程で 350 人前後で
あり、このうち半数以上が契約社員を含めたフリーランスと想定される。
部門別では、ほとんどがアニメーターで、動画部門、色彩設計・色指定・仕上げ部門が各 30
名、撮影部門・編集が 35 名、制作管理部門が 30 名、経営・業務管理部門が 20 名と見られる。
D社は、例年各部門合計で 20 名程度を新規、及び、中途採用しているが、このうちアニメ専
門学校の新卒出身者は 3 から 4 名程度と少ない。ただ、別途、かなりのアニメーター志望の新
卒者を動画部門で採用し、OJT で教育している。
採用に際しては、志望する職種別に、実技や作品審査を数次に渡って行っている。
また、ここ数年の傾向として、従来の韓国、中国からの応募だけでなく、欧米からの採用希
望も増えており、中には優れた技術を持った経験者も多くいて、そうした海外からの応募につ
いての中途採用の機会が増えている。
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5)教育機関
アニメ専門学校などの 2 年制では、原画のスキルなどを 2 年間では基礎から教えて一人前に
することが難しく、採用に際しての評価がし難い。
4 年制教育では 4 年間の間に、基礎的な部分から応用までの充分な積み重ねが期待できる。2
年制では、どうしても 2 年間で就職させなければいけないということで、1 年目はともかく、2
年目では就職のための教育になってしまいがちであり、受け入れには課題が残る。また、2 年
制では監督やプロデューサーを目指す若者への教育も教育期間が短すぎて難しい、制作管理部
門についての教育では制作管理が実践経験を要するため、2 年制でも 4 年制でも難しく、実際
に制作管理部門でプロデューサーとして就労するには数年の下積み経験が必要である。また、
販売や契約などの事業管理・権利管理などを含む所謂プロデューサー業務については、少なく
ともアニメについては、未だ教育機関が見当たらない。作品数が多くなっており、優秀な制作
管理業務の就業者への需要は高い。
7)キャリアプラン
D社では、原画を経て、作画監督、或いは、絵コンテ、演出を経て監督が一般的なキャリア
パスであるが、多様な人材には各制作部門出身者も多く、キャリアパスが明確になっている訳
ではない。美術監督や撮影監督、編集やシナリオ制作から監督になる例もありD社の監督のキ
ャリアパスは、いろいろとバライティがある。
監督になるための必要十分条件は、作品を完成できる演出能力だが、作品内容や劇場と TV
シリーズの違いなど多岐に渡っている。絵コンテやシナリオ、テレビシリーズの各話の演出な
ど一段ずつ経験を積み上げて監督業のトレーニングをしている。また、監督マニュアルがある
訳でもなく、先輩から後輩へと伝えられることも多く、優れた先輩と Face to Face で得ること
も多い。
6)人材の流動化
D社ではフリーランスが多いが、人材の流動化を意識して図っている訳ではない。業界の慢
性的なアニメーター不足にあってD社で長期に渡って就業することは実力があれば難しくない。
但し、出来高報酬制度の場合もあり、請け負う業務量を求めて流動化することも多い。業界特
有の人材の流動化ではないが、レンタル制度のようなスタジオ間の人材交流もある。
海外への日本人アニメーターの流出は、米国ハリウッドへは多いが、そのまま帰国しないで
活動をし続ける人は少ない。日本のアニメを作りたい場合、日本のアニメ制作者の集合体でな
いと難しく、海外では日本のアニメは制作できない。
日本のアニメをアニメーターが制作できるようにするためには、下請法などの整備ではなく、
アニメの産業構造をアニメーターの立場から分析し、アニメーターを職人と考えて、ギルド的
な団体、ユニオンなどを組織し、アニメ制作スタジオのプロデューサーの制作リスクをバック
アップできるような制度を発想すべきだと考えている。
7)今後の課題
D社の経営は、経営管理が会社を運営するのではなく、寧ろクリエーターが中心になって経
営運営してきた。D社は設立以来この方針で経営を続けてきたが、こういった、職人集団は貴
重な存在であり、今後の課題に向け重視すべき存在ではないだろうか。
制作現場には、今後、2 つの方向性がうかがえる。ひとつは、少数による作品制作であり、
一方はデジタル装備などを含む大型化した大規模集団でのアニメ制作である。事実、実力があ
ればアニメーターはフリーランスになったほうが収入や権利が獲得し易くもなってきている。
もし、フリーランスのアニメーターしかいなければ、アニメ制作会社の機能は、制作組織を
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組成し、制作環境を整備し、制作管理をすることになる。アニメーターが中心制作組織化が機
能できるスタジオがあれば、アニメーターの海外流出というよりは海外からの才能の流入、先
進的なデジタル技術の導入も期待できる。
5)行政に求めるもの
D社では、経営管理や営業管理だけでなく業界全体を分析し、新たなドメインの確立や新た
なマーケティングでの事業開発ができる人材を欲している。しかし、経営と資金の経営資源へ
の配分を考えると、そうした人材を今、直ちに雇用することは難しい。行政に対して要望があ
るとすれば、アニメーターが制作に集中できるような仕組みづくりを考えたらどうだろうか。
アニメーターがそこに居住し、アニメ制作に専念するメリットがある仕組み考えて欲しい。
ニューヨークのアーティストへの施策のように、アニメーターばかりでなく、様々なクリエ
ーターやスペシャリストが集って住まい、そこでの更なる交流や技術アイディアの革新が行わ
れ、一方で住民に教育に関れるような居住と生産活動の基地が都市の中にできると良いと考え
ている。
3.アニメーション専門学校F校
3.1 学校概要
F校は、東京都城西地域とも近い新都心部に位置している。本年度の同校募集要項によれば、
1977 年に同校を開設、現在、本校舎のある東京都のほかに、全国に 8 校を有し、別に、学校法
人である専修学校もある、日本で最大手のアニメ専門学校となっている。設置学科は、全て修
学 2 年制であり、これらをアニメ学部、映像学部、工芸学部、ゲーム・クリエーター学部、芸
能学部、出版学部 6 学部で括っており、これら本科とは別に夜間課程や土日コースも設置して
いる。F校創立者のG学校法人理事長は、映像、アニメの撮影部門の現場出身者でもある。
1.2 聞き取り調査
2004 年 11 月に、F校の本部にて、創立者である学校法人のG理事長に対して、聞き取り調
査を行った。
1)F校設立経緯と現況
F校設立経緯は、アニメの通信教育を昭和 53 年頃から 4 年間ぐらい行い、この通教のノウハ
ウを適用して、通学ができないか考えたことが始まりで、アニメの仕上げ、背景、撮影の部門
を通学に移行したものである。しかし、社会的認知が得られず、漫画の学校、アニメの学校と
いわれ、融資は厳しかったという。初年度は、11 人しか学生が集まらなかった。しかし、直後、
宇宙戦艦ヤマトやルパン三世などのアニメブームが来て、入学者が増えてきた。そして、アニ
メーター、トレス・彩色、監督、背景、撮影の5科を有するようになった。ここから延長して、
漫画の部門も立ち上げ、さらに声優の部門も含めた。この頃、通学一本とした。F校の最近の
入学者数は、入学重複者などを除いて 3,500 人程度で、在学 2 年制で約 6,000 人が通っている。
これは、全学科含んだ数字だが、アニメ学部は、このうち約 25%いる。
2)入学者の傾向
入学者の学歴分類は、昨年度 55%が高校卒、残りは、大学中退と短大卒が 8 パーセント、大
卒 5 パ−セント、中卒 5 パーセント、19 歳年齢が 11%あり、これは、学校中退者かフリーから
の入学、その他である。これからの少子社会では、高卒 55 パーセントの割合に集中するのは、
将来危険と考えている。全日制の社会人はなかなか通学が厳しい。夜間部を造っているので、
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社会人や OL も通学している。いつまでも、高卒だけに頼っては、今後経営は厳しくなる。F校
は、学校法人でないため、海外からの留学の割合は、あまり多くはない。ここがネックとなっ
ている。
3)卒業後の進路
F校のアニメ関連学科の学生 500∼550 名のうち、アニメ業界への就職者数は 350 名となり、
その内訳は、40 パーセント程が、アニメーターとして就職。20 パーセントが、デジタルペイン
ト部門、6 パーセントが背景、6 パーセントが制作進行部門など。残りの 150∼200 名がゲーム
業界、フリーター、一般職となり、大学等へ進むものも若干いる。
4)教育内容の変化
F校のアニメ関連学科での教育で、一番変化したのは、デジタルペイント部門で、ここ数年
で劇的に変化した。セルへのトレスペイントはほとんどなくなった。現在のアニメ業界のデジ
タル部分は、統一した基準がなく、各社ごとに撮影方式や転換作業が異なっている。このため、
学校での教え方に少しばかり困難が生じている。教えていない方式だと、「学校ではデジタルも
教えていないのか。」となってしまうので、業界標準となるデジタル技術及び作法のマニュアル
が望まれるが、現場の現況を考えると、標準化は難しいものと判断している。この傾向は、ま
だ数年であり、10 年は経っていない。F校でも数年前までは、トレスも教えていたので、急激
な変化である。
5)就職求人
G理事長によると、就職活動は、まず全国の F 校設置学科の就職該当会社に求人票依頼を行
うところからスタートしている。アニメ関連学科に対しては毎年 200∼300 くらいの求人がある。
これをアニメ、デジタルペイント及び撮影、背景、制作などに振り分ける。アニメーターや背
景等描絵系の学科の学生でも、絵のスキルに難がある場合結果として制作進行になる者も出る。
徹底した個人面談も行い、学生の希望を吸い上げると共に、学院所有の情報を与え、それらを
つけ合わせて納得のいく形で受験希望会社を決めていき、就職試験に臨ませる。一部の有名な
企業を希望する者も出るが、なかなかすべては入れるわけではないので、就職が決まるまで面
接を繰り返しながら受験させていく。どうしても決まらないと、フリーターになったり、一般
職への就職も出てくる。また、制作進行の部門などは運転免許も必須なため、この面倒も教習
所と提携して見ることもある。しかし、アニメ関連部門は、労働面できつい上に収入面でも厳
しいものがあるためになかなか定着率が高くなく、F校としても現場環境の改善のために何か
寄与できることはないかと模索している。
6)就職指導
F校のアニメ関連学科では、2 年生になると、夏休み時には教室開放を行い特訓もする。11
月には、進路状況が厳しい人については、制作進行など関係する他の進路についてもアドバイ
スする。どうしても自学科該当職種をやりたいという人には見守るしかない場合もある。
就職にはG理事長自ら陣頭にでる。規模が 15、16 人程度のアニメ制作会社と今後と提携して、
企業に「研修」教育システムの委託をすることも考え、実現に向けて調整に入っている。最近、
アニメ制作会社も、アニメーター養成に力を入れ始めていることは知っているし、会社によっ
ては、実習生募集を行うことも知っている。また、その企業と募集について、打合せも行うこ
とになっている。
アニメ業界全体に言える事だが、定着率が低いため常に人材不足である。多く供給するが、
良い人材は長く続くし、いくらでも仕事がある。才能の問題であるが、定着しない人はこの業
界から足を洗う。これは結構多い。または、他社に移る。ごく一部教える側の講師になる人も
- 32 -
いる。
7)人材育成
F校では、アニメなどのスキル以前に、「社会人」のマナー教育や言葉使いビジネスマナー教
育を行い、就職指導などは実践で面接なども行っている。教師自身のスキルアップも必要と考
えている。内部講師は全て現場経験者であり、担任として学生管理から添削、教材作成も行う。
他に、外部講師で現役の現場の人がいる。外部講師は、スキルはあるが、一部に教育者として
は疑問のものもいる。やはり、授業進行の中心は、計画作りから、内部講師が中心となり編成
している。
8)インターシップ制度
F校では、インターシップ制度も採用している。秋の時期に、原則として週 3 日まで、親な
どの同意を得た上で就職の前提として全日制のインターシップを行い、推奨もしている。イン
ターシップは企業側からの要望に応える形で行っているが、企業に対しては、F 校としてのカ
リュキュラムにも理解を求め、週 3 日迄という制限を設けている。期間は企業ごとに異なるが、
内定書を取って、卒業まで続けるケースもある。
9)アニメ制作会社や行政に求めるもの
アニメの制作会社に対しては、デジタルフローの統一、作業単価の引き上げを望みたい。F
校としては、良い人材を送り出してよい評価を得たい。業界から専門学校に対して、良くない
評価があることも知っている。「卒業してもすぐには使えない。」「高い学費だけ取っている」な
ど言われることもある。私としては、マナー教育を含めて教育の質を高めていきたい。自分自
身が制作現場出身だから、素人だましの学校とは思われたくなく、「育てる人」になっていきた
いとしている。
行政によるアニメ業界の改革は、基本的には難しいものがあると思っている。話をした首長
は理解があり、ある種の熱意もあり、自分の夢もあり、自治体のプロジェクトとしたい考えも
あるので、こちらも協力しようと考えたが、首長以外のスタッフとの間に大きなギャップを感
じる。やる気が見えない。行政側からの自発的なものがなければ、いくら首長が言ってもだめ
である。その場限りの対応に終始している。
4.有限責任中間法人日本動画協会
4.1 協会概要
有限責任中間法人日本動画協会は、『鉄腕アトム』の誕生地とされ、駅のホームの発車音が、
『鉄腕アトム』主題曲となっている、JR高田馬場駅(高田馬場駅は、東京都城西地域を通る、
西武新宿線の乗換駅でもある。)近くに事務局がある。協会ホームページ、パンフレットによれ
ば、我が国のアニメーション制作業界の意志を統合し、関連する諸企業・団体との連携を保ち、
アニメーション産業全体の持続的発展を目指す団体として、アニメーション制作の新技術の開
発、マーケット情報の収集と発信、各種付加価値の創造、著作権保護の研究と実践、人材の育
成、さらに諸団体との協力・調整やアニメに係わる様々な協同研究などに取り組む団体である。
協会の沿革は、1965 年にテレビ映画製作者懇談会として発足、1966 年に日本動画製作者連盟に
名称変更、2000 年日本動画協会と改称し、2001 年新宿区高田馬場に事務所を移転し、2002 年
に任意団体日本動画協会を有限責任中間法人日本動画協会に法人化した。
最近の活動では、ヤフー㈱と知的財産権保護のために協力を開始し、「ヤフーオークション」
を運営するヤフー㈱と、海賊版取引へ協力して対応するため、同社の公表している知的財産権
保護プログラムに加盟している。今後、両者はネットオークションにおける海賊版出品の排除
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および健全な運営に協力して取り組んでいくとしている。
4.2
聞き取り調査
2004 年 11 月に、協会事務所で、H専務理事に対して聞き取り調査を行った。H専務理事は、
同協会の事務局長も兼ね、東京都城西地域にある、最大手のアニメ製作会社で、テレビアニメ
初期から活躍していた。協会が中間法人化するにあたっても、事務局で中心として活動してい
る。大学でアニメ関係の講師も務めた事もあり、また、2004 年には、日本のアニメの歴史全般
をまとめた本を出版している。
1)法人格取得の経緯
法人格取得の経緯は、ポケモン問題 44がひとつのきっかけとなった。このときマスコミや政
府が、業界団体に聞こうとしたら、任意団体しかない。当時は、親睦会的な団体しかなく、業
界団体として機能するものではなく、要求や統一見解が出せる立場の団体ではなかった。そこ
で、関係官庁などが、アニメが社会、特に子供たちに与える影響を自己規律できるような団体
が望ましいという声がでてきて、このための団体として、社団法人化を当初は考えていた。と
ころが、社団法人制度自体が天下りや談合など不透明な関係で批判を受けている時代でもあっ
た。この頃新しい法律で、中間法人法という制度ができた。利益法人と公益法人の中間に位置
するものである。同時に一方では、新しい社団は認めないという方針が出るなどの経緯もあっ
て、中間法人となった。法律ができたと同時に申請したので、早い時期に中間法人となった。
これではじめて法人格を持つ初の業界団体が出来上がり、世界一のコンテンツ産業の自覚を持
ったといわれるようにようやくなった。
2)海外からの問い合わせ
中国や韓国から、練馬区や杉並区などの集積地を視察したいとの申し出がある。相手方は、
工業団地のイメージがあるが実態はぜんぜん違う。杉並と練馬にはあるが、路地裏の一角にあ
ると言っても信じていない。有名スタジオに行っても、「こんな小さい」と言って、信じられな
いと言う。動画協会が、こんなマンションの一室にあると言っても信じてくれない。どこか別
に本部があるといっている。どこからも支援を受けずに、会費で運営していると言うとまた信
じてくれないという。
3)中国の動向
中国からは、今年だけでも 10 回程度視察が協会に来ている。上海、大連、杭州、香港、台湾、
いろいろなところから来ている。大体は、政府又は地方の役所などからである。本当は、制作
会社の動きを聞きたいのだが、こういった生の部分の動きは、なかなかできない。中国側の業
界の中心人物には、会えないことが多い。今度、2005 年の東京国際アニメフェアのときに、ア
ニメパネルディスカッションを行うこととなった。ここで『アニメ産業の現状と課題』につい
て日本・韓国・中国で行う。このパネルディスカッションを開催地それぞれの国で行い、3年
間で一回りして行う予定である。これで、業界の人たちとの協働化の入り口ができるのではな
いかと期待している。やはり、単に下請け一方的な流出ではなく、お互いが、ライバルとしつ
つ、今後は、国際的な協働化コラボレーションしないといけないと考えている。日本の優れた
技術も、一方的に相手国に対する優位性は長くは続かない。海外に工場を作ること、日本のア
ニメもこの方向にある。この方向性だけでもきちんと整理したい。巨大なマーケットである中
44
1997 年 12 月 16 日テレビ東京系放送の「ポケットモンスター」で、透過光使用場面を見ていた子供を中心
に 600 人以上が、てんかん症状を訴え、一部が入院した事件
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国とは、コンタクトもしっかりと取る必要がある。
4)韓国の動向
韓国の動向は、現在のところ国が多くの予算を計上してコンテンツアニメ産業やIT産業を
支援している。金前大統領が、訪日時に、協会の前会長に車を売るより一本の良い映画を日本
に売ったほうが、成功する。と言っていた。今の「韓流ブーム」を良く見通していたと思う。
大学でも、専門教育が盛んに行われている。人材が多く輩出し始めているが、この人材を受け
入れる産業基盤がまだ弱く、教える教員も不足している。過度なIT産業への支援との批判的
な論調もあり、韓国はこれから選別の時期に入るのではないだろうか。しかし、『冬ソナ』の経
済効果は、絶大であり何よりも国のイメージアップは計り知れないものになっている。映画実
写部門は、成長した。次はアニメだと言われている。すごいエネルギーと技術力も既に水準に
あるが、しかし、韓国は、人口も 4,800 万人と市場規模が狭小であり、ヒットしてもペイしな
い。今後海外展開しかないだろう。そこで中国をマーケットとしていることは日本と同じであ
る。実写の次はアニメである。日本マーケットで成功したものは世界でヒットするのだから、
日本市場で成功するようなものを作る必要がある。世界マーケットに出るためには、米国ほど
市場が大きくなく、程よいマーケットでもある日本市場が注目されている。中国は大きいが未
知数。アニメのクォリティに対する判断力は日本は成熟している。日本でヒットしないものは、
世界でも通用しない。選別能力は高い。
5)協会の拡大
当初、任意団体時の 6、7 社から現在の 38 社まで大きくなったが、中間法人になるときも、
初代理事長から指名されて事務局の仕事を行った。都内の主なプロダクションも回り加入を呼
びかけたが、当時の動画連盟のことをよく言う人は少なかった。独立独歩でやっていくからい
いとの声も多かった。アウトサイダーが多い業界であるが、何かメリットがあるのかどうかで
なく、入ったら協会を利用して欲しい。いろんな会社との交流を通じて自らのメリットにして
欲しい、と説いて回った。プロダクションも、大同団結と情報交換やコミュニケーション交流
が必要だ。東京アニメフェアなど行われるようになり、参加も進み、最近は加盟事業者も増え
てきたが、まだ新興プロダクションなどではこの意識が弱く、参画意識が薄い。
6)デジタル化の技術開発と成長課題
昔のセル画のときは、個人またはプロダクションが技術情報を秘伝として開示せずに来てい
た。今後はデジタルの技術基盤情報を積極的に開示することで、技術的な相互交流が進むので
はないのか。その方向がよいと思う。協会では、現在各社が使用しているデジタルツールをお
互いに公開するような報告を出す予定になっている。
アニメ産業は、成り立ちからして付録的なメディアとして始まった。TVというメディアを
通じて成長した産業となっている。このため、テレビ放送事業者の優越的地位になっていて、
独立した産業とはなっていない。積出港がないとだめである。今はテレビしかない。OAVや
映画もあるが、テレビに従属したままの状態である。ブロードバンドもあるがまだ成功してい
る例はない。深夜枠もあるが、ここは制作条件が良くない。一人で作った『ほしのこえ』の例
外のように、個人の天才クリエーターが一人勝ちすることもあり得る。当分地上波テレビの優
越性は続くが、今後はどうなるのか。テレビの枠を各事業者がただ取るだけでなく、三年五年
先の見通しもつけた産業になっていない。
7)人材育成
人材育成や知的財産保護の仕組や整備が必要。東大大学院でこの方向の教育が始まったし、
東京芸術大学でもいきなり作画監督ができるレベルまでの高等教育を計画している。専門学校
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がマスを育てるだけでなく、英才教育も必要と考える。かなりの経費が必要なのでスポンサー
も必要だ。今度できる首都大学でも、ぜひ、アニメーション専科を作ってほしいと東京都にお
願いしている。国公立大学など、特に首都圏の大学で動けば、協会としても第一線級の人材を
送ることができるし、協力も惜しまない。人材教育は、インターシップも含め模索している。
専門学校での基本的な教育は一応あるが、知的財産戦略にかかる高度な教育の場が不足して
いる。また、動画マンから原画マンへ昇進する仕組みと人材も不足している。即戦力の原画マ
ンを育てること。スポーツの世界や芸術と同じで底辺が育たないと良い人も育ちにくい。フラ
ンスのゴブリンでは、アニメーター教育でのエリート作りを徹底的に行っている。首都大学で
もこのような取り組みができるようにお願いしているので、数年のうちに何らかのものができ
ることを期待している。
8)著作権保護活動
ヤフーとの協定のほか、海賊版の売買をする古書チェーン店にも働きかけていきたい。相手
方も協力的である。中古品が集まるセンターがあると聞いているので、一度現場を見に行きた
いと思っている。最近の技術的進歩は、例えばウィニーのように、現在の著作権保護の仕組み
が大きく崩れるようなものがすぐに開発されていく。これらの技術開発は、もともとは著作権
を当初から破壊するつもりで開発されたものではないが、結果として現在の仕組みを大きく動
かすことにもなる。これらに対しても現実を直視しつつ当協会としても取り組んでいく課題と
考えている。
9)行政との関係
日本は支援体制が、補助金も含めて各省庁がばらばらに行っている。文化庁は表彰や制作補
助の仕組みはあるが、このための手続きなどの仕組みが煩雑の上制約もある。コンテンツ自体
を担保にする方式が最近できて取り組んでいる。このような行政の動きはあるが、国家財政が
厳しいので、箱物には金を出さない。何とかこれらの仕組みをわかりやすく一本化できないだ
ろうか。また、せめてアニメ博物館的な歴史を振り返るものがひとつは欲しい。日本のアニメ
の歴史などが俯瞰できる施設である。杉並区では、アニメミュージアムを拡充して協会がこの
運営委託を受けてこの三月にオープンする予定であり、規模は小さいがこの方向と聞いている。
また、その周辺でグッズ販売やスタジオ自体が集積するなどのものがあればもっとよいと思う。
第2節
聞き取り調査のまとめ
前節での聞き取り調査を通じての共通事項や、特徴的事項をまとめ、第 2 章の集積の過程と
現状を補完するとともに、第 5 章の、東京都城西地域アニメ産業の課題と提言のための分析を
行う。
1.取引関係
企業間の取引関係は、特定の企業との取引が中心となるものの、新規の企業への対応もかな
り幅広く行われている。アニメ製作会社系列の歴史経過はあるものの、下請と元請問の強い系
列傾向はあまり見られず、仕事に応じた幅広い取引関係となっている。また、従来の企業との
取引では、「取引先の能力把握と信頼性の構築が非常に重視され」(半澤[2001,p66])る、半澤
の論は、この聞き取り調査にもあらわれた。また、業界団体が法人化されたのは、最近であり、
現在でもアウトサイダー的な事業者も多く、業界全体の連携が今後の課題と考えられる
2.人材採用と育成
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2.1 人材空洞化の構造
一般的にいわれるアニメ産業人材空洞化論は、1970 年代初めに、アニメ産業で定期採用を中
心とする自社内での正規雇用方式が行われなくなってからは、自社内で人を育成しても、一人
前になる頃に他社へ行ってしまい、その分の投資が無駄になる。そして、自社でも同様に他社
の現役を引き抜き人員の確保に努める。結果、どの会社も人材育成に消極的になり人材の空洞
化が進み、人材空洞化の悪循環が続く。これに、海外への事業展開が加わったものといわれて
いる。
2.2 定期採用の動き
今回の聞き取りで、この悪循環の連鎖を断ち切る動きが出はじめている。聞き取りを行った
両社とも、この業界では大手に位置づけられるためもあるが、定期採用を行っている。経験者
中心の中途採用だけでなく、新卒者中心(未経験者)中心の定期採用を行うことは、会社内の人
材育成の動きにも、影響を与える。
2.3 自社内での人材育成
もう一つの特徴的な動きは、A社が自社で直接人材育成を行いはじめることである。もとも
と、A社は、当時の人材をすべて抱え込むことへの一種のアンチテーゼから設立し、機動性に
合わせた会社運営を目指し設立したものであったが、このA社が、実習生としてではあるが、
クリエーター部門の育成を自らのコストで行い始めた。この種の育成システムは、最大手のア
ニメ製作会社が、みずから「研究所」として、以前から行ってきた例など一部に見られたが、
A社のような動きが今後も出てくる可能性があると考える。
2.4 離職と再就職や相互供給
下積みからの技術力向上に年数が要することや年功序列賃金体系でないため、芸術的領域と
賃金労働との狭間で、離職は制作部門を中心に行われている。また、離職と再就職が同業種間
で行われていることも、今回の聞き取りでもうかがわれた。さらに、聞き取りでレンタル制度
と述べられたように、個人的な会社間移動に加えて、会社間での人材相互供給が、幅広く緩や
かに行われている。
3.専門学校
3.1 人材供給源の役割
表 3-1
F 校の就職先例
自治体別一覧
人数
(人)
割合
自社内での人材育成システムが崩れた後の基
礎部分の人材育成は、専門学校が役割を負って
いる部分が多いと考えられる。F校の卒業生の
就職先会社の所在地例一覧は、表 3-1 のとおり、
東京都城西地域で 6 割近くとなる。これは、ア
ニメ専門学校の一般的傾向と考えられ、F校以
外の専門学校を含めた、卒業生の量的数値を考
え合わせると、定期採用では、大卒の比率が高
杉並区
練馬区
武蔵野市
三鷹市
東京都(上記除く)
東京以外
計
18
13
4
3
22
5
65
27.69%
20.00%
6.15%
4.62%
33.85%
7.69%
100.00%
いものの、専門学校が、この地域への人材供給
機関の有力な一つであることは考えられる。
F 校入学案内資料基に筆者が作成
- 37 -
3.2 求められる能力
アニメ製作(制作)会社側での専門学校に対する期待度は高くない。専門学校側でもこの評価
を認識している。その原因は、専門学校側の教育内容の不備や熱意のなさというものが主要因
ではなく、もともとアニメのスキルは、絵画芸術などに近い、センス、才能に負う部分が多い
ことが主たる要因と考えられる。また、2 年間という限定された教育期間の終わり部分は、就
職活動に追われるため、この部分のスキルアップが行いにくいこともある。アニメ制作(制作)
会社側も、高度な技術水準を求めていなく、社会人としての行動力や企画営業力など一般の会
社組織が求める基本的な部分が必要なことでは、一致していると考えられる。
4.技術革新と海外展開
4.1 デジタル化対応
「アニメ産業空洞化論」でいわれる技術革新に対する対応の遅れは、セル画からデジタルシ
ステムヘの転換で、撮影関連の熟練層に影響が生じたものの、比較的短期間で完了対応してい
るため、これにはあたらないと考える。専門学校などの教育分野でも、教育課程はすべてデジ
タル化工程を前提として行われている。今後の課題では、F校や動画協会からは、デジタル化
の共通基準が求められ、この対応も行われ始めている。
4.2 空洞化でなく海外展開
海外展開は、聞き取りを行ったアニメ製作会社が大手のため、積極展開を考えている。動画
協会への調査でも人材の流出空洞化でなく、海外市場としての巨大なマーケットヘの中国への
期待が高い。このように、積極的展開、柔軟な対応化など、ここでも一般的に言われる単純な
空洞化論だけでは捉えられない面があると考える。
5.行政に求めるもの
A社B氏が制度の仕組み支援を語ったのに対して、D社E氏が個人クリエーターヘの職人集
団的な取り組み支援を語ったことが、30 年以上前のほぼ同時期に設立された両社の設立理念の
違いが、30 年以上たった現在でも、企業理念的な部分ともつながり、かつ、それぞれ活動して
いることは、興味深い。F校G氏は、行政当局に対する厳しい指摘を行っている。行政に求め
るものでの、このような厳しい対応は、第 3 章の聞き取り以外にも、筆者が接した中小事業者
には、行政に対する不信感に近い感情で、支援についても冷ややかに見ているものも多くあっ
た。これは、従来この分野に対する独力での産業基盤を築いたことへの自負もあるが、現在行
われている行政支援の多くが、行政の都合によるミスマッチ事業であると考えている事に加え
て、人材空洞化論も含めた中小企業政策全般に対する行政への不信感の側面も強いと考える。
- 38 -
第4章
各セクターのアニメ産業支援
本章は、アニメ産業に関する各セクターの動きの報告である。国関係は、2004 年 8 月に行っ
た聞き取り調査を中心にまとめた。このほか、東京都城西地域を中心とする地方自治体、市民
セクター、人材育成・教育の 4 分野に分けて記述し問題点を指摘した。特に第 4 節では最近の
特徴として、人材育成・教育に関する分野が、最近急速にこの地域で展開している現況につい
て指摘しこの展開を論述する。
第1節
国のアニメ産業支援
第 1 節は、国の関係省庁及び関係機関のアニメ産業に関する事業支援概要にあわせ、東京都
城西地域に対する係わり合いの視点を中心に、表 4-1 のように 2004 年 8 月に実施した、聞き取
り調査の内容を加えて記述し、各省庁の同地域に対する支援の全体像を浮かばせていく。
表 4-1 国・関連機関 聞き取り調査一覧(2004 年 8 月実施)
省庁(所管) 訪問組織(局部課)
主に聞き取りを行った項目
内閣府
内閣官房知的財産戦 知的財産戦略推進本部のコンテンツ戦略会議報告書と、
略推進事務局
その後の展開、各省庁の動き
〃
政策統括官
地域経済白書「地域の経済 2003」特集、杉並区・練馬区
経済財政担当
のアニメ産業が取り上げられた経緯と反響
経済産業省
商務情報政策局
メディア・コンテンツビジネス振興、東京都城西地域へ
文化情報関連産業課
の産業支援活動
〃
関東経済産業局産業 産業クラスター計画、首都圏情報ベンチャーフォーラム、
企画部情報政策課
NPO連携、東京コンテンツマーケット
〃
デジタルコンテンツ 技術的支援から、デジタルコンテンツ産業の地域(地場)
協会 開発グループ
のベンチャー企業創業支援、SOHO 創業支援事業
〃
日本貿易振興機構
LL(国際地域交流)事業、アニメコンテンツ事業を重要
市場開拓部
な輸出産業とし、地場産業としてアニメ産業支援
文部科学省
文化庁文化部
メディア芸術祭アニメーション部門の協力、アニメーシ
芸術文化課
ョン・アーカイブなどの文化芸術振興
厚生労働省
職業能力開発局
2007 年静岡県沼津市開催のユニバーサル技能五輪に、ア
能力開発課
ニメ関係も参加予定、その前提の人材育成
〃
労働政策研究・研修機 東京都城西地域のアニメ産業における人材の供給と育成
構
の調査
1.内閣府関係
1.1 内閣官房知的財産戦略推進本部事務局
1)知的財産戦略会議と知的財産戦略本部
政府は、産業の国際競争力の強化、経済の活性化の観点から知的財産の重要性が高まってい
るなか、知的財産戦略を早急に樹立し、その推進を図るため、内閣総理大臣が開催する知的財
産戦略会議を 2002 年 3 月から 2003 年 1 月まで開催した。この間、2002 年 7 月に「知的財産立
国」実現に向けた政府の基本的な構想である知的財産戦略大綱を策定し、12 月には、知的財産
基本法(平成 14 年法律第 122 号)を制定し、内閣総理大臣を本部長とする、知的財産戦略本部
を内閣府内に設置した。また、知的財産政策の重要課題について検討するために専門調査会で
あるコンテンツ専門調査会を設置し、2004 年 4 月に「コンテンツビジネス振興政策」をとりま
とめ、戦略本部に報告した。
- 39 -
2)知的財産推進計画
知的財産戦略本部では、2004 年 5 月に、知的財産推進計画 2004 を発表した。総論部分で、「特
許やノウハウ、映画・ゲームソフトなどのコンテンツといった知的財産を国富の源泉として、
これを最大限に活用することにより、一刻も早い『知的財産立国』の実現を目指すことこそが、
我が国経済が持続的成長を続けていく上での喫緊の課題である」(内閣府[2004,p4])として
いる。とくに、第 4 章のコンテンツビジネスの飛躍的拡大においては、「我が国経済の牽引役と
して期待されるばかりでなく、海外における我が国のイメージ向上にも大きな役割を果たして
おり(いわゆる『ソフトパワー』)、国家戦略を考える上で重要な分野である。」(内閣府[2004,
p78])とし、この分野の産業を積極的に支援していく姿勢を明確打ち出した。そして、計画に
は、4 月に報告された、コンテンツ専門調査会の「コンテンツビジネス振興政策」をベースに、
業界の近代化・合理化を支援や人材育成の強化など、12 項目にわたる、多様な戦略項目をあげ
ている。
3)城西地域への支援概要
知的財産推進計画作成にあたり、またその後の展開について、聞き取りを杉並区などに対し
て行っている。アニメ資料館開設をはじめとする事業が展開し、また各自治体がそれぞれに動
き始めていることの把握に努めている。
知的財産戦略推進本部は、直接的な事業を行うところでないが、戦略本部推進計画に基づい
た、各省庁の動きでや都道府県レベルだけでなく、何か実験的なものも含めて、この地域をフ
ィールドとできるような知的財産推進計画の事業アイディアがある場合の連絡体制の強化を図
っている。
1.2 政策統括官経済財政分析担当
1)東京都城西地域が世界有数のアニメーション産業地として紹介
『地域の経済』は、旧経済企画庁が、1987 年から国内各地域における経済動向の総合的な把
握と問題点の指摘を目的として、毎年刊行されてきた『地域経済レポート』を引き継ぐものと
して刊行されている。2003 年 11 月に『地域の経済 2003―成長を創る産業集積の力』が刊行さ
れた。ここでは、産業集積の一種である「クラスター」に着目して、地域集積の活性化を模索
する 10 の地域の事例紹介で、杉並区と練馬区は、課題に直面する世界有数のアニメーション産
業集積と紹介されている。
報告では、この地域が民間企業によって発展し、都市部に自然発生的に形成されたアニメー
ション産業の集積であり、世界放送の約 6 割が日本で制作されたものであるが、デジタル化へ
の対応の出遅れ、経営基盤の弱体化、人材不足の問題が生じている。そして、杉並区がアニメ
ーション・センターの誘致、人材の育成支援など先行して産業支援策を開始したことや、動き
出した国のアニメーション産業支援策が記述されている。
2)城西地域への支援概要
報告書作成にあたり、調査官が杉並区役所を訪れ聞き取り調査や、アニメ資料館などを調査
していた。東京都城西地域のアニメーション産業が、従来から産業集積地として全国的に有名
な、新潟県三条市及び燕市の製造業(金属製品)や大阪府東大阪市の製造業(金属製品、一般
機械など)と同列に産業関係の国の報告書に登場した。担当部門は、政策官庁のため、直接的
な実施事業はないが、今後も、地域経済の最新の動きを産業振興の視点を加えて分析していく
とのことである。
- 40 -
2.経済産業省関係
経済産業省は、産業振興政策の中心となる省庁である。現在全国的な展開を行っている「産
業クラスター」政策や、アニメ産業に関して中心的な官庁でもある。なお、有限責任中間法人
日本動画協会もここに含まれるが、第 3 章の聞き取り調査項目で事業概要や課題等述べている
ため、ここでは割愛した。
2.1 商務情報政策局文化情報関連産業課(メディアコンテンツ課)
文化情報関連産業課は、情報処理の促進に関する事務のうち、符号、音響、影像その他の情
報の収集、制作及び保管の促進や情報処理の促進に関する事務のうち、ゲーム用ソフトウェア
に関すること、映画産業その他の映像産業の発達、改善及び調整など、いわゆるメディアコン
テンツ全般に関するものをその所管事項としている。「アニメーション産業の現状と課題」な
ども発行、日本動画協会の法人化支援やモデル契約書の策定・普及、コンテンツファイナンス
の整備などの支援を行っている。
東京都城西地域への支援では、「杉並区アニメーション振興戦略会議」(2003 年 7 月∼9 月)
に課長が委員として参加した。この報告では、アニメーションセンターの設置誘致、アニメを
もとにした観光施策の充実の提言を行っている。今後この地域をフィールドとできるような知
的財産推進計画の事業アイディアがある場合の相互対応や関東経済産業局を通じたアニメ事業
者への各種育成事業や、有望な若手へのビジネスマッチングなどの事業展開の意見交換を行っ
ているとのことである。
2.2 関東経済産業局
経済産業省の地方局である関東経済産業局は、関東圏の産業クラスターのひとつであり、東
京都城西地域のアニメーション・コンテンツ分野も含められている、首都圏情報ベンチャーフ
ォーラムを所管している。首都圏情報ベンチャーフォーラムとNPOコミュニティー・サポー
ターズ45との協働で、人材活用・就労事業46を行ったり、東京コンテンツマーケット47を共催し、
この地域のアニメ産業の活性化を図っている。
今後の事業展開では、自治体の予算に反映させる仕組みづくりを行うこと、日本貿易振興機
構事業との実務的な連携や従来型の個別補助金支出タイプでなく、地域のアニメ製作(制作)会
社自らが努力することを前提にしつつ、行政がコーディネートするタイプの産業支援策に対し
て、該当自治体と連携を取ることに期待しているとのことである。
2.4 新産業創造戦略
経済財政諮問会議において 2004 年 5 月に『新産業創造戦略』が報告された。この報告書の新
産業創出のためのアクションプログラム中には、「通常、コンテンツの製作は、他段階の製作
工程を有し、その過程では数多くのクリエイター、技術者が関わり、現場で濃密なコミュニケ
ーションが行われる。」(経済産業省[2004,p81])と、前章まで説明した、労働集約型の現況を述
べた上で、「アニメプロダクションの集積で有名な杉並区は、全国に約 300 あるアニメスタジオ
のうち 60 以上が集まっている。」(経済産業省[2004,p81])と、杉並区の集積状況が記述されて
45
コミュニティー・サポーターズの活動については、本章第 4 節で述べる
コンテンツ業界研究フェア、2004 年 7 月開催
47
映像系コンテンツに携わる中小・ベンチャー企業や新規参入を目指す事業者を対象に、2004 年は 10 月に東
京国際フォーラムで開催
46
- 41 -
いる。
同報告では、新しいコンテンツ市場の立ち上げやコンテンツ産業の構造改革を構築すること
を 2010 年までのアクションプログラムとして掲げられている。
2.4 独立行政法人日本貿易振興機構
1)事業概要
一般的にはジェトロの名称で呼ばれる、独立行政法人日本貿易振興機構は 2003 年 10 月に、
日本貿易振興会が、独立行政法人になったものである。事業は、日本貿易振興会当時に引き続
いて、外国企業誘致支援、日本企業の輸出支援、地域経済活性化支援等々の幅広い活動を行っ
ている。アニメ産業に関しては、日本が誇る輸出産業としてこれを推進するための各種報告の
発表48や番組の放映49も行っている。
2)東京都城西地域との関係
同機構は、従来の相互交流事業支援から、デジタルコンテンツ産業の地域(地場)の輸出ミ
ッションを重視する方向に進んでいる。アニメコンテンツ事業は重要な輸出産業と認識して、
コンテンツ(アニメ)産業支援を掲げている自治体の政策に対して協力している。
アニメ事業は重要な輸出産業であり、各国の見本市に同機構が出展する部分に事業者が参加
する方式ならば支援が可能と考える。例えば、ブースで産業集積地の宣伝、技術力宣伝、アニ
メ関係の協議会や中小事業者の紹介、観光政策の招致活動や海外宣伝、比較的大手企業の単独
出展への後押し等々を考えているという。
2.5 財団法人デジタルコンテンツ協会
1)事業概要
財団法人デジタルコンテンツ協会は、協会事業案内及びウェブページによれば、2001 年 4 月
にデジタルコンテンツの制作、流通、活用を推進することにより、これに係わる産業の健全な
発展を促すこと目的に設立された。
協会は、
『デジタルコンテンツ白書』の発行をはじめ、コンテンツに関して、優良なものを作
るためのプロデューサー及びクリエイターの育成、技術やシステムの開発、取引の環境整備等
を対象に活動している。プロデューサー及びクリエイターの人材育成、デジタルシネマの推進
等に関する事業を行っている。アニメ産業関係では、自主事業で 2003 年 5 月には、日本動画協
会との共同事業「フランスやスペインのアニメーション市場視察調査」を行い、日本アニメの
海外市場展開などの調査も行っている。
2)東京都城西地域との関係
東京都城西地域との関係では、協会は従来の技術的な支援から、デジタルコンテンツ産業の
地域(地場)のベンチャー企業創業支援を重視する方向に進んでいるとこのことであり、アニ
メ産業支援に協力していきたいとの意向がある。そして、創業支援でアニメのトキワ荘的な発
想の、SOHO 創業支援事業の事業展開のリスクを実証実験という形式でこの地域の事業者や創業
希望者を対象に、適用の可能性などを探ること。杉並区で行っている人材育成事業「匠塾」を、
高度知的分野の弁護士や公認会計士弁理士などのコンテンツ分野で東京都城西地域のサポータ
48
第 1 章で引用した『米国アニメ市場の実態と展望』[2003a]のほか『日本のアニメを中心とするコンテンツ
産業のための米国進出手引き』[2003b]、『日本のアニメーション産業の動向』[2004]など。
49
「世界は今 JETRO Global Eye『海外へ広がる日本のアニメコンテンツ』」2004 年 6 月 19 日東京 MX テレビ
他放送
- 42 -
ーとなるような人材を育てていけるような仕組みができないかの考えもあるという。
3.文部科学省関係
3.1 文化庁文化芸術課
1)文化芸術振興基本法
2001 年 12 月に制定された文化芸術振興基本法の第 9 条で「国は、映画、漫画、アニメーシ
ョン及びコンピュータその他の電子機器等を利用した芸術(以下『メディア芸術』という。)の
振興を図るため、メディア芸術の製作、上映等への支援その他の必要な施策を講ずるものとす
る。」と、法文上で、漫画やアニメーションを芸術として振興することをはじめて明記した。
2)文化庁メディア芸術祭
1997 年度からはじまり、8 回目を迎える「文化庁メディア芸術祭」は、メディア芸術作品お
よび作者を顕彰し、その創作活動を支援、紹介し、先端的なメディア芸術の鑑賞機会(受賞作
品展・同時開催イベント)を提供することで、わが国のメディア芸術の振興を図ることを目的
としている。東京都城西地域との関係では、メディア芸術祭開催後の、地方開催展のうち、ア
ニメーション部門受賞作品展を、拡充後の杉並アニメ資料館で企画展として恒常的に開催する
ことや、芸術作品としてのアニメーションなどを版権調整含め、文化庁と共催で同資料館の常
設映像ルームで上映、文化的創作活動として、基本的なアニメーション原理を利用した制作ワ
ークショップを東京都城西地域での学校教育(または、シニアを含めた生涯教育)で行うこと。
その他、文部科学省関連のアニメーション関係資料の収集・保管に関しても、同資料館の活用
が可能かのアイディアが浮かんでいるという。
4.厚生労働省関係
4.1 職業能力開発局技能五輪国際大会準備室
2007 年に静岡県沼津市で、日本での開催は 1985 年以来 22 年ぶり三回目となるユニバーサル
技能五輪国際大会が開催予定である。この大会では、先端産業に係る職種、若者に魅力のある
職種等の追加で、「また、アニメ制作、ゲームソフトクリエーターなどのように若者に人気のあ
る職種のうち、競技大会になじむものがあれば新規に提案することを検討する。」(静岡県
[2003,p6])とアニメ関係も参加が検討され、この調整に東大濱野教授 50や日本動画協会にも打
診している。大会の目的が単に金メダルを取るためでなく、その前提の人材育成を中心に考え、
濱野教授や日本動画協会と杉並区との関係からの東京都城西地域への協力のうち、大会に向け
ての地場での人材育成で対応が可能かを検討している。
4.2 独立行政法人労働政策研究・研修機構
独立行政法人労働政策研究・研修機構は、東京都城西地域の練馬区石神井に所在し、内外の
労働問題や労働政策について総合的な調査研究等を行い、労働政策の立案や労働政策の効果的
で効率的な推進に寄与することを目的としている。
同機構は、都市型地場産業における雇用創出について課題を整理することを目的に、2004 年
に「政府・地方自治体の雇用政策と企業の雇用戦略の相乗効果に関する研究」による、アニメ
ーション産業の集積地における企業、人材教育機関ならびに自治体等の支援機関に対する調査
を実施している。現在、東京都城西地域の中小アニメ製作(制作)会社を中心に聞き取り調査な
50
濱野保樹東京大学大学院教授、杉並区アニメーション振興戦略会議の座長も務めた。
- 43 -
どを行い、2005 年の春にはこの報告が予定されている。
5.国関係機関のまとめ
5.1 支援事業のまとめ
国では、アニメ産業支援を内閣府の知的財産戦略推進本部が、全省庁に関する推進体制を取
りまとめる形で進められている。これを受ける形で、主管官庁である経済産業省は、メディア・
コンテンツビジネス振興で、契約制度やファイナンスの改善や関東経済産業局を中心に、産業
クラスターのひとつである首都圏情報ベンチャーフォーラムでのNPO連携事業や、東京コン
テンツマーケットを実施している。また、関係するデジタルコンテンツ協会、日本貿易振興機
構との連携により、アニメ産業振興に対する全国的な事業を計画していることが伺える。
その他の省庁でも、大学院をはじめとする教育分野の動きは、第 4 節で述べるためここでは
述べないが、文部科学省は、1998 年にメディア芸術祭アニメーション部門を設けて、芸術面か
らの支援を行っている。雇用を所管する厚生労働省でも、職業能力開発局では、ユニバーサル
技能五輪に、アニメ関係も参加予定であり、その前提の人材育成という、少し毛色の変わった
事業もあった。また、雇用や労働研究のシンクタンクである、労働政策研究・研修機構では、
地元(練馬区石神井に所在する)のアニメ産業をはじめて取り上げ、東京都城西地域のアニメ
産業における人材の供給と育成の調査を進めているが、本稿の対象領域とも関係する。この調
査は、2005 年春に報告が予定されている。
巻末年表を参照していただきたいが、近年になり国関係の支援の動きは急速に展開している。
5.1 問題点の指摘
国関係の問題点は、知的財産保護のための契約制度や、知的財産の高等教育の課題など、多
岐にわたるものがある。しかし、本稿は主に東京都城西地域のアニメ産業支援の課題と提言を
行うことを目的にするため、国と関係地域の基礎的自治体に関しての問題点指摘にとどめる。
①各省庁とも、関係機関を含めて様々な施策を検討実施しているが、縦割り行政に代表され
るように、各施策が省庁別に実施されるため、受ける側の自治体は体系的な施策の取り込
みが行いにくいこと。
②実施事業の予算配当が新年度後確定のため、実施のタイムラグが生じ、自治体側の予算と
のリンケージがしにくく、補正対応など、結果実施タイミングを逸してしまうこと。
実はこれらは、アニメ産業支援に限らず国と基礎的自治体の、手続き的な問題そのものでも
ある。アニメ産業支援という新しい課題と旧来どおりの手続き問題のミスマッチは、直に解決
できる課題でもなく当分続いていくものと考えられる。
第2節
自治体のアニメ産業支援
第 2 節は、地方自治体のアニメ産業振興事業の概説をする。はじめに東京都城西地域を包括
する広域自治体の東京都施策、次に東京都城西地域の自治体のうち、振興施策が先行している
と考えられる杉並区とアニメ製作(制作)会社が最も多く所在している練馬区の取り組みの対比
を中心に述べる。また、武蔵野市、三鷹市の事業も紹介し、最後に全国の自治体の中でのアニ
メ産業に関するいくつかの動きを紹介する。
1.東京都の産業支援
1.1 アニメ産業振興に関する報告
- 44 -
1) 産業分野全般からみた調査
東京都の産業分野全般からみた、アニメ産業の調査は、東京都商工指導所が、1999 年 3 月に
報告した『情報メディア・コンテンツビジネスの事業化戦略―事業創造・事業革新のための調
査研究報告書』では、東京都における有望分野、有望事業 21 分野の一つ「情報メディア・コン
テンツ分野」の事例研究にアニメ制作会社があり、「下請けがつくったキャラクターの権利は、
下請けに還元されない仕組みになっている。行政に要望を出したり、意見交換して改善すべき
である。」 (東京都[1999,p192]) などの行政への要望が報告されているが、アニメ産業に特化
したものではなく、情報メディア・コンテンツ産業の全般の報告となっている。
次に、2003 年 3 月には、本論文の第 2 章で東京都城西地域の定義部分で紹介した『産業集積
の活性化に向けた産業政策のあり方に関する研究調査報告書』 51が出され、産業集積の活性化
による地域経済の安定の方向性を探るために、「集積地ごとに設定した特定の分野について」
(東京都[2003b,p17])集積全体の実態を把握している。そして、「杉並・三鷹・武蔵野地区(城西
地域)=『情報コンテンツ関連分野』」(東京都[2003b,p18])は、アニメ産業を中心とするコンテ
ンツ産業の東京都城西地域の産業分析を行っている。
2)アニメ産業振興策
アニメ産業振興策を直接的に行ったものでは、2002 年 4 月に、学識経験者、アニメ産業関連
事業者、行政関係者からなる「アニメ産業振興方策検討委員会」を設置し検討を開始し、2003
年 3 月に『アニメ産業振興方策に関する報告』が出された。報告中の現状と課題では、アニメ
は東京の地場産業だが、韓国・中国等の躍進やクリエイター等の人材不足、デジタル化の遅延、
製作資金の調達困難などの課題に直面していること。今後の戦略で、優秀な人材の育成、デジ
タル化の促進、アニメ・ビジネスの再構築、国際競争力の強化を 4 つの戦略課題として、この
戦略に沿った実施事業の提案を行っている。戦略提言中、「多くの大学・大学院にアニメ関連学
部を創設し、クリエイターやプロデューサー等を育成する教育環境を整備する。」(東京都[2003a,
p23])などのほか、別に 1 章を使いアニメ産業の振興拠点の整備、「本委員会としては、アニメ
産業の拠点として『東京アニメセンター(仮称)』(以下『センター』と言う。)の設置を提案す
る。」(東京都[2003a,p48])と、東京アニメセンター(仮称)の設置を提案し、センターのコンセ
プトや機能、施設のイメージを提案している。
1.2 東京国際アニメフェア
東京都のアニメ産業振興で最大のものは、東京国際アニメフェアの開催である。これは、東
京都が中心となり、アニメ産業関係事業者や行政関係者による実行委員会方式により、第 1 回
は、2002 年 2 月に東京ビックサイトで開催された「新世紀東京国際アニメフェア 21」である。
以後、毎年開催され、2005 年は 3 月に東京ビックサイトで開催が予定されている。
「アニメ産業の発展を目的とする国内初の国際的フェア」(新世紀東京国際アニメフェア 21 実
行委員会[2002,pp2-3])のように、他のアニメフェア52が、地域振興や文化芸術作品の発表表彰
の側面が強いのに対して、アニメ産業に関する国内最大の商取引の場を強めたものである。こ
れには、石原東京都知事の意思53が反映され、事業規模も大きく、2004 年 3 月の東京国際アニ
51
本報告は、東京都における産業集積の特徴を地域別業種別に、かなり細かく分析しており、東京都城西地域
のアニメ産業(特定の分野は「情報コンテンツ関連分野」としているが、脚注 18 の産業労働局長答弁のように、
実質上アニメ産業が中心となる。)の他地域比較の集積特徴など、示唆に富むものがある。
52
10 回目を迎えた、2004 年 8 月に開催された広島国際アニメーションフェスティバルなどがある。
53
石 原 知 事 個 人の 公式 ウェ ブサ イト にも 、「 『 東 京 国 際 ア ニ メ フ ェ ア 』 東 京 の ア ニ メ を 世 界 に 」 の 項 目
(http://www.sensenfukoku.net/policy/anime/index.html 2004.12.20)があり、多くのページを割いてアニ
メ産業に関する現状課題と支援施策を述べている。
- 45 -
メフェアの公式来場者数は、ビジネスデー18,609 人、一般公開日 54,164 人、合計 72,773 人。出展者数 166
者(国内 135、海外 31) 54と大規模に行われている。予算規模も大きく、東京国際アニメフェア 2003
の予算規模は、4 億円55であり決算額も 3 億 6 千万円余りとなっている。
1.3 地場産業観光事業
東京都のアニメ産業に対する事業のもうひとつの柱が、「地場産業観光」である。
2001 年 11 月報告の東京都産業労働局、『観光産業振興プラン』では、「東京国際アニメフェ
アの開催」(東京都[1999, p18])のほかに、「産業集積地域観光ルートの開発」(東京都[1999,
p29])に、「アニメーションの製作会社が集積している荻窪、吉祥寺、三鷹などの中央線沿線等、
ビジネスマンだけではなく多くの人々にとっても、世界的なレベルの産業に興味はそそられる。
そのために、産業を新たな観光ルートとして開発していく。」(東京都[1999, p29])と、アニメ
産業の観光をこの地域の目玉にし、力点を入れることとしている。これを受けた、2004 年 3 月
の『東京都観光まちづくり基本方針』の「1 特色ある産業を基軸とした観光まちづくり」では、
「例えば、杉並・三鷹など世界に類を見ないアニメ産業の集積」(東京都[2004b, p39])を観光
資源として活用していくとして、そのための推進体制作りの推進マニュアルなどが報告されて
いる。
2.杉並区の産業支援
2.1 産業振興計画と「アニメの杜すぎなみ構想」
杉並区では、新たな産業振興計画策定に先立って、2001 年の 3 月に『新産業実態調査報告書』
をまとめた。この報告書には「小分類で見ると、『2A アニメ製作』が、30.8%と抜きん出て高く、
都内随一の事業所集積を要していることがわかる。」(杉並区[2001b,p17])と、アニメ製作(制作)
会社の高い集積を指摘していた。そして、杉並区が 2003 年 2 月に策定した『杉並区産業振興計
画』で初めてアニメーション産業を取り上げ、みどりの産業56のひとつとして、「特に住宅都市
杉並の環境と共生し、良好な住環境を保全しながら発展していく産業分野」(杉並区[2003a,
p2])であり、「こうした世界に通用する地域の産業資源であるアニメーション産業の集積をひ
とつの核として、地域経済を牽引する有力な地場産業としての発展支援を行う」(杉並区[2003a,
p5])と、アニメ産業を行政が支援していく事を明記している。実施組織では、2004 年 4 月に産
業振興課内に、「アニメ・新産業係」と、日本で恐らく初めてと考えられる「アニメ」を冠した
組織を設けて事業推進している。
産業振興計画によれば、アニメの杜すぎなみ構想は、「アニメーション産業と地域経済との
融合を図り、新たなビジネスチャンスや事業展開が生まれる環境を整備し、地域経済の活性化
に繋げていくとともにまちづくりに生かしていく。アニメーション産業の集積状態をさらに拡
充させ、区内にアニメーションを中心とした情報内容や番組の産業立地を促進し、シリコンバ
レーやハリウッドのように世界に発信できる産業としての発展をめざしていく。」(杉並区
[2003a, p33])となる。図 4-1 はこの体系図である。
54
「東京国際アニメフェア 2005」公式ホームページ
(http://www.taf.metro.tokyo.jp/outline/index.html 2005/01/01)
55
東京国際アニメフェア 2003 会計報告による。
56
「環境と共生できる産業として、杉並区が打ち出した新たな産業概念」(杉並区[2003a,p2])
- 46 -
図 4-1
アニメの杜すぎなみ構想
世界に発信するアニメ産業
活気とにぎわいのあるまち
国・東京都・海外
雇用機会の創出
アニメ産業の新たなる成長
海外との交流
アニメの杜すぎなみ構想
杉並をアニメーションのメッカに
企業と人材のネットワークづくり
ネットワーク支援
経営基盤強化
創業・人材育成支援
事業展開支援
インフラ整備
杉並区[2001a]資料基に筆者作成
2.2 行政のアニメ産業振興事業
1)戦略会議報告
アニメ産業関係者と大学等の研究機関が連携し、地域に新たな文化的・経済的効果をもたら
すことを目的に 2002 年 4 月に「杉並産学連携会議」を開催し、6 月に「アニメーションアーカ
イブに関する提言」をまとめ、アーカイブ設置の必要性を国等に訴えた。また、産学連携会議
を受け、2003 年 7 月に「杉並区アニメーション振興戦略会議」を設置し、経済産業省文化情報
関連産業課長も委員とする戦略会議を開催し、9 月にアニメーションセンターの設置誘致、ア
ニメをもとにした観光施策の充実の提言を行った。
2)「杉並アニメ資料館」の開館と拡充
2003 年 4 月にアニメ資料の収集・保管デジタル化の進行などによって失われつつある貴重な
アニメーション資料の収集を行い、全国で初めて、特定のキャラクターや作家・作品がテーマ
でなく、東京都城西地域を中心とした日本のアニメーション全般をテーマとした資料館 57を開
館した。このアニメ資料館は 2005 年の 3 月には、「すぎなみアニメーション・ミュージアム」
として、延べ床面積を 100 ㎡から 800 ㎡へ拡充し、日本動画協会に運営を委託する計画が進め
られている。
3)イベント等PR事業
東京都の「東京国際アニメフェスティバル」より早く、2001 年 4 月に「杉並区の世界一を楽
しもう」をテーマにした地域イベント、「アニメーションフェスティバル 2001 in 杉並」を区
内のアニメ事業者を中心に、東京商工会議所杉並支部、女子美術大学(杉並区和田)、NPOな
57
アニメ・漫画作家の出身地等ゆかりの地での、記念館の例は、「手塚治虫(兵庫県宝塚市)」、「水木しげる(鳥
取県境港市)」、「石ノ森章太郎(宮城県中田町)」、「やなせたかし(高知県香北町)」の他にも全国で例が多く、
また、練馬区には東映アニメーションスタジオ内に同社作品の「東映アニメーションギャラリー」が 2003 年
3 月にオープンしている。
- 47 -
どで構成される実行委員会を結成して開催し、この後毎年開催している。また、東京都が主催
する東京国際アニメフェアへ出展及び区内スタジオの出展支援や関連企画を開催している。
4)人材育成「すぎなみ匠塾」
2002 年から、スタジオ集積地という特徴を活かし、制作現場を「教室」とした、研修期間 6
ヶ月の現場アニメーター実践養成事業「杉並アニメ匠塾」を行っている。「匠」の名の通り、ベ
テランアニメーターによる、アニメーション現場での実践的教育システムであり、区内中小事
業者では困難になっている人材育成を支援する事業として実施している。過去 3 回の募集では、
北海道から九州まで、全国から多くの応募があり、修了生の多くが区内のアニメーション制作
会社に就職している。
2.3 各種団体との連携
1)杉並アニメ振興協議会と自主製作アニメ
「アニメーションフェスティバル 2001 in 杉並」実行委員会をきっかけとして、区内のスタ
ジオに横のつながりが生まれ、2001 年 8 月に区内のアニメ製作(制作)会社 23 社で構成される
地域を核とした初の業界団体である「杉並アニメ振興協議会」が発足した。協議会は、アニメ
産業がかかえる課題に取り組み、新しい事業展開を促進すると同時に、イベントの開催や地域
への貢献を通じて、日本のアニメ産業全体の活性化を図っていくことなどを目的としている。
協議会は、杉並区の「アニメーションフェスティバル」「すぎなみ匠塾」など、区との協力によ
る事業展開も活発に行っている。また、協議会としての自らが著作権を有する、オリジナルア
ニメーションの製作を進め、「スギナミブランド第一弾」としたアニメ作品「サヨナラみどりが
池」は、2003 年 7 月に完成した。
2)商工会議所、地元商店会
東京商工会議所杉並支部は、区内アニメーション産業の支援に積極的に行い、調査報告 58や
関連イベントへの出展支援を行っている。
地域の商店街では、杉並の中でも特に集積度が高い西武新宿線上井草駅近辺では、地元商店
街がスタジオの協力を得て「アニメタウン上井草」をうたい、「ガンダム」キャラクターをあし
らった装飾などを行っている。2003 年 12 月の商店街アニメ祭りでは、空き店舗に地元のサン
ライズ社の協力で、区内にある女子美術大学の学生による、「ガンダム」シャッターが完成した。
また、杉並区商店会連合会では、江戸開府 400 周年事業に「アニメと杉並」と題して、都庁前
広場でブースを出店した。
4)小中学校等教育機関
区立の小中学校では、職業体験分野でのスタジオ見学・アニメーターとの懇談希望や、「総合
的な学習」・「土曜教室」の中でアニメを研究・制作する学校も出てきて、地元アニメーターの
協力によりアニメーションの原理によるワークショップをアニメ資料館で開催し、また区内小
中学校全部の図工・美術の教師の教育研修会で、杉並アニメ振興協議会会長によるアニメーシ
ョン産業の取り組みの講演会が行われた。
5)観光政策とアニメ産業
杉並区に対して、2003 年だけでも外務省からブルネイ国営テレビやタイ国民放テレビ取材協
力依頼があり、民間ベースの市場性を前提とした観光分野でも、ドイツ、アメリカ、オースト
58
第 2 章で報告した実態調査以外に東京商工会議所杉並支部[2003]、『すぎなみアニメ―アニメのまち杉並世
界に発信』がある。
- 48 -
ラリアから、日本のアニメーションを目的とした観光ツアーが、杉並アニメ資料館や区内のア
ニメーションスタジオの見学に訪れている。また、2004 年3月に開催された東京国際アニメフ
ェスティバル開催に合わせて、オーストラリアのメルボルンから来日する観光団は、杉並アニ
メ資料館やアニメスタジオ等を見学のほか、日本の文化としての「夜の居酒屋談義」を含む地
元アニメーターたちとの交流が、パックツアーのコースで実施された。
3.練馬区の産業支援
3.1「アニメのふるさと」練馬区
練馬区は、東京商工会議所練馬支部を中心として、「アニメのふるさと練馬」を標榜し、これ
を地域活性化のひとつとして推進している。
練馬区は、東映動画(現東映アニメーション)『白蛇伝』製作以来の歴史を有し、アニメ製作(制
作)会社数も杉並区を上回る数があるといわれている。また、第 2 章で述べたように、アニメ産
業集積は、練馬区を中心に始まったことを考え合わせると、「アニメのふるさと」を標榜するこ
とは、自然な流れといえる。
3.2 商工業振興計画上の位置づけ
産業振興計画上のアニメ産業の位置づけは、杉並区が産業振興のひとつの柱と明確に位置づ
けているのに対して、練馬区商工業振興計画では、「(4)練馬を特徴づける産業のPR 練馬の産
業を区内外にPRするために、漬物産業、伝統工芸やアニメ産業など区内でつくられた製品を
産業フェア等のイベントで展示するほか、企業見学会などを実施する。」59とPRに限定した計
画となっている。また、
(仮称)練馬区産業振興基本条例が検討されているが、ここでも観光資
源のひとつの位置60づけとされている。
3.3 アニメフェスティバルと実態調査
練馬区では、2002 年から「練馬アニメフェスティバル in 大泉」を、東映アニメーションの
ある大泉地区で実施している。最近では、2004 年 3 月に練馬区長を名誉委員長、東映アニメー
ション株式会社代表取締役会長を委員長に、アニメ関連会社と地元商店街や関係NPO等が参
加する実行委員会方式により第 3 回が開かれた。催しの目的は「この事業は、東京国際アニメ
フェア 2004 に協賛し、『アニメのふるさと練馬区』のアニメ産業を区内外にアピールするとと
もに、大泉学園駅周辺の経済活性化に資するために開催されます。」 61 。このほかにも、東京
商工会議所練馬支部では、2003 年に『練馬区アニメ産業実態調査報告』を出し、また 2004 年
の東京国際アニメフェアにも出展を行い、練馬のアニメの歴史や区内アニメ会社の作品紹介を
行っている。
3.4 アニメ協議会結成
2004 年 7 月には、杉並区に続きアニメ協議会が結成された。東商ニュースライン62によると、
59
60
61
62
練馬区商工業振興計画
(http://www.city.nerima.tokyo.jp/sangyo/keikaku_shoko/3.html - 323 2003.12.25)
(仮称)練馬区産業振興基本条例
(http://www.city.nerima.tokyo.jp/sangyo/sangyo_kaigi/text.pdf 2004.12.30)
練馬区オフィシャルウェブサイト(http://www.city.nerima.tokyo.jp/sangyo/anime/ 2004.8.19 )
東商ニュースライン 2004 年 8 月 18 日記事
(http://www.tokyo-cci.or.jp/shimbun/newsline/main.htm
2004.12.1)
- 49 -
「東京商工会議所練馬支部(会長=井戸勤・アンテンドゥ社長)は 7 月 26 日、区内アニメ関連
事業所と協力して『練馬アニメーション協議会』の創立総会を開いた。練馬区は日本アニメ発
祥の地で、多くの事業所が集積することから、アニメ産業の育成を図ることが狙い。」であり、
「新しいアニメビジネスの模索や新たな販路の開拓のため、勉強会や研究、意見交換を行うと
ともに、国や都、区などの施策について情報収集し、あわせてアニメ産業への支援を働きかけ
る。同協議会は 48 社で発足したが、順次会員を拡大していく予定。」と、商工会議所が中心と
なって事業推進している。
3.5 練馬区のアニメ振興支援の取り組みが遅れた理由
練馬区は、集積の始まりもあり、最大手企業も所在している上、事業所数も杉並区よりも多
い。また、市民セクター等 63のアニメ産業活性化の動きもあったにもかかわらず、区行政とし
ての取り組みは、東京都や杉並区と比べると、やや出遅れている感は否めない。
この点に関して、一般的には、杉並区の山田区長がリーダーシップを発揮して事業推進をし
た 64ため、杉並区のアニメ産業振興支援が先行したと考えられている。こうした首長のリーダ
ーシップはあると考えられるが、最大集積地であり、市民セクター等の動きもかなり以前から
ある練馬区がアニメ産業振興支援に慎重であった理由にはならない。
練馬区内では、東映動画を中心とする、関連アニメ産業労働者の労働運動の流れがあり、1960
年代から活動していたが「東映動画では大量の希望退職の募集が始まり、労働争議が激化した。
1972(昭和 47)年にはついに指名解雇に踏み切り、ロックアウトして組合を排除し、全面的な労
使対決となった」(山口[2004,p99])など、この後も日本最大のスタジオを抱えているが故の歴
史を経験している。また、最近の練馬区議会での質問 65では、与野党問わずアニメ産業に対し
て関心が寄せられているが、野党系の会派は、中小企業問題など、アニメ産業に働く労働者の
労働条件とリンクして質問している。このため、行政当局はどうしても消極的な側面を持ち続
けていたとも考えられる。現在でも労働問題全般の所管は、広域自治体である東京都である。
労働条件の改善という、特別区単独では解決しにくい問題を持ち続けたアニメ産業振興事業に
対して、練馬区の行政当局が消極的であったことは想像に難くない。
4.武蔵野市と三鷹市
4.1「吉祥寺アニメワンダーランド」武蔵野市
武蔵野市の「吉祥寺アニメワンダーランド」は、1999 年から他の東京城西地域のイベント事
業よりも早く実施されている。その特徴は、「吉祥寺アニメワンダーランド 2004」のウェブペ
ージ 66によれば、「武蔵野商工会議所と地域コミュニティ、そして在住・ゆかりの漫画家/アニ
メスタジオが主体になり 1999 年度より開催してきた全国的にも例を見ない街と漫画家/スタジ
オが一緒に開催してきたお祭りです。」また、
「1970 年代中央線文化の中心地でもあった吉祥寺
は中央線文化を背景に展開したマンガ、アニメを生み出して来た中心地でもあり、スタジオジ
ブリをはじめ数多くの制作スタジオや作家陣とゆかりをもっています。吉祥寺では地元商工業
者とクリエイター、行政、教育機関が協力して事業に取り組む体勢づくりをはじめ、吉祥寺に
63
アニメーションミュージアムを作る会や、アニメーション事業者協会
山田区長の公式ウェブサイトでも、アニメ産業に関する項目が設けられ、また投稿記事も紹介されている。
(http://www.yamada-hiroshi.com/ 2004.10.1)
65
練馬区議会ホームページ (http://www.city.nerima.tokyo.jp/gikai/ 2004.12.1)
66
吉祥寺アニメワンダーランド 2004
(http://www.kichifes.jp/wonderland/about/about.html 2004.12.23)
64
- 50 -
新たな魅力を付加していくべく観光リソースを整備しており、その一環として吉祥寺アニメワ
ンダーランドを開催しています。」と、東京都城西地域最大のターミナル駅でもあり、全国的に
も高い知名度を持つ吉祥寺を全面的に出し、吉祥寺駅を中心に井の頭公園なども会場にしたイ
ベント事業を展開している。
4.2 正式名称「三鷹市立アニメーション美術館」三鷹市
2001 年 10 月に開館した、三鷹の森ジブリ美術館は、正式名称は「三鷹市立アニメーション
美術館」である。同館のウェブページ67によれば、「美術館の管理運営は財団法人『徳間記念ア
ニメーション文化財団』が行っています。この財団法人が美術館の管理運営を行うために、三
鷹市は条例で美術館の管理運営法人に指定しています。この財団法人は、三鷹市、株式会社徳
間書店、日本テレビ放送網株式会社が主体となって設立されました。」という形態により、運営
されている。
ジブリ美術館は、宮崎駿とジブリ作品の世界的な名声に加え、見学者数の平準化を図る、入
場券事前予約制度など独自の入館方法を取りながら、美術館の入館者への対応を行っている。
入館者は、2003 年度 68 万人であり、三鷹市では、これを中心に観光事業を展開し、三鷹駅前
からの直通バスなど、観光客を呼び込む施策を行っている。また、三鷹市は『三鷹市産業振興
計画 2010 素案』では、ジブリ美術館以外にも、アニメ産業の集積やアニメ関係のNPO市民セ
クターとの展開を記述している。(三鷹市[2003,p52-53])
5.他地域の自治体の動き
東京都城西地域のアニメ産業振興支援を述べてきたが、アニメ産業支援を行っている全国の
自治体では、横浜市は映像部門で高度な知的産業への対応を行う東京芸術大学を誘致し、大阪
市のデジタルときわ荘プロジェクトは、西武池袋線要町にあった「トキワ荘」を模して、デジ
タル・コンテンツの振興を目指している。このほか、県レベルで対応している岐阜県と佐賀県
を簡単に紹介する。
5.1 岐阜県「ぎふ次世代アニメ研究会」と「飛騨国際メルヘンアニメ映像祭」
「ぎふ次世代アニメ研究会」68は、「『次世代アニメ』を岐阜の産業に」としてアニメーショ
ンが岐阜県の新しい産業として育成するための方策を産学官が連携して研究することを目的に
2002 年 10 月に大垣市で開催された。研究会は、2003 年に日本動画協会の理事長でもある手塚
プロダクションの松谷代表取締役を招いての講演会を行い、2004 年は、教師向けのアニメ制作
講座などを実施している。
岐阜県は、次世代アニメ研究会活動のほか、マンガ立県施策やデジタル・コンテンツを中心
とした産業・文化のイベントの大きなもので、「飛騨国際メルヘンアニメ映像祭」69を 2003 年
から行い、2005 年 3 月に第三回目の開催が予定されている。
5.2 佐賀県「アジアのハリウッド構想」
67
ジブリ美術館設立の経緯はジブリ美術館ウェブページ
( http://www.ghibli-museum.jp/welcome.html 2004.12.1)に詳しく記載されている。
68
岐阜県県政ニュースサイト(http://www.pref.gifu.lg.jp/pref/gib/3_news/0210/3719.htm
69
飛騨国際メルヘンアニメ映像祭 (http://www.hida-anime.jp/top.html 2004.8.19)
- 51 -
2004.8.17)
2004 年 2 月定例県議会での知事説明によれば70、「本格的なデジタル化時代を迎え、デジタル
コンテンツ分野における文化を育むとともに、新産業や雇用を創出するため、ショートムービ
ーの制作や佐賀の風物の映像化など、
『アジアのハリウッド構想』を具体化するための県民協働
による取組を進めることとしております。」と、「アジアのハリウッド構想」とする事業を開始
し、2004 年度予算に関連予算を編成実施している。
6.東京都城西地域自治体の問題点
以上のように自治体のアニメ産業支援の状況を概説したが、ここでは、東京都城西地域の自
治体の問題点に絞って考察する。
6.1 産業振興の考えが弱い自治体の基本政策
1) 住宅都市を基本にする自治体政策
東京都城西地域の自治体は、基本的には住宅都市としての発展を目指してきた。産業政策を
自治体経営の柱に掲げているところと異なり、自治体の優先施策順位では、長い間「後回し的
な存在」であり、良くても総合施策のひとつ程度の扱いであり、組織もこれにあわせたもので
ある。アニメ産業が注目を浴びこれを振興しようとしても、組織風土はなかなか変えることが
できず、産業に関しての専門的知識のある職員が育っていない。最近の行政人事配置の傾向で
もあるが、人事異動が頻繁に行われるため、信頼関係熟成が行われる前に、担当者が変わるこ
とがたびたびあり、face to face の側面が強い分野にも関わらず、その業界で長く事業を行っ
ている人とのつながりが続かない。このため、担当者は新規事業には躊躇し、前例踏襲的な事
業展開を行うに留まるか、新たな関係を打ち出すまえに時間切れとなる。また、聞き取り調査
での専門学校理事長にあるように、新機軸を打ち出そうとする首長と行政の安定性を重視する
執行当局との意思の乖離が生じていることも考えられる。
2)都市の体系が産業向きでない
この地域の大半の用途地域は、第一種低層住宅地域をはじめとする住居専用地域であり、都
市基盤の体系が産業立地向きにできていない。アニメスタジオは、都市計画法上「事務所」に
区分されるため、この地域での立地や規模拡大ができる部分が限られるなど、都市の体系自体
が、産業振興向きにはできていない。
6.2 実施支援事業ミスマッチ
該当自治体では、さまざまな支援事業が行われているが、商工会議所の調査や聞き取り調査
からうかがわれる、事業者側の求める支援と現実の支援事業との食い違いがある。
1)商店街活性事業にシフトしすぎた事業
商店街を振興するために、アニメを活用すること自体は特段否定するものではないが、産業
の基盤となるアニメ(製作)制作会社自体にメリットの少ない事業では、一時的な協力は得られ
ても、あくまでも「協力」になり、継続しにくい。各自治体ともこの点の視点が弱く「アニメ
で何とか活性化」だけの便乗事業では、息切れすることとなる。
2)制作会社にメリットのない観光(事業)
同様の事例が、観光事業についてもある。アニメ産業にとって、著作権の保護や管理の立場
で考えれば、観光客は、「不要」であり、かえって迷惑な存在でもある。現にアニメ制作スタジ
オの多くは、一般見学について否定的である。有名なスタジオジブリも、ジブリ美術館とは異
70
佐賀県定例県議会での 2004 年 2 月知事説明(http://www.saga-chiji.jp/
- 52 -
2004.8.19)
なり、一般の見学は当然のことながら行っていない。
商店街活性化と同じく、産業の中心であるアニメ産業を支える事業所にメリットのないまま
での観光事業は、行政の思い込みとは別に、厳しい見方をしているスタジオが多い現状を行政
側がしっかり認識しないと、暗礁に乗り上げるだろう。
3)イベント事業の目的化
イベント事業は、地域住民のこの産業への理解や他地域への情報発信力のためにも必要なも
のではあるが、数多くの手数のかかるイベントは、きちんとした計画とこれを推進する組織体
制がないと、アニメ産業に限らずよくいわれる、イベント開催の目的化状況が生じ、目的と手
段の逆転現象が生じかねない危険性がある。
こうした自治体の問題点と解決への課題と提言は、第 5 章で行うこととする。
第3節
市民セクターの動き
アニメ産業振興は、国や行政関係が中心となり、これにアニメ関係事業者が関係するものが
一般的だが、市民セクターからの動きもいくつかある、ここでは、練馬区と三鷹市を中心に活
動する 2 つのNPOを紹介し、市民セクターの動きを紹介する。
1.アニメーションミュージアムの会
NPO法人アニメミュージアムの会は、その前身のアニメミュージアムを創る会を通じて、
1994 年からアニメ発祥の地である「練馬区にアニメーションミュージアムを」スローガンに活
動している。ウェブページ71による活動目的は、「わたしたち NPO 法人アニメミュージアムをつ
くる会は、アニメーションに縁の深い練馬区内にアニメーションミュージアムをつくることを
目的に活動する市民団体です。通称アニメミュージアムの会といいます。」としている。
活動は、アニメ関係の講演会や戦後アニメ草創期の関係者への聞き取り 72や機関紙の発行、
ホームページの運営などのほか、2001 年夏の練馬区のこどもまつりに手づくりアニメコーナー
出展のように、地域に根ざした地道な活動を行っている。
2.コミュニティ・サポーターズ
NPO法人コミュニティー・サポーターズは、1999 年に認証され、現在は三鷹市を中心に活
動を行っているNPO法人である。その活動の目的は、ウェブページ 73によると「東京西部地
区を地盤としたNPOとして、これまで様々な地域振興活動を続けてきました。私どもは、こ
れからの社会は世界を意識しつつ地域ごとの特徴を活かしたまちづくりをしていかなければな
らない、と考えております。そのために当NPOでは『地域資源に着目したまちづくり』を標
榜し、東京西部地区の地場産業であるアニメーション制作業をはじめとする地域の資源を活か
した各種のまちづくり活動を展開しています。」となっている。
活動当初は杉並区のアニメの杜すぎなみ構想にも関係した活動74もあり、現在では三鷹市のS
OHO事務所に主な活動拠点をおいている。コミュニティー・サポーターズは、行政機関とも
密接な連携を行い、三鷹市産業振興計画素案にも「アニメーション等コンテンツ関連産業の推
71
72
73
74
NPO法人アニメミュージアムの会(http://olive.zero.ad.jp/ zbh28083/animan.html 2004.12.13)
2001 年 5 月の機関紙紙上では、元東映動画のチーフカメラマンを囲んで東映動画初期の活動状態の聞き取
りなどを行っている。
NPO法人コミュニティー・サポーターズ概要 (http://www.comsup.jp/npo/index.html 2004.12.23)
設立前夜から現在までの動きは、同ウェブページ上の「市民ベンチャー型NPOとして−これまでの歩み
∼理事長ご挨拶に代えて∼」に詳しく述べられている。
- 53 -
進と地域活性化に関する活動を行うNPO法人『コミュニティー・サポーターズ』」(三鷹市
[2003,p54])と、協働部門での活動があげられている。また、経済産業省関東経済産業局と
の協働では、関東圏の産業クラスター事業のひとつである首都圏情報ベンチャーネットワーク
との事業である「コンテンツ業界研究フェア 2004 Summer」を 2004 年に実施した。さらに、N
POでは唯一、東京国際アニメフェアの実行委員になっている。
3.市民セクターの問題点と課題
市民セクターの動きは、一般的には最近芽が出てきばかりであり、これからの展開次第と考
えられるが、実は練馬区のアニメーションミュージアムの会は、行政がこの産業に対して、見
向きもしなかった時代から活動していた。また、コミュニティー・サポーターズは、現在三鷹
市での活動が中心であり、経済産業省関東経済産業局との事業協力も行っているが、設立のき
っかけや当初の活動は、杉並区であったにもかかわらず、その後杉並区との関係はほとんどな
くなっている。
NPOなどの市民セクターは、特定の目的を持った人々の結合体である。これが有効に働け
ば、効果的な事業推進も可能となるが、意見の相違が起きた場合の組織活動維持が困難な一面
も有している。これは、究極的には倒産も含むリスクも背負うアニメ製作(制作)会社や、行
政がその支援に対して背負う行政責任的な面とは、やや性格を異にすると考える。
全国でNPOをはじめとする市民セクターの活動成功例が広く知られる一方、事業運営の失
敗や、意見相違による事業の停滞例も報告されている。市民セクターによる動きは、こうした
試行錯誤の先に、新たな展開が広がってくるのではないだろうか。
第4節
人材育成・教育分野の動き
知的立国を目指すために、第 1 節で述べた国の動きを中心に、全国では様々な動きがある。
第 4 節は、人材育成・教育の分野でのうち、高度専門的な動きの全般的な報告に続いて、東京
都城西地域の新たな動きを論述する。
1970 年代以降の自社内専門技術者養成制度が崩れてから今日まで、人材育成を中心とする教
育・研究機能が弱いといわれていた東京都城西地域を中心とするアニメ産業に、同地域への大
学院構想や専門学校の進出計画、都立学校のアニメ講座検討など、産業集積に対応し新たな研
究・教育機関が誘引されている現象を指摘し、自社内でも始まった人材育成の仕組みと併せて、
第 5 章で述べるこの地域の課題指摘と提言への導入部分とする。
1.大学と大学院
1.1 東京大学
東京大学大学院では、2004 年 10 月からコンテンツ創造科学産学連携教育プログラム75を実施
している。これは、
「先端的デジタル技術を活用し、国際競争力を有するコンテンツ産業を担う
世界的水準の人材育成を目的」として、
「大学院新領域創成科学研究科等の学内関連部局の協力
を得て実施する 2 年間の履修コース」を定員 40 名で開始している。
1.2 東京芸術大学
75
東京大学大学院情報学環・学際情報学府(http://www.iii.u-tokyo.ac.jp/gnrl_info/news/list04/15.htm
2004.12.10)
- 54 -
東京芸術大学では、アニメを包括するコンテンツの中核としての映画に注目し、2005 年 4 月
に映像研究科を新しい大学院76として横浜市に開設する。これは、大学院映像研究科(修士課程)
「映画専攻」として開講するもので、「映画は、21 世紀の基幹産業と期待されるコンテンツの
なかでも、中核的位置を占めるものです。平成 17 年 4 月にスタートする映画専攻は、国際的に
流通しうる物語を基礎とした映像作品を創造するクリエイター、および高度な専門知識と芸術
性を併せもつ映画制作技術者を育成することを目的」としている。
1.3 杉並区の構造改革特区による大学院計画
杉並区によれば 77民間の教育産業事業者から、構造改革特区を活用した株式会社によるデジ
タルアニメーション研究科中心のアニメ大学院大学を杉並区内に設置したい旨の提案があり、
杉並区でも専門性を重視したアニメ大学院を特区により設置することは、アニメの杜すぎなみ
のイメージアップにもつながるとして、構造改革特別区域による専門職大学院の杉並区設置認
定申請を行う予定であるという。
今後のスケジュールでは、2004 年度中に申請を行い、2006 年 4 月に専門職大学院開設を目指
すとしている。すでに、構造改革特区認定による株式会社経営の大学院で、IT・コンテンツ分
野の高度人材教育として、デジタルハリウッド大学院大学が 2004 年 4 月に千代田区で特区認可
され、開校している。杉並区の動きはこれに続くものであり、東京都城西地域では初めてのも
のとなる。
2.専門学校と事業者の協働化
2.1 インターシップを超える制度への動き
第 3 章では、F アニメ専門学校の聞き取り調査の中で、インターシップ制度のほか、アニメ
関係事業者との企業内「研修」教育システムの委託を検討しているとあったが、このような動
きが他のアニメ関連専門学校やアニメ製作(制作)スタジオの間でも同時に起こっている。教育
業界とアニメ関連会社との人材を協働育成活用システムである。
2.2 産学共同プロジェクト「白組ヒューマンスタジオ」設立
2004 年 11 月に、教育事業を展開するヒューマンアカデミーと杉並区内にも制作スタジオが
ある、株式会社白組 78がCG制作人材育成で提携し、学校内でプロとインターンシップ生の合
同によるCG制作業務を高田馬場にあるヒューマンアカデミー東京校内で開始するとの発表が
あった。設立目的等についてのプレス発表79による設置目的は、
ヒューマンではこれまで専門職の即戦力となりうる人材の育成に力を入れてまいりまし
たが、CG制作の分野においては、校舎内実習だけでは企業から求められるスキルの修得
が困難な為、実務レベルの実習環境整備が急務でした。一方で、白組は業務拡大に伴う人
材不足の問題を抱え、即戦力として活躍できる人材を強く求めておりました。この両社の
76
東京芸術大学
(http://www.geidai.ac.jp/topic/sintyaku_kiji/20041202/
77
2004.12.23)
杉並区産業振興課聞き取りによる。
株式会社白組は CG を中心とした映像の企画製作プロダクション。TVCM の NOVA、ゲームシリーズ『鬼武者3』
のムービーを手掛けるなど、幅広い製作技術を持つ。2004 年 3 月には、杉並区アニメ資料館で特別企画展も
開催している。
79
ヒ ュ ー マ ン グ ル ー プ 「 ニ ュ ー ス & リ リ ー ス 」 (http://www.athuman.com/news/syosai.asp - 040407_02
2004.12.6)
78
- 55 -
ニーズをマッチングさせ、ヒューマンからは「制作場所」と「素養のある人材」を、白組
からは「クライアントから受注された業務」と「指導員」をそれぞれ提供することで、新
たなクリエイター養成スキームの確立と即戦力となりうる人材の育成を可能にしたいと考
え、このたび包括的な協力体制を確立し「白組ヒューマンスタジオ」の設立となりました。
としている。また、具体的な共同80内容は、
ヒューマンは全国各校舎のCG関連の学科を専攻する学生のうち、白組からの課題作成
や面接などによって定期的(年次予定)に研修生を選出します。選出された研修生は「白
組ヒューマンスタジオ」にて実際のCG制作業務に従事します。優秀な人材は白組からの
報奨金の支給を受けたり、白組に正式採用されることも可能となります。これにより、白
組は実際の受託業務を遂行しながら、人材育成と優秀な人材の確保が可能となります。ま
た、ヒューマンでは実務レベルの実習環境を整えられ、即戦力となりうる人材の育成が可能
となるだけでなく、白組から派遣された指導員により、指導者不足の解消が図れます。また、
全国の学生に「白組の直接指導による実務研修が受けられる」という統一の目標が与えら
れることで、学習意欲の向上につながるものと考えております。
スタジオの場所は新宿区とはいえ、東京都城西地域に隣接し本稿でも東京都城西地域集積の
歴史に出てくる、西武新宿線の主要駅でもあり、日本動画協会も所在する高田馬場駅前にある。
2.3 アニメ専門学校の東京都城西地域進出計画
従来専門学校は、その立地条件として交通の便がよいことを第一にしている。現在でもこの
条件の一義的な意義は失ってはいないが、東京都城西地域は、住宅都市という性格や中央線文
化の中心でもあり、全国の若者に対するイメージはプラス方向に強い。こうした動きに合わせ
て、複数のアニメ関連の人材開発・教育分野の事業者が、「アニメ産業の中心地」をキーワード
に東京都城西地域に進出を予定しているとの情報 81もあり、実際に場所確保に向けて、該当地
域自治体へも相談レベルであるが、働きかけているとのことである。
3.都立高校とアニメ授業
公的な教育機関である、公立の高等学校にも、東京都城西地域がアニメ産業の中心地であり
これに対応する教育プログラムを開発する動きがある。
都立高校の制度改革で、杉並区内に所在する都立荻窪高校は、2007 年度から、杉並地区昼夜
間定時制高校となる。2004 年 3 月に報告された「杉並地区昼夜間定時制高校基本計画検討委員
会報告書」では、「同地区は、アニメーション産業の世界有数の集積地であり、多くのアニメー
ションスタジオがあり、アニメーターを市民講座に招くなども検討し、芸術の選択科目として
アニメーションを学べる科目を設置する。」(東京都[2004a,p7])と、世界最大のアニメ産業集
積地の産業特性を生かした科目を選択科目に設置することにし、将来の就職も見据えた展開で、
「4 年間で様々な科目を学習し、就職を目指す生徒の場合」(東京都[2004a,p17])にアニメー
ション基礎の科目を生徒の履修例に入れている。
80
81
本稿では一般的に「協働」を使用しているが、プレス発表は「共同」のため使用。
行政関係者やアニメ関係者からの聞き取りによる。
- 56 -
筆者が 2004 年 8 月に教育庁学務部都立高校改革推進担当に行った、聞き取りによると、同報
告書に基づき 2005 年度から、開設準備のための専任担当が置かれ、報告書にもある市民講座な
ど地域に開かれた教育施設でこのためのOBも含めたアニメ関係者へのアプローチなども行う
予定であるとのことである。
4.人材育成・教育分野の問題点
人材育成・教育分野では、国の既存大学においての高度知的産業への取り組みのほか、大学
院設置構想で杉並区がアニメに関する専門職大学院を特区申請する動きがあること。教育産業
と制作スタジオ協働化実施、専門学校進出計画や都立高校のアニメ授業計画について概説した。
この分野の動きは、始まったばかりのため、問題点の指摘は出にくいが、このほかにも本稿
で述べた、制作会社の定期採用復活や実習生制度の創設と市民セクターの活動、行政の人材育
成事業などの動きは、東京都城西地域のアニメ産業が経験する初めてのものであり、ここから
この地域の産業集積の今後が見えてくると考える。
- 57 -
第5章
産業集積の今後と支援のあり方
第 5 章は、産業集積の今後と支援のあり方を論じる。第 1 節では、アニメ産業集積は今後も
一定維持するものと結論づけ、これを論証し、さらにこの地域の集積に対して影響を与えると
考えられる「人材育成」を改めて整理し、産業集積の展望が広がることを指摘する。第 2 節は、
団塊世代退職後に「富」を生み出す産業政策を行う必要性を論じ、デザイン・文化・知的財産
都市へ向かう産業発展モデルを提示する。その他の大都市部住宅都市でも、地域がもつシード
をいかに早く見つけ、選別し育んでいくことが、まちの発展に大切であることを本稿の結論と
する。
第1節
地域アニメ産業集積の今後
東京都城西地域の集積は、空洞化するのではなく今後も一定維持するものと考察する。これ
を、技術発展、海外展開、企業構造の面から論述する。さらに、この地域で最近急速に展開し、
今後の集積維持機能の中心と位置づけられると思われる「人材育成」の新たな潮流を指摘する。
1.単純な産業空洞化論への疑問
1.1 セル画からデジタル作画へ
アニメ産業空洞化論の第一は、技術革新時の新技術への適用の遅れがある。「中小制作会社は
資本の制約もあり、最近アニメーションで多用されるようになったデジタル技術に十分に対応
できていない。」(内閣府[2003,p22])と、『地域の経済 2003』でも指摘されている。確かに産
業集積地が衰退する理由のひとつに、既存技術が陳腐化と新たな技術革新に乗り遅れる例はあ
るが、東京都城西地域では、第 3 章のアニメ製作会社の聞き取り調査した両社とも、現在のデ
ジタル転換はほぼ対応している。また、Fアニメ専門学校も、教育課程を全てデジタル化して
いる。デジタル化のための設備機器も、技術開発の進歩による低コスト化で、以前と比べると
低い価格での投資が可能である。また、デジタル化対応のソフトも順次開発改良されている。
杉並、練馬の商工会議所調査でも、運営上の問題項目にはあるものの、その比重は決して高く
ないうえ、
「セル画」による制作は今ではほとんど行われていない。こうしてみると、技術革新
への対応遅れによる産業空洞化は当該地域にはあたらないだろう。
1.2 平面から立体化
次に、現在の日本の主流である平面的表現(2D)からコンピューター制作中心による立体画
像作品(3DCG)が主流になり、いずれ日本のアニメは廃れるとも言われる。現に、米国では 3
DCGが今後アニメ作品の主流になるという考え方があり、2003 年にディズニーは、2Dアニ
メから完全に撤退して、3DCGへと進むため、杉並区にあった事業所を閉鎖した。
2004 年公開の 3DCGアニメ『Mr.インクレディブル』のような、3DCGアニメは、技術の
進歩とともに、今後さらに一般的になると考えられる。米国では、3DCGアニメに全て置き換
わるとの論議もあるが、これによる東京都城西地域のアニメ産業集積の空洞化は、直接当たら
ないと考える。それは、3DCGに対しても、デジタル化のときの対応と同じくこの地域の事業
者は対応していくことは、十分可能であるからである。技術進歩による低コストと、巨大なプ
ラント設置の設備投資が必要な重化学産業と違う IT コンテンツ産業の身軽さの利点を生かす
ことができる。
- 58 -
また、平面画像と立体画像の受け入れ感覚の違いもある。絵画は平面画像が中心 82であり、
これを受け入れる感覚がある限り、日本で主流の平面画像のアニメ作品は存続し、この問題で
の産業空洞化論はあたらない。
本稿では、技術革新による産業空洞化論が論点であり、文化論を論じるものでないので、こ
こまでとするが、絵画が美術芸術として人々に受け入れられる要素がある限り、アニメという
「動く」「絵画」=「動画」も、受け入れられていくと考察する。
1.3 中身重視のコンテンツ産業
集積維持の次の理由は、アニメ制作の第一段階である、プリプロダクションにある。「プリプ
ロダクションは、制作の準備段階のことです。企画所をもとに、脚本・設定・絵コンテなどア
ニメーション制作に必要な材料を作り、制作フローを確定することを指します。」(デジタルア
ニメ制作技術研究会[2003,p10])。
コンテンツは、情報の中身の問題であり、表現技術はこれを具現化するものである。どんな
技術で見せていくことも重要であるが、何をどのように見せていくのか、原作のよさと、これ
を展開する物語性のよさ、特に、企画書の段階での練り上げには、人と人との幾多のやり取り
の上できあがることが多い。これらプリプロダクションの重要性がある限り、集積のメリット
は維持され続ける。
1.4『ほしのこえ』の衝撃
一方、
『ほしのこえ』83の成功は、一定の技術があれば、個人の才能の発揮により、作品が完
成できこれが市場ベースに出ることを証明した。筆者は、アニメ制作のプリプロダクションが
この地域の集積のキーポイント 84のひとつであると考えるため、この成功は、東京都城西地域
におけるアニメ産業には少なからぬ影響を与える可能性があると考察する。それは、労働集約
や産業集積でなくとも、アニメ制作ができること、つまり、「技術革新の結果、能力のある作家
による一人で制作したアニメが市場ベースに出る。」ことは、第二次世界大戦直後の当時のアニ
メーターという専門的技術者が、この地域に集まり、そこから生まれたこの地域の集積の前提
が崩れる可能性を意味する。
大阪市のデジタルときわ荘構想は、この『ほしのこえ』の成功がひとつのきっかけでもある。
今後、プリプロダクション段階で行われる face to face のコミュニケーションの重要性と、個
人の才能の発揮がどこまで秤にかけられていくか、またその調和があるかには注目する必要が
あろう。
2.グローバル化
海外に技術力が移転して、産地の競争力が失われることは、典型的な地場産業空洞化論であ
る。海外展開については、制作スタジオでもよく耳にする話ではあるが、東京商工会議所の杉
並・練馬両支部の調査、聞き取りを行った 2 社や日本動画協会も海外展開の側面のほうが強い。
中小のアニメ制作スタジオでも、多くが海外発注を行っている。個々のアニメーターの従来の
82
立体的視覚作品もあるが、平面画が中心であることはいうまでもない。
「新海誠の『ほしのこえ』は 10 万枚の DVD を売るヒット作である。ほとんど 1 人でデジタル製作し、テレ
ビでも劇場でもなく、インターネットでプロモーション映像を配信して DVD を販売するというまったく新しい
ルート戦略が成功し、圧倒的な売れ行きをみせている。」(山口[2004,p152])
84
筆者は、長い間杉並区に居住しているが、本稿作成中もファミリーレストランで、アニメーターたちの企画
打合せを見かけた。
83
- 59 -
手作業的な単価が上がらない問題は指摘されているものの、地域内の中小アニメ制作会社でも、
中国をはじめ世界各地にその制作を展開している。
市場はどこか、競争相手は誰かでは、動画協会の聞き取りでG専務理事が語ったように、今
後は単なる下請けでなく、著作権の課題など解決すべき課題は多いが、市場としての中国をは
じめとする海外市場展開に、日本アニメの目は向かれている。この意味でも、グローバル化に
よる一定の影響は受けつつも、この地域の産業集積は維持していくと考察85する。
3.文化芸術と産業の二面性
プロスポーツの世界は、いくら長い期間その世界にいても、才能のない人間に対しては、収
入面を中心に処遇について厳しい世界である。これは、文化芸術の世界も同様である。才能中
心の世界であるからである。聞き取り調査でも、アニメ制作に関して、職人芸的なスキルも必
要とされ、才能や能力といった言葉をよく聞いた。
アニメ産業は「産業」と名がつくように、あくまで「ものつくり」の産業であるが、基本部
分で、「アニメーション」の企画、脚本、原画や演出など作成工程それぞれの才能の部分に負う
ものが大きい。
聞き取り調査をしたA社、D社の代表取締役がともに、才能あふれるクリエーターは、この
世界でも経済的にも成功できるといっているように、デジタル技術の進歩により、技術の取得
の部分は変化があったものの、発想力や表現力の差やこれを具現化する動画作成スピードのス
キルの差は、古典的な職人芸の世界あるいは、映画の俳優の世界やTVタレント(タレントは
その名のとおり「才能」である。)の世界とも共通するものである。この性格は、文化芸術の側
面も併せ持つアニメ産業の二面性を垣間見るものである。
低賃金や長時間労働と指摘されることを肯定するものではないが、文化芸術が産業となった
ときにこの二面性を持ち続けるのは、なにもアニメ産業だけの問題でなく 86、また、地域集積
とは別の課題であり、これをもって東京都城西地域の集積が空洞化する論にはつながらないだ
ろう。
4.中小企業問題としてのアニメ産業
前項で、文化芸術要素からの問題を考察したが、多くのアニメ産業関係者と話すうちに、低
賃金長時間労働、人材の空洞化、海外競争などアニメ産業の課題の多くは、一般的にいわれる
日本の中小企業問題とほとんど重複する。
①多くの事業者が中小企業に該当すること
②比較的長く事業を続けていること
③産業の構造は、古い製造業のタイプに近いこと
④一定の地域に集積していること
⑤契約制度などの基本的な整備が整っていないこと
⑥労働条件が整っていないこと
⑦下請け構造のなかでの長時間労働かつ低賃金であること
「アニメ産業」という言葉を意図的に除いて列挙しても、他の中小企業産業構造とそのまま
置き換わることができるものである。よくいわれる「アニメ産業の光と影」的な論調の影の部
85
筆者が聞き取りなどの調査した範囲では、グローバル化が原因の倒産事例は余り聞くことはなかった。
86
同じコンテンツ産業では、映画産業の俳優や監督業などが典型例である。
- 60 -
分は、日本が過去もそして現在もかかえる中小企業の問題とリンケージしてくる。東京都城西
地域のアニメ産業の課題の多くは、その企業規模や産業構造から、日本の典型的な中小企業問
題を視野に入れて考察すると、その解決方法が見えてくると考える。
本稿は、この地域の産業集積の将来的な維持が継続するか否かを課題としているため、個別
的な課題の解決方法の提示は行わない。しかし、東京都城西地域のアニメ産業は、才能に左右
される文化芸術の面を持ち、そして、古くからある日本の典型的な中小企業問題や現代の雇用
制度に密接に関係する契約社員制度など、そこに携わる人にとって様々な課題を持ちつつ、世
界に冠たるアニメ産業として脚光を浴びていることも見逃すことはできないだろう。
5.産業集積の新たな潮流
本節の最後に、今後のこの地域の集積に対して大きな影響を与えると考えられる「人材育成」
の新たな動きを改めて整理する。
5.1 人材育成の展開
筆者は、第 2 章でこの地域の集積のきっかけが、第二次世界大戦直後の技術者集団としての
アニメーターの集積がきっかけと考察している。1970 年代に、定期採用制度がいったん崩れて
から久しくこの地域では、人材育成システムは機能していなかったが、近年急速に、人材育成
の動きが出てきている。今まで述べてきたこの地域に関する人材育成の動きを整理すると、
①制作会社の定期採用復活
②実習生制度の創設
③専門職大学院設置構想
④教育産業と制作スタジオ協働化
⑤専門学校進出計画
⑥都立高校のアニメ授業計画
⑦NPOの活動
加えて行政等の人材育成では、
⑧杉並区「アニメ匠塾」
⑨フェスティバルでのアニメ進学相談会
⑩関東経済産業局とNPOとの共催で地域企業就職相談会
となっている。
5.2 東京都城西地域産業クラスターの維持機能となるか
東京都城西地域のアニメ産業は、この特徴として、一般的な産業クラスターがその成立集積
過程で、イノベーションや人材育成の中心となるべき研究・教育機関があり、ここがコア(核)
となって、クラスター発展を支えることが多いのに対して、東京都城西地域には、これに該当
するものがなかった。一方、最近急速に、教育・研究機関がこの地域に進出を計画しており、
また、1970 年代初期から自社内でのアニメーターを中心とする人材育成を行っていなかったこ
の地域のアニメ製作スタジオ中心に、自社内で定期採用開始や、実習生制度などで自ら人材育
成を始めるなど、クラスターが人材育成機関を誘引したり、地域内の企業でも人材育成を再開
し始める状況がでている。
このように、集積維持に必要な人材の供給と育成に関して、その地域(クラスター)のアク
ターごとの動きを鳥瞰図的に見渡すと、全体としてあたかもクラスター維持(スタビライザー)
機能が働いているかのように見える。こうした動きは、東京都城西地域のアニメ産業が経験す
- 61 -
る初めてのものであり、この動きの先には、産業集積の新たな展望が広がるものと考える。
第2節
産業振興政策への提言
最近の産業政策論では、必ずしも全国レベルでの産業政策の効果が見えにくいことともあい
まって、何もやらないことが、よい政策的な、逆説的な話もある。アニメ産業の関係者にもこ
の考え方は浸透していると思われる。「最近では、国や東京都がアニメ産業に目を向けているが、
モノを作るということは、体制に反発しながら努力するから伸びていくわけで、それが国が支
援していくというのは、古典芸能になれということなのかな、と思う。」(鈴木[2003,p87])に
代表される声は強い。このような声が強いにもかかわらず、東京都城西地域に産業政策が必要
な理由ついて考察し、その上での提言を行う。
1.団塊世代退職後に「富」を生み出す産業政策
東京都城西地域の財政基盤は、比較的上位の所得者層に位置する、地域外で働く給与所得者
(サラリーマン)層によって支えられている 87。この層が退職期を迎え、年金生活に入ると、
これによって支えられていた財政基本構造は、急速に状況の悪化も考えられることは、それぞ
れの自治体の企画・財政サイドでは、検討されているであろうし、これに対応する、行政需要
と支出抑制の仕組みづくりに取り組んでいる。
住民の富を自らの地域で生み出さず、他都市で稼いでいる、これらサラリーマン住宅地自治
体こそ、将来の安定した財源確保と、雇用創設、高齢社会対策のために、産業振興政策を検討 88
すべきと考える。コミュニティビジネスなどは、この範疇に含まれるものであるが、地域内(広
義には、城西地域全体)での、「儲かる産業」への支援も必要であり、収入と人材確保を目的に
する、産業振興政策を真剣に検討すべき時期に来ていると考える。
アニメ産業は、この地域にある唯一の集積産業であり、文化面などの波及効果を含めた評価
は、世界的なものとなっている。世界的評価が高まり、国の政策が追い風になっている、ここ
数年の間に、他地域との選別化を行い、国際的にも、一定自立できる各種施策を自治体レベル
で積極展開しながら、国等との連携を図ることで、中長期的にも将来のデジタルコンテンツ産
業やデザイン・知的財産産業まで成長する可能性があり、この基盤の確立を図る好機と考える。
既に、都道府県レベルでは、本稿でも述べた岐阜県や佐賀県のように、産業創設や誘致に県が
乗り出しているところもある。
2001 年に杉並区で「アニメの杜すぎなみ構想」が発表された当時の、孤立無援の状況とは一
変し、国が、コンテンツ産業を海外に対抗できる、「日本」の成長産業に認知している今こそ、
東京都城西地域の自治体は、産業政策に対して名乗りを上げることが得策と考える。
2.施策提言
国関係では、縦割り行政と予算配当のタイムラグがあり、東京都城西地域自治体の問題点で
は、住宅都市を基本にする自治体政策のため、産業振興の考えが弱く、かつ都市の体系が産業
87
週刊ダイヤモンドの 2001 年 8 月 11・18 日号による、自治体ランキングで富裕度の水準を示す指標「一人当
たり所得額」では、693 自治体中、第 9 位武蔵野市、第 11 位杉並区、第 17 位三鷹市、第 28 位練馬区と全て
上位 5%以内に入っている一方、製造品出荷額や経済力では上位 50 位には、経済力で吉祥寺を抱える武蔵野市
がわずかに 31 位に入っているに過ぎない。
88
これに近い考え方は、関満博[2002],「産業空洞化、高齢化の中の大都市産業」、『都市問題研究』第 54 巻
第 6 号.にも三鷹市を例に取り上げられている。
- 62 -
向きでないことを指摘した。また、実施事業も商店街活性事業にシフトしすぎた事業や制作会
社にメリットのない観光、イベント事業の目的化などミスマッチの問題点もある。
こうした問題を前提に、基礎的自治体で検討可能と思われる事項に絞って提言を行う。
2.1「儲かる」しくみづくりの構築
問題点に掲げた制作会社にメリットの少ない思い込みの施策でなく、産業振興の視点を改め
て入れることが必要である。「儲かる」しくみづくりの構築、このための職員づくりも含めた体
制の構築をする。イベント事業でも、観光事業でもギブアンドテイクの考え方で、対象となる
アニメ製作(制作)スタジオにとっても事業にとってプラスになるような仕組みづくりが必要
である。
2.2 人材育成の流れを積極的に推進
人材の確保とその集積がこの地域の産業集積やクラスターとなった起点であることの重要に
鑑みて、現在の産業クラスター特徴である人材育成・教育の流れに対して、これを積極的に推
進していくことである。
既に行政でも、大学院特区対応、杉並区の匠塾やNPO就職説明活動などは評価できるが、
特別な補助制度を設けるのではなくとも、全国から集まるアニメ関係産業関係者に対する、居
住から、就労や生活相談、独立の支援までの総合的な相談を関係業界と共同連携で行うことは
可能である。これは、聞取りを行った、A社のB氏のいう、才能を発揮するための生活できる
仕組みづくりや環境づくりになり、D社E氏が述べている、芸術家が集まる地域にもつながる
ものと考えられる。これにより、同地域の人的集積が進み、知的産業(デザイン・文化含む)
が自治体内で成長し、知的立国を目指す日本における先進知的自治体にまで進む可能性が広が
ってくる。
2.3 特区申請による集積展開推進
第 3 は、集積維持展開ができる場の確保を民間中心にしつつ都市計画法の特区制限などを使
い推進することである。杉並区は「みどりの産業として」環境に配慮をした産業の一つとして、
アニメ産業の振興を進めているが、音もにおいも出さず環境に負荷をかけない産業であるアニ
メ産業は、住環境を重視する住宅都市の政策とも一致している。しかし、この地域の用途制限
により、せっかくの集積のメリットが生かせない状況が生じている。事実、アニメ製作(制作)
会社が事業展開するときにもこの制限がネックとなって、この地域内で事業展開が果たせず、
結果この地域外への移転も視野に入れざるを得ないことが生じている。この点に関しては、行
政当局は、ほとんど無関心であり、自ら動く気配はない。建蔽率や容積率は制限しつつ、用途
制限を一部緩和する方法もあるのではないだろうか。
三鷹市は、まちの成り立ちの経緯から、特別都市型産業等育成地区の都市計画を定めるなど
産業振興には一定の力を注いでいるが、みどりの産業用途特区による、みどりの住宅地に建蔽
率や容積率以内での静かに位置する「アニメスタジオ」、この様なイメージが、アニメ産業だけ
でなく、文化産業への昇華する一つの鍵になると考えられる。加えて、低利用状態の公共的建
物のデジタルコンテンツ産業やデザイン・文化・知的財産産業への利用を視野に入れることも
考慮すべきであろう。
- 63 -
3.「豊かな住宅都市」の産業政策モデル
3.1 デザイン・文化・知的財産都市へ
前項は現状の問題点解決の課題提言であるが、ここからは、発展の種(シード)としてのアニ
メ産業の今後段階的な展開記述を行い、提言する。「地域資源のひとつを活用するための知識、
技術、ノウハウを持った人材の役割がもっとも重要である」(岡本[2003,p115])のように、こ
の地域の集積の始まりが人材の集積であり、本稿でも今後のこの地域発展の鍵は、人材の育成
にあると考える。
本稿での中心論である、産業集積の新たな動き、人材育成・教育分野の展開は、集積の芽を
生かした産業と教育の協働化にもつながり、義務教育分野以外でも、特に産業振興のための教
育人づくり分野でのリーダーシップをこの東京都城西地域が行い、その結果、自治体内での活
力の維持もできるのではないか。こうした産学官の連携をとり、若い力を全国から吸引できる
メリットを生かし、文化事業まで人材集積を生かした産業のまちづくりを行い、現状でも比較
的安定したこの地域をさらに発展させる段階まで、引き上げること可能であろう。
ここでは三段階に分けた、この地域の産業発展モデルを提言する。
①第一段階
短期視点
アニメ人材育成事業
本稿で述べた、アニメ産業に対する人材育成支援を行い、集積の維持発展を行う。
②第二段階
中期視点
デジタルコンテンツ産業
CGグラフィックなども含む、デジタルコンテンツ産業全体への展開
③第三段階
長期視点
デザイン・文化・知的財産都市へ
専門的な人的集積を生かし、政府の目指す、知的財産立国の中心都市としての繁栄
アニメ産業から、デジタルコンテンツ産業、さらにデザイン・文化・知的財産産業まで、産
業の芽は、大きく育つ要素を含みながら、東京都城西地域でその集積維持を行い、出番を待っ
ているように思われてくる。
3.2 地域発展の種(シード)を見つけよう
日本の人口が減少するとの見通しの下で、どの自治体も自らの地域の人口が減少するとの予
測を行いたがらない。現時点での 30 年後の政府の人口予想値と、それぞれの自治体が考える人
口予想合計値を比べるとどうなろうか。この問題は、地方の中山間地域だけの問題ではない。
東京都城西地域だけでなく、まちの発展の種をいかに大切に芽吹かせていくかが、今後の全
ての大都市圏住宅都市が持つ共通する課題であると考える。東京都城西地域のアニメという種
は、大きく育っているが、これとて、巻末の年表を見ると集積は数十年間に培われているにも
かかわらず、支援の体制はごく数年間の間に行われているのは、一目瞭然であろう。
東京都城西地域のアニメ産業が、人的集積から発展したように、大都市住宅都市の産業振興
モデルになる、種(シード)は、それぞれの都市内にあると考える。その自治体がもつシードを
いかに早く見つけ、これを選別し育んでいくことが各自治体にとって大切であると考える。
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おわりに
本稿での未整理の課題について少し述べる。
アニメ産業振興支援に関する各セクターの現在までの動きを、論点のひとつとしたため、産
業集積論から企業組織分析や取引関係分析など、クラスターの相関関係を導き、そこからアニ
メ産業のクラスター相関関係図の作成や、産業集積の分析に踏み込む部分に弱みを残した。
一方、各セクターの動きの提言も、集積過程や現在の事業報告に比重を置き、行政の提言に
とどまり、産業全体への提言までは行きにくかった。しかし、これは、中小企業問題としての
側面と知的産業の高度な契約・ファイナンス関係まで含むアニメ産業の両面をひとつに報告す
る難しさからと考えている。この課題一つ一つが、細かな分析とこれに基づく課題提示、提言
に続くものであると考えている。アニメ産業の奥深さを垣間見たものである。
しかし、アニメ産業に関しては、先行研究で紹介したように地域を視点とした研究が少なく、
これをある程度包括的に行えたこと、福川氏の述べた、行政支援の必要性と、半澤氏の集積過
程からの集積維持見解について、それぞれその後の展開につなげたものと考えている。
また、産業振興という、この地域での施策順位で行けば恐らく下位ランクであり、住民の関
心の範囲外であり、かつ育ちにくかった部分を、関氏も課題提示している、住宅都市の産業振
興と団塊世代後の自治体自立という命題にリンクさせ、産業クラスターの新たな動きと人材育
成の視点で提言できたことは、本稿の最大の成果と考えている。
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東京都城西地域を中心とする関連年表
年
アニメ関係事業者
1917 年
1 月下川凹天国産初のアニメ公開
5 月北山清太郎 アニメ公開
6 月幸内純一 アニメ公開
行政・市民セクター
1945 年
1948 年
1953 年
1957 年
1958 年
1960 年
1961 年
1962 年
1963 年
1964 年
1965 年
1966 年
1968 年
1969 年
1970 年
1971 年
1972 年
1975 年
1978 年
1979 年
1986 年
1993 年
1994 年
1997 年
8 月第二次世界大戦終結
10 月新日本動画社設立
11 月新日本動画社を日本漫画映画社に改組
1 月日本漫画映画社から分離独立し日本動画
(のちの東映動画の母体)設立
手塚治虫トキワ荘(西武池袋線豊島区椎名
町)居住
1 月東映動画練馬区大泉にスタジオ建設
10 月初の長編カラー作品『白蛇伝』公開
1 月手塚治虫練馬区富士見台居住
12 月手塚治虫練馬区富士見台に手塚治虫プ
ロダクション動画部設立翌年「虫プロダクシ
ョン」となる(6 月)
10 月竜の子プロダクション設立
1 月『鉄腕アトム』テレビ放送開始(虫プロ
ダクション)
11 月『狼少年ケン』テレビ放映開始(東映
動画)
8 月東京ムービ設立
10 月東京ムービー杉並区東田町に移転
10 月『ジャングル大帝』テレビカラー作品
放映開始(虫プロダクション)
4 月テレビ映画製作者懇談会発足
3 月テレビ映画製作者懇談会、日本動画製作
者連盟に名称変更
12 月『魔法使いサリー』(東映動画)放映開
始
3 月『巨人の星』(東京ムービー)放映開始
12 月『アタック NO.1』(東京ムービー)放映
開始
4 月『明日のジョー』(虫プロダクション)放
映開始
10 月『ルパン三世』テレビ放送開始(東京
ムービー)
株式会社マッドハウス設立
9 月株式会社サンライズ設立
3 月株式会社スタジオディーン設立
12 月株式会社葦プロダクション設立
7 月『アニメージュ』(徳間書店)創刊
4 月『機動戦士ガンダム』テレビ放送開始(日
本サンライズ)
5 月株式会社ぴえろ設立
12 月株式会社ぎゃろっぷ設立
1 月株式会社ジェー・シー・スタッフ設立
1 月株式会社スタジオコメット設立
8 月有限会社ハルフィルムメーカー設立
1 月アニメーションミュージアムを創る会
開始
4 月デジタル化作品本放送『ゲゲゲの鬼太郎』
(東映アニメーション)
12 月『ポケモン』問題発生
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活動
年
アニメ関係事業者
行政・市民セクター
1998 年
2 月第 1 回
文化庁メディア芸術祭贈呈式開催
10 月株式会社ボンズ設立
1999 年
2000 年
2001 年
2002 年
10 月吉祥寺アニメワンダーランド 開催
11 月ポケモンシリーズ『ミューツーの逆襲』 12 月 NPO 法人コミュニティ・サポーターズ認証
米国上映公開
12 月首都圏情報ベンチャーフォーラム発足
4 月日本動画製作者連盟を日本動画協会と改
称
9 月杉並区21世紀ビジョン みどりの産業策定
1 月杉並区アニメの杜すぎなみ構想発表
3 月杉並アニメーション事業実態調査報告書
3 月杉並区『新産業実態調査報告書』
4 月杉並区アニメーションフェスティバル 2001in
杉並開催
7 月『千と千尋の神隠し』公開
7 月デジタルコンテンツ白書 発刊
9 月杉並アニメ振興協議会設立
10 月三鷹の森ジブリ美術館 開館
11 月東京都『観光産業振興プラン』報告
12 月文化振興芸術基本法制定「アニメーション含
むメディア芸術の振興含む」
2 月『ほしのこえ』東京単館上映
5 月任意団体日本動画協会を有限責任中間法
人日本動画協会へと法人化
2003 年
3 月『千と千尋の神隠し』アカデミー長編ア
ニメーション部門賞受賞
6 月『日経キャラクターズ』(日経 BP 社)創
刊
7 月杉並アニメ振興協議会制作アニメ「サヨ
ナラみどりが池」完成
2004 年
5 月『イノセンス』カンヌ映画祭ノミネート
7 月練馬区アニメ協議会設立
2 月杉並区立郷土博物館「人気アニメはこうして
生まれた∼東京ムービー阿佐谷時代」開催
2 月「新世紀東京国際アニメフェア 21」開催(2003
年以降「東京国際アニメフェア」)
3 月内閣府知的財産戦略会議開催
3 月練馬区アニメフェスティバル in
大泉 開催
7 月杉並産学提携会議『アニメーションアーカイ
ブに関する提言』
7 月内閣府知的財産戦略大綱策定
10 月杉並アニメ匠塾開講
12 月知的財産基本法制定
2 月『杉並区産業振興計画』 アニメ産業が正式
な産業計画に
3 月東京都『アニメ産業振興方策に関する報告』
3 月経済産業省東京コンテンツマーケット開催
3 月日本貿易振興会『米国アニメ市場の実態と展
望』報告
3 月東京都『産業集積の活性化に向けた産業政策
のあり方に関する研究調査報告書』
4 月杉並アニメ資料館開設
9 月『杉並アニメ戦略会議報告』
10 月『練馬区アニメ産業実態調査報告書』
11 月内閣府『地域の経済 2003』「杉並区・練馬区
アニメ産業が国の報告書に」
3 月『東京都観光まちづくり基本方針』
3 月東京都『杉並地区昼夜間定時制高校基本計画
検討委員会報告』
4 月知的財産戦略本部コンテンツ専門部会「コン
テンツビジネス振興政策」報告
4 月デジタルハリウッド大学院大学開設
5 月『知的財産推進計画 2004』報告
5 月『新産業創造戦略』報告
7 月コンテンツ業界研究フェア実施
10 月東京大学大学院コンテンツ創造科学産学連
携教育プログラム開始
11 月白組ヒューマンスタジオ設立
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