2009年 9月号 - ワシントン日本商工会

2009年 9月号 No. 417
Japan Commerce Association of Washington, D.C., Inc.
ワシントンDC日本商工会会報
9月号
2009年 No. 417
今月の特集
9月9日研修会のご報告: 『オバマ政権の外交政策』
目次
●●
9月度理事会議事録 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
●●
JICCのお知らせ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
●●
9月研修会報告・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
●●
第8回キャピタルクラシックゴルフトーナメン
ト結果報告・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
●●
広告募集のご案内・・・・・・・・・・・・・・・・・10
●●
「行き過ぎるところまできてしまったジャパン
パッシング」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
●●
「オバマ政権の引継ぎ方がうらやましい鳩
山新首相」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
●●
ワシントンソーシャルライフ:ワシントンバ
レエ団 日本人ダンサーを励ます会 シゲコ ボーク・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
●●
映画「Inglourious Basterds」・・・・・・・・・・19
●●
ワシントン月報 (第60回) ・・・・・・・・・・・・・22
●●
今月の書評 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
●●
編集後記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
今回はブッシュ政権下、国務次官と
して数々の重要な外交政策を担当
された、元米国代表国連大使のジ
ョン・ボルトン氏をお招きし、オバマ
政権の外交政策について講演して
頂きました。 P.5
『行き過ぎるところまできてしまったジャパンパッシング』
「日米同盟の静かなる危機」の著
者であり、ジョンズ・ホプキンス大学
高等国際問題研究大学院(SAIS)
エドウィン・O・ライシャワー 東アジ
ア研究センター所長 ケント・E・カル
ダー氏に、これからの日米関係の
重要性について、独占インタビュー
しました。 P.11
『オバマ政権の引継ぎ方がうらやましい鳩山新首相』
今回の日本の政権交代に伴い
話題となっていた「政権引継ぎ」。
Spencer Sakai 氏に「引継ぎ劇」で
垣間見る日米の対応の違いについ
て、執筆頂きました。 P.15
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1015 18th St., NW Washington, D.C. 20036 TEL: 202-462-3947 FAX: 202-463-3948 www.jcaw.org
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JCAW2009年9月度理事会議事録(敬称略)
日時:2009年9月8日(火)12:00 – 14:00
場所: Toyota Motor North America, Inc.
1.
定数確認(大辻)
13名出席により有効成立を確認。(欠席:松尾、伊藤)
2.
会報電子化関連(小林・樋口)
① ウェブアクセス数の調査および電子版会報のプロモーション活動を継続する。
② バナー広告料金の見直し。
③ ホームページのフロントページを変更し、「名簿」と「会報」の違いをわかりやすくする。
3.
商工会業務の見直し(森・上宮)
各理事が分担している様々な業務につき、効率化が図れる分野の洗い出しが完了した。今
後は、その効率化の手法を検討していく。
4.
新春祭り会場調査の状況(吉村・市川)
前回まで使用してきた新春祭りの会場が改装のため使用できず、代替施設を各理事の協力
も得て模索してきた。さらに努力を継続するが、来春以降で屋外会場を使った同様のイベン
トも検討の視野に入れる。
5.
2012年さくら祭り100周年記念大会(大出・上宮)
7月22日(水)、藤崎大使の下、関係団体(日本大使館、NCBF(National Cherry Blossom
Festival)、NCSS(National Conference of State Societies)、NPS(National Park Service)
、日米協会、及び商工会)が日本大使館に集合し、第一回準備意見交換会を行った。
6.
企画スポーツ(桑田)
① 第8回キャピタルクラシックを9月13日(日)に開催する。(注:100名参加で無事終了)。
② 商工会第一回ソフトボール大会を来る10月11日(日)に開催することで案内済み。追加
の予算を全会一致で承認した。
③ 第313回商工会ゴルフトーナメントを10月18日(日)に開催する。今回から、女子の参加
が5名以上の場合のみ女子優勝、女子ベスグロを設けることに変更した。(報告)
7.
日本の5大学研究インスティチュート・シンポジウム協力の件(大出)
日本の5大学(京大・慶応・東大・早稲田・立命館)によるワシントンDCでの研究インスティチ
ュート設立キックオフ・シンポジウム開催(9月22日―23日)に際し、同事務局より「協力」とし
て商工会名を出して欲しいとの依頼を全会一致で承認した。
8.
9月の研修予定(園田・奥)
9月9日(水)予定の研修会概要の連絡。
以 上
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ワシントン日本商工会広報誌
日本大使館広報文化センター(JICC)からのお知らせ
JICCは、主に日本紹介を目的とした各種広報文化活動を行なう大使館の附属施設です。講演会、
展示会、音楽会、映画上映会や、日本文化紹介スクールプログラム(小~高校生対象)の実施、電
子版英文ニュースレター配信、文化紹介ビデオ等の貸し出し、日本に関するパンフレット類の提供
等を行っております。また、閲覧専用図書室も併設しておりますので、お気軽にご利用頂ければ幸
いです。
展示エリアでは引き続き、11月20日(金)まで、日本実業団訪米100周年展を開催しています。本
展覧会では、「日本資本主義の父」渋沢栄一氏率いる日本実業団が、今からちょうど100年前にあ
たる1909年に、アメリカ各都市を訪問したことを記念して、「経済基盤の整備」、「ものづくりの産業
化」、「都市の繁栄と日常生活」といったテーマを基に、50点以上の錦絵を通して、明治維新以降の
日本の近代化・産業化の様子を振り返ります。近代の夜明け、写真技術到来以前の実業のさまざ
まな場面が、錦絵によって残されています。錦絵は当時の日本社会の様子を知る鏡です。渋沢栄
一氏の孫である元日銀総裁渋沢敬三氏が収集した現物は現在、国立史料館の所蔵物ですので、
当センターではその複製を借り受けて展示しています。日本が近代国家建設へ向け走り始めた激
動の時代を描写した錦絵を是非お楽しみ下さい。
10月8日(木)午後6時半からは、Khoomei-Taiko Ensembleによる太鼓演奏及び講演を開催予定
しています。Khoomei-Taiko Ensembleは、モンゴルと日本の伝統的音楽のコラボレーションとし
て結成されました。アンサンブルの楽器とレパートリーは、モリンフール(馬頭琴)、モンゴリアンジョ
ーハープ、ホーミー(喉歌)、ロングソング、マクタール(讃歌)、日本笛と太鼓を用いた作品を含み
ます。メンバーは、日本から2名、モンゴルから3名、そしてアメリカから2名の計7名で構成されてい
ます。モンゴルと日本の民俗音楽の伝統を組み合わせたアンサンブルの演奏を是非お楽しみ下さ
い。
10月のJ-Filmシリーズは、10月21日(水)午後6時半から、2006年に公開された映画「武士の一
分」(121分、出演:木村拓哉、檀れい、笹野高史、小林稔侍、緒方拳、桃井かおり他)の上映会を
予定しています。同映画は、山田洋次監督の時代劇三部作(「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」
)の第3作目として公開され、興行収入では、松竹配給映画としての当時歴代最高記録を樹立した
話題作です。
10月26日(月)午後6時半からは、遠州茶道宗家十三世家元小堀宗実氏による「武家の茶道」講演
会及びデモンストレーションを行う予定です。武家茶道の代表的な流儀である遠州流の宗家による
「綺麗さびの世界」を是非お楽しみください。
当センターで行われる、展示以外のイベントへのご参加にはご予約が必要です。下記電話またはE
メール([email protected]) にてご予約下さい。
イベントの詳細については、当館ウェブサイト(http://www.us.emb-japan.go.jp/jicc/)をご覧下さ
い。案内及びニュースレターの電子メールご登録も同ウェブサイトにて可能です。
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また当センターでは、ビジット・ジャパン・キャンペーン(Yokoso! Japan)のDVD(約4分)を
貸し出しております。日本を紹介するコンパクトかつ印象的なDVDとなっており、美しい日
本(Beautiful Japan)、楽しい日本(Delightful Japan)、かっこいい日本(Cool Japan)とい
うカテゴリーを映像と音楽で楽しませる趣向のものです。各種イベントや講演会でのご利用
に便利です。ご遠慮なくお問い合わせ下さい。
ご質問、お問い合わせは下記までお願い致します。
Japan Information & Culture Center, Embassy of Japan
1155 21st Street, NW, Washington, DC 20036
(メトロFarragut North/Westより徒歩約8分)
開館時間:月曜日~金曜日、午前9時~午後5時[10月の休館日:12日]
電話: (202)238-6949
Fax: (202)822-6524
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2009年9月研修会報告
オバマ政権の外交政策
講師:ジョン・ボルトン元国連大使
9月度研修会のご案内
政権発足当初オバマ政権はアメリカ経済をリセッション
から回復させるために時間を取られた。現在景気後退は
一段落しつつある。しかし同政権は地球温暖化問題対応
のための法案や医療保険制度改革にエネルギーを集中
させる一方で外交問題の優先順位は低い。これ以上外
交政策を後回しにして打つべく手が遅れると問題である。
ブッシュ政権は北朝鮮などの敵対国との交渉に膨大な
勢力を注いだ。オバマ政権はブッシュ政権の最後の2年
間と同じく外交政策における“交渉”の重要性を強調す
る。“交渉”は外交戦略とは違う。交渉はひとつの戦術に
過ぎない。外交交渉は交渉相手より強い立場で交渉する
限り国益を極大化できる。そうでなければ譲歩させられるだけで国益増進につながらない。交渉の
ための交渉は論外だ。交渉を優先するオバマ政権の外交姿勢はアメリカのみならず同盟国のため
にならない。相手は交渉するといいながら時間を稼ぎ核兵器開発や軍拡を進めるだけだ。
アフガニスタン問題
アフガニスタン問題に対するアメリカの外交目標が定かでない。欧州がアフガニスタンにもっと関
与すると期待していたが必ずしもそうではない。アメリカが外交政策の目標を明確に示せなければ
NATO同盟諸国はしり込みする。アフガニスタンをスイスのような民主主義国に変えることは不可能
である。しかしアフガニスタンから手を引くことはできない。タリバンやテロリストはアフガニスタンの
北の国境を利用して活動拠点を構築する。テロリストはそこを基盤にアメリカやアメリカの同盟国に
テロ活動を仕掛けるだろう。アメリカはアフガニスタンから撤退できない。今後アメリカ軍の増員が
必要になる。
ロシア問題
オバマ政権はロシアが南オセテイア問題でジョージアに侵攻したときロシアに自制を求めた。ヒッ
トラーがポーランドに侵攻したときのことが想起された。また、ロシアは中東における影響力を拡大
する戦略を取る。ロシアはアメリカの影響力を押さえ込もうとしつつイランに武器を売り込む。ロシア
はイランの核燃料製造施設建設をはじめとして対空ミサイルなどの通常兵器をイランに高く売りつ
ける戦略だ。核兵器に関する国際協定においてロシアは孤立している。アメリカはたくさんの同盟
国を持つ。オバマ政権はこのような国際政治の現実を理解していない。
北朝鮮問題
ブッシュ政権は北朝鮮の核武装を止めさせるために六カ国協議を推進した。核は北朝鮮にとって
安全保障の切札である。同時に北朝鮮はこうした技術を非合法的に海外に売り、国内政治・経済
体制を維持する。したがって、北朝鮮が核を放棄する訳がない。過去5年間北朝鮮は核開発を進め
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たばかりかミサイル技術も進化させた。
クリントン元大統領が二人のアメリカ人記者を解放させるために北朝鮮を訪問したのは間違い
だ。北朝鮮は国際的な孤立から抜け出すために関係国の経済的・政治的支援を必要としていた。
クリントンの訪問は外国と関係回復を狙っていた北朝鮮に格好の機会を提供した。また、アメリカ
は、アメリカ人が人質になると日本人や韓国人の人質とはまったく違った対応をするというメッセー
ジを日本と韓国に発信した。北朝鮮の核武装は交渉でも経済制裁でも止めさせることはできない。
中国の対応がカギになるが中国は本気で北朝鮮に核を止めさせる気がない。一度六カ国協議が
スタートするとアメリカが止めさせることは不可能になる。
イラン
2007年にイスラエルがシリアに建設中の核燃料製造施設を爆破した。北朝鮮は誰も注意してい
なかったシリアに核技術を売り込んだ。北朝鮮の核問題はアジアだけでなく中東においても脅威に
なる。オバマ政権がいう強力な経済制裁は効果がない。イランは核武装化への努力を止めない。
長期的な解決策は政権転覆(Regime Change)しかない。イスラムの革命主義者を一掃すること
だ。ブッシュは道半ばで止めてしまった。
イスラエルはイランの核施設を空爆するかどうかまだ決断していない。オバマ政権がイスラエル
の空爆を止めさせるのは不可能だ。イスラエルが軍事力でイランの核武装を止めさせないならば
我々は核保有国としてのイランと付合うしかない。イスラエルは来年までにこの問題への対応を決
めるだろう。シリアの核燃料製造施設をイスラエルが空爆したときアラブ諸国はなんの非難の声も
上げなかった。これは中東においてイランが核保有国になることを近隣のアラブ諸国も歓迎しない
ことを示唆する事例だ。
後付け
講演の最後にボルトン氏は、日本の国連安全保障理事国入りについてニクソン大統領が日本政
府に約束していたと語った。同氏はアメリカの約束を国務省の外交記録の中で確認したと語った。
あれから30年以上の年月が経った。日本の安全保障理事国入りは実現しないので新たな枠組み
を作る必要があるという議論があるかもしれない。ボルトン氏は、理事国の数が増えると意思決定
がさらに困難になるばかりかインドも理事国入りしたいといいだし、アフリカの諸国は理事国が先進
国に限定されるのはおかしいというだろうから、結局日本の理事国入りは実現する可能性がなくな
る、と締めくくった。
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第8回ワシントン日本商工会
キャピタルクラシックゴルフトーナメントの結果報告
今 年 で 第 8回 目 を 迎 え ま し た 「 キ ャ ピ タ ル ク ラ シ ッ ク ゴ ル フ ト ー ナ メ ン ト 」 を 9月 13日 ( 日 ) 、
Worthington Manor Golf Clubにて開催いたしました。心配した天気も、この日のために予約してい
たかのように晴天に恵まれ、合計100名の方々により、今年も熱戦が繰り広げられました。
結果は以下の通りとなりました。
●● 優勝 本間 和雄 様(Sushi USA)
●●
第2位
藤沢 昌之 様(Mitsubishi Nuclear Energy Systems, Inc.)
●●
第3位
藤山 雄一郎 様(Cathie Gill Inc, Realtor/Idea Travel Corp)
●●
女性第1位 芦田 恵子 様(World Bank)
今年も多くの企業・団体・個人の皆さまから賞品等
の寄贈を賜りました。残念ながら、ホールインワン賞
としてご用意いただきましたトヨタ自動車様のプリウ
スを獲得された方はいらっしゃいませんでしたが、
参加された皆さまには、ビンゴゲームや数々の豪華
賞品贈呈の表彰式などプレー後も楽しんで頂けまし
た。
賞品を寄贈・寄付下さいました皆さま、またお忙し
い中、事前準備並びに当日の運営までお世話にな
りました商工会スポーツ委員をはじめボランティア
の皆さまに、この場をお借りして厚くお礼申し上げま
す。
開会式の様子(加藤公使のご挨拶)
なお、商工会では10月18日(日)に本年最後となり
ます第313回商工会ゴルフトーナメントを開催します
ので、キャピタルクラシックで予想通りの活躍が出来
た方、あるいは不本意であった方々も奮ってご参加
下さいますようお願い申し上げます。
表彰式の様子(優勝の本間様(右)と桑田理事)
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行き過ぎるところまできてしまったジャパンパッシング
「日米同盟の静かなる危機」著者、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)
エドウィン・O・ライシャワー 東アジア研究センター所長、ケント・E・カルダー氏に聞く。
インタビュー ワシントンコア 小林知代・吉川恵美子
2008年の11月に「日米同盟の静かなる危機」と
いう書籍を出版しました。この本の構想を考え始
めたのは、2002年頃だったと思います。在日米国
大使館で1997年から2001年まで、歴代の駐日大
使の特別補佐官の任務を果たして米国に戻った
わけですが、その後、日米関係を取り巻く世界の
潮流が非常に大きく変わったこと、今もその変化
の真っ最中にあること、その中で日米関係はどう
あるべきかをずっと考えてきました。結論として、
ジャパンパッシングが行き過ぎるところまできてし
まったのではないかと感じています。日本と米国
がこのままだと知らない間に離れていってしまうの
ではないか、そうなる前にどのようなことが日米双
方でできるのか、そういった問題意識を日米関係
者に持っていただき、一緒に考えていくためにこ
の本を書きました。
日米関係を取り巻く環境の変化として、大きく3
つあります。まず、太平洋を取り巻く環境が大きく
変わりました。言うまでもなく中国の勃興が原因
です。そして、米国です。新政権が誕生し、米国
の政治も変化の途上にありますが、デモグラフィ
ック(人口構成)、そしてエスニック・ポリティクスが
変化してきています。マイノリティーの中でもその
シェアが変わり、いろいろな人種構成も変化して
きています。日系米国人の割合は段々下り、対して中国系、韓国系米国人の割合が上がってきて
おり、その割合の変化は、最終的には米国における各国のプレゼンスにつながっていくのです。そ
して最後に日本です。今回の総選挙の結果で顕在化しましたが、それ以前から徐々に自民党の勢
力構造に変化、一党支配の限界が見え始めていました。以上、太平洋を取り巻く環境の変化、米
国政治の変化、日本政治の変化、という3つの潮流が現在の日米関係に多大な影響を与えていま
す。以前は日米は双方お互いのことだけを考えていればよかったのです。現在の日米同盟の枠組
みをサンフランシスコ講和条約の立役者であるジョン・フォスター・ダレスが作ったときには、米国に
とってアジアでのプレイヤーは日本しか考えられなかったのです。ところが、今では世界は根本的
にその様相を変えつつあり、それがジャパンパッシングの進行を後押ししていると考えたのです。
誰かがすべき努力を怠ったから現在の状況になった、という次元の問題ではありません。このまま
何もしなければ日米は少しずつ、誰も気づかないうちに離れていってしまうのではないか、この希
薄な状態が深刻になってきたのではないか、と感じていたことが執筆の出発点です。
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<「戦略情報コンプレックス」〜ワシントンの戦略的な位
置の意義>
新しい日米関係を考える上で、ワシントンDC(以下、
ワシントン)の持つ意義についてここで改めて見直す
ことは大切なことだと思います。ワシントンは、以前か
ら情報収集の街として日本のみならず、世界の政府・
ビジネスの間でその重要性は十分認識されてきました
が、最近は、その位置づけが今まで以上に高まってき
ています。その重要性を正確に読み取ることが出来る
かどうかが勝負の分かれ目となります。この街の戦略
的重要性について、私は、ジョンズ・ホプキンス大学高
等国際問題研究大学院、ライシャワー東アジア研究セ
ンターの研究員である、デフレイタスまりこ女史(Mariko
de Freytas)と共著で「Global Political Cities as Actors
in Twenty-First Century International Affairs」と言う
論文を2009年春に発表しました。ワシントンは、政府
対政府のトップの関係のみならず、大使館、シンクタン
ク、ロビーイング会社、リサーチ会社、コンサルティング
会社、NGOなどがひしめきあって「戦略情報コンプレッ
クス」を形成し、インフォーマルな情報交換を行っています。ワシントンでは、このようなインフォーマ
ルなネットワークがものを言うのです。彼らは、大使館パーティ、シンクタンクのセミナー、レセプショ
ン、プレゼンテーション、ワーキンググループなどに足繁く通い、実際に動くことで、情報収集、そし
て最終的な政策の微調整を行う役目を果たすのです。これらのプロセスは、政治家やトップの政府
担当官が一つ一つ関わるには到底無理なほどボリュームも多く、複雑な内容ですが、このような規
制や施策の最終的な詰め、微調整こそ実は政策的意義を持つことが多々あるのです。
ロビイストや業界団体が集まるKストリートや大使館が立ち並ぶマサチューセッツ通りは、情報の
交差と急速なイノベーションやアイディアが作り出される、という点では、マイケル・ポーター教授が
言うところの「競合優位性を持つクラスター(集積地域)」と呼んでもよいと思います。シリコンバレー
やマディソン通りなどと同様に、ライバル企業や関係団体が隣接している場所から情報やアイデ
ィアが作り出され、交換され、プロフェッショナルな人々が戦略的に意見交換する場が作り出され
るのです。ワシントンの街中だけではなく、ダレス空港あたりに広がる「ダラス技術回廊(Dulles
Technological Corridor)」やボルティモアまでの幹線道路「The Baltimore Washington Parkway」
も連邦政府の請負企業や安全保障庁(National Security Agency)やNASAなど政府系の研究所
が林立し、ワシントンを、ビジネスマインドを持った、よりダイナミックでかつコスモポリタンな街にし
ています。例えば、もともと軍や政府機関のコントラクターであったブーズアレンというコンサルティ
ング会社は、1997年の香港返還後のプランを策定するなど、海外の政府にも専門的なノレッジを
駆使したコンサルサービスを提供しています。現在、我々は、「グローバルポリティカルセンター」
というコンセプトをもとに、ワシントンという街が持つ戦略的意義についての新しい書籍を執筆中で
す。
<他国から学ぶ>
ワシントンの持つ多面的かつ戦略的重要性に他国も気づき、ワシントンで積極的に動いていま
す。たとえば、対中ビジネス関係では、200以上も中国と取引関係のある米国の企業が加盟してい
る米中ビジネスカウンシルがあります。これは、ワシントンでもっとも力のあるロビー団体のひとつ
です。その経済的な動機付けは中国政府によって力強く形作られています。また、韓国の外向き
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な外交戦略も注目に値します。韓国は、自国の視点を売り込むのに韓国経済研究所(KEI)、韓国
国際交流財団、韓国情報センター(コーラスハウス)などの半官や民間の組織の力に依存していま
す。しかし、その中でもドイツの動き方が日本にとって最も参考になるのではないでしょうか。日本
とドイツはともに経済大国であり、第二次世界大戦の敗戦国として、歴史的立場も似ています。ドイ
ツのワシントンでの活動の特徴は、非政府機関と半官団体をうまく使いこなしている点にあります。
ドイツのプレゼンスの中心は、戦後のドイツ復興に多大な貢献をしたジョージ・マーシャルへの返礼
として作られたドイツ・マーシャル・ファンド(GMF)です。このファンドは、民間セクターと米国の献金
者によって資金が提供され、半世紀にわたり、大西洋間関係の課題設定、文化交流のスポンサー
として、海外交流でのドイツの役割を際立たせています。ウクライナやコーカサスなどの将来といっ
た、ドイツ外交における大きな関心事について、GMFは底流にあるドイツの関心を戦略的に支援し
ています。また、ドイツの6大政党のすべてがワシントンに事務所を開設、維持し、米議会との連携
を活発に行っています。さらに、米独間の奨学金制度、毎年700人もの学生、研究者、教員、行政
官、ジャーナリストが参加する世界で最大級のフルブライト制度も特筆に価します。ドイツの米国商
工会議所やドイツの商工会議所は両国のビジネス振興に奔走しており、米国のドイツへの投資を
取り付けています。
<日本ができること、米国ができること>
このようなワシントンの重要性について、日本もしっかりと認識しています。今までのやり方が間
違っていたとか、十分でなかったと言っているわけではありません。日本のJETプログラムやマンス
フィールドプログラムにより、大変な数の米国人が日本に対し親近感を抱くようになりました。この
感情は大変貴重なものです。 今後、これらの成功を基盤 に、より厚みのある政策ネットワークを強
化する、ジャーナリズムの分野にも拡大する、メディア交流プログラムを立ち上げるなどを行い、非
政府・半官半民型の組織を利用し、ワシントンでのプレゼンスをより強固に、かつ多様にしていくこ
とを薦めます。日本は今までワシントンではなく、ニューヨークを中心に米国との関係づくり、拠点づ
くりを展開してきました。米国でビジネスを行う日本企業の本部はニューヨークにあり、ジャパンソサ
エティもニューヨークに所在しています。これまでは日本のニューヨークへの傾斜は特に問題では
ありませんでしたが、2005年以降、経済力の成長、資金力、中国系、韓国系米国人が持つ国内政
治の力などを背景にした中国と韓国の台頭は、これまでのバランスを揺るがしており、日本もワシ
ントンでの活動を再考する時期に来ているといえるでしょう。
もちろん、米国にも改善が必要なところは
たくさんあります。米国ももっと日本に重きを
置くべきです。かつては新潟に米国の領事
館があったのに、現在は廃止されています
し、四国に至っては領事館がありません。ま
た、米国政府は日本に関係する分野に十分
な奨学金を与えているとは思えません。例
えば、国家防衛外国語教育プログラムのも
とで日本語への助成を行うべきでしょう。中
国語や韓国語はすでにその助成の対象とな
っているのに、日本語への助成はないので
す。日本との関係は良好で、両国は同盟国
だから、勉強する必要はない、助成は必要
ない、というのならこれは大変に皮肉なこと
です。両国の関係をさらに推し進め、厚みの
あるものにするには、共通の経験、協働の経
ケント・E・カルダー氏と小林 知代
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験が必要です。経済的な側面と言う意味ではなく、もっと人間的(ヒューマン)な分野、文化的な分
野で共に分かち合える経験(コモン・イクイティー)が必要なのです。現在は米国の若者の間でのア
ニメの人気が高まってきており、それがきっかけで日本への興味も確かに高まってきています。米
国内でアンケート調査を行えば、米国人が今でも日本を高く評価している、という結果が出ます。メ
ジャーリーグ野球での日本人選手の活躍ぶりや、私どもライシャワーセンター主催の裏千家による
茶会などが催されていますが、このように文化外交を米国側でも積極的に後押ししていく必要があ
ります。
<チェンジが生み出すプラスの影響>
日本における政権交代は、米国における日本への興味を沸き立たせるという点ではプラスの側
面をもたらすかもしれません。変化は興味を刺激します。日本の総選挙の結果が出ると、主要新聞
3紙が一面で日本の政権交代を報道しました。これだけでも興味は喚起されたはずです。新政権の
発足と変化は米国民の間で政策的な観点からの興味、学問的な興味をひきつけることでしょう。こ
の変化をきっかけに、これまでより多くの人が日本について勉強を始めることになるでしょう。
米国は日本に成立した新政権に対して、今の時点ではあまり早急なプレッシャーをかけたくない
と考えています。しばらくはいわばクーリングオフ期間ともいうべきもので、新政権が変化に適応し
ていくための猶予期間と考えています。新政権は、今までの政策と異なる自分たちの政策を打ち出
してくるでしょう。どのようにして、新政権が現在の日米関係を損なうことなく新機軸を打ち出してい
くのかが見ものです。
ルース大使とは親しくさせていただいていますが、大使は人の言葉によく耳を傾ける人です。私の
著作もすでに目を通してくれてます。今後、大使は、文化・人材交流に力を入れたい、特に、科学者
同志の交流を考えているとのことでした。直近までシリコンバレーで仕事をしていた経験から、大使
は米国人科学者と日本人科学者の相互の国の往来がもっと多くなることを望んでいます。また、日
本語の習得についても関心を抱いており、先日、横浜にある国務省日本語研修所を訪れていまし
た。とくに日米のエネルギー環境問題に関心が高く、すでに米国エネルギー省のチュー長官のオフ
ィスに2度も足を運んでいます。エドウィン・O・ライシャワーは、「アメリカと日本は世界最大の太平
洋を隔ててお互いに向き合っている」と指摘しました。まったく異なる両国がどう協力し合えるかは、
世界のすべてにとって重大な意味を持ちます。日本側も米国側もお互いの手を緩めることなく、世
界で最も重要な二国間関係を強化していく必要があります。
ケント・E・カルダー
ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)
エドウィン・O・ライシャワー 東アジア研究センター所長。
1948年、ユタ州生まれ。ハーバード大学政治学部でライシャワー教授の指導を受け、
博士号を取得。1983年から2003年までプリンストン大学ウッドロー・ウィルソン政治大
学院で教鞭を執る。米戦略国際問題研究所日本部長、在日米大使特別補佐官を歴
任。2003年より現職。90年度太平正芳賞、有沢広巳賞、97年度アジア・太平洋賞大賞
受賞。主な著書に、『自民党長期政権の研究』、『戦略的資本主義』、『アジア危機の構
図』、『米軍再編の政治学』等。
http://www.sais-jhu.edu/centers/reischauer/
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オバマ政権の引継ぎ方がうらやましい鳩山新首相
Spencer Sakai
ワシントンDC商工会メンバーの皆様いかがお過ごしです
か? 東京も夏の終わりがやっと来たという感じであたりが少し
涼しくなったかなというこの頃です。
日本は8月30日に行われた第45回総選挙で、民主党
308席、自民党119席の民主党の大勝となりました。
ついに日本も50年に一度となる政権交代が実現する事
となりました。
選挙日の20日前ごろでした、元首相の下で働いていた
方と話しをしましたが、彼はその時すでに自民党が結党以来守ってきた第一党の座から落ち民主
党に城を空け渡すこととなる事をすでに予測していました。
日本でこの政権交代がいよいよスタートしようとしている時、私が米国連邦政府でカーター(D
1977)レーガン(R 1981)ブッシュ父(R 1989)クリントン(D 1993)ブッシュ(R 2001)の5大統領に
仕えてきた時の引継ぎ(Transition Period)の事を思いだしました。これは私個人の意見ですが、
今回、日本の政府はこれまで経験したことのない出来事で総理大臣以下どの様に引き継ぎに対処
すべきか予測出来ておらず、対応準備が出来ていなかったのかも知れません。
それにくらべて1981年カーター大統領が選挙でレーガン大統領に屈辱的な負け方をした時でも、
カーター大統領は、選挙敗戦宣言後、「速やかに秩序正しくスムーズに政権交代が完了するよう全
力を尽くす」と声明を出したことを思い出しました。
米国での政権交代は良くある事ですが、日本ではこれが初めてに近い事で、まずは良い引継ぎ
が出来るように麻生首相以下幹部がリーダーシップを取って全力を尽くすべきです。
興味深い点は、各新聞社が自民党が議事堂内の議員用会議室や待機室を民主党に明け渡した
くないと話していると報じていたことです。結果的には話し合いで解決したものの、政権交代は国民
のチョイス、あるいは国民の意思から起こった事であり、民主党議員が優先的に扱われるべきで、
その国民の気持ちが正しく反映されるよう、国会は正しいルール作りをする必要があるようです。
選挙後官僚の事が話題になっているこの頃ですが、私も元米国官僚でしたので、現在日本の官
僚が立たされている状況を良く理解できます。
しかし、米国との大きな違いは、部長クラス以上は新大統領に新たに任命されたスタッフとほとんど
全員入れ替わるという事です。
官僚には政治的に任命された人とキャリアアップを目指して自ら人事院を通して官庁に入ってき
た人と2種類あります。自ら入ってきた官僚は、大臣や大統領の命令で辞めさせられる事はありま
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せんが、任命されて入ってきた官僚はいつでも辞めてもらえます。それと政府の局長、次局長クラ
スになるとキャリアアップ組でも任命組でも就任には前もって議会の合意が必要となります。議会で
認可され、そこで宣誓式を終え初めて政府のために正式に働く事が可能になります。
新しい政権のもと任命を受けて入ってくるスタッフの中には、オバマ新大統領(民)の選挙活動に
多大な貢献を認められて入省した人もいるでしょうし、以前のクリントン(民)政権下のある省庁で働
いていた方々がオバマ大統領に再任命されたという事などが考えられます。
ブッシュ政権(共)が終わった時、その政権下で任命を受けて働いていたスタッフは新しいオバマ
政権下(民)では働けませんのでほとんどの官僚は自分達が以前働いていた古巣へ帰って行きま
す。例えばスタンフォード大学の教授からブッシュ時代に入省した人や、銀行の役員で財務省に入
省していた人、厚生省にいた大手企業の役員だった人と様々です。皆それぞれ来た所に戻ってい
ます。この人達は次の政権が共和党に変れば政府の高級役人として舞い戻ってくる可能性があり
ます。既に省庁内で働いていた経験があり、新しい大統領の政権戦略を実現するため政府の中で
最も効果的に働くのです。ここが日本政府と大きく違う所です。
私の場合キャリアアップ組でありしかも部長クラスであったため政権が交代するたびに辞表を出
す必要はありませんでした。新しく任命され入庁した、大臣、局長等の経営管理グループの目的(こ
れは新大統領の掲げた政策)の実現化に協力し全力投球して働きました。
又、新入官僚に対して引継ぎのリチュアルも必ず行いました。その中には彼らの今までの活動、
経過、その実績などを認識や理解をしてもらう引継ぎのオリエンテーション活動も含まれておりまし
た。
その理由は各省では議会で可決された法律を執行するのがその主な仕事となり、新大統領が議
会の同意を得て法律を変えない限り省庁ではその執行活動を止める事は禁じているからです。米
国の連邦政府では官庁によって引き継ぎの内容がそれぞれ異なります。例えば、財務省は政権が
変ったからといってお台所の仕分けを変化させたりすることは出来ませんから毎回が行う重要な活
動は副大臣クラスのキャリアアップ組に任せている部署もあるようです。しかし、他の省では部長ク
ラスまで新しい政権から任命されたスタッフが働いている可能性があります。
日本から来られた方が官僚と接触する際、相手がどんな種類の人なのか米国政府のALMANAC
などをご覧になるのが良いと思います。
それにしても今回の選挙に見られるように日本国民が自分の意志を投票で表現出来た事は素晴
らしいの一言につきます。日本がその様な国である事を心から喜ぶと共に今回の選挙に参加し投
票した1人1人を大変誇りに思います。
この政権交代でこの国が今までに無い利益を受けられるように、また一部の富める輩だけでなく
貧しい人達も含んだ全ての日本国民が豊かになる事が出来るよう願っています。
今まで色々な機会を通して出会った日本の官僚は有能な素晴らしい方々ばかりでした。彼らはき
っと今度の新しい政権のもとで、新しく選ばれた閣僚に協力し、国益を考え国民を豊かにして下さる
事と期待します。
Spencer Sakai
JCAWメンバー東京滞在中
www.fortelane.net
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ワシントンソーシャルライフ:
ワシントンバレエ団 日本人ダンサーを励ます会
Shigeko Bork mu project
シゲコ ボーク
皆様の夏はいかがでしたか?ボーク一家は今年も南仏のヴィルフランシュで、のんびりとしたバ
ケーションを過ごしてきました。ヴィルフランシュは私と主人が12年前に出会った思い出の土地で、
以来毎年3週間のバケーションを、この小さくて宝石箱のような村で過ごしています。
ニースとモナコの中間に位置するこの村の近郊には、中世の城壁に囲まれたエズや世界中の富
豪が集まる別荘地サン・ジャン・キャップフェラなどの個性溢れる村々が点在します。それらの村を
訪れ朝市で新鮮なフルーツやハーブを買ったり、地中海の柔らかな海で泳いだり、ちょっと足を伸
ばしてロゼワインの本場コート・ド・プロバンスでワインテイスティングを楽しんだりしているうちに、
あっという間に3週間が過ぎてしまいました。でも今年は、ケーキやバターたっぷりのバゲットの食
べ過ぎがたたり、おなかを壊して村のお医者様に通うというハプニングもありました。食欲の秋とは
いえ、食べ過ぎには注意したいと思います。
ということで、あっという間に夏も終わり、今年のソーシャルシーズン開幕です。様々なイベントか
ら楽しいレポートをお伝えしていきたいと思います。シーズン開幕第一弾は、ワシントンバレエ団に
在籍する11人の「日本人ダンサーを励ます会」からのレポートです。
今年で設立33周年を迎えるワシントンバレエ団には、カンパニーメンバーというバレエ団専属の
ダンサーが22人、そしてスタジオカンパニーメンバーという、バレエ団専属ダンサー予備軍のダン
サーが8人所属しています。この内カンパニーメンバーの大貫真希さんを筆頭に、4人のスタジオメ
ンバーを含む5人の日本人ダンサーがプロフェッショナルとしてワシントンDCでバレエの舞台を踏
んでいるのです。
加えてワシントンバレエ団付属のバレエ学校には、将来バレエのプロフェショナルを目指す学生
のためのクラス、リリースタイムが設けられており、そこには6人の日本人ダンサーが参加していま
す。リリースタイムに参加する学生は、時折バレエ団所属のダンサー達と一緒に舞台を踏むことも
あります。
こうして総勢11名の日本人ダンサーがワシントンDCで活躍している事実は意外と知られておら
ず、今回の「日本人ダンサーを励ます会」のきっかけとなったのです。
ワシントンバレエ団、S&Rファンデーション、そし
てバレエ団の理事を勤める主人と私が提唱者とな
り、 Washington Core の小林知代社長やJICCの
伊藤実佐子所長のご協力のもと、「日本人ダンサ
ーを励ます会」は9月14日にジョージタウンの我が
家で開かれました。当日は、藤崎大使ご夫妻、日
本企業・政府関係者の方々、ワシントンDC在住の
多くの日本人や親日家、バレエ団の理事、米国国
務省関係のお歴々を含め100名を超える方々に
参加して頂くことができ、とても華やかな会となりま
した。
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今回のイベントのハイライトは、バレエの会になく
てはならないダンス。大工仕事になるととても張り切
る主人が、3時間かけて庭に作ったバレエ用の舞台
は、バレエ団の舞台設置担当のプロにお墨付きを
頂いたほどの頑丈さ。音響担当者がスピーカーを設
置したり、衣装係がキラキラと輝くオーガンジーやレ
ースで出来た衣装を運んでくる頃には我が家はすっ
かり舞台裏と化し、娘と私はもう興奮状態。そんなな
か、4人のスタジオメンバーによるリハーサルが始ま
り、私たちは庭に釘付けとなりました。ストレッチに始
まり舞台監督のセプティーム・ウエバー氏との打ち合
せ、舞台での調整など、舞台裏のプロの仕事は見ていて本当に感銘することばかりでした。
私にもホストとしての舞台裏の仕事がありましたが、今回も有能なイベントのプロに恵まれ、「しげ
こさんはもういいです」という感じで、あっという間にお役御免となり、イベントを楽しむことに専念す
ることができたのです。
夕方6時にイベントが始ると共に玄関でゲストを迎
えたのは、トウシューズを履き黒のテュテュに身を包
んだ美しいリリースタイムの生徒達。受付にいた私
は彼女たちのあまりの可愛らしさに、しばしうっとりと
してしまいました。
ほとんどのゲストが到着され、ほんの少し外が暗く
なりかけた6時50分、予定通りにパフォーマンスが始
まりました。当日はスタジオカンパニーメンバーの、
萬ケンスケ君がジョージ・バランシンの軽快で現代的
なナンバー、そして木村綾乃さん、宮崎珠子さん、大
吉ユカさんがドンキ・ホーテからクラシックのソロを踊
り、その素晴らしさに拍手が鳴り止みませんでした。
照明で照らされた小さな舞台はボックスウッズで縁
取られ、美しい衣装を身にまとったエレガントなダン
サーが踊る我が家の庭は、一瞬時空を超えて御伽
噺の世界に入り込んでしまったかのようでした。
プリマドンナの大貫真希さんもゲストとして参加さ
れ、多くの方々に囲まれて和やかに談笑していまし
た。こうして華やかなイベントは、ダンスの余韻を残し
ながら幕を閉じたのです。すっかり日が落ち誰もいな
*写真提供テオ・コセナス
くなった庭では、バレエシューズを履いた娘が主人と
私を観客にクルクルと踊り、素晴らしかった会の余韻
を楽しみました。
お忙しいところ日本人ダンサーのために参加して下さった皆様、本当に有難うございました。バレ
エ団もダンサーも皆様に非常に感謝致しておりました。この場をお借りしてお礼を申し上げたいと思
います。
10月15日にケネディーセンターで幕を開ける「ドンキホーテ」にも日本人ダンサーが全員出演する
予定です。ご家族で芸術の秋など、いかがですか?
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映画「Inglourious Basterds」*
米国弁護士 長野さわか
「キル・ビル」「パルプ・フィクション」でお馴染みのクエンティン・タランティーノ監督の新作
「Inglourious Basterds」は8月21日に封切られ、同週末の興行成績3760万ドルで初登場第一位。
2時間半という上映時間があっとの間に過ぎてしまうほどに引き込まれる作品だ。
【ヒトラー暗殺をめぐる2つの陰謀】
舞台は第二次大戦中のナチス占領下のフランス。「ユダヤ人狩り」で名を馳せる冷血なナチス将
校ハンス・ランダ(オーストリア人俳優クリストフ・ワルツ)に家族を虐殺されたショシャーナ(フランス
人女優メラニー・ロラン)は奇跡的に一命を取りとめ、ナチスへの復讐を誓う。並行して、アルド・レ
イン隊長(ブラッド・ピット)率いるユダヤ系アメリカ人からなるナチス虐殺部隊が勢力を増し、ナチス
ドイツ軍も恐れる存在になりつつあった。あのブラッド・ピットが、強烈な南部(テネシー州)訛りで残
酷な命令を飄々と下す特異なリーダー役を見事に造形しているのは見所。だが今回の主役は、英
語、仏語、独語、伊語を流暢に使いこなし、知的、温和な仮面を被った狡猾で冷血な残虐者ナチス
将校を演じたクリストフ・ワルツ(今年の第62回カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞)であろう。それ
ぞれのヒトラー暗殺の策略を軸に物語は進行する。
チャーリー・チャップリンの「独裁者」(1940年)、マイケル・カーティスの「カサブランカ」(1942年)
など、子供の頃から多くの反ナチス映画を観てきた。だが、この作品は、残忍な暴力シーン、ブラッ
ク・ユーモア、ウィットに富んだ台詞、巧みなカメラワークで組み合わされたタランティーノ監督ならで
はのバイオレンス大団円。マカロニ・ウエスタン**、B級映画、ヒッチコックなど、随所にそのオマージ
ュやパロディが盛り込まれており、映画好きにはたまらない超娯楽大作。どこかにもっとパロディが
隠れているのでないか、ともう一度観たくなる作品だ。
【ナチスの犯罪】
第二次大戦中、ナチスドイツはユダヤ人だけでなく、同性愛者、身体障害者、精神障害者、ジプシ
ー、知識人、共産主義者を虐殺。ドイツ国内、ポーランドその他占領地域で、殺戮されたユダヤ人と
合わせて、犠牲者の数は推定1000万人以上とも言われている。
ナチス占領下のフランス(ヴィシー政権)で、ナチスが仏警察と共同体制のもとに行ったのは、ユ
ダヤ人の強制収容所への移送、絶滅計画に止まらなかった。ヴィシー政権下でユダヤ人迫害法に
より権利を奪われ、国外へ亡命、または強制収容所へ送られたユダヤ人の家から10万点もの絵
画、骨董品、工芸品等の略奪・押収が組織的に行われていたのである。略奪された美術品はルー
ブル美術館やジェ・ドゥ・ポーム美術館に集められ、貨物列車でドイツへ送られた。略奪品の中に
は、フラゴナール、アングル、シャルダン、セザンヌ、モネ、スーラ、ドガ、クールベ、ドラクロア、コロ
ー等の絵画が含まれていた。
1945年、敗戦したドイツ人は占領地域で購入または略奪した全美術品の返却を求められた。連
合軍の手でそのうちの6万点がフランスに返却され、1949年までに元所有者家族に戻ったのは4万
5千点。残る1万5千点のうち、1万3千点を国有財産管理局が売却している。あとの2千点は持ち主
* ** Bastardsではなく、意図的にBasterdsとなっているところがミソ。
英語では「Spaghetti Western」と呼ぶが、日本ではなぜかマカロニ?!
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がみつからないまま、ルーブル美術館やジェ・ドゥ・ポーム美術館などに回収品美術館として保存さ
れているという。
【戦争の傷跡】
主にニューヨーク市とワシントンDCで生活してきたが、今までに戦争の傷跡を目の当たりにする
ことは度々あった。買い物のレジ待ちをしていて、さりげなく目についた老人の腕の入れ墨。その数
字の羅列は、ナチス収容所時代の収容者番号であった。その方は、まさに強制収容所からの生還
者だったのである。また、友人や職場の同僚にユダヤ系アメリカ人が多いこともあり、彼らの祖父母
(もしくは父母)らがいかにしてヨーロッパでの迫害を逃れ、アメリカ大陸にたどり着いたか、十人十
色の家族史を伺うことも屡である。全財産を没収された幼少時の経験から、銀行口座を持たず、現
金をベッドのマットレスに隠し持っているユダヤ人のお年寄りの話なども耳にする。いまだに銀行を
信用できないからだ。そういえば、一年余前、リーマン・ショックで金融危機が深刻化していたため、
銀行から現金を引きおろしてマットレスに入れておこう、などと同僚と冗談を言っていたが、それと
は全く別の次元の話だ。
私事で恐縮であるが、ロースクール時代、私は無料で法律相談を提供するリーガル・クリニックに
所属していた。専門分野はエンターテインメント。クライアントはミュージシャンや俳優の卵たち。自
分で作詞作曲した作品の著作権問題や、レコード会社との契約交渉、また、外見を魅力的にする
つもりで行った豊胸手術をめぐってのトラブルなど、様々な案件を色々なレベルでお手伝いさせて
いただいた。中でも印象に残っているのが、ナチスによる略奪美術品問題。元所有者やその遺族
の方々のために、美術品の返還をめぐって微力ながらお手伝いさせていただいた。
【ナチスの略奪美術品】
ナチスの略奪美術品は、ここ数年ヨーロッパ各地で発見されている。ナチスがユダヤ人やその他
の犠牲者から押収した美術品は、当時、競売にかけられるか、もしくは秘密の場所に隠された。70
年以上が経過した今、所有者の世代もかわり、遺産相続などで、絵画や美術品が美術館や博物館
へ寄贈されるようになったことでこうした略奪美術品が一般の目に触れるようになったからである。
戦後、ヨーロッパ各国で法律が制定され、ナチスの略奪品の多くは元の所有者やその遺族に返
還されてきたが、法律上必ずしも財産の返還や損害賠償が成立するわけではない。今月(9月)、ス
イスのヌーシャテル州ラ・ショード・フォン(La Chaux-de Fonds)美術館に収められていたコンスタブ
ルの風景画が、元所有者の遺族に返還されないとの判決が下ったのである。
ウイリアム・ターナーと並ぶ19世紀イギリスの代表的風景画家、ジョン・コンスタブルの絵画「スタ
ウアーの谷(La vallée de la Stour)」は、1986年に他界したマデレーヌ・ジュノーさんの遺言に従っ
て、ラ・ショード・フォン市の美術館に遺贈された。同絵画は現在の市場価格で推定100万スイスフ
ラン(日本円に換算して約88,600,000円)。元の所有者は仏在住のユダヤ系イギリス人アナ・ジャ
フィさん(享年90歳)。ジャフィさんが1942年に死亡した当時、フランスでも指折りの豪華な絵画コレ
クション(ゴヤ、レンブラント、ターナーを含む)などの遺品が、ナチ占領下の仏警察局にすべて没収
された。仏ヴィシー政権下の法律では、ユダヤ人所有の財産は全て没収され、オークションにかけ
られること、となっていたからだ。「スタウアーの谷」は、何度も人手に渡ったあげく、1946年、ジュネ
ーブの画廊でジュノー家の手に渡った。ジャフィさんの遺族が2006年に訴えをおこして初めて、同
絵画が略奪品ということが判明。ところが、スイス法によると、(1)問題の絵画は他のコレクションと
一緒にラ・ショード・フォン美術館に所蔵されること、という条件付遺贈であったため、ラ・ショード・フ
ォン市が他のコレクションから同絵画を引き離して、返還する権限はないこと、(2)略奪をしたのは
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当時の仏政府であることから、スイスのラ・ショード・フォン市に返還・賠償の義務はない、と判断さ
れた。同様の訴訟は現在、アメリカを含め世界中で進行しており、今後の動向を見守りたい。
【タランティーノの歴史認識】
さて、本題に戻る。タランティーノの歴史認識?もちろん、そんなものはない!同作品は第二次世
界大戦を背景にした反ナチス映画だが、史実とは異なる「血みどろ」の娯楽作品である。ナチスは
あくまで極悪非道の存在であり、ユダヤ人やレジスタンスの側は善玉として、白黒はっきり分かりや
すい。ベルリンで行われた試写会でも絶賛の声があがっていた、と報道されていた。このアッケラカ
ンとしたわだかまりのなさは、アジアにおける「歴史認識」がもたらす緊張感とは異質なもののよう
に思えてならない。ドイツに反省があり、統一後の独仏関係を良好にするためにドイツがEUに組み
込まれたという歴史があるにせよ、「今の世代の問題」に歴史認識の話を持ち込んで、過去の話を
現在の対立にすり替えることは余りしていないように感じられるのは私だけであろうか。わだかまり
のなさ、とはそういう所から来ているのではなかろうか。
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ワシントン月報 (第60回)
「北朝鮮と鳩山政権」
米国弁護士 服部健一
日本国内では、自民党の歴史的敗退による民主党の鳩山政権の誕生という大激変があったた
め、一時は、天と地を引き裂かんばかりの大騒ぎとなった北朝鮮のミサイル発射や、2人の中国
系、韓国系アメリカ人ジャーナリストの逮捕と、クリントン元大統領による救出という北朝鮮を巡る騒
乱は、まるで大劇場の回転床が動いたように関係のな
い出来事として忘れ去られようとしている。
しかし、アメリカに住み、日本を外国の1つの国として
客観的に見ざるを得ない私にとっては、これらの日韓
を巡る事件は密接に関係する面があるという感じがす
る。
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その理由はこうだ。
北朝鮮のミサイル発射に際し、アメリカ、日本、そして世界は北朝鮮にミサイルを作り、試射する
資格はないと非難し、経済、政治、外交のあらゆる側面から制裁を課してきた。
しかし、北朝鮮は、それらを全く無視し、あざ笑うように断固決行し、しかもミサイルは1回どころか
あっという間に5、6回も発射し、その上で今は核兵器の製造をも再開しつつある。
恐らく北朝鮮の内情は、経済的にも精神的にも崩壊寸前であろうが、そうならずにかろうじて耐え
ているのは、欧米を中心とする諸外国が、自らは有しながら、北朝鮮にミサイル放棄を強要する資
格はないはずだ、という確固たる信念なのだろう。
何故、彼らはそう考えるのか。
それは、欧米の大国は、今日の繁栄を築くまでに世界の資源を力づくで漁り、戦争で他国民を殺
戮し、ミサイル、原爆を作り、現状の優位性を保つために今でも当然保有しているが、それを差し置
いて、他国には戦争をするな、保有するなという一方的論理は、あまりに身勝手という素朴な疑問
からだろう。
アメリカは、所詮、欧州人がアメリカインディアンを殺害し、土地を奪い、黒人を奴隷にして築き上
げた国である、ともいえる。
勿論、欧米諸国が今日の世界の繁栄を築いてきたことも厳然たる真実ではあるが、裏の歴史を
否定することはできない。
ところが、中東や北朝鮮にはできることとできないことを指示し、日本とドイツに対しては60年前の
第二次大戦での責任をいつまでたっても課し続け、その責任は未来永劫消えるものではない、とみ
なしているようだ。勿論、それは全くの事実であり、我々日本人やドイツ人は当然反省しなければな
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らない点ではあるが、歴史を遡れば欧米、中国もそういう国であったことは疑いもない。
彼らも第二次大戦の前までの何十世紀の間には日本やドイツの何十倍、何百倍の殺戮を繰り返
してきて、今日の地位を築いてきている。そして、その地位を守るために、ミサイル、原爆を含むあ
らゆる兵器を保有している。
ところが、北朝鮮や中東の国々に対しては、ミサイルも原爆も一切保有してはならないと要求す
る。 その論理は私には不明だが、どうやら、これらの国には民主主義がない独裁国家で、いわば
テロリズムの体制であり、いつ外国を侵略するかわからない、というのが大きな理由らしい。
まあ、この論理に根拠が全くないと否定するつもりはないが、あまりに身勝手といえないか。だか
ら北朝鮮は断固主張し、実行するようだ。
そして、アメリカは2人のジャーナリストを救うために北朝鮮の要求を取り入れ、クリントン元大統
領を派遣しなければならなかった。この救出劇で誰が何を得たか。
まずは、クリントン元大統領自身である。彼は現役時代の女性インターンスキャンダルや、今日の
金融崩壊の元凶を作った政策(低所得者にも住宅ローンを可能にしたこと)を実行したとして、つい
最近まで人気のない元大統領であった (ヒラリー国務長官が圧倒的に有利であった大統領選で敗
れたのも彼の影があったためともいわれる)。しかし、この救出劇の成功で、「俺はあの元大統領が
大嫌いだったが、今度だけは見直したといわざるを得ない」、という評価が多くの者から出ている。
大統領をやめてから評価が上がったのは、カーター大統領とクリントン大統領位だろう。
そして、見逃してはならないのは北朝鮮の頑張りである。確かに独裁政権であり、いつ戦争にな
るのかわからない恐怖はあるものの、一独立国として主張すべきことはアメリカに対してだけでは
なく、世界を相手にしても行うという姿勢は確かに評価されてもよい。特に同じように圧迫を受けて
いる中東や途上国からは喝采を浴びるのではないか。
だからこそ二人のジャーナリストの救済に対しクリントン元大統領を要求しても世界は非難も何も
しなかった。否、それ以上に、アメリカに対してさえ正々堂々と主張し、要求すれば制裁措置さえ我
慢すれば成就し得るということを世界に示した。
ミサイルは今後も実験し続けるだろうが、それに対し世界は非難することはできても、正論とはい
い難いため、影響力は極端に弱くなるだろう。
小国でさえも戦える、ということを念頭においたかどうかは必ずしも明らかでないが、鳩山内閣
は、今後のアメリカ離れをしてアジアを重視していく、という政策を発表した。発表した翌日アメリカ
の反応は、日本は生意気になった、そんなことで日本はまともに国を運営できるはずがない、という
非難轟々の意見が出た。しかし、鳩山政権が臆せず姿勢を変えずにいると、次にアメリカは大物政
治家を日本に派遣して日本と話し合う、説得するという姿勢に変わってきた。
この微妙な変化ほど日本にとって重要なものはない。これまでの日本はアメリカが怒るとすぐに
縮み上がって、アメリカ寄りの外交に修正してきた。それで得られたものはアメリカからのサポート
であるが、逆に、世界からアメリカの属国と蔑視されてきた。
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その1つの例が、日本が国連の常任理事国になることに対して中国、韓国等が何が何でも反対し
たことである。勿論、彼らの反対は、この3国の歴史的背景が最も大きな要因なのであろうが、アメ
リカ一辺倒であれば、諸外国は日本を常任理事国にすることはアメリカの票が増加するだけ、とし
か評価しないことも胸に留めておかなければならない。これを考えてか、ドイツは最初からアメリカ
一辺倒から離れたため、常任理事国へのアメリカのサポートさえ失ったが、時間がたてば必ず他国
からのサポートがくるはずである、という読みがあるのだろう。
鳩山政権のアメリカ離れを察してか、CO2 25%削減の発表は、世界中から大喝采を浴びることに
なった。アメリカ離れをすることは、アメリカと喧嘩することではなく、独立国として当たり前の主張を
するだけである。
北朝鮮のこの数年間の動きは、世界の国々からは、何を馬鹿なことをしている、という風潮から、
中々やるじゃないかというように現実に変わってきているのではないか。勿論、北朝鮮の国情は、
明日、経済破綻をするか、クーデターが起こるか、戦争を仕掛けてくるかわからない一触即発の状
態ではあるが、スーパーパワーの国々の力の外交に屈しなければ、制裁措置はあるものの、逆に
諸外国から評価されるかもしれないということを示したことも忘れてはならない。
世界第2位の経済力、技術力を有する日本にそれができないはずはない。世界の製品の多くは、
日本の技術で支えられているのは疑いもない事実である。北朝鮮のミサイルの部品の90%は日本
の部品、それも民生部品から成るといわれる(北朝鮮の亡命者の2003年5月のアメリカ議会での証
言)。
アメリカの象徴であるオートバイのハーレーダビッドソンは、性能があまりに悪すぎたため、何年か
前に完全に潰れかけたが、日本の部品を購入することによってかろうじて息を吹き返している(それ
でも、ハーレーダビッドソンに乗るヘルズエンジェルス(地獄の天使)という暴走族の頭領は、10年前
のワシントンポストの引退インタビューで、「オレが本当に乗りたいのは、ホンダのオートバイだ」、と
正直に言っていた)。アメリは自動車を含むほぼ全産業のみならず、防衛産業でさえも、日本の電
子技術が必需品になっており、NASAもその依存率は非常に高い。
こういう現実を踏まえて、鳩山政権がアメリカ離れを打ち上げ、日本のプライドを取り戻す政治、
外交を行おうとしていると考えられるが、今後も屈せずにそういう方向に日本が進むことを期待した
い。
そして、アメリカ以外の国々から、評価されてこそ日本は常任理事国になるチャンスの芽が出てこ
よう。
(つづく)
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今月の書評
池原麻里子
ポトマック・アソシエーツ
20年前の89年6月4日、天安門広場に向かう人民解放軍
の装甲車に毅然と立ち向かった白シャツ姿の男性のイメー
ジは、全世界にショックを与えた事件の象徴として、今でも
我々の脳裏に焼き付いている。例年、中国政府は天安門
事件記念日を警戒するが、今年も広場には一般市民を装
った男女が集まり、厳重な警備を実施。海外テレビ局の記
者は傘でカメラを遮る私服警官に報道を邪魔された。20年
経ても、天安門事件に関する海外報道は、中国では検閲さ
れ、アクセスできない状態だった。一方、今日の北京大学
学生の大半は、天安門型の民主化運動より、自身の経済
的成功を追求することに熱心なようだ。
20周年直前、米国では天安門事件で失脚した故趙紫陽
元総書記の回顧録が出版され、話題を呼んだ。趙紫陽は
デモ運動の武力鎮圧に反対して失脚した後、16年も自宅
に軟禁されたまま、4年前に死去した。中国内での死亡報
道は、国営新華社の2行の記事だけ。政府は天安門事件
に関する論議の再燃を恐れたのだ。しかし、同氏は実は軟
禁中、2000年頃からテープ30本余に、天安門事件、経済
『国家の囚人』
改革、共産党内部の政治抗争、および中国の変革に対す
趙紫陽(サイモン&シュスター)
る考えを残していた。録音に使われた孫向けの音楽や京
劇のテープは、友人や知人が秘密裏に国外に持ち出し、回
想録としてまとめられ、英訳された。趙紫陽元側近の鮑彤
が出版の手助けをしている。同氏いわく、まず、英語版を出版し、国際社会から認知されることで、
中国政府が抹殺できなくすることが狙いだったという。
回想録では天安門事件の悲劇と自身が失脚に至る経緯が詳細に記されている。趙紫陽によれ
ば、武力衝突は回避できた。デモ参加者たちは共産党支配に反対なのではなく、合法的な訴えを
していたと。が、党幹部の李鵬首相(当時)などの保守派が対決姿勢を打ち出したことから、学生た
ちの態度も硬化し、趙紫陽を支持してきた最高指導者の鄧小平も強硬路線をとるようになった。失
脚後、同氏は失脚に至る経緯や軟禁が非合法であることを訴え続けるが、党指導部からは無視さ
れ、超法規的措置がまかり通る体制はまるで文化大革命時代の再来だと嘆く。彼は最後まで党規
律、手続きを重視していた。
趙紫陽の前任者で改革推進派の胡耀邦が、当初は鄧小平の支持を得ていながら、不注意な発
言、行動で辞任に追い込まれる背景も説明されている。1983年11月訪日時の中曽根康弘首相(当
時)と首脳会談で、胡は日中友好の青年交流事業として日本人学生3000人を招待した。党内での
事前承認を得ていないこの行動に、鄧小平は狼狽したという。が、総書記の招待を撤回するわけに
はいかない。また胡が中曽根首相と私信を交換し、自宅で晩餐会を開いたことも、「中国は個人外
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交などしない。中曽根にちゃんと対応する能力がない者がいるようだ。」と鄧小平に批判された。
経済改革の推進者は鄧小平とされているが、人民公社解体や輸出ブームを触発した経済特区
設置など、その多くの構想は趙紫陽のものだったという。鄧小平は共産党独裁を信じており、彼が
提唱した「改革」とは民主化ではなく、スムーズな一党政治の継続を意味していた。
趙紫陽自身、総書記時代は多党制民主主義を支持していなかった。が、経済改革がうまく行くに
は、説明責任や透明性が高まり、独立した司法制度によって、腐敗が撲滅される必要があると述
べている。「政党がその権力を監視しなければ、役人は簡単に腐敗する」と。そして、西側の議会制
民主主義が中国の進歩に必要であると考えるに至る。
当時から問題だった汚職やコネ社会が、20年後にはさらに悪化してしまった。天安門の元学生リ
ーダー王丹は、「趙紫陽の回想録によって自分たちの経済・人権改革要求がリーズナブルで、中国
の近代化促進に役立ったという確信が証明された」と指摘するが、いずれにせよ、共産党独裁は今
後も続きそうだ。
(NEW LEADER 2009年6月号より転載)
9月号 編集後記
日本でも新政権が発足し、日米関係も新しい時代に突入しつつありますが、産業
セクターでは、省エネ、原子力、鉄道、航空機など、日本が強みを発揮する時代が
すでにやってきているように見受けられます。米国のみならず、開発途上国をも含
んで全世界的に日本が貢献できる「日本の技術ルネッサンス」時代が到来してい
ます。国際ビジネスの情報管制塔として、今後ますます戦略的重要性を帯びると
考えられるワシントンにおいて、JCAWも日本の産業セクターを応援するべく、引き
続き尽力していきたいと考えております。
小林 知代
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