H y o g o N u r s i n g A s s o c i a t i o n 21世紀につなぐいのち 性教育に関する指導指針 兵 庫県看護協会 助産師職能委員会 も く じ Ⅰ 性 教 育 指 針 の 冊 子 化について P1∼2 Ⅱ 平 成 1 3 年 度 か ら の 性教育講座実施状況 P3∼5 Ⅲ 小 学 校 性 教 育 指 導 内容 P6 Ⅳ 小 学 校 保 健( 性 )教育の進め方 P7∼8 Ⅴ 小 学 校 保 健( 性 )教育指導計画表 P9∼10 ① 1年生:男の子・女 の子(男女の人間関係) P13∼14 ② 1年生:さそいにの らない(社会を知る) P15∼16 ③ 4年生:わたしたち の成長(自分を知る) P17∼18 ④ 5年生:思春期のか らだ(自分を知る) P19∼23 ⑤ 6年生:エイズ予防 (病気と予防について) P24∼26 P27 Ⅵ 中 学 校 の 性 教 育 指 導内容 ① 1年生:二次性徴 P28∼29 ② 2年生:性自認・男 女交際 P30∼31 ③ 3年生:性感染症・ 性役割 P32∼33 Ⅶ 思 春 期 保 健 指 導 に 関する教材 P34 ∼ 36 Ⅷ 参考図書 P37 ∼ 38 Ⅸ 学校との調整内容 P39 Ⅹ 学 校 に お け る 看 護 職の性教育の展開 P40 ∼ 47 Ⅰ 思春期の性教育の冊子化 近年、携帯電話の普及や人間関係の希薄化に伴い、凶悪犯罪の低年齢化と増加、自殺など、 人の命があまりにも簡単に失われていく事件が頻発している。核家族化が進み、人の生死にふ れる機会も少なく、いのちの大切さを考える機会も少なくなっている。 助産師職能委員会は、神戸で起きた A 君事件を機会に、3年計画で思春期の健康に関する研 修会を企画した。メインテーマは『21 世紀につなぐいのち∼思春期の健康と性∼』として、子 育て支援の延長上に思春期の性教育を位置づけた。生命のはじまりに立ち会う助産師が、性教 育を実施することによって、子ども達が「自分の存在」に価値を見出し、「いのちを大切にす る」ことや「生きる」ことについて考えることができるものと考え、3年間の研修の取り組み を基に思春期の性教育の指針の作成に取り組んだ。 1.思春期の性教育指針の目的 この指針は、助産師が思春期の性教育の活動を開始し、地域のニーズ、行政や学校などか らの依頼に対応できるように知識とスキルを紹介している。また、助産師の職域拡大と思春 期教育にたずさわる職種とのネットワーク作りにつなげ、活用しながら評価し改訂していく。 2.助産師職能委員会と県下の会員と学校保健とのネットワークイメージ図 21世紀につなぐいのち 学校(生徒・教師・親) 相談・依頼 情報提供 助産師職能委員会 相談・依頼 (研修会・指針作成などの支援) 情報提供 連携 県下の助産師職能の会員 (研修会参加・指針の活用・性教育講座の実施) 1 3.助産師職能委員会と県下の会員と学校保健とのネットワーク 兵庫県助産師職能委員会は、県下の助産師会員を支援する立場にある。具体的には、助産 師職能委員会は、研修を企画運営することが求められ、会員の知識と技術の向上のために研 修を継続して行う必要がある。会員は自己研鑽するとともに、この指針を基本にして活動さ れることを期待する。今後は、県下の会員マップを作成して、行政や学校からの依頼にスム ーズに対応できるようにしていく予定である。 4. 効果的な活動計画 1) 学校との調整 • 学校における看護職の性教育の展開について • 環境調整 • 教育(学習)の方法 2) 小学校の性教育指導内容 3) 中学校の性教育指導内容 4) 教材 • ぬくもりたいじちゃん&新生児モデルともちゃん(会員への貸し出し可能) • 受胎調節教材(ファミリープランニングセット) • 思春期保健教育に関する教材 • 参考図書 2 Ⅱ 性教育の出張講座3年間の取り組み 思春期保健に関する事業は、平成 13 年度から『思春期の性教育』をテーマに、 「問題認識」 「取り組みの方向性」 「具体的な取り組み」の3段階で3年間の計画で取り組んだ。 1回目の研修会では、性教育を広く実践されている助産師を講師に迎え、知識の普及と問題 認識を目指した。 2回目の研修会では、身近で思春期の性教育を実践している助産師から、活動のきっかけ・ 効果・問題点・今後の課題などの報告を受け、個々が現状の中でいかに知識を実践に移してい けるかを考え、方向性を見出すことを目指した。 3回目の研修会では、2回目の研修を受けて性教育の実践報告会を実施し、県下の助産師職 能会員が性教育指針を基に性教育の実践ができること、思春期における性教育指針を完成させ ることを目的とした。 性教育指導者養成のための研修 研 修 テ ー マ 参加者数 平成 13 年度 21 世紀につなぐいのち∼思春期の性を考える∼ 53 名 平成 14 年度 思春期教育の実践活動報告 58 名 平成 15 年度 思春期性教育講座実践報告会 49 名 支部別 性教育実践者 支部名 1 東阪神 2 西阪神 3 講 師 名 永松 成子 金高 敏子 神戸東部 藤森 真理 矢田部扶久恵 4 神戸中部 小河原みゆき 森本 フジ代 5 神戸西部 杉友 ユリ 中山 菫 6 東播 安井 智恵子 梅田 美恵 7 北播 中井 英子 塚越 絵里子 8 西播 白井 敦子 9 摂丹 10 但馬 中永 映子 森垣 令子 杉本 文子 熊谷 和子 高橋 幸子 岸本 喜代子 絹巻 敏子 青山 恭子 西田 みゆき 木村 弘子 橋本 みどり 性教育出張講座 実施学校 年 度 学 校 名 平成 15 年度 神戸市立有野中学校 1 年生 平成 16 年度 神戸市立有野中学校 2・3 年生 神戸市立若葉学園全生徒 神戸市立玉津中学校 1・2 年生 神戸市立有野中学校 3 年生 神戸市立玉津中学校 1・2・3 年生 神戸市立鈴蘭台中学校 2 年生 神戸市立淡河中学校 2 年生 神戸市立若葉学園全生徒 神戸市立玉津中学校 2 年生 平成 17 年度 3 平成 17 年度 性教育出張講座 実施状況 神戸市立 神戸市立 神戸市立 神戸市立 神戸市立 有野中学校 鈴蘭台中学校 淡河中学校 玉津中学校 若葉学園 平成 17 年 7 月 12 日 平成 17 年 12 月 2 日 平成 17 年 12 月 5 日 平成 17 年 7 月 15 日 平成 18 年 2 月 21 日 内容:性感染症 内容:男女交際につ 内容:男に生まれて 内容: 内容:自尊感情を持 訪問回数:1 回 いて 良かった、女に生ま 1・2 年生:人の誕 つ事やいのちの大 訪問回数:2 回 れて良かったと思 生・人間の性行動・ 切さを強調する。発 う時についてディ 性感染症について 達段階にあわせた、 事前打ち スカッションする 3 年生:今妊娠して 男女別の性教育の 合わせ 内容と方法 しまったらどうす 必要性と内容につ 訪問回数:1 回 るか、相手が妊娠し いて てしまったらどう 訪問回数:1 回 するかについてデ ィスカッション 訪問回数:1 回 中学 1 年 5 クラス 190 名 担当者: 小河原・安井・ 中学 2 年 1 クラス 34 名 担当者: 小河原・永松 6 クラス 255 人 小学 4∼6 年 6 名 担当:中山 担当者:中井 平成 17 年 7 月 15 日 6 クラス 228 名 担当者:安井 中井・杉友・ 平成 18 年 3 月 22 日 森本 6 クラス 237 名 担当者:安井 4 クラス 136 名 担当者:小河原 中学 3 年 中学 1∼3 年 女子 12 名 担当者:杉友 中学 1∼3 年 男子 23 名 担当者:森本 6 クラス 213 名 担当者: 安井・中永・ 杉友・井上・ 葉田・藤井 4 平成 16 年度 性教育講座 実施状況 神戸市立有野中学校 神戸市立若葉学園 内容: 内容: 内容: 2 年生:性感染症 児童・生徒の社会背景や個人差が 1 年生:二次性徴・男女のこころ 激しいため、4 つのグループに分 とからだの違い エイズも含めた人権教育 3 年生:二次性徴・いのちの大切 事前打ち 合わせ 神戸市立玉津中学校 さ・性感染症 け実施する事とした。 2 年生:二次性徴・男女のこころ 訪問回数:1 回 とからだの違い 訪問回数:1 回 もし妊娠してしまったら どうするか、相手が妊娠 してしまったらどうする かについてディスカッシ ョン 訪問回数:1 回 小学 5∼6 年生 5 名 中学 1 年 6 クラス 237 名 担当者:中井 中学1∼3 年生女子 10 名 4 クラス 127 名 中学 2 年 担当者:中井 担当者:杉友 担当者:安井・中井 担当者:中山・安井・永松・ 中学 1∼2 年生男子 9 名 森本・井上・中井 担当者:安井 5 クラス 178 名 中学 3 年 6 クラス 235 名 中学 3 年生∼高校生・社会人 担当者:小河原 7名 担当者:小河原 平成 16 年度 性教育講座 実施状況 神戸市立有野中学校 事前打ち合わせ 中学 1 年 内容:二次性徴・男女のこころとからだの変化について 訪問回数:3 回 4 クラス 136 名 担当者:小河原・安井・中井・森本 5 Ⅲ 小学校性教育指導内容 学 年 養護教諭による学習 1.生命の誕生 1)臍帯の役割 2)妊娠中の母親の心理 3)命を大切にする心を育てる 2.自分の心とからだ 1)男女の違い 1・2 年生 1)生命の誕生をとおして家族の喜び や願いを伝える。 2)自他の生命や人格を大切にする心 を育てる。 3)自分のからだを正しく知ることは 自分を大切にすることである。自 3)からだの清潔保持 分を大切にできてこそ他の人も 4)自他の命を大切にする 大切にできることを知らせる。 4.社会と自分 2.自他を尊敬する気持ちを育てる。 1)男らしさ、女らしさについて考え、 1)誘いにのらない 互いの人権を認め合うことの大 2)自分の命を自分で守る 切さについて考えさせる。 1.生命の始まりと赤ちゃんの誕生 2.男女のからだのつくりと違い 3.男女のからだの変化 2)次世代に生命を残す役割と関係が あることを知らせる。 3.生活習慣によって起こる病気、予防 4.からだの成長に伴う心の変化 できる病気があり、その予防ができ 1.生命の誕生 る態度を育てる。 1)生命の誕生の仕組み、生命のすば らしさ 2)生命や体を守り、自他を尊敬する 気持ち 2.大人への準備 5・6 年生 1.生命の誕生 2)性器の名称と働き 3.生活と健康 3・4 年生 看護職の指導内容 1)二次性徴(精通と初経) 個人差について知る 4.責任感、人間らしい知的な愛情につ いて理解させる。 1)性行為感染症に関しては、異性に 対する人格を尊重する気持ちを 育てる。 2)性行為感染症の現実に目を向け、 正しい理解をさせる。 2)異性に対する思いやり 3)心と体の関係、不安や悩みに対す る対処法 3.生活習慣と病気、けが及び事故防止 4.性行為感染症、薬物乱用防止、喫煙・ 飲酒の害 6 Ⅳ 小学校保健(性)教育の進め方 近年、携帯電話の普及・人間関係の希薄化にともない、凶悪犯罪の低年齢化と増加、自殺な ど、人の命があまりにも簡単に失われていく事件が頻発している。また、世間にはさまざまな 情報があふれており、どんな情報でも簡単に取り込むことのできる状態である。核家族化が進 み、人の生死にふれる機会も少なく、命の大切さを取り上げられる機会も少なくなったように 思われる。このような現状をふまえ、学習指導要領では3∼6年生の保健の教科書をはじめ、 生活科・理科・家庭科・道徳・国語科の中で、誕生・家族・人間の体・生命・心の成長などの 内容で全学年にわたり取り上げている。保健教育については体育科領域の改訂に伴い、また今 ある社会の現状と学校の実態をふまえて行っていくことが必要だと考える。 体育科学習指導要領より(保健について) 「生涯を通じて自らの健康を大切に管理し、改善していく資質や能力の基礎を培うた め、健康の大切さを認識し、健康なライフスタイルを確立する観点に立って、内容の 改善を図る。 」とし、次の点が上げられている。 ① 近年の生育環境、生活行動、疾病構造等の変化にかかわって深刻化している生活 習慣の乱れ、薬物乱用、性に関する問題等についても対応できるようにする。 ② 新たに、自然災害等における安全の確保についても取り上げるとともに、健康・ 安全と運動の関わりについて、体験的な活動を通して実践的な理解を深めるよう にする。 ③ 児童の発育・発達の早期化や生活習慣の乱れなどに対応するため、保健に関する 内容を中学年から指導するようにする。 中学年は、健康な生活及び体の発育・発達、高学年はけがの防止と予防及び心の健 康に関する内容で構成し、食生活をはじめとする望ましい生活習慣の形成、生活習慣 病の予防及び薬物乱用防止に関する内容について取り上げる。 7 1.各学年の進め方 • いつ ・・・・・・ 3学期 • どのように ・・・ 男女一緒に・各学年で • どこで ・・・・・ 各学年の教科・学級活動で • どの程度 ・・・・ 低学年 2∼3時間程度 中学年 8単位時間程度 高学年 16単位時間程度 • 何を ・・・・・・ 別紙参照 2.性用語の整理 • どの学年でどの用語まで教えるか 1年生から正しい用語で教えていく 1年 2年 3年 4年 5年 6年 男 性 に 関 す る も の ペニス 赤ちゃん虫 精子 睾丸 精巣 変声 射精 精通 夢精 精管(精子の通り道) 精液 ワギナ ワギナ・産道 女 性 に 関 す る も の 赤ちゃんの通り道 ちつ 赤ちゃんの部屋 子宮 赤ちゃんの卵 卵子 卵巣 卵管 胎盤 へその緒 羊水 月経(生理) 初経 8 Ⅴ 小学校保健(性)教育指導計画 1.小学校保健(性)教育指導計画表 1・2年 ☆おへそのやくめ 3・4年 ☆命の始まりと赤ちゃんの ☆生命の誕生 へその緒は、母体内で胎 誕生 児と母親を結ぶ大切な働き 5・6年 生命誕生の仕組みを理解 性器の働き「精子と卵子 し、生命のすばらしさに気 生 命 の 誕 生 をしていることを知らせ、 が一緒になって(性交・受 づくとともに、生命や体を 赤ちゃんがお母さんのおな 精)赤ちゃんが生まれる」 守る大切さと自他を尊敬す かの中で大事に育てられ、 という命の始まりを知らせ る気持ちを育てる。また、 生まれてくることに気づか るとともに生命の誕生に関 男女で体のつくりに違いが せ、命を大切にする心を育 することがらについての理 あることをとらえさせ、次 てる。 解も深め、その事実を通し の世代に生命を残すための て、家族の喜びや理解、心 役割と関係があることを知 配などにもふれ、自他の生 らせる。 命や人格を大切にしようと する心を育てる。 自 分 の 心 と か ら だ ☆からだたんけん からだの部分の名称と大 ☆男女の身体の変化 男女の性器は、生命の誕 ☆大人への準備 二次性徴の発現とともに 切な働きをもっていること 生と深いつながりがあり、 異性に関心を持つようにな を知らせ、男女の体のちが 大切にし、清潔に保たなけ ることを理解させ、異性に いについても気づかせる。 ればならないことを理解さ 対する思いやりのある行動 また体の汚れやすいところ せる。また、成長とともに や態度を育てる。また、心 を知り、清潔に保つことの 男女の体が変化することも と体の密接な関係を知り、 できる態度や自他の命を大 知らせ、自他を大切にする 生じてくる不安や悩みに対 切にする態度を育てる。 態度を育てる。二次性徴に して、適切な対処の仕方が ついても理解させ、自分の あることを知る。 成長に見通しを持たせてお きたい。 9 ☆健康的な生活をしよう ☆生活習慣と病気・けが 食事・運動・休養及び睡 毎日の生活習慣によって 生 活 と 健 康 眠の調和のとれた生活が毎 引き起こされる病気・予防 日を健康に過ごすために必 できる病気があることを知 要であることや、明るさや り、その予防のための適切 換気などの生活環境を整え な対策を考えて行動するこ ることが必要であることを と が で き る 態 度 を 育 て た 知らせ、実践する意欲を育 い。けがについても、交通 てる。 事故や学校生活での事故に よるけが防止に加えて、簡 単なけがの手当ても理解さ せたい。 ☆さそいにのらない ☆人のいやがることをやめ ☆性行為感染症・薬物乱用防 知らない人に誘われた時 よう の対処の仕方や危険な場所 日常起こる具体的な「いや 止 若者に蔓延している性行 について理解させ、 自分の命 がらせ」を振り返る中で、思 為感染症の現実に目を向け は自分で守ろうとする態度 いやりの心を持って生活す させ、どのように対処し生活 を育てる。 ることの大切さに気づかせ することが大切なのかにつ 社 会 と 自 分 る。また、男らしさや女らし いて、理解を深めさせるとと さについて考えさせ、人とし もに、異性に対して人格を尊 て互いの人権を認め合うこ 重する気持ちを育てる。ま との大切さや生活自立につ た、性行為感染症(特にAI いても考えさせる。 DS)に対する正しい理解が 病気への偏見をなくすこと につながることも理解させ る。 また、喫煙・飲酒・薬物乱 用などの行為は健康を損な う原因となる事や法律で規 制されていることも知らせ る。 10 2.保健(性)教育カリキュラムと他領域との関連 主題 からだ 1 ・ 2 年 たんけん 各教科 こんなに大きくなっ たよ (2 年生活) 道徳 保健 いきている 特別活動(学活) 男の子・女の子 (1 年ともだち) からだたんけん トイレのこと からだをきれいに (1 年ともだち) おへその やくめ どうぶつの赤ちゃん (1 年国語) あったかいね おへそのひみつ (1・2 年ほほえみ) わたしのたんじょう さそいに さそいにのらない のらない 毎日の生活 と健康 春の歌 (4 年国語) 屋久島の杉の木 (4 年国語) 水道の水はどこから (4 年社会) ゴミのゆくえ 春子の入院 ∗ 一日の生活の仕方 (生きる力) ∗ 身のまわりの清潔 山がくけいび隊 や生活環境 (4 年道徳) 先生からの手紙 (新しい生活) (4 年社会) 3 ・ 4 年 交通事故のない町 (4 年社会) 町を火事から守る (4 年社会) 育ちゆく 体と私 ∗ 体の発育 体を守る仕組み (4 年国語) (二次性徴) ∗ 発達と食事 ∗ 運動などの大切さ いのちの始 まりと赤ち ゃんの誕生 森に生きる (3 年国語) がんばれいのち (3・4 年ほほえみ) 虫のゆりかご (3 年国語) 11 ∗ ケガの手当て ケガの防止 ∗ 交通事故や学校生 活の事故などの原 因とその防止(交 通安全教室など) 大人への 協力して生活しよう 準備 (5 年家庭) くせにくせに (5 年友だち) 家庭の生活と住居 ∗ 心の健康 (心の発達、心と体 の密接な関係、不 (6 年家庭) 安・悩み・ストレス 体の成長と変化 への対処) (5・6 年理科) 5 ・ 6 年 生命の誕生 花のつくり、種の発芽 わたしの足 と成長 (5 年理科) (5 年友だち) 魚のたんじょうと育 夕焼け(6 年友だち) ち (5 年理科) ヒトや動物のたんじ ょう (5 年理科) ヒトや動物の体・ヒト のかんきょう (6 年理科) 病気の予防 ∗ 病気の起こり方(か 誘惑に負けないよう ぜ・AIDSなど) にしよう ∗ 生活習慣病と食生 活 ∗ 薬物乱用防止につ いて 12 指導案 【例1】 1)題材名 男の子・女の子(男女の人間関係) 2)学 年 1 年生 3)ねらい 男女の体には違いがあるが、男女はみんな同じように大切な人間であることを 理解させる。 4)題材展開の理由 男女にはそれぞれ体に特徴があるが、人間として同じように大切であ ることが分かり、自己の性を大切にし、男女の別なく仲よくしようとする態度 を身につける。 5)展開例 学習内容・活動 1.男の子かな 女の子かな 指 導 上 の 留 意 点 資料 • 学級の中には男の子と女の子がいることを意 資料 1 影絵(シルエット)を見て、 識付け、数人の児童に性別を言わせて、その後 男の子か女の子かを発表 で理由を聞く。 し、外見だけで男女の別が • シルエットを見て男の子か女の子かを判断さ できるのかという疑問を持 せる。 つ。 ・ あてずっぽうを言う ・ オチンチンを見ればわかる ・ わからない ・ 横を向けばわかる 2.男の子と女の子では、体の • 正面絵図を見て、どちらが男の子か女の子かを 資料 2 どのような違いがあるでし 発表する。 ょう。 ・ オチンチンがあるのが男の子だ ・ 女の子にはオチンチンがない • 女の子のオチンチンは、ないのではなく見えに くいことを指導する。 3.性器のはたらき オチンチンにはどのような 役目があるのでしょう。 • オチンチンの役目について考え、発表させる。 ・ おしっこを出すところ • 教師の話から性器の役目を知る。 ・ 男の子−大人になって赤ちゃんのもとを つくる ・ 女の子−赤ちゃんのもとをつくる、赤ちゃ んを育てる部屋 • 性器の形の違いにより、排尿の仕方が違うこと を確認する。 • 性器の役目が分かり、大切にしていこうとする 気持ちを持たせる。 性器の大切さ ・気をつけなければいけな いことを知る。 • 性器を清潔にすることの大切さを知る。 資料3 ・ 入浴の方法 ・ 下着の交換 ・ 排便後の始末の仕方 13 • 入浴、排尿、排便後の始末の仕方について具体 的に指導し、性器の周囲を清潔にすることが大 切なことを知らせる。 ・他人に対してしてはいけ ないことを知る。 ・ チンケリをしたり、おなかをけとばさない。 ・ オチンチンを人に見せない、人のオチンチン をのぞかない。 (性被害のことにもふれておく必要がある) 4.大切な体を持っている友だ • 大切な性器をもっているお友達に対し、自分は 資料4 ちと仲よくするために大切 どうしたらいいか考え発表する。 なことはどんなことでしょ ・ 人のいやがることをしない う。 ・ 一緒に遊ぶ ・ 仲よくする ・ 乱暴なことをしない • 男女の性器の形や体の特徴は違うが、人間とし ての大切さは同じであることを知らせる。互い に尊重しようという意識を育てることが大切 である。 14 【例2】 1)題材名 さそいにのらない(社会を知る) 2)学 年 1 年生 3)ねらい 知らない人に誘われた時の対処の仕方や危険な場所について理解し、自分の生 命は自分で守ろうとする気持ちを育てる。 4)題材展開の理由 誘拐や性的被害に合わないために危険な場面や危険な事がおきた時の 対応の仕方について理解する。 5)展開例 学習内容・活動 指 導 上 の 留 意 点 資料 1.学校のまわりには、安全を • 通学路や校区内探検で調べてきたこ 守るための施設・設備には とを思い出させる。 どのようなものがあるかを 発表する。 ・信号、ガードレール、 横断歩道、歩道橋、標識、 街灯 2.校区の中で危険な場所はな • 交通面だけでなく、性的被害をうけ いか話し合う。 3.資料を見て考える。 やすいような場所にも目を向けさせ る。 ・知らない人に物をあげる • 物につられて、ついていかない事を 知らない人に話し と話しかけられたら、ど うするかを話し合う。 ・留守番中に知らない人が 訪ねてきたとき、どうす 押さえる。 かけられた時 • 知らない人は、親のいない時には家 留守番中の時、自 に入れないようにすることを知らせ 分の命を守るため る。 の 10 カ条 るとよいかについて話し 合う。 4. 自分の命を守るために、ど • 性的興味から、女子だけでなく男子 うすればよいか考える。 も誘う人もいることを押さえる。 ・誘拐されそうになったと • 誘拐事例等、具体的に話し、結果が きどうするか。 どんなに恐ろしいことになるかを補 説する。 • そんな場面に出合ったときは、近所 の家に飛び込むことが大切であるこ とを知らせる。 ・誘拐されそうになった時 • お父さんやお母さん、先生に必ず報 そのことを誰に話すか。 告するようにさせる。 • どんな人であったか、車のナンバー も覚えられたら、そのことも知らせ ることの大切さも分からせる。 15 ・自分の生活について考え • 下校時や遊びは、二人以上で行動さ 自分の生活につい る。 せる。 て • 暗いところや寂しい場所には、近寄 らないことを知らせる。 • 生活指導と絡め、徹底させる。 16 【例3】 1)題材名 わたしたちの成長(自分を知る) 2)学 年 4年生 3)ねらい ・男女の体のつくりや発育の違いについて知り、自分たちが大人の体に近づい ていることに気づく。 ・体の成長には男女差や個人差があるが、だれも人間として尊重されなければ ならないことを知り、自他を大切にする。 4)題材展開の理由 身体の変化に対する正しい認識をつけるだけでなく、心理面について も考えさせる。 5)展開例 学習内容・活動 指 導 上 の 留 意 点 資料 1.自分の1年生から4年生までの身長 • 身長の伸びには個人差があるが、 個人のグラフ の変化のグラフを見て気づいたこ だれもが伸び、その人なりに成長 (資料①) とを発表する。 していることに気づかせる。 2.男女の平均身長のグラフを見て気づ • 平均身長のグラフから一般的に 男女の平均身 いたことを発表する。 は男女によって伸びる時期に違 長のグラフ ・4年生までは男子の平均身長のほ いがあることに気づかせる。 (資料②) うが高い。 ・5年生から女子の平均身長が高く なる。 ・中学生では、また男子の平均身長 が高くなる。 3.男女の体の変化について話し合う。 • 教師の経験談などから、伸びる時 男女の体の絵 (女)胸(乳房)が大きくなる 体つきが丸くなる 発毛する 骨盤が丸くなる (男)体つきががっしりする 期には個人差があることをおさ (資料③) える。 • ワークシートに気づいたことを 書き込み発表させる。 • 兄姉や父母との体つきの違いを 発毛する 思い起こさせ、男女の二次性徴 声変わりする (外見的変化)に気づかせる。 • 体つきの変化にも個人差がある ことに気づかせる。 4. 体の成長に伴う気持ちの変化を考 • 体のことに関するからかいにつ える。 いて考えさせる。 • 成長には個人差があり、早い遅い があっても誰にでも起こること だということを捉えさせ、不安感 を持たないようにさせる。 5.今日学習して思ったことや自分の体 • 一人一人の思いを知り、個人指導 成長の記録ノ についてもっと知りたいことを書 く。 や学級指導に生かしていく。 ートを各自持 つ 17 資料① 資料② 自分の体の成長 名前( ) 1 年 2 年 3 年 4 年 平均身長の数値です(1196年) 140 130 120 110 100 0 1年 2年 3年 4年 思ったこと 1 年 122.5 121.8 2 年 128.1 127.6 3 年 133.4 133.5 4 年 138.9 140.2 5 年 144.9 146.7 6 年 152。0 151.9 中 1 159.6 155.1 中 2 165.1 156.7 中 3 168.5 157.3 平均身長のグラフ 4年 3年 男子 女子 2年 1年 cm 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 6年 中 1 中 2 中 3 150 女 子 5年 cm 160 男 子 資料③ 大人に近づいてくると体はどのように変化してきますか 身長体重など 18 【例4】 1)題材名 思春期のからだ(自分を知る) 2)学 年 5年生 3)ねらい 自分の体に二次性徴が起こることに気づき、互いに思いやりのある態度や行動 がとれるようになる。 4)題材展開の理由 二次性徴の発現が心に与える影響に気づかせて、日常生活においてお 互いに思いやりのある態度や行動が必要であることを理解させ、それを実現 しようとする心構えを育てる。 5)展開例 学習内容・活動 指 導 上 の 留 意 点 1.自分の体が大人に近づ 一次性徴→二次性徴→おとなへつながるシルエ いていることに気づく。 ットなどによる絵を見せたり、声のテープを聞か ・変声・乳房の変化・ 発毛・性器の発育 ・体つきの変化 資料 資料① 録音テープ せたりして、人間の成長過程による変化の様子を 児童に発表させる。 外見的な変化として、発毛(ひげ、腋毛、性毛) 、 資料② 乳房の発達、骨格の発達、皮下脂肪の発達(おし りや肩) 、のど仏などを発言させ、そのあとで体の 内的変化について考えさせ、発言させるとよい。 2.二次性徴はホルモンと 女子の月経については容易に発言するが、男子 資料③ の関係であることを知 の精通は発言しない場合もあることを十分予測し り、個人差があることを ておくこと。 知る。 二次性徴の起こるわけを、ホルモンとの関係で ・精通 簡単に分かりやすく説明する(資料④を参考にす ・初経 る) 。人の一生は、いくつかの特色を持った時代に 資料④ (教師用) 分けられる。それを迎えるのは人によって差があ り、それを個人差と指導する。 3.大人の体に近づいてい アンケート集計結果から感じたことを話し合わ 事前のアン くことへの不安や悩み せる。 ケートを集 について話し合う(心と ・体の変化に伴って、いろいろな不安や気になる 計 体について) 。 ことがでてくる。そこで、どんな小さなことで も、自分の体の変化やそれに伴う心の不安を具 体的に発表させる。 ・二次性徴をむかえる時期になると、大人への準 備として性ホルモンの分泌が活発になり、脳の 働きが敏感になって、自分の感情がちょっとし たことでも揺れ動くことや、自分の身体の急速 な変化に伴って、他人と比較して自分を見つめ るようになること、マンガや雑誌による情報の 影響が多いことなどに気づかせる。 19 4.大人への準備が始まっ 今までの学習で、この時期は男女の差がはっき 資料⑤ ていることを理解する りしてくることが分かったが、それに伴って、男 資料⑥ とともに、男女がお互い 女で争いごとやいがみあいがないか、あるとすれ を大切にしながら楽し ばどんなことか発表させる。 く生活するにはどのよ うにしたらよいか話し 合う。 5.今日の学習をして思っ お互いの長所を見つけて、それを認め合うこと 成長の記録 たこと、自分の体につい が大切であること。そして、認め合うことで助け ノート てもっと知りたいこと 合えるようにすることが大切である。 を書く。 20 資料① 資料② 21 資料③ ホルモンの働き 二次性徴 体の変化がおこるのは、下垂体でつくられるホルモンの働きです。この 下垂体のホルモンは、精巣や卵巣をしげきします。そこでつくられた男性 ホルモン・女性ホルモンは、男女の特性ある成長をうながします。 このように、ホルモンの働きであらわれる体の変化を二次性徴といいま す。この時期を思春期ともいいます。 下垂体でつくられる性腺刺激ホルモンは、男子の 精巣にはたらきかけ、精子や男性ホルモンをつく るように命令する。 下垂体でつくられる性腺刺激ホルモンは、女子の 卵巣にはたらきかけ、排卵をおこしたりするよう に命令する。 22 資料④ (1)初経 (2)射精 初経というのは、一言で言えば、「赤ちゃ 男の子が大人に近づくと、ペニスからネバ んを育てるための最初の準備が始まった」と ネバした液が出るようになるのよ。それは いうしるしなのよ。 ね、精巣というところで赤ちゃんのもとにな 女の人は、大人になるとだれでも赤ちゃん る精子がつくられて、それが他のいろいろな を産める体になることは知っているでしょ 分泌液とまじって精液というネバネバした う。でもそれは、大人になってから急にその ものになり、外に出てくることなの。 ような体になるんじゃないのよ。長い時間か でも、いつも出てくるというものではなく かって、だんだん体がそうなっていくの。そ て、何かの刺激があった時に外に出てくるの の始まりが早い人は十歳前後で、遅い人は十 よ。もちろん、人によってまちまちだけどね。 五歳前後なのよ。 初経が始まるころになると、急に背が伸び だしたり、体重も増えてきて、お乳もふくら 男の子なら、早いか遅いかの違いはあって も、だれでも経験することだから、病気かな、 なんて思って心配することはないのよ。 んだり、性器やわきの下にも毛がはえてきた 順調に大人に近づいているしるしなわけ りするのよ。だから、初経が始まるかもしれ だから、そういうことがあってもびっくりし ないというだいたいの心の準備はできてい ないで安心してね。 るけれど、本当は、いつ起こるのか、正確に はわからないの。 でも、それは女の人だったらだれでも経験 することだし、遅いか早いかだけの違いで少 しも心配することはないのよ。むしろ、自分 のからだが順調に大人に近づいていること で喜ぶべきことなのよ。男も女もみんな、ホ ルモンというものの働きで大人に近づくの よ。 23 【例5】 1)題材名 エイズとその予防(病気と予防について) 2)学 年 6年生 3)ねらい ・エイズという病気のあらまし・感染のしかた・予防について理解する。 ・エイズ感染者や患者に対する差別や偏見をなくし、人権を尊重し、お互いに 社会の一員として生活することの大切さを理解する。 4)題材展開の理由 社会問題であるエイズに対して正しく理解させるために、ビデオ・パ ネル・場面絵等を活用し授業展開する。 5)展開例 学習内容・活動 指 導 上 の 留 意 点 1.エイズについて知って • いることを発表する。 エイズについて正しく知ろうという意欲を高 める。 2.エイズとはどんな病気 • かを知る。 からだの抵抗力について意識させエイズとは ビデオ どんな病気か考えながら視聴させる。 ・ビデオの視聴 ・パネル 資料 「体の抵抗 力とエイズ」 • 病原体からからだを守る白血球にエイズウイ パネル ルスがとりつくと、白血球が壊され、抵抗力が (資料①) 弱くなることを理解させる。 • エイズウイルスは、体外に出ると大変弱く、 水・空気・塩素の中や温度が 40 度では死んで しまうことも付け加える。 3.エイズの感染経路と予 • 防方法について知る。 • ・血液感染 ・母子感染 場面絵 場面絵を使用し、普段の生活では感染しないこ (資料②) とを理解させ、偏見や差別意識を取り除く。 • ・性交感染 血液の適切な処理、衛生的な生活でエイズを予 防できることに気づかせる。 4.エイズに感染した人と • の共同生活について 考える。 どんな場合に感染するか予想する。 • 5.学習のまとめをする。 • ビデオを視聴し、思ったこと・感じたことを発 ビデオ 表させる。 「ジョナサ エイズと闘い生きる姿に共感させる。 ン君といっ 学習してわかったことや感想を書かせる。 しょに」 24 <事前資料> からだの成長アンケート 1.体が成長していると思うことは、どんなことですか。 【男子】 【女子】 ( )がっしりした体つきになってきた( )まるみのある体つきになってきた ( )かたはばが広くなってきた ( )乳房がふくらんできた ( )声がわりしてきた ( )おしりが大きくなってきた ( )発毛が始まった ( )発毛が始まった ( )性器が発育してきた ( )性器が発育してきた ( )精通が始まった ( )初経が始まった 2.体が発育してきてうれしかったことは、どんなことですか。 3.大人の体へ近づいていくことへの不安や心配はありませんか。 25 男性の生理−射精(精通) ホルモンの働きにより精巣で精子がつくられる。精管を通って精のうや前立腺から出る液体 とまじって精液になる。その精液が陰茎(ペニス)の先から出ることを射精という。精液の中 にはたくさんの精子が入っている。 初めての射精を精通という。眠っているときに射精することを夢精という。また、体に刺激 をうけて射精することもある。 女性の生理−月経(初経) ホルモンの働きで、およそ 1 か月に 1 回の割合で卵巣から卵子が子宮の方へ押し出される。 そのころ子宮では、赤ちゃんのために栄養分が用意される。受精しない卵子が子宮に来たとき、 卵子は子宮の中で用意された栄養分といっしょに膣(ワギナ)を通って体外へ出る。これを月 経という。 初めての月経を初経という。 周期−約 1 か月に 1 回(初めは不規則なことがある。 ) 期間−約 3∼7 日間 ※ 月経は病気ではなく、ごく自然に成長しているしるしであるが、激しい運動は控えるほ うがよい。 精通や初経があったということは、健康に成長している証拠で、大人になる第一歩なのです。 自分の成長を、心から喜んで、明るく迎えるようにしましょう。 また、人によって現れる時期は、早い遅いの個人差がありますが、みんなが経験するものです。 26 Ⅵ 中学校の性教育指導内容 学年 看護職の指導内容 ・思春期の心の変化 1 年生 ・二次性徴 ・月経・射精 ・思春期の健康教育パネル(禁煙、禁酒、正しい食生活、規則正しい生活) ・異性との関わり ・思春期外来の紹介 ・家庭における男女の性役割 ・相談窓口・相談経路の明確化 ・性に対する不安や悩み(男の子の 3 大悩み:包茎、ペニスの大きさ、マスタベーション、 女の子の 3 大悩み:月経、妊娠、性感染症) 2 年生 ・いのちの誕生(受精から誕生まで、分娩の進行も含む) ・特定の異性との関わり ・思春期外来の紹介 ・性役割 ・性の問題行動 ・相談窓口・相談経路の明確化 ・性に対する不安や悩み 3 年生 ・性の被害と加害 ・人間の性行動 ・性欲と性行動 ・避妊法 ・性同一性障害 ・性の情報環境(マスコミ・雑誌・携帯:性情報を見極める力を養う) ・思春期外来の紹介 ・相談窓口・相談経路の明確化 ・基礎体温計 ・女性性器の模型 ・男性性器の模型 ・避妊器具 ・コンドーム ・マイフェミィ ・IUD・ピル 教材 ・エプロンシアター、胎児人形(3・4・5・6・8・10 ヶ月) ・妊婦ジャケット ・配布資料・書籍 ・DVD(受精から胎児の発育) ・ビデオ(出産) ・パワーポイント ・OHP ・その他(オリジナルなものの作成) ・寸劇 27 1.中学 1 年生性教育展開 【主題:二次性徴】 教育目標 1)どんな環境であっても「自分は望まれて生まれてきたこと」を理解し、周囲の 人々の愛情に気づく。 2)からだと心の健康に対する正しい知識を持ち、自尊感情を持つこと、自分と他 者を大切にした生活行動がとれる。 展開例(神戸市立S中学校で実施) 学習内容・活動 指導上の留意点 教材・資料 1.似ている人を問うことで自分 • 自分が今、ここにいるために、 ビデオ を振り返させる。 たくさんの人のいのちを受け継 「こんにちは 13 歳」 いでいることを理解させる。 DVD 2.胎児の成長を通して、親が心 • 胎内生活・胎児の成長・生命の 「ミラクル オブ ラブ」 待ちにして生まれたいのち 神秘などを通し、いのちの大切 ぬくもり胎児ちゃん であることを知る。 さを理解させる。 エプロンシアター 3.臍の緒・母子手帳・自分の名 • 胎児の成長過程・呼吸や排泄・ 妊婦ジャケット 前の由来などについて考え 代謝のメカニズムなど、臍帯の パワーポイント る。 働きなどを理解させる。 赤ちゃん人形 • 自分は祝福されて生まれてきた こと、自分を大切にしなければ ならないことを押さえる。 4.中学生になってからだや心に • 性とは・性教育とはについて説 パワーポイント どんな変化があったか、性と 明し、地球上で生物が種を保存 いう言葉を聞いてどう思う していくために性は必要である か考える。 主旨を理解させる。 5.からだの成長 • 性ホルモンの分泌により、男女 男性性器モデル 思春期のからだの変化を知 違った性徴を遂げることを理解 女性性器モデル る。 し、自分のからだの変化を知り、 パワーポイント 二次性徴・思春期とは何か。 自分を大切に思えるように導 <男の子> く。 精通・射精のメカニズム • 自分のからだと心の変化を理解 ペニスの大きさ・包茎 することにより、異性のからだ マスターベーションなど と心の変化を理解し、自分と他 <女の子> 者を大切に思えるように導く。 初経・月経時の対処法、排 • 二次性徴は個人差があることを 卵・妊娠のメカニズム 6.心の成長 理解させる。 • 性とは「いやらしい」 「恥ずかし パワーポイント ホルモンの分泌により心も い」ことではなく、人間や他の 変化することを知る。 生物にとっても大切なことであ ることを理解させる。 28 7.大脳の働き、人間の性行動に • 人間と他の動物との違いを知 パワーポイント ついて考える。 り、人間らしい性行動がとれる ためにはどうするべきか考えさ せる。 8.性に関する情報源はさまざま • 氾濫する性情報から、正しい内 パワーポイント なものがあることに気づく。 容を見極める力を持つために も、正しい知識を持つ必要性を 気づかせる。 9.性の価値観や選択について考 • 性に関するいろいろな考え方を パワーポイント える。 紹介し、自分は何をどう選ぶの か考える機会を与える。 10.一人ずつ自分宛の手紙を発表 • 「おうちの人から書いてもらっ 手紙用カード させる。 た手紙」を発表し、親にとって 手紙を書く、カードを作る 子どもはかけがえのない存在で あることを感じさせる。 11.今、自分が生きていることに • 今、生きていることは自分一人 感謝する。 の力で一人で生きているのでは ない、さまざまな人の愛を受け ている。自分も他者も大切にし なければならないことを押さえ る。 29 2.中学2年生性教育展開 【主題:性自認】 教育目標:自分の性を自認し、自尊感情をもち、誇りを持って生きようとする態度を養う。 展開例(神戸市立O中学校で実施) 学習内容・活動 指導上の留意点 教材・資料 1.男女に分かれ、テー • 男の子、女の子に生まれてよかったと思うと 紙(B6サイズ) マに沿ってディスカ ころを自由に書かせる。 (何枚書いてもよいこ サインペン ッションする。 とを説明する) <テーマ> 1)男の子に生まれて よかったと思うとこ 4 種類のプレート • 各自が書いた内容を、よかったと思うところ セロテープ とよくないと思うところに分類し、それぞれ 黒板に貼る。 ろ は ど ん な と こ ろ • それぞれの長所と短所をあげ、自分の性につ か? いて考えさせる。 2)女の子に生まれて • 性自認できるように導き、異性の特徴や長 よかったと思うとこ 所・短所を理解させ、異性への理解を深める。 ろはどんなところ か? 2.異性への男女の心理 • 異性への接近欲・接触欲など異性に対する欲 パワーポイント の違いを知る。 求には、発現時期や程度などに性差や個人差 があることを理解させる。 3.男女交際のメリッ • 男女交際のメリット・デメリットがあること パワーポイント ト・デメリットにつ を理解させ、互いに高めあう交際をすること いて考える。 が大切であることを理解させる。 4.男女交際のマナーに • 男女交際の目的、恋愛と友情の違い、二人き パワーポイント ついて気づく。 りの関係にとらわれないこと、愛とか結婚に 短絡的に憧れを持たないことを押さえる。 5.人間として理性を持 • 思春期の心の発達は、大脳の働きによること パワーポイント って欲求行動をコン を押さえる。 トロールし、相手の • 理性や判断力を持って人間として成長するに 人権と人格を尊重す は、性行動の選択や意思決定が重要であるこ ることの大切さを考 とを理解させる。 える。 • 中学生時期に適した男女の人間関係を築こう とする意識を高めるように導く。 30 【主題:男女交際】 教育目標 1)男女のよりよい人間関係を築いていくための考え方や行動決定の能力を育て、 異性を尊重する態度を養う。 2)性的欲求には個人差・性差があることを理解し、お互いの人権を尊重しあう行 動選択ができる。 展開例(神戸市立S中学校で実施) 学習内容・活動 指導上の留意点 教材・資料 1.男女に分かれ、テーマに沿っ • お互いに異性を好きと思うところや 紙(B6サイズ) てディスカッションする。 <テーマ> どんな時が好きかを自由に書かせる。 サインペン (何枚書いてもよいことを説明する) 3 種類の 1)男の子を好きと思うところ • 各自が書いた異性に惹かれる要因を、 はどんなところか? 2)女に子を好きと思うところ はどんなところか? プレート 外見的な要因・内面的な要因・その他 セロテープ に分類し黒板に貼る。 • 男女の内面の違いを考えさせる。 男子は女子の心理を、女子は男 • 男女の性心理の違いを理解させ、相手 子の心理を知り、人間として理 に対する思いやりが大切であること 性を持って欲求・行動をコント を押さえる。 ロールし、相手に対する思いや りの大切さを知る。 2.異性への男女の心理の違いを • 異性への接近欲・接触欲など異性に対 パワーポイント 知る。 する欲求には、発現時期や程度などに 性差や個人差があることを理解させ る。 3.男女交際のメリット・デメリ • 男女交際のメリット・デメリットがあ パワーポイント ットについて考える。 ることを理解させ、互いに高めあう交 際をすることが大切であることを理 解させる。 4.男女交際のマナーについて気 • 男女交際の目的、恋愛と友情の違い、 パワーポイント づく。 二人きりの関係にとらわれないこと、 愛とか結婚に短絡的に憧れを持たな いことを押さえる。 5.人間として理性を持って欲求 • 思春期の心の発達は、大脳の働きによ パワーポイント 行動をコントロールし、相手 ることを押さえる。 の人権と人格を尊重するこ • 理性や判断力を持って人間として成 との大切さを考える。 長するには、性行動の選択や意思決定 が重要であることを理解させる。 • 中学生時期に適した男女の人間関係 を築こうとする意識を高めるように 導く。 31 3.中学 3 年生性教育展開 【主題:性感染症・性役割】 教育目標 1)性感染症に対する正しい知識を持ち、その予防策を講じることができる。 2)社会の中での自分の性役割や性差・性の多様性について理解を深め、多面的に 性について考えることができる。 展開例(神戸市立A中学校で実施) 学習内容・活動 指導上の留意点 教材・資料 1. 性感染症の種類と感 • 性感染症の種類・症状・症状別の治療方法 パワーポイント 染経路・症状・治療 があることができる。 方法について理解 • 感染したら治療しなければ治癒しないこ できる。 とを理解させる。 • 感染が疑わしい場合は、勇気を持って受診 する必要があること、そのためには親と話 し合えたり相談できる関係作りが普段か ら必要であることを理解させる。 2. HIV感染とエイズ • HIV感染とエイズの違いや感染経路と パワーポイント との違いがわかり、 予防法を理解させ、HIV感染者の偏見や 本:神様がくれた HIV 偏見を持ったり差 差別意識を取り除き、HIV感染者に対す CD:音楽 MEMORIES 別してはいけない る人権尊重について考えさせる。 ことに気づく。 3. 性同一性傷害につい • 性同一性障害について理解させ、本人自身 パワーポイント て知り、さまざまな の問題ではなく、病気によるものであった 性があることに気 り、脳の性が胎生期に決定され、胎生期に づく。 決定された性は一生変わることがないこ と、大脳の働きから科学的根拠に基づき性 を理解するように導く。 4.性自認・性差・性役 • 改めて自己の性自認を行い、異性への理解 パワーポイント 割について考える やさまざまな性を理解して性差を考え、社 ことができる。 会の中で自分が果たすべき性役割につい て考えることが必要であることが理解で きる。 5. 性の被害や性加害な • インターネット犯罪やマスコミからの氾 パワーポイント ど、社会の中に取り 濫した情報の中から性に関するさまざま 巻くさまざまな性 な被害を受ける可能性があることを理解 があることに気づ させる。 く。 • 「断ると嫌われるから」は効果を期待する 意味で利益の性になり、 「無理やり」や「一 方的な」性行動は性加害にもつながること を理解させる。 • 男女の性心理の違いを理解し、異性との人 間関係をつくる必要性があることを理解 させる。 32 6.男女を交えて、テ • 中学 3 年生の 7 月(夏休み前) 、今このよ 板書する ーマに沿ってディ うな事態になったら自分はどうするの スカッションし、グ か? ループごとに発表 • 行動の結果を考え、自他に及ぼす影響を考 する。 慮して、判断に基づく意思決定・行動選択 <テーマ> することに気づき、主体的に問題展開を思 1)男子:もし相手 考させる。 が妊娠してしまっ • 自分の夢の実現のために子どもはおろす」 たらどうする? など、不適切と思われる発言の内容からそ 2)女子:もし妊娠 の問題点に気づき、それを改めるプロセス してしまったらど (他者の対話を改訂すること)の中で、無 うする? 意識に自己の態度に転移する方向に導く。 高校進学、 自分の夢の そのため、発言内容の是非について講師は 実現、 経済的な問題な 言動に表さない。 ど、どうすれば解決で きるのか思考し、 自他 に及ぼす影響につい て気づく。 7.さまざまな考え方 • どのような選択をすることが正論という があることを知り、 ものでなく、自分が選択したことに対して 自分ならどうする は自分で責任をとっていくことが大切で かイメージできる。 あることを押さえる。 33 Ⅶ 思春期保健教育に関する教材 書籍など 1.いのちの応援団:山本文子 著(晩聾社) APPLE MEMORY 2.新しい避妊:杉山四郎 著(竹井出版) 3.健康な避妊:小林拓郎 著(金園社) 4.若者の生と性:草野純英 著(女子パウロ会) 5.胎児は見ている:T・バーニー 著(祥伝社) 6.最新受胎調節法:松本清一、荻野博 共著(社団法人 日本家族計画協会) 7.STDの臨床:野口昌良 編集(永井書店) 8.ウーマンズボディ:ダイヤグラム グループ編集(鎌倉書房) 9.マンズボディ:ダイヤグラム グループ編集(鎌倉書房) 10. アクティブセルフケアのためのハンドブック∼ピルを知ろう、ピルを語ろう self∼ :アクティブ セルフキャンペーン事務局 11. ピルについて知ろう:北村邦夫 著(社団法人 日本家族計画協会) 12. からだの地図帳(講談社) 13. 母子健康手帳 14. 父子手帳:汐見稔幸、長坂典子 著(大月書店) 15. 狼にそだてられた子:A ゲゼル 著(家政教育社) 受胎調節教材(ファミリープランニングセット) 1.テルモ電子体温計・体温表 2.コンドーム 各種 3.F・Pペッサリー 4.シモンペッサリー 5.避妊用錠剤(ネオサンプーン ループ錠、サンシー錠) 6.SAFE PHYTHM RULER 7.子宮内避妊器具(FD−1、リッピーズ ループ) 8.水谷式ラミナリヤ桿 9.太田リング、優性リング ※緊急避妊法 34 思春期保健教育の教材(小学生用) 1.書籍及びパンフレット(性教育・性感染症に関するもの) 2.妊婦体験グッズ 3.赤ちゃん人形 4.避妊器具 5.胎児成長発達模型(マグネット) 6.DVD(ミラクル オブ ラブ) 7.VTR(お産の場面) 8.性器模型 9.エプロンシアター 10. 産道体験 11. 紙芝居 12. 寸劇 13. 二次性徴貼り付け絵 14. その他 35 ぬくもり胎児ちゃん&新生児モデルともちゃん一覧表 ∼ 使用される会員の方へ ∼ ★ 使用後は、必ず欠品がないことを確認し収納して下さい。 ★ 万が一、紛失の場合はただちに下記の事務局までお知らせください。 ★ この教材は高額(15 万)です。大切にお取り扱いをお願いいたします。 番 号 内 容 個 数 1 新生児 3キロサイズ 1 2 新生児用おくるみ ピンク 1 3 胎児 9週(3ヶ月)サイズ 1 4 子宮袋 9週(3ヶ月)サイズ 1 5 胎児 12週(4ヶ月)サイズ 1 6 子宮袋 12週(4ヶ月)サイズ 1 7 胎児 5ヶ月サイズ 1 8 子宮袋 5ヶ月サイズ 1 9 胎児 6ヶ月サイズ 1 10 子宮袋 6ヶ月サイズ 1 11 胎児 8ヶ月サイズ 1 12 子宮袋 8ヶ月サイズ 1 13 エプロンシアター用エプロン ピンク 1 14 セット収納袋 緑チェック 1 15 VHS 1 兵庫県看護協会助産師職能事務局 ℡ 078−341−0190 (2004年1月 購入) 36 Ⅷ 参考図書の紹介 著 書 署 名 出 版 社 価格(税別) 松本清一 日本女性の月経 フリープレス 9,000 松本清一 思春期婦人科外来 文光堂 3,000 松本清一 女性としての性とその一生 学校図書 松本清一 他 PMSの研究 文光堂 松本清一 他 PMSメモリー(セルフケア編) (社)日本家族計画協会 450 松本清一 他 PMSメモリー(記録編) (社)日本家族計画協会 350 松本清一 監修 セクシャルヘルスの推進 (社)日本家族計画協会 800(税込) 現在のエスプリ 臨床・思春期保健 至文堂 マンスリービクス (社)日本家族計画協会 アジアの性科学研究 フリープレス 3,000 小学館 2,200 性:セクシュアリティの看護 建帛社 2,200 白井將文 「思春期男子の生理 Q&A」のポイント (社)日本家族計画協会 白井將文 ED ∼心と体のメカニズム∼ 講談社 白井將文 性機能障害 岩波書店 白井將文 他 アンドロロジーマニュアル 新興医学出版社 5,459 森 崇 青春期心身症の理解と治療 学事出版 2,800 森 崇 病んだ心は身体で訴える NHK出版協会 1,400 武田敏 他 エイズ教本 同文書院 2,000 武田敏 人間教育としてのエイズ教育 同文書院 1,800 江幡玲子 思春期とは 小学館 1,100 江幡玲子 家族とは きょうせい 1,100 江幡玲子・ 現代のエスプリ スーパービジョン・ 至文堂 1,381 至文堂 1,381 1,381 松本清一・ 江幡玲子 編著 松本清一・ 湯沢きよみ 松本清一 監修 武田敏 他執筆 松本清一 監修 性の自己決定能力を育てる 高村寿子 編著 松本清一 監修 高村寿子 編著 深沢道子 編書 ピアカウンセリング コンサルテーション実践のすすめ 600 3,000 3,281 300 1,300 700 江幡玲子・ 現代のエスプリ 深沢道子 編書 カウンセリングとソーシャルワーク 江幡玲子 ボランタリズム ∼順ぐりのお返し∼ 至文堂 子供を抱いたお父さん (社)日本家族計画協会 300 子供と遊んだお父さん (社)日本家族計画協会 300 子供と悩んだお父さん (社)日本家族計画協会 300 子供と語るお父さん (社)日本家族計画協会 300 お父さんていいもんだ(合本) (社)日本家族計画協会 1,300 江幡玲子・ 高石ともや 共著 37 「思春期の性とカウンセリング」 金原出版 5,000(税込) 「性教育」思春期外来 メディカルビュー 8,755(税込) 思春期ノート 下野新聞社 北村邦夫 親と教師のための性教育講座 (社)日本家族計画協会 1,000 北村邦夫 思春期の君たちにおくる僕の性教育 (社)日本家族計画協会 250 北村邦夫 監修 思春期Q&A (社)日本家族計画協会 1,000 北村邦夫 10 代の後輩に送る僕の性教育 (社)日本家族計画協会 250 北村邦夫 心とからだのクリニック (社)日本家族計画協会 600 北村邦夫 ピルQ&A (社)日本家族計画協会 1,000 北村邦夫 監修 Pill Note (社)日本家族計画協会 130 北村邦夫 からだBOOK (社)日本家族計画協会 150 北村邦夫 監修 かんたんBBT (社)日本家族計画協会 150 北村邦夫 いつからオトナ?こころ&からだ 集英社 1,200 北村邦夫 ピルの分かる本 日本短波放送 1,200 北村邦夫 ティーンズボディブック 扶桑社 971 北村邦夫 ピル 集英社新書 680 北村邦夫 パーフェクト ❤ H 河出書房新社 荒掘憲二 思春期の性と健康 (社)日本家族計画協会 250 福富護 らしさの心理学 講談社 650 福富護 訳 ジェンダーのレンズ 川島書店 岩室紳也 思春期の生と性 私たちのエイズ (社)日本家族計画協会 250 岩室紳也 おちんちん (社)日本家族計画協会 100 (社)日本家族計画協会 100 (社)日本家族計画協会 100 (社)日本家族計画協会 100 高村寿子 高村寿子 とちぎ思春期 研究会 岩室紳也 岩室紳也 岩室紳也 セックスカウンセリング入門 いきいき思春期シリーズ① 思春期の性を考えよう いきいき思春期シリーズ② エイズを知ろう いきいき思春期シリーズ③ 性感染症を知ろう 971 1,000 2,800 荻野博 ヤングメモリー (社)日本家族計画協会 500 荻野博 レディースメモリー (社)日本家族計画協会 500 38 Ⅸ 学校との調整内容 学校との調整は極めて重要な作業で、看護職の思いと、学校側の教育方針や学習させたいこ との内容をお互い摺り合わすことは大切で、打ち合わせが性教育講座のかなりのウエートを占 める。 1.環境調整 1)学年・人数 2)学校側の学習のねらい 3)事前学習・事前アンケートの確認 4)性教育の進度(学校での指導内容) 5)地域性 6)教師の参加の有無(学校の教育方針) 7)保護者の参加の有無 8)生徒の家庭環境(母子健康手帳・臍帯) 9)避妊教材・その他の教材の使用有無の確認 10)配布資料 11)事後アンケート(感想文) 12)性教育終了後のフォロー・相談窓口の明確化(学校との連携) 2.教育(学習)の方法 1)場所 2)時間 3)段階(何回シリーズとするのか) 39 Ⅹ 学校における看護職の性教育の展開について 学校教育の目的と性教育 ∼学校教育基本法第一条∼ 児 童 ・生 徒 の 人 格 の 形 成 を 究 極 の 目 的 と す る 。 【人 間 の 性 は 人 格 の 中 心 に 組 み 込 ま れ て い る 基本的な条件の一つ】 ∼カーゲンダール∼ 学校基本法でいう人格の完成には、人間の性教育が欠くことができないだけでなく、それが重 要であるという事ができ、ここに学校で性教育を実施する根拠がある。 学校における性教育の基本目標の設定 1.男 性 ま た は 女 性 として の 自 己 の 認 識 を 明 確 に す る 。 2 .人 間 尊 重 ・男 女 平 等 の 精 神 に 基 づ く豊 か な 男 女 の 人 間 関 係 を 築 く事 が で き る 。 3.家 庭 や 社 会 の 一 員 として 、現 在 及 び 将 来 の 生 活 に お い て 、性 に 関 わ る 諸 問 題 を 適 切 に 判 断 し、 対 処 し て い く資 質 や 能 力 を 養 う 。 「学 校 に お け る 性 教 育 の 考 え 方 ・進 め 方 」 文 科 省 (平 成 1 1 年 3 月 ) 1. 人間は他の動物と違い、ただ種族を残すだけでなく幸福に生きようとする。児童、人格の 形成を図るためには、人間の性を多面的・多角的に捉え、自己の性の認識をさせる必要が あり、これが同時に異性の理解につながる。 2. 児童・生徒が現在、将来において豊かな男女の人間関係を気づくことができるように、幼 少期から人間尊重、男女平等の精神を培い、男女の接し方などを習得して、日常生活に具 現化できるようにする必要がある。 3. 最近では、家庭や家族のあり方の変化、HIV・性感染症の蔓延、性による偏見や差別、逸脱 行動の多発などの問題行動が明確である。児童・生徒はこれら性の問題を適切に判断、対 処していく資質や能力の育成が必要である。 40 性 教 育 の 学 習 内 容 の 選 択 ・構 成 1.性 教 育 の 目 標 を 達 成 す るた め に 必 要 な 内 容 を 生徒のニーズやウォンツ及び社会的ニーズに 基づいて選択する。 2 .学 習 指 導 要 領 に 示 さ れ た 各 教 科 ・道 徳 ・特 別 活 動 の 内 容 に つ い て 、セ クシ ュ ア リテ ィの 教 育 といった幅広い観点から性教育の目標達成に 役立つ内容を選択する。 1.児童・生徒にとってのニーズとは、発達段階におけるニーズをベースにすることが適切で ある。指導のねらいは主題設定の理由を明確にすることで、例えば看護職が発達段階にお ける発達課題に応じた指導として初経を話すなら、性の自認を明確にするために二次性徴 を話すことを根拠とする必要がある。ウォンツは、子どもが望んでもその子どもの発達段 階から考えて、今必要かどうか。例えば、「妊娠中にSEXしてもいいの?」など。社会 的ニーズは、国民や保護者が児童・生徒の教育にあたって学校教育に期待し答申されてい るようなことで、性に関する事項で例えば「学校における性感染症対策」などの施策があげ られる。 2.1)教科、道徳の内容として位置付け、性教育の目標から発展的に取り扱う内容。 2)学級活動において解決を図る、性に関する内容。 3)学級活動やHRなどで取り上げると良いと思われる内容などを、学習指導要綱の示さ れた性に関する内容と照合し、精選した内容を決定する。 学校教育における性の授業展開 Ⅰ 性教育を学ぶ授業の理念 人 間 の 性 (H um an S e x u a lit y ) は 脚の間にあるのではなく 耳 の 間 (脳 )に あ る こ と を 理 解 さ せ る 。 ∼カルデローン∼ 41 1.性 は 生 きる エ ネ ル ギ ー を与 え る 。 2.性 は 生 命 を創 造 し、生 命 の バ トン タッチ をす る 。 3.性 をパ ー ソナ リテ ィの 存 在 とみ る 。 4 . 性 は 身 体 的 ・精 神 的 ・社 会 的 因 子 を 持 つ 。 5.性 関 係 は 、人 格 と人 格 の 関 わ りで あ る 。 6 . 性 意 識 ・性 行 動 は 、 個 人 的 で プ ラ イ ベ ー ト な 問 題 で あ る 。 7 . 性 行 動 は 、 生 殖 性 ・快 楽 性 ・連 帯 性 を 有 す る 。 8.動 物 の 性 行 動 は 遺 伝 子 に 規 定 され る の に 対 し、人 間 の 性 行 動 は 生 後 の 環 境 因 子 ・学 習 に 左 右 さ れ る 。 9. 発 達 段 階 に 応 じた 性 教 育 が 必 要 で あ る 。 10.性 行 動 の 適 切 な 選 択 が 課 題 で あ る 。 11.異 性 尊 重 、 男 女 平 等 が 性 教 育 の 基 本 で あ る 。 12.自 己 の 性 を 肯 定 的 に 受 け 止 め 、受 け 入 れ る 。 13.性 教 育 は 、 ヒ ュ ー マ ニ テ ィの 教 育 で あ る 。 14.性 科 学 に 心 理 は 1 つ で あ る が 、性 教 育 に は そ の 文 化 に 応じた多様性がある。 Ⅱ 医療関係者の学校教育への協力 1.地 域 の 専 門 家 が 学 校 健 康 教 育 に 協 力 す る 意 義 を考 え る 。 児 童 ・生 徒 の 健 康 の た め の 家 庭 ・学 校 ・医 療 機 関 の 協 力 関 係 を つ くる 。 2.学 校 と医 療 関 係 者 の 常 識 の 間 に は 、か な りの ギ ャプ が あ る 。 事 前 に 十 分 な打 ち合 わ せ 、意 見 の 交 換 が 必 要 である。 3.学 校 側 か ら依 頼 され た 教 育 目 標 に 従 った 内 容 に 限 定 す る こと。医 療 者 側 個 人 の 価 値 観 や 自 分 の 子 ど もへ の 教 育 方 針 は言 及 しない。 4.受 験 対 象 の 年 齢 と理 解 力 の レベ ル を知 る 。受 講 者 の 基 本 知 識 、性 意 識 、性 行 動 に 応 じた講 話 とす る。 42 5.医 学 の 専 門 用 語 は 使 用 せ ず 、一 般 の 言 葉 を使 用 す る 。 分娩 → お産 主 訴 → 体 の ど こが ど う悪 い の か 6.ケ ー ス を紹 介 して 解 説 す る とき 、プ ライバ シ ー に 配 慮 す る 。 7 . 受 講 者 (一 部 で も 中 の 一 人 で も )の こ こ ろ を 傷 つ け る 発 言 は しない。 8.受 講 者 が 悪 用 す る 可 能 性 の あ る 知 識 を話 さな い 。 9.受 講 後 の モ ニ タリン グ を次 回 の 参 考 に す る 。 教師の率直な意見や要望に耳を傾ける。 10. 学 校 教 育 法 施 行 規 則 を 理 解 す る 。 補 助 教 材 な ど 、教 科 書 以 外 の もの を使 用 す る 場 合 、 教 育 委 員 会 に 届 出 が 必 要 。 (都 道 府 県 条 例 ) 学 校 長 か らの 教師 依 頼 書 を受 け取 ることが 有 効 。 学校教育法施行規則によって学校教育を編成し、それに基づいて教育活動を実施しなければな らない。この場合の教育は、学校教育法施行規則の改正により、教科、道徳(高校を除く) 、 特別活動及び小学3年生以上は総合的な学習の時間を加えて編成しなければならない。また、 教育課程の基準は、学習指導要綱によるものと定めている。しかし、学習指導要綱には、 「性」 に関する事項は取り上げられているが、性教育については記述されていない。このため学校が 性教育を実施する際には、学校教育法施行規則にのっとり「学校における性教育の考え方・進 め方」を参考に、なぜそのような教育が必要か、法的根拠はどこにあるのか、教師集団の共通 の理解を図り、その計画・実施について保護者の理解を得ておく必要がある。このことは、わ が国の義務教育では、保護者や児童・生徒の意思で欠席できないことから一層重要で、場合に よっては他の学習を選択するようにするなどの配慮や対策が必要である。看護職にある者は、 学校側の事情を十分把握し実施することが極めて重要である。 43 Ⅲ 『性 交 』を 教 育 課 題 と す る 授 業 1.人 間 の 性 交 に つ い て 学 ぶ 授 業 に 先 行 す る 情 報 として 不適切なもの 1 )犬 、 猫 の 交 尾 「人 も あ れ と 同 じ こ と を や っ て い る の か 」 性 行 為 の 情 緒 性 をス ポ イル し、劣 等 感 を与 え る 。 2 )ポ ル ノ 雑 誌 の 性 行 為 「両 親 も あ ん な こ と を や っ て 自 分 が 生まれたのか」 性 行 為 を背 徳 の 遊 び 、快 楽 追 及 の み の 性 と思 う。 3 )性 感 染 症 、 エ イ ズ 「セ ッ ク ス は 汚 い 、 危 険 な こ と 」 性行為を汚れた不潔なものと考える。 否 定 的 感 情 を持 た せ て しまう。 4 )性 被 害 予 防 「セ ッ ク ス は 恐 ろ し い こ と 」 男性不信になる。 犯 され る 性 へ の 恐 怖 、女 性 ア イデ ン テ ィテ ィの 障 害 。 2.適 切 な 導 入 、展 開 法 1 )自 分 の 生 命 由 来 教 育 と し て 、 両 親 が 愛 し 合 っ て 愛 の 結 晶 として生 命 を創造 した。 2 )オ シ ベ ・メ シ ベ の 植 物 の 生 殖 、 メ ダ カ の オ ス ・メ ス か ら 精 子 と卵 子 が 放 出 され て 水 中 受 精 、人 は 空 中 に 住 む の で 体 外 受 精 は 乾 燥 の た め 不 可 能 。体 内 受 精 の 目 的 で精 子を卵 子 の もとに送 り届けるの が 性 交である。 44 3 )高 校 レ ベ ル で は 発 生 学 的 な 説 明 を す る 。 胎 児 は 男 女 共 に 原 腎 に 由 来 す る ウ ォ ル フ管 とミュラー 管 が あ る 。ウ ォル フ管 が 発 達 しミュラー 管 が 退 縮 した の が 男 性 器 〔精 管 ・ペ ニ ス ・尿 道 〕で あ り 、 そ の 逆 が 女 性 器 〔卵 管 ・子 宮 ・膣 〕で あ る 。 精 子 を 卵 子 の も と に 送 る た め に ウ ォル フ管 とミュラー 管 が 結 合 す るの が 性 交 で あ る 。 3.性 交 は 動 物 の 交 尾 とは 異 な る 点 を理 解 させ る 展 開 1 )生 殖 だ け が 目 的 で な く、 こ こ ろ の 結 び つ き (連 帯 )と 愛 情 、 愛 し た 人 と 結 び つ く喜 び が 人 間 に は 重 要 で あ る 。 2 )相 手 の 意 思 を 尊 重 し 、 相 互 同 意 で あ る こ と 。 3 )妊 娠 だ け で な く、 性 行 為 が 自 分 と 相 手 の 今 後 の 人 生 に 及 ぼ す 影 響 を考 慮 して、慎 重 に 意 思 決 定 す る必 要 が あること。 4 )生 命 創 造 に 伴 う 親 と し て の 責 任 。 5 )性 行 為 に 関 す る モ ラ ル や 法 規 定 は 、 「不 幸 な 事 態 を 回 避 し 、 両 性 の 幸 せ を 守 る 」た め に 存 在 す る こ と 。 Ⅳ 『性 行 動 選 択 』の 授 業 1.性 行 動 選 択 とは 何 か 、を 考 え る 。 2.適 切 な 意 思 決 定 を 妨 げ る 因 子 、困 難 な 事 態 と その予防法を考察する。 3.意 思 決 定 、行 動 選 択 の ラ イ フス キ ル 。 4.行 動 選 択 を 学 ば せ る ア プ ロ ー チ 。 45 1.性行動選択とは何か、を考える。 • 性交するかしないか、どのような性交をするのか。 • 性交が今後の生活に及ぼす影響をよく考えて選択する。 • 心と体、人間関係、学業や職業、経済力、社会的生活などへの影響を考慮する。 • 自分への影響のみならず、相手、家族、関わりのある周囲の人々への影響も考えて選 択する。 • 自分にとっても相手にとっても適切なタイミングであるか。 • 生殖を伴うときは、生まれてくる子にとって適切な時期か。 • 子を幸福に育てられる条件が整っているか。 • 性交をする場所や状況が満足できるものであるか。 • 生殖時以外は、必ず避妊する。 • 性感染症を予防する。 2.適切な意思決定を妨げる因子、困難な事態とその予防法を考察する。 • 誤った知識、思い込み、関連情報不足。 • 酒に酔ったり薬物により、判断の機能喪失。 • イライラ、不満の蓄積、精神不安定。 • 自暴自棄、セルフエスティームの欠如、未来の希望喪失。 • 予期しない事態、精神的ショックで混乱。 • 考える時間のない切迫した意思決定強要。 • 親や教師に対する反抗心、抑制指示に反発。 • 恋愛感情に酔って理性の喪失。 • 「相手のパーソナリティ」に対する認知エラー、思い込み。 • 相手を確保する手段として性を捉える。 • ポルノ的情報による性欲の刺激。 • 視覚、嗅覚に訴える性欲の刺激、性的誘惑。 3.意思決定、行動選択のライフスキル • 行動目標を確認する。 • 関連する情報を収集し、整理して参考とする。 • 経験者、有職者の意見を聞く。 • 自己の過去の体験から学び、失敗を繰り返さない。 • 目的に向かっていくつかの行動選択があることを知る。 • 行動しないことも選択肢に含まれる。 • 各選択肢の長所、短所を明確にする。 • 自分の価値と照合する。 • 各選択肢を各種の視点から比較し、総合的に最良のものを選出する。 • 運や偶然に頼らず、実現の可能性を考えて選択する。 • 怒りや悲しみの感情に流されない。 • 状況の変化に応じ、途中で軌道修正する可能性も考えておく。 • 自ら決定した内容に自信を持って行動する。 • 結果に責任を持つ。 46 4.行動選択を学ばせるアプローチ。 • 日常生活において「結果を予測して、結果を考えて」行動する練習をする。 • 過去の行動選択の体験を想起する。 • 過去の無思慮な行動として「衝動買い」を例にあげる。ただし、相手が物と人間では モラル上の差があり、相手の意思の尊重が大切であることを付言する。 • 小説や実例をモニタリング教材とし、人間関係の展開の要所、要所で「登場人物の行 動選択が妥当であるか否かを学習者に選択させる。 「君ならどうするか?このような状 況で」と発問し、意思決定のトレーニングをする。いくつかの選択肢を提示させる。 その後の人間関係状況の変化を示して、その結果からそれぞれの選択肢の可能性を考 えさせる。 • 親や教師が行動を指示せず、意思決定を子どもに委ねる機会を多く与える。しかし、 悪い結果になった場合、本人に与えるダメージが大きすぎるリスクの高いものは避け る。 47 初版 改訂 平成 18 年 3 月 第1回 平成 19 年 4 月 13 日 48
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