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2014/11/9
講演の内容
第5回 区民健康講座
• 平均寿命と健康寿命
– 要介護の原因
• 歯の健康と要介護状態との関係
– 認知症
–転 倒
– 要介護認定
• 歯の不健康から要介護までの経路
• 歯を失う原因
• 歯を失わないためのポイント
~歯科と認知症~
歯を残して認知症予防!
神奈川歯科大学
山本 龍生
2014.11.9
於 勤労福祉会館
– 歯周病とむし歯(う蝕)の予防
日常生活に制限のある期間
2012年における世界の平均寿命トップ10
男性
女性
(厚生労働省厚生科学審議会)
年齢(歳)
90.0
年齢(歳)
90.0
12.3 12.6 12.4
日常生活に
制限あり
60.0
60.0
50.0
日常生活に
50.0
制限あり
40.0
日常生活に
72.7 73.4 74.2
制限なし
30.0
日常生活に
制限なし
80.0
70.0
40.0
30.0
9.0
8.9
8.7
70.0
69.4 70.3 71.2
20.0
20.0
10.0
10.0
0.0
介護が必要となった主な原因の構成割合
(平成25年国民生活基礎調査)
視覚・聴覚障 その他, 7.6
害, 1.8
脊髄損傷, 2.3
悪性新生物
(がん), 2.3
わからない,
1
糖尿病,
2.8
パーキンソン
病, 3.4
心疾患(心臓
病), 4.5
0.0
2001 2007 2013
2001 2007 2013
男 性
女 性
介護の主な原因の構成割合の変化
(国民生活基礎調査)
不詳, 1.6
脳血管疾患
(脳卒中),
18.5
呼吸器疾患,
2.4
80.0
H23
21.5
15.3
13.7 10.2 10.9
認知症, 15.8
関節疾患,
10.9
骨折・転
倒, 11.8
H25
高齢による衰
弱, 13.4
18.5
0%
15.8
20%
13.4 11.8 10.9
40%
60%
80%
100%
脳血管疾患(脳卒中)
認知症
高齢による衰弱
骨折・転倒
関節疾患
心疾患(心臓病)
パーキンソン病
糖尿病
呼吸器疾患
悪性新生物(がん)
脊髄損傷
視覚・聴覚障害
その他
わからない
不詳
1
2014/11/9
認知症とは
• 定義:脳や身体の疾患を原因として、記憶・判断力
などの障害がおこり、普通の社会生活がおくれなく
なった状態
• 認知症は、脳が病的に障害されておこる
• 原因は、頭蓋内の病気、身体の病気など
• 多くは「アルツハイマー型認知症」と「脳血管性認
知症」
• 認知症の高齢者は年々増加
出典:認知症を知るホームページ
(http://www.e-65.net/index.html)
(厚生労働省2012年10月5日アクセス)
歯科保健と認知症発症との関連
歯数・義歯使用と認知症発症との関係
(年齢,所得,BMI,治療中疾患,飲酒,運動,物忘れの有無を調整済み)
認知症の認定を受けていない
65歳以上の住民4,425名を対
象とした4年間のコホート(追
跡)研究の結果、年齢、治療疾
患の有無や生活習慣などに関わ
らず、歯がほとんどなく義歯を
使用していない人は、認知症発
症のリスクが高くなることが示
された。
特に、歯がほとんどないのに
義歯を使用していない人は、
20本以上歯がある人の1.9
倍、認知症発症のリスクが高い
ことがわかった。
さらに、歯がほとんどなくて
も義歯を入れることで、認知症
の発症リスクを4割抑制できる
可能性も示された。
Yamamoto et al., Psychosomatic Medicine, 2012
歯周病
歯の喪失・
義歯未使用
ハザード比 95%信頼区間
p
歯数と義歯使用
20歯以上
1.00
19歯以下
1.01
(0.67-1.51) 0.98
歯がほとんどなく義歯使用
1.09
(0.73-1.64) 0.68
歯がほとんどなく義歯未使用
1.85
(1.04-3.31) 0.04
咀嚼能力
なんでも噛める
1.00
ほとんど噛める
0.98
(0.71-1.34) 0.87
あまり噛めない
1.25
(0.81-1.93) 0.32
かかりつけの歯科医院
あり
1.00
なし
1.44
(1.04-2.01) 0.03
口腔衛生の心がけ
あり
1.00
なし
1.76
(0.96-3.20) 0.07
不明
1.46
(0.93-2.28) 0.10
調整:年齢,所得,BMI,治療中疾患の有無,飲酒習慣,運動習慣,物忘れ
の自覚の有無
かかりつけの
歯科医院
治 療
口腔保健
行動
(咀嚼能力の低下)
一般的な
健康行動
食品選択の変化 (健診受診)
脳の認知領域
(趣 味)
慢性炎症 の変化
栄養状態の変化
運動習慣
全身の健康状態
その他
認知症発症
歯科保健から認知症発症への予想経路
歯数・義歯使用と転倒との関係
(調整:性、年齢、追跡期間中の要介護認定、抑うつ、主観的健康感、教育歴)
20歯以上の者を1とした場合のオッズ比
6.0
5.0
4.0
2.50 3.0
2.0
1.0
0.0
1.00
1.36
過去1年間に転倒経験
のない65歳以上の住民
1,763名を対象とした
3年間のコホート(追
跡)研究の結果、性、
年齢、期間中の要介護
認定の有無、うつの有
無などに関わらず,歯
が19本以下で義歯を使
用していない人は、転
倒のリスクが2.5倍高く
なることが示された。
さらに、歯が19本以
下でも義歯を入れるこ
とで、転倒のリスクを
約半分に抑制できる可
能性も示された。
Yamamoto et al., BMJ Open,2: e001262, 2012
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歯数と骨折に関する最近の研究報告
歯数と要介護認定との関係
(Wakai et al, Community Dent Oral Epidemiol, 2013)
(調整:性,年齢,BMI,主観的健康感,治療中疾患の有無,喫煙,飲酒,運動,所得)
•
•
•
•
対象:>50歳の日本人男性歯科医師 9,992名
追跡期間:平均6年
大腿骨近位部骨折:20名
調整因子:年齢、飲酒、喫煙, 糖尿病の既往、精神的
苦痛、睡眠導入剤の使用、エネルギー・カルシウム摂
取量、身長、体重、活発な身体活動
• 20~28歯(除智歯)を失った者は、0~9歯を失っ
た者に比べて、 5.2(1.4–19.1)倍、骨折のリスク
が高くなった
20歯以上の者を1とした場合のハザード比
1.6
1.4
1.21 1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
20歯以上
19歯以下
要介護認定を受けて
いない65歳以上の住
民4,425名を対象と
した4年間のコホート
研究の結果、性、年
齢、治療疾患の有無や
生活習慣などに関わら
ず、歯が19本以下の
人は、20本以上の人
に比較して要介護認定
を受けるリスクが1.2
倍高くなることが示さ
れた。
Aida et al., Journal of American Geriatrics Society, 2012
むし歯
(本)
歯の喪失・義歯の未使用
歯周病
昭和62年
平成5年
平成11年
平成17年
平成23年
30
25
咀嚼機能の低下
20
慢性炎症
脳の認知領域
脳血管疾患(22%)
心疾患(4%)
糖尿病(3%)
食品選択・
栄養状態
認知症(15%)
20本
15
バランス機能
10
5
骨折・転倒
(10%)
0
要介護状態(54%)
歯の不健康から要介護状態までの予想経路
15
1200
100
萌出異常
抜 歯 本 数 (本)
800
矯正
その他
80
歯周病
60
600
40
400
う蝕(むし歯)
200
20
0
抜 歯 割 合 (%)
1000
年齢階級別の歯の平均本数
年齢(歳)
(歯科疾患実態調査結果)
歯周病とは・・・
0
計
年齢層(歳)
年齢別の抜歯本数および抜歯理由の割合
大石ら,口腔衛生会誌,2001
•原因は歯垢(細菌の塊)
•はじまりは歯と歯の間
•ほとんど症状なし
•症状(歯が痛くてかめない)が出る頃には治療困難
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歯と歯ぐきのさかい目(拡大)
歯を支える組織
歯肉溝
(正常:1~2 mm)
歯周ポケット(歯周炎)
歯
歯
し
し
歯
肉
にく
歯ぐき(歯肉)
そう こつ
骨(歯槽骨)
歯
根
膜
骨
歯と歯ぐきのさかい目を拡大してみると…
(木下正良先生より)
歯周病の進行
健全
歯肉炎
歯周病の検査
歯周炎
歯 垢
(歯周菌)
使う器具:
プローブ
歯周検査の基準
Code 0: 異常なし
Code 1: 歯肉出血
Code 2: 縁上または縁下歯石
Code 3: ポケットの深さ4~5 mm
Code 4: ポケットの深さ6 mm以上
歯ぐきの赤み(発赤)、腫れ(腫脹)が徐々に進みます。
慢性的なので痛まずに進行します。
(木下正良先生より)
歯は周囲組織の支えを失って、ぐらぐらに。
(%)
100
90
80
70
調査数4,253名(男性1,812名、女性2,441名)
対象歯なし
6mm以上の歯周ポケット
4~5mmの歯周ポケット
歯石沈着
歯肉出血
心理・
社会的因子
ストレス
60
50
細菌
因子
40
30
20
ブラッシ
ング
歯周病
感受性
増大
社会環境
家族,政治,教育,
仕事,社会・経済,
文化的信条・慣習
生活習慣因子
喫煙
食事
健康管理
10
0
全身的因子
遺伝
年齢階級(歳)
年齢階級別CPI個人コードの分布
歯周病のリスク因子
(平成23年歯科疾患実態調査)
Clarke et al, J Clin Periodontol, 1995
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2014/11/9
フッ化物
宿主(歯)シーラント
細菌
砂糖
酸
歯
う蝕
むし歯
砂糖
う蝕(むし歯)のできかた
むし歯菌が砂糖(食べ物)を利用して、作られた酸
(うんち・おしっこ)が歯を溶かします。
歯科保健指導の手引き,1991
甘味制限
代用糖
歯垢(細菌)
ブラッシング
フロッシング
う蝕(むし歯)の発生要因
う蝕(むし歯)予防のガイドライン
(米国予防医療研究班)
予防的介入方法
証拠の質
フッ化物の全身的応用(上水道,錠剤)
フッ化物の局所的応用(歯磨剤,洗口,塗布)
シーラント
甘いものを控える
就寝中の哺乳瓶使用を控える
個人的な歯科衛生(フッ化物非含有歯磨剤,フロス)
定期的な歯科検診
J Am Dent Assoc, 1984
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ
Ⅱ-1
Ⅲ
Ⅲ
Ⅲ
勧告の強さ
A
A
A
A
B
C
C
証拠の質
Ⅰ:最低1つ以上の正しくデザインされた無作為対照研究から得られた証拠
Ⅱ-1:無作為ではないがよくデザインされた対照研究から得られた証拠
Ⅲ:臨床的経験,記述的研究,熟達した委員会の報告に基づく意見
勧告の強さ
A:定期健診に含むべきだという勧告を支持する確かな証拠がある
B:定期健診に含むべきだという勧告を支持する証拠がある
C:定期健診に含むべきだと考えられるだけの証拠が乏しい
フッ化物応用法の種類と効果
フッ化物濃度
う蝕(むし歯)
予防効果
全身応用法
上水道フッ化物添加
フッ化物錠剤・液剤
0.7~1.2 ppm
50~70%
~3歳: 0.25 mgF/d
フッ化物添加食塩
3~6歳: 0.50 mgF/d
フッ化物添加ミルク
6~16歳: 1.0 mgF/d
局所応用法
フッ化物歯面塗布
フッ化物洗口
フッ化物配合歯磨剤
9,000~12,300 ppm
20~40%
100~500 ppm
35~50%
1,000 ppm
15~30%
5