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Conference
第 8 回 コールセンター/ CRM デモ&コンファレンス 誌上レビュー
CallCenter/CRM DEMO & CONFERENCE
特別コンファレンス
「HRM」
「クオリティマネジメント」―
2 大テーマにおける“指標管理の重要性”を再認識
今回の特別コンファレンスでは、
「人材管理」
「品質管理」というセン
ター運営の 2 大テーマを取り上げた。調査資料による国内コール
センターの実態から見る課題の抽出から、先進事例各社の取り組
みまでさまざまな観点からアプローチしたセッションには、2 日間合
計で約 200 名が参加。聴講者からも活発な質問が飛び交った。
Ⅰ.
コールセンターのHRM ∼雇用から教育まで∼
顧客接点に必要なスキルを養う!
採用難時代を勝ち抜く人材管理のポイント
東京大学社会科学研究所の仁田道夫教授
特別コンファレンスは、
「人材管理」
自分で育っていける手がかりを用
格差や離職率の問題に言及した。
左からソフトバンク BB 品質管理部の野村裕美部長、三菱 UFJ 証券 営業本部ダイレクトビジネス推進室ダイレクト企画課の木ノ内浩司課長、NTT-ME カスタマサ
ービス事業部 IP サービス部門の本田勝彦サービス運営担当部長、もしもしホットライン マーケティング第二本部第二 CS 事業部の小志田典彦部長
長)
と説明した。
しもしホットライン マーケティング
解説、それに対しパネラー各氏が
最後のプログラムは、パネルディ
第二本部第二 CS 事業部の小志田
それぞれの実践内容を披露すると
(15日)、
「品質管理」
(16日)
という2
とくに、顧客接点スタッフ
(オペレ
つのテーマを取り上げ、それぞれ
ータ)に関しては、正社員と有期契
ること、③育った顧客接点の知を、
スカッション「コールセンター人材管
典彦部長によるディスカッションが
ともに、質問や意見を交換する形で
有識者や先進事例各社の講演、パ
約社員の年収格差が「倍近い」と調
利益に結びつけること―の 3 つに
理の要諦」。モデレータに「コンタク
展開された。
進行した。
ネルディスカッションが行われた。
査結果を報告したうえで、
「合理的
留意する必要があります」と解説し
トセンター・アワード 2007」で金賞
議事は、ソフトバンク BB の人材
会場からも各社が用意している
な説明は不可能なレベルの差です。
た。
を受賞したソフトバンク BB 品質管
管 理 の 取り組 み を 採 用・研 修・
キャリアパスに関する質問などが寄
理部の野村裕美部長を迎え、パネ
キ ャリ アパ ス・ VOE( Voice of
せられるなど、
“スタッフの処遇”に
ラーとして首都圏に大規模センター
Employee:従業員の声)活動とい
対する関心の高さがうかがわれる
を構える三菱 UFJ 証券 営業本部
った 4 フェーズに分けて野村部長が
セッションとなった。
15 日は、東京大学社会科学研究
所の仁田道夫教授の基調講演「国
非正規社員のキャリアアッププラン
際調査から見たコールセンターの雇
を真剣に考察すべき」と指摘した。
用問題」で幕を開けた。
続いて、リクルート ワークス研究
意する、②将来の見通しにつなが
採用、キャリアパス、研修―
「人がやめないセンター」への取り組み
同研究所は、2005 年から 2006 年
所の笠井恵美主任研究員が「雇用
午後の講演は、コールセンターの
ダイレクトビジネス推進室ダイレクト
にかけて 20 カ国近い労働学の研究
難時代を乗り切る!顧客接点人材の
先進事例としてプロセント 運営本
企画課の木ノ内浩司課長、仙台市
Ⅱ.
コールセンター品質―再生と改善
者によるネットワーキングで実現した
育成」
と題した講演を行った。
部の大駅郁子本部長が“離職低減”
に拠点を設けている NTT-ME カ
CSからコミュニケーションレベルまで
要諦は「基準の定義」と「科学的な指標管理」
コールセンターの人材管理に関する
笠井主任研究員は、顧客接点に
をテーマに「人がやめないコールセ
スタマサービス事業部 IP サービス
国際調査に参加。仁田教授は、そ
おける人材育成の例として、業界と
ンターを目指して」と題し同社の取
部門の本田勝彦サービス運営担当
の結果をもとに日本のコールセンター
しての成熟度が高い航空会社の客
り組みを披露した。
部長、アウトソーサーを代表しても
に内在するキャリア
(雇用属性)間の
室乗務員や看護士などを題材にそ
2日目の基調講演は、日本アイ・ビ
現状だ。浅野氏は、
「CS 調査の設
首都圏にある同社のセンターで
ー・エム 品質・カスタマー・サティ
計は科学というよりも“アート”であ
は、他社同様にまずは募集定員を
スファクション部長の浅野紀夫氏に
る」と指摘したうえで、
「(企業が)訊
「“熟達者”
とは、ルー
満たす採用活動が課題となってい
よる「顧客接点の評価機軸― CS
きたいことよりも
(消費者が)言いた
チンワークを 得 意と
る。そこで、従来の固定化した勤
調査のあり方」で、顧客満足度調査
いことを訊くこと、問題意識と仮説
する『手際のよい熟達
務時間帯の見直しに着手。さらに、
のプロフェッショナルである同氏か
の設定が重要で、特定分野に偏ら
者』と状況に応じて臨
育成のフェーズでは「評価を数値化
ら、調査にありがちな落とし穴や設
ないようにバランスのよい質問を設
機応変に対応する『適
することで昇給の基準を明確に示
問のあるべき姿について詳細な説
ける」など、調査の実践ポイントを
応 的 熟 達 者 』が 存 在
し、さらにトレーナーやスーパーバ
明が行われた。
わかりやすく説明した。
します。顧 客 接 点 人
イザーまで、能力次第で非正規雇
近年、コールセンターでも品質指
材に求められるのは
用スタッフでも昇進できるプログラ
標として CS 調査のポイントを重視す
後者であり、その育成
ムと給与体系を設定、モチベーショ
の ポ イントを 解 説 。
リクルート ワークス研究所の笠井 プロセント 運営本部の大駅郁子
恵美主任研究員
本部長
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Computer TELEPHONY 2008.1
の方向性としては、①
ン向上に努めています」
(大駅本部
る傾向が強まっているが、その手法
日本アイ・ビー・エム 品質・カスタマー・サティス
ファクションの浅野紀夫部長
の成熟度はばらつきが大きいのが
応答品質だけがクオリティではない!
先進事例各社の取り組み
以降は、センターの先進事例のセ
Computer TELEPHONY 2008.1
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Conference
ッションが続いた。まず、ジョンソ
泉マネージャー)
と語
ン&ジョンソン カスタマーサービス
り、それぞれにおける
部の和泉祐子シニアマネージャーが
“顧客視点”の重要性
「コールセンター再生のプロセス」を
テーマに講演した。
を示唆した。
続いて、リコー 販売
同社センターは、数年前にそれま
事業部 お客様相談セ
で維持していた対応品質が著しく低
ンター 統合コールセン
下した時期があった。今回は、その
ターの 橋 本 耕 一 所 長
後、管理者として着任した和泉マネ
による講演「ナレッジ・
ージャーを中心にした取り組みを説
マル チスキル・H R M
明。応対品質として「『すぐに繋がっ
―進化する統合コー
た!』
という応答品質、
『感じが良くて
ルセンターのクオリテ
親切!』
という対話品質、
『仕事が速
ィ」が行われた。
ジョンソン&ジョンソン カスタマ リコー 販売事業部 お客様相談セ
ーサービス部の和泉祐子シニア ンター 統合コールセンターの橋
マネージャー
本耕一所長
ニアビジネスコンサルタントの加藤
くて正確!』
という業務品質の 3 つを
同社は、かつて分散していた 13
紀行氏、パネラーは三井生命保険
定義づけ、それぞれに応じた改善
のセンターを統合、異なる文化・ル
お客様サービスセンターの内田修
策とインパクトをマトリックスで分析
ールの統一に取り組んだ経緯があ
子課長、テレマーケティングジャパ
したうえで改革に着手しました」
(和
る。橋本所長は、KPI マネジメント
ン 変革推進本部の土屋美奈本部
の実践、VOC(Voice
長、KDDI カスタマーサービス推進
of Customer)活動へ
部 運用統括グループの河合優子主
の取り組み、HRM 最
任で、それぞれの立場からコール
適化など、同社の品質
センターの品質について所感を述
向上に向けた改善策
べるとともに、各社の取り組みを説
を説明。とくに「コミ
明した。
ュニケータ
(オペレー
各社ともに、品質向上への取り組
タ)のカルテを軸とし
みについては応答品質からセンタ
た 人 材 マ ネジメント
ー全体の品質まで網羅したうえで
DB を構築することで
品質管理を専門に担うQA
応対品質の向上を図
(Quality Assuarance)の重要性を
っています」と人材面
指摘。最終的にはコールセンター全
の 取り組 み が 必 要 な
体の組織のあり方まで言及した。
ことを強調した。
富士通コミュニケーションサービス シニアビジネスコンサルタントの
加藤紀行氏(左上)、三井生命保険 お客様サービスセンターの内田修
子課長(右上)
、テレマーケティングジャパン 変革推進本部の土屋美奈
本部長(左下)
、KDDI カスタマーサービス推進部 運用統括グループの
河合優子主任(右下)
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Computer TELEPHONY 2008.1
2日間、異なるテーマで専門家や
最 後 の セッション
先進事例のセッションが行われた
は、パネルディスカッシ
が、共通していえるのは「科学的な
ョン「クオリティマネジ
評価基準策定へのアプローチ」と
メント実践のヒント&
「キャリアアッププランまで包含した
チップス」。モデレー
人材育成プログラムの重要性」であ
タは富士通コミュニケ
り、センター運営の成熟度が徐々に
ーションサービス シ
高まっていることがうかがわれた。