1. 『十二夜』(トレヴァー・ナン監督、映画版)

西洋演劇史 05 ワークシート・コメント(抄)
1. 『十二夜』(トレヴァー・ナン監督、映画版)の和解のシーンを見て、
印象に残った点を書きなさい。
●双子の再会
・4人ともハッピーエンドで見終って幸せな気分になった。双子の再会シーンはベタだけど感
動。終わり方がフィガロの結婚に似ている。
・オリヴィアは好きになった人の区別ができなくて少し狂っている。その狂い様を描くために
ヘレナ・ボナム・カーターをキャスティングしたのは物語にぴったりだと思った。
・ヴァイオラとセバスチャンが本当に似すぎていてびっくりした。本物の双子なのだろうか。
【←
実際は双子ではなく、ヴァイオラがイモーゲン・スタッブス(映画当時35歳)、セバスチャン
がスティーヴン・マッキントッシュ(映画当時29歳)という俳優です。】
・双子が再会するシーンで、二人が向き合った時、背景にシンメトリーな建物が映っていて、
画面全体でシンメトリーになっていたのが印象的だった。
・オーシーノー公爵からの求婚を迷惑だ、と言いつつも、あいさつなどは礼儀正しく行ってい
るのを見てやはり貴族だなーと思いました。
・双子の兄が大柄な男の顔を傷つけて、「正当防衛だ」と言いつつも普通に場になじんでいるシ
ーンを見て、少し違和感を感じました。もっと追きゅうされて良いと思いました。
・兄妹がすぐに兄妹だと分かりあわずに、長いセリフをのべながら兄妹であることを確認して
いたところがすごく気になりました。なんとなく兄だ、妹だとわかればすぐにかけよりそうで
すが、そうはせず、時間をかけるのが演出の一つなのかなと感じました。【←戯曲のセリフが詩
で書かれ修辞を凝らしているせいもあるかもしれません。】
・台詞は感情にまかせながらも詩的で、死んだと思っていた2人が出会う場面では現実なのか
夢なのかわからないという風に2人の言葉は物語を語るようなものに感じられた。
・“ヴェニスの商人”でも感じたけど、和解のシーンは一瞬で劇的だと思った。状況が悪化して
いくシーンはゆっくり描かれていくのに対して、解決シーンはとても展開が速い。
・オーシーノー公の心変わりがはやいなあと思いました。
●道化
・最後の道化の歌が高低のリズムが良く、とても印象に残りました。(あれが弱強五歩格?)
・道化の歌やセリフで終わる(主人公勢をさしおいて)のが印象的でした。
・道化の人が、和解していた時も1人だけカメラ目線(観客目線)で、不自然だけどそこが道
化らしいと思った。【←道化はお芝居を内側からと同時に外から見る視点を持っているんです
ね。】
・道化師は割と、その場面場面に融け込んでいた。【←お芝居の内側にも入り込む存在です。】
・『十二夜』はシェイクスピア喜劇の中で一番いい喜劇だと思います。『十二夜』のストーリー
がとてもおもしろいと思います。映画版を見て、俳優達の衣装や髪型がとても魅力的で印象に
残りました。
●その他(セリフ、音楽、映像/舞台)
・とてもいい映画だった。ストーリーに夢中になって、弱強五歩格があるか見ようと思ってい
たのに、忘れてしまう程だった。
・セバスチャンが出てきてからは、セリフとセリフの間が絶妙で、2人の事実が明るみになっ
ていく毎におお…おおお…おおおお…と鳥肌が立ち、BGM の効果もあり泣きそうになった。当
時の舞台もあのような BGM はあったのでしょうか。【←歌はありましたし楽器による伴奏程度
はあったかもしれませんが、大掛かりな楽団の演奏等はなかったのではないかと思います。】
・映画という映像でなくとも、舞台という劇場でもできそうだと思った。立ち回り方とかで。
舞台で演じられている感じがなんとなく想像しやすかった。【←この映画の監督のトレヴァー・
ナンは、イギリスのシェイクスピア専門劇団ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)
出身で、出演俳優のなかにもこの劇団出身の人が何人かいます。(道化役のベン・キングスレー
など)】
・今まで見た作品の中では一番分かりやすい内容で、最近の映画やドラマにあってもおかしく
ないような今っぽい感じがしました。【←逆に考えれば、今の映画やドラマで使われるモチーフ
の歴史の源流にシェイクスピアがいる、ということでもあります。】
2. 『ハムレット』
(ジョナサン・ケント演出)、3幕1場(第4独白=「生
きるべきか、死ぬべきか〜」を含む)の場面を見て、印象に残った点を書
きなさい。
●セリフ、言葉
・心で思ったことを口で丁寧に表現しているなーと感じました。ふだんはなす言葉では省くと
ころも、観客に伝わるように、ていねいにセリフを話していた。
・ハムレットはオフィーリアに言っていながら、自分だけで喋っているように感じた。
・ハムレットのふつうに(荒く)話している感じとオフィーリアのかた苦し感じの言葉の差が
気になった。
●狂気
・この作品は読んだことがないので、何故主人公が狂ってしまったのかわからない。【←劇中で
も、「なぜ狂ってしまったのか」が問題になっていて、復讐のために狂気を装っているのか、そ
れともオフィーリアへの実らぬ恋のためなのか、判断が難しいところです。観る側にも、多様
な解釈を許容する設定になっていると思います。】
・「尼寺に行け、さようなら!」と叫んでまた女のもとにもどってくる、というのをくりかえし
ていたがあれにはどういう意味があるのかよく分からなかった。
【←ぜひ考えてみてください。】
・ハムレットが「さようなら」といいながら何度もオフィーリアの所に戻って来て怒鳴ってい
るのがとても印象に残り、ハムレットの乱心ぶりをよく表わしていると感じた。
・独白のときは淡々としていたのに、オフィーリアに会うと人がかわったようで恐ろしかった。
・ハムレットは究極の優柔不断なやつだと思いました。精神病みすぎてて怖い。【←復讐、死と
いったものに直面した状況が、ハムレットにもたらしたものかもしれません。】
・ハムレットは狂っているというより、何者かがのりうつってるように見えた。オフィーリア
は一言多いと思った。
●「死」、暗さ
・「神」という言葉が印象に残った。全体的に暗く物語の様子を表現しているようだった。
・当時の世では、死が近いもの、恐ろしくないものであったのだとわかる。
・生きるか死ぬか、世間はくるしい等のテーマは昔も今もつかわれる変わらないテーマなんだ
と思った。
・「生きるべきか〜」って存外ナヨナヨとした台詞なのね。もっと男らしい、格好良いものなの
かと思っていましたが…。
・キリスト教のせいもあって、死ぬことについての価値観がとても違う。死=神の国に行くと
いうこと。でも人間の根本にある死への恐怖とのかっとうが見事に演出されている。とにかく
舞台が暗い。/のむらまんさいさんの Hamlet のロンドン公演みに行きました!
・暗くてよく分からない・・・大画面で見ると、何を喋っているか聞き取れるのですが、実際
劇を観に行くと、なんと言っているのか理解できない事が多くあって困ります。【←色々原因が
あると思います。まずは舞台の大きさ。その劇に見合った舞台の大きさであるかどうか。セリ
フの発声、滑舌。以上は演出側の事情で、観る側の事情も含めると、物語の理解度が聞き取り
に影響するでしょう。よく知っている物語なら、多少音響条件が悪くても知識で補って「聞き
取れる」場合があります。】
●俳優
・女の人の声高くてすごかった。うらやましい。鼻が高かった。【←ちなみに役者さんは歌舞伎
の中村志のぶさんで、男性です。】
・ガートルード役の人が気になった。誰だったか思い出せるようで思い出せない。【←篠井英介
さんで、石川県出身の俳優です。劇団花組芝居の創立メンバーで、元々歌舞伎役者を目指して
いた方でもあり、女形を得意とします。最近、石川県観光特使に任命されました。】
・男性ばかりで演じた方が迫力が出る気がしました。
・日本人なのに西洋人のような顔の濃さだった。舞台メイクはビデオでアップで見ると驚くほ
ど濃いと感じた。