一人一人の子どもが豊かな心をもち

平成21年度
研究主題
教育論文
目
次
目次
・・・・・・1
はじめに
・・・・・・2
Ⅰ
・・・・・・3
研究の概要
1
研究主題
2
研究主題設定の理由
3
研究主題について
4
研究の内容
5
研究の構想
Ⅱ
研究の視点1における研究の実際
・・・・・・9
1
特別活動で培う道徳性の重点化
2
本校ではぐくむ「豊かな心」に迫る「大事にしたい3つの心」の明確化
3
発達段階に応じた道徳的実践の姿(めざす子どもの姿)の明確化
4
教師、子どもの意識を高める手立ての具体化
Ⅲ
研究の視点2における研究の実際
・・・・・12
1
望ましい集団活動につなげる学習(活動)過程「おおえのき」の実践
2
活動や学習の目標達成をめざす授業づくりのポイントによる実践
3
低学年部の実践
4
中学年部の実践
5
高学年部の実践
Ⅳ
研究の視点3における研究の実際
・・・・・24
1
友達とかかわり合える活動の工夫
2
異学年との交流が生まれる活動の工夫
3
様々な人々とのふれあいが生まれる活動の工夫
Ⅴ
研究の視点4における研究の実際
・・・・・26
1
道徳的価値に気付かせる自己評価・相互評価、他者評価の工夫
2
個と集団のかかわりをつくる教師の働きかけの工夫
3
子どもに働きかける環境づくりの工夫
Ⅵ
研究の成果と課題
1
研究の成果
2
今後の課題
おわりに
主な参考文献
・・・・・28
研究同人
・・・・・30
-1-
はじめに
本 校 の 校 庭 に は 、樹 齢 百 十 年 を 越 え る 榎 木 、
「 お お え の き 」が あ る 。そ の 下 に た た ず む と 、
風のささやきや鳥の歌が聞こえてくる。また、若葉の季節には、柔らかな春の光が溢れる
ように注いでくる。
本校の校歌を作詞された山口白陽先生は、そのような情景を本校の象徴と感じられたの
であろう。
「 風 の さ さ や き 、鳥 の 歌 、光 あ ふ る る 大 江 校 。心 は 清 く 朗 ら か に 、今 日 の 勤 め に
励 も う よ 。」 と 、 校 歌 は 歌 い だ す 。 校 歌 の 2 番 に は 、「 庭 の 榎 木 の 年 毎 に 、 命 伸 び ゆ く 大 江
校 」と 、
「 お お え の き 」が 、学 校 の シ ン ボ ル と し て 登 場 し 、一 人 一 人 の 子 ど も た ち の 命 が 伸
びゆくようにといった思いや願いが、校歌の言葉一つ一つに込められている。
7年前、その「おおえのき」が、一時、枯れかけた。
歴代の校長先生と教職員、そして、何よりも、本校の子どもたちの「母校の大木を守り
た い 。」と い う 心 は 篤 く 、毎 年 、そ の 養 生 作 業 が 施 さ れ て き た 。根 に 空 気 を 送 り 腐 葉 土 を と 、
始業前から、地中深く穴を掘る先生と子どもたち。その無心な姿に 、頭が下がる。おかげ
で、榎木は、見事に復活を遂げ、枝々の葉は実に色濃く、樹勢が甦る。
折しも、
「 新 た な 知 の 創 造・継 承・ 活 用 」が 、社 会 発 展 の 基 礎 に な る と 、国 は 、知 識 基 盤
社会のなかでの教育の方向性を示し 、新学習指導要領が改訂された。つまり、これまでの
ものづくりに終始した社会から、新しい知識・情報・技術が重要性を増すという知識基盤
社会への移行である。同時に、これまでの「物質文明に恵まれた社会」から、人としての
「 心 の 豊 か さ に 恵 ま れ た 社 会 」を め ざ そ う と し て い る の で あ る 。そ の よ う な 社 会 に お い て 、
こ れ か ら の 子 ど も た ち の 生 き 方 を 考 え る と き 、わ が 国 の 教 育 は 、
「 心 を ベ ー ス 」に 据 え た 教
育の展開が、今、求められているのではないだろうか。
本 校 の 研 究 は 、そ の よ う な 教 育 の 今 日 的 課 題 を 受 け 、新 学 習 指 導 要 領 先 行 実 施 と な っ た 、
心のエネルギーを培う道徳の時間と 、行動のエネルギーを生み出す特別活動との関連を模
索し、この2年間、その具体化に取り組んだものである。
幸 い 、 平 成 2 0 ・ 2 1 年 度 の 「 文 部 科 学 省 、 道 徳 教 育 実 践 研 究 事 業 ( 特 別 活 動 推 進 校 )」
をはじめ、熊本県の研究指定校、熊本市の研究委嘱校として取り 組む機会を得た。
本年度は、2年目のまとめの年であり、今後の研究の推進のためにも、これまでの取り
組みを論文としてまとめることにした。研究の成果としては、子どもたちが夢と希望を胸
に抱き、自信をもって生き生きと活動する姿が見られるようになってきているが、実践を
進 め れ ば 進 め る ほ ど 、 ま た 、 新 た な 課 題 が 見 え て く る こ と も 事 実 で あ る 。「 道 徳 性 」 と は 、
教育の最大の目標であると痛感する。
しかし、先に述べたような、命ある榎木に心を寄せ、自分の心を耕し、見つめ、心をは
たらかせるような大江の子どもたちを育てたいという、私たち大江小教職員の思いは膨ら
むばかりである。そして、研究の成果は子どもの姿で示したいと願い、これからも、日常
的に、継続的に教育実践を積み重ね、命伸びゆく大江の子どもたちを育てていく所存であ
る。
平成22年1月
熊本市立大江小学校校長
-2-
池邉
利昭
Ⅰ
研究の概要
1
研究主題
一 人 一 人 の 子 ど も が 豊 か な 心 を も ち 、自 信 を も っ て 生 き 生 き と 活 動 す る 学 習 の 創 造
~特別活動における道徳的実践の指導の充実を図りながら~
2
主題設定の理由
(1 )
今日的課題から
情報・技術が飛躍的に進歩するといった社会の急激な変化は、私たちの生活に便利さ
をもたらし、物質的な豊かさを次々と実現する一方で、人と人とのつながりを希薄なも
の に し た り 、豊 か な 体 験 の 機 会 を 奪 っ た り し て い る 。ま た 、OECD( 経 済 協 力 開 発 機 構 )
の PISA 調 査 な ど 、 各 種 の 調 査 か ら は 、 わ が 国 の 子 ど も た ち に つ い て 、 学 習 意 欲 、 学 習
習慣・生活習慣における課題、体力低下といった課題等が示されている。
こ れ ら の 課 題 等 を 踏 ま え 、平 成 20 年 3 月 に 公 示 さ れ た 新 学 習 指 導 要 領 に は 、
「知識基
盤 社 会 」の 時 代 に お い て 、ま す ま す 重 要 と な る「 生 き る 力 」と い う 理 念 が 継 承 さ れ 、知 ・
徳・体の調和のとれた力の育成を重視することが示された。なかでも、自分に自信が持
て ず 、自 分 の 将 来 や 人 間 関 係 に 不 安 を 感 じ て い る 子 ど も が 多 い と い う 現 状 か ら 、
「豊かな
心や健やかな体の育成のための指導の充実」を図ることが、改訂の基本的な考え方とし
てあげられ、体験活動の充実や道徳教育の充実・改善の必要性などが示されている。
そこで、子どもたちが自信を持って生き生きと活動できるようにするためには、より
いっそう、学校の教育活動全体のなかで、望ましい集団活動や体験活動を通して活動を
展開することにより、活動の主体である子どもたちの心の動きや育ちに着目し、活動意
欲の高まりや達成感・充実感を味わわせ、子どもたちを認め、励ましていくような教育
実践が求められている。
(2 )
これまでの研究の流れから
本 校 で は 、 平 成 20 年 度 よ り 、 研 究 主 題 を 「 一 人 一 人 の 子 ど も が 豊 か な 心 を も ち 、 自
信をもって生き生きと活動する学習の創造」と設定し、豊かな心を育てる道徳の時間の
積み重ねを大事にしながら、望ましい集団活動を通して自主的・実践的な態度やよりよ
い人間関係をはぐくんでいくことをめざし、実践してきた。その中で、特別 活動におけ
る 様 々 な 集 団 活 動 が 、子 ど も た ち の 道 徳 性 の 育 成 に と っ て 重 要 な 場 と 機 会 で あ る こ と を 、
学級活動を中心にした授業実践を通して再認識することができた。
また、指導者である教師自身が道徳の内容項目を意識し、道徳の時間との関連を大事
にした取り組みをするようになったことで、子どもたちの心の動きに目を向けながら指
導 す る こ と が で き る よ う に な っ て き た 。同 時 に 、発 達 段 階 や 特 性 を 踏 ま え て 、
「めざす子
どもの姿」を明確にすることや、道徳の時間の指導の充実を図る必要があることなど、
実践上の課題も見えてきた。
そこで、本年度は、これまでの研究主題に、副題として「特別活動における道徳的実
践の指導の充実を図りながら」を加えることにした。豊かな心そのものはなかなか見え
ないが、
「 な す こ と に よ っ て 学 ぶ 」を 指 導 理 念 と す る 特 別 活 動 に お い て は 、様 々 な 実 践 活
動を通して、子どもたちの「実践する心」が、発言、行動として現れるようにすること
-3-
で、研究主題に迫れると考えたからである。
(3 )
子どもの実態から
平成20年の7月と12月に、本校の研究がめざす「子どもの姿」を明らかにしたい
と 考 え 、子 ど も た ち の 意 識 調 査 を 行 っ た 。特 に 、本 校 研 究 で 大 事 に し た い 、
「 自 主・自 立 」、
「 人 間 関 係 」、
「 役 割・責 任 」に つ い て 見 て み る と 、心 情 面 で は 大 事 だ と は 思 っ て い て も 、
行動面ではできていないと感じている子どもの存在が目に付いた。また、心情面でも、
大切だとは思わないと答えている子どもの存在が若干あり、さらに、道徳の時間の充実
を図ったり、個への対応を大切にしたりしながら、子どもたちの心を耕していくことが
必要である。
【行動面】
自主・自律
【心情面】
①自分でできることは、自分でしている。
②自分でできることは自分でする。
7月
7月
12月
12月
0%
10%
20%
30%
40%
4点
50%
3点
60%
2点
70%
80%
90%
0%
100%
10%
20%
30%
1点
40%
50%
4点
3点
60%
2点
70%
80%
90%
100%
80%
90%
100%
1点
人間関係
④友達と仲よくする。
③友達と仲よくできている。
7月
7月
12月
12月
0%
10%
20%
30%
40%
50%
4点
3点
60%
2点
70%
80%
90%
0%
100%
10%
20%
30%
40%
4点
1点
50%
3点
2点
60%
70%
1点
役割・責任
⑥自分の役割を責任もって果たす。
⑤自分の役割を責任もって果たしている。
7月
7月
12月
12月
0%
10%
20%
30%
40%
4点
3点
50%
2点
60%
70%
80%
90%
100%
3
20%
4点
4点(よくできている)~1点(できていない)
図Ⅰ-1
0%
1点
40%
3点
4点(大切だと思う)
60%
80%
2点 1点
100%
~1点(大切と思わない)
道徳的実践における行動面と心情面の姿
研究主題について
(1 )
①
研究主題についての考え方
「一人一人の子どもが豊かな心をもつ」とは
本 校 で は 、豊 か な 心 を 、
「 豊 か な 感 性 や 正 し い 判 断 力 と 実 践 力 を 持 ち 、常 に 、心 を
働かせながら、周りの人々と温かで共感的な人間関係を築こうとする心」ととらえ
た。人は、決して一人で成長し、人格が形成されていくわけではない。いろいろな
人と出会い人とかかわる中で、様々な体験を通して、自分という存在を確立してい
-4-
く の で あ る 。そ の よ う な 中 で 、子 ど も た ち は 、自 分 自 身 と 向 き 合 い 、
「 心 を た が や し 」、
「 心 を み つ め 」、「 心 を は た ら か せ 」 な が ら 、 豊 か な 心 を は ぐ く ん で い く の で は な い
かと考える。
そこで、本校では、平成20年に実施した意識調査などの結果から、本校研究の
めざす、豊かな心をもつ子どもの姿として、道徳性の最も重要な心である「命を大
切にしようとする心」を根底におきながらも、次の3つの心を大事にしていくこと
にした。
大事にしたい「3つの心」
○ 自主的・自律的に生活しようとする心⇒「自主・自律」
○ よ り よ い 人 間 関 係 を 築 こ う と す る 心 ⇒ 「( よ り よ い ) 人 間 関 係 」
○ 役割・責任を果たそうとする心⇒「役割・責任」
これらの大事にしたい「3つの心」は、学校の教育活動全体を通じて道徳教育を行
ううえでのキーワードとなり、温かな人間関係のある学校経営、学級経営の基盤とな
るものである。
②
「自信をもって生き生きと活動する」
とは
本校では、自信をもって生き生きと活
動する子どもの姿を、
「集団の一員として、
認め合いや支え合いがある共感的な人間
関係の中で、自分のよさや価値を認め、
自分の可能性を信じて、生き方を高めよ
うとする姿」ととらえた。そして、その
ような子どもの姿は、図Ⅰ-2に示した
本校の学習過程「おおえのき」の中で育
つのではないかと考えた。本校の学習過
程では、子ども一人一人が、興味・関心
図Ⅰ-2
学習過程「おおえのき」
をもって課題をとらえ、一人であるいは友達と協同で追求し、表現することで自他の
よ さ や 伸 び を 評 価 し 、認 め 合 っ て い く 。そ し て 、自 他 に よ る 評 価 や そ の 交 流 に よ り「 自
信」を深めていく。課題解決に成功すれば自ずと自信も深まり、次の活動への意欲も
高まる。たとえ失敗しても、自他の学習を振り返ったり、よさや伸びを見つめ直した
りすることで、次の成功への願いや確信を強めることが可能となる。失敗を恐れず 、
失敗体験を生かしながら、質の高い体験的な活動を一つ一つ積み重ねていくことも自
信を培う上で重要である。子どもは、仲間から受容され、支持されることによって、
集団の中における自己の姿を客観的に理解し、自己の認識を深め、 自分への自信と心
理的安定感を強めると考える。
(2 )
副題「特別活動における道徳的実践の指導の充実を図る」について
特別活動における望ましい集団活動は、子どもたちの貴重な体験を生み出す場であ
り、道徳的実践の場である。しかし、その活動が、子どもの心や行動の成長につなが
り、生活の中に根付いていくものでなければ、道徳的実践とは程遠いものになる。
-5-
また、
「 や れ ば 善 い 事 だ と は わ か っ て い て も 、な か な か で き な い 子 ど も 」、
「素晴らし
い行動をしているのに、その価値や自分のよさに気付いていない子ども」を前にする
とき、道徳の時間に育成される道徳的実践力と特別活動での道徳的実践を、いかに有
機的に関連させていくかが課題となる。
そこで、本校では、道徳の時間に育成された道徳実践力が、体験的な活動や日常生
活の中で道徳的実践として行動に表せるようにすることを「道徳的実践の行動化」と
し、特別活動での道徳的実践を、道徳の時間に道徳的に価値づけることを「道徳的実
践の価値づけ 」とし て、こ の 2 つの 作用を大事に し合うこ とにより 、それ らを有機的
に関連させ、子どもの道徳性を高めていきたいと考えた。
さらに、本校では、道徳的実践を「行動のエネルギー」が発揮されるもの、道徳的
実践力を「心のエネルギー」が発揮されるものととらえた。子どもは、様々な体験の
中で、この2つのエネルギーを相互に関連させながら、自己の生き方への考えを深め
たり、自己を生かす能力を高めたりしていくものと考えた。つまり、心と行動がひと
つ に な っ て 、 道 徳 性 は 高 ま っ て い く の で あ る ( 図 Ⅰ - 3 )。
図Ⅰ-3
4
(1 )
道徳的実践力と道徳的実践の有機的な関連
研究の内容
研究の目標
道徳の時間を要としながら、
「 な す こ と に よ っ て 学 ぶ 」特 別 活 動 の 指 導 理 念 の も と 、
望 ま し い 集 団 活 動 を 通 し て 、自 主 的・実 践 的 な 態 度 や よ り よ い 人 間 関 係 を は ぐ く む 。
そして、自己の生き方についての考えを深め 、自己を生かす能力を養うことを通し
て、一人一人の子どもが豊かな心をもち、自信をもって生き生きと活動する学習を
創造する。
-6-
(2 )
研究の仮説
特別活動における道徳的実践の指導を充実させ、道徳的実践と道徳的実践力との
有機的な関連を図る指導を効果的に行えば、一人一人の子どもが自己の生き方につ
いての考えを深め、豊かな心をもち、自信をもって生き生きと活動するであろう。
(3 )
研究の視点
研究実践を進める上で一番大事にしたい点は、学びの主人公である子どもたちの
学ぶ意欲である。子どもたち自身が自分の課題をもち自ら考え取り組んでいくよう
な生き生きとした活動にするためにも、道徳的実践力の育成と道徳的実践の充実を
図ること必要である。そこで、道徳教育における特別活動の果たす役割を考える上
で、次の4点を視点として、研究を進めていくことにした。
①
研究の視点1
本校における 道徳的価 値の重点 化を 図り 、教 師や子ど もの道徳 的実践への 意
識をつくる。
②
①
特別活動で培う道徳性の重点化(重点価値項目の設定)
②
本校ではぐくむ「豊かな心」に迫る「大事にしたい3つの心」の明確化
③
発達段階に応じた道徳的実践の姿(めざす子どもの姿)の明確化
④
教師、子どもの意識を高める手立ての具体化
研究の視点2
道徳的実践力の行動化や道徳的実践の価値づけの観点から 、相互の関連を図
るような指導の「場」や「手立て」を工夫することにより望ましい集団活動を
つくる。
①
望ましい集団活動につなげる活動過程「おおえのき」の実践
②
活動や学習の目標達成をめざす授業づくりのポイントによる実践
③
子どもの道徳的実践の姿や道徳的実践力を引き出す教師のかかわりの具
体化
③
研究の視点3
多様な集団活動を通して実践的・体験的な活動の充実を図り 、道徳的実践の
場をつくる。
④
①
友達とかかわり合える活動の工夫
②
異学年との交流が生まれる活動の工夫
③
様々な人々とのふれあいが生まれる活動の工夫
研究の視点4
自分を見つめ生かす評価を工夫し、互いの個性やよさ、可能性を認め合う場
をつくる。
①
道徳的価値に気付かせる自己評価・相互評価 、他者評価の工夫
②
個と集団のかかわりをつくる教師の働きかけ
③
子どもに働きかける環境づくり(道徳的実践の日常化)
-7-
5
研究の構想
一人一人の子どもが豊かな心をもち、自信をもって生き生きと活動する学習の創造
豊かな感性、判断力、実践力をもち、共感的な人間関係を築こうとする
研究の視点1
本校における道徳的価
値の重点化を図り、教
師や子どもの道徳的実
践への意識をつくる。
自己の生き方についての考え方を深め、自己の能力を生かそうとする
特別活動における
道徳的実践の指導の充実
自主的・実践的な態度、よりよい人間関係
①特別活動で培う道徳性の
重点化(重点価値項目の設定)
②本校ではぐくむ「豊かな心」に
迫る「大事にしたい3つの心」
の明確化
③発達段階に応じた道徳的実践
の姿(めざす子どもの姿)の
明確化
④教師、子どもの意識を高める
手立ての具体化
自分のよさや可能性を信じ、生き方を高めようとする
活動過程(学習過程)「おおえのき」
研究の視点3
多様な集団活動を通し
て実践的・体験的な活
動の充実を図り、道徳
的実践の場をつくる。
研究の仮説
大事にしたい
特別活動における道徳的実践の指導を充実させ、道徳的実
践と道徳的実践力との有機的な関連を図る指導を効果的に行
えば、一人一人の子どもが自己の生き方についての考えを深
め、豊かな心をもち、自信をもって生き生きと活動するであ
ろう。
「3つの心」
自
主
的
・
自
律
的
に
生
活
し
よ
う
と
す
る
心
よ
り
よ
い
人
間
関
係
を
築
こ
う
と
す
る
心
役
割
・
責
任
を
果
た
そ
う
と
す
る
心
【道徳の時間】
↑
行動化
道
徳
的
実
践
有
機
的
な
関
連
道
徳
的
実
践
力
の
価値づけ
① 友達とかかわり合える活動の
工夫
②異学年との交流が生まれる
活動の工夫
③様々な人々とのふれあいが
生まれる活動の工夫
望ましい集団活動
道
徳
的
実
践
と
道
徳
的
実
践
力
命の大切さ
心をたがやす
心をみつめる
様々な体験活動
研究の視点2
道徳的実践力の行動化や道徳的実践の価値づけの観点
から、相互の関連を図るような指導の「場」や「手立て」
を工夫することにより望ましい集団活動をつくる。
心をはたらかせる
心をはぐくむ環境
道徳的意義
道徳的価値
の自覚
道徳的実践
価値意識の持続
力
研究の視点4
自分を見つめ生か
す評価を工夫し、
互いの個性やよ
さ、可能性を認め
合う場をつくる。
学校・家庭・地域
①望ましい集団活動につなげる活動過程「おおえのき」の実践
8
②活動や学習の目標達成をめざす授業づくりのポイントによる実践
③子どもの道徳的実践の姿や道徳的実践力を引き出す教師のかかわりの具体化
①道徳的価値に気付かせる自己評価・相互評価、
他者評価の工夫
②個と集団のかかわりをつくる教師の働きかけ
③子どもに働きかける環境づくり(道徳的実践の
日常化)
Ⅱ
研究の視点1における研究の実際
研究の視点1:本校における道徳的価値の重点化を図り、教師や子どもの道徳的
実践への意識をつくる。
1
特別活動で培う道徳性の重点化(重点価値項目の設定)
子どもたちの実態を洗い出し、保護者や教師の願いを込め、道徳の内容の重点化を
図 っ た ( 表 Ⅱ - 1 )。
表Ⅱ-1
本校で重点的に取り上げる「道徳の内容」
大 江 小 で重 点 的 に取 り上 げる「道 徳 の内 容 」
Ⅰ - (1) 健 康 で 安 全 に 気 を 付 け 、 物 や 金 銭 を 大 切 に し 、 身 の 回 り を 整 え 、 わ が ま
低
学
年
まをしないで、規則正しい生活をする。
Ⅱ - (2) 幼 い 人 や 高 齢 者 な ど 身 近 に い る 人 に 温 か い 心 で 接 し 、 親 切 に す る 。
Ⅱ - (3) 友 達 と 仲 よ く し 、 助 け 合 う 。
Ⅲ - (1) 生 き る こ と を 喜 び 、 生 命 を 大 切 に す る 心 を も つ 。
Ⅳ - (2) 働 く こ と の よ さ を 感 じ て 、 み ん な の た め に 働 く 。
Ⅰ - (1) 自 分 で で き る こ と は 自 分 で や り 、 よ く 考 え て 行 動 し 、 節 度 の あ る 生 活 を
中
学
年
する。
Ⅱ - (2) 相 手 の こ と を 思 い や り 、 進 ん で 親 切 に す る 。
Ⅱ - (3) 友 達 と 互 い に 理 解 し 、 信 頼 し 、 助 け 合 う 。
Ⅲ - (1) 生 命 の 尊 さ を 感 じ 取 り 、 生 命 あ る も の を 大 切 に す る 。
Ⅳ - (2) 働 く こ と の 大 切 さ を 知 り 、 進 ん で み ん な の た め に 働 く 。
Ⅰ - (1) 生 活 習 慣 の 大 切 さ を 知 り 、 自 分 の 生 活 を 見 直 し 、 節 度 を 守 り 節 制 に 心 掛
ける。
Ⅱ - (2) だ れ に 対 し て も 思 い や り の 心 を も ち 、 相 手 の 立 場 に 立 っ て 親 切 に す る 。
高
Ⅱ - (3) 互 い に 信 頼 し 、 学 び 合 っ て 友 情 を 深 め 、 男 女 仲 よ く 協 力 し 助 け 合 う 。
学
Ⅲ - (1) 生 命 が か け が え の な い も の で あ る こ と を 知 り 、 自 他 の 生 命 を 尊 重 す る 。
年
Ⅳ - (3) 身 近 な 集 団 に 進 ん で 参 加 し 、 自 分 の 役 割 を 自 覚 し 、 協 力 し て 主 体 的 に 責
任を果たす。
Ⅳ - (4) 働 く こ と の 意 義 を 理 解 し 、 社 会 に 奉 仕 す る 喜 び を 知 っ て 公 共 の た め に 役
に立つことをする。
2
本校ではぐくむ「豊かな心」に迫る「大事にしたい3つの心」の明確化
(1)で重点化した内容から、本校ではぐくむ「豊かな心」に迫る3つの心を設定
し た ( 図 Ⅱ - 1 )。
大 事 にしたい
3つの心
自 主 的・自 律 的 に 生 活 し よ う と す る 心
よりよい人間関係 を築こうとする心
役割・責任を果たそうとする心
自 主 ・自 律
人間関係
役 割 ・責 任
命 の大 切 さ
図Ⅱ-1
大事にしたい3つの心
-9-
本 校 で は 、 子 ど も の 「 豊 か な 心 」 を 考 え る 際 、「 命 を 大 切 に し よ う と す る 心 」 を は
ぐくむことを前提としながら、子どもの実態調査や保護者・教師の意識調査などを踏
まえて道徳教育の重点目標を設定した。そのいくつかの目標を括るものとして、しか
も、特別活動の望ましい集団活動や体験的な活動を通して身につけることができるも
の と し て 、「 自 主 的 ・ 自 律 的 に 生 活 し よ う と す る 心 」「 よ り よ い 人 間 関 係 を 築 こ う と す
る心」
「 役 割・責 任 を 果 た そ う と す る 心 」を 設 定 し た 。本 研 究 に お い て は 、特 別 活 動 の
様々な活動の中で、特に、この3つの心をはぐくむことを通して、子どもの「豊かな
心」に迫りたいと考えた。
3
発達段階に応じた道徳的実践の姿(めざす子どもの姿)の明確化
道 徳 教 育 の 内 容 の 重 点 化 を も と に 、本 校 研 究 テ ー マ の も と 、
「大事にしたい3つの心」
に つ い て 、 発 達 段 階 に 応 じ た 「 め ざ す 子 ど も の 姿 」 を 設 定 し た ( 表 Ⅱ - 2 )。
表Ⅱ-2
発達段階に応じた「めざす子どもの姿」
低学年
中学年
高学年
豊かな心を
生きることを喜び、自分や友
生命の尊さを感じ取り、思い
自他の生命を尊重し、相手の
もち、
自信を
達を大切にして楽しく生活し、
やりをもって友達と協力し合っ
思いや気持ちに共感し支え合っ
もって生き
友達と考えや思いを伝え合いな
て生活し、自他のよさや伸びを
て生活し、自他を尊重し認め合
生きと活動
がら、よりよい仲間をつくる。
分かりあいながら、よりよい学
いながら、よりよい学校をつく
級をつくる。
る。
A 自分のためになることをよ
A よりよい生き方について考
する
A 自分のことは自分で行い、素
直にのびのびと生活する。
く考えて行動する。
え、自分の思いを生かし進ん
で行動する。
B 自分の生活を振り返り、自分
にあった目標を決める。
・
自
主
自
律
B 自分の生活を振り返り、自分
B 生活を見直し、自他のよさを
のよいところを伸ばそうとす
生かし、工夫して生活を高め
る。
ようとする。
C 学級生活を楽しくするため
C 学級内の様々な課題を自分
C 体験(成功・失敗)を生かし、
に、身の回りの課題に進んで
の課題としてとらえ、友達と
友達と協働して学級や学校の
関わり解決する。
協力して、進んで課題解決に
課題解決に取り組む。
取り組む。
A 生命を大切にする心をもつ。 A 生命あるものを大切にする。 A 自他の生命を尊重する。
大
事
に
し
た
い
3
つ
の
心
人
間
関
係
B 気持ちのよいあいさつや言
B 誰に対しても気持ちよいあ
B 時と場をわきまえ、心のこも
葉遣いを心がけ、明るく接す
いさつや言葉遣いを心がけて
ったあいさつや言葉遣いで接
る。
接する。
C 身近にいる人に親切にする。 C 相手のことを思いやり進ん
で親切にする。
する。
C 相手の立場に立って親切に
する。
D 友達の意見をよく聞き、自分
D 自分と異なる考えでもよく
D 自分や相手の気持ちを進ん
の思いを自分の言葉で伝え
聞いたり、理由や根拠を添え
で交流させ、互いのよさや違
る。
て自分の考えをわかりやすく
いを伝え合おうとする。
表現したりする。
A 自分がやらなければならな
いことをしっかり行う。
役
割
・
責
任
B 働くことのよさを感じて、み
んなのために働こうとする。
C 約束やきまりを守り、自分に
A 自分のやるべきことを粘り
A 自分の役割を自覚し、責任を
強く最後までやりとげる。
もって最後までやりぬく。
B みんなのために進んで働こ
B 働くことの意義を理解し、み
うとする。
んなの役に立とうとする。
C 学級や学校のきまりを守り、 C 学級や学校のためになるこ
できることを見つけ、学級生
その一員として行動し、協力
とを考え、よりよい校風や級
活を楽しくする。
し合って楽しい集団をつくろ
風をつくろうとする。
うとする。
学級活動
(1)
しくする。
学級活動
(2)
り組もうとする。
仲良く助け合い学級生活を楽
日常の生活や学習に進んで取
協力し合って楽しい学級生活
をつくる。
日常の生活や学習に意欲的に
取り組もうとする。
- 10 -
信頼し支え合って楽しく豊か
な学級や学校の生活をつくる。
日常の生活や学習に自主的に
取り組もうとする。
4
(1 )
教師、子どもの意識を高める手立ての具体化
学級活動の年間指導計画への道徳教育(道徳の時間)の重点項目の位置づけ
本校では、道徳教育の内容の重点化を一層図るために、学級活動の年間指導計画
にも道徳の時間の指導計
表Ⅱ-3
画 を 位 置 づ け た 。そ し て 、
学校目標
道徳の時間と学級活動の
月
4
5
(2 )
指導案の工夫
授業実践を進めるにあ
6
たって指導案の形式を工
夫した。子どもの実態か
8
・
9
10
ことができるように、関
11
プール開き
風水害避難訓練
大江パワーアッ
プタイム
朝の活動等
・シンボルマークを ・交通のきまりを 運動会の練習
つくろう 自 人
守ろう
・運動会に向かっ
て
・学級の歌を決めよ ・歯を大切に
係活動
う
自 人 ・雨の日の過ごし
方
・プールの使い方
・学級の歌を考えよ ・楽しい夏休み
う
自
・できるようになっ
たよ会をしよう
ふれあいパー
ク準備
・係を決めよう 役 ・ふわふわ言葉と 2学期のめあて
・交流会の計画を立 ちくちく言葉人 係活動
てよう
人 ・早ね・早おき・
朝ごはん
日曜参観
縦割り遊び
研究発表会
・なかよくなる会を ・掃除をがんばろ 何でも
しよう
人
う
役
スピーチ
・目を大切にしよ
う
ハートフルコン
サート
・なかよくなる会
火災避難訓練
1
2
終業式
始業式
給食記念週間
性教育月間
新1年生との交
流会
学習発表会
お別れ遠足
6年生を送る会
修了式
3つの心
日直
給食当番
朝の会
帰りの会
始業式
水遊び大会
希望荘との交流会
見学旅行
12 大掃除
連する道徳の内容を明記
しながら、授業づくりの
・当番の仕事役
・トイレの使い方
・学級のめあてを
つくろう 自
入学式
1年生を迎える会
歓迎遠足
交通教室
授業参観
運動会
学級活動(2)
1単位時間の指導
人
立てになるようにと考え
また、題材の目標に迫る
学級活動(1)
予想される議題・活動例
ふれあいパーク
終業式
値を意識した授業の組み
た本校独自のものである。
学校行事
その他の活動
7
ら授業を組み立て、教師
自身が高めたい道徳的価
「やさしさ」と「がんばるきもち」がいっぱいの1年1組
気持ちのよいあいさつをし、友だちと仲よく助け合う
自分がやるべきことやできることを進んで行い、学級生活を楽しくする
自分のことは自分で行い、 目標に向かって明るく生活する
育てたい力
を生かして自然と関連が
図られるようにした。
熊本市立大江小学校 第 1 学年 1 組 学級活動 年間指導計画
21世紀を創る大江の「共生の教育」 ~子どもの活躍を中心にすえた学校経営を目指して~
学級目標
安易な関連づけは避けな
がらも、それぞれの特質
学級毎の学級活動年間指導計画
平成21年度
・ともだちとなか 何でも
よく
人
スピーチ
・いのちがあって
よかった
・2学期のなかよし ・学級のめあてを 大掃除
集会をしよう 人
振り返ろう 役
道徳の時間
生活科・総合的な学習の時間
主題名 価値項目
主な活動
「たのしいがっこう」
がっこうだいすき4-(4)
みんなで学校
を歩こう
役
人
間
関
係
の
基
盤
づ
く
り
(
友
達
と
仲
よ
く
・
命
を
感
じ
る
)
「あかるいあいさつ」
明るいあいさつ2-(2)人
「かぼちゃのつる」
自分の力で1-(1)自
「はしのうえのおおか
み」親切に 2-(2)人
「らいおんのがっこう」
きまりを守る 4-(1) 役
「くまさんのなみだ」
友達を大切に 2-(3) 人
「ぼくのあさがお」
かわいいあさがお3-(1)
役
割
・
責
任
の
自
覚
(
み
ん
な
の
た
め
に
)
人
・新しい係を決めよ ・楽しい給食
う
役 ・かぜのよぼう
(人間関係)
(役割・責任)
(自主・自律)
3学期のめあて
給食の時間
・新しい1年生を迎 ・新しい1年生に
えよう
人
手紙を書こう
自
あさがおの種
まきをしよう
もう一度たん
けんしよう
やってみたい
ことに挑戦し
よう
みんなで通学
路を歩こう
命
「しまのおさるたち」
よく考えて 1-(1)
人
「すずりがいけ」
友達への思いやり2-(2)
たくさん花を
さかせよう
種取りをしよ
う
人
「いのちがあってよかった」 動物を見に行
大切な命 3-(1)
命 こう
「てつぼうきらい」
生き物をさが
助け合い 2-(3)
人 そう
自
主
・
自
律
の
姿
勢
(
自
分
か
ら
進
ん
で
)
・体をきれいに
・まとめの集会をし ・もうすぐ2年生 1年間を振り
よう
自
返って
・まとめの集会
「おもちゃのかいぎ」大切に
したいこと 1-(1)
自
「ぼくにまかせてね」じぶんに
できること 4-(2)
役
秋を探しに行
こう
作って遊ぼう
「くりのみ」
こまっている友達に
2-(3)
人
「ぼくのはなさいたけ
ど」思いやりの心
2-(2)
人
うちの人と一
緒にしよう
「やしゃわか」
明るい心で 1
自
「ハムスターのあかちゃん」
大切な命 3-(1)
命
「2 年生になっても」
明るい心で 4-(4)
役
冬をさがそう
作って遊ぼう
楽しかったこ
とを教え合お
う
新しい1年生
を迎えよう
2年生になっ
たら
ポイント等を明らかにす
3
るようにした。
※ 「3つの心」は本校の児童の実態から道徳の内容を重点化したものを特別活動と関連させて設定したものである。
例 ・子どもの実態と教師の思いを重ね合わせた題材設定に
・目標の達成に向けて、どんな手立てをとっていくのかを記
・ 学 級 活 動 ・・・「 め ざ す 子 ど も の 姿 」 と 「 関 連 す る 道 徳 の 内 容 」 も 記 述
道徳的実践としての題材の意義の明確化
・ 道 徳 の 時 間 ・・・特 別 活 動 と の 関 連 に つ い て 記 述
(3 )
特別活動、道徳の時間における教師のかかわり
子どもたちの道徳的実践への意識を高めるためには、まず、教師の意識を高める
ことが必要である。そこで、教師が授業においてどのように子どもたちにかかわる
かを次の4点から迫ることにした。そのことにより、子どもの発言や行動から道徳
的実践の姿を見出せる教師に、子どものつぶやきを生かし学級全体に広げていける
教師に、子どもの主体性や自主性を大切にして活動の姿から子どもの成長を見出せ
る教師になることをめざした。
- 11 -
ア
望ましい集団活動や体験的な活動が子どもの道徳的実践の場となるように
工夫し、その中での道徳的実践の姿を見出し、子どもに気付かせる。
イ 特 別 活 動 で の 望 ま し い 集 団 活 動 や 体 験 的 な 活 動 を も と に 、子 ど も が 自 他 の 道
徳的価値に気付けるような手立てを工夫し、価値の自覚を深める。
ウ 子 ど も の 自 己 評 価・相 互 評 価 の 手 立 て を 工 夫 し 、よ さ や 可 能 性 に 気 付 か せ る 。
エ 個 と 集 団 の か か わ り を 意 識 し 、一 人 一 人 の 成 長 を 集 団 全 体 に 広 げ る 手 立 て を
工夫する。
Ⅲ
研究の視点2における研究の実際
研究の視点2:道徳的実践力の行動化や道徳的実践の価値づけの観点から、相互
の関連を図るような指導の「場」や「手立て」を工夫すること
により望ましい集団活動をつくる。
1
望ましい集団活動につなげる学習(活動)過程「おおえのき」の実践
特別活動での望ましい集団活動を実現するために、本校の学習過程「おおえのき」
( 図 Ⅲ - 1 )を ベ ー ス に し な が ら 、特 に 、学 級 活 動 に お い て 事 前 ― 本 時 ― 事 後 の 活 動
を 組 み 立 て て い く 。ま た 、道 徳 の 時 間 に お い て も 、子 ど も た ち が 主 体 的 に 学 習 を 進 め
ることができるよう、この学習過程にそって学習展開を図るように心がけた。
図Ⅲ-1
2
道徳の時間と学級活動での学習過程「おおえのき」
活動や学習の目標達成をめざす授業づくりのポイントによる実践
授 業 実 践 に お い て は 、活 動 や 題 材 の 目 標 達 成 に 向 け て 、4 つ の 授 業 づ く り の ポ イ ン
ト を 設 定 し 、授 業 に お い て 具 体 的 に ど ん な 手 立 て を と る か を 明 ら か に し た 。こ の 4 つ
のポイントについては、指導案に位置づけ実践化を図った。
- 12 -
(1 )
<ポイント①:必要感をもたせる手立ての工夫>
学習や活動についての子どもたちの必要感を高めるためにどのような手立てをと
るかを明確にするようにした。
(2 )
<ポイント②:コミュニケーションを深める手立ての工夫>
子どもたちが心を開き、語り合い、認め合い、コミュニケーションを深めるため
にどのような手立てをとるかを明確にするようにした。
(3 )
<ポイント③:実践につなげる手立ての工夫>
主体的に実践し、よりよい生き方を求める心と力を発揮し、道徳的価値を高め、
道徳的実践につなげるためにどのような手立てを とるかを明確にするようにした。
(4 )
<ポイント④:よさや伸びを確かめる評価の工夫>
成就感や達成感を感じたり、自他を見つめ直して自尊感情や自己有用感を高めた
りするためにはどのような評価の手立てをとるかを明確にするようにした。
3
低学年部の取組
(1)
【第1学年
学級活動】
<題材名「やさしさいっぱいの『ごんたくん集会』をしよう」活動内容(1)>
①
めざす子どもの姿
ア
友達と仲よく活動し、助け合い、だれとでも仲よくすることができる。
【 人 間 関 係 (C )】
イ
学級生活を楽しくするために、自分たちの課題に進んでかかわり、取り組むこ
【 自 主 ・ 自 律 (C )】
とができる。
ウ
「ごんたくん集会」を楽しくするための自分の役割がわかり、しっかり行うこ
【 役 割 ・ 責 任 (A )】
とができる。
②
本題材における学習過程「おおえのき」とその効果(視点2-①)
本題材は、学級目標「やさしさとがんばるきもち
1ねん1くみ」を具現化する
「ごんたくん集会」に向け、1学期からの子どもの学級目標への思いを深めていこ
うとするものである。この学習過程は、1学期の学級目標設定や目標達成への意識
づくり、2学期になっての学級目標の振り返りと実践化を進める活動づくりへとつ
ながり、本時の話合い、事後の実践を通して学級目標達成への意欲をさらに高める
ものであった。年間を通じて、このようなストーリーのある活動づくり、そして、
そのための学習過程をとっていることは、子どもや教師の実践への意識づく りを支
えるものであると考える。
③
本題材における授業づくりのポイントとその効果
ア
ポイント①:必要感をもたせる手立ての工夫
帰りの会の「ごんたくんタイム」では、学級目標の
ふり返りを行っている。その中で、自分たちの毎日の
生 活 を 学 級 目 標 と 照 ら し 合 わ せ て 考 え さ せ 、「 や さ し
図Ⅲ-2
- 13 -
羽をつけたよ
さ」がもう尐しであることに気付かせた。また、学級目標に近付いたお祝いに、
ごんたくんに羽を付けたときの写真を見せて、その喜びを思い出させたことは、
今度のお祝いには帽子をかぶせることへの意欲となり、話合い活動への気持ちを
高 め る こ と に つ な が っ た( 図 Ⅲ ― 2 )。さ ら に 、一 人 一 人 が 帽 子 の デ ザ イ ン を 考 え 、
それを掲示したことで、その気持ちをより高めることができた。
イ
ポイント②:コミュニケーションを高める手立ての工夫
提案理由をわかりやすく伝えて、
「 ご ん た く ん 集 会 」で 行 う 遊 び を 考 え さ せ た こ
と で 、 子 ど も た ち は 、 提 案 理 由 の 「 や さ し さ 」「 な か よ く な る よ う に 」 を 意 識 し
て 話 合 い に 参 加 で き た 。「『 こ お り 鬼 ご っ こ 』 は 、 鬼 か ら タ ッ チ さ れ た 人 を ま だ タ
ッ チ さ れ て い な い 人 が 助 け る か ら 、 や さ し さ が あ る と 思 い ま す 。」 な ど 、 提 案 理
由を意識した意見が聞かれ、話合いの途中に、教師がそれを効果的に取り上げて
子 ど も た ち に 返 す こ と で 、さ ら に 、全 員 が 提 案 理 由 を 意 識 す る こ と に つ な が っ た 。
ウ
ポイント③:実践につなげる手立ての工夫
「ごんたくん集会」の目的を意識しながら、それぞれの役割を果たし、協力し
て活動ができるようにするために、学級活動の掲示板に、学級会で決まったこと
と 、 そ の 遊 び の 方 法 を 書 い た カ ー ド を 掲 示 し た 。 ま た 、「 進 行 」「 は じ め の 言 葉 」
などの係ごとに準備の時間を設定し、集会の日までに準備や練習ができるように
し た 。「 か ざ り 」 係 に な っ た 子 ど も は 、 家 庭 に 帰 っ て か ら も ご ん た く ん の 絵 を 書
いたり、楽しい飾りを作ったりして、楽しみながら自分の役目を果たす様子が見
られた。
エ
ポイント④:よさや伸びを確かめる評価の工夫
話合いの最後に、自己評価・相互評価を取り入れ、友達のがんばりやよさを認
め 、 ほ め 合 う よ う な 交 流 の 場 を 設 定 し た 。 相 互 評 価 の 中 に は 、「 ○ ○ さ ん は 、 ゆ
っくりだったけど一生懸命に意見を言っていたからとてもがんばったと思いま
し た 。」な ど 、友 達 の 思 い を 心 で し っ か り と 受 け 止 め て い る 子 ど も の 発 言 が あ り 、
お互いの伸びを実感している様子が見られた。
「 ご ん た く ん 集 会 」 後 の 毎 日 の 帰 り の 会 で は 、「 ご ん た く ん タ イ ム 」 の 時 間 が
ま す ま す 活 発 に な り 、 お 互 い の 「 や さ し さ 」 を 見 つ け る こ と や 、「 自 分 は や さ し
さ が あ っ た 。」 と 自 信 を も っ て 手 を 挙 げ る こ と が 増 え て き た 。
④
実践の考察(子どもの道徳的実践の姿や変容)
友達に優しくすることは大切なことだとわかっていても、なかなか実践に結び付
かない1年生にとって、学級目標の「やさしさ」に近付くために学習過程を構成し
た こ と で 、一 人 一 人 の 意 識 を 高 め る こ と が で き た 。
「 ご ん た く ん 集 会 」の 遊 び に 選 ば
れなかった遊びについては、昼休みに順番に行うようにした。そのルールやチーム
の 決 め 方 に も 、「 や さ し さ 」 の 視 点 が 生 き た 発 言 が 聞 か れ 、「 ご ん た く ん 集 会 」 の 経
験 が 、日 常 の 実 践 へ と つ な が る 姿 が 見 ら れ た 。
「 本 を 読 む こ と が 大 好 き 」と い う 子 ど
もも、全員遊びの日は、喜んで外へ飛び出していくようになり、友達と一緒に遊ぶ
喜びを味わっている。
- 14 -
( 2 )【 第 2 学 年
学級活動】
<題材名「係活動パワーアップ大作戦」
①
活動内容(2)>
めざす子どもの姿
ア
自分や友達を大切にし、身の回りの課題に進んで関わり解決しようとする。
【 自 主 ・ 自 律 ( C )】
イ
自 分 の 考 え を も ち 、み ん な に 自 分 の 気 持 ち を 伝 え よ う と す る 。
【 人 間 関 係( D )】
ウ
働くことのよさを知り、自分にできることを見つけ、進んで活動できる。
【 役 割 ・ 責 任 ( B )】
②
本題材における学習過程「おおえのき」とその効果(視点2-①)
学校にもすっかり慣れ、学習や生活に自分から進んで取り組み、 友達と協力して
活動をする経験も積み重ねてきたこの時期に、係の活動を充実させていくことは 、
よりよい学級を築くために大切であり、学級目標「パワー全開わくわくいっぱい勉
強大好き優しさあふれるいつもニコニコ2年2組」の達成につながると考えた。 係
活動は、子どもがよりよい生活を築くために 、諸課題を見い出し、協力して解決し
ていく自発的・自治的な活動であり、学習過程「おおえのき」の一連の過程によっ
て、係活動への意識を向上させることができたと考える。
③
本題材における授業づくりのポイントとその効果
ア
ポイント①
必要感をもたせる手立ての工夫
初めに一人一人のがんばりが係のがんばりにな
り 、学 級 を よ り よ い も の に 変 え て い く と い う 意 識 を
も た せ た 。そ れ に よ り 、一 人 だ け の 問 題 で は な く 学
級全体の共通の問題として取り組むことができた。
ま た 、導 入 時 に 、 ア ン ケ ー ト 結 果( 学 級 全 体 )や
振 り 返 り シ ー ト( 個 人 )を グ ラ フ 化 し た こ と で 、自
分の課題を分かりやすく捉えることができ、自分の
め あ て を 自 己 決 定 す る 際 に も 役 立 っ た ( 図 Ⅲ - 3 )。
図Ⅲ-3
導入の工夫で自己決定を
展 開 で は 、6 年 生 の 活 動 の 様 子 を 聞 く こ と で 、こ れ ま で の 自 分 の 活 動 と 比 較 し 、
こ れ か ら ど の よ う に 活 動 を 進 め て い け ば よ い か を イ メ ー ジ す る こ と が で き た 。自
分たちにもできる事柄を見いだ す切り口になった。
イ
ポイント②
コミュニケーションを高める手立ての工夫
自 分 た ち の 様 子 が よ く 分 か る よ う に 写 真 や 動 画 な ど を 使 い 、イ メ ー ジ 化 し 、具
体 的 に 感 じ る よ う に 支 援 し た 。低 学 年 に は 、視 覚 的 に 訴 え る こ と が 有 効 で 、 理 解
を 高 め る こ と が で き た 。話 合 い の 際 に 、具 体 的 な 内 容 で 話 を 進 め る こ と に つ な が
っ て い た と 感 じ た 。 ま た 、司 会 者 の 子 ど も に 、話 合 い を 進 め る た め の マ ニ ュ ア ル
カードをもたせておいたことで 、どの班でも話合いがスムーズに流れていた。
ウ
ポイント③
実践につなげる手立ての工夫
グ ル ー プ で 話 し 合 っ た こ と で 、共 に が ん ば ろ う と い う
意 識 が 高 ま り 、 学 級 全 体 の 意 欲 付 け に な っ た 。ま た 、友
達 の 意 見 と 比 べ る こ と で 一 人 一 人 の 考 え も 深 ま り 、実 践
化につながる自分のめあてをしっかりもたせることが
- 15 -
図Ⅲ-4
学級全員のめあてへ
で き た 。 ま た 、「 め あ て カ ー ド 」 を 工 夫 し た こ と で 、 子 ど も た ち が 意 欲 的 に 実 践
し て い く 姿 が 見 ら れ た 。そ の 中 で は 、め あ て カ ー ド が 完 成 し て い く の を 楽 し み に
取 り 組 む 姿 が 見 ら れ た 。 さ ら に 、学 級 の み ん な が 達 成 で き た ら「 お 祝 い 会 」 を す
る こ と を 位 置 付 け た こ と は 、一 人 一 人 の め あ て の 達 成 が 学 級 共 通 の め あ て と な り 、
互 い に 励 ま し あ う 姿 が 見 ら れ た (図 Ⅲ - 4 )。
エ
ポイント④
よさや伸びを確かめる評価の工夫
自己評価・相互評価にグラフやカードを用いたことで、
自 他 の よ さ や 成 長 の 姿 に 視 覚 的 に も 気 付 く こ と が で き 、実
践への意欲付けや達成度の確認をするのに効果的であっ
た 。毎 日 の 「 帰 り の 会 」な ど を 通 じ て 、よ さ や 伸 び を 紹 介
し合い学級全体で確かめ合うことで 、子どもたちのたくさ
図Ⅲ-5
笑顔で帰りの会を
ん の 笑 顔 が 見 ら れ 、 係 活 動 の 向 上 へ と つ な が っ て い っ た (図 Ⅲ - 5 )。
だ た 、毎 日 、全 部 を 紹 介 す る た め の 時 間 を 確 保 す る こ と は 難 し い 場 合 も あ っ た 。
④
実践の考察(子どもの道徳的実践の姿や変容)
様々な支援を工夫して「係活動パワーアップ大作戦」を行ったことにより、一人
一人が自分の係活動にしっかり目を向け、創意工夫しながら進んで自分の役割を果
たしていこうとする姿が見られた。また、自分や友達のよさを再発見したり、集団
に寄与できた喜びやその大切さを実感したりしている姿も見られた。日々、学級を
楽しくしていこうとする子どもたちの熱心な活動により、教室が今まで以上に活気
づ い た 。こ れ は 、事 前 の 道 徳 の 時 間 で の「 愛 校 心 」
( 学 級 の よ さ を 知 り 、係 活 動 を 通
し て 自 分 の 学 級 を よ り よ く し よ う と す る 態 度 を 養 う 。) の 学 習 と つ な が っ て い る 。
さらに、みんなで協力して実践したことで、集団の一員としての自覚が 高まり、
連 帯・協 働 の 大 切 さ に も 触 れ る こ と が で き 、
「 お 祝 い の 会 」も 大 変 盛 り 上 が っ た 。こ
うして、道徳の時間に高まった意識が学級活動の学習にも生かされ、自己決定した
めあてが、日々の活動の中で実践され、望ましい人間関係の形成につながった事例
となった。
( 3 )【 第 2 学 年
道徳の時間】
< 主 題 名「 整 理 整 頓 」内 容 項 目 1 -( 1 )/ 資 料 名「 さ い ご に な っ ち ゃ っ た 」
(出 典 : 文 溪 堂 )>
①
めざす子どもの姿
物を大切にし、身の回りを整えて規則正しい生活を送ろうとする 。
【 自 主 ・ 自 律 ( A )】
②
本題材における学習過程「おおえのき」とその効果(視点2-①)
学習過程「おおえのき」の、関心・意欲―追求―表現―評価―応用・交流の一連
の流れを本時でも適用することができた。導入では、学級の子どもたちの生活実態
を示す写真を提示することで興味・関心を高め、展開前段では、資料を通して道徳
的価値を追求した。展開後段では、子どもたちが道徳的価値に自分を重ねながら思
いを表現し、自分を振り返り、それを友達と交流することで、自分や友達のよさや
がんばりに気付くことができた。
- 16 -
③
本題材における授業づくりのポイントとその効果(視点2-②)
ア
ポイント①
必要感をもたせる手立ての工夫
整 理 整 頓 さ れ て い な い 教 室 の 写 真 を 提 示 し た 。子 ど も
た ち は「 私 た ち の 棚 の 写 真 だ 」な ど と 言 い な が ら 写 真 を
見 て い た 。そ の 後 、整 理 整 頓 さ れ て い な い と 困 る こ と に
ふ れ 、価 値 に 迫 っ て い っ た 。自 分 た ち の 生 活 を 振 り 返 る
こ と で 、本 時 の ね ら い と す る 価 値 に 対 す る 興 味 や 関 心 を
図Ⅲ-6
高 め る こ と が で き た (図 Ⅲ - 6 )。
イ
ポイント②
自分を振り返る
コミュニケーションを高める手立ての工夫
資 料 を 読 み 、友 達 と 感 想 を 言 い 合 っ た り 、教 師 と 読 み
深 め た り す る 中 で 価 値 の 追 求 を し た 。感 想 や 登 場 人 物 の
気持ち、自分の振り返りなどを友達と交流することで、
新 た な 考 え を 発 見 し た り 、自 分 の 思 い を 確 認 す る こ と が
で き た り し 、そ れ に よ っ て 、価 値 に つ い て よ り 深 め る こ
と が で き た (図 Ⅲ - 7 )。
ウ
ポイント③
図Ⅲ-7
振り返りを生かした交流を
よさや伸びを確かめる評価の工夫
自 分 の 生 活 を し っ か り と 振 り 返 り 、め あ て を も つ こ と が で き た 子 ど も を 紹 介 し
た 。子 ど も た ち は 、友 達 の が ん ば り を 知 る こ と が で き た 。ま た 、め あ て を 発 表 し 、
実 践 に 向 け て 互 い に 励 ま し の 言 葉 を か け 合 っ た 。そ う す る こ と で 、友 達 の が ん ば
りを認め合い、さらに協力して課題に取り組む意欲へとつながっていった。
エ
ポイント④
実践につなげる手立ての工夫
整 理 整 頓 さ れ て い る 教 室 の 写 真 を 提 示 し た 。紹 介 さ れ
た 子 ど も た ち は 、と て も 嬉 し そ う に 見 て い た 。整 理 整 頓
を が ん ば っ て い る 友 達 を 知 る こ と で 、実 践 へ の 意 欲 を 高
め る こ と が で き た 。ま た 、帰 り の 会 や 学 級 通 信 な ど を 通
し て 子 ど も た ち の が ん ば り を 紹 介 し 、事 後 の 実 践 に つ な
げ た 。 (図 Ⅲ - 8 )
④
図Ⅲ-8
実践する友達の紹介
実践の考察(子どもの変容)
本時では、ワークシートの工夫により登場人物への共感を高め、「自分だった
ら」という視点を投げかけることで自分の 振り返りを具体的にすることができた。
その中で、家庭生活での整理整頓についても振り返る子ども、笑みを見せながら互
いに発表し合う子どもたちの姿が見られた。また、授業後には、帰りの会や学級通
信で、学校や家庭で自分から進んで整理整頓する子どもの姿を紹介することで、友
達 の よ さ や が ん ば り に 目 を 向 け る こ と が で き た 。 事 後 の 学 級 活 動 で 、「 使 っ た 道 具
を片付けよう」という7月の生活目標について話し合った際、本時やこれまでの
実践を振り返り、整理整頓することの大切さを再確認したり、実践を続けている
子どもたちの姿を認め合ったりすることができた。
- 17 -
4
中学年部の取り組み
( 1 )【 第 3 学 年
学級活動】
<題材名「大切な友達たくさんつくろう集会をしよう」活動内容(1)>
①
めざす子どもの姿
ア
みんなが大切な友達になるための活動にするために協力し、相手のことを思い
【 人 間 関 係 (C )】
やり進んで活動できる。
イ
自分たちで大切な友達がたくさんつくれるような活動にするためによく考え、
【 自 主 ・ 自 律 (C )】
行動することができる。
ウ
集会を成功させるために自分の役割をきちんと行い、責任をもって成し遂げ、
【 役 割 ・ 責 任 (B )】
楽しい学級をつくることができる。
②
本題材における学習過程「おおえのき」とその効果(視点2-①)
本題材は、学級目標「悪口を言わずに
大切な友達たくさんつくって
笑顔いっ
ぱいの3の1」に向けた1学期からの実践をもとに、さらに、友 達とのかかわり合
いを深めようとするものである。集会の種目を子どもたち自身で考え、話し合い、
そして、集会を行うといった一連の活動に学習過程「おおえのき」を位置付けたこ
とにより、友達のよさに気付き、相手の立場を考えて仲良く行動しようとする態度
をさらに高めることができたと考える。また、学習過程「おおえのき」を意識して
活動を組み立てることで、事前―本時―事後が明確になり、題材のねらいに迫った
取組ができた。
③
本題材における授業づくりのポイントとその効果(視点2-②)
ア
ポイント①:必要感をもたせる手立ての工夫
今までの学級活動を振り返り、楽しさを再認識した
り、学級の所属感のアンケート結果を振り返ったりす
ることで、みんなでめあてを意識する場をつくり、友
達をたくさんつくるための集会実行への意欲を高めた。
イ
ポ イ ン ト ② : コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 高 め る 手 立 て の 工 夫 図 Ⅲ -9 話 合 い カ ー ド を も と に
全員が意見をもてるように、話合いカードに自分の考えを事前に記入し、そし
て、その意見を自信をもって発表できるようにしておいた。さらに、発表の苦手
な 子 ど も に は 教 師 が 寄 り 添 い 、 発 表 へ の 支 援 を 行 っ た (図 Ⅲ - 9 )。
ウ
ポイント③:実践につなげる手立ての工夫
集会の準備は、一人一役をもって子どもたちと教師が一緒になって進めた。ト
ラブルが起きた場合は活動を止め、めあてを再確認して納得してから再開するよ
うにした。
エ
ポイント④:よさや伸びを確かめる評価の工夫
活動ごとに自己評価と相互評価を行い、子どものよさ、集団活動のよさ、活動
自体のよさを意識しながら、教師が積極的に称賛するようにした。
④
実践の考察(子どもの道徳的実践の姿と変容:視点2-③)
「 大 切 な 友 達 た く さ ん つ く ろ う 集 会 」の た め に 協 力 し 合 っ て 活 動 し 、お 互 い の よ
さを認め合うことで、協力の大切さを十分感じることができた。そして、全員で集
会 を 作 り 上 げ る 達 成 感 や 学 級 の 所 属 感 も 高 ま っ た 。ま た 、
「大切な友達たくさんつく
- 18 -
ろう集会」の目標を達成するために、進んで意見を出して
話し合ったり、準備の活動を行ったり、集会を盛り上げた
りして、主体的に活動する態度も育った。
みんなが友達をたくさんつくることができる集会にする
た め に 、一 人 ず つ 一 役 を 分 担 し 、集 会 を 成 功 さ せ る た め に 、
図 Ⅲ - 10
自信をもって発表
責 任 も っ て 役 割 を 成 し 遂 げ る こ と が で き た (図 Ⅲ - 10)。
( 2 )【 第 4 学 年
学級活動】
<題材名「自分に大切なことを考えよう」
①
活動内容(2)>
めざす子どもの姿
ア
自分の取り組むべき課題を設定し、自分のためになるように行動する。
【 人 間 関 係 (C )】
【 自 主 ・ 自 律 (C )】
イ
10年間の成長を実感し、生命あるものを大切にする。
ウ
夢の実現に向けて、自分のやるべきことを粘り強く最後までやり遂げる。
【 役 割 ・ 責 任 (A )】
②
本題材における学習過程「おおえのき」とその効果(視点2-①)
本題材は、学級目標「いっぱいの笑顔で、力を出しきって、くじけずに、みんな
で の り こ え る き ら り と か が や く 学 級 」の 実 現 の た め に 、こ れ ま で の 自 分 を 振 り 返 り 、
夢や将来のために今の自分にできることを考え、前向きに自分らしく生きていこう
とする態度を高めるものである。学習過程としては、3学期の二分の一成人式に向
けた自己の成長への意識づくりを柱に、ストーリーのある展開を計画したことによ
り、子どもの活動への目的意識が明確なものとなっていた。
③
本題材における授業づくりのポイントとその効果(視点2-②)
ア
ポイント①:必要感をもたせる手立ての工夫
子どもたちの将来なりたい職業を提示することで、社会の中の職業に関心をも
つことができるようにした。
イ
ポイント②:コミュニケーションを高める手立ての工夫
問題を解決するための情報カードを読み合うことで、
情 報 を 共 有 す る こ と が で き る よ う に し た( 図 Ⅲ - 1 1 )。
また、振り返りシートにより、子どもの思いや考えを
まとめるようにし、話合いの場面を設定することで、
お互いの意見を尊重するようにした。
ウ
ポイント③:実践につなげる手立ての工夫
図 Ⅲ - 11
情報カードをもとに
実践したことを学級のみんなに伝える場を設定する
ことを子どもたちに伝え、見通しをもって取り組むこ
とができるようにした。また、チャレンジカードを用
意し、今後の自分なりの取組を書けるようにした(図
Ⅲ - 1 2 )。
エ
ポイント④:よさや伸びを確かめる評価の工夫
自己評価・相互評価を通して、今後の取組のよさや
- 19 -
図 Ⅲ - 12
チャレンジカード
改善点について考える時間を確保するようにした。また、友達の考えのよさや思い
に気付かせるために、小グループで意見を出し合ったことを、全体に紹介し称賛す
るようにした。
④
実践の考察(子どもの道徳的実践の姿と変容:視点2-③)
自分の将来への夢や希望、職業や生き方などについて考え、今、自分がやるべき
ことを粘り強く取り組もうとする意欲や態度が育ってきた。自他のよさを見つける
時間を設定し、そのよさを紹介する時間を確保することで、友達のよさを積極的に
見つけようとする意欲が高まってきた。また、話合いなどで、友達と積極的にかか
わろうとする態度が育ってきた。さらに、自分自身を見つめる時間を確保し、自分
の 将 来 に つ い て 目 を 向 け る 機 会 を 通 し て 、自 分 の よ さ や 可 能 性 な ど に 気 付 き 始 め た 。
そして、今の自分に必要な具体的なめあてを実践していこうとする態度が育ってき
た。
5
高学年部の取り組み
( 1 )【 第 5 学 年
学級活動】
<題材名「全校のみんなのためにできること」
①
活動内容(1)>
めざす子どもの姿
ア
友達(学級、学校)の思いや願いに気付き、友達と協力して学級や学校の課題
【 自 主 ・ 自 律 (C )】
解決に取り組むことができる。
イ
自分や相手の気持ちを交流させ、互いのよさや違いを認め合い、集団の一員と
【 人 間 関 係 (D )】
して他と協調しながら行動できる。
ウ
学級や学校のためになることを考え、よりよい生活のために自分ができること
【 役 割 ・ 責 任 (C )】
に気付き、進んで実践できる。
②
本題材における学習過程「おおえのき」とその効果(視点2-①)
本題材は、学級目標「絆の魂
自治力を高めよう
みんなのために行動しよう」
を具現化し、高学年としての自覚と実践力を高めようとしたものである。事前―本
時(話合い)-事後の一連の過程の中で、一貫して他学年との接点をもちつつ子ど
も自身が実践を計画し、実行し、振り返っていくことは、学習過程「おおえのき」
の一つ一つの過程そのものであり、その中で、実践への意識が高まり、また、高学
年としての自信をもつことができるようになってきた。
③
本題材における授業づくりのポイントとその効果(視点2-②)
ア
ポイント①:必要感をもたせる手立ての工夫
2学期の初めの意識調査では、
「 み ん な の た め に 行 動 で き る 自 分 に な り た い 」と
考える子どもたちは多かったが、実際の行動においては個人差が大きかった。ま
た、何をしていいかわからないでいる子どもたちも多かった。そこで、2年生が
5年生をどう思っているかを知らせた。子どもたちは、自分たちの日頃の行動を
2年生がしっかり見ていることに驚いたり喜んだりしていた。さらに、6年生か
らのメッセージを伝えると、6年生からメッセージがおくられたことをとても喜
び、担任が読み上げる文章を感動して聞いていた。2年生と6年生の思いを知る
こ と に よ り 、子 ど も た ち は 、
「 全 校 の た め に 自 分 た ち も 何 か し た い 。朝 の あ い さ つ
- 20 -
運動は、様々な事情で全員参加できないこともある。だから、クラス全員ででき
る 何 か に 挑 戦 し た い 。」 と い う 考 え を も つ よ う に な っ た 。
イ
ポイント②:コミュニケーションを高める手立ての工夫
1学期から、いろいろな場面において話合いを行
ってきたが、発言力に個人差があること、意見が対
立する場面で冷静さを欠いてしまうことが学級の課
題であった。そこで、発表することに自信をもてな
い子どもたちが安心して発表できる ように、事前に
自分の思いや考えをまとめた学級会シートを利用す
図 Ⅲ - 13
友達に向き合う
ることにした。また、お互いを大事にする心をはぐ
く む た め に 、 意 見 の 対 立 す る 場 面 で の ふ さ わ し い 態 度 に つ い て 、「 話 合 い の め あ
て 」 を 確 認 す る 中 で 意 識 で き る よ う に し た (図 Ⅲ - 13)。
ウ
ポイント③:実践につなげる手立ての工夫
学 級 会 の 始 め に 、「 活 動 条 件 ( 全 校 の み ん な の た め に な る も の 、 日 数 は 5 日 間 、
活 動 時 間 は 業 間 と 昼 休 み )」 を 明 ら か に し 、「 全 校 の み ん な の た め に 活 動 す る こ と
は 、学 級 目 標 の 実 現 に つ な が る 」 と い う こ と を 確 認 し た 。 そ し て 、 学 級 会 の 最 後
に は 、6 年 生 か ら の 手 紙 を 紹 介 し た 。 6 年 生 の 願 い を 伝 え る こ と で 、子 ど も た ち
の実践への意欲、高学年としての役割への意識が高まった。
エ
ポイント④:よさや伸びを確かめる評価の工夫
話合い終了後に、子どもたちは学習シートに感想を書い
た 。そ の 中 か ら 4 つ を 、子 ど も た ち に 紹 介 し た 。 ま た 、 そ の
他 感 想 を 学 級 通 信 で 紹 介 し た こ と に よ り 、子 ど も た ち は 、学
級会のときには気付けなかった友達の気持ちを知ることが
できた。遊具掃除のボランティアが始まり、子どもたちは、
寒 い 中 も 遊 具 掃 除 に 自 主 的 に 取 り 組 ん で い た 。そ う し た あ る
日 、職 員 朝 会 で 学 校 長 か ら そ の 取 組 に つ い て の 話 が 出 た こ と
を教室で伝えると、子どもたちは驚きの表情で聞いていた
図 Ⅲ - 14
自分を見つめる
(図 Ⅲ - 14)。
③
実践の考察(子どもの道徳的実践の姿と変容:視点2-③)
本実践後、子どもたちの中には、廊下のぞうきんがきちんと並んでいないのが気
になり、毎日、全部かけなおしている子ども、遊具で遊んでいる子どもたちが気持
ちよく遊べているか気になるようになった子ども、話合いで相手のことを傷つけな
いように考えて発言するようになって、普段の生活でも悪口が減ったという子ども
など、様々な道徳的実践の姿が、子どもたちの日常生活の中でも見られるようにな
った。事前―本時―事後の活動を通して、子どもたちが様々な人たちとのかかわり
によって自分たちに期待されているものを感じとり、その期待に応えようと真剣に
話し合い主体的に実践活動を重ねることで、さらに自他のよさや成長に気付くこと
ができたのだといえる。
( 2 )【 第 6 学 年
学級活動】
< 題 材 名 「『 響 』 を 高 め よ う ~ 心 の 響 き 合 う 学 級 を め ざ し て 」
- 21 -
活動内容(2)>
①
めざす子どもの姿
ア
自 分 や 相 手 の 気 持 ち を 進 ん で 交 流 さ せ 、互 い の よ さ や 違 い を 認 め 合 お う と す る 。
【 人 間 関 係 (D )】
イ
生活を見直し、自他のよさをいかし、工夫して生活を高めようとする。
【 自 主 ・ 自 律 (B )】
ウ
②
学 級 の た め に な る こ と を 考 え 、よ り よ い 級 風 を 作 ろ う と す る 。
【 役 割・責 任 (C )】
本題材における学習過程「おおえのき」とその効果(視点2-①)
本 題 材 で は 、 学 級 目 標 「『 き ょ う 』 実 津 々
『こう』して6の2の糸はつながる」
に向けて、1学期から続けてきた「学級チャレンジ」をより充実させ、全員の「自
分の力が必要である」という意識を高め、友達の感じ方や考え方を認め合える集団
としてのつながりを深めようとした。
「 学 級 チ ャ レ ン ジ 」と い う 一 年 を 通 し た 活 動 を
題材化するには、学習過程「おおえのき」を軸にすることで実践の組立てが可能と
なり、学級目標の達成に大きく寄与するものとなった。
③
本題材における授業づくりのポイントとその効果(視点2-②)
ア
ポイント①:必要感をもたせる手立ての工夫
学級チャレンジの振り返りを書いた学習カードを
各 自 持 た せ た 。学 級 チ ャ レ ン ジ に 対 し て の 自 分 の 意 識
を 明 確 に し て お く こ と で 、解 決 し て い く べ き 課 題 で あ
る と い う 問 題 意 識 、自 分 の 考 え を 提 案 し た い と い う 意
欲 に つ な が っ た (図 Ⅲ - 15)。
イ
図 Ⅲ - 15
学習カードをもとに
ポイント②:コミュニケーションを高める手立ての工夫
学 級 チ ャ レ ン ジ の 満 足 度 を グ ラ フ に 表 し 提 示 し た 。そ れ ま で 、自 分 だ け が 感 じ
て い る こ と と 思 っ て い た 子 ど も た ち が 、学 級 の 一 人 一 人 が そ れ ぞ れ 問 題 を 感 じ て
いることを知り、みんなで話し合い、解決していこうという姿勢につながった。
ま た 、「 よ さ 」 を 視 点 と し て 与 え た こ と で 、 肯 定 的 な 意 見 、 提 案 が 多 く 出 さ れ 、
和やかな雰囲気の中で解決に向けての活動ができていった。
ウ
ポイント③:実践につなげる手立ての工夫
自 分 の め あ て を 決 め る 場 面 で は 、板 書 を 利 用 し た 。子 ど も た ち か ら 出 た 意 見 を
グ ル ー プ 分 け し て 、そ れ ぞ れ に つ い て 解 決 策 を 考 え た こ と で 、自 分 に と っ て 今 一
番必要な努力目標を決めることができた。また、
日 常 の 活 動 で あ る こ と か ら 、日 々 の 子 ど も た ち の
会 話 や 話 合 い の 様 子 を 取 り 上 げ 、学 級 や 個 人 の よ
さ が 生 か さ れ て い る 場 面 を 取 り 上 げ た 。子 ど も た
ち 自 身 で 気 付 か な い よ さ を 紹 介 し た こ と で 、自 分
や 友 達 に 対 す る 見 方 も 広 が っ て き た (図 Ⅲ - 16)。
エ
図 Ⅲ - 16
板書で意見の整理
ポイント④:よさや伸びを確かめる評価の工夫
毎 日 の 自 学 ノ ー ト で の 自 己 評 価 の 活 動 を 取 り 入 れ た こ と で 、学 級 チ ャ レ ン ジ へ
の 意 欲 も 自 分 や 友 達 を 見 つ め る 力 も 高 ま っ て き て い る 。活 動 後 に 行 う 話 し 合 い で
も 、そ れ ぞ れ が 自 分 の 考 え を 伝 え 合 う 時 間 と し て と ら え 、有 効 に 使 え る よ う に な
っ て き た 。ま た 、話 合 い で 出 た こ と は 、次 の 活 動 に 生 か そ う と す る 姿 勢 も 出 て き
- 22 -
ている。
④
実践の考察(子どもの道徳的実践の姿と変容:視点2-③)
「よさ」に着目した授業展開を計画したことで、子どもたちは、自分自身や友達
のよさ、学級のよさを正面から見つめることができた。そして、今まで気付かなか
ったこと、分かっていても大切だとは感じていなかったことが明確になり、多くの
よさに囲まれていることを実感できていた。このことが学級チャレンジへの向き合
い方、友達とのかかわり方にも大きくつながった。自分のよさを生かすことから、
自分が必要とされる大切な存在であることを知り、大きな自信になった。また、学
級の一員という意識も高まり、友達とも、相手のよさを生かしてほしいという思い
で ア ド バ イ ス し 合 え る よ う に な っ た 。さ ら に 、相 手 の 意 見 を 、
「自分のことを思って
言ってくれているのだ」という気持ちで受け止められるようになってきたことで、
温かな雰囲気の話合いになってきた。そのことが、また、自分たちの学級を自分た
ち の 力 で よ い も の し 、学 級 目 標 の 達 成 を め ざ す 意 欲 に つ な が っ て い る と 考 え ら れ る 。
( 3 )【 第 6 学 年
道徳の時間】
<主題名「自分を見つめ、よく考えて」内容項目1-(1)/資料名「見送られ
た 二 十 球 」 (出 典 : 6 年 生 の 道 徳 ( 文 渓 堂 )) >
①
めざす子どもの姿
思慮深く節度ある行動の大切さ・美しさに気付き、自分の考えや行動について、
常 に 思 慮 深 く 見 つ め 直 し 、 節 度 あ る 行 動 を し よ う と す る 。【 自 主 ・ 自 律 ( A )】
②
本題材における学習過程「おおえのき」とその効果(視点2-①)
本題材では、導入で、アンケートや友達の作文により関心を高め、展開前段では
資料をもとに価値を追求し、
「 も し 、自 分 だ っ た ら ど う す る か 」と 自 分 と 重 ね て 自 分
の姿を見つめるようにした。そして、展開後段では、これまでの自分を振り返り、
道徳的価値や自分や友達のよさに気付く場を設けた。学習過程「おおえのき」を道
徳の時間の展開と重ねることで、子どもたちの道徳的実践力が尐しずつ見えてきた
ともに、道徳的実践へのきっかけになっていったと考える。
③
本題材における授業づくりのポイントとその効果(視点2-②)
ア
ポイント①:必要感をもたせる手立ての工夫
学級の実態に関するアンケート結果や日記や学級活
動の振り返りシートに記された友達の思いを伝えた。
子どもたちは、特に、友達の日記に耳を傾け、その思
い を 感 じ 取 ろ う と し て い た 。友 達 の 思 い を 知 る こ と で 、 図 Ⅲ - 17
友達の思いを知る
本題材のめざす道徳的価値に触れる子どもたちの構えができるとともに、自分自
身 の 姿 を ふ り 返 ろ う と す る 動 機 づ け に な っ た と 考 え る (図 Ⅲ - 17)。
イ
ポイント②:コミュニケーションを高める手立ての工夫
資料を読み、価値を追求していく過程で松井選手の葛藤に共感できるようにす
る と と も に 、「 も し 、 自 分 だ っ た ら 」 と い う 視 点 で 考 え る 場 を 設 け た 。 本 題 材 に
表 れ る 場 面 は 、 子 ど も た ち の 日 常 生 活 に は あ ま り な い 場 面 で あ っ た が 、「 も し 、
自分だったら」と想像してみることで、子どもたちの経験から出てくる様々な考
- 23 -
え方を交流させていくことができた。
ウ
ポイント③:実践につなげる手立ての工夫
甲子園の最終打席の松井選手の気持ちや敬遠された松井選手がどんな行動をと
るかを子どもたちが予想し、ビデオで実際の松井選手の姿をみることで、子ども
たちがもっている価値を超える松井選手の道徳的価値に触れるようにした。ビデ
オに映る松井選手の姿は、子どもたちが想像していたもの以上であり、松井選手
の節度ある姿を子どもたちの心に深く印象付けることができたと考える。
エ
ポイント④:よさや伸びを確かめる評価の工夫
松 井 選 手 と 自 分 自 身 を 比 べ 、共 通 点 や 相 違 点 の 視 点 か ら こ れ ま で の 自 分 を 振 り
返 り 、「 6 - 1 こ こ ろ ノ ー ト 」 に ま と め た 。 全 員 の 思 い を 交 流 さ せ る 時 間 は 十 分
と れ な か っ た が 、一 人 一 人 の 振 り 返 り に は 、日 常 の 様 々 な 出 来 事 を 想 起 し て 自 分
の 行 動 を 見 つ め 直 す 姿 が 表 れ て い た (図 Ⅲ - 18)。
④
実践の考察(子どもの道徳的実践の姿と変容:視点2-③)
資 料 に よ る 価 値 の 追 求 の 中 で 、「 も し 、 自 分 だ っ た
ら…」と自分自身と重ね合わせて考え、その理由を明
らかにしていくことで、一人一人の道徳的実践力に迫
る こ と が で き た と 考 え る 。ま た 、導 入 や 終 末 を 、単 に 、
道徳的価値の追求のために工夫するだけでなく、子ど
もたちの日常の姿から本題材を学ぶ意義を感じ取らせ
図 Ⅲ - 18
松井選手の姿に学ぶ
たり、日常の道徳的実践につなげるように印象付けたりすることができた。
Ⅳ
研究の視点3における研究の実際
研究の視点3:多様な集 団活動を 通し て実践的・体験 的な活
動の充実を図り、道徳的実践の場をつくる。
1
友達とかかわり合える活動の工夫
(1 )
全 校 で 取 り 組 む 「 学 級 の 旗 づ く り 」( 児 童 会 活 動 )
運動会に向けて、各学級で協力して「学級の旗」を作り
上げた。旗づくりを通して友達との多様なかかわりが生ま
図Ⅳ-1 運動会での学級の旗
れ、友達のよさを見つけたり、一体感を味わったりしていた。また、運動会当日、
全学級が学級の旗とともに競技や応援を行ったことで、学校としての一体感を感じ
る こ と が で き た (図 Ⅳ - 1 )。
(2 )
児童会集会での発表(児童会活動)
集会での各委員会による発表に向けて、協力し
て準備をする中で、子どもそれぞれのよさが発揮
され、お互いを認め合う姿が見られる。発表後の
感想交流では、下級生からの心温まる感想が聞か
れる。計画、準備、発表、振り返りという活動の
図Ⅳ-2
環境委員会の発表
過程の中には、様々な道徳的実践の場があり、そこで、友達とかかわりあうこと
に よ り 子 ど も た ち の 成 長 の 姿 が 見 ら れ る (図 Ⅳ - 2 )。
- 24 -
2
異学年との交流が生まれる活動の工夫
(1 )
「大江スマイルパーク」への取組(学校行事)
4、5、6年生と1、2、3年生がペア学級を作り、アイディアを凝らした出し
物 を 一 緒 に 楽 し み 、交 流 を 深 め る 活 動 で あ る 。代 表 委 員 会 で 、テ ー マ( 本 年 度:「 地
球 も ニ コ ニ コ 、 み ん な も ニ コ ニ コ 」) を 決 め た り 、 案 内 図 Ⅳ - 3
笑顔があふれる
状、お礼状、会場案内ポスターなどの分担を全学級で行ったりして、全校で取り組
んだ。各学級では、4、5、6年生は、学級の出し物の内容を話し合い、休み時間
などを使って準備を進めた。1、2、3年生は、当日の手伝いを行った。上学年の
子どもたちには、自分たちが考えた出し物をみんなが楽しんでくれるかどうか不安
な様子もあったが、会が始まると、学校中に、子どもたちの歓声と笑顔があふれ 、
み ん な が 喜 び 合 え た 時 間 で あ っ た 。上 級 生 と し て の 自 覚 を 高 め 、下 級 生 を 楽 し ま せ 、
責 任 を も っ て 役 割 を 果 た そ う と す る 姿 を 生 み 出 す 活 動 で あ っ た (図 Ⅳ - 3 )。
(2 )
大 江 パ ワ ー ア ッ プ タ イ ム「 読 み 聞 か せ 交 流 会 」
(国語)
4 、5 、6 年 生 と 1 、2 、3 年 生 が ペ ア 学 年 に な り 、
上級生が絵本を読み聞かせする会を、1学期に1回ず
つ行っている。下級生の子どもたちが尐しでも楽しん
でくれるように、上級生の子どもたちは一生懸命であ
る。絵本に見入る子どもたちの姿がほほえましい活動
図Ⅳ-4
真剣なまなざしで
である。上学年の子どもたちは、各学級で数グルー プをつくり、絵本を3、4冊選
び、読み聞かせの練習をして交流会に臨む。感想交流では、下級生の言葉に思わず
顔 を 緩 め る 上 級 生 の 姿 が 見 ら れ る (図 Ⅳ - 4 )。
3 様々な人々とのふれあいが生まれる活動の工夫
(1 ) 希 望 荘 と の 交 流 会 ( 学 校 行 事 )
全校児童が参加して行われた希望荘との交流会は、
これまで18年間も続いてきた恒例の行事である。希
望荘からは、手話グループ「さざんか」のみなさん、
「わがままチンパンジーバンド」のみなさんにおいで
図Ⅳ-5
手話を一緒に
いただき、音楽を通した子どもたちとのふれあいを行った。子どもたちは、一緒に
手話をしながら歌ったり、各学級代表のコーラス隊がゲストのみなさんと共演した
りした。この交流会に向けて、児童会を中心に、会場準備を各学級で分担したり 、
子どもたちが会の進行・運営を行ったりした。音楽委員会も、全校合唱の伴奏など
を 行 い 、 会 を 盛 り 上 げ た (図 Ⅳ - 5 )。
子どもたちは、演奏を聴いたり、一緒に手話をしたりしながら、希望荘のみなさ
んとのふれあいを深めることができた。様々な人々の生きるたくましさは、子ども
たちの心をたがやし、自分の心や生き方を見つめる貴重な機会となっている。
(2 )
「 大 江 ス マ イ ル パ ー ク 」( 学 校 行 事 )
前述した「大江スマイルパーク」には,毎年,地域の
方 々 も た く さ ん 来 校 さ れ る が ,「 一 九 の 会 」( 地 域 の 高 齢
者の集まり)のみなさんに昔遊びを教えていただいてい
- 25 図Ⅳ-6
一九の会の方と
る。昔遊びをとおして,地域のおじいちゃん,おばあちゃんとふれあいを深め,周
り の 人 々 と の 結 び 付 き の 大 切 さ を 感 じ る こ と が で き る 場 と な っ て い る (図 Ⅳ - 6 )。
(3 )
シンボルツリー「おおえのき」樹木札除幕式(学校行事)
創立135年を記念して、シンボルツリー「おおえのき」の樹木札の完成除幕式
を行った。爽やかな秋空の下、鳥たちのさえずり、
穏やかな日差しの中の除幕式だった。来賓に、九州
東海大学の長野克也先生、樹木医の今村順次先生、
熊本市教育委員会施設課より樹木を担当される方を
お招きし、それぞれの立場から「おおえのき」にま
つわる話をしていただいた。本校の子どもたちを代
表 し て 、 5 、 6 年 生 が 出 席 し 、「 お お え の き 」 か ら の
図Ⅳ-7
おおえのきの下で
木漏れ日の中、校歌を歌ったり、リコーダを演奏したり、樹木札の言葉を群読した
り し た 。 子 ど も た ち は 、「 お お え の き 」 と 共 に 歩 ん で き た 大 江 小 の 伝 統 と 、 そ れ を
受け継いでいくことの大切さを確認するとともに、多くの方々の努力や思いで、樹
齢 1 1 2 年 の 「 お お え の き 」 の 命 が つ な が っ て い る こ と を 感 じ て い た (図 Ⅳ - 7 )。
Ⅴ
研究の視点4における研究の実際
研究の視点4:自分を見つめ生かす評価を工夫し、互いの個性やよさ、可能性を認め
合う場をつくる。
1
道徳的価値に気付かせる自己評価・相互評価 、他者評価の工夫
(1 )
学 級 活 動 に お け る 自 己 評 価 に つ い て は 、話 合 い カ ー ド に 自 己 評 価 の 欄 を 設 け 、聞
く 、話 す 、話 合 い の め あ て の 3 点 に つ い て 継 続 的 に 評 価 す る こ と で 自 分 の 伸 び を 確
か め て い る 。ま た 、友 達 の よ い と こ ろ を 書 く 欄 を 設 け る こ と で 、お 互 い の 活 動 を 認
め 合 う こ と が で き て い る 。さ ら に 、実 践 の 段 階 で も 、友 達 、上 級 生 、保 護 者 、教 師
か ら 声 を か け て も ら う こ と で 、活 動 を 続 け て い く 意 欲 に つ な が っ て い る 。お 互 い の
が ん ば り を 認 め 合 え た こ と で 、そ れ ぞ れ に 達 成 感 を 味 わ う と と も に 、役 割 と 責 任 を
もってやり通す大切さや協力する素晴らしさを感じることができている。
な お 、実 践 の 振 り 返 り カ ー ド に 、満 足 度 を 表 す コ ー ナ ー を 設 け 、満 足 度 を 色 で 表
わしたことで、自分の活動に対する達成感が視覚的に分かりやすくなった。また、
言葉で表すことが苦手な子どもも自分を振り返ることが容易にできていた。
(2 )
係 活 動 で は 、 係 が ん ば り 表 に 「 よ し 、 今 日 は 、 係 を が ん ば っ た 。」 と 嬉 し そ う シ
ールを貼る姿が見られるようになった。また、他の係のがんばったところを伝え合
う感想交流からも、それぞれの活動に対する意欲の高まりが見られた。
(3 )
道 徳 の 時 間 で は 、ワ ー ク シ ー ト の 形 式 を 固 定 化
してより効率的な活動を行い、振り返りの時間を
十分に確保するようにした。また、友達との意見
交流の場を設け、子どもたちが自分の思いをより
意識できるようにした。また、互いに励まし合う
- 26 -
図Ⅴ-1
シートの固定化
ことで価値の大切さを深めることができた。振り
返りカードなどを使って、自己評価だけでなく相
互評価も取り入れたことで、互いに認め合う集団作りができた。そのことで自分へ
の自信を高め、クラスの一員であるという自覚を得、集団目標に対してみんなで協
力して取り組もうという意欲が高まった。また、取組の結果を継続して記録す るこ
とで、よさや伸びがはっきりと目に見え、有効であった。
2
個と集団のかかわりをつくる教師の働きかけの工夫
(1 )
全校の子どもたちの思いを共有する場をつくる
運 動 会 や ハ ー ト フ ル コ ン サ ー ト( 校 内 音 楽 会 )で の 子 ど も た
ちのめあてカードとその振り返りカードを本校のシンボルツ
リーに掲示し、一人一人の願いや思いを共有するようにした
(図 Ⅴ - 2 )。
ま た 、「 大 江 ス マ イ ル パ ー ク 」 が 行 わ れ た 週 を 「 ス マ イ ル 週
図Ⅴ-2
全校の思い
間」として設定し、他学年の子どもへのメッセージをカードで
伝え合い、お互いのがんばりや優しさを認め合うようにした。
(2 )
家庭とのかかわりをつくる
帰りの会を使って、自分の達成度を
振り返るようにし、その様子を学級通
信にのせ、家庭での働きかけもお願い
し た (図 Ⅴ - 3.4)。
図Ⅴ-3
3
学級通信
図Ⅴ-4
スマイル週間
子どもに働きかける環境づくりの工夫
学級毎に、学級活動と「道徳の時間」
を関連させ、活動や学習の足跡を残し、
子どもたちへの意識付けを図る 「ほほ
えみの種コーナー」を設けている。
また、心のノートと語句や色づかい
なども合わせながら、生活の振り返り、
友達のよさの発見、認め合う場として、
道 徳 的 実 践 の 日 常 化 を 図 っ て い る (図 Ⅴ - 5) 。
Ⅵ
研究の成果と課題
1
研究の成果(実践を振り返って)
図Ⅳ-5
ほほえみの種コーナー
( 1 ) 本 校 で は ぐ く む「 豊 か な 心 」に 迫 る「 大 事 に し た い 3 つ の 心 」と し て 、命 の 大 切 さ
を 根 底 に お い て 「 自 主 ・ 自 律 」「 人 間 関 係 」「 役 割 ・ 責 任 」 を 設 定 し 、 研 究 を 進 め て
きた。研究の2年目に当たる平成21年7月と12月に実施した子どもたちの意識
- 27 -
調査(図Ⅵ-1)をもとに、研究の成果を見ていく。
図Ⅵ-1
○
「大事にしたい3つの心」に関する行動と心情の変化
3 つ の 心 に つ い て の 行 動 面( 実 践 で き て い る か ど う か )の 変 化 を 見 る と 、全 体
的 に は 高 い 評 価 で あ る も の の 、7 月 と 1 2 月 で は 評 価 が 伸 び て い な い こ と が う か
が え る 。こ れ ま で 述 べ て き た よ う に 、本 年 度 の 様 々 な 取 組 の 中 で 、子 ど も た ち の
こ れ ま で に な い 実 践 の 姿 を 見 て と る こ と が で き て い た わ り に 、子 ど も た ち 自 身 は
や や 厳 し く 評 価 し て い る よ う で あ る 。こ れ は 、自 分 に 対 し て や 、実 践 の あ り 方 に
つ い て し っ か り 見 つ め る こ と が で き る よ う に な り 、尐 々 厳 し い 見 方 を す る 子 ど も
た ち が 増 え て い る の で は な い か と 考 え ら れ る 。そ う い う 意 味 で は 、友 達 の す ば ら
し い 道 徳 的 実 践 の 姿 と 自 分 を 照 ら し て 、評 価 を 下 げ て い る 可 能 性 が あ り 、一 人 一
が 、自 分 の 育 ち を も っ と プ ラ ス に 評 価 し 、自 信 を さ ら に 高 め て い く こ と が で き る
ような教師の働きかけが必要になってくる。
○
心 情 面 に つ い て は 、3 つ の 心 と も 高 ま り が 見 ら れ る 。特 に 、役 割・ 責 任 に つ い
て は 、そ の 大 切 さ を 強 く 感 じ て い る 子 ど も た ち が 増 え て い る 。他 の 心 に つ い て も
若干伸びているが、
「 大 切 だ と は 思 わ な い 」と 答 え る 子 ど も が 数 名 い る こ と か ら 、
さらに、一人一人の道徳性に目を向けた取組を行っていかなければならない。
○
行動面と心情面で相反する反応となっていることについては、様々な解釈が
できるが、やはり、道徳性の高まりに伴って自分の行動への評価が厳しくなって
いることが考えられる。
「 道 徳 的 実 践 の 価 値 づ け 」の 中 で 、是 か 非 か と い っ た 二 者
択一的な評価ではなく、子どもの成長過程に応じて、尐しずつ成長している自分
- 28 -
自身を喜べるような評価のあり方を考えていかなければならない。
(2)
○
これまでの取組を通して
「 大 事 に し た い 3 つ の 心 」を 常 に 教 師 が 意 識 し 、特 別 活 動 の 取 組 の 柱 に し て い
く こ と で 、学 校 全 体 で 進 め る 道 徳 教 育 に 芯 が 通 っ た 。教 職 員 同 士 が 、こ の 3 つ の
心をキーワードにしていくことで 、実践化の第一歩となっていった。
○
授 業 実 践 に お い て は 、教 師 自 身 が 高 め た い 道 徳 的 価 値 を 意 識 し て 取 り 組 ん だ こ
と で 、子 ど も た ち の 実 践 し よ う と す る 心 を 高 め る こ と が で き た 。ま た 、子 ど も た
ちの実践の姿から道徳的価値につながる姿を見出すこともでき、
「 心 」と「 行 動 」
の両面から道徳性を高める活動につなげることが可能となった。
○
本校では、教育活動全般で活用できるようにと考えた課題解決型の学習過程
「おおえのき」を大事にしながら実践を積み重ねてきた。今回、特別活動を中心
に実践するにあたり、その学習過程をベースにして、事前―本時―事後の一連の
活動に応じた形で、道徳的実践の指導の充実が図られるように活動過程を検討し
てきた。また、道徳の時間においても、この「おおえのき」の学習過程を意識し
ながら実践を行ったことにより、単に道徳的価値の追究に終始するだけでなく、
日常の道徳的実践への意欲につなげることができた。
○
活動や題材の目標達成に向けて掲げた4点の「授業づくりのポイント」から 、
学 級 の 実 態 に 応 じ て 、よ り 具 体 的 な 手 立 て を と る よ う に し て き た 。そ の た め 、子
どもの反応を具体的に想定できたり、学習効 果を高めたりすることができた。
○
児 童 会 活 動 を は じ め と し て 、異 学 年 で 交 流 す る 活 動 も 多 か っ た 、一 緒 に 活 動 す
る な か で 、感 じ 合 っ た り 学 び 合 っ た り し た こ と を 、自 分 自 身 の こ と と し て 振 り 返
る こ と も で き る よ う に な っ て き た 。低 学 年 や 中 学 年 の 子 ど も た ち も 、一 方 的 に 支
援 を 受 け る だ け で な く 、自 分 た ち か ら も 思 い を 発 信 す る 機 会 を も つ よ う に し た こ
とで、高学年に協力してよりよい活動にしようとする意識を高めていた。
2
今後の課題
◆
一人一人の子どもがどのように変容しているかという具体的な見取りを、もっ
と行っていく必要がある。また、それをもとに集団の変容を捉えていくような研
究の評価方法について、さらに、深めていく必要がある。
◆
「 集 団 決 定 」、「 自 己 決 定 」 の い ず れ も 、 自 分 に と っ て の 必 要 性 を 一 層 感 じ る も の に
しないと実践意欲は高まらない。毎授業時間の終末に、その取組が十分できるような
授業時間の配分とそのための学習活動の精選が必要である。
◆
活動過程「おおえのき」を、一連の題材レベルや一時間の授業時間に目を向け、さ
らに、子どもたちの発達段階に応じたものになるように検討することが必要である。
おわりに
本校の研究では、
「 子 ど も を 中 心 に 据 え た 」授 業 実 践 を 積 み 重 ね て き て い る 。平 成 1 8 ・
19年度は、特別支援教育・算数科・特別活動を中心にして「自信をもって自分を表現す
る力」の育成をめざして取り組んだ。さらに、平成20・21年度は、文部科学省、熊本
- 29 -
県・熊 本 市 教 育 委 員 会 の 指 定・委 嘱 を 受 け 、
「 一 人 一 人 の 子 ど も が 豊 か な 心 を も ち 、自 信 を
もって生き生きと活動する学習の創造」という子ども中心の実践研究を行う機会を得た。
そ こ で は 、「 道 徳 的 実 践 力 の 行 動 化 」 を 図 る こ と に よ り 、 幾 多 の 課 題 に ぶ つ か り つ つ も 、
子 ど も た ち の“ 行 動 の エ ネ ル ギ ー ”が は ぐ く ま れ た し 、
「 道 徳 的 実 践 の 価 値 づ け 」を す る こ
とにより、自分に対する「自信」という形で“心のエネルギー”が発揮されたりもした。
こうした、子どもの変容が見てとれたことを、実に嬉しく思う。
「 ク ラ ス の み ん な が 喜 ぶ ○ ○ 集 会 に し た い か ら 、 こ の 遊 び を 推 薦 し ま す 。」「 私 は 、 た く
さんの子どもたちを見守り続けてきたこの大えのきを、これからもずっと大切にしたいで
す 。」 と い っ た 学 級 会 で の 子 ど も た ち の 声 。
「これまで自分が歌いたい歌という視点で発言していた子が、
“先生やみんなが好きだか
ら こ の 歌 に 決 め た 。”と い う 自 己 決 定 を し て く れ た 子 が い ま す 。」
「相手の思いや立場を考え
た イ ン タ ビ ュ ー が で き る よ う に な っ て き て い ま す 。」と い う 担 任 や 指 導 に 関 わ っ た 先 生 方 か
らの声。
「 子 ど も た ち が 訪 問 し て く れ た と き の 温 か い 励 ま し の 言 葉 に 感 動 し ま し た 。」「 大 江 小 の
高学年の子どもたちが、丁寧に低学年の子どもたちに教えている姿を、とても頼もしく思
い ま し た 。」 と い う 保 護 者 や 地 域 の 方 々 の 声 。
こうやって届く様々な声に元気をもらいながら、
「 自 分 の 心 を 耕 し 、見 つ め 、心 を は た ら
か せ る よ う な 大 江 の 子 ど も た ち 」を 育 て る べ く 、今 後 も 全 職 員 で「 子 ど も を 中 心 に 据 え た 」
実践研究、日々の授業の充実に邁進していきたい。
最後になりましたが、本研究の推進に当たり、ご指導・ご助言いただきました文部科学
省、熊本県・熊本市教育委員会および関係者の皆様方に対し、職員一同、心から感謝申し
上げます。
参考文献
○ 小学校学習指導要領解説
総則編
文部科学省
○ 小学校学習指導要領解説
特別活動編
文部科学省
○ 小学校学習指導要領解説
道徳編
文部科学省
○ 幼 稚 園 、小 学 校 、高 等 学 校 及 び 特 別 支 援 学 校 の 学 習 指 導 要 領 等 の 改 善 に つ い て( 答 申 )
○ 初等教育資料
文部科学省
○ 道徳と特別活動
文溪堂
○ 心を育て、つなぐ特別活動
道徳的実践へのアプローチ
編著
杉田
洋
中央教育審議会
文溪堂
研究同人
池邉
利昭
鶴元
卓
安東
鶴﨑
泰文
橘
眞理子
伊東
智子
遠山
幸一
田上佐知子
植木りつ子
永松
淳子
福元
直美
純子
池元
宏光
濱
麗菜
西山
一昭
荒木
隆伸
山下久美子
坂本
幸恵
田上
裕子
西方
浩一
田口
広明
杉本
千昭
松下
公博
宮崎
峰子
吉川久美子
福本
幸子
益田多美子
北口
吉子
堀
健哉
滝本
林
朊美
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恵子