1 ジャン ジャン・バニエの バニエの手紙 親愛なる友人の皆さまへ、 これはカトリック新聞 「十字架」 からのご依頼により、 中東にいらっしゃるキリスト教信者の友人の方々へ向 けて書いた私の手紙です。 私たちは、ここフランスで平和にクリスマスを過ごし ていますが、非常に多くの方々が戦争と苦しみの中で クリスマスを過ごしておられます。 私が、この手紙を送らせていただくことで、彼らとと もに、そしてお互いのために、共に祈ることができま す。 親愛なる中東のキリスト信者の友人の皆さまへ 私は知的障がいを持つ人たちと、ほぼ 50 年間暮らして きましたラルシュ共同体から、皆さまにこのお手紙を書 いています。 皆さまの国にある「信仰と光」や「ラルシュ」共同体を 訪れ、これまでに中東へ何回も足を運びましたので、私 は皆さまの多くを存じ上げております。現在、多くの皆 さまが、不安定な状況の中で、危険な中を、迫害、戦争、 2 不正義の只中を過ごしておられます。 クリスマスがもうすぐやって来ます。クリスマスは静か な、平和の時です。ですが同時に、ヘロデがベツレヘム で、なんて怖いことでしょう、2 歳以下の子どもたちを 一人残らず殺害した時の、恐ろしい戦いの時も思い出し ます。このような目に遭った子どもたちの叫び、お母さ んたちの叫び、そして父親たちの何もできない怒り。ヨ セフとマリアは、生まれたばかりの幼子といっしょに、 この迫害を避けようと、逃げて行きました。現在、多く の皆さまが、この聖家族のような、テント暮らしの避難 者となっています。 今、 私は皆さまと遠く離れていて、 心が落ち着きません。 ですが、私はキリストの体において、皆さまとひとつに 結ばれています。私たちはいっしょにいます。これは私 の祈りであり、そして皆さまの友人の多くの方々の祈り でもあります。 どうか皆さまが平和に包まれますように。 恐れは、とても早く私たちをやっつけます。イエスは、 ご自分の弟子たちに、次のように強い口調で戒めていま した。 「恐れるな。些細なことを怖がるな。そうすればあ なたがたの御父は喜び、 あなたがたに天の国をくださる」 。 イエスは一人ひとりに、このようにおっしゃりたいので す。 「信仰を持ちなさい。 あなたがたは最も愛されており、 しかも私はあなたがたと共にいるということを悟りなさ い」と。 皆さまの多くが、キリストの地に住んでおられます。こ の地は、キリストご自身と彼の弟子たちが、福音宣教し たところです。皆さま全員が神さまにとって、とても大 切であり、イエスは皆さまと共にいてくださいます。イ エスは、皆さまの苦しみを取り除くためにおられるので はありません。 皆さまに苦しみを担う力を与えるために、 そこにおられるのです。 AL-FULK エジプトのラルシュ Ma’an Lil-Hayat ベツレヘムのラルシュ 私たちは、心と魂の中で、皆さまと共にいます。聖パウ ロは言っています。教会という体のなかで、最も弱い部 分が最も必要不可欠であり、それらは十字架につけられ たイエスをあらわします、と。同じように、中東のキリ スト信者の皆さまも、十字架につけられています。マリ アは十字架につけられたイエスと共にいます。そしてマ リアは皆さまと共にいてくださいます。どうかマリアが 皆さまに平安と優しさをもたらしてくださいますように。 平和の神を賛美し、敬意をはらい、また暴力によって神 の聖なる御名を貶める人たちによって傷つけられた、皆 さまの隣人であるイスラム教徒の人たちに、どうか必ず お伝えください。私たちは皆さまと共に、そして皆さま のために祈っています、と。また私たちは、暴力の世界 につかまってしまった人たちのために祈ります。そのよ Al-Safina ダマスのラルシュ 3 うな人たちが、どうか真の平和の神を再び見出すことが できますように。 私たち皆の神が、平和を望んでおられますので、私たち は開かれた心と愛の心をもって、神さまの最愛なる子ど もとして、ひとつに集まることができます。 平和の神さまが、皆さま全員を祝福してくださいますよ うに。 今日は 12 月 15 日ですが、私は、路上生活をしていたこ とがあり、今はパリで 15 か所のアパートでボランティ アの人たちと共同生活をしている 45 人の人たちのため に、トロリーの農場の家でリトリートをしています。こ の人たちは、 とてもすばらしい、 驚くような共同体です。 力と驚きに満ちています。そこでは、受け入れられてい る人たち一人ひとりが、自分自身の人生のストーリーや 賜物、そして苦しみを持って来られているからです。あ る人たちは、クリスマスの心の準備をするために、祈る ために、そしてイエスがされたようにお互いの足を洗い 合うために、この農場の家に来られました。このリトリ ートに参加している人たちは、路上生活者ですので、分 かち合いという形での集いを好みます。彼らは、自分た ちの苦悩や恐れをどのように分かち合うのか、また共同 生活をしていて出くわす難題をどうやって分かち合うの か、ご存じです。このグループは、年に 2 回、この農場 の家に来られます。彼らのうちの何人かは、これまでに (リトリートの参加した女性と共に) 私の喜びは、この過ぎ去った数か月間に、この農場の家 でリトリートをすることができたことです。ときにはラ ルシュのメンバーと勉強会もしました。最後に私はいつ も、同じ実話で、私たちは友情を求めて叫ぶ、傷つきや すい人たちと出会って変えられましたという、話をいた します。私たちの社会の目指すところは、最も弱い人た ちから心が離れて、互いにしのぎを削り、もっと高みに 上り、もっともっと物質、物品を、権力を、そして名声 を手にすることであります。しかしながら、いつも、最 も傷つきやすい人たちが、人間性や苦しみ、そして愛さ れる必要性に最も近い人たちです。私たちに、真理と愛 のうちに生きる生き方を教えてくれるのが彼らです。 皆さまには信じられないかもしれませんが、数週間前、 私は海辺を歩き、鳥たちに感嘆し、すばらしい海の空気 を吸い、そしてオディールと私を 3 日間、受け入れてく ださったイエスの小さい姉妹会の皆さんといっしょに祈 るために、またベルクへ行って参りました。 休日は私たちにとってすばらしいものです。 来られたことのある人たちです。それ以外の人たちは、 初めてです。私たち一人ひとりに、次のように言ってく ださるために来られたイエスのことについてお話しする のは、私の喜びです。 「あなたがたは大切で貴く、あなた がたが思っている以上にすばらしい」 。私たちが全員、祈 りのうちに、そして神のみ言葉を生きる中で、ひとつに なって共に集うならば、それはちょっとした天の国、愛 の国のようなものです。 ベルクの小さい姉妹たち 4 神は、28 年間も獄中にあって、何年も岩塩発掘の強制労 働をさせられたネルソン・マンデラ氏のような預言者を、 派遣し続けておられます。 なんと恐ろしいことでしょう。 でもなんという平和の展望でしょう。自由や赦しの展望 でしょう。そうなのです。彼は、戦争の時、あるいは安 心感へ逃れる時、人間性に希望を与えます。そして私た ち一人ひとりが、この平和と和解の道に沿って、マンデ ラ氏の模範に従うことができるように、また神さまがマ ンデラ氏やミャンマーのアウンサンスーチーさんのよう な人たちを送り続けてくださいますように、祈りましょ う。 もう何日かしますと、私はパトリックやアンドリュー、 そしてこのホームの他の人たちもいっしょに、クリスマ ス・キャロルを歌いながら、 村の家々をめぐり歩きます。 「天のいと高きところには神に栄光。神の愛する人たち に平和あれ」 。 ネルソン・マンデラ そうなのです、造られたもののすばらしさ、子どもたち のすばらしさ、そして平和のために奮闘しておられる多 くの立派な人たちのために神に栄光なのです。預言者エ ゼキエルを通して、神は告げ知らせました。 「わたしはあ なたがたの石の心を肉の心に変え、そしてわたしの霊を あなたがたの内に置く」と。しばしば恐れは私たちを自 分自身の中に閉じ込めてしまいますが、それらの恐れは 信頼することによって変えることができます。 私たちの心が愛や平和、そして信頼に対して開かれます ように。 そして私 そして私たち一人 たち一人ひとりの 一人ひとりの中 ひとりの中に平和の 平和の神が生 まれますように。 まれますように。 ジャン Letter of JeanVanier
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